JP4330602B2 - 積層コンデンサの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、PML型コンデンサの製造方法に関し、具体的には、PML型コンデンサ用積層体の製造時における性能安定化方法、更に特には減圧雰囲気における加熱による積層体の製造方法に関するものである。
フィルムコンデンサの性能指標のひとつに耐湿性能がある。一般的にフィルムコンデンサはPET、PP、PPSなどの生フィルム上に、内部電極となる金属を蒸着したもの(金属化蒸着フィルム)を利用して巻回または積層して製造されており、内部電極に用いられる金属は比較的安価で、加工が容易なため、アルミニウムが主に用いられている。一般的にアルミニウムは大気中の水分と容易に反応し、水和あるいは酸化され表面上は安定化するが、フィルムコンデンサの蒸着アルミニウムは非常に薄いため(数百オングストローム)、水和あるいは酸化が容易に電極全体に及び、そうした場合には、コンデンサ機能を発現できなくなってしまう。このような現象は、フィルムコンデンサの性能を大きく左右するものである。
積層フィルムコンデンサ内部に浸入する水分としては、電極と誘電体界面に沿って浸入し反応していくものと、誘電体自身が吸湿して内部電極に到達するものがあると考えられる。このように浸入した水分による水和反応により内部電極のアルミニウムが消失し、電気的導電性が失われ、コンデンサの静電容量発現に起因する電極面積の低下をもたらし、寿命に至る。
そのため、従来の積層フィルムコンデンサでは、樹脂を素子に含浸して硬化させることにより内部空間を減らしたり、更には厚いエポキシ系樹脂を用いて外装されるか、ケースに封入して物理的に水分が素子に到達するのを妨げる手法が一般的に知られている。このような手法は、コンデンサの体積を増加させ、全体積の約20%を占めることになる。
一方、PML型コンデンサは、真空中で数千層もの誘電体層と金属薄膜層を交互に積層し、製造される。誘電体層は放射性硬化型樹脂を蒸着・硬化して形成される。このコンデンサは、その製造方法において1.0μmより薄い誘電体層の形成が可能で、体積当たりの静電容量効率を大きく(小型大容量)することができる。
真空中で連続的に積層体を形成するPML型コンデンサでも、従来の積層フィルムコンデンサと同様に内部電極(金属薄膜層)に蒸着アルミニウムを用いるため、耐湿性能は重要な特性因子となる。PML型コンデンサの場合、積層体内部に存在するアルミニウム電極層は、その製造工程において一度も大気に晒されることがないため、一般的なフィルムコンデンサ用金属化蒸着フィルムのアルミニウムよりも非常に反応性が高い。そのため、通常のフィルムコンデンサよりも水分に対する反応性が非常に活性となることから、電極としての機能を損なわずに、内部電極を安定化処理することが非常に重要である。また、上述のような従来のフィルムコンデンサに採用されている樹脂を素子に含浸し、硬化させる手法では、PML型コンデンサの誘電体層が非常に薄いこと、層間密着性が従来のフィルムコンデンサより高いためにコンデンサ素子内部への樹脂の含浸が困難となり、外部を被覆するのみである。また、チップ型コンデンサの場合にはリード線端子がないため、外部電極が樹脂により被覆されないよう、加工もしくはマスキング等の手法が必要となり、製造工程が複雑となる。更にその樹脂上にエポキシ樹脂等の外装を行う手法では、小型大容量の有利性を損なってしまう。
そこで、従来の手法を用いずに、内部電極であるアルミニウムの水和反応を抑制し、耐湿性能を向上させる手法の確立が非常に重要である。そのために、特にはアルミニウムを内部電極に備えた積層体を熱処理することによって内部電極の改質を図ること、並びに水分の進入経路でもある誘電体層と内部電極層の層間密着性を向上させることで耐湿性能を向上させ、小型大容量の有利性を損なうことなく信頼性の高いPML型コンデンサを製造することが可能となる。
ここで、アルミニウムに代表される弁金属の表面に存在する酸化皮膜は、不動態皮膜とも呼ばれ、絶縁性、耐水性に効果があることが知られている。そこで、この皮膜をPML型コンデンサの内部電極に利用することができれば、小型大容量の有利性を損なうことなくコンデンサとして大きな耐湿性能向上を得ることが出来る。
アルミニウムの酸化皮膜の形成方法としては、陽極酸化、熱処理などが知られている。一般的な陽極酸化は、ほぼ中性の水溶液中にアルミニウムを陽極として電解により行われるが、水溶液を使用することから、乾式のフィルムコンデンサの製造に適用することは難しい。そのため、熱処理が安易な手法となるが、いずれの方法においてもアルミニウムの酸化度を高くし過ぎると、不動態化が増進され、フィルムコンデンサの電極としての機能(容量低下や電気的特性)の劣化をもたらすこととなってしまう。
PML型を含むフィルムコンデンサの耐湿性能向上や内部電極安定化に関する手法がいくつか他社より開示されているが、誘電体層にダメージを与えたり、その効果が不十分であったり、装置が複雑で高価になるなどの問題が挙げられる。
誘電体樹脂層と金属層とを積層した積層板を条に切断した個片とスペーサーとを交互に固定枠に組み込み、外部電極となる金属を溶射し、圧力を調整しながら前記個片とスペーサーとを加熱することによって層間接着を強化することで、積層体への水分が浸入しにくく電極の腐食も少ないコンデンサを製造する方法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、減圧下での熱処理や誘電体種による好ましい処理温度の記述は無く、内部電極金属層の不動態化についての記述もないことから、何が起因しているのか不明である。
