JP2017037192A - 有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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坂 哲 也 上
Tetsuya Uesaka
坂 哲 也 上
中 大 直 田
Hironao Tanaka
中 大 直 田
崎 吾 郎 須
Goro Suzaki
崎 吾 郎 須
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Abstract

【課題】プラスチック基板由来の位相差を補償し、視野角特性に優れた有機EL表示装置を提供する。【解決手段】有機EL素子2と、積層偏光板1とを備え、積層偏光板1は、偏光子3と液晶フィルム4からなり、液晶フィルム4は、ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含む重合性液晶組成物を含み、複屈折Δnが、可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有し、液晶フィルム4の厚さ方向リタ−デーションRth(550)とプラスチック基板6の厚さ方向リタ−デーションRth’(550)の和が下記式(1)を満たす。−30nm≦Rth(550)+Rth’(550)≦30nm(1)【選択図】図2

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
一般に、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、場合により、「有機EL表示装置」という。)は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層した有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、場合により、「有機EL素子」という。)を備えている。有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されており、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機EL素子を備える有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光子を設けるとともに、これら透明電極と偏光子との間に位相差板を設けることができる。位相差板および偏光子は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ直線偏光板と位相差板を組み合わせた円偏光板を形成させることにより、金属電極の鏡面からの光を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。このように、有機EL表示装置には一般に、偏光板と位相差板からなる反射防止フィルムが最表面に配置されるため、有機EL表示装置が備える透明基板に対しても光学的に等方性(位相差が小さい)であることが求められる。
従来、液晶表示装置や有機EL表示装置には透明基板として、位相差が小さいガラス基板が用いられているが、近年の大画面化の動向に伴い、軽量化および生産性向上の問題が深刻化している。
現在、これら問題を解消すべく、ガラス基板の代わりに、より軽量であり、成型加工容易性の高いプラスチック基板の採用が求められている。透明性で且つ十分靭性の高いプラスチック基板は、曲げたり丸めたりして収納可能なフレキシブル表示パネルの実現を可能とする。
しかしながら、通常、プラスチック基板はガラス基板に比べて耐熱性に劣るという欠点を持つ。例えば、パネル用プラスチック基板をフルカラーTFT型液晶パネルや有機EL表示装置に適用する場合、その製造工程において、プラスチック基板は200〜220℃の高温に耐えなければならない。しかしながらポリメタクリル酸メチルに代表されるビニルポリマーやポリカーボネートでは透明性は高いものの、ガラス転移点はそれぞれ100℃から150℃と、耐熱性に劣る。耐熱性、透明性および靭性を併せ持つプラスチック基板としての要求特性を満足する材料は未だ知られていないのが現状である。
ところで、ポリイミド樹脂は耐熱性に優れるため、プラスチック基板材料の候補として挙げられる。一般にポリイミド樹脂は、無水ピロメリット酸などの芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンとをジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒中で、等モル反応させ容易に得られる高重合度のポリイミド樹脂の前駆体を、膜などに成形し、加熱硬化することによる得ることができる。このような全芳香族ポリイミド樹脂は優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、機械的性質などの特性を併せ持つことから、フレキシブルプリント配線回路用基板、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに現在広く利用されている。
しかしながら、これらの全芳香族ポリイミド樹脂は紫外から可視域にかけて強い電子吸収遷移を有するため、フィルムとした場合、得られるフィルムの透明性は極端に低い。これはポリイミド鎖における芳香族基を通じた分子内共役および、分子内・分子間電荷移動相互作用によるものである(非特許文献1参照)。
ポリイミドフィルムの透明化に、酸二無水物とジアミンのどちらか一方あるいは両方に脂肪族又は脂環族モノマーを使用することが提案されている。これによりポリイミド鎖の分子内共役や電荷移動相互作用が妨げられ、結果としてポリイミド膜およびその前駆体膜の紫外・可視全域での透明性が飛躍的に高まる(特許文献1参照)。
しかしながら、ポリイミドフィルムは、位相差、特に厚さ方向の位相差(Rth)が大きく、透明基板として用いた場合、視野角特性の優れる有機EL表示装置は得ることができないという問題があった。
ここで、特許文献2には、偏光子と1/4波長板の間にNZ<0の複屈折体を設けた円偏光板が開示されている。ここで、NZをNZ=(nx−nz)/nx−ny)(式中、nx及びnyは、波長550nmの光に対する面内の主屈折率を表し、nx≧nyを満たす。nzは、波長550nmの光に対する厚さ方向の主屈折率を表す)と定義している。特許文献2に記載の円偏光板は、NZ<0の複屈折体を設けることより位相差の視野角依存性を補償し、円偏光板の視野角特性を向上させるものであるが、NZ<0という特殊な材料を使用することによるコストアップ、厚みアップ等の弊害がある。また、有機EL表示装置におけるプラスチック基板の位相差の視野角依存性に関する記載はなく、ポリイミド樹脂を用いて作製したプラスチック基板由来の厚み方向の位相差補償方法については明記されていない。
Prog. Polym. Sci., 26, 259 (2001)
特開2007−169304号公報 特開2005−326818号公報
本発明は、プラスチック基板由来の位相差を補償することができ、より一層視野角特性に優れた有機EL表示装置を提供することを目的とする。
本発明によれば、
有機エレクトロルミネッセンス素子と、積層偏光板と、を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、プラスチック基板、有機発光層および電極を含んでなり、
前記積層偏光板は、偏光子および液晶フィルムを含んでなり、
前記液晶フィルムは、ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含む重合性液晶組成物を含んでなり、複屈折Δnが、可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有し、
前記液晶フィルムの厚さ方向の見かけのリタ−デーションRth(550)と前記プラスチック基板の厚さ方向リタ−デーションRth’(550)の和が下記式(1)を満たす、ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置が提供される。
−30nm≦Rth(550)+Rth’(550)≦30nm (1)
本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、前記液晶フィルムにおける液晶化合物の平均チルト角が、5度〜85度であることが好ましい。
本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、特定波長における液晶フィルムの法線方向でのリターデーションの比が、下記数式(2)および(3)を満たすことが好ましい。
0.80<Δn・d(500)/Δn・d(550)<1.00 (2)
1.00<Δn・d(600)/Δn・d(550)<1.15 (3)
本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、前記液晶フィルムが、二色性色素を含んでなることが好ましい。
本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、
二色性色素を含んでなる液晶フィルムの法線方向でのリターデーションをΔna・da、
二色性色素を含まない液晶フィルムの法線方向でのリターデーションをΔnb・db、
とした場合に、下記数式(4)を満たすことが好ましい。
Δna・da(580)/Δna・da(550)−Δnb・db(580)/Δnb・db(550)>0 (4)
本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、二色性色素の極大吸収波長が380〜780nmの波長領域にあることが好ましい。
本発明によれば、ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含む液晶組成物を含んでなる液晶フィルムを備え、この液晶フィルムが、複屈折Δnが、可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有することにより、プラスチック基板由来の位相差を補償することができ、有機EL表示装置の視野角特性を大幅に改善することができる。
液晶組成物の屈折率と吸収係数の波長分散特性を示す図である。 実施形態による、本発明の有機EL表示装置の断面模式図である。 ネマチックハイブリッド液晶フィルムの配向構造の概念図である。 液晶化合物のチルト角及びツイスト角を説明するための概念図である。 図1の異常分散領域を拡大した図である。 二色性色素の色素分子の長軸方向(ne方向)と短軸方向(no方向)との吸収スペクトルとの比較を示す図である。 異方性を有する液晶組成物に二色性色素を添加する前後での複屈折Δnの波長分散との比較を示す図である。 有機エレクトロルミネッセンス表示装置の赤青緑3色の発光スペクトルと3色同時に点灯して白表示したときの発光スペクトルの図である。 実施例1で作製した液晶フィルムの複屈折Δnの波長分散特性を示す図である。 実施例1で作製した液晶フィルムを液晶の配向方向に沿って傾けて測定した見かけのリターデーション値の測定結果である。 実施例1で作製した積層偏光板の断面高造の概念図である。 実施形態による、有機EL素子の断面模式図である。 実施例2で作製した積層偏光板の断面高造の概念図である。 実施例3で作製した液晶フィルムの複屈折Δnの波長分散特性を示す図である。
<定義>
(1)複屈折Δn
複屈折Δnは、ne−noで表される。また、Δn・d(550)は、波長550nmの光における液晶フィルムのみかけのリタ−デーション値を意味する。なお、測定時の温度は23±2℃、相対湿度は45±5%であり、neおよびnoは、それぞれ、異方性分子の長い分子軸に平行な方向における「異常光屈折率」、および長い分子軸に垂直な方向における「常光屈折率」を表す。
(2)厚さ方向リターデーション値Rth
一様なチルト角θaを持つ屈折率楕円体を仮定すると、見かけのnx’、ny’、nz’は以下の式で計算できる。
その上で、見かけの正面位相差Rおよび見かけのRthは以下の式であらわされる
なお、ネマチックハイブリッド配向を持つサンプルと等価な一様チルトを持つサンプルのチルト角は、元のサンプルと同じ厚みで、同じ正面位相差を与えるチルト角として計算した。
また、Rth(550)は、波長550nmの光における液晶フィルムの厚さ方向リターデーション値を意味する。
また、Rth’(550)は、波長550nmの光におけるプラスチック基板の厚さ方向リターデーション値を意味する。
なお、測定時の温度は23±2℃、相対湿度は45±5%であり、nx’は、面内の最大主屈折率、ny’は面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率という。nz’は厚さ方向の主屈折率である。
(3)正常分散
固有吸収波長から離れた領域(図1のa1,a2,a3の領域)における屈折率nが、波長が増すと共に単調に減少する分散を意味する。なお、本願明細書では、「正常分散」を「正の分散」と表記する。
(4)異常分散
固有吸収を含む波長域(図1のb1、b2、b3の領域)における屈折率nが、波長が増すとともに急激に増加する分散を意味する。なお、本明細書では、「異常分散」を「負の分散」と表記する。
<有機EL表示装置>
一実施形態における有機EL表示装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。図2に示す通り、有機EL表示装置100は、積層偏光板1と、有機EL素子2と、を備える。また、有機EL表示装置100は、前記した構成部材以外にも他の構成部材を付設することができる。例えば、カラーフィルターを有機EL素子2に付設することにより、色純度の高いマルチカラーまたはフルカラー表示を行うことができる有機EL表示装置100を作製することができる。さらに、必要に応じて光拡散層、光制御フィルム、導光板、プリズムシート等の部材(いずれも図示せず)を備えていてもよい。
