JP2014153161A - 画像レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】2次以上の変化を無視できない場合でも、電波の伝搬遅延時間の変化に伴う再生画像のぼけを高精度に補償することができるようにする。
【解決手段】オートフォーカス回路4が、並進運動の影響で発生している2次以上のディレイ変化を推定し、2次以上のディレイ変化よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する。これにより、2次以上の変化を無視できない場合でも、電波の伝搬遅延時間の変化に伴う再生画像のぼけを高精度に補償することができる。
【選択図】図1

Description

この発明は、観測対象である目標に散乱された電波を受信し、その電波から画像を再生する画像レーダ装置に関し、特に目標と画像レーダ装置の間の相対運動が未知、または、相対運動の推定結果に誤差が含まれる場合、その影響によって発生する電波の伝搬遅延時間の変化に伴う再生画像のぼけを補償する画像レーダ装置に関するものである。
例えば、画像レーダ装置として、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)や逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse SAR)などがある。
合成開口レーダや逆合成開口レーダでは、目標の形状に固定されている座標系において、目標に対する送信局や受信局の位置を変えながら観測を行って(送信局や受信局の位置の変化は、目標だけが運動することで位置が変化するものであってもよいし、送信局及び受信局が運動することで位置が変化するものであってもよいし、目標と送信局及び受信局の双方が運動することで位置が変化するものであってもよい)、得られる受信信号を処理することで、目標の反射強度分布に関する高分解能な画像を再生する。
画像を再生する上で必要な情報は、上記の座標系におけるレーダ(送信局、受信局)の方向(以下、「見込み角」と称する)の変化を示す情報であるが、同時に、レーダと目標の間の距離(または、送信局−目標−受信局を結ぶパスの長さ)が変化すると、その変化が画像のぼけの原因になる。
そのため、この距離変化を何らかの方法で推定して補償する並進運動補償処理が必要になる。
移動レーダで固定目標を観測するSARでは、プラットフォームに搭載されている動揺センサのセンサ情報を取得することで、レーダと目標の間の距離変化を高精度に推定できる可能性がある。ただし、動揺センサの精度が低い場合、高精度な距離変化の推定は困難である。
しかし、目標が運動するISARでは、目標の運動を計測することが困難であるため、受信信号から距離変化を推定して、その距離変化を補償するオートフォーカスが一般的に行われる。
以下、画像レーダ装置におけるオートフォーカスの問題について説明する。
オートフォーカスの方法は、各種提案されており、例えば、以下の特許文献1に開示されているPD(Phase Difference)法や、特許文献2に開示されているPGA(Phase Gradient Autofocus)法は、並進運動の影響で発生する時間に対する2次以上の位相変化を推定・補償する方法である。
しかし、PD法やPGA法では、目標に対する電波の各反射点が、観測中、レンジヒストリ上の同じレンジ分解能セル内に留まるという仮定の下で行うため、観測中に、各反射点がレンジセルを越えて移動するような場合には、推定精度が劣化してしまう問題が生じる。
上記の問題を解決する方法の一つとして、2次以上の位相変化を補償する前に、例えば、以下の特許文献3に開示されているレンジ補償法を適用して、予めレンジセルを超えた移動を補償する方法が考えられる。
しかし、この方法は、レンジ移動が時間に対する1次変化で表される場合を仮定しており、2次以上の変化を無視できない場合には適用することができない。
以下の特許文献4や特許文献5には、2次以上のレンジ変化に対処する方法が述べられている。
これらの方法は、2次以上のレンジセルの移動による同一反射点の信号の途切れを避けるために、複数のレンジセルの信号の総和を得て、得られた信号の位相変化に基づいて2次以上のレンジセル移動を推定している。
しかし、総和によって分解能が劣化するため、補償量の推定誤差が増大することが懸念される。
米国特許4,999,635号 米国特許4,924,229号 特開平10−268041号公報 特開2000−88955号公報 特開2006−343290号公報
従来の画像レーダ装置は以上のように構成されているので、目標に対する電波の各反射点が、観測中、レンジセルを越えて移動する場合でも、レンジ移動が時間に対する1次変化で表される場合、2次以上の位相変化を補償する前にレンジ補償法を適用すれば、位相変化の推定精度の劣化を防止することができる。しかし、2次以上の変化を無視できない場合、位相変化の推定精度の劣化を防止することができず、電波の伝搬遅延時間の変化に伴う再生画像のぼけを高精度に補償することができないなどの課題があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、2次以上の変化を無視できない場合でも、電波の伝搬遅延時間の変化に伴う再生画像のぼけを高精度に補償することができる画像レーダ装置を得ることを目的とする。
この発明に係る画像レーダ装置は、電波の伝搬遅延時間を表すディレイ時間軸と、電波の送信時刻を表すスロータイムとの2次元分布であるディレイヒストリをディレイ時間方向にフーリエ変換して、ディレイ時間に対応するディレイ周波数とスロータイムとの2次元分布であるディレイスペクトルヒストリを生成するディレイスペクトルヒストリ生成器と、ディレイスペクトルヒストリ生成器により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析することで、各スロータイムのドップラー周波数分布であるドップラーヒストリを算出する時間周波数分析器と、時間周波数分析器により算出されたドップラーヒストリの信号分布から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定するディレイ変化微分値推定器と、ディレイ変化微分値推定器により推定された各スロータイムにおけるディレイ変化微分値をディレイ変化に換算するディレイ変化換算器と、ディレイ変化換算器により換算されたディレイ変化に基づいてディレイヒストリを補償するディレイ変化補償器とから構成されたオートフォーカス回路を備えるようにしたものである。
この発明によれば、2次元分布であるディレイヒストリをディレイ時間方向にフーリエ変換して、ディレイ時間に対応するディレイ周波数とスロータイムとの2次元分布であるディレイスペクトルヒストリを生成するディレイスペクトルヒストリ生成器と、ディレイスペクトルヒストリ生成器により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析することで、各スロータイムのドップラー周波数分布であるドップラーヒストリを算出する時間周波数分析器と、時間周波数分析器により算出されたドップラーヒストリの信号分布から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定するディレイ変化微分値推定器と、ディレイ変化微分値推定器により推定された各スロータイムにおけるディレイ変化微分値をディレイ変化に換算するディレイ変化換算器と、ディレイ変化換算器により換算されたディレイ変化に基づいてディレイヒストリを補償するディレイ変化補償器とから構成されたオートフォーカス回路を備えるように構成したので、2次以上の変化を無視できない場合でも、電波の伝搬遅延時間の変化に伴う再生画像のぼけを高精度に補償することができる効果がある。
この発明の実施の形態1による画像レーダ装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の観測回路1を示す構成図である。 この発明の実施の形態1による画像レーダ装置のディレイヒストリ生成回路2を示す構成図である。 この発明の実施の形態1による画像レーダ装置のオートフォーカス前処理回路3を示す構成図である。 この発明の実施の形態1による画像レーダ装置のオートフォーカス回路4を示す構成図である。 (a)はディレイヒストリの模式図、(b)はディレイドップラー分布の模式図である。 統合後のディレイ微分値ヒストリから推定されるディレイ微分値の一例を示す説明図である。 この発明の実施の形態2による画像レーダ装置のオートフォーカス前処理回路3を示す構成図である。
実施の形態1.
この実施の形態1では、2次以上の変化を無視できない場合でも、電波の伝搬遅延時間の変化に伴う再生画像のぼけを高精度に補償することができる画像レーダ装置について説明する。
以下では、送受信局が同じ位置にある構成(以下、「モノスタティック構成」と称する)での観測と、送受信局の位置が異なる構成(以下、「バイスタティック構成」と称する)での観測を統一的に取り扱うために、送信局−目標(目標上の各反射点)−受信局を結ぶパスの距離を「ディレイ長」、また、そのディレイ長を電波が進む間の時間を「ディレイ時間」(ディレイ長を光速で割った値)として、ディレイ長やディレイ時間を推定するものとする。
モノスタティック構成では、ディレイ長を1/2倍した値が、一般的な「レンジ」となる。
ディレイ長とディレイ時間の区別が特に必要ない場合には、ディレイ長やディレイ時間を「ディレイ軸」と呼ぶこともある。
バイスタティック構成では、送信局−目標−受信局の距離から、送信局−受信局の距離を差し引いた距離に関するものを「ディレイ長」や「ディレイ時間」と呼ぶ場合もある。
ディレイ長又はディレイ時間を軸とする反射強度分布をディレイプロフィールと称する(ディレイをレンジに換算したものが一般的なレンジプロフィールに相当する)。
また、スロータイム(電波の送信時刻)を変えながらディレイプロフィールを得る処理を繰り返し、これをディレイ軸とスロータイムの2次元に配置したものを「ディレイヒストリ」と称する。
以下で取り扱う問題の本質は、各スロータイムにおける目標のディレイ軸方向の移動量(長さ、または、時間)を推定する点にある。
様々な運動補償後のディレイヒストリを処理することで、目標の反射強度分布について高分解能な画像を得ることができる。
図1はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置を示す構成図である。
図1において、観測回路1は電波を空間に放射する一方、観測対象である目標に散乱された電波を受信し、その受信信号及び空間に放射している電波の信号(以下、「送信信号」と称する)に関する情報をディレイヒストリ生成回路2に出力する処理を実施する。
ディレイヒストリ生成回路2は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、観測回路1から出力された送信信号に関する情報を参照して、観測回路1から出力された受信信号をディレイ時間軸とスロータイムの2次元に配置してディレイヒストリを生成する処理を実施する。
オートフォーカス前処理回路3は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、ディレイ変化のスロータイムに対する1次成分を推定し、その1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する処理を実施する。
オートフォーカス回路4は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、並進運動の影響で発生している2次以上のディレイ変化を推定し、2次以上のディレイ変化よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する処理を実施する。
画像化回路5は例えば例えばCPUを実装している半導体集積回路、ワンチップマイコン、あるいは、GPU(Graphics Processing Unit)などから構成されており、オートフォーカス回路4により補償されたディレイヒストリから画像を再生する処理を実施する。
図1の例では、画像レーダ装置の構成要素である観測回路1、ディレイヒストリ生成回路2、オートフォーカス前処理回路3、オートフォーカス回路4及び画像化回路5のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定しているが、画像レーダ装置の全部又は一部がコンピュータで構成されていてもよい。
例えば、画像レーダ装置の一部(例えば、ディレイヒストリ生成回路2、オートフォーカス前処理回路3、オートフォーカス回路4、画像化回路5)がコンピュータで構成されている場合、ディレイヒストリ生成回路2、オートフォーカス前処理回路3、オートフォーカス回路4及び画像化回路5の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図2はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の観測回路1を示す構成図である。
図2において、送信系回路11は送信機12及び送信アンテナ13から構成されており、電波を空間に放射する回路である。
送信機12は空間に放射する電波である高周波信号(送信信号)を生成する処理を実施する。
送信アンテナ13は送信機12により生成された高周波信号を空間に放射する部材である。
受信系回路14は受信アンテナ15及び受信機16から構成されており、送信系回路11により放射されたのち、観測対象である目標に散乱されて戻ってきた電波を受信する回路である。
受信アンテナ15は目標に散乱されて戻ってきた電波を受信する部材である。
受信機16は受信アンテナ15により受信された電波を検波して復調する処理を実施する。
なお、送信機12と受信機16の間で、例えば、搬送波信号のやり取りを行う場合もあるが、本特許の本質に係るものではないので、ここでは記載を省略している。
送信系伝達回路17は送信機12により生成された高周波信号(送信信号)に関する情報をディレイヒストリ生成回路2(後段の回路)に伝達する回路である。
図2では、観測回路1が有する機能の構成を示しているが、これは一例に過ぎず、他の構成であってもよい。
例えば、一般的なモノスタティック構成では、送信アンテナ13及び受信アンテナ15が有する機能を、1つの送受信アンテナと送受切り換え器で実現する場合があることは良く知られている。
また、送信局と受信局の位置が異なるバイスタティック構成では、観測回路1を1つにまとめた装置として構成するのは困難である。
この場合も、異なる位置に配置された送信系回路11と受信系回路14を、仮想的に1つにまとめたものを観測回路1として考えればよい。
さらに、これらの装置については、本特許内容を含む画像レーダ装置の運用者の管理下にあるものだけで構成してもよい。
また、運用者の管理下にはない装置(例えば、一般的な放送波、通信波、他のレーダ送信波などを発信する装置)を送信系回路11として代用した構成としてもよい。
以上を踏まえた上で、送信系信号伝達回路17の機能を説明する。
送信系信号伝達回路17は、後段の処理のために送信波についての情報を送ることを目的とするものであり、一番単純な例では、単なる信号線で構成される。
