JP2017036406A - 酸素吸収性樹脂組成物、及び酸素吸収性フィルム - Google Patents

酸素吸収性樹脂組成物、及び酸素吸収性フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高い酸素吸収性能を有し、かつフィルムの製造適性が高い酸素吸収性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】鉄が全質量に対して1質量%以下であり、かつ以下を含んでなる、酸素吸収性樹脂組成物:ベンゼントリオール、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ酢酸ビニル含有率が4.0質量%以上、40.0質量%以下であるバインダー樹脂、ここで、前記酢酸ビニル含有率は、前記バインダー樹脂として前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のみが用いられる場合には、酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量に対する割合であり、前記バインダー樹脂として前記エチレン−酢酸ビニル共重合体と他の樹脂との混合物が用いられる場合には、全ての酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、その混合物の質量に対する割合である。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸素吸収性樹脂組成物、及びそれを含む酸素吸収性フィルムに関する。特に、本発明は、食品、薬剤、医薬品、化粧品、電子部品等の包装材として好適で、かつ製造しやすい酸素吸収性フィルムを与える酸素吸収性樹脂組成物に関する。
食品、薬剤、医薬品、化粧品、電子部品等のための包装体には、酸素吸収剤が封入されている。酸素吸収剤としては、コスト及び酸素吸収性能の観点から、鉄粉を反応主剤として用いる鉄粉系の酸素吸収剤が一般的に用いられている。
例えば、特許文献1は、鉄粉、ハロゲン化アルカリ金属又はハロゲン化アルカリ土類金属、多価フェノール化合物を含む、鉄粉系の酸素吸収性樹脂組成物を開示している。ここでは、ハロゲン化アルカリ金属又はハロゲン化アルカリ土類金属としては、塩化カルシウム等が挙げられており、これは鉄粉の酸化促進剤として用いられている。多価フェノールとしては、カテコール、ピロガロール、没食子酸等が挙げられており、これは鉄粉に起因する水素の発生を抑制するために用いられている。
このような鉄粉系の酸素吸収剤は、高い酸素吸収性能を有している一方で、異物検査のために用いる金属探知機に反応すること、電子レンジで使用すると発火すること等のデメリットがある。
そこで、有機系物質を反応主剤として用いる有機系の酸素吸収剤が開発されており、例えば特許文献2では、低分子フェノール化合物及び結晶水含有アルカリ性化合物を含む有機系の酸素吸収剤が開示されている。この酸素吸収剤は、粉末として通気性の包材に充填して用いられ、低分子フェノール化合物としてはカテコールが、結晶水含有アルカリ性化合物としては炭酸ナトリウム10水塩、ホウ酸アンモニウム8水塩、シュウ酸アンモニウム1水塩が具体的に開示されている。
特許文献3は、没食子酸と遷移金属化合物とを含む、有機系の酸素吸収剤、並びに随意に炭酸系アルカリ化合物及びバインダー樹脂をさらに含む酸素吸収性樹脂組成物を開示している。ここでは、没食子酸、炭酸系アルカリ化合物および遷移金属化合物を含む酸素吸収剤が、全体の10.3質量%未満でバインダー樹脂に含有される樹脂組成物、すなわち89.7質量%超のバインダー樹脂を含む酸素吸収性樹脂組成物をフィルム化している。
特開2001−9273号公報 特開平9−70531号公報 特開2011−92921号公報
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献3に記載の酸素吸収性樹脂組成物は、特に反応主剤である没食子酸を増量すると、フィルムへの成形が困難になることが分かった。すなわち、この場合にはフィルム成形中に発泡が起こり、フィルムに穴ができることでインフレーション成形ができなかったり、Tダイでもフィルムが切れて成形できなくなったりすることが分かった。
また、本発明者らは、有機系の酸素吸収剤に含まれる反応主剤として融点の低い反応主剤を用いると、バインダー樹脂と混練して酸素吸収性樹脂組成物を得る工程において、酸素吸収剤添加量に対して、樹脂組成物中の酸素吸収剤含有量が低下してしまうという問題が生じることを発見した。
そこで本発明は、高い酸素吸収性能を有し、かつフィルムの製造適性が高い、有機系の酸素吸収剤を含む酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性フィルムを与えることを目的とする。また本発明は、酸素吸収剤添加量に対して、樹脂組成物中の酸素吸収剤含有量が低下することがない酸素吸収性樹脂組成物を与えることを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下の通りである:
《態様1》
鉄が全質量に対して1質量%以下であり、かつ以下を含んでなる、酸素吸収性樹脂組成物:
ベンゼントリオール、
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、及び
エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ酢酸ビニル含有率が4.0質量%以上、40.0質量%以下であるバインダー樹脂、
ここで、前記酢酸ビニル含有率は、前記バインダー樹脂として前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のみが用いられる場合には、酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量に対する割合であり、前記バインダー樹脂として前記エチレン−酢酸ビニル共重合体と他の樹脂との混合物が用いられる場合には、全ての酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、その混合物の質量に対する割合である。
《態様2》
全質量に対して、前記バインダー樹脂が89.7質量%以下である、態様1に記載の組成物。
《態様3》
さらに遷移金属化合物を含む、態様1又は2に記載の組成物。
《態様4》
