JP2017036413A - ゴム変性スチレン系樹脂組成物、および成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融張力と溶融延伸倍率のバランスに優れ、成形加工時における偏肉やドローダウンが少なく、成形伸びと衝撃強度に優れ、成形品の複雑形状化や軽量化による強度低下が少ないゴム変性スチレン系樹脂組成物、および成形体を提供する。【解決手段】スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の、(メタ)アクリル酸単量体単位の一部が金属イオンにより中和されたスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン(B)からなるゴム変性スチレン系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、溶融張力と溶融延伸倍率のバランスに優れ、成形加工時の偏肉やドローダウンが少なく、成形伸びと衝撃強度に優れるゴム変性スチレン系樹脂組成物、および成形体に関する。
耐衝撃性ポリスチレン[ハイインパクトポリスチレン(HIPS)]に代表されるゴム変性スチレン系樹脂は、耐衝撃性、成形性、寸法安定性に優れた樹脂であることから、惣菜容器や弁当容器、各種トレー、飲料容器、食品容器蓋材、ラミフィルムなどの食品包装材料や、冷蔵庫の内装、エアコンカバー、テレビの筐体等の電化製品、洗面化粧台、玩具等の家庭製品等に幅広く使用されている。
このような成形品において、近年、意匠性の観点から成形品の複雑形状化が進んでおり、更にはコスト削減の観点から薄肉軽量化が求められている。
しかしながら、成形品の複雑形状化により、成形品の屈曲部や嵩上げ部等の厚みが極端に薄くなる部分に応力が集中し、成形品の運搬時や使用時において、成形品の変形や割れが発生する問題があった。成形品の全体厚みを上げることで、強度を上げることは可能であるが、使用する樹脂量が増えるために、軽量化の面で望ましくない。軽量化しても強度を維持するためには、薄肉部の厚み減少の抑制、すなわち偏肉の改善が必須である。
一方、ゴム変性スチレン系樹脂のシート成形やブロー成形等の成形加工において、溶融樹脂が自重により垂れ下がる、いわゆるドローダウンの発生が問題となる場合がある。ドローダウンは溶融樹脂の張力不足に起因する現象と考えられ、成形品の偏肉悪化や、折れ皺、破れ等の成形不良を招くため、加工条件の調整や樹脂の改良が必要となる。加工面では、低温で成形する方法や、樹脂に配向をかける方法があるが、これらの方法では、成形伸びが低下し、かえって成形性が悪化する場合があるため、成形伸びを有しながら耐ドローダウン性のある材料が望まれている。
容器の偏肉や耐ドローダウン性を改良するためには、ゴム変性スチレン系樹脂の溶融張力を向上ざせる方法が有効と考えられるが、従来の、アニオン重合においてカップリング剤を使用することで分岐構造を有するポリスチレンを重合し、これをゴム変性ポリスチレンとブレンドする方法(特許文献1)や、多分岐状マクロモノマーを重合時に添加することにより、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンをマトリックス相に含有するゴム変性スチレン系樹脂組成物を得る方法(特許文献2)では、溶融張力の向上に限界があり、更には、これらの手法で溶融張力を上げた場合、溶融張力の増加に応じて溶融延伸倍率(成形伸び)が低下し、成形加工性が悪化する問題があった。
特開平8−169920号公報 特開2007−269848号号公報
本発明者らは、上記に記載した成形加工時における偏肉やドローダウンが少なく、成形伸び、衝撃強度に優れる樹脂組成物、および成形体を得るという課題を達成するため、鋭意研究を進めたところ、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の(メタ)アクリル酸単量体単位の一部を金属イオンで中和したスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン(B)をブレンドすることで、成形加工時の偏肉や耐ドローダウン性、成形伸び、衝撃強度のバランスに優れるゴム変性スチレン系樹脂組成物が得られる事を見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、下記(1)〜(8)に示すところである。
(1)スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の、(メタ)アクリル酸単量体単位の一部が金属イオンにより中和されたスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン(B)からなるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(2)前記(1)に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、200℃で測定した溶融張力(MT)が5以上であるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(3)前記(1)又は(2)に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、スチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン(B)の配合割合が、質量基準で(A)/(B)=1/99〜99/1であるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、ゴム含有量が0.1〜20質量%であるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、ゴム状分散粒子の体積中位粒子径が0.1〜8.0μmであるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、スチレン系樹脂(A)を構成するスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体が、スチレン系単量体単位85〜99.9mol%と(メタ)アクリル酸単量体単位0.1〜15mol%の共重合体であるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、スチレン系樹脂(A)の中和度が1〜90mol%であるゴム変性スチレン系樹脂組成物。