(第1実施形態)
以下、図1〜図7を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第1実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、鍵盤装置1を備えている。この鍵盤装置1は、楽器ケース(図示せず)内に組み込まれるものである。この鍵盤装置1は、並列に配列された複数の鍵2と、これら複数の鍵2の押鍵操作に応じて各鍵2それぞれにアクション荷重を付与するアクション機構3と、を備えている。
複数の鍵2は、図1および図2に示すように、白鍵2aおよび黒鍵2bを有し、これら白鍵2aおよび黒鍵2bが例えば88個並列に配列されている。これら複数の鍵2は、その前後方向(図2では左右方向)におけるほぼ中間部がそれぞれバランスピン4a、4bによって上下方向に回転可能に支持され、この状態でベース板5上に並列に配列されている。すなわち、白鍵2aと黒鍵2bとは、その前後方向の長さが異なり、白鍵2aの長さが黒鍵2bの長さよりも長く形成されている。
これに伴って、ベース板5上には、図2に示すように、複数の鍵2の各前端部(図2では右端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接するクッション材6a、6bが鍵2の配列方向に沿って設けられている。また、このベース板5上には、複数の鍵2の各後端部(図2では左端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接するクッション材7が鍵2の配列方向に沿って設けられている。
これにより、複数の鍵2は、図2に示すように、前部側のクッション材6a、6bと後部側のクッション材7とによって、各鍵ストロークが設定されている。さらに、このベース板5上には、複数の鍵2がその配列方向に横振れするのを防ぐためのガイドピン8a、8bがそれぞれ起立して設けられている。
アクション機構3は、図2および図3に示すように、複数の鍵2の押鍵操作に応じてそれぞれ上下方向に回転する複数の伝達部材10と、これら複数の伝達部材10の各回転動作に応じてそれぞれ上下方向に回転して複数の鍵2それぞれにアクション荷重を付与する複数のハンマー部材11と、を備えている。
この場合、複数の鍵2は、図2に示すように、複数の伝達部材10の各重量によって、バランスピン4a、4bを中心に反時計回りに回転して、各鍵2の前端部(図2では右端部)が初期位置に押し上げられることにより、各鍵2それぞれに初期荷重が付与されるように構成されている。
また、このアクション機構3は、図2〜図5に示すように、複数の伝達部材10それぞれを回転自在に保持する複数の伝達保持部材12と、複数のハンマー部材11それぞれを回転自在に保持する複数のハンマー保持部材13と、を備えている。複数の伝達保持部材12は、鍵2の配列方向に沿って配置された伝達支持レール14上に取り付けられている。
複数のハンマー保持部材13は、図2〜図5に示すように、鍵2の配列方向に沿って配置されたハンマー支持レール15上に取り付けられている。これら伝達支持レール14およびハンマー支持レール15は、複数の支持部材16に支持された状態で、複数の鍵2の上方に配置されている。
複数の支持部材16は、図1〜図5に示すように、鍵2の配列方向の全長における予め定められた複数個所にそれぞれ位置した状態で、ベース板5上に起立して取り付けられている。この場合、複数の鍵2は、全体で例えば88個配列されている。これに応じて、複数の支持部材16は、複数の鍵2の配列方向における両端部と、例えば20個の鍵2ごとに位置する3箇所の各鍵2間と、の複数個所に配置されている。すなわち、この実施形態では、支持部材16が鍵2の配列方向の全長における5箇所に配置されている。
この支持部材16は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2〜図5に示すように、ベース板5上に取り付けられる支持取付部16aと、この支持取付部16a上に一体に形成されたブリッジ部16bと、を有している。これにより、支持部材16は、支持取付部16aがベース板5上に取り付けられることにより、ブリッジ部16bが鍵2の上方に突出した状態で、複数の鍵2の後部間に配置されるように構成されている。
この場合、ブリッジ部16bの後端下部、つまり支持取付部16aの後側上部(図2では左側上部)には、図2〜図5に示すように、伝達支持レール14を支持する後側レール支持部16cが設けられている。また、ブリッジ部16bの前側上部(図2では右側上部)には、ハンマー支持レール15を支持する前側レール支持部16dが設けられている。また、ブリッジ部16bの後側上部(図2では左側上部)には、ストッパレール支持部16eが設けられている。さらに、ブリッジ部16bの上部には、基板レール支持部16fが設けられている。
伝達支持レール14は、図2〜図5に示すように、帯板の両側部をその長手方向に沿って下側に向けて折り曲げた形状に形成され、複数の鍵2の配列方向の全長に亘る長さで形成されている。この伝達支持レール14は、鍵2の配列方向における所定箇所が複数の支持部材16の各後側レール支持部16c上に取り付けられるように構成されている。
この伝達支持レール14上には、図2〜図5に示すように、複数の伝達保持部材12が鍵2の配列方向に沿って取り付けられていると共に、複数のストッパ支持部17が複数の支持部材16に対応して取り付けられている。この場合、複数のストッパ支持部17は、金属板からなり、複数の支持部材16に対応する伝達支持レール14上の5箇所に、複数の伝達保持部材12の上方に突出した状態で取り付けられている。
伝達保持部材12は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2〜図5に示すように、伝達支持レール14上に取り付けられる伝達保持本体部18と、複数の伝達部材10それぞれが回転自在に取り付けられる複数の軸支持部19と、を有している。複数の軸支持部19は、伝達保持本体部18に例えば10個程度の各鍵2に対応した状態で鍵2の配列方向に沿って一体に形成されている。
この軸支持部19は、図2〜図5に示すように、伝達保持本体部18の後端部(図2では左端部)に各鍵2と対応して形成された一対のガイド壁と、これら一対のガイド壁間に形成された伝達保持軸20と、を有している。一対のガイド壁は、伝達部材10の後述する伝達嵌合部22を両側から摺動可能に挟んだ状態で、伝達部材10の伝達嵌合部22を回転可能にガイドするガイド部を構成している。