また、例えば、送信系回路11と受信系回路14の位置や運動が異なるような場合、または、送信系回路11が運用者の管理下に無い場合などでは、信号線で構成するのが困難な場合がある。このような場合には、空間伝送により情報を伝達するような構成にしても構わない。
具体的には、受信系回路14と同等の受信アンテナと受信機を用いて、送信信号を直接受信するような構成が考えられる。
また、送信信号が既知である場合には、特に送信系回路11から送信信号を入力せずに、送信系信号伝達回路17が送信信号に関する情報を記憶するようにしてもよい。
その場合には、送信系信号伝達回路17は記憶装置によって構成される。
送信信号に関する情報を後段の回路に伝達する機能を実現するものであれば、上記の構成に限らず、別の構成にしても構わない。
また、特別な場合として、送信信号に関する情報を後段の回路で必要としない場合もある。この場合、送信系信号伝達回路17を省略しても構わない。
図3はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置のディレイヒストリ生成回路2を示す構成図である。
図3において、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21は観測回路1から出力された送信信号に関する情報を参照して、予め、スロータイム方向の受信信号の配置間隔の逆数である繰り返し周波数(パルス繰り返し周波数)を、ディレイ変化の絶対値の想定される最大値で折り返さない値に設定してから、観測回路1から出力された受信信号をディレイ時間軸とスロータイムの2次元に配置してディレイヒストリを生成する回路である。
ディレイヒストリディレイ軸圧縮回路22は送信信号の共役を参照信号として、その参照信号と圧縮前ディレイヒストリ配置回路21により生成されたディレイヒストリとのコンボリューション演算によって、そのディレイプロフィールを高分解能化する回路である。
プリサム回路23はディレイヒストリディレイ軸圧縮回路22によりディレイプロフィールが高分解能化されたディレイヒストリをスロータイム方向の区分領域に分割し、区分領域毎に、各ディレイセルの値をスロータイム方向に総和する回路である。
図4はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置のオートフォーカス前処理回路3を示す構成図である。
図4において、粗1次運動推定・補償回路31はディレイヒストリ生成回路2により生成されたディレイヒストリの振幅分布からディレイ変化のスロータイムに対する1次成分を推定し、その1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する回路である。
精1次運動推定・補償回路32は粗1次運動推定・補償回路31の補償処理だけでは完全に補償できないことがあるため、ディレイヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換し、そのフーリエ変換結果であるドップラー周波数分布からディレイ変化の1次成分を推定し、その1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する回路である。
プリサム回路33はディレイヒストリをスロータイム方向の区分領域に分割し、区分領域毎に、各ディレイセルの値をスロータイム方向に総和する回路である。
図5はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置のオートフォーカス回路4を示す構成図である。
図5において、ディレイ軸ブロック選択器41はオートフォーカス前処理回路3から出力されたディレイヒストリを区分けする1以上のブロックの中から任意のブロックを選択して、そのディレイヒストリから任意のブロック内のディレイヒストリを抽出する処理を実施する。
ブロック毎ディレイスペクトルヒストリ生成器42はディレイ軸ブロック選択器41により選択されたブロック毎に、電波の伝搬遅延時間を表すディレイ時間軸と、その電波の送信時刻を表すスロータイムとの2次元分布であるディレイヒストリをディレイ時間方向にフーリエ変換して、そのディレイ時間に対応するディレイ周波数とスロータイムとの2次元分布であるディレイスペクトルヒストリを生成する処理を実施する。
ブロック毎ディレイ周波数毎TFA(Time Frequency Analysis)器43はブロック毎ディレイスペクトルヒストリ生成器42により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析することで、各スロータイムのドップラー周波数分布であるドップラーヒストリを算出する処理を実施する。なお、ブロック毎ディレイ周波数毎TFA器43は時間周波数分析器を構成している。
ドップラーヒストリ統合器44はブロック毎ディレイ周波数毎TFA器43により算出された各ディレイ周波数におけるドップラーヒストリのドップラー周波数軸を、ディレイ周波数の相違の影響を打ち消すようにスケーリングをした上で、ディレイ変化微分値の軸方向のサンプリング点を合わせるリサンプリングをしてから、サンプリング点毎に、各ディレイ周波数におけるドップラーヒストリを統合する処理を実施する。
ディレイ変化微分値推定器45はドップラーヒストリ統合器44により統合されたドップラーヒストリの信号分布から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定する処理を実施する。
ディレイ変化換算器46はディレイ変化微分値推定器45により推定された各スロータイムにおけるディレイ変化微分値をディレイ変化に換算する処理を実施する。
ディレイ変化補償器47はディレイ変化換算器46により換算されたディレイ変化に基づいて上記ディレイヒストリを補償する処理を実施する。
次に動作について説明する。
まず、観測回路1における送信系回路11の送信機12は、空間に放射する電波である高周波信号(送信信号)を生成し、その高周波信号を送信アンテナ13に出力する。これにより、送信アンテナ13から電波が空間に放射される。
送信アンテナ13から空間に放射された電波の一部は、空間に存在している目標に散乱されて観測回路1に戻ってくる。
観測回路1における受信系回路14の受信アンテナ15は、目標に散乱されて戻ってきた電波を受信する。
受信系回路14の受信機16は、受信アンテナ15により受信された電波を検波して復調し、復調後の受信信号をディレイヒストリ生成回路2に出力する。
なお、観測回路1の送信系伝達回路17は、送信機12により生成された高周波信号(送信信号)に関する情報をディレイヒストリ生成回路2に伝達する。
ディレイヒストリ生成回路2は、観測回路1から受信信号を受けると、観測回路1から出力された送信信号に関する情報を参照して、その受信信号をディレイ時間軸とスロータイムの2次元に配置してディレイヒストリを生成する。
ここで、「圧縮前」という用語は、一般的に受信系回路14で得られる受信信号が、パルス圧縮等でディレイ軸方向の高分解能化がなされる前のものであることが多いことを考慮したものであるが、その受信信号が既に圧縮後であっても特段問題はない。
この場合は、後述するディレイヒストリディレイ軸圧縮回路22の構成等が変わる可能性があるが、この点については後述する。
以下、ディレイヒストリ生成回路2によるディレイヒストリの生成処理を具体的に説明する。
圧縮前ディレイヒストリ配置回路21は、観測回路1から出力された受信信号をディレイ時間軸とスロータイムの2次元に配置してディレイヒストリを生成する処理を実施するが、その処理内容は、前段の観測の形態によって大きく変わる。
(1)観測回路1が送信信号として、一定時間間隔で複数のパルスを送信する観測形態の場合
この観測形態では、受信信号として、各々の送信パルスに対応するディレイプロフィールが既に得られており、各ディレイプロフィールをパルスの送信時刻に応じて配置するのみでディレイヒストリが得られる。パルスの送信時刻は、観測回路1から出力された送信信号に関する情報を参照することで特定することができる。
ここで、パルス毎に、送信時刻を基準とする受信ゲート時刻が異なる場合には、パルス間の受信ゲートのずれについても補正しておくようにする。
パルスの送信時刻の間隔は、一般的にパルス繰り返し周期(PRI:Pulse Repetition Interval)と呼ばれるものである。
パルス繰り返し周期PRIを定める要素は様々であるが、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21がパルス繰り返し周期PRIを設定して、そのパルス繰り返し周期PRIを観測回路1に指示すると考えてもよい。
パルス繰り返し周期PRIを適切に設定することで、後段の処理に有用な効果を得ることが可能であり、この内容については後述する。
(2)観測回路1が送信信号として、連続波を送信する観測形態の場合
この観測形態では、連続波の受信信号から、適当な中心時刻・時間幅の区分受信信号を中心時刻を変えながら抽出し、その区分受信信号を疑似的なディレイプロフィールとみなした上で、中心時刻に応じて2次元配置することでディレイヒストリを生成する。
中心時刻の間隔は、パルス繰り返し周期PRIに相当するものであるが、複数のパルスを用いる観測形態とは異なり、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21内で閉じて自由に設定可能である。
パルス繰り返し周期PRIを適切に設定することで、後段の処理に有用な効果を得ることが可能である点は、複数のパルスを用いた観測形態の場合と同様である。
図3の例では、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21は、観測回路1から受信信号を入力する他に、観測回路1の送信系信号伝達回路17から送信信号に関する情報を入力しているが、これは、受信信号のディレイヒストリのプロフィール毎に、異なる送信信号の情報が必要な場合(送信信号がパルス波形か連続波形かに関わらず)でも、送信信号についてのディレイ軸とスロータイム軸の2次元分布を生成できるようにするためである。
例えば、送信パルスがパルス毎に異なる場合や(意図しているか否かは関係ない)、放送波など、特に繰り返し要素のない電波を用いる場合などが該当する。
その波形がパルス波か連続波かによって、適宜、上述の受信信号の各ケースと同じ処理を行えばよい。
なお、送信信号の波形が定まっており、特に受信ディレイプロフィール毎に、個別の送信信号に関する情報を用意する必要が無い場合も考えられる。
この場合、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21では、送信信号に関する情報を入力する必要がなく、必要に応じて、後段のディレイヒストリディレイ軸圧縮回路22が送信信号に関する情報を入力するようにすればよい。
ディレイヒストリディレイ軸圧縮回路22は、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21がディレイヒストリを生成すると、一般的なマッチドフィルタ処理、即ち、送信信号の共役を参照信号として、その参照信号と圧縮前ディレイヒストリ配置回路21により生成されたディレイヒストリとのコンボリューション演算処理を実施することで、そのディレイプロフィールを高分解能化する。
パルス圧縮はマッチドフィルタ処理の典型例である。
また、「送信局からの直接波」と「目標での反射・散乱を介して得られた散乱波」との相互相関による圧縮も、送信局からの直接波を送信波と同等に考えれば、同じく送信波形の共役信号とのコンボリューション演算処理とみなすことができる。
これらにより、帯域幅B[Hz]の信号で得られたディレイヒストリのディレイ時間分解能を1/B[s]に向上させることができる。
図3の例では、ディレイヒストリディレイ軸圧縮回路22は、観測回路1の受信系回路14から受信信号を入力する他に、観測回路1の送信系信号伝達回路17から送信信号に関する情報を入力しているが、常に、2系統の入力がある訳ではない。
送信信号の波形が常に定まっている場合には、予め、送信系信号伝達回路17から送信信号の波形が入力され、その送信信号の波形と圧縮前ディレイヒストリ配置回路21から出力されたディレイヒストリの各ディレイプロフィールとのマッチドフィルタ処理が行われる。
また、送信信号が毎回変わる場合には、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21から、ディレイヒストリと一緒に送信信号に関するディレイ軸とスロータイム軸の2次元分布が入力されて、スロータイム毎にマッチドフィルタ処理が行われる。
なお、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21に入力された受信信号が既にディレイ軸方向に圧縮済である場合(例えば、送信パルスが既に圧縮されていた場合)には、ディレイヒストリディレイ軸圧縮回路22を省略することも可能である。
プリサム回路23は、ディレイヒストリディレイ軸圧縮回路22がディレイヒストリをディレイ軸方向に圧縮すると、圧縮後のディレイヒストリをスロータイム方向の区分領域に分割(圧縮後のディレイヒストリをスロータイム方向にブロック化)し、ブロック毎に、ディレイヒストリの各ディレイ分解能セルにおける値をスロータイム軸方向に総和するプリサム処理を行う。
プリサム処理は、積分効果によるS/Nの向上や、データ量削減による処理負荷の低減など、本発明の効果をより高める上での補助的役割を果たすものであるが、常に必要なものではない。
また、同じ役割を果たすオートフォーカス前処理回路3のプリサム回路33によっても同様の効果を得れる可能性がある。
即ち、プリサム回路23は、必要に応じて追加/省略が可能な構成要素である。
なお、N点のプリサム処理後のパルス繰り返し周波数PRF(Pulse Repetition Frequency)(=1/PRI)は1/N倍になるので、パルス繰り返し周波数PRFの最小値について制約が有る場合には、プリサム処理によってパルス繰り返し周波数PRFが変化することを踏まえたパラメータ設定を行う必要がある。例えば、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21で設定するパルス繰り返し周波数PRFが該当する。
後段の処理対象は、以上で得られたディレイ軸圧縮後(必要に応じてプリサム処理後)のディレイヒストリであり、以下、これを単にディレイヒストリと呼ぶことにする。
次に、オートフォーカス前処理回路3及びオートフォーカス回路4が、順次、補償処理を実施するが、オートフォーカス前処理回路3及びオートフォーカス回路4の処理内容を具体的に説明する前に概要を説明する。
以下では、ディレイ時刻(ファストタイム)をτ[s]、スロータイムをη[s]で表すようにする。
また、各スロータイムηにおけるディレイ時間をδ(η)で表すようにする。
このディレイ時間δ(η)に含まれる1次以上の変化が、オートフォーカスでの補償対象である。
送信信号の中心周波数をfとすると、ディレイ時間δ(η)によって発生する位相変化φ(f,η)は、下記の式(1)で与えられる。

