JP2017037193A - 液晶フィルムの製造方法 - Google Patents

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崎 吾 郎 須
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谷 吉 弘 熊
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藤 正 直 後
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Abstract

【課題】ネマチックハイブリッド配向性が改善された液晶フィルムの製造方法、およびそれを用いた位相差板の提供。【解決手段】液晶フィルムの製造方法であって、液晶化合物を含んでなる重合性組成物を配向基板上に塗布し塗布膜を得る工程、塗布膜を、重合性組成物の液晶−等方相転移温度より3〜20℃低い温度範囲から選択される温度において、30秒以上加熱保持する、第1の加熱工程、第1の加熱工程で得られた塗布膜を、第1の加熱工程よりも5℃〜20℃低い温度範囲から選択される温度において、さらに30秒以上加熱保持する、第2の加熱工程、を含んでなり、第1および第2の加熱工程における多段階加熱保持により、液晶化合物をネマチックハイブリッド配向させる。【選択図】図1

Description

本発明は、液晶フィルムの製造方法に関する。
位相差板は、偏光(直線偏光、円偏光、楕円偏光)を得るために用いられる光学部材であり、液晶表示装置の色補償、視野角改良用途として、偏光板と1/4波長板とを組み合わせた有機EL表示装置用反射防止用途、コレステリック液晶等からなる右または左回りのどちらか一方の円偏光のみを反射する反射型偏光板用途等、多くの用途で用いられる。位相差板として、無機材料(方解石、雲母、水晶)を薄く切り出した板や固有複屈折率が高い高分子フィルムを延伸したフィルム、棒状あるいは円盤状液晶組成物を液晶状態において配向を固定化したフィルムが用いられている。このような位相差板として、特許文献1および2には、液晶化合物をネマチックハイブリッド配向した構造を固定化した液晶フィルムおよびこの製造方法が開示されている。
特許文献1および2において開示される製造方法により製造される液晶フィルムは、液晶化合物のネマチックハイブリッド配向が十分ではなく、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置などの表示装置に用いた際の外光反射防止効果には改善の余地があった。
特開2004−287417号公報 特開2003−287621号公報
本発明の目的は、上記問題に鑑みてなされたものであり、液晶化合物のネマチックハイブリッド配向性が改善された液晶フィルムの製造方法を提供することである。
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、液晶化合物を、所定条件下でネマチックハイブリット配向させることにより、上記の技術的課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明によれば、
液晶フィルムの製造方法であって、
液晶化合物を含んでなる重合性組成物を配向基板上に塗布し塗布膜を製造する工程と、
前記塗布膜を、前記重合性組成物の液晶−等方相転移温度より3〜20℃低い温度範囲から選択される温度において30秒以上加熱保持する、第1の加熱工程と、
第1の加熱工程で得られた塗布膜を、第1の加熱工程よりも5℃〜20℃低い温度範囲から選択される温度においてさらに30秒以上加熱保持する、第2の加熱工程と、
を含む多段階加熱工程からなり、
前記液晶化合物がネマチックハイブリッド配向していることを特徴とする、液晶フィルムの製造方法が提供される。
本発明の方法によれば、前記第2の加熱工程後、ネマチックハイブリッド配向させた液晶化合物の配向状態を固定化する工程をさらに含んでなることが好ましい。
本発明の方法によれば、液晶フィルムの液晶化合物の平均チルト角が10度〜40度であることが好ましい。
本発明の方法によれば、液晶フィルムの複屈折Δnが、可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有することが好ましい。
本発明の方法によれば、前記重合性組成物は、二色性色素を含んでなることが好ましい。
本発明の方法によれば、前記二色性色素の極大吸収波長は380〜780nmの波長領域にあることが好ましい。
本発明によれば、ネマチックハイブリッド配向性が改善された液晶フィルムからなる位相差板および偏光板を得ることができる。
本発明の方法における多段階の加熱保持を表す図である。 ネマチックハイブリッド配向した液晶フィルムの配向構造の概念図である。 液晶化合物のチルト角及びツイスト角を説明するための概念図である。 実施例1における液晶フィルムの複屈折Δnの波長分散特性を示す図である。 実施例1における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 実施例2における液晶フィルムの複屈折Δnの波長分散特性を示す図である。 実施例3における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 実施例4における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 実施例5における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 実施例6における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 実施例7における液晶フィルムの複屈折Δnの波長分散特性を示す図である。 実施例7における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 実施例8における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 実施例9における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 比較例1における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 比較例2における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 比較例3における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 比較例4における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 比較例5における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。 比較例6における光学フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果を示す図である。
[液晶フィルムの製造方法]
本発明による液晶フィルムの製造方法は、液晶化合物を含んでなる重合性組成物を配向基板上に塗布し塗布膜を形成する工程(工程1)と、配向基板上に塗布した塗布膜を、重合性組成物の液晶−等方相転移温度より3〜20℃低い温度範囲から選択される温度において、30秒以上加熱保持する、第1の加熱工程(工程2)と、第1の加熱工程後の塗布膜を、第1の加熱工程よりも5℃〜20℃低い温度範囲から選択される温度において、さらに30秒以上加熱保持する、第2の加熱工程(工程3)と、を含んでなる。一実施形態において、本発明の工程は、第1および第2の加熱工程以外に、第3以降の加熱工程を含んでいてもよい。図1にも示すような、第1の加熱工程および第2の加熱工程を含む多段階の加熱保持工程を経ることにより、液晶化合物のネマチックハイブリッド配向性が改善された液晶フィルムからなる位相差板を得ることができる。さらに、一実施形態において、本発明の方法は、ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物の配向状態を固定化する工程を含んでなる(工程4)。なお、本明細書において、ネマチックハイブリット配向とは、液晶分子のダイレクターがフィルムの膜厚方向から見て異なる角度を向いて整列している配向である。以下、各工程について説明する。
[工程1:重合性組成物の塗布工程]
液晶化合物を含んでなる重合性組成物を配向基板上に塗布する方法については、塗布膜の均一性を確保することのできる方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、液晶化合物と、重合性化合物と、重合開始剤と、溶媒とを、所望により混合した混合物を調製し、これをスピンコート法、ダイコート法、カーテンコート法、ディップコート法、ロールコート法などを利用して塗布することができる。塗布により形成する塗布膜塗布膜は、乾燥前の塗布膜の厚み(ウエット膜厚)が3〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。ウエット膜厚が3μm以上であれば、所望の光学特性を得るために重合性組成物中の固形分(液晶化合物等)の析出を抑制し、均一な液晶フィルムを得ることができ、また均一な塗布により、十分な平滑性を有する液晶フィルムを得ることができる。また、20μm以下であれば、所望の光学特性とするための重合性組成物中の固形分の濃度が低くなるため、塗布後の乾燥時間を短縮することができる。