全質量に対して、前記ベンゼントリオールが2.0質量%以上、31.0質量%以下である、態様1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
《態様5》
温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下でJIS K7210に準拠して測定した場合の前記バインダー樹脂のメルトマスフローレートが、0.1g/10min以上、18.0g/10min以下である、態様1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
《態様6》
前記バインダー樹脂の酢酸ビニル含有率が10.0質量%以上、30.0質量%以下であり、かつ
温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下でJIS K7210に準拠して測定した場合の前記バインダー樹脂のメルトマスフローレートが、0.1g/10min以上、5.0g/10min以下である、
態様1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
《態様7》
態様1〜6のいずれか一項に記載の組成物を成形して得られる、酸素吸収性フィルム。
《態様8》
態様7に記載のフィルムを用いて作製されている、包装体。
《態様9》
以下の工程を含む、酸素吸収性樹脂組成物の製造方法:
ベンゼントリオールと、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩とを、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ酢酸ビニル含有率が4.0質量%以上、40.0質量%以下であるバインダー樹脂に混練する工程。
《態様10》
以下の工程を含む、酸素吸収性フィルムの製造方法:
ベンゼントリオールと、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩とを、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ酢酸ビニル含有率が4.0質量%以上、40.0質量%以下であるバインダー樹脂に混練して、樹脂組成物を得る工程;
前記樹脂組成物をフィルムに成形する工程。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、高い酸素吸収性能を有し、かつ金属探知機及び電子レンジに反応しない。また、この組成物は、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体が含まれることによって、バインダー樹脂と反応主剤との混練時に反応主剤が漏出しにくく、それにより酸素吸収剤添加量に対して、樹脂組成物中の酸素吸収剤含有量が低下しにくい。さらに、反応主剤を多く含んでもフィルムの製造適性が高いため、この組成物を用いることで高性能な酸素吸収性フィルムを成形することができる。例えば、この組成物を用いれば、発泡が実質的に起こらないため、インフレーション成形によってフィルムを成形することができる。
また、本発明の好ましい実施態様の酸素吸収性樹脂組成物によれば、酸素吸収剤の付着による混練機等への汚染が少なく、製造設備の長期間の連続運転を可能にする。
<酸素吸収性樹脂組成物>
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、ベンゼントリオール、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ酢酸ビニル含有率が4.0質量%以上、40.0質量%以下であるバインダー樹脂を含んでなる。なお、本明細書では、反応主剤(ベンゼントリオール)、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、並びに随意に遷移金属化合物を含む混合物のことを、酸素吸収剤ということがある。
また本発明の酸素吸収性樹脂組成物において、鉄は、好ましくは全質量に対して1質量%以下、又は0.5質量%以下であり、より好ましくはこの樹脂組成物は、鉄を含んだとしても、金属探知機や電子レンジに有意に反応する程の実質的な量の鉄を含まない。ここで、鉄は、特に単体の鉄であり、その形態としては、例えば鉄粉を挙げられる。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物を酸素吸収目的に用いる場合、例えばPET/アルミ箔/ポリプロピレンからなるラミネート袋に本発明の組成物を封入して使用できる。この場合、ラミネート袋に封入する前に、酸素透過性のある容器、包装に本発明の組成物を封止して用いることができる。また、後述するように、本発明の酸素吸収性樹脂組成物を成形して酸素吸収性フィルムとすることで、他のフィルム等と積層して、酸素吸収性を有する包装材料(酸素吸収材)とすることができる。本発明の酸素吸収性樹脂組成物及びその成形品を酸素吸収目的に用いる場合、金属探知機や電子レンジに有意に反応しないため、食品、薬剤、医薬品、化粧品、電子部品等の様々な物品を酸化劣化から防ぐのに非常に有用である。
(ベンゼントリオール)
本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、反応主剤としてベンゼントリオールを用いることで、高性能な酸素吸収性フィルムを与えることを可能にした。ベンゼントリオールとしては、ピロガロール、ヒドロキシキノール、及びフロログルシノール、並びにこれらの混合物が挙げられる。
本発明者らは、ベンゼントリオールを反応主剤として用いることで、予想外にもフィルム成形中の発泡を抑制できることを見出した。発泡をより抑制するためには、ベンゼントリオールは無水物であることが好ましい。発泡を抑制できることで、酸素吸収性樹脂組成物が反応主剤を多く含んでいてもフィルム化することができるようになり、酸素吸収性能が高い酸素吸収性フィルムを与えることが可能になった。また、発泡を抑制できることで、インフレーション成形によってフィルムを成形することができるようになった。
