図9に示された電源装置が適用される機器は、バッテリが搭載されない、所謂バッテリレスの機器であり、同図に示された電源装置の負荷2の中には、内燃機関に燃料を供給する燃料噴射装置に燃料を与える燃料ポンプや、機関を点火する点火装置や、これらを制御する手段をマイクロプロセッサにより構成するECU(電子制御ユニット)等、機関を動作させるために駆動することが必須の電装品(以下「必須電装品」という。)が含まれる。
内燃機関により駆動される機器がバッテリを搭載していない場合には、機関を始動するために行うクランキングの際の回転回数が限られているため、機関の始動を容易にするために、機関のクランク軸の回転速度ができるだけ低い状態にあるときから必須電装品を駆動するために必要な電圧を発生させるようにしておく必要がある。
また内燃機関を制御するために、マイクロプロセッサにより各種の制御手段を構成するECU(Electronic Control Unit 又はEngine Control Unit)が用いられる場合には、機関を停止する際に、マイクロプロセッサに機関停止時処理を行わせる必要があるため、機関が停止した後も、一定時間の間マイクロプロセッサに電源電圧を与え続けることができるようにしておく必要がある。従って、上記のようなバッテリレスの機器に適用する内燃機関用電源装置には、機関の始動時に出力電圧の立ち上がりをできるだけ早くすることが必要とされるだけでなく、機関が停止して発電機が出力を停止した後も一定時間の間負荷への電圧の供給を継続することができるようにしておくことが必要とされる。
図9に示された電源装置の出力特性は、レギュレータ3の出力端子間に接続する出力コンデンサ4の静電容量により大きく左右される。コンデンサ4の静電容量を小さくした場合には、図10(A)に示すように、時刻t1で機関の始動操作を開始した後、レギュレータの出力端子間電圧が素早く立ち上がり、始動操作を開始した直後の時刻taで出力端子間電圧が機関を動作させるために必須な電装品負荷を駆動するために必要な電圧Vaに達するため、機関の始動を容易にすることができる。
これに対し、コンデンサ4の静電容量を大きくした場合には、図10(B)に示すように、時刻t1で機関の始動操作を開始した後の出力端子間電圧の立上がりが遅れ、出力端子間電圧が機関を動作させるために必須な電装品負荷を駆動するために必要な電圧Vaに達する時刻ta′が、コンデンサ4の静電容量を小さくした場合に比べて遅れるため、機関の始動性が悪くなる。
またコンデンサ4の静電容量を小さくした場合には、図10(A)に示したように、時刻t2で機関を停止させて発電機の出力を停止させた後の出力端子間電圧の立ち下がりが速くなるため、機関を停止した時刻t2から間もない時刻tbで、出力端子間電圧がマイクロプロセッサを動作状態に保持するために必要な電圧範囲の下限値(許容下限値)Vbまで低下してしまい、ECUを構成するマイクロプロセッサに機関停止時処理を完了させることができなくなる。
これに対し、出力コンデンサ4の静電容量を大きくした場合には、図10(B)に示すように、時刻t2で機関を停止させた後の出力端子間電圧の立ち下がりが遅れるため、機関を停止させた時刻t2から、出力電圧が許容下限値Vbまで低下する時刻tb′までの時間が十分に長くなり、この間にマイクロプロセッサに機関停止時処理を完了させることができる。
上記のように、レギュレータ3の出力端子間に出力コンデンサ4を接続した構成を有する内燃機関用電源装置においては、機関の始動時に電圧の立ち上がりを早くするという要求と、機関が停止した後も十分に長い時間の間電圧の出力を継続するという要求とが相反するものであったため、これらの要求の双方に応えることは困難であった。特に最近では、機関を停止した直後に、それまでの機関の運転時間や、アクチュエーターの停止位置などをEEPROM等の不揮発性メモリに記憶させる等の各種の処理を機関停止時処理としてECUのマイクロプロセッサに行なわせているため、マイクロプロセッサが機関停止時処理を行なうのに要する時間が長くなる傾向にある。従来の内燃機関用電源装置を用いた場合には、機関の始動を容易にすることを優先して装置を設計すると、機関停止時処理を完了させることができないおそれがあり、最悪の場合には機関停止時処理が不正に終了して、データが破壊されるおそれがあった。またマイクロプロセッサに機関停止時処理を完全に遂行させることを優先して電源装置を設計した場合には、機関の始動性が悪くなり、人力による機関の始動が難しくなるおそれがあった。
上記の説明では、内燃機関により駆動される機器がバッテリを搭載していない場合(バッテリレスの機器)を例にとったが、バッテリを搭載していても、バッテリに依存せずに内燃機関の運転を可能にするように電源装置が設計される機器(バッテリインデペンデントな機器)においても全く同様の問題が生じる。
本発明の目的は、内燃機関の停止時に内燃機関を制御するECUのマイクロプロセッサに行なわせる機関停止時処理を、バッテリに頼ることなく、かつ機関の始動性を何等犠牲にすることなく確実に完了させることを可能にする内燃機関用電源装置を提供することにある。
本発明は、内燃機関により駆動される交流発電機の出力が入力される入力端子と前記内燃機関を動作させるために駆動することが必須な電装品である必須電装品を含む負荷に接続される出力端子とを有して、出力端子間電圧が調整電圧未満であるときに前記出力端子から直流電力を出力し、前記出力端子間電圧が調整電圧以上である時に前記直流電力の出力を停止するレギュレータと、レギュレータの出力端子間に接続された出力コンデンサとを備えた内燃機関用電源装置を対象とする。
上記必須電装品は、例えば、内燃機関に燃料を供給する燃料噴射装置に燃料を与える燃料ポンプや、内燃機関を制御するECU等である。