<重合性組成物>
重合性組成物としては、重合により液晶化合物がネマチックハイブリッド配向した状態を固定化することができるものであれば特に制限されない。本発明における重合性組成物は、
(1)1種または2種以上の重合性基を有する液晶化合物(重合性液晶化合物)からなるもの、
(2)重合性基を有さない液晶化合物および重合性基を有する非液晶化合物を含んでなるもの、
(3)重合性基を有する液晶化合物および重合性基を有する非液晶化合物を含んでなるもの、および
(4)重合性基を有する液晶化合物および重合性基を有さない液晶化合物を含んでなるもののいずれであってもよい。
<液晶化合物>
本発明においては、液晶化合物として、重合性液晶化合物を適宜利用できる。重合性液晶化合物としては、配向基板上においてネマチックハイブリッド配向させて、その配向状態を固定化し得ることが好ましい。重合性液晶化合物としては、例えば、低分子の重合性液晶化合物、高分子の重合性液晶化合物、及びこれらの混合物等を適宜利用することができる。
重合性液晶化合物としては、配向状態をより効率よく固定化できるといった観点から、光及び/又は熱により反応する重合性基を有する液晶化合物が好ましい。また、重合性基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、アジリジニル基等が好ましい。なお、このような重合性基としては、反応条件等によっては、例えば、イソシアナート基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、カルボキシル基等の他の重合性基を使用してもよい。
また、重合性液晶化合物は、入手容易性、耐熱性、取扱い容易性の観点から、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系液晶化合物が好ましい。
また、本発明では、液晶フィルムのリターデーション(Δn・d)が、下記数式(1)および(2)を満足することが好ましい。ここで、リターデーションとは、液晶フィルムの複屈折Δnと膜厚(d)の積である。
0.80<Δn・d(500)/Δn・d(550)<1.00 (1)
1.00<Δn・d(600)/Δn・d(550)<1.15 (2)
上記数式(1)を満足する化合物としては、二種類以上のメソゲン基を有する重合性液晶化合物が知られており、そのうち少なくとも一つのメソゲン基を液晶層の平行(ホモジニアス)配向の遅相軸に対して略直交方向に配向させることで、長波長になるほど、位相差が大きくなる。ここで、メソゲン基のメソゲンは、中間相(=液晶相)形成分子(「液晶辞典」、日本学術振興会、情報科学用有機材料第142委員会、液晶部会編、1989年)とも称され、液晶性分子構造とほぼ同義である。
メソゲン基の例として、ビフェニル、フェニルシクロヘキシル、シクロヘキシルフェニル、フェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシル、シクロヘキシルカルボニルオキシフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシシクロヘキシルオキシカルボニルフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシルカルボニルオキシフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルアミノカルボニルフェニル、フェニルエテニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニルエチニレンフェニル、フェニルエテニレンカルボニルオキシビフェニルおよびフェニルエテニレンオキシフェニルエチニレンフェニルが挙げられる。
メソゲン基(メソゲン基を構成するベンゼン環やシクロヘキサン環)は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記した重合性基またはその誘導体が好ましい。二種類のメソゲン基の組み合わせとしては、一方のメソゲン基が、ビフェニル、フェニルシクロヘキシル、シクロヘキシルフェニル、フェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシル、シクロヘキシルカルボニルオキシフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシシクロヘキシルオキシカルボニルフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシルカルボニルオキシフェニルおよびフェニルカルボニルオキシフェニルアミノカルボニルフェニルからなる群より選ばれ、他方のメソゲン基が、フェニルエテニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニルエチニレンフェニル、フェニルエテニレンカルボニルオキシビフェニルおよびフェニルエテニレンオキシフェニルエチニレンフェニルからなる群より選ばれることが特に好ましい。
二種類以上のメソゲン基を有する化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
また、液晶化合物のツイストネマチック配向を誘起するためには、液晶組成物中にカイラル剤を添加するか、あるいは液晶組成物中に少なくとも1種のカイラルな構造単位を有する液晶化合物または非液晶化合物を配合することが特に望ましい。
カイラルな構造単位としては、例えば光学活性な2−メチル−1,4−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1,4−ブタンジオール、2−フルオロ−1,4−ブタンジオール、2−ブロモ−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−プロピル−1,4−ブタンジオール、3−メチルヘキサンジオール、3−メチルアジピン酸、ナプロキセン誘導体、カンファー酸、ビナフトール、メントールあるいはコレステリル基含有構造単位またはこれらの誘導体(例えばジアセトキシ化合物などの誘導体)から誘導される単位を利用することができる。上記のジオール類はR体、S体のいずれでも良く、またR体およびS体の混合物であっても良い。なお、これら構造単位は、あくまでも例示であって本発明はこれによって何ら制限されるものではない。またオリゴマーや低分子液晶であっても、架橋性基の導入あるいは適宜な架橋剤のブレンドによって、液晶状態あるいは液晶転移温度以下に冷却して配向固定化された状態で、熱架橋あるいは光架橋等の手段により高分子化できるものも液晶高分子に含まれる。
二種類以上のメソゲン基を有する液晶化合物は、市販品を利用してもよく、一般的な合成方法を応用して合成することができる。例えば、1)最初に出発原料の官能基変換により二種類以上のメソゲン基の一つを導入した後、同様に官能基変換により他のメソゲン基を続けて導入する順次導入法、2)出発原料の官能基変換により同時に二種類以上のメソゲン基を導入する同時導入法、あるいは3)順次導入法と同時導入法との併用法を採用できる。このように、二種類以上のメソゲン基を有する化合物を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、特開2002−267838号公報に記載された方法を採用してもよい。このように、重合性液晶化合物は、その利用する化合物の種類に応じて公知の方法を適宜利用して製造することができる。このような重合性液晶化合物は1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせた混合物として用いてもよい。また、液晶化合物を2種以上組み合わせる場合、全ての液晶化合物が液晶性を示す必要はなく、混合物が液晶性を示せばよい。
重合性組成物は、重合性基を有する液晶化合物と液晶性を示さない重合性化合物との混合物を利用してもよい。このような液晶性を示さない重合性化合物としては、重合性基を有する液晶化合物との相溶性を有し、かつ該液晶化合物を配向させる際に配向阻害を引き起こすようなものではない限り特に限定されない。このような液晶性を示さない重合性化合物としては、例えば、エチレン性不飽和基(例えばビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基)等の重合性官能基を有する化合物等が挙げられる。このような液晶性を示さない重合性化合物の添加量は、重合性基を有する液晶化合物と液晶性を示さない他の重合性モノマーの総量に対して0.5〜50重量%とすることが好ましく、1〜30重量%とすることが好ましい。
<二色性色素>
配向基板上に塗布される重合性組成物は、二色性色素を含んでなることが好ましい。
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。二色性色素は、染料であっても顔料であってもよく、染料と顔料の混合物であってもよい。二色性色素を用いることで、得られる液晶フィルムの長波長側の波長分散性を改善し、位相差フィルムとして好適に用いることができる。
