JP2018170299A - 絶縁電線 - Google Patents

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Yuji Hatanaka
悠史 畑中
雅晃 山内
Masaaki Yamauchi
雅晃 山内
田村 康
Yasushi Tamura
康 田村
吉田 健吾
Kengo Yoshida
健吾 吉田
雄大 古屋
Yudai Furuya
雄大 古屋
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Jun Sugawara
潤 菅原
齋藤 秀明
Hideaki Saito
秀明 齋藤
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Shuhei Maeda
修平 前田
槙弥 太田
Shinya Ota
槙弥 太田
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Abstract

【課題】本発明は可撓性の低下を抑えつつ、低誘電率化を促進することが可能な絶縁電線を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面に積層される1又は複数の絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記1又は複数の絶縁層の少なくとも1層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する複数の気孔とを有しており、上記複数の気孔の平均径が0.1μm以上10μm以下であり、上記複数の気孔を有する絶縁層の気孔率が10体積%以上30体積%以下である。上記導体に直接積層される絶縁層が気孔を有さず、この気孔を有しない絶縁層の外側に上記複数の気孔を有する絶縁層が積層されているとよい。上記複数の気孔が、複数の熱分解性樹脂粒子に由来するとよい。上記1又は複数の絶縁層全体の伸び率としては、40%以上150%以下が好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁電線に関する。
適用電圧が高い電気機器、例えば高電圧で使用されるモータ等では、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁被膜表面で部分放電(コロナ放電)が発生し易くなる。コロナ放電の発生により、局部的な温度上昇、オゾンの発生、イオンの発生等が引き起こされると、早期に絶縁破壊を生じ、絶縁電線ひいては電気機器の寿命が短くなる。このため、適用電圧が高い電気機器に使用される絶縁電線には、優れた絶縁性、機械的強度等に加えてコロナ放電開始電圧を高めることも求められる。
コロナ放電開始電圧を上げるためには、絶縁被膜の低誘電率化が有効である。このような絶縁被膜の低誘電率化を実現する絶縁電線としては、導体の外周面に発泡剤の発泡によって形成される気泡を含む発泡樹脂層を有する絶縁電線が発案されている(特開平10−168248号公報参照)。
特開平10−168248号公報
しかしながら、上記公報に記載の絶縁電線は、発泡樹脂層により可撓性が低下して電線の捲線加工が容易ではなくなるおそれや、捲線加工の際に発泡樹脂層中の気泡が潰れて予定される低誘電率化を実現できないおそれがある。
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、可撓性の低下を抑えつつ、低誘電率化を促進可能な絶縁電線を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面に積層される1又は複数の絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記1又は複数の絶縁層の少なくとも1層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する複数の気孔とを有しており、上記複数の気孔の平均径が0.1μm以上10μm以下であり、上記複数の気孔を有する絶縁層の気孔率が10体積%以上30体積%以下である。
本発明の絶縁電線は、可撓性の低下を抑えつつ、低誘電率化を促進することができる。
本発明の一実施形態に係る絶縁電線を示す模式的断面図である。 図1の絶縁電線とは異なる実施形態に係る絶縁電線を示す模式的断面図である。 図1及び図2の絶縁電線とは異なる実施形態に係る絶縁電線を示す模式的断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面に積層される1又は複数の絶縁層とを備える絶縁電線であって、上記1又は複数の絶縁層の少なくとも1層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する複数の気孔とを有しており、上記複数の気孔の平均径が0.1μm以上10μm以下であり、上記複数の気孔を有する絶縁層の気孔率が10体積%以上30体積%以下である。
当該絶縁電線は、複数の気孔を有する絶縁層を備え、この絶縁層のマトリックス中に分散する複数の気孔の平均径及びこの絶縁層の気孔率が上記範囲内であるので、この絶縁層中に複数の気孔が適度かつ略均一に分散し易い。そのため、当該絶縁電線は、可撓性の低下を抑制しつつ、低誘電率化を促進することができる。
上記導体に直接積層される絶縁層が気孔を有さず、この気孔を有しない絶縁層の外側に上記複数の気孔を有する絶縁層が積層されているとよい。このように、上記導体に直接積層される絶縁層が気孔を有さず、この気孔を有しない絶縁層の外側に上記複数の気孔を有する絶縁層が積層されていることによって、導体と複数の気孔を有する絶縁層との密着力を高めることができる。
上記複数の気孔が、複数の熱分解性樹脂粒子に由来するとよい。このように、上記複数の気孔が複数の熱分解性樹脂粒子に由来することによって、複数の気孔の形成時に複数の気孔を有する絶縁層が外側に膨張するのを抑えることができる。その結果、複数の気孔の均一分散性を向上させ、可撓性の低下をさらに抑制することができる。