本発明においては、レギュレータの出力端子間にコンデンサ投入用スイッチを介して接続された補助コンデンサと、レギュレータの出力端子間電圧が設定電圧以上になったときに上記コンデンサ投入用スイッチをオン状態にするようにコンデンサ投入用スイッチを制御するコンデンサ投入用スイッチ制御手段とが設けられる。上記設定電圧は、必須電装品が動作を開始するときのレギュレータの出力端子間電圧以上に設定される。
上記のように構成すると、内燃機関の始動時にレギュレータの出力端子間電圧が設定電圧に達するまでの間補助コンデンサが出力コンデンサから切り離された状態に保持され、レギュレータの出力端子間電圧が設定電圧に達した後は補助コンデンサが出力コンデンサに対して並列に接続される。
このように構成しておくと、機関の始動操作が開始された後、レギュレータの出力端子間電圧が、少なくとも必須電装品を動作させるために必要な電圧に達するまでの間、レギュレータの出力端子間電圧により充電するコンデンサを出力コンデンサのみとすることができるため、レギュレータの出力端子間電圧(出力コンデンサの両端電圧)の立上がりを速くして、機関の始動性を良好にすることができる。
またレギュレータの出力端子間電圧が設定電圧に達した後は、出力コンデンサに対して並列に補助コンデンサが接続されるため、レギュレータの出力により充電されるコンデンサの静電容量を増大させて、該コンデンサに十分に多くのエネルギを蓄積することができる。また機関が停止して発電機が出力を停止した際には、出力コンデンサに蓄積された電荷だけでなく、補助コンデンサに蓄積された電荷を負荷の駆動に利用することができるため、内燃機関を停止させた後に負荷に電力を供給する時間を十分に長くすることができ、内燃機関を制御するECUのマイクロプロセッサに機関停止時処理を支障なく行なわせることができる。
本発明によれば、機関の始動性を何等損なうことなく、機関の停止時にマイクロプロセッサが機関停止時処理を行なうために十分に長い時間を確保することができるため、マイクロプロセッサに行なわせる制御が複雑で機関停止時処理を完了するために長い時間を要する場合でも、内燃機関により駆動されるシステムを、電源がバッテリに依存しないシステムとすることができる。
コンデンサ投入用スイッチをオフ状態にして内燃機関の始動操作を開始した後、コンデンサ投入用スイッチをオン状態にすると、レギュレータの出力端子間電圧で充電する必要があるコンデンサの静電容量が急激に増加するため、レギュレータの出力端子間電圧に落ち込みが生じる。この電圧の落ち込みにより、レギュレータの出力端子間電圧が必須電装品を動作状態に保持するために必要な電圧範囲の下限値(許容下限電圧)よりも低くなることがない場合には特に問題はないが、補助コンデンサの投入時に万一レギュレータの出力端子間電圧が許容下限電圧を下回るようなことがあると、必須電装品の動作に悪影響が及ぶため、コンデンサ投入用スイッチをオン状態にした直後に、レギュレータの出力端子間電圧が落ち込んだとしても、該電圧が必須電装品を動作状態に保持するために必要な電圧範囲の下限値を下回ることがないようにしておくのが好ましい。
そこで本発明の好ましい態様では、上記コンデンサ投入用スイッチ制御手段が、コンデンサ投入用スイッチがオンの状態でレギュレータの出力端子間電圧が設定電圧よりも低く設定された許容下限電圧未満になったときにコンデンサ投入用スイッチをオフ状態にするスイッチオフ制御と、スイッチオフ制御が行われたことによりレギュレータの出力端子間電圧が設定電圧以上になったときにコンデンサ投入用スイッチをオン状態にするオン復帰制御とを更に行うように構成される。
上記のように構成しておくと、補助コンデンサを投入する際にレギュレータの出力端子間電圧が許容下限電圧を下回る状態が生じるのを防ぐことができるため、必須電装品の動作に影響を及ぼすことなく補助コンデンサを投入して、機関停止時に行われるマイクロプロセッサの機関停止時処理に備えることができる。
上記コンデンサ投入用スイッチ制御手段は、レギュレータの出力端子間電圧が一度調整電圧以上になった後は、該コンデンサ投入用スイッチ制御手段がリセットされるまでの間、コンデンサ投入用スイッチをオン状態に保つように構成されていることが好ましい。
本発明に係る電源装置において、補助コンデンサに蓄積されたエネルギを負荷の駆動に利用するためには、補助コンデンサに蓄積された電荷を出力コンデンサ側に放電させる放電回路が構成されるようにしておく必要がある。コンデンサ投入用スイッチとしてオン時に双方向性を示すスイッチング素子を用いる場合には、コンデンサ投入用スイッチがオン状態にある間、補助コンデンサをコンデンサ投入用スイッチを通して出力コンデンサ側に放電させることができるが、コンデンサ投入用スイッチとして、オン時に単方向性を示すスイッチング素子を用いる場合には、補助コンデンサに蓄積された電荷を出力コンデンサ側に放電させる手段をコンデンサ投入用スイッチとは別に設けておく必要がある。また、コンデンサ投入用スイッチがオフ状態になった後も補助コンデンサに蓄積されたエネルギを負荷の駆動に利用するためには、コンデンサ投入用スイッチとしてオン時に双方向性を示すスイッチング素子を用いる場合にも、補助コンデンサに蓄積された電荷を出力コンデンサ側に放電させる手段を別途設けておく必要がある。
そこで、本発明の好ましい態様では、補助コンデンサに蓄積された電荷が出力コンデンサ側に放電するのを許容するように補助コンデンサと出力コンデンサとの間を接続する整流素子が設けられる。
上記のような整流素子を設けておくと、機関停止後、コンデンサ投入用スイッチがオフ状態になった後も、補助コンデンサから出力コンデンサ側に放電を行なわせて負荷に電力を供給することができる。また、補助コンデンサから整流素子を通して出力コンデンサ側に放電を行なわせることができるため、コンデンサ投入用スイッチとしてオン時に単方向性を示すスイッチング素子を用いることができる。
