JP2016213150A - 試料収容セル - Google Patents

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【課題】2種の試料の接触、混合そして反応といった過程を動的に観察することができる試料収容セルを提供すること。【解決手段】本発明の実施形態における試料収容セルは、第1開口部を有する第1基板と、第1基板に対向して配置され、第1開口部に対向する位置に第2開口部を有する第2基板と、第1開口部の第2基板側を塞ぐ第1薄膜と、第2開口部の第1基板側を塞ぐ第2薄膜と、少なくとも第1開口部と第2開口部との間において第1薄膜と第2薄膜とに挟まれて配置されたギャップ膜と、を備え、第1基板と第2基板との間には、第1薄膜と第2薄膜とギャップ膜とに囲まれた観察空間と、第1流路空間と、観察空間及び第1流路空間を接続する第1接続空間と、第2流路空間と、観察空間及び第2接続空間を接続する第2接続空間とが配置され、第1薄膜および第2薄膜は、電子線に対して透過性を有することを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は観察対象の試料(Object)を収容するセルに関する。
電子顕微鏡を用いた試料の観察は、一般的には、観察対象の試料が真空等の特殊な空間に曝される。一方、近年では、メカノバイオロジー(Mechanobiology)と呼ばれる技術分野において、生体細胞、生体組織等をそのまま観察したいという要求がある。しかしながら、電子顕微鏡での観察の際に試料を真空中に曝すと、細胞等は、液体成分が揮発していくことで変質し、また測定環境の汚染につながってしまう。これを防ぐために、様々な方法が開発されている。
例えば、試料を急速凍結して薄い氷の中に閉じ込め、冷凍状態で観察する技術がある。しかしながら、冷凍状態で観察する技術は、容易に観察用の試料を作製することができず、また、試料作成用の装置が非常に特殊であり高価なものであった。
さらに、生体細胞、生体組織等と、それらに影響を及ぼす試薬等との反応を動的に観察したいという要求がある。特許文献1には、2種の流体が充填される2つのチャネルと、それらを接続するギャップとをマイクロリアクター内に設け、2種の流体の混合が行われる当該ギャップ内を観察することで、混合した流体を観察する技術が開示されている。
特開2011−89990号公報
特許文献1に開示されたマイクロリアクターの構造では、2つのチャネルが互いに接近した領域を一部に有し、当該接近した領域を互いに接続するギャップが設けられている。つまり、当該ギャップの長さは短く設けられているため、当該ギャップの両端から流入した2種の流体は瞬時に混合してしまう。したがって、2種の流体の接触、混合及び反応過程を動的に観察することは困難である。
本発明の目的の一つは、2種の試料の接触、混合そして反応といった過程を動的に観察することができる試料収容セルを提供することにある。
本発明の一実施形態によると、第1開口部を有する第1基板と、前記第1基板に対向して配置され、前記第1開口部に対向する位置に第2開口部を有する第2基板と、前記第1開口部の前記第2基板側を塞ぐ第1薄膜と、前記第2開口部の前記第1基板側を塞ぐ第2薄膜と、少なくとも前記第1開口部と前記第2開口部との間において前記第1薄膜と前記第2薄膜とに挟まれて配置されたギャップ膜と、を備え、前記第1基板と前記第2基板との間には、前記第1薄膜と前記第2薄膜と前記ギャップ膜とに囲まれた観察空間と、少なくとも2箇所で外部空間と接続される第1流路空間と、当該観察空間及び当該第1流路空間を接続する第1接続空間と、少なくとも2箇所で外部空間とを接続される第2流路空間と、当該観察空間及び当該第2接続空間を接続する第2接続空間とが配置され、前記第1薄膜および前記第2薄膜は、電子線に対して透過性を有することを特徴とする試料収容セルを提供する。これによれば、2種の試料含有液体の接触、混合、反応といった動的過程を観察することができる。
前記第1接続空間の流路幅及び前記第2接続空間の流路幅は、前記第1流路空間の流路幅及び前記第2流路空間の流路幅よりも小さい。これによれば、試料収容セルへの2種の試料含有液体の注入から、両者が合流するまでの時間を遅延させることができ、動的過程の観察が容易になる。
前記第1接続空間の流路幅及び前記第2接続空間の流路幅は、前記第1流路空間の流路幅及び前記第2流路空間の流路幅の10%以下である。これによれば、試料収容セルへの2種の試料含有液体の注入から、両者が合流するまでの時間を遅延させることができ、動的過程の観察が容易になる。
前記観察空間から引き出され、外部空間と接続された第3流路空間を更に備えてもよい。これによれば、前記観察空間内で2種の試料含有液体の移動および合流がスムーズになる。
観察空間から引き出され、吸着剤が配置された第3流路空間を更に備えてもよい。これによれば、吸着剤を加熱して活性化することにより前記観察空間内で2種の試料含有液体の移動および合流がさらにスムーズになる。
本発明の一実施形態によると、前述の試料収容セルを備えた電子顕微鏡を提供することができる。これによれば、2種の試料含有液体の接触、混合、反応といった動的過程を電子顕微鏡を通して観察することができる。
前記試料収容セルを加熱するためのヒーターを更に備えた電子顕微鏡であってもよい。これによれば、観察中において2種の試料含有液体の反応を促進することができる。
レーザ光源を更に備えた電子顕微鏡であってもよい。これによれば、第3流路空間に配置された吸着剤にレーザを照射することによって活性化させ、前記観察空間内で2種の試料含有液体の移動および合流がさらにスムーズになる。
本発明の一実施形態によると、電子線を透過させる薄膜に囲まれた観察空間に、前記観察空間に接続された第1流路空間に第1試料含有液体を注入し、前記観察空間に接続された第2流路空間に第2試料含有液体を注入し、前記観察空間に電子線を照射し、前記観察空間に侵入した前記第1試料含有液体及び前記第2試料含有液体を透過した前記電子線を観察することを含む試料観察方法を提供する。これによれば、2種の試料含有液体の接触、混合、反応といった動的過程を観察することができる。
前記第1試料含有液体及び前記第2試料含有液体を加熱しながら観察してもよい。これによれば、観察中において2種の試料含有液体の反応を促進することができる。
本発明によると、2種の試料の接触、混合そして反応といった過程を動的に観察することができる試料収容セルを提供することができる。
