JP2017001327A - 撥水部材 - Google Patents

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真林 福田
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真林 福田
俊之 岩崎
Toshiyuki Iwasaki
俊之 岩崎
大直 田中
Hironao Tanaka
大直 田中
涼 西村
Ryo Nishimura
涼 西村
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Abstract

【課題】優れた撥水性及び耐摩耗性を有する撥水部材を提供する。【解決手段】撥水部材100は、表面に凹凸パターン80が形成された凹凸パターン領域150を有し、前記凹凸パターン領域150が、格子により区画された複数のエリアを有し、該複数のエリアが前記格子の辺を介して隣接する第1エリア及び第2エリアからなり、前記第1エリアの各々の中に前記凹凸パターン80の凹部70の中心が存在し、前記凹部70同士が互いに連通しないように、各凹部70の周辺を囲むように凸部60が形成されており、前記凹凸パターン領域150において前記凹部70の占める面積割合が40%以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、凹凸パターンを有する撥水部材に関する。
建築用、産業用、自動車用などの窓材や、鏡、眼鏡、ゴーグル、カメラレンズ、太陽電池パネルなど光学部材などの用途に用いられる部材は、表面に水滴等の視界を妨げるものが付着しないこと、すなわち撥水性を有することが望まれている。
従来、部材に撥水性を付与する方法として、部材表面にフッ素樹脂などの撥水性高分子を塗布することが知られている。また、非特許文献1において、部材表面に微細な凹凸を形成して表面積を増大させることにより、部材に撥水性を付与することができることが記載されている。
Molecules 2014,19,4256−4283
しかしながら、部材に撥水性高分子を塗布する方法は、形成された高分子膜の乾燥に時間がかかるという問題や、高分子膜が紫外線で劣化したり雨水等に溶けたりすることにより短期間のうちに撥水性が損なわれるという問題がある。一方、部材表面に微細な凹凸を形成する方法の場合、基材の撥水性を向上させるためにはアスペクト比の大きな凹凸を形成する必要があるが、そのような凹凸は摩擦により破壊され易く、撥水性が損なわれてしまうという問題がある。
そこで本発明の目的は、優れた耐摩耗性及び撥水性を有する撥水部材を提供することにある。
本発明の第1の態様に従えば、
表面に凹凸パターンが形成された凹凸パターン領域を有する撥水部材であって、
前記凹凸パターン領域が、格子により区画された複数のエリアを有し、
該複数のエリアが前記格子の辺を介して隣接する第1エリア及び第2エリアからなり、
前記第1エリアの各々の中に前記凹凸パターンの凹部の中心が存在し、
前記凹部同士が互いに連通しないように、各凹部の周辺を囲むように凸部が形成されており、
前記凹凸パターン領域において前記凹部の占める面積割合が40%以上である撥水部材が提供される。
前記撥水部材において、前記凹部がいずれも等しい形状を有してよい。あるいは、前記凹凸パターンが少なくとも2つ以上の互いに異なる形状を有する凹部を含んでもよい。
前記撥水部材において、前記凹部を画成する側面壁が傾斜角度45°〜135°の範囲内で傾斜していてよい。
前記撥水部材において、前記凸部が、前記第2エリアの各々の中に中心が存在する複数の凸部と、前記複数の凸部同士を接続するブリッジから構成されていてよい。
前記撥水部材において、前記凹部のアスペクト比が0.4より大きく、1.0以下であってよい。
前記撥水部材において、前記格子の周期が375nm以下であってよい。
前記撥水部材において、前記格子が正方格子または正三角格子であってよい。
前記撥水部材において、前記凹凸パターンの表面が、平滑表面における水の接触角が90度以上である材料によって構成されてよい。
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様の撥水部材の製造方法であって、
基材上に塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜に凹凸パターンを有するモールドを押し付けることにより前記凹凸パターンを前記塗膜に転写して、前記基材上に凹凸構造層を形成する転写工程とを有する撥水部材の製造方法が提供される。
前記撥水部材の製造方法の前記塗布工程において、平滑表面における水の接触角が90度以上である材料を塗布することによって前記塗膜を形成してよい。
前記撥水部材の製造方法は、さらに、前記凹凸構造層上に平滑表面における水の接触角が90度以上である材料を塗布してコーティング層を形成する工程を有してもよい。
本発明の第3の態様に従えば、第1の態様の撥水部材の製造方法であって、
表面に凹凸パターンを有するモールドの凹凸パターン面に塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜が形成された前記モールドと基材を密着させて前記塗膜を前記基材に前記凹凸パターンに従って転写する転写工程とを有する撥水部材の製造方法が提供される。
前記撥水部材の製造方法の前記塗布工程において、前記モールドの前記凹凸パターン面の凹部に前記塗膜を形成してよい。あるいは、前記塗布工程において、前記モールドの前記凹凸パターン面の凸部に前記塗膜を形成してもよい。
前記撥水部材の製造方法の前記塗布工程において、平滑表面における水の接触角が90度以上である材料を塗布することによって前記塗膜を形成してもよい。
前記撥水部材の製造方法は、さらに、前記基材に転写された前記塗膜上に平滑表面における水の接触角が90度以上である材料を塗布してコーティング層を形成する工程を有してもよい。
本発明の撥水部材の表面に水分が付着した場合、水滴の表面と凹部の間に空気が閉じ込められるため、Cassie状態となる。本発明の撥水部材はこのような空気閉じ込め構造を有するため優れた撥水性を有する。また、本発明の撥水部材は、隣接する凸部が直接またはブリッジを介して接続されており、凸部同士が互いを支える構造になっているため、凸部が倒れにくく、耐摩耗性が高い。さらに、本発明の撥水部材は、凹凸のアスペクト比を小さすることにより、上記空気閉じ込め構造による優れた撥水性を保ちながらも、さらに耐摩耗性を高めることが可能である。
図1は、実施形態の撥水部材の概略斜視図である。 図2(a)〜(c)は、表面が正方形のエリアに区画された撥水部材の平面形状を示す図であり、灰色部は凸部、白色部は凹部を示す。 図3(a)〜(c)は、表面が正三角形のエリアに区画された撥水部材の平面形状を示す図であり、灰色部は凸部、白色部は凹部を示す。 図4(a)、(b)は、撥水部材の断面形状を示す図である。 図5は、表面に水滴が付着した撥水部材の断面を概略的に示す図である。 図6(a)〜(d)は、撥水部材の断面構造を示す概略断面図である。 図7は、撥水部材の製造方法における、押圧工程及び剥離工程の様子の一例を示す概念図である。 図8(a)〜(c)は、予備実験1〜3におけるCFD解析により求めた凹凸パターン上の水滴の形状を示す図である。 図9(a)〜(g)は、実施例1〜4及び比較例1〜4で用いた母型及び作製した部材の凹凸パターンの平面形状を概略的に示す図である。 図10は、実施例1〜4及び比較例1〜4の評価結果を示す表である。
以下、本発明の撥水部材、及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。
[撥水部材]
実施形態の撥水部材は、表面に規則的な凹凸パターンが形成された凹凸パターン領域を有しており、凹凸パターンの凸部及び凹部が市松状に配置されている。本願において、「凸部及び凹部が市松状に配置されている」とは、凹凸パターン領域が格子により区画された複数のエリアを有し、該複数のエリアが格子の辺を介して隣接する第1エリア及び第2エリアからなり、第1エリアの各々の中に凹凸パターンの凹部の中心が存在し、凹部に対する凸部(凹部を画成する凸部)が、凹部同士が互いに連通しないように各凹部の周辺を囲むように形成されていることを意味する。すなわち、凹凸パターンの各凹部の中心は、隣接する2つのエリアの一方のみに位置し、格子の辺を介して隣接する2つのエリアの両方の中に凹部の中心が存在することはない。凹凸パターン領域を区画する格子は、斜方格子、正三角格子、正方格子、矩形格子、平行体格子等であってよいが、正三角格子又は正方格子であることが好ましい。
以下、図1に示すような撥水部材100を例に挙げて説明する。図1に示す撥水部材100は、板状の基材40上に複数の凸部60及び凹部70からなる凹凸パターン80が形成された凹凸パターン領域150を有している。凸部60は基材40に平行で且つ平坦な上面部60tを有する。
