JP2017019965A - 着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインク - Google Patents

着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインク Download PDF

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Abstract

【課題】耐摩耗性に優れるとともに、小粒径で貯蔵安定性に優れた着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインクを提供する。
【解決手段】色材、固体樹脂、及び炭化水素基及び窒素含有樹脂を含む着色樹脂粒子と、非水系溶剤とを含み、炭化水素基及び窒素含有樹脂は、炭素−炭素結合を主鎖とし、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する側鎖と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖と、を有する、着色樹脂粒子分散体である。
【選択図】なし

Description

本発明は、着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインクに関する。
着色樹脂粒子分散体は、各種印刷方法による印刷インクの成分として用いられている。
印刷用インクの色材としては、大別して染料と顔料がある。染料を用いる場合、発色が良いといった利点がある。また、染料は、顔料に比べ耐摩耗性、特に耐擦過性に優れるという利点がある。しかし、染料自体の耐水性及び耐マーカー性が低いという問題がある。一方、顔料は、画像濃度が高い、耐候性に優れるという利点があるが、染料に比べ耐摩耗性、特に耐擦過性が低いという問題がある。
これに対して、色材を樹脂で包含して着色樹脂粒子の形態とすることで、色材の持つ画像性に関する特徴をいかしつつ、耐擦過性とともに耐水性及び耐マーカー性にも優れるインクを提供する方法がある。
特許文献1及び特許文献2には、有機溶媒Aと、有機溶媒Aとほとんど相溶性がない有機溶媒Bとを使用して、有機溶媒Bと樹脂とを含む分散相及び有機溶媒Aを含む連続相からなる分散液とした後、分散液から減圧又は加熱により有機溶媒Bを除去することで、有機溶媒A中に高分子粒子が分散した高分子粒子分散物を製造することが提案されている。
しかしながら、これらの高分子粒子分散物を用いて印刷用インキを調整した場合に、用紙等へ印刷された画像の耐摩耗性、耐水性及び耐マーカー性について、上記文献では検討されていない。単に樹脂を添加したのみでは、画像領域の耐摩耗性を十分に得ることは難しい。また、印刷画像の十分な発色性を得るための色材量を配合した場合、高分子粒子分散物の粘度が上昇して分散物の調整が難しくなるという問題がある。
特許文献3によれば、非水系溶剤Aと塩基性分散剤とを含む連続相に、非水系溶剤Bと染料と樹脂と酸性分散剤とを含む分散相を分散させて油中油型エマルションを調整し、油中油型エマルションから非水系溶剤Bを除去した着色樹脂粒子が提案されている。
特許文献3では、連続相に塩基性分散剤を用い、分散相に酸性分散剤を用いることで、樹脂の種類によらず、油中油型エマルションを優れた乳化安定性で調整することができ、耐水性とともに耐マーカー性及び耐擦過性に優れる着色樹脂粒子分散体を提供することが開示されている。
特開2007−197632号公報 特開2005−255911号公報 特開2014−019770号公報
特許文献3では、連続相に塩基性分散剤を配合し、分散相に酸性分散剤を配合することで、連続相と分散相の酸塩基相互作用を得て、使用可能な樹脂の種類に幅を持たせることができる。
一方、連続相と分散相の酸塩基相互作用を得るために、連続相及び分散相に配合される成分の酸及び塩基の特性が制限されることがある。例えば、分散相に酸性分散剤が配合される系では、分散相に塩基性成分が配合されると、酸塩基相互作用が弱まることがある。そのため、分散相に配合される色材等は、酸性ないし中性であるものを好ましく用いることができる。
本発明の一目的としては、耐摩耗性に優れるとともに、小粒径で貯蔵安定性に優れた着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインクを提供することである。
本発明の第1の側面としては、色材、固体樹脂、及び炭化水素基及び窒素含有樹脂を含む着色樹脂粒子と、非水系溶剤とを含み、前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、炭素−炭素結合を主鎖とし、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する側鎖と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖と、を有する、着色樹脂粒子分散体である。
本発明の第2の側面としては、色材、及び炭化水素基及び窒素含有樹脂を含む着色樹脂粒子と、非水系溶剤とを含み、前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、炭素−炭素結合を主鎖とし、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖を有する炭化水素基含有樹脂と、アミノ基及び/またはアミド結合を有する単位を含む窒素含有固体樹脂との共重合体であって、前記炭化水素基含有樹脂と、前記窒素含有固体樹脂との結合部が、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する、着色樹脂粒子分散体である。
本発明の他の側面としては、上記着色樹脂粒子分散体を含む、インクジェットインクである。
本発明によれば、耐摩耗性に優れるとともに、小粒径で貯蔵安定性に優れた着色樹脂粒子分散体及びインクジェットインクを提供することができる。
<第1の実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本発明の一実施形態による着色樹脂粒子分散体(以下、単に「分散体」という場合がある)は、色材、固体樹脂、及び炭化水素基及び窒素含有樹脂を含む着色樹脂粒子と、非水系溶剤とを含み、炭化水素基及び窒素含有樹脂は、炭素−炭素結合を主鎖とし、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する側鎖と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖と、を有する、ことを特徴とする。
以下、第1の実施形態における炭化水素基及び窒素含有樹脂を単に樹脂Aと称することがある。
本実施形態によれば、耐摩耗性に優れる着色樹脂粒子を提供することができる。
特に、色材の種類によらずに、優れた耐摩耗性を得ることができる。
また、本実施形態によれば、画像濃度が高く、小粒径で、分散安定性が良好な着色樹脂粒子を提供することができる。
本実施形態によれば、着色樹脂粒子では色材が固体樹脂に包含されて形成されることで、印刷物の耐摩耗性を高めることができる。
着色樹脂粒子は、炭化水素基及び窒素含有樹脂を含むことで、窒素原子が着色樹脂粒子に配向し、炭化水素基が非水系溶剤に配向して、着色樹脂粒子の分散安定性を高めることができる。
この反応生成物は、着色樹脂粒子の表層部に形成されることで、分散安定性の効果をより高めることができる。
本実施形態による炭化水素基及び窒素含有樹脂は、炭素−窒素結合を有する単位を2個以上有するアミン化合物と、反応性ポリマーとの反応生成物であって、反応性ポリマーは、アミノ基と反応性を有する反応性官能基と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基とを有するポリマーである反応生成物を用いることができる。
以下、第1の実施形態における反応生成物を反応生成物Aと称することがある。
アミン化合物は、着色樹脂粒子分散体の調整の際に、色材及び固体樹脂とともに分散相に配合されて、色材及び固体樹脂を均一に混合することができる。結果として、着色樹脂粒子の各成分をより均一に配合して、印刷物の耐摩耗性、特に耐擦過性をより高めることができる。
この色材が分散相に配合される構成において、反応性ポリマーを連続相に配合し、連続相と分散相を混合して油中油型エマルションを調整することで、着色樹脂粒子の表層部に反応生成物を形成することができる。これによって、反応性ポリマー由来の炭化水素基が非水系溶剤に配向しやすくなって、より分散安定性を高めることができる。
また、この色材が分散相に配合される構成において、印刷画像の十分な発色性を得るために十分な量の色材を分散相に配合した場合においても、アミン化合物が含まれることで、樹脂と色材とをより均一に安定して配合することができ、色材の発色性をより高めることができる。
本実施形態では、炭化水素基に起因する非水系溶剤に親和性を有する基と、窒素原子に起因する着色樹脂粒子に親和性を有する基とを、着色樹脂粒子に含ませることで、上記した耐摩耗性とともに分散安定性を得ることができる。それゆえ、色材の酸及び塩基の特性に制限されずに、着色樹脂粒子を提供することができる。
(着色樹脂粒子)
本実施形態による着色樹脂粒子としては、色材及び固体樹脂とともに炭化水素基及び窒素含有樹脂(樹脂A)を含む。
この着色樹脂粒子は、色材及び固体樹脂が均一に混合されて、粒子形状となっていることが好ましい。
樹脂Aは、炭素−窒素結合を有する単位を2個以上有するアミン化合物と、反応性ポリマーとの反応生成物Aを用いることができる。
着色樹脂粒子は、反応生成物Aを構成するアミン化合物が色材及び固体樹脂とともに均一に混合され、着色樹脂粒子表面付近にあるアミン化合物の窒素原子に、反応性ポリマーが結合して形成され、着色樹脂粒子の表層に反応生成物Aが形成されていることが好ましい。
「固体樹脂」
固体樹脂としては、室温(23℃)で固体状の樹脂であることが好ましい。
固体樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、粒子形状を安定化するために、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上である。固体樹脂のガラス転移温度は、制限されないが、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以下である。
また、固体樹脂の溶融温度(Tm)としては、粒子形状を安定化させるために、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは、40℃以上である。固体樹脂の溶融温度は、制限されないが、250℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以下である。
固体樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3000〜100000が好ましく、より好ましくは5000〜80000である。この範囲で、着色樹脂粒子の形状の安定性を高めることができる。また、着色樹脂粒子の製造工程において、固体樹脂を含む原料を溶剤により均一に混合することができ、結果として成分が均一な着色樹脂粒子を提供することができる。
ここで、樹脂の重量平均分子量は、GPC法により、標準ポリスチレン換算により求めることができる。以下同じである。
固体樹脂としては、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が22〜27MPa/cmであることが好ましい。また、固体樹脂は、分散項δdが13〜20、極性項δpが5〜12、水素結合項δhが10〜20であることが好ましい。この範囲とすることで、着色樹脂粒子分散体としてのインクが用紙に塗布される際に、着色樹脂粒子と非水系溶剤を速やかに分離させ、耐摩耗性をより向上することができる。
溶解性パラメーターの算出方法を以下に説明する。本発明では、1967年にHansenが提唱した3次元溶解性パラメーターを用いる。
Hansenの溶解性パラメーターは、Hildebrandによって導入された溶解性パラメーターを分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、3次元空間で表したものである。分散項は、分散力による効果、極性項は、双極子間力による効果、水素結合項は、水素結合力の効果を示す。より詳細には、POLYMER HANDBOOK.FOURTH EDITION.(Editors.J.BRANDRUP,E.H.IMMERGUT,andE.A.GRULKE.)等に説明されている。
Hansenの溶解性パラメーターについては、下記に説明する通り、実験から求めることができる。
まず、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhが既知の溶剤に対して対象物(固体樹脂等)の溶解性(10mass%)を調査する。次いで、対象物が溶解する溶剤の範囲に相当する分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの範囲(最小値と最大値)を求め、その中間の値(3次元溶解性パラメーターの範囲の中心の値)をその対象物の3次元溶解性パラメーターとする。つまり、良溶媒が内側、貧溶媒が外側にくる最大の直方体を考えて、その直方体の中心を対象物の溶解性パラメーター(HSP値)と定める。
分散項δd=(δdmax−δdmin)/2
極性項δp=(δpmax−δpmin)/2
水素結合項δh=(δhmax−δhmin)/2
HSP=δd+δp+δh
溶解性試験に供する溶剤は、溶解性パラメーター(HSP値)がなるべく異なる3次元空間上に位置するものを選択することが好ましい。
固体樹脂は、上記物性を備えるものを好ましく用いることができ、その種類は限定されない。
固体樹脂の具体例としては、アルキルフェノール樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン(メタ)アクリル系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂、酢酸ビニル、リン酸エステル化樹脂、アルコキシ基含有樹脂、ポリシルセスキオキサン、メトキシシルセスキオキサン、エトキシシルセスキオキサン、ポリビニルピロリドン、硝酸エステル化樹脂、これらの樹脂の誘導体等を挙げることができる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル樹脂及び/またはアクリル樹脂を意味し、メタクリル単位とアクリル単位とをそれぞれ単独で有する重合体とともに、メタクリル単位とアクリル単位とをともに有する共重合体を意味する。スチレン(メタ)アクリル系樹脂も同じである。
また、固体樹脂として、アミノ基及び/またはアミド結合を有する単位を含む窒素含有固体樹脂を単独で、または上記固体樹脂と組み合わせて用いることもできる。このような反応性窒素含有固体樹脂としては、メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂、メチル化メラミン樹脂等のアミノ樹脂等、これらの樹脂の誘導体等を挙げることができる。
本実施形態では、アミノ化合物と反応性ポリマーとの反応生成物Aによって、着色樹脂粒子にアミノ基と炭化水素基が導入されるため、固体樹脂に反応性窒素含有固体樹脂を用いなくても十分に効果を得ることができる。そのため、固体樹脂は、上記したアミノ基及びアミド結合を含まない固体樹脂を含め、幅広い範囲から選択することができる。
アルキルフェノール樹脂としては、ノボラック型アルキルフェノール樹脂及びレゾール型アルキルフェノール樹脂のいずれであってもよく、これらの誘導体を用いてもよい。これらは、単独で、または組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルアルコールとしては、一般的に、ポリ酢酸ビニルを原料に用いて、ポリ酢酸ビニルの酢酸基を水酸基に置換して製造されため、置換の割合に応じて水酸基とともに酢酸基とを含む樹脂である。
ポリビニルアルコールを構成する全単位に対し、ヒドロキシ基を有する単位のモル比をnとし、酢酸基(−O−CO−CH)を有する単位のモル比をmとする場合、けん化度は(n/(n+m))×100、重合度はn+mで表される。
ポリビニルアルコールのけん化度(n/(n+m))×100としては、0〜60であることが好ましく、より好ましくは1〜50である。
ポリビニルアルコールの重合度(n+m)としては、10〜1000であることが好ましく、より好ましくは20〜500である。
