JP2004535392A - 抗菌ペプチドおよび組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、D-アミノ酸とL-αアミノ酸とが交互するアミノ酸配列を有する環状ペプチドを含む新規抗菌物質および組成物を提供する。または環状ペプチドは、βアミノ酸で構成される。
Description
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年5月4日に提出された米国特許出願第60/288,990号からの優先権を主張する。本出願に関連する研究は、米国国立衛生研究所の助成金(GM第52190号)による支援を受けた。政府は本発明に対して一定の権利を保有する可能性がある。
【0002】
発明の分野
本発明は、環状ペプチド抗菌物質を提供する。本発明の抗菌ペプチドおよび組成物は、哺乳類細胞に対して実質的または望ましくない害を引き起こすことなく、感染症を引き起こす微生物を速やかに殺すことができる。本発明の環状ペプチドは、反復するD、L-骨格キラリティを有するαアミノ酸、またはホモキラルβアミノ酸の配列で構成されてもよい。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
抗生物質耐性は、より多くの微生物が多数の抗生物質に対して耐性となりつつあることから、医学問題として重要となりつつある。「Antibiotic Resistance, A Growing Threat」、ウェブサイトfda.gov/oc/opacom/hottopics/anti_resist.html;P.J. Koplanら、「Preventing emerging infections diseases. A Strategy for the 21st Century」、米国保健社会福祉省、疾病管理予防センター、アトランティック、ジョージア州(1998)を参照されたい。例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のいくつかの種は、異なる多くの抗生物質に対する耐性を示し、現在では「多剤耐性」表現型を有すると記述される。残念なことに、抗生物質の広汎な使用のために、微生物のそのような多剤耐性株は、現在では、一般集団および病院内においても認められる。院内感染による細菌感染症は、入院患者の5%に起こっている(米国において年間で患者約200万人)。そのような感染症は、毎年推定で20,000人の死亡原因となり、さらに毎年60,000人の病院内での死亡に関与している。そのような感染症によって、入院日数は約750万日増加し、医療費は年間さらに10億ドルかさむと推定される。
【0004】
「新規」抗生物質はしばしば、前世代の抗生物質に構造的に関連する、または構造的に由来する。例えば、セファロスポリンは、ペニシリンに構造的に関連している。既知の抗生物質のこれらの構造類似体は、しばらくのあいだ成功しうるが、新規」抗生物質が広く用いられるようになるにつれて、耐性に関する報告がしばしば増加する。β-ラクタム系の抗生物質の経過はこの問題を説明する。1940年代にペニシリンが導入されて以来、微生物は、典型的に、多くの細菌種において認められる酵素β-ラクタマーゼを通してこれらの薬物の異化を獲得または増強することによって、β-ラクタム系抗生物質に対する耐性を発達させた。研究者らは、β-ラクタマーゼによる分解に対してより抵抗性である新規抗生物質を作製するために、基本的なβラクタム系抗生物質の構造に一連の変更を加えたが、微生物は、異なるタイプのまたはより大量のβラクタマーゼを産生することによってこれに対応した。
【0005】
院内感染による細菌感染症の約70%が、最も一般的に処方される抗生物質の少なくとも一つに対して耐性である。そのような耐性がしばしば出現する理由は、一般的に用いられる抗生物質が、細菌の代謝または細胞構造に対して比較的遅く作用するためである。例えば、β-ラクタム系の抗生物質耐性が発生する一般的なメカニズムは、β-ラクタム系抗生物質を切断することができるコード蛋白質のプラスミド増幅によってである。病院においてしばしば起こっているように、β-ラクタム系抗生物質を日常的に処方すると、そのような抗生物質に対して耐性である細菌集団の小さい一部は増殖することができ、耐性機能をコードするプラスミドが増幅することができ、そして非常に耐性が強い細菌株が院内全体に広がりうる。
【0006】
