JP2017033966A - 薄膜高分子積層コンデンサの製造方法及び薄膜高分子積層コンデンサ - Google Patents

薄膜高分子積層コンデンサの製造方法及び薄膜高分子積層コンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】硬化度が十分に高い薄膜高分子積層コンデンサを製造する。【解決手段】蒸着してなるモノマー層を硬化して樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程と、蒸着金属薄膜層形成工程とを回転ドラム上で交互に繰り返して積層体2を製造する。モノマーとして、化学式(1)で表されるジアクリレート化合物と化学式(2)で表されるジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いる。但し、化学式(1)及び化学式(2)中、符号Aは脂環式炭化水素を含む有機基を示す。【選択図】図2

Description

本発明は、薄膜高分子積層コンデンサの製造方法及び薄膜高分子積層コンデンサに関する。
図2は、薄膜高分子積層コンデンサ1の斜視図である。図2中、符号2は薄膜高分子からなる樹脂薄膜層と、金属蒸着膜からなる金属薄膜層とが交互に積層された積層体を示し、符号3,4は外部電極を示す。
薄膜高分子積層コンデンサ1は、モノマーを蒸着してモノマー層を形成した後当該モノマー層に電子線を照射してモノマー層を硬化することにより形成された樹脂薄膜層と、金属材料を蒸着して形成された金属薄膜層とが交互に積層された積層体2を有する薄膜高分子積層コンデンサである(図2参照。)。
薄膜高分子積層コンデンサ1は、樹脂フィルム上に金属薄膜層が形成された長尺フィルムを円筒状に巻き取ることにより製造する通常のフィルムコンデンサよりも小型化が容易であるという特徴を有する。また、薄膜高分子積層コンデンサ1は、積層セラミックコンデンサよりも軽量であり、積層セラミックコンデンサのような圧電特性がない。さらには、オープン故障モードによる発煙、発火リスクが低く、安定した温度特性を有するという特徴を有する。これらのことから、薄膜高分子積層コンデンサ1は、近年、種々の分野に広く使用されるようになってきている。
薄膜高分子積層コンデンサ1は、真空チャンバー内で、モノマーを蒸着してモノマー層を形成した後当該モノマー層に電子線を照射してモノマー層を硬化することにより樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程と、金属材料を蒸着して金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成工程とを回転ドラム上で交互に繰り返して行うことにより、回転ドラム上に樹脂薄膜層と金属薄膜層とが交互に積層された積層体を製造する積層体製造工程を含む積層フィルムコンデンサの製造方法、により製造することができる(例えば、特許文献1及び2参照。)。
特許文献1及び2には、モノマーとして、ジシクロペンタジエンメタノールジアクリレートやトリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどの種々のアクリレート化合物を用いることが開示されている。また、モノマーとして、メタクリレート化合物を用いることも開示されている。
しかしながら、これらのモノマーのうちメタクリレート化合物は硬化性が劣るため、メタクリレート化合物を薄膜高分子積層コンデンサの誘電体材料に用いることは困難であることから、現在一般的にはアクリレート化合物が薄膜高分子積層コンデンサの誘電体材料として使用されている。
特開2002−198257号公報 特開平6−29147号公報
ところで、コンデンサの技術分野においては、従来よりも高温・高湿環境下における寿命が長いコンデンサ、及び、このようなコンデンサを製造可能なコンデンサの製造方法が常に求められており、薄膜高分子積層コンデンサの技術分野においても例外ではない。しかしながら、薄膜高分子積層コンデンサの誘電体材料としてアクリレート化合物を用いた場合には、樹脂薄膜層の吸湿性が高いため、高温・高湿雰囲気下における寿命が長い薄膜高分子積層コンデンサを実現するのが困難である。
そこで、モノマーとして、アクリレート化合物の代わりに、アクリレート化合物の場合よりも、吸湿性が低いポリマーを製造可能なメタクリレート化合物を用いることが考えられる。薄膜高分子積層コンデンサの樹脂薄膜層として、吸湿性が低いポリマーを用いることによって、高温・高湿環境下における寿命を長くできると考えられるからである。
しかしながら、本発明の発明者らは、種々の実験を重ねた結果、モノマーとして、一般的なメタクリレート化合物を用いたのでは、その硬化性の低さから、適切な硬化度の樹脂薄膜層が得られず、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサを製造することが困難であることが分かった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、従来よりも高温・高湿雰囲気下における寿命が長く、かつ、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサ、及び、このような薄膜高分子積層コンデンサを製造可能な薄膜高分子積層コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、さらなる実験を重ねた結果、モノマーとして、一般的なメタクリレート化合物ではなく、所定の脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と所定の脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いれば、得られる樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが可能となり、その結果、従来よりも高温・高湿雰囲気下における寿命が長く、かつ、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となることを見出し、本発明(薄膜高分子積層コンデンサの製造方法及び薄膜高分子積層コンデンサ)を完成させるに至った。
[1]本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法は、真空チャンバー内で、モノマーを蒸着してモノマー層を形成した後当該モノマー層に電子線を照射して前記モノマー層を硬化することにより樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程と、金属材料を蒸着して金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成工程とを回転ドラム上で交互に繰り返して行うことにより、前記回転ドラム上に前記樹脂薄膜層と前記金属薄膜層とが交互に積層された積層体を製造する積層体製造工程を含む薄膜高分子積層コンデンサの製造方法であって、前記樹脂薄膜層形成工程においては、前記モノマーとして、下記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と下記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いて前記モノマー層を形成することを特徴とする。
Figure 2017033966
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但し、化学式(1)及び化学式(2)中、符号Aは脂環式炭化水素を含む有機基を示す。
[2]本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法において、前記樹脂薄膜層形成工程においては、前記混合物モノマーとして、前記ジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%以上である混合物モノマーを用いて前記モノマー層を形成することが好ましい。
[3]本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法において、前記樹脂薄膜層形成工程においては、前記混合物モノマーとして、前記ジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%〜70wt%の範囲内にある混合物モノマーを用いて前記モノマー層を形成することが好ましい。
[4]本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法において、前記樹脂薄膜層形成工程においては、前記樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が6kV/μm〜23kV/μmの範囲内、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「前記回転ドラムのドラム幅(m)×前記回転ドラムの回転速度(m/s)×前記樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値(電子線の電流値条件に関する値)が70〜2000の範囲内となる条件で前記モノマー層に電子線を照射することが好ましい。
