JP2016516752A - アテローム性動脈硬化症の治療および予防のための環状ペプチドの使用 - Google Patents

アテローム性動脈硬化症の治療および予防のための環状ペプチドの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、アテローム性動脈硬化症または関連障害を予防または治療するのに有用な環状化合物を提供する。本発明はまた、アテローム性動脈硬化症に関連した又はそれにより引き起こされる種々の疾患または障害を治療または予防するための治療方法を提供する。更に、改善された特性を有する抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドをスクリーニングする方法を本発明において提供する。【選択図】図3

Description

本発明はアテローム性動脈硬化症の治療および予防のための環状ペプチドの使用に関する。
関連出願に対する相互参照
本特許出願は、2013年4月2日付け出願の米国仮特許出願第61/807,589号に基づく優先権の利益を主張するものである。該優先権基礎出願の全体の全開示をあらゆる目的で本明細書に組み入れることとする。
米国政府の援助に関する陳述
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された助成番号HL104462に基づく米国政府の援助によりなされた。したがって、米国政府は本発明において一定の権利を有する。
心血管の問題は先進諸国における死亡および身体障害の代表的主要原因である。アテローム性動脈硬化症は多数の心血管障害の発生に関連している。アテローム性動脈硬化症は、例えば大動脈、冠状動脈および頸動脈の動脈壁における脂質および他の血液誘導体の沈着またはプラークにより特徴づけられる。動脈硬化プラークは、大きな動脈の内皮の下部に位置する脂肪線条として始まる。マクロファージの動員、およびそれに続いてそれらがLDL由来コレステロールを取り込むことが、脂肪線条形成に寄与する主要細胞事象である。これらのプラークはこの過程の進行に応じて多かれ少なかれ石灰化しうる。それらは、動脈における主にコレステロールエステルからなる脂肪沈着物の蓄積にも関連している。コレステロールは動脈壁の泡沫細胞において蓄積し、それにより内腔を狭め、血流を低減する。これは平滑筋の肥大、泡沫細胞の出現および線維組織の蓄積と共に動脈壁の肥厚を伴う。したがって、高コレステロール血症は心筋梗塞、末梢血管疾患、脳卒中、突然死、心不全、脳血管発作などのような非常に重大な心血管病理を引き起こしうる。
アテローム性動脈硬化症およびアテローム性動脈硬化症に関連した又はそれにより引き起こされる医学的状態を治療および予防するための、より良好かつより信頼しうる手段が当技術分野において必要であると認識されている。本発明はこの必要性および他の必要性に関するものである。
発明の概括
1つの態様においては、本発明は、アテローム性動脈硬化症または関連障害に罹患している又はその発生リスクを有する対象における、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症に関連した若しくはそれにより引き起こされる障害の治療または予防方法を提供する。関連態様においては、本発明は、対象における総コレステロールレベルを低下させる、LDLレベルおよび/もしくはVLDLレベルを低下させる、またはHDLレベルを上昇させるための方法を提供する。全てのこれらの方法は、ペプチドの配列の一部または全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である4〜約16個のアミノ酸残基またはその類似体の配列を有する環状ペプチドの治療的有効量を含有する医薬組成物を対象に投与することを含む。該方法での治療に適した疾患または障害には、例えば高コレステロール血症、心血管障害、アテローム性動脈硬化血管疾患、脳血管疾患、動脈瘤、末梢血管疾患および間欠性跛行が含まれる。治療されるべき具体的な疾患に応じて、該医薬組成物は種々の手段により、例えば経口的、静脈内、皮下または腹腔内に対象に投与されうる。
本発明の幾つかの実施形態においては、該環状ペプチドは、その配列全体に亘って、交互に位置するD−およびL−α−アミノ酸残基を含有する。幾つかの実施形態においては、該医薬組成物において使用される環状ペプチド化合物はc[B−J−U1−X−U2−Z]の配列式を有する。この配列において、「B」は、少なくとも2つの疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体を含むペプチドセグメントであり、「J」は正荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体である、あるいはそれらを含有する。また、該配列式における「U1」および「U2」の一方または両方は負荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体である、あるいはそれらを含有する。U1およびU2に隣接する「X」は極性非荷電アミノ酸残基、His残基またはそれらの類似体である、あるいはそれらを含有する。最後に、「Z」はAsn、Gln、荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体である、あるいはそれらを含有する。そのような環状ペプチドの例には、c[wLwReQeR](配列番号1)、c[wLwSeQsO](配列番号4)またはc[wLwSeQhK](配列番号40)が含まれる。
これらの実施形態の幾つかにおいては、疎水性セグメント「B」は2、3、4、5、6または7個の疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体からなりうる。幾つかの好ましい実施形態においては、「B」は3個の疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体からなる。例えば、「B」はTrp−Leu−Trp、Tyr−Leu−Tyr、Trp−Trp−Trp、Phe−Leu−Trp、Trp−Leu−Trp、Tyr−Leu−Tyr、Trp−Trp−TrpまたはPhe−Leu−Trpでありうる。幾つかの実施形態においては、「J」はLys、Arg、Ser、His、Orn(オルニチン)、ジアミノ酪酸またはジアミノプロピオン酸を表す。幾つかの他の実施形態においては、「J」はナフチルアラニン(Nal)、ホモロイシン(Hml)または2−アミノ−オクタン酸(Aoc)である。本発明に使用される幾つかの環状ペプチドにおいては、前記配列式におけるU1およびU2部分は、それぞれ独立して、Asp、GluまたはSer残基である。幾つかの実施形態においては、「X」部分はAsnまたはGln残基に対応する。幾つかの実施形態においては、「Z」部分は正荷電残基、例えばLys、Arg、His、Orn(オルニチン)またはジアミノ酪酸を表す。
本発明の幾つかの方法においては、使用される環状ペプチド化合物は配列式c[B−J−U1−X−U2−Z]を有し、ここで、BはTrp−Leu−TrpまたはTyr−Leu−Tyrからなり、JはLys、ArgまたはSerであり、U1およびU2は、それぞれ独立して、Asp、GluまたはSer残基であり、XはAsnまたはGlnであり、ZはLys、Arg、Orn(オルニチン)またはジアミノ酪酸である。
本発明において使用されうる環状ペプチドの幾つかの具体例には、c[wLwReQeR](配列番号1)、c[wLwKdQeK](配列番号2)、c[wLwRdQeK](配列番号3)、c[wLwSeQsO](配列番号4)、c[fWwYqHhQ](配列番号5)、c[LwLwLrKe](配列番号6)、c[wLwZeQeK](配列番号7)、c[wLwKdNdK](配列番号8)、c[wLwRdNdK](配列番号9)、c[wLwKdQdK](配列番号10)、c[wLwKeNeK](配列番号11)、c[wLwHeNeK](配列番号12)、c[wLwOeQeO](配列番号13)、c[wLMewSeQMesO](配列番号14)、c[wLwOeNeO](配列番号19)およびc[wLwSeQhK](配列番号40)が含まれる。本発明に適したペプチドの幾つかの他の例には、c[fWwYqHhQ](配列番号5)、c[(Me)wLwR(Me)eQeR](配列番号46)、c[WIWwkhkh](配列番号47)、c[wFyYhOrS](配列番号48)、c[(PA)wLlHsKk](配列番号49)、c[WIWrEqEr](配列番号50)、c[fWwYtRhS(配列番号51)]、c[wFfYrHhS](配列番号52)およびc[wLwKhShK](配列番号53)が含まれる。
本発明の幾つかの方法は、c[wLw−J−u1−X−u2−Z]の配列式を有し、約8個の交互に位置するD−およびL−型のアミノ酸残基またはアミノ酸類似体を含有する環状ペプチドを使用する。この配列式において、「wLw」は、Trp−Leu−Trpからなるトリペプチドセグメントを示し、Jはセリンまたは正荷電アミノ酸残基または類似体であり、u1およびu2は、それぞれ独立して、Asp、GluまたはSer残基であり、XはAsn残基またはGln残基であり、Zは正荷電アミノ酸残基または類似体である。幾つかの実施形態においては、JはLys、Arg、His、Ser、Orn(オルニチン)、ジアミノ酪酸またはジアミノプロピオン酸である。幾つかの実施形態においては、ZはLys、ArgまたはOrn(オルニチン)である。
関連態様においては、本発明は、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症に関連した若しくはそれにより引き起こされる障害を対象において治療または予防するための医薬の組合せ又はキットを提供する。該医薬組合せ又はキットは、4〜約16個のD−およびL−α−アミノ酸の配列を有し抗アテローム性動脈硬化活性を有する環状ペプチドを少なくとも含有する。該アミノ酸残基またはそれらの類似体は、該ペプチドの配列の一部または全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である。幾つかの実施形態においては、該環状ペプチド化合物はc[B−J−U1−X−U2−Z]の配列式を有し、ここで、Bは、少なくとも2つの疎水性アミノ酸残基またはその類似体を含むペプチドセグメントであり、Jは正荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、U1およびU2の一方または両方は負荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、Xは極性非荷電アミノ酸残基、His残基またはそれらの類似体を含み、ZはAsn、Gln、荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸残基または類似体は、該環状ペプチドの配列全体に亘って交互に存在するD−およびL−残基である。
もう1つの態様においては、本発明は、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症に関連した若しくはそれにより引き起こされる障害を対象において治療または予防するのに有効な量での、4〜約16個のD−およびL−α−アミノ酸の配列を有する環状ペプチドの使用を提供する。該ペプチドにおけるアミノ酸残基またはそれらの類似体は、該ペプチドの配列の一部または全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である。幾つかの実施形態においては、使用される環状ペプチド化合物はc[B−J−U1−X−U2−Z]の配列式を有し、ここで、Bは、少なくとも2つの疎水性アミノ酸残基またはその類似体を含むペプチドセグメントであり、Jは正荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、U1およびU2の一方または両方は負荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、Xは極性非荷電アミノ酸残基、His残基またはそれらの類似体を含み、ZはAsn、Gln、荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸残基または類似体は、該環状ペプチドの配列全体に亘って交互に存在するD−およびL−残基である。
もう1つの態様においては、本発明は、抗アテローム性動脈硬化活性を有する新規環状ペプチドを提供する。該ペプチドはそれぞれ、該ペプチドの配列の一部または全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である約4〜約16個のアミノ酸残基または類似体を含有する。該ペプチドの幾つかはc[B−J−U1−X−U2−Z]の配列式に含まれる。この配列式においては、Bは、少なくとも2つの疎水性アミノ酸残基またはその類似体を含むペプチドセグメントであり、Jは正荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、U1およびU2の一方または両方は負荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、Xは極性非荷電アミノ酸残基、His残基またはそれらの類似体を含み、ZはAsn、Gln、荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含む。典型的には、交互に存在するD−およびL−残基または類似体は該環状ペプチドの配列全体に亘って存在する。本発明の環状ペプチドの例を図1および表1に示す。
本発明の性質および利点の更に詳細な理解は、本明細書の残りの部分および特許請求の範囲を参照することにより得られるであろう。
発明の詳細な説明
I.概要
本発明は部分的には、抗アテローム性動脈硬化活性を有することが示された自己集合性環状D,L−α−ペプチドの、本発明者らの開発に基づく。これらの環状ペプチドは、血漿コレステロールレベルを低下させる、およびHDL媒介性コレステロール逆輸送を促進させる、およびアテローム性動脈硬化症病変の発生を予防する活性を示した。特に、本明細書に詳細に記載されているとおり、本発明者らは、ナノチューブ構造へと自己集合しアポリポタンパク質A−I(アポA−I)の脂質結合および機能特性を模擬しうる環状D,L−α−ペプチドを使用してアテローム性動脈硬化症を治療するための潜在的物質を特定するための超分子的アプローチを開発した。ある8残基環状D,L−α−ペプチドはマクロファージ細胞からのコレステロール流出を促進し、インビトロおよびインビボで成熟高密度リポタンパク質(HDL)粒子を新生脂質欠乏性HDLへと再構築した。高脂肪食を10週間与えた低密度リポタンパク質受容体(LDLr)ヌルマウスへの任意摂取飲料水中の環状ペプチド(c[wLwReQeR](配列番号1))の経口投与は総血漿コレステロールレベルを最大で55%低下させ、大動脈洞におけるアテローム性動脈硬化症病変の発生を50%抑制した(対照との比較)。幾つかの他の環状ペプチドのインビトロおよびインビボ抗アテローム性動脈硬化活性も本発明者らにより示された。
理論に束縛されるものではないが、観察された抗アテローム形成性は該環状D,L−α−ペプチドによるコレステロール逆輸送の促進を伴いうるであろう。あるいは、該環状D,L−α−ペプチドは腸内標的に作用しうるであろう。根底にあるメカニズムには無関係に、本発明者らの研究は、環状D,L−α−ペプチドから自己集合する適切に設計された膜活性ナノチューブを使用することによりHDLの形態および機能をモジュレーションすることが可能であることを示している。該研究は更に、該環状D,L−α−ペプチドが、コレステロール逆輸送の重要な2つの態様である、脂質欠乏性粒子へのHDLの再構築および細胞コレステロール流出を促進し、それにより、総血漿コレステロールを低下させ、アテローム性動脈硬化症病変の発生を予防しうることを示唆している。
本発明の膜活性環状D,L−α−ペプチドは天然および非天然アミノ酸の非常に大きな配列空間から誘導されうる。改善された活性を有する類似ペプチドを特定するための更なる構造−活性最適化の大きな可能性が存在する。本発明の環状D,L−α−ペプチドは一般にタンパク質分解に対して安定であり、合成が容易である。これらの低分子量環状ペプチドはアテローム性動脈硬化症に対する潜在的治療用物質の開発における魅力的な新規アプローチを提供する。
