JP2017004787A - 電子顕微鏡用試料保持体及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】試料ステージに対して精度の良い位置合わせを可能とする構造を有した電子顕微鏡用試料保持体及びその作製方法を提供すること。【解決手段】電子顕微鏡用試料保持体は、単結晶シリコン基板と、前記単結晶シリコン基板に設けられた開口部を塞ぐように前記単結晶シリコン基板の第1面に設けられた薄膜と、を備え、前記単結晶シリコン基板の側端面は、前記第1面に対して傾斜し、かつ、(111)面が現れており、前記薄膜は、電子線に対して透過性を有する。前記開口部の内面にも前記(111)面が現れていてもよい。【選択図】図3
Description
本発明は、電子顕微鏡の試料ステージに試料を保持するための電子顕微鏡用試料保持体及びその作製方法に関する。特に、走査型電子顕微鏡(SEM)用の試料保持体及びその作製方法に関する。
従来、走査型電子顕微鏡においては、試料ステージ上に観察対象となる試料を配置し、試料に荷電粒子線などの一次電子線を照射することにより生じる二次電子線(反射電子線)を検出して試料表面の微細な形状等を観察していた。このとき、一次電子線を正確に試料に到達させるためには、試料観察室内を真空ポンプ等で真空引きして真空(減圧)状態に維持する必要がある。
しかしながら、試料観察室内を真空状態に維持した場合、試料として水分を含むものを用いることができないという問題があった。つまり、水分を含む試料を真空状態においた場合、試料から水分が蒸発してしまい、水分を含む状態における試料を正確に観察することができないという問題があった。
そのような問題点を改善するために、近年、一次電子線の照射源となる部分を真空状態に維持し、試料観察室内のみを大気圧状態に維持することにより、大気圧下での試料観察を可能とした走査型電子顕微鏡の開発が進められている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、真空状態に維持した真空室内に一次電子線の電子源を配置し、真空室の一部を構成する薄膜を通して大気圧下に置かれた試料に一次電子線を照射し、その試料から発生した二次電子線を検出する走査型電子顕微鏡が記載されている。
例えば、特許文献1に記載された走査型電子顕微鏡では、試料保持体の一部を構成する薄膜が真空(減圧状態)に維持された空間と大気圧状態に維持された空間とを仕切っている。薄膜としては、気体や液体を透過せず、かつ、電子線を透過する材料を用いることができる。このような薄膜を用いた試料保持体は、特許文献3にも記載されるように既に公知技術である。
上述の特許文献1及び特許文献3に記載された試料保持体は、いずれも微細なシリコン基板の中央付近に開口を有し、その開口が薄膜で覆われた構造となっている。そして、薄膜上に試料を保持した状態で試料ステージに設置し、試料に対して薄膜を介して一次電子線を照射することにより、試料の観察像を得ることができる。このような試料保持体は、薄膜上に試料を直接保持するため、基本的には使い捨てであり、試料の交換ごとに試料保持体を交換する必要がある。
上述の試料保持体は、一般的な半導体製造技術を用いて形成することが可能である。試料保持体のサイズは一辺が数mm程度と小さく、通常は、シリコンウェハ上に複数の試料保持体を形成した後、ダイシングにより分断して個々の試料保持体に分離する。
しかしながら、ダイシングプロセスではシリコンウェハを物理的に切断するため、加工精度を確保することが難しい。その結果、切断面の状態が試料保持体ごとに異なる場合があり、試料ステージに設置した際に、斜めになってしまったり、奥行き方向の位置や左右方向の位置が微妙にずれてしまったりするおそれがある。そのため、試料保持体を交換するたびに、薄膜の位置がちょうど一次電子線の通過位置に一致するように微調整を行う必要があり、試料保持体の交換が煩わしいものとなっていた。
本発明の課題の一つは、試料ステージに対して精度の良い位置合わせを可能とする構造を有した電子顕微鏡用試料保持体及びその作製方法を提供することにある。
また、本発明の課題の一つは、ダイシングプロセスを用いずに、簡易な方法で電子顕微鏡用試料保持体を分断する方法を提供することにある。
本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡用試料保持体は、単結晶シリコン基板と、前記単結晶シリコン基板に設けられた開口部を塞ぐように前記単結晶シリコン基板の第1面に設けられた薄膜と、を備え、前記単結晶シリコン基板の側端面は、前記第1面に対して傾斜し、かつ、(111)面が現れており、前記薄膜は、電子線に対して透過性を有することを特徴とする。前記開口部の内面にも前記(111)面が現れていてもよい。
前記基板の前記第1面に対向する第2面は、(100)面であることが望ましい。なお、第2面が(100)面である場合、前記側端面と前記第1面とのなす角は、理論的には54.7度となる。
また、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡は、開口部が設けられた試料ステージを有し、前記開口部は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡用試料保持体の前記側端面と対面する傾斜面を有することを特徴とする。電子銃が配置された真空室と試料観察室とが前記試料ステージの前記開口部を介して連通していてもよい。
また、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡用試料保持体の作製方法は、単結晶シリコン基板の第1面に、電子線に対して透過性を有する薄膜を形成し、前記単結晶シリコン基板の前記第1面に対向する第2面に対して結晶異方性エッチングを行うことにより、前記単結晶シリコン基板に対し、矩形状の第1開口部と当該第1開口部の各辺に沿って前記第1開口部を囲むように配置された複数の第2開口部とを形成することを特徴とする。
