JP2017002621A - 免震構造物に用いる変形制限装置 - Google Patents

免震構造物に用いる変形制限装置 Download PDF

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Abstract

【課題】巨大地震でも、免震性能不足の既存建物でも、過剰な地震エネルギー部分を吸収し、免震装置の過大変形を抑制し免震装置本体と共に、上部構造を損傷させない変位制限装置を提供する。
【解決手段】下部構造と上部構造との間に免震装置のある免震建物構造で、下部構造と上部構造との間に設置する建物構造の変位制限装置であり、所要の遊間距離で対向して設置される緩衝材からなり、緩衝材の対向面には勾配がある変位制限装置であり、緩衝材の対向面に勾配を設けることで、衝撃力の一部の力の向きを変え、上部構造に常時作用している巨大な鉛直荷重で相殺させることができ、残りの分力だけが上部構造に付与される反力になり、上部構造の負担する力が小さくなり、上部構造及び免震装置の破損を防ぎ、地震後に免震装置が元通りに復元するので、大地震でも構造物として免震機能を失わずに維持でき、また変位制限装置は、何時でも簡単に交換または新設できる。
【選択図】図18

Description

本発明は、新設または既存を問わず、免震建物における免震装置の過大変形を抑制するための変位制限装置に関するものである。
免震建物構造において、建物の固有周期を長くして地震入力を低減させ、地震時に建物が受ける力を小さくするものとして知られている。このような免震建物構造としては、下部構造と上部構造とを分離し、その間に免震装置を設置する免震層が形成され、これら構造および装置によって地震エネルギーを吸収するようにしたものである。一般的に免震装置は大きく分けてアイソレータとダンパーという2つの装置で構成されている。アイソレータは建物の固有周期を長くする役割を持つと同時に、建物重量を支えるように、積層ゴム系のものとすべり系の2種類ある。また、アイソレータの中にはダンパー機能を兼ね備えているものもある。ダンパーは地震時の建物の揺れ幅を抑えたり揺れを早く留める役割をする装置であり、建物の重量を支えるものではないのである。すべり系はすべり支承と転がり支承があり、摩擦係数が非常に小さいため、地盤の揺れを上部建物に伝達しにくいという特徴を持っている。しかしながら、依然として免震建物構造の免震装置として積層ゴムがよく用いられているが、この種の免震装置は、薄いゴム板と鋼板とを交互に積層して接着したものであり、水平方向には柔軟で、変形しても元の位置に戻る免震機能を有するものであるが、上下方向には硬くて上部構造の荷重を十分支持できるようになっているため、大きな引張力には対応できないのである。地震時にロッキング現象によって上部構造と下部構造との間に大きな引張力が生じた場合には、免震装置は破損され、上部構造が下部構造から分離してしまうという問題点があった。
上記の問題点を解決するために、従来技術として複数の発明が開示されている。例えば、第1の従来技術として、基礎構造と縁切りした上部構造との間に免震装置が設置されるとともに、前記基礎構造と上部構造とにわたって所定の方向に傾斜したPC鋼材が設けられ、該PC鋼材は、1端部が基礎構造のフーチングに固定され、他端部が、柱に接合された一方の梁の端部と他方の梁の端部とにわたって取り付けた火打ち板に固定された免震建物構造である(特許文献1参照)。
この免震構造物によれば、基礎構造と上部構造とをPC鋼材で繋ぎ合わせたので、地震による垂直荷重により上部構造が基礎構造から分離するのを妨げる。また、地震による水平荷重を免震アイソレータで減衰して上部構造の水平方向の揺れを少なくする。さらに、地震による水平荷重または地震による垂直荷重をPC鋼材と免震装置とで減衰することができるとともに、これらの荷重に抵抗することができる、というものである。
また、公知に係る第2の従来技術としては、鋼管杭と縁切りした基礎との間に免震装置が設置され、該免震装置が杭頭部の周囲に形成された根巻コンクリートの上に設置され、該根巻コンクリートは鋼管に充填されたコンクリートが溢れ出て地面から突出した杭頭部を覆うように形成され、前記免震装置を貫通して鋼管杭と基礎とにわたって引張材が設けられた免震構造物である(特許文献2参照)。
この免震構造物によれば、大地震に対して免震装置の薄ゴム板の降伏を避けることができるので、免震装置を交換する必要がない。また長周期地盤振動の可能性がある地盤に建つ建物に対しても巨大地震の発生による共振を避けて制震作用が働くので、免震装置の薄ゴム板が降伏して建物が元の位置に戻らないということがなくなる。また、免震装置の上下端は、直下型地震動による上下方向衝撃波の増幅を防止することができるので、免震装置における薄ゴム板の劣化と降伏とを防ぐことができる、というものである。
さらに、公知に係る第3の従来技術としては、地盤上に設置された下部構造体と、この下部構造体の上部に位置する平面フレームと、前記下部構造体と平面フレームとの間に介在された鉛直荷重を支持する交差直動機構から構成される免震装置と、前記平面フレームの上部に設置された上部構造体とを備えた免震構造物において、下部構造体と平面フレームとの間に、鉛直荷重を支持する必要のない復元・減衰装置を備え、この復元・減衰装置は積層ゴム装置であるとともに、前記下部構造体と前記平面フレームの受圧部と所定の間隔を有して対向して設置されるバックアップ装置を備えた免震構造物である(特許文献3参照)。
この免震構造物によれば、戸建ての住宅等の比較的軽量な建築物などの構造物を免震構造物とすることができる。そして、構造物内の収容物の転倒などによる損傷を防止することができ、対地震安全性を高めることができる、というものである。
特許第3333163号公報 特許第3982585号公報 特許第3827115号公報
しかしながら、前記第1および第3の従来技術においては、いずれも交換できない構成になっているため、設計上想定以上の極大地震に遭遇してPC鋼材が降伏または破断した場合には、地震後に復元することができないという問題点があり、また、免震装置の高さによって上部構造と基礎構造との間に掛けられたPC鋼材が比較的短い場合は、引張荷重を受ける際にPC鋼材の伸びが小さいので、地震の衝撃力によって急激に破断し免震装置が損傷される虞がある。さらに、第2の従来技術においては、引張材が免震装置を貫通して設けられているため、免震装置として量産品が採用できず特注品となるので、非常に高価なものとなり、免震装置の使用選択肢が大幅に減少するという問題点がある。
また、前記したように、積層ゴム系のものとすべり系の特徴を活用して、最近では、積層ゴム支承とすべり支承を併用して免震建物を構築し、コストを低減することが図られるようになってきている。
しかしながら、耐震設計は、建築基準法に基づいて行うこととしているが、近年の傾向では、建築基準法に定められた地震震度(5強〜6弱)を超える巨大地震が発生することが増えてきている。設計上想定以上の巨大地震が発生した場合には、前記積層ゴム支承とすべり支承を併用して免震建物を構築しても、すべり支承が建物の水平変位を抑制できないため、積層ゴム支承が許容水平変形を超えた過大変形が発生して破損するばかりでなく、建物が滑り過ぎて転倒する危険性も生ずる。そのために、積層ゴム支承や制震ダンパーを多く増やして設置することが必要となり、反ってコスト高になるという問題点を有することになる。
また、既存の免震建物においては,当時の設計上想定した地震が現在の巨大地震より小さいため、免震装置の過大変形によって免震装置自体が破損するばかりでなく、建物の揺れが止まらないで過大変位するため、補強しないと使用不能となったとの報告もある。
最近、既存建物において性能不足の不良免震装置が使われていることが発覚した。この場合には、設計通りの免震性能を有しないため、不良免震装置を取替えないと既存建物が使用不可になる。しかしながら、既存建物は当初から免震装置が交換できるような構造には設計されていないため、すべての免震装置の取替えは実質的に不可能であるから、これらの既存建物に対して、免震性能の補強を必要としていることは現実問題として要求されている。
そこで、本発明は、設計上想定以上の巨大地震に遭遇しても、または、免震性能が不足している既存建物であっても、過剰な地震エネルギー部分を吸収し、免震装置の過大変形を抑制して免震装置本体と共に上部構造を損傷しないようにする変位制限装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、上記目的を達成するための具体的手段として、本発明に係る第1の発明は、下部構造と上部構造との間に免震装置を介在させてある免震建物構造において、前記下部構造と上部構造との間に設置される変位制限装置であって、該変位制限装置は、所要の遊間距離をもって対向して設置される対をなす緩衝材からなり、該緩衝材の対向面は所要の勾配に形成されていることを特徴とする変位制限装置を提供するものである。
前記第1の発明においては、前記緩衝材の対向面には、滑り材が設けてあること;前記の遊間距離は、前記免震装置の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜100%とすること;前記緩衝材は、前記免震装置があらゆる方向への変形にも対応可能な円形に形成されていること;および、前記緩衝材の対向面の勾配は、少なくとも異なる2段勾配とすること、を付加的な要件として含むものである。
また、本発明に係る第2の発明は、前記第1の発明に係る変位制限装置を免震装置と併用した免震建物構造を提供するものである。
本発明に係る変位制限装置によれば、以下に示す通りの効果を奏する。