[5]本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法においては、前記樹脂薄膜層形成工程と前記金属薄膜層形成工程との間に、前記樹脂薄膜層形成工程で形成された前記樹脂薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理する第1プラズマ処理工程を含むことが好ましい。
[6]本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法においては、前記金属薄膜層形成工程と前記樹脂薄膜層形成工程との間に、前記金属薄膜層形成工程で形成された前記金属薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程を含むことが好ましい。
[7]本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法において、前記金属薄膜層形成工程においては、蒸発源と前記回転ドラムとの距離が50mm〜300mmの範囲内となる条件で金属材料を蒸着して前記金属薄膜層を形成することが好ましい。
[8]本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法において、前記積層体製造工程においては、前記樹脂薄膜層形成工程と前記金属薄膜層形成工程とを0℃〜20℃の範囲内にある所定温度に冷却した回転ドラム上で交互に繰り返して行うことが好ましい。
[9]本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法においては、前記ジアクリレート化合物が、下記の化学式(3)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートであり、前記ジメタクリレート化合物が、下記の化学式(4)で表されるトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートであることが好ましい。
Figure 2017033966
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[10]本発明の薄膜高分子積層コンデンサは、樹脂薄膜層と金属薄膜層とが交互に積層された積層体をコンデンサ素子として有する薄膜高分子積層コンデンサであって、前記樹脂薄膜層は、下記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と下記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーが結合してなる樹脂薄膜層であることを特徴とする。
Figure 2017033966
Figure 2017033966
但し、化学式(1)及び化学式(2)中、符号Aは脂環式炭化水素を含む有機基を示す。
[11]本発明の薄膜高分子積層コンデンサにおいては、前記ジアクリレート化合物が、下記の化学式(3)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートであり、前記ジメタクリレート化合物が、下記の化学式(4)で表されるトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートであることが好ましい。
Figure 2017033966
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本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法においては、モノマーとして、上記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いてモノマー層を形成することとしている。すなわち、後述する予備試験の結果からも明らかなように(試験例1参照)、樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが可能なジメタクリレート化合物である上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を上記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物に混合して作製した混合物モノマーを用いてモノマー層を形成することとしている。
その結果、本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、後述する本試験1及び2の結果からも明らかなように、樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが可能となり(試験例1参照)、また、ジメタクリレート化合物が元来ジアクリレート化合物よりも吸湿性が低いなどのことから、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となる(試験例3〜5参照)。従って、本発明の薄膜高分子積層コンデンサは、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサとなる。
また、本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、後述する本試験2の結果からも明らかなように、製造工程(特に、積層体を取り出したり積層体を平坦化したりする過程)中に積層体割れによる不良の発生を低いレベルに抑制することが可能となることも分かった(試験例2参照)。これは、モノマーとして上記した混合物モノマーを用いて作製した樹脂薄膜層がモノマーとしてジメタクリレート化合物のみを用いて作製した樹脂薄膜層よりも可撓性が高くなって積層体が割れ難くなることによるものと考えられる。
なお、上記した化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有する化合物を用いる理由は以下の通りである。すなわち、上記した化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有する化合物を用いる場合には、鎖状炭化水素骨格を有する化合物を用いる場合よりもモノマーの反応性が高く、得られる樹脂薄膜層の硬化度を高くすることが可能となるからである。特に、脂環式炭化水素骨格がトリシクロデカンである場合には、その効果は大きいものとなる。また、分子内に2つの官能基を有するジメタクリレート化合物を用いる場合には、分子内に1つの官能基しか有しないメタクリレート化合物を用いる場合よりもモノマーの反応性が高く、得られる樹脂薄膜層の硬化度を高くすることが可能となるからである。なお、分子内に3つ以上の官能基を有するメタクリレート化合物は、分子内に2つの官能基を有するジメタクリレート化合物とは異なり、反応性は高いものの、粘度が高すぎて薄膜高分子積層コンデンサの製造に用いるのが困難である。
また、本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、混合物モノマーに用いるメタクリレート化合物として、上記した化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を用いることとしたことから、後述する本試験1及び2の結果からも明らかなように(試験例3参照)、高温・高湿環境下における寿命が長い薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となる。従って、本発明の薄膜高分子積層コンデンサは、高温・高湿環境下における寿命が長い薄膜高分子積層コンデンサとなる。具体的には、「60℃・95%RH」又は「85℃・85%RH」の寿命性能保証が可能となる。
また、本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、混合物モノマーに用いるメタクリレート化合物として、上記した化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を用いることとしたことから、後述する本試験1及び2の結果からも明らかなように(試験例4参照)、吸湿量が低い薄膜高分子積層コンデンサ、すなわちフロアライフ性能(吸湿リフロー性能)が高い薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となる。従って、本発明の薄膜高分子積層コンデンサは、フロアライフ性能(吸湿リフロー性能)が高い薄膜高分子積層コンデンサとなる。
