JP2017016862A - 絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は低誘電率化を促進すると共に、劣化し難い絶縁電線を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周側に積層される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する複数の放熱性フィラー及び複数の気孔とを有し、上記絶縁層の25℃における厚さ方向の熱伝導率が0.2W/m・K以上である。上記絶縁層が上記導体の直上に位置するとよい。上記放熱性フィラーの材料が、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛又はカーボンナノチューブであるとよい。上記絶縁層のマトリックスに対する放熱性フィラーの含有量としては、5体積%以上50体積%以下が好ましい。上記絶縁層の空隙率としては、5%以上80%以下が好ましい。【選択図】図1
Description
本発明は、絶縁電線に関する。
適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモータ等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁被膜表面で部分放電(コロナ放電)が発生し易くなる。コロナ放電の発生により、局部的な温度上昇、オゾンの発生、イオンの発生等が引き起こされると、早期に絶縁破壊を生じ、絶縁電線ひいては電気機器の寿命が短くなる。このため、適用電圧が高い電気機器に使用される絶縁電線には、優れた絶縁性、機械的強度等に加えてコロナ放電開始電圧を高めることも求められる。
コロナ放電開始電圧を上げる工夫としては、絶縁被膜の低誘電率化が有効である。絶縁被膜の低誘電率化を実現するために、塗膜構成樹脂と、この塗膜構成樹脂の焼付け温度よりも低い温度で分解する熱分解性樹脂とを含む絶縁ワニスにより加熱硬化膜(絶縁被膜)を形成する絶縁電線が提案されている(特開2012−224714号公報参照)。この絶縁電線は、上記熱分解性樹脂が塗膜構成樹脂の焼付け時に熱分解してその部分が気孔となることを利用して加熱硬化膜内に気孔を形成し、この気孔の形成により絶縁被膜の低誘電率化を実現している。
上記従来の絶縁電線は、低誘電率化が促進される一方、気孔が形成されることにより絶縁被膜の放熱性が低下する。このため、絶縁電線の導体から発生する熱により絶縁被膜の温度が上昇し、絶縁被膜が劣化し易い。
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、低誘電率化を促進すると共に、劣化し難い絶縁電線を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周側に積層される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する複数の放熱性フィラー及び複数の気孔とを有し、上記絶縁層の25℃における厚さ方向の熱伝導率が0.2W/m・K以上である。
本発明の絶縁電線は、低誘電率化を促進すると共に劣化し難い。従って、当該絶縁電線を用いた巻線は、高電圧で使用されるモータ等の適用電圧が高い電気機器に適用できる。
[本発明の実施形態の説明]
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周側に積層される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する複数の放熱性フィラー及び複数の気孔とを有し、上記絶縁層の25℃における厚さ方向の熱伝導率が0.2W/m・K以上である。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周側に積層される絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記絶縁層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する複数の放熱性フィラー及び複数の気孔とを有し、上記絶縁層の25℃における厚さ方向の熱伝導率が0.2W/m・K以上である。
当該絶縁電線は、絶縁層が気孔を含むことにより、絶縁層の低誘電率化を実現でき、コロナ放電開始電圧が高まる。また、当該絶縁電線は、絶縁層に含まれる放熱性フィラーが上記気孔により絶縁層内に均一分散され易いので、マトリックスの熱伝導性を容易に向上できる。さらに、上記絶縁層の25℃における厚さ方向の熱伝導率を上記下限以上とするので、当該絶縁電線は、放熱性に優れ、劣化し難い。
上記絶縁層が上記導体の直上に位置するとよい。このように上記絶縁層が上記導体の直上に位置することで、絶縁電線の導体から発生する熱をより効率的に放熱できる。