二色性色素は、重合性官能基を有していてもよく、液晶性を有していてもよい。重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニロキシ基、エポキシ基、オキセタニル基が好ましく、反応性の観点からアクリル基、エポキシ基、オキセタニル基が特に好ましい。液晶性については、ネマチック相、スメクチック相を有するものが好ましい。
二色性色素は、380〜780nmの範囲に極大吸収波長(λmax)を有するものが好ましく、400〜750nmがより好ましく、450〜700nmがさらに好ましく、540〜620nmが最も好ましい。本発明の方法により得られる積層偏光板を画像表示装置などの表示装置に適用する場合は、表示装置の光源の発光スペクトルを考慮して、極大吸収波長を選択するほうが好ましい。
有機EL表示装置の赤青緑の3色の発光スペクトルは、青色光は波長約460nmに、緑色光は波長530nmに、赤色光は波長630nmに極大値を示す発光スペクトルを有する。有機EL表示装置に、本発明の方法により得られる位相差板を適用する場合、二色性色素による吸収は避けられないが、この吸収による透過率低下を最小限に抑えるには、3色の発光スペクトルの極大波長と異なる極大吸収波長を有する二色性色素を選択することが好ましい。例えば、580nm近辺に極大吸収波長を有する二色性色素を適用することが好ましい。他の画像表示装置においても同様であり、光源にLEDを使用した液晶表示装置においては、LEDのの極大波長と異なる極大吸収波長を有する二色性色素を用いることで、透過率低下を抑制することができる。二色性色素の極大吸収波長と表示装置の発光スペクトルの極大波長との差は5nm以上、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。5nm以上であれば、波長を外すことによる透過率低下を抑制することができる。
二色性色素の二色比は、色素分子の長軸方向における最大吸収波長での吸光度と短軸方向の吸光度の比で定義され、二色性色素の配向方向の吸光度と配向方向と垂直方向の吸光度を測定することで求めることが可能である。二色性色素の二色比は、好ましくは2以上50以下、更に好ましくは5以上30以下である。
二色性色素は、例えば、アクリジン色素、アジン色素、アゾメチン色素、オキサジン色素、シアニン色素、メロシアニン色素、スクアリリウム色素、ナフタレン色素、アゾ色素、アントラキノン色素、ベンゾトリアゾール色素、ベンゾフェノン色素、ピラゾリン色素、ジフェニルポリエン色素、ビナフチルポリエン色素、スチルベン色素、ベンゾチアゾール色素、チエノチアゾール色素、ベンゾイミダゾール色素、クマリン色素、ニトロジフェニルアミン色素、ポリメチン色素、ナフトキノン色素、ペリレン色素、キノフタロン色素、スチルベン色素、インジゴ色素などが挙げられる。中でも、二色性色素は、アントラキノン色素およびアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素、トリスアゾ色素およびこれらの系列の色素の誘導体が例示される。
二色性色素は下記式(1)で表されるもの(以下、場合により「アゾ色素(1)」という。)が特に好ましい。
式(1)中、nは1から4の整数である。Ar及びArは、それぞれ独立に下記に示す基から選ばれる。
Arは下記に示す基から選ばれ、式(1)中のnが2以上の場合は、Arは互いに同一でも異なっていてもよい。
及びAは、それぞれ独立に下記に示す基から選ばれる。
(mは0〜10の整数であり、同一の基中にmが2つある場合、この2つのmは互いに同一でも異なっていてもよい。)
アゾ色素(1)のアゾベンゼン部位の位置異性は、トランスであることが好ましい。
アゾ色素(1)としては例えば、式(1−1)〜式(1−36)でそれぞれ表される化合物などが挙げられる。
アントラキノン色素としては、式(1−37)で表される化合物が好ましい。
式(1−37)中、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、−Rx、−NH、−NHRx、−NRx、−SRx、−OH又はハロゲン原子を表す。Rxは、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。
アクリジン色素としては、式(1−38)で表される化合物が好ましい。
式(1−38)中、R16〜R23は、互いに独立に、水素原子、−Rx、−NH、−NHRx、−NRx、−SRx又はハロゲン原子を表す。Rxは、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。
オキサゾン色素としては、式(1−39)で表される化合物が好ましい。
式(1−39)中、R〜R15は、互いに独立に、水素原子、−Rx、−NH、−NHRx、−NRx、−SRx、−OH又はハロゲン原子を表す。Rxは、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。
以上の式(1−37)、式(1−38)及び式(1−39)において、Rxの炭素数1〜6のアルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などであり、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基及びナフチル基などである。
シアニン色素としては、式(1−40)で表される化合物及び式(1−41)で表される化合物が好ましい。
式(1−40)中、D及びDは、互いに独立に、下記式(1−40a)〜式(1−40d)のいずれかで表される基を表し、n5は1〜3の整数を表す。
式(1−41)中、D及びDは、互いに独立に、式(1−41a)〜式(1−41h)のいずれかで表される基を表し、n6は1〜3の整数を表す。
以上、液晶フィルムが含有する二色性色素について、その好ましい例を説明したが、中でも、アゾ色素(1)であることが好ましく、互いに異なる極大吸収波長を有するアゾ色素(1)を2種以上含有してもよい。
二色性色素の含有量は、その種類などに応じて適宜調節することが好ましいが、例えば、重合性化合物100重量部に対して、0.1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上20重量部以下であることがより好ましく、0.1重量部以上10重量部以下であることがさらに好ましい。二色性色素の含有量が、この範囲内であれば、液晶化合物の配向を乱すことなく、重合性化合物の重合や成膜を行うことができる。また、二色性色素の含有量が50重量部以下であれば、色素の吸収による液晶フィルムの透過率の低下を抑制することができる。二色性色素の含有量が0.1重量部以上であれば、屈折率を制御し、十分な光学特性を得ることができる。そのため、液晶化合物が配向を保持できる範囲で、二色性色素の含有量を定めることもできる。なお、2種以上の二色性色素を使用する場合は、二色性色素の含有量は使用した二色性色素の合計の含有量である。
<重合開始剤>
重合性組成物は重合開始剤を含んでいてもよい。この重合開始剤は特に制限されるものではなく、熱重合開始剤や、光重合開始剤などの公知の重合開始剤を適宜利用することができる。
光重合開始剤としては、市販品を利用してもよく、例えば、Ciba−Geigy社製の光重合開始剤(商品名「イルガキュア907」、商品名「イルガキュア651」、商品名「イルガキュア184」)や、Union Carbide社製の光重合開始剤(商品名「UVI6974」)等を適宜使用してもよい。なお、光重合開始剤は、光又は電子線の照射により、自由ラジカルを生成するものや、イオンを生成するもの等があるが、組成物中の重合性液晶化合物の種類や重合反応の条件等に応じて、自由ラジカルを生成する光重合開始剤(例えば、Ciba−Geigy社製の商品名「イルガキュア651」等)や、イオンを生成する光重合開始剤(例えば、Union Carbide社製の光重合開始剤(商品名「UVI6974」))の中から好適なものを適宜選択して利用すればよい。
重合性組成物における重合開始剤の含有量としては、重合性組成物100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましく、3〜5重量部であることがより好ましい。重合開始剤の含有量が上記数値範囲内であれば、得られる液晶フィルムの硬化性が十分であり、また、液晶化合物の配向に欠陥を生じるのを抑制することができる。
<溶媒>
配向基板上に塗布される混合物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、液晶化合物および二色性色素などを溶解でき適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限はない。例えば、乾燥速度、環境への有害性および液晶化合物および二色性色素などの溶解性などの観点から、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、酢酸2−メトキシエチル、トルエン、ザイレン、メトキシベンゼン、1,2−メトキシベンゼン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、γ-ブチロラクトンが好ましく、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、γ-ブチロラクトンがより好ましい。なお、溶媒は1種を単独であっても、2種以上を組み合わせて利用してもよい。また、溶媒の種類によっては配向基板の腐食が生じる場合もあることから、配向基板の種類に応じて好適な溶媒を適宜選択して利用することが好ましい。
