JP2017015495A - レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】伝搬遅延時間の2次以上の変化を生じている場合でも、目標検出性能の劣化を防止することができるレーダ装置を得ることを目的とする。【解決手段】不要信号低減回路7が、KT補償回路6によるKT補償後の遅延ヒストリをファスト周波数ρで2分割し、その分割した各々の遅延ヒストリをスロータイムη方向にFTすることで遅延ドップラー分布をそれぞれ生成し、一方の遅延ドップラー分布の複素共役と他方の遅延ドップラー分布とを乗算するように構成する。これにより、目標の信号以外の不要信号を低減することができる。【選択図】図1

Description

この発明は、観測対象である目標とレーダとの間の相対的な位置関係を変えながら電波を繰り返し送受信するレーダの受信信号を開口合成することで、目標について高分解能化された電波画像を再生するレーダ装置に関するものである。
合成開口レーダであるSAR(Synthetic Aperture Radar)や、逆合成開口レーダであるISAR(Inverse SAR)などの画像レーダでは、目標とレーダの相対位置を変えながら異なる複数の時刻に目標を観測し、各観測で得られた受信信号を、目標に固定された座標系内でのレーダの方向(見込み角)を考慮しながら合成(開口合成)することで、画像の高分解能化が図られている。
SARでは、静止中の目標(例えば、地表面、地上構造物、静止している車両など)の観測が主に想定され、レーダが位置を変えることで見込み角の変化が得られる。
一方、ISARでは、移動する目標(例えば、航空機、車両、船舶など)の観測が主に想定され、目標の運動(例えば、位置の移動、回転、動揺など)を利用することで、必ずしもレーダ自身が位置を変化しなくても、見込み角の変化が得られる。
目標上のある反射点に関する各観測において、電波の送信時刻を基準とする相対時刻における受信信号は、その観測の際のレーダと目標の相対位置関係によって定まる伝搬経路、即ち、送信アンテナから当該反射点を介して受信アンテナに至る伝搬経路を電波が移動するのに要する分の時間遅延を生じ、かつ、その反射点の形状や材質に応じて振幅倍された送信信号として与えられる。目標上に複数の反射点が存在する場合は、これらの重ね合わせとして与えられる。以下では、電波の送信時刻からの経過時間をファストタイム(fast time)と称する。また、上記伝搬経路を電波が移動することによって生じる時間遅延を伝搬遅延時間と称する。この受信信号(または、この受信信号を必要に応じて後述するパルス圧縮などで高分解能化した信号)のファストタイムに対する分布(プロフィール)は、各反射点の伝搬遅延時間の影響が反映されていることを踏まえ、以下では遅延プロフィールと称する。なお、ファストタイムを光速倍したプロフィールは、伝搬経路長に対するプロフィールとみなせる。さらに、送信アンテナと受信アンテナの位置が一致するモノスタティック(monostatic)観測の場合には、各反射点の伝搬経路長の1/2がその各反射点までの距離となることから、遅延プロフィールのファストタイムを(光速/2)倍したプロフィールは、レーダからの距離(レンジ)に対するプロフィールとみなせる。このプロフィールはレンジプロフィールとして良く知られている。
各観測で得られた上記各遅延プロフィールの観測毎の履歴(ヒストリ)を、ファストタイムと各観測の時刻を2軸とする2次元分布としたものを遅延ヒストリと称する。各観測における電波の送信時刻をスロータイム(slow time)と称する。遅延ヒストリを与えるこれら2種類の時間のうち、ファストタイムをフーリエ変換(FT:Fourier Transform)した周波数をファスト周波数と称し、スロータイムをフーリエ変換した周波数をドップラー周波数と称する。
以下では、ファストタイムの軸とファスト周波数の軸をまとめてファスト軸、スロータイムの軸とドップラー周波数の軸をまとめてスロー軸と呼ぶことがある。
遅延プロフィールをFTして得られるファスト周波数に対するプロフィールを遅延スペクトルと称する。また、遅延ヒストリをファスト周波数方向にFTして得られる遅延スペクトルのヒストリを遅延スペクトルヒストリと称する。さらに、遅延ヒストリをスロータイム方向にFTして得られる分布を遅延ドップラー分布と称する。
開口合成を実施する一つの方法として、遅延ヒストリをスロータイム方向にFTすることで、「各反射点に関する受信信号を、ファストタイムとドップラー周波数を軸とする遅延ドップラー分布上の一つのファストタイムとドップラー周波数の点に結像させる」方法が挙げられる。しかし、このような方法で画像を結像させるには、少なくとも、観測中の各反射点の伝搬遅延の変化が、ファストタイム軸方向の分解能セルの大きさ以下となることが必要となる。これを超えた場合には、目標の信号は複数の分解能セルに亘って存在することとなり、これが画像のぼけの一因となる。しかし、目標とレーダの相対運動や前記分解能セルの大きさ、観測時間の長さ等によっては、上記分解能セルを超えた移動が発生することも有り得る。従って、何らかの方法で、この分解能セルの移動、言い換えると、伝搬遅延時間のスロータイムに対する変化を推定して、この変化を打ち消すように補償してやる必要がある。
また、上記のような画像レーダ以外でも、複数回の観測で得られた各遅延プロフィールをスロータイム方向のFTによって、目標速度相当のドップラーセルに目標信号を積み上げて、信号対雑音比を向上させることで、目標の検出性能を高める処理が実施されることがある。
この処理の目的は、開口合成を行うことではないが、処理的には上記の開口合成と同等の処理である。この処理はコヒーレント積分と呼ばれることがあり、上記の開口合成をコヒーレント積分の一種と捉えることもできる。
この処理を実施する場合でも、ファストタイム方向の目標の移動の影響でぼけが生じた場合、即ち、信号の積み上がりのロスが発生した場合、信号が正しく積み上がった場合と比べて、信号対雑音比が劣化するため、目標検出性能の劣化が発生する。この問題を回避するために、画像レーダの場合と同様に、伝搬遅延時間のスロータイムに対する変化を推定して、この変化を打ち消すように補償してやる必要がある。
以下の非特許文献1には、遅延スペクトルヒストリの各ファスト周波数に応じたサンプリング間隔で、遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることで、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償する方法が提案されている。この方法は、KT(Keystone Transform)と呼ばれている。
Perry, R.P.; DiPietro, R.C.; Fante, R., "SAR imaging of moving targets," Aerospace and Electronic Systems, IEEE Transactions on , vol.35, no.1, pp.188,200, Jan 1999
従来のレーダ装置は以上のように構成されているので、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償することができるが、伝搬遅延時間の2次以上の変化を生じている場合、2次以上の変化の影響で、目標の検出性能が劣化してしまうことがあるという課題があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、伝搬遅延時間の2次以上の変化を生じている場合でも、目標検出性能の劣化を防止することができるレーダ装置を得ることを目的とする。
この発明に係るレーダ装置は、観測対象である目標との相対的な位置関係を変えながら電波を繰り返し送受信するレーダから、その電波の受信信号として、その電波の送信時刻からの経過時間であるファストタイムと電波の送信時刻であるスロータイムとの2次元分布である遅延ヒストリを取得する信号取得回路と、信号取得回路により取得された遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリの各ファスト周波数に対応するサンプリング間隔で、その遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることで、その遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する時間変化補償回路とを設け、不要信号低減回路が、時間変化補償回路による補償後の遅延ヒストリをファスト周波数で2分割し、その分割した各々の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで遅延ドップラー分布をそれぞれ生成し、一方の遅延ドップラー分布の複素共役と他方の遅延ドップラー分布とを乗算するようにしたものである。
この発明によれば、不要信号低減回路が、時間変化補償回路による補償後の遅延ヒストリをファスト周波数で2分割し、その分割した各々の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで遅延ドップラー分布をそれぞれ生成し、一方の遅延ドップラー分布の複素共役と他方の遅延ドップラー分布とを乗算するように構成したので、目標の信号以外の不要信号を低減することができるようになる。そのため、伝搬遅延時間の2次以上の変化を生じている場合でも、目標検出性能の劣化を防止することができる効果がある。
この発明の実施の形態1によるレーダ装置を示す構成図である。 レーダ装置がコンピュータで構成される場合のハードウェア構成図である。 この発明の実施の形態1によるレーダ装置の不要信号低減回路7を示す構成図である。 遅延ドップラー画像の一例を示す説明図である。 アップサンプリングによってドップラー帯域が拡張された遅延ドップラー画像一例を示す説明図である。 重み関数の乗算による効果の一例を示す説明図である。 この発明の実施の形態2による画像レーダ装置のKT補償回路6を示す構成図である。 KT補償回路6の受信信号スケーリング変換回路45を示す構成図である。 KT補償回路6によるマージ付加処理を示す説明図である。 この発明の実施の形態3によるレーダ装置を示す構成図である。
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面にしたがって説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置を示す構成図である。
図1において、信号取得回路1は観測対象である目標との相対的な位置関係を変えながら電波を繰り返し送受信するレーダから、電波の受信信号として、電波の送信時刻からの経過時間であるファストタイムと、各観測における電波の送信時刻であるスロータイムとの2次元分布である遅延ヒストリを取得する回路である。
具体的には、レーダ内の送信アンテナから送信機で生成された高周波信号を電波として目標に向けて放射したのち、目標に反射されて戻ってきた当該電波の反射波が受信アンテナに入射されると、受信機が当該電波の反射波を検波して復調することで受信信号を取得する処理を繰り返し実施することで、電波のファストタイムとスロータイムの2次元分布である遅延ヒストリを取得する。また、必要に応じて、電波の送信信号を用いて、受信信号をパルス圧縮することで、ファストタイム軸(または、ファストタイム軸を(光速/2)倍したレンジ軸)を高分解能化させる処理も実施する。
ただし、レーダは、送信アンテナと受信アンテナを別々に実装している必要はなく、送信と受信を時分割で行う送受信アンテナと、送信信号と受信信号を切り換える送受切換器とを実装するものであってもよい。また、送信系と受信系が別の位置に配置されているbistatic構成のレーダであってもよいし、放送波のように空間を飛交う既存の電波を送信波として利用するレーダであってもよい。
既存の電波を送信波として利用する場合は、目標の散乱波を受信する第1の受信系と、送信局からの直接波を受信する第2の受信系とを用意し、2つの受信系の相互相関によって、上記のファストタイム軸の高分解能化を実現するようにする。この場合は、その伝搬遅延時間は、直接波のパスの伝搬遅延時間を基準とした値になる。なお、使用する既存の電波が一般的な画像レーダで用いられるパルス波形ではなく連続波であった場合でも、反射波や直接波を適当な時間幅や時間間隔で切出すことで、異なるスロータイムにおける受信信号を得ることができる。
相対運動特定回路2は外部装置から目標の運動諸元を収集して、その運動諸元から目標との相対運動を特定し、その相対運動からスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を推定するとともに、その伝搬遅延時間の変化の推定誤差として、スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化の予測値se1と、スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の2次変化の予測値se2とを特定する回路である。
外部装置としては、例えば目標を追尾するレーダである目標追尾装置や、目標の運動諸元を格納しているデータベースなどが考えられ、外部装置から目標の位置、速度や加速度などの運動諸元を収集する。また、自レーダ装置が静止しておらず、レーダプラットフォームに搭載されている場合には、そのレーダプラットフォームに搭載されている運動センサや位置センサから自レーダ装置の運動諸元を収集する。
目標の運動諸元と自レーダ装置の運動諸元との差分を求めることで、目標との相対運動を特定することができる。
前処理伝搬遅延補償量推定回路3は相対運動特定回路2により推定された伝搬遅延時間の変化を打ち消す伝搬遅延補償量を推定する回路である。
前処理伝搬遅延補償回路4は前処理伝搬遅延補償量推定回路3により推定された伝搬遅延補償量を用いて、信号取得回路1により取得された遅延ヒストリを補償する回路である。
アップサンプリング回路5は前処理伝搬遅延補償回路4により補償された遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリをスロータイム方向にアップサンプリングする回路である。
即ち、アップサンプリング回路5は相対運動特定回路2により特定されたスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化の予測値se1にしたがってアップサンプリングの点数であるNを設定し、その遅延スペクトルヒストリにおけるスロータイム方向のセル間に、(N−1)個の0のセルを挿入することで、その遅延スペクトルヒストリのサンプリング周波数をN倍にする回路である。
KT補償回路6は上記の非特許文献1に開示されているKT、あるいは、以下の非特許文献2に開示されている一般的なKTの改良技術によって、アップサンプリング回路5によりスロータイム方向にアップサンプリングされた遅延スペクトルヒストリの各ファスト周波数に対応するサンプリング間隔で、その遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることで、その遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する時間変化補償回路である。
これにより、目標の像である真像については1次の伝搬遅延時間の変化が解消されるが、真像以外の像を偽像については1次の伝搬遅延時間の変化が解消されていない。
[非特許文献2]
Daiyin Zhu; Li, Yong; Zhaoda Zhu, “A Keystone Transform Without Interpolation for SAR Ground Moving-Target Imaging,” Geoscience and Remote Sensing Letters, IEEE , vol.4, no.1, pp.18,22, Jan. 2007
不要信号低減回路7はKT補償回路6によりスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化が補償された遅延ヒストリをファスト周波数で2分割し、その分割した各々の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで遅延ドップラー分布をそれぞれ生成し、一方の遅延ドップラー分布の複素共役と他方の遅延ドップラー分布とを乗算することで、目標の信号以外の不要信号を低減する回路である。
伝搬遅延ドップラー特定回路8は不要信号低減回路7により不要信号が低減された遅延ドップラー分布から目標の像を検出して、その目標の像が存在しているファストタイム上の位置及び目標のドップラー周波数を特定する回路である。
1次変化補償量算出回路9は伝搬遅延ドップラー特定回路8により特定された目標のドップラー周波数から、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償するための1次変化補償量を算出する回路である。
1次変化補償回路10は1次変化補償量算出回路9により算出された1次変化補償量を用いて、前処理伝搬遅延補償回路4により補償された遅延ヒストリに残存しているスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償する回路である。
参照信号抽出回路11は1次変化補償回路10により伝搬遅延時間の1次変化が補償された遅延ヒストリから、伝搬遅延ドップラー特定回路8により特定された目標の像が存在しているファストタイム上の位置における全てのスロータイムの信号を参照信号として抽出する回路である。
伝搬遅延補償量精推定回路12は参照信号抽出回路11により抽出された参照信号から、1次変化補償回路10により伝搬遅延時間の1次変化が補償された遅延ヒストリに残存している伝搬遅延時間の変化の影響で発生する位相変化を推定し、その位相変化の2π毎の折り返しを排除して、折り返し排除後の位相変化を伝搬遅延変化に換算し、その伝搬遅延変化を打ち消す伝搬遅延補償量を推定する回路である。
伝搬遅延変化補償回路13は伝搬遅延補償量精推定回路12により推定された伝搬遅延補償量を用いて、1次変化補償回路10により伝搬遅延時間の1次変化が補償された遅延ヒストリに残存している伝搬遅延時間の変化を補償する回路である。
画像化回路14は伝搬遅延変化補償回路13による補償後の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで画像化する回路である。
図1の例では、レーダ装置の構成要素である信号取得回路1、相対運動特定回路2、前処理伝搬遅延補償量推定回路3、前処理伝搬遅延補償回路4、アップサンプリング回路5、KT補償回路6、不要信号低減回路7、伝搬遅延ドップラー特定回路8、1次変化補償量算出回路9、1次変化補償回路10、参照信号抽出回路11、伝搬遅延補償量精推定回路12、伝搬遅延変化補償回路13及び画像化回路14のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定している。専用のハードウェアとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)を実装している半導体集積回路、ワンチップマイコン、GPU(Graphics Processing Unit)を実装している半導体集積回路などが考えられる。
ただし、この実施の形態1のレーダ装置はコンピュータで構成されているものであってもよい。
図2はレーダ装置がコンピュータで構成される場合のハードウェア構成図である。
レーダ装置がコンピュータで構成される場合、信号取得回路1、相対運動特定回路2、前処理伝搬遅延補償量推定回路3、前処理伝搬遅延補償回路4、アップサンプリング回路5、KT補償回路6、不要信号低減回路7、伝搬遅延ドップラー特定回路8、1次変化補償量算出回路9、1次変化補償回路10、参照信号抽出回路11、伝搬遅延補償量精推定回路12、伝搬遅延変化補償回路13及び画像化回路14の処理内容が記述されているプログラムをコンピュータのメモリ21に格納し、コンピュータのプロセッサ22がメモリ21に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図3はこの発明の実施の形態1によるレーダ装置の不要信号低減回路7を示す構成図である。
図3において、遅延ドップラー分布生成回路31はKT補償回路6によりスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化が補償された遅延ヒストリをファスト周波数で低域側の遅延ヒストリと高域側の遅延ヒストリに2分割し、低域側の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで、ファスト周波数で低域側の遅延ドップラー分布を生成するとともに、高域側の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで、ファスト周波数で高域側の遅延ドップラー分布を生成する回路である。
遅延ドップラー分布共役乗算回路32は遅延ドップラー分布生成回路31により生成された低域側及び高域側の遅延ドップラー分布のうち、一方の遅延ドップラー分布の複素共役と他方の遅延ドップラー分布とを乗算する回路である。
ドップラー軸逆フーリエ変換回路33は遅延ドップラー分布共役乗算回路32による共役乗算後の遅延ドップラー分布をドップラー軸方向に逆フーリエ変換することで、ファストタイムとスロータイムの2次元分布を得る回路である。
ドップラー幅算出回路34は相対運動特定回路2により特定されたスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の2次変化の予測値se2から遅延ドップラー分布共役乗算回路32による共役乗算後の遅延ドップラー分布上の目標の像のドップラー幅を算出する回路である。
重み関数乗算回路35はドップラー幅算出回路34により算出されたドップラー幅に反比例するスロータイム幅を設定し、ドップラー軸逆フーリエ変換回路33により得られた2次元分布のうち、目標の信号が存在している当該スロータイム幅でのスロータイムの信号を通過させて、目標の信号が存在しているスロータイム以外のスロータイムの信号の通過を阻止する重み関数を設定する回路である。
また、重み関数乗算回路35は設定した重み関数をドップラー軸逆フーリエ変換回路33により得られた2次元分布に乗算する回路である。
スロータイム軸フーリエ変換回路36は重み関数乗算回路35により重み関数が乗算された2次元分布をスロータイム方向にフーリエ変換することで、目標の信号以外の不要信号が抑圧されている遅延ドップラー分布を得る回路である。
次に動作について説明する。
図示せぬレーダは、観測対象である目標に向けて電波を繰り返し送信する。
即ち、レーダは、送信アンテナから送信機で生成された高周波信号である電波を目標に向けて放射する。
また、レーダは、目標に反射されて戻ってきた当該電波の反射波が受信アンテナに入射されると、受信機が当該電波の反射波を検波して復調することで受信信号を取得する。
信号取得回路1は、レーダから電波の受信信号として、電波の送信時刻からの経過時間であるファストタイムτと、各観測における電波の送信時刻であるスロータイムηとの2次元分布である遅延ヒストリを取得する。
以下、信号取得回路1により取得された遅延ヒストリをGtt(τ,η)で表し、ファストタイムτをフーリエ変換(FT:Fourier Transform)したベースバンドでのファスト周波数をρ、スロータイムηをFTしたドップラー周波数をγで表すものとする。
また、遅延ヒストリGtt(τ,η)をファストタイムτ方向にFTすることで得られる遅延スペクトルヒストリをGft(ρ,η)で表し、遅延ヒストリGtt(τ,η)をスロータイムη方向にFTすることで得られる遅延ドップラー分布をGtf(τ,γ)で表すものとする。
なお、Gtt(τ,η)、Gft(ρ,η)及びGtf(τ,γ)における2つの添え字(ttfttf)のうち、左側の添え字はファスト軸について示しており、そのファスト軸が時間領域であれば「t」であり、周波数領域であれば「f」である。また、右側の添え字はスロー軸について示しており、そのスロー軸が時間領域であれば「t」であり、周波数領域であれば「f」である。
相対運動特定回路2は、外部装置から目標の運動諸元を収集して、その運動諸元から目標との相対運動を特定し、その相対運動からスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の変化spre(η)を推定する。
例えば、レーダと目標の共通の座標系において、レーダによる目標観測中の時刻がηであるとき、レーダの位置ベクトルがrrdr(η)、目標の位置ベクトルがrtgt(η)であるとすると、伝搬遅延時間s(η)は、下記の式(1)で算出することができる。明細書の文章中では、ベクトルの“r”を細字で記述しているが、式(1)の中では“r”を太字で記述している。

