JP2016139566A - 有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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坂 哲 也 上
Tetsuya Uesaka
坂 哲 也 上
中 大 直 田
Hironao Tanaka
中 大 直 田
崎 吾 郎 須
Goro Suzaki
崎 吾 郎 須
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Abstract

【課題】軽量化、薄型化が可能であり、生産性が高く、視野角特性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス表示装置100において、ポリイミド透明基板15、有機発光層18および電極16、20を含んでなり、積層偏光板14は、第1の光学異方性層12、第2の光学異方性層13ならびに偏光子11を含んでなり、第1の光学異方性層12の最大主屈折率nx1および/または複屈折Δn1が可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有し、第2の光学異方性層13は、ny2≦nx2<nz2の屈折率特性を有する。(ここで、nx2は第2の光学異方性層面内の最大主屈折率、ny2は第2の光学異方性層面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz2は第2の光学異方性層の厚さ方向の主屈折率である。)【選択図】図1

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関し、より詳細には、特に斜め方向でも視認性に優れ、かつ広帯域な領域において理想的な波長分散特性を有する視野角特性の良好な有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
一般に、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、場合により、「有機EL表示装置」という。)は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層した有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、場合により、「有機EL素子」という。)を備えている。有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されており、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機EL素子を備える有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ直線偏光板と位相差板を組み合わせた円偏光板を形成させることにより、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。このように、有機EL表示装置には一般に、偏光板と位相差板からなる反射防止フィルムが最表面に配置されるため、有機EL表示装置が備える透明基板に対しても光学的に等方性(位相差が小さい)であることが求められる。
従来、液晶表示装置や有機EL表示装置には透明基板として、位相差が小さいガラス基板が用いられているが、近年の大画面化の動向に伴い、軽量化および生産性向上の問題が深刻化している。
現在、これら問題を解消すべく、ガラス基板の代わりに、より軽量であり、成型加工容易性の高いプラスチック基板の採用が求められている。通常、プラスチック基板は耐熱性が低く、製造工程における高温に耐えることのできないものが多いが、ポリイミド樹脂を用いて作製したポリイミド基板は、耐熱性に優れており、さらに強く採用が求められている(特許文献1)。
しかしながら、ポリイミド基板は、位相差、特に厚さ方向の位相差(Rth)が大きく、透明基板として用いた場合、視野角特性の優れる有機EL表示装置は得ることができないという問題があった。
ここで、特許文献2には、偏光子と1/4波長板の間にNZ<0の複屈折体を設けた円偏光板が開示されている。ここで、NZをNZ=(nx−nz)/(nx−ny)(式中、nx及びnyは、波長550nmの光に対する面内の主屈折率を表し、nx≧nyを満たす。nzは、波長550nmの光に対する厚さ方向の主屈折率を表す)と定義している。この円偏光板は、NZ<0の複屈折体を設けることより位相差の視野角依存性を補償し、円偏光板の視野角特性を向上させるものであるが、有機EL表示装置におけるプラスチック基板の位相差の視野角依存性に関する記載はなく、プラスチック基板(ポリイミド基板)由来の厚み方向の位相差補償方法については明記されていない。
特開2007−169304号公報 特開2005−326818号公報
軽量化、薄型化が可能であり、生産性が高く、より一層視野角特性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
本発明による有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、
有機エレクトロルミネッセンス素子と、積層偏光板と、を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、ポリイミド透明基板、有機発光層および電極を含んでなり、
前記積層偏光板は、第1の光学異方性層、第2の光学異方性層ならびに偏光子を含んでなり、
前記第1の光学異方性層の最大主屈折率nx1および/または複屈折Δn1が可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有し、
(ここで、nx1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層面内の最大主屈折率である。)
前記第2の光学異方性層は、ny2≦nx2<nz2の屈折率特性を有する。
(ここで、nx2は波長550nmの光に対する第2の光学異方性層面内の最大主屈折率、ny2は波長550nmの光に対する第2の光学異方性層面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz2は波長550nmの光に対する第2の光学異方性層の厚さ方向の主屈折率である。)
本発明の態様においては、前記第1の光学異方性層は、有機高分子と、二色性色素を含んでなることが好ましい。
本発明の態様においては、
前記二色性色素を含んでなる前記第1の光学異方性層の面内リターデーションをΔRe1a、
前記二色性色素を含まない前記第1の光学異方性層の面内リターデーションをΔRe1bとした場合に、
前記第1の光学異方性層が、下記式(1)を満足する特性を有することが好ましい。
ΔRe1a(580)/ΔRe1a(550)−ΔRe1b(580)/ΔRe1b(550)>0 (1)
(ここで、第1の光学異方性層の面内リターデーション値Re1aは、第1の光学異方性層の複屈折Δn1aと第1の光学異方性層の膜厚d1との積、すなわち、Re1a=(nx1a−ny1a)×d1[nm]で表され、Re1a(580)、Re1a(550)は、それぞれ波長580nm、550nmにおける第1の光学異方性層の面内のリターデーション値であり、nx1aは、第1の光学異方性層の最大主屈折率、ny1aは、第1の光学異方性層の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率である。また、前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の面内のリターデーション値Re1bは、第1の光学異方性層の複屈折Δn1bと第1の光学異方性層の膜厚d1との積、すなわち、Re1b=(nx1b−ny1b)×d1[nm]で表され、Re1b(580)、Re1b(550)は、それぞれ波長580nm、550nmにおける前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた第1の光学異方性層の面内のリターデーション値であり、nx1bは、前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の最大主屈折率、ny1bは、前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率である。)
本発明の態様においては、前記第1の光学異方性層が下記式(2)および(3)を満たすリターデーション特性を有することが好ましい。
0.70<Re1(450)/Re1(550)<1.00 (2)
1.00<Re1(650)/Re1(550)<1.30 (3)
本発明の態様においては、前記第1の光学異方性層が下記式(4)および(5)を満たすリターデーション特性を有することが好ましい。
0.80<Re1(500)/Re1(550)<1.10 (4)
1.00<Re1(580)/Re1(550)<1.15 (5)
本発明の態様においては、前記第2の光学異方性層の面内リターデーション値Re2および厚さ方向リターデーション値Rth2が下記式(6)および(7)を満たすことが好ましい。
0nm≦Re2≦20nm (6)
−500nm≦Rth2≦−30nm (7)
(ここで、Re2は、第2の光学異方性層の複屈折Δn2と第2の光学異方性層の膜厚d2との積、すなわち、Re2=(nx2−ny2)×d2[nm]で表される。
また、厚さ方向リターデーションRth2は、Rth2={(nx2+ny2)/2−nz2}×d2[nm]で表される。)
本発明の態様においては、 前記第1の光学異方性層の厚さ方向リターデーションRth1と、前記第2の光学異方性層の厚さ方向リターデーションRth2と、前記ポリイミド透明基板の厚さ方向リターデーションRth3と、が下記式(8)を満たすことが好ましい。
−40nm≦Rth1+Rth2+Rth3≦40nm (8)
(ここで、厚さ方向リターデーションRth1は、Rth1={(nx1+ny1)/2−nz1}×d1[nm]で表される。なお、nx1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層面内の最大主屈折率、ny1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層の厚さ方向の主屈折率である。また、厚さ方向リターデーションRth3は、Rth3={(nx3+ny3)/2−nz3}×d3[nm]で表される。なお、nx3は波長550nmの光に対する前記ポリイミド透明基板面内の最大主屈折率、ny3は波長550nmの光に対する前記ポリイミド透明基板面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz3は波長550nmの光に対する前記ポリイミド透明基板の厚さ方向の主屈折率、d3は前記ポリイミド透明基板の膜厚である。)
本発明の態様においては、前記有機高分子が、重合性液晶組成物であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記第1の光学異方性層が、重合性液晶組成物がホモジニアス配向した液晶フィルムからなることが好ましい。
本発明の態様においては、第2の光学異方性層が、重合性液晶組成物を含んでなり、前記重合性液晶組成物がホメオトロピック配向した液晶フィルムからなることが好ましい。
本発明の態様においては、前記二色性色素の極大吸収波長が、測定波長400〜800nmの領域にあることが好ましい。
本発明の態様によれば、前記ポリイミド透明基板は、ポリイミドを含んでなり、前記ポリイミドは、酸無水物と、ジアミンとを重合させることにより得られたものであり、前記酸無水物および/またはジアミンは、脂肪族モノマーまたは脂環族モノマーが重合されたものであることが好ましい。
本発明によれば、薄型化が可能であり、より一層の視野角特性に優れる有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
本発明の有機EL表示装置の断面模式図である。 有機分子の屈折率と吸収係数の波長分散特性を示す図である。 図2の異常分散領域を拡大した図である。 異方性を有する有機高分子に二色性色素を添加する前後での最大主屈折率nxと最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率nyの波長分散との比較を示す図である。 二色性色素の色素分子の長軸方向(nx方向)と短軸方向(ny方向)と吸収スペクトルとの比較を示す図である。 異方性を有する有機高分子に二色性色素を添加する前後での複屈折Δnの波長分散との比較を示す図である。 本発明の有機EL素子の断面模式図である。 実施例1の第1の光学異方性層の複屈折Δnの波長分散特性を示す図である。 実施例2の第1の光学異方性層の複屈折Δnの波長分散特性を示す図である。 実施例3の第1の光学異方性層の複屈折Δnの波長分散特性を示す図である。 実施例5の第1の光学異方性層の複屈折Δnの波長分散特性を示す図である。
<定義>
(1)複屈折Δn
複屈折Δnは、nx−nyで表される。
(2)屈折率(nx、ny、nz)
nxは、面内の最大主屈折率、nyは面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率という。nzは厚さ方向の主屈折率である。
(3)面内リターデーション値Re
面内リターデーション値Reは、Re=Δn×d=(nx−ny)×d[nm]で表される。なお、Re(550)は、波長550nmの光における光学異方性層の面内リターデーション値を意味する。なお、測定時の温度は23±2℃、相対湿度は45±5%である。
(4)厚さ方向リターデーション値Rth
厚さ方向リターデーションRthは、Rth={(nx+ny)/2−nz}×d[nm]で表される。なお、Rth(550)は、波長550nmの光における光学異方性層の厚さ方向リターデーション値を意味する。なお、測定時の温度は23±2℃、相対湿度は45±5%である。
(5)正常分散
固有吸収波長から離れた領域(図2のa1,a2,a3の領域)における屈折率nが波長が増すと共に単調に減少する分散を意味する。なお、本願明細書では、「正常分散」を「正の分散」と表記する。
(6)異常分散
固有吸収を含む波長域(図2のb1、b2、b3の領域)における屈折率nは、波長が増すとともに急激に増加する分散を意味する。なお、本明細書では、「異常分散」を「負の分散」と表記する。
なお、本発明において、異常光屈折率neおよび正常光屈折率noは、例えば、分光エリプソメトリー(堀場製作所社製、製品名「AUTO−SE」)を用い、温度23℃±2℃、相対湿度45±5%の条件下で波長領域440〜1000nmのスペクトルを測定することにより測定することができる。また、面内リターデーション値および厚さ方向リターデーション値は、例えば、複屈折を測定することが可能な装置(例えばAxometrix社製の商品名「Axoscan」、王子計測機器社製の商品名「KOBRA−WR」等)を用いて測定することができる。
<有機EL表示装置>
一実施形態における有機EL表示装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示す通り、有機EL表示装置100は、積層偏光板14と、有機EL素子21と、を備える。また、有機EL表示装置100は、前記した構成部材以外にも他の構成部材を付設することができる。例えば、カラーフィルターを本発明の有機EL素子21に付設することにより、色純度の高いマルチカラーまたはフルカラー表示を行うことができる有機EL表示装置100を作製することができる。さらに、必要に応じて光拡散層、光制御フィルム、導光板、プリズムシート等の部材(いずれも図示せず)を備えていてもよい。
太陽光や室内照明等により有機EL表示装置100の外部から素子面に対して垂直に入射した外光は、偏光子11により少なくとも半分の光は吸収され、残りが直線偏光として透過し、第1の光学異方性層12に入射する。第1の光学異方性層12は、1/4波長板として機能するため、第1の光学異方性層12を通過する際に円偏光に変換される。第1の光学異方性層12を出射した光は、第2の光学異方性層13に入射するが、第2の光学異方性層13は、正面位相差が非常に小さいため、円偏光の状態にはほとんど影響を与えない。第2の光学異方性層13を通過した円偏光は、ポリイミド透明基板15、第1の電極16、正孔輸送層17、有機発光層18および電子輸送層19を通過し、第2の電極20で鏡面反射するが、反射する際に位相が180度反転するため、入射時とは逆の円偏光として反射される。この逆回りの円偏光は、有機発光層18、第1の電極16、ポリイミド透明基板15、第2の光学異方性層13を円偏光の状態にほぼ影響なく通過し、第1の光学異方性層12に入射するが、第1の光学異方性層12によって偏光子の透過軸と直交する直線偏光に変換されるため、偏光子11で吸収され、外部に出射されない。
一方、斜め方向から入射した外光は、第1の光学異方性層12を通過する際の光路長が長くなるため、第2の光学異方性層13が存在しない場合には、第1の光学異方性層12のみでは1/4波長板として機能せず、楕円偏光となり、反射光は偏光子11を通過する際に一部透過して、観察者に視認されていた。すなわち、第2の光学異方性層13のない従来の円偏光板では、斜め方向からの光の外光反射防止効果が、正面方向と比べて大幅に低下する問題があった。しかしながら、本実施形態における積層偏光板14では、第1の光学異方性層12に加えて、第2の光学異方性層13を備えるため、それら全体として斜め方向からの光に対してもほぼ1/4波長位相差板として機能させることが可能となり、正面だけではなく、斜め方向からの光に対しても外光反射を防止することが可能となる。このため、本実施形態における積層偏光板14を備えた表示装置は、薄型化が可能で視野角依存性が少なく、斜め方向においても高コントラストな表示が可能でとなる。
<積層偏光板>
一実施形態において、積層偏光板14は、図1に示す通り、偏光子11と、第1の光学異方性層12と、第2の光学異方性層13と、を備えている。偏光子11の透過軸と第1の光学異方性層12の光軸は、45度または135度で交差するように配置されており、偏光子11を透過した直線偏光は、第1の光学異方性層12によって円偏光に変換される。
偏光子11と、第1の光学異方性層12と、第2の光学異方性層13の各層は、接着剤ないし粘着剤(図示せず)を介して積層されていてもよい。また、積層偏光板14の他の実施形態として、偏光子側にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の保護フィルムが設けられていてもよい。以下、本発明による積層偏光板を構成する各層について説明する。
<第1の光学異方性層>
第1の光学異方性層12は、有機高分子を含んでなり、その最大主屈折率nx1および/または複屈折Δn1が可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有し、好ましくは、有機高分子をフィルムに成膜した後に延伸することにより製造した延伸フィルム、または液晶組成物を配向膜などに塗布して、所定の液晶配向状態において液晶組成物の配向を固定化することにより製造した液晶フィルムからなる。ここで、可視光領域とは、一般的に380nm〜780nmの波長領域を表すが、最大主屈折率nxが「負の分散」特性を示す領域としては、可視光中心波長550nm近辺を含む領域が好ましい。これは、人間の目が波長ごとに感じる明るさの感度(以下、比視感度という)が明るいところでは555nm付近が最大に、暗いところでは507nm付近が最大になるとされるためである。
[延伸フィルムからなる第1の光学異方性層]
第1の光学異方性層が延伸フィルムである場合、有機高分子としては、光学フィルムとしての光学特性を維持するといった観点から、光学的等方性が高く且つ光透過率が80%以上を満足し、かつコストや連続生産性の観点から、例えば、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー等の透明ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー;ノボルネン誘導体等の環状オレフィンポリマー(ポリシクロオレフィン);塩化ビニル系ポリマー;ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;等のポリマー材料およびこれらのブレンド物が挙げられる。また「環状オレフィンポリマー」は、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセンやそれらの誘導体等の環状オレフィンから得られる樹脂の一般的な総称である。また、このような基板の材料としての有機高分子としては、光学フィルムに好適な特性(例えば透明性等)を示すことが可能となること等から、セルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、環状オレフィンポリマー(シクロオレフィンポリマー:COP)がより好ましい。
有機高分子からなるフィルムの成膜法については、有機高分子を溶剤に溶かしキャストする溶剤キャスト法、固体状態で混練し、ダイなどから押出フィルムにする押出し成型法、固体状態で混練した後カレンダーロールでフィルムにするカレンダー法、プレスなどでフィルムにするプレス成型法などが例示される。この中でも膜厚精度に優れた溶剤キャスト法が好ましい。成膜後のフィルムの厚みとしては、特に限定されるものではないが、10〜200μmが好ましく、更に好ましくは20〜100μmである。成膜後のフィルムの厚みが上記範囲内であれば、機械的強度として十分であり、溶媒キャスト法で成膜したときの溶媒の蒸発速度が遅くなるのを防止することができ、高い生産性を維持することができる。また、後述するように有機高分子に二色性色素を混合させ、成膜することが好ましい。
成膜後のフィルムを加熱しながら延伸するときの延伸方法としては、テンター延伸法、ロール間延伸法、ロール間圧縮延伸法などが例示される。フィルム面の均一性などの観点からテンター延伸法、ロール間延伸法が好ましい。フィルムの加熱方法については特に制限はない。これらの延伸方法によりフィルムを延伸する際の加熱温度については、使用する高分子の軟化温度や、二色性色素の転移温度により適宜選択される。延伸倍率は、1.1倍〜20倍が好ましく、1.2倍〜15倍がさらに好ましい。延伸倍率が上記数値範囲内であれば、液晶化合物が十分に配向でき、延伸後の取り扱いについても良好である。なお、延伸速度や延伸後の冷却速度については特に限定はない。
[液晶フィルムからなる第1の光学異方性層]