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物から得られる成形体。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は成形伸びと衝撃強度、成形加工時の偏肉、耐ドローダウン性に優れるため、様々な形状の容器が成形でき、且つ、成形加工範囲を広くすることができる。また、成形品の偏肉が少なく強度に優れるため、薄肉軽量化が可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体はスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸単量体を必須成分とするが、必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体を共重合することができる。
スチレン系単量体としては、スチレン、αメチルスチレン、o−、m−、p−メチルスチレン等の置換スチレンが挙げられ、これら1種、若しくは2種以上の混合物でもよいが、好ましいのはスチレンである。
(メタ)アクリル酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、これらの混合物でもよいが、中でも製造の容易さから、メタクリル酸が好ましい。
上記、スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のアクリル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられ、これら1種、若しくは2種以上を併用して使用することもできる。
本発明のスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の重合方法としては塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等の公知のスチレン重合法が挙げられる。また、溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。反応器の様式としては、完全混合型反応器、プラグフロー反応器、ループ型反応器等を組み合わせた連続重合方式が好適に用いられる。
本発明のスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、スチレン系単量体単位の含有量が85〜99.9mol%、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0.1〜15mol%であることが好ましく、スチレン系単量体単位の含有量が88〜99.9mol%、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0.1〜12mol%であることがより好ましく、スチレン系単量体単位の含有量が90〜99.8mol%、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0.2〜10mol%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0.1mol%未満では溶融張力の向上効果が十分に発揮できず、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が15mol%を超える場合、成形性が低下する。(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量は、重合工程における原料液の(メタ)アクリル酸濃度によって調整出来る。なお、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15mol%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂(A)は、上記スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の、(メタ)アクリル酸単量体単位の一部が金属イオンにより中和されたものであり、(メタ)アクリル酸単量体単位は、未中和の(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸金属塩の両方を含む。
本発明のスチレン系樹脂(A)の製造方法としては、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を予め重合し、後から中和剤を添加し、アイオノマー化する方法の他、重合工程にて、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸単量体、(メタ)アクリル酸金属塩単量体の3成分を共重合する方法、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸金属塩単量体を共重合し、後からスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体とブレンドする方法等が挙げられる。また、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を予め重合し、後から中和剤を添加する場合、重合工程後に配置した脱揮工程、若しくは押出工程において連続的に中和剤を添加する方法や、予め重合しておいたスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体をペレット状態で押出機に供給し、溶融状態で中和剤を添加しアイオノマー化する方法等が挙げられる。中和剤は固体として添加しても良いし、水溶液として添加してもよい。
