JP2017040203A - ターボチャージャ用軸受機構 - Google Patents

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知之 磯谷
Tomoyuki Isotani
知之 磯谷
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Abstract

【課題】異音の発生防止や運転効率の向上が図られるとともに、製造コストの低減が図られるターボチャージャ用軸受機構を提供すること。【解決手段】ターボチャージャ用軸受機構1は、ロータシャフト10と、ボールベアリング20と、リテーナ60と、ハウジング30とを備える。ロータシャフト10は、一端10aにタービンインペラ11が取り付けられ、他端10bにコンプレッサインペラ12が取り付けられている。ボールベアリング20は互いに回転可能に支持された内輪21と外輪22とを備える。ハウジング30は、ロータシャフト10及びボールベアリング20を収納して軸受ハウジングを構成している。内輪21とロータシャフト10の外周面10cとの間にはオイルが膜状に介在してオイルフィルムダンパ50が形成されている。そして、内輪21は、オイルフィルムダンパ50を介して、ロータシャフト10の回転に伴って連れ回りするように構成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、ターボチャージャ用軸受機構に関する。
従来、内燃機関には、内燃機関から排出された排気ガスのガス流を利用して、吸入空気を圧縮するターボチャージャが備えられたものがある。ターボチャージャは、ロータシャフトと、ロータシャフトの一端に設けられたタービンインペラと、ロータシャフトの他端に設けられたコンプレッサインペラとを備えており、ロータシャフトは軸受機構により軸受けされている。当該軸受機構は軸受ハウジング内に収納されている。そして、特許文献1には、かかる軸受機構として、ロータシャフトに取り付けられたボールベアリングと、ボールベアリングと軸受ハウジングとの間に潤滑油が充填されてなるオイルフィルムダンパとを有する軸受機構を備えたターボチャージャが開示されている。
特許文献1に開示の構成では、ボールベアリングは環状の内輪及び外輪と、両者が互いに滑り回転するように両者の間に介在するボールとを有し、内輪の内側にロータシャフトが嵌装されている。これにより、ロータシャフトとその端部にそれぞれ設けられた両インペラとボールベアリングの内輪とが一体的に回転するように回転体アッシーを形成している。そして、ボールベアリングの外輪と軸受ハウジングとの間にはオイルが充填されてなるオイルフィルムダンパが形成されており、回転体アッシーの振動を抑制するダンピング効果を奏するように構成されている。
特開2012−92934号公報
上記構成では、オイルフィルムダンパは、ボールベアリングの外輪と軸受ハウジングとの間に形成されている。したがって、オイルフィルムダンパの内側に位置する部品全体は、ロータシャフト及び両インペラに加えてボールベアリングを含んでいるため、オイルフィルムダンパ内側の部品全体の質量が比較的大きくなっている。また、ボールベアリングの外輪の外径は、その内輪の内径よりも充分大きいため、オイルフィルムダンパとボールベアリングの外輪との接触面積は比較的大きくなる。そのため、オイルフィルムダンパと外輪との間に生じる粘性力が大きくなりやすく、特に低温時にはかかる粘性の増大が顕著である。
一方、回転体アッシーには少なからず必ず残留アンバランス(不釣合い)が存在することから、回転体アッシーの径方向における質量中心はロータシャフトの軸心(図心)からずれた位置に位置している。そのため、回転体アッシーが軸回転するときは、ロータシャフトの軸心からずれた質量中心を通る軸線を中心とする偏重心回転をしようとする。しかし、オイルフィルムダンパ内側の部品の(慣性)質量が大きく、上記粘性力が高い場合には、回転体アッシーは偏重心回転が阻害されて、図心に近い位置を中心に回転せざるを得なくなる。そして、ロータシャフトの両端に設けられた両インペラは片持ち梁の状態となっているため、かかる場合には、両インペラはロータシャフトの回転に伴って大きく振れ回ることとなる。これにより、回転初期に異音が発生したり、両インペラがハウジングに接触して破損したりするおそれがあり、これらは低温時にはより顕著となる。そして、両インペラの破損を防止するには、両インペラとハウジングとの間隙(チップクリアランス)を大きくする必要がある。しかし、チップクリアランスを大きくすると、ターボチャージャの運転効率の低下を招くこととなる。
