以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
(実施の形態1)
<回路構成について>
図1は、一実施の形態の半導体装置(半導体チップ)を用いた電子装置(半導体装置)の一例を示す回路図である。なお、図1において、点線で囲まれた部分が、半導体チップCP1内に形成され、一点鎖線で囲まれた部分が半導体チップCP2内に形成され、二点差線で囲まれた部分が半導体パッケージPKG内に形成されている。
図1に示される電子装置は、半導体チップCP1,CP2を内蔵する半導体パッケージPKGを備えている。半導体チップCP1内には、送信回路TX1および受信回路RX2と制御回路CCとが形成され、半導体チップCP2内には、受信回路RX1および送信回路TX2と駆動回路DRとが形成されている。
送信回路TX1および受信回路RX1は、制御回路CCからの制御信号を駆動回路DRに伝達するための回路である。また、送信回路TX2および受信回路RX2は、駆動回路DRからの信号を制御回路CCに伝達するための回路である。制御回路CCは、駆動回路DRを制御または駆動し、駆動回路DRは、負荷LODを駆動する。半導体チップCP1,CP2は半導体パッケージPKGに内蔵され、負荷LODは、半導体パッケージPKGの外部に設けられている。
送信回路TX1と受信回路RX1との間には、磁気結合(誘導結合)したコイル(インダクタ)CL1a,CL2aからなるトランス(変成器、変換器、磁気結合素子、電磁結合素子)TR1が介在しており、送信回路TX1から受信回路RX1へ、このトランスTR1を介して(すなわち磁気結合したコイルCL1a,CL2aを介して)信号を伝達することができる。これにより、半導体チップCP2内の受信回路RX1は、半導体チップCP1内の送信回路TX1が送信した信号を受信することができる。従って、制御回路CCは、送信回路TX1、トランスTR1および受信回路RX1を介して、駆動回路DRに信号(制御信号)を伝達することができる。このトランスTR1(コイルCL1a,CL2a)は、半導体チップCP1内に形成されている。コイルCL1aおよびコイルCL2aは、それぞれインダクタとみなすこともできる。また、トランスTR1は、磁気結合素子とみなすこともできる。
また、送信回路TX2と受信回路RX2との間には、磁気結合(誘導結合)したコイル(インダクタ)CL1b,CL2bからなるトランス(変成器、変換器、磁気結合素子、電磁結合素子)TR2が介在しており、送信回路TX2から受信回路RX2へ、このトランスTR2を介して(すなわち磁気結合したコイルCL1b,CL2bを介して)信号を伝達することができる。これにより、半導体チップCP1内の受信回路RX2は、半導体チップCP2内の送信回路TX2が送信した信号を受信することができる。従って、駆動回路DRは、送信回路TX2、トランスTR2および受信回路RX2を介して、制御回路CCに信号を伝達することができる。このトランスTR2(コイルCL1b,CL2b)は、半導体チップCP2内に形成されている。コイルCL1bおよびコイルCL2bは、それぞれインダクタとみなすこともできる。また、トランスTR2は、磁気結合素子とみなすこともできる。
トランスTR1は、半導体チップCP1内に形成されたコイルCL1a,CL2aにより形成されているが、コイルCL1aとコイルCL2aとは、導体によっては繋がっておらず、磁気的に結合している。このため、コイルCL1aに電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL2aに誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。コイルCL1aが一次コイルで、コイルCL2aが二次コイルである。これを利用して、送信回路TX1からトランスTR1のコイルCL1a(一次コイル)に信号を送って電流を流し、それに応じてトランスTR1のコイルCL2a(二次コイル)に生じた誘導電流(または誘導起電力)を受信回路RX1で検知(受信)することで、送信回路TX1が送った信号に応じた信号を、受信回路RX1で受け取ることができる。
また、トランスTR2は、半導体チップCP2内に形成されたコイルCL1b,CL2bにより形成されているが、コイルCL1bとコイルCL2bとは、導体によっては繋がっておらず、磁気的に結合している。このため、コイルCL1bに電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL2bに誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。コイルCL1bが一次コイルで、コイルCL2bが二次コイルである。これを利用して、送信回路TX2からトランスTR2のコイルCL1b(一次コイル)に信号を送って電流を流し、それに応じてトランスTR2のコイルCL2b(二次コイル)に生じた誘導電流(または誘導起電力)を受信回路RX2で検知(受信)することで、送信回路TX2が送った信号に応じた信号を、受信回路RX2で受け取ることができる。
制御回路CCから送信回路TX1、トランスTR1および受信回路RX1を経由して駆動回路DRに至る経路と、駆動回路DRから送信回路TX2、トランスTR2および受信回路RX2を経由して制御回路CCに至る経路とにより、半導体チップCP1と半導体チップCP2との間で信号の送受信を行う。すなわち、送信回路TX1が送信した信号を受信回路RX1が受信し、送信回路TX2が送信した信号を受信回路RX2が受信することにより、半導体チップCP1と半導体チップCP2との間で信号の送受信を行うことができる。上述のように、送信回路TX1から受信回路RX1への信号の伝達には、トランスTR1(すなわち磁気結合したコイルCL1a,CL2a)が介在し、また、送信回路TX2から受信回路RX2への信号の伝達には、トランスTR2(すなわち磁気結合したコイルCL1b,CL2b)が介在する。駆動回路DRは、半導体チップCP1から半導体チップCP2に送信された信号(すなわち送信回路TX1からトランスTR1を介して受信回路RX1に送信された信号)に応じて、負荷LODを駆動させることができる。負荷LODとしては、用途に応じて様々な負荷があるが、例えばモータなどを例示できる。
半導体チップCP1と半導体チップCP2とは、電圧レベル(基準電位)が異なっている。例えば、半導体チップCP1は、低電圧(例えば数V〜数十V)で動作または駆動される回路を有する低電圧領域に、後述のボンディングワイヤBWおよびリードLDなどを介して接続される。また、半導体チップCP2は、前記低電圧よりも高電圧(例えば100V以上)で動作または駆動される回路(例えば負荷LODや負荷LOD用のスイッチなど)を有する高電圧領域に、後述のボンディングワイヤBWおよびリードLDなどを介して接続される。しかしながら、半導体チップCP1,CP2間での信号の伝達はトランスTR1,TR2を介在しているため、異電圧回路間での信号の伝達が可能である。
トランスTR1,TR2においては、一次コイルと二次コイルとの間に、大きな電位差が発生する場合がある。逆に言えば、大きな電位差が発生する場合があるため、導体では繋がずに磁気結合させた一次コイルと二次コイルを信号の伝達に用いている。このため、半導体チップCP1内にトランスTR1を形成するにあたって、コイルCL1aとコイルCL2aとの間の絶縁耐圧をできるだけ高くしておくことが、半導体チップCP1、半導体チップCP1を内蔵する半導体パッケージPKG、あるいはそれを用いた電子装置の信頼性を向上させる上で重要である。また、半導体チップCP2内にトランスTR2を形成するにあたって、コイルCL1bとコイルCL2bとの間の絶縁耐圧をできるだけ高くしておくことが、半導体チップCP2、半導体チップCP2を内蔵する半導体パッケージPKG、あるいはそれを用いた電子装置の信頼性を向上させる上で重要である。このため、本実施の形態では、半導体チップ(CP1,CP2)内で一次コイルと二次コイルとの間に介在する絶縁膜(後述の積層膜LF)の構成を工夫しており、これについては、後で詳述する。
なお、図1では、制御回路CCを半導体チップCP1内に内蔵させる場合について示しているが、他の形態として、制御回路CCを半導体チップCP1,CP2以外の半導体チップに内蔵させることもできる。また、図1では、駆動回路DRを半導体チップCP2内に内蔵させる場合について示しているが、他の形態として、駆動回路DRは、半導体チップCP1,CP2以外の半導体チップに内蔵させることもできる。
<信号の伝送例について>
図2は、信号の伝送例を示す説明図である。
送信回路TX1は、送信回路TX1に入力された方形波の信号SG1を微分波の信号SG2に変調して、トランスTR1のコイルCL1a(一次コイル)に送る。この微分波の信号SG2による電流がトランスTR1のコイルCL1a(一次コイル)に流れると、それに応じた信号SG3が誘導起電力によりトランスTR1のコイルCL2a(二次コイル)に流れる。この信号SG3を受信回路RX2で増幅し、更に方形波に変調することで、方形波の信号SG4が受信回路RX2から出力される。これにより、送信回路TX1に入力された信号SG1に応じた信号SG4を、受信回路RX2から出力することができる。このようにして、送信回路TX1から、受信回路RX1に信号が伝達される。送信回路TX2から受信回路RX2への信号の伝達も、同様に行うことができる。
また、図2では、送信回路から受信回路への信号の伝達の一例を挙げたが、これに限定されず、種々変更可能であり、磁気結合されたコイル(一次コイルおよび二次コイル)を介して信号を伝達する手法であればよい。
<半導体チップの構造について>
図3は、本実施の形態の半導体装置の断面構造を示す要部断面図である。図3に示される半導体装置は、上記半導体チップCP1または上記半導体チップCP2に対応する半導体装置(半導体チップ)である。また、図4は、本実施の形態の半導体装置の要部断面図であるが、周辺回路形成領域1Aの層間絶縁膜IL2よりも上層の構造を示す断面図が示されている。また、図5は、パッドPD1の平面図であるが、理解を簡単にするために、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの位置を一点鎖線で示し、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの位置を点線で示し、樹脂膜LF3の開口部OP1cの位置を二点鎖線で示している。また、図6は、パッドPD1の下層を示す平面図であり、理解を簡単にするために、パッドPD1の外周位置を点線で示してある。
本実施の形態の半導体装置は、単結晶シリコンなどからなる半導体基板SBを利用して形成された半導体装置(半導体チップ)であり、周辺回路形成領域1Aとトランス形成領域1Bとを有している。なお、周辺回路形成領域1Aとトランス形成領域1Bとは、同一の半導体基板SBの主面の互いに異なる平面領域に対応している。
図3に示されるように、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)を構成する単結晶シリコンなどからなる半導体基板SBに、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子が形成されている。この半導体素子は、周辺回路形成領域1Aに形成されている。
例えば、周辺回路形成領域1Aの半導体基板SB1にp型ウエルPWおよびn型ウエルNWが形成され、p型ウエルPW上にゲート絶縁膜GFを介してnチャネル型MISFET用のゲート電極G1が形成され、n型ウエルNW上にゲート絶縁膜GFを介してpチャネル型MISFET用のゲート電極G2が形成されている。ゲート絶縁膜GFは、例えば酸化シリコン膜などからなり、ゲート電極G1,G2は、例えば、不純物を導入した多結晶シリコン膜(ドープトポリシリコン膜)などからなる。
半導体基板SBのp型ウエルPW内には、nチャネル型MISFETのソース・ドレイン用のn型半導体領域NSが形成され、半導体基板SBのn型ウエルNW内には、pチャネル型MISFETのソース・ドレイン用のp型半導体領域PSが形成されている。ゲート電極G1と、そのゲート電極G1の下のゲート絶縁膜GFと、ゲート電極G1の両側のn型半導体領域NS(ソース・ドレイン領域)とにより、nチャネル型MISFETが形成される。また、ゲート電極G2と、そのゲート電極G2の下のゲート絶縁膜GFと、ゲート電極G2の両側のp型半導体領域PS(ソース・ドレイン領域)とにより、pチャネル型MISFETが形成される。n型半導体領域NSは、LDD(Lightly doped Drain)構造とすることもでき、この場合、ゲート電極G1の側壁上には、サイドウォールスペーサとも称される側壁絶縁膜が形成される。同様に、p型半導体領域PSは、LDD構造とすることもでき、この場合、ゲート電極G1の側壁上には、サイドウォールスペーサとも称される側壁絶縁膜が形成される。
なお、ここでは、周辺回路形成領域1Aに形成する半導体素子として、MISFETを例に挙げて説明しているが、この他、容量素子、抵抗素子、メモリ素子または他の構成のトランジスタなどを周辺回路形成領域1Aに形成してもよい。上記半導体チップCP1の場合は、周辺回路形成領域1Aに形成された半導体素子により、上記制御回路CC、送信回路TX1および受信回路RX2が形成され、上記半導体チップCP2の場合は、周辺回路形成領域1Aに形成された半導体素子により、上記駆動回路DR、受信回路RX1および送信回路TX2が形成される。
また、ここでは、半導体基板SBとして単結晶シリコン基板を例に挙げて説明しているが、他の形態として、半導体基板SBとして、SOI(Silicon On Insulator)基板などを用いることもできる。
半導体基板SB上には、複数の層間絶縁膜と複数の配線層とにより多層配線構造が形成されている。
すなわち、半導体基板SB上に、複数の層間絶縁膜IL1,IL2,IL3が形成され、この複数の層間絶縁膜IL1,IL2,IL3に、プラグV1、ビア部V2,V3および配線M1,M2,M3が形成されている。
具体的には、半導体基板SB上に、上記MISFETを覆うように、絶縁膜として層間絶縁膜IL1が形成されており、この層間絶縁膜IL1上に、配線M1が形成されている。配線M1は、第1配線層(最下層の配線層)の配線である。層間絶縁膜IL1上には、配線M1を覆うように、絶縁膜として層間絶縁膜IL2が形成されており、この層間絶縁膜IL2上に、配線M2が形成されている。配線M2は、第1配線層よりも1つ上層の配線層である第2配線層の配線である。層間絶縁膜IL2上には、配線M2を覆うように、絶縁膜として層間絶縁膜IL3が形成されており、この層間絶縁膜IL3上に、配線M3が形成されている。配線M3は、第2配線層よりも1つ上層の配線層である第3配線層の配線である。
プラグV1は、導電体からなり、配線M1の下層に形成され、すなわち層間絶縁膜IL1中に層間絶縁膜IL1を貫通するように形成され、プラグV1の上面が配線M1の下面に接することで、配線M1に電気的に接続されている。また、プラグV1の底部は、半導体基板SBに形成された種々の半導体領域(例えばn型半導体領域NSまたはp型半導体領域PSなど)や、ゲート電極G1,G2などに接続されている。これにより、配線M1は、プラグV1を介して、半導体基板SBに形成された種々の半導体領域やゲート電極G1,G2などに電気的に接続される。
ビア部V2は、導電体からなり、配線M2と配線M1との間に形成されて、すなわち層間絶縁膜IL2中に形成されて、配線M2と配線M1とを接続している。ビア部V2は、配線M2と一体的に形成することもできる。また、ビア部V3は、導電体からなり、配線M3と配線M2との間に形成されて、すなわち層間絶縁膜IL3中に形成されて、配線M3と配線M2とを接続している。ビア部V3は、配線M3と一体的に形成することもできる。
本実施の形態の半導体装置においては、第3配線層、すなわち配線M3が、最上層配線である。すなわち、第1配線層(配線M1)、第2配線層(配線M2)および第3配線層(配線M3)により、半導体基板SBに形成された半導体素子(例えば上記MISFET)の所望の結線がなされており、所望の動作をなし得る。
最上層配線である第3配線層によってパッド(パッド領域、パッド電極)PD1が形成されている。すなわち、配線M3と同層にパッドPD1が形成されている。つまり、配線M3とパッドPD1とは、同層の導電層により同工程で形成されている。このため、パッドPD1は、層間絶縁膜IL3上に形成されている。パッドPD1は、配線M3の一部とみなすこともできるが、配線M3は積層膜LFで覆われているのに対して、パッドPD1は、少なくとも一部が積層膜LFの開口部OP1から露出されている。但し、パッドPD1の一部は、積層膜LFで覆われている。すなわち、開口部OP1からパッドPD1が露出されているが、平面視で開口部OP1と重ならない部分のパッドPD1は、積層膜LFで覆われている。具体的には、パッドPD1の中央部は積層膜LFで覆われておらず、パッドPD1の外周部は積層膜LFで覆われている。再配線RWを形成する前に、このパッドPD1を利用して、半導体装置が所望の動作を行うか否かのテスト(テスト工程、後述のプローブテストに対応)を行うことができる。パッドPD1は、好ましくは、アルミニウムを主成分(主体)とする導電材料(金属伝導を示す導電材料)からなる。パッドPD1の好適な材料例を挙げると、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)との化合物または合金、あるいは、Al(アルミニウム)とCu(銅)との化合物または合金、あるいは、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)とCu(銅)との化合物または合金があり、Al(アルミニウム)の組成比は50原子%より大きい(すなわちAlリッチである)ことが好適である。また、図3には、パッドPD1は1つ示されているが、実際にはパッドPD1は1つ以上形成されており、好ましくは複数形成されている。
また、図4〜図6に示されるように、パッドPD1の直下にビア部V3を設け、そのビア部V3を介してパッドPD1を配線M2に電気的に接続することができる。他の形態として、パッドPD1と一体的に形成された配線M3を設けておき、このパッドPD1と一体的に形成された配線M3が、その配線M3の直下に設けられたビア部V3を介して配線M2と接続されることで、パッドPD1を配線M2に電気的に接続することもできる。
また、図3では、半導体基板SB1上に形成される配線層の数(再配線RWは含まず)が3層の場合(配線M1,M2,M3の計3層の場合)を示しているが、配線層の数は3層に限定されず、種々変更可能であるが、2層以上が好ましい。また、配線層の数(再配線RWは含まず)が3層以上であれば、第2配線層と同層に形成したコイルCL1を第1配線層の配線(引出配線)で引き出せるので、コイルと配線のレイアウトがしやすくなる。
図3および図4に示されるように、層間絶縁膜IL3上には、配線M3を覆うように積層膜(積層絶縁膜)LFが形成されており、この積層膜LF上に再配線RWが形成されている。積層膜LFは、酸化シリコン膜LF1と酸化シリコン膜LF1上の窒化シリコン膜LF2と窒化シリコン膜LF2上の樹脂膜LF3とからなる。酸化シリコン膜LF1と窒化シリコン膜LF2と樹脂膜LF3とは、それぞれ絶縁膜であるため、積層膜LFは、複数の絶縁膜(具体的には酸化シリコン膜LF1と窒化シリコン膜LF2と樹脂膜LF3の3つの絶縁膜)を積層した積層絶縁膜とみなすこともできる。
パッドPD1は、積層膜LFの開口部OP1から露出されており、開口部OP1から露出されたパッドPD1上にも再配線RWが形成されている。すなわち、再配線RWは、開口部OP1から露出されたパッドPD1上を含む積層膜LF上に形成されており、パッドPD1と電気的に接続されている。この再配線RWは、最上層配線(ここでは第3配線層)の一部であるパッドPD1を半導体チップの所望の領域(パッドPD2)まで引き出す配線である。つまり、再配線RWは、積層膜LFの開口部OP1から露出されたパッドPD1上から、積層膜LF上のパッドPD2まで、積層膜LF上を延在するように形成されている。