上記複数の気孔を有する絶縁層が1又は複数の焼付層からなることが好ましく、1の上記焼付層の平均厚さに対する複数の気孔の平均径の比としては、0.05以上0.9以下が好ましい。このように、上記複数の気孔を有する絶縁層が1又は複数の焼付層からなり、1の上記焼付層の平均厚さに対する複数の気孔の平均径の比が上記範囲内であることによって、複数の気孔の均一分散性をさらに向上させ、可撓性の低下を抑制し易い。
上記複数の気孔を有する絶縁層の平均厚さとしては、50μm以上200μm以下が好ましく、この複数の気孔を有する絶縁層の平均厚さに対する上記気孔を有しない絶縁層の平均厚さの比としては、0.005以上0.35以下が好ましい。このように、上記複数の気孔を有する絶縁層の平均厚さ及びこの複数の気孔を有する絶縁層の平均厚さに対する気孔を有しない絶縁層の平均厚さの比が上記範囲内であることによって、導体と複数の気孔を有する絶縁層との密着力を高めつつ、低誘電率化を容易かつ確実に促進することができる。
上記1又は複数の絶縁層全体の伸び率としては、40%以上150%以下が好ましい。このように、上記1又は複数の絶縁層全体の伸び率が上記範囲内であることによって、可撓性の低下を十分に抑制しつつ、低誘電率化を促進することができる。
なお、本発明において、「主成分」とは、最も含有量の多い成分をいい、例えば50質量%以上含有される成分をいう。「気孔を有しない」とは、不可避的に含まれる場合を除いて積極的に気孔を形成しないことをいい、例えば0.1μm以上の径を有する気孔が存在しないことをいい、好ましくは0.01μm以上の径を有する気孔が存在しないことをいう。「気孔の平均径」とは、複数の気孔を有する絶縁層の10個の気孔について、気孔の容積に相当する真球の直径を算出し、平均した値を意味する。「複数の気孔を有する絶縁層の気孔率」とは、複数の気孔を有する絶縁層の体積に対するこの絶縁層内の気体の容積の百分率であり、複数の気孔を有する絶縁層のマトリックス等の固体分の質量と密度とから算出される実体積をV0、複数の気孔を有する絶縁層の気孔を含むみかけの体積をV1とするとき、(V1−V0)/V1×100で算出される値を意味する。「熱分解性樹脂粒子」とは、加熱によって分解することで、加熱前に占めていた領域で少なくとも1部が消失する樹脂粒子をいう。「絶縁層全体の伸び率」とは、導体から筒状に剥離された長さ3cmの絶縁層を、引張試験機にて、25℃の環境下で長手方向に引張速度50mm/分で引っ張った場合の破断時の伸び率を意味する。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る絶縁電線の一つの実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
[絶縁電線]
図1の絶縁電線1は、線状の導体2と、この導体2の外周面に積層される複数の絶縁層(第1絶縁層3及び第2絶縁層4)とを備える。
<導体>
導体2は、例えば断面が円形状の丸線とされるが、断面が方形状の角線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
導体2の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。導体2は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミ線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
導体2の平均断面積の下限としては、0.01mmが好ましく、0.1mmがより好ましい。また、導体2の平均断面積の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。導体2の平均断面積が上記下限未満であると、導体2に対する第1絶縁層3及び第2絶縁層4の合計体積が大きくなり、当該絶縁電線1を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。一方、導体2の平均断面積が上記上限を超えると、誘電率を十分に低下させるために第1絶縁層3及び第2絶縁層4を厚く形成しなければならず、当該絶縁電線1が不必要に大径化するおそれがある。
<絶縁層>
複数の絶縁層(第1絶縁層3及び第2絶縁層4)の少なくとも1層(本実施形態では第2絶縁層4)は、合成樹脂を主成分とするマトリックス5と、このマトリックス5中に分散する複数の気孔6とを有する。複数の気孔6は、複数の熱分解性樹脂粒子に由来している。また、導体2に直接積層される第1絶縁層3は気孔を有しない。つまり、本実施形態では、気孔を有しない絶縁層3が導体2に直接積層され、この気孔を有しない絶縁層3の外側に複数の気孔6を有する絶縁層4が積層されている(なお、以下では「複数の気孔6を有する絶縁層4」を「気孔層4」といい、「気孔を有しない絶縁層3」を「中実層3」ともいう)。当該絶縁電線1は、複数の気孔6が複数の熱分解性樹脂粒子に由来していることによって、複数の気孔6の形成時に気孔層4が外側に膨張するのを抑えることができる。その結果、当該絶縁電線1は、複数の気孔6の均一分散性を向上させ、可撓性の低下をさらに抑制することができる。
複数の絶縁層の平均厚さ(中実層3及び気孔層4を含めた絶縁層全体の平均厚さ)の下限としては、50μmが好ましく、80μmがより好ましい。一方、複数の絶縁層の平均厚さの上限としては、300μmが好ましく、200μmがより好ましい。複数の絶縁層の平均厚さが上記下限に満たない場合、コロナ放電開始電圧を高める効果が不十分となるおそれがある。逆に、複数の絶縁層の平均厚さが上記上限を超えると、当該絶縁電線1が不必要に大径化するおそれがある。
複数の絶縁層全体の伸び率(中実層3及び気孔層4を含めた絶縁層全体の伸び率)の下限としては、40%が好ましく、50%がより好ましく、70%がさらに好ましい。複数の絶縁層全体の伸び率が上記下限に満たないと、可撓性が不十分となるおそれがある。なお、複数の絶縁層全体の伸び率の上限としては、特に限定されるものではないが、例えば150%とすることができる。