このような異音の発生や運転効率の低下を防止するには、回転体アッシーの偏重心回転を阻害しないように、回転体アッシーの質量中心とロータシャフトの軸心とのずれが極めて小さくなるように、回転体アッシーの質量バランスを調整することが考えられる。しかし、かかる質量バランスの調整には高い精度が要求されることとなり、コスト高となる。
また、オイルフィルムダンパの内側と外側の部品間の共回りのために、ロータシャフトにねじ穴加工などをすると、回転体アッシーの質量バランスの調整に一層の手間がかかり、コスト高となる。また、ロータシャフトにねじ穴加工をすると、当該ねじ穴への応力集中によってロータシャフトの疲労強度の低下を招くおそれがある。この場合には、疲労強度の低下を補うために予めロータシャフトの径を大きくして十分な疲労強度を確保することが考えられる。しかしながら、ロータシャフトの径を大きくするとボールベアリングも大型化するため、オイルフィルムダンパとボールベアリングとの接触面積が大きくなり、両者の間に生じる粘性力が大きくなり、ターボチャージャの運転効率の低下を招くこととなる。また、ロータシャフトは高速回転するため、ロータシャフトに直接締結されたねじにはゆるみが生じやすいという問題もある。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、異音の発生防止や運転効率の向上が図られるとともに、製造コストの低減が図られるターボチャージャ用軸受機構を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、一端にタービンインペラが取り付けられ、他端にコンプレッサインペラが取り付けられたロータシャフトと、
互いに回転可能に支持された内輪と外輪とを備えるボールベアリングと、
上記外輪を保持するリテーナと、
上記ロータシャフト、上記ボールベアリング及び上記リテーナを収納するハウジングと、
を備え、
上記内輪と上記ロータシャフトの外周面との間にはオイルが膜状に介在してオイルフィルムダンパが形成され、
上記内輪は、上記オイルフィルムダンパを介して、上記ロータシャフトの回転に伴って連れ回りするように構成されていることを特徴とするターボチャージャ用軸受機構にある。
上記ターボチャージャ用軸受機構によれば、オイルフィルムダンパがボールベアリングの内輪とロータシャフトとの間に形成されていることから、オイルフィルムダンパ内側の部品には、ボールベアリングにおける内輪以外の部分やリテーナが含まれておらず、オイルフィルムダンパ内側の部品の(慣性)質量が比較的小さくなっている。また、ボールベアリングの内輪の内径は、その外輪の外径に比べて充分小さいため、オイルフィルムダンパとロータシャフトの外周面との接触面積が比較的小さくなっている。これらにより、オイルフィルムダンパとロータシャフトの外周面との間に生じる粘性力を比較的小さくすることができる。
そして、上記粘性力を小さくできることにより、回転体アッシーが質量中心を中心に回転するのを阻害する力が低減されるため、また、オイルフィルムダンパ内側の部品の(慣性)質量が比較的小さくなっているので、回転体アッシーが偏重心回転しやすくなる。その結果、ロータシャフトの回転に際して、ロータシャフトの両端に設けられた両インペラが大きく振れ回ることが抑制されることから、異音の発生が防止されるとともに、各インペラとハウジングとのチップクリアランスが最適化されて運転効率の向上が図られる。また、上述の如く、回転体アッシーが偏重心回転しやすくなっていることから、回転体アッシーの質量バランスの調整にそれほど高い精度を要しないため、当該質量バランスの調整が容易となり、製造コストの低減を図ることができる。
また、上述の如く、オイルフィルムダンパとロータシャフトの外周面との間に生じる粘性力を比較的小さくできることにより、回転体アッシーの回転レスポンスの向上が期待できるため、内燃機関の過渡性能の向上に寄与しうる。
さらに、低温時などのオイルの粘性が高くなりやすい場合には特に、上記粘性力を小さくできることにより、回転体アッシーに対するオイルダンピング効果を充分に発揮させることができる。
