JP2017000973A - ディーゼルパティキュレートフィルタ及びそれを用いた粒子状物質燃焼触媒フィルタ - Google Patents

ディーゼルパティキュレートフィルタ及びそれを用いた粒子状物質燃焼触媒フィルタ Download PDF

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勤 古田
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謙作 絹川
亮介 澤
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亮介 澤
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【課題】触媒成分の劣化を抑制し、パティキュレートの燃焼効率を維持することが可能なディーゼルパティキュレートフィルタ、及びそれを用いた粒子状物質燃焼触媒フィルタを提供する。【解決手段】ディーゼルパティキュレートフィルタ(1)は、炭化珪素製のフィルタ部(10)と、フィルタ部の表面に設けられ、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物層とを有する。また、粒子状物質燃焼触媒フィルタは、ディーゼルパティキュレートフィルタと、複合酸化物層の表面に担持され、モリブデン酸セシウムを含む粒子状物質燃焼触媒とを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、ディーゼルパティキュレートフィルタ及びそれを用いた粒子状物質燃焼触媒フィルタに関する。詳細には、本発明は、ディーゼル機関などの燃焼機関から排出される排気ガス中の固体状炭素微粒子、液体又は固体状の高分子量炭化水素微粒子を除去するディーゼルパティキュレートフィルタ、及びそれを用いた粒子状物質燃焼触媒フィルタに関する。
従来、ガソリンエンジンは排気ガスの厳しい規制に伴って技術が進歩しており、排気ガス中に含まれる有害物質は確実に減少しつつある。しかし、ディーゼルエンジンは、固体状炭素微粒子や、液体又は固体状の高分子量炭化水素微粒子などのパティキュレートが有害成分として排出されるという特殊性から、ガソリンエンジンに比べて法規制及び技術の開発が遅れていた。
ところで、自動車の内燃機関、特にディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートは、その粒子径の殆どが1μm以下であり、大気中に浮遊しやすく、呼吸により人体に取り込まれやすい。しかも、パティキュレートにはベンゾピレン等の発癌性物質が含まれていることが明らかとなり、人体への影響が大きな問題となってきている。このため、ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートを効率よく除去する方法が種々検討されている。
近年、パティキュレートを除去する方法の一つとして、セラミックハニカム、セラミックフォーム、金属発泡体等の耐熱性の排気ガス浄化フィルタを用いる方法が開発されている。この方法では、まず排気ガス浄化フィルタで排気ガス中のパティキュレートを捕集する。そして、パティキュレートの捕集により背圧が上昇した場合には、バーナー又はヒーター等で排気ガス浄化フィルタを加熱し、堆積したパティキュレートを燃焼させ、炭酸ガスに変えて外部に放出することにより、フィルタを再生する。しかし、この方法では、捕集したパティキュレートを燃焼してフィルタを再生するために多量のエネルギーが必要となる。また、パティキュレートの燃焼温度が高温となるため、フィルタの溶解や割れを生じる恐れがあった。
一方、触媒を排気ガス浄化フィルタに担持し、パティキュレートを触媒作用により燃焼させることで、バーナー又はヒーターなどによる燃焼操作を軽減して、フィルタを再生する方法がある。例えば、耐熱性セラミックフィルタに予め粒子状物質燃焼触媒を担持させておき、パティキュレートの捕集と共に燃焼反応を行わせる方法が研究されている。
このような排気ガス浄化フィルタとしては、特許文献1に記載のものが開示されている。特許文献1では、リーンNOxトラップと、第1のゾーンおよび第2のゾーンを有し、かつ、白金族金属、ゼオライトに充填された銅又は鉄、及び卑金属酸化物又は卑金属を含む触媒化基材と、備えた内燃機関用排気システムが開示されている。そして、触媒化基材がフィルター基材であり、さらにアルミノシリケートで作られていてもよいことが開示されている。
特表2014−525822号公報