第1の光学異方性層が液晶フィルムである場合、有機高分子としては、重合性液晶組成物が用いられる。ここで、液晶フィルムとは、重合性液晶組成物を液晶状態において配向固定化したフィルムである。ここでいう液晶フィルムの配向とは、重合性液晶組成物の分子鎖が特定の方向に並んだ状態を示しており、この状態はフィルムの位相差(Δn・d)測定により測定し得るが、ここでいう配向とは、例えば、測定波長550nmにおいてΔn・dが20nm以上を指す。
<重合性液晶組成物>
次に、液晶フィルムの構成成分である重合性液晶組成物について説明する。
重合性液晶組成物としては、重合により配向状態を固定化し得る液晶化合物を含むものであれば特に制限されない。本発明における重合性液晶組成物は、1種または2種以上の重合性基を有する液晶化合物(重合性液晶化合物)、重合性基を有さない液晶化合物と液晶性を示さない重合性化合物との混合物、重合性基を有する液晶化合物と液晶性を示さない重合性化合物との混合物、および重合性基を有する液晶化合物と重合性基を有さない液晶化合物との混合物のいずれを含むものであってもよい。
本発明においては、公知の重合性液晶化合物を適宜利用でき、このような重合性液晶化合物としては、基板上においてホモジニアス配向させて、その配向状態を固定化し得る重合性液晶化合物を用いることが好ましい。更に、このような重合性液晶化合物としては、例えば、低分子の重合性液晶化合物(重合性基を有する液晶性モノマー)、高分子の重合性液晶化合物(重合性基を有する液晶性ポリマー)、およびこれらの混合物等を適宜利用することができる。
また、このような重合性液晶化合物としては、配向状態をより効率よく固定化できるといった観点から、光および/または熱により反応する重合性基を有する液晶化合物が好ましい。このような光や熱により反応する重合性基を備える液晶化合物としては、光および/または熱によって、その周りに存在する成分(液晶化合物等)と重合して、配向を固定化できるものであればよく、その種類は特に限定されず、公知の重合性基を備える液晶化合物を適宜利用できる。また、このような重合性基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、アジリジニル基等が好ましい。なお、このような重合性基としては、反応条件等によっては、例えば、イソシアナート基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、カルボキシル基等の他の重合性基を使用してもよい。
さらに、このような重合性液晶化合物としては、入手容易性、耐熱性、取扱い容易性の観点から、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有する液晶化合物が好ましい。
このような(メタ)アクリレート系液晶化合物としては、下記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物が好ましい。
上記一般式(10)〜(12)中、Wは、それぞれ独立して、HおよびCHのうちのいずれかを示す。このようなWの種類に応じて、式中において、CH=CWCOOで表わされる基がアクリレート基またはメタクリレート基のいずれかの基となる。また、nは1〜20(より好ましくは2〜12、更に好ましくは3〜6)の整数である。このようなnの値が上記下限未満では化合物が液晶性を発現する温度領域が小さくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると、化合物の液晶由来の流動性が小さくなる結果、良好なホモジニアス配向を実現することができなくなる傾向がある。
前記一般式(10)中、Rは炭素原子数が1〜20のアルキル基および炭素数が1〜20のアルコキシ基の中から選択されるいずれかの基を表す。このようなRとして選択され得る炭素数が1〜20のアルキル基は、炭素数が1〜12のものがより好ましく、3〜6のものが更に好ましい。このような炭素数が上記数値範囲内であれば、良好なホモジニアス配向を実現するのに必要な、化合物の液晶由来の流動性が保たれる結果、良好なホモジニアス配向を実現することができ、また、化合物が液晶性を発現する温度領域が広くなる。なお、このようなアルキル基は、直鎖状のものであっても、分岐鎖状のものであっても、環状のものであってもよく特に制限されないが、良好なホモジニアス配向の実現の観点からは、直鎖状のものであることがより好ましい。
また、Rとして選択され得る炭素数が1〜20のアルコキシ基は、炭素数が1〜12のものがより好ましく、3〜6のものが更に好ましい。このような炭素数が上記数値範囲内であれば、良好なホモジニアス配向を実現するのに必要な、化合物の液晶由来の流動性が保たれる結果、良好なホモジニアス配向を実現することができ、また、化合物が液晶性を発現する温度領域が広くなる。なお、アルコキシ基は、アルキル基が酸素原子に結合した構造を有するが、かかるアルキル基の部分の構造は直鎖状のものであっても、分岐鎖状のものであっても、環状のものであってもよく特に制限されないが、良好なホモジニアス配向の実現の観点からは、直鎖状のものであることがより好ましい。
また、前記一般式(12)中、ZおよびZは、それぞれ独立して、−COO−およびOCO−のうちのいずれかの基を表す。このようなZおよびZとしては、化合物の調製の容易さ等の観点から、ZおよびZのうちの一方の基が−COO−で表わされる基であり、もう一方の基が−OCO−で表わされる基であることが好ましい。
また、前記一般式(12)中、XおよびXは、それぞれ独立に、Hおよび炭素数が1〜7のアルキル基のうちのいずれかを表す。このようなXおよびXとして選択され得る炭素数が1〜7のアルキル基としては、炭素数が1〜3であることがより好ましく、1であること(前記アルキル基がCHであること)がより好ましい。このような炭素原子数が上記数値範囲内であれば、良好な配向を実現することができる。このように、前記XおよびXは、それぞれ独立に、HおよびCHのうちのいずれかであることが特に好ましい。
また、このような一般式(10)〜(12)で表わされる(メタ)アクリレート系液晶化合物としては、例えば、下記一般式(110)〜(113)に記載のような化合物が挙げられる。なお、このような(メタ)アクリレート系液晶化合物は1種を単独で用いてもよく或いは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記重合性液晶化合物としては、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物を組み合わせて利用することが好ましく、上記一般式(110)〜(113)で表わされる化合物を組み合わせて利用することがより好ましい。
このように、重合性液晶化合物として、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物を組み合わせて利用する場合においては、上記一般式(10)で表わされる化合物の含有量は、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物の総量100重量部に対して20〜60重量部であることが好ましく、30〜45重量部であることがより好ましい。このような一般式(10)で表わされる化合物の含有量が上記数値範囲内であれば、ホモジニアス配向性に関して、配向欠陥が生じる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとホモジニアス配向性に関して、配向欠陥が生じるのを抑制することができる。
また、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物を組み合わせて利用する場合において、上記一般式(11)で表わされる化合物の含有量は、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物の総量100重量部に対して10〜50重量部であることが好ましく、20〜30重量部であることがより好ましい。このような一般式(11)で表わされる化合物の含有量が上記数値範囲内にあれば、ホモジニアス配向性に関して、配向欠陥が生じるのを抑制することができる。
さらに、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物を組み合わせて利用する場合において、上記一般式(12)で表わされる化合物の含有量は、上記一般式(10)〜(12)で表わされる化合物の総量100重量部に対して10〜70重量部であることが好ましく、25〜45重量部であることがより好ましい。このような一般式(12)で表わされる化合物の含有量が上記範囲内であれば、ホモジニアス配向性に関して、配向欠陥が生じるのを抑制することができる。
さらに、上記一般式(110)〜(113)で表わされる化合物を組み合わせて前記重合性液晶化合物として利用する場合においては、良好なホモジニアス配向の実現の観点から、各化合物の重量比が([上記一般式(110)で表わされる化合物]:[上記一般式(111)で表わされる化合物]:[上記一般式(112)で表わされる化合物]:[上記一般式(113)で表わされる化合物])が45:40:15:0〜35:5:30:30であることが好ましく、35:23:23:19〜38:25:25:12であることがより好ましい。
また、このような重合性液晶化合物は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
後述するように第1の光学異方性層は、下記式(2)を満足することが好ましい。
0.70<Re1(450)/Re1(550)<1.00 (2)
上記式(2)の要件を満足させる方法として、重合性液晶化合物が二種類以上のメソゲン基を有する化合物であり、そのうち少なくとも一つのメソゲン基を液晶層のホモジニアス配向の遅相軸に対して略直交方向に配向させることで、長波長になるほど、位相差が大きくなることが、特開2002−267838号公報や特開2010−31223号公報に記載されている。ここで、メソゲン(mesogen)基のメソゲンは、中間相(=液晶相)形成分子(「液晶辞典」、日本学術振興会、情報科学用有機材料第142委員会、液晶部会編、1989年)とも称され、液晶性分子構造とほぼ同義である。本発明では、棒状液晶化合物におけるメソゲン基(棒状液晶化合物の液晶性に関する分子構造)を採用することが好ましい。棒状液晶化合物におけるメソゲン基については、各種文献(例えば、Flussige Kristalle in Tabellen誌、VEB Deutscher Verlag furGrundstoffindustrie, Leipzig(1984年)、第2巻)に記載されている。
メソゲン基の例には、ビフェニル、フェニルシクロヘキシル、シクロヘキシルフェニル、フェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシル、シクロヘキシルカルボニルオキシフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシシクロヘキシルオキシカルボニルフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシルカルボニルオキシフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルアミノカルボニルフェニル、フェニルエテニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニルエチニレンフェニル、フェニルエテニレンカルボニルオキシビフェニルおよびフェニルエテニレンオキシフェニルエチニレンフェニルが含まれる。
二種類のメソゲン基の組み合わせとしては、一方のメソゲン基が、ビフェニル、フェニルシクロヘキシル、シクロヘキシルフェニル、フェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシル、シクロヘキシルカルボニルオキシフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシフェニルオキシカルボニルフェニル、フェニルカルボニルオキシシクロヘキシルオキシカルボニルフェニル、フェニルオキシカルボニルシクロヘキシルカルボニルオキシフェニルおよびフェニルカルボニルオキシフェニルアミノカルボニルフェニルからなる群より選ばれ、他方のメソゲン基が、フェニルエテニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニル、フェニルエチニレンフェニルエチニレンフェニル、フェニルエテニレンカルボニルオキシビフェニルおよびフェニルエテニレンオキシフェニルエチニレンフェニルからなる群より選ばれることが特に好ましい。
また、重合性液晶化合物は1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせた混合物として用いてもよい。液晶化合物を2種以上組み合わせる場合、全ての液晶化合物が液晶性を示す必要はなく、混合物が液晶性を示せばよい。例えば、二種類以上のメソゲン基を有する化合物は、それ自身が液晶性を示さなくても他の液晶化合物との混合物が液晶性を示せばよい。さらには、重合性液晶化合物を2種以上組み合わせた混合物として使用する場合、全ての液晶化合物が重合性官能基を有する必要はなく、少なくとも1種の液晶化合物が重合性官能基を有していればよい。
液晶性を示さない重合性化合物は、重合性基を有する液晶化合物との相溶性を有し、且つ該液晶性化合物の配向を阻害するものではない限り特に限定されず、例えば、エチレン性不飽和基(例えばビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基)等の重合性官能基を有する化合物等が挙げられる。なお、このような他の重合性化合物の添加量は、前記重合性基を有する液晶化合物と前記液晶性を示さない他の重合性化合物の総量100重量部に対して0.5〜50重量部とすることが好ましく、1〜30重量部とすることが好ましい。
上記したような重合性液晶化合物を重合させるための重合開始剤としては、熱重合開始剤(熱重合反応を利用する際の開始剤)であっても、光重合開始剤(光や電子線の照射を利用する際の開始剤)であってもよい。このような重合開始剤としては、液晶フィルムを製造する際の基板としてプラスチックフィルム等を用いる場合に、熱によりその基板等が変形したり、変質したりすることを防止するといった観点から、光重合開始剤を用いることがより好ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、α−カルボニル化合物、アシロインエーテル、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとを組み合わせたもの、アクリジンおよびフェナジン化合物およびオキサジアゾール化合物等が挙げられる。
光重合開始剤としては、市販品を利用してもよく、例えば、BASF社製の光重合開始剤(商品名「イルガキュア907」、商品名「イルガキュア651」、商品名「イルガキュア184」)や、Union Carbide社製の光重合開始剤(商品名「UVI6974」)等を適宜使用してもよい。なお、このような光重合開始剤は、光または電子線の照射により、自由ラジカルを生成するものや、イオンを生成するもの等があるが、組成物中の前記重合性液晶化合物の種類や重合反応の条件等に応じて、自由ラジカルを生成する光重合開始剤(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア651」等)や、イオンを生成する光重合開始剤(例えば、Union Carbide社製の光重合開始剤(商品名「UVI6974」))の中から好適なものを適宜選択して利用すればよい。
また、重合開始剤の含有量としては、重合性液晶化合物に二色性色素を添加した混合物100重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。重合開始剤の含有量が上記数値範囲内であれば、液晶の配向に欠陥を生じるのを抑制することができる。
次に、本発明の液晶フィルムからなる第1の光学異方性層の製造方法について説明する。第1の光学異方性層の製造方法としては、重合性液晶化合物、必要に応じて添加される二色性色素など各種の化合物とを含む組成物を溶融状態で、あるいは該組成物の溶液を、配向基板上に塗布することにより塗膜を形成する。次いで塗膜を乾燥、熱処理して液晶を配向させ、その後光照射および/または加熱処理(重合・架橋)等の前述の配向を固定化する手段を用いてホモジニアス配向を固定化することにより、液晶組成物の配向が固定化された第1の光学異方性層を得ることができる。なお、二色性色素を含んでなる場合、二色性色素の配向も固定化される。
溶液の調製に用いる溶媒に関しては、重合性液晶組成物および所望により二色性色素を溶解でき適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限はなく、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン類、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸2−メトキシエチル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル類、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、等などのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトンなどの複素環類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類等やこれらの混合系が好ましく用いられる。
また、本発明に使用する溶媒の含有量としては、30〜98重量%であることが好ましく、50〜95重量%であることがより好ましく、70〜90重量%であることが更に好ましい。溶媒の含有量が上記下限未満である場合、重合性液晶化合物または重合性液晶化合物と二色性色素の混合物に対する溶媒の量を確保できず、保管中に液晶が析出したり、重合性液晶化合物または混合物の粘度が高くなって湿潤(wetting)性が低下し、第1の光学異方性層の製造時における塗布を良好に行うことができない場合がある。また、溶媒の含有量が上記上限を超える場合、溶媒を除去する際にその除去時間(乾燥時間)が長くなり、フィルムを製造する場合に作業効率が低下したり、該混合物を基板上に塗布した場合に表面の流動性を抑制できず、均一な第1の光学異方性層を製造することができない場合がある。このように、重合性液晶化合物または混合物においては、溶媒以外の成分の混合物の量は、重量基準で2〜70重量%であることが好ましく、5〜50重量%であることがより好ましく、10〜30重量%であることが更に好ましい。また、重合性液晶化合物および二色性色素の混合物には、上記した溶媒だけでなく、配向基板上に均一な塗膜を形成するために、反応活性化剤、増感剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤などを添加してもよい。
次に、重合性液晶化合物を配向させる配向基板について説明する。配向基板としては、まず平滑な平面を有するものが好ましく、有機高分子からなるフィルムやシート、ガラス板、金属板などを挙げることができる。コストや連続生産性の観点からは有機高分子からなる材料を用いることが好ましい。有機高分子の例としては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスルフォン、ポリアリレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するシクロポリオレフィン、塩化ビニル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。
セルロース系ポリマーとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが更に好ましい。このような低級脂肪酸としては、炭素原子数が6以下の脂肪酸が好ましい。またこのような低級脂肪酸の炭素原子数としては2〜4であることがより好ましい。このようなセルロース系ポリマーとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネートまたはセルロースブチレートが挙げられる。また、このようなセルロース系ポリマーの中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。なお、セルロース系ポリマーとしては、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
また、前記シクロオレフィンポリマー(COP)としては、例えば、シクロオレフィンの開環重合体、シクロオレフィンの付加重合体、シクロオレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体、これらの水素化物等が挙げられる。また、このような環状オレフィンとしては、ノルボルネンおよびその誘導体、ジシクロペンタジエンが好ましい。環状オレフィンポリマーフィルムとして市販品を使用することもでき、例えば、ゼオノア(商品名、日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(商品名、日本ゼオン(株)製)、アートン(商品名、JSR(株)製)などが使用できる。
上記した有機高分子材料からなるフィルムのなかでも、光学フィルムとして用いられるTAC、ポリカーボネート、ノルボルネンポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムを好ましく使用できる。また、金属フィルムとしては、例えばアルミニウムなどから形成される当該フィルムが挙げられる。
また、このような基板としては、特に制限されるものではないが、形成される第1の光学異方性層と基板との積層体をそのまま光学フィルム等に用いる場合等において、その用途等に応じて、位相差機能を有するものとしてもよい。更に、このような基板は、一軸延伸したもの(いわゆる一軸延伸フィルム)であっても二軸延伸したもの(いわゆる二軸延伸フィルム)であってもよい。なお、このような基板は、これを縦方向および横方向に延伸することにより、二軸性の光学異方性を発現させて、光学異方性を有するフィルムとして利用してもよい。
また、このような基板としては、Z軸配向処理を施したものを用いてもよい。更に、このような基板としては、その接着性を制御する目的で、片面もしくは両面にコロナ処理、プラズマ処理、UV−オゾン処理、ケン化処理等の表面処理を適宜行ってもよい。このような表面処理を採用する際の処理条件としては、利用する基板等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されず、公知の条件を適宜採用すればよい。