本発明の好ましい態様では、コンデンサ投入用スイッチがMOSFETにより構成される。MOSFETはオン時に双方向性を有する(ドレイン側からソース側にも、ソース側からドレイン側にも電流を流すことができる)ため、該MOSFETがオン状態にあるときには、補助コンデンサから出力コンデンサ側への放電を、該MOSFETを通して行なわせることができる。また該MOSFETのドレインソース間に形成されている寄生ダイオードを上記整流素子として機能させて、MOSFETがオフ状態になった後も補助コンデンサからの電力の供給を継続させることができる。
本発明によれば、内燃機関の始動時にレギュレータの出力端子間電圧が設定電圧に達するまでの間補助コンデンサが出力コンデンサから切り離された状態に保持され、レギュレータの出力端子間電圧が設定電圧に達した後に補助コンデンサが出力コンデンサに対して並列に接続されるようにしたので、機関の始動操作を行なう際にレギュレータの出力端子間電圧により充電するコンデンサを出力コンデンサのみとして、レギュレータの出力端子間電圧の立ち上がりを速くすることができ、内燃機関を動作させるために駆動することが必須な必須電装品に与える電源電圧の立上がりを速くして、機関の始動性を良好にすることができる。
また本発明によれば、レギュレータの出力端子間電圧が設定電圧に達した後、出力コンデンサに対して並列に補助コンデンサが接続されるため、レギュレータの出力端子間電圧により充電されるコンデンサの静電容量を増大させて、該コンデンサに十分に多くのエネルギを蓄積することができる。従って、内燃機関を停止させて発電機の出力を停止させた後に負荷に電力を供給する時間を十分に長く確保することができ、必須電装品にマイクロプロセッサが含まれている場合に、該マイクロプロセッサに機関停止時処理を支障なく行なわせることができる。
従って本発明によれば、機関の始動性を何等損なうことなく、機関の停止時にマイクロプロセッサが機関停止時処理を行なうために十分に長い時間を確保することができ、マイクロプロセッサに行なわせる制御が複雑で機関停止時処理を完了するために長い時間を要する場合でも、バッテリに依存しないように内燃機関用電源装置を構成することができる。
以下図面を参照して本発明に係る内燃機関用電源装置の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明に係る内燃機関用電源装置のハードウェアの構成例を示したものである。同図において1は、内燃機関により駆動される交流発電機、2は内燃機関を動作させるために必要な必須電装品を含む各種負荷、3は発電機1が出力する交流電圧を入力として、各種負荷2に与える調整された直流電圧を出力するレギュレータ、4はレギュレータ3の出力端子間に接続された出力コンデンサである。本実施形態では、交流発電機1として、回転界磁が永久磁石により構成された磁石回転子と、電機子鉄心に発電コイルを巻回してなる固定子とを備えた周知の磁石発電機が用いられている。
レギュレータ3は、発電機1の出力が入力される入力端子a及びbと、各種負荷2に接続される正極出力端子c及び負極出力端子dと、ブリッジの上辺をダイオード(整流素子)D1,D2により構成し、ブリッジの下辺をダイオードD3,D4により構成したフルブリッジ型の全波整流回路と、この整流回路のブリッジの下辺を構成するダイオードD3,D4にそれぞれ逆並列接続された電圧調整素子としてのサイリスタS1,S2とを備えた電圧変換回路301と、レギュレータの出力端子間電圧を検出して検出した出力端子間電圧が調整電圧未満であるときに出力端子c,dから直流電力を出力し、検出した出力端子間電圧が調整電圧以上である時に直流電力の出力を停止するようにサイリスタS1、S2を制御する制御部302とにより構成されている。本実施形態では、レギュレータの負極側出力端子dが接地されている。
本実施形態では、制御部302がマイクロプロセッサを備えていて、該マイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより各種の制御手段を構成する。制御部302を構成するマイクロプロセッサは、レギュレータの出力端子間電圧を一定の直流電圧に変換する定電圧電源回路(図示せず。)から電源電圧を得て動作する。制御部302を構成するマイクロプロセッサは、電源装置を制御するために専用に設けられたものでもよく、内燃機関を制御するECUに設けられているマイクロプロセッサでもよい。
制御部301は出力端子c,d間の電圧(出力端子間電圧)Vpが入力されるポートA1と、サイリスタS1及びS2のゲートに接続されたポートA2及びA3とを有して,ポートA1を通して検出した電圧Vpが設定された調整電圧以上になったときにポートA2及びA3からサイリスタS1及びS2に同時にトリガ信号を与えることにより電圧調整動作を行なう。
以上の構成は従来の電源装置と同様であるが、本実施形態においては、レギュレータ3の出力端子c,d間にコンデンサ投入用スイッチ5を介して補助コンデンサ6が接続され、レギュレータ3の出力端子間電圧が上記調整電圧よりも低く設定された設定電圧以上になったときにコンデンサ投入用スイッチ5をオン状態にするように、レギュレータの出力端子間電圧に応じてコンデンサ投入用スイッチ5を制御するコンデンサ投入用スイッチ制御手段が、制御部302に設けられている。
本実施形態では、レギュレータの正極側出力端子cにドレインが接続され、制御部302のポートA4にゲートが接続されたMOSFET(電界効果トランジスタ)F1によりコンデンサ投入用スイッチ5が構成され、MOSFETのソースとレギュレータ3の負極側出力端子(接地)dとの間に補助コンデンサ6が接続されている。