これらの知見に従い、本発明は、アテローム性動脈硬化症を治療/予防し、またはアテローム性動脈硬化症病変の進行を抑制しうる新規環状ペプチドを提供する。本明細書に詳細に記載されているとおり、本発明の自己集合性D,L−α−ペプチドの幾つかは、それらの配列内に、交互に位置するL−およびD−残基を含有する。該膜活性環状D,L−α−ペプチドは天然および非天然アミノ酸の非常に大きな配列空間から誘導されうる。また、本発明の環状D,L−α−ペプチドは一般にタンパク質分解に対して安定であり、合成が容易である。これらの低分子量環状ペプチドはアテローム性動脈硬化症に対する魅力的な新規アプローチに相当する。本発明においては、アテローム性動脈硬化症により引き起こされる又はそれに関連した疾患または障害の予防または治療においてこれらのペプチドを使用するための治療的使用または方法も提供する。そのような疾患の例には、心筋梗塞および脳卒中が含まれる。典型的には、これらの治療方法は、本明細書に開示されている抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドの治療的有効量を含有する医薬組成物を、そのような疾患に罹患している対象に投与することを含む。更に、改善された活性を有する追加的な抗アテローム形成性物質を特定するための方法を本発明において提供する。
本発明を実施するための更に詳細な指針を以下の節に記載する。
II.定義
特に示されていない限り、本明細書において用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本発明において用いられる用語の多くの一般的定義を当業者に提供する:Academic Press Dictionary of Science and Technology,Morris(編),Academic Press(1st ed.,1992);Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Smithら(編)、Oxford University Press(revised ed.,2000);Encyclopaedic Dictionary of Chemistry,Kumar(編),Anmol Publications Pvt.Ltd.(2002);Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,Singletonら(編),John Wiley & Sons(3rd ed.,2002);Dictionary of Chemistry,Hunt(編),Routledge(1st ed.,1999);Dictionary of Pharmaceutical Medicine,Nahler(編),Springer−Verlag Telos(1994);Dictionary of Organic Chemistry,KumarおよびAnandand(編),Anmol Publications Pvt.Ltd.(2002);ならびにA Dictionary of Biology(Oxford Paperback Reference),MartinおよびHine(編),Oxford University Press(4th ed.,2000)。また、本発明の実施において読者を補助するために、以下の定義を記載する。
「物質(または剤)」なる語は任意の物質、分子、要素、化合物、実体またはそれらの組合せを含む。それは、限定的なものではないが、例えばタンパク質、ポリペプチド、小有機分子、多糖類、ポリヌクレオチドなどを含む。それは天然物、合成化合物もしくは化学的化合物、または2種以上の物質の組合せでありうる。特に示されていない限り、「剤」、「物質」および「化合物」は本明細書においては互換的に用いられる。
第1(α−)炭素原子に結合したアミンおよびカルボン酸基の両方を有するアミノ酸は生化学において特に重要である。それらは、ペプチド鎖において合体して多数のタンパク質のビルディングブロックを形成する23種の「タンパク質形成性」(「タンパク質を構築する」)アミノ酸を含む。これらは全てL−立体異性体(「左旋性」異性体)である。ただし、細菌エンベロープおよび幾つかの抗生物質においては少数のD−アミノ酸(「右旋性」)が存在する。それらの23種のタンパク質形成性アミノ酸のうちの20種は遺伝暗号におけるトリプレットコドンによって直接的にコードされており、「標準」アミノ酸として公知である。残りの3種(「非標準」または「非正規」)はピロリシン(メタン生成性生物および他の真核生物で見られる)、セレノシステイン(多くの非真核生物およびほとんどの真核生物に存在する)およびN−ホルミルメチオニンである。
標準α−アミノ酸のうち、グリシンを除く全ては、互いの鏡像であるLまたはDアミノ酸と称される2つのエナンチオマーのいずれかとして存在しうる。L−アミノ酸は、リボソームにおける翻訳中にタンパク質で見られるアミノ酸の全てを表し、一方、D−アミノ酸は、イモガイのような珍しい海生生物の場合のように、翻訳および小胞体への移行の後の酵素翻訳後修飾によって産生される幾つかのタンパク質において見られる。それらは細菌のペプチドグリカン細胞壁の豊富な成分でもあり、D−セリンは脳内の神経伝達物質として作用しうる。
23種のタンパク質形成性アミノ酸のほかに、非タンパク質形成性または非標準と称される多数の他のアミノ酸が存在する。それらはタンパク質中に存在しないか(例えば、カルニチンおよびガンマ−アミノ酪酸)、または標準的な細胞装置によっては直接的に産生されず、切り離されている(例えば、ヒドロキシプロリンおよびセレノメチオニン)。タンパク質中に存在する非標準アミノ酸は、タンパク質合成中の翻訳の後の修飾である翻訳後修飾により形成される。幾つかの非標準アミノ酸はタンパク質中には存在しない。具体例には、ランチオニン、2−アミノイソ酪酸、デヒドロアラニンおよび神経伝達物質ガンマ−アミノ酪酸(GABA)が含まれる。非標準アミノ酸は、しばしば、標準アミノ酸のための代謝経路における中間体として見出される。例えば、オルニチンおよびシトルリンは、アミノ酸異化の一部である尿素回路において見出される。
アミノ酸の側鎖はそれを弱酸または弱塩基にすることが可能であり、側鎖が極性であればアミノ酸は親水性になり、側鎖が無極性であればアミノ酸は疎水性になる。アミノ酸は、それらの側鎖の特性によって、無極性疎水性残基、極性を有するが非荷電の親水性残基、および極性荷電残基に分類されうる。20種の標準タンパク質形成性アミノ酸のうち、無極性疎水性残基には、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニンおよびメチオニンが含まれる。極性非荷電残基には、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインおよびトリプトファンが含まれる。極性荷電アミノ酸には、正荷電塩基性残基(リジン、アルギニンおよびヒスチジン)、および負荷電酸性残基(アスパラギン酸およびグルタミン酸)が含まれる。
本明細書中で用いる「アミノ酸残基またはそ(れら)の類似体」は、タンパク質形成性アミノ酸およびタンパク質非形成性アミノ酸の両方を含む、天然に存在するアミノ酸を含む。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によりコードされているアミノ酸、および後に翻訳後修飾された(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタマートおよびO−ホスホセリン)または本質的に天然に存在するアミノ酸である。天然アミノ酸残基に加えて、本発明の環状ペプチドに存在するアミノ酸残基または類似体は、天然に存在しないアミノ酸類似体または誘導体、例えば、天然に存在するアミノ酸に類似した様態で機能する合成アミノ酸誘導体およびアミノ酸模倣体をも含む。「アミノ酸残基または類似体」なる語は特に、アミノ酸残基のL型およびD型の両方を含む。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合した炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを意味する。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有しうるが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保有しうる。典型的には、本発明の環状ペプチドはL型およびD型の両方のタンパク質形成性または非タンパク質形成性残基および他のアミノ酸誘導体または類似体を含有する。
「類似体」または「誘導体」なる語は、本明細書においては、参照分子に構造的に類似しているが、参照分子の特定の置換基を代替置換基で置換することにより、標的化および制御された様態で修飾された分子を意味するものとして用いられる。参照分子と比較して、類似体は、同じ、類似した又は改善された有用性を示す、と当業者により予想されるであろう。改善された特性(例えば、標的分子に対する、より高い結合アフィニティ)を有する公知化合物の変異体を特定するための類似体の合成およびスクリーニングは製薬化学においてよく知られたアプローチである。
1以上の他の治療用物質と「組合された」投与は同時(並行的)投与および任意の順序の連続投与を含む。
「アテローム性動脈硬化症」は、動脈壁内部のアテローム性プラークの形成により引き起こされる動脈の硬化および/または狭窄により特徴づけられる状態を意味する。アテローム性プラークは以下の3つの成分に分けられる:(1)動脈の内腔に最も近いマクロファージから構成される、大きなプラークの中央部の柔らかい薄片状物質の結節性蓄積であるアテローム、(2)コレステロール結晶の下部領域、(3)より進行した病変の外側基部における石灰化。アテローム性動脈硬化症の指標には、例えば、動脈内のプラークの発生、スダンIV染色により判定されうるそれらの石灰化、または動脈内の泡沫細胞の発生が含まれる。動脈の狭窄は冠動脈形成術、超高速CT、または超音波により判定されうる。
「接触」なる語はその通常の意味を有し、2以上の物質(例えば、ポリペプチドまたは小分子化合物)を一緒にする(組合せる)こと、または物質と細胞とを一緒にする(組合せる)ことを意味する。接触は、例えば、試験管または他の容器内で2以上の物質を一緒にする或いは物質と細胞または細胞ライセートとを一緒にすることにより、インビトロで行われうる。接触は、例えば、2つのポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドの細胞内共発現により細胞において又は細胞ライセートにおいて2つのポリペプチドを接触させることにより、細胞内またはインシトゥ(in situ)でも行われうる。接触は、例えば、物質を対象に投与し、ついで意図される標的(例えば、組織または細胞)とそれを相互作用させることにより、対象の体内でも行われうる。
「心筋損傷」は心臓の筋肉組織に対する損傷を意味する。それは臨床病理学の観点から急性または非急性損傷でありうる。いずれの場合も、それは心臓組織への損傷を伴い、典型的には、構造的または保障的応答をもたらす。特に示されていない限り、本明細書中で用いる心筋損傷は、主として、急性心筋損傷、例えば急性心筋梗塞(心臓発作)および心臓虚血/再灌流を意味する。
急性心筋梗塞(AMIまたはMI)は、一般に心臓発作として公知であり、心臓の一部への血液供給が中断された場合に生じる病態である。生じる虚血または酸素不足が心臓組織の損傷および潜在的な死を引き起こす。
虚血は、一般に、血管における要因による血液供給の制限、およびそれに伴う、組織(例えば、心臓、肺および肝臓の組織)の損傷または機能不全である。再灌流損傷は、ある期間の虚血の後に血液供給が組織に戻った際に引き起こされる、組織への損傷を意味する。血液中の酸素および栄養素の不在がもたらす状態においては、循環の回復は、正常機能の回復ではなく、酸化的ストレスの誘導により炎症および酸化的損傷を引き起こす。
脳卒中は、脳の全部または一部への血液供給の中断による急速に進行する脳機能喪失を表す臨床用語である。血液供給の中断は罹患領域における酸素およびグルコースの枯渇をもたらす。これは直ちに神経機能を低下または破綻させ、そしてまた、ニューロンの死亡または重篤な損傷を引き起こして脳機能を更に損傷する虚血カスケードを開始させる。脳卒中は、例えば血栓症、塞栓症または出血により引き起こされうる。
治療の目的における「対象」なる語は、哺乳動物、例えばヒトおよび非ヒト哺乳動物として分類される任意の動物を意味する。非ヒト動物の例には、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどが含まれる。特に示されていない限り、「患者」または「対象」なる語は本明細書においては互換的に用いられる。好ましくは、対象はヒトである。
「治療する」または「軽減する」なる語は、疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、またはアテローム性動脈硬化症に関連した又はそれにより引き起こされる障害、例えば脳卒中または心筋機能障害)の症状、合併症または生化学的指標の開始を予防し又は遅延させて、該症状を軽減し、あるいは該疾患、状態または障害の更なる進行を阻止または抑制するための対象への化合物または物質の投与を含む。治療を要する対象には、該疾患または障害に既に罹患している者が含まれる。それらはまた、該障害を発生するリスクを有する者、例えば、閉塞事象のための介入の後でアテローム性動脈硬化症を発生するリスクを有する者を含む。治療は(該疾患の開始を予防し又は遅延させるため、あるいはその臨床的または潜在性症状の発現を予防するための)予防的抑制または軽減、あるいは該疾患の発現の後の症状の治療的抑制または軽減でありうる。アテローム性動脈硬化症に関連した又はそれにより引き起こされる疾患または障害の治療においては、治療用物質は疾患の病状を直接的に低減し、または他の治療用物質による治療に対して疾患をより感受性にしうる。
「治療有効量」は、治療利益を対象に付与するのに必要な活性物質の最小量を意味する。したがって、対象に投与される「治療的有効量」は、病的症状、疾患進行または障害に関連した生理的状態または障害に負けない抵抗性における改善を誘導し、改良し、または引き起こす量である。
アテローム性動脈硬化症により引き起こされる又はそれに関連した障害または疾患は、その発生の任意の段階(例えば、開始および進行)における重要な根底要因または発現症状としてアテローム性動脈硬化症を有する任意の臨床状態を意味する。これらは、高コレステロール血症(例えば、冠状動脈性心疾患)、アテローム性動脈硬化血管疾患(AVD)、例えば虚血性心疾患(例えば、狭心症および心筋梗塞)、脳血管疾患(例えば、脳卒中および一過性脳虚血発作)、動脈瘤、高血圧、血栓症、ならびに他の末梢血管疾患および間欠性跛行を広く包含しうる。
III.アテローム性動脈硬化症を治療するための環状ペプチド
高密度リポタンパク質(HDL)ナノ粒子は、血流からコレステロールを排除してアテローム性動脈硬化プラーク負荷を軽減する、脂質とタンパク質との複合体である。HDL粒子は、10個の両親媒性αヘリックスからなる243アミノ酸のタンパク質であるアポA−Iがリン脂質、コレステロールおよび他のタンパク質と相互作用する場合にインビボで形成される。アポA−Iの抗アテローム形成性は、アポA−Iまたは再構成HDL粒子の静脈内注入あるいはアポA−Iの過剰発現が保護作用を示すという観察により実証された。しかし、治療用物質としてアポA−I自体を使用することは実施可能となっていない。これは、現在の製造方法では、必要な大量のタンパク質(>3g/1回注入)が法外なコストを要するからである。また、アポA−Iは経口投与可能ではなく、したがって、静脈内投与経路はその一般的使用を制限する。