伝達部材10は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2〜図5に示すように、鍵2の押鍵操作に応じて上下方向に回転してハンマー部材11を上下方向に回転させる伝達本体部21と、この伝達本体部21に一体に形成されて伝達保持部材12の伝達保持軸20に回転自在に取り付けられる伝達嵌合部22と、を有している。
伝達本体部21は、図2〜図5に示すように、ワッフル形状に形成されている。すなわち、この伝達本体部21は、厚みの薄い縦板部21aと、この縦板部21aの外周部および両側面に格子状に形成された複数のリブ部21bと、を有し、これらがワッフル形状に形成されている。この場合、伝達本体部21は、縦板部21aの形状および複数のリブ部21bの形成密度によって、伝達部材10の重量が調整されるように構成されている。
伝達嵌合部22は、図2〜図5に示すように、全体が逆C字形状に形成され、伝達本体部21の後端部に後方に突出して形成されている。すなわち、この伝達嵌合部22は、鍵2の配列方向の厚みが軸支持部19の一対のガイド壁間に設けられた伝達保持軸20とほぼ同じ長さに形成されて、一対のガイド壁間に摺動可能に挿入されるように構成されている。
また、この伝達嵌合部22は、図2〜図5に示すように、その中心部に伝達保持部材12の伝達保持軸20が嵌合する嵌合孔22aが形成され、この嵌合孔22aの周囲における一部、つまり嵌合孔22aの周囲における後部に伝達保持軸20が挿脱可能に挿入する挿入口22bが形成された構成になっている。これにより、この伝達嵌合部22は、挿入口22bを通して伝達保持軸20が嵌合孔22aに挿入することにより、伝達保持軸20に回転可能に取り付けられるように構成されている。
ところで、伝達本体部21の前端下部には、図2〜図5に示すように、伝達フェルト23が設けられている。この伝達フェルト23は、鍵2の後側上部に設けられたキャプスタン24が下側から当接するように構成されている。これにより、伝達部材10は、鍵2が押鍵された際に、伝達フェルト23に下側から当接する鍵2のキャプスタン24によって押し上げられて、伝達保持軸20を中心に反時計回りに回転するように構成されている。
この場合、伝達部材10の伝達本体部21は、図2〜図5に示すように、その前端上部が後端上部よりも高く形成され、これにより上辺部が後部下がり(図2では左下がり)に傾斜するように形成されている。この伝達本体部21の前端上部には、連動支持部22dが上方に向けて突出して設けられている。
すなわち、この連動支持部22dは、図3〜図5に示すように、後述するハンマー部材11に当接することなく、ハンマー部材11の側面に沿って上下方向に移動するように構成されている。また、この連動支持部22dの側面には、後述する連動制御部31の連動突起部32が設けられている。
一方、ハンマー支持レール15は、図1〜図5に示すように、伝達支持レール14と同様、帯板の両側部をその長手方向に沿って下側に向けて折り曲げた形状に形成され、複数の鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。このハンマー支持レール15は、鍵2の配列方向における所定箇所が複数の支持部材16の各前側レール支持部16d上に取り付けられるように構成されている。このハンマー支持レール15上には、複数のハンマー保持部材13が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。
ハンマー保持部材13は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2〜図5に示すように、上方が開放されたほぼ箱形状のレール状をなす取付本体部25と、この取付本体部25の後端部に鍵2の配列方向に沿って一体に形成された複数の軸支持部26と、を有している。これら複数の軸支持部26は、例えば10個程度の各鍵2に対した状態で鍵2の配列方向に沿って配列されている。この軸支持部26は、ハンマー部材11が回転自在に取り付けられて、ハンマー部材11の横振れを防ぐように構成されている。
すなわち、このハンマー保持部材13の軸支持部26は、図2〜図5に示すように、取付本体部25の後端部(図2では左端部)に各伝達部材10と対応して形成された一対のガイド壁と、これら一対のガイド壁間に形成されたハンマー保持軸27と、を有している。一対のガイド壁は、ハンマー部材11の後述するハンマー嵌合部28を両側から摺動可能に挟んだ状態で、ハンマー部材11のハンマー嵌合部28を回転可能にガイドするガイド部を構成している。
ハンマー部材11は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、図2〜図5に示すように、回転中心部であるハンマー嵌合部28と、予め定められた重量を有するハンマー部29と、ハンマー嵌合部28とハンマー部29とを連結するハンマーアーム30とを備え、これらが一体に形成された構成になっている。
ハンマー部29は、図2〜図5に示すように、杓子形状の縦板部29aを有し、その外周部およびその両側面に複数のリブ部29bが一体に形成された構成になっている。この場合、ハンマー部29は、杓子形状の縦板部29aの形状および複数のリブ部29bの形成密度によって、重量が調整されるように構成されている。
ハンマー嵌合部28は、図2〜図5に示すように、伝達嵌合部22と同様、全体がC字形状に形成され、ハンマーアーム30の前端部に前方に突出して形成されている。すなわち、このハンマー嵌合部28は、鍵2の配列方向の厚みが軸支持部26の一対のガイド壁間に設けられたハンマー保持軸27とほぼ同じ長さに形成されて、一対のガイド壁間に摺動可能に挿入されるように構成されている。
また、このハンマー嵌合部28は、図2〜図5に示すように、その中心にハンマー保持部材13のハンマー保持軸27が嵌合する嵌合孔28aが形成され、この嵌合孔28aの周囲における一部、つまり嵌合孔28aの周囲における前部にハンマー保持軸27が挿脱可能に挿入する挿入口28bが形成された構成になっている。これにより、このハンマー嵌合部28は、挿入口28bを通してハンマー保持軸27が嵌合孔28aに挿入することにより、ハンマー保持軸27に回転可能に取り付けられるように構成されている。
ハンマーアーム30は、図2〜図5に示すように、前後方向の長さが伝達部材10とほぼ同じ長さの横板部30aを有し、この横板部30aの上下辺部および両側面に複数の補強リブ部30bが一体に形成された構成になっている。このハンマーアーム30の前端部には、ハンマー保持軸27に回転可能に取り付けられるハンマー嵌合部28が一体に形成されている。