Figure 2017015495

式(1)において、Cは光速である。
レーダの送信機と受信機の位置が異なる場合、送信機の位置ベクトルがrtra(η)、受信機の位置ベクトルがrrec(η)であるとすると、伝搬遅延時間s(η)は、下記の式(2)で算出することができる。

Figure 2017015495

上記のようにして、各スロータイムηでの伝搬遅延時間s(η)が分かれば、伝搬遅延時間の変化spre(η)が求まる。
ここでは、相対運動特定回路2が、伝搬遅延時間の変化spre(η)を推定するようにしているが、目標の運動諸元を格納しているデータベースなどから、伝搬遅延時間s(η)の概算値を取得して、伝搬遅延時間の変化spre(η)を求めるようにしてもよい。
相対運動特定回路2は、スロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の変化spre(η)を推定すると、外部装置である目標追尾装置やデータベースの精度、レーダプラットフォームに搭載されている運動センサや位置センサの精度を示す情報を取得し、それらの精度を踏まえて、その伝搬遅延時間の変化spre(η)の推定誤差s(η)を特定する。言うまでもないが、それらの精度が悪ければ、伝搬遅延時間の変化spre(η)の推定誤差s(η)は大きくなり、それらの精度が良ければ、伝搬遅延時間の変化spre(η)の推定誤差s(η)は小さくなる。
この実施の形態1では、相対運動特定回路2が、伝搬遅延時間の変化spre(η)の推定誤差s(η)として、スロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化の予測値se1と、スロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の2次変化の予測値se2とを特定する。
伝搬遅延時間の変化spre(η)の推定誤差s(η)は、下記の式(3)に示すように、スロータイムηに関する1次項と2次項の和で表される。