減圧下で熱処理を行うことで樹脂誘電体層の劣化を防ぎ、より高温での熱処理が可能となり、内部電極金属層の僅かな不動態化と層間密着性の向上による耐湿性能の大幅な向上が可能となる本発明とはその手法が異なる。
また、樹脂薄膜と金属薄膜とを積層して複合薄膜を製造するに際し、真空中で回転される円筒状の支持体に対して、樹脂薄膜を蒸着形成する樹脂薄膜形成工程と、樹脂薄膜の表面を、酸素を主成分として含む放電雰囲気下に晒す放電工程と、樹脂薄膜上にマスク剤をパターン塗布する塗布工程と、前記放電工程から遮蔽板によって遮蔽された領域で樹脂薄膜上に金属薄膜を蒸着形成する金属薄膜形成工程とをこの順に行うことを特徴とする複合薄膜の製造方法が知られている(特許文献2)。その効果は樹脂薄膜層と金属薄膜層の接着強度の向上として開示している。その理由は十分には明らかではないが、樹脂薄膜とその上に積層される金属薄膜の界面に酸素の多い状態が形成されることで、付着強度が向上していると考えている。
即ち、樹脂薄膜層と金属薄膜層の接着強度の向上は、フィルムコンデンサの欠点と言える吸湿に対し、水分がその界面に浸入するのを阻害し、耐湿性能向上に寄与するとも考えられる。しかし、この手法では、金属薄膜層の酸化について言及しているものであると思われるが、酸化という原理は同じであるが、以下に示す本発明の手法とは全く異なるものである。また、この手法を実施するには、機能発揮のための設備設置が必要であり、装置構成が複雑で高価なものになるという欠点がある。
そして、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を内部電極とした積層型コンデンサにおいて、電極金属が積層面から内部に向かって0.5μm〜200μmに渡ってアルミニウムあるいはその合金の酸化物としたコンデンサであり、その処理方法として、分圧比で1/20から3/4の水蒸気と空気からなる温度が100℃以上の混合気体を5秒間から120分間接触させることが知られている(特許文献3)。
この手法においては、コンデンサ外部に露出する金属層のみを水蒸気で酸化処理をすることを示している。即ち不動態膜(酸化皮膜)の形成により、耐湿性能の向上を開示しているわけだが、内部の樹脂薄膜層との界面における金属層の処理も行う手法ではなく、本発明の手法と全く異なるものである。この手法では、コンデンサ内部の電極は酸化していないため、内部に浸入した水分により、内部電極層(アルミニウム)が水和されてしまい、十分な耐湿性能向上効果は得られない。
さらに、一般的なフィルムコンデンサ用金属化フィルムの耐湿性向上のための酸化皮膜の形成方法としては、両面または片面にAl電極を200Å〜600Åの厚みに蒸着した後、このフィルム を水で濡らし、その後乾燥させ、このAl電極に酸化皮膜を30Å〜60Åの厚さに設けることが知られている(特許文献4)。これは酸化皮膜が耐湿性能向上に寄与することを開示しているが、このような手法は本発明の手法とは全く異なるものである。
特開2006−13242号公報 特開平10-278171号公報 特開2000-208362号公報 特開平5-55083号公報
本発明は、少なくともアルミニウムを内部電極に備えた積層型、特にはPML型コンデンサ用積層体を減圧雰囲気において加熱することにより、内部電極の改質並びに誘電体層と内部電極層の層間密着性向上により耐湿性能を向上させ、小型大容量の有利性を損なうことなく、非常に信頼性の高い(PML型)フィルムコンデンサを製造することを目的とする。
本発明は、第1の態様において、真空中において、支持体上に樹脂層と少なくともアルミニウムを含む金属薄膜層を交互に積層することにより製造された積層コンデンサ用積層板を条に切断した個片を、減圧雰囲気下で、前記樹脂層の大気中における分解温度より低い温度で熱処理することを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
第2の態様に関して、本発明は、前記第1の態様において、前記条に切断した個片を熱処理する時の温度が、前記樹脂層の分解温度より80℃低い温度から分解温度より180℃低い温度の範囲内であることを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
第3の態様に関して、本発明は、前記第1または第2の態様において、前記条に切断した個片を熱処理する時の減圧雰囲気が、10000Pa以下であることを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
第4の態様に関して、本発明は、前記第1〜第3のいずれかの態様において、前記条に切断した個片を熱処理する際に、積層方向に対して加圧することを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
第5の態様に関して、本発明は、前記第4の態様において、前記条に切断した個片を熱処理する際に、条ごとにスペーサーを介して枠内に積層して加圧することを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
第6の態様に関して、本発明は、前記第4または第5の態様において、前記条に切断した個片を加圧する圧力が、3kgf/cm2以下であることを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