また本実施形態においては、コンデンサ投入用スイッチのオフ時に補助コンデンサ6から負荷側への電力の供給経路(補助コンデンサの放電経路)を構成するために、補助コンデンサ6の正極性側の一端とレギュレータ3の正極出力端子cとの間に、補助コンデンサ6側から正極出力端子c側に向う方向を順方向とした整流素子が設けられる。本実施形態では、この整流素子が、MOSFET F1のドレインソース間に形成された寄生ダイオードDpからなっている。
制御部302を構成するマイクロプロセッサは、不揮発性メモリに記憶された所定のプログラムを実行することにより、レギュレータの出力端子間電圧が調整電圧未満であるときに出力端子c,dから負荷に与えるための直流電力を出力し、出力端子間電圧が調整電圧以上である時に直流電力の出力を停止するようにレギュレータの出力端子間電圧に対してサイリスタS1,S2を制御する出力制御手段と、レギュレータの出力端子間電圧が調整電圧よりも低く設定された設定電圧以上になったときにコンデンサ投入用スイッチをオン状態にするようにコンデンサ投入用スイッチを制御するコンデンサ投入用スイッチ制御手段とを構成する。本実施形態で用いるコンデンサ投入用スイッチ制御手段は、レギュレータの出力端子間電圧が一度調整電圧以上になった後は、該コンデンサ投入用スイッチ制御手段がリセットされるまでの間(例えばマイクロプロセッサの電源が落とされるまでの間)、コンデンサ投入用スイッチをオン状態に保つように構成される。
上記出力制御手段は、レギュレータの出力端子間電圧Vpが設定された調整電圧以上になったときにサイリスタS1及びS2に同時にトリガ信号を与え、電圧Vpが調整電圧未満になったときにサイリスタS1及びS2のトリガを停止するように構成される。サイリスタS1及びS2にトリガ信号が与えられると、これらのサイリスタのうち、アノードカソード間に順方向電圧が印加されているサイリスタがオン状態になって、発電機1の出力をサイリスタS1とダイオードD4の直列回路又はサイリスタS2とダイオードD3の直列回路を通して短絡することにより発電機の出力を停止させる。
またレギュレータの出力端子間電圧Vpが調整電圧未満になるとサイリスタS1及びS2へのトリガ信号の供給が停止される。サイリスタS1及びS2へのトリガ信号の供給が停止されると、その直後に迎える発電機の出力電圧の零クロス点でそれまでオン状態にあった方のサイリスタがオフ状態になって発電機の出力の短絡が解除され、レギュレータの出力が回復する。レギュレータの出力端子間電圧が調整電圧以上になるような場合には、これらの動作が繰り返されることにより、レギュレータの出力端子c,d間の電圧が調整電圧付近の電圧に保たれる。レギュレータの出力端子間電圧が調整電圧未満であるときには、調整動作が行なわれないため、発電機の全波整流出力が出力端子c,dから出力される。
上記調整電圧は、レギュレータ3の出力端子間に接続される負荷の定格電圧に応じて適宜に設定される。調整電圧を如何なる電圧に設定するかは設計上の問題である。
制御部302が構成するコンデンサ投入用スイッチ制御手段は、内燃機関の始動操作が開始された後、発電機1の出力電圧の上昇に伴ってレギュレータ3の出力端子間電圧が設定電圧以上になったときにMOSFET F1(コンデンサ投入用スイッチ)をオン状態にすることにより、補助コンデンサ6を出力コンデンサ4に対して並列に接続する。
従って本実施形態では、内燃機関の始動時にレギュレータ3の出力端子間電圧が設定電圧に達するまでの間補助コンデンサ6が出力コンデンサ4から切り離された状態に保持され、レギュレータ3の出力端子間電圧が設定電圧に達した後に補助コンデンサ6が出力コンデンサ4に対して並列に接続される。
上記設定電圧は、内燃機関の始動時にレギュレータの出力端子間電圧により充電されるコンデンサを出力コンデンサ4のみとして、レギュレータの出力端子間電圧の立上がりを早くすることにより機関の始動性を向上させるために、必須電装品が動作を開始するときのレギュレータ3の出力端子間電圧以上に設定されるが、発電機1の出力電圧が上昇してレギュレータが電圧調整動作を行なう状態になった後は、レギュレータの出力端子間電圧により出力コンデンサと補助コンデンサとの双方を充電することができるようにするため、レギュレータの調整電圧よりは低く設定するのが好ましい。上記設定電圧の値は、内燃機関の停止時に内燃機関を制御するECUのマイクロプロセッサに行なわせる機関停止時処理を、バッテリに頼ることなく、かつ機関の始動性を何等犠牲にすることなく確実に完了させることを可能にするという本発明の目的を達成するために適した値に設定される。この設定電圧の値は、出力コンデンサ及び補助コンデンサの静電容量や、必須電装品を動作させるための電圧の値や、マイクロプロセッサに機関停止時処理を行わせるために必要な時間などの各種のパラメータに応じて適宜に決定されるが、この設定電圧の値の決定は実験に基づいて行うことができる。
また出力コンデンサ4の静電容量は、機関の始動時にレギュレータの出力端子間電圧を、機関の始動を確実に行わせるために十分に速く立ち上げることができるようにするために、電源装置の出力コンデンサが果たすべき機能を果たす上で必要最小限の値(例えばレギュレータ3の出力端子間電圧に含まれるリップルを許容範囲に収めるために必要最小限の値)に設定しておく。また補助コンデンサ6の静電容量と出力コンデンサ4の静電容量との和の静電容量が、機関停止後にマイクロプロセッサに機関停止時処理を完全に行わせるために必要な時間の間、レギュレータの出力端子間電圧を、必要レベル(マイクロプロセッサを動作状態に保持するために必要なレベル)以上に保つために必要にして十分な大きさになるように、補助コンデンサの静電容量を十分に大きな値に設定しておく。