Figure 2017015495

ここでは、残存する伝搬遅延時間の変化spre(η)によるスロータイムηの経過に伴う反射点のファストタイム方向の分解能セルを超えた移動であるマイグレーションは、スロータイムηの1次成分のみで与えられるものとする。
前処理伝搬遅延補償量推定回路3は、相対運動特定回路2がスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の変化spre(η)を推定すると、その伝搬遅延時間の変化spre(η)を打ち消す伝搬遅延補償量qpre(η)を推定する。
即ち、前処理伝搬遅延補償量推定回路3は、下記の式(4)に示すように、伝搬遅延時間の変化spre(η)の符号を反転させたものを伝搬遅延補償量qpre(η)として算出する。
pre(η)=−spre(η) (4)
前処理伝搬遅延補償回路4は、前処理伝搬遅延補償量推定回路3が伝搬遅延補償量qpre(η)を推定すると、その伝搬遅延補償量qpre(η)を用いて、信号取得回路1により取得された遅延ヒストリGtt(τ,η)を補償し、補償後の遅延ヒストリUtt(τ,η)を出力する。
即ち、前処理伝搬遅延補償回路4は、信号取得回路1により取得された遅延ヒストリGtt(τ,η)をスロータイム方向にFTすることで遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を求め、下記の式(5)に示すように、前処理伝搬遅延補償量推定回路3により推定された伝搬遅延補償量qpre(η)を用いて、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を補償する。
式(5)では、補償前の遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をGin,ft(ρ,η)で表し、補償後の遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をGout,ft(ρ,η)で表している。

Figure 2017015495

そして、前処理伝搬遅延補償回路4は、補償後の遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をファスト周波数方向に逆フーリエ変換(IFT:Inverse FT)することで補償後の遅延ヒストリUtt(τ,η)を求める。
この遅延ヒストリUtt(τ,η)には、前処理伝搬遅延補償回路4による前処理補償の精度が低い場合、スロータイムηの経過に伴う反射点のファストタイム方向の分解能セルを超えた移動であるマイグレーションが発生している可能性がある。
後述するKT補償回路6では、遅延ヒストリUtt(τ,η)に発生しているマイグレーションを解消するための補償を、遅延スペクトルヒストリのファスト周波数ρに応じたスロータイムη方向の補償量の推定を必要とせずに実現できる利点がある。
しかし、一般的なKT処理が正しく動作するためには、少なくとも目標のドップラー周波数γがパルス繰り返し周波数による折り返しが生じていないことが必要となる。従って、伝搬遅延時間の変化が大きく、ドップラー周波数γが折り返す目標については、折り返した見かけ上のドップラー周波数γの1次変化のみが補償されて、目標の真のドップラー周波数γの1次変化が補償されない。
そこで、アップサンプリング回路5では、KT処理におけるドップラー周波数γに関する適用限界を広げるために、前処理伝搬遅延補償回路4による補償後の遅延ヒストリUtt(τ,η)をファストタイムτ方向にFTすることで得られる遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)をスロータイムη方向にアップサンプリングする。
具体的には、以下のようにして、遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)をアップサンプリングする。
前処理伝搬遅延補償回路4による補償後の遅延ヒストリUtt(τ,η)のファスト(ファストタイムτ、ファスト周波数ρ)軸及びスロー軸(スロータイムη、ドップラー周波数γ)は、離散化されているものとする。
遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)をスロータイムη方向にN(Nは1以上の整数)倍のアップサンプリングを行う場合は、元の遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)に対して、各々のスロータイムηのセル間に、(N−1)個の0のセルを挿入する。
これにより、見かけ上のサンプリング周波数が高くなるので、セル挿入後の遅延スペクトルヒストリをスロータイムη方向にFTすることで得られる遅延スペクトルドップラー分布においても、ドップラー周波数γの帯域幅がN倍に拡張される。
ここで、図4は遅延ドップラー画像の一例を示す説明図であり、(a)はレーダと目標の間の相対運動の影響でぼけた遅延ドップラー画像、(b)はぼけが生じていない理想的な遅延ドップラー画像を示している。
図4では、2つの目標(目標A、目標B)の像が同一画像上に存在している例を示している。
また、図5はアップサンプリングによってドップラー帯域が拡張された遅延ドップラー画像一例を示す説明図であり、(a)はアップサンプリング直後の遅延ドップラー画像、(b)はKT処理後の遅延ドップラー画像を示している。
例えば、元の遅延ドップラー分布が図4(a)に示すような画像である場合、遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)をスロータイムη方向にN倍のアップサンプリングを行うと、図5(a)に示すように、目標毎に、ドップラー周波数γ方向にパルス繰り返し周波数F[Hz]の周期1/F[s]で繰り返されたような画像、即ち、同じ形のレプリカがN(図5の例では、N=5)個発生する。
この時点では、未だ2つの目標(目標A、目標B)の像はぼけているが、これらレプリカのうち、1つのレプリカは、目標の真のドップラー周波数γの位置に存在するものとなる。
したがって、目標の真のドップラー周波数γの位置に存在していない像(以下、「偽像」と称する)に対して、後述するKT処理を適用すると、図5(b)に示すように、真のドップラー周波数γの位置に存在している像(以下、「真像」と称する)は結像し、真のドップラー周波数γの位置から離れる程にぼけるような特性になる。
図5の例では、目標Aについては左から3番目の真像が結像し、目標Bについては左から4番目の真像が結像している。
よって、1次成分が正しく補償された目標像の生成を、この結像した真像の切出しで代用することができる。
ここでは、遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)をスロータイムη方向にN倍のアップサンプリングを行う例を示しているが、Nの定め方として、真のドップラー周波数γを確実に含むように、システムで可能な限り大きな値を設定するような方法が考えられる。
この方法では、観測が想定されるあらゆる相対運動の目標のドップラー周波数γをカバーできるような十分大きなNを確保できる場合に、KT処理を正しく動作させることができるメリットがある。しかし、Nが大きくなることは、取り扱うデータが大きくなるため、処理負荷の面で問題となることがある。そこで、事前情報により伝搬遅延時間の1次変化の大きさが有る程度予測できる場合には、そのドップラー周波数γを丁度含む程度のNにすることは処理負荷低減の面で有用である。
そのため、アップサンプリング回路5は、相対運動特定回路2により特定されたスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間s(η)の1次変化の予測値se1にしたがってアップサンプリングの点数であるNを設定する。
1次変化の予測値se1に対応するドップラー周波数γの大きさは|Fe1|=F|se1|[Hz]となるので、ドップラー周波数γの正負の符号を考慮して、下記の式(6)を満足するようにNを設定することで、拡張後のドップラー幅内に目標の真像を納めることができる。

Figure 2017015495

式(6)において、Fはレーダから放射される電波である送信信号の中心周波数である。
これにより、真像に関しては、KT補償回路6が正しく動作して、マイグレーションが補償される。
KT補償回路6は、アップサンプリング回路5が遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)をスロータイムη方向にアップサンプリングすると、アップサンプリング後の遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)の各ファスト周波数ρに対応するサンプリング間隔で、その遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)上の信号をスロータイムη方向にリサンプリングすることで、遅延ヒストリUtt(τ,η)におけるスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する。
ここで、KT処理は、遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)が、例えば、下記の式(7)のような形で表される場合、下記の式(8)のように、ファスト周波数ρに応じてスケールを変えてリサンプリングすることで、補償後の遅延スペクトルヒストリUft(ρ,Fη/(F+ρ))を得るような技術である。式(8)では、スロータイムηに対する変化成分が、ファスト周波数ρに依存しなくなるため、補償後の遅延スペクトルヒストリUft(ρ,Fη/(F+ρ))に対応する遅延ヒストリ上でのマイグレーションも解消される。

Figure 2017015495

Figure 2017015495

式(7)(8)において、sは目標が存在しているファストタイム上の位置である0次の伝搬遅延時間である。
以上により、予測値se1が示す伝搬遅延時間の1次変化とドップラー周波数γが整合する真像はマイグレーションが正しく補償される。しかし、偽像では、伝搬遅延時間の1次変化とドップラー周波数γが整合しないので、マイグレーションが正しく補償されない。
この結果として、遅延ドップラー分布Utf(τ,γ)上の真像は正しく信号が積み上がる一方で、偽像は真像ほどには積み上がらない。これにより、雑音環境下での真像である目標信号の検出性能が向上するほか、真像と偽像が含まれる中から、真像の弁別などが可能になる効果が期待される。このため、不要信号低減回路7を通さずに、KT補償回路6から伝搬遅延ドップラー特定回路8に進むようなパスを設けた構成も有用である。
しかし、伝搬遅延時間s(η)に2次成分が含まれる場合には、受信信号の2次の位相変化によってドップラー周波数γの変化が発生し、例え真像であろうとも、信号が正しく積み上がらない状況(ドップラー軸方向にぼける状況)が発生する。この結果、雑音環境下での真像の検出性能の劣化や、真像と偽像が含まれる中から真像を弁別する性能の劣化などが発生することが懸念される。
不要信号低減回路7は、真像の検出性能の劣化や弁別性能の劣化を防止するために設けられており、KT補償回路6によるKT補償後の遅延ヒストリをファスト周波数ρで2分割し、その分割した各々の遅延ヒストリをスロータイムη方向にFTすることで遅延ドップラー分布をそれぞれ生成し、一方の遅延ドップラー分布の複素共役と他方の遅延ドップラー分布とを乗算することで、目標の信号以外の不要信号を低減する。
以下、不要信号低減回路7による不要信号の低減処理を具体的に説明する。
不要信号低減回路7の遅延ドップラー分布生成回路31は、KT補償回路6によるKT補償後の遅延ヒストリをファスト周波数ρで低域側の遅延ヒストリと高域側の遅延ヒストリに2分割する。
次に、遅延ドップラー分布生成回路31は、低域側の遅延ヒストリをスロータイムη方向にFTすることで、ファスト周波数ρで低域側の遅延ドップラー分布を生成するとともに、高域側の遅延ヒストリをスロータイムη方向にFTすることで、ファスト周波数ρで高域側の遅延ドップラー分布を生成する。
ここで、KT補償後の遅延ヒストリをファストタイムτ方向にFTした遅延スペクトルヒストリをPft(ρ,η)で表すと、低域側の遅延スペクトルヒストリLft(ρ,η)は下記の式(9)のように表され、高域側の遅延スペクトルヒストリHft(ρ,η)は下記の式(10)のように表される。