第7の態様に関して、本発明は、前記第4〜第6のいずれかの態様において、前記条に切断した個片を加圧する際に、圧力を調整できる弾性体を介して加圧することを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
第8の態様に関して、本発明は、前記第4〜第7のいずれかの態様において、前記条に切断した個片を加圧する際に、複数の条を直接重ねて熱処理を行い、条同士を密着させることを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
第9の態様に関して、本発明は、前記第1〜第8のいずれかの態様において、前記樹脂層が、電子線硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂のうちのいずれかからなることを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
第10の態様に関して、本発明は、前記第9の態様において、前記樹脂層に少なくともアクリレート樹脂を含むことを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法に関する。
本発明は、上記の構成を有することにより、内部電極の水和反応を抑制すること、特にはアルミニウムを内部電極に備えた積層体を減圧雰囲気で熱処理することによって内部電極の改質を図り、並びに水分の進入経路でもある誘電体層と内部電極層の層間密着性を向上させることにより、耐湿性能を向上させて、小型大容量の有利性を損なうことなく信頼性の高いPML型コンデンサを製造することができるという作用効果を奏することができる。
以下において、前記本発明の各態様に関して、本発明の好ましい具体的態様に関して、説明することとする。
本発明の積層コンデンサ用積層体の製造方法は、PML型積層体を条(ストリップ)の状態に切断した後に熱処理を行うこと、更には減圧雰囲気にて樹脂誘電体層の分解温度を越えない近辺の温度で熱処理を行うことで、樹脂誘電体層の過度な分解を抑制し、その時樹脂誘電体層から生成されるガス(炭素、酸素、水素等からなる)に含まれる酸素を利用し、それが樹脂誘電体層から抜け出る際に、無垢で活性なアルミニウム電極層と、その界面で反応させ、内部電極層の表面の非常にわずかな層を不動態化させ、コンデンサ内部からも耐湿性能を向上させるものである。
上記のように、真空中で形成されたPML型積層体をコンデンサ素子と同じ幅のストリップに切断した後、減圧下で樹脂誘電体層の分解温度を越えない近辺の温度で熱処理を行うことで、樹脂誘電体層との界面近傍の内部電極金属(アルミニウム)層の不動態化を行い、更には、処理時に積層体の積層方向に適度な圧力を加えることで、層間密着性も向上させることで、PML型コンデンサの耐湿性能を大きく向上させることが可能となる。
処理温度としては、樹脂誘電体層の大気中における分解温度より80℃〜180℃低い温度範囲が好ましく、特には、分解温度より100℃〜160℃低い温度範囲が好ましい。
処理減圧雰囲気は、10000Pa以下、特には1000Pa以下であることが好ましい。大気雰囲気や10000Pa より高い減圧雰囲気で熱処理を行うと、処理雰囲気中に存在する酸素が樹脂の分解をより促進するため、樹脂の劣化が大きくなること、また、それに伴い多くのガスが早く発生することで内部電極(金属)層表面との反応も早く進み、界面近傍の僅かな層のみを酸化(不動態化)させる制御が難しくなることを発明者は見出した。また、それはコンデンサ特性を劣化させることにもなる。
熱処理を行う際には、ストリップ(条)形状である方が好ましい。これは、樹脂層より発生するガスが、電極金属と反応しなかった場合、速やかに排気されることが好ましいからである。ストリップ形状でない、カードサイズ等の大きな積層体のままこのような熱処理を行うと、発生したガスが積層体内部から正常に排気されないことが起こる可能性があり、積層体中にガスが溜まり、積層体の剥離や膨らみ等の要因になることがある。そのため、積層体内部から発生したガスの抜けやすい形状であるストリップでこのような熱処理を行うことが有効である。また、熱処理中に積層体の積層方向に対して適度な圧力を加えること、更には圧力を調整可能な(一定の圧力がかかる)状態で保持しておくことにより、内部から発生したガスを内部に抑留させることなく、速やかに排出することが可能となるだけでなく、積層体の層間密着性を向上させることができる。これによって素子内部への水分の浸入が遅延され、耐湿性能をより向上させることが可能となる。この処理は、コンデンサの形状にした後に行うことも可能であるが、条件により、形成された外部電極の熱による影響(劣化)を考慮した場合、好ましくない場合もある。また、生産性の面からもストリップ形状の積層体に熱処理を行うことが好ましい。
この熱処理の際に用いる加圧方法としては、ストリップを加圧可能な枠に組み、弾性体としてバネを介して加圧するとより効果的である。その理由として、前述のガス排出だけでなく、積層体は熱処理によって一旦僅かに膨張し、冷却される際に収縮する。この収縮は樹脂誘電体層の僅かな分解により、樹脂誘電体層を形成する炭素、酸素等の分子がガスとして抜けることで誘電体自身がやせ細るためであると考えられる。そのため枠に収納しない場合は、積層体全体が膨張後、冷却時に元の形状に戻す応力がないため、膨張したまま剥離に至ったり、ストリップが曲がったり、歪んだりする外観異常を引き起こす場合がある。また、枠に収納しても、処理前に単に上から一定の圧力をかける方法では、積層体の収縮時に積層体に加わる圧力が弱くなるため、枠に収納しない場合と同様の異常を引き起こす場合や、積層体の密着性が十分に得られなくなる場合がある。その一方、バネを用いた場合には、熱によって積層体が膨張・収縮しても積層方向に常に圧力が加わることとなり、十分な層間密着性向上の効果が得られる。枠に組んでバネを介して積層方向に圧力を掛ける以外の方法でも加熱時・冷却時の両方で均一にストリップに圧力が掛かる方法であれば同様の効果が得られる。