この問題は、新しい世代の抗生物質を作製することによって対処されている。例えば、バリノマイシンは、環状構造内にエステル結合を用いる交互のD-D-L-L-キラルモチーフを有する環状デプシペプチドである。しかし、バリノマイシンおよび他のそのようなペプチドの活性、選択性、インビボ安定性、毒性、および生物学的利用率は最適ではない。したがって、微生物感染症、特に容易かつ安価に製造される現在販売されている抗生物質に対して耐性である感染症と闘うために、速効型で非毒性の抗菌物質が必要である。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、微生物感染症を治療および/または予防するための新規速効型抗菌環状ペプチドおよび組成物を提供する。本発明の抗菌物質は、多剤耐性細菌のみならず致死性のメチシリン耐性およびバンコマイシン耐性菌を含む多数の微生物種に対して非常に有効である。環状ペプチドは速効性で、蛋白質分解に対して安定で合成が容易である。多くの態様において、本発明の環状ペプチドに曝露すると、わずか数時間以内に実質的に全く微生物を検出することができない。なお他のペプチドも、例えば、赤血球の溶血によって測定した哺乳類細胞の望ましくない実質的な溶解を引き起こさない。
【0008】
本発明は、環状ペプチドが、D-およびL-αアミノ酸4〜約16個が交互する配列を含み、環状ペプチドが、標的微生物に対して選択的な細胞障害活性を有し、そして哺乳類細胞に対して実質的な望ましくない活性を示さない、ヒトおよび獣医学での応用のための抗菌環状ペプチドおよびその薬学的組成物を提供する。哺乳類細胞に対する活性は、例えば、ペプチドが哺乳類の赤血球の溶血を引き起こすことができるか否かによって測定することができる。そのような環状ペプチドおよび薬学的組成物は、哺乳類における微生物感染症を治療または予防するために用いることができる。多くの抗菌剤とは異なり、本発明の好ましい環状ペプチドは、最小発育阻止濃度で単に静菌作用を有するのではなく殺細菌作用があることが示されている。
【0009】
本発明の環状ペプチドは一般的に、哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の半分未満である、少なくとも一つの標的微生物の如何なる細胞もインビトロで増殖しない最小発育阻止濃度を有する。他の態様において、最小発育阻止濃度は、哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の4分の1未満〜5分の1未満となりうる。他の態様において、最小発育阻止濃度は、哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の少なくとも10分の1未満〜少なくとも20分の1未満である。
【0010】
非常に多様な微生物感染症を本発明の環状ペプチドによって治療することができる。例えば、標的微生物は、細菌株、酵母株、真菌株、単細胞生物、単細胞寄生虫、または関連生物となりうる。一つの態様において、標的微生物はグラム陽性菌またはグラム陰性菌である。
【0011】
本発明の環状ペプチドは、微生物の膜内で、または膜に結合することによって超分子構造に自己構築すると考えられている。そのような超分子構造は、例えば、ナノチューブ、会合して軸に対して平行なナノチューブの筒または集団、会合したナノチューブのカーペット、またはその混合物となりうる。これらのタイプの超分子構造は、哺乳類細胞膜の透過性化、脱分極または破壊と比較して、選択的に微生物細胞膜の透過性化、脱分極または破壊(例えば、溶解)を誘導することができる。
【0012】
本発明の環状ペプチドは、微生物の細胞膜に対して絶対必要な生体分子に対して親和性を有する側鎖を有する複数のアミノ酸を有してもよい。そのような生体分子は、微生物の膜上または膜内で、環状ペプチドの超分子構造への選択的な構築を促進することができる。ほとんどの哺乳類細胞膜は一般的に、ほとんどの微生物の膜と同じ生体分子構造を有しない。本発明の環状ペプチドは好ましくは、所望の抗菌濃度で、微生物の細胞膜と比較して哺乳類の細胞膜と会合しないと考えられる。
【0013】
環状ペプチドは、微生物感染症に対して有効な量で、哺乳類の血流において約6時間またはそれ未満の半減期を有しうる。
【0014】
そのような有効量は、哺乳類細胞の死または溶解の望ましくない量を誘導することなく1回量または分割用量で微生物細胞の死または溶解を引き起こすために十分である環状ペプチドの量である。本発明の好ましい環状ペプチドは、抗菌有効量で赤血球の溶血を実質的に誘導しない。
【0015】
いくつかの態様において、本発明の環状ペプチドは、1回量を投与することができ、それでもなお微生物感染症を治療するために有効である。または、本発明の環状ペプチドは、1〜10日間にわたって連続的に、または多数回投与することができる。本発明の環状ペプチドの有効量には、約0.1 mg/kg〜約100 mg/kg体重、または約0.5 mg/kg〜約50 mg/kg体重、約1.0 mg/kg〜約30 mg/kg体重、および本明細書に記載する他の量が含まれる。
【0016】