本発明は、アテローム性動脈硬化症および関連疾患または障害を治療または予防するために環状ペプチドを使用する治療方法を提供する。好ましくは、本発明の方法において使用される環状ペプチドは、HDLナノ粒子を形成するその活性において、アポA−Iを模倣しうる。本発明に適した幾つかの環状ペプチドの構造を明確に示すものとして、アポA−Iの構造的役割の幾つかが単一または二量体ヘリックスペプチドによっては容易には模倣されない可能性があることが挙げられる。例えば、アポA−Iは、コレステロールおよびトリグリセリドを欠損している小さな円盤状粒子から、コレステロール/トリグリセリドに富む、より大きな球状粒子への、HDL成熟の経過中に、種々の粒子サイズおよび形態に適合する。アポA−Iは、アポリポタンパク質解離、HDL粒子融合ならびに酵素および膜輸送体とのHDL相互作用を含むHDL代謝の中心でもある。むしろ、アポA−Iの構造および機能特性は超分子ペプチド構造によって有効に模倣されうると考えられた。そのような構造体は環境依存性動的自己集合による固有の構造的適合性を有するであろう。
c[wLwReQeR](配列番号1)(本明細書中に示される化合物1またはペプチド1)により例示されているとおり、本発明の環状ペプチドは平坦な輪状コンホメーションをとり、この場合、骨格アミド基は環の平面および側鎖に垂直に配向している。脂質膜上への吸着のような水素結合に有利な条件下、環状D,L−α−ペプチドは積み重なって、ナノチューブの外表面上にアミノ酸側鎖を有する中空βシート様管状構造を形成しうる。重要なことに、自己集合は可逆的であり、その結果、高度に動的な集合過程が生じる。自己集合ナノチューブ表面上の側鎖はαヘリックスにおける側鎖表示に対する一定の類似性を有する。ペプチドナノチューブにおける隣接側鎖間の距離(4.7〜5.1オングストロームのα炭素距離)はαヘリックスにおけるiおよびi+3残基間の距離(5.0〜5.3オングストロームのα炭素距離)に類似している。円盤状および球状HDL内のアポA−Iの構造モデルが、二重ベルトモチーフでリン脂質二重層に巻き付いた2つの並んだセグメントを含むことも、該ペプチドの設計に関連している。8残基の環状D,L−α−ペプチドから構築されるナノチューブは、HDLの状況におけるアポA−Iのヘリックス二量体トポロジーを有効に模倣するためには、適切な寸法および側鎖トポロジーをおそらく有するであろう。
本発明においては、動的HDLナノ粒子再構築によりHDLの形態および機能をモジュレーションしうる環状D,L−α−ペプチドから膜活性ナノチューブが作製されうる。本明細書中に詳細に記載されているとおり、そのような超分子アプローチで作製されうる化合物はマクロファージからのコレステロール流出を促進し、成熟HDLを新生脂質欠乏性HDLへと再構築するだけでなく、10週間の経口投与研究において高脂肪給餌低密度リポタンパク質受容体(LDLr)ヌルマウスにおけるアテローム性動脈硬化症病変を著しく低減した。
本発明の方法の実施において容易に使用または修飾されうる多数の環状ペプチドが存在する。典型的には、本発明において使用される環状ペプチドは自己集合性D,L−α−ペプチドであり、4〜約16個のアミノ酸残基またはそれらの類似体(医薬上許容される塩誘導体を含む)の配列を含む。典型的には、該環状ペプチドに存在するアミノ酸残基またはそれらの類似体は、該ペプチドの配列の一部または全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である。幾つかの実施形態においては、該環状ペプチドは約6〜約10または12個の交互に位置するD−およびL−α−アミノ酸を有する。他の実施形態においては、約6または8個の交互に位置するD−およびL−α−アミノ酸を有する環状ペプチドが使用される。好ましくは、該環状ペプチドのアミノ酸残基は、該ペプチドの配列全体に存在する交互に位置するD−およびL−残基である。そのようなペプチドの例は本明細書中の後記実施例に記載されている。本発明において使用されうる追加的な環状ペプチドは例えばPCT公開WO 95/10535、WO 03/092631およびWO 03/092632に記載されている。好ましくは、本発明において使用される環状ペプチドは、例えば赤血球の溶血により決定されうる、正常哺乳類細胞に対する望ましくない毒性を最低限度でしか又は全く有さない。
幾つかの好ましい実施形態においては、本発明の方法において使用される環状ペプチドはc[B−J−U1−X−U2−Z]の配列式に含まれる。この配列式においては、Bは、少なくとも2つの疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体を含む疎水性ペプチドセグメントである。Jは、正荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含有する部分である。また、U1およびU2の一方または両方は負荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含有する。U1およびU2に隣接するX部分またはセグメントは該環状ペプチドの極性面またはセグメントに相当し、典型的には、極性非荷電アミノ酸残基、His残基またはそれらの類似体を含有する。最後に、該環状ペプチドの配列式の末端におけるZ部分またはセグメントはAsn、Gln、荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含有する。
幾つかの実施形態においては、疎水性セグメントBは2、3、4、5、6または7個の疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体からなる。幾つかの好ましい実施形態においては、疎水性ペプチドセグメントは3個の疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体からなる。本発明の環状ペプチドの具体例を図1に示す[例えば、c[wLwReQeR](配列番号1)、c[wLwSeQsO](配列番号4)およびc[wLwSeQhK](配列番号40)]。図1に示されているこれらの特定のペプチドに加えて、該例示ペプチドの配列に対する保存的アミノ酸置換を有する誘導体ペプチドも本発明に含まれる。
本発明の治療用途における使用に適した幾つかの環状ペプチドは疎水性ペプチドセグメントTrp−Leu−Trp、Tyr−Leu−Tyr、Trp−Trp−TrpまたはPhe−Leu−Trpを含有する。幾つかの他のペプチドにおいては、該疎水性セグメントはエナンチオマートリペプチド、例えばTrp−Leu−Trp、Tyr−Leu−Tyr、Trp−Trp−TrpまたはPhe−Leu−Trpを含有する。本発明の幾つかの環状ペプチドにおいては、疎水性セグメントBに隣接するペプチド部分またはセグメントJは単一のセリン残基または単一の正荷電残基、例えばLys、Arg、His、Orn(オルニチン)、ジアミノ酪酸またはジアミノプロピオン酸である。幾つかの他の実施形態においては、Jはナフチルアラニン(Nal)、ホモロイシン(Hml)または2−アミノ−オクタン酸(Aoc)のようなアミノ酸類似体または誘導体である。本発明の幾つかの好ましい環状ペプチドにおいては、U1およびU2は、それぞれ独立して、Asp、GluまたはSer残基である。幾つかの実施形態においては、これらの2つの酸性または中性Ser残基は、該環状ペプチドの極性セグメントの中央に位置するAsnまたはGln残基(X)により分離されている。幾つかの好ましい実施形態においては、該環状ペプチドの配列の末端に正荷電天然または非天然残基(Z)、例えばLys,Arg、His、Orn(オルニチン)またはジアミノ酪酸が存在する。
本発明の幾つかの好ましい環状ペプチド化合物は、約8個の交互に位置するD−およびL−型のアミノ酸残基または(非天然)アミノ酸類似体を含む。これらのペプチドは、式c[wLw−J−u1−X−u2−Z]に該当する配列を有する。この配列式においては、「wLw」は、Trp−Leu−Trpからなるトリペプチドセグメントを示し、Jは正荷電アミノ酸残基またはアミノ酸類似体またはセリン残基であり、u1およびu2は、それぞれ独立して、Asp、GluまたはSer残基であり、XはAsnまたはGlnであり、ZはLys、Arg、Orn(オルニチン)またはジアミノ酪酸である。そのような環状ペプチドの具体例には、c[wLwReQeR](配列番号1)、c[wLwKdQeK](配列番号2)、c[wLwRdQeK](配列番号3)、c[wLwSeQsO](配列番号4)、c[wLwZeQeK](配列番号7)、c[wLwKdNdK](配列番号8)、c[wLwRdNdK](配列番号9)、c[wLwKdQdK](配列番号10)、c[wLwKeNeK](配列番号11)、c[wLwHeNeK](配列番号12)、c[wLwOeQeO](配列番号13)およびc[wLwOeNeO](配列番号19)に含まれる。
幾つかの他の実施形態においては、該環状ペプチドは、前記の交互に位置する正荷電および負荷電残基を含有しない。その代わりに、それらは全体的に例えば正荷電および/または非荷電残基から構成されうる。そのようなペプチドの一例はc[wLwKhShK](配列番号53)である。本明細書中の実施例に示されているとおり、そのようなペプチドは、本発明の治療方法に要求される抗アテローム性動脈硬化活性をも示しうる。
幾つかの他の実施形態においては、本発明の抗アテローム性動脈硬化活性を有する環状ペプチドの残基は、該ペプチドの配列の全体にわたって交互に存在するD−およびL−α−残基ではない。その代わりに、それらは、それらの配列の一部において、連続的なD−またはL−α−アミノ酸残基を有しうる。例えば、ペプチドc[WIWwkhkh](配列番号47)およびc[WIWrEqEr](配列番号50)は血漿プレ−ベータHDLの生成において優れた活性を有することが示された。そのようなペプチドの追加的な例を表1に示す。
幾つかの実施形態においては、本明細書に例示されている特定の環状ペプチド(例えば、図1および表1に示されているペプチド)の誘導体または類似体が使用されうる。例えば、該ペプチドはその残基の1以上においてアルキル化されうる。一例としては、2つの骨格アミド部分がメチル化された、ペプチドc[wLwReQeR](配列番号1)の誘導体である(Me)wLwR(Me)eQeR(配列番号46)は本発明に好適である。本明細書に示されているとおり、そのような誘導体ペプチドはアテローム性動脈硬化症病変の発生の予防において親化合物と同様に有効でありうる(図8)。
幾つかの実施形態においては、該環状ペプチドは、4個の疎水性残基からなる疎水性ペプチドセグメントを含有する。そのようなペプチドの例には、fWwYtRhS(配列番号51)およびfWwYqHhQ(配列番号5)が含まれる。表1に示されているとおり、そのようなペプチドはプレ−ベータHDLの生成の促進において優れた活性を有する。
IV.抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドおよび誘導体の合成
本発明に適した抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドはいずれかの通常の自動化または手動手動ペプチド合成法により製造されうる。自動ペプチド合成のための一般的原理および技術は当業者によく知られている。固相合成の例示プロトコルを後記実施例5に詳細に記載する。幾つかの実施形態においては、本発明の単離された、精製されたペプチドまたは変異体は、インビトロで、例えば、固相ペプチド合成法により、または酵素触媒ペプチド合成により、または組換えDNA技術を用いて合成されうる。固相ペプチド合成法は、確立された広範に用いられている方法であり、以下のような参考文献に記載されている:Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,W.H.Freeman Co.,San Francisco(1969);Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85 2149(1963);Meienhofer in “Hormonal Proteins and Peptides”,C.H.Li編,Vol.2(Academic Press,1973),pp.48−267;ならびにBavaayおよびMerrifield,“The Peptides”,E.GrossおよびF.Meienhofer編,Vol.2(Academic Press,1980)pp.3−285。種々の自動合成装置が商業的に入手可能であり、公知プロトコルに従い使用されうる。合成されたペプチドは免疫アフィニティまたはイオン交換カラム上の分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ上またはDEAEのような陰イオン交換樹脂上のクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、セファデックスG−75を使用するゲル濾過;リガンドアフィニティクロマトグラフィー;あるいは無極性溶媒または無極性/極性溶媒混合物からの結晶化または沈殿により更に精製されうる。結晶化または沈殿による精製が好ましい。
哺乳類細胞にとって望ましくない毒性をほとんど又は全く有さない高活性環状ペプチドを特定するために、個々の環状ペプチドまたは環状ペプチドのライブラリーを作製し、個々の環状ペプチドまたはそれらのライブラリーからの環状ペプチドを、当技術分野で公知のアッセイおよび技術を用いて、抗アテローム性動脈硬化活性および毒性に関してスクリーニングすることが可能である。例えば、ペプチドのライブラリーは、Lamら(97 Chem.Rev.411−448(1997))により提供される1ビーズ−1化合物法を用いて作製可能であり、あるいはFurkaら,(37 Int.J.Pept.Prot.Res.487−493(1991))の分割およびプール法によりマクロビーズ上で合成されうる。質量分析配列解析技術は、与えられたライブラリー内の全てのペプチドの迅速な特定を可能にする。Biemann,K.193 Methods Enzymol.455(1990)を参照されたい。一般に、ペプチド環化を含む合成操作は、面倒で自動化困難な液相操作を避けるために固体支持体上で行われる。更に、該合成計画の最終生成物は一般に、面倒な精製操作を行わなくても生物学的アッセイに十分な程度に純粋である。各合成からのペプチド収率は、50〜100個のアッセイを行うのに十分なものでありうる。高い活性を有するペプチド配列を特定するために、および低い活性を有するペプチド配列を廃棄するために、迅速な自動質量分析ベースペプチド配列分析が行われうる。
用いられる合成アプローチは、コンビナトリアルライブラリー混合物および面倒なデコンボリューション技術の使用を避けるために、個別に分離可能で特定可能なペプチド配列を提供しうる。しかし、ペプチドの不純混合物のライブラリーも試験のために作製されうる。ペプチドの不純調製物は配列の組合せの迅速なスクリーニングのために使用されうる。ペプチドの混合物が活性を示す場合には、該混合物中のペプチドを個別に単離し、試験することが可能であり、あるいは、不純混合物中に存在することが知られている配列を有する純粋なペプチドを個別に製造し、試験することが可能である。
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている環状ペプチド(例えば、図1および表1に示されている化合物)は、類似特性または改善された特性を有する誘導体または類似体化合物を特定するために、骨格のアルキル化により修飾されうる。本出願における図7および8において化合物1(配列番号1)および化合物1のメチル化誘導体(配列番号46)に関して例示されているとおり、該アルキル化誘導体は、アテローム性動脈硬化症病変の発生の予防において、それらの親化合物と同様に有効でありうる。一方、環状D,L−アルファペプチドにおける骨格アルキル化はナノチューブの形成を妨げ、そしてまた、該ペプチドの経口生物学的利用能を改善しうる。
幾つかの実施形態においては、本発明のペプチドまたはペプチド変異体のカルボキシル基の塩は、1当量以上の所望の塩基、例えば水酸化金属塩基、例えば水酸化ナトリウム;炭酸金属または炭酸水素金属塩基、例えば炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム;あるいはアミン塩基、例えばトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどと該ペプチドを接触させることにより、通常の方法で製造されうる。