この際、積層方向に加える圧力は3kgf/cm2以下、好ましくは1.5kgf/cm2以下、より好ましくは0.2〜1.0kgf/cm2程度であることが好ましい。
また、積層方向に圧力を掛けながら、ストリップを直接重ねて本処理を行うことで、ストリップ同士が接着して貼り合わせることが可能となる。これにより、真空中で長時間かけて厚い積層体を製造して高容量のコンデンサ用積層体を製造するよりも、短時間で薄い積層体を製造し、必要な容量に応じて、必要な本数のストリップを貼り合わせて簡易に強固な密着性の一体化した積層体を製造することが可能となる。
積層体の製造法
特に図示はしないが、真空槽内において表面が冷却された回転ドラムの上に樹脂蒸着室により気化された樹脂を直接蒸着した。続いてドラムの回転する方向に位置する電子線照射装置により電子線を照射し、ドラム上に蒸着された樹脂膜を硬化させた。この操作を繰り返し、ドラム表面上に厚さ20μm の樹脂のみの層を形成した。
次に、連続してそのまま樹脂層(誘電体層)と次いで蒸着によって内部電極となるアルミニウムの薄膜層を交互に積層した。この際に、オイルを用いたパターニング方法により、樹脂層上にアルミニウム薄膜層のない電気的絶縁部分を形成し、コンデンサになるよう積層体を形成した。このようにして、樹脂膜とアルミニウム薄膜層を連続的に交互に4600層ずつ積層した。この時形成された1層当たりの樹脂層の厚みは、0.4μmであり、アルミニウムの蒸着抵抗は4〜6Ω/□であった。最後に、素子の表面に、厚さ20μm の樹脂のみ層を形成し、総厚約2.0mmの積層体を得た。ここでは樹脂層として1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを用いた。
得られた積層体の樹脂層の大気中での分解温度は熱重量分析測定から、392℃であった。分解温度の求め方について図8を参照して説明すると、熱重量分析法に基づき、一定の温度上昇(10℃/分)に伴う各温度に対する対象物の分解重量(%)をプロットして、そのベースライン(100重量%の横軸)と急激な重量減少の部分の接線(勾配)との交点における温度を分解温度として求める。図8に示された本事例の場合は、その交点における温度392℃が分解温度となる。
次いで、得られた積層体を分割切断してドラム上から取り外し、湾曲を取り除くため、加熱プレスにより平板状の積層体母素子を得た。
これをパターニング方向に平行に切断して図1の中央部に示されているような幅5.5mm、長さ150mmの条形状の積層体母素子1(ストリップ)(外部電極5を形成する前のもの)を得た。
これらのストリップ1を、以下(実施例1〜7および比較例1〜6)に示すような条件下で熱処理を行った。
これらの熱処理後、ストリップ1の側面に外部電極5を形成して、外部電極5を形成した状態の条形状の母素子(ストリップ)2(図1)とし、その後コンデンサ素子の大きさにストリップを切断し、電圧処理をして図2に示されるようなチップコンデンサ6を得た。
これらのチップコンデンサ6をそれぞれ、実体顕微鏡による外観検査、初期電気的特性、耐湿負荷試験によって評価した。
ストリップを減圧可能な容器(図示せず)に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、10000Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を260℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を260℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。減圧度の調整は、減圧容器からポンプに繋がる配管を大気リークさせることで調整を行った。
ストリップを減圧可能な容器に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、10000Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を300℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を300℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。
ストリップを減圧可能な容器に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、10000Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を220℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を220℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。
