以下に、本発明の実施の形態にかかる太陽電池および太陽電池の製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、以下の説明および添付図面の内容は、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
実施の形態1.
図1、図2は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池の受光面側と裏面側の素子電極の形状を示す平面図であり、素子裏面の金属箔を除いた素子単体を示している。図3は、実施の形態1の太陽電池の裏面側に用いられる金属箔の形状を示す平面図である。図4は、実施の形態1の太陽電池の裏面側の構成を示す平面図であり、図2の太陽電池の裏面側に図3に示される金属箔が接続された状態を示している。図5、6は、本実施の形態1にかかる図1、図4に示される太陽電池100を直列に接続してストリングとした構成を示す平面図であり、それぞれ受光面側と裏面側を示している。図7は、実施の形態1の太陽電池の断面図であり、図1中のA−B断面に相当する図である。図8は、実施の形態1の太陽電池の断面図であり、図5と図6中のC−D断面に相当する図である。図9は、実施の形態1の太陽電池の断面図であり、図5と図6中のE−F断面に相当する図である。図10は、実施の形態1にかかる太陽電池の製造方法を示す工程断面図である。図11は、本実施の形態1にかかる太陽電池の製造方法を示すフローチャート図である。図12は、太陽電池の製造方法を示す図で、太陽電池の片面をはんだ浴に浸漬する方法の断面模式図である。図13は、図12のはんだ浴中の一部分に形成される噴流を示す断面模式図である。実施の形態1の太陽電池100は、両面にパッシベーション膜を形成した太陽電池において、裏面電極125を、ガラスフリットを含有する第1層裏面電極と、第1層裏面電極の表面全体を、水分透過量の小さい金属からなる第2層裏面電極で被覆したものである。
フリットとは、一般に原料調合物を粗溶融してガラス化した後、水急冷あるいはロール急冷で適当な粒度に破砕したものをいうが、本実施の形態では焼結助剤、つまり焼結工程において、パッシベーション膜を浸食しパッシベーション膜中を貫通して十分に下地層まで到達し得るものとする。また、以下において素子電極とは、太陽電池を形成する半導体基板すなわちシリコン基板の半導体層にコンタクトする受光面電極および裏面電極をいうものとする。
実施の形態1の太陽電池100は、裏面100B全体が、パッシベーション膜121と、裏面100B全体にわたって分布する裏面電極125とのいずれかで覆われている。裏面電極125は、全面に点状に分布して配列された裏面点状電極122Dと、裏面点状電極122Dを囲む裏面囲み接着領域123とを備えている。裏面囲み接着領域123は裏面100B周縁部全周にわたって設けられた帯状領域である。裏面点状電極122Dおよび裏面囲み接着領域123は、パッシベーション膜121を貫通して形成された点状のガラスフリットを含有する第1層裏面電極122aと、第1層裏面電極122aの表面全体を覆うはんだ層からなる第2層裏面電極122bとで構成される。はんだ層は、第1層裏面電極122aよりも密度の高い導体である。
また、実施の形態1の太陽電池100は、図6に示すように、金属箔で構成された素子間接続体130の本体部132を有している。ここでは素子間接続体130は、太陽電池100の裏面100B側から隣接する太陽電池100の受光面100A側に伸びる素子間接続部131と、裏面100B側全面を覆うアルミ箔からなる本体部132とで構成される。本体部132は、半導体基板110上に形成される裏面電極125に接合され、裏面110B全面を覆う。素子間接続部131は、本体部132の裏面側に接続され、太陽電池100の裏面100B側にある本体部132と隣接する太陽電池100の受光面100A側の受光面電極115とをつなぐ。
太陽電池100の裏面100Bには、周縁を周回する、裏面囲み接着領域123が形成されている。素子間接続体130の本体部132は、裏面囲み接着領域123で裏面電極125の端縁に接続固定され、裏面電極125の背面を覆う金属箔で構成されている。本体部132は、図7に示すように、第2層裏面電極122bと接続され、背面全体を覆う。
実施の形態1の太陽電池100は、図1および図2に示すように、平面形状が略矩形の半導体基板110で構成されている。本実施の形態では、拡散層を形成しpn接合を形成したn型単結晶シリコン基板101を、半導体基板110とする。ここで略矩形とは、互いに垂直となる2組の平行な辺を有する四角形形状を意味する。特に、シリコン単結晶を用いた太陽電池では、円柱の単結晶インゴットから矩形の基板を形成する際に、円形から矩形に切り落とされて無駄となる部分を減らすために、図1に示すように角の一部が切り落とされた形状の基板が使用されることが多い。図1に示す形状も略矩形のなかに含まれる。図1では、正方形の角の一部が切り落とされた形状の例を示したが、これを半分に割るなどして略長方形形状になったものを用いてもよい。半導体基板101は、pn接合を有し、厚さが例えば0.05mm以上0.5mm以下の薄板状である。半導体基板101として、例えば1Ωcm以上30Ωcm以下のn型シリコン基板あるいはp型シリコン基板を用い、片方の面にボロンがドープされ、もう一方の面にリンがドープされたものを、太陽電池基板を構成する半導体基板110として使用することができる。なお、実施の形態1では、n型単結晶シリコン基板101を用いたが、p型単結晶シリコン基板、n型多結晶シリコン基板、p型多結晶シリコン基板を用いても良いことはいうまでもない。
太陽電池100の受光面100Aおよび裏面100Bには、少なくとも素子電極と半導体基板110との接触部および半導体基板110の端部を除く全面にわたって窒化シリコン膜からなるパッシベーション膜111,121が形成されており、半導体基板110表面における電子および正孔の再結合を低減できるようになっている。パッシベーション膜111,121としては、40nm以上100nm以下の厚みのアモルファスシリコン窒化膜単体、もしくは、酸化シリコン膜とアモルファスシリコン窒化膜との積層膜、もしくは、アルミナとアモルファスシリコン窒化膜との積層膜、などを用いることができる。
実施の形態1では、太陽電池100の受光面100Aに形成される素子電極である受光面電極115は、図1に示すように複数の平行な細い線分からなる受光面グリッド電極112と、受光面グリッド電極112と交差部をもち直交する4本の受光面バス電極113とで構成される。受光面バス電極113は、受光面バス電極113による電極影を低減するとともに受光面グリッド電極112の集電距離を小さくするために線幅と本数を調整することができ、例えば2本から16本とすることができる。実施の形態1の受光面グリッド電極112は、光キャリア生成により生じる電荷を半導体基板110から取り出すとともに集電する電極であり、各々が適当な間隔をおいて配設される。受光面グリッド電極112の幅および離間間隔は、受光面100A側の半導体基板110の表面のシート抵抗などによっても異なるが、例えば0.5mm以上2.5mm以下の周期で受光面バス電極113の延在方向とは直交する方向に平行に配列され、各グリッド線の幅を0.01mm以上0.2mm以下で構成することができる。受光面グリッド電極112の電極の長さとしては、半導体基板110と同程度とすることができ、厚みとしては5μmから50μm程度とすることができる。受光面バス電極113は、一方の極性をもつ受光面グリッド電極112と接続され、受光面グリッド電極112で集電した電流を太陽電池100の外部に取り出すバス電極として機能する。受光面バス電極113については、別工程で形成されることもあるが、受光面グリッド電極112と同一工程で形成されることが多い。なお、受光面グリッド電極112は、アルミニウムAl、銀Ag、銅Cu、ニッケルNi、錫Snを主に含んだ金属材料及びその積層体からなることが望ましい。実施の形態1の太陽電池100においては、受光面グリッド電極112には、ガラスフリットと銀が含まれており、ガラスフリットによって半導体基板110と受光面グリッド電極112との間の接続強度を保持し、銀によって導電性を確保している。このようにして受光面グリッド電極112で集電された電流は、受光面バス電極113を介して素子の外部に取り出され、電力として利用される。なお、太陽電池モジュールを作成する際に導線などによって受光面グリッド電極112の各線分間を接続する場合は、受光面バス電極113はひとつながりになっていなくてもよく、不連続な島状の形状であったり、まったくなくてもよい。また、受光面バス電極113には、必ずしもガラスフリットが含まれなくてもよいが、本実施の形態においては、主に銀からなり微量のガラスフリットを含有した電極を用いる。