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂をブチルアルデヒドによってアセタール化して得られるポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂をホルムアルデヒドによってアセタール化して得られるポリビニルホルマール樹脂(ビニロン)等を好ましく用いることができる。
セルロース系樹脂としては、セルロースアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等を挙げることができる。
硝酸エステル化樹脂としては、セルロースの硝酸エステルであるニトロセルロース等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、メタクリル単位及び/またはアクリル単位を有する(メタ)アクリル樹脂の他、メタクリル単位及び/またはアクリル単位とともにその他の単位を有する共重合体を用いることができる。その他の単位としては、スチレン系単位、カルボン酸ビニル単位、α−オレフィン単位、ジエン系単位、エチレン性不飽和酸単位、エチレン性不飽和酸無水物単位、不飽和カルボン酸のモノアルキルエステル単位、スルホン酸単位、ニトリル、ピリジン、ピロリドン等の含窒素単位、エーテル系単位等を挙げることができる。
スチレンマレイン酸樹脂としては、スチレンと無水マレイン酸との共重合体である。また、スチレンマレイン酸樹脂としては、スチレンマレイン酸樹脂をエステル化して、カルボキシ基またはヒドロキシ基を導入したエステル化物を用いることができる。
ポリアミド樹脂としては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン4−6、共重合ナイロン等を用いることができる。
また、ポリアミド樹脂をアルコキシメチル化したアルコキシ基を有するアルコキシメチル化ポリアミド樹脂を用いることができる。
ポリアミド樹脂をアルコキシメチル化することで、アルコール溶剤への溶解性を高めることができる。そのため、樹脂粒子の製造工程において、色材及び樹脂分を溶剤中に、より均一に安定して混合することができる。
アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基等を挙げることができる。
ポリアミド樹脂の市販品としては、例えば、株式会社T&K TOKA社製のトーマイドシリーズ、PAシリーズ、株式会社鉛市製ファインレジンシリーズ「FR−101」、「FR−104」、「FR−105」、「FR−301」等;ナガセケムテックス株式会社製のトレジンシリーズ「トレジンF-30K」、「トレジンEF-30T」等が挙げられる。
アミノ樹脂としては、尿素、メラミン、グアナミン等のアミノ基を含む化合物とアルデヒドの縮合反応によって得られる樹脂を用いることができる。
アミノ樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素・メラミン共縮合樹脂、メラミン・グアナミン共縮合樹脂等を挙げることができる。
また、上記したアミノ樹脂をアルキルエーテル化したアルキルエーテル化アミノ樹脂を好ましく用いることができる。
アルキルエーテル化アミノ樹脂としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、n−ブチル化尿素樹脂、イソブチル化尿素樹脂、n−ブチル化ベンゾグアナミン樹脂等を挙げることができる。
アミノ樹脂の市販品としては、例えば、株式会社三和ケミカルズ製「MW−30M」、三井化学株式会社製「ユーバン2020」、DIC株式会社製「BECKAMINEG1850」等が挙げられる。
また、固体樹脂として耐水性が高い樹脂を用いることで、印刷物の耐水性をより高めることができる。上記した固体樹脂のなかから、耐水性が高い樹脂としては、例えば、アルキルフェノール樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンマレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂、酢酸ビニル等を挙げることができる。
上記した固体樹脂の配合量は、着色樹脂粒子全体に対し、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。
一方、固体樹脂の配合量は、着色樹脂粒子全体に対し、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下である。
「色材」
着色樹脂粒子に含まれる色材としては、顔料及び染料のいずれであってもよく、これらの組み合わせて用いてもよい。
本実施形態では、アミン化合物と反応性ポリマーとの反応作用によって着色樹脂粒子を作製するため、色材の酸性及び塩基性の特性に関わらずに、安定して着色樹脂粒子分散体を得ることができる。それゆえ、色材には、酸性、塩基性及び中性の特性に関わらず、各種顔料及び染料を用いることができる。アミン化合物と色材が反応して凝集する場合は、塩基性または中性の色材を用いることが好ましい。
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキシサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックが挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
顔料の平均粒子径としては、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下である。これによって、分散相中での顔料の分散性を良好に保つことができ、また、最終的な着色樹脂粒子の粒子サイズを適正にすることができる。
染料としては、当該技術分野で一般に用いられているものを任意に使用することができ、例えば、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料、金属錯塩染料、造塩染料等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
染料としては、具体的には、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン系染料、金属フタロシアニン系染料、トリアリールメタン染料、ローダミン染料、スルホローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キノン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等を挙げることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いてよい。
また、染料は、着色樹脂粒子の耐水性の観点から、油溶性染料であることが好ましい。より好ましくは金属錯塩染料及び造塩染料である。
このような油溶性染料としては、例えば、オリヱント化学工業株式会社製「OIL COLORシリーズ」のOILBlue613、OILYellow107、SpilitBlackAB、ROB−B等を挙げることができる。
また、金属錯塩染料及び造塩染料としては、例えば、オリヱント化学工業株式会社製「VALIFAST COLORシリーズ」のValifastBlack3804、3810(ソルベントブラック29)、3820、3830、3840(ソルベントブラック27)、3870、ValifastBlue1605、1621、2606、2620、2670、ValifastOrange3209、3210、ValifastPink2310N、2312、ValifastRed3304、3311、3312、3320、ValifastYellow3108、3170、4120、4121等;
BASF社製「オラゾールシリーズ」のオラゾールブラックRLI、ブルーGN、ピンク5BLG、イエロー2RLN等;
保土谷化学工業株式会社製「AizenSpilonシリーズ」のアイゼンスピロンBlackBH、RLH、アイゼンスピロンVioletRH、アイゼンスピロンRedCBH、BEH、アイゼンスピロンYellowGRH、アイゼンSPTBlue26、アイゼンSPTBlue121、アイゼンSBNYellow510等を用いることができる。
色材は、着色樹脂粒子全体に対して、呈色性及び成分の均一性の観点から、0.1〜50質量%で配合されることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%である。
「炭化水素基及び窒素含有樹脂」
炭化水素基及び窒素含有樹脂(樹脂A)は、炭素−炭素結合を主鎖とし、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する側鎖と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖と、を有する樹脂である。
樹脂Aは、炭素−窒素結合を有する単位を2個以上有するアミン化合物と、反応性ポリマーとの反応生成物Aを用いることができる。反応性ポリマーは、アミノ基と反応性を有する反応性官能基と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基とを有するポリマーである。
着色樹脂粒子は、上記した固体樹脂によって粒子形状を維持することができる。
樹脂Aの窒素原子が分散体中で着色樹脂粒子に配向するとともに、樹脂Aの炭化水素基が分散体中で非水系溶剤に配向して、着色樹脂粒子の分散安定性に寄与することができる。
樹脂Aに反応生成物Aを用いることで、着色樹脂粒子に、アミン化合物由来のアミノ基と、反応性ポリマー由来の炭化水素基とが存在するようになる。
また、着色樹脂粒子分散体の調整において、色材及び固体樹脂とともにアミン化合物が分散相に配合されることで、色材及び固体樹脂をより均一に配合することができ、結果として耐摩耗性をより高めることができる。
より好ましい形態では、この樹脂Aは、着色樹脂粒子の表層に形成される。
これによって、窒素原子及び炭化水素基がそれぞれ着色樹脂粒子及び非水系溶剤に配向しやすくなって、着色樹脂粒子の分散安定性をより高めることができる。
樹脂Aに反応生成物Aを用いることで、色材、固体樹脂及びアミン化合物を含む着色樹脂粒子の表面において、反応性ポリマーとアミン化合物とが反応して、反応生成物Aが着色樹脂粒子の表層に形成されることが好ましい。
まず、反応生成物Aを構成するアミン化合物及び反応性ポリマーについて説明する。
アミン化合物としては、炭素−窒素結合を有する単位を2個以上有するアミン化合物である。
アミン化合物は、着色樹脂粒子に均一に配合されるために、23℃で液体状であることが好ましい。アミン化合物の融点は、より好ましくは15℃以下である。
アミン化合物は、アミノ基を2個以上有する高分子アミン化合物であることが好ましい。
アミン化合物の重量平均分子量は、300以上であることが好ましく、より好ましくは500以上である。
高分子アミン化合物を用いることで、着色樹脂粒子分散体の調整の際に、固体樹脂と高分子アミン化合物との相溶性を高めて、固体樹脂と高分子アミン化合物とをより均一に混合することができる。
アミン化合物の重量平均分子量は、30000以下であることが好ましく、より好ましくは15000以下である。分子量が高くなりすぎると、アミン化合物の流動性が低下して、固体樹脂粒子に均一に配合しにくくなる。
アミン化合物において、炭素−窒素結合を有する単位としては、エチレンイミンに由来する単位、アリルアミンに由来する単位、ビニルアミンに由来する単位等を挙げることができる。これらは、アミン化合物の1分子中に1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、部分尿素化ポリアリルアミン等、及びこれらの誘導体を用いることができる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンを好ましく用いることができる。これらのアミン化合物は、1分子中に複数のアミノ基を有するため、反応性ポリマーとの反応基点を多くすることができる。さらに好ましくは、重量平均分子量が300〜15000のポリエチレンイミンである。
反応性ポリマーとしては、アミノ基と反応性を有する反応性官能基と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基からなる群から選ばれる炭化水素基とを有するポリマーである。
反応性ポリマーには、反応性官能基が2個以上含まれることが好ましい。これによって、着色樹脂粒子の表面において、アミン化合物の複数の反応基点に、反応性ポリマーが複数個所で結合して、反応性ポリマー成分によって着色樹脂粒子を好ましく被覆することができる。
反応性官能基としては、グリシジル基、オキセタン基、イソシアネート基、カルボキシ基、β−ジケトン基、β−ケト酸エステル基、無水マレイン酸由来の基を挙げることができる。これらは、反応性ポリマーの1分子中に1種、または2種以上を組み合わせて含まれてもよい。
反応性ポリマーの炭化水素基は、着色樹脂粒子の表層に形成されて、分散体中で非水系溶剤に配向するように非水系溶剤に対して溶剤親和性を示すものが好ましい。
炭素数12以上の直鎖アルキル基としては、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコサニル基、ヘンイコサニル基、ドコサニル基等を挙げることができる。
炭素数8以上の分岐鎖アルキル基としては、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、イソステアリル基、tert−オクチル基等を挙げることができる。
炭素数7以上の芳香環含有基としては、ベンジル基、フェニルエチル基等を挙げることができる。
上記した炭化水素基は、反応性ポリマーの1分子中に1種、または2種以上を組み合わせて含まれてもよい。
また、反応性ポリマーは、溶剤親和性の観点から、上記した炭化水素基を2個以上含むことが好ましい。
反応性ポリマーとしては、上記した炭化水素基を有するビニルモノマーと、反応性官能基を有するビニルモノマーとの共重合体であることが好ましい。
好ましい一例として、上記した反応性官能基及び炭化水素基を有する反応性(メタ)アクリルブロックポリマーを用いることができる。ここで、「(メタ)アクリルブロックポリマー」は、メタクリルブロックポリマー及びアクリルブロックポリマーを意味するものであり、メタクリル単位、アクリル単位を単独で含むものの他、メタクリル単位及びアクリル単位をともに含む共重合体をも含む。
反応性(メタ)アクリルブロックポリマーの好ましい一例としては、上記した炭化水素基を有する単位を含む第1ブロックと、反応性官能基を有する単位を含む第2ブロックとを有するブロック共重合体である。
これによって、炭化水素基部分が溶剤親和性を示し、反応性官能基部分がアミン化合物と結合して着色樹脂粒子に親和性を示すため、着色樹脂粒子の分散安定性を高めることができる。また、油中油型エマルション作製時の乳化安定性を高めることもできる。ブロックポリマーであるため、炭化水素基部分が局在化して、炭化水素基部分が溶剤側に配向しやすくなり、溶剤親和性をより高めることができる。
炭化水素基としては、上記した炭化水素基を、第1ブロックに1種、または2種以上を組み合わせて含まれてもよい。
反応性官能基としては、上記した反応性官能基を、第2ブロックに1種、または2種以上を組み合わせて含まれてもよい
第1ブロックと第2ブロックとのモル比としては、20:80〜90:10であることが好ましく、より好ましくは30:70〜70:30である。
第1ブロックの全単位に対し炭化水素基を有する単位は50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは55モル%以上であり、さらに好ましくは60モル%以上である。第1ブロックは溶剤親和性を高めるために、炭化水素基を有する単位によって主に構成されることが好ましい。
第1ブロックの全単位に対し反応性官能基を有する単位は10モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下であり、さらに好ましくは1モル%以下であり、実質的に含まれないことがより好ましい。これによって、第1ブロックの炭化水素基部分を長い構成として溶剤親和性を高めることができる。
第2ブロックの全単位に対し反応性官能基を有する単位Bは10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上である。これによって、反応性官能基部分によってアミン化合物との結合基点を増やして、着色樹脂粒子との親和性を高めることができる。
一方、第2ブロックの全単位に対し反応性官能基を有する単位は好ましくは95モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは70モル%以下である。これによって、反応性(メタ)アクリルブロックポリマーの着色樹脂粒子への配向性を適正にして、着色樹脂粒子の適当な分散安定性を得ることができる。