図2(a)に、実施形態の撥水部材100の凹凸パターン領域150を平面視した形状(板状の基材40の表面に垂直な方向から見た形状)(図1参照)を示す。図2(a)に示すように、撥水部材100の表面は、正方格子により画成された複数の正方形のエリアを有する。複数のエリアは複数の第1エリア7pと複数の第2エリア6pから構成され、第1エリア7pと第2エリア6pは正方格子の辺を介して隣接する(正方格子の辺に垂直な方向に並ぶ)。第2エリア6pは第1エリア7pと等しい形状及び大きさを有する。複数の第1エリア7pの各々の中に、凹部70pの中心が存在する。第1エリア7p内に中心が存在する凹部70pは、他の第1エリア7p内に中心が存在する凹部70pと連結(連通)していない。すなわち、一つの凹部70pは、単独で空気を閉じ込める構造を持つ。
図2(a)に示した例では、第1エリア7p全体に凹部70pが形成され、第2エリア6p全体に凸部60pが形成されているため、各凸部60p及び各凹部70pは同じ正方形形状を有している。また、各凸部60pの辺は全て凹部70pと接しており、各凹部70pの辺は全て凸部60pと接している。隣接する凸部60pは、図2(a)に示すように、その頂点において連結されている。このような凹凸パターン領域を有する撥水部材は、色付き及びヘイズを小さくすることができる。これは、隣接する周期構造の位相が半周期分ずれているため、隣接する周期構造による色づきが混じり合うことにより相殺されるためである。
撥水部材100の表面を複数のエリアに区画する格子の周期は、25〜375nmの範囲内であることが好ましい。すなわち、第1エリア7p及び第2エリア6pの交互繰り返し構造の周期が50〜750nmの範囲内であることが好ましい。格子の周期が375nmを超える場合、後述の実施例でも示されるように、光の干渉による色付きが生じることがある。また、格子の周期が25nm未満の場合、精度よく凹凸パターンを形成することが困難になる。
図4(a)、(b)に、基材40の表面に垂直な面すなわち凹部の深さ方向を含む面で切断した撥水部材100の断面形状を示す。凹部70を区画する側面(側面壁)70s(すなわち凸部60の側面60s)は、図4(a)に示すように、基材40の表面に対して垂直であってよく、あるいは図4(b)に示すように基材40の表面に対して傾斜していてもよい。すなわち、凹部70は、基材40の表面から上方(基材40の表面から離れる方向)に向かって幅が広がる形状であってもよいし、幅が狭くなる形状であってもよいし、幅が一定である形状であってもよい。凹部70の側面70sの傾斜角度θは、45°〜135°の範囲内であってよく、90°〜135°の範囲内であることがより好ましい。凹部70の側面70sの傾斜角度が90°以上である場合、撥水部材100の表面に水滴が付着したときに凹部70と水滴表面の間に空気を閉じ込める効果が大きくなるため、高い撥水性が得られる。凹部70の側面70sの傾斜角度が90°以下であるような凹凸パターンは、後述するように、インプリント法により形成することができる。凹部70の側面70sの傾斜角度が90°を超えるような凹凸パターンは、後述するように、インプリント法により形成した凹凸パターンをさらにドライエッチング処理することにより形成することができる。
上記のような撥水部材100において、凹部70は、他の凹部70と連結しておらず、全周囲を凸部60に囲まれている。撥水部材100上に水滴が付着した場合、図5に示すように、水滴が凹部70内に浸透せず、Cassie状態となる。この状態において、凹部の側面70s、凹部の底面70b及び水滴表面20に囲まれた空間内(凹部内)に空気が閉じ込められ、空気・水滴・凸部、すなわち気・液・固の三相が凸部上面の外周部(凸部上面の辺)60eにおいて接している。この状態において、水滴は凹部70にほとんど入り込むことができず、水滴が、凹部70内に閉じ込められた空気及び凸部に接触している状態が維持される。それゆえ、撥水部材100は優れた撥水性を有する。なお、凹部70のような、水滴表面との間で空気を閉じ込めることができる構造を、以降適宜「空気閉じ込め構造」と称する。
凹部のアスペクト比(凹部幅(凹部径)に対する凹部深さの比)は、0.4より大きく、1.0以下であることが好ましい。後述する実施例の予備実験において示されるように、凹部のアスペクト比が0.4より大きいことにより、凹部の側面70s、凹部の底面70b及び水滴表面20に囲まれた空間に空気を閉じ込めることができ、優れた撥水効果を得ることができる。凹部幅に対する凹部深さの比が1.0を超える場合は、凹凸パターンの耐摩耗性が不十分となることがある。
なお、図2(a)では、格子の頂点を介して隣接する第2エリア6pに形成されている凸部60p(以降適宜「隣接する凸部60p」と称する)は、その頂点同士で連結されているが、図2(b)に示すように、隣接する凸部60pはブリッジ90pを介して連結(接続)されてもよい。この場合、複数の凸部60p及びブリッジ90pが凹部70pを画成する凸部(凹部70pに対する凸部)を構成する。また、第2エリア6p全体に凸部60pが形成されていなくてもよく、凸部60pの中心が第2エリア6pの各々の中に位置すればよい。ブリッジ90pは凸部60pと同じ高さを有し、ブリッジ90pの上面部は、凸部60pの上面部60t(図1及び図4(a)、(b)参照)と面一をなす。ブリッジ90pの幅(太さ)は25nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。ブリッジ90pの幅が200nmを超える場合、凹凸パターン領域150における凹部70pの占める面積の割合が小さくなり、撥水部材100の撥水性が不十分になることがある。また、幅が25nm未満であるようなブリッジ90pは形成が容易ではない。隣接する凸部60pがブリッジ90pを介して連結される場合、凹凸パターン形成時に凸部及び凹部の面積及び位置がばらついても、空気閉じ込め構造を確実に形成することができる。なお、図2(b)に示す例ではブリッジ90pの平面形状は矩形形状であるが、ブリッジ90pの平面形状は円形、三角形等の任意の形状であってよい。
また、図2(a)、(b)においては、撥水部材の表面を正方形のエリアに区画したが、それに代えて、平行四辺形、菱形、長方形等の任意の四角形に区画してもよい。
さらに、撥水部材の表面を任意の三角形のエリアに区画してもよい。図3(a)に、正三角格子により画成された複数の正三角形のエリアを有する撥水部材の表面を平面視した形状を示す。複数のエリアは複数の第1エリア7qと複数の第2エリア6qから構成され、第1エリア7qと第2エリア6qは三角形格子の辺を介して隣接する。複数の第1エリア7qの各々の中に凹部70qの中心が存在している。第1エリア7q内に中心が存在する凹部70qは、他の第1エリア7q内に中心が存在する凹部70qと連結(連通)していない。すなわち、一つの凹部70qは、単独で空気を閉じ込める構造を持つ。図3(a)に示した例では、第1エリア7q全体に凹部70qが形成され、第2エリア6q全体に凸部60qが形成されているため、各凸部60q及び各凹部70qは同じ正三角形形状を有している。また、各凸部60qの辺は全て凹部70qと接しており、各凹部70qの辺は全て凸部60qと接している。隣接する凸部60qは、図3(a)に示すように、その頂点において連結されている。なお、図3(b)に示すように、隣接する凸部60qはブリッジ90qを介して連結(接続)されてもよい。この場合、複数の凸部60q及びブリッジ90qが凹部70qを画成する凸部(凹部70qに対する凸部)を構成する。また、第2エリア6q全体に凸部60qが形成されていなくてもよく、凸部60qの中心が第2エリア6qの各々の中に位置すればよい。
このような表面が正三角形のエリアに区画された撥水部材は、凸部上面の辺の単位面積当たりの密度(線密度)が高い。すなわち、凹凸パターン上に水滴が付着したときに気・液・固の三相が接する線60e(図5参照)の線密度が高い。ゆえに、表面が正三角形のエリアに区画された撥水部材は、気・液・固の三相が接触する線の単位面積当たりの密度が高いため、優れた撥水性を有する。
また、図2(c)、図3(c)に示すように、凹部70p、70qは格子により画成された第1エリア7p、7q全体に形成されていなくてもよく、凸部60p、60qは格子により画成された第2エリア6p、6q全体に形成されていなくてもよい。すなわち、第1エリア7p、7q内に凸部60p、60q及び凹部70p、70qが存在してもよく、第2エリア6p、6q内に凸部60p、60q及び凹部70p、70qが存在してもよい。例えば、図2(c)、図3(c)に示した例では、凹部70p、70qが円形状を有しており、第1エリア7p、7q内に凹部70p、70q及び凸部60p、60qが存在する。なお、この場合も、第1エリア7p、7qの各々の中に凹部70p、70qの中心が存在し、凹部70p、70q同士が互いに連通しないように各凹部70p、70qの周辺を囲むように凸部60p、60qが形成されている。すなわち、凸部60p、60q及び凹部70p、70qが市松状に配置されている。なお、図2(c)、図3(c)において、凹凸パターンが形成された凹凸パターン領域を区画する格子は破線で示されている。
凹凸パターン領域において凹部が占める面積割合は、40〜100%の範囲内である。凹部の面積が凹凸パターン領域の面積の40%未満である場合、空気閉じ込め構造の面積割合が小さいために撥水性が不十分となる。
また、各凹部は任意の形状を有してよい。凹凸パターン領域に形成された凹部がいずれも等しい形状であってもよいし、あるいは凹凸パターン領域において少なくとも2つ以上の互いに異なる形状を有する凹部が形成されていてもよい。