太陽電池100の裏面100B側の素子電極すなわち裏面電極125の形状を図2に示す。図のように、半導体基板110の裏面側には、他方の極性の電極として裏面点状電極122Dと裏面囲み接着領域123とが半導体基板110もしくはパッシベーション膜121に当接して形成されている。これらの裏面電極125は、半導体基板110のパッシベーション膜121の開口部を通じて基板と導通する。実施の形態1の裏面点状電極122Dは、光キャリア生成により生じる電荷を半導体基板110から取り出す電極であり、各々が適当な間隔をおいて配設される。
裏面点状電極122Dは、図7に示すように、第1層裏面電極122aと第1層裏面電極122aを覆う第2層裏面電極122bとの2層構造で構成されている。第1層裏面電極122aのパターンは、n型単結晶シリコン基板101からなる半導体基板110の表面のシート抵抗によっても異なるが、例えば0.2mm以上2mm以下程度の間隔で互いに等間隔の距離だけ隔てて形成することができる。第1層裏面電極122aの大きさとしては、電極の形成方法によって異なるが、例えば直径50μm、厚み20μm、などとすることができる。
なお、ここでは、第1層裏面電極122aとして複数の点状電極が離間してなる電極群として形成される場合を示しているが、必ずしも点状である必要はなく、細い線状であっても良い。
裏面囲み接着領域123のパターンは、第1層裏面電極122aである点状電極と同一工程で印刷形成され、同一の厚さを持つ構成としてもよい。第2層裏面電極122bは、はんだ層であり、詳細については後述するが、溶融はんだ上を通過させることで、第1層裏面電極122a上に選択的に形成される。裏面囲み接着領域123のパターンは、例えば0.1mm以上1mm以下の幅で、半導体基板110の端部から0.2mm程度内側の位置に形成することができる。裏面囲み接着領域123の厚みとしては、1μm以上50μm以下とすることができる。また、実施の形態1においては裏面囲み接着領域123が半導体基板110と直接導通しているが、必ずしも導通していなくてもよく、裏面囲み接着領域123はパッシベーション膜121によって半導体基板110と絶縁されていてもよい。
これらの裏面電極125の素材としては、ガラスフリットと銀粒子とを含有する銀ペーストを用いて印刷形成される。銀粒子に代えて、アルミニウム、ニッケル、錫、銅、銀、金、その混合体及び合金および積層体を用いることができる。第2層裏面電極122bで覆われた第1層裏面電極122aの最外部には、モジュール化する際に素子間接続体130を構成する金属箔からなる本体部132と接続するために適した材料が配置される。例えば、はんだを用いて素子と素子間接続体130の本体部132を接続する場合は、少なくとも第1層裏面電極122aの最外層および体部132の外縁部にははんだ付けが容易な銅、錫、銀等の金属を用いることが望ましい。実施の形態1においては、第1層裏面電極122aとして主に銀から成りガラスフリットおよびアルミニウムを含む電極を用いる。
第1層裏面電極122aでは、アルミニウムは銀に対して平均としておおよそ0.5wt.%以上3wt.%以下の割合で含有され、半導体基板100の裏面側表面のp型シリコンに対する接触抵抗が低減されている。また、実施の形態1の半導体基板110においては、第1層裏面電極122aははんだ層からなる第2層裏面電極122bによって覆われる。
また本実施の形態1の太陽電池100においては、素子から素子間接続体130を通じて電流を取り出すにあたり受光面バス電極113の表面がはんだによって覆われる構造とし、受光面グリッド電極112については単層構造であり、はんだで覆われていない。また、本実施の形態においてははんだによって金属箔からなる素子間接続体130の本体部132と裏面囲み接着領域123とが接続される構成としているため、裏面囲み接着領域123としてははんだに対する濡れ性のよい金属材料を用いるが、裏面囲み接着領域123としては必ずしも電気導電性を有しなくてもよく、セラミックスあるいは金属と樹脂との混合体を用いて接着してもよい。
実施の形態1にかかる太陽電池100は、図3に示す金属箔からなる素子間接続体130の本体部132を素子の裏面100B側に有している。図4に、太陽電池裏面側の平面図を示す。金属箔からなる素子間接続体130の本体部132は、図2に示す裏面囲み接着領域123の外縁部と同程度の大きさを有しており、はんだなどの無機物を主成分とする封止材を用いて素子裏面側の裏面囲み接着領域123と接続される。金属箔からなる素子間接続体130の本体部132を裏面に装着した状態の太陽電池100の受光面100A側と裏面100B側は、図1と図4に示すとおりである。図4に示した太陽電池100の裏面100Bから素子間接続体130の本体部132を取り除いた裏面100Bの平面図が図2に示すとおりである。素子間接続体130の本体部132を構成する金属箔は、銅、アルミニウム、錫等の金属箔で構成されている。金属箔は、銅箔などの金属箔を打ち抜き加工することによって製造することができる。金属箔は金属の箔単体のみでなく、例えばガラスあるいはポリイミドフィルム上に蒸着された金属膜、金属粒子含有樹脂、印刷ペーストを乾燥することによって形成される金属微粒子群あるいは金属焼結体などが第1層裏面電極122aと同じパターン形状に接続されてなる膜あるいは箔などを用いても良い。
このようにして太陽電池100の裏面100B側の点状電極である第1層裏面電極122aの周囲を、第2層裏面電極122bとしてのはんだ層で被覆することで、ガラスフリットを含む膜質の粗い第1層裏面電極122aと半導体基板110との界面は、外気あるいは外気からモジュール内部まで侵入してきた水分等にさらされることなく保護される。第1層裏面電極122aは、印刷ペースト中の金属粒子が焼結することにより形成されるため焼成後の電極は多孔質となり、膜質が粗く、透湿性が高い点が課題であった。このため、印刷ペーストに含まれるガラスフリット等と半導体基板110と界面に水分やモジュール封止材の分解物等が到達しやすいため、これらとの化学反応により電極と半導体基板110との間の接触抵抗が増大するという問題が生じる。これに対し、実施の形態1の太陽電池100では、表面を覆う第2層裏面電極122bであるはんだによって水分の侵入が防止される。はんだなどの第1層裏面電極122aに到達する貫通孔を有しない金属の連続体は、膜質がち密で、透湿性は低いため、第1層裏面電極122aを保護することができる。さらに半導体基板110の裏面100B側に、金属箔からなる本体部132、裏面囲み接着領域123、本体部132と裏面囲み接着領域123との間を半導体基板110の全周にわたってはんだ層からなる封止材133で密閉することによって第2層裏面電極122bと金属箔からなる本体部132との間は封止され、外部環境から切り離された環境とすることができる。このため、金属箔からなる本体部132と裏面囲み接着領域123とを接続する封止材133としては、樹脂を含んでいても良いが主に金属あるいはセラミックスなどの無機材料からなりガスあるいは水分を透過させないものを用いることが好ましい。
なお、金属箔からなる本体部132は、太陽電池100の裏面100B側における集電と半導体基板110を透過して太陽電池100の裏面100B側に到達した光を反射する機能を有する。このため、金属箔からなる本体部132に用いる材料は、面内方向の抵抗が低く、太陽電池側表面の光反射率が高いことが望ましい。また、実施の形態1の太陽電池100において、素子電極とは、受光面電極115と裏面電極125をいうものとする。受光面電極115は、受光面グリッド電極112と受光面バス電極113とで構成される。裏面電極125は、裏面点状電極122Dと、裏面囲み接着領域123とで構成され、半導体基板110上に形成される電極を指すものとし、金属箔からなる本体部132は含まないものとする。本体部132は、図6に示すように、素子間接続部131とともに素子間接続体130を構成する。
