JP2017019887A - 弾性材料およびその用途 - Google Patents

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Shuhei Yamamoto
修平 山本
尚吾 中野
Shogo Nakano
尚吾 中野
和樹 岡田
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和樹 岡田
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Keisuke Ando
圭祐 安藤
成哉 東野
Seiya Higashino
成哉 東野
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Abstract

【課題】変質が抑制された、可使時間が長い弾性材料を提供すること。
【解決手段】本発明の弾性材料は、母材中に酸化防止剤が分散した弾性材料であって、前記酸化防止剤は体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98が0.1μm以上150μm以下であり、かつ、前記酸化防止剤のVoronoi分割法により算出される前記母材に対する分配度が0.3以上0.75以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、弾性材料およびその用途に関する。
種々の分野において、弾性材料を構成する母材に酸化防止剤を配合することで、この弾性材料の変質を抑制したり、可使時間を延ばす試みがなされている。
たとえば、特許文献1には、シリコーンゴムの一部にtert−ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤を分散させる技術が開示されており、係る技術によれば、シリコーンゴムを含む医療器具を放射線滅菌した場合であっても、シリコーンゴムの硬化が抑制されるとされている。
また、特許文献2には、エチレンビニルアセテート共重合体樹脂(EVA樹脂)に、酸化防止剤、UV吸収剤及び光安定剤を溶融混練し、樹脂組成物を得、この樹脂組成物から太陽電池封止用シートを製造する方法が開示されている。
国際公開公報第2012/035844号パンフレット 特表2012−525489号公報
しかしながら、このような弾性材料の技術分野において、本発明者らが検討した結果、以下のような課題があることが分かってきた。
すなわち、母材に酸化防止剤を配合するにあたって、母材と酸化防止剤とは必ずしもその親和性が十分ではなく、母材に対して酸化防止剤の粒子等が偏在してしまう傾向があった。
この場合、酸化防止剤が偏在する領域においては、酸化防止作用が十分に発揮されるものの、酸化防止剤の希薄な領域においては、酸化防止剤作用が十分に発揮されないということが懸念される。
また、酸化防止剤が偏在する領域とそうでない領域とでは、弾性材料としての物性や挙動が異なるものとなってしまい、長時間使用した際に、この物性や挙動の違いに起因して亀裂が入ってしまうという懸念があった。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、変質が抑制され、可使時間が長い弾性材料を提供する。
また、本発明は係る課題を解決できる弾性材料の製造方法、また、弾性材料を用いた各種用途を提供する。
すなわち、本発明によれば、
母材中に酸化防止剤が分散した弾性材料であって、
前記酸化防止剤は体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98が0.1μm以上150μm以下であり、かつ、前記酸化防止剤のVoronoi分割法により算出される分配度が0.3以上0.75以下である、弾性材料が提供される。
また、本発明によれば、上記の弾性材料を成形してなるバルーンが提供される。
また、本発明によれば、上記のバルーンを備える医療器具が提供される。
また、本発明によれば、上記の弾性材料を成形してなるフィルムが提供される。
また、本発明によれば、
母材中に酸化防止剤が分散した弾性材料の製造方法であって、
前記母材および前記酸化防止剤を準備する工程と、
前記酸化防止剤の体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98を0.1μm以上150μm以下とし、かつ、Voronoi分割法により算出される分配度が0.3以上0.75以下となるように前記酸化防止剤を母材に混合する工程と、
を含む、弾性材料の製造方法が提供される。
本発明の弾性材料においては、母材中に分散される酸化防止剤の、体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98が特定の範囲に制御されており、かつ、酸化防止剤の母材に対する分配度についても特定の範囲に制御されている。