しかしながら、触媒成分を担持するフィルター基材としてアルミノシリケートからなるものを用いた場合、長期間に亘り使用した際に触媒成分が劣化し、パティキュレートの燃焼効率が低下する恐れがあった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、触媒成分の劣化を抑制し、パティキュレートの燃焼効率を維持することが可能なディーゼルパティキュレートフィルタ、及びそれを用いた粒子状物質燃焼触媒フィルタを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の態様に係るディーゼルパティキュレートフィルタは、炭化珪素製のフィルタ部と、フィルタ部の表面に設けられ、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物層と、を有する。
本発明のディーゼルパティキュレートフィルタは、フィルタ部の表面に、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物層が設けられている。これにより粒子状物質燃焼触媒の劣化を抑制し、パティキュレートの燃焼効率を長期間に亘り維持することが可能となる。
本発明の実施形態に係るディーゼルパティキュレートフィルタの一例を、一部切り欠いた状態で示す斜視図である。 実施例及び比較例に係るディーゼルパティキュレートフィルタのXRDパターンを示す図である。 実施例及び比較例に係る粒子状物質燃焼触媒フィルタの燃焼速度比を示すグラフである。
以下、本実施形態に係るディーゼルパティキュレートフィルタ、及びそれを用いた粒子状物質燃焼触媒フィルタについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[ディーゼルパティキュレートフィルタ]
本実施形態に係るディーゼルパティキュレートフィルタは、炭化珪素製のフィルタ部と、当該フィルタ部の表面に設けられ、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物層とを備えている。
炭化珪素製のフィルタ部は、ディーゼル機関などの燃焼機関から排出される排気ガス中の固体状炭素微粒子や、液体又は固体状の高分子量炭化水素微粒子などのパティキュレートを捕集する。そして、パティキュレートを捕集し、フィルタ部の背圧が上昇した際には、捕集したパティキュレートを後述する粒子状物質燃焼触媒により燃焼する。
このようなフィルタ部は、炭化珪素(SiC)製、又は炭化珪素を主たる構成成分とする複合材料製のフィルタを使用する。炭化珪素製のフィルタ部を使用することにより、後述するように、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物層をフィルタ部の表面に容易に形成することが可能となる。また、炭化珪素製のフィルタ部は、熱伝導と熱容量が大きいため、捕集したパティキュレートを燃焼させて再生させる際の燃焼温度を低温化することができる。さらに、炭化珪素製のフィルタ部は耐熱性及び耐衝撃性が高いため、車両用の排気ガス浄化システムに好適に用いることができる。
このようなフィルタ部としては、例えば、図1に示すフィルタを用いることができる。図1に示すフィルタ部10は、全体として円柱状をなしている。そして、複数の細孔を有するセル壁12で区画された複数のセル11を備えている。各セル11はセル壁12によって相互に平行に形成されている。また、セル11は、排気ガス入口14又は出口15の端面が目封じされた閉塞端面16を有している。そして隣接するセル11間では、閉塞端面16が排気ガス入口側及び出口側において、交互に逆転した配置となるように構成されている。上述のようなセル11における端面の閉塞関係から、フィルタ部10では、排気ガス入口14又は出口15の端面全体がチェッカー盤(市松模様)のような閉塞パターンが形成されている。つまり、フィルタ部10では、排気ガス入口側と出口側とで開閉が逆転した閉塞パターンが形成されている。
そして、フィルタ部10において、排気ガスEGは、図示したようにセル11の開放端面(セル入口14)を通過し、セル壁12の細孔を通過して隣接したセル11に流入し、隣接したセル11の開放端面(セル出口15)から排出される。そして、フィルタ部10における、セル壁12の表面及びセル壁12に存在する細孔の表面で、パティキュレートを捕集して堆積させる。
なお、セル壁12に設けられた細孔の平均細孔径は特に限定されないが、例えば5μm〜50μmとすることができる。平均細孔径が5μm以上の場合には、パティキュレートが堆積しても圧力損失の過度の上昇を抑制することができる。また、平均細孔径が50μm以下の場合には、パティキュレートの過度の素抜けを抑制することができる。