パッド(パッド領域、パッド電極、ボンディングパッド)PD2は、再配線RWと同層の導電層により形成され、再配線RWと一体的に形成されている。このため、パッドPD2も積層膜LF上(すなわち積層膜LFの樹脂膜LF3上)に形成されており、パッドPD2は再配線RWと電気的に接続されている。従って、パッドPD2は、再配線RWを通じてパッドPD1と電気的に接続されている。また、図3には、パッドPD2は1つ示されているが、実際にはパッドPD2は1つ以上形成されており、好ましくは複数形成されている。
なお、平面視において、パッドPD2と再配線RWとパッドPD1とが配置されている領域は、コイルCL1とコイルCL2とパッドPD3とが配置されている領域とは相違している。すなわち、パッドPD2、再配線RWおよびパッドPD1は、コイルCL1、コイルCL2およびパッドPD3とは平面視で重ならない位置に配置されている。
積層膜LFは、パッドPD1の少なくとも一部を露出する開口部OP1を有しているが、積層膜LFは、酸化シリコン膜LF1と窒化シリコン膜LF2と樹脂膜LF3との積層膜であるため、積層膜LFの開口部OP1は、樹脂膜LF3の開口部OP1cと、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bと、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aとにより形成される(図4および図5参照)。開口部OP1aと開口部OP1bと開口部OP1cとの関係は、図4および図5のようになっているが、これについては後で説明する。
なお、図4では、図面を見やすくするために、再配線RWおよびパッドPD2について、後述の銅膜CFとシード膜SEとを分けずに一体化して示してある。
図3に示されるように、トランス形成領域1Bには、コイル(インダクタ)CL1とコイル(インダクタ)CL2とを有するトランスが形成されている。すなわち、トランス形成領域1Bにおいて、半導体基板SB1上に、トランスの一次コイルであるコイルCL1とトランスの二次コイルであるコイルCL2とが形成されている。上記半導体チップCP1の場合は、コイルCL1は上記コイルCL1aに対応し、コイルCL2は上記コイルCL2aに対応し、コイルCL1とコイルCL2とで形成されるトランスは上記トランスTR1に対応する。上記半導体チップCP2の場合は、コイルCL1は上記コイルCL1bに対応し、コイルCL2は上記コイルCL2bに対応し、コイルCL1とコイルCL2とで形成されるトランスは上記トランスTR2に対応する。
コイルCL1とコイルCL2とは、同層に形成されているのではなく、互いに異なる層に形成されており、コイルCL1とコイルCL2との間には、絶縁層が介在している。また、下層側のコイルCL1は、半導体基板SBに接して形成されているのではなく、半導体基板SB上に絶縁層を介して形成されている。具体的には、半導体基板SB1上に形成された層間絶縁膜(ここでは層間絶縁膜IL1)上に、コイルCL1が形成されている。
コイルCL1はコイルCL2よりも下層に形成され、コイルCL2はコイルCL1よりも上層に形成されている。本実施の形態では、コイルCL1とコイルCL2のうちの上層側のコイルCL2は、積層膜LF上に形成されている。すなわち、コイルCL2は、積層膜LF上に形成され、かつコイルCL1の上方に配置されている。つまり、積層膜LFの樹脂膜LF3上にコイルCL2が形成されている。このため、コイルCL2は、樹脂膜LF3に接している。
コイルCL2は、再配線RWと同層の導電層により同工程で形成されている。すなわち、再配線RWと同層にコイルCL2が形成されている。このため、コイルCL2と再配線RWとは、同じ材料で形成されている。
トランス形成領域1Bでは、積層膜LF上に、コイルCL2が形成されるとともに、パッド(パッド領域、パッド電極、ボンディングパッド)PD3も形成されている。このパッドPD3は、コイルCL2と同層の導電層により形成され、コイルCL2と一体的に形成されている。このため、パッドPD3も積層膜LF上(すなわち積層膜LFの樹脂膜LF3上)に形成され、パッドPD3はコイルCL2と電気的に接続されている。
このため、パッドPD2と再配線RWとパッドPD3とコイルCL2とは、同層の導電層により同層に形成されており、パッドPD2は再配線RWと一体的に形成されて電気的に接続され、また、パッドPD3はコイルCL2と一体的に形成されて電気的に接続されている。しかしながら、再配線RWとコイルCL2とは、分離されており、導体では繋がっていない。また、パッドPD2とパッドPD3とは、分離されており、導体では繋がっていない。また、パッドPD2とコイルCL2とは、分離されており、導体では繋がっていない。パッドPD3と再配線RWとは、分離されており、導体では繋がっていない。また、パッドPD2は、再配線RWを介してパッドPD1に電気的に接続されているが、パッドPD3は、パッドPD1とは導体では繋がっていない。トランス形成領域1Bには、コイルCL1とコイルCL2とパッドPD3とが形成されているが、パッドPD1と再配線RWとパッドPD2とは形成されていない。
コイルCL1とコイルCL2のうちの下層側のコイルCL1は、再配線RWを除く多層配線構造のうちの最上層配線(ここでは第3配線層)よりも下層の配線層により形成されている。ここでは、最上層配線である第3配線層よりも下層の第2配線層により、コイルCL1が形成されている。すなわち、配線M2と同層にコイルCL1が形成されている。
コイルCL1は、第2配線層により形成しているため、コイルCL1は、配線M2と同層の導電層により同工程で形成することができる。例えば、層間絶縁膜IL2上に形成した導電膜をパターニングすることで配線M2を形成する場合は、その導電膜をパターニングする際に、配線M2だけでなくコイルCL1も形成することができる。また、例えば、配線M2をダマシン法を用いて形成する場合には、コイルCL1も配線M2と同工程でダマシン法を用いて形成でき、この場合、配線M2およびコイルCL1は、層間絶縁膜IL2の溝に埋め込まれた導電膜(例えば銅を主体とする導電膜)により形成される。
コイルCL2とコイルCL1との間には、複数の絶縁層が介在しているが、具体的には、層間絶縁膜IL3と積層膜LFとが介在している。すなわち、コイルCL2とコイルCL1との間には、下から順に、層間絶縁膜IL3と酸化シリコン膜LF1と窒化シリコン膜LF2と樹脂膜LF3とが介在している。このため、コイルCL2とコイルCL1とは、導体では繋がっておらず、電気的には絶縁された状態となっている。但し、コイルCL2とコイルCL1とは磁気的に結合している。
従って、下層側のコイルCL1は、第2配線層である配線M2と同層に形成され、このコイルCL1上に、層間絶縁膜IL3、酸化シリコン膜LF1、窒化シリコン膜LF2および樹脂膜LF3を介してコイルCL2が形成された状態となっている。
樹脂膜LF3は、好ましくはポリイミド膜である。ポリイミド(polyimide)膜は、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子であり、有機絶縁膜の一種である。樹脂膜LF3としては、ポリイミド膜の他に、エポキシ系、PBO系、アクリル系、WRP系の樹脂等、他の有機絶縁膜を用いることもできる。ポリイミド系樹脂は、200℃以上の高耐熱が求められるデバイスに好適に使用される有機樹脂であるが、材料の熱膨張係数や延性等の機械的強度、キュア温度等に応じて使い分けることができる。
積層膜LF上に、すなわち樹脂膜LF3上に、再配線RWおよびコイルCL2を覆うように、絶縁性の保護膜(表面保護膜、絶縁膜、保護絶縁膜)PAが形成されている。保護膜PAは、絶縁膜であるため、保護絶縁膜とみなすこともできる。保護膜PAにより、再配線RWおよびコイルCL2が覆われて保護されている。保護膜PAとしては、樹脂膜が好ましく、例えばポリイミド膜を好適に用いることができる。保護膜PAが、半導体チップ(半導体装置)の最表面の膜となる。
パッドPD2,PD3は、それぞれ保護膜PAの開口部OP2,OP3から露出されている。すなわち、パッドPD2上に開口部OP2が設けられることで、パッドPD2が保護膜PAの開口部OP2から露出され、また、パッドPD3上に開口部OP3が設けられることで、パッドPD3が保護膜PAの開口部OP3から露出されている。このため、保護膜PAの開口部OP2,OP3からそれぞれ露出するパッドPD2,PD3に、それぞれ後述のボンディングワイヤBWなどの導電性の接続部材を接続することができる。
また、パッドPD2,PD3上には、それぞれ下地金属膜UMを形成しておくことが好ましい。すなわち、パッドPD2上に下地金属膜UMが形成されており、このパッドPD2上の下地金属膜UMが保護膜PAの開口部OP2から露出されている。また、パッドPD3上に下地金属膜UMが形成されており、このパッドPD3上の下地金属膜UMが保護膜PAの開口部OP3から露出されている。これにより、保護膜PAの開口部OP2,OP3からそれぞれ露出される下地金属膜UMに後述のボンディングワイヤBWなどの導電性の接続部材を接続することになるため、接続部材(ボンディングワイヤBW)を接続しやすくすることができる。下地金属膜UMは、例えばニッケル(Ni)膜と該ニッケル(Ni)膜上の金(Au)膜との積層膜などからなる。
なお、保護膜PAは、形成した方が好ましいが、省略することも可能である。但し、保護膜PAを形成した場合は、再配線RWとコイルCL2を保護膜PAで覆って保護できるため、信頼性の更なる向上や、半導体チップを扱いやすくなるなどの利点を得られる。
上記半導体チップCP1に図3の半導体装置を適用した場合、半導体チップCP1内に上記送信回路TX1およびコイルCL1,CL2(これが上記コイルCL1a,CL2aに対応する)が形成されており、半導体チップCP1内に形成されている送信回路TX1は、半導体チップCP1内において、内部配線を介してコイルCL1に電気的に接続されている。また、上記半導体チップCP2に図3の半導体装置を適用した場合、半導体チップCP2内に上記送信回路TX2およびコイルCL1,CL2(これが上記コイルCL1b,CL2bに対応する)が形成されており、半導体チップCP2内に形成されている送信回路TX2は、半導体チップCP2内において、内部配線を介してコイルCL1に電気的に接続されている。
この場合、半導体チップCP1内の送信回路TX1から半導体チップCP1内の内部配線を介して半導体チップCP1内のコイルCL1に、送信用の信号を送信することができる。半導体チップCP1においてコイルCL2に接続されているパッドPD3は、後述のボンディングワイヤBWなどの導電性の接続部材を介して、半導体チップCP2のパッドPD2(再配線RWに接続されたパッドPD2)に電気的に接続され、更に半導体チップCP2の内部配線を介して、半導体チップCP2内の受信回路RX1に電気的に接続される。これにより、半導体チップCP1内において、コイルCL1から電磁誘導によりコイルCL2が受け取った信号(受信信号)を、後述のボンディングワイヤBW(接続部材)および半導体チップCP2の内部配線を介して、半導体チップCP2内の受信回路RX1に送信することができる。
同様に、半導体チップCP2内の送信回路TX2から半導体チップCP2内の内部配線を介して半導体チップCP2内のコイルCL1に、送信用の信号を送信することができる。半導体チップCP2においてコイルCL2に接続されているパッドPD3は、後述のボンディングワイヤBWなどの導電性の接続部材を介して、半導体チップCP1のパッドPD2(再配線RWに接続されたパッドPD2)に電気的に接続され、更に半導体チップCP1の内部配線を介して、半導体チップCP1内の受信回路RX2に電気的に接続される。これにより、半導体チップCP2内において、コイルCL1から電磁誘導によりコイルCL2が受け取った信号(受信信号)を、後述のボンディングワイヤBW(接続部材)および半導体チップCP1の内部配線を介して、半導体チップCP1内の受信回路RX2に送信することができる。
<製造工程について>
次に、本実施の形態の半導体装置の製造工程について説明する。以下の製造工程により、上記図3の半導体装置が製造される。
図7〜図31は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。図7〜図31には、上記図3に相当する断面領域の断面図が示されている。
まず、図7に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)SBを用意(準備)する。
半導体基板SBは、周辺回路が形成される予定の領域である周辺回路形成領域1Aと、トランスが形成される予定の領域であるトランス形成領域1Bとを有している。周辺回路形成領域1Aとトランス形成領域1Bとは、同一の半導体基板SBの主面の互いに異なる平面領域に対応している。
なお、周辺回路形成領域1Aに形成される周辺回路は、上記半導体チップCP1の場合は、上記制御回路CC、送信回路TX1および受信回路RX2などであり、上記半導体チップCP2の場合は、上記駆動回路DR、受信回路RX1および送信回路TX2などである。また、トランス形成領域1Bに形成されるトランスは、上記半導体チップCP1の場合は、上記トランスTR1であり、上記半導体チップCP2の場合は、上記トランスTR2である。従って、トランス形成領域1Bに形成されるコイルCL1とコイルCL2は、上記半導体チップCP1の場合は、それぞれ上記コイルCL1aとコイルCL2aであり、上記半導体チップCP2の場合は、それぞれ上記コイルCL1bとコイルCL2bである。
次に、半導体基板SBの主面に、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法などにより、素子分離領域STを形成する。素子分離領域STは、半導体基板SBに溝を形成し、その溝に絶縁膜を埋め込むことにより、形成される。半導体基板SBにおいて、素子分離領域STで規定(画定)された活性領域に、後述のようにMISFETが形成される。
次に、周辺回路形成領域1Aの半導体基板SB(の活性領域)に、MISFETなどの半導体素子を形成する。以下に、MISFETの形成工程について説明する。
まず、図8に示されるように、半導体基板SBにp型ウエルPWおよびn型ウエルNWを形成する。p型ウエルPWおよびn型ウエルNWは、それぞれイオン注入により形成され、半導体基板SBの主面から所定の深さにわたって形成される。
それから、半導体基板SBの主面上に、ゲート絶縁膜GFを介してゲート電極G1,G2を形成する。ゲート電極G1は、p型ウエルPW上にゲート絶縁膜GFを介して形成され、ゲート電極G2は、n型ウエルNW上にゲート絶縁膜GFを介して形成される。
具体的には、次のようにしてゲート絶縁膜GFを介してゲート電極G1,G2を形成することができる。すなわち、まず、半導体基板SBの主面を洗浄処理などにより清浄化してから、半導体基板SBの主面にゲート絶縁膜GF用の絶縁膜を形成し、その後、この絶縁膜上にゲート電極G1,G2用の多結晶シリコン膜を形成する。ゲート絶縁膜GF用の絶縁膜は、例えば酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などにより形成することができる。ゲート電極G1,G2用の多結晶シリコン膜は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法などにより形成することができる。この多結晶シリコン膜は、成膜時に不純物をドープするか、あるいは成膜後にイオン注入で不純物を導入することで、ドープトポリシリコン膜とされ、低抵抗の半導体膜(導電性材料膜)とされている。また、この多結晶シリコン膜は、成膜時にはアモルファスシリコン膜であったものを、成膜後の熱処理により多結晶シリコン膜に変えることもできる。そして、この多結晶シリコン膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、パターニングされた多結晶シリコン膜からなるゲート電極G1,G2を形成することができる。ゲート電極G1,G2の下に残存するゲート絶縁膜GF用の絶縁膜が、ゲート絶縁膜GFとなる。
次に、半導体基板SBのp型ウエルPW内に、nチャネル型MISFETのソース・ドレイン用のn型半導体領域NSを形成し、半導体基板SBのn型ウエルNW内に、pチャネル型MISFETのソース・ドレイン用のp型半導体領域PSを形成する。n型半導体領域NSとp型半導体領域PSは、それぞれイオン注入により形成することができる。ゲート電極G1,G2の直下の領域にはイオン注入が阻止されるため、n型半導体領域NSは、p型ウエルPWにおけるゲート電極G1の両側の領域に形成され、p型半導体領域PSは、n型ウエルNWにおけるゲート電極G1の両側の領域に形成される。
n型半導体領域NSおよびp型半導体領域PSをそれぞれLDD構造とする場合は、低不純物濃度のn−型半導体領域とp−型半導体領域をそれぞれイオン注入により形成してから、ゲート電極G1,G2の側壁上に側壁絶縁膜(サイドウォールスペーサ)を形成し、その後に、高不純物濃度のn+型半導体領域とp+型半導体領域をそれぞれイオン注入により形成する。これにより、n型半導体領域NSを、低不純物濃度のn−型半導体領域と高不純物濃度のn+型半導体領域とからなるLDD構造のn型半導体領域とすることができ、また、p型半導体領域PSを、低不純物濃度のp−型半導体領域と高不純物濃度のp+型半導体領域とからなるLDD構造のp型半導体領域とすることができる。
次に、これまでのイオン注入で導入した不純物の活性化のためのアニール処理(熱処理)を行う。
このようにして、周辺回路形成領域1Aの半導体基板SBに、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETが形成される。ゲート電極G1とゲート電極G1の下のゲート絶縁膜GFとn型半導体領域NSとは、nチャネル型MISFETのゲート電極とゲート絶縁膜とソース・ドレイン領域として機能する。また、ゲート電極G2とゲート電極G2の下のゲート絶縁膜GFとp型半導体領域PSとは、pチャネル型MISFETのゲート電極とゲート絶縁膜とソース・ドレイン領域として機能する。
次に、サリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)技術により、n型半導体領域NS、p型半導体領域PSおよびゲート電極G1,G2の各上部(表層部)などに、低抵抗の金属シリサイド層(図示せず)を形成することもできる。例えば、金属シリサイド層形成用の金属膜を半導体基板SB上に形成してから、熱処理を行うことにより、その金属膜をn型半導体領域NS、p型半導体領域PSおよびゲート電極G1,G2の各上層部分と反応させてから、金属膜の未反応部分を除去する。これにより、n型半導体領域NS、p型半導体領域PSおよびゲート電極G1,G2の各上部(表層部)に、それぞれ金属シリサイド層(図示せず)を形成することができる。この金属シリサイド層を形成することにより、n型半導体領域NS、p型半導体領域PSおよびゲート電極G1,G2のコンタクト抵抗や拡散抵抗などを低抵抗化することができる。また、この金属シリサイド層は形成しなくともよく、あるいは、n型半導体領域NS、p型半導体領域PSおよびゲート電極G1,G2のうち、金属シリサイド層を形成するものと、形成しないものとを設けることもできる。
次に、図9に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、層間絶縁膜IL1を形成する。層間絶縁膜IL1は、半導体基板SBに形成したMISFETを覆うように形成される。すなわち、層間絶縁膜IL1は、半導体基板SBの主面上に、n型半導体領域NS、p型半導体領域PSおよびゲート電極G1,G2を覆うように形成される。層間絶縁膜IL1は、半導体基板SBの主面全面上に形成されるため、周辺回路形成領域1Aとトランス形成領域1Bの両方に形成される。層間絶縁膜IL1は、例えば、酸化シリコン膜の単体膜や、あるいは、窒化シリコン膜と該窒化シリコン膜よりも厚い酸化シリコン膜との積層膜(窒化シリコン膜が下層側で酸化シリコン膜が上層側)などからなる。
層間絶縁膜IL1の成膜後、必要に応じて、層間絶縁膜IL1の表面(上面)をCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により研磨するなどして、層間絶縁膜IL1の上面を平坦化する。下地段差に起因して層間絶縁膜IL1の表面に凹凸形状が形成されていても、層間絶縁膜IL1の表面をCMP法により研磨することにより、その表面が平坦化された層間絶縁膜IL1を得ることができる。