本発明の第1実施形態における試料収容セルの外観を示す図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルを第1基板側から見た平面図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルの断面構成(図1、2における断面線A−A’の断面構造)を示す模式図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルの断面構成(図1、2における断面線B−B’の断面構造)を示す模式図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルへ試料含有液体を注入する方法を説明する図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルを封止するための樹脂を形成する方法を説明する図である。 本発明の第1実施形態における試料注入装置の試料注入処理を説明する図である。 本発明の第1実施形態における試料注入装置のセル封止処理を説明する図である。 本発明の第1実施形態における試料収容セルのうち第1基板の製造工程を説明する図である。 本発明の第1実施形態における第1基板と第2基板との接合および開口の形成に関する製造工程を説明する図である。 本発明の第2実施形態における試料収容セルの外観を示す図である。 本発明の第2実施形態における試料収容セルを第1基板側から見た平面図である。 本発明の第3実施形態における試料収容セルの外観を示す図である。 本発明の第3実施形態における試料収容セルを第1基板側から見た平面図である。 本発明の第3実施形態における電子顕微鏡の模式図である。 本発明の第5実施形態における電子顕微鏡の模式図である。 流路形成部の配置例を示す模式図である。 流路形成部の配置例を示す模式図である。 流路形成部の配置例を示す模式図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の一実施形態に係る試料収容セルについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
[試料収容セルの構成]
図1は、本発明の第1実施形態における試料収容セルの外観を示す図である。試料収容セル1は、第1基板10と第2基板20とがギャップ膜50を介して接合して製造されている。第1基板10は、例えば、シリコン基板である。第2基板20は、可視光線に対して透過性を有する基板であって、例えば、ガラス基板である。なお、第1基板10も第2基板20と同様に、可視光線に対して透過性を有する基板(例えば、ガラス基板)であってもよい。また、第1基板10も第2基板20もシリコン基板であってもよい。
ギャップ膜50は、第1基板10と第2基板20とを接合し、第1基板10と第2基板20との間に空間(流路空間FP、接続空間CSおよび観察空間MS)を形成する膜である。ギャップ膜50は、後述する周辺部510および流路形成部530を含む。これらをまとめてギャップ膜50と表現する場合がある。
試料収容セル1は、電子顕微鏡の観察対象となる試料を液体に含ませた状態で、この内部空間に収容するセルである。以下、試料を含む液体を、試料含有液体と表現する場合がある。試料収容セル1の大きさは、1辺が2.5mm〜3mm程度の正方形であり、この例では2.6mmである。試料収容セル1の厚さは、第1基板10と第2基板20とをあわせて0.3〜1.2mm程度である。
第1基板10および第2基板20には、それぞれ開口部が形成されている。この例では、第1基板10には開口部110、120、125、130、135が配置されている。第2基板には、開口部210(図4参照)が配置されている。続いて、試料収容セル1の内部構造を含めた詳細な構造について、図2、図3、図4を用いて説明する。
図2は、本発明の第1実施形態における試料収容セルを第1基板側から見た平面図である。図3は、本発明の第1実施形態における試料収容セルの断面構成(図1、2における断面線A−A’の断面構造)を示す模式図である。図4は、本発明の第1実施形態における試料収容セルの断面構成(図1、2における断面線B−B’の断面構造)を示す模式図である。
開口部110の第2基板20側は、第1薄膜150により塞がれている。開口部210の第1基板10側は、第2薄膜250により塞がれている。第1薄膜150と第2薄膜250とは対向して配置されている。第1薄膜150および第2薄膜250は、電子線に対して透過性を有する膜である。
第1薄膜150および第2薄膜250は、例えば、窒化シリコンで形成される。第1薄膜150および第2薄膜250の膜厚は、10nm以上200nm以下、望ましくは、15nm以上50nm以下であり、この例では、20nmである。第1薄膜150と第2薄膜250とは同じ膜厚であってもよいし、異なる膜厚であってもよい。第1薄膜150および第2薄膜250は、10nmより薄くなると強度がなくなり破損するおそれがある。一方、200nmよりも厚くなると、電子線が透過しなくなる。したがって、第1薄膜150および第2薄膜250は、破損しない程度の膜の強度を得ながらも、できるだけ薄くすることが望ましい。
以下に示す通り、第1薄膜150と第2薄膜250との間には、双方に接続されたギャップ膜50が部分的に存在する。このギャップ膜50は、開口部110と開口部210との外側部分(第1基板10と第2基板20との間の開口部が存在しない部分)から延在している。そのため、ギャップ膜50(流路形成部530)は、梁のような機能を有することとなり、第1薄膜150と第2薄膜250とを支持することができる。
第1薄膜150と第2薄膜250とがギャップ膜50によって支持されない場合、これらの薄膜は開口部110、210の外側で支持される必要がある。すなわち、電子線が通過する領域のうち薄膜を支持する部分から離れた領域(例えば開口部の中心付近)が増加するため、薄膜の強度を高める必要がある。一方、この例のようにギャップ膜50で第1薄膜150と第2薄膜250とを支持することにより、電子線が通過する領域を確保しつつ、支持する部分から離れた領域を少なくすることができる。したがって、ギャップ膜50によって薄膜が支持されている場合は、ギャップ膜50によって薄膜が支持されない場合に比べて、薄膜の強度を低くしても破損しにくい状態に保つことができる。逆に言えば、同じ膜厚でも薄膜の強度が増加した解釈することもできる。その結果、薄膜をさらに薄くすることもできる。
第1薄膜150と第2薄膜250との間には、ギャップ膜50が配置されている。図2、図3、図4に示すように、ギャップ膜50は、周辺部510および流路形成部530を含む。周辺部510は、試料収容セル1の端部に面して配置される部分である。流路形成部530は、開口部110と開口部210との間において観察空間MSの位置を決めるように配置された部分である。周辺部510と流路形成部530とは、それぞれの領域が明確に区分されるものではないが、便宜上、分けて定義している。