このような電子顕微鏡用試料保持体の作製方法において、前記第1面に前記薄膜を形成した後、前記薄膜に加熱剥離型粘着シートを接着し、その後、前記第2面に対して前記結晶異方性エッチングを行ってもよい。また、前記結晶異方性エッチングを行う前に、前記第2面に酸化シリコン膜からなるマスクを形成し、当該マスクを用いて結晶異方性エッチングを行うことにより第1開口部及び第2開口部を形成してもよい。
また、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡用試料保持体の作製方法は、単結晶シリコン基板の第1面に、電子線に対して透過性を有する薄膜を形成し、前記単結晶シリコン基板の前記第1面に対向する第2面に対してエッチングを行うことにより、前記単結晶シリコン基板に対し、矩形状の第1開口部を形成し、その後、前記単結晶シリコン基板に対して結晶異方性エッチングを行うことにより、前記単結晶シリコン基板に対し、前記第1開口部の各辺に沿って前記第1開口部を囲むように複数の第2開口部を形成することを特徴とする。
このような電子顕微鏡用試料保持体の作製方法において、前記複数の開口部を形成した後、前記第2面に加熱剥離型粘着シートを接着し、その後、前記薄膜の一部をマスクとして、前記単結晶シリコン基板の第1面に対して結晶異方性エッチングを行ってもよい。
これらの電子顕微鏡用試料保持体の作製方法において、前記第2面が、(100)面であることが望ましい。
また、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡を用いた試料観察方法は、前述の電子顕微鏡用試料保持体を電子顕微鏡の試料ステージに設けられた開口部に配置し、前記電子顕微鏡用試料保持体を構成する薄膜を境界にして、一方の空間を大気圧状態に維持するとともに他方の空間を減圧状態に維持し、前記一方の空間において前記薄膜上に保持された試料に対し、前記他方の空間から前記薄膜を通して電子線を照射し、前記試料から発生した反射電子線を検出することを特徴とする。
本発明によれば、試料ステージに対して精度の良い位置合わせを可能とする構造を有した試料保持体及びその作製方法を提供することができる。
また、ダイシングプロセスを用いずに、簡易な方法で電子顕微鏡用試料保持体を分断する方法を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、Bなどを付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
(第1実施形態)
<走査型電子顕微鏡の構造>
図1は、本発明の第1実施形態に係る走査型電子顕微鏡を示す図である。本実施形態における走査型電子顕微鏡10は、主要な構成として、電子銃12、真空室14、ロードロック室16、試料観察室18、除振台20を備える。電子銃12、真空室14、ロードロック室16、試料観察室18には、それぞれ真空ポンプ22a〜22cが接続され、各室内を真空状態に維持することが可能となっている。なお、真空ポンプ22a〜22cは、各室にそれぞれ割り当てても良いし、複数室で真空ポンプを共用しても良い。また、真空室14、ロードロック室16及び試料観察室18は、それぞれが閉空間を構成するチャンバーとして機能する。
<走査型電子顕微鏡の構造>
図1は、本発明の第1実施形態に係る走査型電子顕微鏡を示す図である。本実施形態における走査型電子顕微鏡10は、主要な構成として、電子銃12、真空室14、ロードロック室16、試料観察室18、除振台20を備える。電子銃12、真空室14、ロードロック室16、試料観察室18には、それぞれ真空ポンプ22a〜22cが接続され、各室内を真空状態に維持することが可能となっている。なお、真空ポンプ22a〜22cは、各室にそれぞれ割り当てても良いし、複数室で真空ポンプを共用しても良い。また、真空室14、ロードロック室16及び試料観察室18は、それぞれが閉空間を構成するチャンバーとして機能する。
図1において、電子銃12には、電磁弁29aを介して真空ポンプ22aが接続される。したがって、電磁弁29aを開いて真空引きを行うことにより、電子銃12の筐体(鏡筒)内を真空状態(減圧状態)に維持することが可能である。真空状態に維持された電子銃12の内部においては、電子源24から出力された一次電子線(荷電粒子線)26が、収束レンズ28により収束され、上方(試料の設置された方向)に向かって出射される。電子銃12の筐体の出力端には、試料からの二次電子線(反射電子線)を受ける電子線検出器30が配置される。ただし、電子線検出器30を配置する位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、二次電子線を受けることが可能な位置であればどこであっても良い。
真空室14には、電磁弁29bを介して真空ポンプ22bが接続される。したがって、電磁弁29bを開いて真空引きを行うことにより、真空室14の内部を真空状態に維持することが可能である。なお、図1では、真空ポンプ22a及び真空ポンプ22bを別々の真空ポンプとして記載しているが、両者を共通の1台の真空ポンプで代用することも可能である。また、真空室14は、除振台20に支持されることにより外部からの振動が装置全体に伝達されないような構造となっている。
真空室14の上方には、ロードロック室16が配置される。ロードロック室16には、電磁弁29cを介して真空ポンプ22cが接続される。したがって、電磁弁29cを開いて真空引きを行うことにより、ロードロック室16を真空状態に維持することが可能である。
真空室14とロードロック室16との間には、開閉バルブ32が配置される。開閉バルブ32は、手動又は自動で開閉可能なバルブであり、真空室14とロードロック室16とを仕切る部材として機能する。すなわち、開閉バルブ32が開くと真空室14とロードロック室16とが連通し、開閉バルブ32が閉じると真空室14とロードロック室16とは個別のチャンバーとして機能することになる。
このように構成されたロードロック室16は、試料交換の際に、後述する試料ステージ34と電子銃12との間に、真空状態又は大気圧状態のいずれかの空間を形成するためのチャンバーである。つまり、試料観察時は、ロードロック室16を真空状態に保持して開閉バルブ32を開けることにより、ロードロック室16と真空室14とを同一の真空状態とする。他方、試料交換時は、開閉バルブ32を閉めてロードロック室16を大気圧状態に維持することにより、ロードロック室16と後述する試料観察室18とを同一の大気圧状態とする。