上記放熱性フィラーの材料が、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛又はカーボンナノチューブであるとよい。このように上記放熱性フィラーの材料を窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛又はカーボンナノチューブとすることで、絶縁性を維持しながら放熱性をより向上できる。
上記絶縁層のマトリックスに対する放熱性フィラーの含有量としては、5体積%以上50体積%以下が好ましい。このように上記絶縁層のマトリックスに対する放熱性フィラーの含有量を上記範囲内とすることで、放熱性フィラーが気孔内に突出することを抑止でき、絶縁層の誘電率を維持しつつ、放熱性を向上できる。なお、上記マトリックスの体積には気孔の体積は含まれない。
上記絶縁層の空隙率としては、5%以上80%以下が好ましい。このように上記絶縁層の空隙率を上記範囲内とすることで、放熱性を維持しつつ、より確実に絶縁層の低誘電率化を実現できる。
上記放熱性フィラーの平均粒子径としては、0.1μm以上30μm以下が好ましい。このように上記放熱性フィラーの平均粒子径を上記範囲内とすることで絶縁層の放熱性を維持しつつ、放熱性フィラーが気孔内に突出することを抑止できる。
上記放熱性フィラーのアスペクト比としては、3以上200以下が好ましい。絶縁層に分散される放熱性フィラーは、放熱性フィラーを楕円体近似した際の長径方向が一般に絶縁電線の周方向に対して略垂直方向となる傾向があるが、気孔により放熱性フィラーの向きがランダム化される。このため、上記放熱性フィラーのアスペクト比を上記範囲内とすることで、長径方向が絶縁層の厚さ方向となる放熱性フィラーが増え、放熱性フィラーが気孔内に突出することを抑止しつつ、絶縁層の厚さ方向の放熱性をさらに向上できる。
上記絶縁層の合成樹脂がポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドであるとよい。このように上記絶縁層の合成樹脂をポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドとすることで、無機フィラーとの密着性が高まるため、絶縁層の強度を確保し易い。
従って当該絶縁電線を用いた巻線は、高電圧で使用されるモータ等の適用電圧が高い電気機器に適用できる。
ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば50質量%以上含有される成分である。また、絶縁層の「空隙率」とは、絶縁層の体積に対する絶縁層内の気体の容積の百分率であり、絶縁層のマトリックス、放熱性フィラー等の固体分の質量と密度とから算出される実体積をV0、絶縁層の空隙を含むみかけの体積をV1とするとき、(V1−V0)/V1×100で算出される量である。「平均粒子径」とは、分散液中の体積粒度分布の中心径D50で表されるものを意味する。平均粒子径は、粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社のマイクロトラック粒度分布測定装置「MT3300EX2」)で測定することができる。また、放熱性フィラーの「アスペクト比」とは、放熱性フィラーを楕円体で近似した場合の長径/短径の比の平均値を意味する。なお、放熱性フィラーを近似する楕円体とは、体積重心を中心とし、この粒子を包含できる最小体積の楕円体を意味する。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る絶縁電線の一つの実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
以下、本発明に係る絶縁電線の一つの実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
[絶縁電線]
図1の絶縁電線は、線状の導体1と、この導体1の外周側に積層される絶縁層2とを備える。
図1の絶縁電線は、線状の導体1と、この導体1の外周側に積層される絶縁層2とを備える。
<導体>
上記導体1は、例えば断面が円形状の丸線とされるが、断面が方形状の角線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
上記導体1は、例えば断面が円形状の丸線とされるが、断面が方形状の角線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
導体1の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。導体1は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミ線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