ギャップ膜50は、この例では金(Au)で形成されている。ギャップ膜50は、その膜の中央付近でAu−Au接合により接合されている。すなわち、この接合の前においては、ギャップ膜50は、第1薄膜150側の層および第2薄膜250側の層に分かれている。そして、接合によってギャップ膜50が形成される。以下の製造方法の説明において、ギャップ膜50の形成過程の詳細を示す。なお、接合表面において金が形成され、それ以外の部分が酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等で形成された積層膜であってもよい。この例では、金が接合時の接着層として機能する。一方、金が形成されていなくてもよい。ギャップ膜50の膜厚は、10nm以上400nm以下、望ましくは、50nm以上300nm以下であり、この例では、200nmである。この厚さが、第1薄膜150と第2薄膜250との距離に相当する。
なお、第1薄膜150および第2薄膜250は、それぞれ20nmであるため、この部分における第1基板10と第2基板20との距離は、240nmとなる。第1薄膜150と第2薄膜250との距離(ギャップ膜50の膜厚)は、試料すなわち観察対象物(例えば細胞)の大きさに依存して設定されるため、少なくとも観察対象物よりも大きくなる必要がある。一方、第1薄膜150と第2薄膜250との距離が観察対象物に対して大きすぎると、観察対象物が重なって個々の観察対象物の観察結果が得られにくくなる。
ギャップ膜50は電子線が透過するようになっていてもよいし、透過しなくてもよい。ギャップ膜50が配置されていない領域において、第1薄膜150と第2薄膜250とを電子線が通過すればよい。なお、観察対象物が大きすぎる場合、観察対象物自体を電子線が通過できないため、透過型電子顕微鏡による観察はできない。すなわち、第1薄膜150と第2薄膜250との距離(ギャップ膜50の膜厚)を、電子線が通過できない程度の距離以上にすることは、必要ない。
開口部110と開口部210とは対向して配置され、第1基板10側から見た場合に、ほぼ同じ大きさで開口するように設計されている。開口部110および開口部210の開口の形状は、この例では、60μm×60μmの正方形である。なお、この開口の形状は、5μm×20μm等の長方形であってもよい。上述したように、ギャップ膜50(流路形成部530)の配置パターン、すなわち流路空間FPの配置パターンを調整することによって、薄膜の強度を向上させなくても、開口部110および開口部210の開口の形状をより大きくして設定することもできる。
開口部120、125、130、135の開口の形状は、開口部110と比べて、大きく、この例では、1.0mm×1.5mmの長方形である。なお、この開口の形状は、1.0mm×1.0mm等の正方形であってもよい。このように、開口部120、125、130、135に比べて、開口部110は非常に小さいが、説明に用いた各図では、構造をわかりやすくする表現するために、これらの大きさを調整して示している。
なお、これらの開口部110、120、125、130、135の開口の形状は、四角形以外の多角形であってもよいし、円形、楕円形等、曲線で囲まれた形状であってもよいし、直線と曲線とで囲まれた形状であってもよい。また、開口部120、125、130、135の形状がそれぞれ異なっていてもよい。
開口部110、210は、その内壁が、第1薄膜150および第2薄膜250が拡がる平面(基板表面)に対して傾き(テーパ形状)を持って形成されている。開口部120、125、130、135についても、その内壁がその基板表面に対して傾きを持って形成されている。開口部内において傾きの程度が一定でなく変化していてもよい。すなわち、開口部110、120、125、130、135は第1薄膜150側の開口面積が外部空間1000側の開口面積よりも小さい。また、開口部210は第2薄膜250側の開口面積が外部空間1000側の開口面積よりも小さい。開口部110、210の内壁がテーパ形状であると、電子線の入射角のマージンを確保することができる。
第1基板10と第2基板20とは、ギャップ膜50(周辺部510および流路形成部530)を挟み、第1薄膜150および第2薄膜250を介して接合している。第1基板10と第2基板20との間には、第1薄膜150、第2薄膜250および流路形成部530に囲まれた空間が形成されている。この空間は、観察空間MS、接続空間CSおよび流路空間FPを含む。さらに、流路空間FPは、第1流路空間FP1および第2流路空間FP2を含み、接続空間CSは、第1接続空間CS1および第2接続空間CS2を含む。観察空間MSは、開口部110およ開口部210との間の領域に形成され、第1薄膜150と第2薄膜250と流路形成部530とで囲まれた空間であり、電子顕微鏡に用いられる電子線が通過する空間である。
第1流路空間FP1は、少なくとも2箇所において外部空間1000と接続される。第2流路空間FP2は、少なくとも2箇所において外部空間1000と接続される。この例では、第1流路空間FP1は、2つの開口部を介して外部空間1000と接続し、この例では開口部120、130を介して外部空間1000に接続する。また、第2流路空間FP2は、2つの開口部を介して外部空間1000と接続し、この例では開口部125、135を介して外部空間1000に接続する。
第1接続空間CS1は、観察空間MSおよび流路空間FP1を接続する。第2接続空間CS2は、観察空間MSおよび流路空間FP2を接続する。
第1流路空間FP1および第2流路空間FP2の流路幅は、それぞれ0.2μm以上500μm以下であり、望ましくは、100μm以上400μm以下である。一方、接続空間CSの流路幅は、0.2μm以上500μm以下であり、望ましくは、2μm以上300μm以下である。
観察空間MSにおいて流路幅が広くなるほど薄膜の強度を高める必要がある。また、流路幅が広くなるほど、流路内の流体の進行速度が速くなるため、観察空間MSの両端から侵入した2種の流体が接触し、混合し、反応する動的な過程を観察することが困難になる。
一方、流路空間FP、接続空間CSおよび観察空間MSのいずれも、流路幅を狭くし、例えば、第1薄膜150と第2薄膜250との距離(ギャップ膜50の厚さ)よりも狭くすると、試料が通過できなくなってしまう場合もある。例えば、ギャップ膜50の厚さが試料のサイズに合わせてできるだけ薄く形成されている場合には、これよりも流路幅を狭くすると試料が通過できない。したがって、試料が通過できる程度に流路幅を狭くしておくことで、第1薄膜150および第2薄膜250をより薄くすることもできる。
接続空間CSの流路幅と、流路空間FPの流路幅との関係として、好ましくは接続空間CSの流路幅は、流路空間FPの流路幅よりも小さく、より好ましくは接続空間CSの流路幅は流路空間流FPの流路幅の10%以下である。これによって、後述するように、観察される2流体である試料含有液体700および750の注入から反応までの時間を、観察可能な程度に長期化させることができる。
第1流路空間FP1および第2流路空間FP2のそれぞれの一方の開口部が試料含有液体を注入するための開口であり、それぞれの他方が第1流路空間FP1および第2流路空間FP2の空気を外部空間1000に押し出すための排気口として機能する。なお、それぞれの一方の開口部(例えば、開口部130、135)が、第1基板10の別の部分に形成されていてもよいし、第2基板20に形成されていてもよい。また、第1流路空間FP1および第2流路空間FP2が試料収容セルの側面まで到達するようにして、第1基板10と第2基板20との間に開口部が形成されていてもよい。