また、溶媒の含有量は、組成物の使用方法(例えば液晶フィルムを形成するために使用する場合には、その厚さの設計や塗布方法等も含めた使用方法等)等によって、適宜調整することができる。例えば、重合性組成物における溶媒の含有量は、30〜98重量%であることが好ましく、50〜95重量%であることがより好ましく、70〜90重量%であることが更に好ましい。溶媒の含有量が30重量%以上であれば、液晶化合物および二色性色素の混合物に対する溶媒の量が確保されるため、保管中に液晶化合物が析出するのを抑制したり、混合物の粘度が高くなって湿潤性が低下するのを抑制することができる。また、液晶フィルムの製造時の塗布を良好に行うことができるため、生産性を向上させることができる。また、溶媒の含有量が95重量%以下であれば、溶媒の除去が短時間で完了するため、生産性が低下するのを抑制することができる。さらに、重合性組成物を配向基板上に塗布した場合に表面の流動性を抑えるため、均一な品質の位相差板を製造することができる。また、配向基板上に均一な塗布膜塗布膜を形成するために、反応活性化剤、増感剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤などを溶液に添加してもよい。
<配向基板>
配向基板としては、その表面が平滑なものが好ましく、有機高分子材料からなるフィルムやシート、ガラス板、金属板などを使用することができる。有機高分子材料の例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスルフォン、環状ないしノルボルネン構造を有するシクロポリオレフィン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。配向基板は、液晶フィルムと配向基板との積層体を、そのまま光学フィルムとして用いる等、その用途等に応じて、位相差機能等の光学機能を有していてもよい。更に、このような配向基板は、一軸延伸したものであっても二軸延伸したものであってもよい。
配向基板の配向能が不十分、または配向能を示さない等の場合、必要に応じて、配向基板の加熱延伸、ラビング処理、配向膜の設置、斜方蒸着処理等を行うことにより、配向基板の配向能を高めてもよい。
また、表面に規則的な微細溝を設けたアルミニウム、鉄、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属板や各種ガラス板等、あるいはそれらを元型として、フィルム表面に規則的な微細溝を熱転写したものや、UV硬化型の樹脂などを使用してフィルム表面や元型表面の規則的な微細溝を転写したものも配向基板として使用することができる。
[工程2:第1の加熱工程]
第1の加熱工程で使用される装置は、一定の温度、具体的には、重合性組成物の液晶−等方相転移温度より3〜20℃低い温度範囲から選択される温度において、30秒以上の間、配向基板上の塗布膜を加熱保持することができるものであれば、特に限定されることなく使用することができる。例えば、ホットプレート、ヒーター(炉)や温風発生装置などを使用することができる。なお、本明細書において、「一定の温度」とは、設定温度をT(℃)とした場合、温度がT±1.5℃の範囲にあることをいう。
第1の加熱工程における加熱温度は、重合性組成物の液晶−等方相転移温度より3〜20℃低い温度範囲から選択される温度において行われ、より好ましくは、重合性組成物の液晶−等方相転移温度より4〜18℃低い温度、さらに好ましくは、5〜15℃低い温度において行われる。第1の加熱を上記温度において行うことにより、液晶フィルム中の液晶化合物のネマチックハイブリッド配向性を改善することができ、有機EL表示装置などの表示装置に用いた際に、良好な外光反射防止効果を発揮する。
第1の加熱工程における加熱保持時間は、30秒以上であるが、より好ましくは、30〜1000秒であり、さらに好ましくは、40〜500秒である。加熱保持時間を上記数値範囲とすることにより、液晶フィルム中の液晶化合物のネマチックハイブリッド配向性を改善することができ、有機EL表示装置などの表示装置に用いた際に、良好な外光反射防止効果を発揮する。
第1の加熱工程における圧力条件としては、特に制限されないが、600〜1400hPaであることが好ましく、900〜1100hPaであることがより好ましい。圧力条件が600hPa以上であれば、溶媒の乾燥が緩慢であり、乾燥ムラが生じるのを抑制することができる。また、圧力条件が1400hPa以下であれば、溶媒の乾燥にかかる時間を低減することができる。
[工程3:第2の加熱工程]
第2の加熱工程に使用される装置は、第1の加熱工程において使用される装置と同様に、一定の温度、具体的には、第1の加熱工程における温度より5〜20℃低い温度範囲から選択される温度において、30秒以上の間、配向基板上の混合物を加熱保持することができるものであれば、特に限定されることなく使用することができる。
第2の加熱工程における加熱温度は、第1の加熱工程における温度より5〜20℃低い温度範囲から選択される温度において行われ、より好ましくは、混合物の相転移温度、第1の加熱工程における温度より7〜18℃低い温度、さらに好ましくは、8〜15℃低い温度において行われる。第2の加熱を上記温度において行うことにより、液晶フィルム中の液晶化合物のネマチックハイブリッド配向性を改善することができ、有機EL表示装置などの表示装置に用いた際に、良好な外光反射防止効果を発揮する。
第2の加熱工程における加熱保持時間は、30秒以上であるが、より好ましくは、30〜1000秒であり、さらに好ましくは、40〜500秒である。加熱保持時間を上記数値範囲とすることにより、液晶フィルム中の液晶化合物のネマチックハイブリッド配向性を改善することができ、有機EL表示装置などの表示装置に用いた際に、良好な外光反射防止効果を発揮する。
第2の加熱工程における圧力条件としては、特に制限されないが、600〜1400hPaであることが好ましく、900〜1100hPaであることがより好ましい。圧力条件が600hPa以上であれば、溶媒の乾燥が緩慢であり、乾燥ムラが生じるのを抑制することができる。また、圧力条件が1400hPa以下であれば、溶媒の乾燥にかかる時間を低減することができる。
一実施形態において、多段階の加熱保持後、配向基板上の混合物を冷却することが好ましい。この冷却により、配向基板上の液晶化合物の配向をより固定化しやすくなる。冷却工程の冷却速度は、室温に放置して冷却される自然冷却より速ければよく、具体的には20℃/分以上であればよい。
[工程4:配向の固定化工程]
重合性組成物を重合して液晶化合物の配向状態を固定化する方法としては、用いる重合性組成物や重合開始剤の種類等に応じて、重合が可能な公知の方法を適宜採用することができる。配向状態の固定化の方法としては、例えば、重合性組成物に含まれる重合開始剤の種類等に応じて、光照射及び/又は加熱処理を施すことにより、重合性化合物などが有する重合性基を反応させて液晶化合物をネマチックハイブリッド配向状態のまま固定化する方法が挙げられる。
重合開始剤が光の照射により開始剤としての機能を発現するようなものである場合には、光照射によりネマチックハイブリッド配向状態を固定化することが好ましい。光照射の方法としては特に制限されず、例えば、用いる重合開始剤の吸収波長領域にスペクトルを有する光源(例えば、10mW/cm以上の照度を有する、メタルハライドランプ、中圧或いは高圧水銀灯(中圧或いは高圧水銀紫外ランプ)、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザーなど)を用いて、光源からの光を照射する方法が挙げられる。
光照射において光の積算照射量としては、波長365nmでの積算露光量として、10〜2000mJ/cmであることが好ましく、100〜1500mJ/cmであることがより好ましい。ただし、重合開始剤の吸収領域と、光源のスペクトルが著しく異なる場合や、重合性液晶化合物自体に光源波長光の吸収能がある場合等は、この限りではない。これらの場合には、より効率よく配向状態を維持したまま、塗布膜を硬化させるという観点から、適当な光増感剤や、吸収波長の異なる2種以上の重合開始剤を混合して用いてもよい。また、光照射の温度条件は、液晶化合物がネマチックハイブリッド配向の配向状態を維持できる温度範囲とすればよく、特に制限されない。なお、光照射時に、塗布膜の表面温度が液晶温度の範囲を維持できるように、基板と光源との間には、コールドミラーやその他の冷却装置を設けてもよい。
さらに、光照射時の雰囲気の条件は、特に制限されず、大気雰囲気であっても或いは反応効率を高めるために酸素を遮断した窒素雰囲気下であってもよい。なお、雰囲気中の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させた雰囲気で光照射することが好ましい。このような場合の雰囲気ガス中の酸素濃度としては、10容量%以下であることが好ましく、7容量%以下であることがさらに好ましく、3容量%以下であることが最も好ましい。