本実施形態のディーゼルパティキュレートフィルタ1では、このようなフィルタ部10における、セル壁12の表面とセル壁12に存在する細孔の表面との少なくとも一方に、複合酸化物層が形成されている。そして、複合酸化物層は、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物からなるものである。具体的には、複合酸化物層は、アルミノシリケートにセシウムイオンを含有させたセシウムアルミノシリケートを含有することが好ましく、セシウムアルミノシリケートからなる層であることがより好ましい。複合酸化物層としてこのようなセシウムアルミノシリケートを用いることで、後述するように、粒子状物質燃焼触媒としてモリブデン酸セシウムを用いた場合、モリブデン酸セシウムの劣化を抑制することが可能となる。
複合酸化物層を構成するセシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物としては、上述のように、アルミノシリケートにセシウムイオンを含有させたセシウムアルミノシリケートを用いることが好ましい。具体的には、セシウムアルミノシリケートとしては、CsAlSiO、CsAlSi(ポルサイト)、CsAlSi12、及びCsAlSi2048からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物を用いることが好ましい。なお、セシウムアルミノシリケートとしては、特にCsAlSiを用いることが好ましい。
複合酸化物層として、このようなセシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物を用いた場合に、燃焼触媒の劣化を抑制することが可能となる。そして、燃焼触媒の劣化が抑制される効果は、特にCsAlSiで顕著に現れることから、複合酸化物層はCsAlSiを含むことが好ましく、また複合酸化物層はCsAlSiからなることがより好ましい。
次に、本実施形態のディーゼルパティキュレートフィルタの製造方法について説明する。本実施形態のディーゼルパティキュレートフィルタは、上述のように、炭化珪素製のフィルタ部10における、セル壁12の表面とセル壁12に存在する細孔の表面との少なくとも一方に、複合酸化物層が形成されている。そのため、これらの表面に複合酸化物層を形成できるならば、製造方法は限定されない。つまり、フィルタ部10の表面に、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物を堆積させることにより、複合酸化物層を形成してもよい。
しかしながら、フィルタ部10の表面に上記複合酸化物を堆積させることにより複合酸化物層を形成した場合、複合酸化物が細孔内部に堆積し、セル壁12の表面に複合酸化物層が均一に形成されない恐れがある。また、当該複合酸化物が細孔を閉塞し、ディーゼルパティキュレートフィルタの背圧を上昇させてしまう場合がある。そのため、本実施形態では、炭化珪素製のフィルタ部に、アルミナ源とセシウムイオン源とを接触させた後、フィルタ部におけるケイ素とアルミナ源とセシウムイオン源と反応させることにより、複合酸化物層を形成することが好ましい。このようにフィルタ部におけるケイ素とアルミナ源とセシウムイオン源と反応させることによりで、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物を合成し、セル壁及び細孔の表面に複合酸化物層を略均一に形成することが可能となる。
なお、本実施形態では、炭化珪素製のフィルタ部に、アルミナ源とセシウムイオン源だけでなく、シリカ源を接触させてもよい。つまり、フィルタ部にアルミナ源とセシウムイオン源だけでなくシリカ源を接触させ、フィルタ部におけるケイ素とアルミナ源とセシウムイオン源とシリカ源を反応させることで複合酸化物層を形成してもよい。炭化珪素は硬度、耐熱性、化学的安定性に優れることから、炭化珪素中のケイ素がアルミナ源及びセシウムイオン源と反応し難く、当該複合酸化物が十分に形成されない恐れがある。そのため、シリカ源を添加することにより、フィルタ部におけるケイ素とアルミナ源とセシウムイオン源とシリカ源とを反応させ、複合酸化物層を容易に形成することが可能となる。
複合酸化物層の合成において、シリカ源としてはシリカ(SiO)などを用いることができる。また、アルミナ源としては、アルミナ(Al)、硫酸アルミニウム(Al(SO)、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム(Al(OH))などが用いることができる。なお、複合酸化物層の合成には金属イオン源としてセシウムイオン源(セシウムイオン)の添加が必須である。セシウムイオン源としては、硫酸セシウム(CsSO)、炭酸セシウム(CsCO)、水酸化セシウム(CsOH)などのセシウム化合物を用いることが好ましい。なお、シリカ源、アルミナ源及びセシウムイオン源は、それぞれ上記化合物を単独で用いてもよく、また複数の化合物を混合して用いてもよい。