以上の太陽電池100を、図5および図6に示すように、素子間接続部131と本体部132とからなる素子間接続体130およびストリング間接続体136を用いて接続する。図5は、太陽電池100の受光面100A側、図6は、裏面100B側を示す。複数のストリングが直列に接続されたストリング列を作成することができ、ストリング列の受光面100A側にガラスならびにエチレンビニルアセテート、裏面100B側にエチレンビニルアセテートならびにポリフッ化ビニルもしくはポリエチレンテレフタラート等の裏面保護材を接着することによって太陽電池モジュールを作成することができる。これらの素子間接続体130の素子間接続部131およびストリング間接続体136、ストリング端の導線137として、はんだで被覆された扁平状の銅線を用いることができる。
図7は、図1、図4、図5、図6のA−Bの線分部に相当する断面模式図である。図2にも、裏面100Bの素子電極パターンである裏面点状電極122Dと図7との位置関係を示すためにA−Bの線分を記載しているが図2においては金属箔からなる本体部132を透過して図示しているため、本体部132は記載していない。図7に示すように、半導体基板110の表面は、受光面電極115を構成する受光面グリッド電極112および裏面電極125を構成する裏面点状電極122Dとの接続部以外は、受光面100Aと裏面100Bとがパッシベーション膜111,121によって覆われている。素子電極である受光面電極115および裏面電極125は、パッシベーション膜111,121の開口部を通して半導体基板110と接触し、半導体基板110と素子電極とのコンタクト部を形成している。
パッシベーション膜111,121としては、前述したようにシリコン窒化物、シリコン酸化物、酸化アルミニウム、あるいはそれらの積層物等を使用することができ、受光面100A側と裏面100B側とで異なるものを用いてもよい。裏面100B側の素子電極である裏面点状電極122D表面は、はんだ層からなる第2層裏面電極122b、裏面囲み接着領域123の表面は、封止材133としてのはんだめっき層で被覆されている。図7では封止材133を省略している。そして封止材133が金属箔からなる本体部132と接続され、裏面100B側の素子電極である裏面点状電極122Dと金属箔からなる本体部132とが第2層裏面電極122bを通じて電気的に導通している。以上のような封止材133および第2層裏面電極122bとしては、金属箔からなる本体部132が銅を主成分とする材料である場合は例えば約3.5%の銀を含む錫−銀はんだ等を用いることができる。金属箔からなる本体部132は、図7に示すようにしわあるいはたるみをもっていてもよい。これにより、本体部132と裏面電極125との密着性が向上する。なお、裏面側の素子電極である裏面点状電極122D、裏面囲み接着領域123および素子間接続体130の本体部132および素子間接続部131が電気接続体141もしくは封止材133によって覆われているが、図2、図5および図6においては、記載を省略している。図1においては、モジュール化によって受光面100A側の受光面バス電極113も電気接続体141によって覆われる。
図5、図6に示されるストリングの、素子間接続体130の素子間接続部131を通り受光面バス電極113と直交する方向であるC−Dの線分部で切断した断面の模式図を図8に示す。C−D断面は、受光面バス電極113を通る断面を示しており、図8では受光面グリッド電極112と受光面バス電極113とを合わせて受光面電極115として記載している。素子間接続体130の素子間接続部131は電気接続体141によって受光面電極115と接続されており、実施の形態1では受光面バス電極113と接続されている。太陽電池100の裏面100B側においては、素子間接続部131は電気接続体141によって金属箔からなる本体部132と接続され、本体部132および電気接続体141および第2層裏面電極122bおよび裏面点状電極122Dを通じて半導体基板110と導通している。
図5および図6に示されるストリングの受光面バス電極113を通る断面である、図5および図6のE−Fの線分部に相当する断面模式図を図9に示す。E−F断面において、太陽電池100の受光面100A側は受光面バス電極113と素子間接続部131の一端とが電気接続体141によって接続され、素子間接続部131の他端が隣の太陽電池100の裏面100B側において金属箔からなる本体部132と電気接続体141を通して接続され、素子間が導通される。本体部132は裏面側の裏面点状電極122Dとは電気接続体141を通じて、裏面囲み接着領域123とは封止材133を通じて接続される。上記構造をとる結果、裏面側の裏面点状電極122Dは半導体基板110および本体部132および封止材133によって囲まれ、封止される。封止材133としては、樹脂を含んでいても良いが、主に金属あるいはセラミックスなどの無機材料からなりガスあるいは水分を透過させないものを用いることが好ましく、本実施の形態においては、電気接続体141および封止材133を同一のはんだ材料で構成している。
電気接続体141としては、必ずしも形成されていなくてもよい。特に、第2層裏面電極がはんだ層であるときは、不要であるが、電気接続体141の存在により、より接着性が向上する。電気接続体141がない場合は、裏面点状電極122Dと本体部132との接続抵抗が大きくなり電流取り出し効率が低下する。従って、素子電極が素子面内方向の集電に寄与するように裏面100B側の裏面点状電極122Dの形状を、例えば図1に示される受光面電極115に裏面囲み接着領域123を加えたような形の線状電極とし、ひとつながりの素子電極とすることが好ましい。
このように金属箔からなる本体部132が、裏面囲み接着領域123以外の素子電極と電気接続体141によって接続しない場合は、金属箔にしわをもたせて半導体基板110に接続することによって、金属箔からなる本体部132と半導体基板110としてのn型単結晶シリコン基板101との熱膨張率の差による太陽電池100の反りを抑制できるという利点がある。また、金属箔からなる本体部132と、素子間接続部131とは必ずしも別々に構成されていなくてもよく、素子間接続部131と、本体部132とが一枚の金属箔で形成されていてもよい。
本実施の形態では第2層裏面電極122b、封止材133および電気接続体141とで同一のはんだ材料を用いているが、異なる材料を用いてもよい。異なるはんだ材料を使用するにあたっては、あとではんだ付けするものの融点のほうが先にはんだ付けするものの融点よりも低い方が好ましい。このような接続方法として、例えば、あらかじめはんだ材料が被覆された太陽電池100と封止材133を用意し、高融点のはんだからなる第2層裏面電極122bとによって裏面囲み接着領域123と金属箔からなる本体部132とを先に固定しておき、後に、低融点のはんだからなる電気接続体141を溶融させて裏面点状電極122Dと本体部132とを接続するとともに素子間接続部131と本体部132、および受光面バス電極113と、を接続することができる。第2層裏面電極122bと電気接続体141との組み合わせとしては、例えばそれぞれ0.35%の銀を含む錫と、37%の鉛を含む錫、等の材料を用いることができる。これらのはんだ付けの際にはそれぞれ異なるフラックスを使用してもよい。上記低融点のはんだは、上記高融点のはんだよりも融点の低い組成をもつものである。また、裏面囲み接着領域123および金属箔からなる本体部132は1つの太陽電池100に対して複数の別個の領域に分けて素子電極を封止してもよい。太陽電池100の裏面100B全体を一体的に封止するのではなく、複数の領域に分けて封止することで、熱あるいは外部からの衝撃によって太陽電池100が応力をうけたときに、剥離するのを抑制することができる。また、太陽電池100の半導体基板110と金属箔からなる本体部132との間は、ガスあるいはシリコーン等の樹脂を充填して一体的あるいは複数の領域に分けて封止し、固定してもよい。