Figure 2014153161

ここで、式(1)は、下記の式(2)に示すように、送信信号の中心周波数fが、送信帯域幅内の任意の周波数fτ(ディレイ時間方向の周波数であるディレイ周波数)に相当することを踏まえて、一般化しても成立する。
Figure 2014153161
したがって、ディレイ周波数fτ、スロータイムηにおけるドップラー周波数γ(fτ,η)は、下記の式(3)で与えられる。

Figure 2014153161

式(3)において、δドット(η)は、ディレイ時間δ(η)のηに関する微分である。
電子出願の関係上、文字の上に“・”の記号を付することができないので、明細書の文書中では、「δドット」のように表記している。
つまり、ドップラー周波数γ(fτ,η)の変化から、ディレイ時間δ(η)のηに関する微分が得られ、これを微分することでディレイ時間δ(η)の1次以上の変化を推定できる可能性がある。
そして、その推定は、複数のディレイ周波数fτにおける各ドップラー周波数γ(fτ,η)の変化から独立に実施することが可能である。
この複数のディレイ周波数fτにおける各ドップラー周波数γ(fτ,η)の変化の情報を統合することで、オートフォーカスの補償量推定を高精度化する点が、本特許の中心的なアイデアである。
ところが、一般的にドップラー周波数γ(fτ,η)は、パルス繰り返し周波数PRF(=1/PRI)による折り返しを受ける。
パルス繰り返し周波数PRFをΓPRF[Hz]とすると、計測されるドップラー周波数γハット(fτ,η)は、下記の式(4)で与えられる。電子出願の関係上、文字の上に“^”の記号を付することができないので、明細書の文書中では、「γハット」のように表記している。

