[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係るステアリング装置を模式的に示す全体構成図である。このステアリング装置1は、車両に搭載され、運転者の操舵操作に応じて転舵輪である前輪を転舵させる。図1では、図面左側が車両の右側にあたり、図面右側が車両の左側にあたる。なお、図1における符号中の文字「R」は車両の右側を示し、文字「L」は車両の左側を示している。
ステアリング装置1は、運転者が回転操作するステアリングホイール101と、ステアリングホイール101が一端部に固定されたコラムシャフト102と、コラムシャフト102に自在継手111を介して連結されたインターミディエイトシャフト(中間シャフト)103と、インターミディエイトシャフト103に自在継手112を介して連結された第1ピニオンシャフト104と、第1ピニオンシャフト104に噛み合うラック軸としてのラックシャフト2と、運転者によるステアリングホイール101の操作を補助する操舵補助力を発生させる操舵補助装置10とを備えている。
自在継手111,112は、例えばカルダンジョイントからなる。コラムシャフト102、インターミディエイトシャフト103、及び第1ピニオンシャフト104は、ステアリングホイール101に接続されるステアリングシャフト100を構成する。第1ピニオンシャフト104の外周面には、斜歯からなるピニオン歯104aが形成されている。
操舵補助装置10は、ステアリングシャフト100の第1ピニオンシャフト104における操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ121と、操舵トルクセンサ121によって検出した操舵トルク及び車速に応じてモータ電流を出力する制御装置13と、制御装置13から出力されるモータ電流によって操舵補助力を発生する電動モータ130と、電動モータ130の出力軸131の回転を減速する減速機構14と、減速機構14によって減速された電動モータ130のトルクによって回転するピニオン軸としての第2ピニオンシャフト6とを備えている。
減速機構14は、電動モータ130の出力軸131と一体回転するように連結された駆動ギヤとしてのウォーム132と、ウォーム132に噛み合う減速ギヤとしてのウォームホイール140とからなる。ウォームホイール140は、操舵補助装置10の第2ピニオンシャフト6と共に回転し、この第2ピニオンシャフト6に操舵補助力を付与する。第2ピニオンシャフト6の外周面には、斜歯からなるピニオン歯6aが形成されている。
ラックシャフト2の両端部には、ボールジョイント15L,15Rを介して左右のタイロッド16L,16Rがそれぞれ連結されている。左右のタイロッド16L,16Rは、左右の前輪17L,17Rにそれぞれ連結されている。ラックシャフト2が車幅方向(左右方向)に進退移動すると、左右のタイロッド16L,16Rがそれぞれラックシャフト2に対して揺動し、左右の前輪17L,17Rがそれぞれ転舵される。
ラックシャフト2には、ステアリングシャフト100の第1ピニオンシャフト104に形成されたピニオン歯104aに噛み合う第1のラック歯2a、及び操舵補助装置10の第2ピニオンシャフト6に形成されたピニオン歯6aに噛み合う第2のラック歯2bが形成されている。ラックシャフト2は、第1ピニオンシャフト104及び第2ピニオンシャフト6の回転に伴う軸方向移動によって、左右の前輪17L,17Rをそれぞれ転舵する。
図2は、ラックシャフト2、第1ピニオンシャフト104、及び第2ピニオンシャフト6のそれぞれの少なくとも一部を収容するハウジングとしてのラックハウジング3の一部を破断して、その周辺部と共に示す構成図である。
ラックハウジング3は、例えば鋳造によって形成され、ラックシャフト2を軸方向移動可能に収容する円筒状の筒部30と、ピニオン歯104aを含む第1ピニオンシャフト104の一部を収容する第1ピニオン収容部31と、ピニオン歯6aを含む第2ピニオンシャフト6の一部を収容する第2ピニオン収容部32とを有している。第1ピニオン収容部31には、カバー部材310が固定され、このカバー部材310から突出した先端部には、自在継手112(図1参照)との連結のためのセレーション104bが形成されている。
ラックハウジング3の筒部30における左右両端部と左右のタイロッド16L,16Rとの間には、伸縮可能な蛇腹構造を有するベローズ18L,18Rがそれぞれ設けられ、ラックハウジング3内への異物の侵入を防止している。このベローズ18L,18Rは、ボールジョイント15L,15R及びタイロッド16L,16Rの一部をそれぞれ収容し、ラックシャフト2の軸方向移動に伴って伸縮する。
