JP2004198480A - 光学異方体の製造方法、光学異方体、光学フィルムおよび画像表示装置 - Google Patents

光学異方体の製造方法、光学異方体、光学フィルムおよび画像表示装置 Download PDF

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Sadahiro Nakanishi
貞裕 中西
Shusaku Nakano
秀作 中野
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Abstract

【課題】重合性液晶化合物の重合によって、配向にむらがなく、しかも他の光学フィルム等との密着性に優れた光学異方体を製造する方法を提供すること。
【解決手段】重合性液晶化合物(a)および重合性非液晶溶媒(b)および重合開始剤(c)を含有する溶液(A)を、配向処理を施された基板に塗布する工程(1)、
前記塗布された未乾燥の塗膜に対して、重合性非液晶溶媒(b)の割合が、重合性液晶化合物(a)と重合性非液晶溶媒(b)の総重量に対して、1重量%以上残存するように、重合性非液晶溶媒(b)を蒸発させて塗膜を乾燥させるとともに、重合性液晶化合物(a)を配向させる工程(2)、ならびに、
配向させた重合性液晶化合物(a)および重合性非液晶溶媒(b)を重合させる工程(3)、を有することを特徴とする光学異方体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学異方体の製造方法に関する。また本発明は当該製造方法により得られた光学異方体に関する。本発明の光学異方体は、光学異方性フィルムとして有用であり、単独でまたは他の光学フィルムと組み合わせて、位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、楕円偏光フィルム等の光学フィルムとして使用できる。さらに本発明は、上記光学異方体、光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDPなどの画像表示装置に関する。その他に、本発明の光学異方体は、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体へ利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
液晶化合物は、その配向性と屈折率、誘電率、磁化率等の物理的性質の異方性を利用して、TN(ツイステッド・ネマチック)型やSTN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型に代表されるディスプレイ素子等の液晶分子の可逆的運動を利用した表示媒体以外に、各種の光学異方体に利用されている。
【0003】
例えば、光学異方性フィルムとして、ディスコテイック液晶化合物または該化合物の混合物を用いた補償板が開示されている(たとえば特許文献1乃至5参照。)。これら特許文献に記載の補償板は、ディスコティック液晶化合物を塗布する工程、溶媒の大部分を蒸発させて乾燥させる工程、乾燥後、液晶化合物を配向させるため高温に加熱する工程、そして冷却する工程等を経て製造される。そのため、製造工程が複雑であり、コスト高となる問題点があった。特に、ディスコティック液晶化合物は、その溶液を塗布した後の乾燥条件や、溶媒を蒸発させた後の、塗布したディスコティック液晶化合物を高温に加熱して配向させる工程が複雑であること、また製造条件の制御が難しく、不均一な配向を生じ易いという問題点を有していた。
【0004】
光学異方性フィルムを作製する別の方法として、液晶性ポリマーの溶媒溶液を耐熱性のフィルムに塗布、乾燥させた後、液晶性ポリマーをガラス転移点以上の温度で処理することにより配向させた後、ガラス転移点以下の温度に冷却し、配向を固定化する方法が開示されている(たとえば特許文献6乃至8参照。)。しかしながら、液晶性ポリマーは、配向させるために高温で長時間の処理が必要であるという問題点を有していた。
【0005】
また、光学異方性フィルムとして、重合性低分子液晶化合物をセルに注入または基板に塗布した後、加熱と磁場または電場の作用によって配向させた状態で重合させて得られる複屈折板が開示されている(たとえば特許文献9参照。)。しかし、この方法においても、配向のため高温に加熱する工程が必須であり、生産効率が悪いという問題点があった。
【0006】
また、光学異方性材料の層を2個の偏光子の間に設けた液晶表示装置が開示されている(たとえば特許文献10参照。)。この液晶表示装置における光学異方性材料の層の製造には、1分子中に2個以上のアクリレート基を有する液晶化合物を高温で重合した後、付加的基板を剥離する必要があり、製造工程が複雑であるという問題点があった。また、1分子中に2個以上のアクリレート基を有する液晶化合物は、加熱処理による熱重合の際に、液晶分子の均一な配向状態が失われ、所望する配向状態とは異なる不均一な配向状態が固定されるため、配向の均一性に問題があった。
【0007】
さらに、室温付近において液晶性を示す重合性液晶組成物とその組成物を配向させた状態において光重合して得られる、内部の配向構造が制御された、光学異方体が開示されている(たとえば特許文献11参照。)。該公報で使用する重合性液晶組成物は熱重合の恐れはないものの、塗布性が悪いという問題点を有していた。この問題点を解決するために、界面活性剤を含有する重合性液晶組成物を用いる方法が開示されている(たとえば特許文献12参照。)。この方法では、重合性液晶組成物に界面活性剤を含有させることにより、膜厚むらの発生を低減することができる。しかし、界面活性剤は塗布性を向上させるものの、液晶の配向に影響を与えるという問題点を有していた。また、この方法で用いる重合性液晶組成物は液晶性を有するため、塗布時に流動配向による配向のむらが起こり易いという問題点を有していた。
【0008】