1.緩衝材の対向面は所要の勾配に形成されることにより、装置制動時に緩衝材に作用する衝撃力が対向面に平行する分力(せん断力)と対向面に垂直する分力(圧縮力)に分解され、これらの分力が上部構造に伝達されて上部構造が受ける反力となる。そして、垂直分力(圧縮力)の殆どが上部構造に作用する鉛直荷重に相殺されるため、上部構造に影響しない。平行分力(せん断力)のみが上部構造の反力になり上部構造に付与される力である。要するに、対向面に勾配を設けることによって、装置が受けた衝撃力の一部の力向きを変更させ、上部構造に常時作用されている巨大な鉛直荷重で相殺させることができ、結果としては、残りの分力だけが上部構造に付与される反力になり、上部構造の負担する力が小さくなる。勾配なし(接触面が衝撃力に垂直とする場合)に比べ、上部構造への影響を小さく抑制することができ、免震装置と共に上部構造の損傷を防止することができる。
2.変位制限装置の制動開始時では、下部構造が地震動による加速度をもって上部構造に緩衝材同士が接触の形で衝突してくるから、過大な変位にならないように所定の許容変位値までの間に停止させるため、反力がなす仕事(反力とストロークとの積)で地震エネルギーを吸収して減衰して対応することになる。ストローク(停止するまでの距離)が小さいと反力が大きくなり、従って上部構造に伝達される受け持つ反力も大きくなり、上部構造の設計耐力を超えると損傷が生じる。逆に、ストロークを大きくすると反力が小さくて済むわけである。緩衝材の弾性変形、つまり、勾配によるスリップが大きなストロークになり、反力を小さくすることができるので、必要な地震エネルギー吸収量を確保することができるのである。
3.緩衝材の対向面に滑り材を設けることにより、表面剛性が確保され繰り返しの地震力を受けて、上下の緩衝材が一時的に強く接触しても付着することなく、直ぐに離れるようになり、地震後は元の状態に復元することができる。
4.遊間距離は、免震装置の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜100%とすることにより、変位制限装置の緩衝材が変形して地震エネルギーを吸収しながら、停止するまでのストロークを十分に確保しているため、免震装置の過大変形を許容することなく、かつ、上下の緩衝材が接触する時の衝撃力を、せん断力と圧縮力とに分解して影響を小さく押え、上部構造に伝達される反力を小さくできるので、上部構造の損傷を防止することができる。
5.緩衝材形状を円形に形成することにより、変位制限装置が,方向依存性がなくなり地震時に免震装置があらゆる方向への変形にも対応可能になり、装置の機能がフルに発揮できると共に設置場所に制約がなく自由に配置することが可能のである。
6.緩衝材の対向面の勾配を異なる角度で形成することにより、上下の緩衝材が当たる時の接触面積を段階的に変化させ、最初に当たる接触面積が全対向面の一部とし、緩衝材の弾性変形を大きくして反力を小さく抑制し、次の段階に接触面積を増やして反力を大きくすることによって、停止するまでの総反力を小さくし、上部構造への影響を最小限に抑えることができる。
7.免震建物構造に免震装置と共に変位制限装置を設置したことにより、設計上想定以上の巨大地震に遭遇しても、または、免震性能が不足している既存建物において、過剰な地震エネルギー部分を変位制限装置が吸収し、免震装置の過大変形を抑制して免震装置本体と共に上部構造の損傷を防止すると共に、免震建物構造全体の安全性を大幅に高めることができる。
8.変位制限装置を設置したことにより、高価な制震ダンパーを増やさずに、積層ゴム支承とすべり支承とを併用することができ、安価で安全性の高い免震建物構造を構築することができる。
9.設置した変位制限装置は、簡単に交換可能な構成であるため、巨大地震に遭遇して緩衝材がエネルギーを吸収して押し潰された状態になっても、免震装置本体の破損を回避でき、地震後に緩衝材は、安価で簡単に取り換えることができる。
10.変位制限装置は、新設の免震建物については勿論であるが、既存の免震建物の補強にも簡単に設置して使用することができる。
11.変位制限効果と共に、制震(振)効果が得られ、制震(振)ダンパーとして利用することができ、従来の高価な制震(振)ダンパーより安価であり、コトスダウンが図れる。
本発明の第1の実施の形態に係る変位制限装置を備えた免震建物構造の要部を略示的に示した側面図である。 図1のA−A線に沿う上部構造の下面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置の緩衝材の一例を拡大して示す断面図である。 同実施に係る緩衝材の一例を拡大して示した平面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置を備えた免震建物構造において、地震を受けた時の制動開始時の要部を略示的に示した断面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置を備えた免震建物構造において、変位制限装置の緩衝材を配設した状況を説明するための説明図である。 同実施の形態に係る変位制限装置を備えた免震建物構造において、地震を受けた時に変位制限装置の緩衝材が制動開始時を略示的に示した説明図である。 同実施の形態に係る変位制限装置を備えた免震建物構造において、巨大地震を受けた時に変位制限装置の緩衝材が作用した状態を略示的に示した説明図である。 同実施の形態に係る変位制限装置を備えた免震建物構造において、巨大地震による上部構造側の緩衝材が受ける衝撃力を示した説明図である。 同実施の形態に係る変位制限装置における緩衝材の対向面が異なる勾配で形成された他の実施例を示すもので、(a)が設置状況の略図、(b)が制動開始時の略図、(c)が巨大地震エネルギーを受けた状態を示す略図である。 本発明の第2の実施の形態に係る変位制限装置を備えた免震建物構造における要部のみを略示的に示した側面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置を構成する他方の緩衝材の取り付け状況を略示的に示した下面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置を構成する一方の緩衝材の取り付け状況を略示的に示した平面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置を免震建物構造に取り付けた状況を略示的に示した要部の断面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置を備えた免震建物構造において、巨大地震を受けた時に変位制限装置の緩衝材が作用した状態を略示的に示した説明図である。 同実施の形態に係る変位制限装置における他の実施例の緩衝材を示すもので、(a)は一方の緩衝材を断面で示した側面図、(b)は平面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置における他の実施例の緩衝材を示すもので、(a)は他方の緩衝材を断面で示した側面図、(b)は平面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置における他の実施例の緩衝材を取り付けた免震建物構造における要部のみを略示的に示した側面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置における他の実施例の緩衝材を取り付けた免震建物構造において、巨大地震を受けた時に緩衝材が作用した状態の要部のみを略示的に示した側面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置及び他の実施例を含む免震建物構造に配置する状況を略示的に示した側面図である。 同実施の形態に係る変位制限装置及び他の実施例を含む免震建物構造の下部構造に配置する状況を略示的に示した平面図である。
本発明を図示の複数の実施の形態に基づいて詳しく説明する。まず、図1〜4に示した免震建物構造における第1の実施の形態に係る変位制限装置について説明する。図1において、まず、免震建物構造としては、下部構造1と上部構造2との間に免震装置3が配置され、下部構造1は地盤4に打ち込んだ杭5の頭部にラップル基礎6を設けると共に、杭5の頭部周辺と地盤4の上面を覆うマットスラブ7が形成されている。上部構造2は、建物の各柱8を支えるフーチング9がそれぞれ設けられると共に、該各フーチング9間をつなぐ大梁(地中梁)10が設けられ、該大梁10の上面にスラブ11が形成されている。そして、免震装置3は下部構造1である杭頭部のラップル基礎6と上部構造2であるフーチング9との間に設置される。
また、下部構造1と上部構造2との間の所要位置に変位制限装置12が配設される。この変位制限装置12は対をなす緩衝材12a、12bで構成され、該対をなす緩衝材12a、12bが所要の遊間距離dをもって対向して配置される。この場合の所要の遊間距離dとは、免震装置3の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜100%とする。通常(新設または既存)の場合では、遊間距離dは、免震装置の設計許容変形値の80%〜100%とすることが好ましい。要するに、このように遊間距離を設けることによって、制動開始(遊間距離=0)から停止するまでの必要なストロークが確保され、免震装置の変形量が設計許容変形値を超えないように保証すると共に上部構造2に発生する反力を小さく抑えることができる。しかしながら、免震性能が不足している既存建物を補強する場合には、免震装置が正常な機能を発揮できずに変形量が設計値より大きいため、免震装置の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜80%とし、免震装置が過大変形に絶対にならないように対応することが望ましい。
また、遊間距離dの設定は、建物の平面形状、高さや構造形式、免震装置の配置及び使用種類等によって定めることが望ましい。
また、図3と図4に示したように、対向して配設される緩衝材12a、12bとしては弾性体または粘弾性体で形成され、それぞれベースプレート13a、13bを備えた鋼製ブロック14a、14b内に基部側が固定された状態で一体的に取り付けられ、各緩衝材12a、12bの対向面15a、15bは所要の勾配に形成されると共に、適宜の滑り材を設けて表面剛性を確保している。そして、図1に示したように、一方の緩衝材12aは、下部構造1であるマットスラブ7にベースプレート13aを取付ボルト16を介して取り付けると共に、図2に示したように、他方の緩衝材12bは上部構造2である大梁10にベースプレート13bを取付ボルト17介して取り付けるのである。このように、緩衝材12a、12bをボルト固定法によって上部及び下部構造に取り付けることにより、施工が簡単であるだけでなく、変位制限装置12の交換が容易にできる。