Figure 2017015495

Figure 2017015495

式(9)(10)において、Bは遅延スペクトルヒストリPft(ρ,η)の帯域幅である。
次に、遅延ドップラー分布生成回路31は、低域側の遅延スペクトルヒストリLft(ρ,η)をファスト周波数ρ方向にIFTした上で、スロータイムη方向にFTすることで、低域側の遅延ドップラー分布Ltf(τ,γ)を生成する。
また、高域側の遅延スペクトルヒストリHft(ρ,η)をファスト周波数ρ方向にIFTした上で、スロータイムη方向にFTすることで、高域側の遅延ドップラー分布Htf(τ,γ)を生成する。
ここで、低域側の遅延ドップラー分布Ltf(τ,γ)及び高域側の遅延ドップラー分布Htf(τ,γ)上での真像の位置について述べる。
上記のように、KT処理の効果によって、既にマイグレーションは解消されている。したがって、これらの遅延ドップラー分布Ltf(τ,γ),Htf(τ,γ)はファストタイムτ方向には広がらない。ただし、相対運動の加速度成分(伝搬遅延時間の2次成分)の影響で、ドップラー周波数γ方向には、その加速度に依存し、かつ、低域側と高域側でほぼ等しい幅の広がりを生じる。厳密には、後述するように低域側の中心周波数と高域側の中心周波数との差の分だけ若干異なる広がりを生じる。反射点が1点の単純な目標では、その広がりは概ね矩形形状で表される。
本来は、伝搬遅延時間の1次変化と各ファスト周波数ρに依存して変化する各ファスト周波数ρにおけるドップラー周波数γは、KT処理による補償の効果で、各ファスト周波数ρへの依存性が解消されて、遅延スペクトルヒストリの中心周波数Fによって定まるため、真像が存在しているファストタイムτ上の位置及びドップラー周波数γ上の位置が、低域側と高域側で一致する。また、真像上の位相のドップラー周波数γに対する変化も低域側と高域側でほぼ一致する。
したがって、低域側の真像及び高域側の真像のうち、いずれか一方の真像に対して、他方の真像の複素共役像を乗算することで、真像上の位相のドップラー周波数γに対する変化をキャンセルさせることができる。
遅延ドップラー分布共役乗算回路32は、遅延ドップラー分布生成回路31が低域側の遅延ドップラー分布Ltf(τ,γ)及び高域側の遅延ドップラー分布Htf(τ,γ)を生成すると、下記の式(11)に示すように、低域側の遅延ドップラー分布Ltf(τ,γ)の複素共役Ltf(τ,γ)を高域側の遅延ドップラー分布Htf(τ,γ)に乗算し、真像上の位相のドップラー周波数γに対する変化がキャンセルされている共役乗算後の遅延ドップラー分布Mtf(τ,γ)を出力する。

Figure 2017015495

これにより、共役乗算後の遅延ドップラー分布Mtf(τ,γ)をドップラー軸方向にIFTすることで得られる遅延ヒストリ(以下、「共役乗算後の遅延ヒストリ」と称する)上の真像の分布が、元のドップラー位置によらず、必ず0スロータイム付近に局在化する。
ここでは、低域側の遅延ドップラー分布Ltf(τ,γ)の複素共役Ltf(τ,γ)を高域側の遅延ドップラー分布Htf(τ,γ)に乗算している例を示しているが、高域側の遅延ドップラー分布Htf(τ,γ)の複素共役Htf(τ,γ)を低域側の遅延ドップラー分布Ltf(τ,γ)に乗算しても、同様に位相をキャンセルさせることができる。
ドップラー軸逆フーリエ変換回路33は、遅延ドップラー分布共役乗算回路32から共役乗算後の遅延ドップラー分布Mtf(τ,γ)を受けると、その遅延ドップラー分布Mtf(τ,γ)をドップラー軸方向にIFTすることで、ファストタイムτとスロータイムηの2次元分布を得る。
この結果、例えば、元の遅延ドップラー分布上の真像が、ドップラー軸方向の幅がW[Hz]の矩形分布rect((γ−γ)/W)で与えられる場合、共役乗算後の遅延ヒストリ上の分布は、議論に無関係な定数倍や位相を省くと、sinc(Wη)の形で表すことができる。γは中心ドップラーである。
ただし、sinc(x)=sinπx/(πx)、即ち、0スロータイム中心で、幅が概ね1/W[s](Null−to−Nullで2/W[s])の領域に局在化する。
これに対して、雑音は、全てのスロータイム領域に広がり、偽像は、高域像と低域像間のドップラー位置のずれやドップラー周波数に対する位相変化の相違の影響があるため、0スロータイム付近のみに留まる訳ではなく、0から離れたスロータイム領域に拡散する。したがって、これらの特性の相違を利用すれば、真像以外の不要信号を抑圧することができる。
ドップラー幅算出回路34は、相対運動特定回路2により特定されたスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の2次変化の予測値se2から、遅延ドップラー分布共役乗算回路32から出力された共役乗算後の遅延ドップラー分布Mtf(τ,γ)上の真像のドップラー幅Wを算出する。
例えば、低域側の遅延ヒストリの中心周波数FがF=F−(B/4)、高域側の遅延ヒストリの中心周波数FがF=F+(B/4)、観測スロータイム幅がTであるとすると、各遅延ヒストリでの真像のドップラー周波数γの変化、即ち、遅延ドップラー分布上の各ドップラー幅W(i=L,H)は、下記の式(12)で与えられる。

Figure 2017015495

このとき、F<Fであることを踏まえると、共役乗算後の遅延ドップラー分布Mtf(τ,γ)上の真像のドップラー幅Wは、下記の式(13)で与えられる。

Figure 2017015495
重み関数乗算回路35は、ドップラー幅算出回路34が真像のドップラー幅Wを算出すると、共役乗算後の遅延ドップラー分布Mtf(τ,γ)上の真像の信号が局在化されたスロータイム幅はドップラー幅Wに反比例するため、そのドップラー幅Wに反比例するスロータイム幅α/Wを設定する。αは任意の定数である。
重み関数乗算回路35は、スロータイム幅α/Wを設定すると、ドップラー軸逆フーリエ変換回路33により得られた2次元分布のうち、真像の信号が局在化されている0スロータイム付近の信号、即ち、そのスロータイム幅α/Wのスロータイムの信号を通過させる一方で、真像の信号が局在化されていない0スロータイム付近以外の信号の通過を阻止する重み関数を設定する。
この重み関数の形状は、矩形分布でもよいし、それ以外のハニング、テイラー、チェビシェフやガウス等の分布を含む一般的なものでもよい。
ここでは、ドップラー幅Wに反比例するスロータイム幅α/Wを設定しているが、重み関数における0スロータイム付近の通過幅については固定でもよい。また、観測対象である目標のカテゴリ(例えば、船、航空機、自動車等)毎に変えるようにしてもよい。
重み関数乗算回路35は、0スロータイム付近の信号を通過させて、0スロータイム付近以外の信号の通過を阻止する重み関数を設定すると、その重み関数をドップラー軸逆フーリエ変換回路33により得られた2次元分布に乗算する。
これにより、重み関数が乗算された2次元分布では、雑音や偽像の信号が抑圧されている。
スロータイム軸フーリエ変換回路36は、重み関数乗算回路35により重み関数が乗算された2次元分布をスロータイムη方向にFTすることで、真像の信号以外の不要信号が抑圧されている遅延ドップラー分布を得る。
スロータイム軸での重み関数の乗算によって不要信号が大幅に抑圧されているので、重み関数の乗算前より真像の視認性、即ち、真像の検出性能が向上している。
図6は重み関数の乗算による効果の一例を示す説明図である。
図6の上段は、重み関数を乗算する前の真像が存在するファストタイムτにおけるドップラー分布を示しており、図6の下段は、重み関数を乗算した後の真像が存在するファストタイムτにおけるドップラー分布を示している。
図6の例では、左から右に進むにしたがって信号生成の際に想定される伝搬遅延時間の2次変化が大きくなっている。重み係数の幅は、右から2番目の比較的大きい2次変化相当の幅から定めた一定値である。
これより、重み関数の乗算前では、伝搬遅延時間の2次変化が大きい場合に真像の信号の検出が困難であったが、重み関数の乗算後では、伝搬遅延時間の2次変化が大きい場合にも、真像の信号を検出できるようになる効果が確認される。
また、右から2番目の比較的大きい2次変化に照準を合わせたにも関わらず、これ以外の2次変化でも良好に検出できている。特に、伝搬遅延時間の2次変化が小さい場合は、スロータイム軸上で真像の信号の幅が大きくなるため、これより大きい2次変化を想定した場合の重み、即ち、スロータイム幅が狭い重みでは、真像の信号の一部も阻止される。
しかし、このような状況が発生する伝搬遅延時間の2次変化が小さい場合は、上段の図にも示されるように、元のドップラー分布での積み上がりが既に大きかったため、検出性能は維持される。
このことを踏まえ、想定される最大の2次変化を用いて、重みを構成することが有用であり、本発明でも、通過スロータイム幅の設定する基準の一つに採用する。なお、最大値を用いる代わりに、ここで示したようなパラメータを振った事前シミュレーションにより、想定される目標の2次変化の範囲で、検出性能を極力維持するような2次変化を定める方法も有用であり、本発明でも、通過スロータイム幅の設定する方法の一つに採用する。
伝搬遅延ドップラー特定回路8は、不要信号低減回路7から不要信号が低減された遅延ドップラー分布を受けると、その遅延ドップラー分布から真像を検出する。
伝搬遅延ドップラー特定回路8は、遅延ドップラー分布から真像を検出すると、真像が存在しているファストタイムτ上の位置である0次の伝搬遅延時間sest0を特定するとともに、真像のドップラー周波数Fdopを特定する。
1次変化補償量算出回路9は、伝搬遅延ドップラー特定回路8が真像のドップラー周波数Fdopを特定すると、真像のドップラー周波数Fdopに対応する伝搬遅延時間の1次変化sest1と、真像のドップラー周波数Fdopとが下記の式(14)のように対応付けられるため、下記の式(15)に示すように、伝搬遅延時間の1次変化sest1を打ち消すための1次変化補償量qest(η)を算出する。

Figure 2017015495

Figure 2017015495
1次変化補償回路10は、1次変化補償量算出回路9が1次変化補償量qest(η)を算出すると、その1次変化補償量qest(η)を用いて、前処理伝搬遅延補償回路4により補償された遅延ヒストリUtt(τ,η)に残存している伝搬遅延時間の1次変化sest1を補償し、1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)を出力する。
1次変化補償回路10が遅延ヒストリUtt(τ,η)の補償処理に用いる1次変化補償量qest(η)が、前処理伝搬遅延補償回路4が遅延ヒストリGtt(τ,η)の補償処理に用いる補償量qpre(η)と異なっているが、補償処理自体は、前処理伝搬遅延補償回路4と同様であるため、1次変化補償回路10による遅延ヒストリUtt(τ,η)の補償処理の詳細な説明は省略する。
参照信号抽出回路11は、1次変化補償回路10から1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)を受けると、その遅延ヒストリXtt(τ,η)から、伝搬遅延ドップラー特定回路8により特定された真像が存在しているファストタイムτ上の位置である0次の伝搬遅延時間sest0における全てのスロータイムηの信号を参照信号Y(η)として抽出する。
即ち、参照信号抽出回路11は、下記の式(16)に示すように、真像が存在しているファストタイムセルのスロータイムη方向に並ぶデータ列を参照信号Y(η)として抽出する。

Figure 2017015495
伝搬遅延補償量精推定回路12は、参照信号抽出回路11が参照信号Y(η)を抽出すると、その参照信号Y(η)から、1次変化補償回路10による1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)に残存している伝搬遅延時間の変化の影響で発生する位相変化を推定する。
位相変化の推定方法としては、様々な方法が考えられるが、例えば、参照信号Y(η)の位相変化を抽出した上で、その位相変化を2π毎の位相の折り返しをアンラップしてつなぐ方法が考えられる。
また、アンラップしてつないだ位相に最小二乗フィッティングを適用して平滑化するような方法が考えられる。
また、参照信号Y(η)を適当なスロータイム幅で短時間フーリエ変換することで、ドップラー周波数分布のスロータイムηに対する変化を得て、その変化を良く知られている瞬時ドップラー周波数変化と位相変化の関係に基づいて、位相に換算する方法が考えられる。
その他、SAR/ISARの位相補償や、動揺補償オートフォーカスなどで用いられる「位相変化を推定するために提案された様々な方法」を用いてもよい。
伝搬遅延補償量精推定回路12は、参照信号Y(η)から位相変化を推定すると、その位相変化の2π毎の折り返しを排除して、折り返し排除後の位相変化を打ち消す位相補償量φhigh(η)を推定する。
折り返し排除後の位相変化を打ち消す位相補償量φhigh(η)の推定方法として、例えば、様々な種類の2次以上の位相補償量を想定し、各々の位相補償量を用いて、参照信号Y(η)の補償を実施し、その補償結果をそれぞれフーリエ変換してドップラー分布を生成する。そして、それらのドップラー分布の中で、ピークが最大となるドップラー分布に係る位相補償量を2次以上の位相補償量の推定結果として採用する方法がある。
この推定方法は、特に雑音やクラッタレベルが高くて、参照信号Y(η)から位相変化の痕跡を直接得るのが困難な場合に有用である。
伝搬遅延補償量精推定回路12は、位相補償量φhigh(η)を推定すると、下記の式(17)に示すように、その位相補償量φhigh(η)に対応する伝搬遅延時間の2次以上変化を打ち消すための補償量qhigh(η)を算出する。