さらに、重合性液晶化合物および溶媒を含有する溶液が等方性液体状態を示す温度で、配向処理を施された基板に該溶液を塗布する工程、重合性液晶化合物が液晶相を示す温度範囲で、未乾燥の塗膜から溶媒を蒸発させて塗膜を乾燥させるとともに、重合性液晶化合物を配向させる工程、および配向させた重合性液晶化合物を重合させる工程を有する光学異方体の製造方法が開示されている(たとえば特許文献13参照。)。しかし、当該方法で得られる光学異方体は、その他の光学フィルムと積層する際に、密着性が悪いという問題があった。また、この方法は、重合性液晶化合物の液晶温度範囲が室温付近の場合には有効であるが、重合性液晶化合物の液晶温度範囲が室温より充分に高温である場合には塗膜の配向が得られないことがあった。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−287119号公報
【特許文献2】
特開平8−94835号公報
【特許文献3】
特開平9−73016号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平9−221670号公報
【特許文献5】
特開平9−222511号公報
【特許文献6】
特開平3−291601号公報
【特許文献7】
特開平5−61039号公報
【特許文献8】
特開平6−75114号公報
【特許文献9】
特開平5−215921号公報
【特許文献10】
特開平3−140921号公報
【特許文献11】
特開平8−3111号公報
【特許文献12】
特開平8−231958号公報
【特許文献13】
特開平11−142647号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、重合性液晶化合物の重合によって、配向にむらがなく、しかも他の光学フィルム等との密着性に優れた光学異方体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0012】
また本発明は当該製造方法により得られた光学異方体を提供すること、当該光学異方体を用いた光学フィルムを提供すること、さらには前記光学異方体、光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために、重合性液晶化合物の配向方法に着目して鋭意研究を重ねた結果、下記製造方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、重合性液晶化合物(a)および重合性非液晶溶媒(b)および重合開始剤(c)を含有する溶液(A)を、配向処理を施された基板に塗布する工程(1)、
前記塗布された未乾燥の塗膜に対して、重合性非液晶溶媒(b)の割合が、重合性液晶化合物(a)と重合性非液晶溶媒(b)の総重量に対して、1重量%以上残存するように、重合性非液晶溶媒(b)を蒸発させて塗膜を乾燥させるとともに、重合性液晶化合物(a)を配向させる工程(2)、ならびに、
配向させた重合性液晶化合物(a)および重合性非液晶溶媒(b)を重合させる工程(3)、を有することを特徴とする光学異方体の製造方法、に関する。
【0015】
上記本発明の製造方法では、乾燥工程(2)の後においても、塗膜中に、重合性液晶化合物(a)の他に重合性非液晶溶媒(b)を残存させている。その結果、得られる光学異方体は、その構成成分として、重合性液晶化合物(a)の他に、重合性非液晶溶媒(b)を含有する。このように本発明の製造方法により得られる光学異方体は、その構成成分として重合性非液晶溶媒(b)を含有しており、重合性液晶化合物(a)単独からなる光学異方体に比べて、他の光学フィルム等との密着性等の特性に優れた光学異方体を得ることができる。また本発明の製造方法によれば、配向にむらがない光学異方体を得ることができる。
【0016】
乾燥工程(2)の後における塗膜中に残存する重合性非液晶溶媒(b)は、そのまま重合性液晶化合物(a)とともに重合されて、光学異方体を形成する。上記光学異方体の製造方法において、乾燥工程(2)後における塗膜中の重合性非液晶溶媒(b)の割合は、重合性液晶化合物(a)と重合性非液晶溶媒(b)の総重量に対して、1重量%以上である。1重量%未満では、密着性の向上効果が少ない。前記塗膜中の重合性非液晶溶媒(b)の割合は、5重量%以上であるのが好ましい。さらには10重量%以上であるのが好ましい。なお、前記塗膜中の重合性非液晶溶媒(b)の割合は、得られる光学異方体の目的等に応じて適宜に決定されるが、通常は、光学異方体の性能を損なわないように、90重量%以下とするのが好ましい。さらには、50重量%以下とするのが好ましい。前記塗膜中の重合性非液晶溶媒(b)の割合は、詳しくは実施例に記載の方法により測定される。
【0017】
前記光学異方体の製造方法において、重合性液晶化合物(a)は、重合性官能基としてアクリル基および/またはメタクリル基を有する重合性液晶化合物であることが好適である。
【0018】
また前記光学異方体の製造方法において、重合性液晶化合物(a)は、重合性低分子棒状液晶化合物であることが好適である。
【0019】
また本発明は、前記製造方法で得られた光学異方体、に関する。
【0020】
また前記光学異方体に、当該光学異方体とは異なる光学フィルムが少なくとも1層積層されていることを特徴とする光学フィルム、に関する。
【0021】
さらには、前記光学異方体または光学フィルムを搭載した画像表示装置、に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法では、重合性液晶化合物(a)、重合性非液晶溶媒(b)および重合開始剤(c)を含有する溶液(A)が調製される。
【0023】
重合性液晶化合物(a)は、通常、光学異方体の技術分野において、液晶骨格と認められる骨格を有し、かつ重合性官能基を分子内に少なくとも1つ有するものである。
【0024】
重合性官能基としては、例えば、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニルエーテル基、シンナモイル基、ビニル基、クマリン基、カルコン基、アジド基、ベンゾフェノン基等が挙げられる。これらの中でも光重合特性に優れていることからアクリル基、メタクリル基が好ましく、特にアクリル基が好ましい。
【0025】