該ペプチドまたはペプチド変異体のアミノ基のN−アシル誘導体は、最終的な縮合のためにN−アシル保護アミノ酸を利用することにより、または保護もしくは非保護ペプチドをアシル化することにより製造されうる。O−アシル誘導体は、例えば、遊離ヒドロキシペプチドまたはペプチド樹脂のアシル化により製造されうる。いずれのアシル化も、標準的なアシル化試薬、例えばアシルハリド、無水物、アシルイミダゾールなどを使用して行われうる。N−アシル化およびO−アシル化の両方は、所望により、一緒に行われうる。
該ペプチドまたは変異体ペプチドの、あるいは該ペプチドまたは変異体ペプチドのアミノ残基の酸付加塩は、該ペプチドまたはアミンを1当量以上の所望の無機または有機酸、例えば塩酸と接触させることにより製造されうる。該ペプチドのカルボキシル基のエステルも、当技術分野で公知の通常方法のいずれかにより製造されうる。
本明細書中に例示されている環状ペプチドを使用して、本発明は、改善された特性を有する新規抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチド、類似体または誘導体を特定する方法を提供する。創薬プロセスにおける重要な工程は、化学類似体計画が基盤とする適当なリード化学的鋳型の選択である。与えられた分子標的に関するリード化学的鋳型の特定方法は、典型的には、多数の(しばしば100,000個を超える)化合物を機能アッセイにおいてスクリーニングし、活性を確認するための二次試験における試験のための何らかの任意活性閾値に基づいてサブセットを選択し、ついで化学的加工操作の適合性に関して残りの活性化合物を評価することを含む。
本明細書に記載されている環状ペプチド、例えば、図1および表1に示されている化合物は、改善された生物学的または薬学的特性を有する関連化合物を探索するためのリード化合物を提供する。本発明のスクリーニング方法は、典型的には、環状ペプチドの類似体、誘導体または変異体を合成することを含む。しばしば、与えられた環状ペプチドの構造類似体のライブラリーがスクリーニングのために作製される。これらの抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドの化学的骨格から類似体または誘導体を合成するためには、通常に実施されている有機化学合成の方法が要求されるに過ぎない。例えば、既知化合物の化学的類似体のコンビナトリアルライブラリーは、WO 95/12608、WO 93/06121、WO 94/08051、WO 95/35503およびWO 95/30642に記載されているとおり、コード化合成ライブラリー(ESL)法により作製されうる。また、種々の化合物の類似体を合成するための典型的方法は、例えば、Overman,Organic Reactions,Volumes 1−62,Wiley−Interscience(2003);Broomら,Fed Proc.45:2779−83,1986;Ben−Menahemら,Recent Prog Horm Res.54:271−88,1999;Schrammら,Annu.Rev.Biochem.67:693−720,1998;Bolinら,Biopolymers 37:57−66,1995;Kartenら,Endocr Rev.7:44−66,1986;Hoら,Tactics of Organic Synthesis,Wiley−Interscience;(1994);およびScheitら,Nucleotide Analogs:Synthesis and Biological Function,John Wiley & Sons(1980)に記載されている。
リード抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドの候補構造類似体を合成したら、ついで、該類似体または変異体が由来する環状ペプチドの場合と比較して改善された生物学的特性を有する類似体または誘導体の1つを特定するために、機能アッセイを行う。幾つかの実施形態においては、マクロファージ細胞および再構築成熟高密度リポタンパク質(HDL)粒子から新生脂質欠乏性HDLへのコレステロール流出を促進する候補ペプチドの能力をアッセイすることにより、機能アッセイを行うことが可能である。これは、本明細書中の実施例に例示されているとおり、インビトロおよびインビボで行われうる。また、候補ペプチドの抗アテローム性動脈硬化活性の改善は、本明細書中の実施例に示されているとおり、候補ペプチドが投与された実験動物(例えば、マウス)の総血漿コレステロールレベルをモニタリングすることによっても調べられうる。幾つかの実施形態においては、本発明の環状ペプチドの構造類似化合物が、薬物動態特性、例えばインビボ半減期の改善に関してスクリーニングされうる。そのような改善された特性を有する化合物は、種々の治療用途に、より好適でありうる。環状ペプチド類似体の改善された薬学的特性は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000に記載されているような方法を用いてアッセイされうる。
V.抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドの治療用途
本明細書に開示されている環状ペプチドは、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症により引き起こされる若しくはそれに関連した障害を治療または予防するための種々の予防または治療用途において使用されうる。関連用途は、対象における総コレステロールレベルを低下させるため、LDLレベルおよび/またはVLDLレベルを低下させるため、あるいはHDLレベルを上昇させるための、これらのペプチドの使用を含む。アテローム性動脈硬化症は多数の疾患または障害の根本要因または寄与要因である。アテローム性動脈硬化症は全動脈樹に影響を及ぼすが、大抵は、大きな高血圧血管、例えば冠状動脈、腎動脈、大腿動脈、脳動脈および頸動脈に影響を及ぼす。これらは臨床的に沈黙していると言われている。なぜなら、梗塞を有する者は問題に気付かず、医学的な助けを求めず、あるいは彼らがそうしたとしても、生じていることに医師が気付かないからである。進行したアテローム性動脈硬化症の合併症は慢性であり、ゆっくり進行し、累積的である。最も一般的には、軟弱なプラークが急に破裂して(不安定プラークを参照されたい)、血栓の形成を引き起こし、これは血流を迅速に遅くし又は停止させ、動脈により供給される組織の死を約5分後に招く。この致命的事象は梗塞と称される。最も一般的な認識されているシナリオの1つは、心筋梗塞(心臓発作)を引き起こす、冠状動脈の冠状動脈血栓症である。脳への動脈における同じプロセスは一般に脳卒中と称される。非常に進行した疾患におけるもう1つの一般的なシナリオは、血栓で狭くなった動脈瘤セグメントと狭窄との両方の組合せにより典型的に引き起こされる、脚部への不十分な血液供給から生じる跛行である。
前記のとおり、本発明を実施するために、種々の環状ペプチドが使用され、および/または修飾されうる。そのようなペプチドの例は本明細書中の後記実施例に記載されている。幾つかの好ましい実施形態においては、本発明の治療方法において使用される環状ペプチドは、前記のとおり、c[B−J−U1−X−U2−Z]の配列式を有する。例えば、本出願における図1に示されている多数の環状ペプチドが本発明の実施において使用されうる。そのような環状ペプチドの具体例には、c[wLwReQeR](配列番号1)、c[wLwKdQeK](配列番号2)、c[wLwRdQeK](配列番号3)、c[wLwSeQsO](配列番号4)、c[wLwZeQeK](配列番号7)、c[wLwKdNdK](配列番号8)、c[wLwRdNdK](配列番号9)、c[wLwKdQdK](配列番号10)、c[wLwKeNeK](配列番号11)、c[wLwHeNeK](配列番号12)、c[wLwOeQeO](配列番号13)およびc[wLwOeNeO](配列番号19)が含まれる。本発明の治療用途に適した環状ペプチドの他の例には、c[fWwYqHhQ](配列番号5)、c[wLwSeQhK](配列番号40)、c[wLwKhShK](配列番号53)、c[(Me)wLwR(Me)eQeR](配列番号46)、c[WIWwkhkh](配列番号47)、c[WIWrEqEr](配列番号50)、c[fWwYtRhS](配列番号51),c[wFyYhOrS](配列番号48)、c[(PA)wLlHsKk](配列番号49)、c[wFfYrHhS](配列番号52)およびc[WIWwKhKh](配列番号82)が含まれる。本発明の実施において使用されうる追加的な環状ペプチドが表1に列挙されている。
本発明の幾つかの実施形態は、対象における高コレステロール血症を予防/治療するための、HDLレベルを上昇させるための、または(例えば、LDLおよび/またはVLDLレベルを低下させることにより)血漿コレステロールレベルを低下させるための、本明細書に記載されている抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドの使用に関する。幾つかの実施形態においては、本発明の環状ペプチドは、アテローム性動脈硬化症に関連した他の疾患、例えば心血管障害の発生を予防するために又は進行を逆転させるために使用される。幾つかの好ましい実施形態においては、本発明のこれらの治療用途は、c[wLwReQeR](配列番号1)、c[wLwKdQeK](配列番号2)、c[wLwRdQeK](配列番号3)、c[wLwSeQsO](配列番号4)、c[fWwYqHhQ](配列番号5)、c[LwLwLrKe](配列番号6)、c[wLwZeQeK](配列番号7)、c[wLwKdNdK](配列番号8)、c[wLwRdNdK](配列番号9)、c[wLwKdQdK](配列番号10)、c[wLwKeNeK](配列番号11)、c[wLwHeNeK](配列番号12)、c[wLwSeQhK](配列番号40)、c[wLwKhShK](配列番号53)、c[(Me)wLwR(Me)eQeR](配列番号46)、c[WIWwkhkh](配列番号47)およびc[WIWrEqEr](配列番号50)、c[fWwYtRhS](配列番号51)、c[wFyYhOrS](配列番号48)、c[(PA)wLlHsKk](配列番号49)、c[wFfYrHhS](配列番号52)およびc[WIWwKhKh](配列番号82)から選択される環状ペプチドを使用する。後記実施例に示されているとおり、これらの化合物は、総血漿コレステロールレベルを実質的に低下させ(LDL/VLDLレベルを低下させ)、HDLの生成を促進し、アテローム性動脈硬化症病変の発生を抑制しうる。
典型的には、本発明の治療または予防方法は、本発明の抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチド(例えば、図1に示されている化合物1または4)を、治療を要する対象に投与することを含む。本発明の方法は、アテローム性動脈硬化症により引き起こされる又はそれに関連したいずれかの疾患または障害を有すると診断された対象に投与されうる。これらは、アテローム性動脈硬化性血管疾患、例えば動脈瘤、脳卒中、無症候性冠状動脈疾患、心筋壊死を伴わない慢性虚血障害、例えば安定または労作性狭心症;心筋壊死を伴わない急性虚血障害、例えば不安定狭心症;および虚血障害、例えば心筋梗塞を含むいずれかの冠状動脈障害または血管障害でありうる。
本発明の抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドは医薬組成物の形態で投与されうる。後記で詳細に説明するとおり、医薬組成物は該抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドの治療的有効量を含有する。該抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドに加えて、該医薬組成物は、典型的に、医薬上許容される担体または賦形剤をも含有する。
アテローム性動脈硬化症をより良好に治療し、またはアテローム性動脈硬化症の進行を抑制するために、該抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドは、アテローム性動脈硬化プラーク形成を遅くしうる他の公知薬物、例えばCRESTOR(登録商標)(ロスバスタチンカルシウム)と組合せて使用されうる。本発明の抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドはまた、他の心血管または代謝障害、例えば高血圧、高脂血症、脂質異常、糖尿病、あるいはコレステロール逆輸送の増強および/またはLDL:HDL比の改善が潜在的に臨床的に有益であるいずれかの状態の治療において有用な他の治療用物質とも組合されうる。そのような治療用物質の例には、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル−CoAレダクターゼ(HMG CoAレダクターゼ)のインヒビター(例えば、アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチンなど)、コレステロール吸収インヒビター(例えば、エゼチミブ)、胆汁酸金属イオン封鎖剤(例えば、コレスチラミン)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)インヒビター、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体モジュレーター(例えば、ムラグリタザール、ロシグリタゾン、フィブラートなど)、コレステロールエステル輸送タンパク質インヒビター、ニコチン酸誘導体(例えば、Niaspan(登録商標))、アシル補酵素A:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)インヒビター(例えば、エフルシミブ)、ファルネソイドX受容体モジュレーター、メタボリックシンドロームまたは2型糖尿病の治療に使用される療法(例えば、メトホルミン)が含まれる。本発明の化合物は抗炎症療法(例えば、アスピリン)および神経変性疾患に対する治療(例えば、アリセプト(登録商標)、エクセロン(登録商標)、レミニル(登録商標)およびエビキサ(登録商標))と組合されうる。
VI.医薬の組合せおよび投与方法
抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチド(例えば、図1および表1に示されている化合物)および本明細書に開示されているその他の治療用物質は、治療に要する対象に直接的に投与されうる。しかし、これらの治療用化合物は、好ましくは、該環状ペプチドおよび/または他の活性物質を医薬上許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤と共に単位投与形中に含む医薬組成物中で対象に投与される。したがって、本発明は、本明細書に開示されている抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドの1以上を含む医薬組成物を提供する。本発明はまた、アテローム性動脈硬化症により引き起こされる又はそれに関連した前記疾患または医学的障害を治療または予防するための医薬組成物または医薬の製造における、これらの環状ペプチドの使用を提供する。
医薬上許容される担体は生物学的に又は別の様態で不都合でない物質である。これらの物質は、いずれの望ましくない生物学的効果をも引き起こすことなく、また、医薬組成物の成分のいずれとも有害な様態で相互作用することなく、抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドと共に対象に投与されうる。該組成物は更に、アテローム性動脈硬化症の治療もしくは予防または関連症状の改善に適した他の治療用物質(例えば、コレステロール低下物質)を含有しうる。医薬担体は該組成物を強化または安定化し、あるいは該組成物の製造を促進する。医薬上許容される担体には、生理的に適合性である溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。使用される医薬上許容される担体は、本明細書に記載されている種々の投与経路に適したものであるべきである。適当な医薬上許容される担体を選択するための追加的な指針は当技術分野において提供されており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000に記載されている。