これらフィルムは、製造方法によっては改めて配向能を発現させるための処理を行わなくとも重合性液晶化合物に対して十分な配向能を示すものもあるが、配向能が不十分、または配向能を示さない等の場合には、必要に応じて、これらのフィルムを適度な加熱下に延伸したり、フィルム面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理を行ったり、フィルム上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる配向膜を設けてラビング処理を行ったり、フィルム上に光配向膜を塗布し適度な温度で加熱後、直線偏光紫外線を照射して配向膜を形成したり、酸化珪素等の斜方蒸着処理を行ったり、あるいはこれらの手段を適宜組み合わせるなどして配向能を発現させたフィルムを用いても良い。
また、表面に規則的な微細溝を設けたアルミニウム、鉄、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属板や各種ガラス板等、あるいはそれらを元型として、前記フィルム表面に規則的な微細溝を熱転写したものや、紫外線硬化型樹脂などを使用して前記フィルム表面に規則的な微細溝を転写したものも配向基板として使用することができる。これらの中でも、液晶の分野においては、基板に対して布等で擦るラビング処理を行うことが一般的である。ラビング条件を規定する重要な設定値としては周速比がある。これはラビング布をロールに巻きつけて回転させつつ基板を擦る場合の、布の移動速度と基板の移動速度の比を表す。本発明においては、通常周速比が50以下、より好ましくは25以下、特に好ましくは10以下である。周速比が50以下である場合、ラビングの効果が十分であるため、液晶組成物が完全は配向することができ、特性低下を抑制することができる。
次に、重合性液晶組成物または重合性液晶組成物と二色性色素との混合物を上記した配向基板へ塗布する方法について説明する。塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、スピンコート法、ダイコート法、カーテンコート法、ディップコート法、ロールコート法などが挙げられる。このような塗膜としては、重合性液晶組成物または混合物中の溶媒の含有量等によっても異なるものであり、一概には言えないが、乾燥前の塗膜の厚み(ウエット膜厚)が3〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。厚み(ウエット膜厚)が上記数値範囲内であれば、所望の光学特性を得るために重合性液晶組成物中の液晶化合物等の濃度を高くする必要はないため、重合組成物中における固形分の析出を抑制することができ、均一な液晶フィルムを得ることができる。また、均一な塗布を行うことができ、液晶フィルムの平滑性を維持することができる。さらに、塗布後の乾燥時間を短縮することができる。
重合性液晶組成物または混合物の溶液を塗布する方法においては、塗布後に溶媒を除去するための乾燥工程が含まれることが好ましい。この乾燥条件は、上記した重合性液晶組成物、二色性色素、溶媒の種類等によっても異なるものであり、一概に言えるものではなく、特に制限されるものではない。例えば、溶媒の種類によっては、常温(25℃)でも塗膜から溶媒を乾燥除去することが可能である。このように、溶媒の種類等によっては、特に加熱処理を施すことなく、ホモジニアス配向した液晶フィルムを製造することも可能である。また、このような溶媒除去工程における温度条件としては、15〜110℃であることが好ましく、20〜80℃であることがより好ましい。溶媒除去工程における温度が、上記数値範囲内であれば、乾燥に別途冷却設備を使用する必要はなく、また、基板が熱により歪んでしまうこともないため、所望の光学特性を得ることができる。
また、この乾燥工程における圧力条件としては、特に制限されないが、650〜1400hPaであることが好ましく、900〜1100hPaであることがより好ましい。圧力条件が上記数値範囲内であれば、乾燥ムラが生じることはなく、また、乾燥時間を短縮することができる。また、溶媒除去工程の時間(乾燥時間)としては、特に制限されないが、10秒〜60分とすることが好ましく、30秒〜30分とすることがより好ましい。乾燥時間が上記数値範囲内であれば、液晶フィルムの平滑性の低下(乾燥ムラ)を抑制することができ、また、高い生産性を維持することができる。なお、このような溶媒除去工程に乾燥装置を利用する場合においては、前記塗膜と乾燥装置との相対的な移動速度を、相対風速が60m/分〜1200m/分となるように制御することが好ましい。塗膜の均一性が維持される方法であれば、特に限定されることなく公知の方法を採用することができる。例えば、ヒーター(炉)、温風吹きつけなどの方法が挙げられる。
塗布された膜の乾燥状態における膜厚は、0.1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは0.2μm〜20μmである。乾燥状態における膜厚が上記数値範囲内であれば、得られる光学異方性層の光学性能を十分に維持することができ、重合性液晶組成物および二色性色素が十分に配向することができる。
次に配向を固定化する方法について説明する。重合性液晶組成物を重合して液晶化合物の配向状態を固定化する方法としては、用いる重合開始剤や重合性液晶化合物の種類等に応じて、重合可能な公知の方法を適宜採用することができる。このような配向状態の固定化(重合・固定化)の方法としては、例えば、重合開始剤の種類等に応じて、光照射および/または加熱処理を施すことにより、重合性基(反応性官能基)を反応させてホモジニアス配向の配向状態で配向を固定化する方法を採用してもよい。
重合開始剤が光の照射により開始剤の機能を発現するようなものである場合(例えば、いわゆる光ラジカル開始剤や光カチオン発生剤の場合)には、光照射によりホモジニアス配向の配向状態を固定化することが好ましい。このような光照射の方法としては特に制限されず、例えば、用いる重合開始剤の吸収波長領域にスペクトルを有する光源(例えば、10mW/cm以上の照度を有する、メタルハライドランプ、中圧或いは高圧水銀灯(中圧或いは高圧水銀紫外ランプ)、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、LED、レーザーなど)を用いて、その光源からの光を照射する方法が挙げられる。なお、このような光の照射により重合開始剤を活性化させることが可能となり、効率よく反応性官能基を反応させることが可能となる。
また、このような光照射の方法において光の積算照射量としては、波長365nmでの積算露光量として、10〜2000mJ/cmであることが好ましく、100〜1500mJ/cmであることがより好ましい。ただし、重合開始剤の吸収領域と、光源のスペクトルが著しく異なる場合や、液晶化合物自身に光源波長光の吸収能がある場合等は、この限りではない。その場合には、より効率よく配向状態を維持したまま、塗膜を固定化(硬化)させるという観点から、適当な光増感剤や、吸収波長の異なる2種以上の重合開始剤を混合して用いる等の方法を採用してもよい。また、このような光照射時の温度条件は、前記液晶化合物がホモジニアス配向の配向状態を維持できる温度範囲とすればよく、特に制限されない。なお、光照射時に、塗膜の表面温度が液晶温度の範囲を維持できるように、基板と光源(紫外線ランプ等)との間には、コールドミラーやその他の冷却装置を設けてもよい。
さらに、光照射時の雰囲気条件としては、特に制限されず、大気雰囲気であってもよく、また反応効率を高めるために酸素を遮断した窒素雰囲気下であってもよい。なお、雰囲気中の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させた雰囲気で光照射することが好ましい。このような場合の雰囲気ガス中の酸素濃度としては、10容量%以下であることが好ましく、7容量%以下であることがさらに好ましく、3容量%以下であることが最も好ましい。
また、重合開始剤が熱により開始剤の機能を発現するようなものである場合(例えば、いわゆる熱ラジカル開始剤や熱カチオン発生剤の場合)には、加熱処理によりホモジニアス配向の配向状態で配向を固定化することが好ましい。このような加熱処理の条件としては、特に制限されず、前記重合開始剤の種類に応じて、配向状態が十分に維持されるように温度条件を選択すればよく、公知の条件を適宜採用することができる。なお、配向基板として耐熱性の低いものを使用する場合は、重合開始剤として光の照射により開始剤の機能を発現するようなものを用い、光照射によりホモジニアス配向の配向状態を固定化することが好ましい。
以上のような工程により製造した液晶フィルムは、充分強固な膜となっている。具体的には、硬化反応によりメソゲンが3次元的に結合され、硬化前と比べて耐熱性(液晶配向保持の上限温度)が向上するのみでなく、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐クラック性などの機械的強度に関しても大幅に向上する。
上記のようにして、配向基板上に、重合性液晶組成物または混合物を塗布した後に、塗膜から溶媒を除去して、重合性液晶組成物および/または二色性色素を配向させ、重合性液晶化合物の液晶状態を固定化することによって、配向状態がホモジニアス配向の状態で固定化された液晶フィルムを配向基板上に形成することができる。
なお、配向基板として、光学的に等方でない、あるいは使用波長領域において不透明である、もしくは配向基板の膜厚が厚すぎて実際の使用に支障を生じるなどの問題がある場合、配向基板上で形成された形態から、光学的に等方な基板、位相差機能を有する延伸フィルム、あるいは、直接、偏光板に転写した形態も使用しうる。転写方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、特開平4−57017号公報や特開平5−333313号公報に記載されているように液晶フィルムを粘着剤もしくは接着剤を介して、配向基板とは異なる基板に積層した後に、必要により粘着剤もしくは接着剤を使って表面の硬化処理を施し、液晶フィルムから配向基板を剥離することで液晶フィルムのみを転写する方法等を挙げることができる。
転写に使用する粘着剤もしくは接着剤は、光学グレードのものであれば特に制限はなく、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系など一般に用いられているものを用いることができる。また、ここで当該液晶フィルム単独を当該素子として使用することも可能であるが、液晶フィルムの強度や耐性向上のために液晶フィルムの片面または両面を透明保護層で被覆した形態で位相差板を構成することもできる。透明保護層としては、ポリエステルやトリアセチルセルロース等の透明プラスチックフィルムを直接または粘接着剤を介して積層したもの、樹脂の塗布層、アクリル系やエポキシ系等の光硬化型樹脂層等が挙げられる。これら透明保護層を液晶フィルムの両面に被覆する場合、両側に異なる保護層を設けても良い。
上記のようにして得られた液晶フィルムにおけるホモジニアス配向の確認方法としては、以下のような方法を採用してもよい。ホモジニアス配向の確認方法としては、公知の方法を適宜採用でき、特に制限されるものではないが、一対の直交偏光板(一方の偏向板が偏向する方向と、他方の偏向板が偏向する方向が垂直となる一対の偏光板)の間に液晶フィルム(基板との積層体の状態のもの等であってもよい。)を配置した試料を用いて、肉眼で透過光を確認する方法や第1の光学異方性層を偏光顕微鏡で観察する方法を採用してもよい。前記いずれの方法を採用した場合においても、前記液晶フィルムがホモジニアス配向液晶フィルムである場合には、その試料中の液晶フィルムの表面に対して垂直な方向から光を入射させると光の位相差により明るく見え、他方、その試料に対して入射させる光の入射角を傾けた場合の光の透過量が、垂直な方向に対称な方向ではほぼ同じ明るさで見える。そのため、このような試料の明暗を光の入射角をずらしながら肉眼や偏光顕微鏡を通して測定することでホモジニアス配向の有無を確認することができる。また、ホモジニアス配向液晶フィルムは、上述のように光の入射角に応じて位相差の特性が異なるものとなることから、ホモジニアス配向の確認方法としては、例えば、液晶フィルムの表面に対して垂直な方向(垂直入射角)の位相差と前記垂直入射角から特定の角度に光の入射角を傾けた場合の位相差とを測定することが可能な複屈折測定装置(例えばAxo−metrix社製の商品名「Axoscan」、王子計測機器社製の商品名「KOBRA−WR」等)を用いて、視野角0°(液晶フィルムに対して垂直の方向)から視野角がより大きくなる方向に角度を適宜変更しながら位相差の測定を行い、複数の視野角において前記試料の位相差をそれぞれ求め、液晶フィルムの表面に対して垂直な方向において位相差が確認され、液晶フィルムの表面に対して視野角がより大きくなる方向において位相差が、視野角の−方向と+方向との値が互いに対称性をみせること、を確認することに基づいて、ホモジニアス配向の有無を確認する方法を採用してもよい。
液晶フィルムの厚み(硬化膜の膜厚)としては、用途や求める特性によっても異なるが、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。液晶フィルムの厚みが上記数値範囲内であれば、所望の位相差を発現することができ、また十分な液晶の配向性を維持することができ、さらに、色素による透過の低下を抑制することができる。
また、第1の光学異方性層は、最大主屈折率nx1および/または複屈折Δn1が、可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有することを特徴とする。
より具体的には、下記式(2)および(3)を満足するようなリターデーション特性を有することが好ましい。
0.70<Re1(450)/Re1(550)<1.00 (2)
1.00<Re1(650)/Re1(550)<1.30 (3)
また、より好ましくは、下記式(9−1)および(10−1)を満足する。
0.80<Re1(450)/Re1(550)<0.95 (2−1)
1.02<Re1(650)/Re1(550)<1.20 (3−1)
また、比視感度特性を考慮して、下記式(4)および(5)を満足するようなリターデーション特性を有することが好ましい。
0.80<Re1(500)/Re1(550)<1.10 (4)
1.00<Re1(580)/Re1(550)<1.15 (5)
また、より好ましくは、下記式(11−1)および(12−1)を満足する。
0.85<Re1(500)/Re1(550)<1.05 (4−1)
1.02<Re1(580)/Re1(550)<1.12 (5−1)
第1の光学異方性層のリターデーションが上記の範囲から外れると、例えば、1/4波長板として使用する場合においては、400〜700nmの直線偏光をこのフィルムに入射した際、得られる偏光状態はある特定の波長では完全な円偏光が得られるものの、それ以外の波長では大きく円偏光からずれてしまうことがある。
第1の光学異方性層は、その用途等によっては、膜厚だけでなく、特定の位相差値を有することが要求され得る。ここで、波長550nmの光に対する第1の光学異方性層の面内のリターデーション値Re1としては、20nm〜450nmであることが好ましく、50nm〜300nmであることがより好ましい。
また、第1の光学異方性層は、二色性色素を含んでなることが好ましい。
図2における「異常分散領域」のカーブの拡大図を図3に示す。対称な吸収帯を仮定した場合、「異常分散領域」のうち、吸収の最大値では異常分散の寄与が近似的に零になり、屈折率の局部的な最大値が長波長側の吸収帯の半波高値の直前に現れ、屈折率の局部的な最小値が短波長側の半波高値の直後に現れる。これらの位置はλmax、λ+、λ−として図3に示してある。すなわち、λ−からλ+までの範囲内にある長波長になるほど屈折率が大きくなる分散特性、いわゆる「負の分散」特性が存在する。
一般に、異方性を有する有機高分子を用いて第1の光学異方性層を作製した場合、双極子の種類が軸方向によって異なるため、最大主屈折率nxと最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率nyは異なる「正の分散」カーブを示す(図4参照)。この有機高分子に、図5に示すような580nmに極大吸収波長を有する吸収スペクトルを持つ高い二色性を示す色素を添加すると、吸収波長付近である550〜650nmの波長領域において、最大主屈折率nxがより優れた「負の分散」特性を有する第1の光学異方性層が得られる。ここで、高い二色性とは、有機高分子のnx方向とny方向とで二色性色素の吸収特性の差が大きいものを意味する。図6には、二色性色素を添加する前後での有機高分子からなる光学異方性層の複屈折波長分散特性を示す。二色性色素を添加することで、550〜650nmの波長領域において、複屈折がより優れた「負の分散」を有する第1の光学異方性層が得られることがわかる。以上のことから、複屈折が「正の分散」特性を有する材料(有機高分子)に、異常分散領域を有する二色性色素を添加することにより、本発明の目的でもある可視光の全波長領域において複屈折がより理想に近い「負の分散」特性を有する第1の光学異方性層が得られる。また、複屈折が「負の分散」特性を有する材料(有機高分子)を用いた場合においては、長波長領域において、複屈折が「負の分散」特性が劣ることがあり、異常分散領域を有する二色性色素を添加することにより、本発明の目的でもある可視光の全波長領域において複屈折がより理想に近い「負の分散」特性を有する第1の光学異方性層が得られる。
本来、最大主屈折率nxは可視光全波長にわたって、長波長ほど大きいほうが好ましいが、色素材料の添加量を増やす必要があるため、第1の光学異方性層の着色という点で好ましくない。また、人間の比視感度特性を考慮した場合、波長550〜650nm、好ましくは波長550〜600nmの範囲内において「負の分散」特性を有することが出来れば、十分所望の特性を得ることが可能である。
また、本明細書において、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。このような性質を有するものであれば、二色性色素は特に制限されず、染料であっても顔料であってもよい。この染料は複数種用いてもよく、顔料も複数種用いてもよく、染料と顔料とを組み合わせてもよい。さらに、このような二色性色素は、重合性官能基を有していてもよく、液晶性を有していてもよい。重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、ビニロキシ基、エポキシ基、オキセタニル基が好ましく、反応性の観点からアクリル基、エポキシ基、オキセタニル基が特に好ましい。液晶性については、ネマチック相、スメクチック相を有するものが好ましい。
二色性色素は、400〜800nmの範囲に極大吸収波長(λmax)を有するものが好ましく、より好ましくは450〜700nmであるが、本発明の積層偏光板を画像表示装置に適用する場合は、画像表示装置の発光スペクトルの極大吸収波長と異なるような極大吸収波長を選択するほうが好ましい。
二色性色素の二色比は、色素分子の長軸方向における極大吸収波長での吸光度と短軸方向の吸光度の比で定義される。該二色比は、色素の配向方向の吸光度と配向方向と垂直方向の吸光度を測定することで求めることが可能である。本発明で用いることができる二色性色素は、二色比として、好ましくは2以上50以下、更に好ましくは3以上30以下である。
このような二色性色素としては特に限定はないが、例えば、アクリジン色素、アジン色素、アゾメチン色素、オキサジン色素、シアニン色素、メロシアニン色素、スクアリリウム色素、ナフタレン色素、アゾ色素、およびアントラキノン色素、ベンゾトリアゾール色素、ベンゾフェノン色素、ピラゾリン色素、ジフェニルポリエン色素、ビナフチルポリエン色素、スチルベン色素、ベンゾチアゾール色素、チエノチアゾール色素、ベンゾイミダゾール色素、クマリン色素、ニトロジフェニルアミン色素、ポリメチン色素、ナフトキノン色素、ペリレン色素、キノフタロン色素、スチルベン色素、インジゴ色素などが挙げられる。中でも、該二色性色素は、アントラキノン色素およびアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素、トリスアゾ色素およびこれらの系列の色素の誘導体が例示される。上記の条件を満たす色素であれば本発明で用いることが可能である。本発明で用いることが可能である色素の一例を色素ハンドブック(大河原信、北尾悌次郎、平嶋恒亮、松岡賢編、講談社サイエンティフィック社:1986年第1版)に記載の色素番号で表1に示す。
二色性色素は、下記式(1)で表されるもの(以下、場合により「アゾ色素(1)」という。)が特に好ましい。
式(1)中、nは1〜4の整数であり、ArおよびArは、それぞれ独立して下記の群より選択される基を表す。
また、式(1)中、Arは、下記の群より選択される基を表し、nが2以上の場合は、Arは互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
上記した基において、AおよびAは、それぞれ独立して下記の群より選択される基を表わす。
(式中、mは0〜10の整数であり、同一の基中にmが2つある場合、この2つのmは互いに同一であってもよく異なっていてもよい。)
上記したアゾ色素(1)のアゾベンゼン部位の位置異性は、トランスであることが好ましい。アゾ色素(1)としては例えば、式(1−1)〜式(1−58)でそれぞれ表される化合物などが挙げられる。
上記したアゾ色素(1)の具体例の中でも、式(1−2)、式(1−5)、式(1−6)、式(1−8)、式(1−10)、式(1−12)、式(1−13)、式(1−15)、式(1−16)、式(1−19)、式(1−20)、式(1−21)、式(1−22)、式(1−23)、式(1−24)、式(1−26)、式(1−27)、式(1−28)、式(1−29)、式(1−30)式(1−31)、式(1−32)、式(1−33)、式(1−34)、式(1−35)、式(1−36)、式(1−49)、式(1−50)、式(1−51)、式(1−52)、式(1−53)、式(1−54)式(1−55)、式(1−56)、式(1−57)および式(1−58)でそれぞれ表されるものがより好ましく、式(1−2)、式(1−5)、式(1−8)、式(1−10)、式(1−15)、式(1−21)、式(1−22)、式(1−26)、式(1−28)、式(1−29)、式(1−30)、式(1−31)、式(1−32)、式(1−33)、式(1−34)、式(1−35)式(1−36)、式(1−49)、式(1−50)、式(1−51)、式(1−52)、式(1−53)、式(1−54)および式(1−55)でそれぞれ表されるものが特に好ましい。
アントラキノン色素としては、式(1−59)で表される化合物が好ましい。