また、ラックハウジング3の筒部30における左右両端部における内側には、ラックシャフト2の軸方向移動をガイドする樹脂からなる左右のラックブッシュ19L,19Rが配置されている。
操舵補助装置10は、前述の操舵トルクセンサ121,制御装置13,電動モータ130,減速機構14,及びピニオンシャフト6に加え、ラックハウジング3の第2ピニオン収容部32に組み合わされるウォームハウジング4と、ウォームハウジング4の開口を閉塞する蓋部材5とを有している。以下、第2ピニオンシャフト6を単にピニオンシャフト6という。
図3は、ウォームハウジング4及び第2ピニオン収容部32の構成を示す、図2におけるA−A線断面図である。ウォームハウジング4は、第2ピニオン収容部32にボルト40によって固定されている。また、蓋部材5は、ボルト50によってウォームハウジング4に締結されている。
ウォーム132は、ウォームハウジング4に収容されたウォームホイール140に噛み合っている。ウォームホイール140は、芯金141と、この芯金141と一体に回転するように結合された樹脂からなるギヤ部142とからなる。芯金141は、後述するピニオンシャフト6の延在部61に圧入嵌合され、ピニオンシャフト6と一体に回転する。ギヤ部142の外周面には、ウォーム132との噛み合いのための斜歯が形成されている。
ピニオンシャフト6は、ピニオン歯6aが外周面に形成された歯部60、歯部60と同軸上に延在する円柱状の延在部61、及び延在部61との間に歯部60を挟む位置に形成された被支持部62を一体に有している。また、ピニオンシャフト6は、第1乃至第3軸受71〜73によって、その中心軸線Cを中心として回転可能に支持されている。
第1軸受71は、針状ころ軸受であり、ピニオンシャフト6の被支持部62に嵌合されている。第2軸受72及び第3軸受73は、玉軸受であり、ピニオンシャフト6の延在部61に嵌合されている。第3軸受73は、延在部61における歯部60とは反対側の端部に配置され、第2軸受72は、第3軸受73よりも歯部60側の位置に嵌合されている。
ウォームハウジング4及び第2ピニオン収容部32は、ピニオンシャフト6のピニオン歯6aとラックシャフト2の第2のラック歯2bとの噛み合い部を収容する収容空間1aを有している。ピニオンシャフト6は、歯部60及び被支持部62、ならびに延在部61の一部がラックハウジング3における第2ピニオン収容部32に収容されている。ウォームハウジング4には、第2ピニオン収容部32から上方に突出した延在部61の一部が、ウォームホイール140及びウォーム132と共に収容されている。
ラックハウジング3における第2ピニオン収容部32には、収容空間1aに連通する円筒状の筒部33が設けられている。筒部33は、ラックシャフト2に対して直交する方向に開口330を有している。この筒部33の内部には、ラックシャフト2をピニオンシャフト6に弾性的に押し付け、ラックシャフト2の第2のラック歯2bとピニオンシャフト6のピニオン歯6aとの噛み合いを良好に維持するためのラックガイド機構8が収容されている。
このラックガイド機構8は、ラックシャフト2における第2のラック歯2bの反対側の外周面(背面)に摺接する樹脂からなるラックガイドシート811を有する移動部材としてのサポートヨーク81と、筒部33の開口330を閉塞する固定部材としてのヨークプラグ82と、サポートヨーク81とヨークプラグ82との間に配置された付勢部材としてのコイルばね83と、ヨークプラグ82を筒部33に固定する固定ナット86と、サポートヨーク81とヨークプラグ82との間に設けられたシール部材85とを有して構成されている。ヨークプラグ82には、筒部33の中心軸線O(後述する図4参照)と平行な方向に沿って貫通した貫通孔82aが形成されている。このラックガイド機構8の構成について以下で詳細に説明する。
図4は、図3に示すラックガイド機構8の構成を示す要部拡大図である。
サポートヨーク81は、筒部33内で軸方向に進退移動可能に収容された略円筒状の本体部811と、本体部811のヨークプラグ82とは反対側の端面に配置されたラックガイドシート812とを有している。本体部811のラックシャフト2における第2のラック歯2b(図3に示す)の背面2c側の端面には、円弧状に凹んだ円弧溝811aが形成されている。この円弧溝811aの内面に、円弧状に形成されたラックガイドシート812が設けられている。