導体1の平均断面積の下限としては、0.01mm2が好ましく、0.1mm2がより好ましい。また、導体1の平均断面積の上限としては、10mm2が好ましく、5mm2がより好ましい。導体1の平均断面積が上記下限未満である場合、導体1に対する絶縁層2の合計体積が大きくなり、当該絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。一方、導体1の平均断面積が上記上限を超える場合、誘電率を十分に低下させるために絶縁層2を厚く形成しなければならず、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
<絶縁層>
上記絶縁層2は、合成樹脂を主成分とするマトリックス3と、このマトリックス3中に分散する複数の放熱性フィラー4及び複数の気孔5とを有する。
上記絶縁層2は、合成樹脂を主成分とするマトリックス3と、このマトリックス3中に分散する複数の放熱性フィラー4及び複数の気孔5とを有する。
絶縁層2の平均厚さの下限としては、15μmが好ましく、30μmがより好ましい。また、絶縁層2の平均厚さの上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。上記絶縁層2の平均厚さが上記下限未満である場合、絶縁層2によるコロナ放電開始電圧を高める効果が不十分となるおそれがある。一方、上記絶縁層2の平均厚さが上記上限を超える場合、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
絶縁層2の25℃における厚さ方向の熱伝導率の下限としては、0.2W/m・Kであり、0.28W/m・Kがより好ましく、0.35W/m・Kがさらに好ましい。絶縁層2の25℃における厚さ方向の熱伝導率が上記下限未満である場合、絶縁電線の劣化防止効果が十分に得られないおそれがある。一方、絶縁層2の25℃における厚さ方向の熱伝導率の上限としては、特に制限されないが、実用的には1W/m・K程度である。
上記絶縁層2は、導体1の直上に位置する。このように上記絶縁層2が導体1の直上に位置することで、絶縁電線の導体1から発生する熱をより効率的に放熱できる。
(マトリックス)
マトリックス3を構成する樹脂組成物の主成分としては、特に限定されないが、例えばフェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ樹脂、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、芳香族ポリアミド、熱硬化ポリアミドイミド、熱硬化ポリイミド等の熱硬化性樹脂や、例えば熱可塑性ポリイミド、ポリフェニルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、共重合ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルケトン、半芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂が使用できる。中でも放熱性フィラー4との密着性の高いポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドが好ましい。マトリックス3は2種類以上の樹脂組成物の複合体又は積層体であってもよく、例えば熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体又は積層体であってもよい。また、マトリックス3を構成する樹脂組成物の主成分とする上記熱可塑性樹脂にエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート等の熱反応性硬化剤を添加することにより架橋させて、一部熱硬化タイプにすることも可能である。さらに、熱硬化性樹脂の場合は硬化剤と組み合わせることで、半硬化状態又は硬化状態として使用することができる。
マトリックス3を構成する樹脂組成物の主成分としては、特に限定されないが、例えばフェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ樹脂、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、芳香族ポリアミド、熱硬化ポリアミドイミド、熱硬化ポリイミド等の熱硬化性樹脂や、例えば熱可塑性ポリイミド、ポリフェニルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、共重合ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルケトン、半芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂が使用できる。