次に、層間絶縁膜IL1上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成したフォトレジスト層(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、層間絶縁膜IL1をドライエッチングすることにより、層間絶縁膜IL1にコンタクトホール(貫通孔、孔)を形成する。それから、このコンタクトホール内に導電膜を埋め込むことにより、図10に示されるように、導電性のプラグ(接続用導体部)V1を形成する。
プラグV1を形成するには、例えば、コンタクトホールの内部(底部および側壁上)を含む層間絶縁膜IL1上に、スパッタリング法またはプラズマCVD法などによりバリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、タングステン膜などからなる主導体膜をCVD法などによってバリア導体膜上にコンタクトホールを埋めるように形成する。その後、コンタクトホールの外部(層間絶縁膜IL1上)の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去する。これにより、層間絶縁膜IL1の上面が露出し、層間絶縁膜IL1のコンタクトホール内に埋め込まれて残存するバリア導体膜および主導体膜により、プラグV1が形成される。図10では、図面の簡略化のために、プラグV1は、主導体膜とバリア導体膜を一体化して示してある。プラグV1は、その底部で、n型半導体領域NS、p型半導体領域PS、ゲート電極G1またはゲート電極G2などと電気的に接続される。
次に、図11に示されるように、プラグV1が埋め込まれた層間絶縁膜IL1上に、最下層の配線層である第1配線層の配線M1を形成する。配線M1を形成するには、まず、プラグV1が埋め込まれた層間絶縁膜IL1上に、第1配線層用の導電膜を形成する。この導電膜は、例えば、下から順に、バリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)とアルミニウム膜とバリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)との積層膜からなり、スパッタリング法などを用いて形成することができる。この導電膜における前記アルミニウム膜は、配線M1を形成するためのアルミニウム膜とみなすことができる。それから、この導電膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、配線M1を形成することができる。プラグV1は、その上面が配線M1に接することで、配線M1と電気的に接続される。
配線M1を形成するための上記アルミニウム膜は、純アルミニウム膜に限定されず、アルミニウムを主成分とする導電材料膜(但し金属伝導を示す導電材料膜)を用いることができる。例えば、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)との化合物膜または合金膜、あるいは、Al(アルミニウム)とCu(銅)との化合物膜または合金膜、あるいは、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)とCu(銅)との化合物膜または合金膜を、配線M1を形成するためのアルミニウム膜として好適に用いることができる。また、このアルミニウム膜におけるAl(アルミニウム)の組成比は50原子%より大きい(すなわちAlリッチである)ことが好適である。このことは、配線M1を形成するための上記アルミニウム膜だけでなく、配線M2を形成するためのアルミニウム膜(すなわち後述の導電膜CD1を構成するアルミニウム膜)や、配線M3を形成するためのアルミニウム膜(すなわち後述の導電膜CD2を構成するアルミニウム膜)についても同様である。
また、第1配線層の配線M1は、周辺回路形成領域1Aに形成するだけでなく、更にトランス形成領域1Bに形成することもできる。トランス形成領域1Bに形成する配線M1としては、例えば、コイルCL1と周辺回路(上記送信回路TX1または送信回路TX2など)とを電気的に接続する配線(後述の引出配線HW1,HW2に相当する配線)などがある。
また、ここでは配線M1を、導電膜をパターニングする手法で形成した場合について説明した。他の形態として、配線M1を、ダマシン法により形成することもできる。この場合、プラグV1が埋め込まれた層間絶縁膜IL1上に絶縁膜を形成してから、その絶縁膜に配線溝を形成し、その配線溝に導電膜を埋め込むことで、埋込配線(例えば埋込銅配線)としての配線M1を形成することができる。
次に、図12に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち層間絶縁膜IL1上に、配線M1を覆うように、層間絶縁膜IL2を形成する。層間絶縁膜IL2は、酸化シリコン膜などからなり、CVD法などを用いて形成することができる。層間絶縁膜IL2の成膜後、必要に応じて、層間絶縁膜IL2の表面(上面)をCMP法により研磨するなどして、層間絶縁膜IL2の上面の平坦性を高めることもできる。
次に、層間絶縁膜IL2上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成したフォトレジスト層(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、層間絶縁膜IL2をドライエッチングすることにより、層間絶縁膜IL2にスルーホール(貫通孔、孔)を形成する。それから、このスルーホール内に導電膜を埋め込むことにより、導電性のビア部(接続用導体部)V2を形成する。ビア部V2は、導電性のプラグとみなすこともできる。ビア部V2は、プラグV1と同様の手法により形成することができるが、ビア部V2は、プラグV1と、導電膜の材料を異ならせることもできる。例えば、プラグV1は、タングステン膜を主体とし、ビア部V2は、アルミニウム膜を主体とすることもできる。
次に、ビア部V2が埋め込まれた層間絶縁膜IL2上に、第2配線層の配線M2を形成する。配線M2を形成するには、まず、図13に示されるように、ビア部V2が埋め込まれた層間絶縁膜IL2上に、第2配線層用の導電膜CD1を形成する。この導電膜CD1は、例えば、下から順に、バリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)とアルミニウム膜とバリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)との積層膜からなり、スパッタリング法などを用いて形成することができる。導電膜CD1は、第2配線層用の導電膜であるが、コイルCL1形成用の導電膜を兼ねている。それから、この導電膜CD1をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、図14に示されるように、配線M2およびコイルCL1を形成することができる。配線M2およびコイルCL1は、それぞれ、パターニングされた導電膜CD1からなる。ビア部V2は、その下面が配線M1に接することで配線M1と電気的に接続され、その上面が配線M2に接することで配線M2と電気的に接続される。すなわち、ビア部V2は、配線M1と配線M2とを電気的に接続している。
ここで、トランス形成領域1Bにおいては、コイルCL1を第2配線層の配線M2と同層に同工程で形成している。すなわち、第2配線層用の導電膜CD1をパターニングする際、トランス形成領域1Bにおいては、コイルCL1を形成する。つまり、第2配線層用の導電膜CD1は、コイルCL1形成用の導電膜を兼ねており、導電膜CD1を形成してから、この導電膜CD1をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、第2配線層の配線M2とコイルCL1とが形成される。
また、ここでは、ビア部V2と配線M2とを別工程で形成する場合について説明した。他の形態として、ビア部V2と配線M2とを同工程で形成することもでき、この場合、ビア部V2は配線M2またはコイルCL1と一体的に形成される。この場合、層間絶縁膜IL2にビア部V2用のスルーホールを形成した後、このスルーホールを埋めるように層間絶縁膜IL2上に導電膜CD1を形成してから、この導電膜CD1をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、配線M2およびコイルCL1を形成する。これにより、配線M2およびコイルCL1が形成されるとともに、配線M2またはコイルCL1と一体的に形成されたビア部V2も形成されることになる。
また、ここでは配線M2およびコイルCL1を、導電膜をパターニングする手法で形成した場合について説明した。他の形態として、配線M2およびコイルCL1を、ダマシン法により形成することもできる。この場合、層間絶縁膜IL2上に絶縁膜を形成してから、その絶縁膜に配線溝を形成し、その配線溝に導電膜を埋め込むことで、埋込配線(例えば埋込銅配線)としての配線M2とコイルCL1とを形成することができる。あるいは、層間絶縁膜IL2に配線溝を形成し、その配線溝に導電膜を埋め込むことで、埋込配線(例えば埋込銅配線)としての配線M2とコイルCL1とを形成することもできる。
次に、図15に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち層間絶縁膜IL2上に、配線M2を覆うように、層間絶縁膜IL3を形成する。層間絶縁膜IL3は、酸化シリコン膜などからなり、CVD法などを用いて形成することができる。層間絶縁膜IL3の成膜後、必要に応じて、層間絶縁膜IL3の表面(上面)をCMP法により研磨するなどして、層間絶縁膜IL3の上面の平坦性を高めることもできる。
次に、層間絶縁膜IL3上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成したフォトレジスト層(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、層間絶縁膜IL3をドライエッチングすることにより、層間絶縁膜IL3にスルーホール(貫通孔、孔)を形成する。それから、このスルーホール内に導電膜を埋め込むことにより、導電性のビア部(接続用導体部)V3を形成する。ビア部V3は、導電性のプラグとみなすこともできる。ビア部V3は、ビアV2と同様の導電材料により同様の手法で形成することができる。
次に、ビア部V3が埋め込まれた層間絶縁膜IL3上に、第3配線層の配線M3を形成する。配線M3を形成するには、まず、図16に示されるように、ビア部V3が埋め込まれた層間絶縁膜IL3上に、第3配線層用の導電膜CD2を形成する。この導電膜CD2は、例えば、下から順に、バリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)とアルミニウム膜とバリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)との積層膜からなり、スパッタリング法などを用いて形成することができる。導電膜CD2は、第3配線層用の導電膜であるが、パッドPD1形成用の導電膜を兼ねている。それから、この導電膜CD2をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、図17に示されるように、配線M3およびパッドPD1を形成することができる。配線M3およびパッドPD1は、それぞれ、パターニングされた導電膜CD2からなる。ビア部V3は、その下面が配線M2に接することで配線M2と電気的に接続され、その上面が配線M3またはパッドPD1に接することで配線M3またはパッドPD1と電気的に接続される。すなわち、ビア部V3は、配線M2と配線M3とを電気的に接続するか、あるいは配線M2とパッドPD1とを電気的に接続している。
また、ここでは、ビア部V3と配線M3とを別工程で形成する場合について説明した。他の形態として、ビア部V3と配線M3およびパッドPD1とを同工程で形成することもでき、この場合、ビア部V3は配線M3またはパッドPD1と一体的に形成される。この場合、層間絶縁膜IL3にビア部V3用のスルーホールを形成した後、このスルーホールを埋めるように層間絶縁膜IL3上に導電膜CD2を形成してから、この導電膜CD2をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、配線M3およびパッドPD1を形成する。これにより、配線M3およびパッドPD1が形成されるとともに、配線M3またはパッドPD1と一体的に形成されたビア部V3も形成されることになる。
パッドPD1の平面形状は、例えば、配線M3の配線幅よりも大きな辺を有する略矩形状の平面形状とすることができる。パッドPD1は、好ましくは、アルミニウムを主体とするアルミニウムパッドであり、配線M3は、好ましくは、アルミニウムを主体とするアルミニウム配線である。
なお、アルミニウムパッドおよびアルミニウム配線に用いているアルミニウム膜としては、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)との化合物膜または合金膜、あるいは、Al(アルミニウム)とCu(銅)との化合物膜または合金膜、あるいは、Al(アルミニウム)とSi(シリコン)とCu(銅)との化合物膜または合金膜などを好適に用いることができる。Al(アルミニウム)の組成比は50原子%より大きい(すなわちAlリッチである)ことが好適である。
次に、図18に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち層間絶縁膜IL3上に、配線M3およびパッドPD1を覆うように、酸化シリコン膜LF1を形成する。酸化シリコン膜LF1は、CVD法などにより形成することができる。酸化シリコン膜LF1の成膜法として、HDP(High Density Plasma:高密度プラズマ)−CVD法は、特に好適である。酸化シリコン膜LF1の厚み(形成膜厚)は、例えば1〜6μm程度とすることができる。
酸化シリコン膜LF1を成膜する前の段階では、配線M3およびパッドPD1は露出されていたが、酸化シリコン膜LF1を成膜すると、配線M3およびパッドPD1は、酸化シリコン膜LF1で覆われるため、露出していない状態になる。
次に、図19に示されるように、酸化シリコン膜LF1に開口部OP1aを形成する。開口部OP1aは、パッドPD1上の酸化シリコン膜LF1を選択的に除去することにより形成され、開口部OP1aが平面視でパッドPD1に内包されるように形成される。例えば、酸化シリコン膜LF1を成膜した後、酸化シリコン膜LF1上にフォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジストパターン(図示せず)を形成し、このフォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いて、酸化シリコン膜LF1をドライエッチングすることにより、酸化シリコン膜LF1に開口部OP1aを形成することができる。開口部OP1aは、酸化シリコン膜LF1を貫通するように形成され、開口部OP1aからパッドPD1の少なくとも一部が露出される。
酸化シリコン膜LF1に開口部OP1aを形成すると、パッドPD1は酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aから露出されるが、この際、パッドPD1の上面の少なくとも一部が酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aから露出されるのに対して、パッドPD1の側面(側壁)は、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aから露出されずに、酸化シリコン膜LF1で覆われていることが好ましい。つまり、平面視において、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aは、パッドPD1と重なっているが、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aはパッドPD1に内包されていることが好ましく、すなわち、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの外周は、パッドPD1の外周よりも内側にあることが好ましい。また、酸化シリコン膜LF1に開口部OP1aを形成すると、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aからパッドPD1が露出されるが、パッドPD1以外の配線M3は、酸化シリコン膜LF1で覆われた状態が維持されるため、露出されない。パッドPD1以外の配線M3は、これ以降も酸化シリコン膜LF1で覆われた状態が維持されるため、露出されない。
なお、「平面視」とは、半導体基板SBの主面に平行な平面で見た場合を言うものとする。
次に、図20に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち酸化シリコン膜LF1上に、窒化シリコン膜LF2を形成する。窒化シリコン膜LF2は、CVD法などにより形成することができる。窒化シリコン膜LF2の成膜法として、プラズマCVD法は、特に好適である。窒化シリコン膜LF2の厚み(形成膜厚)は、例えば0.5〜3μm程度とすることができる。
窒化シリコン膜LF2は、半導体基板SBの主面全面に形成するため、酸化シリコン膜LF1上と、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aから露出するパッドPD1上とに形成されることになる。窒化シリコン膜LF2を成膜する前の段階では、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aからパッドPD1が露出されていたが、窒化シリコン膜LF2を成膜すると、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aから露出されていたパッドPD1は、窒化シリコン膜LF2で覆われるため、露出していない状態になる。
次に、図21に示されるように、窒化シリコン膜LF2に開口部OP1bを形成する。開口部OP1bは、パッドPD1上の窒化シリコン膜LF2を選択的に除去することにより形成され、開口部OP1bが平面視でパッドPD1に内包されるように形成される。例えば、窒化シリコン膜LF2を成膜した後、窒化シリコン膜LF2上にフォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジストパターン(図示せず)を形成し、このフォトレジストパターンをエッチングマスクとして用いて、窒化シリコン膜LF2をドライエッチングすることにより、窒化シリコン膜LF2に開口部OP1bを形成することができる。開口部OP1bは、窒化シリコン膜LF2を貫通するように形成され、開口部OP1bからパッドPD1の少なくとも一部が露出される。
図21と上記図4および図5からも分かるように、開口部OP1bは、平面視で開口部OP1aに内包されるように形成される。すなわち、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの平面寸法(平面積)は、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの平面寸法(平面積)よりも小さく、平面視において、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bは酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aに内包されている。換言すれば、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの平面寸法(平面積)は、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの平面寸法(平面積)よりも大きく、平面視において、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aは、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bを内包している。つまり、平面視において、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bは、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aと重なっており、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの外周は、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの外周の内側にある。