実施形態の撥水部材100において、凸部60の表面は、平滑表面における水の接触角が90度以上である材料によって構成されることが好ましい。そのような材料として、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。本願において、「平滑表面における水の接触角」とは、ある材料で凹凸のない平滑な表面を形成してその表面上に水滴を形成した場合に、その表面と水滴表面が形成する角度のことをいい、平滑表面における水の接触角が大きいほど、表面がより疎水性であることを意味する。なお、平滑表面における水の接触角は、接触角計(例えば、協和界面科学株式会社製の型式「CA−A」等)を用いて測定することができる。具体的には、平滑表面を有する被測定材料からなる基板(または表面に被測定材料の平滑膜を作製した基板)を接触角計の水平台上に静置する。次いでイオン交換水を入れたシリンジを接触角計の水平台の上方に設置し、シリンジの先端に5μlの水滴を作製し、水平台を平滑表面と水滴が接触するまで上昇させた後水平台を下降させ、平滑表面上に水滴を25秒間静置する。この時点の水滴の左右端点の各々と水滴の頂点を結ぶ直線と、平滑表面の成す角度を求め、この角度を2倍することによって、水の接触角を算出することができる。
基材40としては、種々の基板を用いることができる。例えば、ガラス等の透明無機材料からなる基板、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等)、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂(ABS樹脂等)、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリイミド系樹脂(ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂等)、シクロオレフィンポリマー等の樹脂からなる基板などの透光性を有する基板を利用することができる。基板40として、非透光性の基板を利用してもよい。非透光性の基板としては、金属やプラスチックなどからなる基板を用いることができる。透光性の基板を用いた撥水部材100を不透明な基板に貼合しても良い。基材40は親水性の基材でも疎水性の基材でもよい。基材40としてO処理などによって表面を親水処理した基板を使用してもよい。
実施形態の撥水部材において、図6(a)に示すように基材40上に凸部60及び凹部70を構成する層(凹凸構造層)62が形成されていてもよい。この場合、凹凸構造層62は平滑表面における水の接触角が90度以上である材料によって構成されてよい。図6(b)に示すように基材40上に凸部60をなす構造体が形成され、凸部60の間に基材40の表面が露出した領域(凹部70)が区画されていてもよい。この場合、凸部60をなす構造体が平滑表面における水の接触角が90度以上である材料によって構成されてよい。また、図6(c)に示すように、基材40の表面そのものが凸部60及び凹部70を構成していてもよい。この場合、基材40が平滑表面における水の接触角が90度以上である材料によって構成されてよい。さらに、図6(d)に示すように、基材40上に形成された凹凸パターン上に平滑表面における水の接触角が90度以上である材料から構成される被膜50が形成されていてもよい。この場合、凸部60の表面に露出していない部分(内部)、基材40及び凹部70の表面を構成する材料の水の接触角は90度以上でもよいし、90度未満でもよい。
実施形態の撥水部材は、種々の用途に使用することができ、例えば、車両用ミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物の窓ガラス及びその他建材用のガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶等の乗物の窓ガラス;乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグルのようなゴーグル;防護用マスク、スポーツ用マスク、ヘルメット等のシールド;冷凍食品等の陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス;これらの物品表面に貼付するためのフィルム等に用いることができる。
[撥水部材の製造方法]
実施形態の撥水部材100は、以下に説明するようなインプリント法により製造することができる。以下の説明では、図6(a)に示されるように基材40上に凸部60及び凹部70を構成する層(凹凸構造層)62が形成されており、その凹凸構造層62がゾルゲル材料で構成されている撥水部材100の製造方法を例に挙げて説明する。このような撥水部材100の製造方法は、主に、ゾルゲル材料を調製する溶液調製工程、調製されたゾルゲル材料を基板に塗布する塗布工程、基板に塗布されたゾルゲル材料の塗膜を乾燥する乾燥工程、転写パターンが形成されたモールドを押し付ける押圧工程、モールドが押し付けられた塗膜を仮焼成する仮焼成工程、モールドを塗膜から剥離する剥離工程、及び塗膜を硬化させる硬化工程を有する。なお、押圧工程、仮焼成工程及び剥離工程を合わせて転写工程ともいう。以下、各工程について順に説明する。
<溶液調整工程>
凹凸構造層をゾルゲル法により形成するため、最初にゾルゲル材料の溶液を調製する。凹凸構造層は、硬質で傷がつきにくいことから無機材料から形成されることが好ましく、凹凸構造層材料として、上記のような平滑表面における水の接触角が90度以上であるようなゾルゲル材料を用いることができる。例えば、基材上にシリカからなる凸部をゾルゲル法で形成する場合は、ゾルゲル材料として金属アルコキシド(シリカ前駆体)を調製する。シリカの前駆体として、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランに代表されるテトラアルコキシドモノマーや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、トリルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランに代表されるトリアルコキシドモノマー、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−i−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−t−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−i−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−t−ブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−i−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−t−ブトキシシラン等のジアルコキシシランに代表されるジアルコキシドモノマーを用いることができる。さらに、アルキル基の炭素数がC4〜C18であるアルキルトリアルコキシシランやジアルキルジアルコキシシランを用いることもできる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するモノマー、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するモノマー、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するモノマー、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基を有するモノマー、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基を有するモノマー、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するモノマー、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するモノマー、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するモノマー、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するモノマー、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するモノマー、これらモノマーを少量重合したポリマー、前記材料の一部に官能基やポリマーを導入したことを特徴とする複合材料などの金属アルコキシドを用いてもよい。また、これらの化合物のアルキル基やフェニル基の一部、あるいは全部がフッ素で置換されていてもよい。さらに、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、オキシ塩化物、塩化物や、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。金属種としては、Si以外にTi、Sn、Al、Zn、Zr、Inなどや、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。上記酸化金属の前駆体を適宜混合したものを用いることもできる。また、これらの材料中に界面活性剤を加えることで、メソポーラス化された凹凸構造層を形成してもよい。さらに、シリカの前駆体として、分子中にシリカと親和性、反応性を有する加水分解基および撥水性を有する有機官能基を有するシランカップリング剤を用いることができる。例えば、n−オクチルトリエトキシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン等のサルファーシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、これらモノマーを重合したポリマー等が挙げられる。
