以下、本発明の好適な実施例について添付の図面を参照して説明する。なお、本発明は、図面に示された実施例を参考にして説明しているが、これは一つの実施例として説明されるものであるに過ぎず、これによって本発明の技術的思想やその核心構成及び作用が制限されるものではない。
本発明では、媒質の体積比を測定したい試片に、先ず公知のCT撮影装置にてX線を照射してCT撮影を実施するようになる。CT撮影装置では、X線の透過能力を評価し、X線の透過能力に応じて試片のCT画像のボクセル単位から固有の値を得ており、このようにCT撮影装置においてそれぞれの媒質のX線透過程度に基づいて試片のCT画像のボクセルに独自的に付与される固有値を「CT値」と総称する。本発明では、このように公知のCT撮影装置にてCT撮影を実施することで自動的に算出されるCT値を用いて、当該CT撮影装置に対し、ボクセル単位で試片をなす複数の構成媒質の体積比を測定することができる方法を提供する。
CT撮影装置にて試片に対してCT撮影をすれば、CT値のX線CTヒストグラム(以下、「X線ヒストグラム」(X-ray histogram)と略称する)が取得されるが、図2には、一種の物質、すなわち、純粋媒質からなる試片に対するX線ヒストグラムの一例が示されている。X線ヒストグラムにおける、x軸はCT撮影装置でボクセル単位に対して得られる「CT値」で、y軸は当該CT値の「頻度数」、すなわち、当該CT値を有する試片のボクセル(voxel)の数である。このように、測定対象になる試片をCT撮影して入手したX線ヒストグラムは、鐘(bell)形状をなすようになることから、数学的には平均値と分散、そして曲線グラフの下の領域の面積値で定義されるガウス分布関数(Gaussian distribution Function/以下、「GF」と略称する)で表され得る。すなわち、一種の物質からなる純粋媒質のX線ヒストグラムは、一つの固有のGFに代表され得る。図2中の図面符号Mは、種(bell)形状のX線ヒストグラムのグラフにおける極大点(M)を意味する。
一方、複合媒質の場合、複数の種類の純粋媒質が混合されてなるものであるため、このような複合媒質のX線ヒストグラムに対するGFは、複合媒質をなす各純粋媒質の固有の構成比による和で表され得る。
前記したような事項に基づき、本発明では、次のようなステップを順次実施しており、本発明に係る方法は、入力装置、演算装置、及び出力装置(映像装置)を含むシステムによって実施されていてよく、方法の実施の際に必要な入力データはユーザによって入力装置を介して入力されていてよい。前記演算装置は、コンピューターからなるものであってよく、本発明の方法に含まれた一連の過程が前記演算装置で駆動されるコンピュータープログラムによって実施されていてよい。特に、このような演算装置は、CT撮影装置に組み込まれていてよいが、CT撮影装置に接続された別途の装置として備えられていてもよい。
図3は、本発明に係る方法の概略的な過程を示すフローチャートである。本発明に係る方法では、先ず、公知のCT撮影装置にてX線を照射してCT撮影を実施することによって試片に対するX線ヒストグラムを入手し(ステップS0)、演算装置では入手されたX線ヒストグラムを代表するGFを算出する(ステップS1)。純粋媒質の場合、図2に示されたように、X線ヒストグラムは一つの極大値を有する曲線の形態を持つようになり、GFは平均値(鐘状の曲線における平均値)、分散値、そして曲線の下の部分に対する面積値で定義される関数であることから、純粋媒質に対するX線ヒストグラムを代表するGFは、CT撮影にて入手されたX線ヒストグラムから公知の数学的方法によって決定できるようになる。
しかし、複数の種類の純粋媒質が混合されてなる複合媒質の場合、X線ヒストグラムは一つのGFで表されず、平均値と分散値、そして面積値がそれぞれ異なる複数のGFの和で表される。このため、本発明では、CT撮影にて入手されたX線ヒストグラムに基づいて重回帰分析を実施することによって、複合媒質を代表する複数のGFを演算し算出するようになる。
以下では、このような過程、すなわち、演算装置において重回帰分析によって複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを演算し算出する過程についてより詳しく説明する。図4には、重回帰分析によって複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを演算し算出する過程についてのフローチャートが示されており、図5には、三種の純粋媒質が混合されてなる複合媒質からなる撮影対象試片に対するCT値のX線ヒストグラムの一例が示されている。図5に例示されたように、例えば、撮影対象試片が三種の純粋媒質が混合されてなる複合媒質(媒質複合体)からなる場合、X線ヒストグラムは純粋媒質を代表して極大点を有する三つのGFを含むようになる。したがって、本発明では、撮影対象試片に対してX線ヒストグラムを入手した後、極大点の個数を計数しこれを撮影対象試片を構成する純粋媒質の個数にするようになる(ステップS1−1)。図3に例示された場合では、撮影対象試片は、三つの極大点を持っていることから、純粋媒質p1、p2及びp3からなるものであると言える。