有機EL表示装置は、後述する第1の電極と第2の電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
偏光子に、1/4波長板として液晶フィルムを組み合わせた円偏光板を形成させるという点で、偏光子の吸収軸と、液晶フィルムの遅相軸とのなす角度pは、液晶フィルムがネマチックハイブリッド配向の場合は、40度〜50度、好ましくは42度〜48度、より好ましくは45±1度の範囲である。上記数値範囲内であれば、十分な反射防止効果が得られ、画質の低下を抑制できる。液晶フィルムがツイストネマチックハイブリッド配向の場合は、ツイスト角により、偏光子の吸収軸と液晶フィルムの遅相軸とのなす角度を変えて設定する必要があり、一概に範囲を規定することは難しい。
また、本発明の有機EL表示装置においては、液晶フィルムの厚さ方向の見かけのリタ−デーション値Rthとプラスチック基板の厚さ方向リターデーションRth’の和が下記式(1)を満たす。
−30nm≦Rth(550)+Rth’(550)≦30nm (1)
この数値範囲を満たすことにより、有機EL表示装置の視野角特性が極めて良好となる。
また、下記式(1−1)を満足することが好ましく、下記式(1−2)を満足することがより好ましい。
−20nm≦Rth(550)+Rth’(550)≦20nm (1−1)
−15nm≦Rth(550)+Rth’(550)≦15nm (1−2)
<積層偏光板>
一実施形態において、積層偏光板1は、図2に示す通り、偏光子3と、液晶フィルム4と、を備えている。偏光子3の透過軸と液晶フィルム4の光軸は、45度または135度で交差するように配置(貼合)されており、偏光子3を透過した直線偏光は、液晶フィルム4によって円偏光に変換される。
偏光子3と液晶フィルム4とは、接着剤ないし粘着剤(図示せず)を介して積層することができる。また、積層偏光板1の他の実施形態として、偏光子側にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の保護基板5が設けられていてもよい。以下、積層偏光板を構成する各層について説明する。
<液晶フィルム>
本発明において、液晶フィルムは、ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含む重合性液晶組成物を含んでなり、その複屈折Δnが、可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有する。
上記したように、液晶フィルムは、異常光線屈折率neが可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有し、それに伴い、複屈折Δnが可視光領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有する。可視光領域とは、一般的に380nm〜780nmの領域を表すが、屈折率neが「負の分散」特性を示す領域としては、可視光中心波長550nm近辺を含む領域が好ましい。これは、人間の目が波長ごとに感じる明るさの感度(以下、比視感度という)が明るいところでは555nm付近が最大に、暗いところでは507nm付近が最大になるとされるためである。
本来、neは可視光全波長にわたって、長波長ほど大きいほうが好ましいが、色素材料の添加量などを増やす必要があるため、液晶フィルムの着色という点で好ましくない。また、人間の比視感度特性を考慮した場合、波長550〜600nmの範囲内において、「負の分散」特性を有することができれば、十分所望の特性を得ることが可能である。
図3に本発明のネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムの断面構造を示す。さらに、図3に、液晶フィルムの表面の法線に対して液晶化合物のダイレクターと鉛直方向から入射する光の入射角θ(度)と、液晶フィルムの表面の法線に対して液晶化合物のダイレクターと水平方向から入射する光の入射角θ(度)(入射角−θ(度))とを示す。
ここで、ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムは、液晶化合物のダイレクターが液晶フィルムの膜厚方向のすべての場所において異なる角度を向いている。したがって、液晶フィルムは、フィルムという構造体として見た場合、もはや光軸は存在しない。図4に液晶化合物のチルト角、ツイスト角の定義を示す。なお、液晶フィルムのチルト方向(軸)とは、図3に示すようにb面側から液晶フィルムを通してc面を見た際に、液晶化合物ダイレクターとダイレクターのc面への投影成分が成す角度が鋭角となる方向で、かつ投影成分と平行な方向をチルト方向(軸)と定義する。
ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムにおいては、液晶フィルムの一方のフィルム界面付近において液晶化合物のダイレクターとフィルム平面との成す角度が絶対値として好ましくは0度〜20度、より好ましくは0度〜10度であり、当該フィルム面の反対のフィルム界面付近においては当該角度が絶対値としては好ましくは30度〜90度、より好ましくは40〜85度である。また、液晶フィルムにおける液晶化合物の平均チルト角としては、絶対値としては好ましくは5度〜85度、より好ましくは10度〜70度、さらに好ましくは20度〜60度である。平均チルト角が、上記の数値範囲内にあれば、偏光子と組み合わせて、有機EL表示装置に備えた際に反射視野角特性を向上することができる。ここで平均チルト角とは、液晶フィルムの膜厚方向における液晶分子のダイレクターと液晶フィルム平面との成す角度の平均値を意味するものである
上記したように、液晶フィルムにおいては、液晶化合物が液晶状態において配向固定されている。液晶化合物の配向とは、液晶化合物の分子鎖が特定の方向に並んだ状態を示しており、この状態は液晶フィルムの位相差(Δn・d)測定により測定できる。なお、配向とは、例えば、測定波長550nmでΔn・dが20nm以上を指す。Δn・dは複屈折Δnと膜厚dの積である。
また、液晶フィルムは、複屈折Δnが、可視光領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有することを特徴とする。より具体的には、500nm、550nm、600nmにおける液晶フィルムのみかけのリターデーションをΔn・d(500)、Δn・d(550)、Δn・d(600)としたとき、法線方向でのリターデーションの比が、
0.80<Δn・d(500)/Δn・d(550)<1.00 (2)かつ
1.00<Δn・d(600)/Δn・d(550)<1.15 (3)であることが好ましい。
より好ましくは
0.90<Δn・d(500)/Δn・d(550)<0.98 (2−1)かつ
1.02<Δn・d(600)/Δn・d(550)<1.10 (3−1)
である。これらの値から外れた場合は、例えば、1/4波長板として使用する場合においては、400〜700nmの直線偏光をこの液晶フィルムに入射した際、得られる偏光状態はある特定の波長では完全な円偏光が得られるものの、それ以外の波長では大きく円偏光からずれてしまうといった問題が生じうる。
液晶フィルムが二色性色素を含んでなる場合、二色性色素を含む液晶フィルムの法線方向での所定波長におけるみかけのリターデーションをΔna・da、該液晶フィルムから該二色性色素を除いた液晶フィルムの法線方向でのみかけのリターデーションをΔnb・db、とした場合に、下記式(4)を満足することが好ましい。
Δna・da(580)/Δna・da(550)−Δnb・db(580)/Δnb・db(550)>0 (4)
(ここで、リターデーションとは、複屈折Δnと液晶フィルムの膜厚dの積で表され、Δna・da(580)、Δna・da(580)は、波長580nmにおける各液晶フィルムのリターデーションであり、Δna・da(550)、Δna・da(550)は、波長550nmにおける各
液晶フィルムのリターデーションである。)
液晶フィルムは、その用途等によっては、膜厚だけでなく、特定の位相差値を有することが要求され得る。ここで、液晶フィルムのリターデーション値(Δn・d)としては、20〜500nm(より好ましくは50〜300nm)であることが好ましい。なお、ここで言うリターデーション値(Δn・d)とは液晶フィルムの法線方向から見た場合の波長550nm光に対する面内の見かけのリターデーション値である。すなわちネマチックハイブリッド配向構造を固定化した液晶フィルムでは、ダイレクターに平行な方向の屈折率(ne)と垂直な方向の屈折率(no)が異なっていることから、neからnoを引いた値を見かけ上の複屈折率とし、当該複屈折率とフィルム絶対膜厚との積として当該リターデーション値は与えられる。
液晶フィルムの厚さ方向の見かけのリタ−デーションRth(550)は、プラスチック基板の厚さ方向リタ−デーションRth’の値に応じ適宜変更することが好ましいが、下記式(5)を満たすことが好ましい。
−100nm≦Rth(550)≦−10nm (5)
より好ましくは、下記式(5−1)、さらに好ましくは、下記式(5−2)を満たすことが好ましい。
−90nm≦Rth(550)≦−15nm (5−1)
−80nm≦Rth(550)≦−20nm (5−2)
このようなリターデーション値、ツイスト角、チルト角は、複屈折を測定することが可能な装置(例えばAxometrix社製の商品名「Axoscan」、王子計測機器社製の商品名「KOBRA−21ADH」等)を用いて測定した値から算出して求めることができる。
また、このような液晶フィルムの厚みとしては、用途や求める特性によっても異なるものではあるが、0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜5μmであることがより好ましい。このような液晶フィルムの厚みが0.1μm未満であると、所望の位相差を発現できず、10μm以上であると、液晶化合物の配向性の低下を抑制したり、二色性色素を含有させた場合における色素による透過率の低下を抑制することができなくなる場合がある。
このような液晶フィルムの複屈折Δnは、用途や求める特性によっても異なるものではあるが、0.005〜0.5であることが好ましく、0.01〜0.3であることがさらに好ましい。複屈折Δnが上記の範囲であれば、液晶フィルムを所望の位相差とした場合に厚さを10μm以下とできる。
<重合性液晶組成物>
以下に液晶フィルムの構成成分である重合性液晶組成物について説明する。
重合性液晶組成物としては、重合により配向状態を固定化し得る液晶化合物を含むものであれば特に制限されない。本発明における重合性液晶組成物は、1種または2種以上の重合性基を有する液晶化合物(重合性液晶化合物)、重合性基を有さない液晶化合物と液晶性を示さない重合性化合物との混合物、重合性基を有する液晶化合物と液晶性を示さない重合性化合物との混合物、および重合性基を有する液晶化合物と重合性基を有さない液晶化合物との混合物のいずれを含むものであってもよい。
本発明においては、公知の重合性液晶化合物を適宜利用できる。また、このような重合性液晶化合物としては、配向基板上においてネマチックハイブリッド配向させて、その配向状態を固定化し得る重合性液晶化合物を用いることができ、例えば、低分子の重合性液晶化合物(重合性基を有する液晶性モノマー)、高分子の重合性液晶化合物(重合性基を有する液晶性ポリマー)及びこれらの混合物等を適宜利用することができる。
また、このような重合性液晶化合物としては、配向状態をより効率よく固定化できるといった観点から、光及び/又は熱により反応する重合性基を有する液晶化合物が好ましい。また、このような重合性基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、アジリジニル基等が好ましい。なお、このような重合性基としては、反応条件等によっては、例えば、イソシアナート基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、カルボキシル基等の他の重合性基を使用してもよい。
さらに、このような重合性液晶化合物としては、入手容易性、耐熱性、取扱い容易性の観点から、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有する液晶化合物が好ましく、(メタ)アクリレート系液晶化合物((メタ)アクリレート基を有する液晶化合物)を用いることがより好ましい。なお、本発明においては、場合により「メタアクリロイル」と「アクリロイル」とを総称して「(メタ)アクリロイル」と表記し、また、場合により「メタクリレート」と「アクリレート」とを総称して「(メタ)アクリレート」と表記し、更に、場合により「メタクリル」と「アクリル」とを総称して「(メタ)アクリル」と表記する。また、「(メタ)アクリレート基」とは、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基から水素が脱離した残基((メタ)アクリロイルオキシ基)をいう。
このような(メタ)アクリレート系液晶化合物としては、下記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物が好ましい。
上記一般式(10)〜(12)中、Wは、それぞれ独立に、H及びCHのうちのいずれかを示す。このようなWの種類に応じて、式中において、CH=CWCOOで表わされる基がアクリレート基又はメタクリレート基のいずれかの基となる。