このため、窒化シリコン膜LF2を成膜した段階で、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁は、窒化シリコン膜LF2で覆われた状態になり、その後で窒化シリコン膜LF2に開口部OP1bを形成しても、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁は、窒化シリコン膜LF2で覆われた状態のままである。
すなわち、平面視において、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bが酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aからはみ出ている場合は、窒化シリコン膜LF2に開口部OP1bを形成すると、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁が窒化シリコン膜LF2で覆われずに露出されることになる。それに対して、本実施の形態のように、平面視において、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bが酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aに内包されている場合は、窒化シリコン膜LF2に開口部OP1bを形成しても、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁は、窒化シリコン膜LF2で覆われた状態となっている。このため、パッドPD1を形成している平面領域において、酸化シリコン膜LF1は、窒化シリコン膜LF2で覆われているため露出されておらず、この状態は、開口部OP1b形成時およびそれ以降も維持される。すなわち、窒化シリコン膜LF2の成膜後は、酸化シリコン膜LF1は露出されない。
また、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁はテーパを有していることが好ましい。これにより、後で窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁上に再配線RWを形成しやすくなる。
また、窒化シリコン膜LF2の上面には、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁に起因した段差部DSが形成されている。この段差部DSは、後で樹脂膜LF3を形成しかつ樹脂膜LF3に開口部OP1cを形成した段階で、樹脂膜LF3で覆われていることが、より好ましい。これにより、後で再配線RWを形成する際に、下地に段差が少なくなるため、再配線RWを形成しやすくなる。
次に、図22に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち窒化シリコン膜LF2上に、樹脂膜LF3を形成する。樹脂膜LF3は、半導体基板SBの主面全面に形成するため、窒化シリコン膜LF2上と、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bから露出するパッドPD1上とに形成されることになる。
樹脂膜LF3としては、ポリイミド膜などを好適に用いることができる。樹脂膜LF3は、例えば塗布法により形成することができる。具体的には、いわゆるスピンコート(回転塗布)法を用い、半導体基板SBを回転させながら半導体基板SBの主面にポリイミドの前駆体液を塗布した後、これを乾燥させることにより、樹脂膜LF3としてのポリイミド膜を形成することができる。樹脂膜LF3の厚み(形成膜厚)は、例えば1〜20μm程度とすることができる。
樹脂膜LF3は、半導体基板SBの主面全面に形成するため、窒化シリコン膜LF2上と、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bから露出するパッドPD1上とに形成されることになる。樹脂膜LF3を成膜する前の段階では、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bからパッドPD1が露出されていたが、樹脂膜LF3を成膜すると、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bから露出されていたパッドPD1は、樹脂膜LF3で覆われるため、露出していない状態になる。
次に、図23に示されるように、樹脂膜LF3に開口部OP1cを形成する。開口部OP1cは、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、樹脂膜LF3を感光性樹脂膜として形成しておき、この感光性樹脂からなる樹脂膜LF3を露光、現像することにより、開口部OP1cとなる部分の樹脂膜LF3を選択的に除去することで、樹脂膜LF3に開口部OP1cを形成する。その後、熱処理を施して、樹脂膜LF3を硬化させる。開口部OP1cは、樹脂膜LF3を貫通するように形成され、開口部OP1cからパッドPD1の少なくとも一部が露出される。
また、他の形態として、樹脂膜LF3上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成したフォトレジスト層をエッチングマスクとして用いて、樹脂膜LF3をドライエッチングすることにより、樹脂膜LF3に開口部OP1cを形成することもでき、その場合は、樹脂膜LF3は感光性樹脂膜でなくともよい。
図23と上記図4および図5からも分かるように、開口部OP1cは、平面視で開口部OP1bを内包するように形成される。すなわち、樹脂膜LF3の開口部OP1cの平面寸法(平面積)は、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの平面寸法(平面積)よりも大きく、平面視において、樹脂膜LF3の開口部OP1cは、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bを内包している。換言すれば、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの平面寸法(平面積)は、樹脂膜LF3の開口部OP1cの平面寸法(平面積)よりも小さく、平面視において、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bは、樹脂膜LF3の開口部OP1cに内包されている。つまり、平面視において、樹脂膜LF3の開口部OP1cは、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bと重なっており、樹脂膜LF3の開口部OP1cの外周は、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの外側にある。
このため、樹脂膜LF3を成膜した段階で、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁は、樹脂膜LF3で覆われた状態になるが、その後で樹脂膜LF3に開口部OP1cを形成すると、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁は、樹脂膜LF3で覆われずに露出された状態になる。
すなわち、平面視において、樹脂膜LF3の開口部OP1cが窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bに内包されている場合は、樹脂膜LF3に開口部OP1cを形成しても、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁が樹脂膜LF3で覆われた状態のままになる。それに対して、本実施の形態のように、平面視において、樹脂膜LF3の開口部OP1cが窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bを内包している場合は、樹脂膜LF3に開口部OP1cを形成すると、窒化シリコン膜LF2に開口部OP1bの内壁は、樹脂膜LF3で覆われずに露出した状態となる。
また、樹脂膜LF3の開口部OP1cの内壁はテーパを有していることが好ましい。これにより、後で樹脂膜LF3の開口部OP1cの内壁上に再配線RWを形成しやすくなる。
このようにして、パッドPD1の少なくとも一部を露出する開口部OP1を有する積層膜(積層絶縁膜)LFが形成される。積層膜LFの開口部OP1からパッドPD1の表面が露出されるが、パッドPD1の一部は、すなわちパッドPD1において平面視で開口部OP1と重ならない部分は、積層膜LFで覆われた状態になっている。具体的には、パッドPD1の中央部は積層膜LFで覆われず、かつ、パッドPD1の外周部は積層膜LFで覆われた状態になっている。この状態は、以降の工程でも維持される。
積層膜LFは、酸化シリコン膜LF1と窒化シリコン膜LF2と樹脂膜LF3とからなる。積層膜LFは、パッドPD1の少なくとも一部を露出する開口部OP1を有しているが、この開口部OP1は、樹脂膜LF3の開口部OP1cと、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bと、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aとにより形成されている。
但し、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁は窒化シリコン膜LF2で覆われているため、積層膜LFの開口部OP1の内壁は、樹脂膜LF3の開口部OP1cの内壁と、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁と、開口部OP1cの内壁と開口部OP1bの内壁との間に位置しかつ樹脂膜LF3で覆われていない窒化シリコン膜LF2の上面とにより、形成されることになる。
このように、図7〜図23のようにして、半導体基板SBに対してウエハ・プロセスを施す。ウエハ・プロセスは、前工程とも呼ばれる。ここでウエハ・プロセスは、一般的に、半導体ウエハ(半導体基板SB)の主面上に種々の素子(ここではMISFETなど)や配線層(ここでは配線M1,M2,M3)およびパッド電極(ここではパッドPD1)を形成し、表面保護膜(ここでは積層膜LF)を形成した後、半導体ウエハに形成された複数のチップ領域の各々の電気的試験をプローブ等により行える状態にするまでの工程を言う。半導体ウエハの各チップ領域は、半導体ウエハにおいて、そこから1つの半導体チップが取得される領域に対応している。
このため、積層膜LFは、ウエハ・プロセスを施した半導体ウエハにおいては、最上層となり、表面保護膜となる。また、第3配線層の配線M3が最上層配線となり、この第3配線層により、パッドPD1が形成されている。
積層膜LFの開口部OP1から露出されたパッドPD1を利用して、プローブテスト(ウエハテスト)を行うことにより、半導体ウエハ(半導体基板SB)の各チップ領域の電気的試験を行うことができる。具体的には、半導体ウエハ(半導体基板SB)の各チップ領域において、積層膜LFの開口部OP1から露出されたパッドPD1にテスト用のプローブ(プローブ針、探針)を当てて各チップ領域の電気的試験を行う。このプローブテストの結果により、半導体ウエハ(半導体基板SB)の各チップ領域が良品であるか不良品であるかを選別したり、あるいは、プローブテストの測定結果のデータを各製造工程にフィードバックすることにより、歩留まり向上や信頼性向上に役立てることができる。このため、プローブテストは、省略することも可能であるが、行うことがより好ましい。
上記のようなウエハ・プロセス(前処理)工程によって上記図23の構造が得られた後、必要に応じてプローブテストを行ってから、図24に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち、積層膜LFの開口部OP1から露出するパッドPD1上を含む積層膜LF上に、シード膜(シード層)SEを形成する。シード膜SEは、後で電解メッキ用のシード層(給電層)として機能させる膜である。
シード膜SEは、例えばクロム(Cr)膜と該クロム(Cr)膜上の銅(Cu)膜との積層膜などからなり、例えばスパッタリング法によって形成することができる。これにより、開口部OP1の底部で露出するパッドPD1上と開口部OP1の内壁上とを含む積層膜LF上にシード膜SEが形成される。開口部OP1を除けば、積層膜LFの表面は樹脂膜LF3であるため、樹脂膜LF3上に、樹脂膜LF3に接するように、シード膜SEが形成される。
シード膜SEの膜厚は、例えば、クロム(Cr)膜が75nm程度で、銅(Cu)膜が250nm程度とすることができる。また、シード膜SEのうちの下層側のクロム(Cr)膜は、バリア導体膜として機能することができ、例えば、銅の拡散防止機能や、樹脂膜LF3との接着性を向上する機能を有しているが、クロム(Cr)膜に限定されるものではなく、例えばチタン(Ti)膜、チタンタングステン(TiW)膜、窒化チタン(TiN)膜またはタングステン(W)膜などを用いることもできる。
次に、シード膜SE上にレジスト膜(フォトレジスト膜)を形成してから、フォトリソグラフィ法を用いて(具体的には露光、現像を行って)このレジスト膜をパターニングすることで、図25に示されるように、パターニングされたレジスト膜からなるレジストパターン(フォトレジストパターン)PR1をシード膜SE上に形成する。
このレジストパターンPR1は、再配線RW、パッドPD2、コイルCL2およびパッドPD3を形成すべき領域以外の領域に形成され、再配線RWを形成する予定の領域と、パッドPD2を形成する予定の領域と、コイルCL2を形成する予定の領域と、パッドPD3を形成する予定の領域とでは、シード膜SEが露出する。すなわち、レジストパターンPR1は、再配線RWを形成する予定の領域と、パッドPD2を形成する予定の領域と、コイルCL2を形成する予定の領域と、パッドPD3を形成する予定の領域とに開口部(溝)を有している。
次に、図26に示されるように、レジストパターンPR1の開口部(溝)から露出するシード膜SE上に銅(Cu)膜CFを電解メッキ法により形成する。これにより、銅膜CFが、レジストパターンPR1によって覆われていない領域のシード膜SE上に選択的に形成される。銅膜CFの膜厚は、例えば4〜10μm程度とすることができる。銅膜CFは、再配線RWを形成する予定の領域と、パッドPD2を形成する予定の領域と、コイルCL2を形成する予定の領域と、パッドPD3を形成する予定の領域とに形成される。
次に、銅膜CF上を含むレジストパターンPR1上に他のレジスト膜(フォトレジスト膜)を形成してから、フォトリソグラフィ法を用いて(具体的には露光、現像を行って)このレジスト膜をパターニングすることで、図27に示されるように、パターニングされたレジスト膜からなるレジストパターン(フォトレジストパターン)PR2を形成する。
このレジストパターンPR2は、パッドPD2における下地金属膜UMを形成すべき領域以外の領域に形成され、下地金属膜UMを形成する予定の領域では、銅膜CFが露出する。すなわち、レジストパターンPR2は、下地金属膜UMを形成する予定の領域に開口部を有している。
次に、図27に示されるように、レジストパターンPR2の開口部から露出する銅膜CF上に下地金属膜UMを電解メッキ法により形成する。これにより、下地金属膜UMが、レジストパターンPR2によって覆われていない領域の銅膜CF上に形成される。下地金属膜UMは、パッドPD2となる部分の銅膜CF上と、パッドPD3となる部分の銅膜CF上とに形成される。下地金属膜UMは、例えばニッケル(Ni)膜と該ニッケル(Ni)膜上の金(Au)膜との積層膜などからなる。このときのニッケル(Ni)膜の膜厚は、例えば1.5μm程度とすることができ、金(Au)膜の膜厚は、例えば2μm程度とすることができる。
次に、図28に示されるように、レジストパターンPR2とレジストパターンPR1とを除去する。これにより、銅膜CFが露出されるとともに、銅膜CFが形成されていない領域のシード膜SE(すなわち銅膜CFで覆われていない部分のシード膜SE)も露出される。
また、本実施の形態では、銅膜CFを形成した後、レジストパターンPR1を除去せずにレジストパターンPR2を形成してから、下地金属膜UMを形成し、その後にレジストパターンPR2,PR1を除去する場合について説明した。他の形態として、銅膜CFを形成した後、レジストパターンPR1を除去してからレジストパターンPR2を形成し、その後に下地金属膜UMを形成してからレジストパターンPR2を除去することもできる。
次に、図29に示されるように、銅膜CFで覆われていない部分のシード膜SEをエッチングにより除去する。この際、銅膜CFで覆われていない部分のシード膜SE、すなわち銅膜CFの下に位置するシード膜SEは、除去されずに残存する。この際のエッチングは、銅膜CFで覆われていない部分のシード膜SEは除去されるが、銅膜CFや下地金属膜UMは過剰にエッチングされない程度のエッチングとすることが好ましい。
このようにして、シード膜SEおよび銅膜CFからなる再配線RW、パッドPD2、コイルCL2およびパッドPD3が形成される。すなわち、再配線RW、パッドPD2、コイルCL2およびパッドPD3は、それぞれ、シード膜SEとシード膜SE上の銅膜CFとの積層膜からなる。
再配線RW、パッドPD2、コイルCL2およびパッドPD3は、積層膜LFの樹脂膜LF3上に形成される。但し、再配線RWは、開口部OP1から露出されたパッドPD1上を含む積層膜LF上に形成され、パッドPD1と電気的に接続されている。再配線RWは、パッドPD2にも接続されており、具体的には、パッドPD2は再配線RWと一体的に形成されている。このため、パッドPD1とパッドPD2とは、再配線RWを介して電気的に接続されている。また、コイルCL2は、パッドPD3に接続されており、具体的には、パッドPD3はコイルCL2と一体的に形成されている。
なお、パッドPD2を構成する銅膜CF上と、パッドPD3を構成する銅膜CF上とには、下地金属膜UMが形成されている。パッドPD2上の下地金属膜UMを、パッドPD2の一部と捉えることもでき、また、パッドPD3上の下地金属膜UMを、パッドPD3の一部と捉えることもできる。
また、本実施の形態では、再配線RWの主材料として銅(Cu)を用いた場合(すなわち再配線RWの主導体膜として銅膜CFを用いた場合)について説明した。他の形態として、再配線RWの主材料として金(Au)を用いることもできる(すなわち再配線RWの主導体膜として銅膜CFの代わりに金膜を用いることもできる)。パッドPD2、コイルCL2およびパッドPD3は、再配線RWと同層の導電膜により形成されるため、再配線RWの主材料として銅(Cu)を用いた場合は、パッドPD2、コイルCL2およびパッドPD3の主材料も銅(Cu)となり、再配線RWの主材料として金(Au)を用いた場合は、パッドPD2、コイルCL2およびパッドPD3の主材料も金(Au)となる。再配線RWの主材料として金(Au)を用いた場合は、金(Au)は耐腐食性に優れているため、耐腐食性を向上することができる。一方、本実施の形態のように、再配線RWの主材料として銅(Cu)を用いた場合は、銅(Cu)は低抵抗で、安価であるため、性能向上と製造コストの低減を図ることができる。
次に、図30に示されるように、半導体基板SBの主面(主面全面)上に、すなわち積層膜LF上に、再配線RW、パッドPD2、コイルCL2およびパッドPD3を覆うように、絶縁性の保護膜(表面保護膜、絶縁膜、保護絶縁膜)PAを形成する。保護膜PAとしては、樹脂膜が好ましく、例えばポリイミド膜を好適に用いることができる。