Figure 2017015495
また、伝搬遅延補償量精推定回路12は、ピークが最大となるドップラー分布におけるドップラー周波数のピーク位置Fpeak[Hz]から、下記の式(18)に示すように、伝搬遅延時間の1次変化を補償するための補償量q1in(η)を算出する。

Figure 2017015495
伝搬遅延補償量精推定回路12は、伝搬遅延時間の2次以上の変化を打ち消すための補償量qhigh(η)と、伝搬遅延時間の1次変化を補償するための補償量q1in(η)を算出すると、下記の式(19)に示すように、それらの補償量の和を、伝搬遅延変化を打ち消す伝搬遅延補償量qhigh+1in(η)として算出する。
high+1in(η)=qhigh(η)+q1in(η) (19)
伝搬遅延変化補償回路13は、伝搬遅延補償量精推定回路12が伝搬遅延補償量qhigh+1in(η)を推定すると、その伝搬遅延補償量qhigh+1in(η)を用いて、1次変化補償回路10による1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)に残存している伝搬遅延時間の変化を補償する。即ち、伝搬遅延時間の2次以上の変化と、1次変化補償回路10では補償しきれずに残っている伝搬遅延時間の1次変化とを補償する。
伝搬遅延変化補償回路13が遅延ヒストリXtt(τ,η)の補償処理に用いる伝搬遅延補償量qhigh+1in(η)が、前処理伝搬遅延補償回路4が遅延ヒストリGtt(τ,η)の補償処理に用いる補償量qpre(η)と異なっているが、補償処理自体は、前処理伝搬遅延補償回路4と同様であるため、伝搬遅延変化補償回路13による遅延ヒストリXtt(τ,η)の補償処理の詳細な説明は省略する。
伝搬遅延変化補償回路13による伝搬遅延補償後(精補償後)の遅延ヒストリZtt(τ,η)は、画像化回路14に出力される。
画像化回路14は、伝搬遅延変化補償回路13による伝搬遅延補償後(精補償後)の遅延ヒストリZtt(τ,η)を受けると、その遅延ヒストリZtt(τ,η)をスロータイムη方向にFTすることでレーダ画像を得る。
ここまでの処理で、既に、観測中のファストタイムτ上のマイグレーションやドップラー周波数γの変化が解消されているので、信号はコヒーレントに積み上がり、結果として目標の検出性能が向上する。これはレーダ画像の観点では、ぼけの要因が解消されて結像した画像が得られることに相当する。
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、不要信号低減回路7が、KT補償回路6によるKT補償後の遅延ヒストリをファスト周波数ρで2分割し、その分割した各々の遅延ヒストリをスロータイムη方向にFTすることで遅延ドップラー分布をそれぞれ生成し、一方の遅延ドップラー分布の複素共役と他方の遅延ドップラー分布とを乗算するように構成したので、目標の信号以外の不要信号を低減することができる。そのため、伝搬遅延時間の2次以上の変化を生じている場合でも、目標検出性能の劣化を防止することができる効果を奏する。
また、この実施の形態1によれば、アップサンプリング回路5が、前処理伝搬遅延補償回路4により補償された遅延ヒストリをファストタイムτ方向にFTすることで得られる遅延スペクトルヒストリをスロータイムη方向にアップサンプリングするように構成したので、ドップラー周波数γが折り返す目標についても、スロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を正しく補償することができる効果を奏する。
この実施の形態1では、伝搬遅延変化補償回路13による伝搬遅延補償後(精補償後)の遅延ヒストリZtt(τ,η)をスロータイムη方向にFTすることでレーダ画像を得るレーダ装置について説明したが、レーダ装置の目的によっては、レーダ画像を得る必要がなく、例えば、目標が存在しているファストタイムτ上の位置や目標のドップラー周波数γが得られれば十分な場合もある。
このような場合には、1次変化補償量算出回路9、1次変化補償回路10、参照信号抽出回路11、伝搬遅延補償量精推定回路12、伝搬遅延変化補償回路13及び画像化回路14を省略するようにしてもよい。
また、ドップラー周波数γの折り返しが発生しないと期待できる場合には、アップサンプリング回路5を省略することができる。また、前処理補償が必要ない場合には、前処理伝搬遅延補償量推定回路3及び前処理伝搬遅延補償回路4を省略することができる。
この実施の形態1では、伝搬遅延ドップラー特定回路8が、真像のドップラー周波数Fdopを特定するものを示しているが、ドップラー周波数γの折り返しが除去されているという性質を有効に利用して、そのドップラー周波数Fdopを下記の式(20)によってラジアル速度vrad[m/s]に換算するようにしてもよい。