ゾルゲル材料の溶液としてTEOSとMTESの混合物を用いる場合には、それらの混合比は、例えばモル比で1:1にすることができる。このゾルゲル材料は、加水分解及び重縮合反応を行わせることによって非晶質シリカを生成する。合成条件として溶液のpHを調整するために、塩酸等の酸またはアンモニア等のアルカリを添加する。pHは4以下もしくは10以上が好ましい。また、加水分解を行うために水を加えてもよい。加える水の量は、金属アルコキシド種に対してモル比で1.5倍以上にすることができる。
ゾルゲル材料溶液の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、フェノール、クロロフェノール等のフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、二硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物、水、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。特に、エタノールおよびイソプロピルアルコールが好ましく、またそれらに水を混合したものも好ましい。
ゾルゲル材料溶液の添加物としては、粘度調整のためのポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールや、溶液安定剤であるトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、アセチルアセトンなどのβジケトン、βケトエステル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンなどを用いることが出来る。また、ゾルゲル材料溶液の添加物として、エキシマUV光等紫外線に代表されるエネルギー線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を用いることができる。このような材料を添加することにより、光を照射することよってゾルゲル材料溶液を硬化させることができるようになる。
<塗布工程>
上記のように調製したゾルゲル材料の溶液を基材上に塗布する。基材上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよい。ゾルゲル材料の塗布方法として、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法などの任意の塗布方法を使用することができるが、比較的大面積の基材にゾルゲル材料を均一に塗布可能であること、ゾルゲル材料がゲル化する前に素早く塗布を完了させることができることからすれば、バーコート法、ダイコート法及びスピンコート法が好ましい。
<乾燥工程>
ゾルゲル材料の塗布後、塗膜中の溶媒を蒸発させるために基材を大気中もしくは減圧下で保持してもよい。この保持時間が短いと塗膜の粘度が低くなりすぎて塗膜への凹凸パターンの転写ができなくなり、保持時間が長すぎると前駆体の重合反応が進み塗膜の粘度が高くなりすぎて塗膜への凹凸パターンの転写ができなくなる。また、ゾルゲル材料を塗布後、溶媒の蒸発の進行とともに前駆体の重合反応も進行し、ゾルゲル材料の粘度などの物性も短時間で変化する。凹凸パターン形成の安定性の観点から、パターン転写が良好にできる乾燥時間範囲が十分広いことが望ましく、これは乾燥温度(保持温度)、乾燥圧力、ゾルゲル材料種、ゾルゲル材料種の混合比、ゾルゲル材料調製時に使用する溶媒量(ゾルゲル材料の濃度)等によって調整することができる。なお、乾燥工程では、基材をそのまま保持するだけでゾルゲル材料溶液中の溶媒が蒸発するので、必ずしも加熱や送風などの積極的な乾燥操作を行う必要はなく、塗膜を形成した基材をそのまま所定時間だけ放置したり、後続の工程を行うために所定時間の間に搬送したりするだけでもよい。すなわち、実施形態の撥水部材の製造方法において乾燥工程は必須ではない。
<押圧工程>
次いで、凹凸パターン転写用のモールドを用いて、モールドの凹凸パターンをゾルゲル材料の塗膜に転写することで、凹凸構造層を形成する。モールドとして、後述するような方法で製造することができるフィルム状モールドや金属モールドを用いることができるが、柔軟性または可撓性のあるフィルム状モールドを用いることが望ましい。この際、押圧ロールを用いてモールドをゾルゲル材料の塗膜に押し付けてもよい。押圧ロールを用いたロールプロセスでは、プレス式と比較して、モールドと塗膜とが接する時間が短いため、モールドや基材及び基材を設置するステージなどの熱膨張係数の差によるパターンくずれを防ぐことができること、ゾルゲル材料溶液中の溶媒の突沸によってパターン中にガスの気泡が発生したり、ガス痕が残ったりすることを防止することができること、基材(塗膜)と線接触するため、転写圧力及び剥離力を小さくでき、大面積化に対応し易いこと、押圧時に気泡をかみ込むことがないなどの利点を有する。また、モールドを押し付けながら基材を加熱してもよい。押圧ロールを用いてモールドをゾルゲル材料の塗膜に押し付ける例として、図7に示すように押圧ロール122とその直下に搬送されている基材40との間にフィルム状モールド140を送り込むことでフィルム状モールド140の凹凸パターンを基材40上の塗膜64に転写することができる。すなわち、フィルム状モールド140を押圧ロール122により塗膜64に押し付ける際に、フィルム状モールド140と基材40を同期して搬送しながら、基材40上の塗膜64の表面をフィルム状モールド140で被覆する。この際、押圧ロール122をフィルム状モールド140の裏面(凹凸パターンが形成された面と反対側の面)に押しつけながら回転させることで、フィルム状モールド140と基材40が進行しながら密着する。なお、長尺のフィルム状モールド140を押圧ロール122に向かって送り込むには、長尺のフィルム状モールド140が巻き付けられたフィルムロールからそのままフィルム状モールド140を繰り出して用いるのが便利である。
<仮焼成工程>
ゾルゲル材料の塗膜にモールドを押し付けた後、塗膜を仮焼成してもよい。仮焼成することにより塗膜のゲル化を進め、パターンを固化し、剥離の際に崩れにくくする。仮焼成を行う場合は、大気中で40〜150℃の温度で加熱することが好ましい。なお、仮焼成は必ずしも行う必要はない。また、ゾルゲル材料溶液に紫外線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を添加した場合には、塗膜を仮焼成する代わりに、例えばエキシマUV光等の紫外線に代表されるエネルギー線を照射してもよい。
<剥離工程>
モールドの押圧またはゾルゲル材料の塗膜の仮焼成の後、塗膜からモールドを剥離する。モールドの剥離方法として公知の剥離方法を採用することができる。実施形態の製造方法で用いるモールドの凹凸パターンの凸部及び凹部は、真直にまたは屈曲して延在する細長い形状であるため、離形性がよい。また、モールドの凹凸パターンが、凸部及び凹部が一様な方向に延在して配列されているパターンの場合、モールドの剥離方向を凸部及び凹部の延在方向と平行な方向にしてよい。それによりモールドの離形性をさらに向上することができる。加熱しながらモールドを剥離してもよく、それにより塗膜から発生するガスを逃がし、膜内に気泡が発生することを防ぐことができる。ロールプロセスを使用する場合、プレス式で用いるプレート状モールドに比べて剥離力は小さくてよく、塗膜がモールドに残留することなく容易にモールドを塗膜から剥離することができる。特に、塗膜を加熱しながら押圧するので反応が進行し易く、押圧直後にモールドは塗膜から剥離し易くなる。さらに、モールドの剥離性の向上のために、剥離ロールを使用してもよい。図67に示すように剥離ロール123を押圧ロール122の下流側に設け、剥離ロール123によりフィルム状モールド140を塗膜64に付勢しながら回転支持することで、フィルム状モールド140が塗膜64に付着された状態を押圧ロール122と剥離ロール123の間の距離だけ(一定時間)維持することができる。そして、剥離ロール123の下流側でフィルム状モールド140を剥離ロール123の上方に引き上げるようにフィルム状モールド140の進路を変更することでフィルム状モールド140は凹凸が形成された塗膜(凹凸構造層)62から引き剥がされる。なお、フィルム状モールド140が塗膜64に付着されている期間に前述の塗膜64の仮焼成や加熱を行ってもよい。なお、剥離ロール123を使用する場合には、例えば40〜150℃に加熱しながら剥離することによりモールド140の剥離を一層容易にすることができる。
<硬化工程>