また、ハンマーアーム30の前端下部には、図2〜図5に示すように、連動取付部30cが下方に向けて突出して設けられている。すなわち、この連動取付部30cは、伝達部材10の連動支持部22dの側面に対面し、この状態で連動支持部22dの側面に沿って上下方向に移動するように構成されている。また、この連動取付部30cには、後述する連動制御部31の連動突起部32をガイドするガイド孔33が設けられている。
すなわち、連動制御部31は、図2〜図5に示すように、伝達部材10の連動支持部22dに設けられた連動突起部32と、ハンマー部材11の連動取付部30cに設けられて連動突起部32をガイドするガイド孔33と、を有している。これにより、連動制御部31は、押鍵操作された鍵2に対応する伝達部材10の回転動作に伴うハンマー部材11の回転動作を、ガイド孔33に対する連動突起部32の相対的な動作によって制御するように構成されている。
この場合、連動突起部32は、図2〜図5に示すように、丸棒状の突起本体32aと、この突起本体32aの外周に設けられた円筒状の緩衝部32bと、を備えている。突起本体32aは、伝達部材10の伝達本体部21に設けられた連動支持部22dの前端上部に、鍵2の配列方向に向けて突出した状態で、一体に形成されている。
この突起本体32aは、図2〜図5に示すように、ハンマー部材11の連動取付部30cに設けられたガイド孔33に緩衝部32bと共に移動可能に挿入するように構成されている。緩衝部32bは、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの弾力性を有する合成樹脂からなり、ほぼ円筒状に形成され、ガイド孔33の内周面に接触して摺動するように構成されている。
一方、連動制御部31のガイド孔33は、図2〜図5に示すように、連動突起部32が移動可能に挿入する長孔であり、ハンマー部材11のハンマーアーム30の前端下部に設けられた連動取付部30cに設けられている。このガイド孔33は、伝達部材10が伝達保持軸20を中心に回転動作し、かつハンマー部材11がハンマー保持軸27を中心に回転動作する際における、連動突起部32の相対的な動作軌跡(つまり移動軌跡)に沿って長く形成された長孔である。
すなわち、このガイド孔33は、図2〜図5に示すように、その長手方向の中心線が、後下がり(図3では左下がり)に傾斜して設けられている。また、このガイド孔33は、その長手方向と直交する方向の長さ(孔幅)が、連動突起部32の外径つまり緩衝部32bの外径とほぼ同じ大きさで、その長手方向の長さが連動突起部32の外径の1.5倍〜2倍程度の長さに形成されている。
この場合、ガイド孔33は、図2〜図5に示すように、その内部に連動突起部32が挿入された状態で移動する際に、ガイド孔33の内周面に連動突起部32の緩衝部32bが弾力的に接触して移動することにより、ハンマー部材11の連動取付部30cが伝達部材10の連動支持部22dに直接接触しないように構成されている。
これにより、連動制御部31は、図2〜図5に示すように、押鍵操作された鍵2に対応する伝達部材10が回転動作し、この伝達部材10の回転動作に伴ってハンマー部材11を連動させて回転動作させる際に、そのハンマー部材11の回転動作を、ガイド孔33に対する連動突起部32の相対的な動作によって制御するように構成されている。
すなわち、この連動制御部31は、図3〜図5に示すように、鍵2が押鍵操作されて伝達部材10が伝達保持軸20を中心に反時計回りに回転する際に、伝達部材10の回転に伴って連動突起部32がガイド孔33の前端上部に当接してガイド孔33の前端上部を押し上げることにより、ハンマー保持軸27を中心にハンマー部材11を時計回りに回転させるように構成されている。
また、この連動制御部31は、図3〜図5に示すように、ハンマー部材11が押し上げられる際に、連動突起部32がガイド孔33に沿って移動可能な状態になることにより、伝達部材10の回転速度とハンマー部材11の回転速度とが同じであっても、また異なっていても、伝達部材10とハンマー部材11とを連動させて回転動作させるように構成されている。
また、この連動制御部31は、図5に示すように、押鍵操作された鍵2が初期位置に戻る際に、連動突起部32がガイド孔33に対して相対的に移動可能な状態であることにより、伝達部材10がその自重によって伝達保持軸20を中心に時計回りに回転すると共に、ハンマー部材11がその自重によってハンマー保持軸27を中心に反時計回りに回転するように構成されている。
さらに、この連動制御部31は、図2および図3に示すように、伝達部材10およびハンマー部材11が初期位置に戻った際に、連動突起部32がガイド孔33の前端上部に向けて移動することにより、連動突起部32がガイド孔33の前端上部に当接または接近するように構成されている。
ところで、ハンマー部材11は、図2〜図5に示すように、そのハンマーアーム30後端下部が下限ストッパ35に上方から当接することにより、初期位置である下限位置に規制されるように構成されている。すなわち、この下限ストッパ35は、伝達支持レール14上に設けられた複数のストッパ支持部17に支持された下限ストッパレール36上に取り付けられている。
これにより、ハンマー部材11は、図2〜図5に示すように、その自重でハンマー保持軸27を中心に反時計回りに回転した際に、ハンマーアーム30の後端下部が下限ストッパ35に上方から当接することにより、後部下がりに傾斜した状態で、初期位置に位置規制されるように構成されている。
また、このハンマー部材11は、図5に示すように、鍵2が押鍵操作された際に、ハンマーアーム30の後端上部が上限ストッパ37に下方から当接することにより、上限位置が規制されるように構成されている。この場合、上限ストッパ37は、複数の支持部材16の各ストッパレール支持部16eに取り付けられた上限ストッパレール38の下面に取り付けられている。
これにより、ハンマー部材11は、図5に示すように、ハンマーアーム30がハンマー保持部材13のハンマー保持軸27を中心に時計回りに回転した際に、ハンマーアーム30の後端上部が上限ストッパ37に下方から当接することにより、上限位置が規制されるように構成されている。
さらに、ハンマーアーム30の前端上部には、図1〜図5に示すように、スイッチ押圧部39が形成されている。このハンマーアーム30のスイッチ押圧部39に対応する上方には、スイッチ基板40が一対の基板支持レール41によって配置されている。これら一対の基板支持レール41は、それぞれ断面がL字形状に形成された長板であり、鍵2の配列方向の全長に亘る長さに形成されている。