複数の絶縁層全体の比誘電率(中実層3及び気孔層4を含めた絶縁層全体の比誘電率)の上限としては、3.3が好ましく、3がより好ましい。複数の絶縁層全体の比誘電率が上記上限を超えると、コロナ放電開始電圧が十分に高まらないおそれがある。一方、複数の絶縁層全体の比誘電率の下限としては、特に限定されるものではないが、例えば1.5とすることができる。複数の絶縁層全体の比誘電率が上記下限に満たないと、複数の絶縁層全体の破壊強度が不十分となるおそれがある。なお、「絶縁層の比誘電率」とは、絶縁層の誘電率と真空の誘電率との比をいう。
(中実層)
中実層3は、導体2と気孔層4との間に積層されることで導体2と気孔層4との密着力を高める。また、中実層3は、当該絶縁電線1の部分放電防止機能を高める。
中実層3は合成樹脂を主成分とする。上記合成樹脂としては、例えばフェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ樹脂、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、熱硬化ポリアミドイミド等の熱硬化性樹脂や、例えばポリイミド、ポリフェニルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、共重合ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルケトン、半芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、破壊強度及び耐熱性を確保し易いポリイミド、ポリアミドイミド、又はポリエステルイミドが好ましく、ポリイミドが特に好ましい。また、中実層3は、2種類以上の樹脂組成物の複合体又は積層体であってもよく、例えば熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体又は積層体であってもよい。さらに、上記熱可塑性樹脂にエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート等の熱反応性硬化剤を添加することにより架橋させて、一部熱硬化タイプにすることも可能である。加えて、熱硬化性樹脂の場合は硬化剤と組み合わせることで、半硬化状態又は硬化状態として使用することができる。また、中実層3は、密着向上剤等の添加剤を含んでもよい。
中実層3の平均厚さの下限としては、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、中実層3の平均厚さの上限としては、40μmが好ましく、20μmがより好ましく、5μmがさらに好ましい。中実層3の平均厚さが上記下限に満たないと、導体2と気孔層4との密着力及び当該絶縁電線1の部分放電防止機能を十分に高めることができないおそれがある。逆に、中実層3の平均厚さが上記上限を超えると、当該絶縁電線1が不必要に大径化するおそれがある。
(気孔層)
気孔層4は、1又は複数の焼付層からなる。各焼付層は、複数の熱分解性樹脂粒子を含む絶縁ワニスの塗布及び焼付によって形成される。当該絶縁電線1は、気孔層4が複数の焼付層からなる場合、各焼付層が導体2の外周面側に順次積層されており、この各焼付層中に複数の気孔6が分散されている。つまり、複数の気孔6は、導体2の軸と垂直な断面において、導体2を中心に多重リング状に配設されている。当該絶縁電線1は、複数の気孔6がこのように多重リング状に配設されることによって、気孔層4中に複数の気孔6を均一分散させ易い。また、かかる構成によると、当該絶縁電線1を湾曲する際に気孔6同士が干渉するのを抑制して、可撓性の低下を抑制し易い。
上記熱分解性樹脂粒子の材質としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の片方若しくは両方の末端又は一部をアルキル化、(メタ)アクリレート化若しくはエポキシ化した化合物;
ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等の炭素数1以上6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合体;
ウレタンオリゴマー、ウレタンポリマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート等の変性(メタ)アクリレートの重合物;
ポリ(メタ)アクリル酸;
これらの架橋物;
ポリスチレン、架橋ポリスチレンなどが挙げられる。上記熱分解性樹脂粒子は、各焼付層中に独立気泡を形成できるよう、マトリックス5を構成する樹脂組成物中に均一分散されることが好ましい。かかる点から、上記熱分解性樹脂粒子の材質として上記架橋物、架橋ポリスチレン等の架橋樹脂を用いることが好ましい。
上記熱分解性樹脂粒子の熱分解温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、上記熱分解性樹脂粒子の熱分解温度の上限としては、330℃が好ましく、300℃がより好ましい。上記熱分解性樹脂粒子の熱分解温度が上記下限に満たないと、当該絶縁電線1の製造時等に意図せず熱分解してしまうおそれがある。逆に、上記熱分解性樹脂粒子の熱分解温度が上記上限を超えると、熱分解性樹脂粒子を熱分解させるために必要となるエネルギーコストが過大となるおそれがある。なお、「熱分解温度」とは、窒素雰囲気下で室温から10℃/mimで昇温し、質量減少率が50%となるときの温度をいい、例えばエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差熱熱重量同時測定装置「TG/DTA」を用いて熱重量を測定することで測定できる。
各焼付層の平均厚さの下限としては、0.2μmが好ましく、0.8μmがより好ましい。一方、各焼付層の平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。各焼付層の平均厚さが上記下限に満たないと、各焼付け層中に複数の気孔6を分散させ難くなるおそれがある。逆に、各焼付層の平均厚さが上記上限を超えると、焼付層の製造が困難になるおそれがある。