本発明のスチレン系樹脂(A)で使用される中和剤としては、1〜3価の金属イオン含有のアルカリ性物質でカルボン酸と反応するものであれば何でもよく、例えば、金属のギ酸塩、酢酸塩、酸化物、水酸化物、メトキシド、エトキシド、炭酸塩、重炭酸塩や、脂肪酸金属塩等の有機酸金属塩、カルボン酸金属塩含有ポリマー、スルホン酸金属塩含有ポリマー等の有機酸金属塩含有ポリマーが挙げられる。金属イオンとしてはリチウム、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属、アルミニウム、亜鉛等が挙げられるが、中でも、ナトリウム、カリウム、亜鉛が好ましく、成形伸びの面からナトリウムが特に好ましい。
本発明のスチレン系樹脂(A)の(メタ)アクリル酸単量体単位の中和度は1〜90mol%であることが好ましく、5〜80mol%であることがより好ましく、10〜70mol%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸単量体単位の中和度が1mol%未満では溶融張力の向上効果が十分に発揮できず、90mol%を超える場合、中和で消費されなかった過剰の金属塩が凝集し、成形品の表面状態の悪化や強度の低下を招く場合がある。ここでいう中和度とは、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体中の全(メタ)アクリル酸含有量に対するイオン化された(メタ)アクリル酸の比率を指し、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体中の(メタ)アクリル酸単量体の含有量と中和剤の量から計算によって求めることもできるし、スチレン系樹脂の中和滴定等によっても求めることができる(分析方法については、日本分析化学会編「新版 高分子分析ハンドブック」初版 P602〜603を参照)。なお、メタクリル酸単量体単位の中和度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90mol%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂(A)の(メタ)アクリル酸金属塩の含有量は0.1〜4.0mol%であることが好ましく、0.2〜3.8mol%であることがより好ましく、0.5〜3.5mol%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸金属塩の含有量が0.1mol%未満では、溶融張力の改善効果が低く、耐ドローダウン性が十分ではない。(メタ)アクリル酸金属塩の含有量が4.0mol%を超える場合、溶融張力が高くなり過ぎて、成形伸びが悪化し、溶融張力を下げるために流動性を上げると、衝撃強度が低下する。なお、(メタ)アクリル酸金属塩の含有量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0mol%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂(A)は熱可塑性樹脂の溶融張力改質材として使用することができる。熱可塑性樹脂はスチレン系樹脂(A)との相溶性が良いものが好ましく、例えば、スチレンのホモポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸−スチレン共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ノルマルブチルアクリレート−スチレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、マレイミド−スチレン共重合体、αメチルスチレン−スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のゴム変性ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のカルボン酸含有ポリマー、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−メタクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル共重合体等のカルボン酸エステル含有ポリマー、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
本発明のゴム変性ポリスチレン(B)は、ポリブタジエンの存在下、スチレン系単量体をグラフト重合して得られるものであり、重合方法としては公知の方法、例えば、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等により製造することができる。スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の単独または混合物をいい、特に好ましくはスチレンである。また、これらのスチレン系単量体に共重合可能な単量体、例えばアクリロニトリル、メタクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸エステル等の単量体も本発明の効果を損なわない程度であれば共重合することができる。
また、ポリブタジエンとしては、1,4−シス構造が90モル%以上、1,2−ビニル構造が4モル%以下であるハイシスポリブタジエン、1,4−シス構造が65〜95モル%、1,2−ビニル構造が30〜4モル%であるハイシス−ハイビニルポリブタジエン、1,4−シス構造が15〜40モル%のローシスポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体のいずれを用いてもよく、また混合物であっても良い。
