JP2017007159A - 液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】パーフルオロポリエーテル基とカルボニル基を有する加水分解性シラン化合物を含む縮合物で形成された撥水層を有する液体吐出ヘッドを、撥水層に付着する異物を良好に除去しながらも、高い撥水性を発現させて製造する。
【解決手段】液体吐出ヘッドの吐出口面となる表面側に撥水層を有する樹脂層を用意する工程と、撥水層に紫外光を照射する工程と、を有し、撥水層は、加水分解性シラン化合物の少なくとも一種を縮合させた縮合物を含有し、紫外光を照射する工程では、270nm以上330nm以下の波長の光を含む紫外光を照射し、かつ波長270nm未満の積算照度が波長330nm以下の積算照度の0.1%以下となるように紫外光を照射して、撥水層上の異物を分解する。
【選択図】図3

Description

本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
液体吐出ヘッドとして、基板上に吐出口形成部材を有する液体吐出ヘッドが知られている。このような液体吐出ヘッドでは、良好な吐出性能を得る上で、吐出口が開口する吐出口面の特性が重要である。吐出口付近に液滴溜まりが残っていると、液体の飛翔方向が偏向したり、液体の吐出速度が低下したりする場合がある。その為、精度良く液体を吐出する方法として、吐出口が開口する吐出口面に撥水層を形成することが知られている。撥水層を形成する材料としては、液体吐出ヘッドのように種々の溶剤や色材を含む液体を吐出する場合には、フッ素化合物が適している。
近年、液体吐出ヘッドには、様々な種類の液体を吐出することや、長期間の使用に耐え得ること等が求められている。その為、吐出口面は、長期間液体にさらされたり、ゴム部材等によって多回数ワイピングされたりすることがあるので、従来よりも高い撥水性能を維持することが求められている。高い撥水性能を発現するフッ素化合物として、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物や、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物等が知られている。中でも、近年では環境適合性の観点からパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物が注目されている。
ところで、液体吐出ヘッドを製造するにあたり、基板に対してエッチング液にてエッチングを行い、供給口を形成する必要がある。特許文献1には、基板に供給口を形成する際に、撥水層を保護膜で保護しておくことが記載されている。
特開2007−21798号公報
しかしながら、特許文献1に記載のように、撥水層を保護膜で保護した場合に、保護膜を除去した後に撥水層に保護膜由来の残渣が付着していることがある。また、保護膜に限らず、様々な要因によって、撥水層に異物が付着することがある。撥水層に異物が付着していると、撥水性が低下してしまうという課題がある。
このような異物の除去方法としては、剥離液等の溶剤による洗浄や、エッチング処理、プラズマ処理、水銀ランプ等でのUV/O処理によるドライ洗浄等がある。但し、溶剤による洗浄では、液体吐出ヘッドを構成する樹脂の膨潤や、基板と樹脂との界面への溶剤の浸透によって剥離が生じる場合がある為、溶剤や洗浄条件の選定が困難である。そこで、液体吐出ヘッドにおいては、エッチング処理、プラズマ処理、低圧水銀ランプ等でのUV/O処理が行われることが一般的である。
ところで、本発明者らは、撥水層に用いる化合物として、パーフルオロポリエーテル基を有する加水分解性シラン化合物を含む縮合物を検討してきた。特に、材料合成及び入手のしやすさ等の点から、パーフルオロポリエーテル基とカルボニル基を含む加水分解性シラン化合物を用いて検討を行ってきた。
しかしながら、パーフルオロポリエーテル基とカルボニル基を含む加水分解性シラン化合物を含む縮合物で撥水層を形成した場合に、上記のような方法で撥水層に付着する異物を除去しようとすると、撥水層の撥水性が低下することがあった。
従って、本発明では、パーフルオロポリエーテル基とカルボニル基を有する加水分解性シラン化合物を含む縮合物で形成された撥水層を有する液体吐出ヘッドを、撥水層に付着する異物を良好に除去しながらも、高い撥水性を発現させて製造することを目的とする。
上記課題は、以下の本発明によって解決される。即ち本発明は、吐出口が開口する吐出口面に撥水層を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記吐出口面となる表面側に撥水層を有する樹脂層を用意する工程と、前記撥水層に紫外光を照射する工程と、を有し、前記撥水層は、下記式(1)、(2)及び(3)で表される加水分解性シラン化合物の少なくとも一種を縮合させた縮合物を含有し、前記紫外光を照射する工程では、270nm以上330nm以下の波長の光を含む紫外光を照射し、かつ波長270nm未満の積算照度が波長330nm以下の積算照度の1.0%以下となるように紫外光を照射することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法である。
(式(1)、(2)及び(3)中、Rはパーフルオロポリエーテル基、Dは炭素数0から12の有機基、Aは炭素数1から12の有機基、Xは加水分解性置換基、YおよびRは非加水分解性置換基を表す。Zは水素原子又はアルキル基を表す。Qはカルボニル基を含む2価または3価の結合基を表し、Qが2価の結合基のときにはn=1、Qが3価の結合基のときにはn=2となる。aは1から3の整数、mは1から4の整数を表す。式(1)、(2)及び(3)中において、これらR、D、A、X、Y、R、Z、Q、n、aは同じであっても異なっていてもよい。)