変位制限装置12を構成する対をなす緩衝材12a、12bは、対向面15a、15bを所要の勾配に形成してあることから、地震の揺れが往復であるので、勾配の方向を変えて1スパン(1つの設置スペース)に複数設けることができ,例えば、2対の緩衝材12a、12bを設けることが好ましい。なお、緩衝材を形成する弾性材としては、例えば、硬質ゴムとすることが好ましいが、天然ゴム、合成ゴムや高減衰ゴム、または低反発弾性ゴム等から適宜選んで使用するものとしてよい。また、粘弾性体としては、例えば、低反発材やシリコーン樹脂等から適宜選択して使用するものであって、特に限定されるものではない。また、適宜の滑り材としては、例えば、エフロン、ベアリング、ステンレス鋼板等から適宜選択して使用できるものとしてよく、特に、限定されるものではない。また、対向面15a、15bのいずれかに滑り材を設けることができ、必ずしも両対向面に設けること、とは限らない。
次に、図5〜図9を用いて、変位制限装置の制動について説明する。まず、図5に示したように、地震が発生した時に、下部構造1からの地震エネルギーは免震装置3によって吸収され、揺れを上部構造2に伝わらないようにするが、免震装置3の許容変形能力(または設計許容変形値)を超えるような地震が生じた場合に、その許容変形能力の限界を超える前に、変位制限装置12によって地震エネルギーを吸収し、揺れによる変形を制限するのである。つまり、設計通りの地震範囲内では、免震装置3によって地震エネルギーを充分吸収できるのであるが、それを超える地震が生じた時に、免震装置3の許容変形能力の限界を超える前に、変位制限装置12を構成する緩衝材12a、12bが作用して、地震エネルギーを吸収するのであり、1スパン内に方向を変えて設けた2個の変位制限装置12の内の一方の緩衝材12a、12bが制動開始状態にあるが、他方の緩衝材12a、12bは大きく離れた状態になっている。ただし、地震の揺り戻しの際は、これが逆になるのである。
そして、図6に示したように、変位制限装置12の緩衝材12a、12bは、予め所要の遊間距離dをもって配設された平常時(水平荷重か作用していない時)を示すものであり、図7は、地震時における変位制限装置12の制動開始時(遊間距離d=0時)を示すものである。その時の免震装置3の水平変形量をδ1とすると、δ1=dになる。また、図8は、変位制限装置12が最大制動距離に達した時のイメージを予測して示したものであり、その時の免震装置3の水平変形量をδ2とすると、δ2は免震装置3の許容変形能力または設計許容変形値になる。
本発明では、遊間距離d(d=δ1)を免震装置3の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜100%とすることが望ましい。巨大地震に遭遇した場合に、緩衝材12a、12b同士の対向面15a、15bの勾配が擦り合う状態になり、滑りながら大きく変形してエネルギーを吸収することによって免震装置3の実質的な変形量δ2≦免震装置の許容変形能力または設計許容変形値になるのであり、それによって上部構造2も免震装置3も破壊されないようにしているのである。
そこで、変位制限装置12の緩衝材12a、12bは所要の遊間距離dをもって配設され、且つ対向面15a、15bに所要の勾配を形成したものであって,平常時は水平荷重が作用していない時、つまり免震装置3が水平変形していない時の状態である。そして、設計通りの地震範囲内では、下部構造1が揺れても免震装置3が変形することにより、地震エネルギーを吸収して上部構造2に影響を及ぼさない構成なのである。ところが、巨大地震に遭遇すると、免震装置3の許容変形範囲を超える恐れが生ずるので、免震装置3の変形能力だけでは地震エネルギーを吸収できない。免震装置3の変形が許容変形範囲を超えないように、その手前から装置制動を開始させ、設定された緩衝材12a、12bの遊間距離dがゼロになって、緩衝材12a、12bの対向面15a、15bの勾配が擦り合う状態になり、図9に示すように、制動時に上部構造2側の緩衝材12bに作用する矢印で示す衝撃力aが対向面15bに平行する分力b(せん断力)と対向面15bに垂直する分力c(圧縮力)に分解され、これらの分力が上部構造2に伝達されて上部構造2が受け止める反力となる。
しかしながら、垂直分力c(圧縮力)の殆どが上部構造2に作用している鉛直荷重に相殺されるため、上部構造2にほとんど影響を及ぼさないのであり、平行分力b(せん断力)のみが上部構造2に影響を与える反力になり、上部構造2に付与される力である。
つまり、対向面15a、15bに勾配を形成することによって、変位制限装置12が受けた衝撃力の一部が上向きの垂直分力cとなるが、上部構造2に常時作用されている巨大な鉛直荷重で相殺させることができ、結果としては、残りの水平分力bだけが上部構造2の反力になり、上部構造2の負担する力が小さくなるのである。特に、勾配なし(接触面が衝撃力に垂直とする場合)に比べ、上部構造への影響を小さく抑制することができ、免震装置3と共に上部構造2の損傷を防止することができる。
要するに、上部構造2に負担させる受け持つ反力を小さくするため、変位制限装置12の制動開始時、地震動による加速度が最も大きいのに対し、変位制限装置の制動方向において緩衝材12a、12bの対向面15a、15bを所要の勾配に形成、即ちくさびの形に形成していることによって楔作用が働き、当たり始める時に、上下の緩衝材12a、12b同士が相対的に滑りながら変形してエネルギーを吸収することによって、加速度を落として衝撃力を和らげる効果が得られる。要するに、楔作用を上手に利用して、当たり始める時に緩衝材同士を滑らせることによって、ストローク(変形)を大きくさせて反力を小さく抑えることができ、従って上部構造2に伝達される反力が小さくなり、上部構造2の受け持つ負担分を軽減し、免震装置3と共に損傷させないようにすることができる。
勾配を形成する角度については、小さ過ぎると、水平分力bが大きくなり、上部構造に伝達される反力が大きくなるばかりでなく、衝撃材同士が滑り過ぎて楔効果があまり得られない。また、角度が大き過ぎると、緩衝材同士が滑り難くなり、ストローク(変形)が小さくなり、所定のエネルギー吸収効果が得られなくなる。従って、勾配の角度を10度〜30度の範囲内に設定することが好ましい。
さらに、対向面15a、15bの形状は、平面に限ることなく曲面とすることもできる。
また、緩衝材12a、12bの表面剛性を確保するために、表面に適宜の滑り材を設けたことにより、繰り返しの地震力を受けて、上下の緩衝材12a、12b同士が複数回当接して擦れてもくっつくことなく、直ぐに離れるようになり、地震が納まれば変位制限装置12の機能は失われることなく、地震後、直ちに元の状態に復元できるので、常に正常に機能させることができる。
次に、上記第1の実施の形態に係る変位制限装置12の他の実施例を、図10(a)(b)(c)を用いて説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分については、説明が重複するので同一符号を付して説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。(a)図は、緩衝材12a、12bの設置状況を示すものであり、異なる部分は一方の緩衝材12aにおける上面、即ち対向面15aの形状だけである。緩衝材12aの対向面15aにおける勾配を、少なくとも2段の異なる勾配で形成したものである。
このように対向面15aに異なる勾配を形成することによって、(b)図に示したように、変位制限装置12の制動開始時(緩衝材12a、12b同士が当たり始める時)に緩衝材同士の最初に当たる接触面積が1段目の勾配だけであり、接触面積を小さくし、緩衝材の弾性変形を大きくして反力を小さく抑制する。次の段階に進むと、(c)図に示すように、2段目の勾配まで接触し接触面積を増やして反力を大きくすることによって、停止するまでの総反力を小さくし、上部構造への影響を最小限に抑えることができる。要するに、1段目の勾配において、主として緩衝材の変形量で地震エネルギーを吸収し加速度を落とし、上部構造2に伝達する反力を小さく押えることができるのである。2段目に入ると全断面接触して反力が大きくなり、所定の許容変形値までに相対変位を確実に止めることができる。
異なる勾配の角度差(勾配間の相対角度)については、緩衝材の柔らかさや接触面積等によって定めるが、角度差を1度〜10度程度までとし、好ましくは2度〜6度の範囲内に設定することである。
なお、図示では、2段勾配を示しているが、これに限らず必要に応じて、多段の異なる勾配とすることもできる。
さらに、本発明に係る第2の実施の形態について図11〜図14について説明する。この第2の実施の形態に係る変位制限装置22は、方向依存性がなく地震時に免震装置3があらゆる方向への変形に対応可能なものである。つまり、全方向性を持たせてあらゆる方向の変形を制限することができる(対応可能な)ようにするため、緩衝材全体を円形に形成したものである。なお、変位制限装置22以外は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であるので、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
この変位制限装置22も、前記実施の形態と同様に、建造物の下部構造1と上部構造2との間の所要位置に配設されると共に、前記実施の形態と同様の材料で、対をなす緩衝材22a、22bで構成されている。この場合に、下部構造1に取り付けられる一方の緩衝材22aは皿状に形成され、上部構造2に取り付けられる他方の緩衝材22bは独楽状または棒状に形成されている。そして、一方の皿状の緩衝材22aは、内周部に対向面25aが所要の勾配をもって形成されると共に、他方の独楽状または棒状の緩衝材22bの下端外周部は対向面25bとして所要の勾配をもって形成されている。
