JP2017019967A - 着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインク - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性に優れるとともに、小粒径で貯蔵安定性に優れた着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインクを提供する。
【解決手段】色材及び固体樹脂を含む着色樹脂粒子と、塩基性分散剤と、非水系溶剤とを含み、スクワレン、α−オレフィンオリゴマー、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、及びこれらの水素添加物から選ばれる1種以上をさらに含む、着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインクである。
【選択図】なし

Description

本発明は、着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインクに関する。
着色樹脂粒子分散体は、各種印刷方法による印刷インクの成分として用いられている。
印刷用インクの色材としては、大別して染料と顔料がある。染料を用いる場合、発色が良いといった利点がある。また、染料は、顔料に比べ耐摩耗性、特に耐擦過性に優れるという利点がある。しかし、染料自体の耐水性及び耐マーカー性が低いという問題がある。一方、顔料は、画像濃度が高い、耐候性に優れるという利点があるが、染料に比べ耐摩耗性、特に耐擦過性が低いという問題がある。
これに対して、色材を樹脂で包含して着色樹脂粒子の形態とすることで、色材の持つ画像性に関する特徴をいかしつつ、耐擦過性とともに耐水性及び耐マーカー性にも優れるインクを提供する方法がある。
特許文献1及び特許文献2には、有機溶媒Aと、有機溶媒Aとほとんど相溶性がない有機溶媒Bとを使用して、有機溶媒Bと樹脂とを含む分散相及び有機溶媒Aを含む連続相からなる分散液とした後、分散液から減圧又は加熱により有機溶媒Bを除去することで、有機溶媒A中に高分子粒子が分散した高分子粒子分散物を製造することが提案されている。
しかしながら、これらの高分子粒子分散物を用いて印刷用インキを調整した場合に、用紙等へ印刷された画像の耐摩耗性、耐水性及び耐マーカー性について、上記文献では検討されていない。単に樹脂を添加したのみでは、画像の耐摩耗性を十分に得ることは難しい。また、印刷画像の十分な発色性を得るための色材量を配合した場合、高分子粒子分散物の粘度が上昇して分散物の調整が難しくなるという問題がある。
特許文献3によれば、非水系溶剤Aと塩基性分散剤とを含む連続相に、非水系溶剤Bと染料と樹脂と酸性分散剤とを含む分散相を分散させて油中油型エマルションを調整し、油中油型エマルションから非水系溶剤Bを除去した着色樹脂粒子が提案されている。
特許文献3では、連続相に塩基性分散剤を用い、分散相に酸性分散剤を用いることで、樹脂の種類によらず、油中油型エマルションを優れた乳化安定性で調整することができ、耐水性とともに耐マーカー性及び耐擦過性に優れる着色樹脂粒子分散体を提供することが開示されている。
一方、環境適応性の高いインクのニーズから、インク中に含まれるVOC(揮発性有機化合物)成分の排出を抑制し、環境負荷の低減をはかることが求められている。また、インク溶剤として、枯渇資源であるパラフィン、オレフィン、ナフテン等の石油系溶剤を低減し、その一部または全てを生産資源である植物油由来の溶剤に代替することが求められている。
特開2007−197632号公報 特開2005−255911号公報 特開2014−019770号公報
油中油型エマルションの調整では、連続相の溶剤と分散相の溶剤との相溶性を低くすることで、エマルション液滴の粒子径を小さくし、得られる樹脂粒子の粒子径を小さくすることができる。そのため、連続相の溶剤と分散相の溶剤との組み合わせが制限されることがある。例えば、連続相の溶剤をそのままインクの溶剤として用いる場合では、インクの溶剤の選択範囲が狭くなる。
油中油型エマルションの調整で各種溶剤を用いた場合でも、乳化安定性を十分に得て、得られる樹脂粒子の粒子径を小さくし貯蔵安定性を高めることが求められている。
本発明の一目的としては、耐摩耗性に優れるとともに、小粒径で貯蔵安定性に優れた着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインクを提供することである。
本発明は、以下の構成を要旨とする。
(1)色材及び固体樹脂を含む着色樹脂粒子と、塩基性分散剤と、非水系溶剤とを含み、スクワレン、α−オレフィンオリゴマー、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、及びこれらの水素添加物から選ばれる1種以上をさらに含む、着色樹脂粒子分散体。
(2)前記固体樹脂は、硝酸エステル化樹脂、アルコキシメチル化ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン(メタ)アクリル系樹脂から選ばれる1種以上を含む、(1)に記載の着色樹脂粒子分散体。
(3)前記着色樹脂粒子は、酸性基を有する液体有機化合物をさらに含む、(1)または(2)に記載の着色樹脂粒子分散体。
(4)前記酸性基を有する液体有機化合物の酸性基はリン酸基を含む、(1)から(3)のいずれかに記載の着色樹脂粒子分散体。
(5)前記非水系溶剤は、脂肪酸エステル系溶剤及び石油系炭化水素溶剤のうち1種以上を含む、(1)から(4)のいずれかに記載の着色樹脂粒子分散体。
(6)前記着色樹脂粒子が顔料誘導体をさらに含む、(1)から(5)のいずれかに記載の着色樹脂粒子分散体。
(7)(1)から(6)のいずれかに記載の着色樹脂粒子分散体を含む、インクジェットインク。
本発明によれば、耐摩耗性に優れるとともに、小粒径で貯蔵安定性に優れた着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインクを提供することができる。
本発明の一実施形態による着色樹脂粒子分散体(以下、単に「分散体」という場合がある)は、色材及び固体樹脂を含む着色樹脂粒子と、塩基性分散剤と、非水系溶剤とを含み、スクワレン、α−オレフィンオリゴマー、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、及びこれらの水素添加物から選ばれる1種以上(以下、単に「分岐炭化水素溶剤(A)」と総称する場合がある。)をさらに含む、ことを特徴とする。
これによれば、耐摩耗性に優れるとともに、小粒径で貯蔵安定性に優れた着色樹脂粒子分散体及びインクジェット用非水系インクを得ることができる。
本実施形態によれば、着色樹脂粒子では色材が固体樹脂に包含されて形成されることで、印刷物の耐摩耗性を高めることができる。
本実施形態による着色樹脂粒子分散体では、分岐炭化水素溶剤(A)が含まれることで、小粒径の着色樹脂粒子を得て、貯蔵安定性に優れる分散体を得ることができる。
具体例を挙げて説明すると、油中油型エマルションの調整工程において、連続相に塩基性分散剤及び非水系溶剤Aが分岐炭化水素溶剤(A)とともに含まれ、分散相に色材、固体樹脂及び非水系溶剤Bが含まれる。
この際に、連続相の非水系溶剤Aと分散相の非水系溶剤Bとの相溶性が高いと、エマルション液滴の形成が不安定になって、乳化安定性が低下することがある。本実施形態によれば、連続相にさらに分岐炭化水素溶剤(A)を含ませることで、連続相の溶媒と分散相の溶媒との相溶性を低下させて、エマルション液滴をより微細化して形成することができる。さらに、エマルションの乳化安定性を良好に維持して、小粒径の着色樹脂粒子を得ることができる。また、得られる着色樹脂粒子分散体の貯蔵安定性を良好に維持することができる。
例えば、分散相の非水系溶剤Bに色材及び固体樹脂を溶解させるために極性溶剤を用いる場合において、連続相の非水系溶剤Aにエステル系溶剤等の比較的極性が高い溶剤を用いても、分岐炭化水素溶剤(A)を連続相に添加することで、非水系溶剤Bと非水系溶剤Aとの相溶性を低下させることができる。そして、連続相の非水系溶剤Aをそのまま分散体の溶剤として用いることができるため、エステル系溶剤等を用いて小粒径で貯蔵安定性に優れた分散体を得ることができる。
特に、インクジェットインクにおいて、インクジェット吐出に適した小粒径の着色樹脂粒子を得ることができる。
本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、連続相の非水系溶剤Aをそのまま分散体の非水系溶剤として用いる構成において、非水系溶剤Aの選択範囲を広げることができるため、各種非水系溶剤を用いた分散体を提供することができる。
環境負荷低減の要望に対して、分散体の非水系溶剤を、枯渇資源である石油系溶剤を生産資源である植物油由来の溶剤に代替する場合や、揮発性有機溶剤等のVOC成分を低減する場合においても、小粒径で貯蔵安定性に優れた着色樹脂粒子分散体を得ることができる。
(着色樹脂粒子)
本実施形態による着色樹脂粒子としては、色材及び固体樹脂を含む。
さらに、着色樹脂粒子には、酸性基を有する液体有機化合物(以下、単に「酸性化合物」と称することがある。)が含まれてもよい。
この着色樹脂粒子は、色材と固体樹脂と選択的に酸性化合物とが均一に混合されて、粒子形状となっていることが好ましい。
「固体樹脂」
固体樹脂としては、室温(23℃)で固体状の樹脂であることが好ましい。
固体樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、粒子形状を安定化するために、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上である。固体樹脂のガラス転移温度は、制限されないが、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以下である。
また、固体樹脂の溶融温度(Tm)としては、粒子形状を安定化させるために、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは、40℃以上である。固体樹脂の溶融温度は、制限されないが、250℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以下である。