本発明によれば、パーフルオロポリエーテル基とカルボニル基を有する加水分解性シラン化合物を含む縮合物で形成された撥水層を有する液体吐出ヘッドを、撥水層に付着する異物を良好に除去しながらも、高い撥水性を発現させて製造することができる。
液体吐出ヘッドを示す図。 液体吐出ヘッドの製造方法を示す図。 高圧水銀紫外光照射装置の照度分布を示す図。 撥水層及び撥水層を保護する膜に使用する材料のUV吸収波長を示す図。 紫外光LED装置の照度分布を示す図。 異物(残渣)のSEM観察像を示す図。
本発明の製造方法で製造する液体吐出ヘッドの一例を、図1に示す。図1に示す液体吐出ヘッドは、シリコン等で形成された基板1と、基板1上に吐出口9を形成する吐出口形成部材4を有する。基板1には、基板1の表面と裏面とを貫通する供給口10が設けられており、基板1の表面にはエネルギー発生素子2が配置されている。インク等の液体は、供給口10から基板1の表面側へと供給され、エネルギー発生素子2によってエネルギーを与えられ、吐出口9から吐出する。吐出口形成部材4の表面には、撥水層5が設けられている。
撥水層5は、パーフルオロポリエーテル基とカルボニル基を有する加水分解性シラン化合物を含む縮合物を含有している。この加水分解性シラン化合物は、パーフルオロポリエーテル基と加水分解性シリル基の間に、カルボニル基を含む構造である。より具体的には、本発明の撥水層5は、下記式(1)、(2)及び(3)で表される加水分解性シラン化合物の少なくとも一種を縮合させた縮合物を含有している。
(式(1)、(2)及び(3)中、Rはパーフルオロポリエーテル基、Dは炭素数0から12の有機基、Aは炭素数1から12の有機基、Xは加水分解性置換基、YおよびRは非加水分解性置換基を表す。Zは水素原子又はアルキル基を表す。Qはカルボニル基を含む2価または3価の結合基を表し、Qが2価の結合基のときにはn=1、Qが3価の結合基のときにはn=2となる。aは1から3の整数、mは1から4の整数を表す。式(1)、(2)及び(3)中において、これらR、D、A、X、Y、R、Z、Q、n、aは同じであっても異なっていてもよい。)
式(1)、(2)及び(3)中のXとしては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、水素原子等が挙げられる。中でも、加水分解反応により脱離した基がカチオン重合反応を阻害せず、反応性の制御がしやすいという観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が好ましい。非加水分解性置換基YおよびRとしては、炭素数1から20のアルキル基やフェニル基等が挙げられ、それぞれ同一の置換基でも異なる置換基でも構わない。Zのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。Qの結合基としては、エステル結合(−CO−、−COO−)、アミド結合(−CONH−、−CON<)等が挙げられる。AおよびDの有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基等が挙げられる。また置換基を有するアルキレン基も用いられる。
式(1)、(2)及び(3)中のパーフルオロポリエーテル基であるRの数平均分子量は、300以上5000以下であることが好ましく、300以上2000以下であることがより好ましい。Rの数平均分子量が300以上であることにより、十分な撥水性能が得られる。また、Rの数平均分子量が5000以下であることにより、十分な溶媒への溶解性が得られる。
パーフルオロポリエーテル基は、パーフルオロアルキル基と酸素原子からなるユニットが1つ以上連なった基である。具体的には、パーフルオロポリエーテル基(R)は、下記式(4)で表される基であることが好ましい。式(4)中、括弧内で表される部分がそれぞれのユニットであり、そのユニットの数を示すo、p、q及びrで表される数が繰り返し単位数である。

(式(4)中、o、p、q及びrはそれぞれ0又は1以上の整数であり、o、p、q及びrの少なくとも一つは2以上の整数である。)
式(4)において、o、p、q又はrは、1以上30以下の整数であることが好ましい。
パーフルオロポリエーテル基は、その特性上、繰り返し単位数の異なるものの混合物である場合が多い。パーフルオロポリエーテル基の平均分子量とは、式(4)の繰り返し単位で示される部分の総和の分子量の平均を示す。上記式(1)、(2)及び(3)において、パーフルオロポリエーテル基の構造にもよるが、繰り返し単位数は3から30の整数であることがより好ましい。繰り返し単位数が3より少ないと、撥水性能が十分に発揮されない。また、繰り返し単位数が30より多いと、溶剤に対する溶解性が低くなり、フッ素系の溶剤等を用いる必要がある。その場合、他の加水分解性シラン化合物との縮合反応が起こりづらくなる場合や、下地上への塗布性が低下する場合がある。
パーフルオロポリエーテル基を有する加水分解性シラン化合物の好ましい具体例としては、下記式(5)、(6)、(7)、(8)及び(8)で表される化合物が挙げられる。

(式(5)中、sは1〜30の整数、mは1〜4の整数である。)

(式(6)中、tは1〜30の整数である。)

(式(7)中、eおよびfは1〜30の整数である。)

(式(8)中、gは1〜30の整数である。)

(式(9)中、Rはメチル基または水素原子、hは1〜30の整数である。)
式(5)〜式(9)において、繰り返し単位数である「s、t、e、f、g、h」は、3以上30以下であることが好ましい。この繰り返し単位数が3よりも小さいと撥水性が低下する傾向があり、30よりも大きいと溶剤に対する溶解性が低下する傾向がある。特にアルコール等の非フッ素系溶媒中で縮合反応を行う際には、これら繰り返し単位数は3以上10以下であることが好ましい。
市販のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物としては、信越化学工業(株)製「KY−108」、「KY−164」(商品名)、住友スリーエム(株)製「EGC−2702」(商品名)、ソルベイソレクシス(株)製「Fluorolink S10」(商品名)等が挙げられる。