比較例となる従来の太陽電池について考察する。従来の太陽電池では、裏面側の電流取り出し電極と裏面全面電極とを合わせた裏面側素子電極が半導体基板と裏面全体で接触する構造となる。裏面側の電流取り出し電極は素子間接続体を接続するための領域を示しており、材質ははんだ付けし易い銀等の金属が用いられ、もう一つの素子電極である裏面全面電極はアルミニウムが拡散していくことにより半導体と電極との界面での再結合を低減する裏面電界層(BSF)が形成できるため、アルミニウムを用いる。BSFは表面がパッシベーションされる場合に比べれば再結合速度が大きいため、このような金属電極と半導体基板とが太陽電池表面の全域で接触する構造では、金属電極と半導体との界面において励起キャリアの再結合が生じ、光電変換効率は低い値にとどまっていた。以上のように、半導体基板の裏面全体に電極を有する従来の太陽電池においては初期から光電変換効率が低いため、受光面側の電極の劣化等の原因で太陽電池が寿命を迎えるまでの生涯発電量が低いという問題があった。一方で、上記構造では裏面側全体に電極が形成され、電極と半導体基板とのコンタクト面積が広いため、電極の一部が腐食あるいは剥離を生じることによる接触抵抗増大の影響が小さいという利点があった。従って、一般的なモジュール構造において、設置環境からの水分の浸透による裏面電極側の接触抵抗の増大速度は、受光面側の電極の接触抵抗が増大する速度よりも遅く、裏面電極側の接触抵抗は発電出力の経時劣化の大きな要因にならなかった。
一般的に、電極と半導体との界面のみならず半導体基板の表面が大気あるいは封止材に露出した状態では、半導体表面に存在する欠陥を通じて再結合損失が生じてしまうため、半導体表面の再結合速度を低下させるパッシベーション膜で覆うことが、光電変換効率の向上には必要である。そこで、光電変換効率を高めるために太陽電池の裏面側の電極面積を狭くし、それ以外の領域をパッシベーション膜で覆うことが一般的に行われる。この場合、素子裏面の電極は受光面側の電極と同様に半導体基板から電流を集電する裏面側集電電極と素子間接続体と接続される裏面バス電極とで構成される。
従来の両面パッシベーション太陽電池においては、受光面側のみならず裏面側においても電極が半導体基板面内全体に広く分布する構造となっている。半導体基板面内全体に広く分布する構造であるのは、太陽電池の面内方向の導電性を確保するとともに、電極と半導体基板との接触部分による再結合損失をなるべく低減するために基板全体を覆わないように電極をある程度の間隔で離間させる必要が有るためである。上記構造においては、半導体基板は金属よりも導電性がはるかに低いため、電極がない部分では電流が素子内を流れて電極部分まで到達するまでに素子の厚みに加えて素子電極までの半導体基板自身の抵抗が加わり、基板内での抵抗損失が大きくなるため、抵抗の観点からは素子電極間の距離を狭めることが好ましい。一方で電極間隔が狭い場合は、半導体と金属が接触する部分ではキャリアの再結合速度が大きく、素子電極と半導体との接触面積は小さい方が好ましいため、半導体内の再結合速度の点から裏面側においても素子電極間の距離および電極と半導体との接触面積を狭める必要がある。これらの抵抗、再結合速度の観点から光電変換効率の最大化のためには、素子電極間隔および電極と半導体との接触面積としては最適値を有する。半導体基板と半導体基板から電流を取り出すための広く分布した小面積の金属電極との接触部分つまりコンタクト部以外の部分は、十分に界面のキャリア再結合速度を低下させるパッシベーション膜で半導体基板表面を覆うことによって光電変換効率が向上する。上記理由により、半導体基板の受光面と裏面側において素子電極が半導体基板全体に広く分布する構造をとり、素子電極以外の半導体表面はパッシベーション膜によって覆われる両面パッシベーション素子のほうが、半導体基板の裏面側の全面に素子電極が形成される構造のものに比べて光電変換効率が高いという利点があった。
しかし一方で、本発明者らは、両面パッシベーション型の太陽電池では、半導体基板の裏面側全面に電極がある構造に比べて高温高湿度における光電変換効率の劣化速度が速くなることを新たに見出した。一例としては、モジュールにおける水分透過量および素子電極に使用する材料によっても異なるが、温度85℃湿度85度の高温高湿環境下に1000時間おいた後に直列抵抗が5%から20%程度増加した。同一の封止条件の素子裏面全面にガラスフリットを含むアルミニウム電極を有する太陽電池を用いたモジュールでは1%以下であり、倍以上の速度で劣化した。このため、裏面側にガラスフリット電極を用いた両面パッシベーション型の太陽電池は初期の光電変換効率は高くても時間を経るに従って発電出力が低下するため、太陽電池が発電しなくなるまでの間の発電電力が初期出力と従来の太陽電池の劣化速度から想定されるほどは高くない。これは裏面の素子電極と半導体との接触面積が小さく且つ電極外周の周長がながいため、水分が素子電極と半導体との間に浸透し易く、電極の腐食あるいはガラスフリットの溶解と半導体基板からの剥離が生じ、これらの間の接触抵抗が増大するためである。また、モジュールにおいては、一般的には受光面側にガラスを配置し、裏面側には樹脂フィルムを配置するため、受光面側からの水分の侵入はないのに対し、裏面側からは水分が浸透し易いため、特に裏面側の素子電極は水分の影響をうけ易い。このような劣化は銀のみの場合に比べて、銀以外の例えばアルミニウムなどの卑金属を含有する電極においては特に顕著であることも判明した。例えばアルミニウムと銀を含有する電極においてはアルミニウムと銀の金属間化合物が形成され、水分により機械的強度が低下し易く、経時的な接触抵抗の増大が起こり易いと考えられる。また、例えば半導体基板の裏面側にテクスチャーがなく、半導体基板と裏面側の素子電極との接続部の表面粗度が低くなる場合、経時的な接触抵抗の増大による光電変換効率の低下が早まるという問題もあらたに見出した。これは受光面側についても同様である。テクスチャーがある場合に比べて基板と素子電極と接触面積が小さいためと考えられる。
そこで、実施の形態1では、裏面側の素子電極を無機材料であるはんだ層で封止することとした。本実施の形態1の構造では、裏面点状電極122Dが、ガラスフリットを含有する金属層からなる第1層裏面電極122aと第1層裏面電極122aを覆うはんだ層からなる第2層裏面電極122bとの2層構造で構成している。そしてさらに金属箔からなる素子間接続体130の本体部132および裏面囲み接着領域123に形成された封止材133で封止しているため、外部から半導体基板110上の素子電極形成部への水分の浸入が少なくなるため、電極の腐食および剥離等の劣化による経時的な接触抵抗の増大を抑制でき発電出力および光電変換効率を高く保つことができるという利点を有する。経時劣化は、裏面側にパッシベーション膜を有し、パッシベーション面積よりも狭い電極面積を有する太陽電池を用いた場合、裏面を樹脂で封止した一般的な太陽電池モジュールの構造においても生じていた。これに対し、実施の形態1の太陽電池100によればモジュール構造においても劣化を抑制することができる。従って、太陽電池および太陽電池モジュールにおいて、水分が素子裏面の素子電極まで到達することがないので、光電変換効率の劣化を抑制することができる、という効果を有する。また、アルミニウム等の卑金属が含まれていても発電出力の経時劣化の原因である水分あるいはガスの透過を低減できるため、発電出力および光電変換効率の経時劣化を抑制し、太陽電池およびモジュールの生涯発電量を増大することができるという利点を有する。さらに、例えば半導体基板の裏面側に多数の正四面体状ピラミッドからなるテクスチャーがなく、表面粗度が低く平坦な平坦面構造においても、経時的な接触抵抗の増大による発電出力および光電変換効率の低下を抑制できるため、太陽電池およびモジュールの生涯発電量を増大することができるという利点を有する。半導体の表面あるいは界面はキャリア再結合の大きな要因であるため、このような平坦な構造においては、キャリア再結合の原因となる部分の面積を低減することができるため光電変換効率が向上するという利点を有する。