本実施形態の製造方法では、まず、炭化珪素製のフィルタ部の表面に、上述のアルミナ源とセシウムイオン源に加え、必要に応じてシリカ源を付着させる。これらを付着させる方法は特に限定されない。例えば、まずアルミナ源及びセシウムイオン源、並びに必要に応じてシリカ源を分散溶媒に分散し、複合酸化物前駆体スラリーを調製する。その後に、複合酸化物前駆体スラリーをフィルタ部に塗布し、乾燥することにより、これらを付着させることができる。この際、分散溶媒としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水などの純水、又は超純水などの水性媒体を用いることができる。また、分散溶媒としては、有機溶剤を用いてもよい。例えば、エタノール、メタノール、2−プロパノール(IPA)、ケトン類も用いることができる。これらの分散溶媒は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
そして、アルミナ源とセシウムイオン源に加え、必要に応じてシリカ源が付着したフィルタ部を焼成することにより、フィルタ部におけるケイ素とアルミナ源とセシウムイオン源と反応させる。これにより、炭化珪素製のフィルタ部における、セル壁の表面とセル壁に存在する細孔の表面との少なくとも一方に、複合酸化物層を容易に形成することができる。なお、焼成雰囲気は大気中とすることができる。また、焼成温度は、700℃以上で結晶化が進行するため、安定な複合酸化物層を得るためには900℃以上とすることが好ましい。
このように、本実施形態に係る複合酸化物層は、フィルタ部の表面に存在する炭化珪素と、アルミナと、セシウム化合物とを焼成することによって形成されることが好ましい。このような方法により、フィルタ部の表面に複合酸化物層を略均一で簡易的に形成することが可能となる。
上述のように、本実施形態のディーゼルパティキュレートフィルタ1は、炭化珪素製のフィルタ部10と、フィルタ部10の表面に設けられ、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物層とを有する。そのため、フィルタ部の表面に設けられた複合酸化物層により粒子状物質燃焼触媒の劣化を抑制し、触媒活性の低下を防ぐことができる。その結果、長期間使用した場合でも安定した性能を維持できることが可能となる。
[粒子状物質燃焼触媒フィルタ]
次に、本実施形態に係る粒子状物質燃焼触媒フィルタについて説明する。本実施形態の粒子状物質燃焼触媒フィルタは、上述のディーゼルパティキュレートフィルタと、複合酸化物層の表面に担持され、モリブデン酸セシウムを含む粒子状物質燃焼触媒と、を有する。
粒子状物質燃焼触媒としては、モリブデンとセシウムの複合酸化物を使用することが好ましく、モリブデン酸セシウム(CsMoO)を使用することがより好ましい。モリブデンとセシウムの複合酸化物(モリブデン−セシウム複合酸化物)を使用することにより、パティキュレートの燃焼開始温度(酸化開始温度)が低温側にシフトしやすくなる。そのため、燃焼触媒の熱的劣化を抑制しつつも、燃焼操作に用いるエネルギーを低減することが可能となる。
なお、上述のモリブデン−セシウム複合酸化物は、単独でも高い低温活性を示す。ただ、高温の排気ガスに晒されることにより、当該モリブデン−セシウム複合酸化物が凝集し、燃焼活性が低下する恐れがある。そのため、本実施形態の粒子状物質燃焼触媒は、当該モリブデン−セシウム複合酸化物を表面に担持する触媒担体をさらに備えることが好ましい。モリブデン−セシウム複合酸化物を触媒担体の表面に担持することにより、モリブデン−セシウム複合酸化物の凝集及びそれに伴う比表面積の低下が抑制される。そのため、モリブデン−セシウム複合酸化物とパティキュレートとの接触界面が増大し、パティキュレートへの酸素供給効率が向上することから、燃焼活性をより向上させることが可能となる。
モリブデン−セシウム複合酸化物を担持する触媒担体としては、高熱安定性及び高比表面積を有しているものが好ましい。そのため、触媒担体は、アルミナを主成分とするアルミナ担体を使用することが好ましい。つまり、触媒担体は、アルミナを50mol%以上含有するアルミナ担体を使用することが好ましい。また、アルミナ担体は、アルミナを70mol%以上含有することがより好ましく、90mol%以上含有することが特に好ましい。アルミナ担体を構成するアルミナとしては、γ-アルミナ、αアルミナ及びケイ素処理したアルミナからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。また、アルミナ担体は、熱安定性を向上させるためにランタンを含有してもよい。