すなわち、従来存在する酸化防止剤を含む弾性材料に比して、より均一に酸化防止剤が分散されたものであり、これにより材料の変質を抑制し、可使時間を延ばすことができる。
本実施形態に係る医療器具(カテーテル)の例を示す断面図である。 実施例1において作製された弾性材料の表面に対して構造観察を行った画像である。 実施例1において作製された弾性材料の表面を撮影した画像に対して二値化処理をした画像である。
以下、本発明について、実施の形態に基づいて詳しく説明する。
[弾性材料]
本実施形態の弾性材料は、以下の特徴を備える。
母材中に酸化防止剤が分散した弾性材料であって、
前記酸化防止剤は体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98が0.1μm以上150μm以下であり、かつ、前記酸化防止剤のVoronoi分割法により算出される前記母材に対する分配度が0.3以上0.75以下である、弾性材料。
(母材)
本実施形態の弾性材料は、弾性を有する母材を有する。
この母材としては、たとえばエラストマーを含む。このエラストマーの例としては、シリコーンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体(EVA)、プロピレン−ブテン共重合体、エチレンプロピレンジエン三元共重合ゴム、ブタジエンゴム、エチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ポリエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン・プロピレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、軟質アクリル樹脂等の中からなる群より選ばれる1種以上を挙げることができる。
これらの中でも、汎用性の高さを鑑み、本実施形態においては、母材として、シリコーンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体(EVA)から選択される1又は2以上の材料を含むことが好ましい。
なお、本実施形態の弾性材料は、この母材を、弾性材料全体に対して、90質量%以上含むことが好ましく、93質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましい。このように母材の含有量を調整することで適度な弾性を発現することができる。
また、本実施形態の弾性材料は、この母材を、弾性材料全体に対して、99.9質量%以下含むことが好ましく、99.5質量%以下含むことがより好ましく、98質量%以下含むことがさらに好ましい。
(酸化防止剤)
本実施形態に用いられる酸化防止剤としては、その種類は特に限定されないが、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤の例としては、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−tert−アミル−6−(1−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物;2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−tert−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(メチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘプチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、4,4'−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジアルキル(C12〜C16)ホスファイト)、4,4'−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C16)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。
なお、本実施形態において、酸化防止剤はその融点が30℃以上であることが好ましく、35℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。このような融点の酸化防止剤を用いることにより、弾性材料を各種部材に適用した際に、べたつきをなくすことができる。
また、酸化防止剤は、その融点が250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。このような融点の酸化防止剤を用いることで、母材に対する分散性が一段と向上する。
本実施形態において、この酸化防止剤はその粒径が制御されているものである。具体的には、酸化防止剤の体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98は0.1μm以上であり、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。