1の上記焼付層の平均厚さに対する複数の気孔6の平均径の比の下限としては、0.05が好ましく、0.1がより好ましい。一方、1つの上記焼付層の平均厚さに対する複数の気孔6の平均径の比の上限としては、0.9が好ましく、0.7がより好ましい。1の上記焼付層の平均厚さに対する複数の気孔6の平均径の比が上記下限に満たないと、熱分解性樹脂粒子の粒子径が小さくなり過ぎて上記熱分解性樹脂粒子が凝集するおそれがある。逆に、1の上記焼付層の平均厚さに対する複数の気孔6の平均径の比が上記上限を超えると、1の焼付層中に気孔6を形成し難くなると共に、隣接する焼付層に存在する気孔6同士が連結するおそれがある。
複数の気孔6の平均径の下限としては、0.1μmであり、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、複数の気孔6の平均径の上限としては、10μmであり、5μmが好ましく、3μmがより好ましい。複数の気孔6の平均径が上記下限に満たないと、気孔層4の気孔率が十分に高まらず、低誘電率化が十分に促進されないおそれがある。また、複数の気孔6の平均径が上記下限に満たない場合、複数の熱分解性樹脂粒子の凝集に起因して、複数の気孔6が連結するおそれがある。逆に、複数の気孔6の平均径が上記上限を超えると、気孔層4中での複数の気孔6の分布にバラつきが生じ、誘電率の分布に偏りが生じ易くなる。また、複数の気孔6の平均径が上記上限を超えると、当該絶縁電線1の可撓性が低下するおそれがある。
気孔層4の気孔率の下限としては、10体積%であり、20体積%がより好ましい。一方、気孔層4の気孔率の上限としては、30体積%である。気孔層4の気孔率が上記下限に満たないと、低誘電率化が十分に促進されないおそれがある。逆に、気孔層4の気孔率が上記上限を超えると、可撓性及び絶縁破壊電圧が不十分となるおそれがある。
マトリックス5の主成分としては、例えばポリビニルホルマール、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ樹脂、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、熱硬化ポリアミドイミド等の熱硬化性樹脂や、ポリイミド、芳香族ポリアミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、破壊強度及び耐熱性を確保し易いポリイミド、熱硬化ポリアミドイミド、又は熱硬化ポリエステルイミドが好ましく、ポリイミドが特に好ましい。また、特に、マトリックス5の主成分としては、中実層3との密着力向上の点から、中実層3の主成分と同一であることが好ましい。
また、マトリックス5は、上記主成分に加えて、ポリフェニルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、共重合ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルケトン、半芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂を含んでもよい。当該絶縁電線1は、マトリックス5が上記主成分に加えて熱可塑性樹脂を含むことによって、気孔層4の可撓性を向上することができる。
マトリックス5に上記主成分に加えて熱可塑性樹脂が含まれる場合、マトリックス5におけるこの熱可塑性樹脂の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、マトリックス5におけるこの熱可塑性樹脂の含有量の上限としては、40質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限未満であると、気孔層4の可撓性の向上効果が十分に得られないおそれがある。逆に、上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限を超えると、気孔層4の強度が不十分となるおそれがある。
気孔層4の平均厚さの下限としては、50μmが好ましく、70μmがより好ましい。一方、気孔層4の平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、150μmがより好ましい。気孔層4の平均厚さが上記下限に満たないと、十分な破壊強度を保ちつつ、低誘電率化を促進するのが困難になるおそれがある。逆に、気孔層4の平均厚さが上記上限を超えると、当該絶縁電線1を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
気孔層4の平均厚さに対する中実層3の平均厚さの比の下限としては、0.005が好ましく、0.01がより好ましい。一方、気孔層4の平均厚さに対する中実層3の平均厚さの比の上限としては、0.35が好ましく、0.1がより好ましい。気孔層4の平均厚さに対する中実層3の平均厚さの比が上記下限に満たないと、導体2と気孔層4との密着力及び当該絶縁電線1の部分放電防止機能を十分に高めることができないおそれがある。逆に、気孔層4の平均厚さに対する中実層3の平均厚さの比が上記上限を超えると、気孔層4の厚さを維持して低誘電率化を促進した場合に、当該絶縁電線1を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。
また、当該絶縁電線1は、気孔層4の平均厚さ、及び気孔層4の平均厚さに対する中実層3の平均厚さの比が共に上記範囲内であることがより好ましい。当該絶縁電線1は、気孔層4の平均厚さ、及び気孔層4の平均厚さに対する中実層3の平均厚さの比が共に上記範囲内であることによって、導体2と気孔層4との密着力及び当該絶縁電線1の部分放電防止機能を十分に高めつつ、低誘電率化を容易かつ確実に促進することができる。また、当該絶縁電線1は、上述のように各焼付層中に複数の気孔6が略均一に分散されることで、気孔層4の平均厚さを比較的大きくしても可撓性の低下を抑制することができる。そのため、当該絶縁電線1は、気孔層4の平均厚さを上記範囲とすることで、複数の絶縁層全体(中実層3及び気孔層4)の破壊強度を高め易い。
<絶縁電線の製造方法>