本発明の環状ペプチドは一般的に、約25%〜約88%のD-および/またはL-アミノ酸を有する。いくつかの態様において、極性アミノ酸の割合は、D-およびL-アミノ酸の総数の約33%または50%〜約65%または88%となりうる。このように、例えば、本発明の8残基環状ペプチドは、極性のD-およびL-アミノ酸少なくとも1個、または2〜7個を有しうる。他の8残基環状ペプチドは、例えば、極性D-およびL-アミノ酸を3〜5個有すると考えられる。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状ペプチドは、極性D-およびL-アミノ酸を2〜5個有しうる。他の6残基環状ペプチドは、極性D-およびL-アミノ酸を3〜4個有してもよい。これらの極性のD-またはL-アミノ酸の少なくとも一つは、他の極性D-またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接してもよい。または、少なくとも一つの極性D-またはL-アミノ酸が、非極性D-またはL-アミノ酸のみに隣接してもよい。
【0017】
多様な極性アミノ酸が当業者に利用可能である。本発明のペプチドにおいて用いることができる極性のD-およびL-αアミノ酸の例には、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、システイン、ホモシステイン、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンのD-またはL-エナンチオマーが含まれる。
【0018】
本発明の環状ペプチドは一般的に、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸を約25%〜約88%有する。いくつかの態様において、イオン化可能なアミノ酸の割合は、D-およびL-アミノ酸の総数の約33%または50%〜約65%または88%となりうる。このように、例えば、6残基または8残基環状ペプチドは、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸少なくとも1個、または2個もしくは3個もしくはそれ以上を有しうる。他の態様において、本発明の環状ペプチドは、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸を4〜6個有しうる。そのようなイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、他の極性またはイオン化可能なD-またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接しうる。または、本発明の環状ペプチドは、非極性D-またはL-アミノ酸のみに隣接するイオン化可能なD-またはL-アミノ酸少なくとも一つを有しうる。
【0019】
多くのタイプのイオン化可能なアミノ酸が当業者に利用可能であり、本発明は、そのような全てのイオン化可能アミノ酸を企図する。イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸の例には、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンのD-またはL-エナンチオマーが含まれる。
【0020】
本発明の環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸残基を有しうる。本発明の環状ペプチドは一般的に、D-および/またはL-非極性アミノ酸約12%〜約75%を有する。いくつかの態様において、非極性アミノ酸の割合は、D-および/またはL-アミノ酸の総数の約50%〜約67%または75%となりうる。このように、例えば、本発明の8残基環状ペプチドは、非極性のD-および/またはL-アミノ酸少なくとも1個、または2〜7個を有しうる。他の8残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸3〜5個を有してもよい。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸2〜5個を有する。他の6残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸3〜4個を有してもよい。これらの非極性D-および/またはL-アミノ酸の少なくとも一つは、他の非極性D-および/またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接してもよい。または少なくとも一つの非極性D-またはL-アミノ酸が、極性D-またはL-アミノ酸のみに隣接してもよい。
【0021】
多くのタイプの非極性アミノ酸が当業者に利用可能であり、本発明はそのような全ての非極性アミノ酸を企図する。非極性アミノ酸の例には、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ノルロイシン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンのD-およびL-エナンチオマーが含まれる。