第2ブロックの全単位に対し炭化水素基を有する単位は10〜90モル%であることが好ましく、より好ましくは20〜80モル%であり、さらに好ましくは30〜70モル%である。第2ブロックには炭化水素基を有する単位が含まれなくてもよい。
第1及び第2ブロックには、それぞれの単位が有する炭化水素基及び反応性官能基以外のその他の基が含まれてもよい。その他の基としては、炭素数12未満のアルキル基、炭素数8未満の分岐鎖アルキル基、フェニル基等を挙げることができる。
反応性(メタ)アクリルブロックポリマーの好ましい一例としては、炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)(以下、「モノマー(A)」ともいう。)を含むモノマー混合物aのブロックAと、反応性官能基を有する反応性(メタ)アクリレート(B)(以下、「モノマー(B)」ともいう。)を含むモノマー混合物bのブロックBとのブロック共重合体(以下、このブロック共重合体を単に「(メタ)アクリルブロックポリマー」ともいう。)である。
炭素数12以上の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)としては、例えば、ドデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等を例示できる。好ましくは、アルキル基の炭素数は12〜25である。
炭素数8以上の分岐鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)としては、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート等を例示できる。
炭素数7以上の芳香環含有基を有するアルキル(メタ)アクリレート(A)としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等を例示できる。
これらは、単独で、または複数種を組み合わせて用いてもよい。
反応性(メタ)アクリレート(B)における反応性官能基としては、グリシジル基、オキセタン基、イソシアネート基、カルボキシ基、β−ジケトン基、β−ケト酸エステル基、無水マレイン酸由来の基等を好ましく例示できる。
グリシジル基を有するモノマー(B)としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ビニル基を有するモノマー(B)としては、ビニル(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基を有するモノマー(B)としては、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−メチル−2−イソシアナトプロピル、メタクリル酸2−[(2−メチル−3−イソシアナトフェニル)カルバモイルオキシ]エチル、メタクリル酸2−[(1,3,3−トリメチル−5−イソシアナトシクロヘキシルメチル)カルバモイルオキシ]エチル等が挙げられる。
β−ジケントン基及び/またはβ−ケト酸エステル基を有するモノマー(B)としては、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;ヘキサジオン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらは、単独で、または複数種を組み合わせて用いてもよい。
モノマー(B)としては、無水マレイン酸を用いて、無水マレイン酸に由来する基を導入してもよい。
反応性(メタ)アクリレート(B)に代えて、または加えて、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;マレイン酸エステル及びその無水物等のビニルモノマーを用いることができる。
これによって、カルボキシ基や無水マレイン酸に由来する基をメタ(アクリル)ブロックポリマーに導入することができる。
モノマー混合物a及びbは、それぞれ、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記のモノマー(A)、(B)以外の、これらと共重合しうるモノマー(C)を含むことができる。
このモノマー(C)としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−オレフィン等が挙げられる。また、アルキル鎖長の炭素数が8未満のアルキル(メタ)アクリレート、たとえば2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等を使用することもできる。
これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
上記モノマー混合物aにおいて、炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(A)は30質量%以上含まれていることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが一層好ましい。モノマー混合物aは、炭化水素基を有する(メタ)アクリレート(A)を100質量%で含んでもよい。
モノマー混合物aにおいて、反応性(メタ)アクリレート(B)は、含まれないことが好ましく、例えば10質量%未満であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。
モノマー混合物aにおいて、モノマー(A)および(B)以外のモノマー(C)は、60質量%以下の量で含まれることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
上記モノマー混合物bにおいて、反応性(メタ)アクリレート(B)は10質量%以上含まれていることが好ましく、15〜50質量%含まれていることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。
また、モノマー混合物bには、用いる溶媒との親和性や分子量調節の観点から、モノマー(A)が含まれることが好ましい。モノマー混合物bにおいて、モノマー(A)は5〜80質量%含まれることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
モノマー混合物bにおいて、モノマー(A)および(B)以外のモノマー(C)としては、炭素数12未満のアルキル(メタ)アクリレートを好ましく含むことができ、この場合、60質量%以下の量で含まれることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
反応性(メタ)アクリルブロックポリマーの一例としては、モノマー(A)に基づく単位を主とするブロックAと、モノマー(B)に基づく単位を主とするブロックBとが、A−Bのように結合したA−Bブロック共重合体である。
また、ブロックポリマー型分散体としては、分散剤と溶剤間の溶解性や、顔料への吸着性の観点から、モノマー(A)に基づく単位を主とするブロックAと、モノマー(B)に基づく単位とともにモノマー(A)に基づく単位をともに有するブロックABとがA−ABのように結合したA−ABブロック共重合体であってもよく、モノマー(A)に基づく単位を主とするブロックAと、モノマー(B)に基づく単位を主とするブロックBとがA−B−Aのように結合したA−B−Aブロック共重合体であってもよい。ブロックの連結数はこれに限定されない。
非水系溶剤、特に非極性溶剤への溶解性の観点からもA−ABブロック共重合体またはA−B−Aブロック共重合体であることが好ましい。
反応性(メタ)アクリルブロックポリマーの合成方法の一例としては、まず、第1段階で、モノマー(A)を含むモノマー混合物a及びモノマー(B)を含むモノマー混合物bのうち一方を重合して一方のブロックを得て、第2段階で、この第1ブロックの存在下で、他方のモノマー混合物を重合して、一方のブロックの端部に他方のブロックがつながって重合した反応性(メタ)アクリルブロックポリマーを得ることができる。
第2段階では、精密重合の一種であるリビング重合法によって(メタ)アクリルブロックポリマーを重合することが好ましい。リビング重合方法としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシドラジカルを用いるリビングラジカル重合(NMP)、可逆的付加開裂型連鎖移動重合(RAFT重合)等のリビングラジカル重合を用いることが好ましい。
以下、第1段階としてモノマー(A)を含むモノマー混合物aを重合してブロックAを重合した後に、第2段階としてモノマー(B)を含むモノマー混合物bを添加してブロックAの末端部からブロックBを重合し、(メタ)アクリルブロックポリマーを合成する方法について説明する。なお、モノマーの種類により異なるが、ブロックBを先に重合してから、ブロックAを重合することも可能である。
まず、第1段階において、モノマー混合物aは、モノマー(A)とともに、本発明の効果を損なわない範囲で、モノマー(A)及びモノマー(B)以外の任意のモノマー(C)を含んでもよい。モノマー(C)としては、上記したものを用いることができる。好ましくは、モノマー(C)のうち炭素数12未満のアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
これらのモノマー混合物aは、公知のラジカル重合により重合することができる。反応系としては、溶液重合または分散重合で行うことが好ましい。必要に応じて加熱して重合反応を行うことで、重合反応を促進することができる。加熱温度としては、例えば40〜130℃内で、好ましくは80〜130℃内で適宜調整することができる。
重合開始剤としては、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等のアゾ化合物、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーブチルO、日本油脂株式会社製)等の過酸化物など、公知の熱重合開始剤を使用することができる。その他にも、活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する光重合型開始剤を用いることができる。
重合反応に際し、その他、通常使用される重合禁止剤、重合促進剤、分散剤等を反応系に添加してもよい。
本実施形態では、第2段階において、精密重合の一種であるリビング重合方法によって(メタ)アクリルブロックポリマーを重合することが好ましい。上記した例では、合成したブロックAとともに、モノマー(B)を含むモノマー混合物bをリビング重合することにより、ブロックポリマーを作製することができる。なお、ブロックBを先に重合してから、モノマー(A)を含むモノマー混合物aをリビング重合してもよい。
(メタ)アクリルブロックポリマーを得るため、本実施形態では、リビング重合方法のうちリビングラジカル重合を利用することが好ましい。リビングラジカル重合には、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシドラジカルを用いるリビングラジカル重合(NMP)、可逆的付加開裂型連鎖移動重合(RAFT重合)などが知られており、いずれの方法も使用可能であるがRAFT重合によって重合を行うことがより好ましい。
RAFT重合は、重合開始剤と可逆的付加開裂型連鎖移動剤(以下、RAFT剤と呼ぶ。)を用いることを特徴とし、ラジカル重合にリビング性を与えることのできる方法である。RAFT剤としては、ジチオエステルやジチオカルバメート、トリチオカルボナート、キサンタート等のチオカルボニルチオ化合物を用いることができる。市販品としては、例えば、4−シアノ−4−(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタノン酸(アルドリッチ社製「722995」)、2−シアノ−2−プロピルドデシルトリチオカルボナート(アルドリッチ社製「723037」)等を好ましく用いることができる。
反応性(メタ)アクリルブロックポリマーの分子量(重量平均分子量)は、特に限定されないが、インクジェットインクとして用いる場合には、インクの吐出性の観点から10000〜100000程度であることが好ましく、10000〜80000程度であることがより好ましい。さらに、分子量が20000〜50000程度で、優れた分散安定性を得ることができる。
反応性(メタ)アクリルブロックポリマーのうち、モノマー(A)を含むモノマー混合物aから重合されたブロックA部分の重量平均分子量は、5000〜40000程度であることが好ましく、8000〜30000程度であることがより好ましい。これによって、ブロックA部分の溶剤親和性をより適した範囲にすることができる。
反応性ポリマーとしては、上記した反応性(メタ)アクリルブロックポリマーの他、上記したモノマーA及びモノマーBの混合物を一括してランダム重合した反応性(メタ)アクリルランダムポリマーを用いることができる。この反応性(メタ)アクリルランダムポリマーには、上記したモノマーCが任意に含まれてもよい。反応性(メタ)アクリルランダムポリマーにおいて、モノマーAに由来する炭化水素基を有する単位、モノマーBに由来する反応性官能基に由来する単位、及びモノマーに由来する単位の割合は、上記した反応性(メタ)アクリルブロックポリマーと共通する。
反応生成物Aにおいて、アミン化合物と反応性ポリマーとの結合部は、以下のいずれかであることが好ましい。
−CH−CH(OH)−CH−X;
−CO−X;
−CO−NH−X;
−C(CH)=CH−CO−O−X。
上記構造式において、Nはアミン化合物由来の窒素原子であり、Xは反応性ポリマー由来の主鎖の任意の基である。
反応生成物Aでは、反応性ポリマー由来の主鎖の炭素鎖に、結合部を介してアミン化合物由来の側鎖が分岐し、かつ、反応性ポリマー由来の炭化水素基が分岐している。
Xは、反応性ポリマー由来の主鎖の炭素鎖を構成する炭素原子であってもよい。反応性ポリマーが(メタ)アクリルポリマーである場合は、Xは、(メタ)アクリルポリマーを構成する単位の「C−CO−O−」(Cは主鎖を構成する炭素原子)で表される酸素原子Oであってもよい。
1個の反応生成物Aのうち複数個所の結合部を介して、1個のアミン化合物の2個以上のアミノ基が結合していてもよい。
また、1個の反応生成物Aのうち複数個所の結合部を介して、2個以上のアミン化合物のそれぞれのアミノ基が結合していてもよい。
アミン化合物と、グリシジル基を有する反応性ポリマーが反応する場合では、アミン化合物のアミノ基の窒素原子と、反応性ポリマーのグリシジル基の炭素原子とが結合して、「N−CH−CH(OH)−CH−X」で表される結合部を形成する。
アミン化合物と、カルボキシ基を有する反応性ポリマーが反応する場合では、アミン化合物のアミノ基の窒素原子と、反応性ポリマーのカルボキシ基の炭素原子とが結合して、「N−CO−X」で表される結合部を形成する。
また、アミン化合物と、カルボン酸無水物由来の基を有する反応性ポリマーが反応する場合においても、「N−CO−X」で表される結合部を形成する。この場合、「−C−CO−OH」で表される残基が形成される。
アミン化合物と、イソシアネート基を有する反応性ポリマーが反応する場合では、アミン化合物のアミノ基の窒素原子と、反応性ポリマーのイソシアネート基の炭素原子とが結合して、「N−CO−NH−X」で表される結合部を形成する。
アミン化合物と、ジケトン基を有する反応性ポリマーが反応する場合では、アミン化合物のアミノ基の窒素原子と、反応性ポリマーのジケトン基の炭素原子とが結合して、N−C(CH)=CH−CO−O−X」で表される結合部を形成する。
炭化水素基及び窒素含有樹脂(樹脂A)は、炭素−炭素結合を主鎖とし、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する側鎖と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖と、を有する樹脂である。
側鎖の炭素−窒素結合(−N−C−)は、上記した反応生成物Aのアミン化合物に由来して導入することができる。
側鎖の炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}は、上記した反応生成物Aの反応性ポリマーの反応性官能基に由来して導入することができる。
側鎖の炭化水素基は、上記した反応生成物Aの反応性ポリマーの炭化水素基に由来して導入することができる。
なお、樹脂Aは、上記した反応生成物Aに限定されず、各種原料及び調整方法によって、上記した構造を有する樹脂を用いることができる。
炭化水素基及び窒素含有樹脂(樹脂A)は、下記式(1−1)で表される単位及び/又は下記式(1−2)で表わされる単位と、下記式(2)で表される単位とを有する樹脂であることが好ましい。
Figure 2017019965