また、式(10)〜(12)中、nは1〜20(より好ましくは2〜12、更に好ましくは3〜6)の整数である。このようなnの値が上記数値範囲内であれば、化合物が液晶性を発現する温度領域が広くなり、また、良好なネマチックハイブリッド配向を実現するのに必要な、化合物の液晶由来の流動性が保たれる結果、良好なネマチックハイブリッド配向を実現することできる。
一般式(10)中、Rは炭素原子数が1〜20のアルキル基及びアルコキシ基の中から選択されるいずれかの基である。前記炭素原子数は、1〜12のものがより好ましく、3〜6のものが更に好ましい。このような炭素数が上記数値範囲内であれば、良好なネマチックハイブリッド配向を実現するのに必要な、化合物の液晶由来の流動性が保たれる結果、良好なネマチックハイブリッド配向を実現することでき、また、化合物が液晶性を発現する温度領域が広くなる傾向にある。なお、このようなアルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状のものであっても、分岐鎖状のものであっても、環状のものであってもよく、良好なネマチックハイブリッド配向の実現の観点からは、直鎖状のものであることが好ましい。
また、一般式(12)中、Z及びZは、それぞれ独立に、−COO−及び−OCO−のうちのいずれかの基である。このようなZ及びZとしては、化合物の調製の容易さ等の観点から、Z及びZのうちの一方の基が−COO−で表わされる基であり、もう一方の基が−OCO−で表わされる基であることが好ましい。
また、一般式(12)中、X及びXは、それぞれ独立に、H及び炭素数が1〜7のアルキル基のうちのいずれかを示す。このようなX及びXとして選択され得る炭素数が1〜7のアルキル基としては、炭素数が1〜3であることがより好ましく、1であること(アルキル基がCHであること)がより好ましい。このような炭素原子数が上記数値範囲内であれば、良好なネマチックハイブリッド配向を実現することができる。このように、X及びXは、それぞれ独立に、H及びCHのうちのいずれかであることが特に好ましい。
また、このような一般式(10)〜(12)で表わされる(メタ)アクリレート系液晶化合物としては、例えば、下記一般式(110)〜(113)に記載のような化合物が挙げられる。なお、このような(メタ)アクリレート系液晶化合物は1種を単独で用いてもよく或いは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、重合性液晶化合物としては、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物を組み合わせて利用することが好ましく、上記一般式(110)〜(113)で表わされる化合物を組み合わせて利用することがより好ましい。
このように、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物を組み合わせて重合性液晶化合物として利用する場合においては、上記一般式(10)で表わされる化合物の含有量は、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物の総量に対して20〜60重量%であることが好ましく、30〜45重量%であることがより好ましい。
また、上記一般式(11)で表わされる化合物の含有量は、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物の総量に対して10〜50重量%であることが好ましく、20〜30重量%であることがより好ましい。
さらに、上記一般式(12)で表わされる化合物の含有量は、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物の総量に対して10〜70重量%であることが好ましく、25〜45重量%であることがより好ましい。このような一般式(10)〜(12)で表わされる化合物の含有量が上記数値範囲内であれば、ネマチックハイブリッド配向性に関して、配向欠陥が生じるのを抑制することができる。
さらに、上記一般式(110)〜(113)で表わされる化合物を組み合わせて重合性液晶化合物として利用する場合においては、良好なネマチックハイブリッド配向の実現の観点から、各化合物の重量比が([上記一般式(110)で表わされる化合物]:[上記一般式(111)で表わされる化合物]:[上記一般式(112)で表わされる化合物]:[上記一般式(113)で表わされる化合物])が45:40:15:0〜35:5:30:30であることが好ましく、35:23:23:19〜38:25:25:12であることがより好ましい。
また、このような重合性液晶化合物を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、上記一般式(110)で表わされる化合物を製造する場合には、例えば、英国特許出願公開第2,280,445号明細書に記載された方法を採用してもよく、上記一般式(111)で表わされる化合物を製造する場合には、例えば、D.J.Broerらの「Makromol.Chem.(vol.190,1989年発行)」の第3201頁〜第3215頁に記載された方法を採用してもよく、上記一般式(112)〜(113)で表わされる化合物を製造する場合には、例えば、国際公開93/22397号に記載された方法を採用してもよい。このように、重合性液晶化合物は、その利用する化合物の種類に応じて公知の方法を適宜利用して製造することができる。また、このような重合性液晶化合物としては市販品を利用してもよい。さらに、このような重合性液晶化合物は1種を単独で用いてもよく、或いは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記したように、液晶フィルムの位相差Δn・dは、下記式(2)および(3)を満足することが好ましい。
0.80<Δn・d(500)/Δn・d(550)<1.00 (2)
1.00<Δn・d(600)/Δn・d(550)<1.15 (3)
上記式(2)および(3)を満足させる方法として、重合性液晶化合物が二種類以上のメソゲン基を有する化合物であり、そのうち少なくとも一つのメソゲン基を液晶層の平行(ホモジニアス)配向の遅相軸に対して略直交方向に配向させることで、長波長になるほど、位相差が大きくなることが、特開2002−267838号公報や特開2010−31223号公報に記載されている。ここで、メソゲン(mesogen)基のメソゲンは、中間相(=液晶相)形成分子(「液晶辞典」、日本学術振興会、情報科学用有機材料第142委員会、液晶部会編、1989年)とも称され、液晶性分子構造とほぼ同義である。本発明では、棒状液晶化合物におけるメソゲン基(棒状液晶化合物の液晶性に関する分子構造)を採用することが好ましい。棒状液晶化合物におけるメソゲン基については、各種文献(例えば、Flussige Kristalle in Tabellen誌、VEB Deutscher Verlag furGrundstoffindustrie, Leipzig(1984年)、第2巻)に記載がある。
メソゲン基の例には、ビフェニル、フェニルシクロヘキシル、シクロヘキシルフェニル、フェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシル、シクロヘキシルカルボニルオキシフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシシクロヘキシルオキシカルボニルフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシルカルボニルオキシフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルアミノカルボニルフェニル、フェニルエテニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニルエチニレンフェニル、フェニルエテニレンカルボニルオキシビフェニルおよびフェニルエテニレンオキシフェニルエチニレンフェニルが含まれる。
メソゲン基(メソゲン基を構成するベンゼン環やシクロヘキサン環)は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記した重合性基またはその誘導体が好ましい。二種類のメソゲン基の組み合わせとしては、一方のメソゲン基が、ビフェニル、フェニルシクロヘキシル、シクロヘキシルフェニル、フェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシル、シクロヘキシルカルボニルオキシフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシシクロヘキシルオキシカルボニルフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシルカルボニルオキシフェニルおよびフェニルカルボニルオキシフェニルアミノカルボニルフェニルからなる群より選ばれ、他方のメソゲン基が、フェニルエテニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニルエチニレンフェニル、フェニルエテニレンカルボニルオキシビフェニルおよびフェニルエテニレンオキシフェニルエチニレンフェニルからなる群より選ばれることが特に好ましい。
二種類以上のメソゲン基を有する化合物は、一般的な合成方法を応用して合成することができる。例えば、1)最初に出発原料の官能基変換により二種類以上のメソゲン基の一つを導入した後、同様に官能基変換により他のメソゲン基を続けて導入する順次導入法、2)出発原料の官能基変換により同時に二種類以上のメソゲン基を導入する同時導入法、あるいは3)順次導入法と同時導入法との併用法を採用できる。このように、二種類以上のメソゲン基を有する化合物を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、特開2002−267838号公報に記載された方法を採用してもよい。このように、重合性液晶化合物は、その利用する化合物の種類に応じて公知の方法を適宜利用して製造することができる。
二種類以上のメソゲン基を有する化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
また、液晶化合物のツイストネマチック配向を誘起するためには、液晶組成物中にカイラル剤を添加するか、あるいは液晶組成物中に少なくとも1種のカイラルな構造単位を有する液晶化合物または非液晶化合物を配合することが特に望ましい。
カイラルな構造単位としては、例えば光学活性な2−メチル−1,4−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1,4−ブタンジオール、2−フルオロ−1,4−ブタンジオール、2−ブロモ−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−プロピル−1,4−ブタンジオール、3−メチルヘキサンジオール、3−メチルアジピン酸、ナプロキセン誘導体、カンファー酸、ビナフトール、メントールあるいはコレステリル基含有構造単位またはこれらの誘導体(例えばジアセトキシ化合物などの誘導体)から誘導される単位を利用することができる。上記のジオール類はR体、S体のいずれでも良く、またR体およびS体の混合物であっても良い。またオリゴマーや低分子液晶であっても、架橋性基の導入あるいは適宜な架橋剤のブレンドによって、液晶状態あるいは液晶転移温度以下に冷却して配向固定化された状態で、熱架橋あるいは光架橋等の手段により高分子化できるものも液晶高分子に含まれる。
また、上記重合性液晶化合物としては市販品を利用してもよい。さらに、このような重合性液晶化合物は1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせた混合物として用いてもよい。また、液晶化合物を2種以上組み合わせる場合、全ての液晶化合物が液晶性を示す必要はなく、混合物が液晶性を示せばよい。例えば、二種類以上のメソゲン基を有する化合物は、それ自身が液晶性を示さなくても他の液晶化合物との混合物が液晶性を示せばよい。さらには、重合性液晶化合物を2種以上組み合わせた混合物として使用する場合、全ての液晶化合物が重合性官能基を有する必要はなく、少なくとも1種の液晶化合物が重合性官能基を有していればよい。
また、上述の通り、重合性液晶組成物は、重合性基を有する液晶化合物と液晶性を示さない他の重合性化合物(重合性モノマー)との混合物を利用してもよい。このような他の重合性化合物としては、重合性基を有する液晶化合物との相溶性を有しており且つ該液晶化合物を配向させる際に配向阻害を著しく引き起こすようなものではない限り特に限定されない。例えば、公知の重合性化合物を適宜利用でき、目的とする液晶組成物の設計に応じて公知の重合性モノマーの中から好適なモノマーを選択して利用すればよい。このような他の重合性モノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和基(例えばビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基)等の重合性官能基を有する化合物等が挙げられる。なお、このような他の重合性モノマーの添加量は、重合性基を有する液晶化合物と液晶性を示さない他の重合性モノマーの総量に対して0.5〜50重量%とすることが好ましく、1〜30重量%とすることが好ましい。また、このような重合性モノマーの重合性官能基の数は、重合速度を十分に早いものとする観点及び得られる液晶フィルムに十分な耐熱性を付与する観点から、2以上であることが好ましい。さらに、このような重合性モノマーを製造するための方法も特に制限されず、公知の方法を適宜利用できる。また、このような重合性モノマーとしては市販品を利用してもよい。また、ディスコチック液晶化合物であっても問題なく使用することができる。液晶高分子は通常、光学的に正または負の一軸性を示すものが用いられる。それらの光学特性は、光学異方素子に要求される機能によって適宜選択されるが、ツイストネマチックハイブリッド配向した液晶高分子層の場合は、正の一軸性を示す液晶高分子が好適に用いられる。
