以下、実施形態によるシリンダ装置について、4輪自動車等の車両に設けられる緩衝器に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。
図1ないし図3は、第1の実施形態を示している。図1において、シリンダ装置としての緩衝器1は、内部に封入する作動油等の作動流体2として機能性流体(即ち、電気粘性流体)を用いた減衰力調整式の油圧緩衝器(セミアクティブダンパ)として構成されている。緩衝器1は、例えば、コイルばねからなる懸架ばね(図示せず)と共に、車両用のサスペンション装置を構成する。なお、以下の説明では、緩衝器1の軸方向の一端側を「下端」側とし、軸方向の他端側を「上端」側として記載するが、緩衝器1の軸方向の一端側を「上端」側とし、軸方向の他端側を「下端」側としてもよい。
緩衝器1は、内筒3、外筒4、ピストン6、ピストンロッド9、ボトムバルブ13、電極筒18等を含んで構成されている。内筒3は、軸方向に延びる円筒状の筒体として形成され、内部に機能性流体である作動流体2が封入されている。また、内筒3の内部には、後述のピストンロッド9が挿入され、内筒3の外側には、外筒4および後述の電極筒18が同軸となるように設けられている。
内筒3は、下端側が後述するボトムバルブ13のバルブボディ14に嵌合して取付けられており、上端側は、後述のロッドガイド10に嵌合して取付けられている。内筒3には、後述の電極通路19に常時連通する油穴3Aが、径方向の横孔として周方向に離間して複数(例えば、4個)形成されている。即ち、内筒3内のロッド側油室Bは、油穴3Aによって電極通路19と連通している。
外筒4は、緩衝器1の外殻をなすもので、円筒体として形成されている。外筒4は、電極筒18の外周に設けられており、該電極筒18との間に電極通路19と連通するリザーバ室Aを形成している。この場合、外筒4は、その下端側がボトムキャップ5により溶接手段等を用いて閉塞された閉塞端となっている。ボトムキャップ5は、ボトムバルブ13のバルブボディ14と共にベース部材を構成している。
外筒4の上端側は、開口端となっている。外筒4の開口端側には、例えば、かしめ部4Aが径方向内側に屈曲して形成されている。かしめ部4Aは、後述するシール部材12の環状板体12Aの外周側を抜け止め状態で保持している。
ここで、内筒3と外筒4はシリンダを構成し、該シリンダ内には、作動流体2が封入されている。実施形態では、シリンダ内に充填(封入)される流体、即ち、作動油となる作動流体2として、機能性流体の一種である電気粘性流体(ERF:Electro Rheological Fluid)を用いている。なお、図1および図2では、封入されている作動流体2を無色透明で表している。
電気粘性流体は、電界(電圧)により性状が変化する流体である。即ち、電気粘性流体は、印加される電圧に応じて流通抵抗(減衰力)が変化するものである。電気粘性流体は、例えば、シリコンオイル等からなる基油(ベースオイル)と、該基油に混ぜ込まれ(分散され)電界の変化に応じて粘性を可変にする粒子(微粒子)とにより構成されている。
後述するように、緩衝器1は、内筒3と電極筒18との間の電極通路19内に電位差を発生させ、該電極通路19を通過する電気粘性流体の粘度を制御することで、発生減衰力を制御(調整)する構成となっている。なお、実施形態では機能性流体として電気粘性流体(ER流体)を例に挙げて説明するが、例えば、機能性流体として、磁界により流体の性状が変化する磁性流体(MR流体)を用いてもよい。
内筒3と外筒4との間、より具体的には、電極筒18と外筒4との間には、リザーバとなる環状のリザーバ室Aが形成されている。リザーバ室A内には、作動流体2と共に作動気体となるガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド9の縮小(縮み行程)時に、当該ピストンロッド9の進入体積分を補償すべく圧縮される。
ピストン6は、内筒3内に摺動可能に設けられている。ピストン6は、内筒3内を第1室となるロッド側油室Bと第2室となるボトム側油室Cとに分けている。ピストン6には、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能とする油路6A,6Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
ここで、実施形態による緩衝器1は、ユニフロー構造となっている。このため、内筒3内の作動流体2は、ピストンロッド9の縮み行程と伸び行程との両行程で、ロッド側油室B(即ち、内筒3の油穴3A)から電極通路19に向けて常に一方向(即ち、図1中に二点鎖線で示す矢印Fの方向)に流通する。
このようなユニフロー構造を実現するため、ピストン6の上端面には、例えば、ピストンロッド9の縮小行程(縮み行程)でピストン6が内筒3内を下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する第1逆止弁としての縮み側逆止弁7が設けられている。縮み側逆止弁7は、ボトム側油室C内の油液(作動流体2)がロッド側油室Bに向けて各油路6A内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。即ち、縮み側逆止弁7は、ボトム側油室Cからロッド側油室Bへの作動流体2の流通のみを許容する。
ピストン6の下端面には、例えば、伸長側のディスクバルブ8が設けられている。伸長側のディスクバルブ8は、ピストンロッド9の伸長行程(伸び行程)でピストン6が内筒3内を上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路6Bを介してボトム側油室C側にリリーフする。
ピストンロッド9は、内筒3内を軸方向(内筒3および外筒4、延いては、緩衝器1の中心軸線と同方向であり、図1および図2の上下方向)に延びている。即ち、ピストンロッド9は、その下端が内筒3内でピストン6に連結(固定)され、その上端がロッド側油室Bを通って内筒3および外筒4の外部へ延出されている。この場合、ピストンロッド9の下端側には、ナット9A等を用いてピストン6が固定(固着)されている。一方、ピストンロッド9の上端側は、ロッドガイド10を介して外部に突出している。なお、ピストンロッド9の下端をさらに延ばしてボトム部(例えば、ボトムキャップ5)側から外向きに突出させ、所謂、両ロッドとしてもよい。
内筒3と外筒4の上端側には、これら内筒3と外筒4の上端側を閉塞するように段付円筒状のロッドガイド10が嵌合して設けられている。ロッドガイド10は、ピストンロッド9を支持するもので、例えば金属材料、硬質な樹脂材料等に成形加工、切削加工等を施すことにより所定形状の筒体として形成されている。ロッドガイド10は、内筒3の上側部分および後述の電極筒18の上側部分を、外筒4の中央に位置決めする。これと共に、ロッドガイド10は、その内周側でピストンロッド9を軸方向に摺動可能に案内(ガイド)する。
ここで、ロッドガイド10は、上側に位置して外筒4の内周側に挿嵌される環状の大径部10Aと、該大径部10Aの下端側に位置して内筒3の内周側に挿嵌される短尺筒状の小径部10Bとにより段付円筒状に形成されている。ロッドガイド10の小径部10Bの内周側には、ピストンロッド9を軸方向に摺動可能にガイドするガイド部10Cが設けられている。ガイド部10Cは、例えば金属筒の内周面に4フッ化エチレンコーティングを施すことにより形成されている。
一方、ロッドガイド10の外周側で大径部10Aと小径部10Bとの間には、環状の保持部材11が嵌合して取付けられている。保持部材11は、後述する電極筒18の上端側を軸方向に位置決めした状態で保持している。保持部材11は、例えば電気絶縁性材料(アイソレータ)により形成され、内筒3およびロッドガイド10と電極筒18との間を電気的に絶縁した状態に保っている。
ロッドガイド10の大径部10Aと外筒4のかしめ部4Aとの間には、環状のシール部材12が設けられている。シール部材12は、中心にピストンロッド9が挿通される孔が設けられた金属性の環状板体12Aと、該環状板体12Aに焼き付等の手段で固着されたゴム等の弾性材料からなる弾性体12Bとを含んで構成されている。シール部材12は、弾性体12Bの内周がピストンロッド9の外周側に摺接することにより、ピストンロッド9との間を液密、気密に封止(シール)する。
内筒3の下端側には、該内筒3とボトムキャップ5との間に位置してボトムバルブ13が設けられている。ボデーバルブとしてのボトムバルブ13は、ボトム側油室Cとリザーバ室Aとを連通・遮断するものである。このために、ボトムバルブ13は、バルブボディ14と、第2逆止弁としての伸び側逆止弁15とを含んで構成されている。バルブボディ14は、ボトムキャップ5と内筒3との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを画成する。
バルブボディ14には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能とする油路14Aが周方向に間隔をあけて設けられている。バルブボディ14の外周側には、上側に位置して内筒3の下端内周側が嵌合して固定される小径部14Bと、該小径部14Bの下端側に位置して後述する保持部材16の下端内周側が嵌合して固定される大径部14Cとが形成されている。小径部14Bと大径部14Cとの間は、内筒3の下端が当接する段差部14Dとなっている。段差部14Dには、内筒3の下端縁が当接している。
バルブボディ14には、径方向に延びる放射状通路14Eが周方向に間隔を開けて複数設けられている。この場合、各放射状通路14Eは、段差部14Dに設けられ径方向に延びる凹溝と、該凹溝と連続するようにバルブボディ14の中心軸線側に向けて延びる油穴とにより構成されている。放射状通路14Eは、バルブボディ14の下面側に油路14Aを囲むように設けられた環状通路14Fに接続されている。環状通路14Fは、バルブボディ14の下面側に開口する環状凹溝により構成されている。放射状通路14Eおよび環状通路14Fは、後述の保持部材側通路17と共に、作動流体2が流通する第1通路を構成している。そして、環状通路14Fには、該環状通路14Fを覆うように後述の調整弁21が設けられている。