酸化防止剤の粒径をこのように制御することで、酸化防止剤固有の特性を母材に対して発揮することができる。
また、酸化防止剤の体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98は150μm以下であり、好ましくは120μm以下であり、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下、よりいっそう好ましくは60μm以下である。
酸化防止剤の粒径をこのように制御することで、この酸化防止剤と母材との界面における亀裂の発生を抑制することができる。
なお、本実施形態においては、この体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98を制御することにより、酸化防止剤に含まれる中粒径の粒子(たとえば150μmより大きく上限として1mm程度となる粒子)を十分に制御したこととなる。
このようなD98の酸化防止剤の粒子を得るためには、たとえば、予め酸化防止剤の粉末について、特定の目開きを有する篩を複数回通過させる方法や、を採用することができる。
また、本実施形態の酸化防止剤の体積基準の累積分布における90%累積時の粒径D90は0.05μm以上であり、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは5μm以上である。
また、酸化防止剤の体積基準の累積分布における90%累積時の粒径D90は80μm以下であり、好ましくは60μm以下であり、より好ましくは40μm以下である。
90の数値範囲をこの範囲とすることで、弾性材料としての変質を抑制しつつ、また、この酸化防止剤と母材との界面に起因する亀裂の発生を抑制することができる。
また、本実施形態の酸化防止剤の体積基準の累積分布における50%累積時の粒径D50は0.01μm以上であり、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは1μm以上である。
また、酸化防止剤の体積基準の累積分布における50%累積時の粒径D50は40μm以下であり、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
50の数値範囲をこの範囲とすることで、弾性材料としての変質を抑制しつつ、また、この酸化防止剤と母材との界面に起因する亀裂の発生を抑制することができる。
本実施形態において、これらの体積基準の累積分布における各粒径は以下のようにして求めることができる。
すなわち、本実施形態における弾性材料の表面について、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−5000を用い、HDR撮影モードにて倍率100倍にて観察を行う。ここで、画面上に表示される酸化防止剤の粒子5000個以上の粒径を測定し、上述の各粒径を算出する。
また、本実施形態において、この酸化防止剤は前述の母材に対して配合されるものであるが、この酸化防止剤のVoronoi分割法により算出される母材に対する分配度が以下の値に設定される。
すなわち、本実施形態において、酸化防止剤のVoronoi分割法により算出される母材に対する分配度は0.3以上であり、好ましくは0.35以上であり、より好ましくは0.4以上である。
このような適度な分配度を有することにより、弾性材料として酸化防止剤固有の特性が発現されやすくなる。
また、酸化防止剤のVoronoi分割法により算出される母材に対する分配度は0.75以下であり、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.55以下である。
酸化防止剤の分配度をこのような範囲に設定することにより、適切に酸化防止剤の分散を達成することができ、母材中における組成の不均一化を抑制することができる。
なお、本明細書中における分配度はVoronoi分割法により算出されるものであり、酸化防止剤の各粒子からVoronoi多角形を求め、それぞれの多角形の面積と、その標準偏差を算出することでこの分配度を求める。
より具体的に、本明細書中における「分配度」は、
「分配度」=「多角形の面積の標準偏差」/「多角形の平均面積」
の計算式から求めることができる。
なお、Voronoi多角形は、隣接する2つの粒子の中間を通る線(ボロノイ境界線)を結んでできた多角形を表す。
この分配度の測定にたっては、たとえば、旭化成エンジニアリング社製解析ソフト「A像くん(ver.2.20)」を用いることができる。
測定条件としては、縮尺設定(本明細書における条件においては1.906μm/画素)を行い、粒子の明度を「明」、2値化の方法を「自動」、範囲指定を「無」、外縁補正を「四辺」、穴埋めを「無」、小図形除去面積を「0.01μm(任意)」、補正方法を「無」、雑音除去フィルタを「無」、シェーディングを「無」、結果表示単位を「μm」、計測方法を「ボロノイ分割法」とする。