ラックガイドシート812には、ラックシャフト2とは反対側に突出したボス部812aが形成されており、このボス部812aが円弧溝811aの中心に形成された嵌合穴813に嵌合されている。また、ラックガイドシート812は、ラックシャフト2側を指向する円弧面がラックシャフト2の背面2cと摺接する摺接面812bとして形成されている。
サポートヨーク81の本体部811における円弧溝811aと反対側の端面には、コイルばね83を収容する収容穴810が形成され、コイルばね83の一端が収容穴810の底面810aに当接し、他端がヨークプラグ82のサポートヨーク81と対向する対向面82bに当接している。サポートヨーク81のヨークプラグ82を指向する端面のうち、収容穴810が形成されていない部分は、ヨークプラグ82と対向する対向面81bとして形成されている。サポートヨーク81は、コイルばね83の押圧力を底面810aから受け、ラックシャフト2をピニオンシャフト6側に押し付けている。サポートヨーク81における本体部511の外周面には一対のOリング813が配置され、コイルばね83の伸縮に伴ってサポートヨーク81が進退移動すると、一対のOリング813が筒部33の内面に摺接する。
ヨークプラグ82は、その外周面に筒部33の内周面に形成された雌ねじ部33aに螺合する螺子部としての雄ねじ部82cが形成されている。ヨークプラグ82は、その雄ねじ部82cの筒部33の雌ねじ部33aに対する螺合量を変化させることにより、中心軸線O方向における位置が調整可能である。ヨークプラグ82におけるサポートヨーク81を指向する対向面82bは、サポートヨーク81の対向面81bと所定の隙間を介して対向している。
ヨークプラグ82の雄ねじ部82cのうち筒部33から露出した部位には、固定ナット86の内面に形成された雌ねじ部86aが螺合している。これにより、ヨークプラグ82が所定の位置において固定ナット86により筒部33に対して固定されている。なお、ヨークプラグ82の対向面82bが本発明における「対向面」に相当する。
ヨークプラグ82の対向面82bと反対側の端面には、ヨークプラグ82の組付時に工具によって回転操作力が加えられるための取付穴820が形成されている。取付穴820は、貫通孔82aと連通している。
ヨークプラグ82の貫通孔82aは、取付穴820の底面820aとヨークプラグ82の対向面82bとの間を貫通している。また、貫通孔82aは、ヨークプラグ82の中心軸線Oから偏倚し、サポートヨーク81の対向面81bを指向する位置に形成されている。この貫通孔82aは、サポートヨーク81とヨークプラグ82との間の隙間を測定する測定器9(後述)を挿入するための導入孔として形成されている。
また、ヨークプラグ82の対向面82bには、シール部材85を収容する凹部821が形成されている。シール部材85は、厚さ方向の一部が凹部821に収容され、凹部821から露呈した部位がサポートヨーク81の対向面81bに当接している。つまり、シール部材85は、凹部821の底面821aとサポートヨーク81の対向面81bとに弾接し、ヨークプラグ82とサポートヨーク81との間で挟まれている。シール部材85は、例えばゴム等の弾性体からなり、サポートヨーク81がヨークプラグ82側に押し付けられたときに弾性的に圧縮されるよう構成されている。
サポートヨーク81の凹部821の深さは、シール部材85の中心軸線Oに沿った方向における厚みよりも浅く形成されている。つまり、ヨークプラグ82の凹部821の深さをdとし、シール部材85の厚みをt(後述する図6参照)とすると、厚みtは、深さdよりも大きい(t>d)。なお、上記した厚みtは、シール部材85に外力が作用していない自然状態における厚みである。
次に、ヨークプラグ82及びシール部材85の構成について図5を参照して説明する。図5は、ヨークプラグ82を中心軸線O方向から見た場合の構成例を示し、(a)は筒部33の開口330側から見た場合の平面図であり、(b)はサポートヨーク81側から見た場合の平面図である。なお、図5(b)では、サポートヨーク81の収容穴810の輪郭線を二点鎖線で示している。図6は、シール部材85及びヨークプラグ82の凹部821の形状を示す斜視図であり、(a)はシール部材85がヨークプラグ82に取り付けられる前の状態であり、(b)はシール部材85がヨークプラグ82に取り付けられた後の状態である。