ストリップを減圧可能な容器に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、1000Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を260℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を260℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。
ストリップを減圧可能な容器に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、100Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を260℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を260℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。
比較例1
ストリップに対して、全く熱処理しなかった。
比較例2
ストリップを大気雰囲気の恒温槽内にセットし、恒温槽を260℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を260℃で10時間保持した後、加熱を停止し、自然冷却した。
比較例3
ストリップを減圧可能な容器に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、50000Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を260℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を260℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。
比較例4
ストリップを減圧可能な容器に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、10000Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を320℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を320℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。
比較例5
ストリップを大気雰囲気の恒温槽にセットし、恒温槽を200℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を200℃で10時間保持した後、加熱を停止し、自然冷却した。
比較例6
ストリップを減圧可能な容器に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、10000Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を200℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を200℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。
<外観検査>
このようにして得られた、実施例1から5と比較例1から6のチップコンデンサを実体顕微鏡で観察した。実施例1から5のチップコンデンサには、層間クラックなどの外観異常は観察されなかった。一方、比較例2、3および4のチップコンデンサには層間にクラックが観察された。また、比較例1、5および6のチップコンデンサには層間クラックは観察されなかった。
比較例2と3を比較すると、大気雰囲気で熱処理を行った比較例2の方がクラックは多く見られた。これは熱処理時に樹脂層の分解程度が減圧雰囲気中における処理よりも高かったため、樹脂層の劣化によってクラックが生じたものと考えられる。
比較例4では、層間クラックが観察されたことに加え、ストリップの表層の樹脂層が素子層から剥離気味となっていた。このことから、減圧雰囲気下でも、樹脂の大気中での分解温度より80℃低い温度以上で熱処理を行うと、ストリップの外観不良を引き起こすことがわかった。また、温度を高くすればするほど、積層体の積層方向の膨張が大きくなり、層間密着性の低下、更には樹脂のみ層では熱により横方向への収縮性がおおきくなるため、素子層からの剥離が生じたものと考えられる。
<初期特性>
次に初期電気特性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004330602
260℃で熱処理を行った、実施例1、4および5と比較例2および3の初期電気特性を見ると、大気よりも減圧雰囲気での熱処理、更には減圧雰囲気の圧力が低い熱処理ほど良好な初期電気特性を示す結果となった。10000Pa以下の圧力ではほぼ良好な電気特性を示した。大気圧で熱処理を行った比較例2と50000Paで熱処理を行った比較例3では、tanδとESRが他の条件に比べて若干高かった。この様な傾向は樹脂層の劣化(分解)の程度差によるものと考えられる。ただし、比較例5を見ると、200℃(樹脂の分解温度より190℃程度低い)程度であれば、大気雰囲気で熱処理を行ってもコンデンサの初期電気的特性に影響を与えることはないことがわかった。