このようにX線ヒストグラムにおける極大点を計数すると共に、それぞれの極大点におけるCT値を各純粋媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値と読み取る(ステップS1−2)。図3の場合、純粋媒質p1に対する極大点におけるCT値であるμP1を読み取り、純粋媒質p2に対する極大点におけるCT値であるμP2及び純粋媒質p3に対する極大点におけるCT値であるμP3を、それぞれ読み取る。このようにして読み取られた各純粋媒質の極大点におけるCT値は、各純粋媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値となる。すなわち、GFは、平均値(bell状の曲線における平均値)、分散、そして曲線の下の部分に対する面積値で定義される関数であって、このようにして読み取られた各純粋媒質の極大点におけるCT値は、各純粋媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値となる。
一方、複合媒質のX線ヒストグラムは、純粋媒質のX線ヒストグラムの和だけからなるものではない。図5において領域Aと領域Bで表示された区間の場合、頻度数が所定値を持っていることから、領域Aと領域Bに対しても数学的に表現しなければならず、領域Aと領域Bのように純粋媒質の極大点の間の区間を含む複合媒質全体のX線ヒストグラムをGFで表現するためには、純粋媒質のX線ヒストグラムに対するGF以外に補助GFがさらに必要となる。図6には、図5に示されたX線ヒストグラムにおいて領域Aと領域Bに補助GFが存在することを示すX線ヒストグラムが示されており、図6に示されたように補助GFがさらに必要となる。
したがって、重回帰分析によって複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを演算し算出するためには、さらなる補助GFの個数を決めるようになる(ステップS1−3)。すなわち、ユーザは、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの算出に用いられる補助GFの個数(NF)を任意に決める。補助GFの個数(NF)が決められると、演算装置では純粋媒質間のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値間隔を前記補助GFの個数(NF)で割って、それぞれの補助GFに対する平均値を決める(ステップS1−4)。
このように複合媒質をなす純粋媒質に対し、演算装置での演算過程によって、それぞれの純粋媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの平均値が決められ(ステップS1−2)、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの算出に用いられる補助GFの個数と、それぞれの補助GFの平均値が決められると(ステップS1−3及びS1−4)、純粋媒質を代表するGFと補助GFの形態を決める分散値及び面積値を任意に設定し、各純粋媒質を代表するGFと補助GFを全て合わせて定義された複合媒質の「仮GF」を算出する(ステップS1−5)。
「仮GF」と実際のCT撮影から得られたX線ヒストグラムとの誤差(水平軸の最小と最大の範囲の間での一定間隔の値(CT値)に対する「仮GF」とX線ヒストグラムからの垂直軸の対応値との差の総和)が最小になったときの純粋媒質のGFと補助GFの分散値及び面積値の組み合わせを算出する。このような一連の演算過程を一般に「重回帰分析」と言い、このような重回帰分析によって純粋媒質のGFと補助GFの分散値と面積値の組み合わせが決まり、これらの和で定義される「複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGF」が採用される(ステップS1−6)。すなわち、算出された仮GFのうちの、CT撮影にて入手したX線ヒストグラムとの複数の水平軸値に対する対応の垂直軸値(関数またはヒストグラム曲線からの垂直軸対応値)の誤差が最小になるGFを、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFとして採用するようになる。
このような関係を数学的に表すと、次の式(1)のとおりである。
前記式(1)中、NFは純粋媒質の個数と補助GFの個数とを合わせた個数であり、GFJは面積値、分散値と平均値で定義される鐘状のガウス分布関数であって複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成するようになる個別的なGFを意味する。図3に示されたように、例えば、複合媒質がp1、p2及びp3の三種の純粋媒質からなり、補助GFの個数を17と決めたとすれば、総GFJの個数NFは20(J=1〜20)であるので、前記式(1)は、次の式(2)で表される。
前記式(2)中、GF1、GF2、…は、それぞれ純粋媒質のGFと補助GFであって、前記ステップS1−2及びステップS1−3によって決められた平均値を有する。また、前記式(2)中、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFは、前記ステップS1−5とS1−6の重回帰分析によって決められた分散値と面積値で形態が決められた全てのGFの和で定義される関数である。
このように、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFと、これを構成する個別的なGFがそれぞれ算出され決定されると、演算装置ではミクセルを代表する補助GFにおいてそれぞれの純粋媒質が占める体積比を算定する(ステップS2)。