そして、上記ターボチャージャ用軸受機構では、内輪が、オイルフィルムダンパを介して、ロータシャフトの回転に伴って連れ回りするように構成されている。具体的には、オイルフィルムダンパにおけるフリクション(すなわち、ボールベアリングの内輪とロータシャフトとの間のフリクション)は、ボールベアリングにおけるフリクション(すなわち、内輪と外輪との間のフリクション)よりも大きい。そのため、ロータシャフトが回転すると、ボールベアリングにおいて内輪と外輪との間に相対回転が生じて、オイルフィルムダンパにおける内輪とロータシャフトとの間の相対回転が抑制されるため、内輪がオイルフィルムダンパのみを介してロータシャフトの回転に伴って連れ回りすることができる。したがって、内輪をロータシャフトと連れ回りさせるために両者を係合させる機構を別途設ける必要がない。例えば、ロータシャフトと内輪とを係合させるためのねじ穴加工をロータシャフトに施したり、内輪の端部とオイルスリンガーとを係合させるための加工を内輪の端部に施したり、内輪の端部とカラーとを係合させるための加工を内輪の端部やカラーに施す必要がない。そのため、加工費用が不要となるとともに、回転体アッシーの質量バランスの調整が容易となり、製造コストを低減できる。
また、ロータシャフトへのねじ穴加工が不要となることにより、ねじ穴加工を施す場合に比べてロータシャフトの疲労強度の向上が図られる。そして、当該疲労強度の向上が図られるため、ロータシャフトの径を大きくする必要がないことから、ボールベアリングを小型化でき、オイルフィルムダンパとボールベアリングとの接触面積を小さくできる。その結果、両者の間に生じる粘性力を小さくすることができ、ターボチャージャの運転効率の向上を図ることができる。また、ロータシャフトの高速回転によるねじのゆるみを考慮する必要がない。
本発明によれば、異音の発生防止や運転効率の向上が図られるとともに、製造コストの低減が図られるターボチャージャ用軸受機構を提供できる。
実施例1における、ターボチャージャ用軸受機構の断面模式図。 図1における、オイルフィルムダンパ近傍の拡大図。 図1における、III-III線位置での断面一部拡大図。 実施例1における、内輪の軸方向端部の斜視図。 変形例1における、オイルフィルムダンパ近傍の断面模式図の拡大図。 変形例2における、オイルフィルムダンパ近傍の断面模式図の拡大図。
上記内輪は、上記ロータシャフトの軸方向に沿って延びる筒状に形成され、上記ロータシャフトには、上記内輪の軸方向端部に軸方向に対向する端部対向部が設けられ、上記軸方向端部及び上記端部対向部の少なくとも一方には、上記オイルフィルムダンパから排出されたオイルを上記ロータシャフトの径方向外側に飛散させるように切り欠かれてなるオイル排出溝が形成されていることが好ましい。この場合には、オイルフィルムダンパに供給されたオイルを、オイル排出溝によって、オイルフィルムダンパから排出しやすくなり、ハウジング内におけるオイルの循環が促される。これにより、オイルフィルムダンパからの排油性が向上させて、オイルフィルムダンパへの注油性を向上させることができる。その結果、オイルがハウジング内に充満して、ハウジングの外部に漏れ出ることを防止することができる。
(実施例1)
実施例に係るターボチャージャ用軸受機構1につき、図1〜図4を用いて説明する。
本例のターボチャージャ用軸受機構1は、図1に示すように、ロータシャフト10と、ボールベアリング20と、リテーナ60と、ハウジング30とを備える。
ロータシャフト10は、一端10aにタービンインペラ11が取り付けられ、他端10bにコンプレッサインペラ12が取り付けられている。
ボールベアリング20は、互いに相対的に回転可能に支持された内輪21と外輪22とを備える。
リテーナ60は、外輪22を保持している。
ハウジング30は、ロータシャフト10、ボールベアリング20、及びリテーナ60を収納して、軸受ハウジングを構成している。
内輪21とロータシャフト10の外周面10cとの間にはオイルが膜状に介在してオイルフィルムダンパ50が形成されている。
そして、内輪21は、オイルフィルムダンパ50を介して、ロータシャフト10の回転に伴って連れ回りするように構成されている。
以下、本例のターボチャージャ用軸受機構1につき、詳述する。
図1に示すように、ロータシャフト10の一端10aには、タービンインペラ11が一体的に設けられている。タービンインペラ11はタービンハウジング33内に収納されている。一方、ロータシャフト10の他端10bは、カラー13及びコンプレッサインペラ12に挿通されており、これらは軸端ナット14によって抜け及び回転止めされている。そして、コンプレッサインペラ12はコンプレッサハウジング34に収納されている。タービンハウジング33とコンプレッサハウジング34との間には、ロータシャフト10の軸受ハウジングとしてのハウジング30が設けられている。
図1に示すように、ハウジング30内には、リテーナ60を介して、ロータシャフト10を軸受けするボールベアリング20が保持されている。リテーナ60には、ボールベアリング20回りにオイルを供給するためのオイル供給路61と、ボールベアリング20回りからオイルを排出するオイル排出路63とが形成されている。