Figure 2017015495

ここで得られるのは、前処理補償後に残存するラジアル速度であり、真のラジアル速度については、前処理補償時に補償した伝搬遅延時間のうち、伝搬遅延時間の1次変化に相当するラジアル速度を加える必要がある。即ち、前処理伝搬遅延補償量推定回路3により推定された伝搬遅延補償量qpre(η)から換算されたラジアル速度を加える必要がある。目標のラジアル速度は目標の追尾等にも有用な情報となる。
また、この実施の形態1では、伝搬遅延補償量精推定回路12が、伝搬遅延時間の2次以上の変化を打ち消すための補償量qhigh(η)を算出するものを示したが、その補償量qhigh(η)の符号を反転させることで伝搬遅延時間の高次変化に変えて、その高次変化を加速度に変換するようにしてもよい。即ち、伝搬遅延時間の高次変化から2次成分を抽出し、その2次成分をc/2倍したものが加速度となる。ただし、ラジアル速度と同様に前処理補償時に加速度も補償しているのであれば、伝搬遅延時間の2次変化に相当する加速度を加える必要がある。即ち、前処理伝搬遅延補償量推定回路3により推定された伝搬遅延補償量qpre(η)から換算された加速度を加える必要がある。
観測時間を少しずつずらしながら、連続的に目標の検出や画像化を行うアプリケーションでは、目標のラジアル速度や加速度を相対運動特定回路2にフィードバックする構成は有用である。
このような構成では、相対運動特定回路2が、目標の真のラジアル速度として、伝搬遅延ドップラー特定回路8により特定されたドップラー周波数Fdopから換算されたラジアル速度と、前処理伝搬遅延補償量推定回路3により推定された伝搬遅延補償量qpre(η)から換算されたラジアル速度との和を算出するとともに、目標の真の加速度として、伝搬遅延補償量精推定回路12により推定された補償量qhigh(η)から換算された加速度と、前処理伝搬遅延補償量推定回路3により推定された伝搬遅延補償量qpre(η)から換算された加速度との和を算出し、目標の真のラジアル速度と加速度を用いて、目標との相対運動を特定し、その相対運動からスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の変化を推定するようにしてもよい。
以上の構成をとることにより、補償量の推定が不要であるが故に、補償量の推定が困難な状況、例えば、雑音やクラッタが多い状況での受信信号のファストタイム軸上のマイグレーションを補償するのに有用なKT処理を、アップサンプリングによって、ドップラー周波数γの折り返す目標への適用を図りながら、さらに、相対運動の加速度等の伝搬遅延時間の高次変化の影響で、目標信号のドップラー周波数γが変化し、その結果として、上記のKT処理によるマイグレーション補償後の遅延ドップラー分布上で、折り返し除去前の真のドップラー位置にある目標像がドップラー軸方向に滲んで発生する検出性能劣化や、その後段で目標信号が存在する参照データの抽出の失敗に起因する、より精密な補償量の推定の失敗を不要信号低減回路7の効果によって回避もしくは低減することができる効果がある。
また、不要信号低減回路7を省略して、KT補償回路6の出力相当の遅延ドップラー分布に対して、直接、伝搬遅延ドップラー特定回路8の処理で目標の伝搬遅延時間とドップラー周波数を特定するような構成の処理を想定した場合、この処理に不要信号低減回路7を加えることで、真像以外に偽像や、その他の不要信号(雑音、クラッタ)を低減する効果が新たに得られるので、結果として、真像の検出性能向上や、真像と偽像の中からの真像の弁別性能の向上が期待される。
また、ドップラー周波数γの折り返しが発生していないと期待される場合には、アップサンプリング回路5がなくても、その遅延ドップラー分布上の目標像が、KT処理後には、マイグレーションが解消された真像となるので、同様に不要信号低減回路7による不要信号の抑圧効果を得ることができる。
また、雑音やクラッタの影響で、マイグレーション補償後でも信号の検出が困難な状況において、目標信号が存在するファストタイム上の位置とドップラー周波数上の位置を特定できるので、これに基づく1次のマイグレーション補償と、それを行った後の目標信号が含まれるファストタイムの特定が可能となり、その結果として、伝搬遅延時間の精補償量推定に用いるのに必要な目標信号が含まれる参照データ列の抽出を可能とできる利点がある。また、その結果として、様々に仮定した補償量を参照データ列に適用して得られるドップラー分布のピークの大小に基づく補償量推定ができることになり、不要信号の影響で精補償量が推定できない状況での補償量推定精度が向上する利点もある。
実施の形態2.
上記実施の形態1では、KT補償回路6が、アップサンプリング回路5によりスロータイムη方向にアップサンプリングされた遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)の各ファスト周波数ρに対応するサンプリング間隔で、その遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)上の信号をスロータイムη方向にリサンプリングすることで、遅延ヒストリUtt(τ,η)におけるスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償するものを説明している。
この実施の形態2では、KT補償回路6が、遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)上の信号をリサンプリングする処理の途中で発生するスロータイムη方向及びドップラー周波数γ方向の信号の拡大に対処するために、遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)上の信号の拡大幅に対応するサイズのマージン(値が0の領域)を遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)上の信号の両端に付加してから、当該信号のリサンプリングを実施するようにしている。
なお、リサンプリング処理の途中で、遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)上の信号の信号幅が拡大するのは、上記の非特許文献2に開示されているスケーリング理論(SP:Scaling Principle)を用いてリサンプリングする場合の特有の現象である。ただし、SPを用いてリサンプリングする場合でも、正しいマージンを設定すれば、リサンプリング処理後には、遅延スペクトルヒストリUft(ρ,η)上の信号は元の信号幅に戻る。
図7はこの発明の実施の形態2による画像レーダ装置のKT補償回路6を示す構成図である。
図7において、マージン最小化2次位相係数決定回路41は受信信号スケーリング変換回路45で遅延ヒストリの補償処理が実施されても、折り返し信号が発生しない限界のスロータイム幅(折り返し信号が発生しない範囲で最大のスロータイム幅)及びドップラー周波数幅(折り返し信号が発生しない範囲で最大のドップラー周波数幅)と、電波の中心周波数に対する送信帯域幅の比である比帯域とから、2次の位相変化を定める2次位相係数bを決定する回路である。
2次位相信号パラメータ設定回路42はマージン最小化2次位相係数決定回路41により決定された2次位相係数bを用いて、電波のスロータイムη方向及びドップラー周波数γ方向の変化に対して2次の位相変化を有する2次位相信号のスロータイム幅w,w,w,wを設定する回路である。
最小マージン付加回路43はマージン最小化2次位相係数決定回路41により決定された2次位相係数bにしたがってマージンのサイズを設定し、そのサイズを有するマージンを遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加する回路である。
即ち、最小マージン付加回路43はマージン最小化2次位相係数決定回路41により決定された2次位相係数bを用いて、2次位相信号のドップラー周波数幅W (max)を計算し、遅延スペクトルヒストリ上の信号のスロータイム幅が、2次位相信号パラメータ設定回路42により設定されたスロータイム幅wと一致するように、サイズが(w−d)のマージンを遅延スペクトルヒストリ上の信号のスロータイムの両端に付加してから、マージン付加後の信号をスロータイム方向にFTし、FT後の信号のドップラー周波数幅が2次位相信号のドップラー周波数幅W (max)と一致するように、サイズが(W (max)−D)のマージンをFT後の信号のドップラー周波数γの両端に付加する処理を実施する。
2次位相信号生成回路44は2次位相信号パラメータ設定回路42により設定された2次位相信号のスロータイム幅w,w,w,wに基づいて、スロータイムη及びファスト周波数ρについてのサンプル点が、最小マージン付加回路43によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリ上の信号と同じである4種類の2次位相信号Q,Q,Q,Qを生成する回路である。4種類の2次位相信号Q,Q,Q,Qは相互に位相変化が関連している。
受信信号スケーリング変換回路45は最小マージン付加回路43によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリ上の信号と2次位相信号生成回路44により生成された4種類の2次位相信号Q,Q,Q,Qとを用いて、SPに基づくKT処理を実施することで、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する回路である。
マージン除去回路46は受信信号スケーリング変換回路45によりスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の変化が補償された信号に付加されているマージンを除去する回路である。
即ち、マージン除去回路46は最小マージン付加回路43と逆の操作であり、受信信号スケーリング変換回路45によりスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の変化が補償された信号をスロータイムη方向にFTして得られる遅延ドップラー分布から、0ドップラー周波数を中心とするドップラー周波数幅Dの信号を抽出するとともに、そのドップラー周波数幅Dの信号をドップラー周波数γ方向にIFTして得られる遅延ヒストリから、0スロータイムを中心とするスロータイム幅dの信号を抽出することで、スロータイムηとドップラー周波数γの両者のマージンが除去された遅延ヒストリを得る回路である。
受信信号整形回路47は遅延ヒストリの補償に伴って生じるファスト周波数ρ毎のスロータイム幅の相違を補正し、スロータイム幅補正後の遅延ヒストリを不要信号低減回路7に出力する回路である。
即ち、受信信号整形回路47はマージン除去回路46によりマージンが除去された遅延ヒストリから、0スロータイムを中心として、事前に設定された画像化に用いるスロータイム幅Tの信号を切出し、その切出したスロータイム幅Tの信号を不要信号低減回路7に出力する。
図8はKT補償回路6の受信信号スケーリング変換回路45を示す構成図である。
図8において、スロータイムFT部51は最小マージン付加回路43によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリ上の信号Gft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、FT後の信号Gff(ρ,γ)を出力する処理を実施する。
スロータイムFT部52は2次位相信号生成回路44により生成された2次位相信号QであるQ1ft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、FT後の信号Q1ff(ρ,γ)を出力する処理を実施する。
乗算回路53はスロータイムFT部51から出力された信号Gff(ρ,γ)に対して、スロータイムFT部52から出力された2次位相信号Q1ff(ρ,γ)を乗算する処理を実施する。
スロータイムIFT部54は乗算回路53の乗算結果Gff(ρ,γ)×Q1ff(ρ,γ)をドップラー周波数γ方向にIFTし、IFT後の信号X1ft(ρ,η)(遅延スペクトルヒストリ上の信号Gft(ρ,η)と2次位相信号Q1ft(ρ,η)との畳み込み演算結果Gft(ρ,η)*Q1ft(ρ,η)に相当する)を出力する処理を実施する。
乗算回路55はスロータイムIFT部54から出力されたIFT後の信号X1ft(ρ,η)に対して、2次位相信号生成回路44により生成された2次位相信号QであるQ2ft(ρ,η)を乗算する処理を実施する。
スロータイムFT部56は乗算回路55の乗算結果X2ft(ρ,η)=X1ft(ρ,η)×Q2ft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、FT後の信号X2ff(ρ,γ)を出力する処理を実施する。
スロータイムFT部57は2次位相信号生成回路44により生成された2次位相信号QであるQ3ft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、FT後の信号Q3ff(ρ,γ)を出力する処理を実施する。
乗算回路58はスロータイムFT部56から出力されたFT後の信号X2ff(ρ,γ)に対して、スロータイムFT部57から出力された2次位相信号Q3ff(ρ,γ)を乗算する処理を実施する。
スロータイムIFT部59は乗算回路58の乗算結果X2ff(ρ,γ)×Q3ff(ρ,γ)をドップラー周波数γ方向にIFTし、IFT後の信号X3ft(ρ,η)(乗算回路55の乗算結果X2ft(ρ,η)と2次位相信号Q3ft(ρ,η)との畳み込み演算結果X2ft(ρ,η)*Q3ft(ρ,η)に相当する)を出力する処理を実施する。
乗算回路60はスロータイムIFT部59から出力されたIFT後の信号X3ft(ρ,η)に対して、2次位相信号生成回路44により生成された2次位相信号QであるQ4ft(ρ,η)を乗算し、その乗算結果X3ft(ρ,η)×Q4ft(ρ,η)をUft (margin)(ρ,η)として出力する処理を実施する。
次に動作について説明する。
KT補償回路6以外の処理内容は、上記実施の形態1と同様であるため、ここでは、KT補償回路6の処理内容だけを説明する。
図9はKT補償回路6によるマージ付加処理を示す説明図である。
左上の元データにおける横軸は入力信号のスロータイム軸又はドップラー周波数軸である。
折り返し問題は、スロータイム軸及びドップラー周波数軸のいずれでも発生することから、ここでは、これらをまとめてスロー軸と呼んで統一的に説明する。
まず、単純にKT処理に対してSP処理を適用した場合について考える。
処理過程のある段階で、スロー軸が広がるため、元の幅(スロータイム幅d又はドップラー周波数幅D)を超えた分の信号が発生し、元の幅を超えた分の信号が、折り返し信号として、図9の左側に示すように重畳される。
これに対して、図9の右側に示すように、十分なスロー軸幅のマージン(元の幅を超えている拡大幅に相当するサイズのマージン)を追加しておけば、処理過程のある段階で、スロー軸が広がっても、折り返し信号が発生しないため、折り返し信号の重畳を回避することができる。
ただし、このマージンの幅を広くする程、データ容量の増大によって処理負荷も増大する。
したがって、処理負荷低減の観点からは、マージンのサイズを必要最小限のサイズとすることが望ましい。
このため、マージン最小化2次位相係数決定回路41では、マージンのサイズが必要最小限のサイズになるように2次位相係数bを設定する。
即ち、信号の広がり幅は2次位相係数bによって変化し、必要なマージンも2次位相係数bによって変化するため、マージン最小化2次位相係数決定回路41は、各処理段での信号の広がり幅及び所要マージンの特性を見積もった上で、マージンのサイズが必要最小限のサイズとなるように、2次位相係数bを設定する。
即ち、マージン最小化2次位相係数決定回路41は、受信信号スケーリング変換回路45で遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)上の信号のリサンプリング処理が実施されても、折り返し信号が発生しないようにするのに必要かつ十分なマージンのサイズが得られるようにするため、限界のスロータイム幅d、限界のドップラー周波数幅D及び比帯域ξ(=B/F)を下記の式(21)に代入することで、2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を算出する。

Figure 2017015495
2次位相信号パラメータ設定回路42は、マージン最小化2次位相係数決定回路41が2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を算出すると、2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を下記の式(22)〜(25)に代入することで、2次位相信号Qkft(ρ,η)のスロータイム幅の最適値w (opt)を算出する。k=1,2,3,4である。

Figure 2017015495

Figure 2017015495

Figure 2017015495

Figure 2017015495

式(22)〜(25)において、β,β,βは1と等しいか、1より僅かに大きな定数である。
最小マージン付加回路43は、マージン最小化2次位相係数決定回路41が2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を算出すると、2次位相係数bの最適な設計値b(opt)を下記の式(26)に代入することで、ドップラー周波数幅の最適値W (max,opt)を算出する。

Figure 2017015495

最小マージン付加回路43は、ドップラー周波数幅の最適値W (max,opt)を算出すると、アップサンプリング回路5によりアップサンプリングされた遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)に対して、スロータイム幅が最適値w (opt)になり、ドップラー周波数幅が最適値W (max,opt)になるように、値が0の領域であるマージンを各軸上で加える処理を行う。
具体的には、以下のようにマージンを付加する。
最初に、最小マージン付加回路43は、スロータイム幅が最適値w (opt)と一致するように、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)の両端に、不足しているスロータイム幅(w (opt)−d)と同一サイズのマージンを付加する。
次に、最小マージン付加回路43は、マージン付加後の遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、FT後の遅延スペクトルヒストリである遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)のドップラー周波数幅が2次位相信号のドップラー周波数幅W (max,opt)と一致するように、遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)の両端に、不足しているドップラー周波数幅(W (max,opt)−D)と同一サイズのマージンを付加する。
ここでは、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)の両端に、不足しているスロータイム幅(w (opt)−d)と同一サイズのマージンを付加してから、遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)の両端に、不足しているドップラー周波数幅(W (max,opt)−D)と同一サイズのマージンを付加する例を示しているが、スロータイム幅がw (opt)の空のデータ領域を確保した上で、このデータ領域の中央に遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を配置してから、この遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、さらに、別途確保したドップラー周波数幅がW (max,opt)の空のデータ領域の中央に、遅延スペクトルドップラーGff(ρ,γ)を配置するようにしてもよい。
2次位相信号生成回路44は、2次位相信号パラメータ設定回路42により算出されたスロータイム幅の最適値w (opt)〜w (opt)に基づいて、スロータイムη及びファスト周波数ρについてのサンプル点が、最小マージン付加回路43によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)と同じである4種類の2次位相信号Q1ft(ρ,η),Q2ft(ρ,η),Q3ft(ρ,η),Q4ft(ρ,η)を生成する。
即ち、2次位相信号生成回路44は、2次位相信号パラメータ設定回路42により算出されたスロータイム幅の最適値w (opt)〜w (opt)を下記の式(27)〜(30)に代入することで、2次位相信号Q1ft(ρ,η),Q2ft(ρ,η),Q3ft(ρ,η),Q4ft(ρ,η)を生成する。このとき、スロータイム幅やステップ幅は、最小マージン付加回路43によって定められたものを用いる。
式(27)〜(30)では、w (opt)〜w (opt)をw〜wのように簡略して表記している。また、2次位相係数bの最適な設計値b(opt)をbのように簡略して表記している。