ところで、本発明において、撥水層が含有する樹脂として、エポキシ基を有する樹脂を用いることで、下地の樹脂層との密着性をより強固にすることができる。その手法の一つに、撥水層の撥水材として、上述のパーフルオロポリエーテル基を有する加水分解性シラン化合物と、エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物を縮合させた縮合物を用いることが挙げられる。エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物は、下記式(10)で表される化合物であることが好ましい。
式(10)
−SiX(3−b)
(式(10)中、Rはエポキシ基を有する非加水分解性置換基、Rは非加水分解性置換基、Xは加水分解性置換基を示す。bは1から3の整数である。)
式(10)中、bは2または3であることが好ましく、3であることがより好ましい。また、Rとしては、グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基等が挙げられる。Rとしては、炭素数1〜20のアルキル基や、フェニル基等が挙げられる。Xとしては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、水素原子等が挙げられる。中でも、加水分解反応により脱離した基がカチオン重合反応を阻害せず、反応性を制御しやすい観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が好ましい。また、一部が加水分解によって水酸基になっていたり、脱水縮合によりシロキサン結合を形成していたりするものを用いてもよい。
式(10)で表されるエポキシ基を有する加水分解性シラン化合物としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。これらのエポキシ基を有する加水分解性シラン化合物は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
撥水層形成に用いる縮合物は、さらにアルキル基またはアリール基を有する加水分解性シラン化合物を同時に縮合させて得られる縮合物であることが好ましい。アルキル基またはアリール基を有する加水分解性シラン化合物は、具体的には下記式(11)で表される化合物が挙げられる。
式(11)
(R)a−SiX(4−a)
(式(11)中、Rはアルキル基またはアリール基、Xは加水分解性置換基である。aは1から3の整数である。)
式(11)のRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。式(11)で表される加水分解性シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等が挙げられる。これらの式(11)で表される加水分解性シラン化合物は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
式(11)で表される加水分解性シラン化合物を併用することで、縮合物の極性や架橋密度の制御が可能である。このような非カチオン重合性のシラン化合物を併用した場合、パーフルオロポリエーテル基やエポキシ基等の置換基の自由度が向上し、パーフルオロポリエーテル基の空気界面側への配向、エポキシ基の重合、未反応のシラノール基の縮合等が促進される。また、アルキル基のような非極性基が存在すると、シロキサン結合の開裂が抑制され、撥水性、耐久性が向上する。
縮合物の調製に用いる加水分解性シラン化合物の配合比は、その使用形態に応じて適宜決定される。但し、パーフルオロポリエーテル基を有する加水分解性シラン化合物の配合比は、用いられる加水分解性シラン化合物のモル数の合計量を100mol%として計算した場合、0.01mol%以上5mol%以下であることが好ましい。より好ましくは、該配合比は、0.1mol%以上4mol%以下である。該配合比が0.01mol%未満である場合、十分な撥水性が得られない場合がある。また、該配合比が5mol%を超えると、パーフルオロポリエーテル基を有する加水分解性シラン化合物の凝集、析出が発生し、均一な溶液が得られない場合がある。
ここで、下地の樹脂層との接着性、撥水層の耐久性を得る観点から、エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物の配合は、以下のモル数とすることが好ましい。即ち、用いられる加水分解性シラン化合物のモル数の合計量を100mol%として計算した場合、20mol%以上80mol%以下であることが好ましく、30mol%以上70mol%以下であることがより好ましい。該配合比が20mol%未満である場合、十分な塗膜の耐久性が得られないことがあり、該配合比が80mol%を超える場合、エポキシ基の極性により撥水性能が低下することがある。
また、式(11)で表される加水分解性シラン化合物を添加する場合、その配合量は、5mol%以上70mol%以下であることが好ましく、10mol%以上50mol%以下であることがより好ましい。
本発明では、各加水分解性シラン化合物を単独で用いるのではなく、縮合させて縮合物として用いる。この縮合反応は、水の存在下、溶媒中で加熱することにより、加水分解と縮合反応とを進行させることによって行われる。加水分解および縮合反応を温度、時間、濃度、pH等で適宜制御することで、所望の縮合物を得ることができる。