なお、上記解析ソフト「A像くん(ver.2.20)」においては、Voronoi分割法に基づく評価について「分散度」との表現を用いている。しかしながら、本明細書中においては、このVoronoi分割法に基づく評価を「分配度」として表記することとする。
また、本実施形態の弾性材料は、この酸化防止剤を、弾性材料全体に対して、0.01質量%以上含むことが好ましく、0.03質量%以上含むことがより好ましく、0.1質量%以上含むことがさらに好ましい。このように酸化防止剤の含有量を調整することで酸化防止剤の所望の性能を発揮することができる。
また、本実施形態の弾性材料は、この酸化防止剤を、弾性材料全体に対して、5質量%以下含むことが好ましく、4.5質量%以下含むことがより好ましく、4質量%以下含むことがさらに好ましい。このように酸化防止剤の含有量を調整することで母材特有の弾性を保持することができる。
また、本実施形態の弾性材料は、発明の目的を損なわない範囲であれば、上記の材料の他にも、他の添加剤を加えることができる。
他の添加剤としては、架橋剤、加硫剤、充填材、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、老化防止剤、熱安定化剤、光安定化剤、他の樹脂成分等が挙げられる。
この添加材の配合量は弾性材料を用いる用途に応じて適宜設定することができる。
[弾性材料の製造方法]
続いて、本実施形態の弾性材料の製造方法について説明する。
本実施形態の弾性材料の製造方法は、以下の工程を含むものである。
(工程1) 母材および酸化防止剤を準備する工程
(工程2) 酸化防止剤の体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98を0.1μm以上150μm以下とし、かつ、Voronoi分割法により算出される分配度が0.3以上0.75以下となるように酸化防止剤を母材に混合する工程
(母材および酸化防止剤を準備する工程(工程1))
本工程においては、母材と、後に特定のD98の値を満足するような酸化防止剤を選別し、準備する。なお、ここで用いることのできる母材と酸化防止剤の種類は前述した通りである。
この工程において、先述のように、たとえば、酸化防止剤の粉末について、特定の目開きを有する篩を複数回通過させる等の方法を採用することも好ましい態様である。
(酸化防止剤を母材に混合する工程(工程2))
本工程においては、酸化防止剤を特定のD98および分配度となるように、母材に混合する。
本工程を達成するにあたっては、混合する際に用いる混練機の容積や形状、母材と酸化防止剤の配合量、混練温度、混練時間等を適切に調節することにより上記の酸化防止剤のD98と分配度を達成することができる。
たとえば、シリコーンゴムを母材として用いた場合を例にとって以下説明を続ける。
母材としてシリコーンゴムを用いた場合、本実施形態の弾性材料は、たとえば、
(1)原料投入
(2)スクリューによる混練
(3)ロール混練
(4)ストレーナー通過
の工程を順次行うことにより、得ることができる。
本発明者らは、これらのうち、(2)スクリューによる工程において混練温度と、混練時間とを調整することで、前述のD98と分配度を調整できることを見出した。
たとえば、混練温度としては、前述の酸化防止剤の融点に対して10℃以上とすることが好ましく、12℃以上とすることがより好ましく、15℃以上とすることがさらに好ましい。
混練温度をこのように制御することにより、適切に酸化防止剤が母材に分散されやすくなる。
また、混練温度としては、前述の酸化防止剤の融点に対して40℃以下高い温度とすることが好ましく、37℃以下高い温度とすることが好ましく、35度以下高い温度とすることがさらに好ましい。制御して混練を行うことが好ましい。
混練温度をこのように制御することにより、酸化防止剤の凝集を防ぐことができ、結果として、母材に対して酸化防止剤が均一に分散されやすくなる。
また、混練時間としては、3分以上とすることが好ましく、4分以上とすることがより好ましく、5分以上とすることがさらに好ましい。
混練時間をこのように制御することにより、母材に対して酸化防止剤が均一に分散しやすくなる。
また、混練時間としては、40分以下とすることが好ましく、35分以下とすることがより好ましく、30分以下とすることがさらに好ましい。
混練時間をこのように制御することにより、プロセス効率を向上させると同時に、酸化防止剤の凝集を未然に防ぎやすくなる。
[用途]
本実施形態の弾性材料は種々の成形条件に付すことにより各種成形品を与える。
たとえば、母材としてシリコーンゴムを含む材料用いた場合は、このシリコーンゴムの耐酸性や柔軟性を活かし、医療用のバルーンを作製することができる。
このバルーンは、カテーテル等の医療器具に好ましく備えられる。