これら一対の基板支持レール41は、図1〜図5に示すように、その各水平部が複数の支持部材16の各基板レール支持部16f上に所定間隔離れた状態で取り付けられている。スイッチ基板40は、図1に示すように、複数に分割されている。すなわち、この実施形態では、スイッチ基板40が例えば4つに分割されて20個程度の各鍵2に対応する長さで、一対の基板支持レール41上に取り付けられている。
これらスイッチ基板40の下面には、図2〜図5に示すように、ゴムスイッチ42がそれぞれ設けられている。このゴムスイッチ42は、鍵2の配列方向に長いゴムシートに逆ドーム状の膨出部42aが複数のハンマーアーム30にそれぞれ対応して形成された構成になっている。この膨出部42aの内部には、スイッチ基板40の下面に設けられた複数の固定接点(図示せず)に接離可能に接触する複数の可動接点42bがハンマーアーム30の前後方向に沿って設けられている。
これにより、ゴムスイッチ42は、図2〜図5に示すように、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸27を中心に時計回りに回転して、ハンマーアーム30のスイッチ押圧部39によって下側から押圧された際に、逆ドーム状の膨出部42aが弾性変形して、複数の可動接点42bが時間をもって順次、複数の固定接点に接触するように構成されている。
また、音源部(図示せず)は、スイッチ基板40上に設けられ、図5に示すように、鍵2の押鍵強さに応じて出力されたゴムスイッチ42のスイッチ信号に応答して楽音を生成し、この楽音信号に基づいてスピーカ(図示せず)から楽音を放音させるように構成されている。
ところで、この鍵盤装置1のアクション機構3は、図3〜図6に示すように、ハンマー部材11が上限位置に到達す前に、押鍵操作されている鍵2に対応する伝達部材10に弾性変形によるクリック感を発生させ、このクリック感を、レットオフ感として押鍵操作されている鍵2を介してユーザに付与するクリック感付与部材45を備えている。
このクリック感付与部材45は、図3〜図6に示すように、アクション機構3における複数の支持部材16に取り付けられて伝達部材10の配列方向に沿って配置された支持レール部46に設けられた弾性変形部47と、伝達部材10の伝達本体部21に設けられて伝達部材10の回転動作に応じて弾性変形部47を弾性変形させる押圧部48と、を備えている。
この場合、支持レール部46は、図3〜図6に示すように、ハンマー支持レール15の後端部に一体に形成され、複数の支持部材16に設けられた各クリックレール支持部16gに支持された状態で、鍵2の配列方向の全長に亘って配置されるように構成されている。すなわち、支持部材16のクリックレール支持部16gは、ハンマーレール支持部16dの後部側に一段低く窪んだ形状で形成されている。
支持レール部46は、図3〜図6に示すように、ハンマー支持レール15の後端部における下部から後方に向けて取付部46aが水平に延び、この取付部46aの後端部が上方に向けて折り曲げられた構成になっている。これにより、支持レール部46は、その取付部46aが支持部材16のクリックレール支持部16g内に配置されて、伝達本体部21の前端部に接近した状態で、クリックレール支持部16gに取り付けられるように構成されている。
弾性変形部47は、図2〜図6に示すように、支持レール部46の取付部46aの下面に伝達部材10の配列方向に沿って取り付けられる弾性取付部49と、この弾性取付部49に一体に形成されて複数の伝達部材10それぞれに対応した状態で下側に向けて突出する弾性フック部50と、を有している。弾性取付部49は、ゴムシートなどの弾力を有する帯状のシートであり、支持レール部46の取付部46aの下面に伝達部材10の配列方向に沿って取り付けられている。
弾性フック部50は、図6(a)〜図6(c)に示すように、鍵2の前後方向に向けて弾性変形する変形支持部50aと、この変形支持部50aの下部に設けられて伝達部材10の押圧部48が当接する変形当接部50bと、を有し、これらがフック形状に形成されている。すなわち、変形当接部50bは、変形支持部50aの下部から伝達本体部21の前端面に向けて突出する突起部であり、その下面が前側から後側に向けて高くなる傾斜面に形成されている。
一方、押圧部48は、図6(a)〜図6(c)に示すように、伝達部材10の伝達本体部21の前端部から弾性フック部50の下側に向けて突出する当接突起部48aと、この当接突起部48aの下面に設けられた補強部48bと、を有し、これらが伝達本体部21に一体に形成されている。この押圧部48は、伝達部材10が伝達保持軸20を中心に上方に回転した際に、当接突起部48aが弾性フック部50に当接して弾性フック部50を弾性変形させるように構成されている。
すなわち、この押圧部48は、図6(a)〜図6(c)に示すように、伝達部材10が回転して、当接突起部48aが弾性フック部50の変形当接部50bの下面に当接すると、当接突起部48aの先端部が変形当接部50bの下面の傾斜面に沿って移動することにより、変形支持部50aを伝達本体部21から離れる方向(図6(b)では右方向)に弾性変形させて、当接突起部48aが弾性フック部50の変形当接部50bを乗り越えるように構成されている。
これにより、クリック感付与部材45は、図6(a)に示すように、鍵2の押鍵操作によって伝達部材10が押し上げられて伝達保持軸20を中心に回転して、ハンマー部材11が上限位置に到達する前に、伝達部材10の押圧部48の当接突起部48aが支持レール部46に設けられた弾性変形部47の変形突起部47bに下側か当接することにより、鍵荷重を重くするように構成されている。
また、このクリック感付与部材45は、図6(b)および図6(c)に示すように、押圧部48の当接突起部48aが弾性変形部47の変形突起部47bの下面に設けられた傾斜面に沿って移動する際に、当接突起部48aが変形支持部50aを伝達本体部21から離れる方向に弾性変形させ、この状態で当接突起部48aが弾性フック部50の変形当接部50bを乗り越えることにより、伝達部材10にクリック感を発生させて、鍵荷重が急激に軽くなるレットオフ感を鍵2に付与するように構成されている。
次に、このような電子鍵盤楽器の鍵盤装置1の作用について説明する。
この鍵盤装置1では、鍵2が押鍵操作されていない初期状態のときに、伝達部材10がその自重で伝達保持部材12の伝達保持軸20を中心に時計回りに回転して、伝達本体部21の下面に設けられた伝達フェルト23が鍵2のキャプスタン24に上方から当接する。
このときには、伝達部材10の重量、つまり伝達本体部21の縦板部22aの形状や厚みおよび複数のリブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量が鍵2のキャプスタン24に上方から加わる。これにより、鍵2が伝達部材10によって押されてバランスピン4a、4bを中心に反時計回りに回転し、鍵2の後端部がクッション材6a、6bに当接して、鍵2が初期位置に規制されると共に、伝達部材10も初期位置に規制されている。