反応主剤として、フィルムが発泡しない程度に、ベンゼントリオールの他に他の酸素吸収性物質を併用してもよい。併用することができる酸素吸収性物質としては、多価フェノール化合物、アスコルビン酸等が挙げられ、多価フェノール化合物としては、フェノール、カテコール、没食子酸、レゾルシノール、ヒドロキノン、クレゾール、タンニン酸等が挙げられる。また、組成物全体に対して1質量%以下であれば、鉄が酸素吸収性物質として、本発明の組成物に含まれていてもよい。好ましくは、本発明の組成物は、没食子酸を実質的に含有せず、没食子酸を含有する場合には、組成物全体に対して10.0質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下又は0.5質量%以下であることが好ましい。
(アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩)
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩は、本発明の樹脂組成物の系を塩基性にする効果があり、これにより本発明の酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収性能が高まることがある。これは、理論に限定されないが、ベンゼントリオールによる酸素吸収は、解離した水素が酸素と反応して水を生成することによりなされると考えられ、系が塩基性になることは、ベンゼントリオールの水酸基の水素が解離しやすくなり、より酸素と反応しやすくなるためであると考えられる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を本発明の樹脂組成物に含有させることで、フィルム成形中に融解したベンゼントリオールをこれらに担持させることができる。すなわち、通常のフィルム成形温度は、ベンゼントリオール、特にピロガロールやヒドロキシキノールの融点(130℃程度)より高いため、本発明の樹脂組成物をフィルム化する場合、そこに含まれるベンゼントリオールは融解する。一方で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩の融点は、フィルムの成形温度よりも高い融点を有するために、固体形状を維持することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩が存在することで、フィルム成形中に液状化したベンゼントリオールが、それらに付着して、樹脂組成物中に留まりやすくなる。
アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩は、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の弱酸塩であり、弱酸塩としては、例えば炭酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩等が挙げられる。具体的には、炭酸リチウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸ベリリウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸リチウム、ピロリン酸ベリリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸ベリリウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、及び酢酸カルシウムが挙げられる。安全性や価格を考慮すると、炭酸カリウムが好ましい。これらの中から1種を単独で用いてもよく、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を、ベンゼントリオール1質量部に対して好ましくは0.005質量部以上、0.01質量部以上、0.05質量部以上、又は0.1質量部以上含み、また5.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下、1.5質量部以下、又は1.0質量部以下で含む。特に0.01質量部以上の場合、反応主剤が効果的に組成物中に留まり、フィルムを成形した際にも表面に析出することがないため、好ましい。
(遷移金属化合物)
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、遷移金属化合物をさらに含むことが好ましい。遷移金属化合物は、ベンゼントリオールが、酸素と反応する際の触媒としての機能を有しており、遷移金属化合物は、本発明の樹脂組成物に高い酸素吸収性を与えることができると考えられる。
本発明で用いる遷移金属化合物は、好ましくは遷移金属イオンと無機酸若しくは有機酸との塩、又は遷移金属イオンと有機化合物との錯化合物であり、これらの水和物及び無水和物のいずれをも用いることができる。ただし、水和物である場合、フィルム成形中に水蒸気が発泡の原因となることがあるため、好ましくは無水和物の遷移金属化合物が用いられる。遷移金属化合物は、単独で用いてもよく、又は複数の混合物として用いてもよい。
遷移金属としては、Fe、Cu、Mn、V、Cr、Co、Ni、Zn等が挙げられ、この中でも特にFe、Cu又はMnが好ましい。具体的な遷移金属化合物としては、ステアリン酸マンガン(II)、ステアリン酸鉄(III)、ステアリン酸コバルト(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、ステアリン酸銅(II)、ステアリン酸亜鉛(II)、トリス(2,4−ペンタンジオナト)マンガン(III)、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅(II)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)亜鉛(II)、塩化鉄(III)、塩化ニッケル(II)、塩化銅(II)、塩化亜鉛(II)、及び硫酸銅(II)等からが挙げられる。安全性の観点からは、鉄塩化合物が好ましい。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、遷移金属化合物を、ベンゼントリオール1質量部に対して好ましくは0.0001質量部以上、0.001質量部以上、0.01質量部以上、0.05質量部以上、又は0.1質量部以上で含み、また3.0質量部以下、1.5質量部以下、又は1.0質量部以下、又は0.8質量部以下で含む。この範囲であれば、比較的均一に混合することができ酸素吸収能にムラが生じることがなく、かつ酸素吸収能を十分に与えることができる。また、樹脂組成物の混練時にベントアップ等の問題が生じにくい。
(バインダー樹脂)
本発明の酸素吸収性樹脂組成物で用いられるバインダー樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ酢酸ビニル含有率が4.0質量%以上、40.0質量%以下である。