オイル供給路61は、図2に示すように、ロータシャフト10に近づくほどオイルフィルムダンパ50に近づくように傾斜して形成されている。本例では、オイル供給路61はリテーナ60を直線状に貫通している。したがって、オイル供給路61の中心を通り、リテーナ60におけるオイル供給路61の貫通方向に平行な仮想線である中心線Lは直線状となっている。オイル供給路61の出口(オイル供給路61における内輪21側の端部)は、オイル供給路61を流通するオイルを内輪21に向けて吐出するように開口したオイル吐出口611を形成している。本例では、図1に示すように、軸方向Xの両端に形成されたオイルフィルムダンパ50のそれぞれにオイルを供給するように、オイル供給路61が2か所に設けられている。オイル排出路63はハウジング30の鉛直方向の下側に形成されており、オイル排出路63の下方にはハウジング30の外部に開口するオイル排出口63bが形成されている。なお、2か所のオイル供給路61の間に、軸方向Xに垂直に延びる補助オイル供給路を形成してもよい。
図2に示すように、オイル供給路61の中心線Lはロータシャフト10の軸心10dに対して傾斜している。中心線Lと軸心10dとのなす角αは45°以下とすることが好ましく、30°以下とすることがより好ましく、本例では、αは30°である。
ボールベアリング20は、図1に示すように、内輪21と外輪22とを有している。内輪21は略円筒形を成している。内輪21の軸方向Xにおける両端部領域には、ロータシャフト10の外周面10cとの間にオイルフィルムダンパ50を形成するダンパ形成部211が形成されている。本例では、ダンパ形成部211の内径は、ロータシャフト10の外径よりも0.05〜0.1mm程度大きくなっている。
軸方向Xにおける内輪21の中央領域212は、ダンパ形成部211の内径よりも大きい内径を有している。本例では、中央領域212の内径は、ロータシャフト10の外径よりも0.2mm程度以上大きくなっている。したがって、中央領域212における内輪21とロータシャフト10の外周面10cとの間の隙間Qは、ダンパ形成部211とロータシャフト10の外周面10cとの間の隙間P(すなわち、オイルフィルムダンパ50の厚さ)の2倍以上となっている。両間隙P、Qは、内輪21の中心とロータシャフト10の中心とを合わせた静止状態において、周方向に一定の大きさとなっている。
図2に示すように、吐出口対向部213は、オイル吐出口611から吐出されるオイルの吐出方向に対向する位置に形成されており、ダンパ形成部211と中央領域212との間に位置している。本例では、吐出口対向部213は中心線Lと直交している。
吐出口対向部213には、オイル流通孔214が形成されている。オイル流通孔214は、図2に示すように、ロータシャフト10の軸心10d及びオイル供給路61の中心線Lを含む断面において、オイル供給路61の中心線L上に形成されている。本例では、オイル流通孔214の開口幅d2は、オイル吐出口611の直径d1よりも大きくなっている。オイル流通孔214は複数形成され、周方向に等間隔に配列しており、本例では、4個のオイル流通孔214が周方向に等間隔に配列している。
図2に示すように、内輪21には、軸方向Xにおいて、ダンパ形成部211と吐出口対向部213との間に、ロータシャフト10の外周面10cとの間にオイルを貯留するオイル貯留部51を形成する貯留部形成部216が形成されている。貯留部形成部216はダンパ形成部211よりも拡径されており、ダンパ形成部211側の壁面216aは、ロータシャフト10の軸心10d及び中心線Lを含む断面において、中心線Lに平行に形成されている。オイル流通孔214を介して供給されたオイルは、オイル貯留部51を通じてオイルフィルムダンパ50に供給されることとなる。
図2に示すように、内輪21におけるコンプレッサインペラ12側の軸方向端部21bには、切り欠かれて凹状に形成されたオイル排出溝219が形成されている。図4に示すように、オイル排出部219は、内輪21の直径方向に二対設けられている。オイル排出溝219は、後述の排出部形成部218とともにオイル排出部52を形成している。図1に示すように、内輪21におけるタービンインペラ11側の軸方向端部21cにも、コンプレッサインペラ12側と同様に切り欠かれて凹状に形成されたオイル排出溝219が形成されている。