Figure 2017015495

Figure 2017015495

Figure 2017015495

Figure 2017015495
受信信号スケーリング変換回路45は、最小マージン付加回路43によりマージンが付加された遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)と2次位相信号生成回路44により生成された4種類の2次位相信号Q1ft(ρ,η),Q2ft(ρ,η),Q3ft(ρ,η),Q4ft(ρ,η)とを用いて、SPに基づくKT処理を実施することで、目標とレーダの間の相対運動に起因して発生しているスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償する。
以下、受信信号スケーリング変換回路45の処理内容を具体的に説明する。
受信信号スケーリング変換回路45のスロータイムFT部51は、最小マージン付加回路43からマージンが付加された遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)を受けると、その遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、FT後の遅延スペクトルヒストリである遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)を乗算回路53に出力する。
スロータイムFT部52は、2次位相信号生成回路44から2次位相信号Q1ft(ρ,η)を受けると、その2次位相信号Q1ft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、FT後の2次位相信号Q1ff(ρ,γ)を乗算回路53に出力する。
乗算回路53は、スロータイムFT部51から出力された遅延スペクトルドップラー分布Gff(ρ,γ)と、スロータイムFT部52から出力された2次位相信号Q1ff(ρ,γ)とを周波数軸上で乗算し、その乗算結果Gff(ρ,γ)×Q1ff(ρ,γ)をスロータイムIFT部54に出力する。
スロータイムIFT部54は、乗算回路53の乗算結果Gff(ρ,γ)×Q1ff(ρ,γ)をドップラー周波数γ方向にIFTし、そのIFT結果であるX1ft(ρ,η)を乗算回路55に出力する。このX1ft(ρ,η)は、遅延スペクトルヒストリGft(ρ,η)と2次位相信号Q1ft(ρ,η)の畳み込み演算結果Gft(ρ,η)*Q1ft(ρ,η)に相当する。
乗算回路55は、スロータイムIFT部54からIFT結果であるX1ft(ρ,η)を受けると、そのIFT結果であるX1ft(ρ,η)と2次位相信号生成回路44から出力された2次位相信号Q2ft(ρ,η)とを時間軸上で乗算し、その乗算結果X2ft(ρ,η)=X1ft(ρ,η)×Q2ft(ρ,η)をスロータイムFT部56に出力する。
スロータイムFT部56は、乗算回路55の乗算結果X2ft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、FT結果であるX2ff(ρ,γ)を乗算回路58に出力する。
スロータイムFT部57は、2次位相信号生成回路44から2次位相信号Q3ft(ρ,η)を受けると、その2次位相信号Q3ft(ρ,η)をスロータイムη方向にFTし、FT後の2次位相信号Q3ff(ρ,γ)を乗算回路58に出力する。
乗算回路58は、スロータイムFT部56から出力されたFT結果X2ff(ρ,γ)と、スロータイムFT部57から出力された2次位相信号Q3ff(ρ,γ)とを周波数軸上で乗算し、その乗算結果X2ff(ρ,γ)×Q3ff(ρ,γ)をスロータイムIFT部59に出力する。
スロータイムIFT部59は、乗算回路58の乗算結果X2ff(ρ,γ)×Q3ff(ρ,γ)をドップラー周波数γ方向にIFTし、そのIFT結果であるX3ft(ρ,η)を乗算回路60に出力する。このX3ft(ρ,η)は、乗算回路55の乗算結果X2ft(ρ,η)と2次位相信号Q3ft(ρ,η)の畳み込み演算結果X2ft(ρ,η)*Q3ft(ρ,η)に相当する。
乗算回路60は、スロータイムIFT部59からIFT結果であるX3ft(ρ,η)を受けると、そのX3ft(ρ,η)と2次位相信号生成回路44から出力された2次位相信号Q4ft(ρ,η)とを時間軸上で乗算し、その乗算結果X3ft(ρ,η)×Q4ft(ρ,η)を遅延スペクトルヒストリUft (margin)(ρ,η)としてマージン除去回路46に出力する。
なお、乗算回路53,55の処理によって信号の幅が拡大しているが、正しいマージンが設定されているため、乗算回路58,60の処理によって信号の幅が元の幅に戻っている。
マージン除去回路46は、受信信号スケーリング変換回路45からスロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化が補償されている遅延スペクトルヒストリUft (margin)(ρ,η)を受けると、その遅延スペクトルヒストリUft (margin)(ρ,η)に付加されているマージンを除去する。
即ち、マージン除去回路46は、最小マージン付加回路43と逆の操作であり、最初に、遅延スペクトルヒストリUft (margin)(ρ,η)をスロータイムη方向にFTして得られる遅延ドップラー分布から、0ドップラー周波数を中心とするドップラー周波数幅Dの信号を抽出する。
次に、マージン除去回路46は、ドップラー周波数幅Dの信号をIFTして得られる遅延スペクトルヒストリから、0スロータイムを中心とするスロータイム幅dの信号を抽出することで、スロータイムηとドップラー周波数γの両者のマージンが除去された遅延スペクトルヒストリを得る。
受信信号整形回路47は、KT補償回路6でのSPに基づくKT処理(スロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の変化の補償)に伴って生じるファスト周波数ρ毎のスロータイム幅の相違を補正し、スロータイム幅の相違を補正した遅延ヒストリを不要信号低減回路7に出力する。
即ち、受信信号整形回路47は、マージン除去回路46によりマージンが除去された遅延ヒストリから、0スロータイムを中心として、事前に設定された画像化に用いるスロータイム幅T[s]の信号を切出し、その切出したスロータイム幅Tの信号を不要信号低減回路7に出力する。または、マージン除去回路46によりマージンが除去された遅延ヒストリの中で、0スロータイムを中心として、スロータイム幅Tの範囲外の値をゼロとするような重みづけを行う。
なお、スロータイムを離散化した表現では、最終的に画像化に用いるサンプル数(パルス数)Hの分のデータを切出して、下記の式(31)のような整形後の遅延スペクトルヒストリUft (last)(ρ,h)を得る。

Figure 2017015495
以上の各ブロックの処理を経て得られた遅延スペクトルヒストリUft (last)(ρ,h)は、KT処理の効果によって、スロータイムηに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化が解消されている。また、SPを適用した弊害で発生しているファスト周波数ρ毎のスロータイム幅の相違も解消されている。
実施の形態3.
上記実施の形態1,2では、伝搬遅延補償量精推定回路12が伝搬遅延変化を打ち消す伝搬遅延補償量qhigh+1in(η)を推定し、伝搬遅延変化補償回路13が伝搬遅延補償量精推定回路12により推定された伝搬遅延補償量qhigh+1in(η)を用いて、1次変化補償回路10による1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)に残存している伝搬遅延時間の変化を補償するものを示したが、1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)に残存している伝搬遅延時間の変化の影響で発生する位相変化を推定して、その位相変化を打ち消す位相補償量を推定し、その位相補償量を用いて、1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)の位相を補償するようにしてもよい。
図10はこの発明の実施の形態3によるレーダ装置を示す構成図であり、図10において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
位相補償量推定回路15は参照信号抽出回路11により抽出された参照信号Y(η)から、1次変化補償回路10による1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)に残存している伝搬遅延時間の変化の影響で発生する位相変化を推定し、その位相変化を打ち消す位相補償量を推定する回路である。
位相補償回路16は位相補償量推定回路15により推定された位相補償量を用いて、1次変化補償回路10による1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)の位相を補償する回路である。
図10の例では、レーダ装置の構成要素である信号取得回路1、相対運動特定回路2、前処理伝搬遅延補償量推定回路3、前処理伝搬遅延補償回路4、アップサンプリング回路5、KT補償回路6、不要信号低減回路7、伝搬遅延ドップラー特定回路8、1次変化補償量算出回路9、1次変化補償回路10、参照信号抽出回路11、位相補償量推定回路15、位相補償回路16及び画像化回路14のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定している。専用のハードウェアとしては、例えば、CPUを実装している半導体集積回路、ワンチップマイコン、GPUを実装している半導体集積回路などが考えられる。
ただし、この実施の形態3のレーダ装置はコンピュータで構成されているものであってもよい。
レーダ装置がコンピュータで構成される場合、信号取得回路1、相対運動特定回路2、前処理伝搬遅延補償量推定回路3、前処理伝搬遅延補償回路4、アップサンプリング回路5、KT補償回路6、不要信号低減回路7、伝搬遅延ドップラー特定回路8、1次変化補償量算出回路9、1次変化補償回路10、参照信号抽出回路11、位相補償量推定回路15、位相補償回路16及び画像化回路14の処理内容が記述されているプログラムを図2に示すコンピュータのメモリ21に格納し、コンピュータのプロセッサ22がメモリ21に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
次に動作について説明する。
伝搬遅延補償量精推定回路12及び伝搬遅延変化補償回路13の代わりに、位相補償量推定回路15及び位相補償回路16が実装されている点以外は上記実施の形態1,2と同様であるため、位相補償量推定回路15及び位相補償回路16の処理内容だけを説明する。
位相補償量推定回路15は、参照信号抽出回路11が参照信号Y(η)を抽出すると、その参照信号Y(η)から、1次変化補償回路10による1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)に残存している伝搬遅延時間の変化の影響で発生する位相変化θhigh(η)を推定する。
この位相変化θhigh(η)の推定方法は、図1の伝搬遅延補償量精推定回路12による位相変化の推定方法と同様であるが、位相補償量推定回路15では、伝搬遅延補償量精推定回路12と異なり、位相変化θhigh(η)の2π毎の折り返しを許容する。
位相補償量推定回路15は、参照信号Y(η)から位相変化θhigh(η)を推定すると、下記の式(32)に示すように、その位相変化θhigh(η)の符号を反転させたものを位相補償量φhighcmp(η)として算出する。

Figure 2017015495
位相補償回路16は、位相補償量推定回路15が位相補償量φhighcmp(η)を算出すると、下記の式(33)に示すように、その位相補償量φhighcmp(η)を用いて、1次変化補償回路10による1次変化補償後(1次粗補償後)の遅延ヒストリXtt(τ,η)の位相を補償し、位相補償後の遅延ヒストリZtt(τ,η)を画像化回路14に出力する。

Figure 2017015495
この実施の形態3によれば、伝搬遅延補償量精推定回路12及び伝搬遅延変化補償回路13の代わりに、位相補償量推定回路15及び位相補償回路16を実装しているので、上記実施の形態1,2と同様の効果が得られる他に、以下に示すような特有の効果も得られる。
この実施の形態3では、伝搬遅延時間の補償が単なる位相補償に変わるので、処理が簡易化される効果が得られる。また、位相変化θhigh(η)の2π毎の折り返しが許容されるので、2π毎の折り返しが許容される形式で位相を推定するような一般的な位相推定法も適用することが可能になる効果が得られる。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
1 信号取得回路、2 相対運動特定回路、3 前処理伝搬遅延補償量推定回路、4 前処理伝搬遅延補償回路、5 アップサンプリング回路、6 KT補償回路(時間変化補償回路)、7 不要信号低減回路、8 伝搬遅延ドップラー特定回路、9 1次変化補償量算出回路、10 1次変化補償回路、11 参照信号抽出回路、12 伝搬遅延補償量精推定回路、13 伝搬遅延変化補償回路、14 画像化回路、15 位相補償量推定回路、16 位相補償回路、21 メモリ、22 プロセッサ、31 遅延ドップラー分布生成回路、32 遅延ドップラー分布共役乗算回路、33 ドップラー軸逆フーリエ変換回路、34 ドップラー幅算出回路、35 重み関数乗算回路、36 スロータイム軸フーリエ変換回路、41 マージン最小化2次位相係数決定回路、42 2次位相信号パラメータ設定回路、43 最小マージン付加回路、44 2次位相信号生成回路、45 受信信号スケーリング変換回路、46 マージン除去回路、47 受信信号整形回路、51 スロータイムFT部、52 スロータイムFT部、53 乗算回路、54 スロータイムIFT部、55 乗算回路、56 スロータイムFT部、57 スロータイムFT部、58 乗算回路、59 スロータイムIFT部、60 乗算回路。

