JP2017013435A - 化粧シート及び化粧材 - Google Patents
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中間層は、バッカー層とも呼ばれており、化粧シートに適度な厚みを与えて巻取りを容易にする目的等のために設けられるものである。基材と化粧シートとの間にバッカー層を設ける化粧材は、例えば、特許文献1に記載されている。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、化粧シートを厚くすることなく、コストの上昇を抑えつつ、基材から拡散される揮発性有機物による変色を防ぐことができる化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
図1は、本実施形態の化粧シート2を基材に貼り付けた状態を示した断面図である。本実施形態の化粧シート2は、蒸着フィルム層を有し、基材3から化粧シート2の側に拡散されてくるβ‐カリオフィレンによって化粧シートが変色することを防いでいる。このような化粧シート2を基材3に貼り付けることによって図1に示す化粧材1が構成される。
化粧シート2は、基材シート9と、絵柄層11と、透明熱可塑性樹脂層15とがこの順に形成され、基材シート9の絵柄層11の側と反対の側がプライマー層4を介して基材3に貼り付けられる。そして、本実施形態の化粧シート2は、基材シート9とプライマー層4との間に、金属酸化物が蒸着された熱可塑性樹脂フィルムである蒸着フィルム層5が、基材3の側に金属酸化物が蒸着された側を向けて設けられている。なお、本実施形態において、基材シート9は印刷用原反となっている。
〈プライマー層〉
プライマー層4は、基材3と基材シート9とを接着するために設けられる。本実施形態のプライマー層4は、シリカが混入されたウレタン樹脂層である。ただし、プライマー層4は、シリカが混入されたウレタン樹脂を材料とすることに限定されるものでなく、基材3の材料と、基材シート9に用いられるポリエチレン(PE:PolyEthylene)を主剤とした樹脂とを接着可能できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリカーボネート樹脂、公知の2液のウレタン変性ビニル樹脂からなる水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤及び湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤等が使用可能である。また、熱可塑性樹脂ホットメルト接着剤も使用可能である。
接着剤の塗布量は、乾燥後の重さが3g/m2〜20g/m2程度が接着性の観点から好適である。
本実施形態の蒸着フィルム層5は、PETフィルム52の表面に酸化珪素、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウム等のうち、例えばシリコン酸化物を蒸着してSiO2層51を設けることによって形成される。PETフィルム52は、前記したように、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる高分子フィルムである。SiO2層51は、シリコン酸化物を真空中で気化させてPETフィルム52上に付着させたものである。本実施形態では、PETフィルム52の厚さを12μm、SiO2層51の厚さを100nmとした。
SiO2層51の形成は、物理的蒸着方法(PVD: Physical Vapor Deposition)または化学的蒸着方法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって行われる。SiO2層51は、PVD法によっても、CVD法によっても同等の透明性やバリヤー性を得ることができる。
SiO2の蒸着は、減圧されたチャンバー内で行われる。チャンバー内には、SiO2の蒸発源と、陽極とが互いに対向するように設置されていて、陽極の側にはPETフィルムが巻き回されたドラムが配置される。ドラムの周面は冷却されている。蒸発したSiO2は陽極によってドラムの側に引き寄せられる。陽極に引き寄せられたSiO2がPETフィルム上に堆積してSiO2層51を形成する。
なお、本実施形態は、蒸着フィルム層5の金属酸化物として、SiO2を使用することに限定されるものでなく、例えば、酸化珪素、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウム等のうち、SiOやアルミナAl2O3等、公知の金属酸化膜を適用することができる。
本実施形態の接着剤層7は、上記した蒸着フィルム層5と基材シート9とを接着するために設けられる。本実施形態では、接着剤層7をウレタン樹脂からなる接着剤を乾燥後の塗布量が5.5g/m2となるようにPETフィルム52上に塗布することによって形成する。ウレタン樹脂からなる接着剤としては、例えば、2液ウレタン樹脂接着剤等を用いることができる。ただし、本実施形態は、接着剤層7の接着剤として、基材シート9と蒸着フィルム層5とを接着することができるものであれば特に限定されるものではない。
