JP2017024290A - 成形品及び成形品の製造方法 - Google Patents

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勝則 石戸谷
Katsunori Ishidoya
勝則 石戸谷
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Abstract

【課題】補強繊維にて補強された成形部と、補強繊維がなくてベース樹脂で成形した成形部とを合せもつ成形品と、該成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】エンジンカバー10は、補強繊維とベース樹脂とにより成形されている天板部12、外側壁14等、内側壁24、及び境界部26aまでの部位と、補強繊維がなくてベース樹脂により成形されている島領域22及び溝20の内側壁25とを有する。境界部26aは、補強繊維の径よりも短い厚さを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、成形品及び成形品の製造方法に関する。
従来から、熱可塑性樹脂の成形品において、木紛繊維やガラス繊維などの補強繊維で補強した成形品が提案されている(特許文献1)。このような成形品は、全体にわたって前記補強繊維がベース樹脂(熱可塑性樹脂)に混合されていることによって、成形品全体を補強することができる。
特開2003−71884号公報
ところで、上記のような木紛繊維やガラス繊維などの補強繊維で補強する部分は成形品の全体ではなく、部分的でよいとする要望もある。しかしながら、従来は、このような要望に適した成形品及び製造方法は提案されていない。
本発明の目的は、補強繊維にて補強された成形部と、補強繊維がなくてベース樹脂で成形した成形部とを合せもつ成形品と、該成形品の製造方法を提供することにある。
上記問題点を解決するために、本発明の成形品は、補強繊維とベース樹脂とにより成形されている第1成形部と、前記補強繊維がなくて前記ベース樹脂により成形されている第2成形部とを有し、前記第1成形部と前記第2成形部との境界部は、前記補強繊維の径よりも短い厚さを有するものである。
また、前記第1成形部は意匠面を有し、その意匠面にはシボが形成されており、前記第2成形部は意匠面を有し、その意匠面はシボなし面として形成されていてもよい。
また、前記第2成形部は意匠面を有し、その意匠面が平滑面であってもよい。
また、前記第2成形部は、前記第1成形部に囲まれて島を形成していてもよい。
また、前記境界部に連結された前記第1成形部には補強リブが含まれていてもよい。
本発明の成形品の製造方法は、補強繊維とベース樹脂が導入される第1成形部形成用キャビテイと、前記ベース樹脂が導入される第2成形部形成用キャビテイを有し、前記第1成形部形成用キャビテイと前記第2成形部形成用キャビテイとの間には、前記補強繊維の通過を阻止する通過阻止部を有した射出成形金型を使用する成形品の製造方法であって、前記第1成形部形成用キャビテイに前記補強繊維と溶融状態の前記ベース樹脂を導入した後、前記第1成形部形成用キャビテイに導入した前記ベース樹脂を前記通過阻止部を介して第2成形部形成用キャビテイに導入し、かつ前記通過阻止部にて前記第1成形部形成用キャビテイに導入した前記補強繊維の前記第2成形部形成用キャビテイ内への通過を阻止するものである。
本発明によれば、補強繊維にて補強された成形部と、補強繊維がなくてベース樹脂で成形した成形部とを合せもつ成形品とすることができる。
(a)は第1実施形態の成形品としてのエンジンカバーの断面図、(b)は第1実施形態のエンジンカバーの斜視図。 (a)は第1実施形態のエンジンカバーの射出成形金型の断面図、(b)は第1実施形態の射出成形金型にベース樹脂と補強繊維を導入した状態の断面図、(c)は(b)の要部拡大図。 (a)は従来のエンジンカバーの断面図、(b)は従来のエンジンカバーの断面図。 (a)は第2実施形態の成形品としてのエンジンカバーの断面図、(b)は第2実施形態のエンジンカバーの断面図。 (a)は第2実施形態のエンジンカバーの射出成形金型の断面図、(b)は第2実施形態の射出成形金型にベース樹脂と補強繊維を導入した状態の断面図、(c)は(b)の要部拡大図。 (a)は従来のエンジンカバーの断面図、(b)は(a)の4−4線断面図。
(第1実施形態)
以下、本発明の成形品及び成形品の製造方法をエンジンカバー及びその製造方法に具体化した一実施形態について図1(a)、図1(b)、図2(a)、図2(b)、及び図2(c)を参照して説明する。