次に、10000Paの雰囲気下で温度を変えて熱処理を行った実施例1から3と比較例4および6の初期電気特性を見ると、260℃以下の温度では熱処理を行わなかった比較例1と同等の初期電気特性を示した。このことから10000Pa、260℃以下の条件では、樹脂の劣化はほとんど無かったものと考えられる。300℃で熱処理を行った実施例2ではやや電気特性の劣化が見られたものの、ほぼ良好な値であった。一方、320℃で熱処理を行った比較例4では、実施例と比較して初期電気特性に大きな劣化が見られた。
また、熱処理を行わなかった比較例1の初期電気特性は良好であった。実施例2はやや初期電気特性が悪かったが、その他の実施例は比較例1とほぼ同じ結果を示したことから、実施例1から5の条件の熱処理によるコンデンサの初期特性への悪影響は問題のない程度であったと言える。
<耐湿負荷試験>
次にこれらのチップコンデンサを基板上にリフロー実装した後、40℃95%RHの耐湿負荷試験を行った。印加電圧は直流25Vで行った。比較例4の素子は初期電気特性が非常に悪かったため、耐湿負荷試験からは除外した。
その結果をグラフ1(図5)に示す。
耐湿負荷試験開始後、最初は容量が増加しているが、これはコンデンサが吸水したためである。
ストリップに対して熱処理を全く行わなかった比較例1のチップコンデンサは、100時間経過後から容量の減少が始まり、1500時間以降ほとんど容量を示さなくなった。一方、実施例1〜5ではいずれも2000時間経過後の容量が試験開始時よりも増加していた。実施例1〜5は10000Pa以下の減圧下での熱処理によって、コンデンサの耐湿性能が大幅に向上していることがわかった。
260℃の温度で、大気中で熱処理を行った比較例2と、50000Paの減圧下で熱処理を行った比較例3は、2000時間経過後の容量は試験開始後の容量より5〜10%程度減少した値であり、実施例1〜5と比べるとやや劣る耐湿性能であった。熱処理によって誘電体が劣化したことと、実施例のように熱処理したチップコンデンサよりも早期に内部電極のアルミニウムが腐食反応を起こしたためと考えられる。これは耐湿試験2000時間後のチップコンデンサを解体し、観察したところ、比較例1ではアルミニウム電極層が全て水和により抜けてしまっていたこと、比較例2と3では素子内部のアルミニウム電極層の一部にアルミニウの水和による抜けが観察されたことからも明らかである。
200℃の大気雰囲気で熱処理を行った比較例5と、200℃の10000Paで熱処理を行った比較例6は、実施例と比べて大きく耐湿性能が劣る結果であった。これは200℃という温度では、処理雰囲気に係わらず、コンデンサの耐湿性能を改善するのに十分な処理ではないことが言える。
これらの結果を表2にまとめる。
Figure 0004330602
外観検査(優:層間クラック無、不可:層間クラック有)
初期電気特性<tanδ>(優:1.1%以下、良:1.3%以下、可:1.5%以下、不可:1.5%より大)
耐湿負荷試験<2000時間後の容量変化率>
(優:X≧5%、良:5%>X≧0%、可:0%>X≧-10%、不可:-10%>X)
以上のことより、10000Pa以下の減圧雰囲気下で、大気中における樹脂層の分解温度より80〜180℃程度低い温度でストリップに対して熱処理を行うことで、良好な電気特性を保持したまま耐湿性能を大幅に向上させることができることがわかった。
これに対して、大気雰囲気で熱処理を行った比較例2と減圧雰囲気が50000Paの条件で、大気中での分解温度より130℃程度低い温度で熱処理を行った比較例3では、所望の電気特性が得られなかった。これは樹脂の分解が進行し過ぎて、樹脂層が劣化したためと考えられる。これは層間クラックの観察からも裏付けられる。また、耐湿性能についても10000Pa以下の減圧雰囲気で処理したものよりも劣っていた。これは樹脂の劣化とそれに伴う層間クラックによる素子内部への水分の浸入、更には内部電極層の水和が原因と考えられる。
また、ストリップを熱処理する際の温度が低すぎると、大気雰囲気であろうと減圧雰囲気であろうと耐湿性能向上の効果があまり見られないことがわかった。
一方処理温度を高くし過ぎると、大気中はもちろんのこと、減圧雰囲気下であっても樹脂層の分解が進行し過ぎてクラックが生じ、所望の電気特性を得ることが出来なかった。
ここで、樹脂層の分解について調査するため、実施例1と比較例1、2および4の熱処理を行った試料の樹脂層をFT-IR法により比較した。そのFT-IRチャートをチャート1として図6に示す。FT-IRチャートは、1450cm-1のメチレン基のピークを基準とし、比較を行った。
10000Paの260℃で熱処理を行った実施例1は、熱処理を行わなかった比較例1と同様のチャートを示した。このことから実施例1の条件での熱処理では、樹脂層の劣化はほとんどなかったと考えられる。
一方、それぞれ大気雰囲気の260℃(比較例2)と10000Paの320℃(比較例4)で熱処理を行った試料は、実施例1や比較例1とは異なるチャートを示した。実施例1や比較例1のチャートと比べて、比較例2および4のチャートは1720cm-1と1150cm-1のピーク強度が減少し、ピークがブロードになっている。このことから比較例2および4では、熱処理によって樹脂の分解が進行したと予想される。
さらに、酸化劣化によるものと考えられるカルボキシル基に伴うピーク1600cm-1の強度が増大していることからも、樹脂層の劣化が進行しているものと考えられえる。
FT-IRチャートからは比較例2よりも比較例4の方が樹脂層の劣化が進行していると考えられるが、これは初期電気特性の結果を裏付けるものである。