固体樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3000〜100000が好ましく、より好ましくは5000〜80000である。この範囲で、着色樹脂粒子の形状の安定性を高めることができる。また、着色樹脂粒子の製造工程において、固体樹脂を含む原料を溶剤により均一に混合することができ、結果として成分が均一な着色樹脂粒子を提供することができる。
ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC法により、標準ポリスチレン換算により求めることができる。以下同じである。
固体樹脂としては、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が22〜27MPa/cmであることが好ましい。また、固体樹脂は、分散項δdが13〜20、極性項δpが5〜12、水素結合項δhが10〜20であることが好ましい。この範囲とすることで、着色樹脂粒子分散体としてのインクが用紙に塗布される際に、着色樹脂粒子と非水系溶剤を速やかに分離させ、耐摩耗性をより向上することができる。
溶解性パラメーターの算出方法を以下に説明する。本発明では、1967年にHansenが提唱した3次元溶解性パラメーターを用いる。
Hansenの溶解性パラメーターは、Hildebrandによって導入された溶解性パラメーターを分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間で表したものである。分散項は、分散力による効果、極性項は、双極子間力による効果、水素結合項は、水素結合力の効果を示す。より詳細には、POLYMER HANDBOOK.FOURTH EDITION.(Editors.J.BRANDRUP,E.H.IMMERGUT,andE.A.GRULKE.)等に説明されている。
固体樹脂は、上記物性を備えるものを好ましく用いることができ、その種類は限定されない。
固体樹脂の具体例としては、アルキルフェノール樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン(メタ)アクリル系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂、酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、リン酸エステル化樹脂、硝酸エステル化樹脂、アルコキシ基含有樹脂、ポリシルセスキオキサン、メトキシシルセスキオキサン、エトキシシルセスキオキサン、これらの樹脂の誘導体等を挙げることができる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル樹脂及び/またはアクリル樹脂を意味し、メタクリル単位とアクリル単位とをそれぞれ単独で有する重合体とともに、メタクリル単位とアクリル単位とをともに有する共重合体を意味する。スチレン(メタ)アクリル系樹脂も同じである。
アルキルフェノール樹脂としては、ノボラック型アルキルフェノール樹脂及びレゾール型アルキルフェノール樹脂のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。また、変性アルキルフェノール樹脂を用いてもよい。
ポリビニルアルコールとしては、以下のけん化度及び重合度を備えることが好ましい。
けん化度は、0〜60であることが好ましく、より好ましくは1〜50である。
重合度は、10〜1000であることが好ましく、より好ましくは20〜500である。
ポリビニルアセタール樹脂としては、アセタール化度が40〜95mol%であることが好ましく、より好ましくは50〜85mol%である。また、ポリビニルアセタール樹脂としては、水酸基が60mol%以下であることが好ましく、より好ましくは50mol%以下である。
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等を好ましく用いることができる。
セルロース系樹脂としては、セルロースアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等を挙げることができる。
硝酸エステル化樹脂としては、セルロースの硝酸エステルであるニトロセルロース等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、メタクリル単位及び/またはアクリル単位を有する(メタ)アクリル樹脂の他、メタクリル単位及び/またはアクリル単位とともにその他の単位を有する共重合体を用いることができる。その他の単位としては、スチレン系単位、カルボン酸ビニル単位、α−オレフィン単位、ジエン系単位、エチレン性不飽和酸単位、エチレン性不飽和酸無水物単位、不飽和カルボン酸のモノアルキルエステル単位、スルホン酸単位、ニトリル、ピリジン、ピロリドン等の含窒素単位、エーテル系単位等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、公知の(メタ)アクリル単量体の重合によって得ることができる。(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル等のアルキル基が1〜22の炭化水素基である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の2〜8の炭化水素基の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は2以上)のモノ(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等のポリアルキレンオキシド骨格を含む(メタ)アクリル酸のエステル、(メタ)アクリルアミド等の含窒素単量体、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸等が挙げられ、これらは2種類以上併用されてもよい。
また、(メタ)アクリル単量体以外の単量体(以下、その他の単量体という。)を併用できる。その他の単量体は、(メタ)アクリル単量体と共重合可能であればよく特に制限はないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、エチレン等のα−オレフィン単量体、ブタジエ等のジエン系単量体、マレイン酸等のエチレン性不飽和酸とその無水物、マレイン酸モノエステル等の不飽和カルボン酸のモノアルキルエステル、(メタ)アクリルニトリル等の含窒素不飽和単量体、(メタ)アリルスルホン酸等の不飽和スルホン酸、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体等が挙げられ、これらは2種類以上併用されてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂としては、数平均分子量(Mn)は5000〜25000であることが好ましく、酸価は、0〜300mgKOH/gであることが好ましく、30〜300mgKOH/gであることが更に好ましい。
また、スチレン単位を有する(メタ)アクリル系樹脂は、スチレン(メタ)アクリル系樹脂として好ましく用いることができる。この場合、スチレン単位と(メタ)アクリル単位の比率(モル比)は0:10から7:3であることが好ましい。
スチレン(メタ)アクリル系樹脂の市販品としては、東亜合成株式会社製ARUFONシリーズの「UC−3920」、「UC−5041」;星光PMC株式会社製ハイロスーXシリーズの「VS−1047」、「VS−1291」等を用いることができる。
スチレンマレイン酸樹脂としては、スチレンと無水マレイン酸との共重合体であり、例えば、カルボキシ基またはヒドロキシ基を導入したエステル化物を用いることができる。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン4−6、共重合ナイロン等を用いることができる。
また、ポリアミド樹脂をアルコキシメチル化したアルコキシ基を有するポリアミド樹脂を用いることができる。
ポリアミド樹脂をアルコキシメチル化することで、アルコール溶剤への溶解性を高めることができる。そのため、樹脂粒子の製造工程において、色材及び樹脂分を溶剤中に、より均一に安定して混合することができる。
アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基等を挙げることができる。
ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば、株式会社T&K TOKA社製のトーマイドシリーズ、PAシリーズ、株式会社鉛市製ファインレジンシリーズ「FR−101」、「FR−104」、「FR−105」、「FR−301」等;ナガセケムテックス株式会社製のトレジンシリーズ「トレジンF-30K」、「トレジンEF-30T」等が挙げられる。
固体樹脂としては、含窒素樹脂を用いることで、着色樹脂粒子を製造する際に色材である顔料の分散性を高めることができる。これによって、含窒素樹脂のみで、別に顔料分散剤を用いることなく、着色樹脂粒子を製造することができる。含窒素樹脂としては、上記した中から、ニトロセルロース、メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂等を好ましく用いることができる。
また、固体樹脂として芳香環含有樹脂を用いることで、色材である顔料と芳香環含有樹脂とのπ-π相互作用が期待できるため、顔料の分散性を高めることができる。芳香環含有樹脂としては、上記した中から、スチレン(メタ)アクリル系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等のスチレン系樹脂等を好ましく用いることができる。
また、固体樹脂として耐水性が高い樹脂を用いることで、印刷物の耐水性をより高めることができる。上記した固体樹脂のなかから、耐水性が高い樹脂としては、例えば、アルキルフェノール樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンマレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂、酢酸ビニル等を挙げることができる。
上記した固体樹脂の配合量は、着色樹脂粒子全体に対し、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。
一方、固体樹脂の配合量は、着色樹脂粒子全体に対し、70質量%以下であることが好ましい。