さらにまた、本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、混合物モノマーに用いるメタクリレート化合物として、上記した化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を用いることとしたことから、後述する本試験1及び2の結果からも明らかなように(試験例5参照)、誘電正接(tanδ)が小さい薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となる。従って、本発明の薄膜高分子積層コンデンサは、誘電正接(tanδ)が小さい薄膜高分子積層コンデンサとなる。
実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法を実施するための製造装置10を示す図である。 薄膜高分子積層コンデンサ1の斜視図である。 予備試験の結果を示す図表である。 本試験1の結果を示す図表である。 本試験2の結果を示す図表である。
以下、本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法について、図に示す実施形態に基づいて説明する。
[実施形態]
1.薄膜高分子積層コンデンサの製造方法
図1は、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法を実施するための製造装置10を示す図である。
製造装置10は、図1に示すように、真空チャンバー12と、真空チャンバー12内で回転する回転ドラム14と、回転ドラム14の回転方向14aに沿って回転ドラム14の周囲に配設された、モノマー蒸着装置18と、電子線照射装置20と、第1プラズマ処理装置22と、金属薄膜層パターニング装置24と、金属蒸着装置26と、第2プラズマ処理装置28とを備える。なお、真空チャンバー12には、図示しない真空排気装置及びパージ装置が接続されている。
回転ドラム14は、図示しない回転駆動装置により回転方向14a方向に回転駆動される。回転ドラム14の回転速度は、自由に設定できるが、通常15rpm〜70rpm程度である。回転ドラム14の外周面(基板面)は平滑に、好ましくは鏡面状に仕上げられており、冷却機構16により、好ましくは0℃〜20℃の範囲内、より好ましくは5℃〜15℃の範囲内の所定温度に冷却されている。
モノマー蒸着装置18は、樹脂薄膜層を形成するためのモノマーを加熱して蒸発・気化させ、回転ドラム14上に蒸着・堆積させる。
電子線照射装置20は、モノマー樹脂を重合又は架橋させ、モノマー層を樹脂薄膜層とする。
第1プラズマ処理装置22は、樹脂薄膜層の表面を酸素プラズマ処理により活性化させて、樹脂薄膜層と金属薄膜層との接着性を向上させるための酸素プラズマ装置である。実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法においては、プラズマの熱により樹脂薄膜層の重合反応を促進して樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くする働きもする。なお、第1プラズマ処理装置22は、酸素プラズマ処理装置に限定されず、窒素プラズマ処理装置、アルゴンプラズマ処理装置その他のプラズマ処理装置であってもよい。
金属薄膜層パターニング装置24は、例えばオイルであるパターニング材料を蒸発・気化させたものをノズルから噴射し樹脂薄膜層表面に帯状に堆積させる。
金属蒸着装置26は、抵抗加熱蒸着法により、回転ドラム14の表面に金属材料を蒸着して金属薄膜層を形成する。具体的には、坩堝(金属蒸着源)に収容された金属材料を抵抗加熱により加熱することにより当該金属材料が蒸発・気化して回転ドラム14上に堆積する。なお、金属蒸着装置26は、抵抗加熱蒸着法によるものに限定されず、電子ビーム加熱蒸着法等の他の真空蒸着法又はスパッタリング法等によるものであってもよい。
第2プラズマ処理装置28は、金属薄膜層パターニング装置24により堆積されたパターニング材料を除去するとともに、金属薄膜層の表面を酸素プラズマ処理により活性化させて、金属薄膜層と樹脂薄膜層との接着性を向上させるための酸素プラズマ処理装置である。実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法においては、プラズマの熱により樹脂薄膜層の重合反応を促進して樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くする働きもする。なお、第2プラズマ処理装置28は、酸素プラズマ処理装置に限定されず、窒素プラズマ処理装置、アルゴンプラズマ処理装置その他のプラズマ処理装置であってもよい。
制御装置は、モノマー蒸着装置18、電子線照射装置20、第1プラズマ処理装置22、金属薄膜層パターニング装置24、金属蒸着装置26及び第2プラズマ処理装置28並びに図示しない真空排気装置及びパージ装置の動作を制御する。
2.実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法
実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法を説明する。
まず、モノマー蒸着装置18により回転ドラム14の外周にモノマー層を形成し、当該モノマー層を電子線照射装置20により硬化させて樹脂薄膜層とする(樹脂薄膜層形成工程)。次に、第1プラズマ処理装置22により樹脂薄膜層の表面を酸素プラズマ処理により活性化する(第1プラズマ処理工程)。次に、金属薄膜層パターニング装置24により樹脂薄膜層上にパターニング材料を帯状に堆積させる。次に、金属蒸着装置26により樹脂薄膜層上に金属薄膜層を形成する(金属薄膜層形成工程)。この際、パターニング材料が堆積された箇所には金属薄膜層は形成されず、この箇所が積層体の電気的絶縁部分となる。樹脂薄膜層の層厚は、例えば100nm〜1500nm(0.1μm〜1.5μm)であり、金属薄膜層の層厚は、例えば10nm〜40nm(0.01μm〜0.04μm)である。
次に、第2プラズマ処理装置28により金属薄膜層の表面を酸素プラズマ処理により活性化する(第2プラズマ処理工程)。これにより、金属薄膜層パターニング装置24により堆積されたパターニング材料を除去することができる。また、モノマー蒸着装置18により再度モノマー層を形成する際に、金属薄膜層を構成する金属と樹脂薄膜層を構成するモノマーに含まれる炭素とが化学的に結合し、その結果、金属薄膜層と樹脂薄膜層との接着性が向上する。
樹脂薄膜層形成工程においては、モノマーとして、上記した化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と上記した化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いてモノマー層を形成する。具体的には、上記した混合物モノマーを加熱して蒸発・気化させ、当該蒸発・気化された混合物モノマーを、冷却されている回転ドラム14上に堆積させてモノマー層を形成する。
なお、実施形態においては、混合物モノマーとして、上記したジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%以上である混合物モノマーを用いてモノマー層を形成することが好ましい(後述する本試験1(試験例3〜5)の結果を参照)。また、より高容量の薄膜高分子積層コンデンサ(試料カテゴリCの薄膜高分子積層コンデンサ)を製造する場合には、混合物モノマーとして、ジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%〜70wt%の範囲内にある混合物モノマーを用いてモノマー層を形成することが好ましい(後述する本試験2(試験例3〜5)の結果を参照)。
樹脂薄膜層形成工程においては、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が6kV/μm〜23kV/μmの範囲内、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値(電子線の電流値条件に関する値)が70〜2000の範囲内となる条件でモノマー層に電子線を照射する。
ここで、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧を6kV/μm〜23kV/μmの範囲内としたのは以下の理由による。すなわち、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧を6kV/μmよりも低くした場合には、モノマーの重合反応(架橋反応)を十分に進行させて、得られる樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが困難となる場合があるからである。また、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧を23kV/μmよりも高くすると、下層の積層体にダメージを与えてコンデンサ性能を劣化させる不具合が生じる可能性があるからである。なお、一般に薄膜高分子積層コンデンサの製造に使用されているアクリレート化合物の場合、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧は5kV/μm〜15kV/μm程度が適正な条件となるため、本発明の加速電圧条件はその1.2倍〜2倍程度となる。