また、加水分解および縮合反応に際して、金属アルコキシドや酸、アルカリ等を触媒として利用することも可能である。金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、ジルコニアアルコキシド及びそれらの錯体(アセチルアセトン錯体等)等が挙げられる。これらの金属アルコキシドは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、酸やアルカリによりpHを調製することも有用である。アルカリ触媒では溶液中でゲル等の固形物が析出する場合があることから、酸触媒のほうが好ましい。ただし塩酸や硫酸等、無機の強酸が残留した場合、基材等周囲の部材に影響を及ぼすことがある。またpHが低すぎると、縮合物中のエポキシ基が開環してしまい塗膜の特性が低下する可能性もある。その為、カルボン酸等の弱酸で、さらに低分子で揮発性のあるものが好ましい。具体例としては、酢酸、グリコール酸、ギ酸等の低分子の有機酸が好適である。なお、これらの有機酸は合成時に添加するが、原料となるシラン化合物に微量含まれることが多い為、酸を添加しなくとも合成には問題ない場合が多い。
本発明では、複数のシラン化合物を併用する為、シラン化合物の種類によって加水分解および縮合反応の速度が大きく異なる場合には注意が必要である。反応速度の速いものだけ縮合反応が進行し、遅いものが未反応で残った場合、塗膜の均一性や撥水性が低下することがある。各々のシラン化合物をできるだけ均一に反応させる為には、酸等の触媒を用いることが好ましい。
縮合物は、水酸基、カルボニル基、エーテル結合等の酸素原子を有する極性溶媒中で合成される。具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジエチレングリコール等のグリコール類等の非フッ素系の極性溶媒が挙げられる。水を合成に用いる為、水の溶解性が高いアルコール類が最適である。また水分量制御の観点からは、加熱は100℃以下で行うことが好ましい。その為、加熱還流で反応を行う場合には、沸点が50℃以上100℃以下である極性溶媒が好適である。これらの極性溶媒は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
本発明の撥水層は、縮合物を適宜溶媒で希釈した得られた溶液を、スピンコーター、ダイコーター、スリットコーター、スプレーコーター等汎用の塗布装置を使用して塗布し、所望の厚さとすることができる。また、材料の濃度を調整すればディップコートも適用できる。溶液を塗布する際の縮合物の濃度については、縮合物の組成や、塗布方法、使用用途によって適宜決定されるが、前述の有効成分濃度で0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。縮合物の濃度がこの範囲内であれば、十分な撥水性能を有し、撥水層表面全体でより均一な撥水層が得られる。
撥水層の厚みは、50nm以上10000nm以下であることが好ましく、80nm以上5000nm以下であることがさらに好ましい。膜厚が50nmより薄いと、均一な撥水性能が得られにくく、耐久性能が不十分な場合がある。また膜厚が厚すぎると、表層のみでなく吐出口等のパターン断面にも撥水性能が発現し、吐出が安定しなくなる場合がある。
撥水層を作製した後に、光照射を行い、必要に応じて光または熱によるキュアを行い、撥水層を硬化させる。撥水層の硬化反応にエポキシ基のカチオン重合と、熱によるシラン(シラノール基)の縮重合を併用することで、撥水層として高い耐久性を発現することができる。
下地となる樹脂層としては、多官能の光カチオン重合性基を有する光重合性樹脂を主成分とする感光性樹脂を用いることが好ましい。即ち、樹脂層は感光性樹脂層であることが好ましい。特に、ネガ型感光性樹脂を用い、ネガ型感光性樹脂層とすることがより好ましい。感光性樹脂は、光重合性基としてエポキシ基を有していることが好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、市販のエポキシ樹脂としては(株)ダイセル製「セロキサイド2021」、「GT−300シリーズ」、「GT−400シリーズ」、「EHPE3150」(商品名)、三菱化学(株)製「157S70」「157S65」(商品名)、大日本インキ化学工業(株)製「エピクロンN−695」「エピクロンN−865」(商品名)、日本化薬(株)製「SU−8」(商品名)、(株)プリンテック製「VG3101」(商品名)、「EPOX−MKR1710」(商品名)、ナガセケムテックス(株)製「デナコールシリーズ」等が挙げられる。これらの材料は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。前記光重合性樹脂のエポキシ当量としては、2000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。エポキシ当量が2000以下であることにより、硬化反応の際に十分な架橋密度が得られ、硬化物のガラス転移温度が低下せず、高い密着性が得られる。前記光重合性樹脂のエポキシ当量は、50以上であることが好ましい。尚、エポキシ当量はJISK−7236により測定した値とする。また、樹脂の流動性が高いと解像性が低下する場合がある為、前記光重合性樹脂としては35℃以下で固体である材料が好ましい。また、ネガ型フォトレジストとして市販されている化薬マイクロケム社製「SU−8シリーズ」、「KMPR−1000」(商品名)、東京応化工業(株)製「TMMR S2000」、「TMMF S2000」(商品名)等も被覆樹脂層を形成する材料として用いることができる。なお、下地の樹脂層の光重合性樹脂は、複数種類の材料を用いても構わない。