また、素子間接続体130の本体部132を構成する金属箔は素子面内の集電抵抗を下げる機能を有するとともに、半導体の光吸収率が低いために吸収しきれずに素子を透過する光を反射することにより、半導体基板へ光を再入射させて光の利用効率を高めることによって、太陽電池の光電変換効率を高めるという機能を有する。例えば、200μm程度の厚みのシリコンが太陽電池の半導体基板の場合、主に900nm以上1300nm以下の波長の光の一部が吸収しきれずに素子を透過する。これに対し、金属箔として銅箔あるいはアルミ箔を使用すると900nm以上1300nm以下の波長の光を反射し、太陽電池の光電変換効率、ひいては発電出力が向上することが知られている。しかし、特許文献2に示された両面パッシベーション型太陽電池の裏面側に銅箔を配置しただけの構造では、大気中から侵入した水分および酸素によって金属箔の表面が容易に酸化され反射率が低下し、光電変換効率および発電出力が低下するという問題が生じる。太陽光の強度が強い波長領域で反射率が高く、比較的可採埋蔵量が多く工業的に大量に使用でき、安価な金属としてはアルミニウムあるいは銅などがあるが、銅は特に表面が酸化によって反射率が低下し易かった。一方で、アルミニウムははんだ付け性が悪いという問題があった。反射率の低下と光電変換効率の低下は、一般的な樹脂で封止された太陽電池モジュールにおいても発生する。特に、モジュールの封止材として一般的に用いられるエチレンビニルアセテートを使用し、素子間接続体130の本体部132を構成する金属箔として銅箔を使用する場合、エチレンビニルアセテートから発生する酢酸が銅の腐食を促進するという問題がある。これらの問題を抑制するために、例えば表面を錫で被覆すると、錫は銅に比べて数割程度反射率が低いため、被覆物そのものによって反射率が低下してしまう。これに対し、実施の形態1の構造では、太陽電池裏面側の素子電極のみならず本体部132を構成する金属箔の半導体基板100側の面も封止されるため、長期的に酸素あるいは水分およびモジュール封止樹脂から分離される。従って従来のような本体部132を構成する金属箔表面の反射率の低下および光電変換効率の低下が生じないという利点を有する。また、パッシベーション膜にシリコン酸化膜を用いた場合で生じる湿度によるパッシベーション能力の低下を抑制することができるという利点を有する。これらの結果、酸化され易いものの反射率と導電率の高い銅などの金属を素子裏面の金属箔として使用することができ、光電変換効率の初期値を高めることができる。更に、実施の形態1の構造では金属箔からなる本体部132を封止したことで、外部から金属箔からなる本体部132の半導体基板100側の面への水分の侵入を抑制することができるため、本体部132の酸化および腐食による経時的な反射率の低下を抑制でき、発電出力および光電変換効率劣化を抑制することができるという利点を有する。
経時劣化は、素子電極に卑金属を用いた場合、および半導体基板の裏面が平坦な場合において顕著であったが、これも抑制できるという利点を有する。また、経時劣化は裏面を樹脂で封止した一般的な太陽電池モジュールの構造においても生じていたが、実施の形態1の太陽電池を封止したモジュール構造においては、素子電極に卑金属を用いた場合も、密度の高い第2層裏面電極で第1層裏面電極を被覆しているため、耐湿性が向上し、劣化を抑制することができる。したがって実施の形態1によれば、太陽電池およびモジュールにおいて、初期の光電変換効率および長期的な光電変換効率および発電出力を高く保つことができるため、太陽電池が寿命を迎えるまでの生涯発電量を高めることができるという効果を奏する。
また、上記の構造によれば、太陽電池の裏面の金属の素子電極に接する部分のみにはんだを形成し、受光面側にははんだが形成されずに電極影が増えないので太陽電池の実効的な受光面積を減らすことがない。また、太陽電池100の裏面電極125として第1層裏面電極122aのみをはんだ層からなる第2層裏面電極122bで被覆することではんだが形成される面積を小さくできる。従って、太陽電池100を透過した光のうち電気接続体141によって吸収される光の量を低減し、金属箔からなる本体部132で反射して再度太陽電池100の裏面100B側から半導体基板100へ入射させることにより発電に寄与させることができる。例えば、素子間接続体130の本体部132を構成する金属箔として銅箔を用い、太陽電池100側の全面にめっきなどにより薄い錫などの金属層を形成しておいてもよい。金属層を用いる場合は錫のほうが銅よりも900nm−1200nmの反射率が低いため素子裏面に透過する光の反射が弱く、光電変換が低くなる。これらの効果によって、本発明の構造によれば光電変換効率を向上させることができるという利点を有する。
また、実施の形態1の太陽電池の構造によれば、モジュール全体への水分の進入を防止するために裏面にアルミ箔をポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムに張り合わせたものを裏面保護材として用いる場合に比べて静電耐圧を高めることができる。具体的には、素子間接続体などではんだにツノのような突起が生じた場合、素子間接続体と保護材のアルミニウムとが短絡するという問題がある。これに比べて本実施の形態では、エチレンビニルアセテート等の封止材で裏面保護材との間の離間距離が大きく、また、裏面保護材に金属箔を用いなくてよいため短絡の問題が生じないという利点がある。
実施の形態1の太陽電池100は、裏面電極125をドット電極すなわち裏面点状電極で構成したが、受光面側と同様グリッド電極で構成してもよい。裏面100B全体が、パッシベーション膜121と、裏面100B全体にわたって分布する裏面電極125とのいずれかで覆われている。裏面電極125は、図7に断面図を示すように、裏面100B全体に分布して配列された裏面点状電極122Dと、周縁部を覆う裏面囲み接着領域123とを備えている。裏面点状電極122Dは、パッシベーション膜121を貫通して形成されたガラスフリットを含有する第1層裏面電極122aと、第1層裏面電極122aの表面全体を覆うはんだ層からなる第2層裏面電極122bとで構成される。はんだ層は、第1層裏面電極122aよりも密度の高い導体である。
(製造方法)
次に、実施の形態1の太陽電池100の製造方法の一例について説明する。図10(a)から(j)は、実施の形態1の太陽電池の製造方法を模式的に示す工程断面図、図11は、同工程を示すフローチャートである。
まず、半導体基板110を形成する出発材料として数百μm厚のn型単結晶シリコン基板101を用意し、ステップS10で、基板洗浄を行う。n型単結晶シリコン基板101は、溶融したシリコンを冷却固化してできたインゴットをワイヤーソーでスライスして製造するため、表面にスライス時のダメージが残っている。そこで、ダメージ層除去工程を実施する。ダメージ層除去工程は、水酸化ナトリウム(NaOH)(濃度は例えば1wt%以上50wt%以下)に、70℃以上90℃以下程度の温度で、n型単結晶シリコン基板を数分又は数十分程度浸漬させ、シリコン基板表面をエッチングする工程である。水酸化ナトリウムの濃度は例えば1wt%以上50wt%以下とした。ダメージ層除去工程は、水酸化ナトリウム水溶液の他、水酸化カリウム(KOH)水溶液、水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カリウム水溶液の混合液などのアルカリ性水溶液、或いはフッ酸と硝酸の混合液などのエッチング液を用いてもよい。
上記エッチングする工程では、単結晶インゴットをスライスするときに生じたn型単結晶シリコン基板表面の機械加工変質層および汚れを取り除くため、およそ5μm以上20μm以下、基板表面をエッチングする。
エッチング後、ステップS20で、テクスチャー形成工程を実施する。テクスチャー形成工程は、n型単結晶シリコン基板101表面にテクスチャー構造と呼ばれる凹凸部を形成する工程である。テクスチャー構造とするのは、入射光の多重反射を利用した光閉じ込め技術であり、太陽電池の性能を高めるために行われる。上記テクスチャー構造を得るために、湿式エッチングによる方法、或いは機械的な方法でグルーブ加工する方法、ドライエッチングによる方法等の化学的除去法を実施する。湿式エッチングによる方法としては例えば、ダメージ層除去工程で用いたのと同様のアルカリ性水溶液に1wt%から30wt%のイソプロピルアルコールを添加した溶液、或いは炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液等を用いた工程がある。また、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)等のドライエッチングプロセスでn型単結晶シリコン基板の表面に1μm以上3μm以下の深さのテクスチャーを形成してもよい。