当該絶縁電線1の製造方法は、例えば中実層形成用樹脂組成物を調製する工程と、導体2の外周面に中実層3を形成する工程と、気孔層形成用樹脂組成物を調製する工程と、中実層3の外側に気孔層4を形成する工程とを備える。
(中実層形成用樹脂組成物調製工程)
上記中実層形成用樹脂組成物調製工程では、中実層3を構成する樹脂組成物を溶剤で希釈した中実層用ワニス(絶縁ワニス)を調製する。
希釈用の上記溶剤としては、絶縁ワニスに従来より用いられている公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン等の極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、クレゾール、クロルフェノールなどのフェノール類、ピリジンなどの第三級アミン類等が挙げられ、これらの有機溶媒はそれぞれ単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
このような溶剤で希釈することにより樹脂組成物が導体2に塗布し易くなる。また、この溶剤は中実層形成工程において加熱により揮発する。
上記溶剤の沸点の下限としては、140℃が好ましく、160℃がより好ましい。また、上記溶剤の沸点の上限としては、230℃が好ましく、210℃がより好ましい。上記溶剤の沸点が上記下限に満たないと、加熱前に揮発性溶剤が蒸発して当該絶縁電線1の捲線加工性が低下するおそれがある。一方、上記溶剤の沸点が上記上限を超えると、溶剤の揮発に時間を要し、中実層3の形成時間が長くなるおそれがある。
(中実層形成工程)
上記中実層形成工程では、上記中実層形成用樹脂組成物調製工程で調製した中実層用ワニスを導体2の外周面に塗布した後、焼付けることで導体2の外周面に中実層3を形成する。焼付温度は、使用する樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、例えば200℃以上600℃以下である。上記中実層形成工程では、中実層3が所定の厚さとなるまで上記中実層用ワニスの塗布及び焼付を繰り返してもよい。
(気孔層形成用樹脂組成物調製工程)
上記気孔層形成用樹脂組成物調製工程では、気孔層4のマトリックス5を構成する樹脂組成物を溶剤で希釈したものに、上記熱分解性樹脂粒子を混合して気孔層用ワニス(絶縁ワニス)を調製する。上記気孔層形成用樹脂組成物調製工程で用いられる溶剤としては、上記中実層形成用樹脂組成物調製工程で用いられる溶剤と同様のものが挙げられる。
上記溶剤により希釈して調製した気孔層用ワニスの樹脂固形分濃度の下限としては、20質量%が好ましく、22質量%がより好ましい。一方、上記気孔層用ワニスの樹脂固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記気孔層用ワニスの樹脂固形分濃度が上記下限未満であると、気孔層用ワニスを塗布する際の1回の塗布量が少なくなるため、所望の厚さの気孔層4を形成するためのワニス塗布工程の繰り返し回数が多くなり、ワニス塗布工程の時間が長くなるおそれがある。逆に、上記気孔層用ワニスの樹脂固形分濃度が上記上限を超えると、上記熱分解性樹脂粒子を均一に混合し難く、希釈に要する時間が長くなるおそれがある。
(気孔層形成工程)
上記気孔層形成工程では、上記気孔層形成用樹脂組成物調製工程で調製した気孔層用ワニスを中実層形成工程で形成した中実層3の外周に塗布した後、焼付けることで気孔層4を形成する。焼付温度は、使用する樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、例えば200℃以上350℃以下である。この焼付によって上記熱分解性樹脂粒子が熱分解して気孔層4中に複数の気孔6が形成される。
上記気孔層形成工程では、中実層3の外周に形成される気孔層4が所定の厚さとなるまで、上記気孔層用ワニスの塗布及び焼付を繰り返す。これにより、複数の気孔6が、導体2の軸と垂直な断面において導体2を中心に多重リング状に配設される。なお、上記気孔層形成工程では、気孔層用ワニスの塗布及び焼付のみを繰り返し行うことが好ましいが、必ずしも気孔層用ワニスの塗布及び焼付のみを繰り返し行う必要はなく、例えば必要に応じて上記熱分解性樹脂粒子を含まない絶縁ワニスの塗布及び焼付を行ってもよい。
[利点]
当該絶縁電線1は、複数の気孔6を有する気孔層4を備え、この気孔層4のマトリックス5中に分散する複数の気孔6の平均径及びこの気孔層4の気孔率が上記範囲内であるので、この気孔層4中に複数の気孔6が適度かつ略均一に分散し易い。そのため、当該絶縁電線1は、可撓性の低下を抑制しつつ、低誘電率化を促進することができる。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上記実施形態では、中実層が導体に直接積層される構成について説明したが、当該絶縁電線は、必ずしも中実層が導体に直接積層される必要はない。当該絶縁電線の具体的構成としては、例えば図2,3に示すような構成も採用可能である。
図2の絶縁電線11は、気孔層13が導体12に直接積層され、この気孔層13の外側に中実層14が積層されている。気孔層13及び中実層14の構成は、図1の気孔層4及び中実層3と同様とすることができる。当該絶縁電線11は、このような構成によっても、当該絶縁電線1と同様、可撓性の低下を抑制しつつ、低誘電率化を促進することができる。
図3の絶縁電線21は、第1中実層23が導体22に直接積層され、第1中実層23の外側に気孔層24が積層され、気孔層24の外側に第2中実層25が積層されている。気孔層24の構成としては、図1の気孔層4と同様とすることができる。また、第1中実層23及び第2中実層25の構成としては、図1の中実層3と同様とすることができる。つまり、当該絶縁電線21は、図1の絶縁電線1の気孔層4の外側に、中実層がさらに積層された構成とされている。当該絶縁電線21は、このような構成によっても、当該絶縁電線1と同様、可撓性の低下を抑制しつつ、低誘電率化を促進することができる。また、当該絶縁電線21は、第1中実層23に加えて気孔層24の外側に第2中実層25を備えるので、部分放電防止機能をさらに高めることができる。