本発明者らは、このような特定の樹脂をバインダー樹脂に用いることによって、酸素吸収剤を、樹脂組成物中に良好な状態で混練できることを見出した。すなわち、バインダー樹脂として例えば低密度ポリエチレンのみを用いた場合には、バインダー樹脂に酸素吸収剤を混練すると、混練機の内壁等に酸素吸収剤が付着し、酸素吸収剤添加量に対して、樹脂組成物中の酸素吸収剤含有量が低下してしまう。また、酸素吸収剤が付着することで、混練機等の長期間の連続運転が困難となる場合があり、製造適性が悪化する場合があった。それに対して、上記のようなバインダー樹脂を用いることによって、酸素吸収剤の混練機内壁等への付着を防止し、酸素吸収剤を樹脂組成物中に実質的に混練することが可能になり、また製造適性も良好にすることができた。理論に拘束されないが、これは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むバインダー樹脂が極性を有しているために、酸素吸収剤中のベンゼントリオール等の極性物質を相溶性高く含有できるためと考えられる。なお、酢酸ビニル含有率が40質量%を超えると、バインダー樹脂の融点が40℃以下と低くなりすぎ、酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性フィルムに接着性が現れるため、その後の取扱い性が悪くなるため、好ましくない。
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとを少なくとも含むモノマーから重合して得られる共重合体である。エチレン−酢酸ビニル共重合体を製造する際に、エチレン及び酢酸ビニル以外の他の化合物がモノマーとしてさらに用いられていてもよい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、カルボン酸変性等されていてもよい。
酸素吸収性樹脂組成物に含まれるバインダー樹脂の重量に対して、酢酸ビニル含有率は、4.0質量%以上、4.5質量%以上、6.0質量%以上、8.0質量%以上、又は10.0質量%以上であってよく、40.0質量%以下、35.0質量%以下、33.0質量%以下、30.0質量%以下、25.0質量%以下、又は20.0質量%以下であってよい。酢酸ビニル含有率は、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体のみが用いられる場合には、酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量に対する割合であり、バインダー樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体と他の樹脂との混合物が用いられる場合には、全ての酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、その混合物の質量に対する割合である。
10℃/分の昇温速度で常温から昇温させていった場合に、示差走査熱量計(DSC)によって測定される吸熱ピークで定義される、バインダー樹脂の融点は、50℃以上、60℃以上、70℃以上、又は80℃以上であってもよく、120℃以下、110℃以下、又は100℃以下であってもよい。バインダー樹脂の融点は、ベンゼントリオールの融点よりも好ましくは低い。
バインダー樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の単体であってもよく、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体と他の追加の熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。バインダー樹脂が混合物である場合、他の追加の熱可塑性樹脂は、ベンゼントリオールとアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩とを、エチレン−酢酸ビニル共重合体と共に混練できる熱可塑性樹脂であれば特に制限されないが、その融点はベンゼントリオールの融点よりも低いものが好ましい。そのような樹脂としては、例えばポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。本発明の酸素吸収性樹脂組成物においては、バインダー樹脂が40体積%以上となるように他の物質が配合され、好ましくはバインダー樹脂は組成物中で50体積%以上となり、より好ましくは60体積%以上となる。
ポリオレフィン系樹脂としては、特にポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、カルボン酸変性ポリエチレン、アイオノマー、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
バインダー樹脂の熱特性としては、例えば、そのメルトマスフローレート(MFR)が、JIS K7210に準拠して測定した場合に、0.01g/10min以上、0.05g/10min以上、0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であってもよく、100g/10min以下、50g/10min以下、30g/10min以下、20g/10min以下、又は15g/10min以下、10g/10min以下、8g/10min以下、又は5.0g/10min以下であってもよい。
ただし、反応主剤として、ピロガロール及び/又はヒドロキシキノールを高い含有量で用いた場合には、バインダー樹脂のメルトマスフローレートは、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下でJIS K7210に準拠して測定した場合に、好ましくは0.01g/10min以上、0.05g/10min以上、0.1g/10min以上、0.2g/10min以上、又は0.3g/10min以上であり、18.0g/10min以下、15.0g/10min以下、10.0g/10min以下、7.3g/10min未満、5.0g/10min以下である。この態様においては、従来では用いられていなかったような、MFRが7.3g/10min未満の硬い樹脂であっても、フィルム成形中に溶融するピロガロール及び/又はヒドロキシキノールを比較的多く用いる場合には、バインダー樹脂として有用になることが分かった。