Figure 2014153161

式(4)において、mod(a,b)は、一般的なモジュロ演算を表す関数であって、b(mod a)を表している。
上記の式(3)は、折り返しが発生していないことを前提とするが、計測されたドップラー周波数γハット(fτ,η)は、式(4)のパルス繰り返し周波数PRF(=ΓPRF)による折り返しの影響を受けている可能性があり、この間の不整合を解消させるための何らかの対処が必要となる。
この問題への対処も、本特許を成立させる上で重要な処理である。
この対処方法については後述するが、概ね、以下の2方法に大別される。
(a)レーダと目標の間の相対運動や相対位置の特性に基づいて、折り返しが生じないパ
ルス繰り返し周波数PRFを設定することによる対処
(b)何らかの方法で折り返し分を推定して、折り返し分の影響を除去することによる対
何らかの方法で、パルス繰り返し周波数PRFによる折り返しに伴う不整合が解消されている前提において、複数のディレイ周波数fτにおける各ドップラー周波数γ(fτ,η)の変化の情報を統合する処理の主な課題は、推定の中間情報(例えば、各ディレイ周波数fτにおけるドップラー周波数γ(fτ,η)の変化の推定結果、各ディレイ周波数fτにおけるドップラーヒストリなど)の各ドップラー周波数γ(fτ,η)が、各ディレイ周波数fτによって異なるスケーリングを受けていることを解消する点にある。
この点についても後述する。
ここで、ディレイヒストリ生成回路2における圧縮前ディレイヒストリ配置回路21でのパルス繰り返し周波数PRF(=1/PRI)の設定について述べる。
上述したように、ドップラー周波数γ(fτ,η)の折り返しによる不整合の問題は、パルス繰り返し周波数PRFの折り返しが発生しない程、高い値に設定することで回避することができる。
そこで、ディレイヒストリ配置回路21では、パルス繰り返し周波数PRFを、折り返しが生じ難いと期待される値に設定する。
折り返しが生じ難いと期待されるパルス繰り返し周波数PRFの値ΓPRFは、ディレイ長の変化率の想定される最大値と、最大のディレイ周波数fτに依存して、下記の式(5)のように与えられる。

Figure 2014153161
式(5)において、max(x)は、xの最大値をとる演算である。
αγは、折り返しを発生させないために設定する定数値であり、1/2以下の値とすることが望ましい。
αγの値は、基本的には、1/2で問題ないが、下記の式(6)に示す値の信頼度等を勘案して、更に小さい値を設定するようにしてもよい。

Figure 2014153161
Figure 2014153161
ただし、他の要求との兼ね合いによっては、αγの値を1/2以下に設定できない場合もある。
この場合には、ドップラー周波数の折り返しの不整合を解消することができないため問題となる。
従って、後述の処理によって、別途不整合を解消するが、この場合においても、αγの値をなるべく小さな値に設定することで、不整合を小さくしておけることから、後述の処理の負担を減らせる効果がある。
上述したように、プリサム処理を伴う場合は、プリサム処理によるパルス繰り返し周波数PRFの低下の影響を考慮してパラメータを設定する必要がある。
以上が、ドップラー周波数の折り返しの問題への対処の観点での圧縮前ディレイヒストリ配置回路21の処理である。
次に、オートフォーカス前処理回路3の処理内容を説明する
オートフォーカス前処理回路3は、ディレイヒストリ生成回路2からディレイヒストリを受けると、ディレイ変化のスロータイムに対する1次成分を推定し、その1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する。
以下、オートフォーカス前処理回路3による補償処理を具体的に説明する。
オートフォーカス前処理回路3の粗1次運動推定・補償回路31は、ディレイヒストリ生成回路2からディレイヒストリを受けると、一般的な画像レーダの1次のレンジ補償法に基づいて1次のディレイ変化を推定する。
即ち、粗1次運動推定・補償回路31は、ディレイヒストリ生成回路2により生成されたディレイヒストリの振幅分布からディレイ変化のスロータイムに対する1次成分を推定し、その1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する。
粗1次運動推定・補償回路31では、1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償するが、この結果として、ドップラー周波数の変化に基づいてディレイ変化を推定する際に必要となるドップラー周波数の折り返しを除去する効果もある。
1次のディレイ変化の推定方法としては、例えば、特許文献3に記載されている方法がある。
特許文献3に記載されている方法は、レンジヒストリ上に存在する各反射点の軌跡を、画像上の同じ傾きの直線群とみなし、その傾き推定問題に帰着させてレンジ補償量を推定するものである。
その推定では、レンジヒストリの振幅分布に2次元フーリエ変換を適用することで、上記の各直線を、2次元スペクトル平面上の原点を通り、元の傾きに依存した傾きの直線上に変換し、その傾き推定問題を定点(原点)を通る直線の検出問題に簡単化するものである。
これにより、複数の反射点の軌跡の干渉や遮蔽等による振幅変動等の影響を緩和して、レンジ補償量を推定することができる。
以上では、レンジヒストリについての方法について述べたが、これは、レンジ軸とディレイ軸が比例関係にあることを踏まえると、レンジヒストリを一般化したものとして取り扱っているディレイヒストリに対しても、同様に適用できることは言うまでもない。
粗1次運動推定・補償回路31では、このような従来方法の機能を利用して、1次変化を推定する。
次に、ディレイ変化が推定された場合、この推定値に基づいて補償を行う方法について述べる。
ここでは、ディレイヒストリをg(τ,η)、ディレイヒストリg(τ,η)をディレイ軸方向にフーリエ変換することで得られるディレイスペクトルヒストリをG(fτ,η)とする。
受信信号は、中心周波数fのキャリア信号を差し引くようにダウンコンバートされて、ベースバンド信号として表現されているものとする。
したがって、ディレイ周波数fτの見かけ上の値は、サンプリング周波数をF[Hz]として、−F/2≦fτ<F/2の範囲の値になる。
しかし、信号の位相変化等には、中心周波数fを中心とする本来の周波数の値が反映されているので、ここでは、(f−F/2)≦fτ<(f+F/2)の範囲の値を考える。
目標のディレイ時間変化の推定値をδest(η)で表すと、下記の式(7)より、ディレイ時間変化の推定値δest(η)の影響が補償されたディレイスペクトルヒストリGcmp(fτ,η)が得られる。

Figure 2014153161
以上の補償方法は、本明細書において、以降の様々な局面で現れる補償で共通する。
この補償により、ディレイヒストリ上の各反射点のディレイ軸方向の移動が、ディレイ時間変化の推定値δest(η)の分だけ低減されるのみならず、これに対応した位相変化も同時に低減される。
特許文献3等に記載されている方法によって得られた1次のディレイ変化の係数をaとすると、これに対応する1次のディレイ変化がδ(η)=aηで与えられる。
入力されたディレイヒストリがg(τ,η)、ディレイスペクトルヒストリがG(fτ,η)であるとすると、1次粗補償後のディレイヒストリg10(τ,η)は、式(7)のG(fτ,η)にG(fτ,η)を代入し、δest(η)にδ(η)を代入して得られるGcmp(fτ,η)をディレイ周波数fτの軸方向に逆フーリエ変換した結果として得られる。
1次粗補償後のディレイヒストリg10(τ,η)には、1次変化が残存する可能性があるが、その殆どは補償されていると期待される。
よって、各反射点のディレイ軸方向の1次変化成分がほとんど補償されると共に、それに対応する1次の位相変化(ドップラー周波数)も小さくなり、その結果として、補償後のパルス繰り返し周波数PRFによる折り返しを回避することができると期待される。
即ち、粗1次運動推定・補償回路31の処理を経ることで、後段におけるドップラー周波数変化に基づくディレイ変化の推定・補償処理を成立させることができるようになると期待される。
なお、既にパルス繰り返し周波数PRFによる折り返しが解消されていると期待される場合には、粗1次運動推定・補償回路31の処理を省略することも可能である。
精1次運動推定・補償回路32は、粗1次運動推定・補償回路31の補償処理だけでは完全に補償できないことがあるため、ディレイヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換し、そのフーリエ変換結果であるドップラー周波数分布からディレイ変化の1次成分を推定し、その1次成分によって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する。
粗1次運動推定・補償回路31がディレイヒストリ上の振幅分布に基づく、いわばディレイ分解能オーダの推定であるのに対し、精1次運動推定・補償回路32によるドップラー周波数に基づく推定は、波長オーダの高い精度が期待される。
ただし、精1次運動推定・補償回路32では、パルス繰り返し周波数PRFによるドップラー周波数の折り返し分の推定は行えないので、これについては、別途、前述の回路(例えば、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21や粗1次運動推定・補償回路31)等で対処する必要がある。
ここで、入力されたディレイヒストリがg10(τ,η)、ディレイヒストリg10(τ,η)をスロータイムη方向にフーリエ変換した2次元分布をG10 (η)(τ,fη)とする。
η[Hz]はη方向の周波数(ドップラー周波数)に相当する。
以下では、G10 (η)(τ,fη)をディレイドップラー分布と称する。
Figure 2014153161
精1次運動推定・補償回路32は、ディレイドップラー分布G10 (η)(τ,fη)に基づいて、目標のドップラー周波数γtgtを推定する。
ドップラー周波数γtgtの推定方法は、様々なものが考えられる。
例えば、下記の式(8)のように、ディレイ軸方向に総和した信号強度が大きくなるドップラー周波数γtgtを推定値として選択する方法が考えられる。

Figure 2014153161

式(8)において、kは和をとる場合の次数を与える定数であるが、電力和をとる場合の2、振幅和をとる場合の1などの値を用いるのが一般的である。
arg max(f(x))は、f(x)を最大とするxを得る関数である。
また、下記の式(9)のように、重心を推定値とするような方法でもよい。