また、このときには、ハンマー部材11がその自重でハンマー保持部材13のハンマー保持軸27を中心に反時計回りに回転して、ハンマーアーム30が下限ストッパ35に当接して下限位置に位置規制されている。この状態では、ハンマー部材11のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40のゴムスイッチ42から下側に離れた位置に配置される。このため、ゴムスイッチ42は、その膨出部42aが膨張した自然状態になり、複数の可動接点42bが固定接点(図示せず)から離れることにより、オフ状態になっている。
次に、このような状態の鍵2を押鍵操作して演奏する場合について説明する。
この場合には、鍵2が押鍵操されると、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に図2において時計回りに回転し、鍵2のキャプスタン24が伝達部材10を押し上げる。このときには、伝達部材10の重量である伝達本体部21の縦板部22aの形状や厚みおよび複数のリブ部22b、22cの形成密度によって設定されている重量が、鍵2に初期荷重として付与される。
これにより、伝達部材10がその自重に抗して伝達保持部材12の伝達保持軸20を中心に図2において反時計回りに回転する。すると、伝達部材10の回転動作が連動制御部31によってハンマー部材11に伝達され、ハンマー部材11がその自重に抗して押上げられる。すなわち、伝達部材10が図2において反時計回りに回転すると、この伝達部材10の回転に伴って連動突起部32がガイド孔33の前端上部に当接してガイド孔33の前端上部を押し上げる。
これにより、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸27を中心に図2において時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。すなわち、ハンマー部材11がハンマー保持軸27を中心に図2において時計回りに回転する際には、ハンマー部材11の慣性モーメントによって鍵2にアクション荷重が付与される。この場合、ハンマーアーム30は、図2に示すように、鍵2の前後方向の長さが伝達部材10とほぼ同じ長さに形成され、このハンマーアーム30の後端部にハンマー部29が形成されている。
この状態で、ハンマーアーム30のハンマー嵌合部28がハンマー保持軸27に回転可能に取り付けられているので、ハンマー部材11がハンマー保持軸27を中心に時計回りに回転する際には、ハンマー部材11に慣性モーメントが発生する。この慣性モーメントによる負荷が連動制御部31および伝達部材10を介して鍵2にアクション荷重として付与される。このときには、図7にF1で示すように、鍵荷重が急に重くなる。
このようにハンマー部材11がハンマー保持軸27を中心に時計回りに回転すると、図4に示すように、ハンマーアーム30のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42の逆ドーム状の膨出部42aを下側から押圧する。これにより、逆ドーム状の膨出部42aが弾性変形して、膨出部42a内の複数の可動接点42bが時間間隔を持って順次、複数の固定接点に接触する。
このときには、図7にF2で示すように、鍵荷重が再び重くなる。また、このときには、押鍵された鍵2に応じたスイッチ信号が音源部(図示せず)に供給され、この音源部で楽音データが生成され、この生成された楽音データに基づいて発音部としてのスピーカ(図示せず)から楽音を発生する。
そして、伝達部材10が伝達保持軸20を中心に更に回転すると、図4および図6に示すように、クリック感付与部材45によって押鍵操作されている鍵2を介してクリック感がユーザに付与される。すなわち、鍵2の押鍵操作によって伝達部材10が伝達保持軸20を中心に回転して、ハンマー部材11が上限位置に到達する前に、図6(a)に示すように、伝達部材10の押圧部48の当接突起部48aが支持レール部46に設けられた弾性変形部47の弾性フック部50に下側から当接する。
この状態で、伝達部材10が伝達保持軸20を中心に更に回転すると、図6(b)に示すように、クリック感付与部材45の押圧部48の当接突起部48aが弾性フック部50の変形当接部50bの下面に設けられた傾斜面に沿って移動しながら、変形支持部50aを伝達部材10から離れる方向に弾性変形させる。このため、図7にF3で示すように、鍵荷重が急に重くなる。
そして、図6(c)に示すように、当接突起部48aが弾性フック部50の変形当接部50bを乗り越えると、図7にF4で示すように、鍵荷重が急激に軽くなる。これにより、伝達部材10にクリック感が発生し、このクリック感によって鍵2に鍵荷重が急激に軽くなるレットオフ感が付与される。
この後、ハンマー部材11がハンマー保持軸27を中心に更に時計回りに回転すると、ハンマーアーム30が上限ストッパ37に下側から当接して、ハンマー部材11の回転が規制されて停止される。このときには、図7にF5で示すように、鍵荷重が再び急激に重くなる。これにより、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感が得られる。
そして、鍵2に対する押鍵操作が終了して、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作(復帰動作)を開始する際には、図7にF6で示すように、鍵荷重が急激に軽くなり、クリック感付与部材45の押圧部48が弾性変形部47の弾性フック部50に上側から当接すると、図7にF7で示すように、鍵荷重が少し緩やかに低下する。
この後、ハンマーアーム30のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42の膨出部42aの弾性復帰力によって押し下げられるので、図7にF8で示すように、鍵荷重が更に緩やかに低下する。この状態で、ハンマー部材11がハンマー保持軸27を中心に反時計回りに更に回転し、ハンマーアーム30のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40のゴムスイッチ42から下側に離れ、伝達部材10がその自重で鍵2を押し下げると、図7にF9で示すように、鍵荷重が急に低下し、鍵2が初期位置に戻る。