さらに、下地の樹脂層には、光照射により撥水層の樹脂を硬化させる為の光酸発生剤が添加されていることが好ましい。光酸発生剤は、それぞれ特定の構造であるカチオン部構造と、アニオン部構造の1対1の組み合わせからなる。前記カチオン部構造は、酸素原子を複数個以上含有することに起因し、従来は困難であった光酸発生剤の吸収波長の長波長化が可能となることから、i線感光性を有している。一方、アニオン部構造の特徴は、i線感光後、カチオン成分が分解し、アニオン部構造に起因する酸が発生後、その発生酸の作用によりエポキシ基のカチオン重合反応を開始、促進することができる。発生酸はエポキシ重合可能な化合物を十分に硬化する酸強度を有していることがより好ましい。エポキシ重合可能な化合物を十分に硬化する酸強度とは、ルイス酸においては六フッ化アンチモン酸以上の強酸であること、すなわちハメットの酸度関数−HO=18以上であることを意味する。また、ブレンステッド酸においては、ノナフルオロブタンスルホン酸以上の強酸であること、すなわちPKa=−3.57以上であることを意味する。
光酸発生剤は、単独又は2つ以上の組み合わせで使用することができる。これらの化合物の配合比は、全固形分中、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
次に、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法を、図2を用いて説明する。図2は、図1の液体吐出ヘッドのA−A’断面における、該液体吐出ヘッドの製造過程を示すものである。
まず、図2(a)に示すように、表面側にエネルギー発生素子2を有する基板1を用意する。基板1は、例えばシリコンの単結晶基板であり、エネルギー発生素子2としては、例えば発熱抵抗体や圧電体が挙げられる。基板1上には、樹脂層3aが形成されている。樹脂層3aは液室の側壁となる層である。例えば、基板上に樹脂層となる材料(感光性樹脂)を塗布し、これをフォトリソグラフィーによってパターニングすることで、樹脂層3aを形成する。
次に、図2(b)に示すように、樹脂層3a上に樹脂層3bを配置する。樹脂層3bは、吐出口形成部材となる層である。基板1と樹脂層3b、さらに樹脂層3aで囲まれた部分が、液室11となる。樹脂層3bも樹脂層3aと同様に感光性樹脂等で形成することが好ましい。尚、ここでは樹脂層3aと樹脂層3bの2層としているが、これらはあわせて1層で構成してもよい。
次に、図2(c)に示すように、樹脂層3bの表面上に、撥水層5を形成する。撥水層5は、上述した加水分解性シラン化合物の縮合物を含有する層であり、スピンコート法やスリットコート法等の成膜方法によって形成する。このようにして、吐出口面となる表面側に撥水層を有する樹脂層を用意する。
次に、図2(d)に示すように、樹脂層3b及び撥水層5に対して、露光を行う。ここでは、樹脂層3bとしてネガ型感光性樹脂を用いた例を示している。露光の際、遮光部7を有するマスク6を用い、光8を照射する。樹脂層3b及び撥水層5は感光性を有し、図2(e)に示すように吐出口の形状を潜像させる。
続いて、図2(e)に示す工程で、加熱処理を行い、露光した部分の反応を進ませる。これにより、後の現像工程での耐性を高めることができる。このとき、樹脂層3bと撥水層5との間には、エポキシ基の反応によりエーテル結合が生成する。また、樹脂層3b表面の水酸基と、撥水層5由来のシラノール基との間で、脱水縮合反応も進行する。その結果、樹脂層3bと撥水層5との間には強固な結合が形成され、撥水層5が樹脂層3bから剥がれにくくなる。尚、ここでは撥水層5が樹脂層3bと分離しているように図示しているが、撥水層5は樹脂層3bの表面から樹脂層3bの内部に浸透していてもよい。また、その境界は必ずしも明確でなくともよい。即ち、樹脂層の表面側(裏面よりも表面に近い位置)に撥水層があればよい。
次に、図2(f)に示すように、現像液を用いて現像を行い、樹脂層3b(及び撥水層5)に吐出口9を形成する。現像の結果、樹脂層3bは吐出口9を形成する吐出口形成部材となり、吐出口9が開口する吐出口面に撥水層を有する。
次に、図2(g)に示すように、撥水層5を膜12で覆う。そして撥水層5を膜12で覆った状態で、基板1をエッチング液でエッチングし、基板1に供給口10を形成する。膜12は、撥水層5を基板1のエッチング液から保護する保護膜である。膜12は、膜の形成材料を溶媒に溶解した溶液を、スピンコーター、ダイコーター、スリットコーター、スプレーコーター等の塗布装置を用いて撥水層上に塗布し、必要に応じて加熱を行って溶媒を揮発させることで形成する。塗布した膜の厚みは5μm以上10000μm以下であることが好ましく、10μm以上5000μm以下であることがより好ましい。膜厚が5μmより薄いと、ピンホール等が発生する場合がある。また、樹脂層等の段差部分を十分に覆うことができずエッチングの際に樹脂層や撥水層の耐久性に影響が出る場合がある。一方、膜厚が10000μmを超えると、塗布や乾燥が困難となり、さらに除去の際の処理時間が長く、洗浄に使用する溶剤も大量に必要となってしまう。膜12の加熱温度は、90℃以上120℃以下であることが好ましい。また、必要に応じて、膜12を基板1のエッジまで囲む様に塗布してもよい。
膜12は、環化ゴムを含有することが好ましい。また、ポリイソプレン由来の有機物を含有することが好ましい。例えば、ポリイソプレンの少なくとも一部を環化させた環化ゴムを含有することが好ましい。
環化ポリイソプレンの骨格構造の好ましい具体例を以下の(C−1)〜(C−5)として挙げる。
環化ポリイソプレンの成分は、上記(C−1)から(C−5)に記載の構造の単一成分もしくは混合物である。さらに、膜12中には、環状構造が三環もしくは四環等の多環を有する構造や、環化ゴム合成時の未反応成分である1,4ポリイソプレンや3,4ポリイソプレン、1,2ポリイソプレンが含まれていてもよい。例えば、市販の環化ゴムとしては、東京応化工業(株)製「OMRシリーズ」、「OBCシリーズ」、日本合成ゴム製「JSR CIRシリーズ」等が挙げられる。
以上のようにして基板のエッチングを行った後、膜12を有機溶剤等の除去液で除去する。除去液は樹脂層3a、樹脂層3b、撥水層5等を溶解しにくく、膜12が良好に溶解可能な溶液であればよい。除去後、イソプロパノール等でリンス処理を行う。尚、膜12の表面にエッチング処理で変質した膜が形成された場合等には、膜12を除去する前に膜12の表面をドライエッチング処理等し、除去液が膜12に浸透する為の処理を行ってもよい。