Figure 2014153161
また、閾値処理によって、目標が存在しているドップラー周波数の範囲を定め、その範囲の中心を目標のドップラー周波数γtgtとするような方法も考えられる。
いずれかの方法、または、別の方法によって得られた目標のドップラー周波数γtgt及び中心周波数fから、ディレイの1次変化の傾き−γtgt/fが得られ、ディレイの1次変化の傾き−γtgt/fから1次のディレイ変化δ(η)が得られる。
よって、上記の通り、1次のディレイ変化δ(η)に基づいてディレイの1次変化を補償することができる。
補償後に得られるディレイヒストリをg(τ,η)で表すものとする。
なお、精1次運動推定・補償回路32で、1次変化が完全に補償されることが理想であるが、2次以上の変化の影響等で誤差が生じる可能性は否定できない。
この問題に対しては、後段の処理に1次変化を推定する機能を持たせることで対処可能である。
また、後段の処理に1次変化を推定する機能を持たせた場合や、目標信号を0ドップラー付近に配置させる必要がない場合等では、ここで述べた精1次運動推定・補償回路32を省略することも可能である。
プリサム回路33は、ディレイヒストリ生成回路2のプリサム回路23と同様に、ディレイヒストリをスロータイム方向の区分領域に分割(圧縮後のディレイヒストリをスロータイム方向にブロック化)し、ブロック毎に、ディレイヒストリの各ディレイ分解能セルにおける値をスロータイム軸方向に総和するプリサム処理を行う。
プリサム回路33は、積分効果によるS/Nの向上を図りながら、同時に、データ量の削減による処理負荷を低減することができるが、これらは本発明の効果をより高める上での補助的役割を果たすものであり、常に必要なものではない。
また、同じ役割を果たすディレイヒストリ生成回路2のプリサム回路23によっても同様の効果を得られる可能性がある。
即ち、プリサム回路33は、必要に応じて、追加/省略可能な構成要素である。
なお、プリサム処理は、スロータイム軸方向に分割した区分ブロックのディレイヒストリについて、これをスロータイム方向にフーリエ変換した場合のゼロドップラー周波数セルの値を抽出する処理と等価である。
よって、目標のラジアル速度が、目標信号が別のドップラー周波数セルに積み上がる程度に大きい場合には、プリサム処理によって、却ってS/Nが劣化することがある。
そこで、プリサム回路23及びプリサム回路33に入力されるディレイヒストリにおいては、目標のドップラー周波数がパルス繰り返し周波数PRFに対して十分に低い(例えば、区分ブロックのスロータイム点数がNの場合、目標のドップラー周波数の絶対値がPRF/(2N)以下である)必要がある。
上記を満足できる観測条件の場合は問題とならないが、これを満足できない場合は、満足させるための何らかの対処が必要である。
その対処は、例えば、圧縮前ディレイヒストリ配置回路21における処理時間間隔の設定処理であり、また、粗1次運動推定・補償回路31や精1次運動推定・補償回路32での補償処理である。
特に、精1次運動推定・補償回路32は、目標のドップラー周波数を計測して、そのドップラー周波数を0にするための補償を行う処理とみなすことができることから、プリサム回路の前処理として適している。
次に、オートフォーカス回路4の処理内容を説明する。
オートフォーカス回路4は、並進運動の影響で発生している2次以上のディレイ変化を推定し、2次以上のディレイ変化よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する。
以下、オートフォーカス回路4による補償処理を具体的に説明する。
オートフォーカス回路4のディレイ軸ブロック選択器41は、オートフォーカス前処理回路3から出力されたディレイヒストリを区分けする1以上のブロックの中から任意のブロックを選択して、そのディレイヒストリから任意のブロック内のディレイヒストリを抽出する処理を実施する。
図6(a)はブロック選択器41の動作を説明するためのディレイヒストリの模式図であり、(b)はディレイドップラー分布の模式図である。
ディレイ軸ブロック選択器41では、例えば、図6(a)のブロック(1)〜(3)のように、注目する1つの反射点の軌跡が含まれるようにブロックを設定する。
また、ブロック(4)のように、目標信号の全体を含むように設定する。
なお、図6(a)には示さていないが、全ディレイの信号を含めるように設定したり、目標の一部の信号を含めるように設定しても構わない。
さらに、ディレイ軸方向のセル幅を1とするような選択をしても構わない。
ブロックを設定する具体的な方法として、例えば、注目する幾つかのディレイセルの信号を抽出して推定処理を行う特許文献1や特許文献2に開示されている方法や、複数のディレイセルの信号を総和して使用する特許文献4や特許文献5に開示されている方法を参考にすればよい。
例えば、ディレイヒストリの各ディレイにおける平均電力や、図6(b)に示すようなディレイドップラー分布上の電力分布において、電力の大きな部分のディレイ位置や、広がりの形状に基づいて、適切なブロック位置を設定する方法が有用である。各々のブロックは、ディレイ軸方向に重ならなくてもよいし、重なっていてもよい。
ここでは、入力したディレイヒストリg(τ,η)から抽出された各ブロックのディレイヒストリをb(m,h)で表すものとする。
ディレイヒストリg(τ,η)は、一般的に離散時間信号として取り扱われ、そのディレイ軸τは、サンプリング周期τ(=1/F)[s]で離散化された整数として表現可能であり、スロータイム軸ηは、パルス繰り返し周期η(=1/ΓPRF)で離散化された整数として表現可能である。
各ブロックのディレイヒストリについても、そのファストタイム軸とスロータイム軸を各々整数m,hで表現している。
ただし、m=0,1,・・・,M(k)−1、h=0,1,・・・,H−1であり、hについては、以下、ヒット番号やヒットと称し、Hについては総ヒット数と称する。
なお、ブロック数をK、第k(k=0,1,・・・,K)ブロックのディレイセル数をM(k)としている。
M(k)については、これを1種類の固定値としてもよいし、ブロック毎に変えてもよい。
固定値とした場合は、ディレイ周波数の種類がブロック間で揃うので、保持するディレイ周波数の種類削減や、処理の共通度を高める効果がある。
ブロック毎ディレイスペクトルヒストリ生成器42は、ディレイ軸ブロック選択器41により選択されたブロック毎に、電波の伝搬遅延時間を表すディレイ時間軸と、その電波の送信時刻を表すスロータイムとの2次元分布であるディレイヒストリをディレイ時間方向にフーリエ変換して、そのディレイ時間に対応するディレイ周波数とスロータイムとの2次元分布であるディレイスペクトルヒストリを生成する処理を実施する。
即ち、ブロック毎ディレイスペクトルヒストリ生成器42は、ディレイ軸ブロック選択器41により選択されたブロック毎に、当該ブロックのディレイヒストリb(m,h)をディレイ軸方向にフーリエ変換することで、ディレイスペクトルヒストリB(n,h)を生成する。
ここで、nはディレイ軸に対応するディレイ周波数のセル番号(n=0,1,・・・,M(k)−1)である。
ブロック毎ディレイスペクトルヒストリ生成器42は、各セル番号nに対して、下記の式(10)に示すディレイ周波数番号n(k,n)を割り当てる。

Figure 2014153161

式(10)において、ceil(x)は、実数xの小数点以下を切り上げるオペレータである。
各ブロックkのディレイスペクトルヒストリb(m,h)において、各ディレイ周波数セル番号nに対応するディレイ周波数fτ(k,n)[Hz]を下記の式(11)で与える。

Figure 2014153161

以下では、ブロックk及びディレイ周波数セル番号n毎に分析した中間結果を統合して、ディレイ変化に関する情報を高精度に推定する。
ブロック毎ディレイ周波数毎TFA器43は、ブロック毎ディレイスペクトルヒストリ生成器42が各ブロックkのディレイスペクトルヒストリb(m,h)を生成すると、ディレイスペクトルヒストリb(m,h)における各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析することで、各スロータイムのドップラー周波数分布であるドップラーヒストリを算出する。
以下、ブロック毎ディレイ周波数毎TFA器43の処理内容を具体的に説明するが、ブロック毎ディレイ周波数毎TFA器43の分析対象は、各ブロックkのディレイスペクトルヒストリb(m,h)における各ディレイ周波数セル番号のスロータイムη方向に並ぶ時系列信号である。
スロータイムη方向に並ぶ時系列信号を時間周波数分析することで、各時系列信号について、各スロータイムにおけるドップラー周波数分布を得ることができる。
時間周波数分析には数多くの方法がある。
(1)短時間フーリエ変換(STFT:Short Time Fourier Transform)を行う時間周波数分析
短時間フーリエ変換STFTでは、時系列信号に対して、短い時間幅の窓関数の乗算処理や時間方向のデータの切出しを行った後にフーリエ変換する処理を、窓関数の中心時刻を繰り返しながら繰り返すことで、各中心時刻の周波数分布(時間周波数分布)が得られる。
窓関数としては、例えば、矩形窓、ハミング窓、ハニング窓、テイラー窓、チェビシェフ窓、ガウス窓などの一般的なものを用いてもよいし、ユーザにより定義された特殊な形状の窓を用いてもよい。
短時間フーリエ変換STFTでは、切出し時間幅や窓関数の通過時間幅を広くすることで、周波数分解能を高くできる半面、時間方向の分解能が劣化する。
逆に、時間方向の分解能を高くするために、通過時間幅を狭くした場合には、周波数分解能が劣化してしまう性質がある
時間分解能と周波数分解能の積を最小化する窓関数はガウス窓であり、ガウス窓を用いる短時間フーリエ変換STFTでは、Gabor変換と呼ばれることもあるが、これも短時間フーリエ変換STFTの一種と捉えることができる。
(2)短時間フーリエ変換STFT以外の時間周波数分析
短時間フーリエ変換STFT以外にも、様々な時間周波数分析が提案されている。
短時間フーリエ変換STFT以外の時間周波数分析として、例えば、下記に示すようなものがある。
(a)連続ウェーブレット変換(CWT:Continuous Wavelet
Transform)
(b)ウィグナー・ビレ分布(WVD:Wigner−Ville
Distribution)
(c)コーエンクラス(Cohen’s class)
(d)CW分布(CWD:Choi−Williams
Distributions)
ブロック毎ディレイ周波数毎TFA器43では、上記の時間周波数分析の方法、または、他の方法に基づいて、各ブロックk、各ディレイ周波数セル番号n毎に時間周波数分析を行うことで、各周波数分布の時間履歴であるドップラーヒストリdk,n0(p,h)を取得する。
ここで、p(p=0,1,・・・,P(k)−1)は、ドップラーセル番号であり、P(k)は第kブロックのドップラーセル数である。
なお、P(k)については、k毎に必ずしも変える必要はなく、kによらない一定値にしてもよい。
ブロック毎ディレイ周波数毎TFA器43は、ドップラーセル番号pに対応して、ドップラー周波数番号p(k,p)を下記の式(12)のように定める。