着色樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない限り、上記した固体樹脂以外のその他の樹脂が含まれてもよい。その他の樹脂としては、後述する着色樹脂粒子分散体の製造方法で説明しているように、顔料分散剤や添加剤等がある。
「色材」
着色樹脂粒子に含まれる色材としては、顔料及び染料のいずれであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。詳細については後述する。
色材は、着色樹脂粒子全体に対して、呈色性及び成分の均一性の観点から、0.1〜50質量%で配合されることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%である。
「酸性化合物」
着色樹脂粒子には、酸性基を有する液体有機化合物(酸性化合物)が含まれてもよい。ここで、酸性基を有する液体有機化合物としては、23℃で液体状であり酸性基を有する有機化合物である。
酸性化合物を添加することで、印刷物の発色性及び耐摩耗性をより向上させることができる。これは、酸性化合物によって、色材と固体樹脂とをより均一に安定して配合することが可能になるからである。
また、固体樹脂に、酸価が低く耐水性が高い樹脂を用いる場合、耐摩耗性が低下することがあるが、この固体樹脂とともに酸性化合物を添加することで、耐水性とともに耐摩耗性を向上させることができる。
また、酸性化合物は、着色樹脂粒子分散体の製造工程において、油中油型エマルションの安定性を維持するために配合することができる。
酸性化合物の融点としては、室温で液体状を維持するために、23℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以下である。
酸性化合物の溶解性パラメーターとしては、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が22〜27MPa/cmであることが好ましい。また、酸性化合物は、分散項δdが13〜20、極性項δpが5〜12、水素結合項δhが10〜20であることが好ましい。この範囲とすることで、着色樹脂粒子の各成分をより均一に配合することができて、粒子形状が安定化され経時安定性をより向上することができるととともに、発色性、耐摩耗性をより向上することができる。
酸性化合物の酸性基としては、リン酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、硝酸エステル基、亜リン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等を挙げることができる。これらは、1分子中に1種、または2種以上組み合わせて含まれてもよい。酸性基は、酸性化合物1分子中に2個以上有することが好ましい。
酸性化合物は、オリゴマー、ポリマー、低分子量化合物のいずれであってもよい。
オリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を、単独で、または併用して用いることができる。また、これらの樹脂を構成するモノマーまたはオリゴマーの共重合体を用いてもよい。
酸性基としては、オリゴマーまたはポリマーを構成するモノマーに由来して、各構成単位の主鎖または側鎖に酸性基が結合して導入されていてもよい。例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合体等を挙げることができる。この場合、カルボキシ基がアクリル酸の割合に応じて導入される。また、(メタ)アクリル酸エステルとアシッド・ホスホキシ・(メタ)アクリレートの共重合体等を挙げることができる。この場合、リン酸基が導入される。
また、酸性基としては、オリゴマーまたはポリマーをリン酸エステル化して導入されていてもよい。この場合、水酸基の位置及び割合に応じてリン酸基が導入される。オリゴマーまたはポリマーの両末端に水酸基を有する場合、オリゴマーまたはポリマーの両末端にリン酸基が導入されて、合計2個のリン酸基を有する。
酸性化合物がオリゴマーまたはポリマーである場合は、重量平均分子量が500〜10000であることが好ましく、より好ましくは1000〜5000である。
酸性化合物としてのオリゴマーまたはポリマーの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンリン酸エステル等のポリオキシアルキルのリン酸エステル、ポリエーテルポリエステルリン酸エステル等のリン酸エステル化合物;アルキルポリホスホン酸;カルボキシ基含有(メタ)アクリルポリマー等を挙げることができる。これらは、単独で、または複数種を併用してもよい。
酸性化合物としては、リン酸エステル、硫酸エステル、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸等の低分子化合物を用いてもよい。
酸性化合物は、酸価を持つことが好ましい。酸性化合物の酸価は、好ましくは30mgKOH/g以上であり、より好ましくは60mgKOH/g以上であり、一層好ましくは90mgKOH/g以上である。
ここで、酸価は、不揮発分1g中の全酸性成分を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。以下同じである。
中でも、酸価が30mgKOH/g以上であるリン酸基、ホスホン酸基、リン酸エステル基及びカルボキシ基の1種以上を有する液体有機化合物であることが好ましく、リン酸基が特に好ましい。また、酸性化合物の両末端にリン酸基を有するものが一層好ましい。
市販されているもののなかから、酸性化合物として用いることができるものとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製「DISPERBYK102、110、111」(いずれも商品名)、巴工業社製「TEGODispers655」、EFKA社製「Efka6230」、キレスト株式会社製「PH−210」、東亞合成株式会社製「ARUFON UC3510」、ユニケミカル株式会社製「CM294P」等を挙げることができる。
「DISPERBYK111」は、エチレングリコールとポリカプロラクトンのブロック共重合体のリン酸エステル化合物であり、共重合体の両末端にリン酸基を有する。
「CM294P」は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体のリン酸エステル化合物であり、共重合体の両末端にリン酸基を有する。
「ARUFON UC3510」は、アクリル酸エステルとアクリル酸の共重合体であり、カルボキシ基を複数有する。
「キレストPH210」は、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸であり、2個のホスホン酸基を有する低分子量化合物である。
酸性化合物は、着色樹脂粒子全体に対して、0.1〜50質量%で配合されることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%である。これによって、着色樹脂粒子の成分の均一性及び安定性を維持する一方で、その他の原料への作用を防ぐことができる。
「顔料誘導体」
着色樹脂粒子には、顔料誘導体が含まれていることが好ましい。
顔料誘導体としては、顔料骨格に極性官能基が導入されたものを用いることができる。
本実施形態では、着色樹脂粒子に顔料誘導体が含まれることで、より小粒径の着色樹脂粒子を得ることができる。着色樹脂粒子を作製する際に、色材及び固体樹脂とともに顔料誘導体を混合することで、微粒子化の際に粒子径をより小さくすることができる。色材としては顔料を用いて顔料誘導体と併用することで、より効果を得ることができる。
顔料誘導体としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等の顔料の骨格に、カルボキシ基、スルホン酸基、アミノ基、ニトロ基、酸アミド基、カルボニル基、カルバモイル基、フタルイミド基、スルホニル基等の官能基を付加したもの、及びその塩等を好ましく使用することができる。
具体的には、銅フタロシアニンブルーに、アルキルアミノメチル基等を導入した塩基性フタロシアニン顔料誘導体、スルホン酸基、その金属塩及びアルキルアミン塩等を導入した酸性フタロシアニン顔料誘導体、フタルイミド基等を導入した中性銅フタロシアニン顔料誘導体、両末端ベンゼン環の片側だけに官能基が導入された非対称型ジスアゾイエロー顔料誘導体、脂肪族アミンと反応させたSchiff塩基型ジスアゾイエロー顔料誘導体等が挙げられる。
また、キナクリドン顔料誘導体、アントラキノン顔料誘導体等の縮合多環顔料誘導体は、フタロシアニン顔料誘導体と同様の官能基を導入したものを好ましく挙げることができる。
これらは単独で、または組み合わせて使用することができる。
顔料誘導体の市販品としては、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース5000(フタロシアニン顔料誘導体)」、「ソルスパース12000(フタロシアニン顔料誘導体)」、「ソルスパース22000」、ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−SYNERGIST2100(フタロシアニン顔料誘導体)」、「BYK−SYNERGIST2105(イエロー顔料誘導体)」、BASFジャパン株式会社製「エフカ6745」(フタロシアニン顔料誘導体)、「エフカ6750(アゾ顔料誘導体)」等を好ましく挙げることができる。
顔料誘導体は、用いる顔料と同一または類似した骨格を有するものを好ましく用いることができる。例えば、顔料としてカーボンブラックや銅フタロシアニンブルーを用いる場合は、顔料誘導体としてフタロシアニン顔料誘導体を好ましく用いることができる。
顔料誘導体は、質量比で、色材1に対し0.015〜0.150であることが好ましく、さらに0.020〜0.120であることがより好ましい。
着色樹脂粒子中の配合量としては、顔料誘導体は、0.1〜10.0質量%であることが好ましく、1.0〜5.0質量%であることがより好ましい。
着色樹脂粒子の平均粒子径は、10μm以下程度であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが一層好ましい。記録媒体の種類に応じて着色樹脂粒子の平均粒子径を適宜調整してもよく、例えば、コート紙を用いた印刷物の発色を向上するとともに定着性を向上させるためには、この平均粒子径は100〜300nm程度であることが好ましく、普通紙を用いた印刷物の裏抜け抑制の観点から、さらに200nm以下であることが好ましい。