図7には、各GFにおいてそれぞれの純粋媒質が占める体積比を算定するステップについての詳細なフローチャートが示されており、図7に示されたように、先ず、それぞれの純粋媒質に対するGFの平均値と、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数の補助GFのそれぞれの平均値の差を演算する(ステップS2−1)。すなわち、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちの、i番目の純粋媒質に対するGFの平均値(μi)と、複合媒質(ミクセル)のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFの平均値(μj)の差(Li,j)を下の式(3)によって演算する。
前記式(3)によって演算されたLi,j値が小さいほど、該当する純粋媒質の割合が大きくなるわけである。図3に例示されたように、純粋媒質がp1、p2及びp3の三種であり、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成するGFの平均値が、純粋媒質p3のGF平均値に近いと、すなわち、式(3)によって演算されたL3,j値が小さいと、これは純粋媒質p3の占める割合が大きいということを意味する。
したがって、それぞれの純粋媒質に対するGFの平均値と、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのそれぞれの平均値の差を演算した後は、演算された結果を用いてそれぞれのGFにおけるそれぞれの純粋媒質が占める体積比を演算する(ステップS2−1)。すなわち、前記式(3)によってLi,j値を演算した後は、Li,j値を用いて、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFにおけるi番目の純粋媒質が占める体積比PRi,jを下の式(4)によって算出する。
前記式(4)中、Li,jは式(3)によって演算された値であり、NPは純粋媒質の個数(ステップS1−1によって決められた純粋媒質の個数)である。式(4)中のPRi,jは、前記式(1)における複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの算出に用いられた複数のGFのうちのj番目のGFに対し、j番目のGFにおけるi番目の純粋媒質が占める体積比を意味する。
このように複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFの算出に用いられた複数のGFのそれぞれに対し、純粋媒質が占める体積比が前記式(4)によって算出されると、演算装置ではそれぞれのボクセルに対する各純粋媒質の体積比VFを下の式(5)によって算出する(ステップS3)。
前記式(5)中、VFi(x)はCT値がxであるボクセルにおけるi番目の純粋媒質が占めている体積比である。式(5)中、PRi,jは、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFにおけるi番目の純粋媒質が占める体積比(式(4)によって演算されたもの)であり、GFj(x)は、CT値がxであるボクセルに対するj番目のGFのボクセル頻度数である。すなわち、前記式(5)中、GFj(x)は、複合媒質のX線ヒストグラムを代表するGFを構成する複数のGFのうちのj番目のGFのX線ヒストグラムグラフを描いたとき、当該グラフにおける横軸のCT値がxであるときの縦軸の値を意味する。
一方、式(5)中、NPは、純粋媒質の個数であり、NFは純粋媒質の個数と補助GFの個数を合わせた個数(式(1)参照)である。
このように本発明では、複数の種類の純粋媒質が混合されてなる複合媒質(媒質複合体)で作られた試片に対するCT撮影において最小単位に該当するそれぞれのボクセル、すなわち、試片をなすそれぞれのボクセルに対し、当該ボクセル内において各純粋媒質が占める体積比を算出することができるようになる。前述したように、まるでデジタルカメラで物を撮影したとき、撮影の最小単位である「ピクセル(pixel)」が集まって物の2次元画像をなすのと同様、試片をCT撮影すると、試片はCT撮影の最小単位であるボクセルが集まってなるものと見なされ、本発明によれば、試片のボクセルのうちの複数の純粋媒質が混合されているボクセル、すなわち、ミクセルに対し、当該ミクセルに混合された純粋媒質の体積比を算出することができるようになる。
図8には、本発明によってボクセルを区分する方式を説明するための概念図が示されており、図8の(a)に示されたように、試片がミクセルと純粋な媒質のみからなるボクセルからなる場合、本発明では、当該ミクセルに混合された純粋媒質の体積比を算出することができるようになるので、図8の(b)に示されたように、純粋媒質の体積比によってそれぞれのボクセル(ミクセルを含む)を区分することができるようになる。
すなわち、前述したように、従来技術によっては決められた閾値を基準にして二分法にてボクセルを区分していたため、試片に対するボクセルのうちの複数の種類の媒質が混合されているミクセルが存在しても、このようなミクセルに混合された純粋媒質の体積比を一切考慮することができず、よって、公知の方法にて試片をなす各媒質の体積比を算出しても精度や信頼性が低いという短所があった。これに対し、本発明では、前記のように純粋媒質が混合されているミクセルに対し、当該ミクセルに混合された純粋媒質の体積比を算出することができるようになることから、ボクセルに基づいて公知の方法にて試片をなす各媒質の体積比を算出したとき、一つのボクセル単位の体積内でも純粋媒質の体積比を精度よく演算することができるようになり、且つ、CT撮影を利用した試片の平均体積比の分析方法に対して精度や信頼性を高めることができるようになるという効果が奏される。