上記したような重合性液晶組成物や二色性色素を重合させるための重合開始剤としては、公知の重合開始剤の中から、組成物中の重合性液晶化合物の種類に応じて、より効率よく重合性液晶化合物の重合を開始させることが可能なものを適宜選択して利用すればよい。
また、このような重合開始剤は、熱重合開始剤(熱重合反応を利用する際の開始剤)であっても、光重合開始剤(光や電子線の照射を利用する際の開始剤)であってもよい。このような重合開始剤としては、液晶フィルムを製造する際の配向基板としてプラスチックフィルム等を用いる場合に、熱によりその配向基板等が変形したり、変質したりすることを防止するといった観点から、光重合開始剤を用いることがより好ましい。
また、このような光重合開始剤としては、市販品を利用してもよく、例えば、Ciba−Geigy社製の光重合開始剤(商品名「イルガキュア907」、商品名「イルガキュア651」、商品名「イルガキュア184」)や、Union Carbide社製の光重合開始剤(商品名「UVI6974」)等を適宜使用してもよい。なお、このような光重合開始剤は、光又は電子線の照射により、自由ラジカルを生成するものや、イオンを生成するもの等があるが、組成物中の重合性液晶化合物の種類や重合反応の条件等に応じて、自由ラジカルを生成する光重合開始剤(例えば、Ciba−Geigy社製の商品名「イルガキュア651」等)や、イオンを生成する光重合開始剤(例えば、Union Carbide社製の光重合開始剤(商品名「UVI6974」))の中から好適なものを適宜選択して利用すればよい。
また、本発明に係る重合性液晶化合物および二色性色素の混合物における重合開始剤の含有量としては、混合物100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましく、3〜5重量部であることがより好ましい。このような重合開始剤の含有量が上記数値範囲内であれば、得られる液晶フィルムの硬化性が十分であり、また、液晶の配向に欠陥を生じるのを抑制することができる。
なお、液晶フィルムは、ツイストネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでいてもよい。ツイストネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムとは、液晶分子のダイレクターが、その一方の面から他方の面にかけて光学異方軸がツイストした構造を有する。従って、液晶フィルムは、光学的に異方性を持った層をその光学異方軸が連続的にツイストするように多層重ね合わせたものと同等の特性を有し、通常のTN(ツイステッドネマチック)液晶セルやSTN(スーパーツイステッドネマチック)液晶セル等と同様に、フィルムの法線方向から見た場合、リターデーション値(=Δnd:複屈折Δnと厚みdの積で表される値)とねじれ角を有している。更に、ツイストネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含んでなる液晶フィルムは、液晶分子のダイレクターが、その一方の面から他方の面にかけて、光学異方軸が面内方向ではツイストしながら、膜厚方向で異なる角度で傾斜したフィルムである。当該配向構造におけるツイスト角としては、絶対値として好ましくは0度〜70度、より好ましくは0度〜60度、最も好ましくは0度〜59度である。ツイスト角が上記の数値範囲内にあれば、偏光板と組み合わせて液晶表示装置や有機EL表示装置に備えた際にコントラストや反射防止性能等、正面から見た場合の表示特性を向上することができる。ここでツイスト角とは、なお、ツイストの向きには2種類あるが、右ツイストでも左ツイストでも構わない。
<二色性色素>
また、液晶フィルムは、二色性色素を含んでなることが好ましい。
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素であり、染料であっても顔料であってもよい。この染料は複数種用いてもよく、顔料も複数種用いてもよく、染料と顔料とを組み合わせてもよい。更に、このような二色性色素は、重合性官能基を有していてもよく、液晶性を有していてもよい。重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニロキシ基、エポキシ基、オキセタニル基が好ましく、反応性の観点からアクリル基、エポキシ基、オキセタニル基が特に好ましい。液晶性については、ネマチック相、スメクチック相を有するものが好ましい。
図1のうち、「異常分散領域」の曲線の拡大図を図5に示す。対称な吸収帯を仮定した場合、「異常分散領域」のうち、吸収の最大値では異常分散の寄与が近似的に零になり、屈折率の局部的な最大値が長波長側の吸収帯の半波高値の直前に現れ、屈折率の局部的な最小値が短波長側の半波高値の直後に現れる。これらの位置はλmax、λ+、λ−として図5に示してある。すなわち、λ−からλ+までの範囲内にある長波長になるほど屈折率が大きくなる分散特性、いわゆる「負の分散」特性が存在する。
一般に、異方性を有する液晶組成物を用いて液晶フィルムを作製した場合、双極子の種類が軸方向によって異なるため、異常光線屈折率neと常光線屈折率noは異なる「正の分散」カーブを示す。この液晶組成物に、図6に示すような580nmに極大吸収波長を有する吸収スペクトルを持つ高い二色性を示す色素を添加することで、吸収波長付近である550〜650nmの波長領域において、異常光線屈折率neが「負の分散」特性を有する液晶フィルムが得られる。ここで、高い二色性とは、ne方向とno方向での吸収特性の差が大きいものを意味する。図7には、二色性色素を添加する前と後の液晶組成物からなる液晶フィルムの複屈折波長分散特性を示す。二色性色素を添加することで、550〜650nmの波長領域において、複屈折が「負の分散」を有する液晶フィルムが得られる。
二色性色素は、380〜780nmの範囲に極大吸収波長(λmax)を有するものが好ましく、400〜750nmがより好ましく、450〜700nmがさらに好ましく、540〜620nmが最も好ましい。液晶フィルムを画像表示装置に適用する際、画像表示装置などの光源の発光スペクトルを考慮して、極大吸収波長を選択するほうが好ましい。
図8には、有機EL表示装置の赤青緑の3色の発光スペクトルと3色を同時点灯し白表示をした時の発光スペクトルを示している。図8に示す通り、青色は約460nmに、緑色は530nmに、赤色は630nmに極大値を示す発光スペクトルを有している。この有機EL表示装置に、二色性色素を含んでなる液晶フィルムを適用する場合、二色性色素による吸収は避けられないが、この吸収による透過率低下を最小限に抑えるには、この3色の発光スペクトルの極大波長から外れた波長に極大吸収を有する二色性色素を選択することが好ましく、例えば、図6に示すような580nm近辺に極大吸収波長を有する二色性色素を適用することが好ましい。
図6は有機EL表示装置の発光スペクトルを示したが、他の画像表示装置においても同様である。例えば、液晶表示装置においては、光源にLEDを使用する場合、二色性色素の極大吸収波長を使用するLEDの発光スペクトルの極大値から外れた波長にすることで、透過率低下を抑制することができる。二色性色素の極大吸収波長と液晶表示装置の発光スペクトルの極大波長との差は5nm以上、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。5nm以上であれば、波長を外すことによる透過率低下を抑制することができる。
二色性色素の二色比は、色素分子の長軸方向における最大吸収波長での吸光度と短軸方向の吸光度の比で定義される。色素の配向方向の吸光度と配向方向と垂直方向の吸光度を測定することで求めることが可能である。二色性色素の二色比は、好ましくは2以上50以下、更に好ましくは5以上30以下である。
このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、アジン色素、アゾメチン色素、オキサジン色素、シアニン色素、メロシアニン色素、スクアリリウム色素、ナフタレン色素、アゾ色素、アントラキノン色素、ベンゾトリアゾール色素、ベンゾフェノン色素、ピラゾリン色素、ジフェニルポリエン色素、ビナフチルポリエン色素、スチルベン色素、ベンゾチアゾール色素、チエノチアゾール色素、ベンゾイミダゾール色素、クマリン色素、ニトロジフェニルアミン色素、ポリメチン色素、ナフトキノン色素、ペリレン色素、キノフタロン色素、スチルベン色素、インジゴ色素などが挙げられる。中でも、該二色性色素は、アントラキノン色素およびアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素、トリスアゾ色素およびこれらの系列の色素の誘導体が例示される。上記の条件を満たす色素であれば本発明で用いることが可能である。
また、二色性色素は下記式(1)で表されるもの(以下、場合により「アゾ色素(1)」という。)が特に好ましい。
式(1)中、nは1から4の整数である。Ar及びArは、それぞれ独立に下記に示す基から選ばれる。
Arは下記に示す基から選ばれ、式(1)中のnが2以上の場合は、Arは互いに同一でも異なっていてもよい。
及びAは、それぞれ独立に下記に示す基から選ばれる。
(mは0〜10の整数であり、同一の基中にmが2つある場合、この2つのmは互いに同一でも異なっていてもよい。)
アゾ色素(1)のアゾベンゼン部位の位置異性は、トランスであることが好ましい。
アゾ色素(1)としては例えば、式(1−1)〜式(1−58)でそれぞれ表される化合物などが挙げられる。
以上のアゾ色素(1)の具体例の中でも、式(1−2)、式(1−5)、式(1−6)、式(1−8)、式(1−10)、式(1−12)、式(1−13)、式(1−15)、式(1−16)、式(1−19)、式(1−20)、式(1−21)、式(1−22)、式(1−23)、式(1−24)、式(1−26)、式(1−27)、式(1−28)、式(1−29)、式(1−30)式(1−31)、式(1−32)、式(1−33)、式(1−34)、式(1−35)、式(1−36)、式(1−49)、式(1−50)、式(1−51)、式(1−52)、式(1−53)、式(1−54)式(1−55)、式(1−56)、式(1−57)及び式(1−58)でそれぞれ表されるものより好ましく、式(1−2)、式(1−5)、式(1−8)、式(1−10)、式(1−15)、式(1−21)、式(1−22)、式(1−26)、式(1−28)、式(1−29)、式(1−30)、式(1−31)、式(1−32)、式(1−33)、式(1−34)、式(1−35)式(1−36)、式(1−49)、式(1−50)、式(1−51)、式(1−52)、式(1−53)、式(1−54)及び式(1−55)でそれぞれ表されるものが特に好ましい。
アントラキノン色素としては、式(1−59)で表される化合物が好ましい。
式(1−59)中、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、−Rx、−NH、−NHRx、−NRx、−SRx、−OH又はハロゲン原子を表す。Rxは、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。
アクリジン色素としては、式(1−60)で表される化合物が好ましい。
式(1−60)中、R16〜R23は、互いに独立に、水素原子、−Rx、−NH、−NHRx、−NRx、−SRx又はハロゲン原子を表す。Rxは、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。
オキサゾン色素としては、式(1−61)で表される化合物が好ましい。
式(1−61)中、R〜R15は、互いに独立に、水素原子、−Rx、−NH、−NHRx、−NRx、−SRx、−OH又はハロゲン原子を表す。Rxは、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。
以上の式(1−59)、式(1−60)及び式(1−61)において、Rxの炭素数1〜6のアルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などであり、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基及びナフチル基などである。
シアニン色素としては、式(1−62)で表される化合物及び式(1−63)で表される化合物が好ましい。
式(1−62)中、D及びDは、互いに独立に、下記式(1−62a)〜式(1−62d)のいずれかで表される基を表し、n5は1〜3の整数を表す。
式(1−63)中、D及びDは、互いに独立に、式(1−63a)〜式(1−63h)のいずれかで表される基を表し、n6は1〜3の整数を表す。
以上、液晶フィルムが含有しうる二色性色素について、その好ましい例を説明したが、上記した中でも、二色性色素はアゾ色素(1)であることが好ましく、互いに異なる極大吸収波長を有するアゾ色素(1)を少なくとも2種含有してもよい。