【0022】
蛋白質において天然に認められるアミノ酸の他に、他の天然に存在するアミノ酸も、天然に存在しない合成アミノ酸と同様に用いてもよい。
【0023】
一つの態様において、本発明の環状ペプチドは式Iのアミノ酸配列を有しうる:
式中、
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個までの同数を有する。
【0024】
もう一つの態様において、本発明の環状ペプチドは、式IIを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中:
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0025】
さらにもう一つの態様において、本発明の環状ペプチドは、式IIIを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中:
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0026】
さらにもう一つの態様において、環状ペプチドは式IVaまたはIVbのアミノ酸配列を有する:
式中:
nが0〜4までの整数であり;
mが1〜7までの整数であり;
X1、X2、およびX3が、それぞれ個々に極性アミノ酸であり;
Y1、Y2、およびY3が、それぞれ個々に非極性アミノ酸であり;ならびに
環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0027】
もう一つの態様において、環状ペプチドは、式VaまたはVbのアミノ酸配列を有する:
式中:
qが、2〜7までの整数であり;
X1およびX2が、個々に極性アミノ酸であり;ならびに
Y1およびY2が、個々に非極性アミノ酸である。
【0028】
しかし、上記の式の請求の環状ペプチドは、完全に非極性アミノ酸のみからなるペプチドを除外する。その上、以下の配列の如何なる一つも有するペプチドも上記の式の一つまたはそれ以上から除外してもよい:
【0029】
さらに、以下の配列は、上記の式および関連組成物から除外してもしなくてもよい:
しかし、除外された配列の如何なるものも含む、上記の配列の如何なるものも有する環状ペプチドは、本発明の薬学的組成物およびペプチド内に含まれてもよくまたは除外してもよい。
【0030】
環状ペプチドはしばしば、例えば、D-およびL-αアミノ酸約4個〜約16個を有する。他の態様において、環状ペプチドは、D-およびL-αアミノ酸約6個〜約10個または12個を有する。なおさらに他の態様において、D-およびL-αアミノ酸約6個または約8個を有する環状ペプチドを用いる。
【0031】
本発明の薬学的組成物は、本発明の少なくとも一つの環状ペプチド、または本発明の二つまたはそれ以上の異なる環状ペプチドをの有効量を含みうる。これらの組成物には同様に、薬学的に有効な担体が含まれる。
【0032】
本発明に従って、環状ペプチドは、D-またはL-αアミノ酸で構成される必要はなく、またはホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有しうる。そのようなβ-アミノ酸が、当業者に利用可能である。βアミノ酸が、置換基1、2個によってαまたはβ炭素で置換することができる。環状β-ペプチドがホモキラルである限り、SまたはRキラリティのいずれかの一置換βアミノ酸を、環状βペプチドの構築に用いることができる。本発明のホモキラルβペプチドにおいて用いられる二置換βアミノ酸が、環状βペプチドがホモキラルである限り、相対的R,RまたはS,Sジアステレオマー立体配置を有する。言い換えれば、本発明の環状β-ペプチドのβ-アミノ酸が、ホモキラルでなければならない、すなわちαおよび/またはβ骨格炭素での置換基は、全てSおよび/またはS,Sまたは全てRおよび/またはR,Rでなければならない。β-アミノ酸を有する環状ペプチドは、一般的に少なくとも一つの極性側鎖を有する少なくとも一つのβ-アミノ酸を有する。好ましいβ-ペプチドは、哺乳類細胞の望ましくない溶解を実質的に引き起こさない。
【0033】
一つの態様において、本発明の環状β-ペプチドは、式VIのアミノ酸配列を有しうる:
式中:
各pが個々に0〜7までの整数であり;
各Z1、Z3、Z5、Z7、Z9、Z11、Z13、Z15、Z17、およびZ19が、個々に一置換β-アミノ酸であり;
各Z2、Z4、Z6、Z8、Z10、Z12、Z14、Z16、Z18、およびZ20が、個々に二置換β-アミノ酸であり;ならびに