重合性液晶化合物(a)が1分子中に複数の重合性官能基を有する多官能化合物の場合には、各重合性官能基の種類は、それそれ同一でもよく、異なっていてもよい。例えば、1分子中に2つの重合性官能基を有する2官能性の重合性液晶化合物の場合には、一方の重合性官能基がアクリル基であって、他方の重合性官能基がメタクリル基であってもよい。
【0026】
1分子内に2つ以上の重合性官能基を有する重合性液晶化合物を用いると、重合性官能基を1つだけ有する重合性液晶化合物を用いた場合に比べて、より硬化したフィルムを得ることができる点で有利である。
【0027】
重合性液晶化合物(a)は、液晶相としては、ネマチック相、スメクチック相、コレステリック相、ディスコチック相を発現するものを好ましく使用できる。これら重合性液晶化合物(a)は、単独で用いてもよく、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。また重合性液晶化合物(a)は、モノドメイン配向を示す液晶相を有するものが好ましい。
【0028】
液晶は、その骨格の構造により、棒状液晶と面状液晶とに大別されるが、棒状液晶骨格としては、1分子内に6員環を2つ以上含む直線状分子などが挙げられる。
【0029】
重合性低分子棒状液晶化合物としては、たとえば、下記化1:
【化1】
Figure 2004198480
(式中、Rは水素原子またはメチル基を、AおよびDはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基または1,4−シクロヘキシレン基を、Xはそれぞれ独立して−COO−基、−OCO−基、−OCOO−または−O−基を、Bは1,4−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、4,4’−ビフェニレン基または4,4’−ビシクロヘキシレン基を、mおよびnはそれぞれ独立して2〜6の整数を示す。)で表される架橋型ネマチック性液晶モノマー等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
面状液晶骨格としては、例えば、ディスコティック液晶骨格などが挙げられる。重合性のディスコティック液晶化合物は、重合性官能基の導入後においても液晶性を示すものであれば、特に制限はない。ディスコティック液晶骨格としては、例えば、ベンゼン誘導体、トリフェニレン誘導体、トルキセン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、アントラセン誘導体、アザクラウン誘導体、シクロヘキサン誘導体、β−ジケトン系金属錯体誘導体、ヘキサエチニルベンゼン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、コロネン誘導体、及びフェニルアセチレンマクロサイクロ等が挙げられる。
【0031】
重合性液晶化合物(a)は、その液晶相を示す液晶下限温度に特に制限はないが、製造工程を容易にするために、室温から200℃程度とするのが好ましい。より好ましくは室温から150℃、さらに好ましくは室温から100℃で液晶相を示す材料が有利である。
【0032】
前記溶液(A)には、重合性液晶化合物(a)の他に、重合性官能基を有していない液晶化合物を、重合性液晶化合物(a)との総量に対して10重量%を超えない範囲で添加することもできる。
【0033】
重合性官能基を有していない液晶化合物としては、ネマチック液晶化合物、スメクチック液晶化合物、コレステリック液晶化合物等の、通常、光学異方体の技術分野で液晶化合物と認識されるものであれば、特に制限なく用いることができる。重合性官能基を有していない液晶化合物は、その添加量が増加するに従って、重合性液晶化合物(a)を光重合して得られる光学異方体の機械的強度が低下する傾向にあるので、添加量は前記範囲内で適宜調整する必要がある。
【0034】
重合性非液晶溶媒(b)としては、重合性官能基を分子内に少なくとも1つ有し、前記重合性液晶化合物(a)を溶解可能な非液晶化合物が用いられる。重合性官能基としては前記例示のものがあげられる。
【0035】
重合性非液晶溶媒(b)としては、たとえば、(メタ)アクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(PO変性)エチルカルビトール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(EO変性)フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、(カプロラクトン変性)テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの1官能性のアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、4EO変性ビスフェノールジ(メタ)アクリレートなどの2官能性のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3官能性以上のジ(メタ)アクリレート;その他、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアミドアクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、((2−メチル−2−イソブチル)−1,3−ジオキソラン−5−イル)メチルアクリレート、(シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−6−イル))メチルアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーデル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサジエン、スチレン、けい皮酸ビニル等が挙げられる。これら重合性非液晶溶媒(b)は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
これら重合性非液晶溶媒(b)のなかでも、沸点が低く、低害性で高溶解能を有する点から、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルモルホリンが好ましい。