液晶フィルムにおける二色性色素の含有量は、二色性色素の種類などに応じて適宜調節することができるが、例えば、重合性液晶組成物100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましく、0.1〜20重量部がより好ましく、0.1〜10重量部がさらに好ましい。二色性色素の含有量が、この範囲内であれば、液晶組成物に含まれる液晶化合物の配向を乱すことなく、重合および成膜を行うことができる。また、二色性色素の含有量が上限値を超える場合、色素の吸収による液晶フィルムの透過率の低下を抑制できない場合がある。二色性色素の含有量が下限値未満である場合、屈折率を制御できなかったり、十分な光学特性を得ることができないことがある。そのため、液晶化合物が配向を保持できる範囲で、二色性色素の含有量を定めることもできる。なお、2種以上の二色性色素を使用する場合の含有量は、使用した二色性色素の合計の含有量である。
<液晶フィルムの製造方法>
次に、液晶フィルムの製造方法について説明する。
液晶フィルムの方法としては、例えば、重合性液晶組成物と、所望により、二色性色素と、必要に応じて添加される各種の化合物とを含む組成物を溶融状態で、あるいは該組成物の溶液を、配向基板上に塗布することにより塗膜を形成する。次に、該塗膜を乾燥、熱処理(液晶化合物の配向)することにより、あるいは必要により光照射および/または加熱処理(重合・架橋)等の前述の配向を固定化する手段を用いてネマチックハイブリッド配向を固定化することにより、液晶化合物及び二色性色素の配向が固定化された液晶フィルムが形成される。
本明細書において、「ネマチックハイブリッド配向の状態で固定化された」という配向状態は、重合性液晶組成物を重合して、液晶化合物の配向を固定化した後に得られる液晶フィルムにおいて、ネマチックハイブリッド配向(液晶分子のダイレクターがフィルムの膜厚方向から見て(好ましくはすべての場所において異なる角度を向いて整列している配向)が確認されることをいい、重合性液晶化合物等に由来する成分(好ましくは重合性液晶化合物に由来する成分:その重合性液晶化合物自体、その重合性液晶化合物が分解されて形成された構成物やその重合性液晶化合物の重合物等を含む。)のうちのいずれかが、ネマチックハイブリッド配向の状態で固定化されていればよい。また、本明細書において、「ネマチックハイブリッド構造」とは、液晶フィルム内において液晶化合物がネマチックハイブリッド配向している配向構造をいう。
溶液の調製に用いる溶媒に関しては、液晶組成物および二色性色素を溶解でき適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限はない。例えば、均一な膜厚となるように溶液を塗布するのに適切な乾燥速度、取扱い容易性(環境への有害性)および重合性液晶化合物および二色性色素に対する溶解性の観点から、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、酢酸2−メトキシエチル、トルエン、ザイレン、メトキシベンゼン、1,2−メトキシベンゼン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、γ-ブチロラクトンが好ましく、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート、γ-ブチロラクトンがより好ましい。なお、このような溶媒としては1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、本発明に使用する溶媒の含有量は、30〜98重量%であることが好ましく、50〜95重量%であることがより好ましく、70〜90重量%であることが更に好ましい。溶媒の含有量が前記下限値未満である場合、重合性液晶化合物および二色性色素の混合物に対する溶媒の量が確保できず、保管中に液晶が析出したり、該混合物の粘度が高くなって湿潤(wetting)性の低を抑制できなく、液晶フィルムの製造時のコーティングが不良になることがある。また、溶媒の含有量が前記上限値を超える場合、溶媒を除去する場合にその除去時間(乾燥時間)が長くなったり、フィルムを製造する場合に作業効率が低下したり、該混合物を配向基板上にコーティングした場合に表面の流動性を抑制できず、均一な液晶フィルムを製造することができないことがある。また、配向基板上に均一な塗膜を形成するために、反応活性化剤、増感剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤などを溶液に添加してもよい。
次に配向基板について説明する。
配向基板としては、平滑な平面を有するものが好ましく、有機高分子材料からなるフィルムやシート、ガラス板、金属板などを挙げることができる。コストや連続生産性の観点からは有機高分子材料を用いることが好ましい。有機高分子材料の例としては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルフォン、環状ないしノルボルネン構造を有するシクロポリオレフィン、ジアセチルセルロース、TAC、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
このような基板としては、形成される液晶フィルムと配向基板との積層体をそのまま光学フィルム等に用いる場合等において、その用途等に応じて、位相差機能を有するものとしてもよい。更に、このような配向基板は、一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルムであってもよい。なお、このような配向基板は、これを縦方向および横方向に延伸することにより、二軸性の光学異方性を発現させて、光学異方性を有するフィルムとして利用してもよい。
また、このような配向基板としては、Z軸配向処理を施したものを用いてもよい。更に、このような配向基板としては、その接着性を制御する目的で、片面もしくは両面にコロナ処理、プラズマ処理、UV−オゾン処理、ケン化処理等の表面処理を適宜行ってもよい。
これら配向基板は、その製造方法によっては、改めて配向能を発現させるための処理を行わなくとも、液晶化合物を十分に配向させることができるものもあるが、液晶化合物の配向が不十分、または液晶化合物を配向させることができない等の場合には、必要によりこれらのフィルムを適度な加熱下に延伸する、フィルム面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理を行う、フィルム上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる配向膜を設けてラビング処理を行う、フィルム上に光配向膜を塗布し適度な温度で加熱後、直線偏光紫外線を照射して配向膜を形成する、酸化珪素等の斜方蒸着処理、あるいはこれらを適宜組み合わせるなどして配向能を発現させることが好ましい。
また表面に規則的な微細溝を設けたアルミニウム、鉄、銅などの金属板や各種ガラス板等も配向基板として使用することができる。この中でも、液晶の分野においては、配向基板に対して布等で擦るラビング処理を行うことが一般的である。ラビング条件を規定する重要な設定値としては周速比がある。これはラビング布をロールに巻きつけて回転させつつ基板を擦る場合の、布の移動速度と配向基板の移動速度の比を表す。本発明においては、通常周速比が50以下、より好ましくは25以下、特に好ましくは10以下である。周速比が50以下であれば、液晶化合物を十分に配向させることができ、光学特性を十分に発現させることができる。
次に塗布方法について説明する。
塗布方法は、塗膜の均一性が確保される方法であればよく、例えば、スピンコート法、ダイコート法、カーテンコート法、ディップコート法、ロールコート法などが挙げられる。このような塗膜としては、乾燥前の塗膜の厚み(ウエット膜厚)が3〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。厚み(ウエット膜厚)が3μm以上であれば、所望の光学特性を得るために重合性液晶組成物中の固形分(液晶化合物等)の析出を抑制し、均一な液晶フィルムを得ることができ、また均一な塗布により液晶フィルムの十分な平滑性が得られる。また、20μm以下であれば、所望の光学特性とするための液晶組成物中の固形分の濃度が薄くなるため、塗布後の乾燥時間が長くなるのを抑制することができる。
液晶組成物の溶液を塗布する方法では、塗布後に溶媒を除去するための乾燥工程を入れることが好ましい。この乾燥工程における温度条件としては、15〜110℃であることが好ましく、20〜80℃であることがより好ましい。温度条件が15℃以上であれば、冷却設備を必要とせず、効率的な製造が可能となる。また、110℃以下であれば、配向基板が熱により歪んで光学特性等が変化するのを抑制することができる。
また、この乾燥工程における圧力条件としては、600〜1400hPaであることが好ましく、900〜1100hPaであることがより好ましい。このような圧力条件が600hPa以上であれば、溶媒の乾燥が緩慢であり、乾燥ムラが生じるのを抑制することができる。また、圧力条件が1400hPa以下であれば、溶媒の乾燥にかかる時間を低減することができる。このような乾燥工程の時間としては、10秒〜60分とすることが好ましく、1分〜30分とすることがより好ましい。乾燥時間が10秒以上であれば、溶媒の乾燥が緩慢であるため、液晶フィルムの平滑性を維持することができる。また、60分以下であれば、製造速度が速く、十分な生産性を維持することができる。なお、このような乾燥工程に乾燥装置を利用する場合においては、塗膜と乾燥装置との相対的な移動速度を、相対風速が60m/分〜1200m/分となるように制御することが好ましい。塗膜の均一性が維持される方法であれば、特に限定されることなく公知の方法を採用することができる。例えば、ヒーター(炉)、温風吹きつけなどの方法が挙げられる。
塗布された膜の乾燥後における膜厚は、0.1〜50μm、好ましくは0.2〜20μmである。膜厚が上記数値範囲内であれば、得られる液晶フィルムの光学性能を十分に発現でき、液晶化合物及び二色性色素を十分に配向させることができる。
次に配向を固定化する方法について説明する。
重合性液晶組成物を重合して液晶化合物の配向状態を固定化する方法としては、用いる重合性液晶組成物や重合開始剤の種類等に応じて、重合が可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、重合開始剤の種類等に応じて、光照射及び/又は加熱処理を施すことにより、重合性基を反応させて、ネマチックハイブリッド配向した配向状態で配向を固定化する方法を採用してもよい。
重合開始剤が光の照射により開始剤の機能を発現するようなものである場合(例えば、いわゆる光カチオン発生剤の場合)には、光照射によりネマチックハイブリッド配向の配向状態を固定化することが好ましい。このような光照射の方法としては、例えば、用いる重合開始剤の吸収波長領域にスペクトルを有する光源(例えば、10mW/cm以上の照度を有する、メタルハライドランプ、中圧或いは高圧水銀灯(中圧或いは高圧水銀紫外ランプ)、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザーなど)を用いて、その光源からの光を照射する方法が挙げられる。なお、このような光の照射により反応開始剤を活性化させることが可能となり、効率よく反応性官能基を反応させることが可能となる。
また、このような光照射の方法において光の積算照射量としては、波長365nmでの積算露光量として、10〜2000mJ/cmであることが好ましく、100〜1500mJ/cmであることがより好ましい。また、このような光照射時の温度条件は、重合性液晶化合物がネマチックハイブリッド配向の配向状態を維持できる温度範囲とすればよい。なお、光照射時に、塗膜の表面温度が液晶温度の範囲を維持できるように、配向基板と光源(紫外線ランプ等)との間には、コールドミラーやその他の冷却装置を設けてもよい。
さらに、このような光照射時の雰囲気の条件としては、大気雰囲気であっても或いは反応効率を高めるために酸素を遮断した窒素雰囲気下であってもよい。なお、雰囲気中の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させた雰囲気で光照射することが好ましい。このような場合の雰囲気ガス中の酸素濃度としては、10容量%以下であることが好ましい。
また、重合開始剤が熱により開始剤の機能を発現するようなものである場合(例えば、いわゆる熱カチオン発生剤の場合)には、加熱処理により、液晶化合物のネマチックハイブリッド配向の配向状態で配向を固定化することが好ましい。このような加熱処理の条件としては、重合開始剤の種類に応じて、配向状態が十分に維持されるように温度条件を選択すればよい。
なお、配向基板が耐熱性の低いものである場合には、重合開始剤として光の照射により開始剤の機能を発現するようなものを用い、光照射により、液晶化合物のネマチックハイブリッド配向の配向状態を固定化することが好ましい。
以上のような工程により製造した液晶フィルムは、充分強固な膜となっている。具体的には、硬化反応によりメソゲンが3次元的に結合され、硬化前と比べて耐熱性(液晶配向保持の上限温度)が向上するのみでなく、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐クラック性などの機械的強度に関しても大幅に向上する。
このようにして、配向基板上に重合性液晶組成物および所望により二色性色素を含む混合物を塗布した後に、塗膜から溶媒を除去して、液晶化合物および二色性色素を配向させ、その液晶状態を固定化することによって、配向状態がネマチックハイブリッド配向の状態で固定化された液晶フィルムを配向基板上に形成することができる。