そして、一方の緩衝材22aに対して、他方の緩衝材22bは対向面25a、25b同士が所要の遊間距離dをもって配置される。この場合の所要の遊間距離dとは、前記第1の実施の形態と同様に、免震装置3の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜100%とする。通常(新設または既存)の場合では、遊間距離dは、免震装置の設計許容変形値80%〜100%とすることが好ましい。要するに、このように遊間距離を設けることによって、制動開始(遊間距離=0)から停止するまでの必要なストロークが確保され、免震装置の変形量が設計許容変形値を超えないように保証すると共に上部構造2に発生する反力を小さく抑えることができる。しかしながら、免震性能が不足している既存建物を補強する場合には、免震装置が正常な機能を発揮できず変形量が設計値よりおおきいため、免震装置の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜80%とし、免震装置が確実に過大変形にならないように対応することが望ましい。また、遊間距離dの設定は、建物の平面形状、高さや構造形式、免震装置の配置及び使用種類等によって定めることが望ましい、とする点でも同じである。
また、下部構造1と上部構造2に対向して配設される緩衝材22a、22bとしては弾性体または粘弾性体で形成され、それぞれベースプレート23a、23bを備えた鋼製ブロック24a、24b内に基部側が固定された状態で一体的に取り付けられ、各緩衝材22a、22bの対向面25a、25bは所要の勾配に形成されると共に、適宜の滑り材を設けて表面剛性を確保している。そして、一方の緩衝材22aは、下部構造1であるマットスラブ7にベースプレート23aを取付ボルト16を介して取り付けると共に、他方の緩衝材22bは上部構造2である大梁10にベースプレート23bを取付ボルト17介して取り付けるのである。このように、緩衝材22a、22bをボルト固定法によって上部及び下部構造に取り付けることにより、施工が簡単であるだけでなく、変位制限装置22の交換が容易にできる、点でも前記第1の実施の形態と同じである。
次に、図15を用いて、免震の動作について説明する。地震が発生した時に、下部構造1からの地震エネルギーは免震装置3によって吸収され、揺れを上部構造2に伝わらないようにするが、免震装置3の限界(許容変形能力または設計許容変形値)を超えるような地震が生じた場合に、その限界を超える前に、変位制限装置22によって地震エネルギーを吸収し、揺れによる変形を制限するのである。つまり、設計通りの地震範囲内では、免震装置3によって地震エネルギーを充分吸収できるのであるが、それを超える地震が生じた時に、免震装置3の限界を超える前に、変位制限装置22を構成する緩衝材22a、22bが作用して、対向面25a、25bの勾配による擦り合い及び一部の変形によって全方向の地震エネルギーを吸収し、上部構造2も免震装置3も破壊されないようにしているのである。
また、前記第2の実施の形態に係る変位制限装置の他の実施例について、図16〜図19について説明する。この他の実施例は、第2の実施の形態と同様に円形に形成して方向依存性がない変位制限装置22であること、該変位制限装置22が対をなす緩衝材22a、22bから構成されることも同じであるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
そこで、他の実施例として異なる部分について説明する。まず、図16(a)(b)に示したように、一方の緩衝材22aは、円形状の中心部を所要大きさの中空部26にしたドーナツ形状とすると共に、上面側の外周縁と中空部26との間を所要の勾配に形成した対向面25aに形成し、さらに緩衝材22aを複数に分割、例えば、4分割にしたものである。
このように一方の緩衝材22aに中空部26を形成することにより、材料無駄を省くことができると共に、複数に分割したこと、例えば、4分割にしたことにより、緩衝材22aの製作金型の大きさが、略1/4の大きさになって金型代が安くなるばかりでなく、分割された緩衝材22aは、下部構造1への取り付けに際してベースプレート23aの鋼製ブロック24a内への取り付け作業も容易に行えるというメリットもある。
さらに、図17(a)(b)に示したように、他方の緩衝材22bについては、概ね、前記第2の実施の形態と同様であるが、所要の勾配に形成した対向面25bに対して取り付けられる滑り材27を複数に分割、例えば、8個に分割して設けることによって、緩衝材22bの表面の変形に馴染んで追従し、緩衝材としての機能を妨げることなく変形することができる。
そして、この他の実施例に係る変位制限装置22も、図18と図19に示したように、前記第2の実施の形態と同様に、下部構造1と上部構造2との間にそれぞれベースプレート23a、23bを介して取付ボルト16、17により取り付けられるものである。そして、例えば、設計通りの地震範囲内では、前記第2の実施の形態で説明したように、免震装置3によって地震エネルギーを充分吸収できるのであるが、それを超える地震が生じた時に、免震装置3の限界を超える前に、変位制限装置22を構成する他の実施例の緩衝材22a、22bが作用して、対向面25a、25bの勾配による擦り合い及び一部の変形によって全方向の地震エネルギーを吸収し、上部構造2も免震装置3も破壊されないようにしているのである。
また、方向依存性がない第2の実施の形態に係る変位制限装置22及び第2の実施の形態に係る他の実施例について、免震建物構造に対する配設状況の一例を、図20と図21を用いて説明する。一応この種の免震建物構造としては、複数階建の集合住宅またはオフィスビルを対象とするものであり、下部構造1と上部構造2との間に免震装置3[免震装置は,外周周りに鉛プラグ入り積層ゴムアイソレータ(黒丸表示)、中央部に滑り支承とする(白丸表示)]と共に変位制限装置22が取り付けられるのである。この場合に、巨大地震に対する補強の意味からしても、新設または既設建物構造には拘らないのである。
そして、建物全体に対する配置例として示すものであるが、装置の配置位置や箇所等については、建物の形状、高さ及び免震装置の配置と種類等によって適宜に調整することが望ましい。例えば。建物の重心と剛心のずれがあり、地震力が作用する時に捩じれが生じる場合は、変位制限装置を外周フレームに多く配置するように調整し捩れ止め効果を図ることが望ましい。
また、上部構造2と擁壁28との間にクリアランス29が設けられているが、変位制限装置22の設置場所については、従来のように緩衝材等をクリアランス内に設けることなく建物構造範囲内に設置することにより,設置場所に制約がなく自由に設置設計することができ、所要のクリアランスを確保できるので、上部構造2が擁壁28に衝突して損傷することを完全に防ぐことができる。特に、既存建物を補強する場合には、従来のように緩衝材等を設置する場所の問題でクリアランスを確保するために、既存擁壁を取り壊すことなく補強することができる。
下部構造1について、実施例では杭基礎5として示してあるが、これに限定することなく、独立基礎や布基礎等としてもよい。
また、変形制限装置の設置下部には、鉛直方向の反力を支持できるように、地盤を改良して比較的強固な地盤を構築すること、若しくは杭または基礎梁を設けることが望ましい。
上部構造2としては、特に限定することなく、RC造、PC造、S造またはSRC造の何れかとしてもよい。
以上説明した実施の形態は、本発明の構成要件(主旨)を限定するものではなく、本発明の主旨に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
本発明に係る変位制限装置は、下部構造1と上部構造2との間に免震装置3を介在させてある免震建造物構造において、前記下部構造1と上部構造2との間に設置する建物構造の変位制限装置12、22であって、該変位制限装置12、22は、所要の遊間距離dをもって対向して設置される対をなす緩衝材12a、12b、22a、22bからなり、該緩衝材12a、12b、22a、22bの対向面15a、15b、25a、25bは所要の勾配に形成されていることにより、変位制限装置12、22の制動時に緩衝材12a、12b、22a、22bに作用する衝撃力aが対向面15a、15b、25a、25bに平行する分力b(せん断力)と対向面に垂直する分力c(圧縮力)に分解され、これらの分力が上部構造2に伝達されて上部構造2が受ける反力となる。そして、垂直分力c(圧縮力)の殆どが上部構造2に作用する鉛直荷重に相殺されるため、上部構造2に影響しない。平行分力b(せん断力)のみが上部構造2の反力になり上部構造2に付与される力である。要するに、対向面15a、15b、25a、25bに勾配を設けることによって、変位制限装置12、22が受けた衝撃力aの一部の力向きを変更させ、上部構造2に常時作用されている巨大な鉛直荷重で相殺させることができ、結果としては、残りの分力bだけが上部構造2に付与される反力になり、上部構造2の負担する力が小さくなるので、上部構造2及び免震装置3の破損を防止し、地震後に免震装置3が元通りに復元するので、大地震に遭遇しても構造物として免震機能を失わずに維持できるのであり、また、変位制限装置12、22は、何時でも簡単に取り替えまたは新たに設置することができるので、新築または既存のこの種の免震構造物において広く利用できる。
1 下部構造
2 上部構造
3 免震装置
4 地盤
5 杭
6 ラップル基礎
7 マットスラブ
8 柱
9 フーチング
10 大梁
11 スラブ
12、22 変位制限装置
12a、12b、22a、22b 緩衝材
13a、13b、23a、23b ベースプレート
14a、14b、24a、24b 鋼製ブロック
15a、15b、25a、25b 対向面
16、17 取付ボルト
26 中空部
27 滑り材
28 擁壁
29 クリアランス
a 衝撃力
b 平行する分力(せん断力)
c 垂直する分力(圧縮力)
d 遊間距離
本発明は、新設または既存を問わず、免震建物における免震装置の過大変形を抑制するための変形制限装置に関するものである。