基材シート9は、化粧シート2の耐キャスター性を高める、あるいは巻取り適正を高めるために設けられる。本実施形態の基材シート9には、ポリエチレンを主剤とするシート状の樹脂が用いられる。基材シート9は、ポリエチレンを主剤とする樹脂に顔料等の着色剤が添加されることによって基材シートとなる。また、基材シート9では、主剤に対し、着色剤の他にも適宜無機フィラー、滑剤、熱可塑性エラストマー、相溶化剤等を添加することができる。
絵柄層11は、所望の絵柄の意匠を付与するために設けられるものである。本実施形態では、絵柄層11を、ウレタン樹脂、塩酢ビニル樹脂及び顔料111によって形成した。絵柄層11の絵柄は、特に限定されるものではなく、例えば木目柄、石目柄、布目柄、砂目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号、あるいはそれらの組み合わせ等が考えられる。また、絵柄層11の色彩は特に限定されるものではない。
なお、絵柄層11は、印刷インキを使った印刷によって設けることが可能である。印刷インキ等の種類は特に限定されず、化粧シート用として公知の印刷インキを使用することができる。具体的には、例えば、上記したウレタン樹脂の他、ブチラール系、アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系、ポリアミド系等のバインダー樹脂に、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加し、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整したものがインキとして使用できる。
アンカーコート層13は、化粧シートの用途により必要に応じて設けられる層である。本実施形態は、ウレタン樹脂を乾いた状態で1.2g/m2になるように塗布することによってアンカー層13を形成する。アンカーコート層13は、形成の目的に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤及び充填剤等の公知の添加剤の1種以上が添加されていてもよい。
透明熱可塑性樹脂層15は、基材シート9と共に化粧材1とした際の表面の各種耐性と、基材3に貼り合わされる以前の化粧シート2としての巻き取り適性とを高めるために設けられる。本実施形態の透明熱可塑性樹脂層15は、ポリオレフィン系樹脂を主剤とするものであり、用いるポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン樹脂を用いている。透明熱可塑性樹脂層15の厚さは80μmである。
透明熱可塑性樹脂層15の膜厚は、80μmに限定されるものではなく、表面の耐性や巻取り適正の観点から50〜100μmが望ましい。また、透明熱可塑性樹脂層15には、表面に木目の導管等の凹部(図字せず)を施してもよい。
表面保護層17は、化粧材1の表面耐性を向上させるために適宜設けられる。本実施形態は、表面保護層17を、第1表面保護層171及び第2表面保護層172を含む二層構造とした。第1表面保護層171及び第2表面保護層172は、共にウレタン樹脂を乾いた状態で3g/m2となるように塗布して形成されている。ただし、本実施形態は、表面保護層を二層にすることに限定されるものではなく、表面保護層を単層にしてもよい。
表面保護層17に用いられる樹脂としては、紫外線硬化型樹脂や2液ウレタン系樹脂が好適に用いられ、これらにすべり性を考慮して公知の紫外線吸収剤、光安定剤、ガラスビーズ等を適宜添加してよい。
また、本実施形態の化粧シート2には、適宜、その表面にエンボスロールによるエンボス加工等、凹凸模様(図示せず)を付与してもよい。またその凹部に着色樹脂を充填するワイピング処理等を行ってもよい。
本実施形態の化粧材1は、以上説明した化粧シート2を基材3に貼り付けて構成される。以下、本実施形態の化粧材1を貼り付ける基材3を説明する。
〈基材〉
上記した化粧シート2が貼り付けられる基材3としては、南洋材合板、針葉樹合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、日本農林規格に規定される普通合板が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。厚みは3〜25mm程度が好適である。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を上記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
以上説明した本実施形態は、薄いPETフィルムにSiO2の薄膜を蒸着した蒸着フィルム層5によって基材3からのβ−カリオフィレンの拡散を防ぐことができる。このため、β−カリオフィレンのバリア層を薄くすることができ、化粧シート2全体、ひいては化粧材1の厚さを薄型化することができる。
次に、本発明の実施例1を説明する。なお、実施例1の化粧シートは、図1に示した構成と同様の構成を有している。このため、実施例1の化粧シートの図示を省く。実施例1の化粧シートは、シリカを加えたウレタン樹脂製のプライマー層、プライマー層上に設けられた蒸着フィルム層、蒸着フィルム層上に接着剤層を介して貼り付けられた基材シートを有している。さらに、実施例1の化粧シートは、基材シート上に印刷によって形成された絵柄層、絵柄層上に塗布されたアンカーコート層、アンカーコート層上に形成された透明熱可塑性樹脂層及び透明熱可塑性樹脂層上に形成された二層の表面保護層を有している。実施例1の化粧シートは、基材に貼り合わされて化粧材となる。基材は厚さが25mmのパーティクルボードである。