また、重合開始剤が熱により開始剤としての機能を発現するようなものである場合には、加熱処理によりネマチックハイブリッド配向の配向状態で配向を固定化することが好ましい。加熱処理の条件としては、特に制限されず、重合開始剤の種類に応じて、配向状態が十分に維持されるように温度条件を選択すればよく、公知の条件を適宜採用することができる。なお、配向基板が耐熱性の低いものである場合には、重合開始剤として光の照射により開始剤としての機能を発現するものを用いることが好ましい。
以上のような工程により、配向基板上に製造した液晶フィルムは、充分強固な膜となっている。具体的には、硬化反応によりメソゲンが3次元的に結合され、硬化前と比べて耐熱性(液晶配向保持の上限温度)が向上するのみでなく、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐クラック性などの機械的強度に関しても大幅に向上する。
ネマチックハイブリッド配向の確認方法としては、公知の方法を適宜採用でき、特に制限されるものではないが、一対の直交偏光板(一方の偏向板の偏向方向と、もう一方の偏向板の偏向方向が直交する一対の偏光板)の間に液晶フィルム(基板との積層体の状態であってもよい)を配置した試料の透過光を肉眼で確認する方法や、偏光顕微鏡を用いて確認する方法を採用してもよい。肉眼で確認する場合は、正面から見た時のバックライト上に前記試料を配置し、バックライトからの透過光強度が最も弱くなるように試料角度を調整し、遅相軸を軸にして斜めから観察した際に透過光強度が強くなり、進相軸を軸にして斜めから観察した際に透過光強度が弱いままであることを確認することで、ネマチックハイブリッド配向の有無を確認することができる。また、ネマチックハイブリッド配向液晶フィルムは、光の入射角に応じてリターデーションの特性が異なることから、液晶フィルムの表面に対して垂直方向のリターデーションと垂直方向から特定の角度に光の入射角を傾けた場合のリターデーションを測定することが可能な複屈折測定装置(例えばAxo−metrix社製の商品名「Axoscan」、王子計測機器社製の商品名「KOBRA−21ADH」等)を用いて、視野角0度(液晶フィルムに対して垂直方向)から視野角がより大きくなる方向に角度を適宜変更しながらリターデーションの測定を行い、複数の視野角において前記試料のリターデーションをそれぞれ求め、液晶フィルムの表面に対して垂直方向においてリターデーションが確認され、さらに視野角がより大きくなる方向におけるリターデーションが、視野角の−方向と+方向との値が非対称性を示すこと、を確認することで、ネマチックハイブリッド配向の有無を確認する方法を採用してもよい。
<位相差板>
本発明の方法により得られる液晶フィルムは、位相差板として用いることができる。液晶フィルムの配向は、フィルムのリターデーション測定により測定できる。液晶が配向している状態では、測定波長550nmにおけるリターデーションが20nm以上を示す。
位相差板は、複屈折Δnが、可視光領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有することが好ましい。より具体的には、500nm、550nm、600nmにおける位相差板のリターデーションをΔn・d(500)、Δn・d(550)、Δn・d(600)としたとき、下記式(1)および(2)を満たすことが好ましく、下記式(1−1)および(2−1)を満たすことがより好ましい。
0.80<Δn・d(500)/Δn・d(550)<1.00 (1)、
1.00<Δn・d(600)/Δn・d(550)<1.15 (2)
0.90<Δn・d(500)/Δn・d(550)<0.98 (1−1)
1.02<Δn・d(600)/Δn・d(550)<1.10 (2−1)
である。液晶フィルムが上記リタ−デーション特性を有することにより、例えば、1/4波長板として使用する場合においては、400〜700nmの直線偏光をこのフィルムに入射した際、広い波長領域において理想に近い円偏光を得ることができる。
液晶フィルムが二色性色素を含んでなる場合、液晶フィルムの法線方向での所定波長におけるリターデーション比が、二色性色素を含まない液晶フィルムの法線方向での所定波長におけるリターデーション比よりも大きくすることにより、複屈折Δnがより理想に近い「負の分散」特性を有するような位相差板を実現できる。
図2にネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムの断面構造、液晶フィルム表面の法線に対する液晶化合物のダイレクターと鉛直方向からの入射光の入射角θ(度)と、液晶フィルム表面の法線に対する液晶化合物のダイレクターと水平方向からの入射光の入射角θ(度)(入射角−θ(度))とを示す。ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムにおいて、液晶化合物のダイレクターは膜厚方向のすべての場所において異なる角度を向いている。したがって、液晶フィルムは全体として見たとき光軸が存在しない。図3に液晶化合物のチルト角、ツイスト角を示す。なお、液晶フィルムのチルト方向(軸)とは、図2に示すようにb面側から液晶フィルムを通してc面を見た際に、液晶化合物ダイレクターとダイレクターのc面への投影成分が成す角度が鋭角となる方向で、かつ投影成分と平行な方向をチルト方向(軸)と定義する。
ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムにおいては、液晶フィルムの一方のフィルム界面付近における液晶化合物のダイレクターがフィルム平面と成す角度の絶対値は、好ましくは20度〜90度、より好ましくは30度〜70度であり、当該フィルム面の反対のフィルム界面付近にけるダイレクターとの角度の絶対値は、好ましくは0度〜50度、より好ましくは0〜30゜である。また、当該ネマチックハイブリッド配向構造における平均チルト角の絶対値は、好ましくは10度〜40度、より好ましくは12度〜38度、最も好ましくは15度〜35度である。平均チルト角が、上記の数値範囲内にあれば、偏光板と組み合わせて液晶表示装置や有機EL表示装置に備えた際に反射視野角特性を向上することができる。ここで平均チルト角とは、液晶フィルムの膜厚方向における液晶化合物のダイレクターとフィルム平面との成す角度の平均値である。
また、本発明の位相差板は、ツイストネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムであってもよい。ツイストネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムとは、液晶化合物のダイレクターが、その一方の面から他方の面にかけて光学異方軸がツイストした構造を有する。従って、本位相差板は、光学的に異方性を持った層をその光学異方軸が連続的にツイストするように多層重ね合わせたものと同等の特性を有し、通常のTN(ツイステッドネマチック)液晶セルやSTN(スーパーツイステッドネマチック)液晶セル等と同様に、フィルムの法線方向から見た場合、リターデーション値とねじれ角を有している。更に、ツイストネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムは、液晶化合物のダイレクターが、その一方の面から他方の面にかけて、面内方向に光学異方軸がツイストしながら、膜厚方向で異なる角度で傾斜したフィルムである。当該配向構造におけるツイスト角としては、絶対値として好ましくは0度〜70度、より好ましくは0度〜60度、最も好ましくは0度〜59度である。ツイスト角が上記の数値範囲内にあれば、偏光板と組み合わせて液晶表示装置や有機EL表示装置に備えた際にコントラストや反射防止性能等、正面から見た場合の表示特性を向上することができる。ここでツイスト角とは、なお、ツイストの向きには2種類あるが、右ツイストであってもよく、左ツイストであってもよい。
このようなツイスト角、チルト角は、複屈折を測定することが可能な装置(例えばAxometrix社製の商品名「Axoscan」、王子計測機器社製の商品名「KOBRA−21ADH」等)を用いて測定した値から算出することができる。
液晶フィルムの厚みとしては、用途や求める特性によっても異なるものではあるが、0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜5μmであることがより好ましい。このような液晶フィルムの厚みが0.1μm以上であれば、所望の位相差を発現でき、10μm以下であれば、液晶の配向性の低下を抑制したり、色素による透過率の低下を抑制することができる。
このような液晶フィルムの複屈折Δnは、用途や求める特性によっても異なるものではあるが、0.005〜0.5であることが好ましく、0.01〜0.3であることがさらに好ましい。複屈折Δnが上記の範囲であれば、フィルムを所望の位相差とした場合に厚さを10μm以下とできるので位相差板、偏光板として好適に用いることができる。
<偏光板>
本発明の方法により得られる位相差板は、偏光子と組み合わせることにより、偏光板として用いることができる。偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性材料(沃素、染料)を吸着・配向したものが好適に用いられる。偏光子の厚さは特に制限されないが、5〜80μm程度が一般的である。