伸び側逆止弁15は、例えば、バルブボディ14の上面側に設けられている。伸び側逆止弁15は、ピストンロッド9の伸長行程でピストン6が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。伸び側逆止弁15は、リザーバ室A内の油液(作動流体2)がボトム側油室Cに向けて各油路14A内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。即ち、伸び側逆止弁15は、リザーバ室A側からボトム側油室C側への作動流体2の流通のみを許容する。
保持部材16は、バルブボディ14の大径部14Cおよび内筒3の下端外周側に嵌合して取付けられている。保持部材16は、電極筒18の下端側を軸方向に位置決めした状態で保持している。保持部材16は、例えば電気絶縁性材料(アイソレータ)により形成され、内筒3およびバルブボディ14と電極筒18との間を電気的に絶縁した状態に保っている。
ここで、保持部材16は、第1筒部となる下側筒部16Aと、第2筒部となる上側筒部16Bと、環状鍔部16Cとを備えている。下側筒部16Aは、バルブボディ14の大径部14Cと嵌合している。下側筒部16Aの内周面には、全周にわたって周方向溝となるシール溝16A1が設けられている。シール溝16A1内には、保持部材16とバルブボディ14との間を液密に封止するためのシール部材16Dが設けられている。
一方、上側筒部16Bは、内筒3と嵌合している。また、上側筒部16Bの外周側には、電極筒18の下端内周側が嵌合している。上側筒部16Bの外周面で電極筒18と対応する部位には、全周にわたって周方向溝となるシール溝16B1が設けられている。シール溝16B1内には、保持部材16と電極筒18との間を液密に封止するためのシール部材16Eが設けられている。環状鍔部16Cは、上側筒部16Bの外周側に設けられている。環状鍔部16Cには、電極筒18の下端が当接している。これにより、環状鍔部16Cは、電極筒18を軸方向に位置決めしている。
保持部材16の内周面のうち、内筒3の外周面と径方向に対向する部位、および、バルブボディ14の大径部14Cの放射状通路14Eに対向する部位には、軸方向に延びる複数の凹溝16Fが設けられている。各凹溝16Fは、それぞれ放射状通路14Eに接続されている。凹溝16Fは、保持部材16の内径側と内筒3の外周面との間に軸方向に延びる複数の保持部材側通路17を形成するものである。
保持部材側通路17は、バルブボディ14の放射状通路14Eおよび環状通路14Fに接続されている。これにより、保持部材側通路17、放射状通路14E、および、環状通路14Fは、電極通路19を介してロッド側油室Bとリザーバ室Aとを連通する第1通路を構成している。換言すれば、電極通路19とリザーバ室Aとの間は、保持部材側通路17、放射状通路14E、および、環状通路14Fによって連通している。
内筒3の外側、即ち、内筒3と外筒4との間には、軸方向に延びる圧力管からなる電極筒18が設けられている。電極筒18は、内筒3と外筒4との間の中間筒となるものである。電極筒18は、導電性材料を用いて形成され、筒状の電極を構成するものである。電極筒18は、内筒3との間にロッド側油室Bと連通する電極通路19を形成している。
即ち、電極筒18は、内筒3の外周側に軸方向(上下方向)に離間して設けられた保持部材11,16を介して取付けられている。電極筒18は、内筒3の外周側を全周にわたって取囲むことにより、電極筒18の内部、即ち、電極筒18の内周側と内筒3の外周側との間に環状の通路(流路)、即ち、作動流体2が流通する中間通路としての電極通路19を形成している。
電極通路19は、内筒3に径方向の横孔として形成した油穴3Aによりロッド側油室Bと常時連通している。即ち、図1で作動流体2の流れの方向を矢印Fで示すように、緩衝器1は、ピストン6の圧縮行程および伸び行程の両方で、ロッド側油室Bから油穴3Aを通じて電極通路19に作動流体2が流入する。電極通路19内に流入した作動流体2は、ピストンロッド9が内筒3内を進退動するとき(即ち、縮み行程と伸び行程を繰返す間)に、この進退動により電極通路19の軸方向の上端側から下端側に向けて流動する。電極通路19内に流入した作動流体2は、電極筒18の下端側から後述する調整弁21を介してリザーバ室Aへと流出する。
なお、図示は省略するが、電極筒18の内周側と内筒3の外周側との間に、作動流体2が流通する電極通路19を仕切る(作動流体2の流れを案内する)隔壁部材を設けることができる。即ち、電極筒18の内周面または内筒3の外周面には、これら電極筒18または内筒3に対して相対回転不能に隔壁部材(流路形成部材)を設け、該隔壁部材により、作動流体2を軸方向だけでなく周方向にも案内する構成とすることができる。これにより、作動流体2が流通する通路を、周方向に延びる部分を有する螺旋状または蛇行する1または複数の通路(流路)とすることができる。この場合には、軸方向に直線的に延びる通路と比較して、油穴3Aから保持部材側通路17までの流路の長さを長くすることができる。
電極通路19は、外筒4および内筒3内でピストン6の摺動によって流通する流体、即ち、作動流体2となる電気粘性流体に抵抗を付与する。このために、電極筒18は、電源となるバッテリ20の正極に、例えば、高電圧を発生する高電圧ドライバ(図示せず)を介して接続されている。バッテリ20(および高電圧ドライバ)は、電圧供給部(電界供給部)となり、電極筒18は、電極通路19内の流体である作動流体2、即ち、機能性流体としての電気粘性流体に電界(電圧)をかける電極(エレクトロード)となる。この場合、電極筒18の両端側は、電気絶縁性の保持部材11,16によって電気的に絶縁されている。一方、内筒3は、ロッドガイド10、ボトムバルブ13、ボトムキャップ5、外筒4、高電圧ドライバ等を介して負極(グランド)に接続されている。
高電圧ドライバは、緩衝器1の減衰力を可変に調整するためのコントローラ(図示せず)から出力される指令(高電圧指令)に基づいて、バッテリ20から出力される直流電圧を昇圧して電極筒18に供給(出力)する。これにより、電極筒18と内筒3との間、換言すれば、電極通路19内には、電極筒18に印加される電圧に応じた電位差が発生し、電気粘性流体である作動流体2の粘度が変化する。この場合、緩衝器1は、電極筒18に印加される電圧に応じて、発生減衰力の特性(減衰力特性)をハード(Hard)な特性(硬特性)からソフト(soft)な特性(軟特性)に連続的に調整することができる。なお、緩衝器1は、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。
ところで、特許文献1には、内筒と電極筒との間の電極通路を通過した作動流体を、リザーバ室に直接流す構成が開示されている。ここで、緩衝器の減衰力特性を、搭載する車両の種類、仕様等に合せる(実車適合させる)場合を考える。この場合、特許文献1の構成は、電圧調整以外に減衰力特性をチューニング(調整)するには、例えば、内筒と電極筒との間の隙間の大きさを、車両の種類、仕様等に応じて調整(変更)することが考えられる。また、内筒と電極筒との間に設ける流路形成部材の形状(傾き、長さ等)を、車両の種類、仕様等に応じて調整(変更)することが考えられる。
しかし、この場合は、車両の種類、仕様毎に、内筒、電極筒および流路形成部材をそれぞれ用意する必要がある。これにより、部品の種類が増大し、量産コストが増大するおそれがある。一方、ピストンに設けられるバルブ(ピストンバルブ)を調整することにより、減衰特性をチューニングすることが考えられる。しかし、この場合は、縮み行程の減衰特性をチューニングできても、伸び行程の減衰力特性をチューニングすることが難しい。
これに対して、第1の実施形態では、内筒3と電極筒18との間の電極通路19を通過した作動流体2を、第1通路(保持部材側通路17、放射状通路14Eおよび環状通路14F)から調整弁21を介してリザーバ室Aに流す構成としている。これにより、電圧調整以外にも、減衰力特性をチューニングすることができる。以下、第1の実施形態の第1通路および調整弁21について説明する。
調整弁21は、減衰力を発生するもの(減衰力調整バルブ)である。調整弁21は、電極通路19を介してロッド側油室Bとリザーバ室Aとを連通する第1通路、より具体的には、電極通路19からボトムバルブ13を通過してリザーバ室Aに連通する第1通路に設けられている。ここで、第1通路は、保持部材側通路17と放射状通路14Eと環状通路14Fとにより構成されており、電極通路19と共にロッド側油室Bとリザーバ室Aとの間を連通する通路である。そして、調整弁21は、ボトムバルブ13の第1通路、より具体的には、バルブボディ14の環状通路14Fの下流側(下流端)に設けられている。換言すれば、調整弁21は、環状通路14Fの下流端の開口を塞ぐように設けられている。
調整弁21は、電極通路19の下流側に設けられる環状の開閉弁(弁体)となるディスク21Aと、該ディスク21Aを付勢する弾性部材としての板ばね21Bとにより構成されている。また、ディスク21Aと板ばね21Bとの間には、リテーナ22が設けられている。なお、板ばね21Bを省略できる場合には、調整弁21を開閉弁のみ、例えば、複(数の)ディスクのみにより構成してもよい。ディスク21A、板ばね21B、リテーナ22は、ボルト・ナット23を用いてバルブボディ14の下面とワッシャ24との間に挟持されている。ディスク21Aには、バルブボディ14の油路14Aと対向する位置に貫通孔21A1が設けられている。貫通孔21A1は、バルブボディ14の油路14Aに向かうリザーバ室Aの作動流体2を遮らないようにするものである。