(式中、R〜Rは、互いに独立して、水素原子、−R、−NH、−NHR、−NRx2、−SRまたはハロゲン原子を表す。Rxは、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表す。)
また、オキサゾン色素としては、式(1−60)で表される化合物が好ましい。
(式中、R〜R15は、互いに独立して、水素原子、−R、−NH、−NHR、−NRx2、−SRまたはハロゲン原子を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表す。)
また、アクリジン色素としては、式(1−61)で表される化合物が好ましい。
(式中、R16〜R23は、互いに独立して、水素原子、−R、−NH、−NHR、−NRx2、−SRまたはハロゲン原子を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表す。)
以上の式(1−59)、式(1−60)および式(1−61)において、Rの炭素数1〜6のアルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基などであり、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基およびナフチル基などである。
また、シアニン色素としては、式(1−62)で表される化合物、および式(1−63)で表される化合物が好ましい。
(式中、DおよびDは、互いに独立して、下記式(1−62a)〜式(1−62d)のいずれかで表される基を表し、n5は1〜3の整数を表す。)
(式(1−63)中、DおよびDは、互いに独立して、下記式(1−63a)〜式(1−63h)のいずれかで表される基を表し、n6は1〜3の整数を表す。)
以上、前記第1の光学異方性層が含有する二色性色素について、その好ましい例を説明したが、中でも、二色性色素としてアゾ色素(1)であることが好ましく、互いに異なる極大吸収波長を有するアゾ色素(1)を少なくとも2種含有してもよい。
第1の光学異方性層における二色性色素の含有量は、当該二色性色素の種類などに応じて適宜調節できるが、例えば、該有機高分子の合計100重量部に対して、0.001〜10重量部が好ましく、0.01〜2.0重量部がより好ましく、0.03〜1.2重量部がさらに好ましい。二色性色素の含有量が、この範囲内であれば、有機高分子の配向を乱すことなく、有機高分子の成膜や重合を行うことができる。二色性色素の含有量が多すぎると、有機高分子の配向を阻害したり、色素の吸収によりフィルムの透過率が低下するおそれがある。そのため、有機高分子が配向を保持できる範囲で、二色性色素の含有量を定めることもできる。なお、ここでいう二色性色素の含有量とは、2種以上の二色性色素を含む場合は、それらの合計量を意味する。
有機高分子と二色性色素の混合方法としては、均一に混合させるため溶液状態で混合することが好ましい。具体的には、有機高分子を溶媒に懸濁または溶解し、これに添加物を懸濁または溶解して混合する方法が挙げられる。一実施形態において、溶媒は、有機高分子に対する溶解度が大きい方が好ましい。
第1の光学異方性層が、二色性色素を含んでなる場合、
二色性色素を含んでなる第1の光学異方性層の面内のリターデーション値をRe1a(=(nx1a−ny1a)×d1)、
二色性色素を含まない第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の面内のリターデーション値をRe1b(=(nx1b−ny1b)×d1)とした場合に、
第1の光学異方性層は、下記式(1)満足するようなリターデーション特性を有することが好ましい。
Re1a(580)/Re1a(550)−Re1b(580)/Re1b(550)>0 (1)
(ここで、第1の光学異方性層の面内リターデーション値Re1aは、第1の光学異方性層の複屈折Δn1aと第1の光学異方性層の膜厚d1との積、すなわち、Re1a=(nx1a−ny1a)×d1[nm]で表され、Re1a(580)、Re1a(550)は、それぞれ波長580nm、550nmにおける第1の光学異方性層の面内のリターデーション値であり、nx1aは、二色性色素を含んでなる第1の光学異方性層の最大主屈折率、ny1aは、二色性色素を含んでなる第1の光学異方性層の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率である。また、前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の面内のリターデーション値Re1bは、第1の光学異方性層の複屈折Δn1bと第1の光学異方性層の膜厚d1との積、すなわち、Re1b=(nx1b−ny1b)×d1[nm]で表され、Re1b(580)、Re1b(550)は、それぞれ波長580nm、550nmにおける前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた第1の光学異方性層の面内のリターデーション値であり、nx1bは、前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の最大主屈折率、ny1bは、前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率である。
第1の光学異方性層が上記のようなリターデーション特性を有することにより、最大主屈折率nxまたは複屈折Δn=(nx−ny)が、より優れた「負の分散」特性を有する第1の光学異方性層を実現できる。
<第2の光学異方性層>
次に、第2の光学異方性層について説明する。
第2の光学異方性層は、ny2≦nx2<nz2の屈折率特性を有する。
(ここで、nx2は波長550nmの光に対する第2の光学異方性層面内の最大主屈折率、ny2は波長550nmの光に対する第2の光学異方性層面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz2は波長550nmの光に対する第2の光学異方性層の厚さ方向の主屈折率である。)
また、第2の光学異方性層は、下記式(6)および(7)を満足するようなリターデーション特性を有することが好ましい。
0nm≦Re2(550)≦20nm (6)
−500nm≦Rth2(550)≦−30nm (7)
この範囲を外れた場合、積層偏光板の視野角特性を改善する効果が低下し、また、フィルムの製造が困難となる傾向にあるため望ましくない。また、第2の光学異方性層が上記屈折率特性および/またはリターデーション特性を満たすことにより、後述するポリイミド透明基板の厚さ方向のリターデーションを補償することができ、高い視野角特性を維持することができる。
より好ましくは、第2の光学異方性層は、下記式(7−1)を満足するようなリターデーション特性を有する。
−400nm≦Rth2(550)≦−45nm (7−1)
さらに好ましくは、下記式(7−2)を満足するようなリターデーション特性を有する。
−300nm≦Rth2(550)≦−40nm (7−2)
また、より好ましくは、第2の光学異方性層は、下記式(6−1)を満足するようなリターデーション特性を有する。
0nm≦Re2(550)≦10nm (6−1)
さらに好ましくは、下記式(6−2)を満足するようなリターデーション特性を有する。
0nm≦Re2(550)≦5nm (6−2)
第2の光学異方性層の厚みは、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、通常0.1μm〜100μm、好ましくは0.3μm〜50μm、さらに好ましくは0.5μm〜20μmである。第2の光学異方性層の厚みが上記数値範囲内であれば、所望の位相差を発現することが容易となり、また、有機EL素子が過度に厚くなるという問題が起きない。
また、第2の光学異方性層として、固有複屈折が負の樹脂材料を二軸延伸するなどして、膜厚さ方向の屈折率を面内方向よりも大きい状態に制御したフィルムや、正の一軸性を示す液晶化合物を液晶状態において所定の方向に配向させた後、配向固定化したホメオトロピック配向液晶フィルムなどを用いることができる。固有複屈折が負の樹脂化合物としては、ポリスチレン系樹脂などが挙げられる。これらのようなフィルムの中でも、積層偏光板の総厚みを小さくできることから、重合性液晶組成物などを垂直に配向させた、ホメオトロピック配向液晶フィルムを用いることが好ましい。
液晶化合物のホメオトロピック配向を固定化した液晶フィルムを得るに当たって用いられる液晶化合物としては、基板上で形成させた液晶材料がホメオトロピック配向し、その配向を固定化しうる正の一軸性液晶化合物が好ましい。このような性質を有する化合物であれば、特に限定されず、低分子液晶化合物であっても、高分子液晶化合物であっても、これらの混合物からなる材料であってもよい。
前記の低分子液晶化合物としては、光や熱により反応する反応性基を有するものが好ましい。反応性基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、アジリジニル基等が好ましいが、他の反応性基、例えばイソシアナート基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、カルボキシル基なども反応条件等によっては使用することができる。
前記の高分子液晶化合物には主鎖型液晶化合物と側鎖型液晶化合物とがあるがいずれも使用することができる。主鎖型液晶化合物としては、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリカーボネート等が挙げられる。なかでも合成の容易さ、配向性、ガラス転移点などの面からポリエステルが好ましく、カチオン重合性基を有する主鎖型液晶性ポリエステルが特に好ましい。側鎖型液晶化合物としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリマロネート、ポリシロキサン等を挙げることができる。側鎖型液晶化合物としては前記の反応性基を側鎖に有するものが好ましい。
ホメオトロピック配向液晶フィルムは、例えば、上記のような液晶化合物を含んでなる液晶組成物を配向基板上に展開し、液晶化合物をホメオトロピック配向させた後、必要により光照射および/または加熱処理してから、冷却することにより当該配向状態を固定化することにより製造することができる。
前記の主鎖型液晶ポリエステルは、芳香族ジオール単位(以下、構造単位(A)という。)、芳香族ジカルボン酸単位(以下、構造単位(B)という。)および芳香族ヒドロキシカルボン酸単位(以下、構造単位(C)という。)のうち少なくとも2種を必須単位として含む主鎖型液晶ポリエステルであって、主鎖末端の少なくとも一方にカチオン重合性基を有する構造単位を含むことを特徴とする主鎖型液晶ポリエステルである。以下に、構造単位(A)、(B)および(C)について順次説明する。
構造単位(A)を導入するための化合物としては下記一般式(a)で表される化合物が好ましく、具体的には、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等若しくはそれらの置換体、4,4’―ビフェノール、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,6−ナフタレンジオールなどが挙げられ、特に、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等若しくはそれらの置換体が好ましい。
ただし、式中の−Xは、−H、−CH、−C、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH)CH、−CH(CH)CHCH、−C(CH、−OCH、−OC、−OC、−OCH、−F、−Cl、−Br、−NO、または−CNのいずれかの基であり、特に下記式(a’)で表される化合物が好ましい。
構造単位(B)を導入するための化合物としては下記一般式(b)で表される化合物が好ましく、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等若しくはそれらの置換体、4,4’−スチルベンジカルボン酸若しくはその置換体、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられ、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等若しくはそれらの置換体が好ましい。
ただし、式中の−Xは、−H、−CH、−C、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH)CH、−CH(CH)CHCH、−C(CH、−OCH、−OC、−OC、−OCH、−F、−Cl、−Br、−NO、または−CNのいずれかの基を表す。
構造単位(C)を導入するための化合物としては下記一般式(c)で表される化合物が好ましく、具体的には、ヒドロキシ安息香酸若しくはその置換体、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸若しくはその置換体、4’−ヒドロキシ−4−スチルベンカルボン酸若しくはその置換体、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ桂皮酸などが挙げられ、特に、ヒドロキシ安息香酸およびその置換体、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボン酸若しくはその置換体、4’−ヒドロキシ−4−スチルベンカルボン酸若しくはその置換体が好ましい。
ただし、式中の−X、−X1、−X2は、それぞれ個別に、−H、−CH、−C、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH)CH、−CH(CH)CHCH、−C(CH、−OCH、−OC、−OC、−OCH、−F、−Cl、−Br、−NO、または−CNのいずれかの基を表す。
主鎖型液晶ポリエステルは、構造単位として、(A)芳香族ジオール単位、(B)芳香族ジカルボン酸単位、および(C)芳香族ヒドロキシカルボン酸単位のうちから少なくとも2種と、好ましくはさらに主鎖末端の少なくとも一方にカチオン重合性基を有する構造単位(以下、構造単位(D)という。)を含み、サーモトロピック液晶性を示すものであればよく、他の構造単位はこれら条件を満足する限り特に限定されるものではない。
主鎖型液晶ポリエステルを構成する構造単位(A)、(B)および(C)の全構造単位に占める割合は、構造単位(A)、(B)および(C)がジオールあるいはジカルボン酸あるいはヒドロキシカルボン酸として全モノマーの仕込み量に対して占める重量和の比率で表した場合、通常20〜99%、好ましくは30〜95%、特に好ましくは40〜90%の範囲である。20%以上であれば、液晶性を発現する温度領域が極端に狭くなることを抑制することができ、また99%を以下であれば、カチオン重合性基を有する単位が相対的に少なることを抑制することができ、配向保持能、機械的強度を向上させることができる。
次にカチオン重合性基を有する構造単位(D)について説明する。カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、およびビニルオキシ基からなる群から選ばれる官能基が好ましく、特にオキセタニル基が好ましい。構造単位(D)を導入するための化合物としては、下記の一般式(d)に示すごとく、フェノール性水酸基あるいはカルボキシル基を有する芳香族化合物に、エポキシ基、オキセタニル基、およびビニルオキシ基から選ばれるカチオン重合性を有する官能基が結合した化合物である。また、芳香環と上記カチオン重合性基との間には、適当なスペーサ部分を有していても良い。
ただし、式中の−X、−X、−X、−Y、−Zは、各構造単位毎にそれぞれ独立に以下に示すいずれかの基を表す。
(1)−X、−X、−X:−H、−CH、−C、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH)CH、−CH(CH)CHCH、−C(CH、−OCH、−OC、−OC、−OCH、−F、−Cl、−Br、−NO、または−CN
(2)−Y:単結合、−(CH−、−O−、−O−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−(CH−、−CO−O−(CH−、−(CH−O−CO−、−(CH−CO−O−、−O−(CH−O−CO−、−O−(CH−CO−O−、−O−CO−(CH−O−、−CO−O−(CH−O−、−O−CO−(CH−O−CO−、−O−CO−(CH−CO−O−、−CO−O−(CH−O−CO−、または−CO−O−(CH−CO−O−(ただし、nは1〜12の整数を示す。)
(3)Z:
構造単位(D)の中では、カチオン重合性基もしくはカチオン重合性基を含む置換基とフェノール性水酸基あるいはカルボン酸基の結合位置は、これらの基が結合する骨格がベンゼン環の場合は1,4−の位置関係を、ナフタレン環の場合は2,6−の位置関係を、ビフェニル骨格、スチルベン骨格の場合は4,4’−の位置関係にあるものが液晶性の点から好ましい。より具体的には、4−ビニルオキシ安息香酸、4−ビニルオキシフェノール、4−ビニルオキシエトキシ安息香酸、4−ビニルオキシエトキシフェノール、4−グリシジルオキシ安息香酸、4−グリシジルオキシフェノール、4−(オキセタニルメトキシ)安息香酸、4−(オキセタニルメトキシ)フェノール、4’−ビニルオキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4’−ビニルオキシ−4−ヒドロキシビフェニル、4’−ビニルオキシエトキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4’−ビニルオキシエトキシ−4−ヒドロキシビフェニル、4’−グリシジルオキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4’−グリシジルオキシ−4−ヒドロキシビフェニル、4’−オキセタニルメトキシ−4−ビフェニルカルボン酸、4’−オキセタニルメトキシ−4−ヒドロキシビフェニル、6−ビニルオキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−ビニルオキシ−2−ヒドロキシナフタレン、6−ビニルオキシエトキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−ビニルオキシエトキシ−2−ヒドロキシナフタレン、6−グリシジルオキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシナフタレン、6−オキセタニルメトキシ−2−ナフタレンカルボン酸、6−オキセタニルメトキシ−2−ヒドロキシナフタレン、4−ビニルオキシ桂皮酸、4−ビニルオキシエトキシ桂皮酸、4−グリシジルオキシ桂皮酸、4−オキセタニルメトキシ桂皮酸、4’−ビニルオキシ−4−スチルベンカルボン酸、4’−ビニルオキシ−3’−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4’−ビニルオキシ−4−ヒドロキシスチルベン、4’−ビニルオキシエトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4’−ビニルオキシエトキシ−3’−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4’−ビニルオキシエトキシ−4−ヒドロキシスチルベン、4’−グリシジルオキシ−4−スチルベンカルボン酸、4’−グリシジルオキシ−3’−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4’−グリシジルオキシ−4−ヒドロキシスチルベン、4’−オキセタニルメトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4’−オキセタニルメトキシ−3’−メトキシ−4−スチルベンカルボン酸、4’−オキセタニルメトキシ−4−ヒドロキシスチルベンなどが好ましい。
カチオン重合性基を有する構造単位(D)の主鎖型液晶ポリエステルを構成する全構造単位に占める割合は、同様に構造単位(D)をカルボン酸あるいはフェノールとして仕込み組成中の重量割合で表した場合、通常1〜60%、好ましくは5〜50%の範囲である。1%以上であれば、配向保持能、機械的強度を向上させることができ、また60%以下であれば、結晶性が上がることによる液晶温度範囲の狭まりを抑制することができる。
(A)〜(D)の各構造単位は、それぞれ1つまたは2つのカルボキシル基あるいはフェノール性水酸基を有しているが、(A)〜(D)の有するカルボキシル基、フェノール性水酸基は、仕込みの段階においてそれぞれの官能基の当量数の総和を概ねそろえることが望ましい。すなわち、構造単位(D)が遊離のカルボキシル基を有する単位である場合には、((A)のモル数×2)=((B)のモル数×2)+((D)のモル数)、構造単位(D)が遊離のフェノール性水酸基を有する単位である場合には、((A)のモル数×2)+((D)のモル数)=((B)のモル数×2)なる関係を概ね満たすことが望ましい。この関係式を満たすことにより、カチオン重合に関わる単位以外のカルボン酸あるいはフェノール、もしくはそれらの誘導体が分子末端となることになり、十分なカチオン重合性が得られということを防止することができ、酸性の残基が存在してしまうことを防止することができるため、プロセス上の望む段階以外で重合反応や分解反応が起きてしまうことを阻止することができる。
主鎖型液晶ポリエステルは、(A)、(B)、(C)および(D)以外の構造単位を含有することができる。含有することができる他の構造単位としては、特に限定はなく当該分野で公知の化合物(モノマー)を使用することができる。例えば、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびこれら化合物にハロゲン基やアルキル基を導入した化合物や、ビフェノール、ナフタレンジオール、脂肪族ジオールおよびこれら化合物にハロゲン基やアルキル基を導入した化合物等を挙げることができる。
主鎖型液晶ポリエステルの分子量は、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)中、30℃で測定した対数粘度ηが0.03〜0.50dl/gであることが好ましくより好ましくは0.05〜0.15dl/gである。ηが0.03dl/gより大きい場合、主鎖型液晶ポリエステルの溶液粘度を保つことができ、フィルム化する際に均一な塗膜を得ることができる。また、0.50dl/gより小さい場合、液晶配向時に要する配向処理温度が高くなることを防止することができ、配向と架橋が同時に起こることに起因すう配向性の低下を抑制することができる。