偏光板は、位相差板及び偏光子を、それぞれ粘着剤層を介して互いに貼り合わせることにより作製することができるが、該液晶フィルムからなる位相差板であれば、重合性組成物を、直接、ないしは、配向膜等を介して偏光子上に塗布、配向固定化することにより作製することができる。粘着剤層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものを好ましく用いることができる。
本発明の方法により得られる位相差板は、ネマチックハイブリッド配向を固定化した液晶フィルムであることから、当該フィルムの上下は光学的に等価ではない。したがって、液晶フィルムのどちらのフィルム面を偏光板側にするのかによって、また液晶セル等の光学パラメーターとの組合せによって、表示性能が異なる。よって、本発明の方法により得られる位相差板を偏光板に用いる際は、要求される光学特性、表示特性等を考慮して、配置条件等を決定することが望ましい。
<表示装置>
本発明の方法により得られる位相差板は、画像表示装置に適用することができる。画像表示装置の種類は特に制限されず、液晶表示装置や有機EL表示装置、プラズマディスプレイ等のような公知の画像表示装置を適宜利用することができる。また、上記本発明の位相差板を画像表示装置に配置する方法等も特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができる。
本発明の方法により得られる位相差板を適用する液晶表示装置について説明する。
液晶表示装置は、少なくとも位相差板を有する。液晶表示装置は一般的に、偏光子、液晶セル、および位相差板、反射層、光拡散層、バックライト、フロントライト、光制御フィルム、導光板、プリズムシート等の部材から構成されるが、本発明においては位相差板を使用する点を除いて特に制限は無い。また位相差板の使用位置は特に制限はなく、1カ所でも複数カ所でも良い。また、他の位相差板と組み合わせて使用することもできる。
本発明の方法により得られる位相板を備える液晶表示装置は、位相差板が所望の複屈折波長分散特性を有することから、その特性に応じて、例えば、液晶表示装置の視野角を十分に広げたり、輝度を十分に向上させたりすること等が可能となり、これにより視野角向上や画質向上を十分に図ることができる。
本発明の方法により得られる位相差板を備える有機EL表示装置について説明する。
一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して有機EL発光層を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
例えば、有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることで、金属電極での反射光を抑制することができる。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ直線偏光子と位相差板を組み合わせて円偏光板を形成することにより、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
この有機EL表示装置に入射する外部光は、直線偏光子により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも直線偏光子と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、直線偏光子の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。前記偏光板の吸収軸と前記1/4波長板の遅相軸とのなす角度は、本発明の位相差板がネマチックハイブリッド配向の場合は、好ましくは40度〜50度、より好ましくは42度〜48度、更に好ましくは略45度の範囲である。上記数値範囲内であれば、十分な反射防止効果が得られ、画質の低下を抑制できる。本発明の位相差板がツイストネマチックハイブリッド配向の場合は、ツイスト角により、前記偏光板の吸収軸と前期1/4波長板の遅相軸とのなす角度を変えて設定する必要があり、一概に範囲を規定することは難しい。
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例で用いた各分析方法は以下の通りである。
(1)液晶化合物の配向状態
偏光顕微鏡(オリンパス光学社製、型番:BH2)を用いて液晶の配向状態を観察した。
(2)複屈折、波長分散、ツイスト角、チルト角測定
自動複屈折計(Axometrics社製、商品名:Axoscan)を用いた。
(実施例1)
[工程1:重合性組成物の塗布]
下記式で表される示される液晶化合物(21)、二種類以上のメソゲン基を有する液晶化合物(22)、およびアクリル系液晶化合物(BASF社製、商品名:LC242)をそれぞれ準備した。なお、液晶化合物(21)と二種類以上のメソゲン基を有する液晶化合物(22)は、特開2002−267838号公報に記載された方法により製造した。
次に、液晶化合物(21)40.0重量部、液晶化合物(22)18.0重量部、アクリル系液晶化合物42.0重量部を混合し、液晶混合物を得た。
次いで、液晶混合物100重量部に対して、二色性色素(長瀬産業社製、商品名:G−241、トリスアゾ色素、極大吸収波長560nm)0.08重量部を添加し、更に、重合開始剤(BASF社製、商品名:イルガキュア651、室温(25℃)条件下で固体)を3重量部添加し、さらに溶媒としてクロロベンゼンを加え、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルター(アドバンテック東洋株式会社製、商品名:25JP050AN)で不溶分をろ過して、重合性組成物を得た。該重合性組成物の溶媒含有量は67重量%であり、液晶−等方相転移温度は105℃であった。
配向基板は以下のようにして調製した。PENフィルム(帝人株式会社製、商品名:Q02、膜厚38μm)を15cm角に切り出し、アルキル変性ポリビニルアルコール(PVA:クラレ株式会社製、商品名:MP−203)の5重量%溶液(溶媒は、水とイソプロピルアルコールの重量比1:1の混合溶媒)をスピンコート法により塗布し、50℃のホットプレート(アズワン社製、型番:HP−A2234M)で30分乾燥した後、120℃のオーブンで10分間加熱した。次いで、レーヨンのラビング布でラビングし、PVA配向基板(PVA/PEN)を得た。得られたPEN配向基板のPVA層の膜厚は1.2μmであった。なお、ラビング時の周速比(ラビング布の移動速度/基板フィルムの移動速度)は4とした。
上記PEN配向基板に、重合性組成物をスピンコート法により塗布して、塗布膜(ウエット膜厚:5μm)を形成した。
[工程2:第1の加熱工程]
塗布膜とPEN配向基板との積層体を、圧力:1013hPa、表面温度98℃のホットプレート上に180秒間静置した。
[工程3:第2の加熱工程]
次いで、表面温度88℃に設定した別のホットプレートに第1の加熱工程で得られた塗布膜を移し、180秒間静置することで塗布膜から溶媒を除去し、液晶化合物を配向させた。後、室温(25℃)まで急冷した(0.5℃/秒)。
[工程4:配向の固定化工程]
次いで、第2の加熱工程で得られた塗布膜に対して、照度:15mW/cmの高圧水銀ランプを用いて、積算照射量が200mJ/cmとなるようにして、紫外光(365nmで測定した光量)を照射することにより、重合性組成物をの配向状態を固定化し、PEN配向基板付き液晶フィルム(液晶フィルム/PVA/PEN)を得た。
配向基板として用いたPENフィルムは大きな複屈折を持ち光学用フィルムとして好ましくない。
そこで、PEN配向基板付き液晶フィルムの液晶層上に、UV硬化型の接着剤を5μm厚となるように塗布し、TACフィルムでラミネートして、TACフィルム側から紫外線を照射してUV硬化型の接着剤を硬化させた後、PEN配向基板を剥離し、TAC付き液晶フィルム(液晶フィルム/接着層/TACフィルム)を得た。得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡にて観察したところ、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
TAC付き液晶フィルムおよびTACフィルム単体の面内方向のリターデーションの波長分散特性を、自動複屈折計を用いて測定し、両者の引き算から、液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定した。その結果、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。図4に、液晶フィルムの複屈折の波長分散特性をまとめた。
得られたTAC付き液晶フィルムをラビング方向(液晶化合物の配向方向)に傾けたときのレターデーション自動複屈折計を用いて測定したところ、左右非対称な視野角依存性を持っており(図5)、傾斜配向していることが分かった。得られたTAC付き液晶フィルムは、特開平11−194325号公報の実施例に記載された方法により、均一チルト配向ではなく、ネマチックハイブリッド配向フィルムであることを確認した。平均チルト角は33度であり、優れたネマチックハイブリッド配向性を有していることが分かった。