ディスク21Aが環状通路14Fの開口(周縁)に着座しているときは、環状通路14Fが塞がれた閉弁状態となり、ディスク21Aが環状通路14Fの開口(周縁)から離座(離間)しているときは、環状通路14Fがリザーバ室Aと通じた開弁状態となる。なお、図1および図2では、閉弁状態を示している。
第1の実施形態では、例えば、緩衝器1を搭載する車両の種類、仕様等に応じて、調整弁21を調整することができる。即ち、調整弁21のオリフィス面積、ディスク21Aおよび板ばね21Bのばね剛性(弾性力、付勢力)、調整弁21のポート面積(例えば、バルブボディ14の環状通路14Fの開口面積)を、緩衝器1を搭載する車両の種類、仕様等に応じて調整する(異ならせる)ことができる。図3は、ピストン速度と減衰力との関係を示している。図3中の実線の特性線31は、調整弁21が設けられた緩衝器1の減衰力特性に対応する。図3中の破線の特性線32は、調整弁21が設けられていない(電極通路からリザーバ室に作動流体を直接流す)緩衝器の減衰力特性に対応する。
図3に示すように、調整弁21を設けることで、緩衝器1の減衰力特性を、図3中の特性線32から特性線31にすることができる。この場合に、例えば、オリフィス面積を調整することで、ピストン低速域の減衰力特性をチューニングすることができる。また、ばね剛性を調整することで、ピストン中速域の減衰力特性をチューニングすることができる。さらに、ポート面積を調整することで、ピストン高速域の減衰力特性をチューニングすることができる。即ち、調整弁21は、ピストン速度との関係で減衰力の調整(変更)を行うことができる。このように、第1の実施形態では、調整弁21の調整により、緩衝器1の減衰力特性を所望にチューニングすることができる。
第1の実施形態による緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
緩衝器1を自動車等の車両に実装するときは、例えば、ピストンロッド9の上端側を車両の車体側に取付け、外筒4の下端側(ボトムキャップ5側)を車輪側(車軸側)に取付ける。車両の走行時には、路面の凹凸等により、上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド9が外筒4から伸長、縮小するように変位する。このとき、コントローラからの指令に基づいて電極通路19内に電位差を発生させ、電極通路19を通過する作動流体2、即ち、電気粘性流体の粘度を制御することにより、緩衝器1の発生減衰力を可変に調整する。
例えば、ピストンロッド9の伸び行程時には、内筒3内のピストン6の移動によってピストン6の縮み側逆止弁7が閉じる。ピストン6のディスクバルブ8の開弁前には、ロッド側油室Bの油液(作動流体2)が加圧され、内筒3の油穴3Aを通じて電極通路19内に流入する。このとき、ピストン6が移動した分の油液は、リザーバ室Aからボトムバルブ13の伸び側逆止弁15を開いてボトム側油室Cに流入する。
一方、ピストンロッド9の縮み行程時には、内筒3内のピストン6の移動によってピストン6の縮み側逆止弁7が開き、ボトムバルブ13の伸び側逆止弁15が閉じる。これにより、ボトム側油室Cの油液がロッド側油室Bに流入する。これと共に、ピストンロッド9が内筒3内に浸入した分に相当する油液が、ロッド側油室Bから内筒3の油穴3Aを通じて電極通路19内に流入する。
いずれの場合も(伸び行程時も縮み行程時も)、電極通路19内に流入した油液は、電極通路19の電位差(電極筒18と内筒3との間の電位差)に応じた粘度で電極通路19内を出口側(下側)に向けて通過し、電極通路19から調整弁21を介してリザーバ室Aに流れる。このとき、緩衝器1は、電極通路19内を通過する作動流体2の粘度に応じた減衰力、および、調整弁21のオリフィス面積、ばね剛性、ポート面積等に応じた減衰力が発生し、車両の上下振動を緩衝(減衰)することができる。
かくして、第1の実施形態では、電極通路19を介してロッド側油室Bとリザーバ室Aとを連通する第1通路、具体的には、バルブボディ14の環状通路14Fに減衰力を発生する調整弁21が設けられている。このため、緩衝器1は、作動流体2が電極通路19を通過することに基づく減衰力と、調整弁21を通過することに基づく減衰力とを得ることができる。従って、図3に示すように、調整弁21のオリフィス面積、ばね剛性、ポート面積を調整することにより、ピストン低速域、中速域、高速域のそれぞれの減衰力特性を所望にチューニングすることができる。この結果、電極通路19を作動流体2が通過するときの電圧調整による減衰力の調整以外にも、減衰力特性を所望にチューニングすることができ、チューニングの自由度を向上することができる。換言すれば、調整弁21を調整(設定)することで、車両の種類、仕様等に応じてそれぞれ減衰力特性が異なる複数種類の緩衝器1を提供することができ、量産コストを低減することができる。
第1の実施形態では、調整弁21は、電極通路19の下流側に設けられたディスク21Aと、該ディスク21Aを付勢する板ばね21Bとからなる。このため、ディスク21Aおよび/または板ばね21Bのばね剛性(弾性力、付勢力)、ディスク21Aのオリフィス面積、ポート面積を調整することにより、減衰力特性を微細にチューニングすることができる。この場合、例えば、ディスク21Aの調整(変更)のみにより減衰力特性を所望にチューニングすることもできる。これにより、部品コストを抑えることができ、この面からも、量産コストを低減することができる。さらに、調整弁21(のディスク21A)は、電極通路19の下流側に設けられるため、リザーバ室Aの高圧ガスが電極通路19に入り込む(逆流する)ことを抑制できる。これにより、絶縁性が低下することを抑制できる。
第1の実施形態では、第1通路を構成する保持部材側通路17、放射状通路14Eおよび環状通路14Fは、電極通路19からボトムバルブ13を通過してリザーバ室Aに連通しており、調整弁21は、ボトムバルブ13を構成するバルブボディ14の環状通路14Fに設けられている。これにより、調整弁21を、元々あるボトムバルブ13のバルブボディ14を利用して組込むことができる。この結果、例えば、調整弁21が複雑化すること、大型化すること、調整弁21の部品点数が増大することを抑制することができる。
第1の実施形態では、ピストン6には、ボトム側油室Cからロッド側油室Bへの作動流体2の流通のみを許容する縮み側逆止弁7が設けられており、ボトムバルブ13には、リザーバ室Aからボトム側油室Cへの作動流体2の流通のみを許容する伸び側逆止弁15が設けられている。このため、ユニフロー構造の緩衝器1において、電極通路19の出口側に接続される第1通路の環状通路14Fに調整弁21を設けることで、減衰力特性を幅広くチューニングすることができる。
次に、図4および図5は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、中間筒(電極筒)とボデーバルブとの間に調整弁を設ける構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
ボデーバルブとしてのボトムバルブ41は、バルブボディ42と、伸び側逆止弁15と、縮小側のディスクバルブ43とを含んで構成されている。バルブボディ42には、油路42A,42Bが周方向に間隔をあけて設けられている。バルブボディ42の外周側には、上側に位置して後述の支持環44が嵌合して固定される小径部42Cと、該小径部42Cの下端側に位置して該小径部42Cよりも大径の大径部42Dとが形成されている。小径部42Cと大径部42Dとの間は、支持環44の底面が当接する段差部42Eとなっている。
縮小側のディスクバルブ43は、例えば、バルブボディ42の下面側に設けられている。縮小側のディスクバルブ43は、ピストンロッド9の縮小行程でピストン6が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路42Bを介してリザーバ室A側にリリーフする。
支持環44は、バルブボディ42の小径部42Cに取付けられている。支持環44は、バルブボディ42に対して内筒3の下端側を支持すると共に、保持部材45を介して電極筒18の下端側を支持するものである。このために、支持環44は、バルブボディ42の小径部42Cに嵌合される筒部44Aと、該筒部44Aの下端側から全周にわたって径方向外側に延びる鍔状の底部44Bとを含んで構成されている。内側筒部44Aには、内筒3の下端内周側が嵌合している。内筒3の下端外周側には、保持部材45が嵌合している。さらに、内筒3の外周側と保持部材45の内周側との間には、調整弁47の弁体47Aおよびコイルばね47Bが配置されている。
保持部材45は、支持環44および内筒3を介してバルブボディ42に取付けられている。保持部材45は、電極筒18の下端側を軸方向に位置決めした状態で保持している。保持部材45は、例えば電気絶縁性材料(アイソレータ)により形成され、内筒3およびバルブボディ42と電極筒18との間を電気的に絶縁した状態に保っている。
ここで、保持部材45は、第1筒部となる取付筒部45Aと、第2筒部となる支持筒部45Bと、第3の筒部となる中間筒部45Cとを備えている。取付筒部45Aは、内筒3の下端外周側に嵌合されている。取付筒部45Aの内径は、最も小さい(支持筒部45Bの内径および中間筒部45Cの内径よりも小さい)。
一方、支持筒部45Bには、電極筒18の下端外周側が嵌合している。支持筒部45Bの内径は、最も大きい(取付筒部45Aの内径および中間筒部45Cの内径よりも大きい)。支持筒部45Bの内周面には、全周にわたって周方向溝となるシール溝45B1が設けられている。シール溝45B1内には、保持部材45と電極筒18との間を液密に封止するためのシール部材45Dが設けられている。
中間筒部45Cは、取付筒部45Aと支持筒部45Bとの間に設けられている。中間筒部45Cの内径は、取付筒部45Aの内径よりも大きく、支持筒部45Bの内径よりも小さい)。中間筒部45Cには、電極筒18の下端が当接している。これにより、中間筒部45Cは、電極筒18を軸方向に位置決めしている。中間筒部45Cの内周面と内筒3の外周面との間には、調整弁47が設けられている。中間筒部45Cには、径方向に延びる放射状通路45C1が周方向に間隔を開けて複数設けられている。また、中間筒部45Cの内径は、調整弁47の弁体47Aよりも大径となっており、中間筒部45Cの内周面と弁体47Aの外周面との間は、軸方向に延びる環状通路46となっている。