酸素吸収剤の樹脂組成物への混練及び機械の汚染低減の両立の観点から、バインダー樹脂のMFRが、0.1g/10min以上、5.0g/10min以下、又は0.5g/10min以上、3.0g/10min以下であり、かつバインダー樹脂の酢酸ビニル含有率が、10.0質量%以上、30.0質量%以下、又は10.0質量%以上、20.0質量%以下であることが好ましい。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物で用いられるバインダー樹脂は、好ましくは酸素透過性が高い。本発明で用いられるバインダー樹脂を、25μmの厚みのフィルムに成形した場合、そのフィルムの酸素透過性は、JIS K 7126−2に準拠して測定して、好ましくは20cc/m/hr/atm以上、50cc/m/hr/atm以上、又は100cc/m/hr/atm以上である。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、組成物全体に対して、バインダー樹脂を、好ましくは50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上含み、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、89.7質量%以下、又は85質量%以下で含む。また、全体に対して、ベンゼントリオール、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、並びに随意に遷移金属化合物を含む酸素吸収剤を、2質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、10.3質量%超、15質量%以上含むことが好ましく、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下で含むことが好ましい。このような範囲であれば、高い酸素吸収性能を有することができ、かつフィルムの製造適性も良好となる。
<酸素吸収性フィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた包装体>
本発明の酸素吸収性フィルムは、好ましくは300μm以下、100μm以下、又は80μm以下の厚みを有し、また10μm以上、又は20μm以上の厚みを有し、上記の酸素吸収性樹脂組成物をフィルム状に成形することによって製造することができる。
本発明の酸素吸収性フィルムの表面の算術平均粗さRaは、ISO4287に準拠して測定した場合に、好ましくは3.00μm以下であり、2.00μm以下、1.00μm以下、0.80μm以下、又は0.50μm以下である。
酸素吸収性フィルムの成形法は特に限定されないが、単層又は多層インフレーション法、Tダイ法、キャスト法等が挙げられ、特にTダイ法又はインフレーション法が好ましい。
酸素吸収性フィルムを成形する前に、上記の酸素吸収性樹脂組成物に含まれる材料を混練したものをペレット状に押し出して冷却することで、ペレット状の酸素吸収性樹脂組成物(マスターバッチ)を作製しておくことができる。混練は、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ミキシングロールなどのバッチ式混練機、2軸混練機などの連続混練機などを用いて行うことができる。この際には、使用する材料に応じて、60℃以上、80℃以上、100℃以上、又は120℃以上で、かつ170℃以下、150℃以下、又は130℃以下の混練温度、0.5分以上30分以下の混練時間で混練することができる。
本発明の酸素吸収性フィルムは、例えば、反応主剤、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、並びに随意に遷移金属化合物を、バインダー樹脂と2軸混練押出機などで混練し、そのまま、100℃以上、120℃以上、130℃以上、135℃以上、140℃以上、又は150℃以上、250℃以下、220℃以下、又は200℃未満で、インフレーション成形法又はTダイ法等により成形して酸素吸収剤含有フィルムを製造することができる。また、好ましくは、上記のようにマスターバッチを作製し、それを再加熱して、インフレーション成形法又はTダイ法等により製造することができる。このとき、酸素吸収性フィルムの両面には、オレフィン系樹脂等からなるスキン層を共押出して、又はスキン層となるフィルムを熱圧着等によってラミネートして、多層の酸素吸収性フィルムとしてもよい。
本発明の酸素吸収性フィルムをTダイ法によって製造する場合にも、各種材料の混練体(酸素吸収性樹脂組成物)を押出機から得た後に、Tダイからフィルムを押し出すことができ、ここでも事前にマスターバッチを得てからフィルムを酸素吸収性成形することが好ましい。また、酸素吸収性フィルムの両面に、オレフィン系樹脂等からなるスキン層を共押出して、又はスキン層となるフィルムを熱圧着等によってラミネートして、多層の酸素吸収性フィルムを得てもよい。
なお、反応主剤としてピロガロール及び/又はヒドロキシキノールを用いた酸素吸収性樹脂組成物においては、従来用いられていたようなメルトマスフローレートが高い樹脂を用いようとすると、プレス法でのフィルム化には問題ないものの、Tダイ法又はインフレーション法によってフィルムを成形しようとすると、樹脂押出量が安定せず、安定的に成形できないことがあることが分かった。
これは、従来用いられていた没食子酸は、融点が250℃であるため、フィルム成形温度では融解しない一方で、ピロガロール及びヒドロキシキノールは、融点が130℃前後であるためにフィルム加工温度よりも低く、フィルム成形時に液化することが原因である。すなわち、上記のようにアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を添加することによって溶融したピロガロール及び/又はヒドロキシキノールの析出を一定程度防ぐことができるが、実際にはこれらが溶融することで高温下では可塑剤のように作用すると考えられる。これが、Tダイ法又はインフレーション法によってフィルムを安定的に成形することができない原因と考えられる。
そのため、特に反応主剤としてピロガロール及び/又はヒドロキシキノールを用いた酸素吸収性樹脂組成物は、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下でJIS K7210に準拠して測定した場合のメルトマスフローレートが0.5g/10min以上18.0g/10min以下であることが好ましい。酸素吸収性樹脂組成物が、このような範囲のメルトマスフローレートを有する場合には、Tダイ法及びインフレーション法によるフィルム化を容易に行うことができる。