ロードロック室16の上方には、試料ステージ34を介して試料観察室18が設けられている。試料観察室18には、電磁弁29dを介して真空ポンプ22cが接続される。したがって、電磁弁29dを開いて真空引きを行うことにより、試料観察室18を真空状態に維持することが可能である。なお、図1では真空ポンプ22cをロードロック室16と試料観察室18とで共用しているが、それぞれについて個別に真空ポンプを設ける構成としても構わない。
試料ステージ34の中央付近には、一次電子線26を通過させるための開口部36が設けられ、その開口部36に観察対象となる試料を保持した試料保持体38が設置される。つまり、電子銃12から出力された一次電子線26は、試料ステージ34の開口部36を通過して試料保持体38に保持された試料に当たり、二次電子線を発生させる。なお、開口部36に試料保持体38を配置する方法は様々な方法を取り得るが、その点については後述する。
本実施形態の走査型電子顕微鏡10において、観察対象となる試料は、通常は大気圧下で観察される。ただし、本実施形態では試料観察室18に対して真空ポンプ22cが接続されているため、必要に応じて真空状態で観察することも可能である。
試料観察室18の上部には、試料保持体38を設置するための扉40が設けられている。この扉40は、試料観察室18の上部に限らず、側部に設けても良い。本実施形態では、試料観察室18を密閉空間とする目的で扉40を設けているが、大気圧下での観察を前提とした場合、扉40を開けた状態で試料を観察しても良いし、扉40を設けない構造としても良い。ただし、真空状態での観察を考慮した場合、公知のOリング(オーリング)等を介して密封性の高い扉40を設けることが望ましい。
なお、試料ステージ34は、水平移動可能なXYステージとして構成することが好ましい。この場合、真空状態に維持したロードロック室16の真空が破れないように、例えば、磁性流体シールやマグネットカップリングシール等の公知の機構を用いてXYステージを駆動すれば良い。また、例えば試料観察室18の底面を試料ステージ34として利用することにより、試料ステージ34を試料観察室18に固定されたステージとしても良い。
上述した真空室14、ロードロック室16及び試料観察室18は、それぞれ電磁弁29e〜28gを介してパージガスタンク42に接続される。パージガスとしては、一般的な窒素を用いれば良いが、アルゴンガスなど他のガスを用いることも可能である。真空状態に維持された真空室14、ロードロック室16及び試料観察室18を大気圧に開放する際には、各真空ポンプとの間に存在する電磁弁29a〜28dを閉じた状態で少しずつパージガスを各室内へ導入すれば良い。
次に、開口部36に試料保持体38を配置する方法について具体的に説明する。図2は、第1実施形態に係る走査型電子顕微鏡における試料ステージ近傍を拡大した図である。図2において、試料保持体38上には試料46が保持されている。本実施形態の走査型電子顕微鏡10は、大気圧状態で試料観察が可能であるため、試料として水分を含むものを用いることが可能である。
図2において、試料保持体38は、基本構造として、基板48と薄膜50とで構成される。基板48の中央付近には、開口部(貫通穴)52が設けられ、その開口部52を塞ぐように薄膜50が設けられる。図面下方から照射される一次電子線26は、開口部52及び薄膜50を通過して試料46に到達し、発生した二次電子線が再び薄膜50及び開口部52を通過して電子線検出器30に到達する。そのため、試料46を可能な限り開口部52の直上に位置するように保持することが望ましい。
以上のように構成された試料保持体38は、試料ステージ34に設けられた開口部36に嵌め込むように設置される。開口部36の内面54は、傾斜面を有するテーパー形状となっている。開口部36の内面54の傾斜角度は、試料保持体38の側端面56の角度と一致するが、その点については後述する。なお、開口部36には、Oリング58等の公知のシール部材を設けておくことが望ましい。試料保持体38の下方は、ロードロック室16であるため、真空状態となったときに試料観察室18からの大気の漏れがないようにするためである。
このとき、開口部36の位置を精度良く形成しておくことにより、試料保持体38を設置すれば常に同じ位置に試料46を保持することが可能となる。そのため、試料観察の際に一次電子線26に対する位置決めを容易に行うことができ、操作性の高い走査型電子顕微鏡を実現することができる。これにより、作製した試料保持体38をそのまま試料ステージ34に載せるだけで観察可能であり、その点も操作性に大きく寄与している。
特に、本実施形態の走査型電子顕微鏡10では、試料保持体38の側端面56と開口部36の内面54とが対面するように構成されているため、開口部36に、傾斜に合わせて試料保持体38を嵌め込むことにより、精度良く試料ステージと試料保持体38との位置合わせが可能となる。
図3は、第1実施形態に係る試料保持体の一例を示す図である。図3(A)は、試料保持体の断面図であり、図3(B)は、試料保持体を開口部側からみた平面図である。なお、図3(A)に示す断面図は、図3(B)に示す平面図をA−A’で切断した断面図に対応する。
図3(A)及び図3(B)に示す試料保持体300は、単結晶シリコン基板301及び薄膜(本実施形態では、窒化シリコン膜)302を積層した構造を含む構造体である。ここでは、単結晶シリコン基板301の二つの面のうち、薄膜302が設けられる面を第1面303と呼び、第1面303とは反対側の面を第2面304と呼ぶこととする。単結晶シリコン基板301としては、例えば第1面303が(100)面であるシリコンウェハを用いることができる。後述するように、結晶異方性エッチングを行うことによりエッチング面に現れる(111)面を活用するためである。