上記方法により、図10(a)に示すようにテクスチャー構造を有する半導体基板110としてのn型単結晶シリコン基板101を得ることができる。なお、ここではピラミッド状の凹凸部が均一に形成されている。図面では、特徴を顕在化させるために、凹凸の大きさを拡大した表現となっている。
次に、図10(b)に示すように、ステップS30で、テクスチャー構造を有するn型単結晶シリコン基板101を、高温の熱酸化炉に入れ、三臭化ホウ素(BBr3)を拡散させる拡散処理を行う。当該拡散工程では、例えば三臭化ホウ素ガス中で気相拡散法により温度850℃以上1050℃以下で時間10分から60分の処理のなされたn型単結晶シリコン基板101の熱処理を行い、n型単結晶シリコン基板101の表面にp型拡散層102を形成することでpn接合を形成する。
次に、ステップS40を実施し、p型拡散層102を形成する時に生じるガラスを主成分とするボロンガラスをフッ酸水溶液で除去する。ボロンガラスは、拡散工程で生成され、不純物としてのボロンを含有する、不純物含有膜である。ステップS40は不純物含有膜除去ステップである。
そしてマスクとしての熱酸化膜形成ステップS50を実施する。図10(c)に示すように、不純物含有膜除去ステップを経たn型単結晶シリコン基板101を、温度850℃以上1050℃以下の熱酸化炉に入れ、酸素雰囲気中で、時間10分から60分の熱処理を行い、拡散に際してマスクとなる厚さ30nm以上の熱酸化膜103を形成する。
上記熱処理工程はボロン供給源となるボロンガラスを除去した後に行っているので、n型単結晶シリコン基板内へのボロンの過剰な拡散を抑制しつつ、深い接合を形成できる。接合を深くすることで、電極が空乏層領域より遠ざかり、少数キャリアの再結合が抑制される方向にシフトするため、高い発電効率を得ることができる。そして上記熱処理工程で生成された熱酸化膜が裏面側の拡散層形成のためのマスクとなる。
次いで、図10(d)に示すように、ステップS60で、片面エッチャー装置を用いて、n型単結晶シリコン基板101の裏面101B側の片面をフッ酸と硝酸の混合液でウェットエッチングし、裏面101Bの熱酸化膜103およびp型拡散層102を除去し、裏面の拡散層除去を行う。
そして、図10(e)に示すように、ステップS70で、n型単結晶シリコン基板101を高温の熱酸化炉に入れ、オキシ塩化リン(POCl3)等のn型不純物を拡散させ、裏面への拡散層形成を行う。上記拡散工程では、例えばオキシ塩化リンガス中で、気相拡散法により温度750℃から950℃で時間10分から60分の熱処理を行い、n型単結晶シリコン基板101の上記ウェットエッチングした面にn型拡散層104を形成することで、裏面電界(BSF)層を形成する。裏面への拡散層形成ステップに際しては、n型単結晶シリコン基板101のp層拡散層102上に熱酸化膜103が形成されているため、該熱酸化膜103が拡散保護マスクとして働き、p型拡散層102上にn型拡散層104の形成を防ぐことができる。
そして拡散工程後、図10(f)に示すように、上記n型拡散層104を形成する時に生じるガラスを主成分とするリンガラスと、上記p型拡散層102上の熱酸化膜103をフッ酸水溶液で除去することで、n型単結晶シリコン基板101の片面すなわち受光面101A側にp型拡散層102、もう一方すなわち裏面101B側にn型拡散層104を形成することができる。次いで、n型単結晶シリコン基板101表面を洗浄する。洗浄は、塩酸過水(HPM)、硫酸過水(SPM)、硫酸(H2SO4)、硝酸、過酸化水素水(H2O2)、オゾン(O3)水、フッ酸、もしくはこれら酸などの混合液、あるいはこれら酸などの組み合わせ、繰り返しによって、行うことができる。
ステップS80で、洗浄したn型単結晶シリコン基板101を温度850℃以上1050℃以下の熱酸化炉に入れ、酸素雰囲気中で、酸化膜形成ステップを実施し、時間10分から60分の熱処理を行い、厚さ5nm以上30nm以下の酸化膜105を形成する。
次に、ステップS90でn型単結晶シリコン基板101に、反射防止膜となる窒化シリコン膜106を形成する。成膜はプラズマCVD装置等の気相法を用いて、40nm以上100nm以下のSiNx膜を形成する。また図10(g)に示すように、上記反射防止膜となる窒化シリコン膜106と同じ条件で、n型拡散層104側にも窒化シリコン膜107を形成する。窒化シリコン膜107はn型拡散層104に対するパッシベーション膜となる。ここで反射防止膜としての窒化シリコン膜106とパッシベーション膜となる窒化シリコン膜107とは同一工程で形成されるかあるいは順次同一条件で形成されるかのいずれでもよい。受光面側101Aでは酸化膜105によってパッシベーション効果が十分に得られており、窒化シリコン膜106はパッシベーション膜としても作用するが反射防止膜として有効に作用する。一方裏面側では酸化膜105と窒化シリコン膜107とによってパッシベーション膜として作用している。図1から図9の説明では、受光面101A側のp型拡散層102の外層の膜、裏面101B側のn型拡散層104の外層の膜すべてをパッシベーション膜111,121としている。
そして、図10(h)に示すように、電極印刷ステップS100で、増粘剤などの有機物とガラスフリットと数%程度のアルミニウムを含有する市販の太陽電池用銀ペーストをボロン拡散面にスクリーン印刷し、図2に示した点状電極となるように第1層裏面電極122aのパターンを形成する。同様に、市販のガラスフリットを含有する銀ペーストをリン拡散面にスクリーン印刷し、図1に示した受光面電極115の形状となるようにする。
そして、ステップS110で、以上の処理のなされたn型単結晶シリコン基板101を、温度650℃から900℃で数十秒から数分間焼成することで、受光面電極115は、反射防止膜である窒化シリコン膜106および酸化膜105を突き破り、アルミニウムがn型単結晶シリコン基板101の表面に拡散し、p型拡散層102とのオーミック接触を得る。一方、第1層裏面電極122aは窒化シリコン膜107および酸化膜105を突き破り、図10(i)に示すように、n型拡散層104とのオーミック接触を得る。
次に、ステップS120でボロン拡散面のウェハ外縁部の表面を除去してpn接合分離を行う。このようなウェハ表面の除去方法としては、図示しないが裏面囲み接着領域123の外周のウェハ外縁にレーザーを照射して局所的にボロンドープ層を除去して幅10μm、深さ20μm程度の分離溝を形成する。以上のように、裏面囲み接着領域123を囲うようにn型拡散層104が無い部分が形成され、受光面101A側のp型拡散層102と裏面101B側のn型拡散層104との間が高抵抗となるため、受光面電極115と裏面電極125との間の短絡を防ぐことができる。このようなpn分離としてはレーザー以外にも、半導体基板端面へのサンドブラストあるいは腐食性ガスを用いたプラズマエッチングを用いて、半導体基板側端面に形成されたドープ層を除去しても良い。
そして最後に、はんだ層の形成ステップS130によって、図10(j)に示すように、裏面側の第1層裏面電極122aの周りに、はんだ層からなる第2層裏面電極122bを形成する。以上の工程で太陽電池のセル構成が完成する。
このようにして形成された太陽電池100の裏面点状電極122Dはガラスフリットを含有する第1層裏面電極122aと、第1層裏面電極122aを被覆する第2層裏面電極122bとで構成されている。従って、ガラスフリットを含有するペーストを焼成することで、密度が粗である第1層裏面電極122aを、密度の高いはんだ層からなる第2層裏面電極122bで被覆することで、耐湿性が高く集電抵抗の低い電極を形成することができる。
次に、第2層裏面電極122bを形成する方法について詳細に説明する。本実施の形態においては、第2層裏面電極122bとしてはんだ層を用いているが、第1層裏面電極122a表面を確実に被覆し、かつ、第1層裏面電極122a表面以外の領域には形成されないように形成することが必要である。一方で工数を増大することなく形成することも重要である。そこで、本実施の形態では、第2層裏面電極122bとしてはんだ層を用い、電気接続体141と封止材133としても、同一のはんだ層を用いることとし、可能な限り同一工程で形成できるようにする。