本発明においては、電圧調整素子(本実施形態ではサイリスタ)やコンデンサ投入用スイッチをレギュレータの出力端子間電圧に対して制御するが、これらの制御に用いる「レギュレータの出力端子間電圧」は、電圧変換回路301の正極側出力端子からレギュレータの正極出力端子cを経て負荷2の正極側端子に至る電源ラインの任意の箇所で検出した対地間電圧(電源ラインと接地間の電圧)であればよく、レギュレータの出力端子c,d間から直接検出した電圧に限定されるものではない。
上記のように構成しておくと、機関の始動操作が開始された後、レギュレータ3の出力端子間電圧が、少なくとも必須電装品を動作させるために必要な電圧の下限値に達するまでの間、レギュレータの出力端子間電圧により充電するコンデンサを出力コンデンサ4のみとすることができるため、該出力コンデンサ4の静電容量を必要最小限の値に設定しておくことにより、必須電装品に与える電源電圧の立上がりを早くして、機関の始動性を良好にすることができる。
またレギュレータ3の出力端子間電圧が設定電圧に達した後は、出力コンデンサ4に対して並列に補助コンデンサ6が接続されて、出力コンデンサ4の静電容量に補助コンデンサ6の静電容量が加算されるため、レギュレータの出力端に接続されたコンデンサに十分に多くのエネルギを蓄積することができる。従って、内燃機関を停止させて発電機の出力を停止させた後に負荷2に電力を供給する時間を十分に長くすることができ、内燃機関を制御するECUのマイクロプロセッサに機関停止時処理を支障なく行なわせることができる。
従って、上記のように構成すると、機関の始動性を何等損なうことなく、機関の停止時にECUのマイクロプロセッサが機関停止時処理を行なうために十分に長い時間の間負荷2に電圧を供給し続けることができ、負荷2に含まれるECUのマイクロプロセッサが機関停止時処理を完了するために長い時間を要する場合でも、内燃機関により駆動されるシステムを、電源がバッテリに依存しないシステムとすることができる。
図2を参照すると、制御部302に設ける出力制御手段とコンデンサ投入用スイッチ制御手段とを構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示すフローチャートが示されている。図2において、Vp は電源ラインの適宜の箇所で検出したレギュレータの出力端子間電圧を示し、VccOnは、コンデンサ投入用スイッチをオン状態にするか否かを決定するためにレギュレータの出力端子間電圧と比較される設定電圧を示している。またVscはレギュレータの調整電圧を示している。
図2に示したタスクは、一定時間毎に起動する。図2に示されたタスクが起動すると、先ずステップS01においてレギュレータの出力端子間電圧Vp を設定電圧VccOnと比較する。その結果Vp<VccOnの関係が成立していると判定されたときには何もしないでこのタスクを終了する。ステップS01でVp<VccOnの関係が成立していないと判定されたときには、ステップS02に進んでVccOn≦Vp <Vscの関係が成立しているか否かを判定する。その結果VccOn≦Vp <Vscの関係が成立していると判定されたときにはステップS03に進んでMOSFET F1をオン状態にし、サイリスタS1,S2をトリガしない状態にしてこのタスクを終了する。ステップS02においてVccOn≦Vp <Vscの関係が成立していないと判定されたとき(Vp ≧Vscであるとき)には、ステップS04に進んでサイリスタS1,S2をトリガして発電機の出力を短絡する電圧調整動作を行わせた後このタスクを終了する。
図2に示したアルゴリズムによる場合には、ステップS01ないしS03によりレギュレータの出力端子間電圧が設定電圧以上になったときに前記コンデンサ投入用スイッチをオン状態にするようにコンデンサ投入用スイッチを制御するコンデンサ投入用スイッチ制御手段が構成される。またステップS02ないしS04により、出力制御手段が構成される。
図2に示したタスクをマイクロプロセッサに実行させることによりコンデンサ投入用スイッチ制御手段と出力制御手段とを構成した場合には、機関の始動操作が開始された後、レギュレータの出力端子間電圧が設定電圧VccOnに達するまでの間は、MOSFET F1がオフ状態に保たれているため、補助コンデンサ6が出力コンデンサから切り離された状態に保持される。レギュレータの出力端子間電圧が設定電圧VccOn以上になるとMOSFET F1がオン状態にされるため、補助コンデンサ6が出力コンデンサ4に並列に接続される。またレギュレータ3の出力端子間電圧が調整電圧Vsc未満のときにサイリスタS1及びS2がオフ状態に保たれ、レギュレータ3の出力端子間電圧が調整電圧Vsc以上になったときにサイリスタS1及びS2がトリガされることにより、レギュレータ3の出力端子間電圧が調整電圧を超えないように制御される。
図3は、上記のようにレギュレータのサイリスタS1,S2及びMOSFET F1を制御した場合に始動時に観察される各部の電圧の推移を横軸に時間tをとって示したものである。同図において、aは発電機1の無負荷時の全波整流波形を示し、bは出力コンデンサの静電容量と補助コンデンサの静電容量との和に等しい静電容量を有する一つのコンデンサをレギュレータの出力端子間に接続した場合(従来技術)に得られるレギュレータの出力端子間電圧を示している。またcは本発明の実施形態において得られるレギュレータの出力端子間電圧の変化を示し、dは本発明の実施形態において補助コンデンサ6の両端に得られる電圧の変化を示している。
図3に示した例で用いた出力コンデンサ4の静電容量は、機関の始動時にレギュレータの出力端子間電圧の立ち上がりを速くするために十分に小さく設定され,出力コンデンサ4と補助コンデンサ6とが並列に接続されているときに、機関停止後レギュレータの出力端子間電圧がマイクロプロセッサを動作状態に保持するために必要なレベルを維持する時間が、マイクロプロセッサに機関停止時処理を行わせるために必要な時間以上となるように、出力コンデンサ4及び補助コンデンサ6のそれぞれの静電容量が設定されている。