単結晶シリコン基板301の中央付近には、開口部305が設けられている。開口部305は、単結晶シリコン基板301の第1面303に設けられた薄膜302に到達するまで設けられているため、図3(B)に示すように、開口部305内には、薄膜302が露出している。開口部305の内部は、内面が(111)面で構成されるテーパー形状の面になっているため、第1面303の側の開口サイズ(開口幅)は、第2面304の側の開口サイズよりも小さい。なお、開口部305は、電子線を通過させるアパーチャとして機能するため、第1面303の側の開口サイズは、例えば50μm×50μmとすることができる。ただし、ここで説明したサイズは一例であり、必要に応じた開口サイズとなるように設計すればよい。
ここで、試料保持体300を図1に示した走査型電子顕微鏡に設置した場合、この薄膜302によって減圧状態の空間と大気圧状態の空間とを仕切る構成となる。したがって、薄膜302は、減圧状態と大気圧状態との圧力差に耐えうる強度を必要とする。他方、膜厚を厚くすると電子線の透過性に影響を及ぼすため、可能な限り薄くすることが好ましい。これらを踏まえて、薄膜302の膜厚は、20nm以上200nm以下(より望ましくは、15nm以上50nm以下)とすることが好ましい。ただし、真空状態に露出する面積が大きくなれば、その分、薄膜302にかかる負荷も大きくなるため、破損しやすくなる。したがって、開口部305のサイズ(幅)と薄膜302の膜厚はトレードオフの関係にあり、両者のバランスをとって設計することが望ましい。
なお、本実施形態の試料保持体300では、薄膜302として窒化シリコン膜を用いるが、その他、酸化シリコン、窒化ボロン、またはカーボン等の薄膜を用いることができる。いずれにしても、電子性に対して透過性を有し、かつ、電子線に対して透過性を有する膜厚範囲内において、減圧状態と大気圧状態との差圧に耐えうる強度を有する薄膜であればよい。
また、前述のとおり、開口部305の内面306は、傾斜面を有し、いわゆるテーパー形状となっており、第2面304側から第1面303側に向かって徐々に開口サイズが小さくなっている。そのため、開口部305を通過する一次電子線の入射角に対してマージンを確保することができる。例えば、試料保持体300を図1に示す走査型電子顕微鏡10に設置した場合、開口部305側から入射した一次電子線が薄膜302を透過して試料に照射されることとなる。この場合において、一次電子線が多少斜め方向から入射しても、本実施形態のように開口部305がテーパー形状となっていれば、開口部305によって一次電子線が遮られるといった問題が生じにくいという効果がある。
さらに、本実施形態の試料保持体300は、単結晶シリコン基板301の側端面307が傾斜を有し、テーパー形状となっている。後述するが、側端面307の傾斜は、単結晶シリコン基板301の第2面304に対し結晶異方性エッチングを行うことにより形成される。なお、「結晶異方性エッチング」とは、結晶面のエッチングレートの違いを利用して特定の結晶面が表面に現れるように行うエッチングのことをいう。結晶異方性エッチングは、ウェットエッチングにより行われ、そのエッチャントとしては、代表的には、水酸化カリウム(KOH)水溶液または水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を用いることができる。
本実施形態では、結晶異方性エッチングを行うことにより、単結晶シリコン基板に複数の開口部を形成すると同時に、各開口部を含む所定範囲を囲むように分断用の溝部を形成し、最終的に溝部に沿って単結晶シリコン基板を分断することにより複数の試料保持体を分断している。この場合、前述の開口部305の形成(すなわち開口部305の内面306の形成)と、側端面307の形成とを同時に結晶異方性エッチングにより行うこととなるため、開口部305の内面306と側端面307には、同一の結晶面が現れる。
図3(A)に示す試料保持体300の場合、第1面303が(100)面であるため、結晶異方性エッチングにより、他の結晶面に比べてエッチングレートの低い(111)面が開口部305の内面306と単結晶シリコン基板301の側端面307とに現れる。したがって、単結晶シリコン基板301の第1面303と内面306及び側端面307とがなす角(θ)は、(100)面と(111)面とがなす角度、すなわち54.7度となる。
このように、本実施形態では、試料保持体300を構成する単結晶シリコン基板301の第1面303と側端面307との角度が特定の結晶面により厳密に定まるため、従来のダイシングによる分断に比べて、試料保持体300の側端面307の形状や角度を正確に制御することができる。したがって、正確な機械加工により試料ステージ側の開口部の位置と傾斜角度とを制御しておけば、試料ステージの開口部に試料保持体を嵌め込むだけで、両者の傾斜面に沿って正確に位置合わせが可能となる。その結果、試料保持体が試料ステージに対して斜めになってしまったり、奥行き方向の位置や左右方向の位置が微妙にずれてしまったりする問題を防ぐことができる。
<試料保持体の作製方法>
図4から図7は、それぞれ本発明の第1実施形態に係る試料保持体の作製方法の一例を示す図である。ここでは、図3(A)に示したような断面図を用いて、3つの試料保持体を作製する例を示すが、実際には単結晶シリコン基板から、さらに多くの試料保持体を同時に作製することが可能である。
図4から図7は、それぞれ本発明の第1実施形態に係る試料保持体の作製方法の一例を示す図である。ここでは、図3(A)に示したような断面図を用いて、3つの試料保持体を作製する例を示すが、実際には単結晶シリコン基板から、さらに多くの試料保持体を同時に作製することが可能である。
まず、図4(A)において、単結晶シリコン基板401の第1面に、薄膜としてとして窒化シリコン膜402を形成する。本実施形態では、単結晶シリコン基板401として、基板の第1面の結晶面が(100)であるシリコンウェハを用いる。また、特定の結晶面による傾斜面を利用して試料保持体の側端面の形状や角度を制御できるものであれば、シリコン以外の材料を用いることも可能である。
窒化シリコン膜402は、公知の成膜方法で形成することができる。ただし、窒化シリコン膜に限らず、電子線に対して透過性を有する薄膜であれば、どのような薄膜を用いてもよい。窒化シリコン膜402の膜厚は、好ましくは10nm以上200nm以下、より望ましくは15nm以上50nm以下である。本実施形態では、膜厚を20nmとする。窒化シリコン膜402は、膜質が緻密であるため、20nmという薄さにしても強度的には十分であり、かつ、電子線の透過性も良好である。膜質を緻密にするという観点によれば、成膜方法として、熱CVD法を用いることも好ましい。さらに、窒化シリコン膜402は、単結晶シリコン基板401と同様のシリコンベースの材料で構成されるため、単結晶シリコン基板401との密着性が高いという利点もある。