Figure 2014153161
ここで、1ドップラーセルの周波数幅をΔDop(k)[Hz]で表すものとする。
この値は、時間周波数分析を行う際に用いた時系列信号のスロータイム方向の時間幅(切出し幅)に基づいて、1/時間幅で与えられる。
これについては、ブロック毎に揃えてもよいし変えてもよい。揃えることで、ブロック間でパラメータが共通化される利点がある。
各ブロックk、ドップラーセル番号pに対応するドップラー周波数Dop(k,p)を下記の式(13)で与える。

Figure 2014153161
ドップラーヒストリdk,n0(p,h)のhは、各ドップラー周波数分析の際に用いた時系列信号のスロータイムを特定するための番号であり、ディレイスペクトルヒストリb(m,h)の場合と同様に、これを単にヒットと称する。
このヒットについては、基本的には、1ヒット分がスロータイム何秒分になるかの対応さえ取れていれば、どのような時間間隔でもよいが、あまり時間間隔を広げ過ぎると時間変化に対する感度が劣化するため注意が必要である。
以下では、最も高精度な時間間隔として、ディレイスペクトルヒストリb(m,h)のhと一致する間隔で周波数分析を行った場合(窓や切出し時間を1ヒットずつずらして処理する場合)を想定して説明するが、周波数分析の時間ステップ幅が、これより広い場合にも、ドップラーヒストリdk,n0(p,h)のヒット毎に得られた後述の推定値を補間することで、元の各ヒットの補償量に換算することができる。
ドップラーヒストリ統合器44は、ブロック毎ディレイ周波数毎TFA器43が各ディレイ周波数におけるドップラーヒストリdk,n0(p,h)を算出すると、そのドップラーヒストリdk,n0(p,h)のドップラー周波数軸を、ディレイ周波数の相違の影響を打ち消すようにスケーリングをした上で、ディレイ変化微分値の軸方向のサンプリング点を合わせるリサンプリングをしてから、サンプリング点毎に、各ディレイ周波数におけるドップラーヒストリを統合する。
即ち、ドップラーヒストリ統合器44は、各ブロックk、ドップラーセル番号pで得られた複数のドップラーヒストリdk,n0(p,h)を統合するものであり、以下、ドップラーヒストリ統合器44の処理内容を具体的に説明する。
各ブロックk、ドップラーセル番号pで得られた複数のドップラーヒストリdk,n0(p,h)から、各々における目標のドップラー周波数のスロータイムに対する変化を推定することが可能である。
ドップラー周波数のスロータイムに対する変化は、これを式(3)に基づいてディレイ変化のスロータイム微分値に換算でき、そのスロータイム微分値を積分することでディレイ変化に換算することができる。
ドップラーヒストリ統合器44は、この推定を高精度化することを目的として、複数のドップラーヒストリdk,n0(p,h)を統合するものである。
ドップラーヒストリdk,n0(p,h)を統合する際は、式(3)に表されるように、共通のディレイ変化の微分値δドット(η)に各々のレンジ周波数fτが乗算された値になっていること(必要な中間結果であるδドット(η)が、レンジ周波数fτによる異なるスケーリングを受けていること)を考慮する必要がある。
あるhにおける反射点のドップラー周波数番号がp(k,p)である場合、これに対応するδドットは、下記の式(14)で表される。

Figure 2014153161
よって、共通するδドットに対するドップラー周波数番号p(k,p)は、下記の式(15)に示すように、fτ(k,n)やΔDop(k)に応じて異なる値になる。

Figure 2014153161
このうち、ΔDop(k)については、各ブロックkで周波数分析に用いる時間幅を揃えることで、kによらず一定とすることはできる。
しかし、fτ(k,n)に関しては、仮に式(11)に示される第kブロックのディレイセル幅M(k)を揃えたとしても、各ブロックk内のディレイ周波数の相違は残存する。
つまり、各ブロックk、ドップラーセル番号pで得られたドップラーヒストリdk,n0(p,h)を、単に、そのまま各セルp,hについて総和してドップラーヒストリを統合するような方法では、同じディレイ変化に対するドップラー周波数が異なる影響で、その軌跡に広がりが生じてしまい、その結果として、ドップラー周波数変化の抽出精度が劣化する問題がある。
そこで、ドップラーヒストリ統合器44では、以上の問題を考慮に入れて、各ブロックk、ドップラーセル番号pで得られたドップラーヒストリdk,n0(p,h)を統合する。
即ち、ドップラーヒストリ統合器44では、ドップラーヒストリdk,n0(p,h)のドップラー周波数軸をディレイ変化の微分値δドット(η)、または、その微分値δドット(η)を定数倍したものを、各ブロックk、ドップラーセル番号pで共通の軸になるようにスケーリングした上で、複数のドップラーヒストリdk,n0(p,h)の統合を各セル毎の総和によって実現させるためのリサンプリングを行う。
具体的には、スケーリングについては、各ドップラーヒストリdk,n0(p,h)のドップラー周波数番号p(k,p)を、式(14)に基づいて(−ΔDop(k)/fτ(k,n))倍することで、これを各ブロックk、ドップラーセル番号pで共通なディレイ変化の微分値δドット(η)についてのヒストリとみなすことができる。
以下、ドップラー周波数軸がディレイ微分値の軸に変わったヒストリを「ディレイ微分値ヒストリ」と称する。
次に、各ディレイ微分値ヒストリ間でディレイ微分値軸のサンプリング点を一致させることを目的としたリサンプリングを行う。
リサンプリングの方法としては、例えば、線形補間やスプライン補間の他、サンプリング位置が一致(または、ほぼ一致)するようにゼロ詰めの点数を調整するゼロ詰め補間や、サンプリング定理に基づく補間など、様々なものを用いることができる。
これにより、複数のディレイ微分値ヒストリの分布の統合を、セル(サンプリング点)毎の値の和で実現することができる。
リサンプリング後の各ブロックk、ドップラーセル番号pのディレイ微分値ヒストリをDk,n0(p,h)で表すものとする。
ここで、pはディレイ微分値の各リサンプリング点についてのセル番号であり、既にディレイ微分値と1対1に対応付けされている。
ドップラーヒストリ統合器44では、例えば、下記の式(16)に示すような二乗和によって、統合後のディレイ微分値ヒストリDtot(p,h)を算出する。