従来技術によった場合には、内燃機関を停止した後にマイクロプロセッサに機関停止時処理を行わせることができるようにするために十分に大きな静電容量を有するコンデンサがレギュレータの出力端子間に接続されているため、レギュレータ3の出力端子間電圧は、図3の曲線bに示すように、比較的ゆっくりと立ち上がっていき、時刻t2 でレギュレータの出力端子間電圧のレベルが必須電装品を動作させるために必要なレベルVsに達した時に、必須電装品が動作可能な状態になって機関の始動が行われる。
これに対し、本発明の実施形態によった場合には、出力コンデンサ4の静電容量が従来技術による場合よりも小さいため、レギュレータ3の出力端子間電圧は、図3の曲線cのように素早く立ち上がっていき、時刻t2よりも速い時刻t1で、レギュレータの出力端子間電圧のレベルが必須電装品を動作させるために必要なレベルVsに達して必須電装品が動作可能な状態になる。従って、本発明によれば、リコイルスタータやキックスタータを用いて機関を人力により始動する場合に、機関の始動性を向上させることができる。
上記の実施形態においては、レギュレータの出力端子間電圧Vp が時刻t3 で設定電圧VccOnに達すると、MOSFET F1(コンデンサ投入用スイッチ)がオン状態にされて補助コンデンサ6が出力端子c,d間に接続される。これにより、レギュレータの出力端子間電圧により充電される静電容量が増大するため、機関停止後にマイクロプロセッサに機関停止時処理を行わせるために必要にして十分な時間の間、レギュレータの出力端子間電圧をマイクロプロセッサを動作状態に保持するために必要なレベルに保持することができる。
時刻t3 において、MOSFET F1がオン状態にされて、補助コンデンサ6がレギュレータの出力端子間に接続されると、レギュレータ3の出力端子間の静電容量が急激に増加するため、図3の曲線cに見られるように、レギュレータ3の出力端子間電圧に落ち込みが生じる。この電圧の落ち込みにより、レギュレータの出力端子間電圧が必須電装品を動作状態に保持するために必要な電圧範囲の下限値(許容下限電圧)よりも低くなることがない場合には特に問題はないが、補助コンデンサの投入時に万一レギュレータの出力端子間電圧が許容下限電圧を下回ることがあり得る場合には、必須電装品の動作に悪影響が及ぶことがあるため、コンデンサ投入用スイッチをオン状態にした直後に、レギュレータの出力端子間電圧が落ち込んだとしても、該電圧が必須電装品を動作状態に保持するために必要な電圧範囲の下限値を下回ることがないようにしておくのが好ましい。
上記の実施形態によった場合には、コンデンサ投入用スイッチ5をオン状態にして補助コンデンサを投入する際に、レギュレータの出力端子間電圧に比較的大きな落ち込みが生じるが、制御部302を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムを変更して、コンデンサ投入用スイッチ制御手段による制御内容を変更することにより、ハードウェアの構成を変更することなく、補助コンデンサを投入する過程でレギュレータの出力端子間電圧に大きな落ち込みが生じるのを防ぐことができる。
図4は、補助コンデンサを投入する過程でレギュレータの出力端子間電圧に大きな落ち込みが生じるのを防ぐためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したものである。本実施形態では、コンデンサ投入用スイッチ制御手段が、コンデンサ投入用スイッチ5をオンにした状態でレギュレータ3の出力端子間電圧が設定電圧VccOnよりも低く設定された許容下限電圧VccOff未満になったときにコンデンサ投入用スイッチ5をオフ状態にするスイッチオフ制御と、このスイッチオフ制御が行われたことによりレギュレータ3の出力端子間電圧が設定電圧VccOn以上になったときにコンデンサ投入用スイッチ5をオン状態にするオン復帰制御とを更に行うように構成される。本実施形態においても、コンデンサ投入用スイッチ制御手段は、レギュレータの出力端子間電圧が一度調整電圧以上になった後は、該コンデンサ投入用スイッチ制御手段がリセットされるまでの間、コンデンサ投入用スイッチをオン状態に保つように構成される。パラメータVccOn(設定電圧), VccOff(許容下限電圧)及びVsc(調整電圧)は、VccOff<VccOn<Vscの関係を満たすように設定されている。
図4に示されたタスクは、一定の時間毎に起動する。このタスクが起動すると、先ずステップS01においてレギュレータの出力端子間電圧Vp を設定電圧VccOnよりも低く設定された許容下限電圧VccOffと比較する。その結果Vp<VccOffの関係が成立しているとき(レギュレータの出力端子間電圧が許容下限電圧VccOff未満のとき)にはステップS02に進み、フラグF1_On_Keep_Fが0になっているか否かを判定する。その結果フラグF1_On_Keep_Fが0になっていると判定されたときには、ステップS03に進んでMOSFET F1をオフ状態にした後このタスクを終了し、フラグF1_On_Keep_Fが0でない場合には何もしないでこのタスクを終了する。
ステップS01においてVp<VccOffの関係が成立していないと判定されたとき(レギュレータの出力端子間電圧が許容下限電圧以上であると判定されたとき)には、ステップS04に進んでVccOff≦Vp <VccOnの関係が成立しているか否かを判定する。その結果VccOff≦Vp <VccOnの関係が成立していると判定されたときには以下何もしないでこのタスクを終了し、VccOff≦Vp <VccOnの関係が成立していないと判定されたとき(レギュレータの出力端子間電圧Vpが設定電圧VccOn以上になったとき)にはステップS05に進む。