なお、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧は、モノマーの配合比率に応じて適切な値に設定することが好ましい。例えば、ジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%の場合は、6kV/μm〜15kV/μmが好ましく、ジメタクリレート化合物の配合比率が70wt%の場合は、12kV/μm〜23kV/μmが好ましい。
また、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値を70〜2000の範囲内としたのは以下の理由による。すなわち、当該値を70よりも小さくした場合には、モノマーの重合反応(架橋反応)を十分に進行させて、得られる樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが困難となる場合があるからである。また、当該値を2000よりも大きくした場合には、得られる樹脂薄膜層の硬化度が高くなりすぎるために積層体自体が硬く脆くなり、後工程で積層体を回転ドラムから引き剥がす際や平坦化する際に割れてしまう不具合が生じやすくなるからである。このような観点から言えば、樹脂薄膜層形成工程においては、電子線の電流値条件に関する上記の値が100〜1000の範囲内となる条件でモノマー層に電子線を照射することがより一層好ましい。なお、モノマーとして、一般に薄膜高分子積層コンデンサで使用されているアクリレート化合物単独のモノマーを用いる場合、電子線の電流値条件に関する上記の値は50〜300程度が適正な条件となるため、本発明の電子線の電流条件はその1.4倍〜6.7倍程度となる。
なお、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値は、モノマーの配合比率に応じて適切な値に設定することが好ましい。例えば、ジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%の場合は、上記値が100〜500であることが好ましく、ジメタクリレート化合物の配合比率が70wt%の場合は、上記値が200〜1000であることが好ましい。
第1プラズマ処理工程においては、樹脂薄膜層形成工程で形成された樹脂薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理する。
ここで、第1プラズマ処理工程において、樹脂薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理することとしたのは以下の理由による。すなわち、樹脂薄膜層を50Wよりも小さい条件でプラズマ処理した場合には、樹脂薄膜層にプラズマ処理を施す過程で樹脂薄膜層を十分に加熱することができないことから、モノマーの重合反応(架橋反応)を十分に進行させて、得られる樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが困難となる場合があるからである。また、樹脂薄膜層を1000W程度でプラズマ処理すれば、樹脂薄膜層にプラズマ処理を施す過程で樹脂薄膜層を加熱する効果が十分に得られるため、樹脂薄膜層に対して1000Wよりも高い条件のプラズマ処理を施す必要がないからである。
金属薄膜層形成工程においては、抵抗加熱蒸着法により、蒸発源と回転ドラムとの距離が50mm〜300mmの範囲内となる条件で、回転ドラム14の表面に金属材料を蒸着して金属薄膜層を形成する。具体的には、坩堝(金属蒸着源)に収容された金属材料を抵抗加熱により加熱することにより当該金属材料を蒸発・気化させて回転ドラム14上に堆積する。金属材料としては、例えば、Al、Cu、Zn、Sn、Au、Ag及びPtから選択した少なくとも一種類の金属材料を使用することができる。
ここで、蒸発源と回転ドラムとの距離を50mm〜300mmの範囲内としたのは以下の理由による。すなわち、当該距離を300mmよりも長くした場合には、金属材料を蒸着する過程で樹脂薄膜層を十分に加熱することができないことから、モノマーの重合反応(架橋反応)を十分に進行させて、得られる樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが困難となる場合があるからである。また、当該距離を50mmよりも短くした場合には、金属薄膜層を均一に形成することが困難となる場合があるからである。
第2プラズマ処理工程においては、金属薄膜層形成工程で形成された金属薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理する。
ここで、第2プラズマ処理工程において、金属薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理することとしたのは以下の理由による。すなわち、金属薄膜層を50Wよりも小さい条件でプラズマ処理した場合には、金属薄膜層にプラズマ処理を施す過程で樹脂薄膜層を十分に加熱することができないことから、モノマーの重合反応(架橋反応)を十分に進行させて、得られる樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが困難となる場合があるからである。また、金属薄膜層を1000W程度でプラズマ処理すれば、金属薄膜層にプラズマ処理を施す過程で樹脂薄膜層を加熱する効果が十分に得られるため、金属薄膜層に対して1000Wよりも高い条件のプラズマ処理を施す必要がないからである。
実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法においては、積層体製造工程を、0℃〜20℃の範囲内にある所定温度に冷却した回転ドラム14上で行う。回転ドラム14を0℃〜20℃の範囲内にある所定温度に冷却するためには、回転ドラム14の内側にある空間に−5℃〜20℃の範囲内の冷却媒体(不凍液又は水)を循環させることにより行う。
ここで、積層体製造工程を、0℃〜20℃の範囲内にある所定温度に冷却した回転ドラム14上で行うこととしたのは以下の理由による。すなわち、積層体製造工程を0℃よりも低い温度に冷却した回転ドラム上で行う場合には、モノマーの硬化が阻害され適切な樹脂薄膜層を得ることが困難となる場合があるからである。また、積層体製造工程を20℃よりも高い温度の回転ドラム上で行う場合には、回転ドラム14の外周面への気化したモノマーの付着効率が低下してしまう場合があるからである。
以上の工程を繰り返すことにより、樹脂薄膜層と帯状の電気的絶縁部分を除く金属薄膜層とからなる積層単位を回転ドラム14の外周面に所定回数積層すると、円筒状の積層体が得られる。その後、この円筒状の積層体を半径方向に分割して、回転ドラム14から取り外し、図示しない扉を介して真空チャンバー12の外に取り出す。真空チャンバー12から取り出した積層体は、回転ドラム14の外周面とほぼ同じ曲率の円弧状に湾曲している。次に、この湾曲した積層体を加熱下でプレスして平坦化する。その後、平坦化した積層体をスティック状に切断した後、外部電極を形成し、これをさらにチップ状に切断すれば、薄膜高分子積層コンデンサが得られる。
すなわち、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法は、真空チャンバー12内で、モノマー蒸着装置18によりモノマーを蒸着してモノマー層を形成した後、電子線照射装置20によりモノマー層に電子線を照射してモノマー層を硬化することにより樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程と、金属蒸着装置26により金属材料を蒸着して金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成工程とを回転ドラム14上で交互に繰り返して行うことにより、回転ドラム14上に樹脂薄膜層と金属薄膜層とが交互に積層された積層体を製造する積層体製造工程を含む積層フィルムコンデンサの製造方法である。
そして、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法においては、樹脂薄膜層形成工程において、上述したように、モノマーとして、上記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いてモノマー層を形成する。