図1(b)に示すように、エンジンカバー10は、有蓋四角錐台状に形成され、長方形をなす天板部12と、天板部12の四方側縁から斜め下方へ延びる等脚台形状の外側壁14〜17を有する。
外側壁14、16は相互に対向するように配置されている。また、外側壁14、16にそれぞれ両端が一体に連結された外側壁15、17は、外側壁14、16よりも上辺及び下辺が長く形成されていて、相互に対向するように配置されている。
天板部12、及び外側壁14〜17の意匠面(表面)及び内面、並びに内側壁24にはシボ(梨地)を有するように形成されている。
図1(a)、図1(b)に示すように、天板部12の中央部には、四角環状の溝20にて区画されて島となる島領域22が四角形状に形成されている。なお、島領域22は、四角形状に限定するものではなく、三角形、五角形等の多角形、円形等の他の形状であってもよい。島領域22の上面、すなわち、意匠面22aは、天板部12の意匠面12aと面一となっている。島領域22の意匠面22aと天板部12の意匠面とは面一に限定するものではなく、いずれか一方が他方よりも高く形成されていてもよい。また、島領域22の意匠面22aは平滑面となっている。
溝20は、天板部12に連結されて下方へ延びた内側壁24と、島領域22に連結されて下方へ延びる内側壁25と、内側壁24、25の下端を連結する底壁26とにて構成されている。底壁26には、底壁26の全体に亘って設けられていて環状に配置された境界部26aを有する。
ここで、天板部12、外側壁14〜17、内側壁24、及び境界部26aまでは、本実施形態では熱可塑性合成樹脂をベース樹脂と補強繊維とが混合されて射出成形されている。補強繊維は、木紛繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等を挙げることができる。
境界部26aの厚さは、天板部12、外側壁14〜17、及び内側壁24の厚さ、及び前記補強繊維の径よりも小さくされており、前記補強繊維の通過不能な厚さとしている。一方、島領域22及び溝20の内側壁25は、その厚さが前記補強繊維の径よりも大きくされていて、前記補強繊維がなく前記ベース樹脂により成形されている。
本実施形態では、天板部12、外側壁14〜17、内側壁24、及び境界部26aまでの部位は、ベース樹脂と補強繊維にて形成されたものであり、第1成形部に相当する。また、本実施形態では、島領域22及び溝20の内側壁25は、補強繊維がなくベース樹脂により成形された部位であり、これらの部位は、第2成形部に相当する。
(成形品の製造方法)
次に、上記のように構成された成形品であるエンジンカバー10の製造方法について図2(a)、図2(b)及び図2(c)を参照して説明する。図2(a)、図2(b)は、射出成形金型の断面図であって、図1(b)に示すエンジンカバー10の2−2線で断面視した部位を形成する箇所の断面図である。
図2(a)に示すように射出成形金型は、外側壁意匠面形成部31、天板部意匠面形成部32、溝形成突部33、島領域意匠面形成部34を備えた上金型30と、外側壁内面形成部41、天板部内面形成部42、溝形成突部33が挿入される凹部43、島領域内面形成部44を備えた下金型40とを備える。また、凹部43は、内側壁外面形成部43a及び内側壁内面形成部43bを有する。
また、外側壁意匠面形成部31、天板部意匠面形成部32、外側壁内面形成部41、及び天板部内面形成部42にはシボ形成用の凹凸(なお、図2(a)、図2(b)では凹凸を図示していない)が形成されている。一方、島領域意匠面形成部34、島領域内面形成部44はシボ形成用の凹凸は形成されておらず、平滑面となっている。
図2に示すように、上金型30と下金型40の型締状態で、外側壁意匠面形成部31と外側壁内面形成部41、天板部意匠面形成部32と天板部内面形成部42、島領域意匠面形成部34と島領域内面形成部44、溝形成突部33の側面33a、33bと内側壁外面形成部43a,43b間にキャビテイCが形成される。なお、図2(c)に示すように溝形成突部33の側面33a、及び内側壁外面形成部43aにはシボ形成用の凹凸が形成されている。一方、内側壁内面形成部43bはシボ形成用の凹凸は形成されておらず、平滑面となっている。
また、図2(c)に示すように、凹部43の底壁には、上方へ突出された通過阻止部50が形成されており、型締状態で、通過阻止部50と溝形成突部33間が、補強繊維の直径よりも短い距離で離間するように設定されている。なお、凹部43の底面から突出する通過阻止部50の突出量(高さ)は、使用する補強繊維の径により任意に設定すればよい。