環状通路46は放射状通路45C1に接続されている。即ち、環状通路46および放射状通路45C1は、電極通路19を介してロッド側油室Bとリザーバ室Aとを連通する第1通路を構成している。換言すれば、電極通路19とリザーバ室Aとの間は、環状通路46および放射状通路45C1によって連通している。
調整弁47は、減衰力を発生するものである。調整弁47は、電極通路19から保持部材45を通過してリザーバ室Aに連通する第1通路に設けられている。ここで、第1通路は、環状通路46と放射状通路45C1とにより構成されており、電極通路19と共にロッド側油室Bとリザーバ室Aとの間を連通する通路である。そして、調整弁47は、保持部材45の第1通路、より具体的には、環状通路46の上流側(上流端)に設けられている。換言すれば、調整弁47は、電極通路19の下流端の開口を塞ぐように設けられている。
調整弁47は、電極通路19の下流側に設けられる環状の開閉弁としての弁体47Aと、該弁体47Aを電極通路19の開口側に付勢する弾性部材としてのコイルばね47Bとにより構成されている。弁体47Aが電極通路19の開口(電極筒18の周縁)に着座しているときは、電極通路19の開口が塞がれた閉弁状態となり、弁体47Aが電極通路19の開口(電極筒18の周縁)から離座(離間)しているときは、電極通路19がリザーバ室Aと通じた開弁状態となる。なお、図4および図5では、閉弁状態を示している。第2の実施形態では、調整弁47のオリフィス面積、コイルばね47Bのばね剛性(弾性力、付勢力)等を調整することにより、緩衝器1の減衰力特性を所望にチューニングすることができる。
第2の実施形態は、上述の如き調整弁47を電極筒18とボトムバルブ41との間に設けるもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第2の実施形態では、調整弁47を、ボトムバルブ41のバルブボディ42と電極筒18との間に設けられる保持部材45を利用して組込むことができる。この場合、保持部材45は、電極筒18を支持するために必要なものであるため、調整弁47の部品点数が増大すること、調整弁47が複雑化すること、大型化することを抑制することができる。
次に、図6および図7は、第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、中間通路(電極通路)の上流側に調整弁を設ける構成としたことにある。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態および第2の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
ボデーバルブとしてボトムバルブ51は、バルブボディ52と、伸び側逆止弁15と、縮小側のディスクバルブ43とを含んで構成されている。バルブボディ52には、油路52A、52Bが周方向に間隔をあけて設けられている。バルブボディ52の外周側には、段差部52Cが形成され、該段差部52Cには、内筒3の下端内周側が嵌合して固定されている。また、段差部52Cには、環状の保持部材53が内筒3の外周側に嵌合して取付けられている。保持部材53は、例えば電気絶縁性材料(アイソレータ)により形成され、電極筒18の下端側を軸方向に位置決めした状態で保持している。保持部材53には、電極通路19をリザーバ室Aに対して連通させる複数の油路53Aが形成されている。
一方、電極筒18の上端側は、別の保持部材54により保持されている。保持部材54は、ロッドガイド10の小径部10Bの外周側に位置して内筒3の上端外周側に嵌合して取付けられている。保持部材54は、電極筒18の上端側を軸方向に位置決めした状態で保持している。保持部材54は、例えば電気絶縁性材料(アイソレータ)により形成され、内筒3およびロッドガイド10と電極筒18との間を電気的に絶縁した状態に保っている。
ここで、保持部材54は、第1筒部となる取付筒部54Aと、第2筒部となる支持筒部54Bと、第3の筒部となる中間筒部54Cとを備えている。取付筒部54Aは、内筒3の上端外周側に嵌合されている。取付筒部54Aの内径は、最も小さい(支持筒部54Bの内径および中間筒部54Cの内径よりも小さい)。取付筒部54Aの内周面には、全周にわたって周方向溝となるシール溝54A1が設けられている。シール溝54A1内には、保持部材54と内筒3との間を液密に封止するためのシール部材54Dが設けられている。
一方、支持筒部54Bには、電極筒18の上端外周側が嵌合している。支持筒部54Bの内径は、最も大きい(取付筒部54Aの内径および中間筒部54Cの内径よりも大きい)。支持筒部54Bの内周面には、全周にわたって周方向溝となるシール溝54B1が設けられている。シール溝54B1内には、保持部材54と電極筒18との間を液密に封止するためのシール部材54Eが設けられている。支持筒部54Bの内周面には、径方向内側に突出する複数の突出部54Fが周方向に間隔を開けて設けられている。各突出部54Fには、電極筒18の上端が当接している。これにより、保持部材54の各突出部54Fは、電極筒18を軸方向に位置決めしている。また、支持筒部54Bの内周面と内筒3の外周面との間で各突出部54Fよりも上側には、調整弁56が設けられている。そして、支持筒部54Bの内周面と調整弁56との間、および、周方向に隣合う各突出部54Fの間は、作動流体2が軸方向に流通する軸方向通路54Gとなっている。
中間筒部54Cは、取付筒部54Aと支持筒部54Bとの間に設けられている。中間筒部54Cの内径は、取付筒部54Aの内径よりも大きく、支持筒部54Bの内径よりも小さい。中間筒部54Cは、内筒3の油穴3Aに対向している。そして、中間筒部54Cの内周面と内筒3の外周面との間は、作動流体2が流通する通路となる環状通路55となっている。環状通路55は、調整弁56を介して軸方向通路54Gと接続されている。即ち、環状通路55および軸方向通路54Gは、電極通路19を介してロッド側油室Bとリザーバ室Aとを連通する第1通路を構成している。換言すれば、電極通路19とロッド側油室Bとの間は、環状通路55および軸方向通路54Gによって連通している。
調整弁56は、減衰力を発生するものである。調整弁56は、ロッド側油室Bから保持部材54を通過して電極通路19に連通する第1通路に設けられている。ここで、第1通路は、環状通路55と軸方向通路54Gとにより構成されており、電極通路19と共にロッド側油室Bとリザーバ室Aとの間を連通する通路である。そして、調整弁56は、保持部材54の第1通路、より具体的には、環状通路55と軸方向通路54Gとの間に設けられている。換言すれば、調整弁56は、環状通路55の下流端の開口を塞ぐように設けられている。
調整弁56は、電極通路19の上流側で環状通路55の下流側に設けられる環状の開閉弁としての弁体56Aと、該弁体56Aを環状通路55の開口側に付勢する弾性部材としてのコイルばね56Bとにより構成されている。弁体56Aが環状通路55の開口(中間筒部54Cの周縁)に着座しているときは、環状通路55の開口が塞がれた閉弁状態となり、弁体56Aが環状通路55の開口(中間筒部54Cの周縁)から離座(離間)しているときは、環状通路55が電極通路19を介してリザーバ室Aと通じた開弁状態となる。なお、図6および図7では、閉弁状態を示している。第3の実施形態では、調整弁56のオリフィス面積、コイルばね56Bのばね剛性(弾性力、付勢力)等を調整することにより、緩衝器1の減衰力特性を所望にチューニングすることができる。
第3の実施形態は、上述の如き調整弁56を電極筒18とロッドガイド10との間に設けるもので、その基本的作用については、第1の実施形態および第2の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第3の実施形態では、調整弁56を電極通路19の上流側に設ける構成としているため、圧力の高い作動流体2が調整弁56を通過する。このため、例えば、調整弁56のチューニングによる減衰力特性の変化を顕著にできる。また、調整弁56を、ロッドガイド10と電極筒18との間に設けられる保持部材54を利用して組込むことができる。この場合、保持部材54は、電極筒18を支持するために必要なものであるため、調整弁56の部品点数が増大すること、調整弁56が複雑化すること、大型化することを抑制することができる。
次に、図8ないし図12は、第4の実施形態を示している。第4の実施形態の特徴は、調整弁を、温度変化に応じてリリーフ圧が変化する減衰力調整バルブとしたことにある。即ち、前述した特許文献2の液圧ダンパは、温度変化に伴って作動流体の粘度(流通抵抗)が変化することによる特性変化(減衰力の変化)を抑制するために、ピストンの減衰通路(環状油路)の流路面積を作動流体の温度に応じて変化させる構成となっている。しかし、特許文献2の構成は、作動流体の温度に応じて環状油路の断面積を変化させることにより減衰力を変化させるため、ピストン速度の3乗に比例して減衰力が大きくなる。この場合、ピストン速度が増大する(高速になる)に従って、減衰力が過大になるおそれがある。そこで、第4の実施形態は、減衰力が過大になることを抑制できるシリンダ装置(緩衝器)を提供することを目的としている。
図8において、シリンダ装置としての緩衝器1は、作動油となる作動流体2として電気粘性流体を用いた減衰力調整式の油圧緩衝器(セミアクティブダンパ)として構成されている。緩衝器1は、例えば、図示しないばね(例えば、コイルばね)と共に、車両用のサスペンション装置を構成する。緩衝器1は、内筒3と、外筒4と、ピストン6と、ピストンロッド9と、油路となる電極通路19とを備えている。