ここで、着色樹脂粒子の平均粒子径は、動的散乱方式による体積基準の平均粒子径であり、例えば、株式会社堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB−500」等を用いて測定することができる。以下同じである。
(着色樹脂粒子分散体)
本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、上記した着色樹脂粒子とともに、非水系溶剤及び塩基性分散剤を含む。非水系溶剤及び塩基性分散剤については、後述の着色樹脂粒子分散体の製造方法で説明する通りである。非水系溶剤としては、着色樹脂粒子を分散可能である溶剤であることが好ましい。塩基性分散剤としては、非水系溶剤中で着色樹脂粒子を分散させるために配合される。また、塩基性分散剤は、後述する着色樹脂粒子の製造工程において、エマルションの調整のために配合されることもある。
塩基性分散剤は、分散性の観点から、分散体全体に対して、0.1〜20質量%で配合されることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。
「分岐炭化水素溶剤(A)」
本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、スクワレン、α−オレフィンオリゴマー、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、及びこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種以上(分岐炭化水素溶剤(A))をさらに含む。
着色樹脂粒子分散体に分岐炭化水素溶剤(A)が含まれることで、着色樹脂粒子の粒子径を小さくすることができ、貯蔵安定性を高めることができる。また、耐擦過性や耐水性等の着色樹脂粒子の特性を維持しながら、粒子径及び貯蔵安定性を改善することができる。
着色樹脂粒子分散体の製造工程において、油中油型エマルションの連続相に、分岐炭化水素溶剤(A)を添加することで、乳化物をより安定して調整することができる。これによって、得られる着色樹脂粒子の粒子径をより小さくするとともに、貯蔵安定性を改善することができる。
分岐炭化水素溶剤(A)としては、室温(23℃)で液体状である分岐不飽和炭化水素溶剤、及びこの分岐不飽和炭化水素溶剤の不飽和炭素結合に水素添加した水素添加物を用いることが好ましい。分岐炭化水素溶剤(A)は、炭素及び水素からなり、ヘテロ原子が含まれないことが好ましい。
これによって、高炭素数ながらも分岐鎖を有することから流動性のある溶剤を提供することができる。このような溶剤を着色粒子分散体に含ませることで、上記した効果を得ることができる。
スクワレン及びその水素添加物としては、C3050で表される分岐不飽和炭化水素であるスクワレン、スクワレンの不飽和炭素結合に水素添加した分岐飽和炭化水素であるスクワラン、及びスクワレンの不飽和炭素結合に部分的に水素添加をした部分水素添加物を単独で、または組み合わせて用いることができる。
スクワランとしては、サメ肝油由来スクワラン等の動物性スクワラン、オリーブ油スクワラン、シュガースクワラン等の植物性スクワランをいずれも用いることができる。
スクワレン及びその水素添加物は、室温(23℃)で液体状であるため、好ましく用いることができる。
α−オレフィンオリゴマー及びその水素添加物は、αオレフィンを重合した重合体、及びこの重合体の末端の不飽和炭素結合に水素添加して得られる水素添加物である分岐飽和炭化水素を単独で、または組み合わせて用いることができる。
α−オレフィンオリゴマーは、室温(23℃)で液体であることが好ましい。
α−オレフィンオリゴマーは、α−オレフィンの3〜6量体であることが好ましい。
α−オレフィンとしては、炭素数4〜12の直鎖α−オレフィンを用いることができる。例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
α−オレフィンオリゴマーの市販品例としては、日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOLシンセラン4SP」、日清オイリオグループ株式会社製「ノムコートHP−100」、「ノムコートHP―30」等を用いることができる。
エチレン−α−オレフィンオリゴマー及びその水素添加物は、エチレン及びα−オレフィンの共重合体である。また、エチレン−α−オレフィンオリゴマーにα−オレフィン由来の不飽和炭素結合が含まれる場合は、この不飽和炭素結合に水素添加して得られる水素添加物を用いてもよい。
エチレン−α−オレフィンオリゴマーは、室温(23℃)で液体であることが好ましい。
α−オレフィンは、上記したα−オレフィンオリゴマーと同じものを用いることができる。
エチレン−α−オレフィンオリゴマーとしては、例えば、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体等を挙げることができる。
チレン−α−オレフィンオリゴマーの市販品例としては、三井化学株式会社製「ルーカントHC−40」、「ルーカントHC−100」等を用いることができる。
ポリイソブテン及びその水素添加物は、ポリイソブテン、及び不飽和炭素結合が水素添加された分岐飽和炭化水素である水添ポリイソブテンを単独で、または組み合わせて用いることができる。
ポリイソブテンは、室温(23℃)で液体であることが好ましい。
ポリイソブテンの市販品例としては、日油株式会社製「パールリーム18」、「パールリーム24」、「パールリーム46」等を用いることができる。
本実施形態による着色樹脂分散体において、着色樹脂粒子は分散体全体に対し1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。これによって、インクとして呈色性にすぐれ、溶剤量を低減して乾燥性を高めることができる。
一方、着色樹脂粒子は分散体全体に対し50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。これによって、着色樹脂粒子の分散安定性、すなわち着色樹脂粒子分散体の貯蔵安定性を高めることができる。
(着色樹脂粒子分散体の製造方法)
以下、本実施形態による着色樹脂粒子分散体の製造方法の一例について説明する。なお、本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、以下の製造方法で製造されたものに限定されない。
着色樹脂粒子分散体の調整方法は、化学的方法、物理化学的方法に大別される。化学的手法としては、界面重縮合法、界面反応法(in situ重合法)、液中硬化皮膜法(オリフィス法)などが挙げられる。物理化学的手法としては、液中乾燥法(水中乾燥法、油中乾燥法)、コアセルベーション法、融解分散冷却法などが挙げられる。
本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、例えば、上記の物理化学的方法を用いて調整が可能であり、特に、液中乾燥法を好ましく用いることができ、油中油型エマルションの油中乾燥法を特に好ましく用いることができる。
油中油型エマルションの油中乾燥法を用いることで、上記記載の材料を用いて、平均粒子径が小さくかつ、粒子径分布が狭い着色樹脂粒子を調整することが可能であり、また、粘度が低い着色樹脂粒子分散体を調整することが可能である。これによって、特に、インクジェット吐出に適するインクを得ることができ、更に、耐摩耗性に優れるインクジェットインクを得ることできる。
油中油型エマルションの油中乾燥法を用いた着色樹脂粒子分散体は、分岐炭化水素溶剤(A)、塩基性分散剤及び非水系溶剤(以下、連続相の非水系溶剤を溶剤Aと称することがある。)を少なくとも含む相を連続相とし、色材、固体樹脂、選択的に酸性化合物及び非水系溶剤(以下、分散相の非水系溶剤を溶剤Bと称することがある。)を少なくとも含む相を分散相とし、この連続相に分散相を分散させて油中油(O/O)型エマルションを作製し、これから分散相のうち溶剤Bを除去して得ることができる。
油中油型エマルションを安定して作製するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して溶解度が低いことが好ましい。また、溶剤Bを除去するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して沸点が低いことが好ましい。
油中油型エマルションを安定して作製するために、塩基性分散剤及び分岐炭化水素溶剤(A)は、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。また、着色樹脂粒子の形状を安定させるために、色材、固体樹脂、及び酸性化合物はそれぞれ溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことが好ましい。
「連続相」
連続相としては、溶剤Aと塩基性分散剤と分岐炭化水素溶剤(A)とを含む。
溶剤Aとしては、後述する溶剤B及び固体樹脂との関係性を満たすように、各種非水系溶剤から適宜選択して用いることができる。
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れも使用できる。これらは、単独で使用してもよく、組み合わせて使用することもできる。なお、本発明において、非水系溶剤としては、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができ、市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN−10、カクタスノルマルパラフィンN−11、カクタスノルマルパラフィンN−12、カクタスノルマルパラフィンN−13、カクタスノルマルパラフィンN−14、カクタスノルマルパラフィンN−15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがいっそう好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。
例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル等の1分子中の炭素数が13以上、好ましくは16〜30の脂肪酸エステル系溶剤;
イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12〜20の高級アルコール系溶剤;
ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14〜20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
これらの非水系溶剤は、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、使用する非水系溶剤と単一相を形成できる範囲で他の有機溶剤を含ませてもよい。
本実施形態では、溶剤Aとして、脂肪酸エステル系溶剤を用いた場合でも、小粒子径で、貯蔵安定性、耐摩耗性を十分に改善することができる。これは、上記した分岐炭化水素溶剤(A)と併用することで達成される効果である。
環境負荷の観点からは、溶剤Aとして、パルミチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸メチル等の植物油脂肪酸エステルを主成分として用いることが好ましい。この場合、溶剤A全体に対して、植物油脂肪酸エステルは好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。溶剤Aは、そのまま分散体の非水系溶剤として用いることができる。
本実施形態では、溶剤Aとして、脂肪酸エステル系溶剤とともに非極性有機溶剤を併用することができる。非極性有機溶剤としては、ナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系等を好ましく用いることができる。
溶剤Aは、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が14〜18MPa/cmであることが好ましい。また、溶剤Aは、分散項δdが12〜20、極性項δpが0〜4、水素結合項δhが0〜4であることが好ましい。
溶剤Aの溶解性パラメーターが上記範囲であるとともに、着色樹脂粒子の固体樹脂の溶解性パラメーターが上記範囲であることで、着色樹脂粒子の溶媒Aに対する分散安定性を向上することができる。また、着色樹脂粒子分散体を用いて印刷する際に、用紙上で着色樹脂粒子と非水系溶剤の分離をより促進することができ、着色樹脂粒子の用紙への定着性をより高めて、耐摩耗性をより向上することができる。このような定着性の効果は、コート紙等の難浸透紙に印刷した際により発揮することができる。
溶剤Aの50%留出点としては、400℃以下であることが好ましく、より好ましくは300℃以下である。一方、溶剤Aの50%留出点の下限値は、溶剤Aの揮発を防止して着色樹脂粒子分散体の安定性を保つために、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
塩基性分散剤は、塩基性基を有する分散剤である。塩基性分散剤としては、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。
好ましくは、塩基性分散剤は、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であり、より好ましくは0.5g/100g以下である。また、好ましくは、塩基性分散剤は、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以上であり、より好ましくは5g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Aに塩基性分散剤が実質的に全て溶解し、溶剤Bに塩基性分散剤が実質的に溶解しないように、塩基性分散剤が選択される。
塩基性分散剤の塩基性基としては、例えばアミノ基、アミド基、ピリジル基等を挙げることができ、中でもアミノ基であることが好ましい。また、塩基性分散剤の塩基性基としては、ウレタン結合等を有する窒素含有の官能基を挙げることができる。また、ウレタン結合等の窒素含有の構成単位が塩基性分散剤に導入されていてもよい。
塩基性分散剤としては、例えば、変性ポリウレタン、塩基性基含有ポリ(メタ)アクリレート、塩基性基含有ポリエステル、ポリエステルアミン、第4級アンモニウム塩、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、脂肪酸アミン塩等を挙げることができる。また、塩基性分散剤として、アミノ基等の塩基性基を有する(メタ)アクリルブロックポリマーを用いることができる。これらは、単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
塩基性分散剤として、市販されているものとしては、例えば、
日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名)、
ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK116、2096、2163」(いずれも商品名)、
花王株式会社製「アセタミン24、86(アルキルアミン塩系)」(いずれも商品名)、
楠本化成株式会社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(高分子ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名)等を挙げることができる。
塩基性分散剤は、塩基価を持つことが好ましい。塩基性分散剤の塩基価は、好ましくは1mgKOH/g以上であり、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、一層好ましくは15mgKOH/g以上である。これによって、微細かつ安定な着色樹脂粒子分散体を作製することができる。
ここで、塩基価は、不揮発分1gに含まれる全塩基性成分を中和するのに必要な塩酸と当量の水酸化カリウムのミリグラム数である。以下同じである。
連続相中の塩基性分散剤は、エマルションの安定性及び着色樹脂粒子の分散性の観点から、連続相全体に対し0.1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
溶剤Bの除去後の塩基性分散剤の含有量としては、着色樹脂粒子の分散性の観点から、着色樹脂粒子分散体全体に対し0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。
分岐炭化水素溶剤(A)は、上記したスクワレン、α−オレフィンオリゴマー、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、及びこれらの水素添加物から選ばれる少なくとも1種以上である。
分岐炭化水素溶剤(A)としては、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。
好ましくは、分岐炭化水素溶剤(A)は、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であり、より好ましくは0.5g/100g以下である。また、好ましくは、分岐炭化水素溶剤(A)は、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以上であり、より好ましくは5g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Aに分岐炭化水素溶剤(A)が実質的に全て溶解し、溶剤Bに分岐炭化水素溶剤(A)が実質的に溶解しないように、分岐炭化水素溶剤(A)が選択される。
連続相中の分岐炭化水素溶剤(A)は、連続相全体に対し、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。
連続相中の分岐炭化水素溶剤(A)は、連続相全体に対し、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
溶剤Bの除去後の分岐炭化水素溶剤(A)の含有量としては、着色樹脂粒子分散体全体に対し、3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上である。これによって、着色樹脂粒子を小粒子径化して、貯蔵安定性を高めることができる。
溶剤Bの除去後の分岐炭化水素溶剤(A)の含有量としては、着色樹脂粒子分散体全体に対し、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。これによって、乳化安定性に優れた油中油型エマルションを調整して、分散体の貯蔵安定性を高めることができる。
連続相には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、表面張力調整剤、消泡剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
「分散相」
分散相としては、溶剤Bと色材と固体樹脂と選択的に酸性化合物とを含む。また、色材が顔料の場合、顔料分散剤をさらに含んでもよい。
溶剤Bは、上記した溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であり、溶剤Aよりも沸点が低いものであることが好ましい。
溶剤Bとしては、好ましくは極性有機溶剤であり、より好ましくは低級アルコール系溶剤である。低級アルコール系溶剤としては、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール等を挙げることができる。さらに好ましくは、炭素数4以下の低級アルコール系溶剤である。
溶剤Bのその他の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を挙げることができ、さらに、上記した溶剤A、塩基性分散剤及び樹脂との関係性を満たすものを適宜選択して用いることができる。
これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。
溶剤Bの溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100gであることが好ましく、より好ましくは、23℃で1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下であり、一層好ましくは、実質的に溶解しないことである。