材料として0.3%の銀を含む錫はんだを用いて太陽電池の裏面電極125の表面を錫銀はんだで被覆する。実施の形態1のはんだ層の形態方法について、図12を参照しつつ説明する。0.3%の銀を含む錫はんだをはんだ浴201に入れた状態で加熱して溶融させ、溶融はんだ202を得て、保持する。溶融はんだ浴200に、図12に示すように太陽電池100の裏面100Bのみを浸漬してから引き上げて室温に戻すことにより、はんだ層からなる第2層裏面電極122bが形成される。第2層裏面電極122bは、太陽電池100の裏面100Bの第1層裏面電極122aを被覆する。
なお、はんだ浴201から引き上げた状態で室温に戻して硬化させたままの状態では、はんだに凸部が生じるので、素子の裏面側を上に向けた状態で再度はんだが溶融するまで太陽電池を加熱してから再び室温にすることによりはんだを平坦にしてもよい。以上のようにしてはんだ浴201に片面のみを浸漬することにより、位置あわせすることなくはんだを太陽電池100の第1層裏面電極122aの表面だけに自己整合的に形成することができる。
このような方法によって裏面の素子電極上に自己整合的にはんだを形成するためには、第1層裏面電極122aおよび裏面囲み接着領域123と封止材133との濡れ性が良い組み合わせを選ぶ必要がある。上記のような素子電極側に電気接続体141を形成する以外の方法として、素子間接続体130の本体部132を構成する金属箔側に電気接続体141を形成していても良い。具体的には、図3に示した本体部132上の、太陽電池100と接続される側の面に、電気めっきあるいはクリームはんだのスクリーン印刷等の形成方法によって錫層あるいははんだ層を形成することができる。錫層あるいははんだ層を形成する際の本体部132上に形成されるはんだ領域は本体部132の全面に形成されていてもよいが、本体部132の反射率が、接合に用いるはんだ材料よりも高い場合は、はんだ層は、太陽電池の素子電極と接続される部分に局所的に形成されることが好ましい。
また、例えば、電気接続体141と封止材133とで異なる金属を用いる場合、裏面囲み接着領域123および裏面点状電極122Dあるいは第1層裏面電極122aのそれぞれに選択的にはんだ被覆を行う必要がある。はんだ被覆を行う場合は、図13に示すようにはんだ噴流部203により局所的にはんだ液面を持ち上げ、溶融はんだ202の液面から離間し、かつ、はんだ噴流部203よりも低くなるように太陽電池100を保持し、太陽電池100の裏面囲み接着領域123のみがはんだ噴流部203に当たるように太陽電池100を動かせばよい。上記構成によれば、はんだをつける際の熱ダメージを低減できるという利点がある。また、はんだペーストを印刷して形成してもよい。さらにまた、CVD等によって裏面囲み接着領域123にシリコン酸化膜を形成し、封止材133としてガラスフリットを印刷して形成し、本体部132として太陽電池100を構成する半導体基板側に銀を蒸着したガラス板を用いて、ガラス板とガラスフリットと裏面囲み接着領域123のシリコン酸化膜とを突き当てた状態で、レーザー光をガラスフリット部に照射して局所的に加熱することによりガラスフリットで半導体基板の裏面電極125を封止することもできる。
なお、以上の工程で第2層裏面電極122bを形成した後、太陽電池100の素子間接続すなわちセル間接続を行い、太陽電池ストリングを形成する。セル間の接続に用いられる素子間接続体130は、素子間を接続する4本の棒状体からなる素子間接続部131と、素子間接続部131に接続される金属箔からなる本体部132とで構成される。素子間接続部131及び本体部132は、いずれも銅の表面を電気接続体141としてはんだめっき層で被覆されている。
まず、この工程では素子間接続体130の本体部132を形成する金属箔をホットプレートに載せて本体部132の電気接続体141が溶融する温度まで加熱し、上記のようにしてはんだ付けを行った太陽電池100の裏面100B側を本体部132側に向けて載せてからホットプレートの温度を下げることで本体部132と太陽電池100とを電気的かつ機械的に接続し、受光面側が図1、裏面側が図4に示される太陽電池100を製造することができる。また、加熱の際に、はんだからなる電気接続体141で被覆された素子間接続部131を太陽電池100の受光面バス電極113と本体部132とに押し当てた状態で加熱することで、素子間接続部131を受光面バス電極113と本体部132とに接続することができる。以上の工程の繰り返しにより図5,図6に示される太陽電池のストリングを形成することができる。
実施の形態の本体部132には銅を用い、厚みとしては、20μmとする。数μm以上の厚みがあればガスおよび水分の透過を防ぐことができるが、蒸着法などの薄膜形成法によって現実的に形成され得る数十以上数百nm以下の厚みの場合、大気中の酸素で酸化される酸化被膜の膜厚と同程度の厚みであるため、非受光面側から酸化されて脆くなった部分からガスおよび水分の透過が生じる恐れがある。このことは、素子電極自身に金属蒸着膜を用いて金属箔で封止されていない構造の場合にも同様に生じ得る。
また、本体部132の厚みが大き過ぎると素子の反りが大きくなる。接続工程においては、本体部132に用いる銅の反射率を高く保つために、事前に銅箔の半導体基板側を化学的あるいは機械的に除去して酸化物を取り除いた上で、不活性ガス雰囲気中で加熱しながらはんだを溶融させて接続するのが望ましい。
また、この他、本体部132表面を酸化から保護する方法として半導体基板110の透過光に対して透明な被覆材あるいは充填剤等を銅箔側に形成しておいてもよい。この方法としては、例えば、あらかじめベンゾトリアゾールなどを銅箔の表面に塗布しておいてもよい。また、素子間接続体130の本体部132としては0.2mm程度の厚みの銅の偏平な箔を用いることができる。
上述した説明では、半導体基板としてシリコン基板を用いた太陽電池を例に挙げて説明したが、シリコン以外の、また太陽電池以外の半導体装置、デバイスにも実施の形態の方法を適用することができる。
また、上述した説明では、単結晶シリコン基板を用いた場合を説明したが、多結晶シリコン基板やガリウムヒ素基板等の無機固体型の太陽電池にも適用することができる。
また、半導体基板内部の受光面と裏面のドープ層および半導体基板自身の半導体の型はどのような組み合わせにしてもよいが、その場合の電極パターンにおいても受光面の電極パターンは図1のようにひとつながりになるようにする必要がある。例えば、ボロン側を受光面側にしてもよいが、その場合は、リン拡散層からなるn型拡散層が形成された側を図2のものに、ボロン拡散面側を図1のものに入れ替え、電極材料はp型シリコンとの接触抵抗が小さいものを用いる必要がある。この際の金属箔はリンドープ層側の電極に接続する。
上述したように、溶融はんだに浸漬することではんだ層を形成することで第2層裏面電極を形成する、実施の形態1の方法によれば、第1層裏面電極122aに対して濡れ性のよいはんだを受光素子の片面のみに接触させることができるので、位置あわせを行うことなく自己整合的に第2層裏面電極122bを形成することができる。また、はんだの濡れ性の差により、第1層裏面電極122a上に選択的にはんだ層が形成され第2層裏面電極122bが形成される。さらにまた、はんだの場合、溶融はんだの比重が大きいため、太陽電池は溶融はんだ上に浮き、裏面にのみ選択的に第2層裏面電極122bが形成される。また、受光面側にははんだが形成されないため、太陽電池の実効的な受光面積を減らすことがないという利点を有する。また、位置あわせを行うことなく太陽電池の裏面電極のみに被覆するようにはんだを形成することではんだが形成される面積を小さくできるため、太陽電池100を透過した光のうち電気接続体141によって吸収される光の量を低減し、本体部132で反射して再度太陽電池100の裏面側から半導体基板に入射させることにより発電に寄与させることができ、光電変換効率を向上させることができるという利点を有する。
また、融点が低くヤング率が小さいはんだを素子電極の被覆に用いているため、はんだで被覆した後の反りが低減でき、素子の割れを低減できるという利点を有する。
以上説明してきたように、実施の形態1の太陽電池によれば、第1層裏面電極122aが密度の高いはんだ層からなる第2層裏面電極122bで覆われており、水分の侵入を防ぎ、耐湿性が高いものとなっている。さらに、第2層裏面電極122bの外側が素子間接続体130の本体部132を構成する金属箔で覆われており、しかも、周縁部に沿って帯状に周回する裏面囲み接着領域123で、封止体133であるはんだ層で封止がなされているため、水分の透過を2重構造で抑制している。従って耐湿性の高い太陽電池を得ることができる。