外筒4は、緩衝器1の外殻をなすもので、円筒体として形成されている。外筒4は、一端側(下端側)がボトムキャップ5により溶接手段等を用いて閉塞された閉塞端となり、他端側(上端側)が開口端となっている。外筒4の開口端側は、径方向内側に屈曲してかしめ部4Aが設けられている。かしめ部4Aは、シール部材12の環状板体12Aの外周側を抜け止め状態で保持している。
内筒3は、外筒4内に該外筒4と同軸に設けられている。内筒3は、下端側がボトムバルブ61に嵌合して取付けられ、上端側はロッドガイド10に嵌合して取付けられている。内筒3は、外筒4と共にシリンダを構成し、該シリンダ内には、作動流体2が封入されている。ここで、第4の実施形態も、シリンダ内に充填(封入)される流体、即ち、作動油となる作動流体2として、電気粘性流体(ERF:Electro Rheological Fluid)を用いている。なお、図8ないし図10でも、封入されている作動流体2は無色透明である。
電気粘性流体は、印加される電圧に応じて流通抵抗(減衰力)が変化するものである。具体的には、電気粘性流体は、例えば、シリコンオイル等からなる基油(ベースオイル)と、該基油に混ぜ込まれ(分散され)電界の変化に応じて粘性を可変にする粒子(微粒子)とにより構成されている。緩衝器1は、後述の電極通路19内に電位差を発生させ、該電極通路19を通過する電気粘性流体の粘度を制御することで、発生減衰力を制御(調整)する構成となっている。
外筒4と内筒3との間(より具体的には、外筒4と電極筒18との間)には、環状のリザーバ室Aが形成されている。リザーバ室A内には、作動流体2と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド9の縮小(縮み行程)時に、当該ピストンロッド9の進入体積分を補償すべく圧縮される。
ピストン6は、内筒3内に摺動可能に嵌装(挿嵌)されている。ピストン6は、内筒3内をロッド側油室Bとボトム側油室Cとに画成している。ピストン6には、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能とする油路6A,6Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
ピストン6の上端面には、例えば、ピストンロッド9の縮小行程でピストン6が下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する縮み側逆止弁7が設けられている。縮み側逆止弁7は、ボトム側油室C内の油液(作動流体2)がロッド側油室Bに向けて各油路6A内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。
ピストン6の下端面には、例えば、伸長側のディスクバルブ8が設けられている。伸長側のディスクバルブ8は、ピストンロッド9の伸長行程でピストン6が上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路6Bを介してボトム側油室C側にリリーフする。
ピストンロッド9は、内筒3内を軸方向(内筒3、延いては、緩衝器1の中心軸線と同方向であり、図8ないし図11の上下方向)に延びている。即ち、ピストンロッド9は、ピストン6に連結され、シリンダとなる内筒3および外筒4の外部へ延出している。この場合、ピストンロッド9の一端側となる下端側には、ナット9A等を用いてピストン6が固定(固着)されている。一方、ピストンロッド9の他端側となる上端側は、ロッドガイド10を介して外部に突出している。なお、ピストンロッド9の下端をさらに延ばしてボトム部(例えば、ボトムキャップ5)側から外向きに突出させ、所謂、両ロッドとしてもよい。
内筒3の上端側(他端側)には、段付円筒状のロッドガイド10が設けられている。ロッドガイド10は、内筒3の上側部分および後述の電極筒18の上側部分を、外筒4の中央に位置決めする。これと共に、ロッドガイド10は、その内周側でピストンロッド9を軸方向に摺動可能に案内(ガイド)する。
ロッドガイド10と外筒4のかしめ部4Aとの間には、環状のシール部材12が設けられている。シール部材12は、中心にピストンロッド9が挿通される孔が設けられた金属性の環状板体12Aと、該環状板体12Aに焼き付けられたゴム等の弾性材料からなる弾性体12Bとを含んで構成されている。シール部材12は、弾性体12Bの内周がピストンロッド9の外周側に摺接することにより、ピストンロッド9との間を液密、気密に封止(シール)する。
内筒3の下端側(一端側)には、該内筒3とボトムキャップ5との間に位置してボトムバルブ61が設けられている。ボトムバルブ61は、バルブボディ62と、伸び側逆止弁15と、ディスクバルブ43とを含んで構成されている。バルブボディ62は、ボトムキャップ5と内筒3との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを画成する。バルブボディ62には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能とする油路62A,62Bがそれぞれ周方向に間隔をあけて形成されている。
伸び側逆止弁15は、例えば、バルブボディ62の上面側に設けられている。伸び側逆止弁15は、ピストンロッド9の伸長行程でピストン6が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。伸び側逆止弁15は、リザーバ室A内の油液(作動流体2)がボトム側油室Cに向けて各油路62A内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。
縮小側のディスクバルブ43は、例えば、バルブボディ62の下面側に設けられている。縮小側のディスクバルブ43は、ピストンロッド9の縮小行程でピストン6が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を、各油路62Bを介してリザーバ室A側にリリーフする。
外筒4と内筒3との間には、中間筒となる電極筒18が配設されている。電極筒18は、例えば、内筒3の外周側に軸方向(上下方向)に離間して設けられた保持部材となる筒状のアイソレータ(絶縁部材)63,63を介して取付けられている。電極筒18は、内筒3の外周側を全周にわたって取囲むように延びる環状の電極通路19を内部に形成している。電極通路19は、内筒3に径方向の横孔として形成した油穴3Aによりロッド側油室Bと常時連通している。即ち、図8で作動流体2の流れの方向を矢印で示すように、緩衝器1は、ピストン6の圧縮行程および伸び行程の両方で、ロッド側油室Bから油穴3Aを通じて電極通路19に作動流体2が流入するユニフロー構造となっている。電極通路19に流入した作動流体2は、後述の減衰力調整バルブ71を介してリザーバ室Aに戻る。
電極通路19は、外筒4および内筒3内でピストン6の摺動によって流通する流体、即ち、作動流体2となる電気粘性流体に抵抗を付与する。このために、電極筒18は、電源となるバッテリ20の正極に、例えば、高電圧を発生する高電圧ドライバ(図示せず)を介して接続されている。電極筒18は、電極通路19内の流体である作動流体2、即ち、電気粘性流体に電界をかける電極(エレクトロード)となるものである。この場合、電極筒18は、一対のアイソレータ63,63によって絶縁されている。一方、内筒3は、ロッドガイド10、ボトムバルブ61、ボトムキャップ5、外筒4、高電圧ドライバ等を介して負極(グランド)に接続されている。
高電圧ドライバは、緩衝器1の減衰力を可変に調整するためのコントローラ(図示せず)から出力される指令(高電圧指令)に基づいて、バッテリ20から出力される直流電圧を昇圧して電極筒18に供給(出力)する。これにより、電極筒18と内筒3との間、即ち、電極通路19内には、電極筒18に印加される電圧に応じた電位差が発生し、電気粘性流体の粘度が変化する。この場合、緩衝器1は、電極筒18に印加される電圧に応じて、発生減衰力の特性(減衰力特性)をハード(Hard)な特性(硬特性)からソフト(soft)な特性(軟特性)に連続的に調整することができる。なお、緩衝器1は、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。
ところで、電気粘性流体は、例えば、基油としてシリコン油を用いることに伴って、基油が鉱物油の作動流体と比較して、温度に対する粘性変化が大きい。具体的には、低温では、高粘性となり、高温では、低粘性となる。このため、電気粘性流体の温度が上昇すると、コントローラによって同じ電位差を作用させた場合でも、電気粘性流体の粘度が低下し、減衰力が低下するおそれがある。即ち、作動流体2として電気粘性流体を用いる場合、そのままでは、温度変化によって電気粘性流体の粘度が変化することに伴って、緩衝器1の減衰力の特性が大きく変化するおそれがある。
これに対し、特許文献1の液圧ダンパは、温度変化に伴う特性変化(減衰力の変化)を抑制するために、ピストンの減衰通路(環状油路)の流路面積を作動流体の温度に応じて変化させる構成となっている。しかし、この構成は、ピストン速度の3乗に比例して減衰力が大きくなるため、ピストン速度が増大する(高速になる)に従って、減衰力が過大になるおそれがある。
図12は、ピストン速度と減衰力との関係を示す特性線図である。図12中の実線の特性線91は、常温(例えば、標準温度)のときの特性である。これに対し、図12中の一点鎖線の特性線92は、電気粘性流体の温度が上昇したときの特性である。電気粘性流体の温度が上昇すると、粘度が低下することに伴って、常温のときよりも減衰力が低下する。一方、図12中の二点鎖線の特性線93は、温度に応じて流量を制御する構成、即ち、ピストンの環状油路の流路面積を温度に応じて変化させる構成で、電気粘性流体の温度が上昇したときの特性である。この場合は、ピストン速度が増大する(高速になる)程、減衰力が過大になる。