【0037】
前記重合性液晶化合物(a)と重合性非液晶溶媒(b)は、それぞれを適宜に選択して組み合わされる。最終的に得られる光学異方体または乾燥工程(2)後における塗膜中の重合性非液晶溶媒(b)の割合は、前述の通りであり、少なくとも得られる重合性液晶組成物の液晶性が失われないように、各成分の、種類、添加量が調整される。
【0038】
通常、前記溶液(A)において、重合性非液晶溶媒(b)の割合は、重合性液晶化合物(a)と重合性非液晶溶媒(b)の総重量に対して、5〜99重量%程度とするのが好ましい。さらには10〜90重量%とするのが好ましい。
【0039】
前記溶液(A)には、非重合性非液晶化合物、つまり、一般的に言う溶媒を用いる必要は特にないが、重合性液晶化合物(a)を溶解した溶液(A)が等方性液体相(均一溶液)となるものであれば、公知慣用の溶媒を特に制限なく使用することができる。かかる溶媒の使用量は、前記溶液(A)の90重量%以下、さらには80重量%以下の範囲で用いるのが好ましい。
【0040】
前記溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、2−へプタノン、メチルイソブチルケトン、ブチロラクトン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコーンル、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコ−ルモノメチルエーテル、エチレングリコ−ルモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコ−ルモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコールエーテル類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸プロピル等のエステル類;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸ブロピル、2−メトキシブロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジエチレルグリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレルグリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のジエチレングリコール類;トリクロロエチレン、フロン溶剤、ハイドロ・クロロ・フルオロ・カーボン(Hydro Chloro Fluro Carbo n;HCFC)、ハイドロ・フルオロ・カーボン(HydroFluoro Carbon;HFC)等のハロゲン化炭化水素類;パーフロロオクタン等の完全フッ素化溶剤類;トルエン、キシレン等の芳香族類、ジメチルアセチアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤等が挙げられる。上述した溶媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
重合開始剤(c)としては、熱重合開始剤または光重合開始剤を用いることができる。重合開始剤(c)は、工程(3)における重合法に応じて決定される。工程(3)が熱重合の場合は熱重合開始剤を用い、活性エネルギー線による光重合の場合は、光重合開始剤を用いる。
【0042】
熱重合開始剤としては公知慣用の熱重合開始剤をいずれも特に限定なく用いることができる。熱量合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4′−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物類;アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物類;テトラメチルチウラムジスルフイド等が挙げられる。
【0043】
光重合開始剤は、ラジカル重合用光開始剤とカチオン重合用光開始剤の2種に大別できる。前者の例としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシー2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノー1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;更にベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルージフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。後者としては、鉄アレーン錯体、アリールスルホニウム塩、アリールョードニウム塩などが挙げられる。
【0044】
重合開始剤(c)の添加量は、重合性液晶化合物(a)および重合性非液晶溶媒(b)の総重量の0.01〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。
【0045】
なお、重合開始剤(c)として、ラジカル重合型光開始剤を添加した場合には、上記のラジカル重合型光開始剤の添加だけでも硬化するが、硬化性をより向上させるために、光増感剤を併用することが好ましい。
【0046】
かかる光増感剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミン類が挙げられる。光増感剤の配合量は、重合性液晶化合物(a)および重合性非液晶溶媒(b)の総重量の0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜5重量%であるのがより好ましい。
【0047】