式中、環状β-ペプチドは、ホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有する。したがって、本発明は、これらの(複数の)環状ペプチドが、例えば式VIに提供されるように、ホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有する、少なくとも一つの環状ペプチド、または二つもしくはそれ以上の異なる環状ペプチドの有効量を含む薬学的組成物を企図する。
【0034】
本発明はまた、配列が交互のD-およびL-αアミノ酸を有するアミノ酸4個〜約16個の配列を含む環状ペプチドの、哺乳類または動物細胞の死の望ましくない量を誘導することなく微生物細胞の死を誘導するために十分な量を微生物細胞に接触させる段階を含む、ヒトおよび他の動物における微生物感染症を治療する方法を提供する。そのような環状ペプチドは、またはホモキラルβアミノ酸3個〜約10個の配列を有しうる。
【0035】
本発明はさらに、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく、標的細胞において細胞死を誘導するために一つまたはそれ以上の環状ペプチドをスクリーニングすることを含む、標的細胞タイプに対して選択的に細胞障害性である環状ペプチドを同定する方法を提供する。そのような環状ペプチドは、例えばアミノ酸4〜約16個の交互のD-およびL-αアミノ酸配列を含んでもよい。または、そのような環状ペプチドは、ホモキラルβ-アミノ酸3〜約10個の配列を有してもよい。
【0036】
本発明はまた、以下を含む、標的細胞タイプに対して選択的に細胞障害性である環状ペプチドを同定する方法を提供する:(a)組み合わせライブラリにおける各環状ペプチドがアミノ酸4個〜約16個の交互のD-およびL-αアミノ酸配列を含む、環状ペプチドの組み合わせライブラリを作製する段階;および(b)第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく標的細胞において細胞死を誘導することに関して組み合わせライブラリから環状ペプチドをスクリーニングする段階。または、そのような環状ペプチドは、ホモキラルβ-アミノ酸3〜約10個の配列を有してもよい。ライブラリは、単一の環状ペプチド、または環状ペプチドの混合物を作製するために用いることができる。次に、抗菌活性を示す環状ペプチドの混合物を、一つまたはそれ以上の混合物において一つまたはそれ以上の抗菌活性のある環状ペプチドを同定するためにさらにスクリーニングすることができ、次にこれを単離または合成して、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく、標的細胞において細胞死を誘導するか否かに関して再試験する。
【0037】
本発明はさらに、標的細胞タイプに対して選択的に細胞障害性である環状ペプチドを同定する方法を提供する。本発明の方法は、アミノ酸4個〜16個の交互のD-およびL-αアミノ酸配列を含む少なくとも一つの環状ペプチドを合理的にデザインする段階を含む。またはそのような環状ペプチドはホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有してもよい。方法はさらに、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく、標的細胞における細胞死の誘導に関してそのような合理的にデザインされた環状ペプチドをスクリーニングすることを含む。
【0038】
環状ペプチドの合理的デザインは、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく、標的細胞において細胞死を誘導することができる少なくとも一つの有効な環状ペプチドを組み合わせライブラリから同定する段階、および合理的にデザインされた環状ペプチドを作製するために、有効な環状ペプチドの交互のD-およびL-αアミノ酸配列において少なくとも一つのアミノ酸を異なるアミノ酸に交換する段階を含みうる。次に、合理的にデザインされた環状ペプチドを、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく標的細胞において細胞死を誘導するか否かに関してスクリーニングすることができる。または、そのような環状ペプチドは、ホモキラルβアミノ酸3個〜約10個の配列を有してもよい。
【0039】
これらのタイプのスクリーニング法において、標的細胞タイプは微生物となりえて、第二の細胞タイプは哺乳類細胞、例えば哺乳類の赤血球となりうる。第二の細胞タイプの細胞死は、赤血球の溶血を検出することによって検出することができる。
【0040】
上記の方法は、第三の細胞タイプをスクリーニングすることをさらに含みうる。そのようなスクリーニングは、ペプチドが第三の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導するか否かを決定することを含みうる。方法はまた、ペプチドが実質的に全ての標的細胞を殺す、または標的細胞の増殖を阻害することができる最小阻害用量を決定することを含みうる。