ステップS05では、VccOn≦Vp <Vscの関係が成立しているか否かを判定する。その結果VccOn≦Vp <Vscの関係が成立していると判定されたとき(レギュレータの出力端子間電圧Vpが設定電圧VccOn以上。調整電圧Vsc未満の範囲にあるとき)にはステップS06に進んでMOSFET F1をオン状態にして補助コンデンサを投入し、サイリスタS1及びS2をトリガせずにオフ状態にしたままでこのタスクを終了する。ステップS05でVccOn≦Vp <Vscの関係が成立していないと判定されたとき(レギュレータの出力端子間電圧Vpが調整電圧Vsc以上になっているとき)にはステップS07に進んでサイリスタS1及びS2をトリガして電圧調整動作を行わせる。ステップS07ではまたMOSFET F1をオン状態にするとともに、MOSFET F1をオン状態に保持する条件が成立していることを示すフラグF1_On_Keep_Fを1にセットしてこのタスクを終了する。上記ステップS01〜S07によりコンデンサ投入用スイッチ制御手段が構成される。またステップS05〜S07により出力制御手段が構成される。
図4に示したアルゴリズムによった場合には、ステップS01〜S03により、コンデンサ投入用スイッチ5をオンにした状態でレギュレータ3の出力端子間電圧が設定電圧VccOnよりも低く設定された許容下限電圧VccOff未満になったときにコンデンサ投入用スイッチ5をオフ状態にするスイッチオフ制御が行なわれ、ステップS01、S04、S05及びS06により、スイッチオフ制御が行われたことによりレギュレータ3の出力端子間電圧が設定電圧VccOn以上になったときにコンデンサ投入用スイッチ5をオン状態にするオン復帰制御が行われるため、補助コンデンサを投入する過程で、レギュレータの出力端子間電圧が許容下限電圧VccOffを下回る状態が生じるのを防ぐことができる。
図4に示した制御を行った場合に観測される各部の電圧波形を図5に示した。同図においてaは発電機1の無負荷時の全波整流波形を示し、bは出力コンデンサの静電容量と補助コンデンサの静電容量との和に等しい静電容量を有する一つのコンデンサをレギュレータの出力端子間に接続した場合(従来技術)に得られるレギュレータの出力端子間電圧を示している。またcは図4の制御を行った場合に得られるレギュレータの出力端子間電圧の変化を示し、dは補助コンデンサ6の両端に得られる電圧の変化を示している。曲線cに見られるように、補助コンデンサが投入される過程でレギュレータの出力端子間電圧が許容下限電圧VccOffを下回ることがないため、レギュレータの出力端子間電圧が調整電圧に向けて上昇して行く過程で、大きく低下して負荷に悪影響が及ぶのを防ぐことができる。図4の制御を行った場合、補助コンデンサ6の両端の電圧は、図5の曲線dに示すように、スイッチオフ制御とスイッチオン復帰制御とが交互に行われている間(レギュレータの出力端子間電圧が調整電圧を超えるまでの間)徐々に上昇していき、レギュレータの出力端子間電圧が調整電圧以上になってMOSFET F1がオン状態に保持された後に調整電圧まで上昇する。
図5に示した例では、レギュレータの出力端子間電圧が設定電圧VccOnよりも低くなったときにMOSFET F1をオフ状態にするようにしているが、補助コンデンサ6の充電が完了した後はMOSFET F1をオン状態に保持するように構成してもよい。このように構成しておくと、補助コンデンサ6に蓄積された電荷をMOSFETのドレインソース間を通して負荷側に放電させることができるため、補助コンデンサ6に蓄積された電荷を寄生ダイオードで生じる電圧ドロップの影響を受けずに負荷側に放電させて負荷に電力を供給することができる。
上記の実施形態では、レギュレータとして短絡式のレギュレータを用いたが、整流回路を構成する素子の一部としてサイリスタ等のスイッチング素子を用いて、レギュレータの出力端子間電圧が調整電圧を超えたときにスイッチング素子をオフ状態にすることにより整流回路を開放する形式の開放型のレギュレータを用いる場合にも本発明を適用することができる。
図6は開放型のレギュレータを用いる場合のハードウェアの構成例を示したものである。図6に示されたレギュレータ3は、発電機1の出力が入力される入力端子a及びbと、負荷2が接続される正極出力端子c及び負極出力端子dと、ブリッジの上辺を電圧調整素子としてのサイリスタS1,S2により構成し、ブリッジの下辺をダイオードD3,D4により構成したフルブリッジ型の全波整流回路からなる電圧変換回路301と、出力端子間の直流電圧を調整電圧以下に保つようにサイリスタS1、S2を制御する制御部302とにより構成されている。その他の点は図1に示した例と同様に構成されている。
制御部302は、マイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより、レギュレータの出力端子間電圧に応じてレギュレータの出力を制御する出力制御手段と、レギュレータの出力端子間電圧が設定電圧以上になったときにコンデンサ投入用スイッチ5をオン状態にするようにコンデンサ投入用スイッチ5を制御するコンデンサ投入用スイッチ制御手段とを構成する。出力制御手段は、レギュレータ3の出力端子c,d間の電圧が調整電圧未満のときにサイリスタS1,S2をトリガして両サイリスタをオン状態にすることにより、出力端子から直流電力を出力させ、、出力端子c,d間の電圧が調整電圧以上になったときにサイリスタS1,S2のトリガを停止して、レギュレータからの直流電力の出力を停止させる。