保護膜PAは、例えば塗布法により形成することができる。具体的には、いわゆるスピンコート(回転塗布)法を用い、半導体基板SBを回転させながら半導体基板SBの主面にポリイミドの前駆体液を塗布した後、これを乾燥させることにより、保護膜PAとしてのポリイミド膜を形成することができる。
次に、図31に示されるように、保護膜PAに開口部OP2,OP3を形成する。開口部OP2,OP3は、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、保護膜PAを感光性樹脂膜として形成しておき、この感光性樹脂からなる保護膜PAを露光、現像することにより、開口部OP2,OP3となる部分の保護膜PAを選択的に除去することで、保護膜PAに開口部OP2および開口部OP3を形成する。その後、熱処理を施して、保護膜PAを硬化させる。開口部OP2および開口部OP3は、保護膜PAを貫通するように形成され、開口部OP2からパッドPD2の少なくとも一部が露出され、開口部OP3からパッドPD3の少なくとも一部が露出される。パッドPD2,PD3上に下地金属膜UMを形成していた場合は、開口部OP2からパッドPD2上の下地金属膜UMが露出し、開口部OP3からパッドPD3上の下地金属膜UMが露出する。
半導体パッケージを製造する際に、パッドPD2,PD3に対してワイヤボンディングを行う場合は、開口部OP2,OP3からそれぞれ露出する下地金属膜UMに対して後述のボンディングワイヤBWが接続される。下地金属膜UMを設けることで、パッドPD2,PD3に対するボンディングワイヤ(BW)などの導電性接続部材の接続が容易かつ的確に行えるようになる。
また、他の形態として、保護膜PA上にフォトリソグラフィ技術を用いて形成したフォトレジスト層をエッチングマスクとして用いて、保護膜PAをドライエッチングすることにより、保護膜PAに開口部OP2を形成することもでき、その場合は、保護膜PAは感光性樹脂膜でなくともよい。
パッドPD2,PD3(あるいはパッドPD2,PD3上の下地金属膜UM)は保護膜PAの開口部OP2,OP3から露出されるが、再配線RWおよびコイルCL2は、保護膜PAにより被覆されて保護される。最上層の保護膜PAをポリイミド樹脂などのような樹脂膜(有機系絶縁膜)とすることで、比較的軟らかい樹脂膜(有機系絶縁膜)を最上層として半導体チップの取り扱いを容易にすることができる。
その後、半導体基板SBを切断(ダイシング)して複数の半導体チップに分割(個片化)する。これにより、半導体基板SB(半導体ウエハ)の各チップ領域から半導体チップが取得される。なお、ダイシングの前に、半導体基板SBの裏面研削を行い、半導体基板SBを薄膜化してもよい。
<半導体装置(半導体チップ)の主要な特徴と効果について>
本実施の形態では、半導体装置(半導体チップ)は、半導体基板SB上に第1絶縁膜(ここでは層間絶縁膜IL1,IL2)を介して形成されたコイルCL1と、半導体基板SB上に第1絶縁膜およびコイルCL1を覆うように形成された第2絶縁膜(ここでは層間絶縁膜IL3)と、第2絶縁膜上に形成されかつコイルCL1とは平面視で重ならない位置に配置されたパッドPD1とを有している。更に、第2絶縁膜上に形成された積層膜LFであって、パッドPD1を露出する開口部OP1を有する積層膜LFと、積層膜LF上に形成されかつコイルCL1の上方に配置されたコイルCL2と、開口部OP1から露出されたパッドPD1上を含む積層膜LF上に形成されかつパッドPD1と電気的に接続された再配線RW(第1配線)とを有している。コイルCL1とコイルCL2とは、導体では接続されずに磁気的に結合されている。
本実施の形態の主要な特徴のうちの一つは、積層膜LFが、酸化シリコン膜LF1と、酸化シリコン膜LF1上の窒化シリコン膜LF2と、窒化シリコン膜LF2上の樹脂膜LF3とからなり、酸化シリコン膜LF1と窒化シリコン膜LF2と樹脂膜LF3とは、コイルCL1とコイルCL2との間にも介在していることである。
積層膜LFは、パッドPD1の形成後で、再配線RWおよびコイルCL2の形成前に形成する絶縁膜である。このため、パッドPD1の一部は積層膜LFで覆われており、積層膜LF上にコイルCL2と再配線RWとが形成されている。従って、パッドPD1を用いてテスト工程(プローブテスト)を行う場合には、積層膜LFは最上層の膜(表面保護膜)として機能することができる。パッドPD1の一部は積層膜LFで覆われているが、これは、平面視で開口部OP1と重ならない部分のパッドPD1が積層膜LFで覆われているためであり、具体的には、パッドPD1の中央部は積層膜LFで覆われておらず、パッドPD1の外周部は積層膜LFで覆われている。
本実施の形態では、積層膜LFを、酸化シリコン膜LF1と窒化シリコン膜LF2と樹脂膜LF3とをこの順序で積層した積層膜とすることが重要である。この積層膜LFは、コイルCL1とコイルCL2との間に介在するため、酸化シリコン膜LF1と窒化シリコン膜LF2と樹脂膜LF3とは、コイルCL1とコイルCL2との間に介在することになる。
酸化シリコン膜と窒化シリコン膜と樹脂膜(例えばポリイミド膜)とで絶縁耐圧を比べた場合、酸化シリコン膜が最も絶縁耐圧を高くしやすく、次いで、樹脂膜(例えばポリイミド膜)が絶縁耐圧を高くしやすい。すなわち、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜と樹脂膜(例えばポリイミド膜)とを単位厚み当たりの絶縁耐圧で比べると、酸化シリコン膜が最も高く、次いで、樹脂膜(例えばポリイミド膜)が高くなる。コイルCL1とコイルCL2との間には、大きな電位差が発生する場合があるため、コイルCL1,CL2を有する半導体チップの信頼性や、その半導体チップを含む半導体パッケージの信頼性、あるいはその半導体パッケージを用いた電子装置の信頼性を向上させる上では、コイルCL1とコイルCL2との間の絶縁耐圧をできるだけ高くしておくことが望ましい。このため、コイルCL1とコイルCL2との間に介在する積層膜LFが酸化シリコン膜LF1を含むことにより、コイルCL1とコイルCL2との間の絶縁耐圧を向上させることができる。すなわち、単位厚み当たりの絶縁耐圧が相対的に高い酸化シリコン膜LF1をコイルCL1とコイルCL2との間に介在させることにより、コイルCL1とコイルCL2との間の絶縁耐圧を向上させることができる。
しかしながら、酸化シリコン膜は、吸湿性があるため、酸化シリコン膜は最上層の膜(表面膜)にしたくはない。積層膜LFの表面は、パッドPD1を用いてテスト工程(プローブテスト)を行う場合には、最表面となる。酸化シリコン膜が吸湿してしまうと、半導体装置の信頼性を低下させる虞がある。また、酸化シリコン膜上に樹脂膜(例えばポリイミド膜)を直接形成した場合、樹脂膜(例えばポリイミド膜)中の水分が酸化シリコン膜に拡散して酸化シリコン膜が吸湿してしまう虞がある。
このため、本実施の形態では、酸化シリコン膜LF1を積層膜LFの最上層とはせず、かつ、酸化シリコン膜LF1上に直接には樹脂膜を形成しないようにしている。すなわち、本実施の形態では、酸化シリコン膜LF1上に、酸化シリコン膜LF1に接するように、窒化シリコン膜LF2を形成している。酸化シリコン膜LF1上に窒化シリコン膜LF2を形成したことで、酸化シリコン膜の吸湿を抑制または防止することができる。
コイルCL1とコイルCL2との間の絶縁耐圧を高くするには、コイルCL1とコイルCL2との間に介在する絶縁膜について、単位厚み当たりの絶縁耐圧を高くする観点と、絶縁膜の厚みを厚くする観点とがある。酸化シリコン膜LF1は、単位厚み当たりの絶縁耐圧が高いため、絶縁耐圧向上の観点ではできるだけ厚くしたいが、成膜上、厚みを厚くするのは容易ではない。また、酸化シリコン膜LF1を厚くしすぎると、製造中に半導体基板SB(半導体ウエハ)が反りやすくなる懸念がある。また、窒化シリコン膜は、単位厚み当たりの絶縁耐圧があまり高くないため、窒化シリコン膜で絶縁耐圧を稼ぐことは、絶縁耐圧向上の観点では不利である。このため、本実施の形態では、積層膜LFが樹脂膜LF3も含むことにより、コイルCL1とコイルCL2との間の絶縁耐圧を稼いでいる。すなわち、酸化シリコン膜LF1だけで絶縁耐圧を稼ごうとすると、酸化シリコン膜を厚く形成することの製造上の困難さや、半導体基板SB(半導体ウエハ)の反りの懸念があるが、樹脂膜LF3でも絶縁耐圧を稼ぐようにすれば、そのような懸念を解消できる。但し、酸化シリコン膜の吸湿の懸念があるため、酸化シリコン膜LF1上に樹脂膜LF3を直接形成するのではなく、酸化シリコン膜LF1と樹脂膜LF3との間に窒化シリコン膜LF2を介在させることで、酸化シリコン膜LF1が吸湿しないようにすることができる。
このように、本実施の形態では、積層膜LFが酸化シリコン膜LF1を含むことで絶縁耐圧を向上させている。更に、積層膜LFが樹脂膜LF3も含むことで、絶縁耐圧を更に向上させるとともに、製造上の困難さをなくし、また、製造中に半導体基板SB(半導体ウエハ)が反る問題が生じないようにしている。更に、酸化シリコン膜LF1と樹脂膜LF3との間に窒化シリコン膜LF2を介在させることで、酸化シリコン膜LF1が吸湿する問題が生じないようにしている。このため、積層膜LFを、酸化シリコン膜LF1と窒化シリコン膜LF2と樹脂膜LF3とをこの順序で積層した積層膜とすることが重要である。これにより、コイルCL1,CL2を有する半導体装置(半導体チップ)の信頼性を向上させることができる。また、コイルCL1,CL2を有する半導体チップを含む半導体パッケージ(半導体装置)の信頼性、あるいはその半導体パッケージを用いた電子装置の信頼性を向上させることができる。
また、積層膜LFの最上層を樹脂膜LF3としたことは、パッドPD1を用いてテスト工程(プローブテスト)を行う場合に、そのテスト工程を行いやすく、ハンドリングが行いやすくなるという利点も得られる。すなわち、テスト工程(プローブテスト)において、最表面が樹脂膜LF3となるが、最表面が柔らかい方が、ハンドリングを行いやすい。この観点で、樹脂膜LF3としてポリイミド膜は好適であり、ポリイミド膜は柔らかい(柔軟性がある)ため、テスト工程(プローブテスト)において、最表面がポリイミド膜となっていることで、テスト工程を行いやすく、ハンドリングが行いやすくなる。
また、酸化シリコン膜とポリイミド膜とは、半導体基板(半導体ウエハ)上に形成した場合に、応力の方向が反対であり、従って、半導体基板(半導体ウエハ)の反りの方向が反対である。このため、樹脂膜LF3としてポリイミド膜を用いた場合には、酸化シリコン膜LF1の応力に起因して半導体基板SB(半導体ウエハ)が反るのを、ポリイミド膜の応力により相殺できるため、製造中に半導体基板SB(半導体ウエハ)が反るのを抑制または防止できるという効果も得られる。
また、窒化シリコン膜LF2は、酸化シリコン膜LF1が吸湿するのを防止する役割がある。このため、窒化シリコン膜LF2の厚みは、0.5μm以上であれば、より好ましい。これにより、酸化シリコン膜LF1が吸湿するのを的確に防止することができる。
また、窒化シリコン膜LF2は、酸化シリコン膜LF1に比べて、単位厚み当たりの絶縁耐圧が低いため、窒化シリコン膜LF2よりも酸化シリコン膜LF1で絶縁耐圧を稼ぐ方が、絶縁耐圧向上の観点では有利である。また、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜とを比べると、半導体基板(半導体ウエハ)に形成したときに半導体基板(半導体ウエハ)に反りを発生させやすいのは、窒化シリコン膜である。このため、窒化シリコン膜LF2を厚くしすぎると、半導体基板SB(半導体ウエハ)に反りが発生する懸念がある。
このため、酸化シリコン膜LF1の厚みは、窒化シリコン膜LF2の厚みよりも厚い(大きい)ことが、より好ましい。すなわち、窒化シリコン膜LF2の厚みは、酸化シリコン膜LF1の厚みよりも薄い(小さい)ことが、より好ましい。これにより、コイルCL1とコイルCL2との間の絶縁耐圧を向上できるとともに、半導体基板SB(半導体ウエハ)の反りを抑制または防止することができる。また、この観点で、窒化シリコン膜LF2は、3μm以下であれば、更に好ましい。ここで、酸化シリコン膜LF1の厚みと、窒化シリコン膜LF2の厚みは、コイルCL1とコイルCL2との間における、酸化シリコン膜LF1の厚みと窒化シリコン膜LF2の厚みに対応している。
なお、図35に、酸化シリコン膜LF1の厚みである厚みT1と、窒化シリコン膜LF2の厚みである厚みT2と、樹脂膜LF3の厚みである厚みT3とが示されている。上述のように、酸化シリコン膜LF1の厚みT1は、窒化シリコン膜LF2の厚みT2よりも厚い(大きい)ことが、好ましい(すなわちT1>T2)。
また、積層膜LFは、パッドPD1を露出する開口部OP1を有しており、パッドPD1の中央部は積層膜LFで覆われていないが、パッドPD1の外周部は積層膜LFで覆われている。積層膜LFの開口部OP1は、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aと、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bと、樹脂膜LF3の開口部OP1cとにより形成されている。
本実施の形態では、上記図4および図5にも示されるように、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bが平面視で酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aに内包され、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁が窒化シリコン膜LF2で覆われていることが、より好ましい。これにより、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁においても、酸化シリコン膜LF1の表面が窒化シリコン膜LF2で覆われることになるため、酸化シリコン膜LF1が吸湿するのを、より的確に防止することができる。すなわち、実施の形態とは異なり、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁が窒化シリコン膜LF2で覆われていない場合、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁から酸化シリコン膜LF1が吸湿する懸念がある。それに対して、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁が窒化シリコン膜LF2で覆われていれば、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁から酸化シリコン膜LF1が吸湿するのを防止できるため、酸化シリコン膜LF1の吸湿を、より的確に防止することができる。
また、本実施の形態では、上記図4および図5にも示されるように、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bが平面視で樹脂膜LF3の開口部OP1cに内包され、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁が樹脂膜LF3で覆われていないことが、より好ましい。そうすることで、パッドPD1の露出面積(パッドPD1において積層膜LFの開口部OP1から露出される部分の面積)は、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bにより規定されることになる。これにより、パッドPD1の露出面積の変動を抑制できる。すなわち、窒化シリコン膜に比べると樹脂膜(例えばポリイミド膜)は成膜後の収縮量が大きいため、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bに比べて樹脂膜LF3の開口部OP1cの方が、平面寸法(平面積)が変動しやすい。しかしながら、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁が樹脂膜LF3で覆われないようにしておけば、パッドPD1の露出面積は窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bにより規定されるため、たとえ樹脂膜LF3の収縮量が変動したとしても、パッドPD1の露出面積に影響を与えずに済む。このため、パッドPD1の露出面積の変動を抑制することができる。従って、パッドPD1を利用したテスト工程(プローブテスト)を、より容易かつ的確に行うことができるようになる。
また、本実施の形態では、酸化シリコン膜LF1の開口部OP1aの内壁に起因して形成された窒化シリコン膜LF2の上面の段差部DSは、樹脂膜LF3で覆われていることが、より好ましい。これにより、再配線RWを形成する下地に段差が少なくなるため、再配線RWを形成しやすくなり、再配線RWをより的確に形成することができるようになる。このため、メッキ法を利用して再配線RWをより的確に形成することができるようになる。また、メッキ膜が断線しにくくなるため、再配線RWの信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態では、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁はテーパを有し、かつ、樹脂膜LF3の開口部OP1cの内壁はテーパを有していることが好ましい。これにより、パッドPD1上から積層膜上に延在する再配線RWを形成しやすくなり、再配線RWをより的確に形成することができるようになる。例えば、再配線RWを電解メッキで形成するための下地の(給電用の)シード層(上記シード膜SEに対応)をスパッタリング法などで形成する際に、そのシード層を的確に形成でき、シード層の形成不良を防止することができる。このため、シード層の断線不良を防いで、再配線RW用のメッキ層を的確に形成することができる。
ここで、窒化シリコン膜LF2の開口部OP1bの内壁がテーパを有していると、開口部OP1bの内壁は半導体基板SBの主面に垂直な方向から傾斜し、開口部OP1bは、底部側よりも上方側の方が寸法(平面寸法)が大きくなる。また、樹脂膜LF3の開口部OP1cの内壁がテーパを有していると、開口部OP1cの内壁は半導体基板SBの主面に垂直な方向から傾斜し、開口部OP1cは、底部側よりも上方側の方が寸法(平面寸法)が大きくなる。
また、酸化シリコン膜LF1は、HDP(High Density Plasma:高密度プラズマ)−CVD法で形成することが好ましい。酸化シリコン膜LF1は、積層膜LFにおける最下層の膜であるため、パッドPD1と同層の配線(ここでは配線M3)に接し、かつその配線(ここでは配線M3)を覆うように形成することになる。酸化シリコン膜LF1は、絶縁耐圧を稼ぐために、厚みを厚くすることが好ましいが、厚みを厚くした場合でもパッドPD1と同層の配線(ここでは配線M3)の隣接配線間を埋め込むことができるように、埋め込み性が良好な成膜法を適用することが好ましい。HDP−CVD法で形成した酸化シリコン膜は、埋め込み性が良好である。このため、酸化シリコン膜LF1は、HDP−CVD法で形成すれば、パッドPD1と同層の配線(ここでは配線M3)の配線間の埋め込み不良を防止しながら、酸化シリコン膜LF1の厚みを厚くすることができる。このため、半導体装置の信頼性を更に向上させることができる。なお、HDP−CVD法で形成した酸化シリコン膜を、HDP−CVD酸化膜と称する。また、酸化シリコン膜LF1をHDP−CVD法で形成する場合、その成膜時のプラズマの密度は、1×1011〜1×1012/cm3程度とすることが好ましい。高密度プラズマCVDではなく、通常のプラズマCVDでは、プラズマ密度は1×109〜1×1010/cm3程度が一般的である。
また、上述のように、上下に配置されたコイルCL2とコイルCL1との間の絶縁膜の積層構造を工夫することにより、コイルCL2とコイルCL1の絶縁耐圧を向上するなどして、半導体装置の信頼性を向上させている。コイルCL2と再配線RWとは同層に形成されているが、平面視において、コイルCL2と再配線RWとの間の最短距離は、コイルCL2とコイルCL1との間の間隔(上下方向の間隔)よりも大きいことが好ましい。これにより、コイルCL2と再配線RWとの間の絶縁耐圧も確保することができる。平面視におけるコイルCL2と再配線RWとの間の最短距離は、例えば100μm以上とすることができる。