免震建物構造において、建物の固有周期を長くして地震入力を低減させ、地震時に建物が受ける力を小さくするものとして知られている。このような免震建物構造としては、下部構造と上部構造とを分離し、その間に免震装置を設置する免震層が形成され、これら構造および装置によって地震エネルギーを吸収するようにしたものである。一般的に免震装置は大きく分けてアイソレータとダンパーという2つの装置で構成されている。アイソレータは建物の固有周期を長くする役割を持つと同時に、建物重量を支えるように、積層ゴム系のものとすべり系の2種類ある。また、アイソレータの中にはダンパー機能を兼ね備えているものもある。ダンパーは地震時の建物の揺れ幅を抑えたり揺れを早く留める役割をする装置であり、建物の重量を支えるものではないのである。すべり系はすべり支承と転がり支承があり、摩擦係数が非常に小さいため、地盤の揺れを上部建物に伝達しにくいという特徴を持っている。しかしながら、依然として免震建物構造の免震装置として積層ゴムがよく用いられているが、この種の免震装置は、薄いゴム板と鋼板とを交互に積層して接着したものであり、水平方向には柔軟で、変形しても元の位置に戻る免震機能を有するものであるが、上下方向には硬くて上部構造の荷重を十分支持できるようになっているため、大きな引張力には対応できないのである。地震時にロッキング現象によって上部構造と下部構造との間に大きな引張力が生じた場合には、免震装置は破損され、上部構造が下部構造から分離してしまうという問題点があった。
上記の問題点を解決するために、従来技術として複数の発明が開示されている。例えば、第1の従来技術として、基礎構造と縁切りした上部構造との間に免震装置が設置されるとともに、前記基礎構造と上部構造とにわたって所定の方向に傾斜したPC鋼材が設けられ、該PC鋼材は、1端部が基礎構造のフーチングに固定され、他端部が、柱に接合された一方の梁の端部と他方の梁の端部とにわたって取り付けた火打ち板に固定された免震建物構造である(特許文献1参照)。
この免震構造物によれば、基礎構造と上部構造とをPC鋼材で繋ぎ合わせたので、地震による垂直荷重により上部構造が基礎構造から分離するのを妨げる。また、地震による水平荷重を免震アイソレータで減衰して上部構造の水平方向の揺れを少なくする。さらに、地震による水平荷重または地震による垂直荷重をPC鋼材と免震装置とで減衰することができるとともに、これらの荷重に抵抗することができる、というものである。
また、公知に係る第2の従来技術としては、鋼管杭と縁切りした基礎との間に免震装置が設置され、該免震装置が杭頭部の周囲に形成された根巻コンクリートの上に設置され、該根巻コンクリートは鋼管に充填されたコンクリートが溢れ出て地面から突出した杭頭部を覆うように形成され、前記免震装置を貫通して鋼管杭と基礎とにわたって引張材が設けられた免震構造物である(特許文献2参照)。
この免震構造物によれば、大地震に対して免震装置の薄ゴム板の降伏を避けることができるので、免震装置を交換する必要がない。また長周期地盤振動の可能性がある地盤に建つ建物に対しても巨大地震の発生による共振を避けて制震作用が働くので、免震装置の薄ゴム板が降伏して建物が元の位置に戻らないということがなくなる。また、免震装置の上下端は、直下型地震動による上下方向衝撃波の増幅を防止することができるので、免震装置における薄ゴム板の劣化と降伏とを防ぐことができる、というものである。
さらに、公知に係る第3の従来技術としては、地盤上に設置された下部構造体と、この下部構造体の上部に位置する平面フレームと、前記下部構造体と平面フレームとの間に介在された鉛直荷重を支持する交差直動機構から構成される免震装置と、前記平面フレームの上部に設置された上部構造体とを備えた免震構造物において、下部構造体と平面フレームとの間に、鉛直荷重を支持する必要のない復元・減衰装置を備え、この復元・減衰装置は積層ゴム装置であるとともに、前記下部構造体と前記平面フレームの受圧部と所定の間隔を有して対向して設置されるバックアップ装置を備えた免震構造物である(特許文献3参照)。
この免震構造物によれば、戸建ての住宅等の比較的軽量な建築物などの構造物を免震構造物とすることができる。そして、構造物内の収容物の転倒などによる損傷を防止することができ、対地震安全性を高めることができる、というものである。
特許第3333163号公報 特許第3982585号公報 特許第3827115号公報
しかしながら、前記第1および第3の従来技術においては、いずれも交換できない構成になっているため、設計上想定以上の極大地震に遭遇してPC鋼材が降伏または破断した場合には、地震後に復元することができないという問題点があり、また、免震装置の高さによって上部構造と基礎構造との間に掛けられたPC鋼材が比較的短い場合は、引張荷重を受ける際にPC鋼材の伸びが小さいので、地震の衝撃力によって急激に破断し免震装置が損傷される虞がある。さらに、第2の従来技術においては、引張材が免震装置を貫通して設けられているため、免震装置として量産品が採用できず特注品となるので、非常に高価なものとなり、免震装置の使用選択肢が大幅に減少するという問題点がある。
また、前記したように、積層ゴム系のものとすべり系の特徴を活用して、最近では、積層ゴム支承とすべり支承を併用して免震建物を構築し、コストを低減することが図られるようになってきている。
しかしながら、耐震設計は、建築基準法に基づいて行うこととしているが、近年の傾向では、建築基準法に定められた地震震度(5強〜6弱)を超える巨大地震が発生することが増えてきている。設計上想定以上の巨大地震が発生した場合には、前記積層ゴム支承とすべり支承を併用して免震建物を構築しても、すべり支承が建物の水平変位を抑制できないため、積層ゴム支承が許容水平変形を超えた過大変形が発生して破損するばかりでなく、建物が滑り過ぎて転倒する危険性も生ずる。そのために、積層ゴム支承や制震ダンパーを多く増やして設置することが必要となり、反ってコスト高になるという問題点を有することになる。
また、既存の免震建物においては,当時の設計上想定した地震が現在の巨大地震より小さいため、免震装置の過大変形によって免震装置自体が破損するばかりでなく、建物の揺れが止まらないで過大変位するため、補強しないと使用不能となったとの報告もある。
最近、既存建物において性能不足の不良免震装置が使われていることが発覚した。この場合には、設計通りの免震性能を有しないため、不良免震装置を取替えないと既存建物が使用不可になる。しかしながら、既存建物は当初から免震装置が交換できるような構造には設計されていないため、すべての免震装置の取替えは実質的に不可能であるから、これらの既存建物に対して、免震性能の補強を必要としていることは現実問題として要求されている。
そこで、本発明は、設計上想定以上の巨大地震に遭遇しても、または、免震性能が不足している既存建物であっても、過剰な地震エネルギー部分を吸収し、免震装置の過大変形を抑制して免震装置本体と共に上部構造を損傷しないようにする変形制限装置を提供することを目的とするものである。
本発明は、上記目的を達成するための具体的手段として、本発明に係る第1の発明は、下部構造と上部構造との間に免震装置を介在させてある免震建物構造において、前記下部構造と上部構造との間に設置される変形制限装置であって、該変形制限装置は、所要の遊間距離をもって対向して設置される対をなす緩衝材からなり、該緩衝材の対向面は制動方向に対して所要の勾配に形成され、前記免震装置の変形が許容変形範囲を超えないようにその手前から制動を開始させ、前記緩衝材の遊間距離がゼロになり緩衝材同士の対向面の勾配が擦り合って変形状態になるようにしたことを特徴とする変形制限装置を提供するものである。
前記第1の発明においては、前記緩衝材の対向面には、滑り材が設けてあること;前記の遊間距離は、前記免震装置の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜80%とすること;前記緩衝材は、前記免震装置があらゆる方向への変形にも対応可能な円形に形成されていること;および、前記緩衝材の対向面の勾配は、少なくとも異なる2段勾配とすること、を付加的な要件として含むものである。
また、本発明に係る第2の発明は、前記第1の発明に係る変形制限装置を免震装置と併用した免震建物構造を提供するものである。
本発明に係る変形制限装置によれば、以下に示す通りの効果を奏する。
1.緩衝材の対向面は所要の勾配に形成されることにより、装置制動時に緩衝材に作用する衝撃力が対向面に平行する分力(せん断力)と対向面に垂直する分力(圧縮力)に分解され、これらの分力が上部構造に伝達されて上部構造が受ける反力となる。そして、垂直分力(圧縮力)の殆どが上部構造に作用する鉛直荷重に相殺されるため、上部構造に影響しない。平行分力(せん断力)のみが上部構造の反力になり上部構造に付与される力である。要するに、対向面に勾配を設けることによって、装置が受けた衝撃力の一部の力向きを変更させ、上部構造に常時作用されている巨大な鉛直荷重で相殺させることができ、結果としては、残りの分力だけが上部構造に付与される反力になり、上部構造の負担する力が小さくなる。さらに、巨大地震に遭遇した場合に対向面の勾配が擦り合って滑りながら変形することによって、勾配なし(接触面が衝撃力に垂直とする場合)に比べ、上部構造への影響を小さく抑制することができ、免震装置と共に上部構造の損傷を防止することができる。
2.変形制限装置の制動開始時では、下部構造が地震動による加速度をもって上部構造に緩衝材同士が接触の形で衝突してくるから、過大な変位にならないように所定の許容変形値までの間に停止させるため、反力がなす仕事(反力とストロークとの積)で地震エネルギーを吸収して減衰して対応することになる。ストローク(停止するまでの距離)が小さいと反力が大きくなり、従って上部構造に伝達される受け持つ反力も大きくなり、上部構造の設計耐力を超えると損傷が生じる。逆に、ストロークを大きくすると反力が小さくて済むわけである。緩衝材の弾性変形、つまり、勾配によるスリップが大きなストロークになり、反力を小さくすることができるので、必要な地震エネルギー吸収量を確保することができるのである。