なお、当該絶縁電線は、図1乃至図3に示した構成に限定されるものではなく、必要に応じて他の層を備えたものであってもよく、例えば複数の気孔層を備えていてもよい。また、当該絶縁電線は、線状の導体と、この導体の外周面に積層される1の気孔層のみから構成されてもよい。
上記気孔層は、必ずしも1又は複数の焼付層によって構成される必要はない。当該絶縁電線は、例えば上記熱分解性樹脂粒子に代えて、化学発泡剤、熱膨張マイクロカプセル等の発泡剤や、シラスバルーン、ガラスバルーン、セラミックバルーン、有機樹脂バルーン等の中空フィラーを用いることも可能である。以下、上記化学発泡剤及び熱膨張マイクロカプセルについて詳述する。
上記化学発泡剤は、加熱することにより分解して、例えば窒素ガス、炭酸ガス、一酸化炭素、アンモニアガス等を発生するもので、有機発泡剤又は無機発泡剤が使用できる。
上記有機発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド(A.D.C.A)、アゾビスイソブチロニトリル(A.I.B.N)等のアゾ系発泡剤、例えばジニトロソペンタメチレンテトラミン(D.P.T)、N,N’ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド(D.N.D.M.T.A)等のニトロソ系発泡剤、例えばP−トルエンスルホニルヒドラジド(T.S.H)、P,P−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(O.B.S.H)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(B.S.H)等のヒドラジド系、他にはトリヒドラジノトリアジン(T.H.T)、アセトン−P−スルホニルヒドラゾンなどが例示され、これらを単独で、又は二種類以上合わせて使用できる。
また、上記無機発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム、ソジウムボロンハイドライド、シリコンオキシハイドライド等が例示される。一般的に無機発泡剤は、ガス発生速度が有機発泡剤より緩慢でありガス発生の調整が難しい。そのため、上記化学発泡剤としては、有機発泡剤が好ましい。
上記化学発泡剤の発泡開始温度つまり熱分解温度の下限としては、140℃が好ましく、160℃がより好ましい。一方、上記化学発泡剤の発泡開始温度の上限としては、250℃が好ましく、220℃がより好ましい。上記化学発泡剤の発泡開始温度が上記下限に満たないと、当該絶縁電線の製造時等に化学発泡剤が意図せず発泡してしまうおそれがある。逆に、上記化学発泡剤の発泡開始温度が上記上限を超えると、発泡剤を発泡させるために必要なエネルギーコストが過大となるおそれがある。
上記気孔層には、上記化学発泡剤と共に、発泡助剤を配合してもよい。発泡助剤としては、上記化学発泡剤の熱分解を促進するものであれば特に限定されず、例えば加硫促進剤、充填剤、加硫促進助剤、PVC用安定剤、老化防止剤、加硫剤、尿素化合物等が挙げられる。このような発泡助剤は、化学発泡剤の分解を促進し、発泡温度を低下させる。
上記加硫促進剤としては、例えばグアジニン系、アルデヒド−アンモニア系、スルフェンアミド系、チウラム系、ザンテート系、アルデヒド−アミン系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系のもの等が挙げられる。上記充填剤としては、例えばシリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。上記加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛、塩基性炭酸鉛、水酸化カルシウム、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ジエチレングルコール、ジ−n−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、有機アミン等が挙げられる。上記PVC用安定剤としては、例えば三塩基性硫酸鉛、ジブチルすずジラウレート、ジブチルすずジマレート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。上記老化防止剤としては、例えばナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、P−フェニレン系、キノリン系、モノフェノール系、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、亜りん酸エステル系のもの等が挙げられる。上記加硫剤としては、例えばトリアリルイソシアネート、硫黄安息香酸アンモニウム等が挙げられる。その他薬品としては、無水フタル酸、サリチル酸、安息香酸、三酸化アンチモン、白色ワセリン、酸化チタン、酸化カドミウム、ホウ砂、グリセリン、ジブチルチンジマレート等が挙げられる。上記発泡助剤としては、これらの中でも、亜鉛華、三塩基性硫酸鉛、及び各種加硫促進剤が好ましい。
これらの発泡助剤の化学発泡剤100質量部に対する配合量の下限としては、5質量部が好ましく、50質量部がより好ましい。一方、上記発泡助剤の配合量の上限としては、200質量部が好ましく、150質量部がより好ましい。上記発泡助剤の配合量が上記下限に満たないと、化学発泡剤を分解させる効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記発泡助剤の配合量が上記上限を超えると、当該絶縁電線の製造時等に気孔層が意図せず膨張してしまうおそれがある。
上記熱膨張マイクロカプセルは、内部発泡剤からなる芯材(内包物)と、この芯材を包む外殻とを有し、芯材の膨張によって外殻が膨張する。
上記熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤は、加熱により膨張又は気体を発生するものであればよく、その原理は問わない。上記熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤としては、例えば低沸点液体、化学発泡剤及びこれらの混合物を使用することができる。