本発明において、主鎖型液晶ポリエステルの分子量制御は専ら仕込み組成により決定される。具体的には分子両末端を封印する形で反応する1官能性モノマー、すなわち前記した構造単位(D)を導入するための化合物の、全仕込み組成における相対的な含有量により、得られる主鎖型液晶ポリエステルの平均的な重合度(構造単位(A)〜(D)の平均結合数)が決定される。したがって、所望の対数粘度を有する主鎖型液晶性ポリエステルを得るためには、仕込みモノマーの種類に応じて仕込み組成を調整する必要がある。
主鎖型液晶ポリエステルの合成方法としては、通常のポリエステルを合成する際に用いられる方法を採ることができ、特に限定されるものではない。例えば、カルボン酸単位を酸クロリドやスルホン酸無水物などに活性化し、それを塩基の存在下でフェノール単位と反応させる方法(酸クロリド法)、カルボン酸単位とフェノール単位をDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの縮合剤を用いて直接縮合させる方法、フェノール単位をアセチル化して、これとカルボン酸単位とを溶融条件下で脱酢酸重合する方法などを用いることが出来る。ただし、溶融条件下での脱酢酸重合を用いる場合には、カチオン重合性基を有するモノマー単位が反応条件下で重合や分解反応を起こすおそれがあるため、反応条件を厳密に制御する必要がある場合が多く、場合によっては適当な保護基を用いたり、あるいは一度別な官能基を有する化合物を反応させておいてから、後でカチオン重合性基を導入するなどの方法を採ることが望ましい場合もある。また、重合反応により得られた粗主鎖型液晶ポリエステルを、再結晶、再沈などの方法により精製してもよい。
このようにして得られた主鎖型液晶ポリエステルは、NMR(核磁気共鳴法)などの分析手段により、それぞれのモノマーがどのような比率で主鎖型液晶ポリエステル中に存在するかを同定することができる。特に、カチオン重合性基の量比から、主鎖型液晶ポリエステルの平均結合数を算出する事ができる。
前記カチオン重合性基を含む主鎖型液晶ポリエステルに他の化合物を配合することも、本発明の範囲を超えない限り可能である。例えば、本発明に用いる主鎖型液晶ポリエステルと混和しうる他の高分子化合物や各種低分子化合物等を添加しても良い。かかる低分子化合物は、液晶性を有していても有していなくとも良く、架橋性の主鎖型液晶ポリエステルと反応できる重合性基を有していてもいなくとも良い。しかしながら、重合性基を有する液晶化合物を用いることが好ましく、例えば以下のものを例示できる。
ここで、nは2〜12の整数を、また−V−および−Wはそれぞれ以下のいずれかの基を表す。
−V−: 単結合、−O−、−O−C2m−O−(ただし、mは2〜12の整数)
−W:
側鎖型液晶化合物としては、前述のようにポリ(メタ)アクリレート、ポリマロネート、ポリシロキサン等が挙げられるが、中でも下記一般式(1)で表される反応性基を結合したポリ(メタ)アクリレートが好ましい。
式(1)において、Rは、それぞれ独立に、水素またはメチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シアノ基、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基またはカルボキシル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基を表し、Rは、炭素数1から24までの炭化水素基を表し、Lは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、pは、1から10までの整数を表し、qは、0から10までの整数を表し、a、b、c、d、eおよびfは、ポリマー中の各ユニットのモル比(a+b+c+d+e+f=1.0、ただし、c+d+e=0ではない)を表す。
式(1)で表される側鎖型高分子液晶化合物を構成する各成分のモル比は、a+b+c+d+e+f=1.0、c+d+e=0ではなく、かつ、液晶性を示すことが必要である。この要件を満たせば各成分のモル比は任意でよいが、以下のとおりであることが好ましい。
a:好ましくは0〜0.80、より好ましくは0.05〜0.50
b:好ましくは0〜0.90、より好ましくは0.10〜0.70
c:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
d:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
e:好ましくは0〜0.50、より好ましくは0.10〜0.30
f:好ましくは0〜0.30、より好ましくは0.01〜0.10
これらのポリ(メタ)アクリレート中の各成分は、上記の条件を満たせば、6種類の成分すべてが存在する必要もない。また、a〜fの各成分は、それぞれ複数の構造からなっていてもよい。
また、Rは、好ましくは、水素、メチル基、ブチル基、メトキシ基、シアノ基、ブロモ基、フルオロ基であり、特に好ましくは、水素、メトキシ基またはシアノ基であり、Lは、好ましくは、単結合、−O−、−O−CO−または−CO−O−であり、Rは、好ましくは、炭素数2、3、4、6、8および18の炭化水素基を表す。
さらに、一般式(1)で表される側鎖型高分子液晶化合物は、各成分a〜fのモル比や配向形態により複屈折率が変化するが、ネマチック配向をとった場合の複屈折率は0.001〜0.300であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.25である。
上記の側鎖型液晶化合物の各成分に該当するそれぞれの(メタ)アクリル化合物は、通常の有機化学の合成方法により得ることができる。
上記の側鎖型液晶化合物は、各成分に該当する上記方法で得られたそれぞれの(メタ)アクリル化合物の(メタ)アクリル基をラジカル重合またはアニオン重合により共重合することにより容易に合成することができる。重合条件は特に限定されるものではなく、通常の条件を採用することができる。
ラジカル重合の例としては、各成分に該当する(メタ)アクリル化合物をジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの溶媒に溶かし、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や過酸化ベンゾイル(BPO)などを開始剤として、60〜120℃で数時間反応させる方法が挙げられる。また、液晶相を安定に出現させるために、臭化銅(I)/2,2’−ビピリジル系や2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシ・フリーラジカル(TEMPO)系などを開始剤としたリビングラジカル重合を行い、分子量分布を制御する方法も有効である。これらのラジカル重合は脱酸素条件下に行う必要がある。
アニオン重合の例としては、各成分に該当する(メタ)アクリル化合物をテトラヒドロフラン(THF)などの溶媒に溶かし、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、グリニャール試薬などの強塩基を開始剤として反応させる方法が挙げられる。また、開始剤や反応温度を最適化することでリビングアニオン重合とし、分子量分布を制御することもできる。これらのアニオン重合は、脱水かつ脱酸素条件で行う必要がある。
側鎖型液晶化合物は、重量平均分子量が1,000〜200,000であるものが好ましく、3,000〜50,000のものが特に好ましい。上記数値範囲内であれば、強度不足となることはなく、また、配向性は良好となる。
本発明で用いる液晶化合物においては、前記側鎖型液晶化合物の他に、液晶性を損なわずに混和し得る種々の化合物を含有することができる。含有することができる化合物とし
ては、オキセタニル基、エポキシ基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性官能基を有する化合物、フィルム形成能を有する各種の高分子物質、液晶性を示す各種の低分子液晶化合物や高分子液晶化合物などが挙げられる。前記の側鎖型液晶化合物を重合性液晶組成物として用いる場合、重合性液晶組成物全体に占める前記の側鎖型液晶化合物の割合は、10重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。側鎖型液晶化合物の含有量が10重量%以上であることにより、フィルムの形成能が良好となり、組成物中に占める重合性基濃度が保たれ、重合後の機械的強度が十分なものとなる。
また、液晶組成物は、前記側鎖型液晶化合物に下記一般式(2)で表されるジオキセタン化合物を配合することが好ましい。
式(2)において、Rは、それぞれ独立に、水素、メチル基またはエチル基を表し、Lは、それぞれ独立に、単結合または−(CH−(nは1〜12の整数)を表し、Xは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−O−CO−または−CO−O−を表し、Mは、式(3)または式(4)で表されるいずれかであり、式(3)および式(4)中のP1は、それぞれ独立に式(5)から選ばれる基を表し、P2は式(6)から選ばれる基を表し、Lは、それぞれ独立に単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−O−CO−または−CO−O−を表す。
−P1−L−P2−L−P1− (3)
−P1−L−P1− (4)
式(5)および式(6)において、Etはエチル基を、iPrはイソプロピル基を、n Buはノルマルブチル基を、tBuはターシャリーブチル基をそれぞれ表す。
より具体的には、M基から見て左右のオキセタニル基を結合している連結基は異なっても(非対称型)同一でも(対称型)よく、特に2つのLが異なる場合や他の連結基の構造によっては液晶性を示さないこともあるが、使用には制約とならない。
一般式(2)で表される化合物は、M、LおよびXの組み合わせから多くの化合物を例示することができるが、好ましくは、下記の化合物を挙げることができる。
これらの化合物は有機化学における通常の合成方法に従って合成することができ、合成方法は特に限定されるものではない。
合成にあたっては、オキセタニル基がカチオン重合性を有するため、強い酸性条件下では、重合や開環などの副反応を起こすことを考慮して、反応条件を選ぶ必要がある。なお、オキセタニル基は類似のカチオン重合性官能基であるオキシラニル基などと比べて、副反応を起こす可能性が低い。さらに、類似したアルコール、フェノール、カルボン酸などの各種化合物をつぎつぎに反応させることもあり、適宜保護基の活用を考慮してもよい。
より具体的な合成方法としては、例えば、ヒドロキシ安息香酸を出発化合物として、ウィリアムソンのエーテル合成法等によりオキセタニル基を結合させ、次いで得られた化合物と本発明に適したジオールとを、酸クロリド法やカルボジイミドによる縮合法等を用いて結合させる方法や、逆に予めヒドロキシ安息香酸の水酸基を適当な保護基で保護し、本発明に適したジオールと縮合後、保護基を脱離させ、適当なオキセタニル基を有する化合物(オキセタン化合物)、例えばハロアルキルオキセタン等と水酸基とを反応させる方法などが挙げられる。
オキセタン化合物と水酸基との反応は、用いられる化合物の形態や反応性により適した反応条件を選定すればよいが、通常、反応温度は−20℃〜180℃、好ましくは10℃〜150℃が選ばれ、反応時間は10分〜48時間、好ましくは30分〜24時間である。これらの範囲外では反応が充分に進行しなかったり、副反応が生じたりして好ましくない。また、両者の混合割合は、水酸基1当量につき、オキセタン化合物0.8〜1.2当量が好ましい。
また前記液晶化合物は配向処理された後、オキセタニル基をカチオン重合させて架橋することにより、当該液晶状態を固定化することができる。このため、液晶組成物中に、光や熱などの外部刺激でカチオンを発生する光カチオン発生剤および/または熱カチオン発生剤を含有させておくことが好ましい。また必要によっては各種の増感剤を併用してもよい。
光カチオン発生剤とは、適当な波長の光を照射することによりカチオンを発生できる化合物を意味し、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系などを例示することが出来る。これら化合物の対イオンとしては、アンチモネート、フォスフェート、ボレートなどが好ましく用いられる。具体的な化合物としては、ArS+SbF−、ArP+BF−、ArI+PF−(ただし、Arはフェニル基または置換フェニル基を示す。)などが挙げられる。また、スルホン酸エステル類、トリアジン類、ジアゾメタン類、β−ケトスルホン、イミノスルホナート、ベンゾインスルホナートなども用いることができる。
熱カチオン発生剤とは、適当な温度に加熱されることによりカチオンを発生できる化合物であり、例えば、ベンジルスルホニウム塩類、ベンジルアンモニウム塩類、ベンジルピリジニウム塩類、ベンジルホスホニウム塩類、ヒドラジニウム塩類、カルボン酸エステル類、スルホン酸エステル類、アミンイミド類、五塩化アンチモン−塩化アセチル錯体、ジアリールヨードニウム塩−ジベンジルオキシ銅、ハロゲン化ホウ素−三級アミン付加物などを挙げることができる。
これらのカチオン発生剤の液晶組成物中への添加量は、用いる側鎖型高分子液晶化合物を構成するメソゲン部分やスペーサ部分の構造や、オキセタニル基当量、液晶の配向条件などにより異なるため一概には言えないが、側鎖型高分子液晶化合物に対し、通常100重量ppm〜20重量%、好ましくは1000重量ppm〜10重量%、より好ましくは0.2重量%〜7重量%の範囲である。100重量ppm以上であれば、発生するカチオンの量が十分でなく重合が進行しないということを抑制することができ、また20重量%以上であれば、液晶フィルム中に残存するカチオン発生剤の分解残存物等が多くなり耐光性などが悪化するのを抑制することができる。
次に配向基板について説明する。
配向基板としては、まず平滑な平面を有するものが好ましく、有機高分子材料からなるフィルムやシート、ガラス板、金属板などを挙げることができる。コストや連続生産性の観点からは有機高分子からなる材料を用いることが好ましい。有機高分子材料の例としては、ポリビニルアルコール系、ポリイミド系、ポリフェニレンオキシド系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリスルホン系、ポリエーテルケトン系、ポリエーテルエーテルケトン系、ポリアリレート系、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系、ポリカーボネート系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、環状ポリオレフィン系、塩化ビニル系、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系等フィルムが挙げられる。これらはブレンド物であってもよい。アクリル系やエポキシ系、オキセタン系等の光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を製膜した後、光または熱で硬化させたフィルムも使用することができる。
これら配向基板には安定したホメオトロピック配向を得るため、配向基板の耐溶剤性を向上させるため、密着性をコントロールするため等の観点から、必要に応じてさらに配向膜を設けたものを使用してもよい。配向膜材料としては、ポリビニルアルコール系、ポリイミド系、ポリフェニレンオキシド系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリスルホン系、ポリエーテルケトン系、ポリエーテルエーテルケトン系、ポリアリレート系、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系、ポリカーボネート系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系、環状ポリオレフィン系、塩化ビニル系、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系等の有機系物質が挙げられる。これらはブレンド物であってもよい。アクリル系やエポキシ系、オキセタン系等の光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を製膜した後、光または熱で硬化させた硬化膜も使用することができる。これら配向膜を形成する手法としては、直接あるいは溶液化して塗布する方法、蒸着やスパッタリング、配向基板との共押出などを利用することができる。また、無機系物質の層を配向基板上に蒸着、スパッタリング、塗布などの方法で形成してもよい。無機系物質の例としては、アルミニウム、銀等の無機金属や、シリカ、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
次に、ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法について説明する。液晶フィルム製造の方法としてはこれらに限定されるものではないが、前述の液晶組成物を前述の配向基板上に展開し、当該液晶化合物を配向させた後、必要により光照射および/または加熱処理してから、冷却することによって、液晶化合物の配向状態を固定化することにより製造することができる。
液晶組成物を配向基板上に展開して液晶組成物層を形成する方法としては、液晶組成物を溶融状態で直接配向基板上に塗布する方法や、液晶組成物の溶液を配向基板上に塗布後、塗膜を乾燥して溶媒を留去させる方法が挙げられる。
溶液の調製に用いる溶媒に関しては、本発明の液晶組成物を溶解でき適当な条件で留去できる溶媒であれば特に制限はなく、一般的にアセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ブトキシエチルアルコール、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル類、フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系などやこれらの混合系が好ましく用いられる。また、配向基板上に均一な塗膜を形成するために、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤などを溶液に添加してもよい。
さらに、前述の高分子液晶化合物の配向の固定化を容易ならしめるために、高分子液晶化合物に結合されている重合可能な基と同一の反応性を有する基を1分子内に2個以上有する低分子化合物(液晶性、非液晶性を問わない)や接着性を向上させうるような各種化合物を添加することもできる。
液晶組成物を直接塗布する方法でも、溶液を塗布する方法でも、塗布方法については、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、スピンコート法、ダイコート法、カーテンコート法、ディップコート法、ロールコート法などが挙げられる。液晶組成物の溶液を塗布する方法では、塗布後に溶媒を除去するための乾燥工程を入れることが好ましい。この乾燥工程は、塗膜の均一性が維持される方法であれば、特に限定されることなく公知の方法を採用することができる。例えば、ヒーター(炉)、温風吹きつけなどの方法が挙げられる。
液晶フィルムの膜厚は、液晶表示装置の方式や種々の光学パラメーターに依存することから一概には言えないが、通常0.1μm〜10μm、好ましくは0.2μm〜5μm、さらに好ましくは0.3μm〜2μmである。膜厚が0.1μm以上であれば、十分な視野角改良および輝度向上効果を得ることができ、10μm以下であれば、所望の配向を得ることができる。
続いて、配向基板上に形成された液晶組成物層を、熱処理などの方法で液晶配向を形成し、必要により光照射および/または加熱処理してから、冷却することで硬化を行い固定化する。最初の熱処理では、使用した液晶組成物中の液晶化合物の液晶相発現温度範囲に加熱することで、該液晶化合物が本来有する自己配向能により液晶を配向させる。熱処理の条件としては、用いる液晶化合物の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10〜250℃、好ましくは30℃〜160℃の範囲であり、該液晶化合物にガラス転移温度が存在する場合には、ガラス転移点(Tg)以上の温度、さらに好ましくはTgより10℃以上高い温度で熱処理するのが好ましい。Tgが上記数値範囲内であれば、液晶配向を充分に進行させることができ、液晶組成物中のカチオン重合性反応基や配向基板に悪影響を与えるのを抑制することが得きる。また、熱処理時間については、通常3秒〜30分、好ましくは10秒〜20分の範囲である。3秒以上の熱処理時間であれば、液晶配向は充分に完成し、また30分以下の熱処理時間であれば、良好な生産性を維持することができる。該液晶組成物層を熱処理などの方法で液晶配向を形成したのち、冷却してガラス状態として固定化するか、必要により液晶配向状態を保ったまま液晶組成物を液晶化合物が有するオキセタニル基等の反応性基の重合反応により硬化させる。硬化工程は、完成した液晶配向を硬化(架橋)反応により液晶配向状態を固定化し、より強固な膜に変性することを目的にしている。
使用される液晶化合物が重合性のオキセタニル基を有する場合、その重合性基の重合(架橋)には、カチオン重合開始剤(カチオン発生剤)を用いることが好ましい。また、重合開始剤としては、熱カチオン発生剤より光カチオン発生剤を使用することが好ましい。光カチオン発生剤を用いた場合、光カチオン発生剤の添加後、液晶配向のための熱処理までの工程を暗条件(光カチオン発生剤が解離しない程度の光遮断条件)で行えば、液晶化合物は配向段階までは硬化することなく、充分な流動性をもって液晶配向することができる。この後、適当な波長の光を発する光源からの光を照射することによりカチオンを発生させ、液晶組成物層を硬化させる。
光照射の方法としては、用いる光カチオン発生剤の吸収波長領域にスペクトルを有するようなメタルハライドランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザーなどの光源からの光を照射し、光カチオン発生剤を開裂させる。1平方センチメートルあたりの照射量としては、積算照射量として通常1〜2000mJ、好ましくは10〜1000mJの範囲である。ただし、光カチオン発生剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、液晶化合物自身に光源からの光の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、吸収波長の異なる2種以上の光カチオン発生剤を混合して用いるなどの方法を採ることもできる。光照射時の温度は、該液晶化合物が液晶配向をとる温度範囲である必要がある。また、硬化の効果を充分にあげるためには、該液晶化合物のTg以上の温度で光照射を行うのが好ましい。