また、樹脂膜LF3は、最も好ましいのはポリイミド膜である。ポリイミド膜は、耐溶剤性、耐熱性および機械的強度が高い。樹脂膜LF3としては、ポリイミド膜の他に、エポキシ系、PBO系、アクリル系、WRP系の樹脂等、他の有機絶縁膜を用いることもできる。
<コイルの構成について>
次に、半導体チップCP1内に形成されたトランスTR1を構成するコイルの構成について説明する。
図32は、半導体チップCP1内に形成されたトランスTR1の回路構成を示す回路図である。図33および図34は、本実施の形態の半導体チップCP1の要部平面図であり、上記トランス形成領域1Bに形成されたコイルの平面図が示されている。図35および図36は、本実施の形態の半導体チップCP1の要部断面図であり、上記トランス形成領域1Bの断面図が示されている。
なお、図33と図34とは、半導体チップCP1における同じ平面領域が示されているが、層が異なっており、図34は図33よりも下層が示されている。具体的には、図33には、半導体チップCP1に形成されたトランスTR1の二次側のコイル(コイルCL5,CL6)が示され、図34には、半導体チップCP1に形成されたトランスTR1の一次側のコイル(コイルCL7,CL8)が示されている。また、一次側のコイル(CL7,CL8)とその引き出し用の配線(引出配線HW1,HW2)との相対的な位置関係が分かりやすいように、図34では引出配線HW1,HW2を点線で示してある。また、図33および図34のA1−A1線での断面図が図35に対応し、図33および図34のA2−A2線での断面図が図36に対応している。
上述のように、半導体チップCP1内にトランスTR1用の一次コイルと二次コイルとが形成され、一次コイルと二次コイルのうち、一次コイルが下側に、二次コイルが上側に形成されている。すなわち、一次コイルの上方に二次コイルが配置され、二次コイルの下方に一次コイルが配置されている。
ここで、一次コイルと二次コイルとをそれぞれ2つのコイルで構成し、すなわち、トランスTR1を2つのトランスで構成し、この2つのトランスを差動で動作させると、ノイズ耐性が高くなる。
そこで、本実施の形態では、図32に示されるように、トランスTR1の一次コイル(上記コイルCL1aに相当するもの)を、直列に接続されたコイルCL7とコイルCL8とで形成し、トランスTR1の二次コイル(上記コイルCL2aに相当するもの)を、パッドPD5とパッドPD6との間に直列に接続されたコイルCL5とコイルCL6とで形成した構成を採用している。この場合、コイルCL7とコイルCL5とが磁気結合(誘導結合)され、コイルCL8とコイルCL6とが磁気結合(誘導結合)される。直列に接続されたコイルCL7,CL8は送信回路TX1に接続されている。また、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7が電気的に接続されている。これらコイルCL5,CL6,CL7,CL8とパッドPD5,PD6,PD7と送信回路TX1とは、半導体チップCP1内に形成されている。半導体チップCP1のパッドPD5,PD6,PD7は、後述のボンディングワイヤBWのような導電性の接続部材と半導体チップCP2の内部配線を介して、半導体チップCP2内の受信回路RX1に接続される。
このため、半導体チップCP1において、送信回路TX1から一次コイルであるコイルCL7とコイルCL8に送信用の信号を送って電流を流すと、コイルCL7とコイルCL8に流れる電流の変化に応じて、二次コイルであるコイルCL5とコイルCL6に誘導起電力が生じて誘導電流が流れる。コイルCL5とコイルCL6に生じる誘導起電力または誘導電流は、パッドPD5,PD6,PD7から、後述のボンディングワイヤBWのような導電性の接続部材と半導体チップCP2の内部配線を介して半導体チップCP2内の受信回路RX1で検知することができる。これにより、半導体チップCP1の送信回路TX1からの信号を、電磁誘導により、コイルCL7,CL8,CL5,CL6を介して、半導体チップCP2の受信回路RX1に伝達することができる。パッドPD7には、半導体チップCP2から固定電位(グランド電位、GND電位、電源電位など)が供給されるため、コイルCL5の誘導起電力または誘導電流と、コイルCL6の誘導起電力または誘導電流とを検出して差動で制御(動作)することができる。
以下、図33〜図36を参照して、これらコイルCL5,CL6,CL7,CL8とパッドPD5,PD6,PD7の具体的な構成について説明する。
コイルCL7とコイルCL8とは、上記コイルCL1に対応するものであり、コイルCL5とコイルCL6とは、上記コイルCL2に対応するものであり、パッドPD5,PD6,PD7は、上記パッドPD3に対応するものである。すなわち、図33〜図36のトランスを上記図3の構造や上記図7〜図31の製造工程に適用する場合は、上記図3や上記図7〜図31において、上記コイルCL1を図33〜図36のコイルCL7,CL8に置き換え、上記コイルCL2を図33〜図36のコイルCL5,CL6に置き換え、上記パッドPD3を図33〜図36のパッドPD5,PD6,PD7に置き換えることになる。
まず、二次コイルであるコイルCL5,CL6とそれに接続されたパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD5,PD6,PD7の具体的な構成について説明する。
図32〜図36に示されるように、パッドPD5とパッドPD6との間に、2つのコイル(インダクタ)CL5,CL6が直列に接続されている。そして、コイルCL5とコイルCL6との間に、パッドPD7が電気的に接続されている。
コイルCL5とコイルCL6とは、半導体チップCP1内において、同層に形成されており、コイルCL5は、渦巻き状(コイル状、ループ状)に周回するコイル配線CW5により形成され、コイルCL6は、渦巻き状(コイル状、ループ状)に周回するコイル配線CW6により形成されている。また、コイルCL5およびコイルCL6は、それぞれ平面的に形成されている。コイルCL5およびコイルCL6は、それぞれインダクタとみなすこともできる。コイルCL5,CL6は、上記コイルCL1に相当するものであるため、上記コイルCL1が形成される層に、上述したコイルCL1の形成法に従って形成される。また、パッドPD5,PD6,PD7は、上記パッドPD3に相当するものであるため、上記パッドPD3が形成される層に、上述したパッドPD3の形成法に従って形成される。
また、図32〜図36に示されるように、2つのコイル(インダクタ)CL7,CL8が直列に接続されている。コイルCL7とコイルCL8とは、半導体チップCP1内において、同層に形成されており、コイルCL7は、渦巻き状(コイル状、ループ状)に周回するコイル配線CW7により形成され、コイルCL8は、渦巻き状(コイル状、ループ状)に周回するコイル配線CW8により形成されている。また、コイルCL7およびコイルCL8は、それぞれ平面的に形成されている。コイルCL7およびコイルCL8は、それぞれインダクタとみなすこともできる。コイルCL7,CL8は、上記コイルCL2に相当するものであるため、上記コイルCL2が形成される層に、上述したコイルCL2の形成法に従って形成される。
図35および図36からも分かるように、半導体チップCP1内において、コイルCL7,CL8は、コイルCL5,CL6よりも下層に形成されている。つまり、半導体チップCP1内において、コイルCL5とコイルCL6とは、互いに同層に形成され、コイルCL7とコイルCL8とは、互いに同層に形成されているが、コイルCL7,CL8は、コイルCL5,CL6よりも下層に配置され、コイルCL5,CL6は、コイルCL7,CL8よりも上層に配置されている。
そして、コイルCL7はコイルCL5の直下に配置され、コイルCL8はコイルCL6の直下に配置されている。すなわち、コイルCL7は、平面視でコイルCL5と重なるように配置され、コイルCL8は、平面視でコイルCL6と重なるように配置されている。換言すれば、コイルCL5はコイルCL7の直上に配置され、コイルCL6はコイルCL8の直上に配置されている。すなわち、コイルCL5は、平面視でコイルCL7と重なるように配置され、コイルCL6は、平面視でコイルCL8と重なるように配置されている。
コイルCL5とコイルCL7とが磁気的に結合し、コイルCL6とコイルCL8とが磁気的に結合している。すなわち、コイルCL5とコイルCL7とは、導体では繋がっていないが、磁気的に結合しており、コイルCL6とコイルCL8とは、導体では繋がっていないが、磁気的に結合している。一方、コイルCL5とコイルCL6とは導体で繋がっており、コイルCL7とコイルCL8とは導体で繋がっている。
パッドPD5,PD6,PD7は、上記パッドPD3に対応するものであり、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)は、上記コイルCL2に対応するものであるため、パッドPD5,PD6,PD7およびコイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)は、互いに同層に形成されており、また、上記再配線RWおよび上記パッドPD2とも同層に形成されている。具体的には、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)およびパッドPD5,PD6,PD7は、いずれも上記シード膜SEとシード膜SE上の銅膜CFとの積層膜からなり、上記樹脂膜LF3上に形成されているが、パッドPD5,PD6,PD7の表面には、上記下地金属膜UMが形成されている。コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)は、半導体チップCP1の最上層の保護膜PAにより覆われているが、パッドPD5,PD6,PD7は、この保護膜PAに設けられた開口部OP3から露出されている。図33では、この開口部OP3を点線で示してある。
また、図33および図35に示されるように、パッドPD5は、コイルCL5の渦巻の内側に配置されており、このパッドPD5にコイルCL5の一端が接続されている。すなわち、パッドPD5に接続されたコイル配線CW5が、このパッドPD5の周囲を複数回、周回することにより、コイルCL5が形成されている。図33の場合は、パッドPD5に接続されたコイル配線CW5が、このパッドPD5の周囲を右回り(時計回り)に周回して、コイルCL5が形成されている。コイル配線CW5同士は交差しないため、パッドPD5に接続されたコイル配線CW5は、パッドPD5の周囲を右回り(時計回り)に周回する度に、パッドPD5から遠い側に徐々にずれていく。
また、パッドPD6は、コイルCL6の渦巻の内側に配置されており、このパッドPD6にコイルCL6の一端が接続されている。すなわち、パッドPD6に接続されたコイル配線CW6が、このパッドPD6の周囲を複数回、周回することにより、コイルCL6が形成されている。図33の場合は、パッドPD6に接続されたコイル配線CW6が、このパッドPD6の周囲を左回り(反時計回り)に周回して、コイルCL6が形成されている。コイル配線CW6同士は交差しないため、パッドPD6に接続されたコイル配線CW6は、パッドPD6の周囲を左回り(反時計回り)に周回する度に、パッドPD6から遠い側に徐々にずれていく。
ここで、「右回り」は、「時計回り」と同義であり、「左回り」は、「反時計回り」と同義である。また、コイルまたはコイル配線の巻方向(渦巻きの向き)を言うときは、そのコイルまたはコイル配線を上方から見た場合に、渦の内側から外側に向かう際の巻方向を指すものとし、上方から見て、渦の内側から外側に向かう際に時計回りに見えるものを「右巻き」と称し、渦の内側から外側に向かう際に反時計回りに見えるものを「左巻き」と称することとする。例えば、半導体チップCP1のコイルCL5の巻方向を言うときは、半導体チップCP1の上方から半導体チップCP1の表面側(パッドが形成されている側が表面側)を見たときに(図33および図34はこれに対応している)、コイルCL5の渦の内側から外側に向かう際に時計回りに見えるものを「右巻き」、反時計回りに見えるものを「左巻き」と称する。
コイルCL5(コイル配線CW5)の巻数(ターン数)とコイルCL6(コイル配線CW6)の巻数(ターン数)とは、必要に応じて変更可能である。但し、コイルCL5(コイル配線CW5)の巻数と、コイルCL6(コイル配線CW6)の巻数とは、同じであることが好ましい。また、コイルCL5の大きさ(直径)と、コイルCL6の大きさ(直径)とは、同じであることが好ましい。また、コイルCL5の自己インダクタンスと、コイルCL6の自己インダクタンスとは、同じであることが好ましい。
また、図33では、コイルCL5を右巻きとし、コイルCL6を左巻きとしているが、他の形態として、コイルCL5を左巻きとし、コイルCL6を右巻きとすることもできる。また、図33では、パッドPD7は、コイルCL5とコイルCL6との間に配置している。他の形態として、パッドPD7を、コイルCL5とコイルCL6との間以外の領域に配置することもできる。
コイルCL5(コイル配線CW5)の他端(パッドPD5に接続される側とは反対側の端部)とコイルCL6(コイル配線CW6)の他端(パッドPD6に接続される側とは反対側の端部)とは、パッドPD7に接続されている。このため、コイルCL5(コイル配線CW5)の上記他端とコイルCL6(コイル配線CW6)の上記他端とは、パッドPD7を介して電気的に接続されている。
ここで、コイルCL5(コイル配線CW5)の上記他端は、コイルCL5(コイル配線CW5)の外側(渦巻きの外側)の端部に対応しており、コイルCL6(コイル配線CW6)の上記他端は、コイルCL6(コイル配線CW6)の外側(渦巻きの外側)の端部に対応している。すなわち、コイルCL5(コイル配線CW5)は、互いに反対側の端部である内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部とを有しており、そのうちの内側の端部がパッドPD5に接続され、外側の端部がパッドPD7に接続されている。また、コイルCL6(コイル配線CW6)は、互いに反対側の端部である内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部とを有しており、そのうちの内側の端部がパッドPD6に接続され、外側の端部がパッドPD7に接続されている。このため、パッドPD7は、平面視において、コイルCL5とコイルCL6との間に配置されるとともに、パッドPD5とパッドPD6との間に配置されている。パッドPD5,PD6,PD7のそれぞれの大きさ(辺の長さ)は、ほぼ同じとすることができる。
また、コイルCL5,CL6は、樹脂膜LF3上に形成されるため、図33に示されるように、平面視において、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の角を、鈍角(90°より大きい角)にすることが好ましい。これは、樹脂膜、特にポリイミド膜は、金属パターンの直角や鋭角に弱いためである。コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の角を、鈍角(90°より大きい角)にすることで、コイルCL5,CL6の下地の樹脂膜LF3や、コイルCL5,CL6を覆う保護膜PAの信頼性を向上させることができる。また、このことは、コイルCL5,CL6の下地の樹脂膜LF3またはコイルCL5,CL6を覆う保護膜PAがポリイミド膜の場合に、特に効果が大きい。図33の場合は、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の平面形状は、略八角形であるため、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)の角は、約135°となっている。
次に、コイルCL7,CL8について、図34〜図36を参照して更に説明する。
図34からも分かるように、コイルCL7の渦巻の内側にパッドは配置されていない。コイルCL7(コイル配線CW7)の内側(渦巻きの内側)の端部は、ビア部を介して、コイル配線CW7よりも下層に配置された引出配線HW1に電気的に接続されている。このビア部は、コイル配線CW7と引出配線HW1との間に位置して、コイル配線CW7と引出配線HW1とを接続するものである。コイル配線CW7を第2配線層と同層に形成した場合は、引出配線HW1は、コイル配線CW7よりも1層下層の第1配線層と同層に形成され、すなわち配線M1により形成され、コイル配線CW7と引出配線HW1とを接続する上記ビア部は、ビア部V2に対応する。引出配線HW1には、引出配線HW1と同層の配線または異なる層の配線が接続され、半導体チップCP1の内部配線を介して、半導体チップCP1内に形成された送信回路TX1に対応するものに接続される。
ビア部を介して引出配線HW1に接続されるコイル配線CW7が、複数回、周回することにより、コイルCL7が形成されている。なお、パッドPD5の直下の領域(位置)ではコイル配線CW7は周回していないことが好ましく、パッドPD5の直下の領域(位置)を囲むようにコイル配線CW7が周回している。
図34の場合は、ビア部を介して引出配線HW1に接続されるコイル配線CW7が、上記パッドPD5の直下の領域(位置)の周囲を右回り(時計回り)に周回して、コイルCL7が形成されている。コイル配線CW7同士は交差しないため、ビア部を介して引出配線HW1に接続されるコイル配線CW7は、上記パッドPD5の直下の領域(位置)の周囲を右回り(時計回り)に周回する度に、渦巻きの中心から遠い側に徐々にずれていく。
また、コイルCL8の渦巻の内側にパッドは配置されていない。コイルCL8(コイル配線CW8)の内側(渦巻きの内側)の端部は、ビア部を介して、コイル配線CW8よりも下層に配置された引出配線HW2に電気的に接続されている。このビア部は、コイル配線CW8と引出配線HW2との間に位置して、コイル配線CW8と引出配線HW8とを接続するものである。コイル配線CW8を第2配線層と同層に形成した場合は、引出配線HW2は、コイル配線CW8よりも1層下層の第1配線層と同層に形成され、すなわち配線M1により形成され、コイル配線CW8と引出配線HW2とを接続する上記ビア部は、ビア部V2に対応する。引出配線HW2には、引出配線HW2と同層の配線または異なる層の配線が接続され、半導体チップCP1の内部配線を介して、半導体チップCP1内に形成された送信回路TX1に対応するものに接続される。
ビア部を介して引出配線HW2に接続されるコイル配線CW8が、複数回、周回することにより、コイルCL8が形成されている。なお、パッドPD6の直下の領域(位置)ではコイル配線CW8は周回していないことが好ましく、パッドPD6の直下の領域(位置)を囲むようにコイル配線CW8が周回している。
図34の場合は、ビア部を介して引出配線HW2に接続されるコイル配線CW8が、上記パッドPD6の直下の領域(位置)の周囲を左回り(反時計回り)に周回して、コイルCL8が形成されている。コイル配線CW8同士は交差しないため、ビア部を介して引出配線HW2に接続されるコイル配線CW8は、上記パッドPD6の直下の領域(位置)の周囲を左回り(反時計回り)に周回する度に、渦巻きの中心から遠い側に徐々にずれていく。
コイルCL7(コイル配線CW7)の巻数(ターン数)とコイルCL8(コイル配線CW8)の巻数(ターン数)とは、必要に応じて変更可能である。但し、コイルCL7(コイル配線CW7)の巻数と、コイルCL8(コイル配線CW8)の巻数とは、同じであることが好ましい。また、コイルCL7の大きさ(直径)と、コイルCL8の大きさ(直径)とは、同じであることが好ましい。また、コイルCL7の自己インダクタンスと、コイルCL8の自己インダクタンスとは、同じであることが好ましい。また、磁気結合したコイルCL5,CL7の相互インダクタンスと、磁気結合したコイルCL6,CL8の相互インダクタンスとは、同じであることが好ましい。また、図34では、コイルCL7を右巻きとし、コイルCL8を左巻きとしているが、他の形態として、コイルCL7を左巻きとし、コイルCL8を右巻きとすることもできる。