また、該液晶フィルムにおけるネマチックハイブリッド配向の確認方法としては、一対の直交偏光板(一方の偏向板が偏向する方向と、他方の偏向板が偏向する方向が垂直となる一対の偏光板)の間に液晶フィルム(配向基板との積層体の状態のもの等であってもよい。)を配置した試料を用いて、肉眼で透過光を確認する方法や液晶フィルムを偏光顕微鏡で観察する方法を採用してもよい。バックライト上に置いた一対の直交偏光板の間に液晶フィルムを正面から見た時のバックライトからの光の透過強度が最も暗くなるような角度に配置し、液晶フィルムの表面に対して遅相軸を軸にして斜めから観察した際に明るくなり、進相軸を軸にして斜めから観察した際に暗いままであることを確認することで、ネマチックハイブリッド配向の有無を確認することができる。また、ネマチックハイブリッド配向液晶フィルムは、上述のように光の入射角に応じて位相差の特性が異なるものとなることから、ネマチックハイブリッド配向の確認方法としては、例えば、液晶フィルムの表面に対して垂直な方向(垂直入射角)の位相差と垂直入射角から特定の角度に光の入射角を傾けた場合の位相差とを測定することが可能な複屈折測定装置(例えばAxo−metrix社製の商品名「Axoscan」、王子計測機器社製の商品名「KOBRA−21ADH」等)を用いて、視野角0度(液晶フィルムに対して垂直の方向)から視野角がより大きくなる方向に角度を適宜変更しながら位相差の測定を行い、複数の視野角において試料の位相差をそれぞれ求め、液晶フィルムの表面に対して垂直な方向において位相差が確認され、液晶フィルムの表面に対して視野角がより大きくなる方向において位相差が、視野角の−方向と+方向との値が互いに非対称性をみせること、を確認することに基づいて、ネマチックハイブリッド配向の有無を確認する方法を採用してもよい。
<偏光子>
偏光子としては、通常、偏光子の片側または両側に、TACフィルムなどからなる保護基板を有するものが使用される。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性材料(沃素、染料)を吸着・配向したものが好適に用いられる。偏光子の厚さも特に制限されないが、5〜80μmである。
<積層偏光板の製造方法>
積層偏光板は、液晶フィルムと偏光子とを、それぞれ接着剤または粘着剤を介して互いに貼り合わせることにより製造することができる。また、重合性液晶組成物と所望により二色性色素を含む混合物を、直接、ないしは、配向膜等を介して偏光板の偏光子上に塗布、配向固定化することによっても、製造することができる。接着剤および粘着剤は、光学的に等方であり、透明なものであればよく、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものを好ましく用いることができる。
積層偏光板が備える液晶フィルムは、ネマチックハイブリッド配向構造を固定化した液晶フィルムであることから、当該フィルムの上下は光学的に等価ではない。したがって楕円偏光又は円偏光の機能を有する積層偏光板として、液晶フィルムのどちらのフィルム面を偏光子側にするのかによって、また液晶セル等の光学パラメーターとの組合せによって、表示性能が異なる。本発明は液晶フィルムのどちらのフィルム面を偏光板側にするのか限定しないが、積層偏光板に要求される光学特性、また積層偏光板を備える有機EL表示装置に要求される表示特性等を考慮して、積層偏光板の構成ならびに液晶表示装置、有機EL表示装置への配置条件等を決定することが望ましい。
<有機EL素子>
有機EL素子は、少なくとも、プラスチック基板、有機発光層と、電極とを備える。一実施形態においては、有機EL素子2は、図1に示す通り、プラスチック基板6と、第1の電極7と、正孔輸送層8と、有機発光層9と、電子輸送層10と、第2の電極11と、を備える。このような構成において、第2の電極11からは電子が、第1の電極7からは正孔が注入され、両者が有機発光層9で再結合することにより、有機発光層9の発光特性に応じた波長で発光する。有機発光層9で生じた光は、直接または第2の電極11で反射した後、第1の電極7、プラスチック基板6、積層偏光板1を通過して外部に出射する。
<プラスチック基板>
有機EL素子は、基板として、プラスチック基板を備え、これにより、耐熱性に優れ、かつ靭性が高く、曲げたり丸めたりして収納可能なフレキシブル表示パネルの実現が可能となる。
プラスチック基板を構成する材料は、透明であればよく、ポリイミド樹脂を含んでなることが好ましい。このポリイミド樹脂は、例えば、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物などの酸無水物と、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタンなどのジアミンとを重合させて得ることができる。好ましくは、酸無水物およびジアミンの少なくとも1方に脂肪族モノマーまたは脂環族モノマーを重合させた状態で、これらを重合させることが好ましい。これにより、プラスチック基板の透明性が顕著に向上する。
脂肪族モノマーのうち、酸無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを用いることができ、脂肪族モノマーのうち、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、シロキサンジアミンなどを用いることができる。また脂環族モノマーのうち、酸無水物としては、例えば、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、などを用いることができ、脂環族モノマーのうち、ジアミンとしては、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンなどを用いることができる。
また、プラスチック基板は、下記式(6)を満足するようなリターデーション特性を有することが好ましい。
10nm≦Rth’(550)≦80nm (6)
<第1の電極>
第1の電極は、電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させることができる。第1の電極は、有機発光層での発光を取り出すために、透明であることが好ましい。電極物質としては、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO2、CuI、ZnOなどが挙げられる。また、第1の電極の厚さは、20〜300nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。
<第2の電極>
第2の電極も、第1の電極同様、電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させることができる。電極物質としては、電子注入を容易にし、発光効率を上げるため、仕事関数の小さな物質であることが好ましく、例えば、Mg、Ag、Mg−Ag合金、Mg−In合金、Na、Na−K合金、Li、Al、Al−Li合金などが挙げられる。また、第2の電極の厚さは、10〜400nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。
<正孔輸送層>
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含んでなり、正孔注入層や電子阻止層もこれに含まれる。正孔輸送材料としては、例えば、ポリトリフェニルアミン、α−NPD、TCTA、CBP等を挙げることができる。また、正孔輸送層の厚さは、5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。
<有機発光層>
有機発光層は、ポリビニルカルバゾール、ポリオクチルフルオレンまたはAlキノリノラート錯体、Irキノリラート錯体などをダイコート法、真空蒸着法などの方法により形成させることができる。また、有機発光層の厚さは、5〜30nmであることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。
<電子輸送層>
電子輸送層は、第2の電極より注入された電子を有機発光層に伝達する機能を有し、電子注入層や正孔阻止層もこれに含まれる。また、電子輸送層は、電子輸送材料を含んでなり、電子輸送材料としては、例えば、Alキノリノラート錯体、BCP,TPBiなどを挙げることができる。また、電子輸送層の厚さは、5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。
<有機EL表示装置の製造方法>
有機EL表示装置は、積層偏光板が備える液晶フィルムと、有機EL素子が備えるプラスチック基板とを、それぞれ接着剤または粘着剤を介して互いに貼り合わせることにより製造することができる。接着剤および粘着剤としては、積層偏光板の製造において使用したものを同様に使用することができる。
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例で用いた各分析方法は以下の通りである。
(1)赤外吸収スペクトル(IR)の測定
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300)を用い、透過法にてポリイミド前駆体およびポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを測定した。また、合成したエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の分子構造を確認するためにKBr法により赤外吸収スペクトルを測定した。
(2)固有粘度の測定
0.5重量%のポリイミド前駆体溶液(溶媒:N,N−ジメチルアセトアミド)について、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
(3)GPCの測定
化合物をテトラヒドロフランに溶解し、東ソー社製8020GPCシステムにて測定した。カラムはTSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000、SuperH4000を直列につなぎ、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて測定した。分子量の較正にはポリスチレンスタンダードを用いた。
(4)液晶材料の熱挙動の確認
液晶材料の相挙動はメトラー社製ホットステージFP82HT上で、試料を加熱しつつ、オリンパス社製BH2偏光顕微鏡で観察した。ガラス転移温度、相転移温度は、Perkin−Elmer社製示差走査熱量計DSC8000により昇降温速度20℃/分で測定した。
(5)フィルムの顕微鏡観察
オリンパス光学社製BH2偏光顕微鏡で液晶の配向状態を観察した。
(6)膜厚測定法
SLOAN社製SURFACE TEXTURE ANALYSIS SYSTEM Dektak 3030ST、もしくはニコン社製DIGIMICRO MFC−101を用いた。また、干渉波測定(日本分光(株)製 紫外・可視・近赤外分光光度計V−570)と屈折率のデータから膜厚を求める方法も併用した。
(7)複屈折の測定
フィルム面内のリターデーション値(Δn・d)及び膜厚方向のリターデーション値Rthは、王子計測機器(株)製自動複屈折計KOBRA−WR、AXOMETRICS社製AxoScanを用いて測定した。
(8)二色性色素の偏光吸収スペクトル、透過率測定
日本分光(株)製分光スペクトル(V−570)を用いて測定した。
[実施例1]
(重合性液晶組成物(A)と二色性色素の混合溶液の調製)
下記式で表される示される棒状液晶化合物(21)と二種類以上のメソゲン基を有する化合物(22)をそれぞれ準備した。なお、棒状液晶化合物(21)と二種類以上のメソゲン基を有する化合物(22)は、特開2002−267838号公報に記載された方法により製造した。
次に、棒状液晶化合物(21)17.6重量部と、二種類以上のメソゲン基を有する化合物(22)4重量部とを混合し、第一の混合物(重合性液晶組成物(A)とする)を得た。次いで、第一の混合物100重量部に、二色性色素(長瀬産業社製トリスアゾ色素、商品名:G−241、極大吸収波長560nm)0.08重量部を添加し、更に、重合開始剤(Ciba−Geigy社製、商品名:イルガキュア651、室温(25℃)条件下で固体)を、重合性液晶組成物(A)と二色性色素の総量100重量部に対して0.2重量部となる割合で添加して、重合性液晶組成物(A)、二色性色素と、重合開始剤とを混合してなる第二の混合物(固体)を得た。次いで、第二の混合物を、メチルエチルケトン中に溶解させて、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで不溶分をろ過して、重合性液晶組成物(A)、二色性色素と、重合開始剤と、溶媒を含む混合溶液(第三の混合物)を得た。なお、このような第三の混合物の製造に際しては、第三の混合物中の溶媒の含有量が67重量%となり、重合性液晶組成物(A)、二色性色素と重合開始剤との総量が33重量%となるようにして溶媒を用いた。
(液晶フィルム(1)の製造)
まず、配向基板は以下のようにして調製した。厚さ38μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャインA4100)を15cm角に切り出し、アルキル変性ポリビニルアルコール(PVA)(クラレ株式会社製、商品名:MP−203)の5重量%溶液(溶媒は、水とイソプロピルアルコールの重量比1:1の混合溶媒)をスピンコート法により塗布し、50℃のホットプレートで30分乾燥した後、120℃のオーブンで10分間加熱した。次いで、レーヨンのラビング布でラビングした。得られたPVA層の膜厚は1.2μmであった。ラビング時の周速比(ラビング布の移動速度/基板フィルムの移動速度)は4とした。