本発明のゴム変性ポリスチレン(B)の200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレート(MFR)は0.1〜20g/10minであることが好ましく、0.2〜10g/10g/10minであることがより好ましく、0.5〜6.0g/10minであることが特に好ましい。メルトマスフローレイト(MFR)が0.1g/10分未満の場合、成形性が悪化し、20g/10minを超える場合、溶融張力(MT)の向上効果少なく、本発明の効果が得られない場合がある。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、前記スチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン(B)をブレンドしてなり、スチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン(B)の配合割合は、質量基準で(A)/(B)=1/99〜99/1であることが好ましく、(A)/(B)=5/95〜95/5であることがより好ましく、(A)/(B)=10/90〜90/10であることが特に好ましい。配合割合がこの範囲を外れる場合、成形伸びと耐ドローダウン性、衝撃強度のバランスが悪化する。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン(B)のブレンド方法については、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、タンブラーやヘンシェルミキサー、ホッパーブレンダ―等でドライブレンドする方法や、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等で溶融コンパウンドする方法が挙げられる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の200℃で測定した溶融張力(MT)は5gf以上であることが好ましく、8gf以上であることがより好ましく、10gf以上であることが特に好ましい。溶融張力が5gf未満では、耐ドローダウン性の改良効果が小さい。なお、溶融張力(MT)は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200gfのうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂の200℃で測定した溶融延伸倍率(MDR)は10以上であることが好ましく、より好ましくは15以上である。溶融延伸倍率が10未満では、成形伸びが悪化する。なお、この溶融延伸倍率(MDR)は10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200のうち任意の値以上、またはこれらのうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム含有量は0.1〜20質量%であることが好ましい。ゴム含有量が0.1質量%未満では衝撃強度が低下し、20質量%を超えると剛性が低下するため望ましくない。ゴム含有量はゴム変性スチレン系樹脂組成物をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/四塩化炭素溶液を加え暗所に約1時間放置後、ヨウ化カリウム溶液を加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム/エタノール水溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から求めることができる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状分散粒子の体積中位粒子径は0.1〜8.0μmであることが好ましい。体積中位粒子径が0.1μm未満では衝撃強度が低下し、8.0μmを超えると剛性が低下するため望ましくない。粒子径は使用するゴム変性ポリスチレンの種類により調整することができ、具体的には、ゴム変性ポリスチレンの重合工程においてゴム粒子の相転域での攪拌速度を調整する方法や、原料液中の連鎖移動開始剤の量を調整する方法などが挙げられる。ゴム状分散粒子の体積中位粒子径はゴム変性スチレン系樹脂組成物を電解液(3%テトラ−n−ブチルアンモニウム/97%ジメチルホルムアミド溶液)に溶解させ、コールターマルチサイザー法(コールター社製マルチサイザーII:アパチャーチューブのオリフィス径30μm)により測定して求めた体積基準の粒径分布曲線の50体積%粒子径をもって本発明の体積中位粒子径とする。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状分散粒子のゲル分は1.0〜35.0質量%であることが好ましく、より好ましくは5.0〜30.0質量%である。ゲル分が1.0質量%未満では衝撃強度が低下し、35.0質量%を超えると剛性が低下するため望ましくない。ゲル分は使用するゴム変性ポリスチレンの種類により調整することができ、具体的には、ゴム変性ポリスチレンの重合工程においてゴム含有量を調整する方法、開始剤量を調整する方法などが挙げられる。ゲル分はゴム変性スチレン系樹脂組成物中のゴム状分散粒子の割合であり、質量1.00gのゴム変性スチレン系樹脂組成物を精秤し(W)、50%メチルエチルケトン/50%アセトン混合溶液35ミリリットルを加え溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H−2000B(ローター:H))にて、10000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降せしめ、デカンテーションにより上澄み液を除去して不溶分を得、セーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥し、更に真空乾燥機にて120℃で1時間減圧乾燥し、20分間デシケーター中で冷却した後、乾燥した不溶分の質量Gを測定して次のように求めることができる。
ゲル分(ゴム状分散粒子量)(質量%)=(G/W)×100
本発明で用いるゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状分散粒子の膨潤度SIは7.0〜20.0であることが好ましい。膨潤度SIが7.0未満であると衝撃強度が低下し、膨潤度SIが20.0を超えるとゴム変性スチレン系樹脂組成物の強度と剛性が低下する。膨潤度SIは使用するゴム変性ポリスチレンの種類により調整することができ、具体的には、ゴム変性ポリスチレンの脱揮工程における温度条件を調整する方法がある。なお、ゴム変性スチレン系樹脂組成物のゴム状分散粒子の膨潤度SIは、ゴム変性スチレン系樹脂組成物1.00gを精秤し、トルエン30ミリリットルを加えて溶解し、その溶液を遠心分離機(コクサン社製H−2000B(ローター:H))にて、10000rpmで30分間遠心分離して不溶分を沈降せしめ、デカンテーションにより上澄み液を除去して、トルエンで膨潤した不溶分の質量Sを測定し、続いてトルエンで膨潤した不溶分をセーフティーオーブンにて90℃で2時間予備乾燥し、更に真空乾燥機にて120℃で1時間減圧乾燥し、20分間デシケータ―中で乾燥した後、不溶分の乾燥質量Dを測定して次のように求めることができる。