以上が、試料収容セル1の構成についての説明である。続いて、試料収容セル1に試料含有液体を配置して、電子顕微鏡にて観察できる状態にするための処理(観察セル作製処理)について説明する。
[観察セル作製処理]
図5は、本発明の第1実施形態における試料収容セルへ試料含有液体を注入する方法を説明する図である。図5(a)は、図1、2における断面線A−A’の断面を示し、図5(b)は、図1、2における断面線B−B’の断面を示している。試料含有液体700および750は、それぞれ第1流路空間FP1および第2流路空間FP2にそれぞれ開口部120および125から注入されると、それらの空間内を移動してそれぞれ接続空間CS1およびCS2に至り、観察空間MS内で合流する。なお、開口部120および125ではなく開口部130および135に試料含有液体700および750がそれぞれ注入されてもよいし、開口部120および135に試料含有液体700および750がそれぞれ注入されてもよいが、以下の説明では、開口部120および130に試料含有液体700が注入される注入口であるものとして説明する。
観察空間MSに対応する開口部110、210は、試料収容セル1の全体の大きさに比べると非常に小さい。そのため、開口部110、210を視認するだけでは、観察空間MSに試料含有液体700および750が到達しているかわかりにくい。試料収容セル1では、第2基板20が可視光線を透過する材料で形成されているため、第2基板20側から試料含有液体700および750の位置を確認することができる。
したがって、試料含有液体700および750、または液体中の試料自体の位置を第2基板20側から確認しつつ、開口部120および125からの注入量、注入圧力等を制御することにより、目的とする範囲(例えば、第1流路空間FP1、第2流路空間FP2、第1接続空間CS1、第2接続空間CS2、観察空間MS、開口部130および開口部135)に試料含有液体700および750を拡げることができる。このとき、試料含有液体700および750は、それぞれ第1流路空間FP1および第2流路空間FP2の全体を充填するように、注入されることが望ましい。後述のように封止材で封止された後に、流路空間FPを含む封止された空間において試料含有液体700および750によって充填されない部分が気泡として存在すると、電子顕微鏡による観察がされるまでにその気泡が観察空間MSに移動してしまう可能性があるためである。
図6は、本発明の第1実施形態における試料収容セルを封止するための樹脂を形成する方法を説明する図である。試料含有液体700および750がそれぞれ第1流路空間FP1、第2流路空間FP2に注入された後、開口部120、125、130、135をそれぞれ封止材320、325、330、335で塞ぐことで、流路空間FP、接続空間CSおよび観察空間MSは、外部空間1000と分離される。封止材320、325、330、335は、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂であり、UV硬化型の樹脂であってもよいし、2液混合型硬化樹脂(例えば、2液常温硬化タイプまたは1液低温硬化タイプ)であってもよい。UV硬化型の場合には、開口部120、125、130、135を塞ぐように硬化前の樹脂を形成し、UV照射によって硬化させて封止材320、325、330、335が形成される。なお、封止材320、325、330、335によって外部空間1000と分離された内部空間には気泡が含まれないようにしてもよいし、硬化前の樹脂と試料含有液体700および750とが混合しないように、少なくとも樹脂が硬化するまでは互いに離れた状態(試料含有液体と封止材との間に気泡が存在する状態)にしてもよい。
観察空間MSに到達した試料含有液体700および750は、外部空間1000と離隔されているため、電子顕微鏡による観察が行われる際に、試料収容セル1が真空環境に曝されても、試料含有液体700および750が揮発してしまうことを防ぎ、液体の状態を保持することができる。また、観察空間MSは、電子線に対して透過性を有する数十nm程度の第1薄膜150および第2薄膜250に囲まれている。
また、第1薄膜150と第2薄膜250との間にギャップ膜50が配置されているために薄膜そのものの強度を低くすることもできる。その結果、ギャップ膜50が配置されていない場合に比べて、観察空間MSの領域を大きくしたり、薄膜を薄くしたりすることもできる。さらに、電子顕微鏡による観察時には、外部空間1000が観察空間MSより減圧状態にあるため、第1薄膜150および第2薄膜250が外部空間1000側に拡がるように力がかかって観察空間MSが膨らむ可能性があるが、ギャップ膜50によって第1薄膜150と第2薄膜250とが接続されていれば、少なくともギャップ膜50と接触している部分では、第1薄膜150と第2薄膜250との距離が固定されるため、観察空間MSが膨らむことを抑制することができる。
そのため、観察空間MSの高さ(第1薄膜150および第2薄膜250との距離)、すなわち試料含有液体700および750の厚さは、電子線に対して透過性を有する程度の大きさを保つことができる。したがって、電子顕微鏡で用いられる電子線は、開口部110を通って、第1薄膜150、試料含有液体700および第2薄膜250を通過し、さらに開口部210を通って、試料収容セル1全体を通過することができる。電子線EBの方向は上記とは逆に、開口部210側から開口部110側に通過する方向あってもよい。
図5における試料注入処理、および図6におけるセル封止処理については、手動処理であっても、自動処理であってもよい。手動処理の場合には、マイクロマニピュレータに取り付けたガラスキャピラリの先端と開口部120、125、130、135との位置関係を、実体顕微鏡を用いて確認し、ガラスキャピラリに接続されたインジェクタを用いて試料含有液体700および750を注入したり、封止材320、325、330、335を注入したりすればよい。
また、自動処理の場合には、試料注入処理およびセル封止処理を自動的に実行して観察セルを作成する装置を用いればよい。
[観察セル作製装置]
図7は、本発明の第1実施形態における観察セル作製装置の試料注入処理を説明する図である。観察セル作製装置800は、試料注入器810、UV照射器860およびステージ888を備える。ステージ888には、チップ台825、カップ台835、845、試料台850が取り付けられている。チップ台825は、チップ820を収容する。チップ820は、試料含有液体700を吸い取るためのノズルを有するピペットチップである。カップ台835は、試料含有液体700を保持する試料カップ830を収容する。カップ台845は、封止材となる硬化前樹脂300を保持する試料カップ840を収容する。試料台850は、試料収容セル1を設置する。また、ステージ888には、チップ820を廃棄するための廃棄口870が配置されている。