溶剤Bと溶剤Aとの沸点の差は、10℃以上であることが好ましく、より好ましくは20℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上である。この場合、石油系炭化水素溶剤等の混合溶剤の場合、50%留出点を沸点とする。また、溶剤Bの沸点は、100℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以下である。一方、溶剤Bの沸点の下限値は、溶剤Bが−20〜90℃の範囲で液状であれば特に制限されない。
溶剤Bは、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が18〜30MPa/cmであることが好ましく、より好ましくは20〜30MPa/cmである。また、溶剤Bは、分散項δdが14〜17、極性項δpが5〜15、水素結合項δhが5〜25であることが好ましく、より好ましくは、分散項δdが14〜17、極性項δpが5〜15、水素結合項δhが15〜25である。
溶剤Bの溶解性パラメーターが上記範囲であることで、溶剤Aに対して溶解性が低く、かつ、着色樹脂粒子及び固体樹脂をそれぞれ溶解させる能力を有することができる。着色樹脂粒子及び固体樹脂の溶解性パラメーターとしては、上記範囲のものであれば、溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対して不溶性で分散安定性を得ることができる。
また、溶剤Aが脂肪酸エステル及び/または炭化水素系溶剤であり、溶剤Bが炭素数4以下のアルコール系溶剤であることが好ましい。脂肪酸エステルの好ましい例としては、パルミチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸メチル等である。炭化水素系溶剤の好ましい例としては、ナフテン、パラフィン、イソパラフィン等である。炭素数4以下のアルコール系溶剤の好ましい例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等であり、より好ましくはメタノールである。
色材としては、染料及び顔料のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
色材は、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Aに色材が実質的に溶解しないように、色材が選択される。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキシサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックが挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
顔料の平均粒子径としては、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下である。これによって、分散相中での顔料の分散性を良好に保つことができ、また、最終的な着色樹脂粒子の粒子サイズを適正にすることができる。
色材に顔料を用いる場合では、上記した固体樹脂に、あらかじめ顔料を分散させた固形チップを用いることができる。この場合、顔料と樹脂の親和性が向上し耐摩耗性をより向上させることができる、また、インク製造上も有利である。固体樹脂に顔料を分散させる方法としては、二本ロールミル等を用いることができる。
色材に顔料を用いる場合は、分散相中、すなわち溶剤B中で顔料を安定して分散させるために、顔料分散剤を分散相に含ませてもよい。
顔料分散剤としては、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤及びノニオン性分散剤のいずれを用いてもよく、エマルションのその他成分に応じて適宜選択すればよい。また、顔料分散剤は、また、高分子量化合物及び低分子量化合物(界面活性剤)のいずれを用いてもよい。
顔料分散剤としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、高分子量ポリカルボン酸の塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート、高分子量不飽和酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート等を用いることができる。
これらは単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用してもよい。
顔料分散剤は、溶剤Bに対する溶解度が溶剤Aに対する溶解度よりも高いことが好ましく、例えば、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは5g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに顔料分散剤が実質的に全て溶解し、溶剤Aに顔料分散剤が実質的に溶解しないように、顔料分散剤が選択される。
アニオン性分散剤としては、上記した酸性化合物のなかから顔料分散性を備えるものを用いてもよい。
アニオン性分散剤として使用可能な酸性化合物として、市販されているものとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製「DISPERBYK102、108、110、111、180」(いずれも商品名)、巴工業社製「TEGODispers655」、EFKA社製「Efka6230」等を挙げることができる。これらはいずれも溶剤Bに対する溶解性が良好である。
カチオン性分散剤としては、例えば、アミノ基、アミド基、ピリジル基、ウレタン結合等を有する含窒素化合物を好ましく用いることができ、中でもアミノ基を有する含窒素化合物であることが好ましい。
カチオン性分散剤として、市販されているものとしては、例えば、ルーブリゾール社製「ソルスパース71000」、ビックケミー・ジャパン社製「DISPERBYK2155、9077」等を用いることができる。これらはいずれも溶剤Bに対する溶解性が良好である。
顔料分散剤としてカチオン性分散剤を用いる場合は、カチオン性分散剤の塩基価は、好ましくは1mgKOH/g以上であり、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、一層好ましくは20mgKOH/g以上である。これによって、顔料親和性が高まり、分散性能を高めることができる。
分散相中の顔料分散剤の配合量は、適宜設定できるが、顔料分散性の観点から、質量比で、顔料1部に対し0.05〜2.0部程度であることが好ましく、0.1〜1.0部であることがより好ましく、0.2〜0.6であることがさらに好ましい。
染料としては、当該技術分野で一般に用いられているものを任意に使用することができ、例えば、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料、金属錯塩染料、造塩染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料としては、具体的には、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン系染料、金属フタロシアニン系染料、トリアリールメタン染料、ローダミン染料、スルホローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キノン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いてよい。
好ましくは、染料は、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことで、分散相中で溶剤Bに染料とともに樹脂が溶解して着色樹脂粒子分散体を安定して提供することができる。
ここで、染料は、溶剤Bに対する溶解度が23℃で0.5g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに染料が実質的に全て溶解するように、染料が選択される。
また、染料は、着色樹脂粒子の耐水性の観点から、油溶性染料であることが好ましい。また、酸性染料を用いることで、連続相に塩基性分散剤が含まれ、分散相に酸性の酸性染料が含まれるため、油中油型エマルションをより安定化することができる。より好ましくは金属錯塩染料である。
このような油溶性染料としては、例えば、オリヱント化学工業株式会社製「OIL COLORシリーズ」のOILBlue613、OILYellow107、SpilitBlackAB、ROB−B等を挙げることができる。
また、金属錯塩染料としては、例えば、オリヱント化学工業株式会社製「VALIFAST COLORシリーズ」のValifastBlack3804、3810(ソルベントブラック29)、3820、3830、3840(ソルベントブラック27)、3870、ValifastBlue1605、2606、2620、2670、ValifastOrange3209、3210、ValifastPink2310N、2312、ValifastRed3304、3311、3312、3320、ValifastYellow3108、3170、4120、4121等;
BASF社製「オラゾールシリーズ」のオラゾールブラックRLI、ブルーGN、ピンク5BLG、イエロー2RLN等;
保土谷化学工業株式会社製「AizenSpilonシリーズ」のアイゼンスピロンBlackBH、RLH、アイゼンスピロンVioletRH、アイゼンスピロンRedCBH、BEH、アイゼンスピロンYellowGRH、アイゼンSPTBlue26、アイゼンSPTBlue121、アイゼンSBNYellow510等を用いることができる。
分散相中の色材は、染料及び顔料の総量として、分散相全体に対し、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、一層好ましくは2〜20質量%である。これによって、溶剤Bへの溶解性または分散性を安定にすることができる。
溶剤Bの除去後、色材の含有量としては、染料及び顔料の総量として、着色樹脂粒子分散体全体に対し、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、一層好ましくは2〜20質量%である。これによって、着色樹脂粒子の呈色を適正にして、形状を安定化することができる。