3.緩衝材の対向面に滑り材を設けることにより、表面剛性が確保され繰り返しの地震力を受けて、上下の緩衝材が一時的に強く接触しても付着することなく、直ぐに離れるようになり、地震後は元の状態に復元することができる。
4.遊間距離は、免震装置の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜80%とすることにより、変形制限装置の緩衝材が変形して地震エネルギーを吸収しながら、停止するまでのストロークを十分に確保しているため、免震装置の過大変形を許容することなく、かつ、上下の緩衝材が接触する時の衝撃力を、せん断力と圧縮力とに分解して影響を小さく押え、上部構造に伝達される反力を小さくできるので、上部構造の損傷を防止することができる。
5.緩衝材形状を円形に形成することにより、変形制限装置が,方向依存性がなくなり地震時に免震装置があらゆる方向への変形にも対応可能になり、装置の機能がフルに発揮できると共に設置場所に制約がなく自由に配置することが可能のである。
6.緩衝材の対向面の勾配を異なる角度で形成することにより、上下の緩衝材が当たる時の接触面積を段階的に変化させ、最初に当たる接触面積が全対向面の一部とし、緩衝材の弾性変形を大きくして反力を小さく抑制し、次の段階に接触面積を増やして反力を大きくすることによって、停止するまでの総反力を小さくし、上部構造への影響を最小限に抑えることができる。
7.免震建物構造に免震装置と共に変形制限装置を設置したことにより、設計上想定以上の巨大地震に遭遇しても、または、免震性能が不足している既存建物において、過剰な地震エネルギー部分を変形制限装置が吸収し、免震装置の過大変形を抑制して免震装置本体と共に上部構造の損傷を防止すると共に、免震建物構造全体の安全性を大幅に高めることができる。
8.変形制限装置を設置したことにより、高価な制震ダンパーを増やさずに、積層ゴム支承とすべり支承とを併用することができ、安価で安全性の高い免震建物構造を構築することができる。
9.設置した変形制限装置は、簡単に交換可能な構成であるため、巨大地震に遭遇して緩衝材がエネルギーを吸収して押し潰された状態になっても、免震装置本体の破損を回避でき、地震後に緩衝材は、安価で簡単に取り換えることができる。
10.変形制限装置は、新設の免震建物については勿論であるが、既存の免震建物の補強にも簡単に設置して使用することができる。
11.変形制限効果と共に、制震(振)効果が得られ、制震(振)ダンパーとして利用することができ、従来の高価な制震(振)ダンパーより安価であり、コトスダウンが図れる。
本発明の第1の実施の形態に係る変形制限装置を備えた免震建物構造の要部を略示的に示した側面図である。 図1のA−A線に沿う上部構造の下面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置の緩衝材の一例を拡大して示す断面図である。 同実施に係る緩衝材の一例を拡大して示した平面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置を備えた免震建物構造において、地震を受けた時の制動開始時の要部を略示的に示した断面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置を備えた免震建物構造において、変形制限装置の緩衝材を配設した状況を説明するための説明図である。 同実施の形態に係る変形制限装置を備えた免震建物構造において、地震を受けた時に変形制限装置の緩衝材が制動開始時を略示的に示した説明図である。 同実施の形態に係る変形制限装置を備えた免震建物構造において、巨大地震を受けた時に変形制限装置の緩衝材が作用した状態を略示的に示した説明図である。 同実施の形態に係る変形制限装置を備えた免震建物構造において、巨大地震による上部構造側の緩衝材が受ける衝撃力を示した説明図である。 同実施の形態に係る変形制限装置における緩衝材の対向面が異なる勾配で形成された他の実施例を示すもので、(a)が設置状況の略図、(b)が制動開始時の略図、(c)が巨大地震エネルギーを受けた状態を示す略図である。 本発明の第2の実施の形態に係る変形制限装置を備えた免震建物構造における要部のみを略示的に示した側面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置を構成する他方の緩衝材の取り付け状況を略示的に示した下面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置を構成する一方の緩衝材の取り付け状況を略示的に示した平面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置を免震建物構造に取り付けた状況を略示的に示した要部の断面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置を備えた免震建物構造において、巨大地震を受けた時に変形制限装置の緩衝材が作用した状態を略示的に示した説明図である。 同実施の形態に係る変形制限装置における他の実施例の緩衝材を示すもので、(a)は一方の緩衝材を断面で示した側面図、(b)は平面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置における他の実施例の緩衝材を示すもので、(a)は他方の緩衝材を断面で示した側面図、(b)は平面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置における他の実施例の緩衝材を取り付けた免震建物構造における要部のみを略示的に示した側面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置における他の実施例の緩衝材を取り付けた免震建物構造において、巨大地震を受けた時に緩衝材が作用した状態の要部のみを略示的に示した側面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置及び他の実施例を含む免震建物構造に配置する状況を略示的に示した側面図である。 同実施の形態に係る変形制限装置及び他の実施例を含む免震建物構造の下部構造に配置する状況を略示的に示した平面図である。
本発明を図示の複数の実施の形態に基づいて詳しく説明する。まず、図1〜4に示した免震建物構造における第1の実施の形態に係る変形制限装置について説明する。図1において、まず、免震建物構造としては、下部構造1と上部構造2との間に免震装置3が配置され、下部構造1は地盤4に打ち込んだ杭5の頭部にラップル基礎6を設けると共に、杭5の頭部周辺と地盤4の上面を覆うマットスラブ7が形成されている。上部構造2は、建物の各柱8を支えるフーチング9がそれぞれ設けられると共に、該各フーチング9間をつなぐ大梁(地中梁)10が設けられ、該大梁10の上面にスラブ11が形成されている。そして、免震装置3は下部構造1である杭頭部のラップル基礎6と上部構造2であるフーチング9との間に設置される。
また、下部構造1と上部構造2との間の所要位置に変形制限装置12が配設される。この変形制限装置12は対をなす緩衝材12a、12bで構成され、該対をなす緩衝材12a、12bが所要の遊間距離dをもって対向して配置される。この場合の所要の遊間距離dとは、免震装置3の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜100%とする。通常(新設または既存)の場合では、遊間距離dは、免震装置の設計許容変形値の80%〜100%とすることが好ましい。要するに、このように遊間距離を設けることによって、制動開始(遊間距離=0)から停止するまでの必要なストロークが確保され、免震装置の変形量が設計許容変形値を超えないように保証すると共に上部構造2に発生する反力を小さく抑えることができる。しかしながら、免震性能が不足している既存建物を補強する場合には、免震装置が正常な機能を発揮できずに変形量が設計値より大きいため、免震装置の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜80%とし、免震装置が過大変形に絶対にならないように対応することが望ましい。
また、遊間距離dの設定は、建物の平面形状、高さや構造形式、免震装置の配置及び使用種類等によって定めることが望ましい。
また、図3と図4に示したように、対向して配設される緩衝材12a、12bとしては弾性体または粘弾性体で形成され、それぞれベースプレート13a、13bを備えた鋼製ブロック14a、14b内に基部側が固定された状態で一体的に取り付けられ、各緩衝材12a、12bの対向面15a、15bは所要の勾配に形成されると共に、適宜の滑り材を設けて表面剛性を確保している。そして、図1に示したように、一方の緩衝材12aは、下部構造1であるマットスラブ7にベースプレート13aを取付ボルト16を介して取り付けると共に、図2に示したように、他方の緩衝材12bは上部構造2である大梁10にベースプレート13bを取付ボルト17介して取り付けるのである。このように、緩衝材12a、12bをボルト固定法によって上部及び下部構造に取り付けることにより、施工が簡単であるだけでなく、変形制限装置12の交換が容易にできる。
変形制限装置12を構成する対をなす緩衝材12a、12bは、対向面15a、15bを所要の勾配に形成してあることから、地震の揺れが往復であるので、勾配の方向を変えて1スパン(1つの設置スペース)に複数設けることができ,例えば、2対の緩衝材12a、12bを設けることが好ましい。なお、緩衝材を形成する弾性材としては、例えば、硬質ゴムとすることが好ましいが、天然ゴム、合成ゴムや高減衰ゴム、または低反発弾性ゴム等から適宜選んで使用するものとしてよい。また、粘弾性体としては、例えば、低反発材やシリコーン樹脂等から適宜選択して使用するものであって、特に限定されるものではない。また、適宜の滑り材としては、例えば、エフロン、ベアリング、ステンレス鋼板等から適宜選択して使用できるものとしてよく、特に、限定されるものではない。また、対向面15a、15bのいずれかに滑り材を設けることができ、必ずしも両対向面に設けること、とは限らない。