膨潤度SI=S/D
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、別の熱可塑性樹脂やゴム補強材を本発明の効果を損なわない範囲で配合する事ができる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、ポリD、L−乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂等が挙げられ、これら1種若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム補強材の具体例としては、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系ゴム、さらにはエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴムが挙げられ、これら1種若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物には、添加剤として、リン系、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、ステアリン酸等の高級脂肪酸、及びその塩やエチレンビスステアリルアミド等の滑剤、流動パラフィン、ポリエチレンワックス等の可塑剤、タルク、無機フィラー、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料、消臭剤、防曇剤等を必要に応じて添加する事ができる。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂の成形方法については、特に制限は無くプレス成形、押出成形、射出成形、射出中空成形、ブロー成形、異形押出成形等の公知の成形法を採用することができる。また、各種発泡成形技術と組み合わせて、発泡成形体を成型する方法や、Tダイシート押出機、二軸延伸加工装置、インフレーション加工装置を用いて、シートやフィルムに成形する方法が挙げられる。成形品がシートの場合、単層であっても良いし、多層シートの最外層のうち少なくとも一方の面や内層のみに用いても良い。
本発明のゴムスチレン系樹脂は、成形伸びと衝撃強度、耐ドローダウンに優れるため、特に、シート押出成形やブロー成形、異形押出成形、発泡押出成形等に適しており、こうして得られた成形品は、食品包装材料やOA機器、住宅関連機器、家庭電器製品など幅広い産業分野において、多岐の用途に使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<スチレン−メタクリル酸共重合体の製造>
(1)スチレン−メタクリル酸共重合体S−1の製造
下記第1〜第3反応器を直列に接続して重合工程を構成した。
第1反応器:容積39Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第2反応器:容積39Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第3反応器:容積16Lのスタティックミキサー付プラグフロー反応器
各反応器の条件は以下の通りとした。
第1反応器:[反応温度] 120℃
第2反応器:[反応温度] 125℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に132〜136℃の温度勾配がつくように調整
原料液としては、以下のものを用いた。
スチレン99.2質量%、メタクリル酸0.8質量%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン9質量部、重合開始剤として2,2ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロへキシル)プロパン0.022質量部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.055質量部をを混合した原料液
原料液を13.5kg/hrの供給速度で120℃に設定した第1反応器に連続的に供給し重合した後、次いで125℃に設定した第2反応器に連続的に装入し重合した。第2反応器出口での重合転化率は55%であった。更に132〜136℃の温度勾配がつくように調整した第3反応器にて重合転化率が70%になるまで重合を進行させた。
この重合液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出して冷却した後切断してペレット化した。なお、1段目の予熱器の温度は200℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は66.7kPaとし、2段目の予熱器の温度は240℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.9kPaとした。得られたスチレン−メタクリル酸共重合体S−1のメタクリル酸含有量は1.2mol%であった。
(2)スチレン−メタクリル酸共重合体S−2の製造
以下の原料液を用いた以外はS−1の製造と同様にした。
<原料液>
スチレン99.2質量%、メタクリル酸0.8質量%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン9質量部、重合開始剤として2,2ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロへキシル)プロパン0.022質量部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.015質量部をを混合した原料液
(3)スチレン−メタクリル酸共重合体S−3の製造
以下の原料液を用い、原料液の供給速度を12.0kg/hrとし、1〜3反応器の温度条件を以下のように変更した以外はS−1の製造と同様にした。その特性を表1に示す。
<原料液>