中でも放熱性フィラー4との密着性の高いポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドが好ましい。マトリックス3は2種類以上の樹脂組成物の複合体又は積層体であってもよく、例えば熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体又は積層体であってもよい。また、マトリックス3を構成する樹脂組成物の主成分とする上記熱可塑性樹脂にエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート等の熱反応性硬化剤を添加することにより架橋させて、一部熱硬化タイプにすることも可能である。さらに、熱硬化性樹脂の場合は硬化剤と組み合わせることで、半硬化状態又は硬化状態として使用することができる。
(放熱性フィラー)
複数の放熱性フィラー4は、マトリックス3中に分散する。この放熱性フィラー4の材料としては、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン等の金属炭化物、酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素などの金属酸化物、スピネル、カーボンナノチューブ(CNT)等を挙げることができる。この中でも、絶縁性及び放熱性が高い窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及びカーボンナノチューブ(CNT)が好ましく、誘電率の低さから窒化ホウ素がさらに好ましい。
複数の放熱性フィラー4は、マトリックス3中に分散する。この放熱性フィラー4の材料としては、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン等の金属炭化物、酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素などの金属酸化物、スピネル、カーボンナノチューブ(CNT)等を挙げることができる。この中でも、絶縁性及び放熱性が高い窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及びカーボンナノチューブ(CNT)が好ましく、誘電率の低さから窒化ホウ素がさらに好ましい。
放熱性フィラー4の25℃における熱伝導率の下限としては、5W/m・Kが好ましく、10W/m・Kがより好ましく、20W/m・Kがさらに好ましく、30W/m・Kが特に好ましい。放熱性フィラー4の25℃における熱伝導率が上記下限未満である場合、絶縁層2の放熱効率の向上効果が十分に得られないおそれがある。一方、放熱性フィラー4の25℃における熱伝導率の上限としては、特に制限されないが、実用的には1500W/m・K程度である。
放熱性フィラー4の形状は、特に限定されず、粒状、球状、鱗片状、針状等が挙げられる。中でも鱗片状及び針状が好ましい。鱗片状及び針状の放熱性フィラー4は、アスペクト比が比較的高い。このため、長径方向が絶縁層2の厚さ方向となる放熱性フィラー4が増えることによる絶縁層2の放熱効率の向上効果を得やすい。
放熱性フィラー4の平均粒子径の下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。また、上記放熱性フィラー4の平均粒子径の上限としては、30μmが好ましく、25μmがより好ましい。上記放熱性フィラー4の平均粒子径が上記下限未満である場合、放熱性フィラー4による絶縁層2の放熱性向上が不十分となるおそれがある。一方、上記放熱性フィラー4の平均粒子径が上記上限を超える場合、放熱性フィラー4が気孔5内に突出し易くなるため、気孔5による絶縁層2の低誘電率化が不十分となるおそれがある。
上記放熱性フィラー4のアスペクト比の下限としては、3が好ましく、5がより好ましく、10がさらに好ましい。また、上記アスペクト比の上限としては、200が好ましく、100がより好ましく、80がさらに好ましい。上記アスペクト比が上記下限未満である場合、放熱性フィラー4の形状異方性が低いため、長径方向が絶縁層2の厚さ方向となる放熱性フィラー4が増えることによる絶縁層2の放熱効率の向上効果が十分に得られないおそれがある。一方、上記アスペクト比が上記上限を超える場合、絶縁層形成用組成物と混合する際等に放熱性フィラー4が破損するおそれがある。
絶縁層2のマトリックス3に対する放熱性フィラー4の含有量の下限としては、5体積%が好ましく、7体積%がより好ましく、10体積%がさらに好ましい。また、上記放熱性フィラー4の含有量の上限としては、50体積%が好ましく、45体積%がより好ましく、40体積%がさらに好ましい。上記放熱性フィラー4の含有量が上記下限未満である場合、放熱性フィラー4による絶縁層2の放熱性向上効果が不十分となるおそれがある。一方、上記放熱性フィラー4の含有量が上記上限を超える場合、放熱性フィラー4が気孔5内に突出し易くなるため、気孔5による絶縁層2の低誘電率化が不十分となるおそれがある。