本明細書に記載されている抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドおよび/または他の治療用物質を含有する医薬組成物は、当技術分野で公知の種々の方法により、例えば、後記実施例に例示されている経口投与により投与されうる。投与の経路および/または方法は所望の結果によって様々である。投与経路に応じて、活性な治療用物質は、酸の作用および該物質を不活性化しうる他の天然条件から該化合物を保護するための物質でコーティングされうる。そのような組成物を対象に投与するための適当な製剤を得るためには、通常の医薬慣例が用いられうる。任意の適当な投与経路が用いられうる。これらには、限定的なものではないが、経口、静脈内、非経口、経皮、皮下、腹腔内、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、心室内、嚢内および脊髄内投与が含まれる。治療されるべき対象の具体的な状態に応じて、治療用物質の全身または局所運搬が治療において用いられうる。
幾つかの実施形態においては、意図される治療効果を得るためには、環状ペプチドの局所投与が望ましいであろう。治療用物質または製剤の局所運搬の多数の方法が本発明の実施において用いられうる。例えば、対象における所望の心筋への環状ペプチドの局所投与は、経皮経路により、治療用心臓カテーテルにより、心膜内注射または注入により、あるいは直接心臓内筋肉注射により達成されうる。適当な方法には、治療用物質が心臓に局所適用されることを可能にするいずれかの他の経路も含まれる。例えば、該治療用物質は、冠状動脈または静脈を経て心臓表面上へと、あるいは心室または心房壁を経て心臓表面上へと、心臓内に直接的に配置されることにより、血流から適用されうる。該治療用物質はまた、広範囲の術野の露出中の直接適用より、あるいは例えば心膜開窓術または心臓開口による最小侵襲性露出中の直接適用により適用されうる。
本発明の医薬組成物は、当技術分野でよく知られており通常に実施されている方法に従い製造されうる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000;およびSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson編,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。医薬組成物は、好ましくは、GMP条件下で製造される。非経口投与用製剤は、例えば、賦形剤、無菌水または塩類液、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、植物由来の油、または水素化ナフタレンを含有しうる。生体適合性生分解性ラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体が、化合物の放出を制御するために使用されうる。本発明の分子のための他の潜在的に有用な非経口運搬系には、エチレン−酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入系およびリポソームが含まれる。吸入用製剤は、賦形剤、例えばラクトースを含有することが可能であり、あるいは例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココラートおよびデオキシコラートを含有する水溶液であることが可能であり、あるいは点鼻剤の形態またはゲル剤として投与するための油性溶液であることが可能である。
本発明の方法における使用のための環状ペプチドは、所望の治療効果(例えば、望ましくない免疫応答に関連した症状の排除または改善)をそれを要する対象において達成するのに十分な量で対象に投与されるべきである。典型的には、該環状ペプチドの治療的有効量または有効用量が本発明の医薬組成物において使用される。本発明の医薬組成物における有効成分の実際の投与量レベルは、対象に毒性となることなく、個々の対象、組成物および投与様式に関する所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量が得られるように変動しうる。選択された投与量レベルは、使用される本発明の個々の組成物の活性、投与経路、投与の時間、および使用される個々の化合物の排泄速度を含む種々の薬物動態的要因に左右される。それは治療の継続時間、使用される個々の組成物と組合せて使用される他の薬物、化合物および/または物質、治療される対象の年齢、性別、体重、状態、全身健康状態および過去の病歴などの要因にも左右される。最適投与量を決定するための方法は当技術分野において記載されており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000に記載されている。典型的には、医薬上有効な投与量は、治療されるべき対象の体重1kg当たり約0.001〜100mgであろう。
本明細書に記載されている抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドおよび他の治療レジメンは、通常、複数回、対象に投与される。単一投与間の間隔は毎日、毎週、毎月または毎年でありうる。また、対象において使用される抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドおよびその他の治療用物質の血液レベルを測定することにより示されるとおりに、間隔は不規則でありうる。幾つかの方法においては、投与量は、1〜1000μg/ml、幾つかの方法においては25〜300μg/mlまたは10〜100μg/mlの血漿化合物濃度を得るために調節される。あるいは、該治療用物質は徐放製剤として投与可能であり、この場合、より少ない頻度の投与で十分である。投与量および頻度は対象における抗アテローム性動脈硬化性環状ペプチドおよびその他の薬物の半減期によって変動する。投与量および投与頻度は、治療が予防用であるか治療用であるかによって変動しうる。予防用途においては、比較的低い投与量が比較的低頻度の間隔で長期にわたって投与される。生涯にわたって治療を受け続けうる対象もある。治療用途においては、疾患の進行が低下または停止するまで、好ましくは、対象が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投与量が要求されることがある。ついで対象に予防用レジメンが投与されうる。
幾つかの関連実施形態においては、本発明は、アテローム性動脈硬化症を治療または予防するためのパッケージ化医薬組成物、例えばキットまたは他の容器を提供する。該キットまたは容器は、アテローム性動脈硬化症を治療するための医薬組成物の治療的有効量、そして所望により、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症により引き起こされる若しくはそれに関連した他の疾患を治療するための該医薬組成物の使用方法を詳記した説明書を含有する。該キット内の医薬組成物は、アテローム性動脈硬化症の治療をもたらす治療的有効量の本発明の環状ペプチドの少なくとも1つを含有する。
図1は、インビトロでヒト血漿中の脂質欠乏性HDLのレベルを上昇させる有効性に従ってランク付けされた環状D,L−α−ペプチドの相対活性を示す。脂質欠乏性HDL粒子はコレステロール逆輸送の中心的初期受容体である。ペプチドを360μMにおいて10% スクロース/HOストックからスクリーニングした。ペプチド4Fを陽性対照として使用した。個々のブロットからのデータを、該10% スクロースおよび4Fサンプルを使用することによりランク付けのために正規化した。全パネルの分析を完了させるのに要した4つのゲルのそれぞれに含まれたペプチドに関して、SDを表す誤差棒が示されている。大文字はL−アミノ酸を表し、小文字はD−アミノ酸を表す。上付き文字MeはN−メチル化アミノ酸を示す。略語:AOC,2−アミノ−オクタン酸;Hml,ホモロイシン;Nal,ナフチルアラニン;O,オルニチン;X,ジアミノ酪酸;Z,ジアミノプロピオン酸。該ペプチドの化合物番号とそれぞれ同一である該ペプチドの配列番号がこの図に記載されている。 図2A〜2Bは、環状D,L−α−ペプチドがインビトロで血漿HDL再構築およびコレステロール流出を促進することを示している。(A)選択された環状D,L−α−ペプチドは、ヒト血漿HDL粒子を再構築することにより脂質欠乏性HDLのレベルを上昇させた。使用されたペプチド化合物は1(配列番号1)、3(配列番号3)、45(配列番号45)、14(配列番号)および4(配列番号4)である。該ペプチドを0.4、0.2および0.1mg/ml(〜360、180および90μΜ)でアッセイした。ペプチド4Fを0.1mg/ml(43μΜ)で陽性対照として使用した。「水」および「10%ショ糖」レーンは陰性対照である。脂質欠乏性HDL(サイズは〜7nm)はコレステロール逆輸送におけるコレステロールの中心的初期受容体である。「O」はオルニチンを示す。(B)選択された環状D,L−α−ペプチドはインビトロで細胞コレステロール流出を促進した。この図においては、各化合物に関して同一である化合物番号およびそれらの配列番号が化合物配列のそれぞれの後の括弧内に示されている。左パネルにおける全化合物をヒト血漿中で0.3mg/ml(〜270μΜ 環状ペプチド)でアッセイした。2% アポB枯渇血漿サンプルと共に4時間インキュベートされたマウスマクロファージJ774細胞から、流出を測定した。値は四重重複実験におけるサンプルの平均±SDとして示されており、0% 流出としてのビヒクル処理血漿サンプルと比較して示されている。 図3A〜3Dは、インビボにおいて環状D,L−α−ペプチド1(配列番号1)が血漿HDLを再構築し、血漿コレステロールを低下させ、アテローム性動脈硬化症病変の発生を予防することを示している。(A)マウスのアポA−Iに関するウエスタンブロット法による判定で、ペプチド1は、雄BALB/cマウス(n=3)への腹腔内注射(20mg/kg)の後、脂質欠乏性HDLのレベル(〜7.3nm)を上昇させた。(B)2週間の予備研究において、経口投与されたペプチド1は、ビヒクル対照と比較して総血漿コレステロールを55%低下させた。高脂肪食で維持された雌LDLr−ヌルマウスに、飲料水を自由に摂取させて、1%スクロース/PBS中の該ペプチド(n=8)または1%スクロース/PBSのみ(n=8)を投与した。マウス当たりのペプチドの1日量は〜0.5mg(〜25mg/kg/日)であった。(C、D)高脂肪摂取雌LDLr−ヌルマウスへの任意摂取の飲料水中での10日間の経口投与の後、ペプチド1は総血漿コレステロール、総大動脈病変面積および大動脈洞病変体積を減少させることが判明した(代表的な大動脈洞イメージに関してはパネルdを参照されたい)。全プロットは平均±SDを伴う散布図として示されている。p値はスチューデント独立両側t検定により決定された。 図4A〜4Cは、HPLC/MS SIMを用いることにより測定された、マウスにおける環状D,L−α−ペプチドc[wLwReQeR](ペプチド1;配列番号1)の薬物動態を示す。(A)16mg/kgの腹腔内投与の後の雄BALB/cマウス(n=3)における該ペプチドに関する薬物動態プロファイル。データは平均±SDとして示されている。(B)マウス血漿中の0μM、1μM(検出下限)および6μMの環状ペプチド濃度におけるイオン592.8([M+2H]2+)に関する代表的なMS選択イオントレース。4.4分のピークが該環状ペプチドに対応する。(C)マウス血漿中の環状ペプチドの代表的検量線。 図5A〜5Bは、ビヒクルまたは経口(飲料水)環状D,L−α−ペプチドc[wLwReQeR](配列番号1)(高用量,〜25mg/kg/日)で2週間処理されたLDLr−/−マウスに関するリポタンパク質プロファイル分析を示す。(A)各群内の8匹のマウスからのプール化血漿をFPLCにより分画した。得られたリポタンパク質プロファイルは、該環状ペプチド群に関して観察された総コレステロール低下の大部分がVLDLおよびLDLのレベルの低下によるものであることを示した。HDLレベルは両群で同等であるが、該環状ペプチド処理群におけるHDL粒子は、PBS対照と比較して、より小さい(より後で溶出する)粒子への僅かなシフトを示している。(B)FPLC分画からの各画分におけるコレステロールレベルを測定した。その結果、血漿総コレステロールは大部分がVLDLの低下に起因することが確認された。挿入図は、該分画のHDL領域から選択された画分のウエスタンブロット(マウスアポA−Iに関してブロットされたもの)を示す。 図6は給餌および環状D,L−α−ペプチド処理計画を示す。雌LDLr−/−マウスを3群(各群8匹)に分けた。群Iには、ビヒクル対照として、1%スクロースを含有するPBSを投与し、群IIおよびIIIには、それぞれ、1%スクロースを含有するPBS中の高用量(〜25mg/kg/日)および低用量(〜2.5mg/kg/日)の環状ペプチドc[wLwReQeR](配列番号1)を、それらの飲料水として10週間投与した。 図7は、幾つかのペプチドの経口投与がマウスにおける血漿コレステロールレベルを有意に低下させうることを示している。本研究において使用した環状ペプチドはwLwReQeR(配列番号1)、wLwSeQhK(配列番号40)、wLwKhShK(配列番号53)、(Me)wLwR(Me)eQeR(配列番号46)、wLwKeNeK(配列番号11)、wL(Me)wSeQ(Me)sO(配列番号14)、wLwKdQeK(配列番号2)、fWwYqHhQ(配列番号5)およびwLwLeK(配列番号81)である。 図8は、幾つかのペプチドの経口投与がマウスにおけるアテローム性動脈硬化症病変の発生を低減しうることを示している。本研究において使用した環状ペプチドはwLwReQeR(配列番号1)、wLwSeQhK(配列番号40)、(Me)wLwR(Me)eQeR(配列番号46)およびwLwKhShK(配列番号53)である。 図9は、選択された環状ペプチドのインビボHDL再構築活性を示す。本研究において使用した環状ペプチドはWIWwKhKh(配列番号82)およびwLwKhShK(配列番号53)である。
実施例
以下の実施例は、本発明を更に詳しく例示するために記載されており、その範囲を限定するものではない。本発明の他の変型は当業者に容易に理解され、添付の特許請求の範囲に含まれる。
実施例1 環状D,L−α−ペプチドの設計、合成およびスクリーニング
本発明者らはペプチドの設計、合成およびスクリーニングの幾つかの反復を行った。一般に、ペプチド配列(図1に示されている)の幾つかを、血漿アポリポタンパク質を特徴づけるクラスA αヘリックスにおいて見られるものに類似した電荷分布を有するように設計した。クラスA αヘリックスは両親媒性構造を有し、それにおいては、カチオン残基は極性/無極性境界に密集しており、アニオン残基は極性領域の中央付近に存在する。したがって、本発明者らのパネルにおける環状D,L−α−ペプチドは一般に、極性/無極性境界付近にカチオン性Arg、Lys、Orn(O)、ジアミノ酪酸またはジアミノプロピオン酸残基を含有し、極性面の中央部に負荷電AspまたはGlu残基を含有する。環状D,L−α−ペプチドの推定作用メカニズムはナノチューブ複合体へのペプチド自己集合および膜挿入を含み、一方、通常のアポA−I模倣ペプチドは、膜内で機能するためにはαヘリックスへとフォールディングする。
実施例2 血漿HDL再構築およびコレステロール流出の促進
研究の初期段階として、本発明者らは、成熟ヒト血漿HDLを脂質欠乏性HDLへと再構築する本発明者らの環状D,L−α−ペプチドのインビトロ有効性を評価した(図1および図2a)。脂質欠乏性HDL粒子はコレステロール逆輸送におけるコレステロールの中心的受容体であり、したがって、アテローム性動脈硬化症に対処するために決定的に重要である。実際、ヒト血清のコレステロール流出能力に関しては、脂質欠乏性HDLのレベルはHDL−コレステロールまたはアポA−Iのレベルより遥かに良く相関する。簡潔に説明すると、本発明者らのアッセイは、ヒト血漿をペプチドと共にインキュベートし、ついで該血漿サンプルを非変性勾配ゲル電気泳動(NDGGE)に付して、HDL亜種を分離し、ついでヒトアポA−Iに対して免疫ブロットすることを含むものであった。脂質欠乏性HDLの形成の促進における環状D,L−α−ペプチドのランク付けされた活性を図1に示す。電気泳動転移、染色および濃度定量に関連した固有の変動性が存在し、したがって、ペプチドのランク付けは相対血漿HDL再構築効果の大雑把な目安とみなされべきであることに注目すべきである。それでも、該ランク付けは、10%スクロース/HO中で調製されたペプチドストック溶液(図1および2a)または1:1 DMSO/HO中で調製されたペプチドストック溶液のいずれを使用することによりパネルがアッセイされたかには無関係に、全体的に類似していた。これらの予備的構造活性関係(SAR)研究から、本発明者らは効率的血漿HDL再構築に対する顕著な配列依存性を確認した(後記参照)。