図5(a)に示すように、ヨークプラグ82の貫通孔82aは、取付穴820の底面820aに一方の開口部を有する、ヨークプラグ82の周方向に沿って円弧状に形成された円弧孔である。ここで、ヨークプラグ82の取付穴820の底面820aが中心軸線Oと交差する点を中心点Pとし、中心点Pと貫通孔82aの周方向における両端部とを結んで形成される仮想的な扇形(図5(a)に示す二点鎖線)の角度をθとすると、角度θは例えば90°〜100°である。ただし、角度θの大きさはこれに限定されるものではなく、後述する測定方法並びにヨークプラグ82の強度等を考慮して当業者によって適宜設定されるものである。
図5(b)に示すように、シール部材85は、貫通孔82aの形状に対応するように、ヨークプラグ82の周方向に沿った円弧状に形成され、貫通孔82aの他方の開口部を取り囲むように配置されている。また、シール部材85は、貫通孔82aに対応して形成された円弧状のスリット85aを有している。貫通孔82aは、サポートヨーク81の収容穴810よりもヨークプラグ82の径方向外側に位置し、この貫通孔82a及びスリット85aを介してサポートヨーク81の対向面81b(図4に示す)が外部を臨むように構成されている。
シール部材85のスリット85aのヨークプラグ82の径方向における幅は、少なくとも貫通孔82aのヨークプラグ82の径方向における幅と同等か又は大きく設定される。また、スリット85aのヨークプラグ82における周方向の長さは、貫通孔82aのヨークプラグ82における周方向の長さと同等か又は大きく設定される。この寸法設定により、貫通孔82aの開口付近における防水性が確保される。
ここで、シール部材85のサポートヨーク81を指向する端面85cと平行な平面が中心軸線Oと交差する点を中心点Qとし、中心点Qとシール部材85の径方向における内側円弧面85bとの距離をR1とし、サポートヨーク81の収容穴810の外径をR2とすると、R1はR2より僅かに大きい(R1>R2)。これにより、例えばサポートヨーク81がヨークプラグ82側に押し付けられてシール部材85が弾性圧縮した際に、この弾性圧縮に伴ってヨークプラグ82の凹部821から露呈した部位のシール部材85がヨークプラグ82の径方向に拡径して、シール部材85とコイルばね83とが干渉することが防止される。
シール部材85をヨークプラグ82に取り付ける際には、図6(a)に示すように、スリット85aが成形されたシール部材85を矢印方向に移動させて、ヨークプラグ82の凹部821に嵌合させる。シール部材85は凹部821の底面821aに、例えば接着等の固定手段によって固定される。
ただし、シール部材85の取付方法は、上記した方法に限定されるものではなく、例えば、円弧状の弾性体を貫通孔82aが形成されていない凹部821に取り付けた後に、エンドミル等の工具によってヨークプラグ82及びシール部材85を貫通するようにして貫通孔82aとスリット85aを同時に成形してもよい。これにより、シール部材85のスリット85a及びヨークプラグ82の貫通孔82aを一体に成形できるので、スリット85aと貫通孔82aとの位置ずれが防止される。
図6(b)に示すように、シール部材85の厚みは、前述したように、ヨークプラグ82の凹部821の深さよりも大きく形成されているので、ヨークプラグ82に組付けられた状態において、その一部が対向面82bから突出する。ここで、シール部材85の突出量(ヨークプラグ82の対向面82bとシール部材85の端面85cとの間の距離)をhとする。
以上図1乃至図6において説明した構成を有するラックガイド機構8において、サポートヨーク81とヨークプラグ82との間の隙間を測定する測定方法について図7を参照して説明する。この測定は、第1測定ステップ及び第2測定ステップの2段階で行われる。図7は、測定方法について説明するための説明図であり、(a)は第1測定ステップの状態であり、(b)は第2測定ステップの状態である。
サポートヨーク81及びヨークプラグ82のそれぞれの対向面81b,82bの間の隙間は、長尺状の測定器9によって測定される。この測定器9は、基準位置として所定の位置に固定される固定子91と、固定子91に対して長手方向に相対移動可能な可動子92とを有して構成されている。固定子91は基準位置として付された基準目盛91aを有し、可動子92は所定の間隔で付された複数の測定目盛92aを有している。この構成により、固定子91に対して可動子92が相対移動した際の基準目盛91aと測定目盛92aとの差分量を測定することにより、相対移動時の移動量が計測可能である。可動子92の測定目盛92aにおける所定の間隔は、求められる測定精度に応じて設定される。