(気孔)
複数の気孔5は、絶縁層2のマトリックス3中に分散する。この気孔5は、気泡又は外殻を有する中空フィラーの空洞部分のいずれかで構成できる。これらのうち放熱性フィラー4が気孔5内に突出し難くなる点から、気孔5は熱分解性粒子を用いて形成した気泡や中空フィラーの空洞部分を用いて構成するとよい。
複数の気孔5は、絶縁層2のマトリックス3中に分散する。この気孔5は、気泡又は外殻を有する中空フィラーの空洞部分のいずれかで構成できる。これらのうち放熱性フィラー4が気孔5内に突出し難くなる点から、気孔5は熱分解性粒子を用いて形成した気泡や中空フィラーの空洞部分を用いて構成するとよい。
中空フィラーにより気孔を形成する場合、中空フィラーとしては、例えばシラスバルーン、ガラスバルーン、セラミックバルーン、有機樹脂バルーン等が挙げられる。当該絶縁電線に可撓性が要求される場合、これらの中で有機樹脂バルーンが好ましい。また、機械的強度が重視される当該絶縁電線の場合、入手が容易で破損し難いという点からガラスバルーンが好ましい。
気孔5の平均径の下限としては、0.1μmが好ましく、1μmがより好ましい。また、気孔5の平均径の上限としては、10μmが好ましく、8μmがより好ましい。上記気孔5の平均径が上記下限未満である場合、コロナ放電開始電圧を高める効果が不十分となるおそれがある。一方、上記気孔5の平均径が上記上限を超える場合、絶縁層2における気孔5の分布を均一にし難くなり、誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。ここで、「気孔の平均径」とは、絶縁層に含まれる例えば10個の気孔について、気孔の容積に相当する真球の直径を算出し、平均した値を意味する。
上記絶縁層2の空隙率の下限としては、5%が好ましく、10%がより好ましく、15%がさらに好ましい。また、上記絶縁層2の空隙率の上限としては、80%が好ましく、70%がより好ましく、60%がさらに好ましい。上記絶縁層2の空隙率が上記下限未満である場合、絶縁層2の誘電率が十分に低下せず、コロナ放電開始電圧を十分に高められないおそれがある。一方、上記絶縁層2の空隙率が上記上限を超える場合、絶縁層2が放熱性フィラー4を十分に含有できないおそれや、絶縁層2の十分な機械的強度を確保できないおそれがある。
<絶縁電線の製造方法>
当該絶縁電線は、例えば絶縁層形成用組成物を調製する工程、及び絶縁層を形成する工程を主に備える製造方法により製造できる。
当該絶縁電線は、例えば絶縁層形成用組成物を調製する工程、及び絶縁層を形成する工程を主に備える製造方法により製造できる。
(絶縁層形成用組成物調製工程)
絶縁層形成用組成物調製工程では、絶縁層2のマトリックス3を構成する樹脂組成物を溶剤で希釈したものに、放熱性フィラー4を混合して絶縁層用ワニスを調製する。また、必要に応じて気孔5の形成に必要な材料を上記絶縁層用ワニスに混合する。ここでは、中空フィラーにより気孔5を形成する場合を用いて説明する。この場合、中空フィラーを上記絶縁層用ワニスに混合する。
絶縁層形成用組成物調製工程では、絶縁層2のマトリックス3を構成する樹脂組成物を溶剤で希釈したものに、放熱性フィラー4を混合して絶縁層用ワニスを調製する。また、必要に応じて気孔5の形成に必要な材料を上記絶縁層用ワニスに混合する。ここでは、中空フィラーにより気孔5を形成する場合を用いて説明する。この場合、中空フィラーを上記絶縁層用ワニスに混合する。
希釈用の上記溶剤としては、絶縁ワニスに従来より用いられている公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン等の極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、クレゾール、クロルフェノールなどのフェノール類、ピリジンなどの第三級アミン類等が挙げられ、これらの有機溶媒はそれぞれ単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
このような溶剤で希釈することにより樹脂組成物が導体に塗布し易くなる。また、この溶剤は絶縁層形成工程において加熱により揮発する。
上記溶剤の沸点の下限としては、140℃が好ましく、160℃がより好ましい。また、上記溶剤の沸点の上限としては、230℃が好ましく、210℃がより好ましい。上記溶剤の沸点が上記下限に満たない場合、加熱前に揮発性溶剤が蒸発して当該絶縁電線の捲線加工性が低下するおそれがある。一方、上記溶剤の沸点が上記上限を超える場合、溶剤の揮発に時間を要し、絶縁層2の形成時間が長くなるおそれがある。