このように、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1によれば、複数の鍵2それぞれに対応して設けられたアクション機構3が、鍵2の押鍵操作に応じて回転する伝達部材10と、この伝達部材10の回転に応じて上下方向に回転することにより、押鍵操作されている鍵2に対してアクション荷重を付与するハンマー部材11と、伝達部材10の動作に応じて弾性変形によることによって押鍵操作された鍵2を介してクリック感を付与するクリック感付与部材45と、を備えていることにより、構造が簡単で、生産性が良く、かつアコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
すなわち、この鍵盤装置1では、押鍵操作された鍵2によって伝達部材10が回転し、この伝達部材10の回転によってハンマー部材11が上下方向に回転する際に、クリック感付与部材45が伝達部材10に弾性変形によるクリック感を発生させ、このクリック感をレットオフ感として押鍵操作されている鍵2を介してユーザに付与することができる。これにより、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができると共に、クリック感付与部材45が伝達部材10に弾性変形によるクリック感を発生させる構成であるから、構造が簡単で、生産性が良く、低価格を図ることができる。
この場合、クリック感付与部材45は、伝達部材10の配列方向に沿って配置された支持レール部46に設けられた弾性変形部47と、伝達部材10それぞれに設けられて弾性変形部47を弾性変形させる押圧部48と、を備えていることにより、押圧部48を伝達部材10に一体に設けることができるので、弾性変形部47が設けられた支持レール部46を追加するだけで良いので、部品点数が少なく、構造が簡単で、生産性が良く、低価格を図ることができる。
また、このクリック感付与部材45は、支持レール部46がハンマー支持レール15に一体に形成されているので、ハンマー支持レール15を複数の支持部材16に取り付けて複数の鍵2の配列方向における全長に亘って配置する際に、これと同時に支持レール部46を鍵2の配列方向に沿って配置することができる。このため、支持レール部46を備えていても、部品点数が増えることがなく、組立作業の簡素化を図ることができ、より一層、生産性の向上を図ることができる。
さらに、このクリック感付与部材45の弾性変形部47は、押圧部48が当接して乗り越える際に弾性変形する弾性フック部50を備えていることにより、押圧部48が弾性変形部47の弾性フック部50に当接して弾性フック部50が弾性変形する際に、鍵荷重を急激に重くすることができ、押圧部48が弾性フック部50を弾性変形させて乗り越えた際に、鍵荷重を急激に軽くすることができ、これにより鍵2にレットオフ感を付与することができるので、より一層、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
すなわち、弾性変形部47は、支持レール部46の下面に伝達部材10の配列方向に沿って取り付けられる弾性取付部49と、この弾性取付部49に一体に形成されて伝達部材10それぞれに対応した状態で下側に向けて突出する弾性フック部50と、を有していることにより、伝達部材10それぞれに対応する弾性フック部50を有していても、弾性取付部49によって弾性フック部50を伝達部材10それぞれに対応させて組み付けることができるので、部品点数が少なく、構造が簡単で、生産性が良く、低価格を図ることができる。
また、この押圧部48は、伝達部材10の前端部から弾性フック部50の下側に向けて突出する当接突起部48aと、この当接突起部48aの下面に設けられた補強部48bと、を有し、これらが伝達本体部21に一体に形成されているので、弾性フック部50に対応する押圧部48を備えていても、部品点数が増加することがなく、構造が簡単で、生産性が良く、低価格を図ることができる。
さらに、このクリック感付与部材45は、弾性フック部50が、鍵2の前後方向に向けて弾性変形する変形支持部50aと、この変形支持部50aの下部に設けられて伝達部材10の押圧部48が当接する変形当接部50bと、を有し、押圧部48が弾性フック部50に当接して弾性フック部50が弾性変形する際に、鍵荷重を急激に重くすることができ、押圧部48が弾性フック部50を弾性変形させて乗り越えた際に、鍵荷重を急激に軽くすることができる。
この場合、クリック感付与部材45は、変形当接部50bが、変形支持部50aの下部から伝達部材10の前端面に向けて突出する突起部であり、その下面が前側から後側に向けて高くなる傾斜面に形成されているので、押圧部48が弾性変形部47の変形当接部50bに当接した際に、押圧部48の先端部を変形当接部50bの傾斜面に沿って移動させながら変形支持部50aを円滑にかつ良好に弾性変形させることができ、これにより鍵荷重を急激に重くすることができる。
また、このクリック感付与部材45では、押圧部48が弾性変形部47の変形支持部50aを弾性変形させた際に、押圧部48が弾性変形部47の変形当接部50bを容易に乗り越えることができるので、鍵荷重を急激に軽くすることができ、これにより鍵2にレットオフ感を付与することができるので、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
さらに、このクリック感付与部材45は、鍵2が押鍵操作されて伝達部材10がハンマー部材11を回転させた際に、その回転したハンマー部材11が上限位置に到達す前に、鍵2にクリック感を付与することにより、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似したタイミングで鍵2にクリック感を付与することができるので、これによっても、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
なお、上述した第1実施形態では、クリック感付与部材45の弾性変形部47を支持レール部46に設け、押圧部48を伝達部材10に設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えばクリック感付与部材45の弾性変形部47を伝達部材10それぞれに設け、押圧部48を伝達部材10それぞれに対応させた状態で支持レール部46に設けた構成であっても良い。
(第2実施形態)
次に、図8〜図11を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した第2実施形態について説明する。なお、図1〜図7に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1は、図8〜図10に示すように、クリック感付与部材55が第1実施形態と異なる構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