選択された環状D,L−α−ペプチドを、マウスマクロファージJ774細胞からの細胞コレステロール流出を促進するそれらの能力に関して更に評価した。HDL抗アテローム形成性の主要因は、細胞コレステロール流出が決定的構成要素であるコレステロール逆輸送におけるその役割である。環状D,L−α−ペプチドにより引き起こされる流出を測定するために、コレステロール負荷細胞をペプチド処理血漿と共に4時間インキュベートし、ついで、培地に流出したコレステロールのレベルを、Sankaranarayananら,J.Lipid Res.52,2332−2340,2011に記載されているとおりに測定した。該環状D,L−α−ペプチドは、ビヒクル対照と比較してコレステロール流出を顕著に促進し、ペプチド1は明らかな濃度依存性を示した(図2b)。環状D,L−α−ペプチド1および4は、同じmg/mL濃度におけるコレステロール流出の促進において、αヘリックスアポA−I模倣体4Fより辛うじて低い有効性を示し、細胞形態学的特徴および密度に基づけば、毒性ではないようであった。
実施例3 構造−活性相関
該活性環状D,L−α−ペプチドの精査は、それらが疎水性Trp−Leu−Trp(wLw)セグメントおよび該疎水性面に隣接した正荷電または中性Ser残基を有する両親媒性トポロジーを有することを示している。各活性化合物は、負荷電またはSer残基に隣接した、極性面の中央部のAsnまたはGln残基を含有する。観察された電荷分布は血漿再構築活性のために必要であったが、十分ではなかった。親水性または疎水性面における僅かなアミノ酸変化は該環状D,L−α−ペプチドのHDL再構築効率に劇的な影響を及ぼした。例えば、c[wLwSeQsO](配列番号4)とc[wLwSeQsK](配列番号30)との、またはc[wLwZeQeK](配列番号7)とc[wLwHeQeK](配列番号44)(Z=ジアミノプロピオン酸)との活性における相違を比較されたい(図1)。同様に、c[wLwReQeR](配列番号1)は、Leu残基をナフチルアラニン(Nal)(化合物28)、ホモロイシン(化合物29)、2−アミノ−オクタン酸(Aoc)(化合物31)またはTrp(化合物41)で置換することにより更に疎水性になるように設計された4つの類似体のどれよりも相当に活性であった(図1)。これらの観察は、膜活性抗微生物性環状ペプチドナノチューブでの本発明者らの従来の研究と合致しており、それにおいては、ペプチド単量体レベルでのアミノ酸配列における一見小さな相違がナノチューブへのペプチド自己集合および多価側鎖提示への拡大により著しく増幅された。最後に、本発明者らはペプチドc[wLwErQrE](配列番号37)を製造し、アッセイした。該ペプチドにおいては、アニオン残基を極性/無極性境界に配置することにより、荷電残基のパターンが、化合物1(およびその他の活性配列)の場合と比較して交換されている。注目すべきことに、化合物37の血漿HDL再構築およびコレステロール流出活性は、同じアミノ酸を有するにもかかわらず、化合物1の場合と比較して劇的に低下した(図1および2b)。このことは、特定された電荷分布が機能的に重要であることを裏付けた。
観察されたアポA−I模倣体特性に要求されるメカニズム的特徴に対する更なる洞察を得るために、活性環状D,L−α−ペプチドの幾つかの誘導体を合成し、アッセイした。アセチル化直鎖状ペプチドAc−wLwSeQsO−NH(配列番号45)を製造することにより、環状構造が活性に要求されることを確認した。該直鎖状ペプチドは、両親媒性を保有しているにもかかわらず、血漿HDLを再構築せず、また、コレステロール流出を促進しない(図2aおよび2b)。同様に、本発明者らはまた、環状骨格N−メチル化類似体c[wLMewSeQMesO](配列番号14)を製造することにより、ペプチド自己集合が活性に要求されるかどうかを調べた。そのような骨格メチル化は、該ペプチドの1つの面がサブユニット間で水素結合できなくすることにより、ナノチューブ内のスタックとは異なり、ペプチド自己集合を二量体複合体に制限する。図2に示されているとおり、血漿再構築およびコレステロール流出における14の有効性は、非メチル化親化合物4と比較して著しく低下した。総合すると、これらの研究は、超分子ナノチューブ種への環状ペプチドの自己集合を含むメカニズムを支持している。
実施例4 インビボ有効性試験
環状D,L−α−ペプチドがHDLのモジュレーターとしてインビボで機能するかどうかを確認するために、1を20mg/kgの用量で腹腔内注射(i.p.)でマウス(BALB/c,n=3)に投与した。種々の時間の後、血液を採取し、血漿をウエスタンブロット法により分析して、HDL亜集団のレベルを決定した。各マウスにおいて、予備注射時点から最長8時間にわたって、脂質欠乏性HDLの量の顕著な増加が観察され(図3a)、これはヒト血漿でのインビトロアッセイと合致している。i.p.投与されたマウス(BALB/c,n=3)における化合物1の薬物動態学的研究は、このペプチドが〜2時間の血漿半減期を有することを示した(図4)。
前記知見に促されて、本発明者らは、血漿総コレステロールレベルに対する1の効果を判定するために2週間のパイロット研究を行った。動物モデルとして、LDLr−ヌルマウスを使用した。これはヒト様リポタンパク質プロファイルを有し、高コレステロール血症およびアテローム性動脈硬化症を研究するための主要動物モデルである。環状D,L−α−ペプチドの非生物的性質はそれらをタンパク質分解に対して高抵抗性にすることを考慮し、本発明者らは、このパイロットインビボ有効性研究を、より簡便な経口投与経路で行うことを選択した。したがって、高脂肪食で維持されたマウスに該環状D,L−α−ペプチドを飲料水中で2週間経口投与した(各マウスは〜0.5mg/日、すなわち〜25mg/kg/日のペプチドを摂取した)。その2週間の後、該ペプチド処理動物(n=8)は、対照動物(n=8)と比較して総血漿コレステロールにおける55%の低下を示した(図3b)。プール化血漿サンプルのFPLC分画により判定されたとおり、血漿総コレステロールの低下は主としてVLDLおよびLDLのレベルの低下に起因するものであった(図5)。しかし、励みになったことに、血漿HDLも、より小さなHDL粒子サイズに有利に再構築された(図5)。
該ペプチドがアテローム性動脈硬化症病変の発生に影響を及ぼすかどうかを判定するために、更に8週間(該研究において合計10週間)にわたる該動物への該ペプチドの経口投与を継続した(処理計画に関しては図6を参照されたい)。その10週間の研究の完了時に、該ペプチド処理動物における総血漿コレステロールレベルは対照動物の場合より30%低かった(図2c)。更に、全大動脈病変面積および大動脈洞病変体積の分析は、それぞれ26%および50%の、アテローム性動脈硬化症病変における低下を示した(図2c、d)。体重、肝臓重量、脾臓重量、餌もしくは水摂取または肝酵素ALTおよびASTの点で群間相違は観察されなかった。飲料水中で25mg/kg/日で経口投与された場合、化合物1の血漿濃度は1μMの検出限界より低かった(データ非表示)。同様に飲料水中で投与される化合物1の10倍低い用量(〜2.5mg/kg/日/マウス)を使用する10週間のフォローアップ研究において、該処理動物(n=8)は、2週間後には、対照動物(n=8)と比較して血漿コレステロールレベルにおける17%の低下を示したが、その10週間の研究の完了時には、血漿コレステロールまたはアテローム性動脈硬化症病変の結果における有意な相違は認められなかった。
実施例5 実験方法および他の研究
本実施例は、幾つかの追加的研究、ならびに本明細書に詳細に記載されている研究において用いられた実験方法および材料を記載する。
略語:
BODIPY,ホウ素−ジピロメテン;Cpt−cAMP,8−(4−クロロフェニルチオ)−アデノシン−3’,5’−環状モノホスファート;DIC,1,3−ジイソプロピルカルボジイミド;Dmab,4−{N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)−3−メチルブチル]アミノ}ベンジル;DMEM,ダルベッコ改変イーグル培地;DMF,ジメチルホルムアミド;DMSO,ジメチルスルホキシド;EDTA,エチレンジアミン−N,N,N’,N’,−四酢酸;FBS,ウシ胎児血清;HRP,西洋ワサビペルオキシダーゼ;LPDS,リポタンパク質欠乏性血清;MBHA,4−メチルベンズヒドリルアミン;MEM,最小必須培地イーグル;NDGGE,非変性勾配ゲル電気泳動;NMP,N−メチルピロリジン−2−オン;PBS,リン酸緩衝食塩水;PEG,ポリエチレングリコール;PyBroP,ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート;TBS,トリス緩衝食塩水;TBST,トリス緩衝食塩水+0.1% Tween20;TFA,トリフルオロ酢酸;TIS,トリイソプロピルシラン;トリス,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;Trt,トリチル;TSRI,The Scripps Research Institute。
材料:
特に示されていない限り、化学物質はSigma−AldrichまたはFisher Scientificから購入した。アミノ酸、RinkアミドMBHA樹脂およびN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)はAapptecまたはNovaBiochemから購入した。トリフルオロ酢酸(TFA)はHalocarbon Products(Hackensack,NJ)から入手した。10mM HEPESで緩衝化されたMEM(MEM−HEPES)は、Life Technologiesから購入したHEPES(pH7.4、1M)を使用して調製した。BODIPY−コレステロールはAvanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,AL)から購入した。ポリエチレングリコール8000(50% w/v)はHampton Researchから購入した。メチル−β−シクロデキストリン,Sandoz(サンド)、リポタンパク質欠乏性血清(LPDS)および8−(4−クロロフェニルチオ)−アデノシン−3’,5’−環状モノホスファート(Cpt−cAMP)Sigma−Aldrichから購入した。HRP結合ヤギ抗ヒトアポA−I抗体はAcademy Bio−Medical(#11H−Gla)から購入し、ウサギ抗マウスアポA−I抗体はMeridian Life Scienceから購入し、HRP結合抗ウサギIgGはThermoから入手した。ヒト血漿はTSRI Normal Blood Donor Programを通じて健常ドナーから入手した。マウスは社内繁殖体(LDLr−ヌル)であったか、またはTSRI Department of Animal Resourcesから入手した。
固相ペプチド合成(SPPS):
ペプチドは、Advanced Chemtech Apex 396ペプチド合成装置で、標準的なFmoc化学を用いて合成した。典型的な合成は、樹脂からの切断の後でGln残基が生じるように側鎖を介してFmoc−Glu−ODmabまたはFmoc−Glu−OAllがローディングされた0.6mmol/g RinkアミドMBHA樹脂(Novabiochem)を使用して、0.09mmolの規模で行った。側鎖結合のためのグルタミン残基を含有しない配列については、アスパラギンまたはリシン側鎖を固相合成中の樹脂への固定のために使用した。標準的な側鎖保護基には、Gln(Trt)、Asn(Trt)、Lys(Boc)、Orn(Boc)、ジアミノプロピオン酸(Boc)、ジアミノ酪酸(Boc)、His(Trt)、Ser(tBu)、Trp(Boc)、Glu(OtBu)が含まれた。側鎖伸長は、90分間のカップリングでNMP中のDICおよびHOBtを使用して行った。Fmocの脱保護は、NMP中の25% ピペリジンを使用して行った。ペプチドの完全伸長の後、末端Fmocを除去し、ついでDMF中の2% ヒドラジン(3×5分)またはCHCl中のPhSiHの存在下のPd(PPhを使用して、DmabまたはAll基を切断した。DMF中のPyAoP(5mol当量)およびiPrNEt(12mol当量)を使用して12時間にわたって該ペプチドを樹脂上で環化させた。95:2.5:2.5 TFA/TIS/ペプチド/水の溶液中での3時間の撹拌により、ペプチドを樹脂から切断し、それと共に側鎖を脱保護した。ペプチドをエーテルで沈殿させ、遠心分離し、エーテルで更に3回洗浄した。粗製ペプチドをVydac 218TP C18または214TP C4カラム上の分取逆相(RP)−HPLCにより精製した。純度を分析用RP−HPLCにより確認した。精製ペプチドを分析用HPLCおよびMALDI−TOF質量分析により特徴づけした。Hitachi D−7000 HPLC系に接続されたVydac 214TP C−4カラムまたはZorbax 300−SB C−18カラムを使用して、分析用RP−HPLCを行った。溶媒A(99% HO,0.9% アセトニトリル,0.1% TFA)および溶媒B(90% アセトニトリル,9.9% HO,0.07% TFA)の二成分勾配をHPLCに使用した。
Fmoc−Ser−OAllを側鎖を介して2−クロロトリチルクロリド樹脂にローディングすることにより、ペプチド14のN−メチル化誘導体c[wLMewSeQMesO]を製造した。該ペプチド合成は、Fmoc−MeLeu−OH(NovaBiochem)を使用してGln残基を介して進行した。Bironら(J.Pept.Sci.12,213−219,2006)の方法に従い、Gln残基のアミンを固体支持体上で選択的にメチル化した。ついで前記のとおりに該合成を継続した。DMF中のPyBroP(5mol当量)およびiPr2NEt(12mol当量)を使用して12時間にわたってメチル化アミン基に対するカップリング反応を行った。
ヒト血漿再構築:
ヒトサンプルを含む全ての方法はTSRI治験審査委員会(Institutional Review Board)により承認された。方法は、Trouttら,J.Lipid Res.49,581−587,2008に報告されているものから改変された。健常ヒトドナーからの血液サンプルをTSRI正常血液ドナープログラム(Normal Blood Donor Program)から入手した。ドナーからの採血の1時間以内にEDTA−抗凝固処理全血を1500×gで15分間遠心分離した。血漿層をアリコート化し、直ちに使用するか、または将来の使用のために−80℃で凍結した。ペプチドストック溶液を初期スクリーニングのために50% DMSO中、〜15mM ペプチドで、またはより低い濃度でアッセイ(図1)およびコレステロール流出アッセイ(図2)を改変するために10% スクロース中、〜2mM ペプチドで調製した。血漿サンプル(30μL)をペプチドストックで処理し、サンプルを37℃で0.5〜1時間インキュベートし、ついで270μLの50% スクロース(1:9希釈)を加えることによりクエンチした。サンプルを6×天然ローディングバッファー(125mM トリス(pH6.8),0.02% ブロモフェノール,20% グリセロール)と混合し、そのうちの6μLを4〜20% ポリアクリルアミドゲル上にローディングした。使用した分子量ラダーは高分子量較正キット(High Molecular Weight Calibration Kit)(Amersham Biosciences,#17−0445−01)であった。Laemli緩衝系(25mMのトリス,192mM グリシン,pH8.3)を使用して、ゲルを80V(一定)、4℃で14時間泳動した。ついでLaemliバッファー(メタノール非含有)を使用して、ニトロセルロース膜(0.45μm,Bio−Rad)上にゲルを30V(一定)、4℃で2時間ブロットした。該膜をTBS中の3% BSA(20mM トリス,150mM NaCl,pH7.6)で23℃で1時間ブロッキングし、ついでTBST(20mM トリス,150mM NaCl,pH7.6,0.1% tween−20)で1回、10分間洗浄した。次に該膜を、〜1:8000希釈のHRP結合ヤギ抗ヒトアポA−I抗体(Academy Bio−Medical,#11H−G1a)を含有するTBST中の3% BSAと共に23℃で1時間インキュベートした。該膜をTBSTで十分に洗浄し(少なくとも6×10分)、TBSで1回洗浄した。該膜をECL試薬(Thermo SuperSignal West Pico)と共に5分間インキュベートし、ついで写真フィルム(Kodak BioMax Light)にさらした。該フィルムをスキャンし、プログラムLabWorks(v.4.0.0.8)を使用するデンシトメトリーにより定量した。個々のブロットからの「無処理」サンプルおよび4F(215μM)サンプルをそれぞれ低および高シグナルとして使用して、該デンシメトリー値をスケーリングすることにより、個々のブロットからのデータを正規化した。