以上のような工程により製造した液晶組成物層は、充分強固な膜となっている。具体的には、硬化反応によりメソゲンが3次元的に結合され、硬化前と比べて耐熱性(液晶配向保持の上限温度)が向上するのみでなく、耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐クラック性などの機械的強度に関しても大幅に向上する。
なお、配向基板として、光学的に等方でない、あるいは使用波長領域において不透明である、もしくは配向基板の膜厚が厚すぎて実際の使用に支障を生じるなどの問題がある場合、配向基板上で形成された形態から、偏光板、目的とする使用波長領域で障害とならないような基板や位相差機能を有する延伸フィルムに転写した形態も使用しうる。転写方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、特開平4−57017号公報や特開平5−333313号公報に記載されているように液晶フィルム層を粘着剤もしくは接着剤を介して、配向基板とは異なる基板を積層した後に、該積層体から配向基板を剥離することで液晶フィルムのみを転写する方法等を挙げることができる。 なお、転写に使用する粘着剤もしくは接着剤は、後述のように光学グレードのものであれば特に制限はなく、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系など一般に用いられているものを用いることができる。
以上のようにして得られるホメオトロピック配向液晶フィルムからなる層は、当該液晶組成物層の光学位相差を垂直入射から傾けた角度で測定することによって定量化することができる。液晶が垂直に配向している場合、この位相差値は垂直入射について対称的である。
光学位相差の測定には数種の方法を利用することができ、例えば王子計測機器(株)製自動複屈折測定装置KOBRA−WRやAXOMETRICS社製AxoScan、および偏光顕微鏡を利用することができる。このホメオトロピック配向液晶層はクロスニコル偏光子間で黒色に見える。このようにしてホメオトロピック配向性を評価した。
第2の光学異方性層の厚みは、積層偏光板および有機EL素子として使用できる範囲ならば特に制限はないが、0.1〜200μmが好ましく、より好ましくは0.2〜150μm、さらに好ましくは0.3〜100μmである。
<偏光子>
本発明の積層偏光板を構成する偏光子としては、通常、偏光子の片側または両側に保護フィルムを有するものが使用される。偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用でき、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム、リオトロピック液晶を含む配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性材料(沃素、染料)を吸着・配向したものが好適に用いられる。偏光子の厚さも特に制限されないが、5〜80μm程度が一般的である。
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよく、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
前記偏光子の片側または両側に設けられている保護フィルムには、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。前記保護フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、あるいは前記ポリマーのブレンド物などが保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。その他、アクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型樹脂などをフィルム化したものなどが挙げられる。保護フィルムの厚さは、一般には500μm以下であり、1〜300μmが好ましい。特に5〜200μmとするのが好ましい。
保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。特にトリアセチルセルロースフィルムが好適である。
なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。前記偏光子と保護フィルムとは通常、粘着剤や接着剤等を介して密着している。
接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。
前記保護フィルムとしては、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものを用いることができる。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋または未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
前記の偏光子と第1の光学異方性層、第2の光学異方性層から少なくともなる本発明の積層偏光板は、それぞれ粘・接着剤層を介して互いに貼り合わせることにより作製することができる。また、配向基板上に作製されたホメオトロピック配向液晶フィルムを、粘・接着剤層を介して第1の光学異方性層に貼着した後、ホメオトロピック配向を実現するために使用した配向基板を剥離してホメオトロピック配向した液晶部分のみを第1の光学異方性層に転写する手法によっても積層させることができる。
また、第1、第2の光学異方性層同士の積層方法としては、例えば後述の粘・接着剤層を用いて直接両者を積層する手法、一方の光学異方性層上に液晶配向能を有する配向膜を設け、均一でモノドメインな液晶配向性を示し、かつその配向状態を容易に固定化できる液晶組成物を塗布等の手段により設ける手法、さらには配向基板として第1の光学異方性層を選択し、均一でモノドメインな液晶配向性を示し、かつその配向状態を容易に固定化できる液晶組成物を塗布等の手段により直接第1の光学異方性層に設ける手法等が好適に用いられる。
本発明の積層偏光板は、必要に応じて光拡散層、光制御フィルム、導光板、プリズムシート等の部材を追加してもよい。
なお、偏光子、第1の光学異方性層、第2の光学異方性層の積層や転写に用いる粘・接着剤層を形成する粘・接着剤は光学的に等方性で透明なものであれば特に制限されない。例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。また、光や電子線、熱などの外部刺激により反応し重合や架橋するような反応性のものも用いることができる。これらの中でも特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
粘・接着剤層の形成は、適宜な方式で行うことができる。その例としては、トルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物または混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解または分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で前記の偏光子、第1の光学異方性層、または第2の光学異方性層上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘・接着剤層を形成してそれを前記の偏光子、第1の光学異方性層、または第2の光学異方性層上に移着する方式などが挙げられる。また、粘・接着剤層には、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることのある添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘・接着剤層などであってもよい。
粘・接着剤層の厚さは、貼着する部材を貼着しかつ十分な密着力を維持できる限り特に膜厚に制限はなく、粘・接着剤の特性や粘・接着される部材により適宜選定することができる。楕円偏光板の総厚の低減要求の強いことから、粘・接着剤の厚さは薄いほうが好ましいが、通常は2〜80μm、好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜40μmである。この範囲外では、接着力が不足したり、積層時や積層偏光板の保存時に端部から滲み出すなどして好ましくない。
なお、第2の光学異方性層としてホメオトロピック配向液晶フィルムを用いる場合、ホメオトロピック配向液晶フィルムを粘・接着剤層を介して、第1光学異方性層に転写する際には、転写が容易となるよう下記(A)〜(C)のようなプロセスを適宜用いることもできる。
(A)配向基板上に形成された液晶配向が垂直に固定化された第2の光学異方性層を、接着剤層1を介して直接第1の光学異方性層へ貼着し、配向基板を剥離して第2の光学異方性層を第1の光学異方性層へ転写する。
(B)配向基板上に形成された液晶配向が垂直に固定化された第2の光学異方性層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離して第2の光学異方性層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/第2の光学異方性層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/第2の光学異方性層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、セパレートフィルムを剥離し第1の光学異方性層へ貼着し、再剥離性基板2を剥離する。
(C)配向基板上に形成された液晶配向が垂直に固定化された第2の光学異方性層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離して第2の光学異方性層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/第2の光学異方性層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/第2の光学異方性層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、再剥離性基板2を剥離し、セパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/第2の光学異方性層/接着剤層2からなる中間体3を作製し、さらに接着剤層2側にもセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合し、セパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/第2の光学異方性層/接着剤層2/粘着剤層/セパレートフィルムからなる中間体4を作製し、セパレートフィルムを剥離し第1の光学異方性層へ貼着する。
さらに接着剤に適宜表面改質剤等の添加剤を添加することで、再剥離性基板と第2の光学異方性層との貼着の際の両者の密着力を低減させ、かつ再剥離性基板と接着剤層との密着力を維持させることで再剥離性基板側に接着剤層が貼着したまま剥離することもできる。その際に用いられる界面活性剤、および添加剤としては光学的欠陥の検査性や剥離性に悪影響を及ぼさない範囲であれば種類、添加量に特に制限はない。このような手法により第1の光学異方性層に転写する際には、転写が容易となるよう下記(D)、(E)のようなプロセスを適宜用いることもできる。
(D)配向基板上に形成された液晶配向が垂直に固定化された第2の光学異方性層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離して第2の光学異方性層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/第2の光学異方性層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/第2の光学異方性層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、セパレートフィルムを剥離し第1の光学異方性層へ貼着し、再剥離性基板2を接着剤層2が貼着した状態で剥離する。
(E)配向基板上に形成された液晶配向が垂直に固定化された第2の光学異方性層を、接着剤層1を介して再剥離性基板1と接着せしめた後、配向基板を剥離して第2の光学異方性層を再剥離性基板1に転写し、再剥離性基板1/接着剤層1/第2の光学異方性層からなる中間体1を作製し、さらに接着剤層2を介して再剥離性基板2と接着せしめた後、再剥離性基板1を剥離し、接着剤層1/第2の光学異方性層/接着剤層2/再剥離性基板2からなる中間体2を作製し、さらに接着剤層1側にセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合した後、再剥離性基板2を接着剤層2が貼着した状態で剥離し、セパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/第2の光学異方性層からなる中間体5を作製し、さらに第2の光学異方性層側にもセパレートフィルム付きのノンキャリア糊を貼合しセパレートフィルム/粘着剤層/接着剤層1/第2の光学異方性層/粘着剤層/セパレートフィルムからなる中間体6を作製し、セパレートフィルムを剥離し第1の光学異方性層へ貼着する。
またホメオトロピック配向液晶フィルムからなる第2の光学異方性層を粘・接着剤層を介して、第1の光学異方性層に転写する際には、ホメオトロピック配向液晶フィルム表面を表面処理して粘・接着剤層との密着性を向上することができる。表面処理の手段は、特に制限されないが、前記液晶フィルム表面の透明性を維持できるエキシマ処理、コロナ放電処理、スパッタ処理、低圧UV照射、プラズマ処理などの表面処理法を好適に採用できる。これら表面処理法のなかでもコロナ放電処理が良好である。
さらに、ホメオトロピック配向液晶フィルムを粘・接着剤層を介さずとも、第1の光学異方性層上に前述の液晶組成物を前述の配向基板上に展開し、液晶化合物を配向させた後、光照射および/または加熱処理することにより当該配向状態を固定化することにより製造することもできる。適宜、前記第1の光学異方性層上に前述の配向膜を設置してから前述の液晶組成物を前述の配向基板上に展開し、液晶化合物を配向させた後、光照射および/または加熱処理することにより当該配向状態を固定化することにより製造することもできる。
本発明の積層偏光板の総厚みは、有機EL素子として使用できる範囲ならば特に制限はないが、40〜500μmが好ましく、より好ましくは50〜200μm、さらに好ましくは60〜150μmである。(ここの記載も、積層偏光板の説明の最後の方に移動)
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
有機EL素子は、少なくとも、ポリイミド透明基板、有機発光層と、電極とを備える。一実施形態においては、有機EL素子21は、図1に示す通り、ポリイミド透明基板15と、第1の電極16と、正孔輸送層17と、有機発光層18と、電子輸送層19と、第2の電極20と、を備える。このような構成において、第2の電極20からは電子が、第1の電極16からは正孔が注入され、両者が有機発光層18で再結合することにより、有機発光層18の発光特性に応じた波長で発光する。有機発光層18で生じた光は、直接または第2の電極20で反射した後、第1の電極16、ポリイミド透明基板15、積層偏光板14を通過して外部に出射する。
<ポリイミド透明基板>
有機EL素子21は、基板として、ポリイミド透明基板15を備え、これにより、耐熱性に優れ、かつ靭性の高く、曲げたり丸めたりして収納可能なフレキシブル表示パネルの実現が可能となる。
ポリイミド透明基板は、ポリイミドを含んでなり、このポリイミドは、例えば、エステル基含有テトラカルボン酸二無水物などの酸無水物と、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタンなどのジアミンとを重合させて得ることができる。好ましくは、酸無水物およびジアミンの少なくとも1方に脂肪族モノマーまたは脂環族モノマーを重合させた状態で、これらを重合させることが好ましい。これにより、ポリイミド透明基板15の透明性が顕著に向上する。脂肪族モノマーのうち、酸無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを用いることができ、脂肪族モノマーのうち、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、シロキサンジアミンなどを用いることができる。また脂環族モノマーのうち、酸無水物としては、例えば、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、などを用いることができ、脂環族モノマーのうち、ジアミンとしては、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンなどを用いることができる。
また、ポリイミド透明基板は、下記式(9)を満足するようなリターデーション特性を有することが好ましい。
−50nm≦Rth3(550)≦200nm (9)
さらに、ポリイミド透明基板の厚さ方向リターデーションRth3は、第1の光学異方性層の厚さ方向リターデーション値Rth1および第2の光学異方性層の厚さ方向リタ−デーション値Rth2との関係において、下記式(8)を満足することが好ましい。
−40nm≦Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550)≦40nm (8)
(ここで、厚さ方向リターデーションRth1は、Rth1={(nx1+ny1)/2−nz1}×d1[nm]で表される。なお、nx1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層面内の最大主屈折率、ny1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層の厚さ方向の主屈折率である。また、厚さ方向リターデーションRth3は、Rth3={(nx3+ny3)/2−nz3}×d3[nm]で表される。なお、nx3は波長550nmの光に対する前記ポリイミド透明基板面内の最大主屈折率、ny3は波長550nmの光に対する前記ポリイミド透明基板面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz3は波長550nmの光に対する前記ポリイミド透明基板の厚さ方向の主屈折率、d3は前記ポリイミド透明基板の膜厚である。)
この数値範囲を満たすことにより、有機EL表示装置の視野角特性が極めて良好なものとなり好ましい。
また、下記式(8−1)を満足することがより好ましく、下記式(8−2)を満足することがさらに好ましい。
−20nm≦Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550)≦20nm (8−1)
−10nm≦Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550)≦10nm (8−2)
<第1の電極>
第1の電極は、電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させることができる。電極物質としては、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO、CuI、ZnOなどが挙げられる。また、第1の電極の厚さは、20〜300nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。
<正孔輸送層>
正孔輸送層は、正孔輸送材料を含んでなり、正孔注入層や電子阻止層もこれに含まれる。正孔輸送材料としては、例えば、ポリトリフェニルアミン、α−NPD、TCTA、CBP等を挙げることができる。また、正孔輸送層の厚さは、5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。
<有機発光層>
有機発光層は、ポリビニルカルバゾール、ポリオクチルフルオレンまたはAlキノリノラート錯体、Irキノリラート錯体などをダイコート法、真空蒸着法などの方法により形成させることができる。また、有機発光層の厚さは、5〜30nmであることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。
<電子輸送層>
電子輸送層は、第2の電極より注入された電子を有機発光層に伝達する機能を有し、電子注入層や正孔阻止層もこれに含まれる。また、電子輸送層は、電子輸送材料を含んでなり、電子輸送材料としては、例えば、Alキノリノラート錯体、BCP,TPBiなどを挙げることができる。また、電子輸送層の厚さは、5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。
<第2の電極>
第2の電極も、第1の電極同様、電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法により形成させることができる。電極物質としては、例えば、Mg、Ag、Mg−Ag合金、Mg−In合金、Na、Na−K合金、Li、Al、Al−Li合金などが挙げられる。また、第2の電極の厚さは、10〜400nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例で用いた各分析方法は以下の通りである。
(1)赤外吸収スペクトル(IR)の測定
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300)を用い、透過法にてポリイミド前駆体およびポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを測定した。また、合成したエステル基含有テトラカルボン酸二無水物の分子構造を確認するためにKBr法により赤外吸収スペクトルを測定した。
(2)固有粘度の測定
0.5重量%のポリイミド前駆体溶液(溶媒:N,N−ジメチルアセトアミド)について、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
(3)GPCの測定
化合物をテトラヒドロフランに溶解し、東ソー社製8020GPCシステムにて測定した。カラムはTSK−GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000、SuperH4000を直列につなぎ、溶出液としてテトラヒドロフランを用いて測定した。分子量の較正にはポリスチレンスタンダードを用いた。