図1には、本実施形態の弾性材料から成形されたバルーンを備える医療器具(カテーテル)を示した。図1に示したカテーテル1は、バルーン3を備えるカテーテル本体2を備える。
カテーテル本体2は、たとえば、可撓性を有するチューブである。このチューブとしては、たとえば、長尺状の樹脂製チューブである。カテーテル本体2は、内部を基端側から先端側まで貫通するメインルーメン4と、基端側から先端側まで連通するバルーン膨張用ルーメン5を有する。
カテーテル本体2の材料は、ある程度の可撓性を有するものであれば特に限定されず、金属や樹脂を用いることができる。カテーテル本体2の材料は、カテーテル1の体内への挿入性を向上させる観点から、樹脂が好ましい。カテーテル本体2の材料が樹脂である場合、カテーテル本体2の材料は、例えば、イソプレンゴム、シリコーンゴムのようなエラストマーあるいは軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン系エラストマーのような熱可塑性樹脂などが挙げられる。カテーテル1の生体適合性を向上させる観点から、カテーテル本体2の材料は、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
バルーン3は、シリコーンゴムを含む弾性材料により形成されるものである。バルーン3の厚さは、バルーン3を膨張させない場合、50μm以上2000μm以下が好ましく、100μm以上1500μm以下がさらに好ましい。バルーン3の厚さが前記範囲の場合、カテーテル1は、強度と体内への挿入性のバランスに優れたものとすることができ、また、適度な機械的強度を保つことができる。
その他、本実施形態の弾性材料はフィルム状に成形し、所望のフィルムとすることができる。このようなフィルムは、各種封止材として用いることもできる。
たとえば、母材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系重合体を用い、フィルムを得ることができる。このフィルムは酸化防止剤固有の性能を効果的に発現させることができるので、太陽電池封止材として好ましく用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
まず、各実施例及び各比較例で用いた原料成分を以下に示す。
(1)シリコーンゴム:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製 製品名「TSE2911U」
(2)酸化防止剤:BASF社製 製品名「Irganox1010」(融点:116.4℃)
(3)加硫剤:信越化学工業社製 製品名「C−25A」および「C−25B」
(実施例1)
異方向(内回り)の2軸スクリューを備えたトーシン社製混練機「TK3−5MDX」を用い、シリコーンゴム2.5kgと酸化防止剤25gとを混練した。ここで、この混練条件としては、140℃×10分の条件を採用した。
その後、混練機からシリコーンゴムと酸化防止剤との混合物を取り出し、この混合物に対してさらに加硫剤「C−25A」を7.575g、「C−25B」を50.5g添加し、φ140mm×700mmロールにて20℃×30分の条件で混練した。
最後に、80番、500番、500番、80番の順で4枚重ねてセットしたストレーナーを通し、実施例1のシリコーンゴム組成物(弾性材料)を得た。
このようにして得られたシリコーンゴム組成物を用い、厚さ約100μmの薄膜を得た。この薄膜に対し、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−5000を用い、HDR撮影モードにて倍率100倍にて観察を行った。
この方法により得られた画像について、「(条件):閾値−30、(機能):穴埋め、(測定項目):粒子数、円相当径」の処理条件にて画像処理(二値化)を行った。
なお、図2には、画像処理を行う前の画像、図3には、画像処理を行った後の画像を示した。
この画像処理が行われた画像について以下の解析を行うことで、各パラメータの算出を行った。結果は表1に示した通りである。
(D98、D90、D50
画面上に表示された酸化防止剤の粒子5000個以上の粒径を測定し、各粒径を算出した。
(分配度)
旭化成エンジニアリング社製解析ソフト「A像くん(ver.2.20)」を用い分配度を算出した。
測定条件としては縮尺設定(1.906μm/画素)を行い、粒子の明度を「明」、2値化の方法を「自動」、範囲指定を「無」、外縁補正を「四辺」、穴埋めを「無」、小図形除去面積を「0.01μm(任意)」、補正方法を「無」、雑音除去フィルタを「無」、シェーディングを「無」、結果表示単位を「μm」、計測方法を「ボロノイ分割法」とした。
なお、この分配度を算出するにあたり、必要となる式は先に示した通りである。
(実施例2)
シリコーンゴムと酸化防止剤との混練に際し、混練条件として、140℃×5分の条件を採用した以外は実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を得た。