次に、図4(B)において、単結晶シリコン基板401の第2面に対して熱酸化法による処理を行い、酸化シリコン膜403を形成する。ここでは熱酸化法による例を示しているが、CVD法等により酸化シリコン膜を形成してもよい。酸化シリコン膜403の膜厚は、後述する結晶異方性エッチングにおける選択比を考慮して適宜決定すればよい。
次に、図4(C)において、窒化シリコン膜402の表面に、刺激を加えることにより粘着性が低下する粘着層404を接着する。刺激としては、熱、光、超音波など様々な刺激を用いることができる。本実施形態では、粘着層404として、熱を加えることにより粘着性が低下する加熱剥離型粘着シートを用いる例を示す。そのような粘着シートとしては、例えば、日東電工株式会社製のリバアルファ(登録商標)などを用いることができる。リバアルファは、常温では所定の粘着力を示すが、加熱することにより粘着力が失われ、剥離が容易となる特性を有する。
次に、図5(A)において、酸化シリコン膜403対してパターニングを行い、酸化シリコン膜で構成されたマスクパターン405を形成する。このマスクパターン405は、後続の結晶異方性エッチングの際のマスクとして用いるものである。パターニングは、公知のフォトリソグラフィにより行えばよい。なお、パターニングの際には、単結晶シリコン基板401の基準面を考慮して正確に位置合わせを行う必要がある。本実施形態では、単結晶シリコン基板401の(011)面に、いわゆるオリフラ(オリエンテーション・フラット)又はノッチを設けておき、それらを基準面として位置合わせを行う。具体的には、後述する図6において、B−B’で示される破線で切断した断面に単結晶シリコン基板401の(011)面が現れるように制御する。
図6は、図5(A)に示す断面図をマスクパターン405の上方から見た平面図である。なお、図6に示す平面図をB−B’で示される破線で切断した断面が図5(A)に示した断面図に対応する。図6に示されるように、酸化シリコン膜で構成されたマスクパターン405は、複数設けられた矩形状の開口部406と、各開口部406それぞれの各辺に沿って開口部406を囲むように配置された複数の開口部407とを有する。
開口部406は、図3に示した開口部305を形成するためのマスク窓であり、図5(A)に示すように単結晶シリコン基板401の一部を露出させる。開口部406は、正方形であっても長方形であってもよいが、正方形であることが好ましい。図3に示した開口部305は、試料保持体300において電子線のアパーチャとして機能するため、点対称の形状であることが好ましいからである。
また、開口部407は、個々の試料保持体300に分断するに当たり、単結晶シリコン基板401を分断するための溝部を形成するためのマスク窓である。後述するように、本実施形態では、結晶異方性エッチングを行って窒化シリコン膜402に達する細長い形状の溝部を形成することにより、従来のダイシング工程を行うことなく個々の試料保持体300に分断することができる。そのため、開口部407は、開口部406を囲むことができるように、長手方向を有する長方形とすることが好ましい。
なお、開口部406及び開口部407の開口サイズ(開口幅)は、単結晶シリコン基板401の膜厚と結晶異方性エッチングによるテーパー角度を勘案して、最終的に目的のサイズで窒化シリコン膜402を露出させることができるように設計する。この点については後述する。
次に、図5(B)では、マスクパターン405をエッチングマスクとして単結晶シリコン基板401に対して結晶異方性エッチングを行い、単結晶シリコン基板401に対して開口部408及び開口部409を形成する。開口部408は、開口部406によって露出した単結晶シリコン基板401のエッチングにより形成された孔であり、図3に示した試料保持体300の開口部305を構成する。また、開口部409は、開口部407によって露出した単結晶シリコン基板401のエッチングにより形成された孔であり、単結晶シリコン基板401を分断する溝部を構成する。
本実施形態では、結晶異方性エッチングのエッチャントとして水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いるが、水酸化テトラエチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いてもよい。なお、本実施形態における結晶異方性エッチングにおいては、いわゆるスピンエッチング方式を用いることが好ましい。スピンエッチング方式とは、エッチング対象を回転させた状態で一方の基板面に対してエッチャントを供給するエッチング方法であり、基板裏面へのエッチャントの回り込みを抑えることができる。本実施形態の場合、単結晶シリコン基板401と粘着層404との間に窒化シリコン膜402が存在するため、スピンエッチング方式を用いれば、粘着層404を極力エッチャントに曝すことなくエッチング処理を完了することができる。これにより、エッチング処理中に粘着層404が剥がれるといった不具合の発生を防ぐことが可能である。
図7は、図5(B)に示す断面図を単結晶シリコン基板401の上方から見た平面図である。なお、図7に示す平面図をB−B’で示される破線で切断した断面が図5(B)に示した断面図に対応する。なお、ここでは、マスクパターン405を除去した後の状態を示しているが、除去せずにそのまま残しておくことも可能である。
図7に示されるように、開口部408及び開口部409の内部には、窒化シリコン膜402が露出している。また、結晶異方性エッチングにより、エッチング面には(111)面が現れるため、開口部408の内面410及び開口部409の内面411には、単結晶シリコン基板401の(111)面が現れる。このとき、開口部408の内面410及び開口部409の内面411が、それぞれ単結晶シリコン基板401の第1面(窒化シリコン膜402と接する面)となす角度θは、54.7度となる。開口部408の内面410が、図3に示した開口部305の内面306を構成し、開口部409の内面411が、図3に示した試料保持体300の側端面307を構成する。