(4)液晶材料の熱挙動の確認
液晶材料の相挙動はメトラー社製ホットステージFP82HT上で、試料を加熱しつつ、オリンパス社製BH2偏光顕微鏡で観察した。ガラス転移温度、相転移温度は、Perkin−Elmer社製示差走査熱量計DSC8000により昇降温速度20℃/分で測定した。
(5)フィルムの顕微鏡観察
オリンパス光学社製BH2偏光顕微鏡で液晶の配向状態を観察した。
(6)膜厚測定法
SLOAN社製SURFACE TEXTURE ANALYSIS SYSTEM Dektak 3030ST、もしくはニコン社製DIGIMICRO MFC−101を用いた。また、干渉波測定(日本分光(株)製 紫外・可視・近赤外分光光度計V−570)と屈折率のデータから膜厚を求める方法も併用した。
(7)複屈折の測定
フィルム面内のリターデーション値Re及び膜厚方向のリターデーション値Rthは、王子計測機器(株)製自動複屈折計KOBRA−WR、AXOMETRICS社製AxoScanを用いて測定した。
(8)二色性色素の偏光吸収スペクトル、透過率測定
日本分光(株)製分光スペクトル(V−570)を用いて測定した。
[参考例1]
<エステル基含有テトラカルボン酸二無水物の合成>
トリメリット酸無水物クロリド50mmolをテトラヒドロフラン27mLに溶解し、密栓する。この溶液に、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン25mmolおよびピリジン6mLをテトラヒドロフラン14mLに溶解したものシリンジにて室温でゆっくりと滴下し、白色沈殿が生じた。滴下終了後、反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応液をエバポレーターで溶媒留去した後、そのフラスコへ水を投入して、洗浄し、ピリジン塩酸塩を除去した。180℃で24時間真空乾燥して白色の粗生成物を得た。更に無水酢酸/酢酸(体積比7/3)で再結晶し、ベンゼンで洗浄後最後に180℃で24時間真空乾燥してエステル基含有テトラカルボン酸二無水物(以下、「TAPS」と略記する。)を得た。尚、生成物のIRからフェニルエステル基と酸無水物基の特性吸収を確認し、目的物であることを確認した。
[参考例2]
<ポリイミド前駆体の合成>
攪拌機付反応容器中に、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(シス−シス体の含有率8モル%)10mmolをN,N−ジメチルアセトアミド50mLに溶解し、この溶液に合成例1で得られたテトラカルボン酸二無水物(TAPS)10mmolを徐々に加えた。テトラカルボン酸二無水物を添加し終わったあと、約30分後に完全に均一・透明な溶液が得られた。更に室温で24時間撹拌し透明で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。この際の溶質濃度は14.7重量%であった。このポリイミド前駆体溶液は室温および−20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃で測定したポリイミド前駆体の固有粘度は0.911dL/gであり、高重合体であった。
[参考例3]
<プラスチック基板(ポリイミド基板)の作製>
このポリイミド前駆体溶液をガラス基板22に塗布し、60℃において、1時間乾燥して得られたポリイミド前駆体膜を基板上で減圧下180℃、230℃、250℃各温度で30分段階的に昇温し、300℃で1時間熱処理して膜厚20μmの透明で強靭なポリイミド基板15(プラスチック基板)を得た。イミド化の完結は赤外吸収スペクトルから確認した。残留歪を除去するために、ガラス基板22からポリイミド基板15を剥がした後、更に210℃で1時間熱処理した。180°折り曲げ試験によりこのポリイミド基板15は破断せず、可撓性を示した。このようにして得られたポリイミド基板15の面内のリターデーション値Re3(550)は0nm、厚さ方向のリターデーション値Rth3(550)は50nmであった。
[参考例4]
<有機EL素子の作製>
まず、図7に示すように、ガラス基板22とポリイミド基板15からなる第1の基板23上に、透明な第1の電極16を形成した。ここでは、第1の電極16として、ITO(インジウムスズ酸化物)を蒸着した。その膜厚は、100nmとした。そして、第1の電極16の上に、正孔輸送層17として、ポリアニリンをダイコートにて積層した。その厚さは、100nmとした。そして、正孔輸送層17の上に、有機発光層18として、ポリビニルカルバゾールをダイコートにて積層した。その厚さは、100nmとした。そして、有機発光層18の上に、電子輸送層19として、Alキノリノラート錯体からなる層をスパッタにて積層した。その厚さは、100nmとした。さらに、電子輸送層19の上に、第2の電極20として、マグネシウムを積層した。その厚さは200nmとした。以上によって、有機EL素子21を得た
[参考例5]
<重合性液晶組成物(A)と二色性色素の混合溶液の調製>
下記式で表される示される棒状液晶化合物(21)と二種類以上のメソゲン基を有する化合物(22)をそれぞれ準備した。なお、棒状液晶化合物(21)と二種類以上のメソゲン基を有する化合物(22)は、特開2002−267838号公報に記載された方法により製造した。
次に、棒状液晶化合物(21)17.6重量%と、前記二種類以上のメソゲン基を有する化合物(22)2重量%と、を混合し、第一の混合物(重合性液晶組成物(A)とする)を得た。次いで、前記第一の混合物に対して、下記式の二色性色素((式1−30のトリスアゾ色素、極大吸収波長 560nm、色材,Vol.59,No.12,753〜758,1986年に合成法を記載))を前記第一の混合物100重量部に対して0.08重量部となる割合で添加し、更に、重合開始剤(BASF社製の商品名「イルガキュア651」、室温(25℃)条件下で固体)を、前記重合性液晶組成物(A)と二色性色素の総量100重量部に対して、0.2重量部となる割合で添加して、前記重合性液晶組成物(A)と、二色性色素と、前記重合開始剤とを混合してなる第二の混合物(固体)を得た。
次いで、上記のようにして得られた第二の混合物を、メチルエチルケトン中に溶解させて、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで不溶分をろ過して、前記重合性液晶組成物(A)と、二色性色素と、重合開始剤と、溶媒とを含む混合溶液(第三の混合物)を得た。なお、このような第三の混合物の製造に際しては、前記第三の混合物中の溶媒の含有量が80重量%となり、前記重合性液晶組成物(A)と、二色性色素と、前記重合開始剤との総量が20重量%となるようにして溶媒を用いた。
[参考例6]
<重合性液晶組成物(B)の溶液調製>
特開2004−315736号公報、特開2007−277462号公報を参考にして、ラジカル重合により、下記式(7)で表される側鎖型液晶化合物を合成した。GPC測定による分子量はポリスチレン換算で、数平均分子量Mnは8,900、重量平均分子量Mwは19,600であった。なお、式(7)における数字は各ユニットのモル組成比を表すものであって、ブロック共重合体を意味するものではない。DSC測定の結果、昇温時のガラス転移温度は59℃で、それ以上の温度ではネマチック液晶相を示し、175℃以上で等方相を示した。
式(7)で表される側鎖型液晶化合物を0.9gと、式(8)で表されるジオキセタン化合物を0.05g、式(9)で表されるアクリル化合物0.05gを、9gのシクロヘキサノンに溶解し、暗所でカチオン系光開始剤トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピレンカーボネート溶液(アルドリッチ社製、試薬)0.1g(式(7)、式(8)、式(9)の化合物3種からなる混合物の総重量に対して濃度5重量%)、界面活性剤としてパーフルオロアルキル基含有界面活性剤を0.002g(式(7)、式(8)、式(9)の化合物3種からなる混合物の総重量に対して濃度0.2重量%)を加えた後、孔径0.5μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルター(アドバンテック東洋(株)製、品名25JP050AN)でろ過して重合性液晶組成物(B)の溶液を調製した。なお、式(8)のジオキセタン化合物は、偏光顕微鏡観察及びDSC測定の結果、昇温時は74℃で結晶相からネマチック液晶相に転移し、96℃で等方相となり、降温時は88℃で等方相からネマチック相に転移した後、54℃で結晶相を示した。また、式(9)のアクリル化合物は、偏光顕微鏡観察及びDSC測定の結果、液晶相を示さず、昇温時30℃で融解した。なお、本液晶材料組成物溶液1の一部をガラス基板上にスピンコート法により塗布し、55℃のホットプレートで60分加熱して溶剤を除去した。本組成物をガラス基板上からかき取り、熱挙動の確認を偏光顕微鏡観察およびDSC測定にて行ったところ、昇温時のガラス転移温度は50℃で、155℃まで液晶相を示し、それ以上の温度で等方相を示した。
[参考例7]
<重合性液晶組成物(C)の溶液調製>
先ず、下記式(110)〜(113)で表わされる重合性液晶化合物(アクリレート系の重合性液晶化合物)をそれぞれ準備した。
なお、上記一般式(110)〜(113)で表わされる各重合性液晶化合物は、それぞれ公知の方法で製造した。具体的には、上記一般式(110)で表わされる化合物(以下、場合により単に「液晶化合物(I)」という。)は、英国特許出願公開第2,280,445号明細書に記載された方法により製造し、上記一般式(111)で表わされる化合物(以下、場合により単に「液晶化合物(II)」という。)は1989年に発行された文献(D.J.Broer et al.,“Makromol.Chem.”,vol.190,1989年,第3201頁〜第3215頁)に記載された方法により製造し、上記一般式(112)で表わされる化合物(以下、場合により単に「液晶化合物(III)」という。)及び(113)で表わされる化合物(以下、場合により単に「液晶化合物(IV)」という。)は、国際公開93/22397号に記載された方法により製造した。また、上記一般式(110)〜(113)で表わされる重合性液晶化合物はいずれも、室温(25℃)条件下において固体であった。
次に、前記液晶化合物(I)〜(IV)を、液晶化合物(I):35重量部、液晶化合物(II):23重量部、液晶化合物(III):23重量部、及び、液晶化合物(IV):19重量部の重量比で混合し、第四の混合物(重合性液晶組成物(C)とする)を得た。次いで、重合開始剤(BASF社製の商品名「イルガキュア907」、室温(25℃)条件下で固体)を、前記液晶化合物(I)〜(IV)の総量100重量部に対して4.0重量部となる割合で添加して、前記液晶化合物(I)〜(IV)と、前記重合開始剤とを混合してなる第五の混合物(固体)を得た。次いで、前記第五の混合物を、ジクロロベンゼン(溶媒)中に溶解させて、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで不溶分をろ過して、前記液晶化合物(I)〜(IV)と、重合開始剤と、溶媒とを含む混合溶液(第六の混合物)を得た。なお、このような第六の混合物の製造に際しては、前記第六の混合物中の溶媒の含有量が80重量%となり、前記液晶化合物(I)〜(IV)と前記重合開始剤との総量が20重量%部となるようにして溶媒を用いた。
[参考例8]
<PVA溶液(D)の調製及びPVA配向基板(E)の作製>
配向基板は以下のようにして調製した。厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)(東洋紡績(株)製、商品名はコスモシャインA4100)を15cm角に切り出し、アルキル変性ポリビニルアルコール(PVA:(株)クラレ製、MP−203)の5重量%溶液(溶媒は、水とイソプロピルアルコールの重量比1:1の混合溶媒)(PVA溶液(D))をスピンコート法により塗布し、50℃のホットプレートで30分乾燥した後、120℃のオーブンで10分間加熱した。次いで、レーヨンのラビング布でラビングして、PVA層とPETフィルムからなるPVA配向基板(E)を作製した。得られたPVA層の膜厚は1.2μmであった。ラビング時の周速比(ラビング布の移動速度/基板フィルムの移動速度)は4とした。
[参考例9]
<PVA溶液(F)の調製及びPVA配向基板(G)の作製>
還流冷却器および攪拌機の付いた1L三口フラスコにPVA(日本酢ビ・ポバール(株)製、商品名JL−18E、ケン化度83〜86%、平均重合度1800)24.0gおよび脱イオン水460.8g(電気伝導度値;1μS/cm以下)を投入し、95℃、3時間加熱し攪拌溶解後、70℃まで冷却した。イソプロピルアルコール115.2g(関東化学(株)製、鹿一級、純度99%以上)を徐々に加え、65℃〜70℃で2時間攪拌し、透明な均一溶液を得た。室温まで冷却し、前記槽からPVA溶液を濾過しながら抜き出した。濾過は、平均粒径1μmの粒子を捕集できるカートリッジフィルター(ADVANTEC TCP−JX−S1FE(1μm))を使用し、固形分濃度約4重量%のPVA溶液(F)350gを得た。
PVA配向基板(G)は以下のようにして調製した。厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製、商品名はコスモシャインA4100)を15cm角に切り出し、コロナ放電処理(100W・min/m)を施した後、厚み1.1mm、13cm角のガラス基板上に固定し、スピンコーターにセットした。前記PVA溶液を300rpmで30秒の条件でスピンコート法により塗布し、50℃のホットプレートで30分乾燥した後、120℃のオーブンで10分間加熱して、PVA層とPETフィルムからなるPVA配向基板(G)を得た。得られたPVA層の膜厚は1.2μmであった。
[参考例10]
<偏光子の作製>
ポリビニルアルコールフィルムを温水中に浸漬して膨張させたあと、ヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液中にて染色し、次いでホウ酸水溶液中で一軸延伸処理して偏光子を得た。この偏光子は、分光光度計にて単体透過率、平行透過率および直交透過率を調べたところ、厚み20μm、透過率43.5%、偏光度99.9%であった。
(実施例1)
<第1の光学異方性層の作製>
第1の光学異方性層として、縦一軸延伸により作製された厚み50μm、200mm角のフルオレン骨格を有するポリカーボネートフィルム(帝人化成(株)製ピュアエースWR)を用意した。図8に第1の光学異方性層の複屈折の波長分散特性を、表2に光学特性結果をまとめる。550nmでの面内のリターデーション値Re1(550)は143nmであり、厚さ方向のリターデーション値Rth1(550)は72nmであった。また、Re1(500)/Re1(550)=0.963であり、Re1(580)/Re1(550)=1.015であった。特に、測定波長500nm〜600nmの範囲では、測定波長が長波長ほど、位相差が大きくなることを確認した。
<第1の光学異方性層と、第2の光学異方性層と、を備える光学異方性積層体(H)の作製>
参考例9で調製したPVA溶液(F)を、300rpmで30秒の条件でスピンコート法により塗布し、50℃のホットプレートで30分乾燥した後、100℃のオーブンで10分間加熱して、前記ポリカーボネートフィルム上にPVA層を設けた。得られたPVA層の膜厚は1.2μmであった。なお、本PVA層は光学的に等方性である。
ポリカーボネートフィルム(第1の光学異方性層)に形成した前記PVA層上に、参考例6で調製した液晶組成物(B)の溶液を、スピンコート法により塗布した。次いで55℃のホットプレートで10分乾燥し、100℃のオーブンで3分間熱処理することで液晶化合物を配向させた。次いで、70℃に加熱したアルミ板に試料を密着させて置き、その上から、高圧水銀灯ランプにより300mJ/cmの紫外光(ただし365nmで測定した光量)を空気中で照射して、オキセタニル基をカチオン反応させて液晶化合物を硬化させることで、ポリカーボネートフィルムに形成した前記PVA層上に液晶層からなる第2の光学異方性層を形成させて、光学異方性層積層体(H)を得た。第2の光学異方性層の厚みは1.0μmであり、光学異方性積層体(H)の厚みは52.2μmであった。
得られた光学異方性層積層体をクロスニコルにした偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であった。また、同光学異方性層積層体の光学位相差を測定し、第1の光学異方性層であるポリカーボネートフィルムの光学位相差を差し引いて算出された第2の光学異方性層である液晶層の面内のリターデーション値Re2(550)は0nm、厚さ方向のリターデーション値Rth2(550)は−120nmであり、ホメオトロピック配向であることを確認した。すなわち、本光学異方性層積層体(H)と、ポリイミド基板15との厚さ方向のリターデーションRthの合計値(Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550))は+2nmである。
<積層偏光板(I)の作製>
参考例10で得た偏光子の片面に厚さ5μmの接着層を介して、厚み40μmのTACフィルムを接着して透明保護層を形成した。その偏光子の他面に厚さ15μmのアクリル系の粘着剤層を介して、偏光子の吸収軸と前記光学異方性層積層体(H)のポリカーボネートフィルム(第1の光学異方性層)側を、偏光子の吸収軸と第1の光学異方性層の遅相軸とを45度の角度で交差させて接着し、TAC/接着層/偏光子/粘着剤層/第1の光学異方性層/PVA層/第2の光学異方性層からなる積層偏光板(I)を得た。厚みは132.2μmであった。
(実施例2)
<第1の光学異方性層の作製>
第1の光学異方性層として、実施例1と同様の原料に二色性色素((式1−30のトリスアゾ色素、極大吸収波長 560nm、色材,Vol.59,No.12,753〜758,1986年に合成法を記載))0.01重量%を分散した以外は同様にして、縦一軸延伸により作製した厚み50μm、200mm角の二色性色素含有ポリカーボネートフィルムを用意した。550nmでの面内のリターデーション値Re1(550)は143nmであり、厚さ方向のリターデーション値Rth1(550)は72nmであった。また、Re1(500)/Re1(550)=0.947であり、Re1(580)/Re1(550)=1.023であった。特に、測定波長500nm〜600nmの範囲では、測定波長が長波長ほど、位相差が大きくなることを確認した。図9に第1の光学異方性層の複屈折の波長分散特性を、表2に光学特性結果をまとめる。
<第1の光学異方性層と、第2の光学異方性層と、を備える光学異方性積層体(J)の作製>
参考例9で調製したPVA溶液(F)を、300rpmで30秒の条件でスピンコート法により塗布し、50℃のホットプレートで30分乾燥した後、100℃のオーブンで10分間加熱して、前記ポリカーボネートフィルム上にPVA層を設けた。得られたPVA層の膜厚は1.2μmであった。なお、本PVA層は光学的に等方性である。
ポリカーボネートフィルム(第1の光学異方性層)に形成した前記PVA層上に、参考例6で調製した液晶組成物(B)の溶液を、スピンコート法により塗布した。次いで55℃のホットプレートで10分乾燥し、100℃のオーブンで3分間熱処理することで液晶化合物を配向させた。次いで、70℃に加熱したアルミ板に試料を密着させて置き、その上から、高圧水銀灯ランプにより300mJ/cmの紫外光(ただし365nmで測定した光量)を空気中で照射して、オキセタニル基をカチオン反応させて液晶化合物を硬化させることで、ポリカーボネートフィルムに形成した前記PVA層上に液晶層からなる第2の光学異方性層を形成させて、光学異方性層積層体(J)を得た。第2の光学異方性層の厚みは1.0μmであり、光学異方性積層体(J)の厚みは52.2μmであった。
得られた光学異方性層積層体をクロスニコルにした偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であった。また、同光学異方性層積層体の光学位相差を測定し、第1の光学異方性層であるポリカーボネートフィルムの光学位相差を差し引いて算出された第2の光学異方性層である液晶層の面内のリターデーション値Re2(550)は0nm、厚さ方向のリターデーション値Rth2(550)は−120nmであり、ホメオトロピック配向であることを確認した。すなわち、本光学異方性層積層体(J)と、ポリイミド基板12との厚さ方向のリターデーションRthの合計値(Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550))は+2nmである。
<積層偏光板(K)の作製>
参考例10で得た偏光子の片面に厚さ5μmの接着層を介して、厚み40μmのTACフィルムを接着して透明保護層を形成した。その偏光子の他面に厚さ15μmのアクリル系の粘着剤層を介して、偏光子の吸収軸と前記光学異方性層積層体(J)のポリカーボネートフィルム(第1の光学異方性層)側を、偏光子の吸収軸と第1の光学異方性層の遅相軸とを45度の角度で交差させて接着し、TAC/接着層/偏光子/粘着剤層/第1の光学異方性層/PVA層/第2の光学異方性層からなる積層偏光板(K)を得た。厚みは132.2μmであった。
[実施例3]
<第1の光学異方性層の作製>
参考例8にて得られた配向基板(E)に、参考例5で得られた重合性液晶組成物と、二色性色素と、重合開始剤と、溶媒とを含む混合溶液(第三の混合物)をスピンコート法により塗布して、塗膜(ウエット膜厚:5μm)を形成し、塗膜と配向基板(E)との積層体を得た。次に、塗膜と配向基板(E)の積層体を圧力:1013hPa、温度:室温(25℃)の条件下において2分間静置することにより、塗膜から溶媒を乾燥除去した(溶媒除去工程)。なお、配向基板(E)への塗布完了から2分経過後には、前記塗膜の全面から溶媒が除去された。
次いで、溶媒除去工程により乾燥した後の塗膜に対して、照度:15mW/cmの高圧水銀ランプを用いて、積算照射量が200mJ/cmとなるようにして、紫外光(ただし、365nmの波長の光を測定した光量)を照射することにより、前記液晶化合物を重合(硬化)して配向状態を固定化し、配向基板上に配向状態が固定化された液晶層からなる第1の光学異方性層が積層された積層体(液晶層と配向基板の積層体)を得た。
基板として用いたポリエチレンテレフタレートフィルムは大きな複屈折を持ち光学用フィルムとして好ましくないため、得られた配向基板上の光学異方性層を、紫外線硬化型接着剤を介して、TACフィルムに転写した。すなわち、ポリエチレンテレフタレートフィルム上の硬化した液晶層の上に、接着剤を5μm厚となるように塗布し、TACフィルムでラミネートして、TACフィルム側から紫外線を照射して接着剤を硬化させた後、配向基板を剥離した。