サポートヨーク81及びヨークプラグ82の間の隙間の測定方法は、準備工程と測定工程からなる。準備工程では、ヨークプラグ82の筒部33への組み付け、及び測定器9の配置が行われる。先ず、ヨークプラグ82の雄ねじ部82cを筒部33の雌ねじ部33aに螺合させてヨークプラグ82を筒部33内へ配置する。この際、上記した螺合量を調整することにより、図7(a)に示すように、サポートヨーク81及びヨークプラグ82のそれぞれの対向面81b,82bの隙間が予め設定された許容値の範囲内となるようにヨークプラグ82を配置する。
このヨークプラグ82の配置方法としては、例えば、ヨークプラグ82の対向面82bがサポートヨーク81の対向面81bに接触するまでヨークプラグ82を筒部33内にねじ込んだ状態から、ヨークプラグ82を所定角度だけ反対側に回すことにより、行うことができる。
上記したヨークプラグ82の配置した後に、測定器9を配置する。具体的には、測定器9の固定子91の一端をヨークプラグ82における取付穴820の底面820aに当接させて配置すると共に、可動子92をヨークプラグ82の貫通孔82a及びシール部材85のスリット85aに挿通して、その一端をサポートヨーク81の対向面81bに当接させる。これにより、準備工程が完了する。なお、この準備工程においては、固定ナット86は仮締めされた状態であり、その雌ねじ部86aの一部だけがヨークプラグ82の雄ねじ部82cに螺合している。
次に、測定工程について説明する。この測定工程は、ラックシャフト2に外力が作用していな自然状態で測定を行う第1測定ステップと、ラックシャフト2に所定のトルクを付与して回転させた状態で測定を行う第2測定ステップとからなる。
第1測定ステップにおいて、先ず、準備工程が完了した状態で、可動子92の測定目盛92aの固定子91の基準目盛91aに対する位置を測定する。次に、第2測定ステップにおいて、ラックシャフト2(図4に示す)に所定のトルクを付与して回転させると、ラックシャフト2の第2のラック歯2bとピニオンシャフト6のピニオン歯6aとの噛合い動作によって、図7(b)に示すように、サポートヨーク81がヨークプラグ82側に移動する。そうすると、シール部材85がサポートヨーク81の対向面81bに押し付けられて弾性圧縮されると共に、測定器9の可動子92が固定子91に対して相対移動する。
そして、サポートヨーク81及びヨークプラグ82のそれぞれの対向面81b,82bが接触し、可動子92の相対移動が停止する。このときの可動子92の測定目盛92aの基準目盛91aに対する位置を測定する。これにより、可動子92の移動前後における、固定子91の基準目盛91aに対する可動子92の測定目盛92aの差分をとることができる。すなわち、サポートヨーク81とヨークプラグ82との間の隙間を測定することが可能である。なお、この測定は作業者による目視によって行ってもよいが、電気的方法によって行ってもよい。
そして、この測定結果によって得られた隙間が、予め設定された許容値の範囲内であれば、固定ナット65をヨークプラグ82に完全に締結させてヨークプラグ82が筒部33に対して固定され、測定工程を終了する。一方、測定結果が許容値の範囲外であれば、ヨークプラグ82の位置を調整し、上述した測定工程を再度実行して測定結果が許容値の範囲内に収まるまでヨークプラグ82の位置の調整及び隙間の測定を繰り返し実行する。
なお、上記実施の形態において説明したラックハウジング3,サポートヨーク81,ヨークプラグ82,コイルばね83及びシール部材85が、本発明における「ラックガイド装置」を構成する。
以上説明した本実施の形態によれば、以下の作用及び効果を得ることができる。
(1)ラックガイド機構8は、測定器9を配置するための貫通孔82aが形成されたヨークプラグ82と、貫通孔82aのサポートヨーク81側の開口部を取り囲むように設けられたシール部材85を有しているので、筒部33の開口330から貫通孔82aを介してラックハウジング3の筒部33内へ流入する水や塵等の異物の混入を防止した状態のまま、サポートヨーク81とヨークプラグ82と間の隙間を測定することができる。
(2)サポートヨーク81がヨークプラグ82側に移動したときに押し付けられて弾性的に圧縮するように構成されているので、サポートヨーク81がヨークプラグ82側に移動してサポートヨーク81とヨークプラグ82との間の隙間が変化した場合でも、シール部材85が弾性変形により隙間の変化に追随し、防水性を維持することができる。