固体樹脂としては、室温(23℃)で固体状の樹脂であることが好ましい。詳細については、上記した通りである。
この固体樹脂は、油中油型エマルションによって着色樹脂粒子を製造する場合は、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いものであることが好ましい。
固体樹脂の溶剤Bに対する溶解度は23℃で10g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは20g/100g以上である。また、固体樹脂の溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、固体樹脂は、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに実質的に全て溶解し、溶剤Aに実質的に溶解しないものである。
分散相全量に対する固体樹脂の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、一層好ましくは2〜20質量%である。これによって、溶剤Bへの固体樹脂の溶解性を適正にして、着色樹脂粒子の成分をより均一にすることができる。
溶剤B除去後の着色樹脂粒子分散体全量に対する固体樹脂の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。これによって、着色樹脂粒子の呈色を適正にして、形状を安定化することができる。
固体樹脂と色材の質量比は、(固体樹脂の質量)/(色材の質量)≧0.5であることが好ましい。この範囲で、連続相と分散相とを混合及び攪拌したときに、乳化安定性に優れた油中油型エマルションを提供することができる。
酸性化合物は、酸性基を有する液体有機化合物である。詳細については、上記した通りである。
酸性化合物は、特に制限されないが、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことが好ましい。酸性化合物の溶剤Bに対する溶解度は23℃で1g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは2g/100g以上である。また、酸性化合物の溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、酸性化合物は、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに実質的に全て溶解し、溶剤Aに実質的に溶解しないものである。
分散相全量に対する酸性化合物の含有量は、0.1〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。これによって、エマルションをより安定化することができる。
溶剤B除去後の着色樹脂粒子分散体全量に対する酸性化合物の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。これによって、耐摩耗性をより高めることができる。
酸性化合物と色材の質量比は、(酸性化合物の質量)/(色材の質量)≧0.5であることが好ましい。この範囲で、連続相と分散相とを混合及び攪拌したときに、乳化安定性に優れた油中油型エマルションを提供することができる。
分散相は、顔料誘導体をさらに含むことができる。顔料誘導体の詳細については、上記した通りである。
分散相全量に対する顔料誘導体の含有量は、0.015〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.03〜5質量%である。これによって、分散相中において顔料分散性が向上し、より小粒子径で安定的に顔料を分散することができる。
溶剤B除去後の着色樹脂粒子分散体全量に対する顔料誘導体の含有量は、0.03〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。これによって、着色樹脂粒子に顔料誘導体が含まれることで、より小粒径の着色樹脂粒子を得ることができる。
分散相には、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、消泡剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、架橋剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
「分散体の調整方法」
着色樹脂粒子分散体の調整方法としては、特に限定されず、上記した連続相に上記した分散相を分散させて油中油型エマルションを作製し、この油中油型エマルションから、分散相中の非水系溶剤Bを除去することで調整することができる。
例えば、連続相及び分散相は、上記した各成分を混合して調整することができる。その後、連続相に分散相を滴下しながら混合及び攪拌することで、連続相に分散相を分散させることができる。このとき、混合及び攪拌は、超音波ホモジナイザーを用いて行うことができる。得られた油中油型エマルションから減圧及び/または加熱により非水系溶剤Bを除去することができる。このとき、減圧及び/または加熱の程度は、非水系溶剤Bが除去されるが、非水系溶剤Aは残るように調整する。
色材に顔料を用いる場合は、分散相中での顔料の分散方法としては、ボールミル、ビーズミル、超音波、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の一般的な湿式分散機を用いることができる。
また、油中油型エマルションの連続相と分散相との質量比は、40:60〜95:5の範囲で調整することができる。非水系溶剤Bの添加量は、油中油型エマルション全体に対し、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。また、非水系溶剤Bの除去量は、配合された非水系溶剤B全量であることが望ましいが、配合された非水系溶剤B全量に対し90質量%以上であればよい。
着色樹脂粒子分散体において、着色樹脂粒子の平均粒子径は、上記した通りであることが好ましい。
着色樹脂粒子の平均粒子径は、連続相に配合される塩基性分散剤の量、または、分散相に配合される不揮発分の量等を調整することで制御することができる。酸性化合物を配合することで、着色樹脂粒子の平均粒子径をより小さく制御することが可能である。
(インク)
本実施形態によるインクとしては、上記した着色樹脂粒子分散体を含むインクである。このインクは、インクジェット印刷、オフセット印刷、孔版印刷、グラビア印刷、電子写真方式印刷等の印刷インク全般として用いることができる。特に、着色樹脂粒子分散体の貯蔵安定性が良好であるため、インクジェットインクとして用いることが好ましい。
インクジェットインクとして用いる場合、着色樹脂粒子分散体をそのまま用いることも可能であり、また、必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲内で、当該分野において通常用いられている各種添加剤を含ませることができる。例えば、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。また、着色樹脂粒子分散体を上記した非水系溶剤で希釈してもよい。
インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが、一層好ましい。ここで粘度は、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける値を表す。
インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
本実施形態において、記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm〜数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
また、コート紙としては、インクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。塗工印刷用紙は、普通紙、インクジェット用コート紙と比較して紙表面の空隙が少ないため、インクの浸透が遅く、インク成分が紙表面に留まりやすい。そのため、本実施形態によるインクは、塗工印刷用紙に対する定着性を向上させることに適している。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。特に説明のない限り、「%」は「質量%」を示す。
<インク調整>
表1及び表2に、溶剤B除去前の実施例及び比較例の油中油型エマルションの処方を示す。各表において、分散剤に揮発分が含まれる場合は、分散剤の全体量とともに不揮発分量をカッコ内に併せて示す(後述する表3及び表4も同じである)。
各表に示す配合量で、溶剤A、分岐炭化水素溶剤(A)及び塩基性分散剤を混合し連続相を調整した。次に、各表に示す配合量で、溶剤Bに、色材、固体樹脂、及び酸性化合物を混合し、ビーズミルにて分散し分散相を調整した。
連続相をマグネティックスターラーで攪拌した状態で、この連続相に、予め混合しておいた分散相を滴下しながら、氷冷下、超音波ホモジナイザー「Ultrasonic processor VC―750」(ソニックス社製)を10分間照射し、油中油(O/O)型エマルションを得た。
得られたエマルションを、エバポレーターで減圧しながら、分散相中の溶剤Bを除去して、着色樹脂粒子分散体を得た。溶剤Bの除去率は、ほぼ100質量%であった。この着色粒子分散体をそのままインクとして用いた。
実施例5では、分散相にさらに顔料誘導体を添加した。
実施例6及び7では、分散相に酸性化合物を添加しなかった。
比較例1〜4では、分散相に分岐炭化水素溶剤(A)を添加しなかった。
表3及び表4に、溶剤B除去後の実施例及び比較例のインクの処方を示す。インク全量に対する着色樹脂粒子分(酸性化合物、固体樹脂、色材、及び顔料誘導体)を求め、各表に併せて示す。
Figure 2017019967
Figure 2017019967
Figure 2017019967
Figure 2017019967
各表に示す成分は、以下の通りである。
(連続相)
「溶剤A」
脂肪酸エステル系溶剤:パルミチン酸イソオクチル、日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL IOP」。