【0041】
スクリーニングは、ペプチドを標的細胞タイプおよび他の細胞タイプ(例えば、第二、第三、または他の細胞タイプ)に個々に接触させることによってインビトロで行うことができる。または、スクリーニングは、標的細胞タイプともう一つの細胞タイプまたは複数のタイプを含む試験動物に少なくとも一つのペプチドを投与すること、およびペプチドが標的細胞タイプに対して毒性であるが、もう一つの細胞タイプまたは複数のタイプに対して実質的または望ましくない毒性を示さないか否かを決定することによって、インビボで行うことができる。そのような方法は、ペプチドが動物の健康に有害な影響を及ぼすか否かを決定することも含みうる。ペプチドが動物の健康に有害な影響を及ぼすか否かを決定することは、病理的または組織学的方法によって動物の体液または解剖学的構造を調べることを含みうる。
【0042】
本発明はさらに、各ペプチドが交互のD-およびL-αアミノ酸配列においてアミノ酸4個〜約16個を含む、またはペプチドがβ-アミノ酸3個〜約10個を含む、環状ペプチドの溶液を、(複数の)標的生体分子と接触させること、および例えば、ペプチドが、生体分子と選択的に会合する超分子構造へと自然に構築されるか否かを決定することを含む、選択された細胞表面において一つまたはそれ以上の標的生体分子と選択的に会合することができる環状ペプチドを同定する方法を提供する。標的生体分子は、例えば、生きている細胞の表面上で、またはリポソームの表面上で示されうる。または、ペプチドは(複数の)標的生体分子に接触させることができる。方法はさらに、(複数の)生体分子と選択的に会合する超分子構造へと自然に構築されるペプチドの構造を決定することを含みうる。
【0043】
本発明はまた、実質的に細菌がインビトロで増殖しない環状ペプチドの最小発育阻止濃度を決定することを含む、交互のD-およびL-αアミノ酸のアミノ酸配列を有する環状ペプチド、またはβ-アミノ酸3個〜約10個を含む環状ペプチドによって微生物感染症を治療するために治療的に有効な用量を評価または確認する方法を提供する。
【0044】
本発明はまた、一つまたはそれ以上の他の抗菌剤と共に本発明の一つまたはそれ以上の環状ペプチドを含む組成物も提供する。そのような物質には、ペニシリン、バンコマイシン、エリスロマイシン、および他の治療物質が含まれる。
【0045】
哺乳類および鳥類は、本明細書に記載され、請求される方法および組成物によって治療してもよい。そのような哺乳類および鳥類には、ヒト、イヌ、ネコ、および家畜、例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、七面鳥等が含まれる。
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、哺乳類細胞に対して実質的または望ましくない毒性を示すことなく微生物を迅速かつ選択的に殺す低分子環状ペプチドおよび組成物を提供する。本発明には、平坦な環状立体構造の見本となりうる交互のD-およびL-αアミノ酸の配列、またはβ-アミノ酸の配列のいずれかを有する環状ペプチド、および環状ペプチドを含む薬学的組成物が含まれる。そのような環状の立体構造は、環状ペプチドのアミノ酸側鎖を環の中心から突出させ、アミド骨格を環構造の平面に対してほぼ垂直な方向にする。細胞膜構成成分との相互作用による側鎖の電荷中和および/または細胞膜の誘電率の低い環境との接触のような水素結合にとって好ましい条件では、環状ペプチドは、分子間水素結合を通して自己構築して、超分子構造を形成することができると考えられている。単に一つまたはそれ以上のD-アミノ酸を含む環状ペプチドは、平坦な環状の立体構造をとらず、環状ペプチドの超分子構造への自己構築にとって必要な骨格立体構造を有しない。本発明の環状ペプチドが有効である標的微生物には、細胞膜を有し、哺乳類に感染することができる如何なる単細胞生物または寄生虫も含む微生物が含まれる。例えば、標的微生物には、細菌、真菌、蠕虫、原虫、酵母株および他の単細胞生物が含まれる。本発明の環状ペプチドは、グラム陰性およびグラム陽性菌の双方に対して活性であることが判明している。
【0047】
環境の小さい差、例えば異なる細胞膜の組成の差は、提唱される構築プロセスの過程および本質に影響を及ぼしうる。この特徴は、治療的有効な用量および投与レジメで哺乳類細胞において実質的に毒性を示さない、または望ましくない毒性を示さずに、特定の微生物種に対して選択された環状ペプチドの抗微生物活性を標的にして最適にするために本発明において用いられる。超分子構造は、動的な自己構築/解離プロセスを通してその隣接環境に反応して、最も熱動力学的に都合のよい構築体を発見すると考えられている。構築のあいだ、ペプチドの超分子構造は、様々な地形的に関連した構築体を試すことによって細胞膜の環境を知覚して反応すると考えられている。治療的に望ましい濃度で非標的哺乳類の膜において、本発明の好ましい環状ペプチドは、熱動力学的に都合のよい超分子構造を採用しない、または採用することができないと考えられている。このように、哺乳類の膜は、そのような環状ペプチドの存在によって実質的なまたは望ましくない影響を受けない。しかし、選択された微生物膜では、本発明の環状ペプチドは、微生物の膜を脱安定化(例えば、溶解)、透過性化、および/または脱分極させて、それによって微生物の膜貫通イオンおよび電気的勾配ならびに他の必須の機能を破壊して、速やかに微生物の細胞死に至る、独自のエネルギー的に都合のよい超分子構造を形成すると考えられている。