上記有機溶剤により希釈して調製した絶縁層用ワニスの樹脂固形分濃度の下限としては、20質量%が好ましく、22質量%がより好ましい。また、上記絶縁層用ワニスの樹脂固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記絶縁層用ワニスの樹脂固形分濃度が上記下限未満である場合、絶縁層用ワニスを塗布する際の1回の塗布量が少なくなるため、所望の厚さの絶縁層2を形成するためのワニス塗布工程の繰り返し回数が多くなり、ワニス塗布工程の時間が長くなるおそれがある。一方、上記絶縁層用ワニスの樹脂固形分濃度が上記上限を超える場合、放熱性フィラー4を均一に混合し難く、希釈に要する時間が長くなるおそれがある。
(絶縁層形成工程)
絶縁層形成工程では、上記絶縁層形成用組成物調製工程で調製した絶縁層用ワニスを導体1の外周面に塗布した後、焼付けることで導体1の外周面に絶縁層2を形成する。焼付温度は、使用する樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、例えば200℃以上350℃以下である。
絶縁層形成工程では、上記絶縁層形成用組成物調製工程で調製した絶縁層用ワニスを導体1の外周面に塗布した後、焼付けることで導体1の外周面に絶縁層2を形成する。焼付温度は、使用する樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、例えば200℃以上350℃以下である。
上記絶縁層形成工程において、導体1の外周面に形成される絶縁層2が所定の厚さとなるまで、上記絶縁層用ワニスの塗布及び焼付けを繰り返すことにより当該絶縁電線が得られる。
従って当該絶縁電線を用いた巻線は、高電圧で使用されるモータ等の適用電圧が高い電気機器に適用できる。
[利点]
当該絶縁電線は、絶縁層2が気孔5を含むことにより、絶縁層2の低誘電率化を実現でき、コロナ放電開始電圧が高まる。また、当該絶縁電線は、絶縁層2に含まれる放熱性フィラー4が上記気孔5により絶縁層2内に均一分散され易いので、マトリックス3の熱伝導性を容易に向上できる。さらに、上記絶縁層2の25℃における厚さ方向の熱伝導率を上記下限以上とするので、当該絶縁電線は、放熱性に優れ、劣化し難い。
当該絶縁電線は、絶縁層2が気孔5を含むことにより、絶縁層2の低誘電率化を実現でき、コロナ放電開始電圧が高まる。また、当該絶縁電線は、絶縁層2に含まれる放熱性フィラー4が上記気孔5により絶縁層2内に均一分散され易いので、マトリックス3の熱伝導性を容易に向上できる。さらに、上記絶縁層2の25℃における厚さ方向の熱伝導率を上記下限以上とするので、当該絶縁電線は、放熱性に優れ、劣化し難い。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記実施形態では、中空フィラーを用いて気孔を形成する製造方法について説明したが、気孔を形成する製造方法はこれに限定されない。例えば上記絶縁層用ワニスに熱分解性樹脂を混合し、焼付時の加熱で熱分解性樹脂を熱分解させることにより気孔を生成できる。上記熱分解性樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの片方、あるいは両方の末端又は一部をアルキル化、(メタ)アクリレート化又はエポキシ樹脂化した化合物、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸の炭素数1以上6以下のアルキルエステル重合体、ウレタンオリゴマー、ウレタンポリマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン(メタ)アクリレートなどの変性(メタ)アクリレートの重合物、ポリ(メタ)アクリル酸、これらの架橋物、ポリスチレン、架橋ポリスチレン等が挙げられる。
また、例えば上記絶縁層用ワニスに発泡剤を混合し、焼付時の加熱で発泡剤を発泡させることでも気孔を生成できる。上記発泡剤としては、加熱することにより分解してガスを発生する化学発泡剤や、内部発泡剤からなる芯材(内包物)とこの芯材を包む外殻とを有し芯材の膨張によって外殻が膨張する発泡性マイクロカプセル等を挙げることができる。
また、当該絶縁電線において、導体と絶縁層との間にプライマー処理層等のさらなる層が設けられてもよい。
(プライマー処理層)
プライマー処理層は、層間の密着性を高めるために設けられる層であり、例えば公知の樹脂組成物により形成することができる。
プライマー処理層は、層間の密着性を高めるために設けられる層であり、例えば公知の樹脂組成物により形成することができる。
導体と絶縁層との間にプライマー処理層を設ける場合、このプライマー処理層を形成する樹脂組成物は、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエステル及びフェノキシ樹脂の中の一種又は複数種の樹脂を含むとよい。また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、密着向上剤等の添加剤を含んでもよい。このような樹脂組成物によって導体と絶縁層との間にプライマー処理層を形成することで、導体と絶縁層との間の密着性を向上することが可能であり、その結果、当該絶縁電線の耐摩耗性、耐傷性、耐加工性などの特性を効果的に高めることができる。