そこで、第4の実施形態では、内筒3と電極筒18との間の電極通路19に、温度変化に応じてリリーフ圧が変化する減衰力調整バルブ71を設けている。調整弁としての減衰力調整バルブ71は、作動流体2である電気粘性流体の温度変化に伴う減衰力の変化を補償するものである。以下、減衰力調整バルブ71について、図8に加え、図9ないし図11も参照しつつ説明する。なお、図9では、ボトムキャップ5およびボトムバルブ61を二点鎖線で示し、図10では、ボトムキャップ5およびボトムバルブ61を省略して示している。
減衰力調整バルブ71は、電極筒18の一端側となる下端側に位置して、該電極筒18とボトムバルブ61との間に設けられている。換言すれば、減衰力調整バルブ71は、電極筒18と内筒3との間で、該内筒3の油穴3Aとは反対側となる該内筒3の一端側(下端側)の周囲に設けられている。これにより、減衰力調整バルブ71は、内筒3と電極筒18との間の環状の電極通路19の下流側(下流端)に、該電極通路19に対して直列に設けられている。
減衰力調整バルブ71は、温度に応じてウエーブワッシャ76のセット荷重が可変のスライド弁機構として構成されている。即ち、減衰力調整バルブ71は、温度変化による体積膨張率の高い部材である高体積膨張率部材79の体積変化によって、当該減衰力調整バルブ71に設けられたばねとしてのウエーブワッシャ76のセット荷重を変化させることで、リリーフ圧を変化させることにより、発生減衰力を調整する構成としている。
このために、減衰力調整バルブ71は、ベースリング72と、ロックリング73と、バルブシート74と、スライドバルブ75と、ウエーブワッシャ76と、付勢力調整装置77とを含んで構成されている。この場合、減衰力調整バルブ71は、スライドバルブ75とウエーブワッシャ76とにより減衰力を発生する調整弁となっている。
ベースリング72は、段付き円環状に形成されている。ベースリング72は、外径寸法が大きい大径部72Aと、該大径部72Aよりも外径寸法が小さい小径部72Bとを備えている。大径部72Aの外周面と小径部72Bの外周面は、段差面72Cを介して連続している。ベースリング72の内側には、内筒3の下端側が嵌合される。
ベースリング72の一端側(下端側)、即ち、小径部72Bの先端側には、ロックリング73を螺着する雄ねじ部72Dが設けられている。小径部72Bの先端は、径方向内側に全周にわたって突出する鍔部72Eとなっている。ベースリング72の鍔部72Eは、内筒3の一端(下端)とボトムバルブ61とにより軸方向に挟持される。ボトムバルブ61は、内筒3に圧入により嵌合される。
ベースリング72の他端側、即ち、大径部72Aの他端側(上端側)は、全周にわたって一端側(下端側)に凹入する凹部72Fが設けられている。凹部72F内には、アイソレータ63が嵌着している。大径部72Aには、凹部72Fの底面と段差面72Cとの間を貫通する出口油路72Gが周方向に離間して複数設けられている。図10に矢印で示すように、各出口油路72Gには、電極通路19からアイソレータ63の内周面と内筒3の外周面との間を通過した作動流体2、即ち、電気粘性流体が流入する。
ベースリング72と内筒3は、ボトムバルブ61とロッドガイド10とにより軸方向に挟持される。これと共に、ベースリング72とロッドガイド10との間には、一方(下方)のアイソレータ63と他方(上方)のアイソレータ63とを介して電極筒18も軸方向に挟持される。さらに、ボトムバルブ61とロッドガイド10は、ベースリング72、内筒3、一対のアイソレータ63,63、電極筒18を軸方向に挟持した状態で、シール部材12と共に外筒4のかしめ部4Aとボトムキャップ5とにより軸方向に挟持される。
ロックリング73は、ベースリング72の雄ねじ部72Dに螺着される。ロックリング73は、略円筒状に形成され、一端側となる下端側は、その内周側がベースリング72の雄ねじ部72Dに螺合する雌ねじ部73Aとなっている。ロックリング73の下端側は、全周にわたって径方向外側に突出する鍔部73Bとなっている。
鍔部73Bには、周方向に離間して複数の凹部73Cが設けられている。各凹部73Cには、ロックリング73を回転させるための工具(図示せず)の凸部が係合する。即ち、工具の凸部と凹部73Cとを係合させた状態で、ロックリング73を回転させることにより、ベースリング72に対するロックリング73の取付け、取外しを行うことができる。
ロックリング73は、その他端側(他端面)となる上端側(上端面)がバルブシート74の内径側の側面と当接し、これにより、バルブシート74をベースリング72の段差面72Cに向けて押さえ付けている。即ち、ロックリング73は、ベースリング72の段差面72Cとの間でバルブシート74を軸方向に挟持している。
ロックリング73の外周側で、鍔部73Bとバルブシート74との間には、鍔部73Bから順に、付勢力調整装置77、ウエーブワッシャ76、スライドバルブ75が設けられている。これら付勢力調整装置77、ウエーブワッシャ76、スライドバルブ75は、ロックリング73に対して鍔部73Bよりも他端側(上端側)で嵌合している。この場合、スライドバルブ75とウエーブワッシャ76と付勢力調整装置77のスライドリング81は、軸方向の移動(スライド)を可能に(例えば、隙間をもって)ロックリング73に嵌合している。
バルブシート74は、環状に形成され、バルブシート74の側面(下面)には、スライドバルブ75が離着座する。バルブシート74には、軸方向に貫通する流出孔74Aが周方向に離間して複数設けられている。図10に矢印で示すように、各流出孔74Aからは、電極通路19からの作動流体2、即ち、電気粘性流体がリザーバ室Aに向けて流出する。
スライドバルブ75がバルブシート74に着座しているときは、各流出孔74Aが塞がれた閉弁状態となり、スライドバルブ75がバルブシート74から離座(離間)しているときは、各流出孔74Aがリザーバ室Aと通じた開弁状態となる。なお、図8ないし図10では、開弁状態を示している。
スライドバルブ75は、環状の弁体(開閉弁)として形成されている。スライドバルブ75は、ウエーブワッシャ76の付勢力(軸方向となる上下方向の付勢力)によってバルブシート74に押付けられている。即ち、スライドバルブ75は、ウエーブワッシャ76の付勢力に応じたリリーフ圧(開弁圧)でバルブシート74に押付けられている。
スライドバルブ75は、各流出孔74Aからリザーバ室Aに向けて流出しようとする作動流体2の圧力がウエーブワッシャ76の付勢力に応じたリリーフ圧を超えると開弁(リリーフ)する。このとき、スライドバルブ75は、各流出孔74Aを流通する油液(作動流体2)にウエーブワッシャ76の付勢力に応じた流動抵抗を与えて減衰力を発生する。
ばね(弾性部材)としてのウエーブワッシャ76は、スライドバルブ75と付勢力調整装置77のスライドリング81との間に設けられている。ウエーブワッシャ76は、波座金、ウエーブスプリングとも呼ばれ、軸方向の付勢力を付与する環状の圧縮ばねとして形成されている。ウエーブワッシャ76は、スライドバルブ75のスライド弁ばねとなるものである。
ウエーブワッシャ76は、スライドバルブ75対して閉弁方向(スライドバルブ75をバルブシート74に押付ける方向)の付勢力を付与する。逆に言えば、スライドバルブ75には、閉弁方向にウエーブワッシャ76の荷重(セット荷重)が付与される。
ウエーブワッシャ76の付勢力は、付勢力調整装置77によって変化する。即ち、ウエーブワッシャ76の付勢力(スライドバルブ75を閉弁方向に押圧する力、セット荷重)は、付勢力調整装置77のスライドリング81の位置、換言すれば、スライドリング81とバルブシート74との間隔(離間距離)Kに応じて変化する。
第4の実施形態では、例えば、常温のときのスライドリング81とバルブシート74との間隔Kからスライドバルブ75の厚さ寸法(軸方向寸法)Tを減算した値(クリアランス)が、自由状態でのウエーブワッシャ76の厚さ寸法(軸方向寸法)よりも小さくなるように設定する。即ち、第4の実施形態では、常温のときにもウエーブワッシャ76のセット荷重が付与される(常温のときのセット荷重が0よりも大きい)構成としている。
付勢力調整装置77は、温度に応じてウエーブワッシャ76のセット荷重を変化させることで、スライドバルブ75のリリーフ圧を変化させるものである。付勢力調整装置77は、ハウジング78と、高体積膨張率部材79と、シール部材80と、スライドリング81とを備えている。付勢力調整装置77は、これらハウジング78と、高体積膨張率部材79と、シール部材80と、スライドリング81とを一つの組立体として一体化したスライドリング組立体として構成することができる。
ハウジング78は、縦断面がU字形の円環状箱部材として形成されている。即ち、ハウジング78は、ロックリング73に嵌合する内周部78Aと、該内周部78Aから全周にわたって径方向外方に延びる底部78Bと、底部78Bの外径側から内周部78Aと平行に軸方向に延びる外周部78Cとにより構成されている。ハウジング78は、ロックリング73と嵌合し、その底部78Bは、ロックリング73の鍔部73Bに当接している。ハウジング78は、内部に高体積膨張率部材79を収容した状態で、その開口側がシール部材80により塞がれる。
高体積膨張率部材79は、ハウジング78内にシール部材80によって密閉された状態で封入されている。高体積膨張率部材79は、温度に応じて体積変化する部材、より具体的には、温度による体積膨張率の高い部材であり、例えば、パラフィンワックス等により構成することができる。高体積膨張率部材79が温度に応じて体積変化すると、スライドリング81の位置が変化する。
例えば、温度が上昇することにより高体積膨張率部材79が膨張(体積が増大)すると、スライドリング81とバルブシート74との間隔(離間距離)Kが小さくなり、ウエーブワッシャ76の付勢力が増大する。一方、温度が低下することにより高体積膨張率部材79が縮小(体積が減少)すると、スライドリング81とバルブシート74との間隔(離間距離)Kが大きくなり、ウエーブワッシャ76の付勢力が小さくなる。これにより、温度に応じて(温度変化に伴って)、ウエーブワッシャ76のプリロード(初期荷重、セット荷重)が可変となり、スライドバルブ75のリリーフ圧が可変となっている。