本実施形態では、モリブデン−セシウム複合酸化物がアルミナ担体の表面に接触し、さらに当該アルミナ担体が上述の複合酸化物層の表面に接触するように担持されることが好ましい。この場合、アルミナ担体によりモリブデン−セシウム複合酸化物が高分散しつつも、モリブデン−セシウム複合酸化物と複合酸化物層とが近接するため、触媒活性の低下を抑制することが可能となる。
なお、触媒担体の平均粒子径(メジアン径、D50)は特に限定されないが、モリブデン−セシウム複合酸化物とパティキュレートとの接触界面を増大させる観点から、10nm〜10μmとすることが好ましい。なお、触媒担体の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて触媒担体を観察することにより、求めることができる。
このように、本実施形態の粒子状物質燃焼触媒は、モリブデン酸セシウムを含むことが好ましく、モリブデン酸セシウムを表面に担持するアルミナ担体をさらに含むことがより好ましい。また、当該燃焼触媒は、白金、パラジウム及びロジウム等、従来の排気ガス浄化フィルタに必須の貴金属成分を使用する必要がない。つまり、当該燃焼触媒は、上述のように、低温から高い炭素燃焼性を示すことから、従来必須の成分であった貴金属を添加しなくても、パティキュレートを効率的に燃焼し、除去することが可能となる。また、貴金属を使用しないことにより、材料コストを大幅に低減することが可能となる。ただ、本実施形態の燃焼触媒は、貴金属の添加を排除するものではなく、低温活性をより向上させる観点から、微量の貴金属を添加してもよい。
次に、本実施形態の粒子状物質燃焼触媒の製造方法について説明する。まず、当該燃焼触媒は、モリブデン−セシウム複合酸化物の前駆体としてのモリブデン成分とセシウム成分とを溶媒に溶解し、混合水溶液を調製する。この際、モリブデンとセシウムとの原子量比率(モル比率)が1:2になるように、モリブデン成分とセシウム成分の混合割合を調整する。
モリブデン成分としては、例えば、酸化モリブデン(MoO、MoO)、モリブデン酸アンモニウム((NHMo24・4HO)、モリブデン酸ナトリウム(NaMoO)、及び塩化モリブデン(MoCl)からなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。また、セシウム成分としては、例えば、水酸化セシウム(CsOH)、炭酸セシウム(CsCO)、硫酸セシウム(CsSO)、硝酸セシウム(CsNO)、塩化セシウム(CsCl)からなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。また、モリブデンとセシウムの複合酸化物を用いてもよい。溶媒としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水などの純水、又は超純水などの水性媒体を用いることができる。
そして、得られた混合水溶液を乾燥させ、溶媒を除去する。乾燥させる方法は特に限定されないが、例えばウォータバス上で混合水溶液を乾固させてもよい。また、混合水溶液を100℃付近の乾燥機の中に入れ、溶媒を揮発させてもよく、さらにロータリーエバポレータを使用してもかまわない。
また、得られるモリブデン−セシウム複合酸化物を触媒担体に担持させる場合には、上記混合水溶液に、触媒担体(アルミナ担体)の粉末を投入し攪拌することにより、触媒前駆体スラリーを調製する。次いで、この触媒前駆体スラリーを上述と同様に乾燥させ、溶媒を除去する。
そして、乾燥により得られた固体を焼成する。焼成する際には、得られた固体を、乳鉢等を用いて粉砕することが好ましい。焼成条件としては、焼成温度は約800℃とすることが好ましく、焼成温度は約3時間とすることが好ましい。焼成は空気中で行うことができ、その際、空気流通式で行ってもよく、非流通式で行ってもよい。このようにして、本実施形態の粒子状物質燃焼触媒を得ることができる。