例えば、一般に流通しているスギの間伐材をハンマーミルで粉砕したセルロース繊維を補強繊維とする場合は、150μm以上であることから、通過阻止部50と溝形成突部33間の離間距離を150μm未満とするように、凹部43の底面から突出すればよい。
上記のように型締状態の射出成形金型に対し、複数のゲート48を介して溶融状態のベース樹脂と、補強繊維とを図2(a)に示すようにキャビテイCに導入する。
なお、図2(a)、図2(b)に示すようにゲート48は、下金型40に設けられて、外側壁意匠面形成部31と外側壁内面形成部41間のキャビテイCに連通して形成されている。
外側壁意匠面形成部31、外側壁内面形成部41間に導入されて流し込まれた、ベース樹脂P及び補強繊維Sは、天板部意匠面形成部32と天板部内面形成部42間、溝形成突部33の側面33aと凹部43の内側壁内面形成部43a間を経て、溝形成突部33と通過阻止部50間に達する。そして、溝形成突部33と通過阻止部50間では、補強繊維Sの側面33bと内側壁内面形成部43b間のキャビテイ内への移動が阻止される。すなわち、溝形成突部33と通過阻止部50間は、補強繊維Sの径よりも小さいため、ベース樹脂Pのみが凹部43の内側壁内面形成部43bと溝形成突部33の側面33b間のキャビテイCに流入し、島領域意匠面形成部34と島領域内面形成部44間のキャビテイCに至り、該キャビテイCを充填する。この後、ベース樹脂Pを冷却硬化させてエンジンカバー10を成形する。
本実施形態では、キャビテイCにおいて、天板部12、外側壁14〜17、内側壁24、及び境界部26aまでの部位を形成するキャビテイは、第1成形部形成用キャビテイに相当する。また、キャビテイCにおいて、内側壁25と島領域122を形成するキャビテイは、第2成形部形成用キャビテイに相当する。
この成形時に、外側壁意匠面形成部31、天板部意匠面形成部32、外側壁内面形成部41、及び天板部内面形成部42、並びに、溝形成突部33の側面33a、及び内側壁外面形成部43aにより、エンジンカバー10の外側壁14の意匠面及び内面、天板部12の意匠面12a及び内面、内側壁24の両側面にシボが形成される。また、島領域22の意匠面22aは平滑面として形成される。また、溝形成突部33と通過阻止部50とにより、補強繊維Sの移動を阻止した部位では、境界部26aが形成される。
(従来例)
従来例のエンジンカバー10Aを図3(a)及び図3(b)を参照して説明する。なお、前記実施形態と同様の構成については、同一符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。従来のエンジンカバー10Aは、例えば四角環状の溝20により、島領域122が区画形成されており、エンジンカバー10Aの意匠面(すなわち、島領域122の意匠面122a、及び外側壁14〜17)及び内側壁24、125の側面にシボが形成されている。また、従来例では、前記実施形態と異なり、境界部26aを備えていない構成である。
このように補強繊維で補強した成形品は、ベース樹脂のヒケによって表面に凹凸が発生しやすい。これを防止する目的と、製品全体の補強目的のために、補強繊維の繊維量を増やすと、樹脂の流動性も悪くなり、流れムラによるフローマークが発生する(特許文献1)。この2点による外観不良を解決するために、従来は成形品の全面に凹凸のあるシボをつけることが行われている。しかし、補強繊維で補強されている樹脂成形品において、表面がシボつきでない平滑性を有する部分を設ける要望もある。
この従来品に対して、本実施形態では、このような需要に応えることができる。従って、本実施形態では、平滑面を有することにより、例えば、ピアノ調鏡面などの光沢のあるあらたな意匠面を付加することも可能となる。
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のエンジンカバー10(成形品)は、補強繊維Sとベース樹脂Pとにより成形されている天板部12、外側壁14〜17、内側壁24、及び境界部26aまでの部位(第1成形部)と、補強繊維Sがなくてベース樹脂Pにより成形されている島領域22及び溝20の内側壁25(第2成形部)とを有する。そして、第1成形部と前記第2成形部との境界部26aは、補強繊維Sの径よりも短い厚さを有する。