試料注入器810に対して、ステージ888は水平方向(図7における左右方向、以下、X方向という)に移動可能である。また、試料注入器810は、水平方向であってステージ888の移動方向とは垂直な方向(図7における奥行き方向、以下、Y方向という)と、鉛直方向(図7における上下方向、以下、Z方向という)とに移動可能である。したがって、試料注入器810とステージ888とでX、Y、Z方向で相対的に移動可能になっている。なお、ステージ888上の試料台850については、別途Y方向にも移動可能であってもよい。
試料注入器810は、チップ取付部811、支持部813、制御部815およびチップ取り外し部817を備える。チップ取付部811は、先端にチップ820が差し込まれて取り付けられる部分である。支持部813は、装置天井に対してY方向、Z方向に移動させるように試料注入器810を支持する。制御部815は、チップ取付部811に取り付けられたチップ820に試料カップ内の液体を吸い込んで保持したり、チップ820に保持された液体を排出したりするための制御を行う。チップ取り外し部817は、下方に移動することによって、チップ820を下方に押し出してチップ取付部811から取り外す。
UV照射器860は、硬化前樹脂300を硬化させるためのUV光を照射する装置である。UV光の照射範囲は、試料台850に設置された試料収容セル1全体を含んでいてもよいし、開口部120、125、130、135に対応する部分にスポットで照射するようにしてもよい。開口部120、125、130、135に対応する部分にスポットで照射するようにすれば、試料へのUV光の影響を抑えることができる。
図7(a)は、試料収容セル1がセル保管庫等から運ばれて、観察セル作製装置800の試料台850に設置された状態を示している。続いて、ステージ888と試料注入器810とを移動させ、以下に示す順に処理を実行する。まず、チップ取付部811にチップ820を取り付ける(図7(b))。その後、試料注入器810は、試料カップ830内の試料含有液体700を吸い上げてチップ820内に保持する(図7(c))。試料含有液体700を保持するチップ820を試料収容セル1の開口部120上に移動させて、チップ820内の試料含有液体700を排出して開口部120から試料収容セル1内部に注入する(図7(d))。
なお、チップ820を試料収容セル1の開口部120上に移動させる際には、例えば、試料注入器810は、カメラ等の撮像部を用いて試料収容セル1の形状を画像認識し、さらには開口部120の位置を認識し、開口部120の位置にチップ820を移動させる。また、試料台850に試料収容セル1の内部の状態を第2基板20側から撮像する撮像部を用いることで、試料含有液体700の注入の程度を検出し、その程度に応じて注入量、注入圧力が調整されるようにしてもよい。
次いで、上記と同様の処理によって、開口部125から試料含有液体750を試料収容セル1に収容する。
続いて、観察セル作製装置800の封止処理について説明する。図8は、本発明の第1実施形態における観察セル作製装置のセル封止処理を説明する図である。試料注入器810は、試料カップ840内の硬化前樹脂300を吸い上げてチップ820内に保持する(図8(a))。硬化前樹脂300を保持するチップ820を試料収容セル1の開口部120上に移動させて、チップ820内の硬化前樹脂300を排出して開口部120に滴下し(図8(b))、続いて、開口部130に滴下する(図8(c))。なお、開口部130への滴下前に、再度チップ820内に硬化前樹脂300を吸い上げておいてもよい。同様にして硬化前樹脂300を、開口部125および135に滴下する(図示せず)。なお、硬化前樹脂300が、UV硬化型ではなく、上述した2液常温硬化タイプまたは1液低温硬化タイプであっても同様であり、この場合には、後述するUV光の照射は不要である。
続いて、試料台850をUV照射器860の下方に移動させ、試料収容セル1にUV照射器860からのUV光を照射する(図8(d))。この照射によって、試料収容セル1の開口部120、130に滴下された硬化前樹脂300を硬化させる。これによって、試料収容セル1の内部空間に試料含有液体700が外部空間1000と離隔された状態で収容される。また、試料注入器810は、チップ取り外し部817によって、チップ820をチップ取付部811から取り外して廃棄口870に廃棄する。UV光の照射中にチップ820の廃棄が実施されてもよい。
その後、試料含有液体700および750を収容した試料収容セル1が回収され、新たな試料収容セル1が試料台850に設置される(図7(a))。なお、チップ820は、試料収容セル1毎に交換するプロセスを説明したが、開口部120に滴下する硬化前樹脂300を吸い上げる前にチップ820を交換してもよい。
尚、上記では、試料含有液体700を注入し、次いで試料含有液体750を注入した後に、開口部120、125、130、135を封止する実施形態を例示したが、これに限られない。他の例として、試料含有液体700を、開口部120を介して注入した後に、開口部120、130を封止し、その後、試料含有液体750を、開口部125を介して注入した後に、開口部125、135を封止してもよい。
また、他の例として、試料含有液体700および750を同時に注入し、開口部120、125、130、135を封止してもよい。
尚、試料含有液体700および750の接触、混合そして反応の動的過程を観察するためには、観察空間MS内の開口部110および開口部210に対応する領域において両者が合流する必要がある。しかしながら、本実施形態のような場合、試料含有液体700および750の試料収容セルへの収容は同時ではなく、時間差が生じてしまうため、観察空間MS内の開口部110および開口部210に対応する領域の外において両者が合流してしまうことが懸念される。
このような場合の対策として、例えば観察空間MSの配置を工夫することが考えられる。つまり、最初に収容される試料含有液体700の注入から、観察空間MS内の開口部110および開口部210に対応する領域への到達を遅延させるような観察空間MSの配置とすればよく、種々の設計が可能である。
例えば、後の実施形態において説明されるように、第1流路空間FP1側の端部付近において流路幅を狭くすることで、最初に試料収容セル1に収容される試料含有液体700の流速を低下させることができる。
他の例として、後の実施形態において説明されるように、観察空間MS内の開口部110および開口部210に対応する領域への経路について、第2流路空間FP2を経由する経路よりも、第1流路空間FP2を経由する経路を長く設定すればよい。
以上が、観察セル作製装置800による試料注入処理およびセル封止処理についての説明である。続いて、試料収容セル1の製造方法について図9〜図10を用いて説明する。