上記のジアクリレート化合物としては、上記した化学式(3)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを好適に用いることができ、上記のジメタクリレート化合物としては、上記した化学式(4)で表されるトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートを好適に用いることができる。
3.実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法及び薄膜高分子積層コンデンサの効果
以上のように構成された、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、上記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いてモノマー層を形成することとしている。すなわち、後述する予備試験の結果からも明らかなように(試験例1参照)、樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが可能なジメタクリレート化合物である上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を上記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物に混合して調製した混合物モノマーを用いてモノマー層を形成することとしている。
その結果、本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、後述する本試験1及び2の結果からも明らかなように、樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが可能となり(試験例1参照)、また、ジメタクリレート化合物が元来ジアクリレート化合物よりも吸湿性が低いなどのことから、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となる(試験例3〜5参照)。従って、本発明の薄膜高分子積層コンデンサは、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサとなる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、後述する本試験1の結果からも明らかなように、製造工程中に積層体割れによる不良の発生を低いレベルに抑制することもできる(試験例2参照)。これは、上記したように、モノマーとして上記した混合物モノマーを用いて作製した樹脂薄膜層がモノマーとしてジメタクリレート化合物のみを用いて作製した樹脂薄膜層よりも可撓性が高くなって積層体が割れ難くなることによるものと考えられる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、混合物モノマーに用いるメタクリレート化合物として、上記した化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を用いることとしたことから、後述する本試験1及び2の結果からも明らかなように(試験例3参照)、高温・高湿環境下における寿命が長い薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となる。従って、本発明の薄膜高分子積層コンデンサは、高温・高湿環境下における寿命が長い薄膜高分子積層コンデンサとなる。具体的には、「60℃・95%RH」又は「85℃・85%RH」の寿命性能保証が可能となる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、混合物モノマーに用いるメタクリレート化合物として、上記した化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を用いることとしたことから、後述する本試験1及び2の結果からも明らかなように(試験例4参照)、吸湿量が低い薄膜高分子積層コンデンサ、すなわちフロアライフ性能(吸湿リフロー性能)が高い薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となる。従って、本発明の薄膜高分子積層コンデンサは、フロアライフ性能(吸湿リフロー性能)が高い薄膜高分子積層コンデンサとなる。
さらにまた、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、混合物モノマーに用いるメタクリレート化合物として、上記した化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を用いることとしたことから、後述する本試験1及び2の結果からも明らかなように(試験例5参照)、誘電正接(tanδ)が小さい薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となる。従って、本発明の薄膜高分子積層コンデンサは、誘電正接(tanδ)が小さい薄膜高分子積層コンデンサとなる。
なお、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、樹脂薄膜層形成工程において、混合物モノマーとして、ジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%以上である混合物モノマーを用いてモノマー層を形成することとした場合には、後述する本試験1及び2の結果からも明らかなように(試験例3参照)、特に、高温・高湿環境下における寿命が長い薄膜高分子積層コンデンサとなる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、樹脂薄膜層形成工程において、混合物モノマーとして、ジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%〜70wt%の範囲内にある混合物モノマーを用いてモノマー層を形成することとした場合には、後述する本試験2の結果からも明らかなように(試験例2参照)、特に、より高容量の薄膜高分子積層コンデンサ(試料カテゴリCの薄膜高分子積層コンデンサ)を製造する場合であっても、製造工程中に積層体割れによる不良の発生を低いレベルに抑制することもできる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、樹脂薄膜層形成工程において、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が6kV/μm〜23kV/μmの範囲内、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値が70〜2000の範囲内となる条件でモノマー層に電子線を照射することから、モノマー層に電子線を照射する過程でモノマーの重合反応(架橋反応)が進行し、適切な硬化度の樹脂薄膜層を得ることができる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、樹脂薄膜層形成工程と金属薄膜層形成工程との間に、樹脂薄膜層形成工程で形成された樹脂薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理する第1プラズマ処理工程を含むことから、第1プラズマ処理工程で樹脂薄膜層に対してプラズマ処理を施す過程で樹脂薄膜層が十分に加熱されるようになる結果、モノマーの重合反応(架橋反応)が進行し、得られる樹脂薄膜層の硬化度をより一層高くすることが可能となる。
この場合、モノマー層に電子線を照射して樹脂薄膜層とした直後にプラズマ処理(第1プラズマ処理)を行うことから、樹脂の硬化度を促進する効果が大きいものとなる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、金属薄膜層形成工程において、蒸発源と回転ドラムとの距離が50mm〜300mmの範囲内となる条件で金属材料を蒸着して金属薄膜層を形成することから、金属薄膜層形成工程で金属材料を蒸着する過程で樹脂薄膜層が十分に加熱されるようになる結果、モノマーの重合反応(架橋反応)が進行し、得られる樹脂薄膜層の硬化度をより一層高くすることが可能となる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、金属薄膜層形成工程と樹脂薄膜層形成工程との間に、金属薄膜層形成工程で形成された金属薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程を含むことから、第2プラズマ処理工程で樹脂薄膜層に対してプラズマ処理を施す過程で樹脂薄膜層が十分に加熱されるようになる結果、モノマーの重合反応(架橋反応)が進行し、得られる樹脂薄膜層の硬化度をより一層高くすることが可能となる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、積層体製造工程において、樹脂薄膜層形成工程と金属薄膜層形成工程とを0℃〜20℃の範囲内にある所定温度に冷却した回転ドラム上で交互に繰り返して行うことから、モノマーの付着効率を高くすることが可能となる。