塗膜(凹凸構造層)からモールドを剥離した後、凹凸構造層を硬化してもよい。本実施形態では、本焼成によりゾルゲル材料からなる凹凸構造層を硬化させることができる。本焼成により凹凸構造層を構成するシリカ(アモルファスシリカ)中に含まれている水酸基などが脱離して塗膜がより強固となる。本焼成は、200〜1200℃の温度で、5分〜6時間程度行うのが良い。この時、凹凸構造層がシリカからなる場合、焼成温度、焼成時間に応じて非晶質または結晶質、または非晶質と結晶質の混合状態となる。なお、硬化工程は必ずしも行う必要はない。また、ゾルゲル材料溶液に紫外線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を添加した場合には、凹凸構造層を焼成する代わりに、例えばエキシマUV光等の紫外線に代表されるエネルギー線を照射することによって、凹凸構造層を硬化することができる。
以上のようにして、図6(a)に示すような、基材40上に凸部60及び凹部70を構成する層(凹凸構造層)62が形成された、凹凸パターン80を有する撥水部材100を製造することができる。
なお、上記の塗布工程において塗布するゾルゲル材料の溶液としては、シリカの前駆体のほかに、TiO、ZnO、ZnS、ZrO、Al、BaTiO、SrTiO、ITO等の前駆体の溶液を用いてもよい。
またゾルゲル法のほか、無機材料の微粒子の分散液を用いる方法、液相堆積法(LPD:Liquid Phase Deposition)などを用いて凹凸構造層を形成してもよい。
また、ポリシラザンを用いて凹凸構造層を形成してもよい。この場合、これを塗布及び転写して形成した凹凸構造層を、硬化工程においてセラミックス化(シリカ改質)してシリカ、SiNまたはSiONからなる凹凸構造層を形成してもよい。なお、「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。特開平8−112879号公報に記載されている下記の一般式(1)で表されるような比較的低温でセラミック化してシリカ等に変性する化合物がより好ましい。
一般式(1):
−Si(R1)(R2)−N(R3)−
式中、R1、R2、R3は、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
上記一般式(1)で表される化合物の中で、R1、R2及びR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPSともいう)や、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンが特に好ましい。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報)等を用いることもできる。
ポリシラザン溶液の溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。酸化珪素化合物への改質を促進するために、アミンや金属の触媒を添加してもよい。
また、凹凸構造層62の表面に疎水化処理を行ってもよい。疎水化処理の方法は知られている方法を用いればよく、例えば、シリカ表面であれば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等で疎水化処理することもできるし、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチルシリル化剤とシリコーンオイルで疎水化処理する方法を用いてもよいし、超臨界二酸化炭素を用いた金属酸化物粉末の表面処理方法を用いてもよい。
また、上記実施形態の製造方法では、ゾルゲル材料を用いて凹凸構造層を形成したが、上述の無機材料のほか、フッ素系樹脂材料、シリコーン系樹脂材料等の硬化性樹脂材料を用いてもよい。硬化性樹脂を用いて凹凸構造層を形成する場合、例えば、硬化性樹脂を基材に塗布した後、塗布した硬化性樹脂層に凹凸パターンを有するモールドを押し付けつつ塗膜を硬化させることによって、硬化性樹脂層にモールドの凹凸パターンを転写することができる。硬化性樹脂は有機溶剤で希釈してから塗布してもよい。この場合に用いる有機溶剤としては硬化前の樹脂を溶解するものを選択して使用することができる。例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、などのケトン系溶剤等の公知のものから選択できる。硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。凹凸パターンを有するモールドとしては、例えばフィルム状モールド、金属モールドなど所望のモールドを用いることができる。さらに、硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm〜5J/cmの範囲内であることが好ましい。
凹凸構造層の材料は、無機材料または硬化性樹脂材料に紫外線吸収材料を含有させたものであってもよい。紫外線吸収材料は、紫外線を吸収し光エネルギーを熱のような無害な形に変換することにより、膜の劣化を抑制する作用がある。紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。上記のように凹凸構造層、特に、凸部の表面を構成する材料として種々のものを使用することができるが、いずれも平滑表面における水の接触角が90度以上となるような材料とする。
なお、図6(b)に示すような、基材40上に凸部60をなす構造体が形成され、凸部60の間に基材40の表面が露出した領域(凹部70)が区画されている撥水部材100は、例えば次のようにして製造することができる。上記の塗布工程において、基材上にゾルゲル材料を塗布する代わりに、凹凸パターン転写用モールドの凹部のみまたは凸部のみにゾルゲル材料を塗布する。上記の押圧工程において、モールドに塗布したゾルゲル材料を密着させる。それによってモールドの凹部または凸部の形状に対応する形状を有するゾルゲル材料からなる凸部が基材上に形成される。そのようにして形成した凸部の間では、基材の表面が露出した領域(凹部)が区画されている。
図6(c)に示すような、基材40の表面そのものが凸部60及び凹部70を構成している撥水部材100は、例えば、次のようにして製造することができる。公知のインプリントやフォトリソグラフィ等の技術より、基材上に凹凸パターンを有するレジスト層を形成する。レジスト層の凹部をエッチングして基材表面を露出させた後、残存するレジスト層をマスクとして基材をエッチングする。エッチング後、残ったマスク(レジスト)を薬液で除去する。以上のような操作により、基材の表面そのものに凹凸を形成することができる。
上記のような方法で製造した部材の凹凸パターンをさらにドライエッチング処理してもよい。それにより、基材の表面から上方に向かって幅が小さくなる形状の凹部を有する凹凸パターン(図4(b)参照)を有する撥水部材が得られる。
上記のような方法で製造した部材の凹凸パターン面上にさらに被膜を形成してもよい。それにより図6(d)に示すような撥水部材が得られる。凹凸パターン面上に形成する被膜の材料としては、平滑表面における水の接触角が90度以上の材料を用いることが好ましい。このような撥水部材の製造方法で製造される部材においては、凹凸パターンの凸部の表面が被膜で覆われているため、基材、及び凹凸構造層又は凸部をなす構造体の材料としては任意の材料を用いることができる。すなわち、基材、及び凹凸構造層又は凸部をなす構造体の材料は、平滑表面における水の接触角が90度以上の材料でもよいし、90度未満の材料でもよい。平滑表面における水の接触角が90度以上の材料からなる被膜は、上記で例示したようなフッ素系樹脂材料(例えば、キヤノンオプトロン製SURFCLEAR 100等)、シリコーン系樹脂材料等を用いて形成することができる。
<凹凸パターン転写用モールド>
上記の実施形態の撥水部材の製造方法において用いられる凹凸パターン転写用のモールドとしては、例えば、後述する方法で製造される金属モールド又はフィルム状の樹脂モールド等が含まれる。樹脂モールドを構成する樹脂には、天然ゴム又は合成ゴムのようなゴムも含まれる。モールドは表面に凹凸パターンを有する。
凹凸パターン転写用のモールドの製造方法の例について説明する。最初にモールドの凹凸パターンを形成するための母型パターンの作製を行う。母型パターンは、例えば、フォトリソグラフィ法、切削加工法、電子線直接描画法、粒子線ビーム加工法、操作プローブ加工法等の微細加工法によって作製することができる。
凹凸パターンの母型を作製した後、以下のようにして電鋳法などにより、パターンをさらに転写したモールドを形成することができる。最初に、電鋳処理のための導電層となるシード層を、無電解めっき、スパッタまたは蒸着等によりパターンを有する母型上に形成することができる。シード層は、後続の電鋳工程における電流密度を均一にして後続の電鋳工程により堆積される金属層の厚みを一定にするために10nm以上が好ましい。シード層の材料として、例えば、ニッケル、銅、金、銀、白金、チタン、コバルト、錫、亜鉛、クロム、金・コバルト合金、金・ニッケル合金、ホウ素・ニッケル合金、はんだ、銅・ニッケル・クロム合金、錫ニッケル合金、ニッケル・パラジウム合金、ニッケル・コバルト・リン合金、またはそれらの合金などを用いることができる。次に、シード層上に電鋳(電界めっき)により金属層を堆積させる。金属層の厚みは、例えば、シード層の厚みを含めて全体で10〜30000μmの厚さにすることができる。電鋳により堆積させる金属層の材料として、シード層として用いることができる上記金属種のいずれかを用いることができる。形成した金属層は、後続のモールドの形成のための樹脂層の押し付け、剥離及び洗浄などの処理の容易性からすれば、適度な硬度及び厚みを有することが望ましい。