上記低沸点液体としては、例えばブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン等のアルカンや、トリクロロフルオロメタン等のフレオン類などが好適に用いられる。
上記化学発泡剤としては、加熱によりNガスを発生するアゾビスイソブチロニトリル等の熱分解性を有する物質が好適に用いられる。
上記熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の発泡開始温度、つまり低沸点液体の沸点又は化学発泡剤の熱分解温度としては、後述する熱膨張性マイクロカプセルの外殻の軟化温度以上とされる。
より詳しくは、上記熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の発泡開始温度の下限としては、140℃が好ましく、160℃がより好ましい。一方、上記熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の発泡開始温度の上限としては、250℃が好ましく、220℃がより好ましい。上記熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の発泡開始温度が上記下限に満たないと、当該絶縁電線の製造時等に熱膨張性マイクロカプセルが意図せず膨張してしまうおそれがある。逆に、上記熱膨張性マイクロカプセルの内部発泡剤の発泡開始温度が上記上限を超えると、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させるために必要なエネルギーコストが過大となるおそれがある。
一方、上記熱膨張性マイクロカプセルの外殻は、上記内部発泡剤の発泡時に破断することなく膨張し、発生したガスを包含するマイクロバルーンを形成できる延伸性を有する材質から形成される。この熱膨張性マイクロカプセルの外殻を形成する材質としては、通常は、熱可塑性樹脂等の高分子を主成分とする樹脂組成物が用いられる。
上記熱膨張性マイクロカプセルの外殻の主成分とされる熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリレート、メタアクリレート、スチレン等の単量体から形成された重合体、あるいは2種以上の単量体から形成された共重合体が好適に用いられる。好ましい熱可塑性樹脂の一例としては、アクリロニトリル系共重合体が挙げられ、この場合の内部発泡剤の分解温度は、70℃以上250℃以下とされる。
加熱前の上記熱膨張性マイクロカプセルの平均径の下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、加熱前の熱膨張性マイクロカプセルの平均径の上限としては、150μmが好ましく、100μmがより好ましい。加熱前の上記熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記下限に満たないと、十分な膨張率が得られないおそれがある。逆に、加熱前の上記熱膨張性マイクロカプセルの平均径が上記上限を超えると、上記孔層が不必要に厚くなるおそれや、上記気孔層の膨張が不均一になるおそれがある。なお、「熱膨張性マイクロカプセルの平均径」とは、熱膨張性マイクロカプセルの10以上のサンプルを顕微鏡観察した際の平面視における最大径とこの最大径に直交する方向の径との平均値をいうものとする。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例]
[No.1]
銅を鋳造、延伸、伸線及び軟化し、断面が円形で直径が1.0mmの導体を得た。次に、主成分としてポリイミド前駆体を用い、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用いて主成分をこの溶剤で希釈した中実層用ワニスを作成した。この中実層用ワニスを上記導体の外周面に塗布し、線速4.0m/min、加熱炉入口温度250℃、加熱炉出口温度350℃の条件で焼き付けることによって導体の外周面に平均厚さ3μmの中実層を形成した。次に、主成分としてポリイミド前駆体を用い、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用い、主成分をこの溶剤で希釈した絶縁ワニスを作成した。さらに、この絶縁ワニスに発泡剤(積水化成品工業製の「SSX−102」)を気孔層の気孔率が10体積%となるように分散させて気孔層用ワニスを作成した。この気孔層用ワニスを上記中実層の外周に塗布し、線速4.0m/min、加熱炉入口温度250℃、加熱炉出口温度350℃の条件で焼き付ける工程を繰り返し行うことで中実層の外周面に平均厚さ97μmの気孔層を形成し、No.1の絶縁電線を得た。なお、この絶縁電線を軸に対して垂直に切断し、その切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、この気孔層中の複数の気孔の平均径は2.5μmであった。
[No.2〜No.4]
中実層及び気孔層の平均厚さ、気孔層の気孔率及び気孔の平均径を表1の通りとした以外はNo.1と同様にして、No.2〜No.4の絶縁電線を得た。
[比較例]
[No.5]
中実層及び気孔層の平均厚さ、気孔層の気孔率及び気孔の平均径を表1の通りとした以外はNo.1と同様にして、No.5の絶縁電線を得た。
[No.6]
平均厚さを表1の通りとした以外はNo.1と同様にして、導体の外周面に中実層を形成した。さらに、No.1の気孔層用ワニスに代えて、主成分としてポリイミド前駆体を用い、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを用い、主成分をこの溶剤で希釈した絶縁ワニスを中実層の外周に塗布し、No.1と同様の条件で焼き付けることで中実層の外周面に平均厚さ3μmの第2中実層を形成して、No.6の絶縁電線を得た。
Figure 2018170299
<密着力>