次に、図5〜図9を用いて、変形制限装置の制動について説明する。まず、図5に示したように、地震が発生した時に、下部構造1からの地震エネルギーは免震装置3によって吸収され、揺れを上部構造2に伝わらないようにするが、免震装置3の許容変形能力(または設計許容変形値)を超えるような地震が生じた場合に、その許容変形能力の限界を超える前に、変形制限装置12によって地震エネルギーを吸収し、揺れによる変形を制限するのである。つまり、設計通りの地震範囲内では、免震装置3によって地震エネルギーを充分吸収できるのであるが、それを超える地震が生じた時に、免震装置3の許容変形能力の限界を超える前に、変形制限装置12を構成する緩衝材12a、12bが作用して、地震エネルギーを吸収するのであり、1スパン内に方向を変えて設けた2個の変形制限装置12の内の一方の緩衝材12a、12bが制動開始状態にあるが、他方の緩衝材12a、12bは大きく離れた状態になっている。ただし、地震の揺り戻しの際は、これが逆になるのである。
そして、図6に示したように、変形制限装置12の緩衝材12a、12bは、予め所要の遊間距離dをもって配設された平常時(水平荷重か作用していない時)を示すものであり、図7は、地震時における変形制限装置12の制動開始時(遊間距離d=0時)を示すものである。その時の免震装置3の水平変形量をδ1とすると、δ1=dになる。また、図8は、変形制限装置12が最大制動距離に達した時のイメージを予測して示したものであり、その時の免震装置3の水平変形量をδ2とすると、δ2は免震装置3の許容変形能力または設計許容変形値になる。
本発明では、遊間距離d(d=δ1)を免震装置3の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜100%とすることが望ましい。巨大地震に遭遇した場合に、緩衝材12a、12b同士の対向面15a、15bの勾配が擦り合う状態になり、滑りながら大きく変形してエネルギーを吸収することによって免震装置3の実質的な変形量δ2≦免震装置の許容変形能力または設計許容変形値になるのであり、それによって上部構造2も免震装置3も破壊されないようにしているのである。
そこで、変形制限装置12の緩衝材12a、12bは所要の遊間距離dをもって配設され、且つ対向面15a、15bに所要の勾配を形成したものであって,平常時は水平荷重が作用していない時、つまり免震装置3が水平変形していない時の状態である。そして、設計通りの地震範囲内では、下部構造1が揺れても免震装置3が変形することにより、地震エネルギーを吸収して上部構造2に影響を及ぼさない構成なのである。ところが、巨大地震に遭遇すると、免震装置3の許容変形範囲を超える恐れが生ずるので、免震装置3の変形能力だけでは地震エネルギーを吸収できない。免震装置3の変形が許容変形範囲を超えないように、その手前から装置制動を開始させ、設定された緩衝材12a、12bの遊間距離dがゼロになって、緩衝材12a、12bの対向面15a、15bの勾配が擦り合う状態になり、図9に示すように、制動時に上部構造2側の緩衝材12bに作用する矢印で示す衝撃力aが対向面15bに平行する分力b(せん断力)と対向面15bに垂直する分力c(圧縮力)に分解され、これらの分力が上部構造2に伝達されて上部構造2が受け止める反力となる。
しかしながら、垂直分力c(圧縮力)の殆どが上部構造2に作用している鉛直荷重に相殺されるため、上部構造2にほとんど影響を及ぼさないのであり、平行分力b(せん断力)のみが上部構造2に影響を与える反力になり、上部構造2に付与される力である。
つまり、対向面15a、15bに勾配を形成することによって、変形制限装置12が受けた衝撃力の一部が上向きの垂直分力cとなるが、上部構造2に常時作用されている巨大な鉛直荷重で相殺させることができ、結果としては、残りの水平分力bだけが上部構造2の反力になり、上部構造2の負担する力が小さくなるのである。特に、勾配なし(接触面が衝撃力に垂直とする場合)に比べ、上部構造への影響を小さく抑制することができ、免震装置3と共に上部構造2の損傷を防止することができる。
要するに、上部構造2に負担させる受け持つ反力を小さくするため、変形制限装置12の制動開始時、地震動による加速度が最も大きいのに対し、変形制限装置の制動方向において緩衝材12a、12bの対向面15a、15bを所要の勾配に形成、即ちくさびの形に形成していることによって楔作用が働き、当たり始める時に、上下の緩衝材12a、12b同士が相対的に滑りながら変形してエネルギーを吸収することによって、加速度を落として衝撃力を和らげる効果が得られる。要するに、楔作用を上手に利用して、当たり始める時に緩衝材同士を滑らせることによって、ストローク(変形)を大きくさせて反力を小さく抑えることができ、従って上部構造2に伝達される反力が小さくなり、上部構造2の受け持つ負担分を軽減し、免震装置3と共に損傷させないようにすることができる。
勾配を形成する角度については、小さ過ぎると、水平分力bが大きくなり、上部構造に伝達される反力が大きくなるばかりでなく、衝撃材同士が滑り過ぎて楔効果があまり得られない。また、角度が大き過ぎると、緩衝材同士が滑り難くなり、ストローク(変形)が小さくなり、所定のエネルギー吸収効果が得られなくなる。従って、勾配の角度を10度〜30度の範囲内に設定することが好ましい。
さらに、対向面15a、15bの形状は、平面に限ることなく曲面とすることもできる。
また、緩衝材12a、12bの表面剛性を確保するために、表面に適宜の滑り材を設けたことにより、繰り返しの地震力を受けて、上下の緩衝材12a、12b同士が複数回当接して擦れてもくっつくことなく、直ぐに離れるようになり、地震が納まれば変形制限装置12の機能は失われることなく、地震後、直ちに元の状態に復元できるので、常に正常に機能させることができる。
次に、上記第1の実施の形態に係る変形制限装置12の他の実施例を、図10(a)(b)(c)を用いて説明する。なお、前記第1の実施の形態と同一部分については、説明が重複するので同一符号を付して説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。(a)図は、緩衝材12a、12bの設置状況を示すものであり、異なる部分は一方の緩衝材12aにおける上面、即ち対向面15aの形状だけである。緩衝材12aの対向面15aにおける勾配を、少なくとも2段の異なる勾配で形成したものである。
このように対向面15aに異なる勾配を形成することによって、(b)図に示したように、変形制限装置12の制動開始時(緩衝材12a、12b同士が当たり始める時)に緩衝材同士の最初に当たる接触面積が1段目の勾配だけであり、接触面積を小さくし、緩衝材の弾性変形を大きくして反力を小さく抑制する。次の段階に進むと、(c)図に示すように、2段目の勾配まで接触し接触面積を増やして反力を大きくすることによって、停止するまでの総反力を小さくし、上部構造への影響を最小限に抑えることができる。要するに、1段目の勾配において、主として緩衝材の変形量で地震エネルギーを吸収し加速度を落とし、上部構造2に伝達する反力を小さく押えることができるのである。2段目に入ると全断面接触して反力が大きくなり、所定の許容変形値までに相対変位を確実に止めることができる。
異なる勾配の角度差(勾配間の相対角度)については、緩衝材の柔らかさや接触面積等によって定めるが、角度差を1度〜10度程度までとし、好ましくは2度〜6度の範囲内に設定することである。
なお、図示では、2段勾配を示しているが、これに限らず必要に応じて、多段の異なる勾配とすることもできる。
さらに、本発明に係る第2の実施の形態について図11〜図14について説明する。この第2の実施の形態に係る変形制限装置22は、方向依存性がなく地震時に免震装置3があらゆる方向への変形に対応可能なものである。つまり、全方向性を持たせてあらゆる方向の変形を制限することができる(対応可能な)ようにするため、緩衝材全体を円形に形成したものである。なお、変形制限装置22以外は、前記第1の実施の形態と実質的に同一であるので、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
この変形制限装置22も、前記実施の形態と同様に、建造物の下部構造1と上部構造2との間の所要位置に配設されると共に、前記実施の形態と同様の材料で、対をなす緩衝材22a、22bで構成されている。この場合に、下部構造1に取り付けられる一方の緩衝材22aは皿状に形成され、上部構造2に取り付けられる他方の緩衝材22bは独楽状または棒状に形成されている。そして、一方の皿状の緩衝材22aは、内周部に対向面25aが所要の勾配をもって形成されると共に、他方の独楽状または棒状の緩衝材22bの下端外周部は対向面25bとして所要の勾配をもって形成されている。
そして、一方の緩衝材22aに対して、他方の緩衝材22bは対向面25a、25b同士が所要の遊間距離dをもって配置される。この場合の所要の遊間距離dとは、前記第1の実施の形態と同様に、免震装置3の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜100%とする。通常(新設または既存)の場合では、遊間距離dは、免震装置の設計許容変形値80%〜100%とすることが好ましい。要するに、このように遊間距離を設けることによって、制動開始(遊間距離=0)から停止するまでの必要なストロークが確保され、免震装置の変形量が設計許容変形値を超えないように保証すると共に上部構造2に発生する反力を小さく抑えることができる。しかしながら、免震性能が不足している既存建物を補強する場合には、免震装置が正常な機能を発揮できず変形量が設計値よりおおきいため、免震装置の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜80%とし、免震装置が確実に過大変形にならないように対応することが望ましい。また、遊間距離dの設定は、建物の平面形状、高さや構造形式、免震装置の配置及び使用種類等によって定めることが望ましい、とする点でも同じである。