図2に示すように、内輪21におけるコンプレッサインペラ12側の軸方向端部21bにおいて、隣り合うオイル排出溝219の間には、後述するカラー13における端部対向部80(コンプレッサ側端部対向部80b)に対向する対向面53が形成されている。内輪21におけるタービンインペラ11側の軸方向端部21cにおいても、隣り合うオイル排出溝219の間には、後述する拡径部111における端部対向部80(タービン側端部対向部80a)に対向する対向面53が形成されている。そして、両対向面53と端部対向部80(コンプレッサ側端部対向部80b、タービン側端部対向部80a)との隙間は所定の大きさとなっており、対向面53及び端部対向部80により、内輪21のスラスト方向(すなわち、軸方向X)の位置決めがなされている。
図1に示すように、ロータシャフト10は、一端10a側に大径部10eを有し、他端10b側に小径部10fを有する。小径部10fは大径部10eの直径よりも小さい直径を有しており、大径部10eと小径部10fとの間には、段差部10gが形成されている。コンプレッサインペラ12は小径部10fに設けられており、コンプレッサインペラ12と段差部10gとの間には環状部材としてのカラー13が設けられている。カラー13は環状をなしており、軸端ナット14により小径部10fに固定されている。図2に示すように、カラー13は軸方向端部21bの対向面53に対向する端部対向部80(コンプレッサ側端部対向部80b)を備えている。本例では、端部対向部80には、図2、図3に示すように、端部対向部80を湾状に切り欠いてなるオイルスリンガー8が、周方向に等間隔に複数形成されている。
図1に示すように、ロータシャフト10とタービンインペラ11とは、ロータシャフト10の一端10aに設けられた拡径部111を介して接合されている。拡径部111はロータシャフト10の一端10aに溶接されて固定されている。拡径部111には、カラー13と同様に、内輪21の軸方向端部21cの対向面53に対向する端部対向部80(タービン側端部対向部80a)が形成されている。
ボールベアリング20の外輪22は環状を成している。図1に示すように、外輪22は2個備えられており、内輪21の軸方向Xにおける両端部近傍の領域における外周面(ロータシャフト10に面する面と反対側の面)に対向するようにそれぞれ配設されている。そして、内輪21と外輪22との間には、図示しない保持器を介してボール状の回転子23が介設されている。これにより、内輪21と外輪22とは回転子23を介して相対的に回転可能に構成されて、ボールベアリング20を形成している。外輪22は、リテーナ60を介してハウジング30に固定されており、ロータシャフト10がボールベアリング20を介して、ハウジング30に配されている。
内輪21の両端部近傍の領域における内輪21とロータシャフト10との間に形成された隙間Pにはオイルが膜状に介在して、オイルフィルムダンパ50がそれぞれ形成されている。図2に示すように、内輪21のオイル流通孔214が、オイル吐出口611に対向している状態において、オイルフィルムダンパ50は、リテーナ60に形成されたオイル供給路61から供給されたオイルがオイル流通孔214を介して、内輪21とロータシャフト10との間に入り込んで、オイル貯留部51を通じて隙間Pに到達することにより形成される。
図2に示すように、内輪21には、ダンパ形成部211における貯留部形成部216と反対側には、上述のオイル排出溝219とともにオイル排出部52を形成する排出部形成部218が形成されている。本例では、排出部形成部218は、内輪21の軸方向Xの両端部において、ロータシャフト10の外周面10cから離隔することにより、排出部形成部218と外周面10cとの間を通じて、オイルフィルムダンパ50からオイルを排出させるオイル排出部52を形成している。
そして、オイル排出部52に対向する位置にはオイル排出部52から排出されたオイルをロータシャフト10の径方向外側に飛散させるように凹状に形成されたオイルスリンガー8が設けられている。本例では、図1に示すように、オイルスリンガー8はコンプレッサインペラ12側に設けられるカラー13及びタービンインペラ11の拡径部111にそれぞれ形成されている。図2に示すように、オイルスリンガー8は、カラー13のボールベアリング20側の端部13aを湾状に切り欠いて、図3に示すように、周方向に等間隔に複数形成されている。同様に、拡径部111においても、オイルスリンガー8が複数形成されている。
ロータシャフト10は以下のようにハウジング30に組み付けられる。まず、ボールベアリング20の内輪21をリテーナ60の内側に挿入する。そして、リテーナ60の軸方向Xの両端側からリテーナ60に回転子23及び外輪22をそれぞれ組み付けて、ボールベアリング20を形成させる。その後、ボールベアリング20及びリテーナ60をハウジング30に挿入して、プレート70及びボルト71でハウジング30に挟み込むようにして固定する。その後、タービンインペラ11とロータシャフト10とをハウジング30に挿入する。そして、カラー13及びコンプレッサインペラ12を軸端ナット14で締め付け固定する。