Claims (14)

  1. 観測対象である目標との相対的な位置関係を変えながら電波を繰り返し送受信するレーダから、前記電波の受信信号として、前記電波の送信時刻からの経過時間であるファストタイムと前記電波の送信時刻であるスロータイムとの2次元分布である遅延ヒストリを取得する信号取得回路と、
    前記信号取得回路により取得された遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリの各ファスト周波数に対応するサンプリング間隔で、前記遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることで、前記遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を補償する時間変化補償回路と、
    前記時間変化補償回路による補償後の遅延ヒストリをファスト周波数で2分割し、前記分割した各々の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで遅延ドップラー分布をそれぞれ生成し、一方の遅延ドップラー分布の複素共役と他方の遅延ドップラー分布とを乗算する不要信号低減回路と
    を備えたレーダ装置。
  2. 前記時間変化補償回路は、前記リサンプリングでの処理の途中で、スロータイム方向及びドップラー周波数方向に拡大する前記遅延スペクトルヒストリ上の信号の拡大幅に対応するサイズのマージンを前記遅延スペクトルヒストリ上の信号の両端に付加してから、当該信号をリサンプリングすることを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
  3. 前記信号取得回路により取得された遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリをスロータイム方向にアップサンプリングするアップサンプリング回路を備え、
    前記時間変化補償回路は、前記アップサンプリング回路によりアップサンプリングされた遅延スペクトルヒストリの各ファスト周波数に対応するサンプリング間隔で、前記遅延スペクトルヒストリ上の信号をスロータイム方向にリサンプリングすることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーダ装置。
  4. 前記アップサンプリング回路は、前記スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化にしたがってアップサンプリングの点数であるNを設定し、前記遅延スペクトルヒストリにおけるスロータイム方向のセル間に、(N−1)個の0のセルを挿入することで、前記遅延スペクトルヒストリのサンプリング周波数をN倍にすることを特徴とする請求項3記載のレーダ装置。
  5. 前記アップサンプリング回路は、前記スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化の予測値を取得し、前記1次変化の予測値の2倍と前記レーダから送信される電波の中心周波数との積を前記電波の送信が繰り返される周波数で除算した値より大きい値を前記アップサンプリングの点数に設定することを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。
  6. 前記不要信号低減回路による乗算後の遅延ドップラー分布から前記目標を検出して、前記目標が存在しているファストタイム上の位置及び前記目標のドップラー周波数を特定する伝搬遅延ドップラー特定回路を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
  7. 前記伝搬遅延ドップラー特定回路により特定された目標のドップラー周波数から、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償するための1次変化補償量を算出する1次変化補償量算出回路と、
    前記1次変化補償量算出回路により算出された1次変化補償量を用いて、前記信号取得回路により取得された遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償する1次変化補償回路と、
    前記1次変化補償回路により伝搬遅延時間の1次変化が補償された遅延ヒストリから、前記伝搬遅延ドップラー特定回路により特定された目標が存在しているファストタイム上の位置における全てのスロータイムの信号を参照信号として抽出する参照信号抽出回路と、
    前記参照信号抽出回路により抽出された参照信号から、前記1次変化補償回路により伝搬遅延時間の1次変化が補償された遅延ヒストリに残存している伝搬遅延時間の変化の影響で発生する位相変化を推定し、前記位相変化の2π毎の折り返しを排除して、折り返し排除後の位相変化を伝搬遅延変化に換算し、前記伝搬遅延変化を打ち消す伝搬遅延補償量を推定する伝搬遅延補償量精推定回路と、
    前記伝搬遅延補償量精推定回路により推定された伝搬遅延補償量を用いて、前記1次変化補償回路により伝搬遅延時間の1次変化が補償された遅延ヒストリに残存している伝搬遅延時間の変化を補償する伝搬遅延変化補償回路と、
    前記伝搬遅延変化補償回路による補償後の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで画像化する画像化回路と
    を備えたことを特徴とする請求項6記載のレーダ装置。
  8. 前記伝搬遅延ドップラー特定回路により特定された目標のドップラー周波数から、遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償するための1次変化補償量を算出する1次変化補償量算出回路と、
    前記1次変化補償量算出回路により算出された1次変化補償量を用いて、前記信号取得回路により取得された遅延ヒストリにおけるスロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の1次変化を補償する1次変化補償回路と、
    前記1次変化補償回路により伝搬遅延時間の1次変化が補償された遅延ヒストリから、前記伝搬遅延ドップラー特定回路により特定された目標が存在しているファストタイム上の位置における全てのスロータイムの信号を参照信号として抽出する参照信号抽出回路と、
    前記参照信号抽出回路により抽出された参照信号から、前記1次変化補償回路により伝搬遅延時間の1次変化が補償された遅延ヒストリに残存している伝搬遅延時間の変化の影響で発生する位相変化を推定し、前記位相変化を打ち消す位相補償量を推定する位相補償量推定回路と、
    前記位相補償量推定回路により推定された位相補償量を用いて、前記1次変化補償回路により伝搬遅延時間の1次変化が補償された遅延ヒストリの位相を補償する位相補償回路と、
    前記位相補償回路による補償後の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで画像化する画像化回路と
    を備えたことを特徴とする請求項6記載のレーダ装置。
  9. 前記不要信号低減回路は、
    前記時間変化補償回路による補償後の遅延ヒストリをファスト周波数で低域側の遅延ヒストリと高域側の遅延ヒストリに2分割し、前記低域側の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで、前記ファスト周波数で低域側の遅延ドップラー分布を生成するとともに、前記高域側の遅延ヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換することで、前記ファスト周波数で高域側の遅延ドップラー分布を生成する遅延ドップラー分布生成回路と、
    前記遅延ドップラー分布生成回路により生成された低域側及び高域側の遅延ドップラー分布のうち、一方の遅延ドップラー分布の複素共役と他方の遅延ドップラー分布とを乗算する遅延ドップラー分布共役乗算回路と、
    前記遅延ドップラー分布共役乗算回路による共役乗算後の遅延ドップラー分布をドップラー軸方向に逆フーリエ変換することで、ファストタイムとスロータイムの2次元分布を得るドップラー軸逆フーリエ変換回路と、
    前記ドップラー軸逆フーリエ変換回路により得られた2次元分布のうち、前記目標の信号が存在しているスロータイムの信号を通過させて、前記目標の信号が存在しているスロータイム以外のスロータイムの信号の通過を阻止する重み関数を設定し、前記重み関数を前記2次元分布に乗算する重み関数乗算回路と、
    前記重み関数乗算回路により重み関数が乗算された2次元分布をスロータイム方向にフーリエ変換することで、前記目標の信号以外の不要信号が抑圧されている遅延ドップラー分布を得るスロータイム軸フーリエ変換回路と
    から構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
  10. 前記不要信号低減回路は、前記スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の2次変化の予測値を取得し、前記2次変化の予測値から前記遅延ドップラー分布共役乗算回路による共役乗算後の遅延ドップラー分布上の前記目標の像のドップラー幅を算出するドップラー幅算出回路を備え、
    前記重み関数乗算回路は、前記ドップラー幅算出回路により算出されたドップラー幅に反比例するスロータイム幅を設定し、前記ドップラー軸逆フーリエ変換回路により得られた2次元分布のうち、前記目標の信号が存在している前記スロータイム幅でのスロータイムの信号を通過させて、前記目標の信号が存在しているスロータイム以外のスロータイムの信号の通過を阻止する重み関数を設定することを特徴とする請求項9記載のレーダ装置。
  11. 前記ドップラー幅算出回路は、前記時間変化補償回路による補償後の遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリの中心周波数がF、前記遅延スペクトルヒストリの帯域幅がB、前記2次変化の予測値がse2、前記時間変化補償回路による補償後の遅延ヒストリのスロータイムの幅がTであるとすると、前記遅延ドップラー分布共役乗算回路による共役乗算後の遅延ドップラー分布上の前記目標の像のドップラー幅をF−(B/4)・T・se2で算出することを特徴とする請求項10記載のレーダ装置。
  12. 前記遅延ドップラー分布生成回路は、前記時間変化補償回路による補償後の遅延ヒストリをファストタイム方向にフーリエ変換することで得られる遅延スペクトルヒストリの中心周波数がF、前記遅延スペクトルヒストリの帯域幅がBであるとすると、前記遅延スペクトルヒストリから、中心周波数がF−(B/4)で帯域幅がB/2の信号を低域側の遅延スペクトルヒストリとして抽出するとともに、中心周波数がF+(B/4)で帯域幅がB/2の信号を高域側の遅延スペクトルヒストリとして抽出し、前記低域側及び高域側の遅延スペクトルヒストリをファスト周波数方向に逆フーリエ変換した上で、スロータイム方向にフーリエ変換することで、前記ファスト周波数で低域側及び高域側の遅延ドップラー分布を生成することを特徴とする請求項9記載のレーダ装置。
  13. 外部装置から前記目標の運動諸元を収集して、前記運動諸元から前記目標との相対運動を特定し、前記相対運動から前記スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を推定する相対運動特定回路と、
    前記相対運動特定回路により推定された伝搬遅延時間の変化を打ち消す伝搬遅延補償量を推定する前処理伝搬遅延補償量推定回路と、
    前記前処理伝搬遅延補償量推定回路により推定された伝搬遅延補償量を用いて、前記信号取得回路により取得された遅延ヒストリを補償する前処理伝搬遅延補償回路と
    を備えたことを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載のレーダ装置。
  14. 外部装置から前記目標の運動諸元を収集して、前記運動諸元から前記目標との相対運動を特定し、前記相対運動から前記スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を推定する相対運動特定回路と、
    前記相対運動特定回路により推定された伝搬遅延時間の変化を打ち消す伝搬遅延補償量を推定する前処理伝搬遅延補償量推定回路と、
    前記前処理伝搬遅延補償量推定回路により推定された伝搬遅延補償量を用いて、前記信号取得回路により取得された遅延ヒストリを補償する前処理伝搬遅延補償回路とを備え、
    前記相対運動特定回路は、既に前記伝搬遅延ドップラー特定回路によりドップラー周波数が特定され、既に前記前処理伝搬遅延補償量推定回路により伝搬遅延補償量が推定されている状況下では、前記ドップラー周波数と前記伝搬遅延補償量を用いて、前記目標との相対運動を特定し、前記相対運動から前記スロータイムに対する電波の伝搬遅延時間の変化を推定することを特徴とする請求項6記載のレーダ装置。
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