式(1−1)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Nは炭素−窒素結合を有する単位を2個以上有するアミノ基であり、Aは−CH−CH(OH)−CH−、−CO−、−CO−NH−、または−C(CH)=CH−CO−O−である。
式(1−2)において、Rは、水素原子、カルボキシ基であり、Nは炭素−窒素結合を有する単位を2個以上有するアミノ基である。
式(1−1)及び式(1−2)において、それぞれ、Nは、上記したアミノ化合物に由来する基に共通し、Aは、上記した結合部と共通する。
Figure 2017019965

式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、または炭素数7以上の芳香環含有基である。Rは、反応性ポリマーの炭化水素基に由来する基と共通する。
樹脂Aは、着色樹脂粒子全体に対して、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。
また、樹脂Aは、着色樹脂粒子全体に対して、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
アミノ化合物と反応性ポリマーとは、質量比で30:70〜80:20で配合されることが好ましく、より好ましくは40:60〜70:30である。
アミノ化合物は、着色樹脂粒子全体に対し、5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜60質量%である。
反応性ポリマーは、着色樹脂粒子全体に対し、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。
樹脂Aの全体の分子量は、反応性ポリマーと、反応性ポリマーに結合したアミン化合物との分子量の総和になる。1個のアミン化合物に対して複数の反応性ポリマーが結合する場合もある。それゆえ、樹脂Aの重量平均分子量は、10,000〜100,000であることが好ましい。
着色樹脂粒子の平均粒子径は、10μm以下程度であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが一層好ましい。記録媒体の種類に応じて着色樹脂粒子の平均粒子径を適宜調整してもよく、例えば、コート紙を用いた印刷物の発色を向上するとともに定着性を向上させるためには、この平均粒子径は100〜250nm程度であることが好ましく、普通紙を用いた印刷物の裏抜け抑制の観点から、さらに120〜250nm程度であることが好ましい。
ここで、着色樹脂粒子の平均粒子径は、動的散乱方式による体積基準の平均粒子径であり、例えば、株式会社堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB−500」等を用いて測定することができる。以下同じである。
着色樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない限り、上記した以外のその他の添加剤が含まれてもよい。添加剤については、後述する着色樹脂粒子分散体の製造方法で説明する。
「非水系溶剤」
本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、上記した着色樹脂粒子とともに、非水系溶剤を含む。非水系溶剤については、後述の着色樹脂粒子分散体の製造方法で説明する通りである。非水系溶剤としては、着色樹脂粒子を分散可能である溶剤であることが好ましい。
本実施形態による着色樹脂分散体において、着色樹脂粒子は分散体全体に対し1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。これによって、インクとして呈色性にすぐれ、溶剤量を低減して乾燥性を高めることができる。
一方、着色樹脂粒子は分散体全体に対し50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。これによって、着色樹脂粒子の分散安定性、すなわち着色樹脂粒子分散体の貯蔵安定性を高めることができる。
(着色樹脂粒子分散体の製造方法)
以下、本実施形態による着色樹脂粒子分散体の製造方法の一例について説明する。なお、本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、以下の製造方法で製造されたものに限定されない。
着色樹脂粒子分散体の調整方法は、化学的方法、物理化学的方法に大別される。化学的手法としては、界面重縮合法、界面反応法(in situ重合法)、液中硬化皮膜法(オリフィス法)などが挙げられる。物理化学的手法としては、液中乾燥法(水中乾燥法、油中乾燥法)、コアセルベーション法、融解分散冷却法などが挙げられる。
本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、例えば、上記の物理化学的方法を用いて調整が可能であり、特に、液中乾燥法を好ましく用いることができ、油中油型エマルションの油中乾燥法を特に好ましく用いることができる。
油中油型エマルションの油中乾燥法を用いることで、上記記載の材料を用いて、平均粒子径が小さくかつ、粒子径分布が狭い着色樹脂粒子を調整することが可能であり、また、粘度が低い着色樹脂粒子分散体を調整することが可能である。これによって、特に、インクジェット吐出に適するインクを得ることができ、更に、耐摩耗性に優れるインクジェットインクを得ることできる。
油中油型エマルションの油中乾燥法を用いた着色樹脂粒子分散体は、反応性ポリマー、非水系溶剤(以下、連続相の非水系溶剤を溶剤Aと称することがある。)を少なくとも含む相を連続相とし、色材、固体樹脂、アミン化合物及び非水系溶剤(以下、分散相の非水系溶剤を溶剤Bと称することがある。)を少なくとも含む相を分散相とし、この連続相に分散相を分散させて油中油(O/O)型エマルションを作製し、これから分散相のうち溶剤Bを除去して得ることができる。
油中油型エマルション中では、分散相成分で構成されるエマルション液滴の周りに反応性ポリマーが吸着している。油中油型エマルションの状態、または、溶剤Bを除去する過程で、分散相のアミン化合物と、連続相の反応性ポリマーとが反応する。結果として、着色樹脂粒子の表層に、アミン化合物と反応性ポリマーとの反応生成物Aを得ることができる。
また、溶剤Bを除去したのち、着色樹脂粒子分散体を40℃〜150℃で1時間〜12時間加熱し、アミン化合物と反応性ポリマーの反応を進行させることができる。なお、温度や時間等の条件は、アミン化合物及び反応性ポリマーの種類や配合比等にあわせて適宜設定することができる。
油中油型エマルションを安定して作製するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して溶解度が低いことが好ましい。また、溶剤Bを除去するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して沸点が低いことが好ましい。
油中油型エマルションを安定して作製するために、反応性ポリマーは、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。また、着色樹脂粒子の形状を安定させるために、色材、固体樹脂、及びアミン合物はそれぞれ溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことが好ましい。
「連続相」
連続相としては、溶剤Aと反応性ポリマーとを含む。
溶剤Aとしては、反応性ポリマーと後述する分散相成分との関係性を満たすように、各種非水系溶剤から適宜選択して用いることができる。
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れも使用できる。これらは、単独で使用してもよく、組み合わせて使用することもできる。なお、本発明において、非水系溶剤としては、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができ、市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN−10、カクタスノルマルパラフィンN−11、カクタスノルマルパラフィンN−12、カクタスノルマルパラフィンN−13、カクタスノルマルパラフィンN−14、カクタスノルマルパラフィンN−15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがいっそう好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。
例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル等の1分子中の炭素数が13以上、好ましくは16〜30の脂肪酸エステル系溶剤;
イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12〜20の高級アルコール系溶剤;
ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14〜20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さない非水系溶剤も含まれる。
これらの非水系溶剤は、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、使用する非水系溶剤と単一相を形成できる範囲で他の有機溶剤を含ませてもよい。
溶剤Aは、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が14〜18MPa/cmであることが好ましい。また、溶剤Aは、分散項δdが12〜20、極性項δpが0〜4、水素結合項δhが0〜4であることが好ましい。
溶剤Aの溶解性パラメーターが上記範囲であるとともに、着色樹脂粒子の固体樹脂の溶解性パラメーターが上記範囲であることで、着色樹脂粒子の溶媒Aに対する分散安定性を向上することができる。また、着色樹脂粒子分散体を用いて印刷する際に、用紙上で着色樹脂粒子と非水系溶剤の分離をより促進することができ、着色樹脂粒子の用紙への定着性をより高めて、耐摩耗性をより向上することができる。このような定着性の効果は、コート紙等の難浸透紙に印刷した際により発揮することができる。
固体樹脂と溶剤Aとの組み合わせとしては、下記ΔHSP値の範囲が14〜25であることが好ましい。
ΔHSP=(δd固体樹脂−δd溶剤A+(δp固体樹脂−δp溶剤A+(δh固体樹脂−δh溶剤A
ΔHSPを上記範囲とすることで、着色樹脂粒子の溶剤Aに対する分散安定性をより向上することができるとともに、用紙上で着色樹脂粒子と非水系溶剤の分離をより促進し、用紙への定着性をより向上することができる。
溶剤Aの50%留出点としては、400℃以下であることが好ましく、より好ましくは300℃以下である。一方、溶剤Aの50%留出点の下限値は、溶剤Aの揮発を防止して着色樹脂粒子分散体の安定性を保つために、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
反応性ポリマーの詳細については、上記した通りである。
反応性ポリマーとしては、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。
好ましくは、反応性ポリマーは、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であり、より好ましくは0.5g/100g以下である。また、好ましくは、反応性ポリマー剤は、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以上であり、より好ましくは5g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Aに反応性ポリマーが実質的に全て溶解し、溶剤Bに反応性ポリマーが実質的に溶解しないように、反応性ポリマーが選択される。
連続相中の反応性ポリマーは、連続相全体に対し、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上である。
連続相中の反応性ポリマーは、連続相全体に対し、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
溶剤Bを除去する過程で、反応性ポリマーは、分散相中のアミン化合物と反応して、反応生成物Aを形成する。
溶剤Bの除去後、反応生成物Aのうち反応性ポリマー分の含有量としては、着色樹脂粒子分散体全体に対し、1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜10質量%以上である。
上記配合割合であることで、着色樹脂粒子をより小粒子径化及び分散安定化することができる。反応性ポリマーが過剰に配合されると、分散体の粘度上昇や、定着性の低下を招く場合がある。
連続相には、油中油型エマルションを安定して形成するために、乳化剤をさらに添加してもよい。乳化剤としては、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。
連続相には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、表面張力調整剤、消泡剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
「分散相」
分散相としては、溶剤Bと色材と固体樹脂とアミン化合物とを含む。
溶剤Bは、上記した溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であり、溶剤Aよりも沸点が低いものであることが好ましい。
溶剤Bとしては、好ましくは極性有機溶剤であり、より好ましくは低級アルコール系溶剤である。低級アルコール系溶剤としては、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール等を挙げることができる。さらに好ましくは、炭素数4以下の低級アルコール系溶剤である。
溶剤Bのその他の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を挙げることができ、さらに、上記した溶剤A、塩基性分散剤及び樹脂との関係性を満たすものを適宜選択して用いることができる。
これらは単独で、または複数種を組み合わせて使用することができる。
溶剤Bの溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100gであることが好ましく、より好ましくは、23℃で1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下であり、一層好ましくは、実質的に溶解しないことである。
溶剤Bと溶剤Aとの沸点の差は、10℃以上であることが好ましく、より好ましくは20℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上である。この場合、石油系炭化水素溶剤等の混合溶剤の場合、50%留出点を沸点とする。また、溶剤Bの沸点は、100℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以下である。一方、溶剤Bの沸点の下限値は、溶剤Bが−20〜90℃の範囲で液状であれば特に制限されない。
溶剤Bは、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が18〜30MPa/cmであることが好ましく、より好ましくは20〜30MPa/cmである。また、溶剤Bは、分散項δdが14〜17、極性項δpが5〜15、水素結合項δhが5〜25であることが好ましく、より好ましくは、分散項δdが14〜17、極性項δpが5〜15、水素結合項δhが15〜25である。
溶剤Bの溶解性パラメーターが上記範囲であることで、溶剤Aに対して溶解性が低く、かつ、着色樹脂粒子及び固体樹脂をそれぞれ溶解させる能力を有することができる。着色樹脂粒子及び固体樹脂の溶解性パラメーターとしては、上記範囲のものであれば、溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対して不溶性で分散安定性を得ることができる。
また、溶剤Aが炭化水素系溶剤であり、溶剤Bが炭素数4以下のアルコール系溶剤であることが好ましい。炭化水素系溶剤の好ましい例としては、ナフテン、パラフィン、イソパラフィン等である。炭素数4以下のアルコール系溶剤の好ましい例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等であり、より好ましくはメタノールである。
色材としては、染料及び顔料のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。詳細については、上記した通りである。
色材は、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Aに色材が実質的に溶解しないように、色材が選択される。
好ましくは、色材のうち染料は、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことで、分散相中で溶剤Bに染料とともに樹脂が溶解して着色樹脂粒子分散体を安定して提供することができる。
ここで、染料は、溶剤Bに対する溶解度が23℃で0.5g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに染料が実質的に全て溶解するように、染料が選択される。