上記のようにして得られたシード層を含む金属層を、凹凸構造を有する母型から剥離して金属基板を得る。剥離方法は物理的に剥がしても構わないし、パターンを形成する材料を、それらを溶解する有機溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどを用いて溶解して除去してもよい。金属基板を母型から剥離するときに、残留している材料成分を洗浄にて除去することができる。洗浄方法としては、界面活性剤などを用いた湿式洗浄や紫外線やプラズマを使用した乾式洗浄を用いることができる。また、例えば、粘着剤や接着剤を用いて残留している材料成分を付着除去するなどしてもよい。こうして得られる、母型からパターンが転写された金属基板(金属モールド)は、本実施形態の凹凸パターン転写用のモールドとして用いられ得る。
さらに、得られた金属基板を用いて、金属基板の凹凸構造(パターン)をフィルム状の支持基板に転写することでフィルム状モールドのように可撓性のあるモールドを作製することができる。例えば、硬化性樹脂を支持基板に塗布した後、金属基板の凹凸構造を樹脂層に押し付けつつ樹脂層を硬化させる。支持基板として、例えば、ガラス、石英、シリコン等の無機材料からなる基材;シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の有機材料からなる基材、ニッケル、銅、アルミ等の金属材料が挙げられる。また、支持基板の厚みは、1〜500μmの範囲にし得る。
硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。硬化性樹脂の厚みは0.5〜500μmの範囲内であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、硬化樹脂層の表面に形成される凹凸の高さが不十分となり易く、前記上限を超えると、硬化時に生じる樹脂の体積変化の影響が大きくなり凹凸形状が良好に形成できなくなる可能性がある。
硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。さらに、硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分〜3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm〜5J/cmの範囲内であることが好ましい。
次いで、硬化後の硬化樹脂層から金属基板を取り外す。金属基板を取り外す方法としては、機械的な剥離法に限定されず、公知の方法を採用することができる。こうして得ることができる支持基板上に凹凸が形成された硬化樹脂層を有するフィルム状の樹脂モールドは、本実施形態の凹凸パターン転写用のモールドとして用いられ得る。
また、上述の方法で得られた金属基板の凹凸構造(パターン)上にゴム系の樹脂材料を塗布し、塗布した樹脂材料を硬化させ、金属基板から剥離することにより、金属基板の凹凸パターンが転写されたゴムモールドを作製することができる。得られたゴムモールドは本実施形態の凹凸パターン転写用のモールドとして用いられ得る。ゴム系の樹脂材料は、特に、シリコーンゴム、またはシリコーンゴムと他の材料との混合物もしくは共重合体が好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、ポリオルガノシロキサン、架橋型ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサン/ポリカーボネート共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリフェニレン共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリスチレン共重合体、ポリトリメチルシリルプロピン、ポリ4メチルペンテンなどが用いられる。シリコーンゴムは、他の樹脂材料と比べて安価で、耐熱性に優れ、熱伝導性が高く、弾性があり、高温条件下でも変形しにくいことから、凹凸パターン転写プロセスを高温条件下で行う場合には好適である。さらに、シリコーンゴム系の材料は、ガスや水蒸気透過性が高いため、被転写材の溶媒や水蒸気を容易に透過することができる。そのため、ゾルゲル材料に凹凸パターンを転写する目的でゴムモールドを用いる場合には、シリコーンゴム系の材料が好適である。また、ゴム系材料の表面自由エネルギーは25mN/m以下が好ましい。これによりゴムモールドの凹凸パターンを基材上の塗膜に転写するときの離形性が良好となり、転写不良を防ぐことができる。ゴムモールドは、例えば、長さ50〜1000mm、幅50〜3000mm、厚み1〜50mmにし得る。ゴムモールドの厚みが前記下限より小さいと、ゴムモールドの強度が小さくなり、ゴムモールドのハンドリング中に破損する恐れがある。厚みが前記上限より大きいと、ゴムモールド作製時にマスターモールドから剥離することが困難となる。また、必要に応じて、ゴムモールドの凹凸パターン面上に離型処理を施してもよい。
以下、本発明の撥水部材を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。以下、まず予備実験として凹凸パターン上の水滴の形状に関する数値流体力学(CFD)解析を行った。さらに、実施例1〜4及び比較例1〜4においてそれぞれ凹凸パターンを有する基板(凹凸パターン基板)を作製し、各凹凸パターン基板の撥水性、耐摩耗性及びヘイズ(濁り)を評価した。
予備実験1
CFD解析により、一辺が500nmの正方形状の平面形状を有し、高さ(深さ)が500nmである凸部及び凹部が交互に隣接して市松状に配置されている凹凸パターン上の水滴の形状をシミュレーションした。すなわち、500nm周期の正方格子により区画された、辺を介して隣接する第1エリア及び第2エリアからなる複数のエリアを有し、第1エリアの全体において凹部が形成されており、第2エリアの全体において凸部が形成されている凹凸パターン上の水滴の形状をシミュレーションした。シミュレーションの結果得られた水滴の形状の断面図を図8(a)に示す。凹凸パターン上の水滴の接触角は125度であった。また、凹部内(凹部の側面、凹部の底面及び水滴表面に囲まれた空間内)に空気が閉じ込められることがわかった。また、水滴表面が凹部内に約200nm沈み込んでいたことから、平面形状が500nm角の凹部を空気閉じ込め構造とするためには、凹部深さが200nmより大きい必要があることがわかった。ゆえに、凹部内に空気を閉じ込め、優れた撥水効果を得るには、凹部のアスペクト比(凹部幅に対する凹部深さの比)が0.4より大きい必要があることがわかった。
予備実験2
CFD解析により、一辺が500nm、高さ500nmの正方形状の凸部が、1000nm周期で正方配置された凹凸パターン上の水滴の形状をシミュレーションした。この凹凸パターンは複数のピラー状の凸部を有し、各凸部は接していない。すなわち、この凹凸パターンにおいて、凹部は一続きになっており、空気閉じ込め構造になっていない。シミュレーションの結果得られた水滴の断面形状を図8(b)に示す。凹凸パターン上の水滴の接触角は110度であった。この凹凸パターンは、凹部内に空気が閉じ込められずに水滴が凹部の底面にまで達するため、撥水性が低いと考えられる。
予備実験3
CFD解析により、一辺が500nm、高さ1000nmの正方形状の凸部が、1000nm周期で正方配置された凹凸パターン上の水滴の形状をシミュレーションした。この凹凸パターンは複数のピラー状の凸部を有し、各凸部は接していない。すなわち、この凹凸パターンにおいて、凹部は一続きになっており、空気閉じ込め構造になっていない。シミュレーションの結果得られた水滴の断面形状を図8(c)に示す。凹凸パターン上の水滴の接触角は141度であった。この凹凸パターンは、水滴が凹部の底面に達さず、水滴と凹部の底面との間に空気が残るため、撥水性が高いと考えられる。しかし、この凹凸パターンの凸部はアスペクト比が2と大きいために機械強度が低く、耐摩耗性が低いと考えられる。
実施例1
まず、母型として、次のような凹凸パターンを有する母型を用意した。本実施例の母型の凹凸パターンは、平面視上、図9(a)に示すように250nm角の正方形の凸部及び250nm角の正方形の凹部が交互に隣接して市松状に配置されていた。すなわち、母型の凹凸パターンは、250nm周期の正方格子により区画された複数のエリアを有し、該複数のエリアは辺を介して隣接する第1エリア及び第2エリアからなり、第1エリアの全体において凹部が形成されており、第2エリアの全体において凸部が形成されていた。母型の凹凸パターンが形成された領域(凹凸パターン領域)において凹部の占める面積割合は50%であった。また、凸部の高さ(凹部の深さ)は150nmであった。