〈比較例1〉
図2は、比較例1の化粧シートを説明するための図である。比較例1の化粧シート20は、プライマー層40、ポリブチレンテレフタレート(PBT:PolyButylene Terephthalate)樹脂製のバッカー層60、接着剤層81及びプライマー層82、基材シート90、絵柄層110、透明熱可塑性樹脂層150、表面保護層170を有している。化粧シート20は、基材30に貼り合わされて化粧材10となる。基材30は厚さが25mmのパーティクルボードである。
このような比較例1の化粧シート20は、現行実用化されている化粧シートであり、化粧シートとして要求される条件を全て満たしている。
図3は、比較例2の化粧シートを説明するための図である。図3において、図1に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、説明を一部略すものとする。比較例2の化粧シート21は、プライマー層4、基材シート91、絵柄層11、アンカーコート層13、透明熱可塑性樹脂層15及び表面保護層17を有している。基材シート91の厚さは70μmであって、基材シート9の厚さは55μmである。このような比較例2の化粧シート21は、図1に示した本実施形態の化粧シート2の基材シートを着色されたポリエチレン樹脂にし、かつ厚さを55μmから70μmにしたものである。化粧シート21は、基材3に貼り付けられて化粧材100になる。
このような比較例2の化粧シート21は、図1に示した本実施形態の化粧シート2から蒸着フィルム5を除き、基材シートの厚さを55μmから70μmにしたものである。
以下、実施例1、比較例1及び比較例2の化粧シートの試験を行い、実施例1の化粧シートの効果を確認した。以下、試験の結果について説明する。
〈β−カリオフィレンの透過性〉
本発明の発明者らは、実施例1の化粧シートと、比較例1の化粧シート20及び比較例2の化粧シート21についてβ−カリオフィレンの透過性を比較した。
表1の二行目は、実施例1の化粧シートと化粧シート20及び化粧シート21とのβ−カリオフィレンの透過量を計測した結果を示している。
なお、上記の透過性の比較は、次のように行った。即ち、本発明の発明者らは、開口部の直径が182mmのガラス製容器にβ−カリオフィレンを5ml滴下し、ガラス製容器の開口部を上記した透過性の測定対象となる化粧シートで密閉した。そして、このような状態の化粧シートを60℃の環境下で24時間放置し、放置の前後で重量を測定し、重量の増加分をβ−カリオフィレンの単位面積(m2)当たりの透過量に変換した。本試験においては、放置の前後で化粧シートの重量の変化が大きいものほどβ‐カリオフィレンの透過量が大きいことを示す。
また、本発明の発明者らは、実施例1の化粧シートが化粧シートとして要求される他の条件についても試験を行い、いずれの条件についても実用に適するとの結果を得た。具体的には、実施例1の化粧材シートは、水蒸気透過量が0.3g/m2・24h、酸素透過量が0.2g/m2・24hであった。このような結果から、実施例1の化粧シートは、蒸着フィルム層によって高いバリア性を有することが分かる。
また、実施例1は、蒸着フィルムによって基材から化粧シートへのβ−カリオフィレンの拡散を防いでいる。このため、実施例1は、比較例1のようにバッカー層を設けるよりも化粧シート全体の厚さを薄くすることができる。さらに、蒸着フィルムに係るコストはバッカー層を設けることに係るコストよりも低いため、実施例1は、化粧シート及び化粧材のコストの上昇を抑えることができる。
2,20,21 化粧シート
3,30 基材
4,40,82 プライマー層
5 蒸着フィルム
7 接着剤層
9,90 基材シート
10 化粧材
11,110 絵柄層
13 アンカーコート層
15,150 透明熱可塑性樹脂層
17,170 表面保護層
52 PETフィルム
51 SiO2層
60 バッカー層
81 接着剤層
111 顔料
171 第1表面保護層
172 第2表面保護層
Claims (4)
- 樹脂製の基材シートの一方の面側に絵柄層と透明熱可塑性樹脂層とがこの順に形成され、
前記基材シートの他方の面側にプライマー層が形成され、
前記基材シートと前記プライマー層との間に、金属酸化物が蒸着された熱可塑性樹脂フィルムである蒸着フィルム層を有することを特徴とする化粧シート。 - 前記金属酸化物は、酸化珪素、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
- 前記蒸着フィルム層における前記金属酸化物の蒸着は、物理蒸着または化学蒸着によって行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化粧シートを木質系の基材に貼り合わせてなることを特徴とする化粧材。
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