また、本製造方法は、天板部12、外側壁14〜17、内側壁24、及び境界部26aまでの部位を形成するキャビテイ(第1成形部形成用キャビテイ)に、補強繊維Sと溶融状態のベース樹脂Pを導入する。その後、ベース樹脂Pを通過阻止部50を介して内側壁25と島領域122を形成するキャビテイ(第2成形部形成用キャビテイ)に導入し、通過阻止部50にて第1成形部形成用キャビテイに導入した補強繊維Sの第2成形部形成用キャビテイ内への通過を阻止する。
この結果、本実施形態の成形品及びその製造方法は、補強繊維にて補強された成形部と、補強繊維がなくてベース樹脂で成形した成形部とを合せもつ成形品とすることができる。
(2)本実施形態の成形品は、第1成形部の一部を構成する天板部12は意匠面12aを有し、その意匠面にはシボが形成されている。また、第2成形部の一部を構成する島領域22は、意匠面22aを有し、その意匠面22aはシボなし面として形成されている。この結果、第1成形部における意匠面は、従来と同様にシボを形成して、フローマークや、樹脂のヒケによる表面の凹凸を解消でき、第2成形部における意匠面は、シボ無しとすることができる。
(3)本実施形態の成形品は、第2成形部の一部を構成する意匠面22aは、平滑面としている。この結果、第2成形部の意匠面は、上記(2)の効果に加えて、第2成形部の意匠面を平滑面を有することができる。
(4)本実施形態の成形品は、第2成形部は、第1成形部に囲まれて島を形成しているこの結果、本実施形態によれば、第2成形部を第1成形部に囲まれた島として成形された成形品において、上記(1)乃至(3)の効果を奏することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の成形品及び製造方法を図4(a)、図4(b)、図5(a)、図5(b)、及び図5(c)を参照して説明する。本実施形態の成形品は、第1実施形態とは異なる形状のエンジンカバーに具体化したものである。
図4(a)に示すように、エンジンカバー100は、有蓋四角箱状に形成され、長方形をなす天板部112と、天板部112の四方側縁から下方へ延びる四角形状の外側壁114〜117を有する。
外側壁114、116は相互に対向するように配置されている。また、外側壁114、116にそれぞれ両端が一体に連結された外側壁115、117は、外側壁114、116よりも長く形成されていて、相互に対向するように配置されている。
天板部112の上面(意匠面)及び下面は平滑面となっている。また、外側壁114〜117の意匠面(表面)及び内面にはシボ(梨地)を有するように形成されている。図4(a)、図4(b)に示すように、天板部112の下面には、短手方向に延びて外側壁114、116と平行に形成された複数の補強リブ120と、長手方向に延びて、外側壁115、117と平行に配置された複数の補強リブ130とが、枡格子状に配置されている。なお、補強リブ120、130の配置は枡格子状に限定するものではなく、菱形等の他の格子形状であってもよく、また、格子形状以外の形状に配置してもよい。
ここで、外側壁114〜117、及び補強リブ120、130は、本実施形態では熱可塑性合成樹脂をベース樹脂と補強繊維とが混合されて射出成形されており、これらの厚さは、補強繊維の存在を許容する厚さを有している。なお、ベース樹脂及び補強繊維は、第1実施形態と同様である。
一方、天板部112において、外側壁114〜117、及び補強リブ120、130と連結されている領域を除いた領域R(すなわち、図4(a)で点線で囲まれた領域)は、前記ベース樹脂のみで形成されていて、その領域Rの厚さは、補強繊維Sの径よりも小さくされている。従って、領域Rと前記外側壁114〜117、及び補強リブ120、130と連結されている領域の境を境界部138とし、この境界部138の厚さは、前記補強繊維が通過不能な厚さになっている。
本実施形態では、外側壁114〜117、補強リブ120、130は、ベース樹脂と補強繊維にて形成されたものであり、第1成形部に相当する。また、本実施形態では、天板部112の領域Rは、補強繊維がなくベース樹脂により成形された部位であり、これらの部位は、第2成形部に相当する。
(成形品の製造方法)
次に、上記のように構成された成形品であるエンジンカバー100の製造方法について図5(a)、図5(b)及び図5(c)を参照して説明する。
図5(a)、図5(b)は、射出成形金型の断面図であって、図4(a)に示すエンジンカバー100の3−3線で断面視した部位を形成する箇所の断面図である。
図5(a)に示すように射出成形金型は、外側壁意匠面形成部131、天板部意匠面形成部132、134を備えた上金型150と、外側壁内面形成部141、補強リブ120、130を形成するために格子状に配置された溝部136を備える下金型140とを備える。