なお、このように樹脂薄膜層形成工程を0℃〜20℃の範囲内にある所定温度に冷却した回転ドラム上で行う場合には、モノマー層が冷却されることから、モノマーの重合反応(架橋反応)の進行が遅くなるとも考えられる。しかしながら、後述する試験例1からも明らかなように、樹脂薄膜層形成工程において、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が6kV/μm〜23kV/μmの範囲内、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値が70〜2000の範囲内となる条件でモノマー層に電子線を照射することとし、第1プラズマ処理工程において、樹脂薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理することとし、金属薄膜層形成工程において、蒸発源と回転ドラムとの距離が50mm〜300mmの範囲内となる条件で金属材料を蒸着して金属薄膜層を形成することとし、第2プラズマ処理工程において、金属薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理することとしたことにより、適切な硬化度の樹脂薄膜層を得ることは十分可能であり、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサを製造することが可能となる。
また、実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法によれば、ジアクリレート化合物が、上記した化学式(3)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートであり、ジメタクリレート化合物が、上記した化学式(4)で表されるトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートであることから、製造時のモノマーの、蒸発性、回転ドラムへの付着効率、硬化性、及び、コンデンサ性能としての、高温・高湿環境下における寿命性能、吸湿量、誘電正接(tanδ)をバランス良く高い水準に保つことが可能となる。
[試験例]
以下、試験例により本発明の効果を説明する。
[予備試験]
まず、予備試験により、モノマーとして、上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を単独で用いた場合であっても、樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが可能であることを確認した。また、少なくとも中小容量の薄膜高分子積層コンデンサ(試料カテゴリAの薄膜高分子積層コンデンサ)を製造する場合においては、製造工程中における積層体割れによる不良率を低いレベルに維持可能であることを確認した。なお、予備試験においては、試験例1(硬化度)、試験例2(製造工程中における積層体割れによる不良率)、試験例3(「60℃・95%RH」の環境下で通電したときの容量変化率)、試験例4(「30℃・60%RH」の環境下においたときの容量変化率)及び試験例5(誘電正接(tanδ))の試験を行った。
1.試料の調製
[1]試料1
基本的には実施形態に係る薄膜高分子積層コンデンサの製造方法の場合と同様の積層体製造工程により積層体を作製し、当該積層体を用いて薄膜高分子積層コンデンサ(樹脂薄膜層の層厚:0.5μm、積層体の厚さ:1.4mm、容量:1μF、最高使用電圧:50V、チップサイズ:4532)を作製し、試料1とした。但し、モノマーとして、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いた。また、電子線照射の条件として、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が8kV/μm、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値(電子線の電流値条件に関する値)が117となる条件を採用した。
[2]試料2
モノマーとして、トリシクロデカンジメタノールジメタリレートを用いたこと以外は試料1の場合と同様の方法により積層体を作製し、当該積層体を用いて薄膜高分子積層コンデンサを作製し、試料2とした。
[3]試料3
電子線照射の条件として、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が14kV/μm、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値(電子線の電流値条件に関する値)が668となる条件を採用したこと以外は試料2の場合と同様の方法により積層体を作製し、当該積層体を用いて薄膜高分子積層コンデンサを作製し、試料3とした。
2.評価方法
[1]試験例1(硬化度)
積層体を製造した直後に樹脂薄膜層の硬化度を測定した。その測定は、赤外分光光度計で、積層体の樹脂薄膜層及び原料モノマーにおけるC=O基の吸光度とC=C基の吸光度を測定するとともに、樹脂薄膜層におけるC=O基の吸光度とC=C基の吸光度との第1比率と、原料モノマーにおけるC=O基の吸光度とC=C基の吸光度との第2比率とを用いて算出した。
[2]試験例2(積層体割れによる不良率)
各試料を作製する過程で積層体が割れることによる不良率を測定した。なお、試料2については、硬化度が低すぎて積層体自体の層間が剥離してしまい、薄膜高分子積層コンデンサを作製することができなかったため、試料1及び試料3についてのみ、試験例2に係る試験を行った。
[3]試験例3(高温・高湿環境下における寿命)
各試料のそれぞれを高温・高湿環境下(「60℃・95%RH」の環境下)で、最高使用電圧(直流電圧50V)を印加して1000時間放置した。その後、各試料を取り出して容量(高温・高湿環境下においたときの容量)を測定し、当該容量を、試料を高温・高湿環境下に置く前に測定した容量を基準として、容量がどれくらい減少しているかを測定した(高温・高湿環境下においたときの容量変化率)。試験例3においては、容量減少量が小さいほど、高温・高湿環境下における寿命が長いと判断できる。なお、上述したように、試料2については、硬化度が低すぎて薄膜高分子積層コンデンサを作製することができなかったため、試料1及び試料3についてのみ、試験例3に係る試験を行った。
[4]試験例4(吸湿量)
各試料のそれぞれを「30℃・60%RH」の環境下で250時間放置した。その後、各試料を取り出して容量(「30℃・60%RH」の環境下においたときの容量)を測定し、当該容量を、試料を「30℃・60%RH」の環境下に置く前に測定した容量を基準として、容量がどれくらい増加しているかを測定した(「30℃・60%RH」の環境下においたときの容量変化率)。試験例4においては、容量増加量が小さいほど、吸湿量が低いと判断できる。なお、上述したように、試料2については、硬化度が低すぎて薄膜高分子積層コンデンサを作製することができなかったため、試料1及び試料3についてのみ、試験例4に係る試験を行った。
[5]試験例5(誘電正接(tanδ))
各試料のそれぞれについてLCRメータにより1kHzの誘電正接(tanδ)を測定した。なお、上述したように、試料2については、硬化度が低すぎて薄膜高分子積層フィフィルムコンデンサを作製することができなかったため、試料1及び試料3についてのみ、試験例5に係る試験を行った。
3.評価結果
図3は、予備試験の結果を示す図表である。
図3からも分かるように、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートを用いて作製した試料(試料3)は、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料1)の場合と同様に、樹脂薄膜層が適切な硬化度で形成されており、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサを製造可能であることが分かった(試験例1参照)。また、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートを用いて作製した試料(試料3)は、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料1)の場合と同様に、積層体割れによる不良率が低いことが分かった(試験例2参照。)。また、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートを用いて作製した試料(試料3)は、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料1)よりも、高温・高湿環境下における寿命が長く(試験例3参照)、吸湿度が低く(試験例4参照)、誘電正接(tanδ)が小さく(試験例5参照)、総合的に優れた薄膜高分子積層コンデンサであることが分かった。