分散相中の色材は、染料及び顔料の総量として、分散相全体に対し、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、一層好ましくは2〜20質量%である。これによって、溶剤Bへの溶解性または分散性を安定にすることができる。
溶剤Bの除去後、色材の含有量としては、染料及び顔料の総量として、着色樹脂粒子分散体全体に対し、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、一層好ましくは2〜20質量%である。これによって、着色樹脂粒子の呈色を適正にして、形状を安定化することができる。
色材に顔料を用いる場合は、分散相中、すなわち溶剤B中で顔料を安定して分散させるために、顔料分散剤を分散相に含ませてもよい。
顔料分散剤としては、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤及びノニオン性分散剤のいずれを用いてもよく、エマルションのその他成分に応じて適宜選択すればよい。また、顔料分散剤は、また、高分子量化合物及び低分子量化合物(界面活性剤)のいずれを用いてもよい。
固体樹脂としては、室温(23℃)で固体状の樹脂であることが好ましい。詳細については、上記した通りである。
この固体樹脂は、油中油型エマルションによって着色樹脂粒子を製造する場合は、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いものであることが好ましい。
固体樹脂の溶剤Bに対する溶解度は23℃で10g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは20g/100g以上である。また、固体樹脂の溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、固体樹脂は、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに実質的に全て溶解し、溶剤Aに実質的に溶解しないものである。
分散相全量に対する固体樹脂の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、一層好ましくは2〜20質量%である。これによって、溶剤Bへの固体樹脂の溶解性を適正にして、着色樹脂粒子の成分をより均一にすることができる。
溶剤B除去後の着色樹脂粒子分散体全量に対する固体樹脂の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。これによって、着色樹脂粒子の呈色を適正にして、形状を安定化することができる。
固体樹脂と色材の質量比は、(固体樹脂の質量)/(色材の質量)≧0.5であることが好ましい。この範囲で、連続相と分散相とを混合及び攪拌したときに、乳化安定性に優れた油中油型エマルションを提供することができる。
アミン化合物の詳細については、上記した通りである。
アミン化合物は、特に制限されないが、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことが好ましい。アミン化合物の溶剤Bに対する溶解度は23℃で1g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは2g/100g以上である。また、アミン化合物の溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、アミン化合物は、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに実質的に全て溶解し、溶剤Aに実質的に溶解しないものである。
分散相全量に対するアミン化合物の含有量は、0.1〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。これによって、エマルションをより安定化することができる。
溶剤Bを除去する過程で、アミン化合物は、連続相中の反応性ポリマーと反応して、反応生成物Aを形成する。
溶剤Bの除去後、反応生成物Aのうちアミン化合物の含有量としては、着色樹脂粒子分散体全体に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。
溶剤Bの除去後、反応生成物Aのうちアミン化合物分の含有量としては、着色樹脂粒子分散体全体に対し、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
上記した配合割合であることで、着色樹脂粒子分散体を安定化することができる。
分散相には、任意成分として可塑剤が含まれてもよい。これによって、着色樹脂粒子は可塑剤が含まれて形成される。可塑剤としては、液体状の有機化合物を好ましく用いることができる。可塑剤の融点としては、23℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以下である。
これによって、上記した固体樹脂及び各成分を溶剤Bに混合する際に、溶解性をより高めることができる。これによって、油中油型エマルションにおいて、連続相中で分散相をより安定して分散させることができる。結果として、樹脂粒子の成分をより均一にすることができ、印刷物の発色性の効果をより高めることができる。
可塑剤としては、アルコール類、エステル類、エーテル類、ポリエステル類、ポリエーテル類、(メタ)アクリルポリマー類等を用いることができる。
分散相には、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、架橋剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
「着色樹脂粒子分散体の調整方法」
着色樹脂粒子分散体の調整方法としては、特に限定されず、上記した連続相に上記した分散相を分散させて油中油型エマルションを作製し、この油中油型エマルションから、分散相中の非水系溶剤Bを除去することで調整することができる。
例えば、連続相及び分散相は、上記した各成分を混合して調整することができる。その後、連続相に分散相を滴下しながら混合及び攪拌することで、連続相に分散相を分散させることができる。このとき、混合及び攪拌は、超音波ホモジナイザーを用いて行うことができる。得られた油中油型エマルションから減圧及び/または加熱により非水系溶剤Bを除去することができる。このとき、減圧及び/または加熱の程度は、非水系溶剤Bが除去されるが、非水系溶剤Aは残るように調整する。
色材に顔料を用いる場合は、分散相中での顔料の分散方法としては、ボールミル、ビーズミル、超音波、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の一般的な湿式分散機を用いることができる。
また、油中油型エマルションの連続相と分散相との質量比は、40:60〜95:5の範囲で調整することができる。非水系溶剤Bの添加量は、油中油型エマルション全体に対し、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。また、非水系溶剤Bの除去量は、配合された非水系溶剤B全量であることが望ましいが、配合された非水系溶剤B全量に対し90質量%以上であればよい。
着色樹脂粒子分散体において、着色樹脂粒子の平均粒子径は、上記した通りであることが好ましい。
着色樹脂粒子の平均粒子径は、連続相に配合される反応性ポリマーの量、または、分散相に配合される不揮発分の量等を調整することで制御することができる。
上記した着色樹脂粒子の製造方法の例では、連続相に反応性ポリマーを添加し、分散相にアミン化合物を添加して、着色樹脂粒子の表層に反応生成物Aが形成される方法を説明している。
別の例では、分散相に色材、固体樹脂及び溶剤Bに加え、反応性ポリマーとアミン化合物とをともに添加し、連続相に溶剤Aを用いて、油中油型エマルションを形成し、その後溶剤Bを除去して、着色樹脂粒子分散体を調整してもよい。
この例では、着色樹脂粒子の中心部から表層部にかけて全体的に反応生成物Aが形成されるようになる。反応生成物Aは部分的に着色樹脂粒子の表層に形成されるため、上記と同様に、耐摩耗性、画像濃度及び分散安定性の効果を得ることができる。
なお、本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、反応性ポリマーとアミン化合物との反応によって、樹脂Aである反応生成物Aが配合されるものに限定されない。例えば、分散相として色材及び固体樹脂とともに上記した樹脂Aを溶剤Bに加え、連続相として溶剤Aを用いて、油中油型エマルションを形成し、その後溶剤Bを除去して、着色樹脂粒子分散体を調整してもよい。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態による着色樹脂粒子分散体は、色材、及び炭化水素基及び窒素含有樹脂を含む着色樹脂粒子と、非水系溶剤とを含み、炭化水素基及び窒素含有樹脂は、炭素−炭素結合を主鎖とし、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖を有する炭化水素基含有樹脂と、アミノ基及び/またはアミド結合を有する単位を含む窒素含有固体樹脂との共重合体であって、炭化水素基含有樹脂と、窒素含有固体樹脂との結合部が、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する、ことを特徴とする。
以下、第2の実施形態における炭化水素基及び窒素含有樹脂を樹脂Bと称することがある。
本実施形態によれば、耐摩耗性に優れる着色樹脂粒子を提供することができる。
特に、色材の種類によらずに、優れた耐摩耗性を得ることができる。
また、本実施形態によれば、画像濃度が高く、小粒径で、分散安定性が良好な着色樹脂粒子を提供することができる。
本実施形態では、窒素含有固体樹脂を、着色樹脂粒子の粒子形状を形成する樹脂成分とともに、炭化水素基含有樹脂を着色樹脂粒子に結合させる結合部を構成する窒素含有成分として用いている。
(着色樹脂粒子)
本実施形態による着色樹脂粒子としては、色材及び炭化水素基及び窒素含有樹脂(樹脂B)を含む。
この着色樹脂粒子は、色材と樹脂Bとが均一に混合されて、粒子形状となっていることが好ましい。
「色材」
着色樹脂粒子に含まれる色材としては、顔料及び染料のいずれであってもよく、これらの組み合わせて用いてもよい。
色材としては、上記した第1の実施形態の例と同様のものを用いることができ、特に限定されない。
色材は、着色樹脂粒子全体に対して、呈色性及び成分の均一性の観点から、0.1〜50質量%で配合されることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%である。
「炭化水素基及び窒素含有樹脂」
炭化水素基及び窒素含有樹脂(樹脂B)としては、窒素含有固体樹脂と反応性ポリマーとの反応生成物を用いることができる。反応性ポリマーは、アミノ基と反応性を有する反応性官能基と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基とを有するポリマーである。
以下、第2の実施形態における反応生成物を反応生成物Bと称することがある。
着色樹脂粒子は、窒素含有固体樹脂由来の樹脂成分によって粒子形状を維持することができる。
着色樹脂粒子が、窒素含有固体樹脂由来の窒素原子と、炭化水素基含有樹脂由来の炭化水素基とを有することで、窒素原子が分散体中で着色樹脂粒子に配向するとともに、炭化水素基が分散体中で非水系溶剤に配向して、着色樹脂粒子の分散安定性に寄与することができる。
また、窒素含有固体樹脂が窒素原子を含むことで、色材と窒素含有固体樹脂とをより均一に配合することができ、耐摩耗性を高めることができる。
より好ましい形態では、この樹脂Bは、着色樹脂粒子の表層に形成される。
これによって、窒素原子及び炭化水素基がそれぞれ着色樹脂粒子及び非水系溶剤に配向しやすくなって、着色樹脂粒子の分散安定性をより高めることができる。
具体的には、樹脂Bとして反応生成物Bを用いる場合に、色材及び窒素含有固体樹脂を含む着色樹脂粒子の表面において、反応性ポリマーと窒素含有固体樹脂とが反応して、反応生成物Bが着色樹脂粒子の表層に形成されることが好ましい。
窒素含有固体樹脂としては、室温(23℃)で固体状の樹脂であることが好ましい。
窒素含有固体樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、粒子形状を安定化するために、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上である。窒素含有固体樹脂のガラス転移温度は、制限されないが、150℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以下である。
また、窒素含有固体樹脂の溶融温度(Tm)としては、粒子形状を安定化させるために、30℃以上であることが好ましく、より好ましくは、40℃以上である。窒素含有固体樹脂の溶融温度は、制限されないが、250℃以下であることが好ましく、より好ましくは200℃以下である。
窒素含有固体樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3000〜100000が好ましく、より好ましくは5000〜80000である。この範囲で、着色樹脂粒子の形状の安定性を高めることができる。また、着色樹脂粒子の製造工程において、窒素含有固体樹脂を含む原料を溶剤により均一に混合することができ、結果として成分が均一な着色樹脂粒子を提供することができる。
窒素含有固体樹脂としては、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が22〜27MPa/cmであることが好ましい。また、固体樹脂は、分散項δdが13〜20、極性項δpが5〜12、水素結合項δhが10〜20であることが好ましい。この範囲とすることで、着色樹脂粒子分散体としてのインクが用紙に塗布される際に、着色樹脂粒子と非水系溶剤を速やかに分離させ、耐摩耗性をより向上することができる。
窒素含有固体樹脂としては、例えば、メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド樹脂、メチル化メラミン樹脂等のアルキル化アミノ樹脂等、これらの樹脂の誘導体等を挙げることができる。窒素含有固体樹脂として、窒素非含有固体樹脂に窒素原子を導入した樹脂を用いてもよい。
窒素含有固体樹脂及び窒素非含有固体樹脂の詳細については、上記した第1の実施の形態で説明した通りである。
炭化水素基含有樹脂としては、反応生成物Bを生成するための反応性ポリマーを好ましく用いることができる。反応性ポリマーの詳細については、上記した第1の実施の形態で説明した通りである。
窒素含有固体樹脂と炭化水素基含有樹脂とは、混合して任意に加熱することで、重合することができる。炭化水素基含有樹脂に反応性ポリマーを用いることで、反応性ポリマーの反応性官能基が窒素含有固体樹脂の窒素原子と反応して、重合を起こすことができる。窒素含有固体樹脂の窒素原子は、例えばアミノ基やアミド結合として窒素含有固体樹脂に存在していることが好ましい。
樹脂Bにおいて、炭化水素基含有樹脂と窒素含有固体樹脂との結合部は、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有することが好ましい。
結合部の具体例を以下に示す。
−CH−CH(OH)−CH−X;
−CO−X;
−CO−NH−X;
−C(CH)=CH−CO−O−X。
上記構造式において、Nは窒素含有固体樹脂由来の窒素原子であり、Xは炭化水素基含有樹脂由来の主鎖の任意の基である。
樹脂Bでは、炭化水素基含有樹脂由来の主鎖の炭素鎖に、結合部を介して窒素含有固体樹脂由来の窒素原子を含む樹脂骨格が結合され、かつ、炭化水素基含有樹脂由来の炭化水素基が分岐している。
Xは、炭化水素基含有樹脂由来の主鎖の炭素鎖を構成する炭素原子であってもよい。炭化水素基含有樹脂が(メタ)アクリルポリマーである場合は、Xは、(メタ)アクリルポリマーを構成する単位の「C−CO−O−」(Cは主鎖を構成する炭素原子)で表される酸素原子Oであってもよい。
1個の樹脂Bのうち複数個所の結合部を介して、1個の窒素含有固体樹脂の2個以上の窒素原子が結合していてもよい。
また、1個の樹脂Bのうち複数個所の結合部を介して、2個以上の窒素含有固体樹脂のそれぞれの窒素原子が結合していてもよい。
結合部の詳細については、上記した第1の実施の形態と共通する。
炭化水素基及び窒素含有樹脂(樹脂B)は、炭素−炭素結合を主鎖とし、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖を有する炭化水素基含有樹脂と、
アミノ基及び/またはアミド結合を有する単位を含む窒素含有固体樹脂との共重合体であって、
炭化水素基含有樹脂と、窒素含有固体樹脂との結合部が、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する樹脂である。
結合部の炭素−窒素結合(−N−C−)は、窒素含有固体樹脂の窒素原子に由来して導入することができる。
結合部の炭化水素基は、炭化水素基含有樹脂の炭化水素基に由来して導入することができる。
結合部の炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}は、上記した反応生成物Bの反応性ポリマーの反応性官能基に由来して導入することができる。
なお、樹脂Bは、上記した反応生成物Bに限定されず、各種原料及び調整方法によって、上記した構造を有する樹脂を用いることができる。
炭化水素基及び窒素含有樹脂(樹脂B)は、下記式(1−3)で表される単位及び/又は下記式(1−4)で表わされる単位と、下記式(2)で表される単位とを有する樹脂であることが好ましい。
Figure 2017019965