(実施例2)
実施例1で作製したPEN配向基板のPVA層上に、UV硬化型アクリル系樹脂を5μm厚となるように塗布し、TACフィルムと接着させてラミネートし、TACフィルム側から600mJ/cmの紫外線を照射してUV硬化樹脂層を形成させ、TAC/UV硬化樹脂層/PVA配向基板からなる積層体を得た後、PVA配向基板を剥離し、配向基板の表面形状が転写されたTAC配向基板(TAC/UV硬化樹脂層)を得た。
このようにして得られたTAC配向基板のUV硬化型樹脂層上に、実施例1と同様に重合性組成物を塗布および2回段階加熱し、TAC付き液晶フィルム(液晶フィルム/UV硬化樹脂層/TACフィルム)を得た。得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様に液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。また、TAC付き液晶フィルムのリターデーションの視野角依存性は左右非対称であり(図6)、傾斜配向していることが分かった。また、液晶フィルムは均一チルト配向ではなくネマチックハイブリッド配向フィルムであり、平均チルト角は22度であることから、優れたネマチックハイブリッド配向性を有していることが分かった。
(実施例3)
実施例1で得たPVA配向基板の表面形状を複製したNi電鋳板を作製した。
Ni電鋳板上に、UV硬化型のアクリル系樹脂を5μm厚となるように塗布し、TACフィルムと接着させてラミネートし、TACフィルム側から600mJ/cmの紫外線を照射してUV硬化樹脂層を形成させて、TAC/UV硬化樹脂層/Ni電鋳板からなる積層体を得た後、Ni電鋳板を剥離し、UV硬化樹脂層の表面にNi電鋳板の表面形状がインプリントされたTAC配向基板(TAC/UV硬化樹脂層)を得た。
このようにして得られたTAC配向基板のUV硬化型樹脂層上に、実施例1と同様にして、重合性組成物を塗布および2段階加熱し、TAC付き液晶フィルム(液晶フィルム/UV硬化樹脂層/TACフィルム)を得た。TAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にして、液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。また、TAC付き液晶フィルムのリターデーションは左右非対称な視野角依存性を有しており(図7)、傾斜配向していることがわかった。液晶フィルムは均一チルト配向ではなくネマチックハイブリッド配向フィルムであり、平均チルト角は22度であることから、優れたネマチックハイブリッド配向性を有していることが分かった。
(実施例4)
[工程1:重合性組成物の塗布]
15cm角の金属板(素材:SUS430、板厚1mm)に、レーヨンのラビング布を用いてラビングし、ラビング済み金属板を作製した。ラビング時の周速比(ラビング布の移動速度/基板フィルムの移動速度)は10とした。
ラビング済み金属板に、UV硬化型のアクリル系樹脂を5μm厚となるように塗布し、TACフィルムと接着させてラミネートし、TACフィルム側から600mJ/cmの紫外線を照射してUV硬化樹脂層を形成させ、TAC/UV硬化樹脂層/金属板からなる積層体を得た後、金属板を剥離し、UV硬化樹脂層の表面に金属板の表面形状がインプリントされたTAC配向基板(TAC/UV硬化樹脂層)を得た。
このようにして得られたTAC配向基板のUV硬化型樹脂層上に、実施例1と同様にして、重合性組成物を塗布および2段階加熱し、TAC付き液晶フィルム(液晶フィルム/UV硬化樹脂層/TACフィルム)を得た。得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にして液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmのリターデーション138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。また、TAC付き液晶フィルムのリターデーションの視野角特性は左右非対称であり(図8)、傾斜配向していることが分かった。液晶フィルムは均一チルト配向ではなくネマチックハイブリッド配向フィルムであり、平均チルト角は20度であることから、優れたネマチックハイブリッド配向性を有していることが分かった。
(実施例5)
第2の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度78℃に変更した以外は実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムを得た。
得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様に、TAC付き液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。
TAC付き液晶フィルムのリターデーションは左右非対な視野角依存性を有しており(図9)、傾斜配向していることが分かった。また、TAC付き液晶フィルムは均一チルト配向ではなくネマチックハイブリッド配向フィルムであり、平均チルト角は20度であることから、優れたネマチックハイブリッド配向性を有していることが分かった。
(実施例6)
第2の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度93℃に変更した以外は実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムを得た。
得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。TAC付き液晶フィルムのリターデーションは左右非対称な視野角依存性を有しており(図10)、傾斜配向していることが分かった。また、液晶フィルムは均一チルト配向ではなく、ネマチックハイブリッド配向フィルムであり、平均チルト角は18度であることから、優れたネマチックハイブリッド配向性を有していることが分かった。
(実施例7)
重合性組成物から二色性色素を除いた以外は実施例1と同様にして、液晶フィルムおよびTAC付き液晶フィルムを作製した。
実施例1と同様にして、液晶フィルムの複屈折の波長分散特性測定したところ、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.98、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.00であり、特に、測定波長400nm〜550nmの範囲では、測定波長が長波長ほど位相差が大きくなるが、550nm以上では測定波長によらずほぼ位相差値は一定であることを確認した。図11に、液晶フィルムの複屈折の波長分散特性をまとめた。
TAC付き液晶フィルムのリターデーションは左右非対称な視野角依存性を有し(図12)、傾斜配向していることが分かった。また、液晶フィルムは、均一チルト配向ではなくネマチックハイブリッド配向フィルムであり、平均チルト角は33度であることから、優れたネマチックハイブリッド配向性を有していることが分かった。
(実施例8)
第1の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度101℃に、第2の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度91℃に変更した以外は実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムを得た。
得られたTAC配向基板付き液晶フィルムフィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にして、液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、50nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。
PVA配向基板付き液晶フィルムフィルムの位相差の視野角特性を測定したところ、左右非対称な視野角依存性を有しており、(図13)、傾斜配向していることが分かった。また、液晶フィルムは、均一チルト配向ではなく、ネマチックハイブリッド配向フィルムであり、平均チルト角は25度であった。
(実施例9)
第1の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度90℃に、第2の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度80℃に変更した以外は実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムを得た。
得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にして、液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。
TAC付き液晶フィルムのリターデーションは左右非対称な視野角依存性を有しており(図14)、傾斜配向していることが分かった。また、液晶フィルムは均一チルト配向ではなく、ネマチックハイブリッド配向フィルムであり、平均チルト角は21度であることから、優れたネマチックハイブリッド配向性を有していることが分かった。