すなわち、このクリック感付与部材55は、図8〜図10に示すように、支持レール部46に設けられた弾性変形部56と、伝達部材10それぞれに設けられて弾性変形部56を弾性変形させる押圧部57とを備えている。このクリック感付与部材55は、ハンマー部材11が上限位置に到達す前に、押鍵操作されている鍵2に対応する伝達部材10に弾性変形によるクリック感を発生させ、このクリック感を押鍵操作されている鍵2を介してユーザに付与するように構成されている。
この場合、弾性変形部56は、図8〜図10に示すように、帯状のゴムシート56aにドーム部56bを膨出形成したものであり、ゴムシート56aが支持レール部46の取付部46aの下面に伝達部材10の配列方向に沿って取り付けられ、ドーム部56bが上下逆向きで伝達部材10それぞれに対応した状態で配置された構成になっている。ドーム部56bは、その下側から押圧された際に、弾性変形を開始し、その弾性変形が予め定められた弾性変形を越えると、急激に弾性変形(座屈変形)するように構成されている。
押圧部57は、第1実施形態と同様、伝達部材10の伝達本体部21の前端部からドーム部56bの下側に向けて突出する当接突起部57aと、この当接突起部57aの下面に設けられた補強部57bとを有し、これらが伝達本体部21に一体に形成されている。この押圧部57は、伝達部材10が伝達保持軸20を中心に上方に回転した際に、当接突起部57aが弾性変形部56のドーム部56bに当接してドーム部56bを弾性変形させるように構成されている。
これにより、クリック感付与部材55は、図8〜図11に示すように、鍵2の押鍵操作によって伝達部材10が押し上げられて伝達保持軸20を中心に回転して、ハンマー部材11が上限位置に到達する前に、伝達部材10の押圧部57の当接突起部57aが支持レール部46に設けられた弾性変形部56のドーム部56bに下側から当接することにより、鍵荷重を重くするように構成されている。
また、このクリック感付与部材55は、図8〜図11に示すように、押圧部57の当接突起部57aが弾性変形部56を押圧してドーム部56bを弾性変形させる際に、ドーム部56bが弾性変形を開始し、その弾性変形が予め定められた弾性変形を越えると、ドーム部56bが座屈するように急激に弾性変形することにより、伝達部材10にクリック感を発生させて、鍵荷重を急激に軽くし、鍵2を介してユーザにクリック感を付与するように構成されている。
次に、このような電子鍵盤楽器の鍵盤装置1の作用について説明する。
この鍵盤装置1では、鍵2が押鍵操作されていない初期状態で、鍵2が押鍵操されると、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に回転し、鍵2のキャプスタン24が伝達部材10を押し上げる。すると、伝達部材10がその自重に抗して伝達保持部材12の伝達保持軸20を中心に図6において反時計回りに回転し、この伝達部材10の回転動作が連動制御部31によってハンマー部材11に伝達され、ハンマー部材11がその自重に抗して押上げられる。
すなわち、伝達部材10が図8において反時計回りに回転すると、この伝達部材10の回転に伴って連動突起部32がガイド孔33の前端上部に当接してガイド孔33の前端上部を押し上げる。これにより、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸27を中心に図8において時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。このときには、ハンマー部材11の慣性モーメントによって鍵2にアクション荷重が付与されるので、第1実施形態と同様、鍵荷重が急に重くなる。
このようにハンマー部材11がハンマー保持軸27を中心に時計回りに回転すると、ハンマーアーム30のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42の逆ドーム状の膨出部42aを下側から押圧する。これにより、逆ドーム状の膨出部42aが弾性変形して、膨出部42a内の複数の可動接点42bが時間間隔を持って順次、複数の固定接点に接触する。
このときには、第1実施同様と同様、鍵荷重が再び重くなる。また、このときには、押鍵された鍵2に応じたスイッチ信号が音源部(図示せず)に供給され、この音源部で楽音データが生成され、この生成された楽音データに基づいて発音部としてのスピーカ(図示せず)から楽音を発生する。
そして、伝達部材10が伝達保持軸20を中心に更に回転すると、図9および図11に示すように、クリック感付与部材55によって押鍵操作されている鍵2にクリック感が付与される。すなわち、伝達部材10が回転して、ハンマー部材11が上限位置に到達する前に、図11(a)および図11(b)に示すように、伝達部材10の押圧部57の当接突起部57aが支持レール部46に設けられた弾性変形部56のドーム部56bに下側から当接する。これにより、ドーム部56bが弾性変形を開始するので、第1実施形態と同様、鍵荷重が急激に重くなる。
この状態で、伝達部材10が伝達保持軸20を中心に更に回転すると、図11(b)に示すように、クリック感付与部材55の押圧部57の当接突起部57aが弾性変形部56のドーム部56bを更に押圧して、ドーム部56bが予め定められた弾性変形を越えると、ドーム部56bが座屈するように急激に弾性変形する。これにより、鍵荷重が急激に軽くなり、第1実施形態と同様、鍵2にクリック感がレットオフ感として付与される。
この後、ハンマー部材11がハンマー保持軸27を中心に更に時計回りに回転すると、ハンマーアーム30が上限ストッパ37に下側から当接して、ハンマー部材11の回転が規制されて停止される。このときには、第1実施形態と同様、鍵荷重が再び急激に重くなる。これにより、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感が得られる。
そして、鍵2に対する押鍵操作が終了して、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作(復帰動作)を開始する際には、第1実施形態と同様、鍵荷重が急激に軽くなり、クリック感付与部材55の弾性変形部56が弾性復帰して押圧部57を押し下げると、鍵荷重が少し緩やかに低下する。この後、ハンマーアーム30のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40に設けられたゴムスイッチ42の膨出部42aの弾性復帰力によって押し下げられるので、第1実施形態と同様、鍵荷重が更に緩やかに低下する。