コレステロール流出
標識培地の調製:
これらの方法は、Sankaranarayananら,J.Lipid Res.52,2332−2340,2011に報告されているものから改変された。非標識コレステロールおよびBODIPY−コレステロール(総コレステロールの20%)をメチル−β−シクロデキストリン(CD)と1:40(総コレステロール/CD)のモル比で複合体化した。非標識コレステロールおよびBODIPYコレステロールをクロロホルムに溶解し、暗所で回転蒸発により丸底フラスコ内で乾燥させて、薄膜を形成させた。該コレステロール混合物を、MEM−HEPESバッファー中の20mM CDを加えることにより可溶化した。該懸濁液を水浴(37℃)内で1時間、超音波処理し、37℃で37時間撹拌し、0.45μmシリンジフィルターを使用して濾過し、4μg/mL Sandoz ACAT(アシル−CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ)インヒビター(Sigma)を含有するMEM−HEPESバッファーの等体積で希釈した。該標識培地内のBODIPY−コレステロール、非標識コレステロール、CDおよびACATインヒビターの最終濃度はそれぞれ0.025mM、0.1mM、10mMおよび2mg/mLであった。
流出培地の調製:
該流出アッセイの開始の直前に、−80℃で凍結されたヒト血漿を解凍し、80μLの血漿を20μLの環状ペプチドストック(ペプチドストックは10% スクロース中で1〜3mg/mLであった)またはビヒクル(10% スクロース)と共に37℃で30分間をインキュベートした。ついで該処理血漿サンプル(100μL)を200mM グリシンバッファー(pH8.5)(40μL)中の25% PEG8000溶液と共にインキュベートして、アポB含有リポタンパク質を沈殿させた(Asztalosら,J.Lipid Res.46,2246−2253,2005)。15分間のインキュベーションの後、沈殿物を高速遠心分離(13,000rpm、10分間、4℃)により除去し、上清(60μL)をMEM−HEPESバッファー(1.5mL)で直ちに希釈して、〜2% 全血漿を得た。コレステロール受容体として該ペプチド再構築−HDLリポタンパク質画分を含有するこの溶液を溶出培地として使用した。
マウスマクロファージ細胞からのコレステロール流出:
マウスマクロファージJ774A.1細胞(TIB−67;American Type Culture Collection,Manassas,VA)を3×10細胞/mLで12ウェル培養プレート内に播き、80〜90%のコンフルエンシーになるまで、10% FBSを含有するDMEM内で5% COで培養した。細胞をMEM−HEPESで2回洗浄し、CD/BODIPY−コレステロール/非標識コレステロールおよび2μg/mL Sandoz ACATインヒビターを含有する0.25mlの標識培地と共に1時間インキュベートし、ついでMEM−HEPESで2回洗浄した。該コレステロール多量含有細胞を、5% LPDS、2μg/mL Sandoz ACATインヒビターおよび0.3mM Cpt−cAMPを含有するDMEM内で18時間平衡化した。平衡化後、該細胞をMEM−HEPESで2回洗浄し、0.25mLの流出培地と共に4時間インキュベートした。該インキュベーション時間の終了時に、該流出培地を除去し、遠心分離(1200rpm、10分間)して浮遊細胞を除去し、Tecan GENiosプレートリーダー(励起485nm、発光535nm)を使用して、100μLの無細胞培地の蛍光強度を記録した。得られたシグナルを、非標識細胞からのシグナルを使用して、バックグラウンド除去した。細胞単層を氷冷MEM−HEPESで2回洗浄し、プレートシェーカー上、室温で少なくとも4時間振とうすることにより、0.25mLの1% コール酸で可溶化し、ついで100μLの細胞ライセートの蛍光強度を記録し、非標識細胞ライセートからのシグナルを使用して、バックグラウンド除去した。総蛍光値(培地+ライセート)により割り算された該培地の蛍光強度に基づいて、BODIPY−コレステロールの流出比率を計算した。ビヒクル(10% スクロース)処理血漿を含有する培地へのBODIPY−コレステロール流出は29±0.7%であり、図2に示されている全ての受容体のコレステロール流出値から差し引かれた。測定は四回重複して行った。
マウス薬物動態およびインビボ血漿再構築
薬物動態:
TSRI制度動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)は、生きた動物を含む全ての実験プロトコルを承認した。BALB/cByJバックグラウンド上の雄マウス(20g)をTSRIにおけるRodent Breeding Colony of the Department of Animal Resourcesから入手し、固形飼料で維持した。環状ペプチド(c[wLwReQeR])1を、1% スクロースを含有するPBSに溶解し、注射前に0.22μmシリンジフィルターに通して滅菌濾過した。投与の12時間前からマウスを絶食させ、採血の完了後の8時間の時点まで絶食を継続した。3匹のマウスの群に16mg/kg用量の該環状ペプチドを腹腔内注射(0.3mL)により投与した。投与前(0分)および投与後30分から8時間までの種々の間隔で、後眼窩洞からヘパリン処理毛細管内に血液(30〜60μL)を採取した。5000rpm、4℃で10分間の遠心分離により、全血から直ちに血漿を単離した。該血漿を単離した直後に、20μLの血漿を20μLの5% 酢酸で酸性化してペプチド−タンパク質相互作用を破壊し、ついで40μLのアセトニトリルを加えた。30秒間ボルテックスした後、該混合物を13000rpm、4℃で10分間遠心分離した。得られた上清を、後記のとおり、LC−MS SIMを用いることにより分析した。
ペプチド濃度のLC−MS SIM定量:
質量分析に連結された逆相HPLCを用いることにより、環状ペプチド濃度を定量した。単一四重極質量分析計(Hewlett Packard HP 1100 MSDシリーズ)を使用して、エレクトロスプレーイオン化質量分析測定を正イオン化モードで行った。1.5mL/分の流速ならびに溶媒A(99% HO,0.1% ギ酸,0.01% TFA)および溶媒B(99% アセトニトリル,0.1% ギ酸,0.01% TFA)の二成分勾配を用いて、10または20μLのサンプルをC8逆相カラム(Zorbax 300−SB,4.6mm×150mm,5μm)を介して注入した。最適化フラグメンター(fragmentor)ならびにそれぞれ180Vおよび5kVのキャピラリー電圧で、正分子イオンのための選択されたイオンモニタリング(SIM)モードで質量検出を行った。環状ペプチドc[wLwReQeR](配列番号1)に関する選択されたモニタリング質量は592.8([M+2H]2+)であった。定量的較正のために、種々の濃度の該ペプチドが添加されたマウスEDTA−抗凝固処理血漿を使用して、標準曲線を確定した。0.98以上の相関係数で該データの直線フィッティングを用いることにより、検量線を確定した。検出限界は1μMであった。
インビボ血漿再構築:
環状ペプチド(c[wLwReQeR])1を、10% スクロースに溶解し、注射前に0.22μmシリンジフィルターに通して滅菌濾過した。投与の12時間前からマウスを絶食させ、採血の完了後の8時間の時点まで絶食を継続した。3匹のマウスの群に20mg/kg用量の該環状ペプチドを腹腔内注射(0.3mL)により投与した。投与前(0分)および投与後30分から8時間までの種々の間隔で、後眼窩洞からヘパリン処理毛細管内に血液(30〜60μL)を採取した。5000rpm、4℃で10分間の遠心分離により、全血から直ちに血漿を単離し、ついで10μLの血漿を90μLの50% スクロースと混合し、30秒間ボルテックスし、全時点が収集されるまで4℃で保存した(サンプルは0〜8時間保存した)。ついでサンプルを20μLの6×天然ローディングバッファー(125mM tris,pH6.8,0.02% ブロモフェノール,20% グリセロール)と混合した。6μLのこれらのサンプルを4〜20% ポリアクリルアミドゲル上にローディングした。Laemli緩衝系(25mMのトリス,192mM グリシン,pH8.3)を使用して、ゲルを80V(一定)、4℃で14時間泳動した。ついでLaemliバッファー(メタノール非含有)を使用して、ニトロセルロース膜(0.45μm,Bio−Rad)上にゲルを30V(一定)、4℃で2時間ブロットした。該膜をTBST(20mM tris,150mM NaCl,pH7.6,0.1% Tween−20)中の5% 脱脂粉乳(NFDM)で23℃で1時間ブロッキングし、ついでTBSTで1回、10分間洗浄した。次に該膜を、〜1:5,000希釈のウサギ抗マウスアポA−I抗体(Meridian Life Science)を一次抗体として含有するTBST中の1% NFDMと共に23℃で1時間インキュベートした。該膜をTBSTで十分に洗浄し(少なくとも6×10分)、〜1:50,000希釈のHRP結合抗ウサギIgG(Thermo)を二次抗体として含有する1% NFDMと共に23℃で1時間インキュベートした。該膜をTBSTで十分に洗浄し(少なくとも6×10分)、TBSで1回洗浄した。該膜をECL試薬(Thermo SuperSignal West Pico)と共に5分間インキュベートし、ついで写真フィルム(Kodak BioMax Light)を使用してイメージングした。
インビボ有効性研究:
C57BL/6Jバックグラウンド上のLDL受容体−ヌル(LDLr−/−)マウスを最初はJackson Laboratories(Bar Harbor,ME)から購入し、社内で飼育した。該マウスを4週齢で離乳させ、10週齢になるまで標準固形飼料(Harlan Teklad 7019)を自由に摂取させ、ついでそれを、15.8%(wt/wt)脂肪、1.25%(wt/wt)コレステロールを含有しコラートを含有しない高脂肪ウエスタンダイエット(Western diet)(WD)(Harlan Teklad 94059)に切り換えた。WDの開始時に、180μM(200μg/mL)の高用量または18μM(20μg/mL)の低用量で試験環状ペプチドを飲料水に加え、該マウス(雌、投与群当たりn=8)にWDを10週間継続した。該凍結乾燥ペプチドは、1% スクロースを含有するPBS(pH7.4)に容易に溶解して、透明溶液を与えた。該飲料水溶液を新鮮な溶液と毎日交換した。8匹のマウスの対照群(雌、n=8)にはビヒクル(1% スクロース含有PBS)飲料水と共にWDを与えた。該マウスはマウス1匹当たり1日当たり約2.5mLの水を消費し、水または食餌消費における有意な群間相違は認められなかった。該インビボ有効性研究に関する給餌および処理スケジュールを図6に示す。
血漿総コレステロールに対する環状ペプチドの効果:
2週間の処理の後および回収の時点(10週)で該マウスから採血した。一晩の絶食(14〜16時間)の後、血液(200μL)を、2週の時点では後眼窩穿刺によりヘパリン処理毛細管内に集め、回収の時点(10週間)では心臓穿刺によりEDTA抗凝固被覆管内に集めた。血漿を、5000rpm、4℃で10分間の血液サンプルの遠心分離により直ちに全血から分離し、ついで−80℃で保存した。酵素比色法キット(Amplex(登録商標)レッドコレステロールアッセイキット番号A12216,Life Technologies)を該製造業者の説明に従い使用して、血漿総コレステロール(TC)を測定した。
血漿リポタンパク質およびリポタンパク質コレステロールプロファイルに対する環状ペプチドの効果:
該2週採血からのプール化血漿(合計240μL、それぞれから30μL、1群当たりn=8のマウス)を高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)分析に使用した。直列に接続された3つのスーパーデックス(Superdex)200 10/30カラム(GE Healthcare)を使用して、リポタンパク質を分離した。該血漿を11,000rpmで室温で10分間遠心分離して、粒子を除去した(FPLC注入のための上清を除去する前に浮遊物質を液体中に穏やかに混合した)。200μLの該プール化血漿を系に注入し、1mM EDTAおよび150mM NaClを含有する10mM tris−HClバッファー(pH7.4)で溶出し(流速0.5ml/分)、0.5mLの画分サイズを用いた。Amplex(登録商標)レッドコレステロールアッセイキット(No.12216,Life Technologies)を該製造業者の説明に従い使用して、FPLC画分中の総コレステロールを測定した。20μLの選択されたHDL画分(図6に示されているとおり)を4μLの6×天然ローディングバッファー(375mM tris,pH6.8,0.06% ブロモフェノール,60% グリセロール)と混合し、そのうちの20μLを非変性ゲル電気泳動に適用し、ついで、前記のとおり、マウスアポA−Iに対して免疫ブロットした。
アテローム性動脈硬化症の評価:
アテローム性動脈硬化症病変の重症度を、Mullickら,J.Clin.Invest.115,3149−3156,2005に既に記載されているとおりに、大動脈において評価した。簡潔に説明すると、安楽死時に、動物をPBSで灌流し、ついで4% ホルムアルデヒド(PBS(pH7.2)中に希釈された、Polysciencesからの10% UltraPure EM Grade)で灌流した。正面(en face)分析のために、解剖顕微鏡を使用して、全マウス大動脈を近位上行大動脈から腸骨動脈の分岐部まで切開した。外膜脂肪を除去し、大動脈を縦方向に開き、黒色解剖ワックス上に平らにピン止めし、スダン(Sudan)IVで染色し、一定倍率で写真撮影した。写真をデジタル化し、Adobe PhotoshopバージョンCS4,Chromatica VおよびNIH Scion Imageソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/nih−image/Default.html)を使用して、全大動脈面積および病変面積を計算した。結果を、病変を含有する全大動脈面積の百分率として示した。