また、金属箔からなる素子間接続体130の本体部132が、半導体基板110の周縁部で囲まれた内部領域においても、第2層裏面電極122bと、当接し、電気的に接続されている。従って、裏面側の電気抵抗を低減できる。また、金属箔によって水分の浸透を阻害することにより耐湿性を向上させることができる。
第2層裏面電極122bは、受光面電極115および、第1層裏面電極122aに含有されるガラスフリットの溶融温度よりも、融点の低い金属で構成される。したがって、はんだ、銀ロウ等の導電性接着剤を用いて実施の形態1の太陽電池100を製造することができる。融点が低い金属は基本的には線膨張係数が小さいため、素子の反り、割れを防ぐことができる。図12および図13の装置を用いて形成したはんだ層からなる、第2層裏面電極122bすなわち被覆金属の融点がガラスフリットよりも低いため、溶融して形成されたはんだ層すなわち金属膜とシリコン基板との間の熱膨張率差による反りが、ガラスフリット電極のみを使用した場合よりも少ない。特に裏面のグリッド電極が、受光面電極よりも多い場合、反りを低減できる。また、第2層裏面電極122bを形成するための金属膜としては、溶融させてもガラスフリットが溶融しない融点をもつ金属を用いることで、自己整合的に効率よくガラスフリット電極に接続することができ、抵抗低減、タブ接続等の電気接続に使用できる。
また、裏面側の裏面電極のみが2層構造で形成され、第2層裏面電極が、第1層裏面電極の周りを覆う金属層であるため、受光面側の電極影面積を増やすことなく裏面素子電極の耐湿性、導電性に優れた太陽電池を簡便に製造することができる。裏面の銀使用量を低減できる。特に、太陽電池の裏面側はガラス基板ではなくフィルムで構成されることが多く、裏面側では水分が入り易い構造となっているが、第1層裏面電極を、金属膜からなる第2層裏面電極で被覆し、さらに外側を素子間接続体130の本体部132で確実に密着封止した構造であるため、水分の侵入を確実に防ぎ、耐湿性を向上することができる。
第2層裏面電極を形成する工程は、1層裏面電極を焼成したのち、溶融はんだを充填したはんだ浴に半導体基板の裏面を浸漬して、第1層裏面電極上に、第2層裏面電極を形成する工程を含む。なお、位置合わせをしなくても、印刷ガラスフリット電極である第1層裏面電極上のみにセルフアラインではんだ層を積層することができる。電気めっきに比べ溶融めっきのほうが低コストで、n側のみならず半導体のp側にもめっき層を接着することができる。また、電解めっき、無電解めっきではパッシベーション膜のピンホールで不要な析出が生じるという問題がある場合があるが、不要な析出が発生するおそれもない。
なお、実施の形態1では、溶融はんだなどの溶融金属に浸漬することで第2層裏面電極を形成したが、第2層裏面電極を、第1層裏面電極を焼成したのち、溶融めっき浴に半導体基板の裏面を浸漬させて、第1層裏面電極上に、第2層裏面電極を形成しても良い。第1層裏面電極に位置あわせをすることなく、自己整合的にめっき電極を形成することができ、受光面側の電極影面積を増大することなく、耐湿性の高い裏面電極を形成することが可能となる。
また、第2層裏面電極を形成する工程は、溶融金属を充填した金属槽から引き上げたのち、第2層裏面電極を上に向けて加熱する工程を含むのが望ましい。溶融めっきに突起ができると、モジュール化する際に突起でバックフィルムを破壊し、絶縁性が低下するおそれがあるため、一旦溶融温度まで加熱し平坦化しておくことで、信頼性が向上する。
また、素子間接続体130の本体部132を太陽電池100の裏面側に装着する工程はレーザー照射によって溶融させて固着してもよく、容易に確実なシールが可能となる。
実施の形態2.
図14は、本発明の実施の形態2にかかる太陽電池の裏面側の素子電極の形状を示す平面図であり、素子裏面の金属箔を除いた素子単体を示している。図15および図16は、実施の形態2の太陽電池の断面図であり、図5と図6中のC−D断面およびE−F断面に相当する図である。実施の形態2の太陽電池100Sは、裏面の素子電極の形状が実施の形態1の太陽電池と異なっており、図14に示すように裏面100B側の素子間接続体130にあたる部分には半導体基板110上に素子電極がない構造となっている。両面にパッシベーション膜を形成した太陽電池上に形成される素子電極である受光面電極115および裏面電極125を、ガラスフリットを含有する第1層電極と、第1層電極全体を、水分透過量の小さい金属で被覆したものである点では実施の形態1の太陽電池と各構成要素は上述した素子構造と同様である。
本実施の形態2にかかる太陽電池100Sにおいては、素子間接続体130の素子間接続部131と裏面100B側の素子電極である裏面線状電極122Lとが、凹凸を有する金属箔からなる本体部132Sを介して金属箔からなる本体部132Sの膜厚以上の距離を隔てて接続されているため、離間距離の分だけ本体部132が歪むことができ、素子間接続体130の本体部132Sを接続した際の反りを低減することができるという利点を有する。
実施の形態3.
実施の形態1および2では、裏面側の素子電極が、第1層裏面電極122aと第1層裏面電極122aを覆う密度の高い金属材料からなる第2層裏面電極122bで被覆された例について説明したが、図17に示すように、裏面側の素子電極が、第1層裏面電極122aが、はんだ層などの密度の高い金属材料からなる封止材133によって直接覆われる構成をとる。
上記構成においても、確実に封止材133が第1層裏面電極122aを覆うように形成できれば、かかる構造においても水分の透過量を低減できる。しかしながら、2層構造の裏面電極をさらに金属箔からなる素子間接続体の本体部を用いて封止する場合に比べると素子の劣化低減効果は低下する。
封止材133にははんだ等のち密な導電材を用いることができ、受光面側は受光面バス電極115と素子間接続体の素子間接続部131との間のみにはんだが形成される。
また、図18に変形例を示すように、受光面側の集電電極である受光面電極も、フリットガラスを含有する第1層受光面電極112aと、はんだ層からなる第2層受光面電極112bとで構成してもよい。ただし、その場合、電極影が増える分だけ光電変換効率が低下する。その一方で、受光面電極も保護されるため発電特性の劣化を抑制することができる。なお第2層受光面電極112bははんだ層に限定されることなく、印刷および焼成によって形成されるフリットガラスを含有する層である第1層受光面電極112aよりも密度の高い導電性膜であればよい。裏面側のみ、少なくとも半導体基板との接触部の第1層裏面電極上に封止材133が形成され、受光面側は集電用であるバス電極上以外の部分に形成されないようにすることで、光電変換効率の低下を抑制するとともに、素子の劣化を抑制することができる。
なお、第2層裏面電極としては、フリットガラスを含有する導電性ペーストを印刷、焼成することによって得られるいわゆる厚膜法で得られた膜ではなく、第1層裏面電極の端部以外の部分に、めっき層などの、第1層裏面電極に到達する貫通孔を有しない連続体を用いることが重要である。このように本願において、第1層裏面電極を被覆する第2層裏面電極が連続体であるということは、第2層裏面電極の端部以外の部分で第2層裏面電極の内部を通って第1層裏面電極まで到達する貫通孔を有しないことを意味する。この貫通孔を有しないとは微視的な意味での貫通孔を有しないということであり、貫通孔を有しない連続体は、高密度で膜質の高いめっき層などの薄膜および薄膜の積層体、溶融アルミを第1層裏面電極上で硬化させたものを含むものとする。
なお、アルミを含有するガラスフリット電極は特に水分に弱いという問題があったが、第1層電極をアルミを含有するガラスフリット電極で構成しても、第2層電極を溶融アルミを第1層裏面電極上で硬化させたものなど、連続体で構成することで、耐湿性の高い太陽電池を得ることが可能となる。
また、実施の形態1から3において、電気接続体141は、はんだめっき層で形成しているが、電気的導通をはかることのできる他の導体層でもよいことはいうまでもない。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。