前記溶液(A)には、その保存安定性を向上させるために、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノアルキルエーテル類等のハイドロキノン誘導体、第三ブチルカテコール、ピロガロール、チオフェノール化合物、ニトロ化合物、β−ナフチルアミン化合物、β−ナフトール化合物等の既知の熱安定剤や酸化防止剤を添加することもできる。熱安定剤あるいは酸化防止剤を添加する場合の添加量は、重合性液晶化合物(a)の使用量の0.05重量%以下の範囲が好ましい。
【0048】
さらに前記溶液(A)には、光学異方体に2色性を付与するために、2色性色素を添加することもできる。二色性色素としては、アゾ系、アゾキシ系、アントラキノン系、ペリレン系等が挙げられる。これらの色素は1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。二色性色素としては、例えば、「LSY−116」、「LSR−401」、「LSR−406」、「LSR−426」、「LSB−278」、「LSB−350」(以上、三菱化学株式会社製)、「SI−209」、「M−710」、「M−361」、「M−86」、「M−618」、「SI−252」、「M−777」、「M−370」、「M−137」、「M−141」、「M−438」、「M−412」、「M−34」、「M−430」、「M−406」、「S−301」、「S−304」、「M−676」(以上、三井化学株式会社製)等が挙げられる。これらの2色性色素を用いて場合の添加量は、製造する光学異方体の用途により異なるが、重合性液晶化合物(a)の使用量の10重量%以下が好ましい。さらには0.1〜10重量%が好ましく、0.2〜2重量%の範囲が特に好ましい。
【0049】
更に、溶液(A)には、螺旋構造を有する光学異方体を得る目的で、光学活性化合物を添加することもできる。かかる目的で使用する光学活性化合物は、それ自体が液晶性を示しても示さなくても良い。また、重合性官能基を有していてもよく、有していなくてもよい。また、螺旋構造を有する光学異方体のねじれの向きは、使用する目的によって適宜選択することができる。
【0050】
前記光学活性化合物としては、例えば、光学活性基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、光学活性基として2−メチルブチル基を有するビー・ディー・エイチ社(BDH社;イギリス国)製の「CB−15」、「C−15」、メルク社(ドイツ国)製の「S1082」、チッソ社製の「CM−19」、「CM−20」、「CM」;光学活性基として1−メチルヘプチル基を有するメルク社製の「S−811」、「CM−21」、「CM−22」、BASF社製「LC756」等が挙げられる。この光学活性化合物を併用する場合の添加量は、製造される光学異方体の用途により適宣調整することができる。
【0051】
前記溶液(A)は、塗布可能なように調製される。なお、溶液(A)が含有する重合性液晶化合物(a)、重合性非液晶溶媒(b)および重合開始剤(c)、さらには重合性非液晶化合物、溶媒等の配合割合は前記範囲で調整されるが、溶液(A)を配向処理を施された基板に塗布する際の必要膜厚、塗布条件、重合後の膜厚等が、必要に応じて考慮される。
【0052】
前記溶液(A)を、配向処理を施された基板に塗布する工程(1)が施される。
【0053】
配向処理を施された基板は、基板表面を布等でラビング処理したものや、延伸処理されたポリマーフィルム、または基板表面へのSiO2 を斜方蒸着したもの等が挙げられる。これらの配向手段は単独で用いても、また組み合わせて用いてもよい。その中でも、基板表面を布等でラビング処理した基板を用いる方法は、その簡便性から特に好ましい。
【0054】
布等でラビングすることによって適当な配向性を得られないときは、公知の方法に従ってポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビングしてもよい。また通常のTNまたはSTNセルで使用されているようなプレチルト角を与えるポリイミド薄膜を積極的に用いることは、光学異方体の内部構造を更に精密に制御できることから特に好ましい。
【0055】
また、ラビング法に代えて光配向法を用いることもできる。電場によって配向状態を制御する場合には、電極層を有する基板を使用し、この場合は電極上に前述のポリイミド薄膜等の有機薄膜を形成することが好ましい。
【0056】
前記基板は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、セルロース、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどの有機材料や、シリコン、ガラス等の無機材料が挙げられる。
【0057】
また、基板として、液晶表示セルの上面及び/又は下面のガラス基板面も好適に用いることができる。さらに、偏光フィルムを基板として用いることにより、偏光フィルムに直接光学異方体を作製することができる。このようにして得られる光学異方体は、楕円偏光フィルムとして、液晶ディスプレイの構成部品として好適に用いることができる。
【0058】
前記溶液(A)を配向処理が施された基板に塗布する方法には、公知慣用の塗布方法を用いることができる。例えば、ワイヤーバーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、プレードコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、印刷コーティング、浸漬引き上げ法等が挙げられる。
【0059】
次いで、前記塗布された未乾燥の塗膜から、重合性非液晶溶媒(b)を蒸発させて塗膜を乾燥させるとともに、重合性液晶化合物(a)を配向させる工程(2)を施す。
【0060】
乾燥は、前記工程(2)後の塗膜中における、重合性非液晶溶媒(b)の割合が、重合性液晶化合物(a)と重合性非液晶溶媒(b)の総重量に対して、1重量%以上残存するように乾燥を行う。乾燥条件は、溶液(A)の種類により異なり、適宜に調整される。通常、乾燥温度は、0〜200℃程度、好ましくは20〜150℃である。また乾燥時間は、15秒間〜10分間程度、好ましくは30秒間〜5分間である。
【0061】