上金型150の天板部意匠面形成部132は、前記溝部に相対する面であり、天板部意匠面形成部134と面一に形成されている。下金型140の溝部136は、補強リブ120、130の側面を形成する補強リブ側面形成部143、補強リブ120の下端面を形成する下端面形成部144とを有する。溝部136の溝幅(すなわち、補強リブ側面形成部143間の距離)は、補強繊維Sの径よりも長くされている。
また、下金型140において、溝部136と外側壁内面形成部141間の上面、及び溝部136間の上面は、上金型150の天板部意匠面形成部134と相対する天板部内面形成部142としている。
また、外側壁意匠面形成部131、外側壁内面形成部141、補強リブ側面形成部143、下端面形成部144にはシボ形成用の凹凸(なお、図5(a)、図5(b)では凹凸を図示していない)が形成されている。また、天板部意匠面形成部134、天板部意匠面形成部132、天板部内面形成部142にはシボ形成用の凹凸は形成されておらず、平滑面となっている。
上金型150と下金型140の型締状態では、天板部意匠面形成部134と天板部内面形成部142間の距離は、補強繊維Sの径よりも短くされている。例えば、第1実施形態と同様にセルロース繊維を補強繊維とする場合は、補強繊維Sの径が150μm以上であることから、天板部意匠面形成部134と天板部内面形成部142間の距離を150μm未満とするように設定されている。一方、上金型150と下金型140の型締状態では、外側壁意匠面形成部131と外側壁内面形成部141間の距離は、補強繊維Sの径よりも長くなるように設定されている。
図5(a)に示すように、上金型150と下金型140の型締状態で、外側壁意匠面形成部131と外側壁内面形成部141との間、天板部意匠面形成部134と天板部内面形成部142との間、天板部意匠面形成部132、補強リブ側面形成部143、及び下端面形成部144間にキャビテイCが形成される。
上記のように型締状態の射出成形金型に対し、ゲート148を介して溶融状態のベース樹脂と、補強繊維とを図5(a)に示すようにキャビテイCに導入する。なお、図5(a)、図5(b)に示すようにゲート148は、下金型140に設けられて、外側壁意匠面形成部131と外側壁内面形成部141間のキャビテイCに連通して形成されている。
外側壁意匠面形成部131、外側壁内面形成部141間に導入された、ベース樹脂P及び補強繊維Sは、外側壁意匠面形成部131、外側壁内面形成部141間のキャビテイCを充填するとともに、各溝部136内に流れ込みして溝部136を充填する。
そして、ベース樹脂P及び補強繊維Sが、外側壁意匠面形成部131、外側壁内面形成部141間のキャビテイ、及び溝部136を充填して、天板部意匠面形成部132に達すると、天板部意匠面形成部134、天板部内面形成部142間のキャビテイCへは、補強繊維Sの移動が阻止され、ベース樹脂Pのみが流れ込む。すなわち、天板部意匠面形成部134、天板部内面形成部142間の距離は、補強繊維Sの径よりも短いため、ベース樹脂Pのみが天板部意匠面形成部134、天板部内面形成部142間のキャビテイCに流入して充填する。この後、ベース樹脂Pを冷却硬化させてエンジンカバー100を成形する。
本実施形態では、キャビテイCにおいて、外側壁意匠面形成部131、外側壁内面形成部141間の外側壁14〜17を形成するキャビテイ、及び補強リブ側面形成部143間の補強リブ120、130を形成するキャビテイは、第1成形部形成用キャビテイに相当する。また、キャビテイCにおいて、天板部意匠面形成部132を除く天板部112の領域Rは、補強繊維がなくベース樹脂により成形された部位であり、これらの部位は、第2成形部形成用キャビテイに相当する。
この成形時に、外側壁意匠面形成部131、外側壁内面形成部141、補強リブ側面形成部143、及び下端面形成部144により、エンジンカバー100の外側壁114の意匠面及び内面、並びに補強リブ120、130の両側面にシボが形成される。また、天板部意匠面形成部134、天板部意匠面形成部132、及び天板部内面形成部142により、天板部112の上面(意匠面)及び下面は平滑面として形成される。また、領域Rの四方の周縁部は、通過阻止部となって、領域R内への補強繊維Sの移動を阻止した部位となって、境界部138が形成される。
(従来例)
従来例のエンジンカバー100Aを図6(a)及び図6(b)を参照して説明する。なお、前記第2実施形態と同様の構成については、同一符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