[試料収容セル1の製造方法]
試料収容セル1は、第1基板10と第2基板20とがギャップ膜50を介して接合されて形成される。第1基板10および第2基板20のそれぞれは、以下に説明する所定の製造工程を経てから接合される。
図9は、本発明の第1実施形態における試料収容セルのうち第1基板の製造工程を説明する図である。図10は、図9に続く第1基板の製造工程を説明する図である。いずれの図も、図4に対応する断面構造を示している。まず、図9(a)に示す第1基板10を準備する。第1基板10は、上述したように、シリコン基板であり、この例では、750μmの厚さを有する。なお、300μm程度のシリコン基板を用いることで、後述する図19(d)の薄化処理が不要となるため、薄化処理のための支持基板を用いなくてもよい。
第1基板10に第1薄膜150、およびギャップ膜50の一部の層となる膜5001を形成する(図9(b))。第1膜150は窒化シリコン膜であり20nmの膜厚を有する。膜5001は金(Au)であり、100nmの膜厚を有する。これらの膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)などの蒸着処理、めっき処理等によって形成されればよい。また、第1膜150が窒化シリコン膜でなく酸化シリコン膜である場合、シリコン基板の第1基板10を熱酸化することで形成された熱酸化膜であってもよい。以下に形成される様々な膜についても、同様である。
フォトリソグラフィ技術を用いて、膜5001の一部を除去する(図9(c))。除去される領域は流路空間FP、観察空間MSに対応する領域であり、この結果、周辺部511および図示されない流路形成部531が形成される。なお、膜の除去のためには、ドライエッチングおよびウエットエッチングのいずれも適用可能であり、特に明示しない限り以下の説明においても同様である。また、数十nm程度の粒径を有する金粒子に有機溶剤を混ぜたペースト状の材料を用いて、スクリーン印刷によって周辺部511および図示されない流路形成部531が形成されてもよい。
ここで、第1膜150の一部を除去してもよい。除去される場合には、除去される領域は、開口部120、125、130、135が形成される位置に対応した領域である。この例では、この工程は存在しない。第1膜150の一部を除去する場合については、別の実施形態で説明する。
その後、第1基板10の第1薄膜150が形成された側に、粘着層を含む支持基板を貼り付ける。支持基板の粘着層は、貼り合わせ面に設けられており、熱、光等の刺激の印加により粘着力が低下するようになっている。この例では、UV光の照射によって粘着力が低下する粘着層を用いている。
支持基板によって支持された第1基板10を薄化する(図9(d))。第1基板10の薄化は、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)、ウエットエッチングを用いる。ウエットエッチングを用いる場合には、例えば、第1基板10をエッチングすることのできる液体として、フッ酸およびフッ化アンモニウムの混合液が用いられる。第1基板10は750μmの厚さを有しているが、この薄化処理によって、250μm程度まで薄くなる。第1基板10が支持基板によって支持されているため、第1基板10が薄化しても第1基板10の反りが抑制され、また、製造工程中の強度を保つこともできる。以上の通り、ギャップ膜となる層と第1薄膜150とが配置された第1基板10が製造される。この例では、第2基板20についても同様にして形成される。この例では、第2基板20は、上述したように、可視光線に対する透過性を有する基板であって、この例ではガラス基板であり、700μmの厚さを有する。なお、300μm程度のガラス基板を用いることで、薄化処理を行わなくてもよい。
図10は、本発明の第1実施形態における第1基板と第2基板との接合および開口の形成に関する製造工程を説明する図である。上述のように薄膜等が形成された第1基板10と第2基板20とは、第1薄膜150と第2薄膜250とが対向するようにして(図10(a))、第1薄膜150上に配置されたギャップ膜(周辺部511および図示されない流路形成部531)と第2薄膜250上に配置されたギャップ膜(周辺部511および図示されない流路形成部531)とをそれぞれ接触させて接合させる(図10(b))。それぞれ表面が金(Au)であり、Au−Au接合が実現される。すなわち、金が接着層として機能する。接着層として機能する材料であれば、金に限られない。
この接合によって、第1基板10と第2基板20との間にギャップ膜50(周辺部510および図示されない流路形成部530)が形成され、このギャップ膜50を介して第1薄膜150と第2薄膜250とが強固に接合され、これらの間に流路空間FPおよび観察空間MSを含む空間が形成される。また、Au−Au接合によれば、200℃程度の低温、100MPa程度の低圧でも強固な接合ができるため、第1薄膜150、第2薄膜250への負荷を低減することができる。
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、第1基板10に開口部110および図示されない、120、125、130、135を形成し、第2基板20に開口部210を形成する(図10(c))。このエッチング工程では、D−RIE(Deep Reactive Ion Etching)を用いてもよいし、ウエットエッチングを用いてもよい。エッチングの際、開口部110、120、125、130、135の内壁が第1基板10の表面に対して傾きを有するように処理していてもよい。同様に、開口部210の内壁が第2基板20の表面に対して傾きを有するように処理していてもよい。
なお、開口部210を形成する前に、開口部210に対応する部分にレーザを照射しておき、第2基板20のエッチングレートを増加させてもよい。この場合には、レジストマスク等を用いずに、ウエットエッチング処理でレーザ照射部分を開口することによって開口部210を形成するようにしてもよい。
このようにして、試料収容セル1が製造される。なお、この試料収容セル1は、各図において1つのセルとして説明したが、実際の製造工程においては、一基板上に複数の試料収容セル1が同時に形成されている。したがって、それぞれの試料収容セル1を個片化するためにダイシングを行う。なお、上述した製造方法における各構成の材料、エッチング方法等の各種条件については一例であって、様々な条件に設定可能である。
この状態では、試料収容セル1は、第1薄膜150が開口部110を塞いでいるだけでなく、開口部120、125、130、135をも塞いでいる。これは、第1基板10と第2基板20とをギャップ膜50を介して接合する前に、開口部120、125、130、135に対応する部分の膜を除去していないためである。このように構成された試料収容セル1は、流路空間FPと外部空間1000とが第1薄膜150によって隔てられている。したがって、このままでは、観察空間MSに試料含有液体を注入することができない。