多層の酸素吸収性フィルムは、例えば反応主剤の含有量が異なる複数の酸素吸収性樹脂組成物がそれぞれ層状又はフィルム状に成形され積層された構造であってよい。反応主剤の含有量が異なるもののほか、反応主剤、熱可塑性樹脂、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、もしくは遷移金属化合物の種類や含有量が異なる複数の酸素吸収性樹脂組成物を用いることもできる。
また、多層の酸素吸収性フィルムは、酸素吸収性樹脂組成物からなる単層または多層の中間層を2つのスキン層によってサンドイッチした3層構造であってもよい。この場合、多層の酸素吸収性フィルムは、酸素吸収性の中間層とこれを間に挟んだ2つのスキン層を有することになる。このうち中間層は、酸素の吸収を主に担う機能層としての中核をなす。2つのスキン層が中間層を挟んでその内外(積層方向でみて上下)に積層される構成とすることで、フィルムの機械的強度が強く、表面が平滑な酸素吸収性フィルムを得ることができ、後加工の適正が良くなる。このスキン層は、例えばポリオレフィン系樹脂等の樹脂からなることができる。
このようにして製造した単層又は多層の酸素吸収性フィルムは、ポリエステルフィルム、アルミ箔、アルミニウム蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカアルミナ二元蒸着フィルム、塩化ビニリデンコートフィルム、塩化ビニルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)などから選択する1種以上の組み合わせた基材フィルム(バリアフィルム)とラミネートして、包装材料用積層体として用いることもできる。ただし、この場合、バリア層は金属探知機や電子レンジに有意に反応しないように、塩化ビニリデンコートフィルム等を用いることが好ましい。ラミネートの方法としては、ドライラミネート、押出ラミネートなど、公知のラミネート方法を用いることができる。
この単層又は多層の酸素吸収性フィルムを含む包装材料用積層体を、該フィルム同士、又は他のフィルム及び積層体とヒートシール等によって接着することで、包装体を作製することができる。包装体の形態としては、袋状のもののほか、PTP、ブリスターパック、チューブなどが挙げられ、所望の形状で利用することができる。包装体においては、前記積層体の包装内部側に酸素吸収性フィルムを配置することが好ましい。
本発明の酸素吸収性フィルム又はこれを含む積層体を酸素吸収剤として用いる場合、金属探知機や電子レンジに有意に反応しないため、食品、薬剤、医薬品、化粧品、電子部品等の様々な物品を酸化劣化から防ぐのに非常に有用である。
上記の酸素吸収性フィルムを用いて作製した本発明の包装体は、特に有用である。この場合、単層又は多層の酸素吸収性フィルムを包装体の最内層として用いることができる。例えば、上記の包装材料用積層体を、単層又は多層の酸素吸収性フィルムを内側にして、互いにヒートシール等で接着させることによって、このような包装体を作製することができる。
<放射線処理又は加熱処理をした酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性フィルム>
さらに、本発明者らは、上記の酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性フィルムに特定の処理を行うことで、これらの酸素吸収速度を有意に向上できることを見出した。
特定の処理としては、放射線処理及び加熱処理を挙げることができる。放射線処理としては、紫外線処理、X線処理、γ線処理、電子線処理等を挙げることができる。より好ましくは、γ線処理及び電子線処理である。理論に限定されないが、これらの処理によって酸素吸収性能が向上する理由としては、ベンゼントリオールの水酸基の水素が解離しやすくなり、より酸素と反応しやすくなるためであると考えられる。
例えば、放射線照射による滅菌は、照射対象の材質を大きく損なうことがなく、薬品による滅菌に伴う有害物質の残留もないことから、医療機器、無菌動物の飼料等に用いられている。照射方法としてはベルトコンベアーによって照射室に入り、一定時間後に外へ出て、そのまままた照射室に入るという動作を一定の吸収線量になるまで繰り返すインクリメンタル照射、照射室内に置いて照射をする静置照射などがある。例えば、γ線による医療用滅菌では25kGy〜35kGyが照射される。
酸素吸収速度の向上のためには、1〜200kGyを照射すればよい。このような範囲であれば、酸素吸収速度の向上が発揮され、かつ材料中の樹脂が分解するおそれも低い。特開2014−79916号公報に記載の方法と同様にして、放射線処理を行ってもよい。
加熱処理としては、水蒸気処理、オーブン処理を挙げることができる。
特に、水蒸気処理は、いわゆる蒸気滅菌処理と同様にして行うことができる。具体的には、酸素吸収性樹脂組成物及び酸素吸収性フィルムを、内部を高圧力にすることが可能な耐圧性の装置や容器を用いて、病原体などを死滅させる滅菌処理(オートクレーブ滅菌)により加熱することができる。
水(水蒸気)を用いるオートクレーブ処理は、水を入れた密閉容器を加熱すれば高温高圧の状態が得られる、最も簡単なオートクレーブの例であり、またその装置の機構も比較的単純ですむことから、医学分野、材料科学分野等の様々な分野で利用されている。通常は、2気圧の飽和水蒸気によって温度を121℃に上昇させ、20分間処理する。
加熱処理の温度としては、酸素吸収速度の向上の観点から、40℃以上、60℃以上、又は80℃以上とすることができ、使用しているバインダー樹脂の軟化又は分解等をさせない観点から、200℃以下、180℃以下、又は150℃以下(特に、バインダー樹脂の融点以下)に加熱することができる。加熱時間は、加熱温度に応じて、10分以上24時間以内とすることができる。
このような処理は、上記の酸素吸収性樹脂組成物又は酸素吸収性フィルムに直接行ってもよく、上記の酸素吸収性樹脂組成物及び/又は酸素吸収性フィルムを封入している包装体に対して処理を行ってもよく、上記の酸素吸収性フィルムを含む包装材料用積層体を用いた包装体に対して行ってもよい。
A.酸素吸収性樹脂組成物
《試料作製》