本例のターボチャージャ用軸受機構1によれば、オイルフィルムダンパ50がボールベアリング20の内輪21とロータシャフト10との間(隙間P)に形成されているため、オイルフィルムダンパ50内側の部品はロータシャフト10とロータシャフト10に取り付けられたタービンインペラ11及びコンプレッサインペラ12と、ロータシャフト10と連れ回りする内輪21とからなり、オイルフィルムダンパ50内側の部品にボールベアリング20における内輪21以外の部分(外輪22、回転子23、保持器等)は含まれてない。そのため、オイルフィルムダンパ50内側の部品の(慣性)質量が比較的小さくなっている。また、ボールベアリング20の内輪21の内径は、外輪22の外径に比べて充分小さいため、オイルフィルムダンパ50とロータシャフト10の外周面10cとの接触面積が比較的小さくなっている。これらにより、オイルフィルムダンパ50とオイルフィルムダンパ50内側の部品との間に生じる粘性力を比較的小さくできる。
そして、上記粘性力を小さくできることにより、オイルフィルムダンパ50内側の部品により構成される回転体アッシー100が質量中心を中心に回転するのを阻害する力が低減されるため、また、オイルフィルムダンパ50内側の部品の(慣性)質量が比較的小さくなっているので、小さいエネルギーでも回転体アッシー100が偏重心回転しやすくなる。その結果、ロータシャフト10の回転に際して、ロータシャフト10の両端にそれぞれ設けられた両インペラ11、12が大きく振れ回ることが抑制される。その結果、異音の発生が防止されるとともに、各インペラ11、12とそれぞれのハウジング33、34とのチップクリアランスを大きくとる必要がないため、運転効率の向上を図ることができる。また、コンプレッサハウジング34にアブレーダブルシールが備えられる場合には、コンプレッサインペラ12が当該アブレーダブルシールに対して過度に接触することが防止されるため、コンプレッサインペラ12の破損やアブレーダブルシールの過度な摩耗が防止される。また、上述の如く、回転体アッシー100が偏重心回転しやすくなっていることから、回転体アッシー100の質量バランスの調整にそれほど高い精度を要しないため、当該質量バランスの調整が容易となり、製造コストの低減を図ることができる。
また、上述の如く、オイルフィルムダンパ50と回転体アッシー100との間に生じる粘性力を比較的小さくできることにより、回転体アッシー100の回転レスポンスの向上が期待できるため、内燃機関の過渡性能の向上に寄与しうる。
さらに、低温時などのオイルの粘性が高くなりやすい場合には特に、上記粘性力を小さくできることにより、回転体アッシー100に対するオイルダンピング効果を有効に奏することができる。
そして、内輪21が、オイルフィルムダンパ50を介して、ロータシャフト10の回転に伴って連れ回りするように構成されている。具体的には、オイルフィルムダンパ50におけるフリクション(すなわち、内輪21とロータシャフト10との間のフリクション)は、ボールベアリング20におけるフリクション(すなわち、内輪21と外輪22との間のフリクション)よりも大きい。そのため、ロータシャフト10が回転すると、ボールベアリング20において内輪21と外輪22との間に相対回転が生じて、オイルフィルムダンパ50における内輪21とロータシャフト10との間に相対回転が抑制されるため、内輪21がオイルフィルムダンパ50のみを介してロータシャフト10の回転に伴って連れ回りすることができる。したがって、内輪21をロータシャフト10と連れ回りさせるために両者を係合させる機構を別途設ける必要がない。例えば、ロータシャフト10と内輪21とを係合させるためのねじ穴加工をロータシャフト10に施したり、内輪21の端部とオイルスリンガー8とを係合させるための加工を内輪21の端部に施したり、内輪21の端部とカラー13とを係合させるための加工を内輪21の端部やカラー13に施す必要がない。そのため、加工費用が不要となるとともに、回転体アッシー100の質量バランスの調整が容易となり、製造コストを低減できる。