コイルCL7(コイル配線CW7)の外側の端部と、コイルCL8(コイル配線CW8)の外側の端部とは、コイルCL7とコイルCL8との間に設けられた接続配線HW3に接続され、この接続配線HW3を介して電気的に接続されている。すなわち、コイルCL7(コイル配線CW7)の内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部のうち、内側の端部は、ビア部を介してコイル配線CW7よりも下層の引出配線HW1に接続され、外側の端部は、コイル配線CW7と同層の接続配線HW3に接続されている。また、コイルCL8(コイル配線CW8)の内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部のうち、内側の端部は、ビア部を介してコイル配線CW8よりも下層の引出配線HW2に接続され、外側の端部は、コイル配線CW8と同層の接続配線HW3に接続されている。このため、コイルCL7(コイル配線CW7)の一方の端部(外側の端部)とコイルCL8(コイル配線CW8)の一方の端部(外側の端部)とは、接続配線HW3を介して電気的に接続されている。
なお、コイルCL7あるいはコイル配線CW7において、内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部とは、互いに反対側の端部であり、また、コイルCL8あるいはコイル配線CW8において、内側(渦巻きの内側)の端部と外側(渦巻きの外側)の端部とは、互いに反対側の端部である。
接続配線HW3は、コイルCL7(コイル配線CW7)およびコイルCL8(コイル配線CW8)と同層に形成されており、コイルCL7(コイル配線CW7)の外側の端部とコイルCL8(コイル配線CW8)の外側の端部とを、電気的に接続するための配線である。接続配線HW3は、コイルCL7とコイルCL8との間に配置されているため、コイルCL5とコイルCL6との間にパッドPD7を配置した場合は、パッドPD7の直下に接続配線HW3が配置されることになる。接続配線HW3は、パッドPD7とほぼ同様の平面形状(平面寸法)とすることができるが、パッドとして機能するものではない(従ってボンディングワイヤのような接続部材は接続しない)ため、上記パッドPD7と相違する平面形状(平面寸法)とすることもできる。例えば、コイルCL7(コイル配線CW7)の外側の端部とコイルCL8(コイル配線CW8)の外側の端部とを、コイル配線CW7,CW8と同程度の幅にした接続配線HW3で接続することも可能である。但し、平面視でコイルCL7とコイルCL8との間に、コイル配線CW7,CW8の各配線幅よりも配線幅が大きい接続配線HW3を設ければ、配線抵抗を低減することができる。
直列に接続されたコイルCL7およびコイルCL8が、トランスTR1の一次側の上記コイルCL1a(従って上記コイルCL1)に対応し、直列に接続されたコイルCL5およびコイルCL6が、トランスTR1の二次側の上記コイルCL2a(従って上記コイルCL2)に対応している。引出配線HW1,HW2は、半導体チップCP1の内部配線(M1〜M3)を介して、半導体チップCP1内に形成された送信回路TX1に接続されている。上記パッドPD5,PD6,PD7は、それらのパッドPD5,PD6,PD7に接続される後述のボンディングワイヤBWのような導電性の接続部材と半導体チップCP2の内部配線を介して、半導体チップCP2内に形成された受信回路RX1に接続される。
このため、送信回路TX1から引出配線HW1,HW2に送信用の信号が送られると、引出配線HW1と引出配線HW2との間に直列に接続されているコイルCL7およびコイルCL8に電流が流れる。この際、コイルCL7とコイルCL8とは直列に接続されているため、コイルCL7に流れる電流と、コイルCL8に流れる電流とは、実質的に同じ大きさである。コイルCL5とコイルCL7とは、導体によっては繋がっていないが、磁気的に結合しており、また、コイルCL6とコイルCL8とは、導体によっては繋がっていないが、磁気的に結合している。このため、一次側のコイルCL7およびコイルCL8に電流が流れると、その電流の変化に応じて、二次側のコイルCL5およびコイルCL6に誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。
また、半導体チップCP2の上記トランスTR2についても、半導体チップCP1のトランスTR1と同様に形成することができる。このため、半導体チップCP2においても、上記コイルCL1bとして上記コイルCL7,CL8を形成し、上記コイルCL2bとして上記コイルCL5,CL6を形成し、コイルCL5,CL6に接続された上記パッドPD5,PD6,PD7を形成することができる。
また、パッドPD5は、コイルCL5(コイル配線CW5)の内側(渦巻きの内側)に配置され、パッドPD6は、コイルCL6(コイル配線CW6)の内側(渦巻きの内側)に配置されている。
パッドPD5をコイルCL5(コイル配線CW5)の内側に配置することで、引出配線(パッドPD5とコイルCL5とを接続するための引出配線)を形成せずに、コイルCL5の内側の端部をパッドPD5に接続することができる。このため、コイルCL5(コイル配線CW5)の下層にパッドPD5用の引出配線を形成しなくてよいため、コイルCL5とコイルCL7との間の絶縁耐圧がトランスの耐圧として支配的となり、トランスの耐圧をより向上させることができる。また、パッドPD5用の引出配線を形成しなくてよいことで、引出配線に接続するためのビア部を形成しなくてよいため、製造コストや製造時間も抑制できる。これは、パッドPD6とコイルCL6についても同様である。
また、コイルCL7(コイル配線CW7)の内側の端部は、ビア部を介してコイル配線CW7よりも下層の引出配線HW1に接続され、コイルCL8(コイル配線CW8)の内側の端部は、ビア部を介してコイル配線CW8よりも下層の引出配線HW2に接続されている。他の形態として、引出配線HW1,HW2の一方または両方を、コイルCL7,CL8よりも上層でかつコイルCL5,CL6よりも下層に設けることもできるが、その場合でも、積層膜LFよりも下層に引出配線HW1,HW2が形成される。但し、耐圧向上の点では、引出配線HW1,HW2の両方をコイルCL7,CL8よりも下層に形成した場合の方が有利であり、そうすることで、コイルCL5とコイルCL7との間の絶縁耐圧やコイルCL6とコイルCL8との間の絶縁耐圧がトランスの耐圧として支配的となり、トランスの耐圧をより向上させることができる。
また、引出配線HW1,HW2にスリット(開口部)を設けることもできる。このスリットは、引出配線HW1,HW2において、その延在方向に沿って長辺を有するスリットとすることができ、引出配線HW1,HW2のそれぞれに、単数または複数のスリットを設けることができる。一次側のコイルCL7,CL8に電流を流したり、二次側のコイルCL5,CL6に誘導電流が流れたりすると、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を貫くように磁束が発生するが、引出配線HW1,HW2にスリットを設けておけば、磁束の影響で引出配線HW1,HW2に渦電流が発生するのを抑制または防止することができる。
また、本実施の形態では、コイルCL5とコイルCL6とは同層に形成され、また、コイルCL7とコイルCL8とは同層に形成されている。そして、コイルCL7,CL8は、コイルCL5,CL6よりも下層に形成されている。コイルCL5,CL6とコイルCL7,CL8とのうち、パッドPD5,PD6,PD7に接続すべきコイルCL5,CL6を上層側に配置することで、コイルCL5,CL6をパッドPD5,PD6,PD7に接続しやすくなる。また、コイルCL5とコイルCL6とを同層に形成し、コイルCL7とコイルCL8とを同層に形成することで、コイルCL5,CL7の相互インダクタンスとコイルCL6,CL8の相互インダクタンスとを一致させやすくなる。このため、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を介して信号の伝達を的確に行いやすくなる。また、コイルCL5,CL6,CL7,CL8を形成するのに必要な層数を抑制することができる。このため、半導体チップを設計しやすくなる。また、半導体チップの小型化にも有利になる。
また、図33に示されるように、コイルCL5(コイル配線CW5)の内側の端部はパッドPD5に接続され、コイルCL6(コイル配線CW6)の内側の端部はパッドPD6に接続され、コイルCL5(コイル配線CW5)の外側の端部とコイルCL6(コイル配線CW6)の外側の端部とはパッドPD7に接続されている。パッドPD5,PD6,PD7とコイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)との接続位置は、各パッドPD5,PD6,PD7における辺の中央ではなく、各パッドPD5,PD6,PD7における角部近傍とすることが好ましい。パッドPD5,PD6,PD7とコイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)との接続位置は、断線が発生しやすい箇所になりやすいが、前記接続位置を各パッドPD5,PD6,PD7における角部とすること、前記接続箇所での断線の発生を抑制または防止することができる。その理由は、以下の二つの理由である。
まず一つ目の理由について説明する。パッドとコイルとの接続位置での断線は、そのパッドに後でボンディングワイヤを接続する際に生じやすい。このため、各パッドPD5,PD6,PD7において、パッドとコイルとの接続位置がワイヤボンド位置(ボンディングワイヤが接続される位置)からできるだけ離れている方が、断線が起こりにくい。各パッドPD5,PD6,PD7において、ワイヤボンド位置は、パッドのほぼ中央部である。このため、パッドとコイルとの接続位置を、各パッドPD5,PD6,PD7における辺の中央ではなく、各パッドPD5,PD6,PD7における角部近傍とすることにより、パッドとコイルの接続位置とワイヤボンド位置との間の距離を大きくすることができる。これにより、パッドPD5,PD6,PD7とコイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)との接続位置での断線を抑制または防止することができる。
次に、二つ目の理由について説明する。パッドに対してワイヤボンディングを行う場合、超音波振動を付加するが、超音波振動の振動方向はパッドの辺に平行な方向(縦方向または横方向)である。このため、パッドとコイルとの接続位置を、各パッドPD5,PD6,PD7における辺の中央とした場合、パッドとコイルとの接続位置にも超音波による振動が加わるため、断線が発生しやすくなる。それに対して、パッドとコイルとの接続位置を、各パッドPD5,PD6,PD7における辺の中央ではなく、各パッドPD5,PD6,PD7における角部近傍とすることにより、ワイヤボンディング時の超音波による振動が、パッドとコイルとの接続位置に加わりにくくなる。このため、パッドPD5,PD6,PD7とコイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)との接続位置での断線を抑制または防止することができる。
このため、パッドPD5,PD6,PD7とコイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)との接続位置は、各パッドPD5,PD6,PD7における辺の中央ではなく、各パッドPD5,PD6,PD7における角部近傍とすることが好ましい。ここで、各パッドPD5,PD6,PD7の平面形状は、略矩形か、あるいはその矩形の角を落とした形状、あるいは矩形の角に丸みをつけた形状などである。図33には、各パッドPD5,PD6,PD7の平面形状が、矩形の角を落とした平面形状の場合が示されている。各パッドPD5,PD6,PD7の平面形状が矩形の場合は、その矩形の辺の中央ではなく、矩形の角部側にずらした位置に、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)を接続すればよい。各パッドPD5,PD6,PD7の平面形状が矩形の角を落とした形状または矩形の角に丸みを付けた形状の場合は、そのベースとなる矩形の辺の中央ではなく、ベースとなる矩形の角部側にずらした位置に、コイルCL5,CL6(コイル配線CW5,CW6)を接続すればよい。
<コイルの構成の変形例について>
次に、半導体チップ内に形成されたトランスを構成するコイルの構成の変形例について説明する。図37および図38は、半導体チップCP1(または半導体チップCP2)の変形例の要部平面図であり、上記トランス形成領域1Bに形成されたコイルの平面図が示されている。図37は、上記図33に相当する図であり、半導体チップCP1(または半導体チップCP2)に形成されたトランスの二次側のコイル(コイルCL5,CL6)が示され、図38は上記図34に相当する図であり、そのトランスの一次側のコイル(コイルCL7,CL8)が示されている。また、一次側のコイル(CL7,CL8)とその引き出し用の配線(引出配線HW1,HW2)との相対的な位置関係が分かりやすいように、図38では引出配線HW1,HW2を点線で示してある。
上記図33および図34の場合は、一次側のコイルCL7,CL8についてのコイルの巻き方向は、コイルCL7とコイルCL8とで反対向きであり、二次側のコイルCL5,CL6についてのコイルの巻き方向は、コイルCL5とコイルCL6とで反対向きであった。すなわち、コイルCL7とコイルCL8とは、一方が右巻きで他方が左巻きであり、コイルCL5とコイルCL6とは、一方が右巻きで他方が左巻きであった。
それに対して、図37および図38の場合は、一次側のコイルCL7,CL8についてのコイルの巻き方向は、コイルCL7とコイルCL8とで同じであり、二次側のコイルCL5,CL6についてのコイルの巻き方向は、コイルCL5とコイルCL6とで同じある。すなわち、コイルCL7とコイルCL8とは、両方が右巻きか、あるいは両方が左巻きであり、コイルCL5とコイルCL6とは、両方が右巻きか、あるいは両方が左巻きである。図38の場合は、コイルCL7,CL8を両方とも右巻きとしているが、他の形態としてコイルCL7,CL8を両方とも左巻きとすることもでき、また、図37の場合は、コイルCL5,CL6を両方とも右巻きとしているが、他の形態としてコイルCL5,CL6を両方とも左巻きとすることもできる。
図37および図38のコイルCL5,CL6,CL7,CL8、パッドPD5,PD6,PD7および引出配線HW1,HW2の他の構成は、上記図32〜図36を参照して説明したのと同様であるため、ここではその繰り返しの説明は省略する。
上記図33および図34の場合、コイルCL7とコイルCL8とで巻き方向が反対であることから、直列に接続されたコイルCL7とコイルCL8に電流が流れると、コイルCL7とコイルCL8とで電流の流れる向きは同じになり、それに伴い、コイルCL7とコイルCL8とで、互いに同じ向きの磁束が発生することになる。このため、二次側のコイルCL5,CL6に誘導電流が流れるときには、コイルCL5に流れる電流の向きと、コイルCL6に流れる電流の向きとは、同じになり、それに伴い、コイルCL5に流れる誘導電流によってコイルCL5を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL6に流れる誘導電流によってコイルCL6を貫くように発生する磁束の向きとは、同じになる。従って、トランスを介して送信回路から受信回路に信号を伝達する際に、磁気結合されたコイルCL5およびコイルCL7を貫くように発生する磁束の向きと、磁気結合されたコイルCL6およびコイルCL8を貫くように発生する磁束の向きとは、互いに同じ向きになる。
ここで、コイルの電流の向き(または電流の流れる向き)とは、そのコイル(またはコイル配線)を上方から見て、そのコイルを右回り(時計回り)に電流が流れるか、左回り(反時計回り)に電流が流れるかを指す。このため、2つのコイルについて、コイルの電流の向きが同じ(または電流の流れる向きが同じ)と言う場合は、その2つのコイルを上方から見て、その2つのコイルの両方ともが右回り(時計回り)に電流が流れるか、あるいは、その2つのコイルの両方ともが左回り(反時計回り)に電流が流れることに対応する。また、2つのコイルについて、コイルの電流の向きが反対(または電流の流れる向きが反対)と言う場合は、その2つのコイルを上方から見て、その2つのコイルのうち、一方のコイルは右回り(時計回り)に電流が流れ、他方のコイルは左回り(反時計回り)に電流が流れることに対応する。
それに対して、上記図37および図38の場合、コイルCL7とコイルCL8とで巻き方向が同じであることから、直列に接続されたコイルCL7とコイルCL8に電流が流れると、コイルCL7とコイルCL8とで電流の流れる向きは反対になり、それに伴い、コイルCL7とコイルCL8とで、互いに反対向きの磁束が発生することになる。このため、二次側のコイルCL5,CL6に誘導電流が流れるときには、コイルCL5に流れる電流の向きと、コイルCL6に流れる電流の向きとは、反対になり、それに伴い、コイルCL5に流れる誘導電流によってコイルCL5を貫くように発生する磁束の向きと、コイルCL6に流れる誘導電流によってコイルCL6を貫くように発生する磁束の向きとは、反対になる。従って、トランスを介して送信回路から受信回路に信号を伝達する際に、磁気結合されたコイルCL5およびコイルCL7を貫くように発生する磁束の向きと、磁気結合されたコイルCL6およびコイルCL8を貫くように発生する磁束の向きとは、互いに反対向きになる。
コイルCL5,CL7を貫く磁束(磁界)とコイルCL6,CL8を貫く磁束(磁界)とが反対向きであれば、コイルCL5を貫く磁束(磁界)とコイルCL6を貫く磁束(磁界)とが、ループ状に繋がることができる(すなわちループ状に閉じることができる)。このため、上記図37および図38の場合は、コイルCL5,CL6同士が、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用するのを抑制または防止でき、また、コイルCL7,CL8同士が、互いに磁束(磁界)を打ち消し合うように作用するのを抑制または防止することができる。従って、一次コイル(CL7,CL8)から二次コイル(CL5,CL6)に誘導電流を用いて信号を伝達する際に、二次コイル(CL5,CL6)によって検知する信号強度(受信信号強度)を向上することができる。従って、半導体チップの性能をより向上させることができ、ひいては半導体チップを含む半導体装置の性能をより向上させることができる。
次に、半導体チップ内に形成されたトランスを構成するコイルの構成の他の変形例について説明する。図39および図40は、半導体チップCP1(または半導体チップCP2)の他の変形例の要部平面図であり、上記トランス形成領域1Bに形成されたコイルの平面図が示されている。図39は、上記図33に相当する図であり、半導体チップCP1(または半導体チップCP2)に形成されたトランスの二次側のコイル(コイルCL5)が示され、図40は上記図34に相当する図であり、そのトランスの一次側のコイル(コイルCL7)が示されている。また、一次側のコイル(CL7)とその引き出し用の配線(引出配線HW1,HW3a)との相対的な位置関係が分かりやすいように、図40では引出配線HW1,HW3aを点線で示してある。
上記図39および図40の場合は、一次側のコイルは1つのコイルCL5で構成されており、コイルCL6とパッドPD6とは形成されておらず、また、二次側のコイルは1つのコイルCL7で構成されており、コイルCL8と引出配線HW1とは形成されていない。コイルCL7の外側の端部は、接続配線HW3ではなく引出配線HW3aに接続されているが、この引出配線HW3aは、コイルCL7と同層または異なる層に形成することができる。図40の場合は、コイルCL7の外側の端部を、ビア部を介して、引出配線HW1と同層に設けた引出配線HW3aに接続する場合が示されているが、引出配線HW3aはコイルCL7と同層に形成してもよい。
図39および図40のコイルCL5,CL7、パッドPD5,PD7および引出配線HW1,HW3aの他の構成は、上記図32〜図36を参照して説明したのと同様であるため、ここではその繰り返しの説明は省略する。トランスの回路構成は、上記図1と同じになる。例えば、図39および図40のトランスを上記図1のトランスTR1に適用する場合は、コイルCL5が上記コイルCL1aであり、コイルCL7が上記コイルCL2aである。