また、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートを用いるとともに、電子線照射の条件として、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が14kV/μm、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値が667となる条件を採用して作製した試料(試料3)は、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートを用いるとともに、電子線照射の条件として、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が8kV/μm、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値が117となる条件を採用して作製した試料(試料2)とは異なり、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサであることも分かった(試験例1参照)。
[本試験1]
次に、本試験1により、高容量の薄膜高分子積層コンデンサ(試料カテゴリBの薄膜高分子積層コンデンサ)を製造する場合においては、モノマーとして、上記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いて作製した試料(試料5〜9)が、モノマーとして、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料4)とほぼ同様に、樹脂薄膜層の硬化度を十分に高くすることが可能であることを確認した。また、製造工程中における積層体割れによる不良率を低いレベルに維持可能であることを確認した。また、モノマーとして、上記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いて作製した試料(試料5〜9)が、モノマーとして、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料4)よりも、高温・高湿環境下における寿命が長く(試験例3参照)、吸湿度が低く(試験例4参照)、誘電正接(tanδ)が小さく(試験例5参照)、総合的に優れた薄膜高分子積層コンデンサであることを確認した。
1.試料の調製
[1]試料4
基本的には試料1を作製する場合と同様の積層体製造工程により積層体を作製し、当該積層体を用いて薄膜高分子積層コンデンサを作製し、試料4とした。但し、薄膜高分子積層コンデンサとして試料1よりも大型で高容量の薄膜高分子積層コンデンサ(樹脂薄膜層の層厚:0.5μm、積層体の厚さ:2.6mm、容量:4.7μF、最高使用電圧:50V、チップサイズ:5750)を作製した。
[2]試料5〜9
モノマーとして、上記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いるとともに、電子線照射の条件として、樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が9〜14kV/μm、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「回転ドラムのドラム幅(m)×回転ドラムの回転速度(m/s)×樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値(電子線の電流値条件に関する値)が266〜667となる条件を採用したこと以外は試料4の場合と同様の方法により積層体を作製し、当該積層体を用いて薄膜高分子積層コンデンサを作製し、試料5〜9とした。但し、試料5についてはジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%である混合物モノマーを用い、試料6についてはジメタクリレート化合物の配合比率が30wt%である混合物モノマーを用い、試料7についてはジメタクリレート化合物の配合比率が50wt%である混合物モノマーを用い、試料8についてはジメタクリレート化合物の配合比率が70wt%である混合物モノマーを用い、試料9についてはジメタクリレート化合物の配合比率が85wt%である混合物モノマーを用いた。
[3]試料10
モノマーとして、上記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物を用いたこと以外は試料5〜9の場合と同様の方法により積層体を作製し、当該積層体を用いて薄膜高分子積層コンデンサを作製し、試料10とした。
2.評価方法
予備試験の場合と同様の試験例(試験例1〜5)により、試料4〜10についての評価を行った。
3.評価結果
図4は、本試験1の結果を示す図表である。
図4からも分かるように、モノマーとして上記の混合物モノマーを用いて作製した試料(試料5〜9)は、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料4)の場合と同様に、樹脂薄膜層が適切な硬化度で形成されており、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサを製造可能であることが分かった(試験例1参照)。また、モノマーとして上記の混合物モノマーを用いて作製した試料(試料5〜9)は、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料4)の場合と同様に、積層体割れによる不良率が低いことが分かった(試験例2参照)。なお、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの比率が高い試料9,10においては、数%ではあるが積層体割れによる不良が発生している。これは、ジメタクリレート化合物がジアクリレート化合物よりも硬化物が硬くて脆くなる傾向があることに加えて、予備試験よりも積層体の厚みが厚くなったためである。また、モノマーとして上記の混合物モノマーを用いて作製した試料(試料5〜9)は、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料4)よりも、高温・高湿環境下における寿命が長く(試験例3参照)、吸湿度が低く(試験例4参照)、誘電正接(tanδ)が小さく(試験例5参照)、総合的に優れた薄膜高分子積層コンデンサであることが分かった。特に、混合物モノマーとして、上記したジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%であっても高温・高湿度下においたときの容量変化率の改善率が40%であり(試験例3参照。)、高温・高湿度下における寿命特性に優れた薄膜高分子積層コンデンサを作製可能であることが分かった。
[本試験2]
次に、本試験2により、本試験1の試料(試料4〜10)よりも樹脂薄膜層が薄く、積層数が多いために積層体が割れ易い試料(すなわち、より高容量の薄膜高分子積層コンデンサ(試料カテゴリCの薄膜高分子積層コンデンサ)、試料11〜17)を用いて、樹脂の硬化度、積層体割れによる不良率、高温・高湿環境下における寿命、吸湿度及び誘電正接(tanδ)を評価した。
1.試料の調製
[1]試料11
基本的には試料4を作製する場合と同様の積層体製造工程により積層体を作製し、当該積層体を用いて薄膜高分子積層コンデンサを作製し、試料11とした。但し、薄膜高分子積層コンデンサとして試料4よりもさらに高容量の薄膜高分子積層コンデンサ(樹脂薄膜層の層厚:0.25μm、積層体の厚さ:2.6mm、容量:22μF、最高使用電圧:16V、チップサイズ:5750)を作製した。
[2]試料12〜16
基本的には試料5〜9を作製する場合と同様の積層体製造工程により積層体を作製し、当該積層体を用いて薄膜高分子積層コンデンサを作製し、試料12〜16とした。但し、薄膜高分子積層コンデンサとして試料5〜9よりもさらに高容量の薄膜高分子積層コンデンサ(樹脂薄膜層の層厚:0.25μm、積層体の厚さ:2.6mm、容量:22μF、最高使用電圧:16V、チップサイズ:5750)を作製した。
[3]試料17
基本的には試料10を作製する場合と同様の積層体製造工程により積層体を作製し、当該積層体を用いて薄膜高分子積層コンデンサを作製し、試料17とした。但し、薄膜高分子積層コンデンサとして試料10よりもさらに高容量の薄膜高分子積層コンデンサ(樹脂薄膜層の層厚:0.25μm、積層体の厚さ:2.6mm、容量:22μF、最高使用電圧:16V、チップサイズ:5750)を作製した。
2.評価方法
予備試験の場合と同様の試験例(試験例1〜5)により、試料11〜17についての評価を行った。
3.評価結果
図5は、本試験2の結果を示す図表である。