ナフテン系溶剤:JX日鉱日石エネルギー株式会社製「AFソルベント6号」。
アイソパーM:イソパラフィン系炭化水素系溶剤、東燃ゼネラル石油株式会社製「アイソパーM」。
「塩基性分散剤」
塩基性分散剤:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース11200」、不揮発分50%、塩基価37mgKOH/g。
「分岐炭化水素溶剤(A)」
スクワラン:日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL シュガースクワラン」、化合物名:2,6,10,15,23−ヘキサメチルテ−2,6,10,14,18,22−トラコサヘキサエン、分子式:C3050、分子量410.73。
スクワレン:和光純薬工業株式会社製。
α−オレフィンオリゴマー:日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL シンセラン4SP」、化合物名:1−Dodecene,polymer with 1−decene and 1−octene,hydrogenated。
水添ポリイソブテン:日油株式会社製「パールリーム24」。
(分散相)
「酸性化合物」
酸性化合物:2個のリン酸基を有する液体有機化合物(共重合体の両末端にリン酸基を有するリン酸エステル化合物)、ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPER BYK111」、酸価129mgKOH/g、不揮発分95.0%。
「固体樹脂」
ニトロセルロース:NobelNC社製「DLX5−8」。
スチレンアクリルポリマー:東亞合成株式会社製「ARUFON UF5041」、(Mw)15500。
メトキシメチル化ナイロン:メトキシメチル化率30%、(Mw)20,000、株式会社鉛市製「FR101」。
「色材」
黒色顔料:カーボンブラック、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク社製「モーガルL」。
黒色染料:オリヱント化学工業株式会社製「Varifast Black3810」。
「顔料誘導体」
顔料誘導体:フタロシアニン顔料誘導体、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース5000」。
「溶剤B」
メタノール:炭素数1のアルコール系溶剤、和光純薬工業株式会社製。
上記Mwは、重量平均分子量を示す。
溶剤Bであるメタノールは、溶剤Aである「NIKKOL IOP」及び「AFソルベント6号」に対する溶解度が23℃で0.4g/100gである。また、メタノールの沸点は64.7℃であり、「AFソルベント6号」の50%留出点はおよそ313℃である。
塩基性分散剤であるソルスパース11200は、表1に示す連続相の配合割合で溶剤Aに溶解し、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
分岐炭化水素溶剤(A)は、表1に示す連続相の配合割合で溶剤Aに溶解し、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
色材及び顔料誘導体は、それぞれ、表1に示す分散相の配合割合で溶剤Bに分散し、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
固体樹脂は、それぞれ、表1に示す分散相の配合割合で溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であり、水に対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
酸性化合物は、表1に示す分散相の配合割合で溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
<評価>
上記した各インクを用いて、以下の各評価を行った。結果を各表に併せて示す。
(乳化性)
上記したインクの調整方法において、油注油型エマルションの調整状態、及び溶剤実施例B除去後の着色樹脂粒子分散体の状態を観察し、以下の基準で評価した。
A:油中油型エマルション調整で乳化物を得ることができ、油中油型エマルションから溶剤Bを除去した後に沈殿物が少ない。
B:油中油型エマルション調整で乳化物を得ることができるが、油中油型エマルションから溶剤Bを除去した後に沈殿物が多い。
C:油中油型エマルション調整で乳化物を調製することができない。
(着色樹脂粒子の平均粒子径)
上記した各インクについて、インク中に分散している着色樹脂粒子の体積基準の平均粒子径を動的光散乱式粒径分布測定装置「LB―500」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定結果から、以下の基準で評価した。
AA:平均粒子径が150nm未満
A:平均粒子径が150nm以上200nm未満
B:平均粒子径が200nm以上300nm未満
C:平均粒子径が300nm以上
(貯蔵安定性)
まず、調整直後のインクの粘度を測定した。
次に、インクを10mlのスクリュ−バイアル瓶に入れて、70℃で1週間放置した。その後、インクをサンプリングし、目視評価及びインク粘度測定を行った。
粘度は、レオメーターARG2(ティ−・エイ・インスツルメント社製)を用いて、コーン角度2°、直径40mmで、室温(23℃)で測定した。
1週間放置前後のインク粘度から、次式により粘度変化率を求めた。
粘度変化率(%)=100−{放置後のインク粘度(mPa・s)/調製直後のインク粘度(mPa・s)}×100
1週間放置後のインクの目視評価及びインク粘度変化率の結果から、以下の基準で貯蔵安定性を評価した。
A:インクの分離、顔料の凝集沈降物は観察されず、インク粘度変化率が±5%以内である。
B:インクの分離、顔料の凝集沈降物は観察されず、インク粘度変化率が±5%以上10%未満である。
C:インクの分離、顔料の凝集沈降物が観察される、もしくはインク粘度変化率が±10%以上である。
(耐水性)
上記した耐擦過性と同様にして印刷物を得た。印刷後24時間放置後、印刷物のベタ画像部分に0.5mlの水を垂らして、そのにじみ具合を目視で観察して、耐水性を次の基準で評価した。
A:印刷画像部分がにじまないレベル。
B:印刷画像部分が若干にじむが実際の使用上問題ないレベル。
C:印刷画像部分がにじみ実際の使用上問題あるレベル。
(耐擦過性)
上記した各インクをライン式インクジェットプリンター「オルフィスX9050」(理想科学工業株式会社製)に装填し、上質コート紙「オーロラコート」(日本製紙株式会社製)に、ベタ画像を印刷して、印刷物を得た。印刷は、解像度300×300dpiにて、1ドット当りのインク量が42plの吐出条件で行った。なお、「オルフィスX9050」は、ライン型インクジェットヘッドを使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印刷を行うシステムである。
印刷後24時間放置後に、印刷物のベタ画像部分を指で強く5回擦った時の状態を目視で観察し、耐擦過性を次の基準で評価した。
A:画像のはがれがほとんど確認されないレベル。
B:画像のはがれが確認されるが実際の使用上問題ないレベル。
C:画像のはがれが顕著であり実際の使用上問題あるレベル。
上記各表に示す通り、各実施例のインクは、いずれの評価も良好であり、また、着色樹脂粒子の平均粒子径及び粘度も適正な範囲であった。
各実施例を通して、本発明に係る液体有機化合物を用いることで、各種インクの処方をとおして、乳化性、平均粒子径、貯蔵安定性、耐擦過性及び耐水性が良好になることがわかった。
実施形態2及び5では、溶剤Aに脂肪酸エステル系溶剤を単独で用いているが、小粒子径で貯蔵安定性も良好であった。
実施例5では、分散相に顔料誘導体を添加したものであり、平均粒子径をより小さくすることができた。
実施例6及び7では、分散相に酸性化合物を用いなかったものであるが、他の実施例と同様の結果を得ることができた。
各比較例では、本発明に係る液体有機化合物を用いていないものであり、油中油型エマルション調整時に乳化物を得ることが難しかった。それゆえ、各比較例では、平均粒子径が大きくなり、貯蔵安定性も低下した。また、耐擦過性及び耐水性も十分ではなかった。
比較例2では、脂肪酸エステル系溶剤を用いており、油中油型エマルション調整時に乳化物を得ることができなかった。脂肪酸エステル系溶剤を用いる場合は、本発明に係る液体有機化合物と組み合わせることが特に重要であることがわかった。比較例2では、インクを得ることができなかったため、乳化性以外の評価はしていない。

Claims (7)

  1. 色材及び固体樹脂を含む着色樹脂粒子と、塩基性分散剤と、非水系溶剤とを含み、スクワレン、α−オレフィンオリゴマー、エチレン−α−オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、及びこれらの水素添加物から選ばれる1種以上をさらに含む、着色樹脂粒子分散体。
  2. 前記固体樹脂は、硝酸エステル化樹脂、アルコキシメチル化ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、及びスチレン(メタ)アクリル系樹脂から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の着色樹脂粒子分散体。
  3. 前記着色樹脂粒子は、酸性基を有する液体有機化合物をさらに含む、請求項1または2に記載の着色樹脂粒子分散体。
  4. 前記酸性基を有する液体有機化合物の酸性基はリン酸基を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の着色樹脂粒子分散体。
  5. 前記非水系溶剤は、脂肪酸エステル系溶剤及び石油系炭化水素溶剤のうち1種以上を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の着色樹脂粒子分散体。
  6. 前記着色樹脂粒子が顔料誘導体をさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の着色樹脂粒子分散体。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の着色樹脂粒子分散体を含む、インクジェットインク。
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