そこで、この例では、開口部120、125、130、135を塞ぐ第1薄膜150を物理的な力によって破る。これによって生じた孔を通して、流路空間FPが外部空間1000と接続される。物理的な力とは、開口部120、125、130、135の底部BAに位置する第1膜150に対して針状の物体を押し当てて孔を形成する方法が例として挙げられる。なお、物理的な力とは、第1薄膜150に接触して力を伝達する方法に限らず、空気を強く吹き付けることなどによって、第1薄膜150に対して間接的に力を伝達する方法であってもよい。例えば、観察セル作製装置800において、底部BAの第1薄膜150に孔を形成することで、試料含有液体を注入する直前まで、観察空間MSを外部空間1000に露出させないようにして、内部を清浄に保つこともできる。以上が試料収容セル1の製造方法についての説明である。
上述した一実施形態に係る試料収容セル1は、予め第1基板10と第2基板20とがギャップ膜50を介して強固な接合をしているため、内部に注入された試料含有液体700および750が漏れることはほとんどない。また、第2基板20が可視光線に対する透過性を有しているため、注入状態を確認しながら、第1基板10と第2基板20との間の内部空間への試料含有液体700および750を注入することもできる。また、第1薄膜150と第2薄膜250とに挟まれて接続されたギャップ膜50(この例では、流路形成部530)が配置されているため、薄膜そのものの強度を低くすることもできる。その結果、流路形成部530が存在しない場合に比べて、観察空間MSの領域を大きくしたり、薄膜を薄くしたりすることもできる。
また、電子顕微鏡による観察時には、外部空間1000が観察空間MSより減圧状態にあるため、第1薄膜150および第2薄膜250が外部空間1000側に拡がるように力がかかって観察空間MSが膨らむ可能性がある。この例のように、ギャップ膜50によって第1薄膜150と第2薄膜250とが接続されていれば、少なくともギャップ膜50と接触している部分では、第1薄膜150と第2薄膜250との距離が固定されるため、観察空間MSが膨らむことを抑制することができる。なお、同様の理由により、第1薄膜150と第2薄膜250とが近づいて貼り付いてしまう現象(スティッキング現象)を抑制することもできる。このように、試料収容セル1によれば、利便性を高めることができる。
<第2実施形態>
以下、本発明の他の一実施形態に係る試料収容セルについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
[試料収容セルの構成]
図11は、本発明の第1実施形態における試料収容セルの外観を示す図である。第1実施形態における試料収容セルと比較すると、第1基板10には、開口部140がさらに配置されている点で相違している。
続いて、試料収容セル1の内部構造を含めた詳細な構造について、図12を用いて説明する。図12は、本発明の第2実施形態における試料収容セルを第1基板側から見た平面図である。
第1実施形態における試料収容セル1と比較すると、流路空間FPは、第3流路空間FP3をさらに含む点で相違している。第3流路空間FP3は、観察空間MSから引き出されている。第3流路空間FP3は、本実施形態においては観察空間MSと外部空間1000とを開口部140を介して接続する。
第3流路空間FP3は、開口部110および開口部210に対応する領域を含んで形成されることから、前述の観察空間MSと同様の理由により、流路幅は、好ましくは0.2μm以上500μm以下であり、さらに好ましくは2μm以上300μm以下である。
第1実施形態における試料収容セルは、観察空間MS内に空気の排出口を有しないため、観察空間MSの両端から侵入した試料含有液体700および750が内部へ侵入して行かないことが懸念される。そこで、観察空間MSと外部空間1000とを接続し、空気の排出口として機能する第3流路空間FP3を設けることによって、試料含有液体700および750を観察空間MS内でスムーズに進行させることができる。
<第3実施形態〜第5実施形態>
試料含有液体700および750を観察空間MS内でスムーズに進行させ、反応を促進させるためには、本実施形態による試料収容セルの構成に限らず、他にも種々の構成が考えられる。
第3実施形態として、例えば、第2実施形態における試料収容セルに対して、開口部140を設けず、その代わりに第3流路空間FP3内に吸着剤145を設けておいてもよい。図13は、本発明の第3実施形態における試料収容セルの外観を示す図である。図14は、本発明の第1実施形態における試料収容セルを第1基板側から見た平面図である。当該吸着剤(ゲッター材)としては、例えばレーザ照射等による加熱によって活性化される材料を用いることができる。例えば、ゲッター材は、薄膜、ペレット、錠剤、粉末、粒状体又は他の形状の形であってよい。材質としては、ジルコニウム(Zr)−バナジウム(V)−鉄(Fe)合金やジルコニウム(Zr)−アルミニウム(Al)合金や、ジルコニウム+鉄系、ジルコニウム+ニッケル系の合金材料を用いることができるを用いることができる。観察時に当該吸着剤に対してレーザを照射して活性化させることによって、試料含有液体700および750の観察空間MS内への侵入を促進することができる。レーザ光源930は電子顕微鏡に設けられてもよい。図15は、本実施形態に係る電子顕微鏡900を説明する模式図である。電子銃910から放出され、試料収容セル1を透過した電子線を検出することによって試料含有液体を観察する。観察開始と共に、レーザ光源920より吸着剤にレーザを照射して活性化させればよい。
このとき、第3流路空間FP3内の吸着剤にレーザ照射を行うためには、第1基板10または第2基板20の少なくともいずれか一方は、例えばガラス基板等の透光性を有する基板を用いる必要がある。
また、第4実施形態として、試料含有液体700および750を注入後、開口部140を介して観察空間MS内の空気を吸引してもよい。これによって、試料含有液体700および750を観察空間MS内への侵入を促進し、さらに混合を促進することができる。
また、第5実施形態として、電子顕微鏡に試料収容セルを加熱するためのヒーター920を設けてもよい。図16は、本実施形態に係る電子顕微鏡900を説明する模式図である。当該ヒーター920を用いて試料収容セル1を加熱することによって、観察時に試料含有液体700および750の混合を促進することができる。
<接続空間CSの配置例>
上記実施形態では、接続空間CSは、ギャップ膜50によって、流路空間FPおよび観察空間MSを接続する直線状の流路として形成されていた。ここでは、他の形状となる接続空間CSの例を説明する。