また、ロータシャフト10へのねじ穴加工が不要となるため、ねじ穴加工を施す場合に比べてロータシャフト10の疲労強度の向上が図られる。そして、当該疲労強度の向上が図られるため、ロータシャフト10の径を大きくする必要がないことから、ボールベアリング20を小型化でき、オイルフィルムダンパ50とボールベアリング20との接触面積を小さくできる。その結果、両者の間に生じる粘性力を小さくすることができ、ターボチャージャ1の運転効率の向上を図ることができる。また、ロータシャフト10の高速回転によるねじのゆるみを考慮する必要がない。
また、本例では、内輪21は、ロータシャフト10の軸方向Xに沿って延びる筒状に形成され、ロータシャフト10には、内輪21の軸方向端部21b、21cに軸方向Xに対向する端部対向部80が設けられている。そして、軸方向端部21b、21c及び端部対向部80の少なくとも一方(本例では両方)には、オイルフィルムダンパ50から排出されたオイルを排出させるように切り欠かれてなるオイル排出溝219が形成されている。これにより、オイルフィルムダンパ50に供給されたオイルを、オイル排出溝219によって、オイルフィルムダンパ50から排出しやすくなり、ハウジング30内におけるオイルの循環が促される。そして、オイルフィルムダンパ50からの排油性が向上し、オイルフィルムダンパ50への注油性が向上する。その結果、オイルがハウジング30内に充満して、ハウジング30の外部に漏れ出ることを防止することができる。
なお、オイル排出溝219は、一カ所に設けることとしてもよいが、直径方向に一対設けたり、本例のように内輪21の直径方向に二対設けたりするなど、直径方向に対となるように複数設けることが好ましい。回転体アッシー100の重量バランスの調整が容易となるからである。
なお、オイルフィルムダンパ50からの排油のためには、必ずしもオイル排出溝219及びオイルスリンガー8の両方が形成されていることに限定されず、必要とされる排油性が確保されるのであれば、両者の少なくとも一方が形成されていれば良い。例えば、図5に示す変形例1のように、オイル排出溝219が形成されておらず、オイルスリンガー8が形成された構成であってもよい。変形例1では、オイルフィルムダンパ50に供給されたオイルは、内輪21の軸方向端部21bに形成された排出部形成部218を介してオイルスリンガー8に向けて排出され、オイルスリンガー8により、ロータシャフト10の径方向外側に飛散される。これにより、必要とされる排油性を確保できる。
また、例えば、図6に示す変形例2のように、オイル排出溝219が形成されており、オイルスリンガー8が形成されていない構成であってもよい。変形例2では、オイルフィルムダンパ50に供給されたオイルは、内輪21の軸方向端部21bに形成された排出部形成部218とオイル排出溝219とを介して、ロータシャフト10の径方向外側に飛散される。これにより、必要とされる排油性を確保できる。
以上のように、本例によれば、異音の発生防止や運転効率の向上が図られるとともに、製造コストの低減が図られるターボチャージャ用軸受機構1を提供できる。
1 ターボチャージャ用軸受機構
10 ロータシャフト
10c 外周面
100 回転体アッシー
11 タービンインペラ
12 コンプレッサインペラ
13 カラー
131、132 環状部材
20 ボールベアリング
21 内輪
21b、21c 軸方向端部
22 外輪
30 ハウジング
50 オイルフィルムダンパ
60 リテーナ
8 オイルスリンガー
80 端部対向部

Claims (2)

  1. 一端にタービンインペラが取り付けられ、他端にコンプレッサインペラが取り付けられたロータシャフトと、
    互いに回転可能に支持された内輪と外輪とを備えるボールベアリングと、
    上記外輪を保持するリテーナと、
    上記ロータシャフト、上記ボールベアリング及び上記リテーナを収納するハウジングと、
    を備え、
    上記内輪と上記ロータシャフトの外周面との間にはオイルが膜状に介在してオイルフィルムダンパが形成され、
    上記内輪は、上記オイルフィルムダンパを介して、上記ロータシャフトの回転に伴って連れ回りするように構成されていることを特徴とするターボチャージャ用軸受機構。
  2. 上記内輪は、上記ロータシャフトの軸方向に沿って延びる筒状に形成され、上記ロータシャフトには、上記内輪の軸方向端部に軸方向に対向する端部対向部が設けられ、上記軸方向端部及び上記端部対向部の少なくとも一方には、上記オイルフィルムダンパから排出されたオイルを排出するように切り欠かれてなるオイル排出溝が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のターボチャージャ用軸受機構。
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