次に、PET基板(東洋紡製、コスモシャインA−4100)上にフッ素系UV硬化性樹脂を塗布し、母型を押し付けながら、紫外線を600mJ/cmで照射することでフッ素系UV硬化性樹脂を硬化させた。樹脂が硬化した後、硬化した樹脂から母型を剥離した。こうして母型の表面形状が転写された樹脂膜付きPET基板からなるフィルムモールドを得た。
水1g、IPA19g及び酢酸0.1mLを撹拌しながら、シランカップリング剤(信越化学製、KBM−5103)1gを滴下し、その後1時間さらに撹拌して、シランカップリング剤溶液を調製した。30mm×30mm×0.7(厚み)mmの無アルカリガラス基材(日本電気硝子製)を用意し、この基材を洗剤(純正化学製、RBS−25)とスポンジを用いてよくこすり洗いした。その後、スピン乾燥により基材表面の水分を除き、この上にシランカップリング剤溶液をスピンコートした。スピンコートは1000rpmで30秒間行った。その後130℃のオーブンで15分間基材を焼成して易接着処理済み基材を得た。易接着処理済み基材の易接着処理面に、UV硬化樹脂(旭硝子製NIF10a20、平滑膜時の水の接触角:95°)を滴下した。滴下した樹脂にフィルムモールドの凹凸パターンが形成された面を重ね合わせ、基材の一端から他端に向かってハンドローラーを回転移動させることでモールドを基材上の塗膜に押し付けた。次いで、樹脂を光照射により硬化させた後、モールドを前記一端から他端に向かって剥離角度(基材に対するモールドの角度)が約30°になるように手作業で剥離した。これにより、モールドの凹凸パターンが転写された凹凸パターン基板を作製した。
実施例2
凹凸パターンの母型として、次のような凹凸パターンを有する母型を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムモールドを作製した。本実施例の母型の凹凸パターンは、平面視上、図9(b)に示すように500nm角の正方形の凸部及び500nm角の正方形の凹部が交互に隣接して市松状に配置されていた。すなわち、母型の凹凸パターンは、500nm周期の正方格子により区画された複数のエリアを有し、該複数のエリアは辺を介して隣接する第1エリア及び第2エリアからなり、第1エリアの全体において凹部が形成されており、第2エリアの全体において凸部が形成されていた。凹凸パターン領域において凹部の占める面積割合は50%であった。また、凸部の高さ(凹部の深さ)は350nmであった。得られたフィルムモールドを用いて実施例1と同様にして凹凸パターン基板を作製した。
実施例3
実施例2と同様にして作製した凹凸パターン基板上に、フッ素系樹脂(メルク製WR4、平滑膜時の水の接触角:116°)を蒸着した。蒸着は、抵抗加熱式蒸着装置を用いて、圧力を10−6Torrにして行った。形成されたフッ素系樹脂膜の厚さは15nmであった。このようにして、フッ素系樹脂の被膜を有する凹凸パターン基板を作製した。
実施例4
凹凸パターンの母型として、次のような凹凸パターンを有する母型を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムモールドを作製した。本実施例の母型の凹凸パターンは、図9(c)に示すように半径505nmの円形の凹部を有し、平面視上、凹部及び凸部が市松状に配置されていた。すなわち、母型の凹凸パターンは、500nm周期の正方格子により区画された複数のエリアを有し、該複数のエリアは辺を介して隣接する第1エリア及び第2エリアからなり、第1エリア内部に中心を持つ半径505nmの円形の凹部が形成されていた。この凹凸パターンは、複数のホール状の凹部を有しており、凹部以外の部分すなわち凸部が一続きになっていた。凹凸パターン領域において凹部の占める面積割合は40%であった。また、凸部の高さ(凹部の深さ)は350nmであった。得られたフィルムモールドを用いて実施例1と同様にして凹凸パターン基板を作製した。
比較例1
凹凸パターンの母型として、次のような凹凸パターンを有する母型を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムモールドを作製した。本比較例の母型の凹凸パターンにおいて、平面視上、図9(d)に示すように250nm角の正方形の凹部が500nmの周期で千鳥配置(正三角配置)されていた。この凹凸パターンは、複数のホール状の凹部を有しており、凹部以外の部分すなわち凸部が一続きになっていた。凹凸パターン領域において凹部の占める面積割合は29%であった。また、凹部の深さは150nmであった。得られたフィルムモールドを用いて実施例1と同様にして凹凸パターン基板を作製した。
比較例2
凹凸パターンの母型として、次のような凹凸パターンを有する母型を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムモールドを作製した。本比較例の母型の凹凸パターンは、平面視上、図9(e)に示すように250nm角の正方形の凹部が、500nm周期で正方配置されていた。この凹凸パターンは、複数のホール状の凹部を有しており、凹部以外の部分すなわち凸部が一続きになっていた。凹凸パターン領域において凹部の占める面積割合は25%であった。また、凹部の深さは150nmであった。得られたフィルムモールドを用いて実施例1と同様にして凹凸パターン基板を作製した。
比較例3
凹凸パターンの母型として、次のような凹凸パターンを有する母型を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムモールドを作製した。本比較例の母型の凹凸パターンは、平面視上、図9(f)に示すように250nm角の正方形の凸部が、500nmの周期で千鳥配置(正三角配置)されていた。この凹凸パターンは、複数のピラー状の凸部を有し、各凸部は接していなかった。すなわち、この凹凸パターンは、凹部が一続きになっており、空気閉じ込め構造になっていなかった。凹凸パターン領域において凹部の占める面積割合は71%であった。また、凸部の高さは500nmであった。得られたフィルムモールドを用いて実施例1と同様にして凹凸パターン基板を作製した。
比較例4
凹凸パターンの母型として、次のような凹凸パターンを有する母型を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムモールドを作製した。本比較例の母型の凹凸パターンは、平面視上、図9(g)に示すように250nm角の正方形の凸部が、500nm周期で正方配置されていた。この凹凸パターンにおいて、凹部は一続きになっており、空気閉じ込め構造になっていなかった。凹凸パターン領域において凹部の占める面積割合は75%であった。また、凸部の高さは500nmであった。得られたフィルムモールドを用いて実施例1と同様にして凹凸パターン基板を作製した。
<撥水性の評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4の凹凸パターン基板の撥水性を次のようにして評価した。接触角計(協和界面科学株式会社製、DM−301)を用いて、凹凸パターン基板上の水の接触角の測定を行った。凹凸パターン基板上の水の接触角が120°以上であったものを○、110°以上120°未満であったものを△として、結果を図10の表中に示す。
図10の表に示されるように、実施例1〜4及び比較例3、4の凹凸パターン基板は、水の接触角が120°以上であったのに対し、比較例1、2の凹凸パターン基板は水の接触角が110°以上120°未満であった。
実施例1〜4の凹凸パターン基板は、凸部及び凹部が市松状に配置されており、各凹部は全周囲が凸部に囲まれているため、凹凸パターン上に水滴が形成されたときに空気が凹部内(凹部の側面、凹部の底面及び水滴表面に囲まれた空間内)に閉じ込められてCassie状態になると考えられる。それゆえ、実施例1〜4の凹凸パターン基板は水の接触角が大きく、撥水性が高かったと考えられる。
比較例1、2の凹凸パターン基板は、複数のホール状の凹部を有しているため、凹凸パターン上に水滴が形成されたときに空気が凹部内に閉じ込められてCassie状態になると考えられる。しかし、比較例1、2の凹凸パターン基板は、実施例1〜4の凹凸パターン基板と比べて、凹凸パターン領域において凹部の占める面積割合が小さいため、空気閉じ込め構造による撥水効果が小さかったと考えられる。そのため、比較例1、2の凹凸パターン基板は、実施例1〜4の凹凸パターンと比べて水の接触角が小さく、撥水性が低かったと考えられる。実施例1〜4及び比較例1、2の撥水性の評価結果から、凹凸パターン領域における凹部の面積割合が40%以上である場合に、凹凸パターン基板が良好な撥水性を有することがわかった。
比較例3、4の凹凸パターン基板は、凹部(ピラー状の凸部以外の部分)が一続きになっているため、凹凸パターン上に水滴が形成されたときに空気が凹部内に閉じ込められる構造(空気閉じ込め構造)になっていない。しかし、凸部のアスペクト比(高さ/底面幅)が十分に大きいため、水滴が凹部の下面まで達することがなく、Cassie状態を保持することができるため、凹凸パターン表面を構成するUV硬化樹脂の撥水性が強調されたと考えられる。それゆえ、比較例3、4の凹凸パターン基板は水の接触角が大きく、撥水性が高かったと考えられる。