膜12を除去した後の撥水層5には、膜12由来の残渣による異物が付着していることがある。他にも、例えば、供給口を形成する際の異方性エッチングやドライエッチング等の処理により変質した膜12の酸化物やフッ化物、また樹脂層4aや樹脂層4bとの混合物や反応物等も挙げられる。膜12が変質した残渣は、膜12の除去に用いる除去液への溶解性が膜12と異なる為、膜12を除去しても十分に除去できない場合がある。異物の大きさは、0.01μmから0.1μm程度のものである。
これに対し、図2(h)に示すように、撥水層5に紫外光14を照射し、撥水層5上の異物13を分解する。紫外光14の照射は、例えば高圧水銀ランプを使用した紫外光照射機を用いて行う。本発明では、この紫外光を照射する工程で、270nm以上330nm以下の波長の光を含む紫外光を照射し、その際に波長270nm未満の積算照度が波長330nm以下の積算照度の1.0%以下となるようなフィルタを用いる。フィルタがある場合とない場合の紫外光照射機の照度分布を図3に示す。
異物13を分解する手法の一つとして、紫外光により発生するオゾンや、オゾンと254nmの紫外光との反応で発生する活性酸素によって有機物を分解する手法がある。その為、260nm以下の短波長の紫外光の照度が高いほど異物の分解効率が高く、低圧水銀ランプや高圧水銀ランプを用いた紫外光照射機を使用する場合がある。
本発明は、残渣に照射する紫外光として、270nm以上330nm以下の波長の光を含み、かつ波長270nm未満の積算照度が波長330nm以下の積算照度の1.0%以下となるような紫外光を用いた点に特徴がある。本発明で用いる撥水層の形成材料と膜12の形成材料との分光感度の例を図4に示す。図4に示す例は、撥水層は上記式(8)のシラン化合物とグリシドキシプロピルトリエトキシシランとの縮合物で形成しており、膜12は環化ゴム(商品名:OBC、東京応化工業(株)製)で形成している。図4に示す通り、撥水層の形成材料は、270nm未満の波長の領域で吸収があることがわかる。それに対して膜12の吸収は、330nm以下の波長の領域で吸収がある。本発明で用いる撥水材は、吸収のある波長領域の光を照射することで分解反応がおこる。その為、膜12には330nm以下の波長の光を、撥水材には270nm未満の波長の光を照射することで分解し始める。よって、270nm未満の波長の紫外光を撥水層および残渣に照射すると、異物の分解だけでなく、撥水層自体の分解も起こり、撥水性が低下する場合がある。
特に、本発明の撥水層は、撥水材として、撥水性発現成分であるパーフルオロポリエーテル基とアルコキシシランがカルボニル基で結合された加水分解性シラン化合物を含む縮合物を含有する。この縮合物は、シラノール基やエポキシ基等が下地である樹脂層4bと化学結合している。撥水材中のシラノール基は、紫外光照射により発生する熱等により、結合反応が進むことが考えられる。また撥水材中のエポキシ基は、樹脂層4bの主材と同様に、紫外光を照射することで、光酸発生剤の作用により硬化反応が進むことが考えられる。しかし、270nm未満の波長の光を照射すると、撥水性能が発現しにくくなる。これは、カルボニル基の近傍で結合が切断されてパーフルオロポリエーテル基が脱離してしまう為であると考えられる。一方、本発明者らの検討によれば、270nm以上の波長の光であれば、上述の異物は分解されるものの、パーフルオロポリエーテル基の脱離は起こらないことが分かった。その為、なるべく270nm以上の波長の紫外光を照射することにより、撥水性能の低下を抑えつつ、撥水層表面に付着した異物を除去することが可能となることを見出した。具体的には、270nm以上330nm以下の波長の光を含む紫外光を照射し、かつ波長270nm未満の積算照度が波長330nm以下の積算照度の1.0%以下となるように紫外光を照射するようにした。
紫外光を照射した後、有機溶剤等の洗浄液で液体吐出ヘッドを洗浄し、加熱を行う。また、エネルギー発生素子2を駆動させる為の電気的接合や、液体供給の為の供給部材の接続を行う等して、図2(i)に示すような液体吐出ヘッドを製造する。
以上のようにして製造された液体吐出ヘッドは、撥水層に付着する異物が良好に除去されており、かつ高い撥水性を発現するものである。
以下、本発明を実施例及び比較例にてより具体的に説明する。尚、各例における各種測定、評価は以下に示す方法により行った。
(残渣評価)
撥水層表面の残渣(異物)評価は、走査型電子顕微鏡(S−4300、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いた観察で行った。図6に残渣のSEM観察像を示す。図6に示すように、残渣は0.01μmから0.1μm程度の大きさであり、残渣がある場合には倍率5万倍で確認することができる。
残渣の確認は、撥水層のうち2μm×3μmの範囲で10箇所の確認行い、いずれの箇所においても図6に示すような残渣が確認されなかった場合をA、少なくともいずれかの箇所において残渣が確認された場合をBとした。
(純水接触角測定)
撥水層の撥水性評価として、微小接触角計(製品名:DropMeasure、(株)マイクロジェット製)を用いて、純水に対する動的後退接触角θrの測定を行い、初期撥水性の評価を行った。初期撥水性に関して、純水に対する動的後退接触角が90°以上の場合の判定をA、動的後退接触角が90°未満の場合の判定をBとした。
また、撥水層表面の耐久性評価として、pH=10のアルカリ水溶液に浸漬して60℃で1週間保持した後、水洗し、撥水層表面の純水に対する動的後退接触角θrを測定した。アルカリ浸漬後の測定の結果、純水に対する動的後退接触角が80°以上の場合の判定をA、動的後退接触角が80°未満の場合の判定をBとした。