このように、開口部408及び開口部409の開口サイズ(開口幅)は、窒化シリコン膜402に近づくにつれて小さくなる。そのため、開口部408及び開口部409の内部に目的のサイズで窒化シリコン膜402を露出させるためには、単結晶シリコン基板401の膜厚と上述した角度θを勘案して、マスクパターン405に形成される開口部406及び開口部407を設計する。例えば、単結晶シリコン基板401の膜厚を300μmとした場合、開口部408の内部に50μm×50μmのサイズで窒化シリコン膜402を露出させるためには、開口部408を475μm×475μmのサイズで設計する。
また、開口部409は、単結晶シリコン基板401を分断するための溝(分断ライン)として機能させれば足りるため、必ずしも窒化シリコン膜402が露出している必要はない。例えば、図8及び図9に示すように、開口部409aの深さを単結晶シリコン基板401の膜厚に合わせ、開口部409aの内部がV字形状の断面となるようにしてもよい。ここで、図9は、図8に示す断面図を単結晶シリコン基板401の上方から見た平面図である。なお、図9に示す平面図をB−B’で示される破線で切断した断面が図8に示した断面図に対応する。なお、分断するという目的だけ考慮すれば、開口部409aの深さは、単結晶シリコン基板401の膜厚より浅くてもよい。ただし、試料保持体300の側端面307の形状及び傾斜を正確に制御するためには、少なくとも開口部409aの深さが単結晶シリコン基板401の膜厚となるように設計することが好ましい。
最後に、単結晶シリコン基板401の全体を加熱して、粘着層404を剥離する。これにより、図5(C)に示すように、複数の試料保持体300が形成される。なお、粘着層404を剥離しただけでは、単結晶シリコン基板401の一部(図7において、符号412で示される部分)及び窒化シリコン膜402によってすべての試料保持体300が繋がった状態となっている。しかし、単結晶シリコン基板401の一部及び窒化シリコン膜402は、僅かな力を加えるだけで容易に割れるため、簡単に各試料保持体300を分断することができる。
以上のように、本実施形態では、単結晶シリコン基板401の分断に当たり結晶異方性エッチングを用いるため、(100)面を主面とする単結晶シリコン基板(いわゆる(100)ウェハ)で構成された試料保持体300の側端面413に、結晶方位の揃った正確な傾斜面を形成することができる。つまり、試料保持体300の側端面413には、単結晶シリコン基板の(111)面が現れるため、試料保持体300の側端面413を極めて再現性の高い方法で形成することが可能である。
したがって、正確な機械加工により試料ステージ34側の開口部36の位置と傾斜角度とを制御しておけば、試料ステージ34の開口部36に試料保持体300を嵌め込むだけで、両者の傾斜面に沿って正確に位置合わせが可能となる。その結果、試料保持体300が試料ステージ34に対して斜めになってしまったり、奥行き方向の位置や左右方向の位置が微妙にずれてしまったりする問題を防ぐことができる。
また、本実施形態では、開口部408の形成と同時に開口部(溝部)409を形成することにより単結晶シリコン基板の分断を行っているため、従来のダイシングプロセスを用いずに、簡易な方法で試料保持体300を分断することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で試料保持体を作製する方法について説明する。図10から図14は、それぞれ本発明の第2実施形態に係る試料保持体700の作製方法の一例を示す図である。
本発明の第2実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で試料保持体を作製する方法について説明する。図10から図14は、それぞれ本発明の第2実施形態に係る試料保持体700の作製方法の一例を示す図である。
まず、図10(A)において、単結晶シリコン基板701の第1面に、薄膜として窒化シリコン膜702を形成する。単結晶シリコン基板701及び窒化シリコン膜702は、第1実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
次に、図10(B)において、単結晶シリコン基板701に対して公知のフォトリソグラフィによりエッチングを行い、窒化シリコン膜702まで到達する深さの矩形状の開口部703を形成する。公知のフォトリソグラフィでは、一般的なレジストマスクを用いてエッチングを行えばよいが、レジストマスクの濡れ性を改善するために、予め単結晶シリコン基板701上に酸化シリコン膜を形成しておくことが望ましい。酸化シリコン膜は、CVD法や熱酸化法により形成すればよい。
本実施形態では、特に開口部703を形成する際のエッチング方法に限定はない。例えば、CF4ガスやSF6ガスを用いたドライエッチング法を用いてもよいし、ウェットエッチング法を用いてもよい。いずれにしても、開口部703の内面704は、第1実施形態と同様に、傾斜面を有したテーパー形状とすることが好ましい。本実施形態では、開口部703の形成における自由度が高いため、所望の傾斜角のテーパー形状とすることが可能である。
勿論、第1実施形態と同様に、水酸化カリウム水溶液等を用いた結晶異方性エッチングを行い、開口部703の内面704に単結晶シリコン基板701の(111)面が現れるようにしてもよい。
次に、図10(C)に示すように、単結晶シリコン基板701の第2面(窒化シリコン膜702に接する面とは反対の面)に粘着層705として加熱剥離型粘着シートを接着する。このとき、単結晶シリコン基板701に直接粘着層705を接着してもよいが、予め単結晶シリコン基板701の接着面に熱酸化法やCVD法により酸化シリコン膜を形成しておいてもよい。