上述のディーゼルパティキュレートフィルタに粒子状物質燃焼触媒を担持させる方法は特に限定されない。例えば、上述の燃焼触媒を分散溶媒に分散し、燃焼触媒スラリーを調製した後にディーゼルパティキュレートフィルタに塗布し、乾燥及び焼成することにより、燃焼触媒を担持させることができる。この際、分散溶媒としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水などの純水、又は超純水などの水性媒体を用いることができる。また、分散溶媒としては、有機溶剤を用いてもよい。例えば、エタノール、メタノール、2−プロパノール、ケトン類も用いることができる。これらの分散溶媒は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、ディーゼルパティキュレートフィルタに対して燃焼触媒を付着させ、固定しやすくするために、燃焼触媒同士を結着するバインダーを使用してもよい。つまり、燃焼触媒スラリーにバインダーを添加した後に、ディーゼルパティキュレートフィルタに塗布し、乾燥及び焼成することにより、燃焼触媒を担持させてもよい。バインダーとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル及びジルコニアゾルからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。
上述のように、本実施形態の粒子状物質燃焼触媒フィルタは、上述のディーゼルパティキュレートフィルタと、複合酸化物層の表面に担持され、モリブデン酸セシウムを含む粒子状物質燃焼触媒とを有する。モリブデン酸セシウムを含む粒子状物質燃焼触媒は、パティキュレートの燃焼開始温度を低温側にシフトさせることができるため、燃焼触媒の熱的劣化を抑制しつつも、燃焼操作に用いるエネルギーを低減することが可能となる。さらに、複合酸化物層は、粒子状物質燃焼触媒の劣化を抑制し、触媒活性の低下を防ぐことができるため、長期間に亘り安定した燃焼性能を発揮することが可能となる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例]
まず、硫酸セシウム(和光純薬工業株式会社製)とγアルミナ(和光純薬工業株式会社製)とを水に加えて攪拌し、スラリー液を調製した。次に、当該スラリー液に、炭化珪素フィルタ(イビデン株式会社製ディーゼルパティキュレートフィルタ)を浸漬した。そして、スラリー液からフィルタを取り出した後に乾燥させることで、炭化珪素フィルタに硫酸セシウムとγアルミナを堆積させた。なお、硫酸セシウムとγアルミナの堆積量は、硫酸セシウムとγアルミナと炭化珪素フィルタとの質量比が177:50:475(硫酸セシウム:γアルミナ:炭化珪素フィルタ)となるように調整した。
さらに、硫酸セシウムとγアルミナを堆積した炭化珪素フィルタを、電気炉(ヤマト科学株式会社製マッフル炉FP410)を用いて900℃にて5時間加熱することにより、本例のディーゼルパティキュレートフィルタを得た。
次に、得られたディーゼルパティキュレートフィルタを粉砕した。そして、粉砕したディーゼルパティキュレートフィルタとモリブデン酸セシウム触媒(第一稀元素化学工業株式会社製)とを、質量比が38:1となるように混合することにより、本例の触媒フィルタ粉末を調製した。なお、当該モリブデン酸セシウム触媒は、γアルミナ担体粉末にモリブデン酸セシウム(CsMoO)を担持したものであり、この際、モリブデン金属の担持量がγアルミナ担体100gに対して9gとなるように調整したものである。
[比較例]
まず、γアルミナ(和光純薬工業株式会社製)を水に加えて攪拌し、スラリー液を調製した。次に、当該スラリー液に、炭化珪素フィルタ(イビデン株式会社製ディーゼルパティキュレートフィルタ)を浸漬した。そして、スラリー液からフィルタを取り出した後に乾燥させることで、炭化珪素フィルタにγアルミナを堆積させた。なお、γアルミナの堆積量は、γアルミナと炭化珪素フィルタとの質量比が2:19(γアルミナ:炭化珪素フィルタ)となるように調整した。
さらに、γアルミナを堆積した炭化珪素フィルタを、電気炉(ヤマト科学株式会社製マッフル炉FP410)を用いて900℃にて5時間加熱することにより、本例のディーゼルパティキュレートフィルタを得た。
次に、得られたディーゼルパティキュレートフィルタを粉砕した。そして、粉砕したディーゼルパティキュレートフィルタと、実施例と同じモリブデン酸セシウム触媒とを、質量比が38:1となるように混合することにより、本例の触媒フィルタ粉末を調製した。
[評価]
(結晶構造解析)
実施例及び比較例で得られたディーゼルパティキュレートフィルタを粉砕し、X線回折装置(株式会社リガク製、Multiflex)を用いて、各例のディーゼルパティキュレートフィルタの結晶構造解析を行った。実施例及び比較例のディーゼルパティキュレートフィルタにおける粉末X線回折像を図2に示す。
図2に示すように、実施例のディーゼルパティキュレートフィルタは、ポルサイト(CsAlSi)のピークと炭化珪素(SiC)の両方のピークが観測された。つまり、実施例のディーゼルパティキュレートフィルタは、セシウムアルミノシリケートと炭化珪素の複合体であることが確認された。