(3)ヨークプラグ82の貫通孔82aは、円弧状に形成された円弧孔であるので、例えばヨークプラグ82の貫通孔82aが可動子92を挿通させることができる程度の大きさの円形である場合には、ヨークプラグ82を筒部33に配置する際のヨークプラグ82の回転に伴って貫通孔82aの位置も変化するため、それに追従して可動子92の位置決めをする必要があるが、本実施の形態によればそのような考慮が不要となり、ラックガイド機構8を組み付ける組み付け機によって自動的に測定工程を行うことが容易となる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係るラックガイド機構8について図8及び図9を参照して説明する。図8は、第2の実施の形態に係るラックガイド機構8の構成を示す要部拡大図である。図9は、第2の実施の形態に係るシール部材85Aが取り付けられたヨークプラグ82を中心軸線Oの方向に沿って見た場合の構成例を示し、(a)は筒部33の開口側から見た場合の平面図であり、(b)はサポートヨーク81側から見た場合の平面図である。なお、図8及び図9では、第1の実施の形態について説明したものと共通する機能を有する構成要素については、同一の又は対応する符号及び名称を付してその説明を省略する。
図8に示すように、第2の実施の形態に係るヨークプラグ82の対向面82bには、シール部材85を収容するための凹部821Aが形成されている。凹部821Aは、シール部材85Aの形状に対応して、環状に形成されている。シール部材85Aのサポートヨーク81側を指向する端面85cはサポートヨーク81の対向面81bと接触し、反対側の端面85d(ヨークプラグ82を指向する端面)は、凹部821Aの底面821aと接触している。なお、図9(a)に示すように、本実施の形態においても、貫通孔82aは、第1の実施の形態と同様にヨークプラグ82の周方向に沿って円弧状に形成された円弧孔である。
第1の実施の形態に係るシール部材85は、円弧状に形成されていたが、本実施の形態に係るシール部材85Aは、図9(b)に示すように、環状に形成されている。つまり、第1の実施の形態に係るシール部材85では、貫通孔82aの開口部周辺のみを取り囲むように設けられていたが、本実施の形態に係るシール部材85Aは、貫通孔82aの開口部周辺だけでなく、ヨークプラグ82の周方向全域に亘って設けられている。すなわち、シール部材85Aは、第1の実施の形態に係るシール部材85に比べてサポートヨーク81の対向面81bとの接触面積が大きいため、サポートヨーク81の中心軸線Oに沿った方向に対する傾動が抑制されて姿勢の安定化される。
また、シール部材85Aは、中心に挿通孔850が形成された環状であり、この挿通孔850の内側における対向面82bにコイルばね83の一端が当接している。つまり、コイルばね83は、その一端が挿通孔850を介してヨークプラグ82の対向面82bに当接し、他端がサポートヨーク81の収容穴810の底面810aに当接している。
これにより、例えば、挿通孔850が無い場合は、コイルばね83の一端が弾性体であるシール部材85Aの端面に当接するため、コイルばね83が中心軸線Oに沿った方向に対して傾動し、これによってサポートヨーク81の姿勢が不安定となるおそれがあるが、このような状態が回避される。
以上説明した本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。
(付記)
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
上記実施の形態では、ヨークプラグ82の貫通孔82aが円弧状の円弧孔であったが、貫通孔82aの形状はこれに限定されものではなく、作業者が測定を行う場合には、例えば円孔であってもよい。この場合、円孔の外径は測定器9の可動子92の外径よりも大径に設定される。
また、上記実施の形態では、ラックガイド機構8がラックハウジング3における第2ピニオン収容部32に適用されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第1ピニオン収容部31に適用されていてもよい。
またさらに、上記実施の形態では、操舵補助装置10を備えたステアリング装置1にラックガイド機構8を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、操舵補助装置10を備えていないステアリング装置にもラックガイド機構8を適用してもよい。