シール部材80は、ハウジング78に対してスライドリング81の移動を可能に支持し、かつ、ハウジング78内に高体積膨張率部材79を封止するものである。シール部材80は、例えば、ゴムの如きエラストマ等、耐油性、耐熱性に優れた弾性材料を用いて構成することができる。シール部材80は、ハウジング78の内周部78Aと外周部78Cとの間でスライドリング81の円筒部81Aを径方向に挟持している。
スライドリング81は、全体として円環状に形成され、ハウジング78にシール部材80を介して嵌合している。スライドリング81は、軸方向に延びる円筒部81Aと、該円筒部81Aの他端側(上端側)に設けられた円輪状のばね押圧部81Bとを含んで構成されている。ばね押圧部81Bとスライドバルブ75との間には、ばね押圧部81Bを座面にしてウエーブワッシャ76が取付けられている。
スライドリング81は、温度に応じて高体積膨張率部材79の体積が変化することにより、軸方向となる上下方向に移動する。スライドリング81が移動すると、スライドリング81のばね押圧部81Bとスライドバルブ75との間で軸方向に圧縮されるウエーブワッシャ76の圧縮量が変化し、スライドバルブ75に加わるウエーブワッシャ76のセット荷重が変化する。これにより、電極通路19とリザーバ室Aとの間の差圧が(リリーフ圧)が変化し、減衰力を調節することができる。
第4の実施形態による緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
緩衝器1を自動車等の車両に実装するときは、例えば、ピストンロッド9の上端側を車両の車体側に取付け、外筒4の下端側(ボトムキャップ5側)を車輪側(車軸側)に取付ける。車両の走行時には、路面の凹凸等により、上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド9が外筒4から伸長、縮小するように変位する。このとき、コントローラからの指令に基づいて電極通路19内に電位差を発生させ、油路を通過する作動流体2、即ち、電気粘性流体の粘度を制御することにより、緩衝器1の発生減衰力を可変に調整する。
例えば、ピストンロッド9の伸び行程時には、内筒3内のピストン6の移動によってピストン6の縮み側逆止弁7が閉じる。ピストン6のディスクバルブ8の開弁前には、ロッド側油室Bの油液(作動流体2)が加圧され、内筒3の油穴3Aを通じて電極通路19内に流入する。このとき、ピストン6が移動した分の油液は、リザーバ室Aからボトムバルブ61の伸び側逆止弁15を開いてボトム側油室Cに流入する。
一方、ピストンロッド9の縮み行程時には、内筒3内のピストン6の移動によってピストン6の縮み側逆止弁7が開き、ボトムバルブ61の伸び側逆止弁15が閉じる。ボトムバルブ61(ディスクバルブ43)の開弁前には、ボトム側油室Cの油液がロッド側油室Bに流入する。これと共に、ピストンロッド9が内筒3内に浸入した分に相当する油液が、ロッド側油室Bから内筒3の油穴3Aを通じて電極通路19内に流入する。
いずれの場合も(伸び行程時も縮み行程時も)、電極通路19内に流入した油液は、電極通路19の電位差に応じた粘度で電極通路19内を出口側(下側)に向けて通過し、電極通路19から減衰力調整バルブ71を介してリザーバ室Aに流れる。このとき、緩衝器1は、電極通路19内を通過する油液の粘度に応じた減衰力と減衰力調整バルブ71のリリーフ圧(開弁圧)に応じた減衰力とが発生し、車両の上下振動を緩衝(減衰)することができる。
ここで、外気温の変化や緩衝器1の連続作動により作動流である作動流体2、即ち、電気粘性流体の温度が上昇すると、コントローラによって同じ電位差を作用させた場合でも、電気粘性流体の粘度が低下し、減衰力が低下する。これに対し、減衰力調整バルブ71の付勢力調整装置77の高体積膨張率部材79は、温度の上昇に応じて体積が増大し、スライドリング81がハウジング78から押し出される方向に移動する。これにより、ウエーブワッシャ76の軸方向の圧縮量が増大し、スライドバルブ75に加わるセット荷重、延いては、リリーフ圧が上昇し、減衰力調整バルブ71の発生減衰力が増大する。この結果、電気粘性流体の粘度低下による減衰力低下を、減衰力調整バルブ71のリリーフ圧の上昇による発生減衰力の増大によって相殺することができる。
一方、電気粘性流体の温度が低下したときは、高体積膨張率部材79の体積は減少し、スライドリング81がハウジング78内に格納される方向に移動する。これにより、ウエーブワッシャ76の圧縮量が減少し、スライドバルブ75に加わるセット荷重、延いては、リリーフ圧が減少し、減衰力調整バルブ71の発生減衰力が減少する。このとき、電気粘性流体の粘度は、温度が下がったことにより高くなるため、合計(トータル)での発生減衰力は変わらない。
これにより、コントローラによって電極通路19に同じ電位差を作用させたときに、温度変化に拘わらず、緩衝器1全体としての減衰力を同じにすることができる。即ち、図12中の破線の特性線94は、電気粘性流体の温度が上昇したときの第4の実施形態の特性である。温度が上昇したときも、温度が常温のときと同様の減衰力特性とすることができる。
かくして、第4の実施形態では、電気粘性流体の温度変化に伴う減衰力特性の変化(緩衝器1の特性変化)を抑制することができる。特に、ピストン6の速度が増大しても(高速になっても)減衰力が過大になることを抑制できる。
即ち、第4の実施形態では、緩衝器1は、電位差を発生させる電極通路19に加えて、温度変化に伴ってリリーフ圧が変化する減衰力調整バルブ71を備えている。このため、緩衝器1は、作動流体2である電気粘性流体が電極通路19を通過することに基づく減衰力と、減衰力調整バルブ71を通過することに基づく減衰力とを得ることができる。これにより、電気粘性流体の温度変化に伴う緩衝器1全体としての特性変化(減衰力の変化)を、減衰力調整バルブ71のリリーフ圧の変化によって抑制(補償)することができる。この場合、減衰力調整バルブ71は、温度に応じてウエーブワッシャ76のセット荷重、延いては、スライドバルブ75のリリーフ圧が変化することにより減衰力を調整するため、ピストン6の速度に依存せずに減衰力を調整することができる。即ち、ピストン6の速度に拘わらず、減衰力を所望に調整することができる。これにより、ピストン6の速度が高速になっても、減衰力が過大になることを抑制できる。
第4の実施形態では、減衰力調整バルブ71は、電極通路19に対して直列に設ける構成としている。このため、緩衝器1全体としての減衰力を、電気粘性流体が電極通路19を通過することに基づく減衰力と減衰力調整バルブ71を通過することに基づく減衰力との和とすることができる。即ち、温度上昇に伴って電気粘性流体の粘度が低下することによる減衰力の低下を、温度上昇に伴って減衰力調整バルブ71のリリーフ圧が上昇することによる減衰力の増大に基づいて、相殺することができる。この結果、この面からも、電気粘性流体の温度変化に伴う緩衝器1全体としての特性変化(減衰力の変化)を抑制(補償)することができる。
なお、第4の実施形態では、常温(例えば、標準温度)のときにもウエーブワッシャ76のセット荷重が付与される構成(常温のときのセット荷重が0よりも大きい構成)とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、常温のときにウエーブワッシャ76のセット荷重が0になる(セット荷重が付与されない)構成としてもよい。即ち、常温のときのスライドリング81とバルブシート74との間隔Kからスライドバルブ75の厚さ寸法(軸方向寸法)Tを減算した値(クリアランス)が、自由状態でのウエーブワッシャ76の厚さ寸法(軸方向寸法)よりも大きくなるように設定してもよい。即ち、常温のときの間隔Kから厚さ寸法Tを減算した値とウエーブワッシャ76の厚さ寸法との関係は、必要な減衰力を得られるように、緩衝器1の仕様等に応じて適宜設定することができる。換言すれば、減衰力調整バルブのセット荷重(リリーフ圧)は、所望の性能が得られるように設定する。
第4の実施形態では、バルブシート74の側面(下面)、即ち、スライドバルブ75が離着座する面は、平坦面とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、バルブシート74の側面に、各流出孔74Aの周囲をそれぞれ囲むように円環状の突起を設け、円環状の各突起にスライドバルブ75の側面(上面)が当接するように構成してもよい。さらには、バルブシート74の側面に、スライドバルブ75が当接してもスライドバルブ75とバルブシート74との間で油液が流通する絞りとなる固定オリフィスを設ける構成としてもよい。
第4の実施形態では、スライドバルブ75にセット荷重を付与するばねとしてウエーブワッシャ76を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、コイルばね、皿ばね等、減衰力調整バルブのリリーフ圧を規定するセット荷重を付与できるばねであれば各種のばねを用いることができる。
第4の実施形態では、高体積膨張率部材79としてパラフィンワックスを用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、合成ゴム等、必要な体積膨張率を得られる素材、即ち、温度変化による体積膨張率が高い部材であれば、各種の部材(素材)を用いることができる。
第4の実施形態では、電極通路19の下流側に減衰力調整バルブ71を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、減衰力調整バルブを油路の上流側(例えば、内筒3の油穴3A近傍)に設ける構成としてもよい。即ち、緩衝器および減衰力調整バルブは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更が可能である。
各実施形態では、緩衝器1を上下方向に配置する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、エアレーションを起こさない範囲で傾けて配置する等、取付対象に応じて所望の方向に配置することができる。