(比較例1)
実施例1において、工程3:第2の加熱工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして液晶フィルムおよびTAC付き液晶フィルムを作製した。
実施例1と同様にして液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。TAC付き液晶フィルムの位相差は左右対称な視野角依存性を有し(図15)、平均チルト角は0度であることから、ネマチックハイブリット配向していないことが確認された。
(比較例2)
第2の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度97℃に変更した以外は実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムを得た。
得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にして液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。
TAC付き液晶フィルムのリターデーションは左右対称な視野角依存性を有しており(図16)、平均チルト角は3度であることから、ネマチックハイブリット配向していないことが確認された。
(比較例3)
第2の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度48℃に変更した以外は実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムを得た。
得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にして、液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのリターデーションは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。
TAC付き液晶フィルムのリターデーションは左右対称な視野角依存性を有しており(図17)、平均チルト角は0度であることから、ネマチックハイブリット配向していないことが確認された。
(比較例4)
第1の加熱工程および第2の加熱工程における加熱保持時間をそれぞれ20秒に変更した以外は実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムを得た。
得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にして液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのΔn・dは138nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。TAC付き液晶フィルムの位相差は左右対称な視野角依存性を有しており(図18)、平均チルト角は5度であることから、ほとんどネマチックハイブリッド配向していないことが確認された。
(比較例5)
第1の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度104℃に、第2の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度94℃に変更した以外は実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムを得た。
得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にして液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのリターデーションは51nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。
TAC付き液晶フィルムのリターデーションはほぼ左右対称な視野角依存性を有しており(図19)、平均チルト角は0度であることから、ネマチックハイブリッド配向していないことが確認された。
(比較例6)
第1の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度80℃に、第2の加熱工程におけるホットプレートの温度条件を表面温度70℃に変更した以外は実施例1と同様にしてTAC付き液晶フィルムを得た。
得られたTAC付き液晶フィルムを偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
実施例1と同様にして液晶フィルムの複屈折の波長分散特性を測定したところ、550nmでのΔn・dは84nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.97、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.02であった。
TAC付き液晶フィルムのリターデーションは左右対称な視野角依存性を有しており(図20)、平均チルト角は0度であることから、ネマチックハイブリッド配向していないことが確認された。
<有機EL表示装置の反射防止性能評価>
実施例1〜9および比較例1〜6から得られたTAC付き液晶フィルムをアクリル系粘着剤を介して市販の偏光板(住友化学社製、商品名:SRW062)と貼り合わせて円偏光板を作製した。貼り合わせは、偏光板の吸収軸とTAC付き液晶フィルムのチルト方向、もしくは配向方向とが45度になるように行った。比較例2以外の液晶フィルムは、液晶化合物がより立ち上がっている面が偏光板側になり、液晶化合物がより寝ている面が偏光板と反対側になる。
このように作製された円偏光板を、市販の有機EL表示装置の有機EL素子の透明ガラス基板上にアクリル系粘着剤を介して貼着した。
評価(A):正面観察時の外光反射防止効果の評価
有機EL素子に電圧を印加しない状態で、照度約100ルックスの環境下に置き、円偏光板貼合部分の反射色の黒味を官能評価した。評価は以下の4つのレベルに従って決定した。
1:ほぼ完全に外光反射を防止し、黒色の再現性も良い。
2:1よりは劣るが、十分に外光反射が抑えられ、色味もほぼ黒色である。
3:やや外光反射が視認される。
4:外光反射が視認される。
評価(B):外光反射防止効果の視野角特性の評価
有機EL素子に電圧を印加しない状態で、照度約100ルックスの環境下に置き、正面と斜め45度における円偏光板貼合部分の反射色の黒味を官能評価した。評価は以下の4つのレベルに従って決定した。
1:正面と斜め方向でほぼ外光反射に変化は見られない。
2:1より劣るが、正面と斜め方向での外光反射の差はわずかである。
3:正面と斜め方向で外光反射の差が認められる。
4:正面と斜め方向で外光反射の差がかなり認められる。
図1に示すように、所定条件下の第1の加熱工程および第2の加熱工程を経ることで、液晶フィルムのネマチックハイブリット配向性が改善されることが分かった。また、表2に示すように、本発明の液晶フィルムを備えることで、有機EL素子の正面観察時の外光反射が防止でき、視野角特性も良好であることが分かった。
一方で、良好なネマチックハイブリッド配向を有していない比較例1〜6の液晶フィルムを備える有機EL素子においては、正面観察時の外光反射防止効果は認められたが、正面と斜め方向での外光反射の差が認められ、また、斜め方向の色味変化が強く、黒が青味がかって見えることが確認された。

Claims (6)

  1. 液晶フィルムの製造方法であって、
    液晶化合物を含んでなる重合性組成物を配向基板上に塗布して塗布膜を形成する工程と、
    前記塗布膜を、前記重合性組成物の液晶−等方相転移温度より3〜20℃低い温度範囲から選択される温度において30秒以上保持する、第1の加熱工程と、
    第1の加熱工程で得られた塗布膜を、第1の加熱工程よりも5℃〜20℃低い温度範囲から選択される温度においてさらに30秒以上保持する、第2の加熱工程と、
    を含む多段階加熱工程からなり、
    前記液晶化合物がネマチックハイブリッド配向していることを特徴とする、液晶フィルムの製造方法。
  2. 前記第2の加熱工程後、ネマチックハイブリッド配向させた前記液晶化合物の配向状態を固定化する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の液晶フィルムの製造方法。
  3. 前記液晶化合物の平均チルト角が10度〜40度である、請求項1または2に記載の液晶フィルムの製造方法。
  4. 前記液晶フィルムの複屈折Δnが、可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶フィルムの製造方法。
  5. 前記重合性組成物が、二色性色素を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶フィルムの製造方法。
  6. 前記二色性色素の極大吸収波長が380〜780nmの波長領域にある、請求項5に記載の液晶フィルムの製造方法。
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