このようにして得られた配向基板に、上述のようにして得られた重合性液晶組成物(A)と、二色性色素と、重合開始剤と、溶媒とを含む混合溶液(第三の混合物)をスピンコート法により塗布(コーティング)して、塗膜(ウエット膜厚:5μm)を形成し、塗膜と配向基板との積層体を得た。
次に、塗膜と配向基板との積層体を圧力:1013hPa、温度:72℃で2分乾燥後、10分かけて62℃まで徐冷し、塗膜から溶媒を乾燥除去した(乾燥工程)後、室温まで急冷した。
次いで、乾燥工程により乾燥した後の塗膜に対して、照度:15mW/cmの高圧水銀ランプを用いて、積算照射量が200mJ/cmとなるようにして、紫外光(ただし、365nmの波長の光を測定した光量)を照射することにより、液晶化合物を重合(硬化)させ、配向状態を固定化し、配向基板上に配向状態が固定化された液晶フィルム(1)が積層された積層体(液晶フィルム(1)と配向基板の積層体)を得た。
基板として用いたPETフィルムは大きな複屈折を持ち光学用フィルムとして好ましくないため、得られた配向基板上の液晶フィルム(1)を、紫外線硬化型接着剤を介して、厚み40μmのTACフィルム(富士フィルム株式会社製、商品名:Z−TAC)に転写した。すなわち、PETフィルム上の硬化した液晶フィルム(1)の上に、接着剤を5μm厚となるように塗布し、TACフィルムでラミネートして、TACフィルム側から紫外線を照射して接着剤を硬化させた後、配向基板を剥離した。
得られた光学フィルム(液晶フィルム(1)/接着剤層/TAC)を偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。
TACフィルムと液晶フィルム(1)との積層体およびTACフィルム単体の面内方向のリターデーション(Δnd)の波長分散特性をAxometrix社製の商品名「Axoscan」を用いて測定し、両者の引き算から、液晶フィルム(1)の複屈折の波長分散特性を測定した。図9に、液晶フィルム(1)の複屈折の波長分散特性を、表1に光学特性結果をまとめる。550nmでのΔn・dは143nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.973、Δn・d(580)/Δn・d(550)=1.014であった。特に、測定波長500nm〜600nmの範囲では、測定波長が長波長ほど位相差が大きくなることを確認した。また、550nmにおける厚さ方向のリターデーション値Rth(550)は−22nmであった。なお、液晶フィルム(1)の厚みは3.5μmであった。
また、得られた光学フィルムをラビング方向(液晶化合物の配向方向)に傾けたときのレターデーション(Δnd)を「Axoscan」を用いて測定した。測定結果を図10に示す。図10に示す通り、左右非対称な視野角依存性を持っており、傾斜配向していることが分かった。得られた光学フィルムは、特開平11−194325号公報の実施例に記載された方法により、この液晶フィルムが均一チルト配向ではなく、ネマチックハイブリッド配向した液晶フィルムであることを確認した。解析の結果、平均チルト角が40度であった。
(積層偏光板の製造)
まず、偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムを温水中に浸漬して膨張させた後、ヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液中にて染色し、次いでホウ酸水溶液中で一軸延伸処理して偏光子を得た。この偏光子は、分光光度計にて単体透過率、平行透過率および直交透過率を調べたところ、厚み20μm、透過率43.5%、偏光度99.9%であった。
得られた偏光子の一方の面側に、接着剤を5μm厚となるように塗布し、厚み40μmのTACフィルム(富士フィルム株式会社製、商品名:T40UZ)を透明保護基板として接着して、偏光子/接着層/透明保護基板からなる積層体を形成した。
次に、偏光子の他方の面側に、上述したようにして製造した、液晶フィルム(1)と配向基板との積層体から、液晶フィルム(1)をアクリル系UV硬化型接着剤を介して転写した。
すなわち、配向基板上の配向状態が固定化された液晶フィルム(1)の上に、アクリル系UV硬化型接着剤を5μm厚となるように塗布し、これを偏光子/接着層/透明保護基板からなる積層体の偏光子と接着させてラミネートして、配向基板側から600mJ/cmの紫外線を照射してUV硬化型接着剤を硬化させて、配向基板/液晶フィルム(1)/接着層/偏光子/接着層/透明保護基板からなる積層体を形成した後、配向基板を剥離し、積層偏光板(液晶フィルム(1)/接着層/偏光子/接着層/透明保護基板)を得た。
なお、偏光子と液晶フィルム(1)とをラミネートする際の貼合角は、偏光子3の吸収軸14と、液晶フィルム4における液晶フィルム(1)のチルト方向15と、を45度の角度となるよう交差させて接着したが、これに限定されず、貼合角は45度と135度のどちらでもよく、積層偏光板1の使用方法により適宜選択することができる。積層偏光板の厚みは、73.5μmであり、積層偏光板内の液晶フィルム(1)は、液晶分子がより立ち上がっている面が偏光子側であり、液晶分子がより寝ている面が偏光子側と反対側であった。なお、得られた積層偏光板の断面構造の概念図を図11に示す。
(プラスチック基板の製造)
まず、トリメリット酸無水物クロリド50mmolをテトラヒドロフラン27mLに溶解し、密栓した。この溶液に、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン25mmolおよびピリジン6mLをテトラヒドロフラン14mLに溶解したものを、シリンジを用いて、室温でゆっくりと滴下した。これにより、白色沈殿が生じた。滴下終了後、反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応液をエバポレーターで溶媒留去した後、そのフラスコへ水を投入して、洗浄し、ピリジン塩酸塩を除去した。次いで、180℃で24時間真空乾燥して白色の粗生成物を得た。更に無水酢酸/酢酸(体積比7/3)で再結晶させ、ベンゼンで洗浄後、180℃で24時間真空乾燥させ、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物(以下、「TAPS」と略記する。)を得た。尚、生成物のIRからフェニルエステル基と酸無水物基の特性吸収を確認し、目的物であることを確認した。
攪拌機付反応容器中に、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(シス−シス体の含有率8モル%)10mmolをN,N−ジメチルアセトアミド50mLに溶解し、この溶液に上記のようにして得られたTAPS10mmolを徐々に加えた。TAPSの添加後、約30分間放置し、均一・透明な溶液が得られた。更に、室温もおいて24時間撹拌し、透明で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。この際の溶質濃度は14.7重量%であった。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で1ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃で測定したポリイミド前駆体の固有粘度は0.911dL/gであり、高重合体であった。
上記のようにして得られたポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、60℃、1時間乾燥して得たポリイミド膜を、減圧下、180℃、230℃、250℃各温度で30分段階的に昇温し、300℃で1時間熱処理して膜厚20μmの透明で強靭なポリイミド基板(プラスチック基板)を形成させた。イミド化の完結は赤外吸収スペクトルから確認した。残留歪を除去するために、ガラス基板からポリイミド基板を剥がした後、ポリイミド基板を更に210℃で1時間熱処理した。180°折り曲げ試験によりこのポリイミド基板は破断せず、可撓性を示した。ポリイミド基板のΔn・d(550)は0nm、Rth’(550)は20nmであった。
(有機EL表示装置の作成)
まず、図12に示すように、ガラス基板12と、ポリイミド基板(プラスチック基板)6と、からなる第1の基板13上に、透明な第1の電極7を形成した。ここでは、第1の電極7として、ITOを蒸着した。なお、その膜厚は、100nmとした。そして、第1の電極7の上に、正孔輸送層8として、ポリアニリンをダイコート法により、積層した。なお、厚さは、100nmとした。そして、正孔輸送層8の上に、有機発光層9として、ポリビニルカルバゾールをダイコート法により、積層した。なお、その厚さは、100nmとした。有機発光層9の上に、電子輸送層10として、Alキノリノラート錯体からなる層をスパッタリングした。なお、その厚さは、100nmとした。さらに、電子輸送層10の上に、第2の電極11として、マグネシウムを蒸着し、有機EL素子2を得た。その厚さは200nmとした。
上記のようにして得られた有機EL素子2のガラス基板12を剥がし、ポリイミド基板6上に、アクリル系粘着剤を介して、実施例1−1において得られた積層偏光板の液晶フィルム(1)を粘着し、有機EL表示装置を製造した。液晶フィルム(1)およびプラスチック基板の厚さ方向のリターデーション値(550)の和(Rth+Rth’)は、−2nmであった。
[実施例2]
(積層偏光板の製造)
実施例1で得た偏光子/接着層/透明保護基板からなる積層体の偏光子に、同じく実施例1で製造した光学フィルム(液晶フィルム(1)/接着剤層/TAC)をアクリル系可視光硬化型接着剤を介してラミネートした。
すなわち、液晶フィルム(1)の上に、アクリル系可視光硬化型接着剤を5μm厚となるように塗布し、これを偏光子/接着層/透明保護基板からなる積層体の偏光子を接着させてラミネートし、TACフィルム側から600mJ/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂層を硬化させて、積層偏光板(TAC/接着剤層/液晶フィルム(1)/UV硬化型樹脂層/偏光子/接着層/透明保護基板)を得た。
なお、偏光子と液晶フィルム(1)とをラミネートする際の貼合角は、偏光子3の吸収軸14と、液晶フィルム4のチルト方向15と、を45度の角度となるよう交差させて接着した。積層偏光板の厚みは、118.5μmであった。積層偏光板内の液晶フィルム(1)は、液晶化合物がより寝ている面が偏光子側であり、液晶化合物がより立っている面が偏光子側と反対側になる。なお、得られた積層偏光板の断面構造の概念図を図13に示す。
(有機EL表示装置の作成)
上記のようにして得られた積層偏光板に変更した以外は、実施例1と同様にして、有機EL表示装置を製造した。なお、液晶フィルム(1)およびプラスチック基板の厚さ方向のリターデーション値(550)の和(Rth+Rth’)を、表2に示す。
[実施例3]
(液晶フィルム(2)の製造)
二色性色素を混合しなかった以外は、実施例1と同様にして、配向基板上に配向状態が固定化された液晶フィルム(2)を積層した積層体(液晶フィルム(2)と配向基板との積層体)を得た。
また、実施例1と同様にして、光学フィルム(液晶フィルム(2)/接着剤層/TAC)を得た。
図14に、液晶フィルム(2)の複屈折の波長分散特性を、表1に光学特性結果をまとめる。550nmでのΔn・dは143nmであり、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.981、Δn・d(580)/Δn・d(550)=1.000であった。特に、測定波長400nm〜550nmの範囲では、測定波長が長波長ほど位相差が大きくなるが、550nm以上では測定波長によらずほぼ位相差値は一定であることを確認した。また、Rth(550)は−2nmであった。なお、液晶フィルム(2)の厚みは3.5μmであった。
また、得られた光学フィルムをラビング方向(液晶化合物の配向方向)に傾けたときのレターデーション(Δnd)を測定した結果、実施例1で製造した光学フィルムのグラフ(図10)と一致し、左右非対称な視野角依存性を持ち、傾斜配向していることが分かった。得られた光学フィルムは、この液晶フィルム(2)が均一チルト配向ではなく、ネマチックハイブリッド配向した液晶フィルムであることを確認した。平均チルト角が34度であった。
(積層偏光板の製造)
上記のようにして得られた液晶フィルム(2)と配向基板との積層体を用い、実施例1と同様にして、透明保護基板/接着層/偏光子/UV硬化樹脂層/液晶フィルム(2)からなる積層偏光板を得た。積層偏光板の厚みは、73.5μmであった。
(有機EL表示装置の作成)
上記のようにして得られた積層偏光板に変更した以外は、実施例1と同様にして、有機EL表示装置を製造した。なお、液晶フィルム(2)およびプラスチック基板の厚さ方向のリターデーション値(550)の和(Rth+Rth’)を、表2に示す。
[比較例1]
(液晶フィルム(3)の製造)
塗膜と配向基板との積層体の乾燥条件を、圧力:1013hPa、温度:72℃で2分乾燥後、急冷して室温まで冷却した点を除いて、実施例1と同様の方法で、配向基板上に配向状態が固定化された液晶フィルム(3)を積層した積層体(液晶フィルム(3)と配向基板との積層体)を得た。
また、実施例1と同様にして、光学フィルム(液晶フィルム(3)/接着剤層/TAC)を得た。