よって、大気よりも減圧雰囲気で、且つ樹脂層の分解温度に近い温度よりも80℃程度低い温度の方が、樹脂層の過度の分解を伴わずに熱処理することができることが裏付けられる。
耐湿性能の向上には、本実施例の熱処理によって内部のアルミニウム電極層が改質されていることが考えられる。耐湿性能の向上に起因する電極の改質としては、酸化によるものがあり、特にアルミニウムを内部電極に用いた場合、水和されやすい金属であるアルミニウムは、酸化により水和が大きく抑制されることが知られており、その効果が発現されていることが、以上の実験結果からも明らかである。減圧下における酸化には、樹脂の分解時に発生するガス成分として含まれる酸素が寄与していることが考えられる。樹脂層の熱処理時における発生ガスを分析したところ、酸素ガスが検出されたことからも知ることができる。しかし、酸化アルミニウムは不動態物であることが知られていることから、酸化の程度が高すぎると、逆に導電性を失い、電極の役割を失ってしまう。よって発明者が示すような、適切な減圧度と処理温度の組み合わせにより、適切な処理条件によってその効果を発現することができる。
ストリップ1と同サイズの、厚さ1mmのアルミニウムのスペーサー12とストリップ1を交互に図3のように枠7内に組み込み、固定し、下板9を介して積層方向(矢印方向)に0.5kgf/cm2の圧力が掛かるように枠のボルト8を締めた。この枠7ごと減圧可能な容器(図示せず)に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、100Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を260℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を260℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。減圧度の調整は、減圧容器からポンプに繋がる配管を大気リークさせることで調整を行った。
その他の製造条件は全て実施例5と同様に行い、チップコンデンサを得た。
ストリップ1と同サイズの、厚さ1mmのアルミニウムのスペーサー12と、ストリップ1を交互に図4のように枠7内に組み込み、固定し、積層方向(矢印方向)に上板11および下板9に挟んだバネ10を介して0.5kgf/cm2の圧力が掛かるように枠7のボルト8を締めた。この枠7ごと減圧可能な容器(図示せず)に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、100Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を260℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を260℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。
その他の製造条件は全て実施例5と同様に行い、チップコンデンサを得た。
実施例6と7のチップコンデンサを実体顕微鏡で観察したところ、層間クラックなどの外観の異常は観察されなかった。
次に実施例6と7のチップコンデンサの初期電気特性を測定した。実施例5の結果とともに表3に示す。
Figure 0004330602
積層方向に0.5kgf/cm2で加圧した実施例6および7共に、実施例5と同様初期電気特性は良好で、加圧による電気特性の劣化は観察されなかった。
次に実施例5と、実施例6と7のチップコンデンサを基板上にリフロー実装した後、40℃95%RHの耐湿負荷試験を行った。印加電圧は直流25Vで行った。
その結果をグラフ2として図7に示す。
この耐湿負荷試験結果を示すグラフ2から判るとおり、熱処理中にストリップの積層方向に加圧した実施例6と7のチップコンデンサは、熱処理中にストリップの積層方向に加圧しなかった実施例5よりも経時的に見て容量変化が少なく、耐湿性能が向上した。これは、熱処理中にストリップの積層方向に加圧することで、層間の密着性が向上して外部から積層体内部への水分の浸入が抑えられるため、より耐湿性能が向上したものと考えられる。
さらにストリップの積層方向に圧力を加える際に、バネなどの圧力を調整できる弾性体を介して圧力を加えることでより層間の密着性を向上させることができる。これは熱によって積層体が膨張・収縮しても常に積層方向に圧力を加えることが可能となるからである。
これらの結果を表4にまとめる
Figure 0004330602
外観検査(優:層間クラック無、不可:層間クラック有)
初期電気特性<tanδ>(優:1.1%以下、良:1.3%以下、可:1.5%以下、不可:1.5%より大)
耐湿負荷試験<2000時間後の容量変化率>
(優:X≧5%、良:5%>X≧0%、可:0%>X≧-10%、不可:-10%>X)
以上のことから、ストリップを熱処理する際に積層方向に圧力を加えることで、層間の密着性が向上してさらに耐湿性能を向上させることが可能となることがわかった。その際、バネなどの弾性体を介して常にストリップを加圧した状態で熱処理を行うと、より効果的である。
ただし、積層方向に加える圧力は3kgf/cm2以下、好ましくは、1.5kgf/cm2以下、より好ましくは0.2〜1.0kgf/cm2程度であることが好ましい。3kgf/cm2より大きい圧力を加えるとストリップにクラックなどが生じ、コンデンサ特性に悪影響を与えてしまう。
また、積層方向に圧力を加えながらストリップを熱処理する際には、ストリップを枠などに固定することが量産性の面から好ましい。