スチレン96.9質量%、メタクリル酸3.1質量%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン14質量部、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.030質量部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.050質量部を混合した原料液
<条件>
第1反応器:[反応温度] 124℃
第2反応器:[反応温度] 133℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に120〜125℃の温度勾配がつくように調整
(4)スチレン−メタクリル酸共重合体S−4の製造
以下の原料液を用い、原料液の供給速度を12.0kg/hrとし、第1〜3反応器の温度条件を以下のように変更した以外はS−1の製造と同様にした。
<原料液>
スチレン93.0質量%、メタクリル酸7.0質量%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン15質量部、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.030質量部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.095質量部を混合した原料液
<条件>
第1反応器:[反応温度] 128℃
第2反応器:[反応温度] 140℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に120〜125℃の温度勾配がつくように調整
<スチレン系樹脂(A)の製造>
上記の方法で製造したスチレン−メタクリル酸共重合体(S−1〜4)と中和剤を表1に示す質量部比率にて混合し、シリンダー温度180〜250℃に設定した二軸押出機(東芝機械社製、TEM26−SS)に20kg/hrの供給速度で供給し、回転数300rpm、樹脂温度270℃にて溶融混錬を行い、アイオノマー化を行った。その物性を表1に示す。また、中和度はスチレン−メタクリル酸共重合体に含まれるメタクリル酸含有量と中和剤の添加量より計算により求めた。
中和剤としては以下のものを用いた。
<水酸化ナトリウム>
和光純薬工業製 水酸化ナトリウム 顆粒状
Figure 2017036413
<ゴム変性ポリスチレン(B)の製造>
(1)ゴム変性ポリスチレンB−1の製造
下記第1〜第3反応器を直列に接続して重合工程を構成した。
第1反応器:容積25Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第2反応器:容積第40Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器
第3反応器:容積50Lの攪拌翼付プラグフロー型反応器
第4反応器:容積50Lのスタティックミキサー式プラグフロー反応器
各反応器の条件は以下の通りとした。
第1反応器:[攪拌数]100rpm、[反応温度]125℃
第2反応器:[攪拌数]80rpm、[反応温度]128〜130℃
第3反応器:[攪拌数]30rpm、[反応温度]128〜130℃
第4反応器:[反応温度]135〜160℃の温度勾配がつくように調整
原料液としては、以下のものを用いた。
スチレン単量体80.9質量%、エチルベンゼン14.3質量%、ローシスポリブタジエン(旭化成ケミカルズ社製「BR55AE」)4.8質量%を溶解させた原料液。
まず、原料液を20L/hrの供給速度で第1反応器に連続的に供給し重合した後、第2反応器に連続的に装入して重合した。第1反応器の出口では、いまだゴム状重合体が分散粒子化(相反転)していない状態で、第2反応器の出口では分散粒子化が終了した状態となり、このときの重合転化率は27%であった。次いで、第2反応器の出口からの重合液に対し、t−ブチルクミルパーオキサイドを0.030質量%添加し、第3反応器に連続的に装入し、このときの重合転化率は45%であった。さらに第4反応器にて重合転化率が82%になるまで重合を進行させた。得られた重合体に対して1.5質量%の濃度となるようにホワイトオイルを添加/混合し、直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出しして冷却した後、切断してペレットとした。なお、1段目の脱揮槽内の樹脂温度は210℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は60kPaとし、2段目の脱揮層内の樹脂温度は220℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は2.7kPaとした。得られたゴム変性ポリスチレンの特性を表2に示す。
(2)ゴム変性ポリスチレンB−2の製造
以下の原料液を用い、第2反応器の出口からの重合液に対し、t−ブチルクミルパーオキサイドを0.020質量%、t−ドデシルメルカプタン0.015質量部添加した以外はB−1の製造と同様にした。
<原料液>
スチレン単量体78.4質量%、エチルベンゼン13.8質量%、ローシスポリブタジエン(旭化成ケミカルズ社製「BR55AE」)7.8質量%からなる原料液。
(3)ゴム変性ポリスチレンB−3の製造
以下の原料液を用い、第2反応器の出口からの重合液に対し、t−ブチルクミルパーオキサイドを添加しなかった以外はB−1の製造と同様にした。
<原料液>
スチレン単量体75.5質量%、エチルベンゼン16.2質量%、ハイシスポリブタジエン(宇部興産社製「BR−15HB」)8.3質量%を溶解させた溶液に対してt−ドデシルメルカプタン0.020質量%添加した原料液。
<実施例1〜8、比較例1〜3>
上記の方法で製造したスチレン系樹脂(A−1〜4)とゴム変性ポリスチレン(B−1〜3)を、表2に示す質量部比率にてヘンシェルミキサーで混合し、230〜260℃に設定した二軸押出機(神戸製鋼所製、KTX30α)にて溶融コンパウンドした。ソリッド物性を表2に示す。
次に、前記樹脂を、スクリュー径40mmのシート押出機に供給した。樹脂溶融ゾーンの温度は180〜220℃に設定し、Tダイ(コートハンガーダイ)より吐出量10kg/hで溶融押出した後、80℃に設定したキャストロール、タッチロールに圧着し、幅40mm、厚み0.75mmのシートを得た。得られたシートの特性を表2に示す。