式(1−3)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Nは上記した窒素含有固体樹脂の任意の窒素原子であり、Aは−CH−CH(OH)−CH−、−CO−、−CO−NH−、または−C(CH)=CH−CO−O−である。
式(1−4)において、Rは、水素原子、カルボキシ基であり、Nは上記した窒素含有固体樹脂の任意の窒素原子である。
式(1−3)及び式(1−4)において、それぞれ、Nは、上記した窒素含有固体樹脂に由来する窒素原子に共通し、Aは、上記した結合部と共通する。
Figure 2017019965

式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、または炭素数7以上の芳香環含有基である。Rは、反応性ポリマーの炭化水素基に由来する基と共通する。
樹脂Bは、着色樹脂粒子全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。
また、樹脂Bは、着色樹脂粒子全体に対して、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下である。
窒素含有固体樹脂と炭化水素基含有樹脂とは、質量比で90:10〜30:70で配合されることが好ましく、80:20〜40:60で配合されることがより好ましい。
窒素含有固体樹脂は、着色樹脂粒子全体に対し、10〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
炭化水素基含有樹脂は、着色樹脂粒子全体に対し、0.5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜20質量%である。
樹脂Bの全体の分子量は、炭化水素基含有樹脂と窒素含有固体樹脂との分子量の総和になる。1個の窒素含有固体樹脂に対して複数の炭化水素基含有樹脂が結合する場合もある。それゆえ、樹脂Bの重量平均分子量は、10000〜150000であることが好ましい。
着色樹脂粒子には、任意成分として、窒素含有固体樹脂以外のその他の固体樹脂が含まれてもよい。その他の固体樹脂としては、上記した第1の実施形態の固体樹脂のうちアミノ基及びアミド結合を含有しない固体樹脂と同様のものを用いることができる。
着色樹脂粒子がその他の固体樹脂を含むことで、窒素含有固体樹脂の柔軟性や耐水性を補完して、着色樹脂粒子の耐摩耗性及び粒子径を改善することができる。
この場合、窒素含有固体樹脂及びその他の固体樹脂を含めた固体樹脂の総量は、着色樹脂粒子全体に対し、10〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
着色樹脂粒子の平均粒子径は、10μm以下程度であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが一層好ましい。記録媒体の種類に応じて着色樹脂粒子の平均粒子径を適宜調整してもよく、例えば、コート紙を用いた印刷物の発色を向上するとともに定着性を向上させるためには、この平均粒子径は100〜250nm程度であることが好ましく、普通紙を用いた印刷物の裏抜け抑制の観点から、さらに140〜250nm以下であることが好ましい。
着色樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない限り、上記した以外のその他の添加剤が含まれてもよい。添加剤については、後述する着色樹脂粒子分散体の製造方法で説明する。
(着色樹脂粒子分散体)
本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、上記した着色樹脂粒子とともに、非水系溶剤を含む。非水系溶剤の詳細については、上記した第1の実施の形態で説明した通りである。
本実施形態による着色樹脂分散体において、着色樹脂粒子は分散体全体に対し1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。これによって、インクとして呈色性にすぐれ、溶剤量を低減して乾燥性を高めることができる。
一方、着色樹脂粒子は分散体全体に対し50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。これによって、着色樹脂粒子の分散安定性、すなわち着色樹脂粒子分散体の貯蔵安定性を高めることができる。
(着色樹脂粒子分散体の製造方法)
以下、本実施形態による着色樹脂粒子分散体の製造方法の一例について説明する。なお、本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、以下の製造方法で製造されたものに限定されない。
特に説明のない箇所については、上記した第1の実施形態の製造方法と共通する。
油中油型エマルションの油中乾燥法を用いた着色樹脂粒子分散体は、反応性ポリマー、非水系溶剤(以下、連続相の非水系溶剤を溶剤Aと称することがある。)を少なくとも含む相を連続相とし、色材、窒素含有固体樹脂、選択的に窒素非含有固体樹脂及び非水系溶剤(以下、分散相の非水系溶剤を溶剤Bと称することがある。)を少なくとも含む相を分散相とし、この連続相に分散相を分散させて油中油(O/O)型エマルションを作製し、これから分散相のうち溶剤Bを除去して得ることができる。
油中油型エマルション中では、分散相成分で構成されるエマルション液滴の周りに反応性ポリマーが吸着している。油中油型エマルションの状態、または、溶剤Bを除去する過程で、分散相の窒素含有固体樹脂と、連続相の反応性ポリマーとが反応する。結果として、着色樹脂粒子の表層に、窒素含有固体樹脂と反応性ポリマーとの反応生成物Bを得ることができる。
また、溶剤Bを除去したのち、着色樹脂粒子分散体を40℃〜150℃で1時間〜12時間加熱し、アミン化合物と反応性ポリマーの反応を進行させることができる。なお、温度や時間等の条件は、アミン化合物及び反応性ポリマーの種類や配合比等にあわせて適宜設定することができる。
油中油型エマルションを安定して作製するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して溶解度が低いことが好ましい。また、溶剤Bを除去するために、溶剤Bは、溶剤Aに対して沸点が低いことが好ましい。
油中油型エマルションを安定して作製するために、反応性ポリマーは、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。また、着色樹脂粒子の形状を安定させるために、色材、窒素含有固体樹脂及び任意成分の窒素非含有固体樹脂はそれぞれ溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いことが好ましい。
「連続相」
連続相としては、溶剤Aと反応性ポリマーとを含む。
溶剤Aとしては、上記した第1の実施形態の例と同様のものを用いることができる。
窒素含有固体樹脂と溶剤Aとの組み合わせとしては、下記ΔHSP値の範囲が14〜25であることが好ましい。
ΔHSP=(δd窒素含有固体樹脂−δd溶剤A+(δp窒素含有固体樹脂−δp溶剤A+(δh窒素含有固体樹脂−δh溶剤A
ΔHSPを上記範囲とすることで、着色樹脂粒子の溶媒Aに対する分散安定性をより向上することができるとともに、用紙上で着色樹脂粒子と非水系溶剤の分離をより促進し、用紙への定着性をより向上することができる。
反応性ポリマーとしては、溶剤Bよりも溶剤Aに対する溶解度が高いことが好ましい。
好ましくは、反応性ポリマーは、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g以下であり、より好ましくは0.5g/100g以下である。また、好ましくは、反応性ポリマーは、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g以上であり、より好ましくは5g/100g以上である。さらに好ましくは、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Aに反応性ポリマーが実質的に全て溶解し、溶剤Bに反応性ポリマーが実質的に溶解しないように、反応性ポリマーが選択される。
連続相中の反応性ポリマーは、連続相全体に対し、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上である。
連続相中の反応性ポリマーは、連続相全体に対し、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
溶剤Bを除去する過程で、反応性ポリマーは、分散相中の窒素含有固体樹脂と反応して、反応生成物Bを形成する。
溶剤Bの除去後、反応生成物Bのうち反応性ポリマー分の含有量としては、着色樹脂粒子分散体全体に対し、1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜10質量%以上である。
上記配合割合であることで、着色樹脂粒子をより小粒子径化及び分散安定化することができる。反応性ポリマーが過剰に配合されると、分散体の粘度上昇や、定着性の低下をまねくことがある。
連続相には、本発明の効果を損なわない範囲で、乳化剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、消泡剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
「分散相」
分散相としては、溶剤Bと色材と窒素含有固体樹脂とを含む。選択的に、分散相には窒素非含有固体樹脂を含ませることができる。
溶剤B及び色材は、上記した第1の実施形態と同様にして、分散相に添加することができる。色材が顔料である場合は、上記した第1の実施形態と同様にして、顔料分散剤を分散相にさらに添加してもよい。
窒素含有固体樹脂の詳細については、上記した通りである。
この窒素含有固体樹脂は、油中油型エマルションによって着色樹脂粒子を製造する場合は、溶剤Aよりも溶剤Bに対する溶解度が高いものであることが好ましい。
窒素含有固体樹脂の溶剤Bに対する溶解度は23℃で10g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは20g/100g以上である。また、窒素含有固体樹脂の溶剤Aに対する溶解度は23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは1g/100g以下であり、さらに好ましくは0.5g/100g以下である。一層好ましくは、窒素含有固体樹脂は、油中油型エマルションの配合割合において、溶剤Bに実質的に全て溶解し、溶剤Aに実質的に溶解しないものである。
分散相全量に対する窒素含有固体樹脂の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%であり、一層好ましくは2〜25質量%である。これによって、溶剤Bへの窒素含有固体樹脂の溶解性を適正にして、着色樹脂粒子の成分をより均一にすることができる。
溶剤Bを除去する過程で、窒素含有固体樹脂は、連続相中の反応性ポリマーと反応して、反応生成物Bを形成する。
溶剤B除去後、反応生成物Bのうち窒素含有固体樹脂の含有量は、着色樹脂粒子分散体全量に対し、0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。これによって、着色樹脂粒子の呈色を適正にして、形状を安定化することができる。
分散相には、窒素含有固体樹脂以外のその他の固体樹脂を含ませることができる。
その他の固体樹脂が分散相に含まれる場合、窒素含有固体樹脂を含めた固体樹脂の含有量の総量は、0.1〜50質量%であることが好ましい。
固体樹脂と色材の質量比は、(固体樹脂の質量)/(色材の質量)≧0.5であることが好ましい。この範囲で、連続相と分散相とを混合及び攪拌したときに、乳化安定性に優れた油中油型エマルションを提供することができる。
ここで、固体樹脂の質量は、窒素含有固体樹脂と選択的に添加される窒素非含有固体樹脂との総量である。
分散相には、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、架橋剤、可塑剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
「分散体の調整方法」
着色樹脂粒子分散体の調整方法としては、特に限定されず、上記した連続相に上記した分散相を分散させて油中油型エマルションを作製し、この油中油型エマルションから、分散相中の非水系溶剤Bを除去することで調整することができる。
詳細については、上記した第1の実施形態と共通する。
上記した着色樹脂粒子の製造方法の例では、連続相に反応性ポリマーを添加し、分散相に窒素含有固体樹脂を添加して、着色樹脂粒子の表層に反応生成物Bが形成される方法を説明している。
別の例では、分散相に色材及び溶剤Bに加え、反応性ポリマーと窒素含有固体樹脂とをともに添加し、連続相に溶剤Aを用いて、油中油型エマルションを形成し、その後溶剤Bを除去して、着色樹脂粒子分散体を調整してもよい。
この例では、着色樹脂粒子の中心部から表層部にかけて全体的に反応生成物Bが形成されるようになる。反応生成物Bは部分的に着色樹脂粒子の表層に形成されるため、上記と同様に、耐摩耗性、画像濃度及び分散安定性の効果を得ることができる。
なお、本実施形態による着色樹脂粒子分散体は、反応性ポリマーと窒素含有固体樹脂との反応によって、樹脂Bである反応生成物Bが配合されるものに限定されない。例えば、分散相として色材及び固体樹脂とともに上記した樹脂Bを溶剤Bに加え、連続相として溶剤Aを用いて、油中油型エマルションを形成し、その後溶剤Bを除去して、着色樹脂粒子分散体を調整してもよい。
<インク>
本実施形態によるインクとしては、上記した着色樹脂粒子分散体を含むインクである。このインクは、インクジェット印刷、オフセット印刷、孔版印刷、グラビア印刷、電子写真方式印刷等の印刷インク全般として用いることができる。特に、着色樹脂粒子分散体の貯蔵安定性が良好であるため、インクジェットインクとして用いることが好ましい。
インクジェットインクとして用いる場合、着色樹脂粒子分散体をそのまま用いることも可能であり、また、必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲内で、当該分野において通常用いられている各種添加剤を含ませることができる。例えば、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。また、着色樹脂粒子分散体を上記した非水系溶剤で希釈してもよい。
インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが、一層好ましい。
インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
本実施形態において、記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm〜数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
また、コート紙としては、インクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。塗工印刷用紙は、普通紙、インクジェット用コート紙と比較して紙表面の空隙が少ないため、インクの浸透が遅く、インク成分が紙表面に留まりやすい。そのため、本実施形態によるインクは、塗工印刷用紙に対する定着性を向上させることに適している。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。特に説明のない限り、「%」は「質量%」を示す。
<インク調整>
表1から表3に、溶剤B除去前の実施例及び比較例の油中油型エマルションの処方を示す。各表において、分散剤に揮発分が含まれる場合は、分散剤の全体量とともに不揮発分量をカッコ内に併せて示す(後述する表5から表7も同じである)。
各表に示す配合量で、溶剤A及び反応性ポリマー分散剤を混合し連続相を調整した。次に、各表に示す配合量で、溶剤Bに、色材、アミン化合物及び/または窒素含有固体樹脂、選択的に固体樹脂のポリビニルアルコールを混合し、ビーズミルにて分散し分散相を調整した。
連続相をマグネティックスターラーで攪拌した状態で、この連続相に、予め混合しておいた分散相を滴下しながら、氷冷下、超音波ホモジナイザー「Ultrasonic processor VC―750」(ソニックス社製)を10分間照射し、油中油(O/O)型エマルションを得た。
得られたエマルションを、エバポレーターで減圧しながら、分散相中の溶剤Bを除去して、着色樹脂粒子分散体を得た。溶剤Bの除去率は、ほぼ100質量%であった。この着色粒子分散体をそのままインクとして用いた。
表4から表6に、溶剤B除去後の実施例及び比較例のインクの処方を示す。インク全量に対する着色樹脂粒子分(色材、アミン化合物、窒素含有固体樹脂及びポリビニルアルコール、反応性ポリマー分散剤)を求め、各表に併せて示す。
Figure 2017019965
Figure 2017019965
Figure 2017019965
Figure 2017019965
Figure 2017019965
Figure 2017019965
各表に示す成分は、以下の通りである。
(連続相)
溶剤A:東燃ゼネラル石油株式会社製「アイソパーM」、イソパラフィン系溶剤。
反応性ポリマー分散剤1〜5:後述の調整方法によって作製した。不揮発分40%。
比較分散剤:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース11200」、不揮発分50%、非反応性ポリマー分散剤。
(分散相)
ポリエチレンイミンA:株式会社日本触媒製「エポミンSP−006」、分子量600。
ポリエチレンイミンB:株式会社日本触媒製「エポミンSP−012」、分子量1200。
ポリアリルアミン:ニットウボーメディカル株式会社製「PAA−03」、Mw:3000。
ポリビニルアミン:三菱レイヨン株式会社製「PVAM」。
部分尿素化ポリアリルアミン :ニットウボーメディカル株式会社製「PAA−N5000」、Mw:15000。
ポリアミド樹脂:株式会社T&Dtoka製「PA−100」。
メトキシメチル化ポリアミド樹脂:株式会社鉛市製「ファインレジンFR−301」、Mw:17000。
メチル化メラミン樹脂:株式会社三和ケミカルズ製「MW−30」、Mw:15000。
ポリビニルアルコール:株式会社クラレ製「クラレLMポリマーLM−20」Mw:14000、重合度200、鹸化度40。
青色染料:オリヱント化学工業株式会社製「 VarifastBlue1621」。
黒色染料:オリヱント化学工業株式会社製「Varifast Black3810」。
カーボンブラック:三菱化学株式会製「PBk−7」。
溶剤B:メタノール、和光純薬工業株式会社製。
上記Mwは、重量平均分子量を表す。
溶剤Bであるメタノールは、溶剤Aである「アイソパーM」に対する溶解度が23℃で0.4g/100gである。また、メタノールの沸点は64.7℃であり、「アイソパーM」の50%留出点はおよそ234℃である。
反応性ポリマーは、それぞれ、表2及び表3に示す連続相の配合割合で溶剤Aに溶解し、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
ソルスパース11200は、表2及び表3に示す連続相の配合割合で溶剤Aに溶解し、溶剤Bに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
色材は、それぞれ、表2及び表3に示す分散相の配合割合で溶剤Bに溶解ないし分散し、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
アミン化合物は、それぞれ、表2及び表3に示す分散相の配合割合で溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
各種固体樹脂は、それぞれ、表2及び表3に示す分散相の配合割合で溶剤Bに溶解し、溶剤Aに対する溶解度が23℃で3g/100g未満であり、水に対する溶解度が23℃で3g/100g未満であった。
各成分の溶解性パラメーター(HSP値)は以下の通りである。単位は「MPa/cm」である。また、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhを合わせて示す。
溶剤A「アイソパーM」:16(δd=16、δp=0、δh=0)。
溶剤B「メタノール」:29.6(δd=15.1、δp=12.3、δh=22.3)。
各種固体樹脂:22〜27(δd=12〜20、δp=5〜12、δh=10〜20)の範囲内であった。
<反応性ポリマー分散剤の製造方法>
以下、実施例1〜15で用いた反応性ポリマー分散剤1〜5の製造方法について説明する。
(工程(1−1):第1段階、メタクリルポリマー(PA)の作製)
表7に、反応性ポリマー分散剤調整用のメタクリルポリマーの配合及び物性を示す。
表7に示す第1段階の配合にしたがって、ナスフラスコに、ドデシルメタクリレート、2−シアノ−2−プロピルドデシルトリチオカルボナート(SIGMA ALDRICH社製)、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル、和光純薬工業株式会社製)、アイソパーM(東燃ゼネラル石油株式会社)を加えた。
十分脱気を行ったあと、不活性ガス(アルゴン)で置換し、90℃で24時間かけて加熱及び撹拌した。
得られたポリマーPA1の溶液の不揮発分は40質量%であった。反応後のポリマーPA1の重量平均分子量は17,000であった。
表7に示す配合にした以外は同様にして、ポリマーPA2を得た。
(工程(1−2):第2段階、メタクリルブロックポリマー(PA−(A)B)の作製)
表8に、メタクリルブロックポリマーの配合及び物性を示す。
ポリマーPA1の反応後、表8に示す第2段階の配合にしたがって、ポリマーPA1に、ドデシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、AIBN、アイソパーMを加えた。上記した第1段階と同様に脱気及び不活性ガス置換を行い、90℃で24時間かけて加熱及び撹拌した。
得られたポリマーPA−B1の溶液の不揮発分は40質量%であった。反応後のポリマーポリマーPA−B1の重量平均分子量は28,500であった。なお、表中のポリマーPA1の配合量は溶液全体の値で示す。
表8に示すモノマー構成において、A−ABはモノマーAを含むブロックとモノマーA及びモノマーBを含むブロックとの共重合体を表し、A−BはモノマーAを含むブロックとモノマーBを含むブロックとの共重合体を表す。
続いて、表8に示す配合とする以外は同様にして、PA−B2〜PA−B5を得た。
各表に示すモノマーの詳細は以下の通りである。
ドデシルメタクリレート:分子量254、アルキル基の炭素数12、和光純薬工業株式会社製。
ベヘニルメタクリレート:分子量380、アルキル基の炭素数22、日本油脂株式会社製「ブレンマーVMA−70」。
グリシジルメタクリレート:分子量142、和光純薬工業株式会社製。
アセトアセトキシエチルメタクリレート:分子量214、日本合成化学工業株式会社製。
2−イソシアナトエチルメタクリレート:分子量155、昭和電工株式会社製「カレンズMOI」。
無水マレイン酸:分子量98、三菱化学株式会社製。
得られたメタクリルブロックポリマーは、以下のように反応性ポリマー分散剤1〜5として用いた。
グリシジル基含有メタクリルブロックポリマー「PA−B1」:反応性ポリマー分散剤1。
ジケトン基含有メタクリルブロックポリマー「PA−B2」:反応性ポリマー分散剤2。
イソシアネート基含有メタクリルブロックポリマー「PA−B3」:反応性ポリマー分散剤3。
無水マレイン酸含有メタクリルブロックポリマー「PA−B4」:反応性ポリマー分散剤4。
グリシジル基含有メタクリルブロックポリマー「PA−B5」:反応性ポリマー分散剤5。
Figure 2017019965
Figure 2017019965
<評価>
上記した各インクを用いて、以下の各評価を行った。結果を各表に併せて示す。
(耐擦過性)
上記した各インクをライン式インクジェットプリンター「オルフィスX9050」(理想科学工業株式会社製)に装填し、上質コート紙「オーロラコート」(日本製紙株式会社製)に、ベタ画像を印刷して、印刷物を得た。印刷は、解像度300×300dpiにて、1ドット当りのインク量が42plの吐出条件で行った。なお、「オルフィスX9050」は、ライン型インクジェットヘッドを使用し、主走査方向(ノズルが並んでいる方向)に直交する副走査方向に用紙を搬送して印刷を行うシステムである。
印刷後24時間放置後に、印刷物のベタ画像部分を指で強く5回擦った時の状態を目視で観察し、耐擦過性を次の基準で評価した。
A:画像のはがれがほとんど確認されないレベル。
B:画像のはがれが確認されるが実際の使用上問題ないレベル。
C:画像のはがれが顕著であり実際の使用上問題あるレベル。
(耐マーカー性)
上記した耐擦過性の評価と同様にして印刷物を得た。印刷後24時間放置後、コート紙印字部の文字上を、コクヨ株式会社製ラインマーカーペン「PM−L103Y」で線を描き、その状態を目視で観察して、耐マーカー性を次の基準で評価した。
A:印刷画像部分が汚れない、または印刷画像部分の周りがわずかに汚れるレベル。
B:印刷画像部分の周りが汚れたが実際の使用上問題ないレベル。
C:印刷画像部分の周りが汚れ実際の使用上問題あるレベル。
(耐水性)
上記した耐擦過性の評価と同様にして印刷物を得た。印刷後24時間放置後、印刷物のベタ画像部分に0.5mlの水を垂らして、そのにじみ具合を目視で観察して、耐水性を次の基準で評価した。
A:印刷画像部分がにじまないレベル。
B:印刷画像部分が若干にじむが実際の使用上問題ないレベル。
C:印刷画像部分がにじみ実際の使用上問題あるレベル。
(発色性)
上記した耐擦過性の評価と同様にして印刷物を得た。印刷後24時間放置後の塗膜の濃度を目視にて観察して、発色性を次の基準で評価した。
A:画像が均一かつ、十分な濃度が得られている。
B:画像が均一であるが、濃度が薄い。
C:画像が不均一であり、かつ濃度が薄い。
(着色樹脂粒子の平均粒子径)
上記した各インクについて、インク中に分散している着色樹脂粒子の体積基準の平均粒子径を動的光散乱式粒径分布測定装置「LB―500」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定結果から、以下の基準で評価した。
A:平均粒子径が100nm以上250nm未満
B:平均粒子径が250nm以上500nm未満
C:平均粒子径が500nm以上
(貯蔵安定性)
まず、調整直後のインクの粘度を測定した。
次に、インクを10mlのスクリュ−バイアル瓶に入れて、70℃で1週間放置した。その後、インクをサンプリングし、目視評価及びインク粘度測定を行った。
粘度は、レオメーターARG2(ティ−・エイ・インスツルメント社製)を用いて、コーン角度2°、直径40mmで、室温(23℃)で測定した。
1週間放置前後のインク粘度から、次式により粘度変化率を求めた。
粘度変化率(%)=100−{放置後のインク粘度(mPa・s)/調製直後のインク粘度(mPa・s)}×100
1週間放置後のインクの目視評価及びインク粘度変化率の結果から、以下の基準で貯蔵安定性を評価した。
A:インクの分離、顔料の凝集沈降物は観察されず、インク粘度変化率が±5%以内である。
B:インクの分離、顔料の凝集沈降物は観察されず、インク粘度変化率が±5%以上10%未満である。
C:インクの分離、顔料の凝集沈降物が観察される、もしくはインク粘度変化率が±10%以上である。
上記各表に示す通り、各実施例のインクは、いずれの評価も良好であり、また、着色樹脂粒子の平均粒子径及び粘度も適正な範囲であった。
実施例1及び2では、反応性ポリマー分散剤1を用いて、着色樹脂粒子分のポリエチレンイミンの分子量が600〜1200であり、良好な結果が得られた。
実施例1、3、4を対比すると、色材の種類によらずに、良好な結果が得られることがわかる。
実施例5〜8を対比すると、反応性ポリマー分散剤がアミン化合物と反応性を有する基を有することで、良好な結果が得られることがわかる。
また、実施例8と対比すると、実施例1のように反応性ポリマー分散剤の配合量を適正にした方が、平均粒子径をより小さくすることができた。
実施例9〜11を対比すると、アミン化合物の種類によらずに、良好な結果が得られることがわかる。
実施例12〜15は、着色樹脂粒子分に窒素含有固体樹脂を用いたものであり、良好な結果が得られた。
全体を通して、着色樹脂粒子分に黒色染料を用いると発色性が低下し、また、着色樹脂粒子分にカーボンブラックを用いると平均粒子径が大きくなる傾向があった。しかし、各実施例のように、反応性ポリマー分散剤とアミン化合物または窒素含有固体樹脂とを用いることで、画像濃度及び平均粒子径のいずれも良好な結果であった。
比較例1及び2では、着色樹脂粒子分にアミン化合物及び窒素含有固体樹脂のいずれも含まれないものであり、反応性ポリマー分散剤1が含まれるものの、いずれの評価も十分ではなかった。
比較例3では、着色樹脂粒子分にアミン化合物が含まれるものの、比較分散剤にアミン化合物と反応性を有する基が含まれず、いずれの評価も十分でなかった。
比較例4では、固体樹脂を用いていないものであり、着色樹脂粒子を形成せず、耐擦過性、耐水性、耐マーカー性が低下した。