さらに撥水層の擦りに対する耐久性評価として、撥水層にカーボンブラックを含有する水溶液を吹き付けながらHNBR(水素化ニトリルゴム)のブレードを用いて拭き取り操作を2000回実施し、その後の純水に対する動的後退接触角θrを測定した。これにより、擦りに対する耐久性を調べた。擦り耐久後の測定の結果、純水に対する動的後退接触角が80°以上の場合の判定をA、動的後退接触角が80°未満の場合の判定をBとした。
<実施例1、2>
まず、以下に示す方法により、各加水分解性シラン化合物からなる縮合物を調製した。γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン12.53g(0.045mol)、メチルトリエトキシシラン16.04g(0.045mol)、下記式(12)で表される化合物0.96g(0.726mmol)、水5.93g及びエタノール15.15g、ハイドロフルオロエーテル3.83g(商品名:HFE7200、住友スリーエム(株)製)を、冷却管を備えるフラスコ内で、室温で5分間撹拌した。その後、24時間加熱還流することによって、縮合物を調製した。

(式(12)中のgは、3から10の整数である。)
その後、エタノールを添加して縮合物の濃度が7%となるように撥水材を調合した。
次に、光重合性樹脂(商品名:157S70、三菱化学(株)製)100質量部と、光酸発生剤(商品名:CPI−410S、サンアプロ(株)製)6質量部とを、溶媒であるプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、PGMEA)80質量部に溶解させた。この材料を、基板上にスピンコートにより膜厚10μmとなるように塗布し、90℃で5分間加熱処理して、樹脂層を形成した。樹脂層の表面は吐出口面となる面である。
続いて、形成した樹脂層の表面上に、スリットコーターを用いて、上記撥水材を塗布し、90℃で加熱処理して、樹脂層の表面側に撥水層を形成した。撥水層の塗布膜厚は、加熱処理後で0.5μmとした。
次に、基板上の樹脂層及び撥水層にi線を照射し、90℃で4分間加熱処理を行った。続いてMIBKとキシレンとの混合液で現像処理を行った後、イソプロパノールでリンス処理を行い、さらに140℃で4分間加熱処理を行った。
次に、撥水層を膜(商品名:OBC、東京応化工業(株)製)で覆い、その状態でTMAH溶液を用いて基板の異方性エッチングを行い、基板に供給口を形成した。
次に、上記膜を、キシレンを用いて除去し、乾燥を行った。
さらに、撥水層表面に付着している残渣を除去する為、撥水層に表面に紫外光を照射した。紫外光照射機としては、ズースマイクロテック社製の露光装置(MA−200)を用いた。照射した紫外光は、270nm以上330nm以下の波長の光を含む。また、紫外光照射の際には、270nm未満の積算照度が330nm以下の積算照度の0.5%となるフィルタを設置し、紫外光照射を行った。
尚、事前に、残渣(異物)を有する撥水層に、上記装置にフィルタを設置した状態で紫外光照射し、残渣評価がAとなる状態の照射量を算出しておき、その照射量で処理を行った。
その後、洗浄を行い、200℃で1時間加熱し、硬化した撥水層を得た。
撥水層表面のSEM観察において残渣は見られず、初期及び耐久性評価後の純水接触角も高い値を示した。
<実施例2>
実施例1では、270nm未満の積算照度が330nm以下の積算照度の1.0%となるフィルタを設置して、紫外光照射を行った。これ以外は実施例1と同様にした。
<実施例3〜5>
撥水層表面に付着している異物を除去する為の紫外光照射機として、図5のNo.1から3の照度分布を有する深紫外光LEDを用いた以外は、実施例1と同様の方法で撥水層を形成した。
LED−No.1、2、3として、中心波長がそれぞれ290nm、305nm、315nmであり、それぞれ270nm未満の積算照度が、330nm以下の積算照度の1.0%、0.2%及び0.1%であるものを使用した。
事前に、残渣を有する撥水層に対し、それぞれのLEDを用いて紫外光を照射し、残渣除去判定Aとなる照射量を算出しておき、その照射量で処理を行った。
撥水層表面のSEM観察において残渣は見られず、初期及び耐久性評価後の純水接触角も高い値を示した。
尚、LEDは、撥水材や異物により最適波長のものを使用すればよい。より短時間で処理する為に、複数個のLEDを配列して照射したり、LEDと前記吐出口開口表面の間にレンズを配置して紫外光を集光させて照射したりすることもできる。また、本実施例では単一波長のLEDを用いて残渣の除去を行ったが、中心波長の異なる複数種のLEDを組み合わせて使用することもできる。
<比較例1>
撥水層表面に付着している残渣を除去する為の紫外光照射機として、実施例1に記載のフィルタを設置せずに使用した以外は、実施例1と同様の方法で撥水層を形成した。比較例1において、270nm未満の積算照度は、330nm以下の積算照度の5.0%であった。
事前に、残渣を有する撥水層に前記照射機を用いて紫外光を照射し、残渣評価がAとなる照射量を算出しておき、その照射量で処理を行った。
撥水層表面のSEM観察においては残渣が見られなかったものの、初期及び耐久性評価後の純水接触角は低い値を示し、撥水性能が低下していた。
<比較例2、3>
撥水層表面に付着している残渣を除去する為の紫外光照射機として、実施例1記載の露光機を用い、270nm未満の積算照度が330nm以下の積算照度の1.5%、および3.0%となるフィルタを用いた以外は、実施例1と同様の方法で撥水層を形成した。
事前に、残渣を有する撥水層に前記照射機を用いて紫外光を照射し、残渣評価がAとなる照射量を算出しておき、その照射量で処理を行った。
いずれの撥水層表面のSEM観察においても、残渣が見られなかった。上記値が1.5%となるフィルタを用いた場合、初期の純水接触角は高い値を示したものの、耐久性評価後の純水接触角は低い値を示した場合もあり、撥水性能が低下していた。上記値が3.0%となるフィルタを用いた場合は、初期及び耐久性評価後の純水接触角は低い値を示し、撥水性能が低下していた。