これに対し、比較例のディーゼルパティキュレートフィルタは、セシウムアルミノシリケートのピークは確認されず、炭化珪素のピークのみが観測された。つまり、比較例のディーゼルパティキュレートフィルタは、炭化珪素の結晶構造を維持していることが確認された。
(炭素燃焼速度評価)
まず、実施例及び比較例で得られた触媒フィルタ粉末を、電気炉(ヤマト科学株式会社製マッフル炉FP410)を用いて900℃にて5時間加熱することにより、熱負荷をかけた。
そして、熱負荷をかけた触媒フィルタ粉末と炭素粉末(カーボンブラック)とを質量比で39:5になるように秤量し、メノウ乳鉢を用いて30分間混合することで、評価粉末を調製した。なお、カーボンブラックは、一般社団法人日本粉体工業技術協会が販売するJIS試験用粉体1(12種カーボンブラック)を用いた。
次に、評価粉末を約5.0g秤量し、アルミナ容器へ充填した。さらに、評価粉末を充填したアルミナ容器を示差熱分析装置(セイコーインスツル株式会社製、TG/DTA6200)に設置した。そして、空気を100ml/minの流量で流した条件下で、炉内温度を450℃とし、炭素粉末の単位時間当たりにおける燃焼率(%/min)、つまり450℃において1分間に炭素粉末が酸化して減少する割合を測定した。なお、当該燃焼率が高いほど、触媒フィルタ粉末による炭素粉末の燃焼速度が速く、炭素燃焼性に優れている。
また、実施例及び比較例で得られた、熱負荷をかけていない触媒フィルタ粉末と炭素粉末(カーボンブラック)とを質量比で39:5になるように秤量し、メノウ乳鉢を用いて30分間混合することで、評価粉末を調製した。そして、上述と同様にして、炭素粉末の単位時間当たりにおける燃焼率(%/min)を測定した。熱負荷をかけていない触媒フィルタ粉末と熱負荷をかけた触媒フィルタ粉末の燃焼率の測定結果を表1に示す。
Figure 2017000973
なお、表1では、熱負荷をかけた触媒フィルタ粉末の燃焼率を、熱負荷をかけていない触媒フィルタ粉末の燃焼率で除した値を燃焼速度比として合わせて示す。また、燃焼速度比を表したグラフを図3に示す。
表1及び図3より、実施例のディーゼルパティキュレートフィルタを使用した触媒フィルタ粉末は、熱負荷をかけた場合でも燃焼率が低下せず、燃焼速度比が1を超える結果となった。つまり、フィルタ部にセシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物層を設けることで、燃焼触媒の熱劣化を抑制し、炭素燃焼性能を維持できることが分かる。
これに対し、比較例のディーゼルパティキュレートフィルタを使用した触媒フィルタ粉末は、熱負荷をかけた場合に燃焼率が大きく低下し、炭素燃焼性能が初期値(V)の20%以下となった。つまり、フィルタ部にセシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物層を設けない場合には、燃焼触媒の熱劣化が進行し、炭素燃焼性能が大きく低下することが分かる。なお、本発明者は、触媒フィルタ粉末を用いた上述の炭素燃焼速度評価が、粉末化しないディーゼルパティキュレートフィルタでの活性評価と一定の相関があることを確認している。
以上、本実施形態を実施例及び比較例によって説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
1 ディーゼルパティキュレートフィルタ
10 フィルタ部

Claims (5)

  1. 炭化珪素製のフィルタ部と、
    前記フィルタ部の表面に設けられ、セシウムとアルミニウムと珪素とを含む複合酸化物層と、
    を有する、ディーゼルパティキュレートフィルタ。
  2. 前記複合酸化物層がCsAlSiを含む、請求項1に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
  3. 前記複合酸化物層は、前記フィルタ部の表面に存在する炭化珪素とアルミナとセシウム化合物とを焼成することによって形成される、請求項1又は2に記載のディーゼルパティキュレートフィルタ。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のディーゼルパティキュレートフィルタと、
    前記複合酸化物層の表面に担持され、モリブデン酸セシウムを含む粒子状物質燃焼触媒と、
    を有する、粒子状物質燃焼触媒フィルタ。
  5. 前記粒子状物質燃焼触媒は、モリブデン酸セシウムを表面に担持するアルミナ担体をさらに含む、請求項4に記載の粒子状物質燃焼触媒フィルタ。
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