この状態で、ハンマー部材11がハンマー保持軸27を中心に反時計回りに更に回転し、ハンマーアーム30のスイッチ押圧部39がスイッチ基板40のゴムスイッチ42から下側に離れ、伝達部材10がその自重で鍵2を押し下げると、第1実施形態と同様、鍵荷重が急に低下し、鍵2が初期位置に戻る。
このように、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1によれば、鍵2が押鍵操作されて伝達部材10が回転し、この伝達部材10によってハンマー部材11が上下方向に回転する際に、クリック感付与部材55が伝達部材10に弾性変形によるクリック感を発生し、このクリック感をレットオフ感として押鍵操作されている鍵2に付与することができる。
これにより、この鍵盤装置1においても、第1実施形態と同様、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができると共に、クリック感付与部材55が伝達部材10に弾性変形によるクリック感を発生する構成であるから、構造が簡単で、生産性が良く、低価格を図ることができる。
この場合にも、クリック感付与部材55は、伝達部材10の配列方向に沿って配置された支持レール部46に設けられた弾性変形部56と、伝達部材10に設けられて弾性変形部56を弾性変形させる押圧部57と、を備えていることにより、この押圧部57を伝達部材10に一体に設けることができるので、第1実施形態と同様、弾性変形部56が設けられた支持レール部46を追加するだけで良いので、部品点数が少なく、構造が簡単で、生産性が良く、低価格を図ることができる。
また、このクリック感付与部材55の弾性変形部56は、支持レール部46の下面に伝達部材10の配列方向に沿って取り付けられるゴムシート56aと、このゴムシート56aに膨出形成されて伝達部材10それぞれに対応するドーム部56bと、を有していることにより、伝達部材10それぞれに対応するドーム部56bを有していても、ゴムシート56aによってドーム部56bを伝達部材10それぞれに対応させて組み付けることができるので、部品点数が少なく、構造が簡単で、生産性が良く、低価格を図ることができる。
この場合、弾性変形部56は、押圧部57がドーム部56bに当接してドーム部56bを押圧した際に、ドーム部56bが弾性変形を開始するので、鍵荷重を重くすることができ、ドーム部56bが更に押圧されて予め定められた弾性変形を越えると、ドーム部56bが急激に弾性変形することにより、鍵荷重を急激に軽くすることができ、これにより鍵2にレットオフ感を付与することができるので、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
さらに、このクリック感付与部材55は、鍵2が押鍵操作されて伝達部材10がハンマー部材11を回転させた際に、その回転したハンマー部材11が上限位置に到達す前に、鍵2にクリック感を付与することにより、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似したタイミングで鍵2にクリック感を付与することができるので、これによっても、アコ―スティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感を得ることができる。
なお、上述した第2実施形態では、クリック感付与部材55の弾性変形部56を支持レール部46に設け、押圧部57を伝達部材10に設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えばクリック感付与部材55の弾性変形部56を伝達部材10それぞれに設け、押圧部57を支持レール部46に伝達部材10それぞれに対応させて設けた構成であっても良い。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、複数の鍵と、前記複数の鍵それぞれに対応して設けられたアクション機構と、を備え、前記アクション機構は、前記鍵の押鍵操作に応じて動く伝達部材と、前記押鍵操作された鍵に対応する前記伝達部材の動作に応じて上下方向に動くことにより、前記押鍵操作されている鍵に対してアクション荷重を付与するハンマー部材と、前記伝達部材の動作に応じて弾性変形することによって前記押鍵操作された鍵を介してクリック感を付与するクリック感付与部材と、を備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤装置において、前記クリック感付与部材は、前記伝達部材の配列方向に沿って配置された支持レール部と前記伝達部材との一方に設けられた弾性変形部と、前記支持レール部と前記伝達部材との他方に設けられて、前記弾性変形部を弾性変形させる押圧部と、を備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の鍵盤装置において、前記弾性変形部は前記支持レール部に設けられ、前記押圧部は前記伝達部材に設けられていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の鍵盤装置において、前記弾性変形部は、前記押圧部が当接して乗り越える際に弾性変形するフック部を備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項5に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の鍵盤装置において、前記弾性変形部は、前記押圧部が当接して押圧された際に弾性変形するドーム部を備えていることを特徴とする鍵盤装置である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記クリック感付与部材は、前記鍵が押鍵操作されて前記伝達部材が前記ハンマー部材を動作させた際に、前記ハンマー部材が上限位置に到達す前に、前記押鍵操作されている鍵を介してクリック感を付与することを特徴とする鍵盤装置である。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の鍵盤装置と、前記鍵盤装置の前記複数の鍵の操作に応じて楽音を発生する音源部と、前記複数のハンマー部材夫々に対応して設けられ、当該ハンマー部材の回転動作に応答して押圧されることにより、楽音を発音するためのオン信号を出力する複数のスイッチ部と、を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。