100質量部のピロガロール、50質量部の炭酸カリウム、及び5質量部のステアリン酸鉄(III)を配合し、それぞれの粒子が細かく均一になるまで手早く混合し、酸素吸収剤を得た。この酸素吸収剤20質量部に対して、バインダー樹脂を80質量部ドライブレンドし、得られた樹脂混合物を、ラボプラストミル(東洋精機株式会社)のミキサーを用いて混練し、実施例1〜22及び比較例1〜4の酸素吸収性樹脂組成物を得た。同様に、ラボプラストミルではなく、中型のニーダー(10リットル程度)を用いて、実施例23及び比較例5の酸素吸収性樹脂組成物を得た。バインダー樹脂の詳細、配合量、混練条件等を表1〜4に示す。
《評価》
<酸素吸収剤含有率>
上記の酸素吸収性樹脂組成物を850℃で焼成し、樹脂組成物の灰分を得た。この灰分は、全て樹脂組成物に含まれる酸素吸収剤由来の灰分(炭酸カリウム及びステアリン酸鉄(III)の灰分)である。次に、ピロガロール、炭酸カリウム、及びステアリン酸鉄(III)を含む酸素吸収剤を、同様に850℃で焼成して、酸素吸収剤の灰分を得た。酸素吸収剤が焼成によって灰分となる割合を、酸素吸収剤の灰分率(%)と定義して、酸素吸収剤の灰分[g]/酸素吸収剤の焼成前重量「g」から計算した。ここでは、酸素吸収性樹脂組成物は焼成によって、有機成分は完全に消失することを前提とした。すなわち、特定の量の酸素吸収剤の灰分と、その特定の量の酸素吸収剤を含有する酸素吸収性樹脂組成物の灰分とが、等しいとしてした。
そして、酸素吸収剤が酸素吸収性樹脂組成物に実際に含まれている含有率を、次のようにして計算した:
Figure 2017036406
添加した酸素吸収剤が完全に樹脂組成物に混練されている場合には、酸素吸収剤含有率は20%になる。ここでは、酸素吸収剤含有率が18.0%以上である場合を○、18.0%未満である場合を×として評価した。
<機械汚染度>
酸素吸収剤とバインダー樹脂とを混練した後の機械を目視で観察して、酸素吸収剤及びバインダー樹脂が共に機械に殆ど付着していない場合を◎、樹脂組成物の状態で機械にわずかに付着している場合を○、樹脂組成物の状態で機械に多く付着している場合又は酸素吸収剤がごく薄く機械に付着している場合を△、酸素吸収剤が機械に付着して厚い膜を形成している場合を×として評価した。
Figure 2017036406
Figure 2017036406
Figure 2017036406
Figure 2017036406
上記の結果から、酢酸ビニル含有率は4.0重量%以上で、酸素吸収剤含有率の結果が良好になることが分かる。
酢酸ビニル含有率が10.0重量%以上では、機械汚染度の結果が良好となり、特に10.0重量%以上30.0質量%の間では機械汚染度の結果が、特に良好となる傾向がある。また、バインダー樹脂のMFRが0.1〜5.0g/10minである場合も機械汚染度の結果が、特に良好となることが分かる。
さらに、EVAとLDPEとをブレンドしてバインダー樹脂に用いた場合、EVAの含有率が50重量%以上であり、用いるEVAにおける酢酸ビニル含有率が10重量%以上20重量%未満であり、かつEVAのMFRが0.8g/10min超3.0g/10min未満である場合に、特に機械汚染度の結果が良好となることが分かる。
ニーダーを用いて混練して酸素吸収性樹脂組成物を得た例でも、ラボプラストミルを用いた例と同様の結果が得られた(実施例23)。
B.酸素吸収性フィルム
《試料作製》
実施例23で得た樹脂組成物を押出機で押し出してペレット化した後、この酸素吸収性樹脂組成物を中間層とし、内スキン層及び外スキン層として低密度ポリエチレン層(ペトロセン180、東ソー株式会社)を設けた三層構造の酸素吸収性フィルムを、多層製膜機を用いて作製した。
《評価》
<酸素吸収性能の評価>
酸素吸収性能の評価は、次のとおり評価した。すなわち、PET/アルミ箔/ポリエチレンの層構成を有するアルミニウムラミネート包装袋に、酸素吸収性フィルムを100cm投入し、包装袋の容積(空気量)が26mLとなるように四面体型にヒートシールして密封した。常温で30日間保存後の、包装袋内の空気中の酸素濃度を測定し、大気中の酸素濃度との差分から酸素吸収性フィルム1cm当たりの酸素吸収量を算出した。包装袋内の酸素濃度は、隔膜形ガルバニ電池式酸素センサーであるパックマスターRO−103(飯島電子工業株式会社)の測定針を袋内に刺して測定した。
《結果》
実施例23の樹脂組成物を使用して得たフィルムの酸素吸収量は、30日間で0.050mL/cmであり、高い酸素吸収性能を有していた。
C.ピロガロール、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、及び/又は遷移金属化合物の酸素吸収性についての参考的試験
表5及び表6に示す量で、各種の反応主剤、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩、及び/又は遷移金属化合物をそれぞれ配合し、それぞれの粒子が細かく均一になるまで、手早く混合した。これらを、バインダー樹脂にドライブレンドし、得られた樹脂混合物をラボプラストミル(東洋精機株式会社)を用いて170℃で溶融混合し、Tダイを用いて、ベント孔より真空引きしながら170℃で成形し、厚みが60〜70μmとなるように、参考例A1〜A24及び比較参考例A1〜A5の酸素吸収性フィルムを作製した。
<成形性の評価>
酸素吸収性フィルムを作製した際の製造適性の評価も表5及び表6に示す。ここで製造適性は、発泡の有無、成形状態、及び成形時のベントアップの有無の3つの観点から評価した。
すなわち、表5中では、成形時に発泡があった場合には×として、なかった場合には○とした。また、被酸化物のバインダー樹脂へのなじみが悪くフィルム表面に析出があった場合、又はTダイから樹脂混合物が出てくるときに幅方向に均一に押し出されずに縞状の模様のフィルムが形成された場合には、成形状態を×とし、このような問題がなかった場合を○とした。また、真空引きをしているベント孔から、樹脂混合物が上がってきて、フィルムの安定した成形に問題が生じた場合には、ベントアップを×として、このような問題がなかった場合を○とした。
<酸素吸収性能の評価>
また得られた酸素吸収性フィルムの酸素吸収性能の評価結果も表5及び表6に示す。酸素吸収性能は、次の通り評価した。すなわち、PET/アルミ箔/ポリエチレンの層構成を有するアルミニウムラミネート包装袋に、酸素吸収性フィルムを100cm投入し、包装袋の容積(空気量)が15mLとなるように四面体型にヒートシールして密封した。常温で7日間保存後の、包装袋内の空気中の酸素濃度を測定し、酸素吸収性フィルム1グラム当たりの酸素吸収量を算出した。包装袋内の酸素濃度は、隔膜形ガルバニ電池式酸素センサーであるパックマスターRO−103(飯島電子工業株式会社製)の測定針を袋内に刺して測定した。