Figure 2014153161

ここでの統合は、式(16)に示すような二乗和に限定されるものではなく、例えば、単なる総和や1/2乗和など、様々な方法を用いることができる。
以上の統合により、周波数や分解能などの相違の問題を回避して、複数のドップラーヒストリdk,n0(p,h)を統合することができる。
ディレイ変化微分値推定器45は、ドップラーヒストリ統合器44が複数のドップラーヒストリdk,n0(p,h)を統合すると、統合後のドップラーヒストリの信号分布から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定する。
図7は統合後のディレイ微分値ヒストリから推定されるディレイ微分値の一例を示す説明図である。
即ち、ディレイ変化微分値推定器45は、統合後のディレイ微分値ヒストリDtot(p,h)における目標信号の軌跡からディレイ微分値の時間変化を推定するものであるが、この問題の本質は、画像上に存在する軌跡の変化を推定する点にあり、画像上の軌跡についての情報抽出を行うという問題設定は、単にレーダに限らず、様々な分野で現れるものであり、各種の一般的な方法が既に存在する。
ディレイ変化微分値推定器45では、これらの一般的な方法を適宜利用して、各hにおけるディレイ微分値を取得する。
例えば、統合後のディレイ微分値ヒストリDtot(p,h)の各hにおいて、振幅最大のディレイ微分値を抽出するような処理が考えられる。
また、抽出した各hの振幅最大のディレイ微分値に対して、例えば、適当な次数の最小二乗法の考え方等を適用して、平滑化するような方法も考えられる。
さらに、ディレイ微分値ヒストリDtot(p,h)をスロータイム(h)方向に、領域中の軌跡を近似的に直線とみなせるほどの小領域に分割し(小領域間の重複を許容)、全領域上の軌跡の推定問題を複数の小領域上の直線の傾き推定問題に簡単化して解く方法も有用である。
各小領域の直線の傾き推定には、一般的なハフ変換(Hough変換)のようなものを用いてもよいし、例えば、特許文献3に開示されているレンジヒストリの1次変化推定に用いる2次元フーリエ変換の性質を利用する方法を用いてもよい。
得られた各小領域での傾きの変化を積分することで、所望の変化を得ることができる。
ディレイ変化微分値推定器45では、例として挙げた以上のような方法、または、これ以外の画像上の軌跡の変化を推定する各種方法に基づいて、各h(各スロータイム)におけるディレイ変化微分値δドット(η)を取得する。
ディレイ変化換算器46は、ディレイ変化微分値推定器45が、各スロータイムにおけるディレイ変化微分値δドット(η)を推定すると、各スロータイムにおけるディレイ変化微分値δドット(η)をディレイ変化δ(η)に換算する。
例えば、各スロータイムにおけるディレイ変化微分値δドット(η)に一般的な数値積分を適用することで、ディレイ変化δ(η)に換算する。
ここで得られるのは、ディレイ変化の1次以上の項であり、0次項は得られないが、変化の補償の観点では問題とはならない。
ディレイ変化補償器47は、ディレイ変化換算器46がディレイ変化微分値δドット(η)をディレイ変化δ(η)に換算すると、そのディレイ変化δ(η)に基づいて、上記ディレイヒストリg(τ,η)を補償する。
ディレイ変化補償器47における補償方法は、式(7)に記した通りである。
これにより、並進運動の影響によるディレイ変化が補償される。
画像化回路5は、オートフォーカス回路4から補償後のディレイヒストリを受けると、そのディレイヒストリから画像を再生する。
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、2次元分布であるディレイヒストリをディレイ時間方向にフーリエ変換して、ディレイ時間に対応するディレイ周波数とスロータイムとの2次元分布であるディレイスペクトルヒストリを生成するブロック毎ディレイスペクトルヒストリ生成器42と、ブロック毎ディレイスペクトルヒストリ生成器42により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析することで、各スロータイムのドップラー周波数分布であるドップラーヒストリを算出するブロック毎ディレイス周波数毎TFA器45と、ブロック毎ディレイス周波数毎TFA器45により算出されたドップラーヒストリの信号分布から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定するディレイ変化微分値推定器45と、ディレイ変化微分値推定器45により推定された各スロータイムにおけるディレイ変化微分値をディレイ変化に換算するディレイ変化換算器46と、ディレイ変化換算器46により換算されたディレイ変化に基づいてディレイヒストリを補償するディレイ変化補償器47とから構成されたオートフォーカス回路4を備えるように構成したので、2次以上の変化を無視できない場合でも、電波の伝搬遅延時間の変化に伴う再生画像のぼけを高精度に補償することができる効果を奏する。
即ち、この実施の形態1による具体的な効果は以下の通りである。
(1)フーリエ変換による複数のレンジ周波数での情報を用いるので、ディレイセル移動による信号の不連続を回避することができる。
(2)ドップラーヒストリの1次以上の変化に基づくので、2次以上の変化に対処することができる。
(3)フーリエ変換による複数のレンジ周波数での情報を用いるので、特許文献4,5における総和での情報棄却を回避して、高精度化することができる。
(4)モノスタティック構成やバイスタティック構成、管理下装置や非管理下装置も組み込んだ観測を実現することができる。
(5)圧縮前ディレイヒストリ配置回路21での適切なパルス繰り返し周波数PRFの設定により、ドップラー周波数の折り返しの発生回避による高次推定処理やドップラーセルの移動に伴うプリサム処理の性能劣化を回避することができる。
(6)粗1次運動推定・補償回路31によりドップラー周波数の折り返しが除去されるため、高次の推定処理を実現することができる。
(7)精1次運動推定・補償回路32により、1次変化の位相レベルでの補償を実現することができる。
(8)精1次運動推定・補償回路32により、ドップラーセルの移動に伴うプリサム処理の性能劣化を回避することができる。
(9)プリサム回路23,33により、S/Nの向上とデータ点数の削減による処理負荷の低減を実現することができる。
(10)ディレイ軸ブロック選択器41により、S/Nの向上と干渉の抑圧による高精度化を実現することができる。
(11)ブロック毎ディレイ周波数毎TFA器43により、各周波数分布の時間履歴であるドップラーヒストリを取得することができる。
(12)ドップラーヒストリ統合器44におけるインコヒーレントな統合により、S/Nの向上や干渉の影響が低減された推定が可能になり、また、変化微分値の推定でピークサーチと平滑推定を実現することができる。
(13)変化微分値の推定でピークサーチと平滑化を行うことで、高精度化を実現することができる。
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2による画像レーダ装置のオートフォーカス前処理回路3を示す構成図であり、図8において、図4と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
フィードバック型精1次運動推定・補償回路50は、図4の精1次運動推定・補償回路32と同様に、ディレイ変化の1次成分の推定処理と、その1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化の補償処理を実施するものであるが、その推定処理と補償処理を繰り返し実施することで、高精度化を実現する運動推定・補償回路である。
次に動作について説明する。
上記実施の形態1と比べて、オートフォーカス前処理回路3の構成要素である精1次運動推定・補償回路32が、フィードバック型精1次運動推定・補償回路50に置き換わっている点以外は、上記実施の形態1と同様である。
精1次運動推定・補償回路32では、上述したように、目標のドップラー周波数に基づいてディレイ変化の1次成分を推定している。
目標のドップラー周波数を算出する際には、既に説明しているように、ディレイヒストリの各ディレイセルをスロータイム方向にフーリエ変換するが、ディレイ変化の1次成分の大きさによっては、ディレイ変化の1次成分の影響によって反射点がディレイセルを超えて移動することもある。
同じディレイセルに留まる時間が短ければ短いほど、ドップラー周波数の分解能が劣化するため、ディレイ変化の1次成分の推定精度も劣化する可能性がある。
そこで、フィードバック型精1次運動推定・補償回路50では、ディレイ変化の1次成分の推定処理と補償処理を繰り返し実施することで、各反射点が同じディレイセルに留まる時間を長くさせつつ、逐次的にディレイ変化の1次成分の推定精度を向上させている。
これにより、精1次運動推定・補償回路32による1回の推定処理と補償処理を行う場合と比較して、ディレイ変化の1次成分の推定精度を高めることができる。
なお、処理の繰り返し回数については、予め固定値として設定してもよいし、例えば、ピーク電力の大きさや目標像の広がりの小ささなど、1次変化の推定精度と関連する量をモニタしておき、これらの収束判定を行うようにしてもよい。
ただし、繰り返し回数が1の場合には、フィードバック型精1次運動推定・補償回路50の処理内容が、精1次運動推定・補償回路32の処理内容と一致することから、フィードバック型精1次運動推定・補償回路50は、精1次運動推定・補償回路32の一般化と捉えることも可能である。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
1 観測回路、2 ディレイヒストリ生成回路、3 オートフォーカス前処理回路、4 オートフォーカス回路、5 画像化回路、11 送信系回路、12 送信機、13 送信アンテナ、14 受信系回路、15 受信アンテナ、16 受信機、17 送信系伝達回路、21 圧縮前ディレイヒストリ配置回路、22 ディレイヒストリディレイ軸圧縮回路、23 プリサム回路、31 粗1次運動推定・補償回路、32 精1次運動推定・補償回路、33 プリサム回路、41 ディレイ軸ブロック選択器、42 ブロック毎ディレイスペクトルヒストリ生成器、43 ブロック毎ディレイ周波数毎TFA器(時間周波数分析器)、44 ドップラーヒストリ統合器、45 ディレイ変化微分値推定器、46 ディレイ変化換算器、47 ディレイ変化補償器、50 フィードバック型精1次運動推定・補償回路。

Claims (33)