ストリップ1と同サイズの、厚さ1mmのアルミニウムのスペーサー12と、ストリップ2本を交互に図4のように枠に組み固定し、積層方向(矢印方向)に上板11および下板9に挟んだバネ10を介して0.5kgf/cm2の圧力が掛かるように枠7のボルト8を締めた。この枠ごと減圧可能な容器に入れ、この容器を恒温槽内にセットした。次に容器内を排気し、100Paの減圧雰囲気にした後、恒温槽を260℃まで10℃/分で昇温を開始した。容器内を260℃で10時間保持した後、加熱を停止し、減圧雰囲気を維持したまま自然冷却した。
その他の製造条件は全て実施例5と同様に行い、チップコンデンサを得た。
熱処理後のストリップは2本が接着しており、その後の電極形成工程でも剥離することはなかった。コンデンサの容量は実施例1〜7の2倍であり、その他の初期電気特性も良好であった。
これは、前述の熱処理によるFT−IR分析結果から、カルボキシル基やアクリル酸エステル等が形成されているのが示唆されている。アクリル酸エステルは、一般的に接着剤の原材料であることが知られており、この存在と上部からの圧力により、積層体同士が接着されたものと考えられる。
このように、熱処理時、積層方向に圧力を掛けながら複数のストリップを直接重ねて処理することで、ストリップ同士が接着し、容易に大容量チップコンデンサ素子を得ることが可能となる。真空中で樹脂層と金属薄膜層を同じ容量が得られるまで積層するよりも、短時間で容易に大容量チップコンデンサが得られる利点がある。即ち、本発明方法では、コンデンサの耐湿性能向上のみならず、同一手法において、大容量チップコンデンサを容易に得ることができる。
以上より、樹脂層と少なくともアルミニウムを含む金属薄膜層を真空中で交互に積層したコンデンサ素子と同じ幅のストリップに対して、10000Pa以下の減圧雰囲気で、熱処理温度を樹脂層の大気中での分解温度より80℃低い温度から分解温度より180℃低い温度の範囲内として熱処理をすることで、初期電気特性を大きく劣化させることなく、チップコンデンサの耐湿性能を大幅に向上させることが可能となる。
更には、ストリップを熱処理する際に、積層方向に3.0kgf/cm2以下の圧力を加えることで、層間の密着性が更に向上し、より耐湿性能を向上させることが可能となる。
また、熱処理時に複数のストリップを直接重ねて、積層方向に圧力を掛けながら熱処理することで、ストリップ同士を接着することが可能となり、容易に大容量品を得ることができる。
また、本実施例においては、樹脂層として1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを用いた場合のみを示したが、その他の樹脂(特にはアクリル系樹脂)を用いた場合にも同様の効果が得られる。
図1は、条形状の積層体母素子(ストリップ)の両側面に外部電極を形成した状態の条形状の母素子を示す。 図2は、図1に示す外部電極を形成した状態の条形状の母素子を所定寸法に切断して得たチップコンデンサ素子を示す。 図3は、ストリップを、スペーサを介して枠に組込み、ボルトにより下板を加圧して積層体の積層方向に加圧する状態を表す。 図4は、ストリップを、スペーサを介して枠に組込み、ボルトにより上板を押圧し、バネを圧縮して、さらにバネを介して下板を加圧して積層体の積層方向に加圧する状態を表す。 図5は、実施例1〜5および比較例1〜6により得られたチップコンデンサを基板上にリフロー実装した後、40℃、95%RHの耐湿負荷試験を行った場合に得られた容量変化率(%)の経時的変化をグラフ1として示す。 図6は、実施例1と比較例1、2および4の熱処理を行った試料の各樹脂層に関して得たFT−IR法により得たチャート1を示す。 図7は、実施例5、6および7により得られたチップコンデンサを基板上にリフロー実装した後、40℃、95%RHの耐湿負荷試験を行った場合に得られた容量変化率(%)の経時的変化をグラフ2として示す。 図8は、温度上昇下の樹脂の重量減少%を表す熱重量分析の結果とそれに基づく樹脂の熱分解温度の測定法を示す。
符号の説明
1 (外部電極5を形成する前のストリップ)条形状の積層体母素子(ストリップ)
2 外部電極を形成した母素子(ストリップ)
3 少なくともアルミニウムを含む金属薄膜層(内部電極)
4 樹脂層(誘電体層)
5 外部電極
6 チップコンデンサ素子
7 枠
8 ボルト
9 下板
10 バネ
11 上板
12 スペーサー

Claims (3)

  1. 真空中において、支持体上に樹脂層と少なくともアルミニウムを含む金属薄膜層を交互に積層することにより製造された積層コンデンサ用積層板を条に切断した個片を、減圧雰囲気下で、前記樹脂層の大気中における分解温度より低い温度で熱処理する積層コンデンサ用積層体の製造方法であって、 前記条に切断した個片を熱処理する際に、積層方向に対して加圧するときに、複数の条を直接重ねて熱処理を行い、条同士を密着させることを特徴とする積層コンデンサ用積層体の製造方法。
  2. 前記樹脂層が、電子線硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂のうちのいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載の積層コンデンサ用積層体の製造方法。
  3. 前記樹脂層に少なくともアクリレート樹脂を含むことを特徴とする請求項に記載の積層コンデンサ用積層体の製造方法。
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