第1の実施形態では、調整弁21は、第4の実施形態のような付勢力調整装置77(即ち、高体積膨張率部材79)を備えていない構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第4の実施形態のように、温度変化による体積膨張率の高い部材を備えた調整弁とすることにより、温度変化に伴ってセット荷重が変化する構成としてもよい。このことは、第2の実施形態および第3の実施形態も同様である。
各実施形態では、作動流体2は、軸方向の上端側から下端側に向けて流動する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、緩衝器1の配設方向に応じて、例えば、下端側から上端側に向けて流動する構成、左端側(または右端側)から右端側(または左端側)に向けて流動する構成、前端側(または後端側)から後端側(または前端側)に向けて流動する構成等、軸方向の一端側から他端側に向けて流動する構成とすることができる。
各実施形態では、機能性流体としての作動流体2を、電気粘性流体(ER流体)により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば磁界により流体の性状が変化する磁性流体(MR流体)を用いて機能性流体としての作動流体を構成してもよい。磁性流体を用いる場合には、中間筒である電極筒18を電極に代えて磁極とする(即ち、磁界供給部からの磁界を中間筒である磁極筒に付与する)構成とすることができる。この場合は、例えば、磁界供給部により、内筒と磁極筒との間(の磁極通路)に磁界を発生させ、発生減衰力を可変に調整するときには、磁界を可変に制御する。また、絶縁用の保持部材11,16,45,53,54、アイソレータ63等は、例えば、非磁性材料により形成することができる。
各実施形態では、シリンダ装置としての緩衝器1を4輪自動車に用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、2輪車に用いる緩衝器、鉄道車両に用いる緩衝器、一般産業機器を含む各種の機械機器に用いる緩衝器、建築物に用いる緩衝器等、緩衝すべき対象を緩衝する各種の緩衝器(シリンダ装置)として広く用いることができる。さらに、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
以上の実施形態によれば、減衰力特性をチューニングできる。即ち、機能性流体が中間通路(電極通路、磁極通路)を通過するときに発生する減衰力を調整する以外にも、第1通路に設けられた調整弁の設定に基づいて、シリンダ装置の減衰力特性を所望にチューニングすることができる。
具体的には、実施形態によれば、中間通路を介して第1室とリザーバとを連通する第1通路に、減衰力を発生する調整弁を設ける構成としている。このため、シリンダ装置は、作動流体である機能性流体が中間通路を通過することに基づく減衰力と、調整弁を通過することに基づく減衰力とを得ることができる。従って、調整弁のオリフィス面積、ばね剛性、ポート面積等を調整することにより、ピストン低速域、中速域、高速域のそれぞれの減衰力特性を所望にチューニングすることができる。この結果、中間通路を機能性流体が通過するときの電圧調整等による減衰力の調整以外にも、減衰力特性を所望にチューニングすることができ、チューニングの自由度を向上することができる。換言すれば、調整弁を調整(設定)することで、車両の種類、仕様等に応じてそれぞれ減衰力特性が異なる複数種類のシリンダ装置を提供することができ、量産コストを低減することができる。
実施形態によれば、調整弁は、中間通路の下流側に設けられる環状の開閉弁と、該開閉弁を付勢する弾性部材とからなる。このため、弾性部材のばね剛性(弾性力、付勢力)、開閉弁のオリフィス面積、ポート面積を調整することにより、減衰力特性を微細にチューニングすることができる。例えば、開閉弁をディスクバルブにより構成した場合は、ディスクバルブの調整(変更)のみにより減衰力特性を所望にチューニングすることもできる。これにより、部品コストを抑えることができ、この面からも、量産コストを低減することができる。さらに、調整弁(の開閉弁)は、中間通路の下流側に設けられるため、例えば、シリンダ装置が上下方向に配置される場合に、リザーバの高圧ガスが中間通路に入り込む(逆流する)ことも抑制できる。
実施形態によれば、第1通路は、中間通路からボデーバルブを通過してリザーバに連通する構成とし、調整弁は、ボデーバルブの第1通路に設けられる構成としている。これにより、調整弁を、元々あるボデーバルブを利用して組込むことができる。この結果、例えば、調整弁が複雑化すること、大型化すること、調整弁の部品点数が増大することを抑制することができる。
実施形態によれば、ピストンには、第2室側から第1室側への機能性流体の流通のみを許容する第1逆止弁が設けられており、ボデーバルブには、リザーバ側から第2室側への機能性流体の流通のみを許容する第2逆止弁が設けられる構成としている。このため、ユニフロー構造の緩衝器となるシリンダ装置において、中間通路の出口側(下流側)または入口側(上流側)に接続される第1通路に調整弁を設けることで、減衰力特性を幅広くチューニングすることができる。
実施形態によれば、調整弁は、温度変化による体積膨張率の高い部材の体積変化によって、当該調整弁のセット荷重を変化させる構成としている。このため、機能性流体である作動流体の温度変化に伴うシリンダ装置全体としての特性変化(減衰力の変化)を、調整弁によって抑制(補償)することができる。
さらに、第4の実施形態によれば、減衰力特性をチューニングできることに加えて、減衰力が過大になることを抑制できる。
即ち、実施形態によれば、緩衝器は、電位差を発生させる油路に加えて、温度変化に伴ってリリーフ圧が変化する減衰力調整バルブ(調整弁)を備えている。このため、緩衝器は、作動流体である電気粘性流体が油路を通過することに基づく減衰力と、減衰力調整バルブを通過することに基づく減衰力とを得ることができる。これにより、電気粘性流体の温度変化に伴う緩衝器全体としての特性変化(減衰力の変化)を、減衰力調整バルブのリリーフ圧の変化によって抑制(補償)することができる。この場合に、減衰力調整バルブは、温度に応じてセット荷重、延いては、リリーフ圧が変化することにより減衰力を調整するため、ピストン速度に依存せずに減衰力を調整することができる。即ち、ピストン速度に拘わらず、減衰力を所望に調整することができる。これにより、ピストン速度が高速になっても、減衰力が過大になることを抑制できる。
実施形態によれば、減衰力調整バルブは、油路に対して直列に設ける構成としている。このため、緩衝器全体としての減衰力を、電気粘性流体が油路を通過することに基づく減衰力と減衰力調整バルブを通過することに基づく減衰力との和とすることができる。即ち、温度上昇に伴って電気粘性流体の粘度が低下することによる減衰力の低下を、温度上昇に伴って減衰力調整バルブのリリーフ圧が上昇することによる減衰力の増大に基づいて、相殺することができる。この結果、電気粘性流体の温度変化に伴う緩衝器全体としての特性変化(減衰力の変化)を、高い次元で抑制(補償)することができる。
以上説明した実施形態に基づくシリンダ装置として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
シリンダ装置の第1の態様としては、電界または磁界により流体の性状が変化する機能性流体が封入される内筒と、前記内筒内に摺動可能に設けられて該内筒内をロッド側の第1室とボトム側の第2室に分けるピストンと、一端が前記ピストンに連結され他端が前記第1室を通って前記内筒の外部へ延出されるピストンロッドと、前記内筒の外側に設けられて該内筒との間に前記第1室と連通する電極通路または磁極通路となる中間通路を形成する中間筒と、前記中間筒の外周に設けられて該中間筒との間に前記中間通路と連通するリザーバを形成する外筒と、前記内筒の一端側に設けられ前記第2室と前記リザーバとを連通・遮断するボデーバルブと、を有し、前記中間通路を介して前記第1室と前記リザーバとを連通する第1通路に、減衰力を発生する調整弁を設けることを特徴とする。
第2の態様としては、第1の態様において、前記調整弁は、前記中間通路の下流側に設けられる環状の開閉弁と、該開閉弁を付勢する弾性部材と、からなる。
第3の態様としては、第1の態様、第2の態様において、前記第1通路は、前記中間通路から前記ボデーバルブを通過して前記リザーバに連通する構成とし、前記調整弁は、前記ボデーバルブの前記第1通路に設けられる。
第4の態様としては、第1の態様乃至第3の態様の何れかにおいて、前記ピストンには、前記第2室側から前記第1室側への機能性流体の流通のみを許容する第1逆止弁が設けられており、前記ボデーバルブには、前記リザーバ側から前記第2室側への機能性流体の流通のみを許容する第2逆止弁が設けられる。
第5の態様としては、第1の態様乃至第4の態様の何れかにおいて、前記調整弁は、温度変化による体積膨張率の高い部材の体積変化によって、当該調整弁のセット荷重を変化させる構成とした。
第6の態様としては、作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記シリンダ内で前記ピストンの摺動によって流通する流体に抵抗を付与する油路と、を備えたシリンダ装置において、前記シリンダ内に充填される流体として電気粘性流体を用い、前記油路内に電位差を発生させ、前記油路を通過する電気粘性流体の粘度を制御することで発生減衰力を制御し、前記油路に減衰力調整バルブを設け、当該減衰力調整バルブは温度変化による体積膨張率の高い部材の体積変化によって、当該減衰力調整バルブに設けられたばねのセット荷重を変化させることで、リリーフ圧を変化させることにより発生減衰力を調整する構成とした。
第7の態様としては、第6の態様において、前記減衰力調整バルブは、前記油路に対して直列に設ける。