得られた光学フィルム(液晶層/接着剤層/TACフィルム)を偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向であることがわかった。TACフィルムと液晶層の積層体とTACフィルム単体の面内方向のリターデーションReの波長分散特性をAxometrix社製の商品名「Axoscan」を用いて測定し、両者の引き算から、液晶フィルム層の複屈折の波長分散特性を測定した。図10に液晶層の複屈折の波長分散特性を、表2に光学特性結果をまとめる。また、550nmでの面内のリターデーション値Re1(550)は143nmであり、厚さ方向のリターデーション値Rth1(550)は72nmであった。また、Re1(500)/Re1(550)=0.973であり、Re1(580)/Re1(550)=1.014であった。特に、測定波長500nm〜600nmの範囲では、測定波長が長波長ほど位相差が大きくなることを確認した。また、液晶層からなる第1の光学異方性層の厚みは2.5μmであった。
<第2の光学異方性層の作製>
参考例6で調製した重合性液晶組成物(B)の溶液を、参考例9で作製したPVA配向基板(G)上にスピンコート法により塗布した。次いで55℃のホットプレートで10分乾燥し、100℃のオーブンで3分間熱処理することで液晶化合物を配向させた。次いで、70℃に加熱したアルミ板に試料を密着させて置き、その上から、高圧水銀灯ランプにより300mJ/cmの紫外光(ただし365nmで測定した光量)を空気中で照射して、オキセタニル基をカチオン反応させて液晶材料を硬化させることで、PVA配向基板上に液晶層からなる第2の光学異方性層を形成させた。液晶層からなる第2の光学異方性層の厚みは1.0μmであった。
なお、基板として用いたポリエチレンテレフタレートフィルムは大きな複屈折を持ち、第2の光学異方性層の光学測定が困難なため、得られたPVA配向基板上の液晶層を、光学的に等方性であるアクリル系UV硬化型樹脂を介して、厚み0.5mm、40mm角の光学的に等方性のガラス基板上に転写した。すなわち、PVA層上の硬化した液晶層の上に、UV硬化型樹脂層としてアクリル系UV硬化型接着剤を5μm厚となるように塗布し、ガラス基板でラミネートして、ガラス基板側から600mJ/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂層を硬化させた後、PVA配向基板を剥離し、ガラス基板付きの積層体(ガラス基板/UV硬化型樹脂層/第2の光学異方性層)を得た。
得られた積層体をクロスニコルにした偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向で、コノスコープ観察から正の一軸性屈折率構造を有するホメオトロピック配向であることがわかった。このフィルムを傾けて斜めから光を入射し、同様にクロスニコルで観察したところ、光の透過が観測された。また、同積層体の光学位相差を測定した結果、本第2の光学異方性層単独の面内のリターデーション値Re2(550)は0nm、厚さ方向のリターデーション値Rth2(550)は−121nmであった。すなわち、第1の光学異方性層および第2の光学異方性層を備える積層体と、ポリイミド基板12との厚さ方向のリターデーションRthの合計値(Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550))は+1nmである。
<積層偏光板(L)の作製>
参考例10で得た偏光子の一方の面側に厚さ5μmの接着層を介して、厚み40μmのTACフィルム(富士フィルム(株)製、商品名はT40UZ)を透明保護層として接着して、偏光子/接着層/TACからなる積層体を形成した。次に、偏光子の他方の面側に、PVA配向基板上に形成した液晶層からなる第1の光学異方性層をアクリル系UV硬化樹脂を用いて転写した。すなわち、PVA層上の硬化した液晶層の上に、UV硬化型樹脂層としてアクリル系UV硬化型樹脂を5μm厚となるように塗布し、偏光子/接着層/TACからなる積層体の偏光子側と接着させてラミネートして、PETフィルム側から600mJ/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂層を硬化させて、PET/PVA配向膜/液晶層(第1の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/偏光子/接着層/TACからなる積層体を形成した後、PVA配向基板を剥離し、積層偏光板(L)(液晶層(第1の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/偏光子/接着層/TAC)を得た。この際、偏光子の吸収軸と前記積層体の液晶層(第1の光学異方性層)の遅相軸とを45度の角度で交差させて接着したが、偏光子の吸収軸と第1の光学異方性層の遅相軸の貼合角は45度と135度のどちらでもよく、どちらに設定するかは、積層偏光板の使用方法により適宜選択すればよい。積層偏光板(L)の厚みは、72.5μmであった。
<積層偏光板(M)の作製>
積層偏光板(L)の液晶層(第1の光学異方性層)の面側に厚さ5μmの接着層を介して、PVA配向基板上に形成した液晶層からなる第2の光学異方性層をアクリル系UV硬化樹脂を用いて転写した。すなわち、PVA層上の硬化した液晶層(第2の光学異方性層)の上に、UV硬化型樹脂層としてアクリル系UV硬化型樹脂を5μm厚となるように塗布し、TAC/接着層/偏光子/UV硬化型樹脂層/液晶層(第1の光学異方性層)からなる積層偏光板(L)の液晶層(第1の光学異方性層)側と接着させてラミネートして、PETフィルム側から600mJ/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂層を硬化させて、PET/PVA配向膜/液晶層(第2の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/液晶層(第1の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/偏光子/接着層/TACからなる積層体を形成した後、PVA配向基板を剥離し、積層偏光板(M)(液晶層(第2の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/液晶層(第1の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/偏光子/接着層/TAC)を得た。積層偏光板(M)の厚みは、78.5μmであった。
(実施例4)
<第2の光学異方性層の作製>
参考例7で調製した重合性液晶化合物(C)の液晶材料溶液を使用した以外は、実施例3と同様にして、PVA配向基板上に液晶層からなる第2の光学異方性層を形成させた。液晶層からなる第2の光学異方性層の厚みは1.0μmであった。実施例3と同様にして、ガラス基板でラミネートして、ガラス基板側から600mJ/cmの紫外線を照射してUV硬化型樹脂層を硬化させた後、PVA配向基板を剥離して得られたガラス基板付きの積層体(ガラス基板/UV硬化型樹脂層/第2の光学異方性層)をクロスニコルにした偏光顕微鏡下で観察すると、ディスクリネーションがなくモノドメインの均一な配向で、コノスコープ観察から正の一軸性屈折率構造を有するホメオトロピック配向であることがわかった。このフィルムを傾けて斜めから光を入射し、同様にクロスニコルで観察したところ、光の透過が観測された。また、同積層体の光学位相差を測定した結果、本第2の光学異方性層単独の面内のリターデーション値Re2(550)は0nm、厚さ方向のリターデーション値Rth2(550)は−125nmであった。すなわち、実施例3で作製した第1の光学異方性層と第2の光学異方性層積層体とポリイミド基板12の合計Rth(Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550))の値は−3nmである。
<積層偏光板(N)の作製>
上記作製した第2の光学異方性層を使用した以外は、実施例3と同様にして、積層偏光板(N)(液晶層(第2の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/液晶層(第1の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/偏光子/接着層/TAC)を得た。積層偏光板(N)の厚みは、78.5μmであった。
(実施例5)
<積層偏光板(O)の作製>
二色性色素を混合しない以外は、実施例3と同様にして第1の光学異方性層を得た後、偏光子、第2の光学異方性層を転写して、TAC/接着層/偏光子/粘着剤層/第1の光学異方性層/PVA層/第2の光学異方性層からなる積層偏光板(O)を得た。図11に第1の光学異方性層の複屈折の波長分散特性を、表2に光学特性結果をまとめる。550nmでの面内のリターデーション値Re1(550)は143nmであり、厚さ方向のリターデーション値Rth1(550)は72nmであった。また、Re1(500)/Re1(550)=0.981であり、Re1(580)/Re1(550)=1.000であった。測定波長400〜550nmの範囲では、測定波長が長波長ほど位相差が大きくなるが、550nm以上では測定波長によらず、ほぼ位相差値は一定であることを確認した。また、液晶層からなる第1の光学異方性層の厚みは2.5μmであった。また、第2の光学異方性層である液晶層の面内のリターデーション値Re2(550)は0nm、厚さ方向のリターデーション値Rth2(550)は−121nmであり、ホメオトロピック配向であることを確認した。すなわち、第1の光学異方性層と第2の光学異方性層積層体とポリイミド基板12の合計Rth(Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550))の値は+1nmである。
<積層偏光板(P)の作製>
上記作製した第1の光学異方性層を使用した以外は、実施例3と同様にして、積層偏光板(P)(液晶層(第2の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/液晶層(第1の光学異方性層)/UV硬化型樹脂層/偏光子/接着層/TAC)を得た。積層偏光板(P)の厚みは、78.5μmであった。
[参考例11]
<重合性液晶化合物(A)と二色性色素の混合溶液の調製>
参考例5における二色性色素の代わりに、二色性色素(昭和化工製、KDR−902、ジアゾ色素、極大吸収波長570nm、式1−15)0.2重量部を用いた以外は、参考例5と同様にして、混合溶液を得た。
(実施例6)
<積層偏光板(Q)の作製>
実施例3の混合溶液の代わりに、参考例11の混合溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして、積層偏光板(Q)を得た。550nmでの面内のリターデーション値Re1(550)は143nmであり、厚さ方向のリターデーション値Rth1(550)は72nmであった。また、Re1(500)/Re1(550)=0.966であり、Re1(580)/Re1(550)=1.024であった。特に、測定波長500nm〜600nmの範囲では、測定波長が長波長ほど位相差が大きくなることを確認した。また、液晶層からなる第1の光学異方性層の厚みは2.5μmであった。
(比較例1)
<積層偏光板(R)の作製>
第2の光学異方性層を含まない形態として、実施例1で作製した第1の光学異方性層のみからなる積層偏光板(R)を得た。また、積層偏光板(R)の厚みは130μmであった。第2の光学異方性層積層体を含まないため、Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550)の値は+122nmである。
(比較例2)
<積層偏光板(S)の作製>
第2の光学異方性層を含まない形態として、実施例3で作製した第1の光学異方性層のみからなる積層偏光板(S)を得た。また、積層偏光板(S)の厚みは72.5μmであった。第2の光学異方性層積層体を含まないため、Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550)の値は+122nmである。
(比較例3)
<積層偏光板(T)の作製>
第2の光学異方性層を含まない形態として、実施例5で作製した第1の光学異方性層のみからなる積層偏光板(T)を得た。また、積層偏光板(T)の厚みは72.5μmであった。第2の光学異方性層積層体を含まないため、Rth1(550)+Rth2(550)+Rth3(550)の値は+122nmである。
実施例1から6、および比較例1から3で作成した積層偏光板I、K、M、N、P、Q、R、S、Tを、参考例4で作製した有機EL素子19からガラス基板11を剥がしたポリイミド基板12上に、アクリル系粘着剤を介して貼着し、有機EL表示装置を作製した。
(A)正面観察時の外光反射防止効果の評価
有機EL素子に電圧を印加しない状態で、照度約100ルックスの環境下に置き、積層偏光板貼合部分の反射色の黒味を官能評価した。黒味は以下の4つのレベルのいずれに該当するかを確認した。評価結果は表3に示す。
1:ほぼ完全に外光反射が無く、色身も黒色である。
2:1よりは劣るが、十分に外光反射が抑えられ、色味もほぼ黒色である。
3:外光反射がやや視認される。
4:外光反射が極めて視認される。
(B)外光反射防止効果の視野角特性の評価
有機EL素子に電圧を印加しない状態で、照度約100ルックスの環境下に置き、正面と斜め45度における積層偏光板貼合部分の反射色の黒味を官能評価した。黒味は以下の4つのレベルのいずれに該当するかを確認した。評価結果は表3に示す。
1:正面と斜め方向でほぼ外光反射に変化は見られない。
2:1より劣るが、正面と斜め方向での外光反射の差はわずかである。
3:正面と斜め方向で外光反射に差が認められる。
4:正面と斜め方向で外光反射に差がかなり認められる
表3に示すように、実施例1から6、比較例1から3の有機EL表示装置の積層偏光板は、正面観察時の外光反射防止効果に優れるとともに、視野角特性も良好であることが分かった。また、実施例1から6は、斜め方向から見た時でも反射防止効果は保持されていることが分かった。一方で、第2の光学異方性層を含まない比較例1から3の積層偏光板は、斜め方向から見た場合、外光反射が視認され、色味も青味がかることがわかった。
11 偏光子
12 第1の光学異方性層
13 第2の光学異方性層
14 積層偏光板
15 ポリイミド透明基板
16 第1の電極
17 正孔輸送層
18 有機発光層
19 電子輸送層
20 第2の電極
21 有機EL素子
22 ガラス基板
23 第1の基板
100 有機EL表示装置

Claims (12)

  1. 有機エレクトロルミネッセンス素子と、積層偏光板と、を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置において、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、ポリイミド透明基板、有機発光層および電極を含んでなり、
    前記積層偏光板は、第1の光学異方性層、第2の光学異方性層ならびに偏光子を含んでなり、
    前記第1の光学異方性層の最大主屈折率nx1および/または複屈折Δn1が可視光領域の少なくとも一部の波長領域において、測定波長が長いほど大きくなる「負の分散」特性を有し、
    (ここで、nx1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層面内の最大主屈折率である。)
    前記第2の光学異方性層は、ny2≦nx2<nz2の屈折率特性を有する、ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置
    (ここで、nx2は波長550nmの光に対する第2の光学異方性層面内の最大主屈折率、ny2は波長550nmの光に対する第2の光学異方性層面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz2は波長550nmの光に対する第2の光学異方性層の厚さ方向の主屈折率である。)。
  2. 前記第1の光学異方性層は、有機高分子と、二色性色素を含んでなる、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  3. 前記二色性色素を含んでなる前記第1の光学異方性層の面内リターデーションをΔRe1a、
    前記二色性色素を含まない前記第1の光学異方性層の面内リターデーションをΔRe1bとした場合に、
    前記第1の光学異方性層が、下記式(1)を満足する特性を有する、請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
    ΔRe1a(580)/ΔRe1a(550)−ΔRe1b(580)/ΔRe1b(550)>0 (1)
    (ここで、第1の光学異方性層の面内リターデーション値Re1aは、第1の光学異方性層の複屈折Δn1aと第1の光学異方性層の膜厚d1との積、すなわち、Re1a=(nx1a−ny1a)×d1[nm]で表され、Re1a(580)、Re1a(550)は、それぞれ波長580nm、550nmにおける第1の光学異方性層の面内のリターデーション値であり、nx1aは、第1の光学異方性層の最大主屈折率、ny1aは、第1の光学異方性層の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率である。また、前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の面内のリターデーション値Re1bは、第1の光学異方性層の複屈折Δn1bと第1の光学異方性層の膜厚d1との積、すなわち、Re1b=(nx1b−ny1b)×d1[nm]で表され、Re1b(580)、Re1b(550)は、それぞれ波長580nm、550nmにおける前記フィルムから前記二色性色素を除いたフィルムからなる第1の光学異方性層の面内のリターデーション値であり、nx1bは、前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の最大主屈折率、ny1bは、前記第1の光学異方性層から前記二色性色素を除いた層の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率である。)
  4. 前記第1の光学異方性層が下記式(2)および(3)を満たすリターデーション特性を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
    0.70<Re1(450)/Re1(550)<1.00 (2)
    1.00<Re1(650)/Re1(550)<1.30 (3)
  5. 前記第1の光学異方性層が下記式(4)および(5)を満たすリターデーション特性を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
    0.80<Re1(500)/Re1(550)<1.10 (4)
    1.00<Re1(580)/Re1(550)<1.15 (5)
  6. 前記第2の光学異方性層の面内リターデーション値Re2および厚さ方向リターデーション値Rth2が下記式(6)および(7)を満たす、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
    0nm≦Re2≦20nm (6)
    −500nm≦Rth2≦−30nm (7)
    (ここで、Re2は、第2の光学異方性層の複屈折Δn2と第2の光学異方性層の膜厚d2との積、すなわち、Re2=(nx2−ny2)×d2[nm]で表される。
    また、厚さ方向リターデーションRth2は、Rth2={(nx2+ny2)/2−nz2}×d2[nm]で表される。)
  7. 前記第1の光学異方性層の厚さ方向リターデーションRth1と、前記第2の光学異方性層の厚さ方向リターデーションRth2と、前記ポリイミド透明基板の厚さ方向リターデーションRth3と、が下記式(8)を満たす、請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
    −40nm≦Rth1+Rth2+Rth3≦40nm (8)
    (ここで、厚さ方向リターデーションRth1は、Rth1={(nx1+ny1)/2−nz1}×d1[nm]で表される。なお、nx1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層面内の最大主屈折率、ny1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz1は波長550nmの光に対する第1の光学異方性層の厚さ方向の主屈折率である。また、厚さ方向リターデーションRth3は、Rth3={(nx3+ny3)/2−nz3}×d3[nm]で表される。なお、nx3は波長550nmの光に対する前記ポリイミド透明基板面内の最大主屈折率、ny3は波長550nmの光に対する前記ポリイミド透明基板面内の最大主屈折率を有する方向に直交する方向の主屈折率、nz3は波長550nmの光に対する前記ポリイミド透明基板の厚さ方向の主屈折率、d3は前記ポリイミド透明基板の膜厚である。)
  8. 前記有機高分子が、重合性液晶組成物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  9. 前記第1の光学異方性層が、前記重合性液晶組成物がホモジニアス配向した液晶フィルムからなる、請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  10. 前記第2の光学異方性層が、重合性液晶組成物を含んでなり、前記重合性液晶組成物がホメオトロピック配向した液晶フィルムからなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  11. 前記二色性色素の極大吸収波長が、測定波長400〜800nmの領域にある、請求項2〜10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  12. 前記ポリイミド透明基板は、ポリイミドを含んでなり、
    前記ポリイミドは、酸無水物と、ジアミンとを重合させることにより得られたものであり、
    前記酸無水物および/またはジアミンは、脂肪族モノマーまたは脂環族モノマーが重合されたものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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