  1. 観測対象である目標に散乱された電波を受信し、上記電波から画像を再生する画像レーダ装置において、
    上記電波の伝搬遅延時間を表すディレイ時間軸と、上記電波の送信時刻を表すスロータイムとの2次元分布であるディレイヒストリをディレイ時間方向にフーリエ変換して、上記ディレイ時間に対応するディレイ周波数とスロータイムとの2次元分布であるディレイスペクトルヒストリを生成するディレイスペクトルヒストリ生成器と、
    上記ディレイスペクトルヒストリ生成器により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析することで、各スロータイムのドップラー周波数分布であるドップラーヒストリを算出する時間周波数分析器と、
    上記時間周波数分析器により算出されたドップラーヒストリの信号分布から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定するディレイ変化微分値推定器と、
    上記ディレイ変化微分値推定器により推定された各スロータイムにおけるディレイ変化微分値をディレイ変化に換算するディレイ変化換算器と、
    上記ディレイ変化換算器により換算されたディレイ変化に基づいて上記ディレイヒストリを補償するディレイ変化補償器と
    から構成されたオートフォーカス回路を備えていることを特徴とする画像レーダ装置。
  2. ディレイ変化微分値推定器は、時間周波数分析器により算出されたドップラーヒストリ、または、上記ドップラーヒストリのドップラー周波数軸を定数倍したヒストリ上の信号分布から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定することを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
  3. オートフォーカス回路は、
    時間周波数分析器により算出された各ディレイ周波数におけるドップラーヒストリのドップラー周波数軸を、ディレイ周波数の相違の影響を打ち消すようにスケーリングをした上で、ディレイ変化微分値の軸方向のサンプリング点を合わせるリサンプリングをしてから、サンプリング点毎に、各ディレイ周波数におけるドップラーヒストリを統合し、統合後のドップラーヒストリをディレイ変化微分値推定器に出力するドップラーヒストリ統合器
    を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像レーダ装置。
  4. オートフォーカス回路は、
    ディレイヒストリを区分けする1以上のブロックの中から任意のブロックを選択して、上記ディレイヒストリから任意のブロック内のディレイヒストリを抽出し、上記ディレイヒストリをディレイスペクトルヒストリ生成器に出力するブロック選択器
    を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  5. ドップラーヒストリ統合器は、ディレイ変化微分値の軸方向の線形補間を用いて、ディレイ変化微分値の軸方向のサンプリング点を合わせることを特徴とする請求項3記載の画像レーダ装置。
  6. ドップラーヒストリ統合器は、ディレイ変化微分値の軸方向のスプライン補間を用いて、ディレイ変化微分値の軸方向のサンプリング点を合わせることを特徴とする請求項3記載の画像レーダ装置。
  7. ドップラーヒストリ統合器は、ディレイ変化微分値の軸方向に対するゼロ詰めの点数を調整するゼロ詰め補間を用いて、ディレイ変化微分値の軸方向のサンプリング点を合わせることを特徴とする請求項3記載の画像レーダ装置。
  8. ドップラーヒストリ統合器は、サンプリング定理に基づく補間を用いて、ディレイ変化微分値の軸方向のサンプリング点を合わせることを特徴とする請求項3記載の画像レーダ装置。
  9. 時間周波数分析器は、ディレイスペクトルヒストリ生成器により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析する処理として、必要に応じて上記時系列信号に対する窓関数の乗算処理及び時間方向のデータ切出し処理を伴う短時間フーリエ変換を適用することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  10. 時間周波数分析器は、ディレイスペクトルヒストリ生成器により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析する処理として、必要に応じて上記時系列信号に対する窓関数の乗算処理及び時間方向のデータ切出し処理を伴う連続ウェーブレット変換を適用することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  11. 時間周波数分析器は、ディレイスペクトルヒストリ生成器により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析する処理として、必要に応じて上記時系列信号に対する窓関数の乗算処理及び時間方向のデータ切出し処理を伴うウィグナー・ビレ分布を適用することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  12. 時間周波数分析器は、ディレイスペクトルヒストリ生成器により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析する処理として、必要に応じて上記時系列信号に対する窓関数の乗算処理及び時間方向のデータ切出し処理を伴うコーエンクラスを適用することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  13. 時間周波数分析器は、ディレイスペクトルヒストリ生成器により生成されたディレイスペクトルヒストリにおける各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析する処理として、必要に応じて上記時系列信号に対する窓関数の乗算処理及び時間方向のデータ切出し処理を伴うCW分布を適用することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  14. ブロック選択器は、他のブロックとディレイ軸方向が重複していて、同じディレイ幅に設定されている1以上のブロックの中から任意のブロックを選択して、上記ディレイヒストリから任意のブロック内のディレイヒストリを抽出し、
    時間周波数分析器は、ブロック毎に、各ディレイ周波数のスロータイム方向の時系列信号を時間周波数分析することでドップラーヒストリを算出する際、時間方向のデータ切出しを伴う場合、そのデータの切出し幅を全ブロック及び全ディレイ周波数で共通化させる
    ことを特徴とする請求項4記載の画像レーダ装置。
  15. ディレイ変化微分値推定器は、時間周波数分析器により算出されたドップラーヒストリ、または、上記ドップラーヒストリのドップラー周波数軸を定数倍したヒストリの中で、スロータイム毎に振幅最大セルを特定し、振幅最大セルに対応する軸の値から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定することを特徴とする請求項1から請求項14のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  16. ディレイ変化微分値推定器は、時間周波数分析器により算出されたドップラーヒストリ、または、上記ドップラーヒストリのドップラー周波数軸を定数倍したヒストリの中で、スロータイム毎に振幅最大セルを特定し、振幅最大セルに対応する軸の値の変化に最小二乗法を適用して平滑し、平滑化後の軸の値から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定することを特徴とする請求項1から請求項14のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  17. ディレイ変化微分値推定器は、時間周波数分析器により算出されたドップラーヒストリ、または、上記ドップラーヒストリのドップラー周波数軸を定数倍したヒストリをスロータイム方向に重複が許容されている区間の領域に分割して、各領域内に存在する目標の軌跡を直線とみなして各区間の傾きを推定し、各区間の傾きについてのスロータイム変化の積分から、各スロータイムにおける目標のディレイ時間変化のスロータイムに対する微分値であるディレイ変化微分値を推定することを特徴とする請求項1から請求項14のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  18. ディレイ変化微分値推定器は、2次元フーリエ変換の性質、または、ハフ変換の性質を利用して、各区間の傾きを推定することを特徴とする請求項17記載の画像レーダ装置。
  19. ディレイ変化のスロータイムに対する1次成分を推定し、上記1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償するオートフォーカス前処理回路が、オートフォーカス回路の前段に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項18のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  20. オートフォーカス前処理回路は、ディレイヒストリの振幅分布からディレイ変化のスロータイムに対する1次成分を推定し、上記1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する粗1次運動推定・補償回路を備えていることを特徴とする請求項19記載の画像レーダ装置。
  21. オートフォーカス前処理回路は、ディレイヒストリをスロータイム方向にフーリエ変換し、そのフーリエ変換結果であるドップラー周波数分布からディレイ変化の1次成分を推定し、上記1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する精1次運動推定・補償回路を備えていることを特徴とする請求項19または請求項20記載の画像レーダ装置。
  22. 精1次運動推定・補償回路は、ドップラー周波数分布をディレイ軸方向に統合した分布における最大のドップラー周波数を用いて、ディレイ変化の1次成分を推定することを特徴とする請求項21記載の画像レーダ装置。
  23. 精1次運動推定・補償回路は、ドップラー周波数分布をディレイ軸方向に統合した分布における値の重心に対応するドップラー周波数を用いて、ディレイ変化の1次成分を推定することを特徴とする請求項21記載の画像レーダ装置。
  24. 精1次運動推定・補償回路は、ドップラー周波数分布をディレイ軸方向に統合した分布におけるドップラー周波数の中で、所定の閾値以上のドップラー周波数を目標のドップラー周波数の範囲に定め、上記範囲の中央に相当するドップラー周波数を用いて、ディレイ変化の1次成分を推定することを特徴とする請求項21記載の画像レーダ装置。
  25. 精1次運動推定・補償回路は、ディレイ時間変化の1次成分の推定に用いるドップラー周波数を(−1/中心周波数)倍して、ディレイ変化の1次成分の傾きを算出することを特徴とする請求項22から請求項24のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  26. 精1次運動推定・補償回路は、ディレイ変化の1次成分を推定する処理と、上記1次成分よって発生している目標のディレイ軸方向の移動と位相の変化を補償する処理とを繰り返し実施するフィードバック型の運動推定・補償回路であることを特徴とする請求項21から請求項25のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  27. オートフォーカス前処理回路は、ディレイヒストリをスロータイム方向の区分領域に分割し、区分領域毎に、各ディレイセルの値をスロータイム方向に総和するプリサム回路を備えていることを特徴とする請求項19記載の画像レーダ装置。
  28. 目標に散乱された電波の受信信号をディレイ時間軸とスロータイムの2次元に配置してディレイヒストリを生成するディレイヒストリ生成回路が、オートフォーカス回路の前段に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項27のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
  29. ディレイヒストリ生成回路は、予め、スロータイム方向の受信信号の配置間隔の逆数である繰り返し周波数を、ディレイ変化の絶対値の想定される最大値で折り返さない値に設定してから、受信信号をディレイ時間軸とスロータイムの2次元に配置してディレイヒストリを生成する圧縮前ディレイヒストリ配置回路を備えていることを特徴とする請求項28記載の画像レーダ装置。
  30. ディレイヒストリ生成回路は、目標に散乱される電波がパルスである場合、予め、スロータイム方向のパルス繰り返し周波数を、ディレイ変化の絶対値の想定される最大値で折り返さない値に設定してから、パルスの受信信号をディレイ時間軸とスロータイムの2次元に配置してディレイヒストリを生成する圧縮前ディレイヒストリ配置回路を備えていることを特徴とする請求項28記載の画像レーダ装置。
  31. 圧縮前ディレイヒストリ配置回路は、1/2以下の定数と、ディレイ周波数の最大値と、ディレイ変化の傾きの絶対値の想定される最大値との乗算結果を繰り返し周波数に設定することを特徴とする請求項29または請求項30記載の画像レーダ装置。
  32. 圧縮前ディレイヒストリ配置回路は、圧縮後のディレイヒストリをスロータイム方向の区分領域に分割し、区分領域毎に、各ディレイセルの値をスロータイム方向に総和するプリサム回路がディレイヒストリ生成回路に実装されている場合、上記プリサム回路の処理で繰り返し周波数が下がることを考慮して、1/2以下の定数の値を定めることを特徴とする請求項31記載の画像レーダ装置。
  33. 電波を空間に放射する送信系回路と、
    上記送信系回路により放射されたのち、観測対象である目標に散乱されて戻ってきた電波を受信する受信系回路と、
    上記送信系回路により放射される電波の信号に関する情報を後段の回路に伝達する送信系伝達回路と
    から構成された観測回路を備えていることを特徴とする請求項1から請求項32のうちのいずれか1項記載の画像レーダ装置。
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