なお、各種物性、性能評価は以下の方法で行った。
(1)スチレン−メタクリル酸共重合体中のメタクリル酸含有量
室温にて、共重合体0.5gを秤量し、トルエン/エタノール=8/2(体積比)の混合溶液に溶解後、水酸化カリウム1mol/エタノール溶液にて中和滴定を行い終点を検出し、水酸化カリウムエタノール溶液の使用量より、メタクリル酸の質量基準の含有量を算出する。なお、電位差自動検出装置(京都電子工業社製、AT−510)により測定した。
物性は以下の方法により評価した。
(2)メルトマスフローレイト
JIS K7210に基づき200℃、49N荷重の条件により求めた。
(3)ビカット軟化温度
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7206に基づき50N荷重の条件により求めた。
(4)荷重たわみ温度
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7191に基づき1.8MPa応力の条件により求めた。
(5)シャルピー衝撃強さ
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7111により求めた。
(6)引張試験
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7161により求めた。
(7)溶融張力(MT)、溶融延伸倍率(MDR)
キャピログラフ1B型(東洋精機社製)を使用し、バレル温度200℃、バレル径9.55mm、キャピラリー長さ:L=10mm、キャピラリー径:D=1mm(L/D=10)、バレル内の押出し速度10mm/分にて樹脂を押出し、荷重測定部をダイから60cm下方にセットし、キャピラリーより流出してきたストランド状の樹脂を巻き取り器にセットし、巻き取り線速度を4m/分から徐々に速度を上昇していき、ストランドが破断するまでの荷重を測定する。荷重は巻き取り線速度を上げていくと、一定値に安定するので、荷重が安定した範囲を平均化して溶融張力値(MT)とした。また、溶融延伸倍率(MDR)はストランド破断時の巻き取り線速度とキャピラリー内流速から、次式により求めた。
溶融延伸倍率(MT)=ストランド破断時の巻き取り線速度(mm/min)/キャピラリー内流速(0.9120mm/min)
シート特性は以下の方法により評価した。
(8)デュポン衝撃強度
デュポン衝撃試験機(東洋精機社製)を使用し、23℃で、1/2インチ半球状撃芯、荷重200gにて測定を行った。結果はJIS K7211の50%破壊エネルギー値(単位:J)で表示した。
(9)耐ドローダウン性
シートを単発真空成形機のクランプ枠(250mm×250mm)に固定し、ヒーター温度280℃一定とし、加熱秒数を1〜15秒まで1秒刻みで変化させたときの、最大ドローダウン幅を測定した。最大ドローダウン幅が3mm以下のものを◎、3〜5mmのものを○、5〜10mmのものを△、10mm以上のものを×として耐ドローダウン性を評価した。
(10)成形容器の偏肉性
単発成形機を用いてシートを口径φ45mm、深さ50mm、容器の口部から底面に向かって35mmの位置の胴周部にR2.5の屈曲部を有するカップ形状容器に真空成形した。容器の側面厚みに対する屈曲部の厚みの割合が0.8以上のものを◎、0.8〜0.7のものを○、0.7〜0.5のものを△、0.5以下のものを×として容器の偏肉性を評価した。
Figure 2017036413
実施例1〜8のゴム変性スチレン系樹脂組成物は比較例1〜3の従来のゴム変性ポリスチレンと比較して溶融張力と溶融延伸倍率のバランスに優れる。また、シートの衝撃強度、耐ドローダウン性が大きく向上するとともに、成形容器の偏肉が抑えられた。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物を用いることで、成形加工時における偏肉やドローダウンが少なく、成形伸び、衝撃強度に優れる樹脂組成物を得ることができる。また、容器の偏肉が少なく、衝撃強度が大きいので深絞り容器や複雑形状容器の成形や軽量化が可能となる。

Claims (8)

  1. スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の、(メタ)アクリル酸単量体単位の一部が金属イオンにより中和されたスチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン(B)からなる
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    200℃で測定した溶融張力(MT)が5以上である
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    スチレン系樹脂(A)とゴム変性ポリスチレン(B)の配合割合が、
    質量基準で(A)/(B)=1/99〜99/1である
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    ゴム含有量が0.1〜20質量%である
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    ゴム状分散粒子の体積中位粒子径が0.1〜8.0μmである
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    スチレン系樹脂(A)を構成するスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体が、
    スチレン系単量体単位85〜99.9mol%と(メタ)アクリル酸単量体単位0.1〜15mol%の共重合体である
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物であって、
    スチレン系樹脂(A)の中和度が1〜90mol%である
    ゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物から得られる成形体。
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