従来のエンジンカバー100Aは、天板部112Aの厚さが、補強繊維Sの径よりも長くされており、天板部112A全体において、補強繊維で補強している。このように天板部112A全体を補強繊維で補強した成形品は、天板部112Aにも補強繊維があるため、成形品の重量が増加して重くなる。
この従来品に対して、本実施形態では、このようなことはなく、同じ大きさ、及び形状の場合に、重量を軽量化できる。
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の、エンジンカバー100は、第2成形部としての天板部112の領域Rには、補強繊維Sがないため、その分、軽量化できる。特に、本実施形態の場合、補強繊維として比重の高いガラス繊維や、植物繊維など太い繊維径のものを使用する場合、成形品の軽量化が顕著となる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では熱可塑性合成樹脂をベース樹脂としたが、ベース樹脂は熱可塑性樹脂に限定するものではなく、熱硬化性樹脂としてもよい。
・成形品は、エンジンカバーに限定するものではなく、エンジンカバー以外の成形品であってもよい。
・第2実施形態では、領域Rの全体の厚さを補強繊維Sの径よりも短い長さとなるようにしたが、領域Rの四方周縁部のみを通過阻止部とし、領域R内の厚さは、補強繊維Sの径よりも長くしてもよい。
10…エンジンカバー(成形品)、12…天板部、12a…意匠面、
14〜17…外側壁、20…溝、22…島領域、22a…意匠面(平滑面)、
24、25…内側壁、26…底壁、26a…境界部、
30…上金型、31…外側壁意匠面形成部、32…天板部意匠面形成部、
33…溝形成突部、33a…側面、33b…側面、
34…島領域意匠面形成部、40…下金型、41…外側壁内面形成部、
42…天板部内面形成部、43…凹部、43a…内側壁外面形成部、
43b…内側壁内面形成部、44…島領域内面形成部、48…ゲート、
50…通過阻止部、100…エンジンカバー(成形品)、112…天板部、
114〜117…外側壁、120、130…補強リブ、122…島領域、
122a…意匠面、131…外側壁意匠面形成部、
132…天板部意匠面形成部、134…天板部意匠面形成部、
136…溝部、138…境界部、140…下金型、148…ゲート、
150…上金型、C…キャビテイ、P…ベース樹脂、S…補強繊維、R…領域。

Claims (6)

  1. 補強繊維とベース樹脂とにより成形されている第1成形部と、前記補強繊維がなくて前記ベース樹脂により成形されている第2成形部とを有し、
    前記第1成形部と前記第2成形部との境界部は、前記補強繊維の径よりも短い厚さを有する成形品。
  2. 前記第1成形部は意匠面を有し、その意匠面にはシボが形成されており、
    前記第2成形部は意匠面を有し、その意匠面はシボなし面として形成されている請求項1に記載の成形品。
  3. 前記第2成形部は意匠面を有し、その意匠面が平滑面である請求項2に記載の成形品。
  4. 前記第2成形部は、前記第1成形部に囲まれて島を形成している請求項2または請求項3に記載の成形品。
  5. 前記境界部に連結された前記第1成形部には補強リブが含まれている請求項1に記載の成形品。
  6. 補強繊維とベース樹脂が導入される第1成形部形成用キャビテイと、前記ベース樹脂が導入される第2成形部形成用キャビテイを有し、前記第1成形部形成用キャビテイと前記第2成形部形成用キャビテイとの間には、前記補強繊維の通過を阻止する通過阻止部を有した射出成形金型を使用する成形品の製造方法であって、
    前記第1成形部形成用キャビテイに前記補強繊維と溶融状態の前記ベース樹脂を導入した後、前記第1成形部形成用キャビテイに導入した前記ベース樹脂を前記通過阻止部を介して第2成形部形成用キャビテイに導入し、かつ前記通過阻止部にて前記第1成形部形成用キャビテイに導入した前記補強繊維の前記第2成形部形成用キャビテイ内への通過を阻止する成形品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2018216367A1 (ja) * 2017-05-25 2018-11-29 日産自動車株式会社 成形型および成形方法

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