また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物は、上記樹脂と共に他の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂等を含んでもよい。
また、プライマー処理層を形成する樹脂組成物に含まれる各樹脂として、市販の液状組成物(絶縁ワニス)を使用してもよい。
プライマー処理層の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。また、プライマー処理層の平均厚さの上限としては、20μmが好ましく、10μmがより好ましい。プライマー処理層の平均厚さが上記下限未満である場合、導体と絶縁層との間の十分な密着性を発揮できないおそれがある。一方、プライマー処理層の平均厚さが上記上限を超える場合、当該絶縁電線が不必要に大径化するおそれがある。
また、例えば当該絶縁電線において、絶縁層の外周面側にさらに絶縁性を有する保護層を積層してもよい。保護層を形成する樹脂組成物としては、上述した絶縁層の樹脂組成物の主成分として挙げた樹脂と同種のものを用いることができる。保護層は、気孔を含んでいてもよいし、気孔を含んでいなくてもよい。保護層が気孔を含む場合、保護層も絶縁層の誘電率の低下に寄与できる。ただし、この場合、保護層の気孔率は絶縁層の気孔率よりも小さい方がより好ましい。一方、保護層が気孔を含まない場合、絶縁性に優れるので当該絶縁電線の絶縁性がさらに向上する。また、保護層は、気孔を含む複数の層で形成されていてもよく、それらの複数の層の気孔率が互いに異なるものとしてもよい。また、当該絶縁電線の放熱効果を高めるため上記保護層は放熱性フィラーを含有してもよい。
また、当該絶縁電線は、コイルを形成する以外にも、複数の絶縁電線を平行に配置した状態とするような他の用途にも使用することができる。
本発明に係る絶縁電線は、低誘電率化を促進すると共に、劣化し難い。従って、当該絶縁電線を用いた巻線は、高電圧で使用されるモータ等の適用電圧が高い電気機器に適用できる。
1 導体
2 絶縁層
3 マトリックス
4 放熱性フィラー
5 気孔
2 絶縁層
3 マトリックス
4 放熱性フィラー
5 気孔
Claims (9)
- 線状の導体と、この導体の外周側に積層される絶縁層とを備える絶縁電線であって、
上記絶縁層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する複数の放熱性フィラー及び複数の気孔とを有し、
上記絶縁層の25℃における厚さ方向の熱伝導率が0.2W/m・K以上である絶縁電線。 - 上記絶縁層が上記導体の直上に位置する請求項1に記載の絶縁電線。
- 上記放熱性フィラーの材料が、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛又はカーボンナノチューブである請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
- 上記絶縁層のマトリックスに対する放熱性フィラーの含有量が5体積%以上50体積%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の絶縁電線。
- 上記絶縁層の空隙率が5%以上80%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 上記放熱性フィラーの平均粒子径が0.1μm以上30μm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 上記放熱性フィラーのアスペクト比が3以上200以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 上記絶縁層の合成樹脂がポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドである請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 巻線として用いられる請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の絶縁電線。
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-
2015
- 2015-06-30 JP JP2015131695A patent/JP2017016862A/ja active Pending
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