また、下部構造1と上部構造2に対向して配設される緩衝材22a、22bとしては弾性体または粘弾性体で形成され、それぞれベースプレート23a、23bを備えた鋼製ブロック24a、24b内に基部側が固定された状態で一体的に取り付けられ、各緩衝材22a、22bの対向面25a、25bは所要の勾配に形成されると共に、適宜の滑り材を設けて表面剛性を確保している。そして、一方の緩衝材22aは、下部構造1であるマットスラブ7にベースプレート23aを取付ボルト16を介して取り付けると共に、他方の緩衝材22bは上部構造2である大梁10にベースプレート23bを取付ボルト17介して取り付けるのである。このように、緩衝材22a、22bをボルト固定法によって上部及び下部構造に取り付けることにより、施工が簡単であるだけでなく、変形制限装置22の交換が容易にできる、点でも前記第1の実施の形態と同じである。
次に、図15を用いて、免震の動作について説明する。地震が発生した時に、下部構造1からの地震エネルギーは免震装置3によって吸収され、揺れを上部構造2に伝わらないようにするが、免震装置3の限界(許容変形能力または設計許容変形値)を超えるような地震が生じた場合に、その限界を超える前に、変形制限装置22によって地震エネルギーを吸収し、揺れによる変形を制限するのである。つまり、設計通りの地震範囲内では、免震装置3によって地震エネルギーを充分吸収できるのであるが、それを超える地震が生じた時に、免震装置3の限界を超える前に、変形制限装置22を構成する緩衝材22a、22bが作用して、対向面25a、25bの勾配による擦り合い及び一部の変形によって全方向の地震エネルギーを吸収し、上部構造2も免震装置3も破壊されないようにしているのである。
また、前記第2の実施の形態に係る変形制限装置の他の実施例について、図16〜図19について説明する。この他の実施例は、第2の実施の形態と同様に円形に形成して方向依存性がない変形制限装置22であること、該変形制限装置22が対をなす緩衝材22a、22bから構成されることも同じであるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
そこで、他の実施例として異なる部分について説明する。まず、図16(a)(b)に示したように、一方の緩衝材22aは、円形状の中心部を所要大きさの中空部26にしたドーナツ形状とすると共に、上面側の外周縁と中空部26との間を所要の勾配に形成した対向面25aに形成し、さらに緩衝材22aを複数に分割、例えば、4分割にしたものである。
このように一方の緩衝材22aに中空部26を形成することにより、材料無駄を省くことができると共に、複数に分割したこと、例えば、4分割にしたことにより、緩衝材22aの製作金型の大きさが、略1/4の大きさになって金型代が安くなるばかりでなく、分割された緩衝材22aは、下部構造1への取り付けに際してベースプレート23aの鋼製ブロック24a内への取り付け作業も容易に行えるというメリットもある。
さらに、図17(a)(b)に示したように、他方の緩衝材22bについては、概ね、前記第2の実施の形態と同様であるが、所要の勾配に形成した対向面25bに対して取り付けられる滑り材27を複数に分割、例えば、8個に分割して設けることによって、緩衝材22bの表面の変形に馴染んで追従し、緩衝材としての機能を妨げることなく変形することができる。
そして、この他の実施例に係る変形制限装置22も、図18と図19に示したように、前記第2の実施の形態と同様に、下部構造1と上部構造2との間にそれぞれベースプレート23a、23bを介して取付ボルト16、17により取り付けられるものである。そして、例えば、設計通りの地震範囲内では、前記第2の実施の形態で説明したように、免震装置3によって地震エネルギーを充分吸収できるのであるが、それを超える地震が生じた時に、免震装置3の限界を超える前に、変形制限装置22を構成する他の実施例の緩衝材22a、22bが作用して、対向面25a、25bの勾配による擦り合い及び一部の変形によって全方向の地震エネルギーを吸収し、上部構造2も免震装置3も破壊されないようにしているのである。
また、方向依存性がない第2の実施の形態に係る変形制限装置22及び第2の実施の形態に係る他の実施例について、免震建物構造に対する配設状況の一例を、図20と図21を用いて説明する。一応この種の免震建物構造としては、複数階建の集合住宅またはオフィスビルを対象とするものであり、下部構造1と上部構造2との間に免震装置3[免震装置は,外周周りに鉛プラグ入り積層ゴムアイソレータ(黒丸表示)、中央部に滑り支承とする(白丸表示)]と共に変形制限装置22が取り付けられるのである。この場合に、巨大地震に対する補強の意味からしても、新設または既設建物構造には拘らないのである。
そして、建物全体に対する配置例として示すものであるが、装置の配置位置や箇所等については、建物の形状、高さ及び免震装置の配置と種類等によって適宜に調整することが望ましい。例えば。建物の重心と剛心のずれがあり、地震力が作用する時に捩じれが生じる場合は、変形制限装置を外周フレームに多く配置するように調整し捩れ止め効果を図ることが望ましい。
また、上部構造2と擁壁28との間にクリアランス29が設けられているが、変形制限装置22の設置場所については、従来のように緩衝材等をクリアランス内に設けることなく建物構造範囲内に設置することにより,設置場所に制約がなく自由に設置設計することができ、所要のクリアランスを確保できるので、上部構造2が擁壁28に衝突して損傷することを完全に防ぐことができる。特に、既存建物を補強する場合には、従来のように緩衝材等を設置する場所の問題でクリアランスを確保するために、既存擁壁を取り壊すことなく補強することができる。
下部構造1について、実施例では杭基礎5として示してあるが、これに限定することなく、独立基礎や布基礎等としてもよい。
また、変形制限装置の設置下部には、鉛直方向の反力を支持できるように、地盤を改良して比較的強固な地盤を構築すること、若しくは杭または基礎梁を設けることが望ましい。
上部構造2としては、特に限定することなく、RC造、PC造、S造またはSRC造の何れかとしてもよい。
以上説明した実施の形態は、本発明の構成要件(主旨)を限定するものではなく、本発明の主旨に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
本発明に係る変形制限装置は、下部構造1と上部構造2との間に免震装置3を介在させてある免震建造物構造において、前記下部構造1と上部構造2との間に設置する建物構造の変形制限装置12、22であって、該変形制限装置12、22は、所要の遊間距離dをもって対向して設置される対をなす緩衝材12a、12b、22a、22bからなり、該緩衝材12a、12b、22a、22bの対向面15a、15b、25a、25bは所要の勾配に形成されていることにより、変形制限装置12、22の制動時に緩衝材12a、12b、22a、22bに作用する衝撃力aが対向面15a、15b、25a、25bに平行する分力b(せん断力)と対向面に垂直する分力c(圧縮力)に分解され、これらの分力が上部構造2に伝達されて上部構造2が受ける反力となる。そして、垂直分力c(圧縮力)の殆どが上部構造2に作用する鉛直荷重に相殺されるため、上部構造2に影響しない。平行分力b(せん断力)のみが上部構造2の反力になり上部構造2に付与される力である。要するに、対向面15a、15b、25a、25bに勾配を設けることによって、変形制限装置12、22が受けた衝撃力aの一部の力向きを変更させ、上部構造2に常時作用されている巨大な鉛直荷重で相殺させることができ、結果としては、残りの分力bだけが上部構造2に付与される反力になり、上部構造2の負担する力が小さくなるので、上部構造2及び免震装置3の破損を防止し、地震後に免震装置3が元通りに復元するので、大地震に遭遇しても構造物として免震機能を失わずに維持できるのであり、また、変形制限装置12、22は、何時でも簡単に取り替えまたは新たに設置することができるので、新築または既存のこの種の免震構造物において広く利用できる。
1 下部構造
2 上部構造
3 免震装置
4 地盤
5 杭
6 ラップル基礎
7 マットスラブ
8 柱
9 フーチング
10 大梁
11 スラブ
12、22 変形制限装置
12a、12b、22a、22b 緩衝材
13a、13b、23a、23b ベースプレート
14a、14b、24a、24b 鋼製ブロック
15a、15b、25a、25b 対向面
16、17 取付ボルト
26 中空部
27 滑り材
28 擁壁
29 クリアランス
a 衝撃力
b 平行する分力(せん断力)
c 垂直する分力(圧縮力)
d 遊間距離

Claims (6)

  1. 下部構造と上部構造との間に免震装置を介在させてある免震建物構造において、
    前記下部構造と上部構造との間に設置される変位制限装置であって、
    該変位制限装置は、所要の遊間距離をもって対向して設置される対をなす緩衝材からなり、
    該緩衝材の対向面は所要の勾配に形成されていること
    を特徴とする変位制限装置。
  2. 前記緩衝材の対向面には、滑り材が設けてあること
    を特徴とする請求項1に記載の変位制限装置。
  3. 前記の遊間距離は、前記免震装置の許容変形能力または設計許容変形値の60%〜100%とすること
    を特徴とする請求項1または2に記載の変位制限装置。
  4. 前記緩衝材は、前記免震装置があらゆる方向への変形にも対応可能な円形に形成されていること
    を特徴とする請求項1乃至3に記載の変位制限装置。
  5. 前記緩衝材の対向面の勾配は、少なくとも異なる2段勾配とすること、
    を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の変位制限装置。
  6. 前記請求項1乃至5のいずれかに記載の変位制限装置を免震装置と併用した免震建物構造。
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