次に、図11(A)において、公知のフォトリソグラフィにより窒化シリコン膜702に対してエッチングを行い、複数の開口部706を有するマスクパターン707を形成する。マスクパターン707は、窒化シリコン膜で構成され、後述する結晶異方性エッチングを行う際のマスクとして機能する。複数の開口部706は、矩形状の開口部703を囲むように配置される。第1実施形態で説明した試料保持体の分断に利用する溝部を形成するためである。図12は、図11(A)に示す断面図をマスクパターン707の上方から見た平面図である。なお、図12に示す平面図をC−C’で示される破線で切断した断面が図11(A)に示した断面図に対応する。
次に、図11(B)において、マスクパターン707をマスクとして結晶異方性エッチングを行い、単結晶シリコン基板701に対して開口部708を形成する。結晶異方性エッチングのエッチャントとしては、水酸化カリウム(KOH)水溶液でも水酸化テトラエチルアンモニウム(TMAH)水溶液でもいずれを用いてもよい。このエッチング処理においても、第1実施形態と同様に、開口部708の内面709には単結晶シリコン基板701の(111)面が現れる。
図13は、図11(B)に示す断面図をマスクパターン707の上方から見た平面図である。なお、図13に示す平面図をC−C’で示される破線で切断した断面が図11(B)に示した断面図に対応する。本実施形態によれば、開口部708の内面709が、単結晶シリコン基板701の第2面(粘着層705と接する面)となす角度θは、54.7度となる。開口部708の内面709が、本実施形態における試料保持体700の側端面を構成する。
また、本実施形態においても、マスクパターン707に形成される開口部706の開口サイズ(開口幅)は、単結晶シリコン基板701の膜厚と上述した角度θを勘案して設計することが望ましい。また、第1実施形態と同様に、開口部708は、単結晶シリコン基板701を分断するための溝(分断ライン)として機能させれば足りるため、必ずしも粘着層705が露出するように形成する必要はない。
以上のように、本実施形態によれば、試料保持体700を構成する薄膜としての窒化シリコン膜702を、結晶異方性エッチングのマスクとして利用できるため、第1実施形態のようにマスク用に別途酸化シリコン膜を設けるといったプロセスを必要とせず、製造プロセスを簡略化することができる。
最後に、単結晶シリコン基板701の全体を加熱して、粘着層705を剥離する。これにより、図11(C)に示すように、複数の試料保持体700が形成される。なお、本実施形態においても、粘着層705を剥離しただけでは、各試料保持体700が繋がった状態となるが、僅かな力を加えるだけで容易に分断することができる。
以上のように、本実施形態においても、単結晶シリコン基板701を分断する際に結晶異方性エッチングを用いるため、試料保持体700の側端面710に、結晶方位の揃った正確な傾斜面を形成することができる。つまり、試料保持体700の側端面710には、単結晶シリコン基板の(111)面が現れるため、試料保持体700の側端面710を極めて再現性の高い方法で形成することが可能である。
したがって、正確な機械加工により試料ステージ34側の開口部36の位置と傾斜角度とを制御しておけば、試料ステージ34の開口部36に試料保持体700を嵌め込むだけで、両者の傾斜面に沿って正確に位置合わせが可能となる。その結果、試料保持体700が試料ステージ34に対して斜めになってしまったり、奥行き方向の位置や左右方向の位置が微妙にずれてしまったりする問題を防ぐことができる。
また、本実施形態では、開口部708を形成することにより単結晶シリコン基板の分断を行っているため、従来のダイシングプロセスを用いずに、簡易な方法で試料保持体700を分断することができる。
図14は、第2実施形態に係る走査型電子顕微鏡における試料ステージ近傍を拡大した図である。基本構造は、図2を用いて説明した構造と同様であるため、同一箇所には図2と同じ符号を用いている。
図14は、第2実施形態に係る走査型電子顕微鏡における試料ステージ近傍を拡大した図である。基本構造は、図2を用いて説明した構造と同様であるため、同一箇所には図2と同じ符号を用いている。
図2の場合と異なる点は、図14に示す試料保持体700の配置が、図2に示す試料保持体38とは逆になり、薄膜50(本実施形態における窒化シリコン膜702に対応する)が下方、すなわち真空室14側に配置される点と、開口部52(本実施形態における開口部703に対応する)が試料観察室18側となる点である。本実施形態の場合、一次電子線26が開口部52を通過する必要がないため、一次電子線26の斜め方向からの入射角に対してよりマージンを確保することができる。
また、開口部52が試料観察室18側に配置されるため、その中に試料46を保持することができる。そのため、特に試料46が水分を含む場合に、試料46をより確実に保持することが可能である。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で試料保持体を作製する方法について説明する。図15は、本発明の第3実施形態に係る試料保持体の作製方法の一例を示す平面図である。なお、図15は、第1実施形態における図7に対応する平面図であり、第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を用いて説明する。
本発明の第3実施形態では、第1実施形態とは異なる方法で試料保持体を作製する方法について説明する。図15は、本発明の第3実施形態に係る試料保持体の作製方法の一例を示す平面図である。なお、図15は、第1実施形態における図7に対応する平面図であり、第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を用いて説明する。
本実施形態では、図15に示すように、紙面に向かって横方向の開口部510を、複数の開口部408に共通に設けている。つまり、開口部409に比べて、長手方向の長さが長い開口部510を設けている点で、図7に示した平面図と異なっている。このような構造としても、結晶異方性エッチング後の分断は容易である。
なお、図15に示す例では、紙面に向かって横方向に設けた開口部510における長手方向の長さを開口部408の長さよりも長くしているが、逆に、紙面に向かって縦方向に設けた開口部409の長手方向の長さを開口部510の長さよりも長くすることも可能である。また、図15において、開口部510は、開口部408に対して共通に設けられているが、その開口部408の数に制限はない。すなわち、開口部510は、単結晶シリコン基板の一端近傍から他端近傍に至るまでの長さであってもよい。開口部409の長手方向の長さを長くした場合についても同様である。