<耐摩耗性評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4の凹凸パターン基板の耐摩耗性を次のようにして評価した。凹凸パターン基板にウレタンフォームをのせて、平面摩耗試験機(株式会社大栄科学精器製作所製T−TYPE)に固定した。綿布(綿帆布)をかぶせた摩擦子に荷重9.8Nを加えながら、凹凸パターン基板上で摩擦子を140mmの長さを60往復/分の速さで10000回往復させることにより、凹凸パターン基板を摩擦した。なお、綿布は摩擦子が2500回往復するごとに交換した。摩擦後の凹凸パターン基板上の水の接触角を測定し、水の接触角が摩擦試験前から変化しなかったものは合格、水の接触角が摩擦試験前より小さくなったものは不合格とした。図10の表中に合格を「○」、不合格を「×」として結果を示す。
図10の表に示されるように、実施例1〜4及び比較例1、2の凹凸パターン基板は、摩擦試験前後で水の接触角の変化がなかったのに対し、比較例3、4の凹凸パターン基板は摩擦試験後に水の接触角が小さくなった。
比較例3、4の凹凸パターン基板は、複数のピラー状の凸部を有し、各凸部は接していない。また、比較例3、4の凸部は、アスペクト比(高さ/底面幅)が大きい。そのため、比較例3、4の凹凸パターン基板の凸部は、力が加えられた場合に倒れたり壊れたりしやすいと考えられる。ゆえに、比較例3、4の凹凸パターン基板は、摩擦試験により凸部が倒れて凹凸パターンが壊れ、それにより水の接触角が小さくなった、すなわち撥水性が低下したと考えられる。
実施例1〜3の凹凸パターン基板は、凸部及び凹部が交互に隣接して市松状に配置されており、各凸部が頂点において接しているために互いに支え合うことができること、及び、凸部の高さが比較例3、4の凸部の高さより低いことにより、摩擦試験を行っても凹凸パターンが壊れることがなく、それゆえ水の接触角(撥水性)が変化しなかったと考えられる。
実施例4及び比較例1、2の凹凸パターン基板は、複数のホール状の凹部を有しており、凹部以外の部分すなわち凸部が一続きになっているため、摩擦試験を行っても凹凸パターンが壊れることがなく、水の接触角(撥水性)が変化しなかったと考えられる。
<色付き及びヘイズの評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4の凹凸パターン基板の色付き(虹見え)及びヘイズ(濁り)を目視にて評価した。色付き及びヘイズの見られなかったものを○、色付き又はヘイズが見られたものを×として図10の表中に示す。実施例1は色付き及びヘイズが見られなかったが、実施例2〜4、比較例1〜4は光の干渉による色付き又はヘイズが見られた。実施例1の凹凸パターン基板において色付き及びヘイズが生じなかったのは、凹凸の周期が可視光の波長よりも十分に小さく、光の回折現象が発生しなかったためである。
なお、以下のようにして、実施例1〜4及び比較例1〜4の凹凸パターン基板の色付き及びヘイズについてのシミュレーションも行った。厳密結合波解析(RCWA)法により、凹凸パターンに垂直入射した色温度6500Kの光(D65)の分光透過光強度分布を計算した。検出角度範囲を−85度〜+85度とし、波長範囲は400〜800nmとして計算を行った。明所での観察を想定して、RCWA法により得られた透過光強度分布に入射光の1%の強度の光を足した時の色味(CIE xyz色空間におけるxy座標)を各検出角度について計算した。得られたxy座標とD65のxy座標の間の距離の二乗の値を各検出角度について求め、この値のうちの最大値を、色付き度(色付きの指標)とした。
実施例1〜4及び比較例1〜4の凹凸パターン基板について、色付き度が1×10−3を以下であったものを○、色付き度が1×10−3超えたものを×として図10の表中に示す。
シミュレーションの結果は上記の目視による評価結果と一致し、実施例1は色付き度が小さかったが、実施例2〜4、比較例1〜4は色付き度が大きかった。
以上、本発明を実施例及び比較例により説明してきたが、本発明の撥水部材は上記実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で適宜改変することができる。
本発明の撥水部材は優れた撥水性を有するため、例えば、車両用ミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物の窓ガラス及びその他建材用のガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶等の乗物の窓ガラス;乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグルのようなゴーグル;防護用マスク、スポーツ用マスク、ヘルメット等のシールド;冷凍食品等の陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス;これらの物品表面に貼付するためのフィルム等の種々の用途に用いることができる。
6p、6q 第2エリア、 7p、7q 第1エリア
20 水滴表面、 40 基材、 50 被膜
60、60p、60q 凸部、 62 凹凸構造層
70、70p、70q 凹部
80 凹凸パターン、 90p、90q ブリッジ
100 撥水部材

Claims (17)

  1. 表面に凹凸パターンが形成された凹凸パターン領域を有する撥水部材であって、
    前記凹凸パターン領域が、格子により区画された複数のエリアを有し、
    該複数のエリアが前記格子の辺を介して隣接する第1エリア及び第2エリアからなり、
    前記第1エリアの各々の中に前記凹凸パターンの凹部の中心が存在し、
    前記凹部同士が互いに連通しないように、各凹部の周辺を囲むように凸部が形成されており、
    前記凹凸パターン領域において前記凹部の占める面積割合が40%以上である撥水部材。
  2. 前記凹部がいずれも等しい形状を有する請求項1に記載の撥水部材。
  3. 前記凹凸パターンが、少なくとも2つ以上の互いに異なる形状を有する凹部を含む請求項1に記載の撥水部材。
  4. 前記凹部を画成する側面壁が傾斜角度45°〜135°の範囲内で傾斜している請求項1〜3のいずれか一項に記載の撥水部材。
  5. 前記凸部が、前記第2エリアの各々の中に中心が存在する複数の凸部と、前記複数の凸部同士を接続するブリッジから構成される請求項1〜4のいずれか一項に記載の撥水部材。
  6. 前記凹部のアスペクト比が0.4より大きく、1.0以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の撥水性部材。
  7. 前記格子の周期が375nm以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の撥水部材。
  8. 前記格子が正方格子または正三角格子である請求項1〜7のいずれか一項に記載の撥水部材。
  9. 前記凹凸パターンの表面が、平滑表面における水の接触角が90度以上である材料によって構成される請求項1〜8のいずれか一項に記載の撥水部材。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の撥水部材の製造方法であって、
    基材上に塗膜を形成する塗布工程と、
    前記塗膜に凹凸パターンを有するモールドを押し付けることにより前記凹凸パターンを前記塗膜に転写して、前記基材上に凹凸構造層を形成する転写工程とを有する撥水部材の製造方法。
  11. 前記塗布工程において、平滑表面における水の接触角が90度以上である材料を塗布することによって前記塗膜を形成することを特徴とする請求項10に記載の撥水部材の製造方法。
  12. さらに、前記凹凸構造層上に平滑表面における水の接触角が90度以上である材料を塗布してコーティング層を形成する工程を有することを特徴とする請求項10または11に記載の撥水部材の製造方法。
  13. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の撥水部材の製造方法であって、
    表面に凹凸パターンを有するモールドの凹凸パターン面に塗膜を形成する塗布工程と、
    前記塗膜が形成された前記モールドと基材を密着させて前記塗膜を前記基材に前記凹凸パターンに従って転写する転写工程とを有する撥水部材の製造方法。
  14. 前記塗布工程において、前記モールドの前記凹凸パターン面の凹部に前記塗膜を形成することを特徴とする請求項13に記載の撥水部材の製造方法。
  15. 前記塗布工程において、前記モールドの前記凹凸パターン面の凸部に前記塗膜を形成することを特徴とする請求項13に記載の撥水部材の製造方法。
  16. 前記塗布工程において、平滑表面における水の接触角が90度以上である材料を塗布することによって前記塗膜を形成することを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の撥水部材の製造方法。
  17. さらに、前記基材に転写された前記塗膜上に平滑表面における水の接触角が90度以上である材料を塗布してコーティング層を形成する工程を有することを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載の撥水部材の製造方法。
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