図5からも分かるように、モノマーとして上記の混合物モノマーを用いて作製した試料(試料11〜16)は、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料10)の場合と同様に、樹脂薄膜層が適切な硬化度で形成されており、所望の性能を有する薄膜高分子積層コンデンサを製造可能であることが分かった(試験例1参照)。また、モノマーとして上記の混合物モノマーを用いて作製した試料(試料11〜16)は、モノマーとしてトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いて作製した試料(試料10)よりも、高温・高湿環境下における寿命が長く(試験例3参照)、吸湿度が低く(試験例4参照)、誘電正接(tanδ)が小さく(試験例5参照)、総合的に優れた薄膜高分子積層コンデンサであることが分かった。特に、混合物モノマーとして、上記したジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%の場合であっても高温・高湿度下においたときの容量変化率の改善率が40%であり(試験例3参照。)、高温・高湿度下における寿命特性に優れた薄膜高分子積層コンデンサを作製可能であることが分かった。
なお、モノマーとして上記の混合物モノマーを用いて作製した試料(試料11〜16)のうち試料16及び上記のトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートのみを用いて作製した試料(試料17)は、積層体割れによる不良率が高くなる傾向を有することが分かった(試験例2参照)。この理由は、ジメタクリレート化合物がジアクリレート化合物よりも硬化物が硬くて脆くなる傾向があることに加え、樹脂薄膜層が薄くなったことで積層体に占める金属薄膜層の比率が高くなり、本試験1よりも積層体自体が硬くて脆くなったことによるものと考えられる。
以上、本発明の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法及び本発明の薄膜高分子積層コンデンサを上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
[1]実施形態においては、薄膜高分子積層コンデンサを製造する製造装置として、モノマー蒸着装置18、電子線照射装置20、第1プラズマ処理装置22、金属薄膜層パターニング装置24、金属蒸着装置26及び第2プラズマ処理装置28並びに真空排気装置、パージ装置及び制御装置を備える製造装置10を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの装置のうち1以上の装置(例えば第2プラズマ処理装置28)を備えない製造装置を用いることもできる。また、これらの装置に加えて別の装置(例えば樹脂薄膜層と金属薄膜層との接着性を向上させるためのカップリング材(Ti)を金属薄膜層の表面に堆積させる装置)をさらに備える製造装置を用いることもできる。
1…薄膜高分子積層コンデンサ、2…積層体、3,4…外部電極、10…製造装置、12…真空チャンバー、14…回転ドラム、16…冷却装置、18…モノマー蒸着装置、20…電子線照射装置、22…第1プラズマ処理装置、24…金属薄膜層パターニング装置、26…金属蒸着装置、28…第2プラズマ処理装置

Claims (11)

  1. 真空チャンバー内で、モノマーを蒸着してモノマー層を形成した後当該モノマー層に電子線を照射して前記モノマー層を硬化することにより樹脂薄膜層を形成する樹脂薄膜層形成工程と、金属材料を蒸着して金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成工程とを回転ドラム上で交互に繰り返して行うことにより、前記回転ドラム上に前記樹脂薄膜層と前記金属薄膜層とが交互に積層された積層体を製造する積層体製造工程を含む薄膜高分子積層コンデンサの製造方法であって、
    前記樹脂薄膜層形成工程においては、前記モノマーとして、下記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と下記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーを用いて前記モノマー層を形成することを特徴とする薄膜高分子積層コンデンサの製造方法。
    Figure 2017033966
    Figure 2017033966
    但し、化学式(1)及び化学式(2)中、符号Aは脂環式炭化水素を含む有機基を示す。
  2. 前記樹脂薄膜層形成工程においては、前記混合物モノマーとして、前記ジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%以上である混合物モノマーを用いて前記モノマー層を形成することを特徴とする請求項1に記載の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法。
  3. 前記樹脂薄膜層形成工程においては、前記混合物モノマーとして、前記ジメタクリレート化合物の配合比率が15wt%〜70wt%の範囲内にある混合物モノマーを用いて前記モノマー層を形成することを特徴とする請求項1に記載の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法。
  4. 前記樹脂薄膜層形成工程においては、前記樹脂薄膜層の層厚1μm当たりの加速電圧が6kV/μm〜23kV/μmの範囲内、かつ、「電子線の電流値(mA)」を「前記回転ドラムのドラム幅(m)×前記回転ドラムの回転速度(m/s)×前記樹脂薄膜層の層厚(μm)」で除して得られる値が70〜2000の範囲内となる条件で前記モノマー層に電子線を照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法。
  5. 前記樹脂薄膜層形成工程と前記金属薄膜層形成工程との間に、前記樹脂薄膜層形成工程で形成された前記樹脂薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理する第1プラズマ処理工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法。
  6. 前記金属薄膜層形成工程と前記樹脂薄膜層形成工程との間に、前記金属薄膜層形成工程で形成された前記金属薄膜層を50W〜1000Wの範囲内の条件でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法。
  7. 前記金属薄膜層形成工程においては、蒸発源と前記回転ドラムとの距離が50mm〜300mmの範囲内となる条件で金属材料を蒸着して前記金属薄膜層を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法。
  8. 前記積層体製造工程においては、前記樹脂薄膜層形成工程と前記金属薄膜層形成工程とを0℃〜20℃の範囲内にある所定温度に冷却した回転ドラム上で交互に繰り返して行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法。
  9. 前記ジアクリレート化合物が、下記の化学式(3)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートであり、前記ジメタクリレート化合物が、下記の化学式(4)で表されるトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の薄膜高分子積層コンデンサの製造方法。
    Figure 2017033966
    Figure 2017033966
  10. 樹脂薄膜層と金属薄膜層とが交互に積層された積層体をコンデンサ素子として有する薄膜高分子積層コンデンサであって、
    前記樹脂薄膜層は、下記の化学式(1)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジアクリレート化合物と下記の化学式(2)で表される脂環式炭化水素骨格を有するジメタクリレート化合物との混合物モノマーが結合してなる樹脂薄膜層であることを特徴とする薄膜高分子積層コンデンサ。
    Figure 2017033966
    Figure 2017033966
    但し、化学式(1)及び化学式(2)中、符号Aは脂環式炭化水素を含む有機基を示す。
  11. 前記ジアクリレート化合物が、下記の化学式(3)で表されるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートであり、前記ジメタクリレート化合物が、下記の化学式(4)で表されるトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートであることを特徴とする請求項10に記載の薄膜高分子積層コンデンサ。
    Figure 2017033966
    Figure 2017033966
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