<比較例4、5>
撥水層表面に付着している残渣を除去する為の紫外光照射機として、図5に記載の中心波長が270nmのLED−No.4の照度分布、および280nmのLED(不図示)を有する紫外光LEDを用いた以外は、実施例1と同様の方法で撥水層を形成した。本比較形態において、270nm未満の積算照度は、それぞれ330nm以下の積算照度の40.0%、2.0%であった。
事前に、残渣を有する撥水層に前記照射機を用いて紫外光を照射し、残渣評価がAとなる照射量を算出しておき、その照射量で処理を行った。
いずれの撥水層表面のSEM観察においては残渣が見られなかった。しかし、中心波長が270nmのLEDを用いた場合は、初期及び耐久性評価後の純水接触角は低い値を示し、撥水性能が低下していた。また、280nmのLEDを用いた場合は、初期の純水接触角は高い値を示したものの、耐久性評価後の純水接触角は低い値を示していた。
<比較例6>
330nmよりも短波長の範囲の照度分布のない中心波長が400nmの紫外光LEDを用いて、残渣を有する撥水層に紫外光の照射を行った。即ち、照射した紫外光は、270nm以上330nm以下の波長の光を含まない。また、270nm未満の積算照度は、330nm以下の積算照度の0%である。これ以外は実施例1と同様にしたが、残渣を除去することはできず、接触角の評価を行うこともできなかった。
<結果>
以上の結果を以下の表1及び表2にまとめる。
表1及び2に示すように、撥水層に紫外光を照射する工程において、波長270nm未満の積算照度が波長330nm以下の積算照度の1.0%以下となるように紫外光を照射すると、残渣の発生を抑制し、かつ高い撥水性を発現できることが分かる。一方、この値が1.0%を超えると、残渣が発生したり、撥水性が低下したりすることが分かる。また、特に比較例6に示すように、照射する紫外光が270nm以上330nm以下の波長の光を含まない場合は、残渣を除去できずに発生させてしまうことが分かる。

Claims (10)

  1. 吐出口が開口する吐出口面に撥水層を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記吐出口面となる表面側に撥水層を有する樹脂層を用意する工程と、
    前記撥水層に紫外光を照射する工程と、を有し、
    前記撥水層は、下記式(1)、(2)及び(3)で表される加水分解性シラン化合物の少なくとも一種を縮合させた縮合物を含有し、
    前記紫外光を照射する工程では、270nm以上330nm以下の波長の光を含む紫外光を照射し、かつ波長270nm未満の積算照度が波長330nm以下の積算照度の1.0%以下となるように紫外光を照射することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。



    (式(1)、(2)及び(3)中、Rはパーフルオロポリエーテル基、Dは炭素数0から12の有機基、Aは炭素数1から12の有機基、Xは加水分解性置換基、YおよびRは非加水分解性置換基を表す。Zは水素原子又はアルキル基を表す。Qはカルボニル基を含む2価または3価の結合基を表し、Qが2価の結合基のときにはn=1、Qが3価の結合基のときにはn=2となる。aは1から3の整数、mは1から4の整数を表す。式(1)、(2)及び(3)中において、これらR、D、A、X、Y、R、Z、Q、n、aは同じであっても異なっていてもよい。)
  2. 前記撥水層に紫外光を照射する工程の前に、環化ゴムを含有する膜で前記撥水層を覆う工程を有する請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記樹脂層は基板上に形成されており、前記環化ゴムを含有する膜で前記撥水層を覆った状態で前記基板をエッチング液でエッチングする請求項2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記膜はポリイソプレン由来の有機物を含有する請求項2または3に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記紫外光を照射した後に、前記撥水層を液体で洗浄する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記Rが、下記式(4)で表される構造である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

    (式(4)中、o、p、q及びrはそれぞれ0から30の整数であり、o、p、q及びrの少なくとも1つは2以上の整数である。)
  7. 前記撥水層は、前記(1)、(2)及び(3)で表される加水分解性シラン化合物の少なくとも一種と、エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物とを縮合させた縮合物を含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物が、下記式(10)で表される構造である請求項7に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
    式(10)
    −SiX(3−b)
    (式(10)中、Rはエポキシ基を有する非加水分解性置換基、Rは非加水分解性置換基、Xは加水分解性置換基を表し、bは1から3の整数を表す。)
  9. 前記樹脂層は感光性樹脂を含有する感光性樹脂層である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  10. 前記紫外光を照射した後に、前記撥水層を加熱する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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