Figure 2017036406
Figure 2017036406
なお、表5及び表6中で、PEとは低密度ポリエチレン(ペトロセン(商標)342、東ソー株式会社)であり、PPとはポリプロピレン(ノバテックFG3DC、日本ポリプロ株式会社)である。
表5及び表6を参照すると、反応主剤としてピロガロールと近い分子構造を有する没食子酸、アスコルビン酸又はカテコールを用いた酸素吸収性樹脂組成物では、フィルム成形時に発泡が起きた(比較参考例A2〜4)。また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、及び遷移金属化合物を添加せずに、没食子酸のみを樹脂に混練し、フィルム成形した場合は、発泡は起こらなかったが、酸素吸収性も発現しなかった(比較参考例A5)。一方、反応主剤にピロガロールを用いた本発明の酸素吸収性樹脂組成物では、フィルム成形時に発泡はなく、滑らかな酸素吸収性フィルムが得られた(参考例A1〜A24)。ただし、反応主剤にピロガロールを用いたとしても、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩を含まない場合は、フィルム成形時に発泡及びピロガロールの析出が起きた(比較参考例A1)。
表5及び表6を参照すると、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩及び遷移金属化合物として、様々な物質が様々な量で用いることができることが分かる。
<酸素吸収性積層体および酸素吸収性包装体の作製例>
基材(層構成:PET/アルミ箔)のアルミ箔面に、実施例25及び26の酸素吸収性フィルムをドライラミネートし、酸素吸収性積層体(層構成:PET/アルミ箔/酸素吸収性フィルム)を得た。また、この積層体を、酸素吸収性フィルムの面を内側にして2枚重ねて4辺をヒートシールし、4方シール袋(酸素吸収性包装体)を作製することができた。この酸素吸収性フィルムが、シーラントとして問題なく使用でき、かつラミネートし、そして製袋可能であることを確認した。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収性能が高く、様々なフィルムに成形することができ、かつ金属探知機や電子レンジに有意に反応しないため、食品、薬剤、医薬品、化粧品、電子部品等の様々な物品を酸化劣化から防ぐのに非常に有用である。

Claims (10)

  1. 鉄が全質量に対して1質量%以下であり、かつ以下を含んでなる、酸素吸収性樹脂組成物:
    ベンゼントリオール、
    アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩、及び
    エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ酢酸ビニル含有率が4.0質量%以上、40.0質量%以下であるバインダー樹脂、
    ここで、前記酢酸ビニル含有率は、前記バインダー樹脂として前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のみが用いられる場合には、酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量に対する割合であり、前記バインダー樹脂として前記エチレン−酢酸ビニル共重合体と他の樹脂との混合物が用いられる場合には、全ての酢酸ビニルの繰返し単位部分の質量の、その混合物の質量に対する割合である。
  2. 全質量に対して、前記バインダー樹脂が89.7質量%以下である、請求項1に記載の組成物。
  3. さらに遷移金属化合物を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 全質量に対して、前記ベンゼントリオールが2.0質量%以上、31.0質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下でJIS K7210に準拠して測定した場合の前記バインダー樹脂のメルトマスフローレートが、0.1g/10min以上、18.0g/10min以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記バインダー樹脂の酢酸ビニル含有率が10.0質量%以上、30.0質量%以下であり、かつ
    温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下でJIS K7210に準拠して測定した場合の前記バインダー樹脂のメルトマスフローレートが、0.1g/10min以上、5.0g/10min以下である、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物を成形して得られる、酸素吸収性フィルム。
  8. 請求項7に記載のフィルムを用いて作製されている、包装体。
  9. 以下の工程を含む、酸素吸収性樹脂組成物の製造方法:
    ベンゼントリオールと、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩とを、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ酢酸ビニル含有率が4.0質量%以上、40.0質量%以下であるバインダー樹脂に混練する工程。
  10. 以下の工程を含む、酸素吸収性フィルムの製造方法:
    ベンゼントリオールと、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩とを、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有し、かつ酢酸ビニル含有率が4.0質量%以上、40.0質量%以下であるバインダー樹脂に混練して、樹脂組成物を得る工程;
    前記樹脂組成物をフィルムに成形する工程。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116041837A (zh) * 2022-12-30 2023-05-02 浙江大晋新材料科技有限公司 一种热封性食品包装膜及其制备方法

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