アテローム性動脈硬化症の第2の評価として、大動脈基部(心臓洞)の病変を分析した。立体解析学的原理を利用して、動脈洞の一定距離を横断する病変体積を評価した。4% パラホルムアルデヒド中で10分間の固定の後、心臓を心臓の心房に垂直な角度で切断し、OCT(Tissue−Tek)中に包埋した。冷凍心臓をライカ(Leica)クライオスタット上で切開し、大動脈洞(弁尖が視認可能となったときと定義される)の先端から、洞の先端から500μm未満までの10μm切片を集めた。(不良な切開角度ゆえに)弁尖が同一切片内に現れない角度で切断された心臓に関しては、ずれた(lagging)尖を使用して500μmの距離を決定した。切片を50μm間隔で二重重複で集めた。切片をオイルレッドOで染色し、ギル(Gill)ヘマトキシリン1(Fischer Scientific International)で対比染色し、写真撮影し、病変分析のためにデジタル化した。3つの弁尖のそれぞれに関して個別に弁病変面積の評価を行った。弁尖内のみに見られる病変面積を測定した。10のサンプリング・レートのうちの1つから病変体積推定を決定した。したがって、弁尖当たりに分析される合計4つの切片の病変体積を決定するために、140μm間隔で位置する弁尖を使用した。測定された断面積の積分から病変体積を計算した。断面積の推定値の順序集合のコンバリオグラム(convariogram)分析から導出されたカバリエリ(Cavalieri)推定量を使用して、病変体積の近似における誤差係数(CE)の予測を計算した。これは、病変体積の立体解析学的計算に許容される10%未満のCE値を与えた。
体重、肝臓重量および脾臓重量:
対照および処理群における食餌および水摂取は同等であった。体重は毎週測定した。絶食前にマウスを秤量した。肝臓および脾臓重量は処理の終了時に測定した。
血漿肝酵素活性:
回収の時点(10週)で、一晩の絶食の後、心臓穿刺によりEDTA抗凝固被覆管内に血液(〜0.5mL)を集め、5000rpm、4℃で10分間遠心分離した。血漿サンプルを−80℃で分析まで保存した。血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の濃度を、比色動的アッセイ(Thermo Scientific)であるそれぞれインフィニティ(Infinity)ALT(GPT)およびAST(GOT)液体安定試薬
を使用して測定した。96ウェル平底マイクロプレートフォーマットにおけるサンプルの分析のための試薬体積(20μLの血漿+200μLの試薬、ウェル内の溶液の光路長0.69cm)を調節して、該製造業者の推奨に従いアッセイを行った。
実施例6 抗アテローム性動脈硬化活性の更なる研究
本実施例は、本発明の環状ペプチドのコレステロール低下およびアテローム性動脈硬化症抑制活性に関する幾つかの追加的インビボ研究を記載する。
まず、図2に示されている化合物の大多数を含む種々の環状ペプチドを、インビトロでヒト血漿においてHDLを再構築する活性に関して評価した。図2に示されているデータを得るために使用したウエスタンブロットとは異なり、ここでは、プレ−ベータHDL ELISAアッセイを用いて、プレ−ベータHDLレベルを測定した。該アッセイからの結果を表1に示す。表1は該ペプチドを、HDLを再構築するそれらの活性の順序で列挙している。
また、幾つかのペプチドを飲料水中で(特に示されていない限り)35mg/kgの用量で2週間にわたってマウスに経口投与した。高脂肪食で維持された雌LDLr−ヌルマウスにペプチド処理1% スクロース/PBSまたは1% スクロース/PBSのみを飲料水として自由に摂取させた。ついでコレステロールレベルを決定した。データを平均±SDと共に散布図として図7に示す。p値は事後チューキー・クレイマー検定と共に一元配置分散分析検定により決定された。該図に示されているとおり、結果は、該ペプチドがインビボで血漿コレステロールレベルを有意に低下させたことを示している。
それらのインビボコレステロール低下活性のほかに、インビボでアテローム性動脈硬化症病変の発生を抑制する能力に関して、幾つかのペプチドを調べた。自由に摂取できる飲料水中の該ペプチドを雌高脂肪給餌LDLr−ヌルマウスに10週間にわたって経口投与した。図8に示されているとおり、35mg/kgの用量の幾つかのペプチドは全大動脈病変面積および大動脈洞病変体積の増大を低減することが可能であった。10倍低い用量においては、ペプチドwLwReQeR(配列番号1)は病変に対して有意な効果を及ぼさなかった。結果を図8に示す。該図における全てのチャートは平均±SDを伴う散布図として示されている。p値は事後チューキー・クレイマー検定と共に一元配置分散分析検定により決定された。
該ペプチドの幾つかのインビボ血漿HDL再構築活性も分析した。該ペプチドを腹腔内注射により雄マウス(n=3)に投与した(18〜24mg/kg)。図9に示されているとおり、幾つかのペプチド(例えば、配列番号53および82に示されている配列を有するペプチド)は血漿HDLを再構築して脂質欠乏性プレ−ベータ粒子のレベルを上昇させることが可能であった。該図に示されている結果はマウスアポA−Iに対するウエスタンブロット法により決定された。
環状D,L−アルファペプチドにおける骨格(バックボーン)アルキル化はナノチューブの形成を妨げることが知られている。骨格アルキル化はペプチドの経口バイオアベイラビリティをも改善しうる。骨格アルキル化は、インビボで血漿コレステロールレベルを低下させ、及びインビトロでプレ−ベータHDLレベルの形成を促進する該ペプチドの活性に、負の影響を及ぼしうることが判明した。図7および表1に示されているとおり、これは、c[wLwReQeR](配列番号1)のメチル化誘導体であるペプチド(Me)wLwR(Me)eQeR(配列番号46)の活性により証明される。驚くべきことに、図8に示されているとおり、該メチル化誘導体ペプチドはアテローム性動脈硬化症病変の発生の予防において親化合物と同様に依然として非常に有効である。
Figure 2016516752
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前記の本発明は理解の明瞭化を目的として例示および具体例によりかなり詳細に記載されているが、本発明の教示を考慮して、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、ある変化および修飾がそれに対して施されうる、と当業者に容易に理解されるであろう。
本明細書中で言及されている全ての刊行物、データベース、GenBank配列、特許および特許出願を、それぞれが参照により本明細書に組み入れられると具体的かつ個別に示されているのと同様に、参照により本明細書に組み入れることとする。

Claims (26)

  1. アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症に関連した若しくはそれにより引き起こされる障害に罹患している又はその発生リスクを有する対象に、医薬組成物の治療的有効量を投与することを含む、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症に関連した若しくはそれにより引き起こされる障害の治療または予防方法であって、該医薬組成物が、ペプチドの配列の一部または全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である4〜約16個のアミノ酸残基またはその類似体の配列を有する環状ペプチドを含む、方法。
  2. 該対象が、高コレステロール血症、心血管障害、アテローム性動脈硬化血管疾患、脳血管疾患、動脈瘤、末梢血管疾患または間欠性跛行に罹患している又はその発生リスクを有する、請求項1記載の方法。
  3. 該医薬組成物を経口的、静脈内、皮下または腹腔内に該対象に投与する、請求項1記載の方法。
  4. 該環状ペプチドが、その配列全体に亘って交互に位置するD−およびL−α−アミノ酸残基を含む、請求項1記載の方法。
  5. 該環状ペプチド化合物がc[B−J−U1−X−U2−Z]の配列式を有し、式中、Bは、少なくとも2つの疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体を含むペプチドセグメントであり、Jは正荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、U1およびU2の一方または両方は負荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、Xは極性非荷電アミノ酸残基、His残基またはそれらの類似体を含み、ZはAsn、Gln、荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、
    ここで、該環状ペプチドのアミノ酸残基または類似体は、該環状ペプチドの配列の全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である、請求項1記載の方法。
  6. Bが2、3、4、5、6または7個の疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体からなる、請求項5記載の方法。
  7. Bが3個の疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体からなる、請求項5記載の方法。
  8. BがTrp−Leu−Trp、Tyr−Leu−Tyr、Trp−Trp−Trp、Phe−Leu−Trp、Trp−Leu−Trp、Tyr−Leu−Tyr、Trp−Trp−TrpまたはPhe−Leu−Trpからなる、請求項7記載の方法。
  9. JがLys、Arg、Ser、His、Orn(オルニチン)、ジアミノ酪酸またはジアミノプロピオン酸である、請求項5記載の方法。
  10. Jがナフチルアラニン(Nal)、ホモロイシン(Hml)または2−アミノ−オクタン酸(Aoc)である、請求項5記載の方法。
  11. U1およびU2が、それぞれ独立して、Asp、GluまたはSer残基である、請求項5記載の方法。
  12. XがAsnまたはGlnである、請求項5記載の方法。
  13. Zが正荷電残基である、請求項5記載の方法。
  14. ZがLys、Arg、His、Orn(オルニチン)またはジアミノ酪酸である、請求項13記載の方法。
  15. BがTrp−Leu−TrpまたはTyr−Leu−Tyrからなり、JがLys、ArgまたはSerであり、U1およびU2が、それぞれ独立して、Asp、GluまたはSer残基であり、XがAsnまたはGlnであり、ZがLys、Arg、Orn(オルニチン)またはジアミノ酪酸である、請求項5記載の方法。
  16. 該環状ペプチドが、c[wLwReQeR](配列番号1)、c[wLwKdQeK](配列番号2)、c[wLwRdQeK](配列番号3)、c[wLwSeQsO](配列番号4)、c[fWwYqHhQ](配列番号5)、c[LwLwLrKe](配列番号6)、c[wLwZeQeK](配列番号7)、c[wLwKdNdK](配列番号8)、c[wLwRdNdK](配列番号9)、c[wLwKdQdK](配列番号10)、c[wLwKeNeK](配列番号11)、c[wLwHeNeK](配列番号12)、c[wLwOeQeO](配列番号13)、c[wLMewSeQMesO](配列番号14)、およびc[wLwOeNeO](配列番号19)、c[w(Aoc)wSeQsO](配列番号22)、c[wLwReNeO](配列番号23)、c[wLwHeQeH](配列番号24)、c[yWyKsHaE](配列番号25)、c[wLlwKdDk](配列番号26)、c[w(Nal)wReQeR](配列番号28)、c[w(Hml)wReQeR](配列番号29)およびc[wLwSeQhK](配列番号40)からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
  17. 該環状ペプチドがc[wLwReQeR](配列番号1)、c[wLwSeQsO](配列番号4)またはc[wLwSeQhK](配列番号40)の配列を含む、請求項5記載の方法。
  18. 該環状ペプチド化合物がc[wLw−J−u1−X−u2−Z]の配列式を有し、約8個の交互に位置するD−およびL−型のアミノ酸残基またはアミノ酸類似体を含み、ここで、wLwは、Trp−Leu−Trpからなるトリペプチドセグメントを示し、Jはセリンまたは正荷電アミノ酸残基または類似体であり、u1およびu2は、それぞれ独立して、Asp、GluまたはSer残基であり、XはAsn残基またはGln残基であり、Zは正荷電アミノ酸残基または類似体である、請求項1記載の方法。
  19. JがLys、Arg、His、Ser、Orn(オルニチン)、ジアミノ酪酸またはジアミノプロピオン酸である、請求項18記載の方法。。
  20. ZがLys、ArgまたはOrn(オルニチン)である、請求項18記載の方法。
  21. 該環状ペプチドが、c[wLwReQeR](配列番号1)、c[wLwKdQeK](配列番号2)、c[wLwRdQeK](配列番号3)、c[wLwSeQsO](配列番号4)、c[wLwZeQeK](配列番号7)、c[wLwKdNdK](配列番号8)、c[wLwRdNdK](配列番号9)、c[wLwKdQdK](配列番号10)、c[wLwKeNeK](配列番号11)、c[wLwHeNeK](配列番号12)、c[wLwOeQeO](配列番号13)およびc[wLwOeNeO](配列番号19)からなる群から選択される、請求項18記載の方法。
  22. 該環状ペプチドが、c[fWwYqHhQ](配列番号5)、c[(Me)wLwR(Me)eQeR](配列番号46)、c[WIWwkhkh](配列番号47)、c[wFyYhOrS](配列番号48)、c[(PA)wLlHsKk](配列番号49)、c[WIWrEqEr](配列番号50)、c[fWwYtRhS(配列番号51)]、c[wFfYrHhS](配列番号52)およびc[wLwKhShK](配列番号53)からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
  23. ペプチドの配列の一部または全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基であるアミノ酸残基またはそれらの類似体の配列を有する環状ペプチドを含む、アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症に関連した若しくはそれにより引き起こされる障害を対象において治療または予防するための組合せ医薬又はキット。
  24. 該環状ペプチド化合物がc[B−J−U1−X−U2−Z]の配列式を有し、式中、Bは、少なくとも2つの疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体を含むペプチドセグメントであり、Jは正荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、U1およびU2の一方または両方は負荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、Xは極性非荷電アミノ酸残基、His残基またはそれらの類似体を含み、ZはAsn、Gln、荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸残基または類似体は、該環状ペプチドの配列の全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である、請求項23記載の組合せ医薬又はキット。
  25. アテローム性動脈硬化症またはアテローム性動脈硬化症に関連した若しくはそれにより引き起こされる障害を対象において治療または予防するのに有効な量での、ペプチドの配列の一部または全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である4〜約16個のアミノ酸残基またはそれらの類似体の配列を有する環状ペプチドの使用。
  26. 該環状ペプチド化合物がc[B−J−U1−X−U2−Z]の配列式を有し、式中、Bは、少なくとも2つの疎水性アミノ酸残基またはそれらの類似体を含むペプチドセグメントであり、Jは正荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、U1およびU2の一方または両方は負荷電アミノ酸残基、極性非荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、Xは極性非荷電アミノ酸残基、His残基またはそれらの類似体を含み、ZはAsn、Gln、荷電アミノ酸残基またはそれらの類似体を含み、ここで、該環状ペプチドのアミノ酸残基または類似体は、該環状ペプチドの配列の全体に亘って交互に位置するD−およびL−残基である、請求項25記載の使用。
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