次いで、配向させた重合性液晶化合物(a)および重合性非液晶溶媒(b)を重合させる工程(3)を施す。重合手段としては、熱及び/又は活性エネルギー線を用いることができる。重合法としては、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射する重合方法が、迅速に重合が進行するので好ましい。活性エネルギー線は、本発明の溶液(A)の乾燥塗膜が形成した基板面又は形成していない基板面のいずれの側から照射してもよい。塗膜を形成していない基板面に照射する場合、用いる基板は透明性を有するものを用いる。また、重合時の温度は、本発明で使用する重合性液晶化合物(a)の液晶状態が保持される温度で行うが、熱重合を避ける意味からもできるだけ室温に近い温度が好ましい。
【0062】
得られた光学異方体をフィルムとして用いる場合、その膜厚は特に制限されないが、0.2〜15μm程度、好ましくは0.5〜10μmである。
【0063】
本発明の製造方法により得られる光学異方体は、有利な光学性や熱的物性を有する。また、本発明の製造方法により得られる光学異方体は、基板から剥離して用いることもでき、他の基板に転写して用いることもできる。また基板から剥離せずに基板に担持させたまま用いることもできる。
【0064】
前記光学異方体は単独でまたは他のフィルムと組み合わせて、位相差板、視角補償フィルム、光学補償フィルム、楕円偏光フィルム等の光学フィルムとして使用できる。以下これらについて説明する。
【0065】
液晶表示装置等の画像表示装置に適用される光学フィルムには偏光板が用いられる。偏光板は、通常、偏光子の片側または両側に保護フィルムを有するものである。偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性材料(沃素、染料)を吸着・配向したものが好適に用いられる。偏光子の厚さも特に制限されないが、5〜80μm程度が一般的である。
【0066】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0067】
前記偏光子の片側または両側に設けられている保護フィルムには、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。前記保護フィルムの材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、あるいは前記ポリマーのブレンド物などが保護フィルムを形成するポリマーの例としてあげられる。その他、アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型樹脂などをフィルム化したものなどがあげられる。保護フィルムの厚さは、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
【0068】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0069】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0070】
また、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0071】
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。前記偏光子と保護フィルムとは通常、水系粘着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
【0072】
前記保護フィルムとしては、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものを用いることができる。
【0073】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0074】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0075】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
【0076】
前記偏光板は、位相差板を積層された楕円偏光板または円偏光板として用いることができる。前記楕円偏光板または円偏光板について説明する。これらは位相差板により直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4 波長板(λ/4 板とも言う)が用いられる。1/2 波長板(λ/2 板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0077】
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。
【0078】
位相差板には、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどを使用することができ、また使用目的に応じた適宜な位相差を有する2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御することができる。位相差板としては、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーなどの液晶材料からなる配向フィルム、液晶材料の配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。
【0079】
また視角補償フィルムとして偏光板に積層して広視野角偏光板として用いられる。視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。
【0080】
このような視角補償位相差板としては、他に二軸延伸処理や直交する二方向に延伸処理等された複屈折を有するフィルム、傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。視角補償フィルムは、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的として適宜に組み合わせることができる。