光学フィルムの正面方向のレターデーション(Δn・d)の波長分散特性、斜め方向の位相差測定による平均チルトの測定を行ったところ、波長550nmでのΔn・dは143nm、平均チルト角は0度でありホモジニアス配向(いわゆる平行配向)であることがわかった。表1に光学特性結果をまとめる。また、複屈折の波長分散特性は、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.973であり、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.014であった。また、Rth(550)は69nmであった。なお、液晶フィルム(3)の厚みは2.5μmであった。
(積層偏光板の製造)
上記のようにして得られた液晶フィルム(3)と配向基板との積層体を用い、実施例1と同様にして、透明保護基板/接着層/偏光子/UV硬化樹脂層/液晶フィルム(3)からなる積層偏光板を得た。積層偏光板の厚みは、72.5μmであった。
(有機EL表示装置の作成)
上記のようにして得られた積層偏光板に変更した以外は、実施例1と同様にして、有機EL表示装置を製造した。なお、液晶フィルム(3)およびプラスチック基板の厚さ方向のリターデーション値(550)の和(Rth+Rth’)を、表2に示す。
[比較例2]
(液晶フィルム(4)の製造)
塗膜と配向基板との積層体の乾燥条件を、圧力:1013hPa、温度:72℃で2分乾燥後、急冷して67℃まで冷却した点を除いて、実施例1と同様の方法で、配向基板上に配向状態が固定化された液晶フィルム(4)を積層した積層体(液晶フィルム(4)と配向基板との積層体)を得た。
また、実施例1と同様にして、光学フィルム(液晶フィルム(4)/接着剤層/TAC)を得た。
光学フィルムの正面方向のレターデーション(Δn・d)の波長分散特性、斜め方向の位相差測定による平均チルトの測定を行ったところ、波長550nmでのΔn・dは143nm、平均チルト角は15度でありホモジニアス配向(いわゆる平行配向)であることがわかった。表1に光学特性結果をまとめる。また、複屈折の波長分散特性は、Δn・d(500)/Δn・d(550)=0.981であり、Δn・d(600)/Δn・d(550)=1.000であった。また、Rth(550)は55nmであった。なお、液晶フィルム(4)の厚みは2.5μmであった。
(積層偏光板の製造)
上記のようにして得られた液晶フィルム(4)と配向基板との積層体を用い、実施例1と同様にして、透明保護基板/接着層/偏光子/UV硬化樹脂層/液晶フィルム(4)からなる積層偏光板を得た。積層偏光板26の厚みは、72.5μmであった。
[比較例3]
〈液晶組成物(B)を含む塗工液(B)の調製〉
特開2004−315736号公報、特開2007−277462号公報を参考にして、ラジカル重合により、下記式(7)で表される側鎖型液晶化合物を合成した。得られた側鎖型液晶化合物の数平均分子量Mnは8,900、重量平均分子量Mwは19,600であった。なお、式(7)における数字は各ユニットのモル組成比を表すものであって、ブロック共重合体を意味するものではない。DSC測定の結果、昇温時のTgは59℃で、それ以上の温度ではネマチック液晶相を示し、175℃以上で等方相を示した。
式(7)で表される側鎖型液晶化合物を0.9gと、式(8)で表されるジオキセタン化合物を0.05g、式(9)で表されるアクリル化合物0.05gを、9gのシクロヘキサノンに溶解し、暗所でカチオン系光開始剤トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピレンカーボネート溶液(アルドリッチ社製、試薬)0.1g(式(7)、式(8)、式(9)の化合物3種からなる混合物の総重量に対して濃度5重量%)、界面活性剤としてパーフルオロアルキル基含有界面活性剤を0.002g(式(7)、式(8)、式(9)の化合物3種からなる液晶化合物の総重量に対して濃度0.2重量%)を加えた後、孔径0.5μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルター(アドバンテック東洋(株)製、品名25JP050AN)でろ過して、液晶組成物(B)を含む塗工液(B)を調製した。なお、式(8)のジオキセタン化合物は、偏光顕微鏡観察及びDSC測定の結果、昇温時は74℃で結晶相からネマチック液晶相に転移し、96℃で等方相となり、降温時は88℃で等方相からネマチック相に転移した後、54℃で結晶相を示した。また、式(9)のアクリル化合物は、偏光顕微鏡観察及びDSC測定の結果、液晶相を示さず、昇温時30℃で融解した。第2の液晶組成物(B)の一部をガラス基板上にスピンコート法により塗布し、55℃のホットプレートで60分加熱して溶媒を除去した。本組成物をガラス基板上からかき取り、熱挙動の確認を偏光顕微鏡観察およびDSC測定にて行ったところ、昇温時のTgは50℃で、155℃まで液晶相を示し、それ以上の温度で等方相を示した。
(液晶フィルム(5)の製造)
まず、配向基板は以下の様にして調製した。還流冷却器および攪拌機の付いた1L三口フラスコにPVA(日本酢ビ・ポバール株式会社製、商品名:JL−18E、ケン化度83〜86%、平均重合度1800)24.0gおよび脱イオン水460.8g(電気伝導度値;1μS/cm以下)を投入し、95℃、3時間加熱し攪拌溶解後、70℃まで冷却した。イソプロピルアルコール115.2g(関東化学株式会社製、鹿一級、純度99%以上)を徐々に加え、65℃〜70℃で2時間攪拌し、透明な均一溶液を得た。室温まで冷却し、前記槽からPVA溶液を濾過しながら抜き出した。濾過は、平均粒径1μmの粒子を捕集できるカートリッジフィルター(ADVANTEC TCP−JX−S1FE(1μm))を使用し、固形分濃度約4重量%のPVA溶液350gを得た。
次に厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャインA4100)を15cm角に切り出し、コロナ放電処理(100W・min/m)を施した後、厚み1.1mm、13cm角のガラス基板上に固定し、スピンコーターにセットした。前記PVA溶液を300rpmで30秒の条件でスピンコート法により塗布し、50℃のホットプレートで30分乾燥した後、120℃のオーブンで10分間加熱して、PVA配向基板(PVA/PET)を得た。得られたPVA配向基板のPVA層の膜厚は1.2μmであった。
液晶組成物(B)を含む塗工液(B)を、PVA配向基板上にスピンコート法により塗布した。次いで55℃のホットプレートで10分乾燥し、100℃のオーブンで3分間熱処理することで液晶組成物(B)を配向させた。次いで、70℃に加熱したアルミ板に試料を密着させ、その上から、高圧水銀灯ランプにより300mJ/cmの紫外光(365nmで測定した光量)を空気中で照射して、オキセタニル基をカチオン反応させて液晶組成物(B)を重合(硬化)させることで、PVA配向基板上に配向状態が固定化された、液晶組成物(B)からなる液晶フィルム(5)の積層物(液晶フィルム(5)/PVA/PET)を得た。液晶フィルム(5)の厚みは0.8μmであった。
配向基板として用いたPETフィルムは大きな複屈折を持ち、液晶フィルム(5)の光学測定が困難なため、積層物の液晶フィルム(5)を、光学的に等方である粘着剤を介して、厚み0.5mm、40mm角の光学的に等方なガラス基板上に転写した。すなわち、積層物の液晶フィルム(5)とガラス基板とを厚み15μmの粘着剤を介して貼合し、配向基板(B)を剥離することで、ガラス基板付きの積層物(液晶フィルム(5)/粘着層/ガラス基板)を得た。
得られた積層物をクロスニコルにした偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向で、顕微鏡観察から正の一軸性屈折率を有するホメオトロピック配向であることがわかった。積層物を傾けて斜めから光を入射し、同様にクロスニコルで観察したところ、光の透過が観測された。また、積層物の位相差を測定した結果、液晶フィルム単独の面内のリターデーション値Re(550)は0nm、厚さ方向のリターデーション値Rth(550)は−81nmであった。
(積層偏光板の作製)
上記のようにして得られた液晶フィルム(5)の積層物(液晶フィルム(5)/PVA/PET)を、比較例1で得られた透明保護基板/接着層/偏光子/UV硬化樹脂層/液晶フィルム(1)からなる積層偏光板とUV硬化樹脂を介して積層させ、透明保護基板/接着層/偏光子/UV硬化樹脂層/液晶フィルム(1)/UV硬化樹脂層/液晶フィルム(5)/PVA/PETからなる積層体を得たのち、液晶フィルム(5)側のPVA配向基板を剥離した。積層偏光板の厚みは、78.3μmであった。
(有機EL表示装置の作成)
上記のようにして得られた積層偏光板に変更した以外は、実施例1と同様にして、有機EL表示装置を製造した。なお、液晶フィルム(5)およびプラスチック基板の厚さ方向のリターデーション値(550)の和(Rth+Rth’)を、表2に示す。
(A)正面観察時の外光反射防止効果の評価
有機EL素子に電圧を印加しない状態で、照度約100ルックスの環境下に置き、積層偏光板貼合部分の反射色の黒味を官能評価した。黒味は以下の4つのレベルのいずれに該当するかを確認した。評価結果は、表2に示す。
1:ほぼ完全に外光反射が無く、色身も黒色である。
2:1よりは劣るが、十分に外光反射が抑えられ、色味もほぼ黒色である。
3:外光反射がやや視認される。
4:外光反射が極めて視認される。
(B)外光反射防止効果の視野角特性の評価
有機EL素子に電圧を印加しない状態で、照度約100ルックスの環境下に置き、正面と斜め45度における積層偏光板貼合部分の反射色の黒味を官能評価した。黒味は以下の4つのレベルのいずれに該当するかを確認した。評価結果は、表2に示す。
1:正面と斜め方向でほぼ外光反射に変化は見られない。
2:1より劣るが、正面と斜め方向での外光反射の差はわずかである。
3:正面と斜め方向で外光反射に差が認められる。
4:正面と斜め方向で外光反射に差がかなり認められる
表2に示すように、実施例1から3、比較例1から2において得られた有機EL表示装置は、正面観察時の外光反射防止効果に優れることがわかった。また、ネマチックハイブリッド配向した液晶フィルムを備える実施例1から3において得られた有機EL表示装置は、斜め方向から見た時でも反射防止効果に優れることが分かった。
一方で、平行配向した液晶フィルムを備える比較例1から3において得られた有機EL表示装置は、斜め方向から見た場合、外光反射が視認され、色味も青味がかることがわかった。複屈折の波長分散特性は同等であることから、この特性の違いは、ネマチックハイブリッド配向とホモジニアス配向という液晶配向の違いに起因すると考えられる。
さらに、実施例1で得られた有機EL表示装置と、実施例1で得られた有機EL表示装置とを比べた場合、ともに反射率の視野角特性に優れており、ネマチックハイブリッド配向の構造を上下逆にした場合でも、同様に視野角を改善することができることがわかった。
1:積層偏光板
2:有機EL素子
3:偏光子
4:液晶フィルム
5:保護基板
6:プラスチック基板
7:第1の電極
8:正孔輸送層
9:有機発光層
10:電子輸送層
11:第2の電極
12:ガラス基板
13:第1の基板
14:偏光子の吸収軸
15:液晶フィルムのチルト方向

Claims (6)

  1. 有機エレクトロルミネッセンス素子と、積層偏光板と、を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、プラスチック基板、有機発光層および電極を含んでなり、
    前記積層偏光板は、偏光子および液晶フィルムを含んでなり、
    前記液晶フィルムは、ネマチックハイブリッド配向した液晶化合物を含む重合性液晶組成物を含んでなり、複屈折Δnが、可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有し、
    前記液晶フィルムの厚さ方向の見かけのリタ−デーションRth(550)と前記プラスチック基板の厚さ方向リタ−デーションRth’(550)の和が下記式(1)を満たす、ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
    −30nm≦Rth(550)+Rth’(550)≦30nm (1)
  2. 前記液晶フィルムにおける前記液晶化合物の平均チルト角が、5度〜85度である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  3. 特定波長における前記液晶フィルムの法線方向でのリターデーションの比が、下記数式(2)および(3):
    0.80<Δn・d(500)/Δn・d(550)<1.00 (2)
    1.00<Δn・d(600)/Δn・d(550)<1.15 (3)
    を満たす、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  4. 前記液晶フィルムが、二色性色素を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  5. 前記二色性色素を含んでなる液晶フィルムの法線方向でのリターデーションをΔna・da、
    前記二色性色素を含まない液晶フィルムの法線方向でのリターデーションをΔnb・db、
    とした場合に、下記数式(4)
    Δna・da(580)/Δna・da(550)−Δnb・db(580)/Δnb・db(550)>0 (4)
    を満たす、請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  6. 前記二色性色素の極大吸収波長が380〜780nmの波長領域にある、請求項4または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置
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