また、得られたシリコーンゴム組成物について、実施例1と同様の方法で各種パラメータを算出した。結果は表1に示した通りである。
(実施例3)
シリコーンゴムと酸化防止剤との混練に際し、混練条件として、130℃×10分の条件を採用した以外は実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を得た。
また、得られたシリコーンゴム組成物について、実施例1と同様の方法で各種パラメータを算出した。結果は表1に示した通りである。
(実施例4)
シリコーンゴムと酸化防止剤との混練に際し、混練条件として、150℃×15分の条件を採用した以外は実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を得た。
また、得られたシリコーンゴム組成物について、実施例1と同様の方法で各種パラメータを算出した。結果は表1に示した通りである。
(実施例5)
シリコーンゴムと酸化防止剤との混練に際し、混練条件として、150℃×25分の条件を採用した以外は実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を得た。
また、得られたシリコーンゴム組成物について、実施例1と同様の方法で各種パラメータを算出した。結果は表1に示した通りである。
(比較例1)
シリコーンゴムと酸化防止剤との混練に際し、トーシン社製混練機およびストレーナーを使用せず、20℃×30分の条件でロール混練を採用した以外は実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を得た。
また、得られたシリコーンゴム組成物について、実施例1と同様の方法で各種パラメータを算出した。結果は表1に示した通りである。
(耐酸性試験)
実施例および比較例で得られたシリコーンゴム組成物を、圧縮成形機を用いて、10MPaの圧力下で170℃×5分で処理し内径6.0mm×厚み約0.6mm×長さ30mmの1次硬化物を作製した。次に、得られた1次硬化物を成形型に入れて200℃で4時間処理することによってバルーンを得た。
得られたバルーンの内部に純水を10mL注入し、温度40℃、pH2.0の塩酸水に浸漬させて耐酸性試験を行った。
この耐酸性試験は1ヶ月行い、バルーンが破裂しなかったものを○、バルーンが破裂したものを×として評価した。この結果は表1に示した通りである。
Figure 2017019887
98または分配度のいずれかが特定の範囲とならなかった比較例においては、耐酸性試験において、バルーンの破裂が観察された。一方、各実施例の弾性材料(シリコーンゴム組成物)においては、酸化防止剤のD98、分配度とも、特定の範囲に制御されており、これによって耐酸性を向上させることができ、上述の耐酸性試験にも耐えうる組成物が得られていることが明らかとなった。
本発明によれば、変質が抑制された、可使時間が長い弾性材料を提供することができる。係る弾性材料は、医療分野、太陽電池分野のみならず、さらなる適用分野の拡充が期待される。
1 カテーテル
2 カテーテル本体
3 バルーン
4 メインルーメン
5 バルーン膨張用ルーメン

Claims (9)

  1. 母材中に酸化防止剤が分散した弾性材料であって、
    前記酸化防止剤は体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98が0.1μm以上150μm以下であり、かつ、前記酸化防止剤のVoronoi分割法により算出される前記母材に対する分配度が0.3以上0.75以下である、弾性材料。
  2. 前記酸化防止剤を、前記弾性材料全体に対して0.01質量%以上5質量%以下含む、請求項1に記載の弾性材料。
  3. 前記酸化防止剤の融点が30℃以上250℃以下である、請求項1または2に記載の弾性材料。
  4. 前記母材がシリコーンゴムを含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の弾性材料。
  5. 請求項4に記載の弾性材料を成形してなるバルーン。
  6. 請求項5に記載のバルーンを備える医療器具。
  7. 前記母材がエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の弾性材料。
  8. 請求項7に記載の弾性材料を成形してなるフィルム。
  9. 母材中に酸化防止剤が分散した弾性材料の製造方法であって、
    前記母材および前記酸化防止剤を準備する工程と、
    前記酸化防止剤の体積基準の累積分布における98%累積時の粒径D98を0.1μm以上150μm以下とし、かつ、Voronoi分割法により算出される分配度が0.3以上0.75以下となるように前記酸化防止剤を母材に混合する工程と、
    を含む、弾性材料の製造方法。
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