No.1〜No.6の絶縁電線の長手方向に、長さ2cm程度の切れ込みを2本、0.5mm間隔で入れた。この2本の切れ込みによって区切られる帯状の部分の一端をピンセットを用いて導体から剥離し導体と絶縁層との間の密着力を評価した。この評価結果を表2に示す。
A:引き剥がし不可能(密着力良好)
B:引き剥がし可能(密着力悪い)
<伸び率>
No.1〜No.6の絶縁電線について、絶縁層を導体から筒状に剥離し、導体から剥離された長さ5cmの絶縁層を、引張試験機にて、25℃の環境下で長手方向に引張速度50mm/分で引っ張った場合の破断時の伸び率[%]を測定した。なお、伸び率の測定は、n=5で実施し、その平均値を求めた。この測定結果を表2に示す。
<可撓性>
1.0mmの径を有する丸棒を用意し、No.1〜No.6の絶縁電線を、初期長さに対して伸長した状態又は伸長しない状態で、絶縁電線の軸と丸棒の軸とが垂直となるように丸棒に当接させつつ90°折り曲げた。さらに、折り曲げた状態の絶縁電線を顕微鏡で目視し、亀裂の有無を観察することで絶縁電線の可撓性を以下の基準で評価した。この評価結果を表2に示す。
A:初期長さに対して30%伸長しても亀裂が生じない。
B:初期長さに対して20%伸長しても亀裂が生じないが、30%伸長すると亀裂が生じる。
C:初期長さに対して10%伸長しても亀裂が生じないが、20%伸長すると亀裂が生じる。
<絶縁破壊電圧>
No.1〜No.6の絶縁電線について、JIS−C3216−5:2011に従い、2個撚り線の線間に交流電圧を加え500V/秒で昇圧し、絶縁破壊したときの電圧[kV]を測定した。なお、絶縁破壊電圧の測定は、n=5で実施し、その平均値を求めた。この測定結果を表2に示す。
<比誘電率>
No.1〜No.6の絶縁電線について、絶縁層の比誘電率をJIS−C2138:2007に準拠して測定した。この測定結果を表2に示す。
<溶剤浸漬試験>
絶縁電線は、高電圧が印加されるような使用では高温となるため、このような場合には、絶縁電線を冷却するため、例えば絶縁電線が溶剤中に浸漬して使用されることがある。このように絶縁電線が溶剤中に浸漬されて使用される場合でも、所望の特性が得られることを確認するため、溶剤浸漬試験を行った。具体的には、No.1〜No.6の絶縁電線を試験用油IRM903に150℃で72時間浸漬させた後、各電線の比誘電率を測定した。この溶剤浸漬試験は、n=3で実施し、その平均値を求めて、溶剤への浸漬前の比誘電率と比較した。具体的には、溶剤浸漬試験前後の比誘電率の差が0.05未満のものを比誘電率の上昇が認められなかったものとして評価結果Aとした。また、溶剤浸漬試験前よりも溶剤浸漬試験後の比誘電率の方が0.05以上0.2未満大きいものを比誘電率が少し上昇したものとして評価結果Bとし、溶剤浸漬試験後の比誘電率の方が0.2以上大きいものを比誘電率が大幅に上昇したものとして評価結果Cとした。これらの比誘電率の上昇判定結果を表2に示す。
Figure 2018170299
[評価結果]
表1及び表2に示すように、No.5の絶縁電線は、気孔層の気孔率が50体積%と高いため、可撓性が不十分であることが分かる。また、No.5の絶縁電線は、気孔層の気孔率が50体積%と高いため複数の気孔が連通し、その結果絶縁層中への溶剤の浸透も認められ、溶剤浸漬前の比誘電率に比べて溶剤浸漬後の比誘電率が高くなっている。このことから、No.5の絶縁電線は、溶剤中に浸漬して使用することに適しておらず、高電圧が印加されるような使用には向いていないと考えられる。一方、No.6の絶縁電線は、絶縁層が複数の気孔を有していないため、比誘電率が高めとなっていることが分かる。他方、No.1〜No.4の絶縁電線は、気孔層の気孔率が10体積%〜30体積%であることから、可撓性及び比誘電率共に良好であることが分かる。さらに、No.1〜No.4の絶縁電線は、溶剤浸漬前後で比誘電率の変化が殆ど見られないことから、溶剤中への浸漬や、溶剤を塗布して使用することにも適していると考えられる。
本発明に係る絶縁電線は、可撓性の低下を抑えつつ、低誘電率化を促進することができるので、高電圧で使用されるモータ等の適用電圧が高い電気機器に適用できる。
1,11,21 絶縁電線
2,12,22 導体
3 絶縁層(中実層)
14,23,25 中実層
4 絶縁層(気孔層)
13,24 気孔層
5 マトリックス
6 気孔

Claims (6)

  1. 線状の導体と、この導体の外周面に積層される1又は複数の絶縁層とを備える絶縁電線であって、
    上記1又は複数の絶縁層の少なくとも1層が、合成樹脂を主成分とするマトリックスと、このマトリックス中に分散する複数の気孔とを有しており、
    上記複数の気孔の平均径が0.1μm以上10μm以下であり、
    上記複数の気孔を有する絶縁層の気孔率が10体積%以上30体積%以下である絶縁電線。
  2. 上記導体に直接積層される絶縁層が気孔を有さず、
    この気孔を有しない絶縁層の外側に上記複数の気孔を有する絶縁層が積層されている請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 上記複数の気孔が、複数の熱分解性樹脂粒子に由来する請求項1又は請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 上記複数の気孔を有する絶縁層が1又は複数の焼付層からなり、
    1の上記焼付層の平均厚さに対する複数の気孔の平均径の比が0.05以上0.9以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の絶縁電線。
  5. 上記複数の気孔を有する絶縁層の平均厚さが50μm以上200μm以下であり、この複数の気孔を有する絶縁層の平均厚さに対する上記気孔を有しない絶縁層の平均厚さの比が0.005以上0.35以下である請求項2に記載の絶縁電線。
  6. 上記1又は複数の絶縁層全体の伸び率が40%以上150%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の絶縁電線。
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