【0081】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0082】
前記のほか実用に際して積層される光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板などの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、楕円偏光板または円偏光板に、更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板があげられる。
【0083】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0084】
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
【0085】
反射板は前記の偏光板の保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
【0086】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0087】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
【0088】
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
【0089】
前記輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0090】
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
【0091】
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
【0092】
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
【0093】
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
【0094】
上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組合せで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組合せとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することよって形成することができるが、予め積層して楕円偏光板等の光学フィルムとしたのものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0095】
本発明の光学フィルムには、粘着層を設けることもできる。粘着剤層は、液晶セルへの貼着に用いることができる他、光学層の積層に用いられる。前記光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0096】
粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0097】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0098】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0099】
光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
【0100】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0101】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鏡アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0102】
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0103】
本発明の光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0104】
液晶セルの片側又は両側に前記光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0105】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0106】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0107】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0108】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0109】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0110】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1 /4 波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4 に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0111】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1 /4 波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4 のときには円偏光となる。
【0112】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0113】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0114】
実施例1
下記一般式:化2
【化2】
Figure 2004198480
で表わされる重合性液晶性化合物10重量部、N−アクリロイルモルホリン90重量部、光重合開始剤「イルガキュアー907」(チバスペシャルティーケミカルス社製)2重量部からなる溶液を調製した。当該溶液を、ラビング処理したポリビニルアルコール配向膜付きガラス板上にスピンコートした後、80℃で1分間加熱処理した後、2枚の偏光板の間に置き観察したところ、このフィルムは均一なホモジニアス配向でモノドメイン配向していた。
【0115】
(乾燥の塗膜に対して、重合性非液晶溶媒(b)の割合)
UV照射を行う前に、未硬化の塗膜を重クロロホルムで溶解し、その組成をプロトンNMRによって測定した。重合性液晶化合物とN−アクリロイルモルホリンとの組成比は、その分子量を鑑みて重量比に換算すると80:20であった。つまり、UV照射を経て硬化した光学異方体にも、同様な組成でN−アクリロイルモルホリンが高分子の構成成分として含有されていることになる。
【0116】
続いて、この重合性液晶化合物とN−アクリロイルモルホリンを有する未硬化の塗膜を形成したガラス板に対し、空気雰囲気において室温で高圧水銀ランプ600mJ/cm2 の光量のUV照射を行い、光重合させることで光学異方体を作製した。
【0117】
このようにして得た光学異方体は、モノドメインで配向方向が均一なホモジニアス配向が固定化されたものであった。デクタック(DEKTAK)3030表面形状測定器を用いて膜厚を測定した結果、2.0μmであり、膜厚むらも認められなかった。
【0118】
(耐熱性)
更にこの光学異方体をホットプレートを用いて100℃に加熱し、2枚の偏光フィルムの間に挟んで観察したところ、モノドメインで配向方向が均一なホモジニアス配向が固定化されており、耐熱性に優れていることが確認された。
【0119】
(密着性)
上記光学異方体の製造を、配向基材として、延伸処理したポリエチレンテレフィタレートフィルム(ダイアホイル:三菱化学社製)配向膜を用いて上記と同様に行った。さらに、硬化して得られた光学異方体を、粘着剤付きトリアセチルセルロールフィルムに転写した。この積層フィルムを90℃の耐熱性試験機に1時間投入しても、その密着性は充分なものであり、剥離することはなかった。
【0120】
比較例1
実施例1で使用した化1で示される重合性液晶化合物30重量部、シクロペンタノン70重量部、光重合開始剤「イルガキュアー907」2重量部からなる溶液を調製した。当該溶液を、ラビング処理したポリビニルアルコール配向膜付きガラス板上にスピンコートした後、80℃で1分間加熱処理した後、2枚の偏光板の間に置き観察したところ、このフィルムは均一なホモジニアス配向でモノドメイン配向していた。
【0121】
(乾燥の塗膜に対して、重合性非液晶溶媒(b)の割合)
UV照射を行う前に、未硬化の塗膜を重クロロホルムで溶解し、その組成をプロトンNMRによって測定した。シクロペンタノンは測定限界値以下(重合性液晶化合物に対して1重量%以下)であった。つまり、UV照射を経て硬化した光学異方体にも、シクロペンタノンは実質的に含有されていないことになる。
【0122】
続いて、この重合性液晶化合物を有する未硬化の塗膜を形成したガラス板に対し、空気雰囲気において室温で高圧水銀ランプ600mJ/cm2 の光量のUV照射を行い、光重合させることで光学異方体を作製した。
【0123】
このようにして得た光学異方体は、モノドメインで配向方向が均一なホモジニアス配向が固定化されたものであった。デクタック(DEKTAK)3030表面形状測定器を用いて膜厚を測定した結果、2.0μmであり、膜厚むらも認められなかった。
【0124】
(耐熱性)
更にこの光学異方体をホットプレートを用いて100℃に加熱し、2枚の偏光フィルムの間に挟んで観察したところ、モノドメインで配向方向が均一なホモジニアス配向が固定化されており、耐熱性に優れていることが確認された。
【0125】
(密着性)
上記光学異方体の製造を、配向基材として、延伸処理したポリエチレンテレフィタレートフィルム(ダイアホイル:三菱化学社製)配向膜を用いて上記と同様に行った。さらに、硬化して得られた光学異方体を、粘着剤付きトリアセチルセルロールフィルムに転写した。この積層フィルムを90℃の耐熱性試験機に1時間投入したところ、一部剥離が認められた。

Claims (7)

  1. 重合性液晶化合物(a)および重合性非液晶溶媒(b)および重合開始剤(c)を含有する溶液(A)を、配向処理を施された基板に塗布する工程(1)、
    前記塗布された未乾燥の塗膜に対して、重合性非液晶溶媒(b)の割合が、重合性液晶化合物(a)と重合性非液晶溶媒(b)の総重量に対して、1重量%以上残存するように、重合性非液晶溶媒(b)を蒸発させて塗膜を乾燥させるとともに、重合性液晶化合物(a)を配向させる工程(2)、ならびに、
    配向させた重合性液晶化合物(a)および重合性非液晶溶媒(b)を重合させる工程(3)、を有することを特徴とする光学異方体の製造方法。
  2. 工程(2)後の塗膜中における、重合性非液晶溶媒(b)の割合が、重合性液晶化合物(a)と重合性非液晶溶媒(b)の総重量に対して、5重量%以上残存していることを特徴とする請求項1記載の光学異方体の製造方法。
  3. 重合性液晶化合物(a)が、重合性官能基としてアクリル基および/またはメタクリル基を有する重合性液晶化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学異方体の製造方法。
  4. 重合性液晶化合物(a)が、重合性低分子棒状液晶化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学異方体の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で得られた光学異方体。
  6. 請求項5に記載の光学異方体に、当該光学異方体とは異なる光学フィルムが少なくとも1層積層されていることを特徴とする光学フィルム。
  7. 請求項5記載の光学異方体または請求項6記載の光学フィルムを搭載した画像表示装置。
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