以上のように、縦方向または横方向の溝部を、複数の開口部(アパーチャとして機能する開口部)に共通に設けることにより、個々の試料保持体に分断するプロセスを簡略化することができる。
10:走査型電子顕微鏡
12:電子銃
14:真空室
16:ロードロック室
18:試料観察室
20:除振台
22a〜22c:真空ポンプ
24:電子源
26:一次電子線
28:収束レンズ
29a〜29g:電磁弁
30:電子線検出器
32:開閉バルブ
34:試料ステージ
36:開口部
38:試料保持体
40:扉
42:パージガスタンク
48:基板
50:薄膜
52:開口部
54:試料ステージの開口部の内面
56:基板の側端面
58:Oリング(オーリング)
300:試料保持体
301:単結晶シリコン基板
302:薄膜
303:第1面
304:第2面
305:開口部
306:内面
307:側端面
12:電子銃
14:真空室
16:ロードロック室
18:試料観察室
20:除振台
22a〜22c:真空ポンプ
24:電子源
26:一次電子線
28:収束レンズ
29a〜29g:電磁弁
30:電子線検出器
32:開閉バルブ
34:試料ステージ
36:開口部
38:試料保持体
40:扉
42:パージガスタンク
48:基板
50:薄膜
52:開口部
54:試料ステージの開口部の内面
56:基板の側端面
58:Oリング(オーリング)
300:試料保持体
301:単結晶シリコン基板
302:薄膜
303:第1面
304:第2面
305:開口部
306:内面
307:側端面
Claims (13)
- 単結晶シリコン基板と、
前記単結晶シリコン基板に設けられた開口部を塞ぐように前記単結晶シリコン基板の第1面に設けられた薄膜と、
を備え、
前記単結晶シリコン基板の側端面は、前記第1面に対して傾斜し、かつ、(111)面が現れており、
前記薄膜は、電子線に対して透過性を有することを特徴とする電子顕微鏡用試料保持体。 - 前記開口部の内面にも前記(111)面が現れていることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料保持体。
- 前記単結晶シリコン基板の前記第1面に対向する第2面は、(100)面であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子顕微鏡用試料保持体。
- 開口部が設けられた試料ステージを有する電子顕微鏡であって、
前記開口部の内面は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子顕微鏡用試料保持体の前記側端面と対面する傾斜面であることを特徴とする電子顕微鏡。 - 電子銃が配置された真空室と試料観察室とが前記試料ステージの前記開口部を介して連通していることを特徴とする請求項4に記載の電子顕微鏡。
- 単結晶シリコン基板の第1面に、電子線に対して透過性を有する薄膜を形成し、
前記単結晶シリコン基板の前記第1面に対向する第2面に対して結晶異方性エッチングを行うことにより、前記単結晶シリコン基板に対し、矩形状の第1開口部と当該第1開口部の各辺に沿って前記第1開口部を囲むように配置された複数の第2開口部とを形成することを特徴とする電子顕微鏡用試料保持体の作製方法。 - 前記第2開口部は、前記第1開口部の各辺に沿って長手方向を有する長方形状であることを特徴とする請求項6に記載の電子顕微鏡用試料保持体の作製方法。
- 前記第1面に前記薄膜を形成した後、前記薄膜に、刺激を加えることにより粘着性が低下する粘着層を接着し、
その後、前記第2面に対して前記結晶異方性エッチングを行うことを特徴とする請求項6に記載の電子顕微鏡用試料保持体の作製方法。 - 前記結晶異方性エッチングを行う前に、前記第2面に酸化シリコン膜からなるマスクを形成し、当該マスクを用いて結晶異方性エッチングを行うことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の電子顕微鏡用試料保持体の作製方法。
- 単結晶シリコン基板の第1面に、電子線に対して透過性を有する薄膜を形成し、
前記単結晶シリコン基板の前記第1面に対向する第2面に対してエッチングを行うことにより、前記単結晶シリコン基板に対し、矩形状の第1開口部を形成し、
その後、前記単結晶シリコン基板に対して結晶異方性エッチングを行うことにより、前記単結晶シリコン基板に対し、前記第1開口部の各辺に沿って前記第1開口部を囲むように複数の第2開口部を形成することを特徴とする電子顕微鏡用試料保持体の作製方法。 - 前記第1開口部を形成した後、前記第2面に、刺激を加えることにより粘着性が低下する粘着層を接着し、
その後、前記薄膜の一部をマスクとして、前記単結晶シリコン基板の第1面に対して結晶異方性エッチングを行うことにより、前記第2開口部を形成することを特徴とする請求項10に記載の電子顕微鏡用試料保持体の作製方法。 - 前記第2面が、(100)面であることを特徴とする請求項6乃至11のいずれか一項に記載の電子顕微鏡用試料保持体の作製方法。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電子顕微鏡用試料保持体を電子顕微鏡の試料ステージに設けられた開口部に配置し、
前記電子顕微鏡用試料保持体を構成する薄膜を境界にして、一方の空間を大気圧状態に維持するとともに他方の空間を減圧状態に維持し、
前記一方の空間において前記薄膜の上に保持された試料に対し、前記他方の空間から前記薄膜を通して電子線を照射し、
前記試料から発生した反射電子線を検出することを特徴とする電子顕微鏡を用いた試料観察方法。
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JPWO2019171687A1 (ja) * | 2018-03-08 | 2021-02-12 | 株式会社島津製作所 | 駆動装置 |
-
2015
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