図7は、図6の制御部302に設ける出力制御手段とコンデンサ投入用スイッチ制御手段とを構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムを示すフローチャートを示している。図7に示されたタスクも一定時間毎に起動する。このタスクが起動すると、先ずステップS01においてレギュレータの出力端子間電圧Vp を設定電圧VccOnと比較する。その結果Vp<VccOnの関係が成立しているときにはステップS02に進んでサイリスタS1及びS2をトリガした後このタスクを終了する。ステップS01でVp<VccOnの関係が成立していないと判定されたときには、ステップS03に進んでVccOn≦Vp <Vscの関係が成立しているか否かを判定する。その結果VccOn≦Vp <Vscの関係が成立していると判定されたときにはステップS04に進んでサイリスタS1及びS2をトリガし、MOSFET F1をオン状態にした後このタスクを終了する。ステップS03でVccOn≦Vp <Vscの関係が成立していないと判定されたとき(レギュレータの出力端子間電圧が調整電圧以上になっているとき)には、ステップS05に進んで、サイリスタS1,S2のトリガを停止させた後このタスクを終了する。
図7に示したアルゴリズムによる場合には、ステップS01ないしS04により、レギュレータの出力端子間電圧が設定電圧以上になったときにコンデンサ投入用スイッチをオン状態にするようにコンデンサ投入用スイッチを制御するコンデンサ投入用スイッチ制御手段が構成される。またステップS01ないしS05により、レギュレータの出力端子間電圧を調整電圧以下に保つように制御する出力制御手段が構成される。
図8を参照すると、図6の実施形態において、補助コンデンサ6を投入する過程でレギュレータの出力端子間電圧に大きな落ち込みが生じるのを防ぐためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムが示されている。
図8に示されたタスクも一定の時間毎に起動する。このタスクが起動すると、先ずステップS01においてレギュレータの出力端子間電圧Vp を許容下限電圧VccOffと比較する。その結果Vp<VccOffの関係が成立しているとき(レギュレータの出力端子間電圧が許容下限電圧VccOff未満のとき)にはステップS02に進んでサイリスタS1,S2をトリガした後、ステップS03でフラグF1_On_Keep_Fが0になっているか否かを判定する。その結果フラグF1_On_Keep_Fが0になっていると判定されたときには、ステップS04に進んでMOSFET F1をオフ状態にした後このタスクを終了し、フラグF1_On_Keep_Fが0でない場合には何もしないでこのタスクを終了する。
ステップS01においてVp<VccOffの関係が成立していないと判定されたとき(レギュレータの出力端子間電圧が許容下限電圧以上であると判定されたとき)には、ステップS05に進んでVccOff≦Vp <VccOnの関係が成立しているか否かを判定する。その結果VccOff≦Vp <VccOnの関係が成立していると判定されたときにはステップS06に進んでサイリスタS1,S2をトリガした後このタスクを終了する。ステップS05でVccOff≦Vp <VccOnの関係が成立していないと判定されたとき(レギュレータの出力端子間電圧Vpが設定電圧VccOn以上になったとき)にはステップS07に進む。
ステップS07では、VccOn≦Vp <Vscの関係が成立しているか否かを判定する。その結果VccOn≦Vp <Vscの関係が成立していると判定されたとき(レギュレータの出力端子間電圧Vpが設定電圧VccOn以上であるが、調整電圧Vsc未満であるとき)にはステップS08に進んでMOSFET F1をオン状態にして補助コンデンサを投入し、サイリスタS1及びS2をトリガした後このタスクを終了する。
ステップS07でVccOn≦Vp <Vscの関係が成立していないと判定されたとき(レギュレータの出力端子間電圧Vpが調整電圧Vsc以上であるとき)にはステップS09に進んでMOSFET F1をオン状態にすると共に、MOSFET F1をオン状態に保持する条件が成立していることを示すフラグF1_On_Keep_Fを1にセットする。ステップS09ではまた、サイリスタS1及びS2のトリガを停止して、全波整流回路を開放状態にすることにより電圧調整動作を行わせる。ステップS09を行った後このタスクを終了する。
上記ステップS01〜S05及びS07〜S09によりコンデンサ投入用スイッチ制御手段が構成される。またステップS01,S02及びS05〜S09により出力制御手段が構成される。
本発明を適用する電源装置に設けるレギュレータ3は、内燃機関により駆動される交流発電機の出力が入力される入力端子と、内燃機関を動作させるために駆動することが必須な電装品である必須電装品を含む負荷に接続される出力端子とを有して、出力端子間電圧が調整電圧未満であるときに出力端子から直流電力を出力し、出力端子間電圧が調整電圧以上である時に直流電力の出力を停止するように構成されたものであればよく、上記実施形態に示したものに限定されない。
図1に示した実施形態においては、発電機の出力を短絡する短絡用スイッチ素子(電圧調整用スイッチ素子)としてサイリスタS1,S2を用いているが、サイリスタ以外のスイッチング素子(例えばMOSFET)を短絡用スイッチ素子として用いることもできる。
図1に示した例では、サイリスタS1,S2を全波整流回路のブリッジの下辺を構成するダイオードD3,D4に対して逆並列に接続しているが、サイリスタS1,S2は、全波整流回路のブリッジの上辺を構成するダイオードD1,D2に対して逆並列に接続してもよい。
上記の各実施形態では、コンデンサ投入用スイッチ5をMOSFETにより構成したが、コンデンサ投入用スイッチ5を他の半導体スイッチング素子やリレー等により構成することもできる。