上記図32〜図36の場合や上記図37および図38の場合は、一次コイルと二次コイルとがそれぞれ2つのコイルで構成され、すなわち、上記トランスTR1が2つのトランスで構成され、この2つのトランスを差動で動作させることができるため、ノイズ耐性を向上させることができる。一方、図39および図40の場合は、一次コイルと二次コイルとがそれぞれ1つのコイルで構成され、すなわち、上記トランスTR1が1つのトランスで構成されるため、半導体チップの小型化(小面積化)を図ることができる。
<半導体パッケージの構成例について>
次に、本実施の形態の半導体パッケージの構成例について説明する。なお、半導体パッケージは半導体装置とみなすこともできる。
図41は、本実施の形態の半導体パッケージ(半導体装置)PKGを示す平面図であり、図42は、半導体パッケージPKGの断面図である。但し、図41では、封止樹脂部MRは透視し、封止樹脂部MRの外形(外周)を二点鎖線で示してある。また、図41のB1−B1線の断面図が図42にほぼ対応している。
図41および図42に示される半導体パッケージPKGは、半導体チップCP1,CP2を含む半導体パッケージである。以下、半導体パッケージPKGの構成について、具体的に説明する。
図41および図42に示される半導体パッケージPKGは、半導体チップCP1,CP2と、半導体チップCP1,CP2をそれぞれ搭載するダイパッドDP1,DP2と、導電体からなる複数のリードLDと、半導体チップCP1,CP2間や半導体チップCP1,CP2と複数のリードLDとの間を接続する複数のボンディングワイヤBWと、これらを封止する封止樹脂部MRとを有している。
封止樹脂部(封止部、封止樹脂、封止体)MRは、例えば熱硬化性樹脂材料などの樹脂材料などからなり、フィラーなどを含むこともできる。封止樹脂部MRにより、半導体チップCP1,CP2、ダイパッドDP1,DP2、複数のリードLDおよび複数のボンディングワイヤBWが封止され、電気的および機械的に保護される。封止樹脂部MRは、その厚さと交差する平面形状(外形形状)は例えば矩形(四角形)とすることができる。
半導体チップCP1の素子形成側の主面である半導体チップCP1の表面には、複数のパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD10が形成されている。半導体チップCP1の各パッドPD10は、半導体チップCP1の内部に形成された半導体集積回路(例えば上記制御回路CCなど)に電気的に接続されている。パッドPD10は、半導体チップCP1における、上記再配線RWに接続された上記パッドPD2に対応するものである。
半導体チップCP1の表面には、更に、上記パッドPD5,PD6,PD7にそれぞれ対応するパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD5a,PD6a,PD7aが形成されている。
すなわち、半導体チップCP1は、上記送信回路TX1とこの送信回路TX1に接続された上記コイルCL7,CL8(一次コイル)と、このコイルCL7,CL8にそれぞれ磁気的に結合された上記コイルCL5,CL6(二次コイル)と、このコイルCL5,CL6に接続された上記パッドPD5,PD6,PD7とを有している。半導体チップCP1が有するパッドPD5がパッドPD5aに対応し、半導体チップCP1が有するパッドPD6がパッドPD6aに対応し、半導体チップCP1が有するパッドPD7がパッドPD7aに対応している。
また、半導体チップCP1は、上記受信回路RX2と、この受信回路RX2に接続された複数のパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD9とを更に有している。このため、半導体チップCP1の表面には、パッドPD5a,PD6a,PD7a,PD9,PD10が形成されている。なお、半導体チップCP1の複数のパッドPD9のうち、半導体チップCP2のパッドPD7bにボンディングワイヤBWを介して接続されるパッドPD9は、固定電位(グランド電位、GND電位、電源電位など)を供給するパッドである。
半導体チップCP2の素子形成側の主面である半導体チップCP2の表面には、複数のパッドPD11が形成されている。半導体チップCP2の各パッドPD11は、半導体チップCP2の内部に形成された半導体集積回路(例えば上記駆動回路DRなど)に電気的に接続されている。パッドPD11は、半導体チップCP2における、上記再配線RWに接続された上記パッドPD2に対応するものである。
半導体チップCP2の表面には、更に、上記パッドPD5,PD6,PD7にそれぞれ対応するパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD5b,PD6b,PD7bが形成されている。
すなわち、半導体チップCP2は、上記送信回路TX2とこの送信回路TX2に接続された上記コイルCL7,CL8(一次コイル)と、このコイルCL7,CL8にそれぞれ磁気的に結合された上記コイルCL5,CL6(二次コイル)と、このコイルCL5,CL6に接続された上記パッドPD5,PD6,PD7とを有している。半導体チップCP2が有するパッドPD5がパッドPD5bに対応し、半導体チップCP2が有するパッドPD6がパッドPD6bに対応し、半導体チップCP2が有するパッドPD7がパッドPD7bに対応している。
また、半導体チップCP2は、上記受信回路RX1と、この受信回路RX1に接続された複数のパッド(パッド電極、ボンディングパッド)PD8とを更に有している。このため、半導体チップCP2の表面には、パッドPD5b,PD6b,PD7b,PD8,PD11が形成されている。なお、半導体チップCP2の複数のパッドPD8のうち、半導体チップCP1のパッドPD7aにボンディングワイヤBWを介して接続されるパッドPD8は、固定電位(グランド電位、GND電位、電源電位など)を供給するパッドである。
なお、半導体チップCP1において、パッドPD5a,PD6a,PD7a,PD9,PD10が形成された側の主面を半導体チップCP1の表面と呼び、それとは反対側の主面を、半導体チップCP1の裏面と呼ぶものとする。また、半導体チップCP2において、パッドPD,PD5b,PD6b,PD7b,PD8,PD11が形成された側の主面を半導体チップCP2の表面と呼び、それとは反対側の主面を、半導体チップCP2の裏面と呼ぶものとする。
半導体チップCP1は、半導体チップCP1の表面が上方を向くように、チップ搭載部であるダイパッドDP1の上面上に搭載(配置)され、半導体チップCP1の裏面がダイパッドDP1の上面にダイボンド材(接着材)DBを介して接着されて固定されている。
半導体チップCP2は、半導体チップCP2の表面が上方を向くように、チップ搭載部であるダイパッドDP2の上面上に搭載(配置)され、半導体チップCP2の裏面がダイパッドDP2の上面にダイボンド材(接着材)DBを介して接着されて固定されている。
ダイパッドDP1とダイパッドDP2とは、封止樹脂部MRを構成する材料を間に介して離間しており、互いに電気的に絶縁されている。
リードLDは、導電体で形成されており、好ましくは銅(Cu)または銅合金などの金属材料からなる。各リードLDは、リードLDのうちの封止樹脂部MR内に位置する部分であるインナリード部と、リードLDのうちの封止樹脂部MR外に位置する部分であるアウタリード部とからなり、リードLDのアウタリード部は、封止樹脂部MRの側面から封止樹脂部MR外に突出している。隣り合うリードLDのインナリード部間は、封止樹脂部MRを構成する材料により満たされている。各リードLDのアウタリード部は、半導体パッケージPKGの外部接続用端子部(外部端子)として機能することができる。各リードLDのアウタリード部は、アウタリード部の端部近傍の下面が封止樹脂部MRの下面よりも若干下に位置するように折り曲げ加工されている。
半導体チップCP1の表面の各パッドPD10と半導体チップCP2の表面の各パッドPD11とは、各リードLDのインナリード部に、導電性接続部材であるボンディングワイヤBWを介してそれぞれ電気的に接続されている。すなわち、半導体チップCP1の表面の各パッドPD10に一端が接続されたボンディングワイヤBWの他端は、各リードLDのインナリード部の上面に接続されている。また、半導体チップCP2の表面の各パッドPD11に一端が接続されたボンディングワイヤBWの他端は、各リードLDのインナリード部の上面に接続されている。なお、半導体チップCP1のパッドPD10がボンディングワイヤBWを介して接続されるリードLDと、半導体チップCP2のパッドPD11がボンディングワイヤBWを介して接続されるリードLDとは、互いに相違するリードLDである。このため、半導体チップCP1のパッドPD10と、半導体チップCP2のパッドPD11とは、導体を介しては接続されていない。
また、半導体チップCP1の表面のパッドPD5a,PD6a,PD7aは、半導体チップCP2の表面のパッドPD8にボンディングワイヤBWを介してそれぞれ電気的に接続されている。また、半導体チップCP2の表面のパッドPD5b,PD6b,PD7bは、半導体チップCP1の表面のパッドPD9にボンディングワイヤBWを介してそれぞれ電気的に接続されている。
ボンディングワイヤBWは、導電性の接続部材(接続用部材)であるが、より特定的には導電性のワイヤであり、例えば金(Au)線または銅(Cu)線などの金属細線からなる。ボンディングワイヤBWは、封止樹脂部MR内に封止されており、封止樹脂部MRから露出されない。
ここで、半導体チップCP1のパッドPD5a,PD6a,PD7aと半導体チップCP2のパッドPD8との間を接続するボンディングワイヤBWを、以下では、符号BW8を付してボンディングワイヤBW8と称することとする。また、半導体チップCP2のパッドPD5b,PD6b,PD7bと半導体チップCP1のパッドPD9との間を接続するボンディングワイヤBWを、以下では、符号BW9を付してボンディングワイヤBW9と称することとする。
半導体チップCP1と半導体チップCP2との間は、ボンディングワイヤBW8,BW9で接続されているが、それ以外のボンディングワイヤBW(導電性の接続部材)では接続されていない。このため、半導体チップCP1と半導体チップCP2との間での電気信号の伝送は、半導体チップCP1のパッドPD5a,PD6a,PD7aからボンディングワイヤBW8を介して半導体チップCP2のパッドPD8に至る経路と、半導体チップCP2のパッドPD5b,PD6b,PD7bからボンディングワイヤBW9を介して半導体チップCP2のパッドPD9に至る経路だけである。
そして、半導体チップCP1のパッドPD5a,PD6a,PD7aは、半導体チップCP1内に形成された上記コイルCL5,CL6(二次コイル)に接続されているが、このコイルCL5,CL6は半導体チップCP1内に形成された回路には導体(内部配線)を介しては繋がっておらず、半導体チップCP1内の上記コイルCL7,CL8(一次コイル)と磁気的に結合したものである。このため、半導体チップCP1内に形成された回路(上記送信回路TX1など)から、半導体チップCP1内の上記コイルCL7,CL8(一次コイル)および上記コイルCL5,CL6(二次コイル)を介して電磁誘導で伝達された信号だけが、パッドPD5a,PD6a,PD7aからボンディングワイヤBW8を介して半導体チップCP2(上記受信回路RX1)に入力される。
また、半導体チップCP2のパッドPD5b,PD6b,PD7bは、半導体チップCP2内に形成された上記コイルCL5,CL6(二次コイル)に接続されているが、このコイルCL5,CL6は半導体チップCP2内に形成された回路には導体(内部配線)を介しては繋がっておらず、半導体チップCP2内の上記コイルCL7,CL8(一次コイル)と磁気的に結合したものである。このため、半導体チップCP2内に形成された回路(上記送信回路TX2など)から、半導体チップCP2内の上記コイルCL7,CL8(一次コイル)および上記コイルCL5,CL6(二次コイル)を介して電磁誘導で伝達された信号だけが、パッドPD5b,PD6b,PD7bからボンディングワイヤBW9を介して半導体チップCP1(上記受信回路RX2)に入力される。
半導体チップCP1と半導体チップCP2とは、電圧レベル(基準電位)が異なっている。例えば、駆動回路DRは、モータなどの負荷LODを駆動するが、具体的には、モータなどの負荷LODのスイッチ(スイッチング素子)を駆動または制御し、スイッチの切り換えを行う。このため、この駆動対象のスイッチがオンになると、半導体チップCP2の基準電位(電圧レベル)は、駆動対象のスイッチの電源電圧(動作電圧)にほぼ一致する電圧に上昇する場合があり、この電源電圧は、かなりの高電圧(例えば数百V〜数千V程度)である。このため、半導体チップCP1と半導体チップCP2とで、電圧レベル(基準電位)に大きな差が生じてしまう。つまり、駆動対象のスイッチのオン時には、半導体チップCP2には、半導体チップCP1に供給されている電源電圧(例えば数V〜数十V程度)よりも高い電圧(例えば数百V〜数千V程度)が供給されることになる。
しかしながら、上述のように、半導体チップCP1と半導体チップCP2との間で電気的に伝わるのは、半導体チップCP1内の一次コイル(CL7,CL8)および二次コイル(CL5,CL6)を介して電磁誘導で伝達された信号か、あるいは、半導体チップCP2内の一次コイル(CL7,CL8)および二次コイル(CL5,CL6)を介して電磁誘導で伝達された信号だけである。このため、半導体チップCP1の電圧レベル(基準電位)と半導体チップCP2の電圧レベル(基準電位)が相違していても、半導体チップCP2の電圧レベル(基準電位)が半導体チップCP1に入力されたり、あるいは、半導体チップCP1の電圧レベル(基準電位)が半導体チップCP2に入力されることを、的確に防止することができる。すなわち、駆動対象のスイッチがオンになって半導体チップCP2の基準電位(電圧レベル)が駆動対象のスイッチの電源電圧(例えば数百V〜数千V程度)にほぼ一致する電圧にまで上昇したとしても、この半導体チップCP2の基準電位が半導体チップCP1に入力されることを的確に防止することができる。このため、電圧レベル(基準電位)が異なる半導体チップCP1,CP2間で電気信号の伝達を的確に行うことができる。また、半導体チップCP1と半導体チップCP2の信頼性を高めることができる。また、半導体パッケージPKGの信頼性を向上させることができる。また、半導体パッケージPKGを用いた電子装置の信頼性を向上させることができる。
また、磁気的に結合したコイルを利用して半導体チップ間の信号の伝達を行っていることにより、半導体パッケージPKGの小型化を図りつつ、信頼性を向上させることができる。
半導体パッケージPKGは、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、まず、ダイパッドDP1,DP2と複数のリードLDとがフレーム枠に連結されたリードフレームを用意し、ダイボンディング工程を行って、このリードフレームのダイパッドDP1,DP2上にダイボンド材(接着材)DBを介して半導体チップCP1,CP2をそれぞれ搭載して接合する。それから、ワイヤボンディング工程を行う。これにより、半導体チップCP1の複数のパッドPD10は、複数のリードLDと複数のボンディングワイヤBWを介して電気的に接続される。また、半導体チップCP2の複数のパッドPD11は、他の複数のリードLDに他の複数のボンディングワイヤBWを介して電気的に接続される。また、半導体チップCP1の複数のパッドPD5a,PD6a,PD7aは、半導体チップCP2の複数のパッドPD8と複数のボンディングワイヤBW8を介して電気的に接続される。また、半導体チップCP2の複数のパッドPD5b,PD6b,PD7bは、半導体チップCP1の複数のパッドPD9と複数のボンディングワイヤBW9を介して電気的に接続される。それから、樹脂封止工程を行って、半導体チップCP1,CP2、ダイパッドDP1,DP2、複数のリードLDおよび複数のボンディングワイヤBW(ボンディングワイヤBW8,BW9を含む)を封止する封止樹脂部MRを形成する。それから、それぞれのインナリード部が封止樹脂部MRに封止されている複数のリードLDをリードフレームのフレーム枠から切断して分離してから、複数のリードLDのアウタリード部を折り曲げ加工する。このようにして、半導体パッケージPKGを製造することができる。
ここで、半導体パッケージPKGが搭載される製品用途例について説明する。例えば、自動車、洗濯機などの家電機器のモータ制御部、スイッチング電源、照明コントローラ、太陽光発電コントローラ、携帯電話器、あるいはモバイル通信機器などがある。
例えば、自動車用途としては、半導体チップCP1が、低電圧の電源電圧が供給される低圧チップであり、その際の供給電源電圧は、例えば5V程度である。一方、駆動回路DRの駆動対象のスイッチの電源電圧は、例えば600V〜1000Vもしくはそれ以上の高電圧であり、スイッチのオン時には、この高電圧が半導体チップCP2に供給され得る。
なお、ここでは、半導体パッケージPKGのパッケージ形態として、SOP(Small Outline Package)の場合を例に挙げて説明したが、SOP以外にも適用可能である。
(実施の形態2)
図43は、本実施の形態2の半導体装置の断面構造を示す要部断面図であり、上記実施の形態1の上記図3に相当するものである。
上記実施の形態1では、上記図3にも示されているように、トランスの一次コイルであるコイルCL1は、パッドPD1よりも下層に形成されていた。上記図3の場合は、パッドPD1が形成されている第3配線層よりも一つ下層の第2配線層に(すなわち配線M2と同層に)、コイルCL1が形成されていた。
それに対して、本実施の形態2では、図43にも示されているように、トランスの一次コイルであるコイルCL1は、パッドPD1と同層に形成されている。すなわち、パッドPD1が形成されている第3配線層に(すなわち配線M3と同層に)、コイルCL1が形成されている。このため、本実施の形態2では、コイルCL1とコイルCL2との間には、層間絶縁膜IL3は介在しておらず、積層膜LFのみが介在しており、積層膜LFの酸化シリコン膜LF1は、コイルCL1を覆うようにコイルCL1に接するように形成されている。
それ以外の構成は、本実施の形態2も上記実施の形態1と基本的には同じであるため、ここではその繰り返しの説明は省略する。
本実施の形態2でも、上記実施の形態1で説明したのとほぼ同様の効果を得ることができる。但し、上記実施の形態1は、本実施の形態2に比べて、以下のような利点がある。
すなわち、本実施の形態2では、コイルCL1とコイルCL2との間には積層膜LFが介在しており、この積層膜LFによりコイルCL1とコイルCL2との間の絶縁耐圧を確保している。一方、上記実施の形態1では、コイルCL1とコイルCL2との間には、積層膜LFだけでなく層間絶縁膜(上記図3の場合は層間絶縁膜IL3)も介在しており、この積層膜LFと層間絶縁膜とによりコイルCL1とコイルCL2との間の絶縁耐圧を確保している。このため、コイルCL1とコイルCL2との間に層間絶縁膜(上記図3の場合は層間絶縁膜IL3)も介在する分、本実施の形態2よりも上記実施の形態1の方が、コイルCL1とコイルCL2との間の絶縁耐圧をより高くすることができる。
また、本実施の形態2のようにコイルCL1とパッドPD1とを同層にすると、コイルCL1の厚みが厚くなる。これは、パッドPD1の厚みは、パッドPD1よりも下層の配線(ここでは配線M1および配線M2)の厚みよりも厚い(大きい)ためである。コイルCL1の厚みが厚いと、コイルCL1を構成する渦巻状のコイル配線の隣接間を絶縁膜で埋め込みにくくなるため、その絶縁膜の成膜工程を比較的厳密に管理する必要がある。それに対して、上記実施の形態1では、コイルCL1をパッドPD1よりも下層に形成しているため、コイルCL1の厚みをパッドPD1の厚みよりも薄く(小さく)することができる。このため、コイルCL1を構成する渦巻状のコイル配線の隣接間を絶縁膜で埋め込みやすくなるため、その絶縁膜の成膜工程の管理が容易になる。このため、半導体装置を製造しやすくなる。また、コイルCL1を構成する渦巻状のコイル配線の隣接間を絶縁膜でより確実に埋め込むことができるようになるため、半導体装置の信頼性を、更に向上させることができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。