図17〜図19は、観察空間の様々な配置例を示す模式図である。図17は、第1接続空間CS1の流路幅が第2接続空間CS2の流路幅に比べて狭く設けている配置例である。このような配置とすることによって、第1流路空間FP1側から試料含有液体700を注入し、その後に第2流路空間FP1側から試料含有液体750を注入する場合において、これらの注入の時間差が無視できない場合にも、第1流路空間FP1側から注入された試料含有液体700が観察空間MSへ到達するまでの時間を遅延させることができるため、観察空間MSにおいて試料含有液体700および750が接触、混合そして反応する動的な過程を観察することができる。
図18は、第1流路空間FP1から観察空間MSまでの経路を引き回すことによって、第2流路空間FP2から観察空間MSまでの経路に比べて長く設けた接続空間CSの配置例である。このような配置とすることによって、第1流路空間FP1側から試料含有液体700を注入し、その後に第2流路空間FP1側から試料含有液体750を注入する場合において、これらの注入の時間差が無視できない場合にも、第1流路空間FP1側から注入された試料含有液体700が観察空間MSへ到達するまでの時間を遅延させることができるため、観察空間MSにおいて試料含有液体700および750が接触、混合そして反応する動的な過程を観察することができる。
図19は、観察空間MS内を観察しやすくするために比較的広い面積を確保した配置例である。接続空間CSによって、観察空間MSおよび流路空間FPに接続されている。接続空間の流路幅を調節することによって、試料含有液体の注入から観察空間MSに侵入するまでの時間を調節できるため、観察空間MSの配置は、第1薄膜150および第2薄膜250を指示できる範囲までは面積を拡大しても構わない。
<その他の実施形態>
第1薄膜150および第2薄膜250は、窒化シリコン膜に限らず、窒化酸化シリコン、酸化シリコン膜またはアモルファスシリコン膜であってもよく、さらには、金属膜、金属窒化膜、金属酸化膜、金属窒化酸化膜であってもよい。これら薄膜としては、上述したように、電子線に対して透過性を有する必要がある。そして、電子顕微鏡による観察時に真空中に曝されるため、これらの薄膜は、大気や水分に対してバリア性を有することが望ましい。
また、膜が弛まないようにすることも望ましい。さらには、製造工程中においてフッ酸に代表される酸に対して腐食されにくい(エッチングされたとしても表面が荒れにくく、変色しにくい)ことが望ましい。これらの要素を考慮に入れて、第1薄膜、第2薄膜の材料を選択することが製造上は望ましい。
また、第1薄膜および第2薄膜は、単層に限らず、複数種類の膜を積層した膜であってもよい。第1薄膜150を酸化シリコン膜とする場合には、第1基板10の熱酸化膜を用いてもよい。第1薄膜150および第2薄膜250を窒化シリコン膜で形成すると、薄く加工しやすく、また、膜の強度が確保しやすくなる。さらに、膜質の制御による応力調整が容易であり、膜が弛まないように形成することもできる。また、ギャップ膜30(流路形成部350)を配置することにより、さらに膜全体の強度、応力調整等が容易になる。
電子顕微鏡による観察時において、試料収容セルのチャージアップを防止するために、数nmのカーボン等の導電膜をセル外面(第1基板、第2基板、第1薄膜および第2薄膜の表面の少なくとも一部)に配置しておいてもよい。
1…試料収容セル、10…第1基板、20…第2基板、50…ギャップ膜、110,120,125,130,135,140,210…開口部、145…吸着剤、150…第1薄膜、250…第2薄膜、300…硬化前樹脂、320,330…封止材、510,511…周辺部、530,531…流路形成部、700,750…試料含有液体、800…観察セル作製装置、810…試料注入器、811…チップ取付部、813…支持部、815…制御部、817…チップ取り外し部、820…チップ、825…チップ台、830,840…試料カップ、835,845…カップ台、850…試料台、860…UV照射器、870…廃棄口、888…ステージ、900…電子顕微鏡、910…電子銃、920…レーザ光源、930…ヒーター、1000…外部空間、1501,5001…膜、5010…ガラス基板、5020…ガラス層

Claims (10)

  1. 第1開口部を有する第1基板と、
    前記第1基板に対向して配置され、前記第1開口部に対向する位置に第2開口部を有する第2基板と、
    前記第1開口部の前記第2基板側を塞ぐ第1薄膜と、
    前記第2開口部の前記第1基板側を塞ぐ第2薄膜と、
    少なくとも前記第1開口部と前記第2開口部との間において前記第1薄膜と前記第2薄膜とに挟まれて配置されたギャップ膜と、
    を備え、
    前記第1基板と前記第2基板との間には、前記第1薄膜と前記第2薄膜と前記ギャップ膜とに囲まれた観察空間と、少なくとも2箇所で外部空間と接続される第1流路空間と、当該観察空間及び当該第1流路空間を接続する第1接続空間と、少なくとも2箇所で外部空間とを接続される第2流路空間と、当該観察空間及び当該第2接続空間を接続する第2接続空間とが配置され、
    前記第1薄膜および前記第2薄膜は、電子線に対して透過性を有することを特徴とする試料収容セル。
  2. 前記第1接続空間の流路幅及び前記第2接続空間の流路幅は、前記第1流路空間の流路幅及び前記第2流路空間の流路幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の試料収容セル。
  3. 前記第1接続空間の流路幅及び前記第2接続空間の流路幅は、前記第1流路空間の流路幅及び前記第2流路空間の流路幅の10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の試料収容セル。
  4. 前記観察空間から引き出され、外部空間と接続された第3流路空間
    を更に備えた請求項1に記載の試料収容セル。
  5. 前記観察空間から引き出され、吸着剤が配置された第3流路空間
    を更に備えた請求項1に記載の試料収容セル。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の試料収容セルを備えた電子顕微鏡。
  7. 前記試料収容セルを加熱するためのヒーターを更に備えた請求項6に記載の電子顕微鏡。
  8. レーザ光源を更に有する
    請求項7に記載の電子顕微鏡。
  9. 電子線を透過させる薄膜に囲まれた観察空間に、前記観察空間に接続された第1流路空間に第1試料含有液体を注入し、
    前記観察空間に接続された第2流路空間に第2試料含有液体を注入し、
    前記観察空間に電子線を照射し、前記観察空間に侵入した前記第1試料含有液体及び前記第2試料含有液体を透過した前記電子線を観察すること
    を含む試料観察方法。
  10. 前記観察することは、
    前記第1試料含有液体及び前記第2試料含有液体を加熱しながら観察することである請求項9に記載の試料観察方法。
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