Claims (11)

  1. 色材、固体樹脂、及び炭化水素基及び窒素含有樹脂を含む着色樹脂粒子と、非水系溶剤とを含み、
    前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、
    炭素−炭素結合を主鎖とし、
    炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する側鎖と、
    炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖と、を有する、
    着色樹脂粒子分散体。
  2. 前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、前記着色樹脂粒子の表層に形成される、請求項1に記載の着色樹脂粒子分散体。
  3. 前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、下記式(1−2)で表される単位及び/又は下記式(1−2)で表わされる単位と、下記式(2)で表される単位とを有する、請求項1または2に記載の着色樹脂粒子分散体。
    Figure 2017019965

    式(1−1)において、R1は、水素原子またはメチル基であり、Nは炭素−窒素結合を有する単位を2個以上有するアミノ基であり、Aは−CH−CH(OH)−CH−、−CO−、−CO−NH−、または−C(CH)=CH−CO−O−である。
    式(1−2)において、Rは、水素原子、カルボキシ基であり、Nは炭素−窒素結合を有する単位を2個以上有するアミノ基である。
    Figure 2017019965

    式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、または炭素数7以上の芳香環含有基である。
  4. 前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、炭素−窒素結合を有する単位を2個以上有するアミン化合物と、反応性ポリマーとの反応生成物であって、
    前記反応性ポリマーは、アミノ基と反応性を有する反応性官能基と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基とを有するポリマーである、請求項1から3のいずれか1項に記載の着色樹脂粒子分散体。
  5. 前記アミン化合物は23℃で液体状である、請求項4に記載の着色樹脂粒子分散体。
  6. 色材、及び炭化水素基及び窒素含有樹脂を含む着色樹脂粒子と、非水系溶剤とを含み、
    前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、
    炭素−炭素結合を主鎖とし、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基を有する側鎖を有する炭化水素基含有樹脂と、
    アミノ基及び/またはアミド結合を有する単位を含む窒素含有固体樹脂との共重合体であって、
    前記炭化水素基含有樹脂と、前記窒素含有固体樹脂との結合部が、炭素−窒素結合(−N−C−)、及び炭素−酸素結合{−C(=O)−または−C(−OH)−}を有する、
    着色樹脂粒子分散体。
  7. 前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、前記着色樹脂粒子の表層に形成される、請求項6に記載の着色樹脂粒子分散体。
  8. 前記着色樹脂粒子が窒素非含有固体樹脂をさらに含む、請求項6または7に記載の着色樹脂粒子分散体。
  9. 前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、下記式(1−3)で表される単位及び/又は下記式(1−4)で表わされる単位と、下記式(2)で表される単位とを有する、請求項6から8のいずれか1項に記載の着色樹脂粒子分散体。
    Figure 2017019965

    式(1−1)において、R1は、水素原子またはメチル基であり、Nは前記窒素含有固体樹脂の任意の窒素原子であり、Aは−CH−CH(OH)−CH−、−CO−、−CO−NH−、または−C(CH)=CH−CO−O−である。
    式(1−2)において、Rは、水素原子、カルボキシ基であり、Nは前記窒素含有固体樹脂の任意の窒素原子である。
    Figure 2017019965

    式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、または炭素数7以上の芳香環含有基である。
  10. 前記炭化水素基及び窒素含有樹脂は、アミノ基及び/またはアミド結合を有する単位を含む窒素含有固体樹脂と、反応性ポリマーとの反応生成物であって、
    前記反応性ポリマーは、アミノ基及び/またはアミド結合と反応性を有する反応性官能基と、炭素数12以上の直鎖アルキル基、炭素数8以上の分岐鎖アルキル基、及び炭素数7以上の芳香環含有基のうち1種以上の炭化水素基とを有するポリマーである、請求項6から9のいずれか1項に記載の着色樹脂粒子分散体。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載の着色樹脂粒子分散体を含む、インクジェットインク。
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