【0048】
環状ペプチドのアミノ酸配列における小さい変化は、超分子レベルでの大きい差に増幅することができる。このように、環状ペプチドの構造の変化は、ペプチド相互作用を拘束する可能性があり、超分子構造の形成を、特定の膜の構成成分、膜分配特性、取り込み特性等を有する特定の細胞膜に制限する可能性がある。
【0049】
本発明の自己構築ペプチド超分子構造のもう一つの特徴は、所定の環状ペプチドが多数のジアステレオマーナノチューブ構築体を形成できることであると考えられている。この特性は、骨格-骨格水素結合がナノチューブ構造の自己構築を主に指示すると考えられるという事実に由来する。異なるように積み重ねられたサブユニットは、同じまたはほぼ同じ管状β-シート様の水素結合した骨格構造を共有するトポイソメリック超分子構造を生じることができる。単一の環状ペプチドから構築された多様な超分子構造は、微生物がこれらの抗生物質に対して耐性を発達させうる可能性を最小限にする。
【0050】
環状D-およびL-αペプチド骨格、または環状β-ペプチド骨格を保持しながらペプチド配列を変化させることによって、多様な環状ペプチドが微生物膜において選択的にターゲティングおよび構築できるか否かを迅速にスクリーニングまたは評価することができる。それらはまた、膜透過性、脱分極、または脱安定化の増加に関して調べることによって、抗菌活性に関してスクリーニングおよび評価することができる。
【0051】
「アミノ酸」という用語には、DまたはL型の天然のαアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)と共にβ-アミノ酸、合成および非天然アミノ酸が含まれる。多くのタイプのアミノ酸残基が環状ペプチドにおいて有用であり、本発明は天然の遺伝子コードされたアミノ酸に限定されない。本明細書に記述の環状ペプチドにおいて利用することができるアミノ酸の例は、例えば、Fasman、1989、CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、CRC出版、およびその中で引用されている参考文献に認められうる。多様なアミノ酸残基のもう一つの起源は、RSPアミノ酸類似体インク(RSP Amino Acids Analogues, Inc)のウェブサイト(www.amino-acids.com)によって提供される。
【0052】
本明細書において用いられるように「哺乳類」という用語は、動物、一般的に微生物の感染を受けやすいまたは微生物感染を有する温血動物を意味する。哺乳類には、ウシ、バッファロー、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ラット、ウサギ、マウス、およびヒトが含まれる。同様に、他の家畜、飼育動物、および捕獲動物が含まれる。「農場飼育動物」という用語には、ニワトリ、七面鳥、魚、および他の家畜が含まれる。
【0053】
本明細書において用いられるように、「ナノチューブ」または「ナノチューブル」とは、本発明の環状ペプチドから自然に形成される可能性がある小さい管である。本発明の環状ペプチドは、積み重なってナノチューブで構成される超分子構造を形成すると考えられる。環状ペプチド間の水素結合は、環状ペプチドからの超分子構造の自己構築を促進するために役立つと考えられている。それぞれのナノチューブは、管の中心に孔を有し、この周囲はナノチューブを形成する積み重ねられた環状ペプチドの一連のペプチド骨格によって取り囲まれる。孔の大きさは、ナノチューブを形成するアミノ酸の数に依存する。一般的に、用いる環状ペプチドの環の大きさに応じて、イオン、糖、および他の低分子が、ナノチューブの孔の中を移動することができる。より大きい分子はまた、より大きい環状ペプチドから形成された孔の中、およびナノチューブの構築体によって形成された超分子構造の中を通過することができる。例えば、いくつかの態様において、超分子構造は、ナノチューブの集団で構成される筒状構造であると考えられる。他の態様において、超分子構造は、ナノチューブの「カーペット」または「カーペット様」配置であると考えられている。
【0054】
本明細書において用いられるように、「ペプチド」という用語は、一つのアミノ酸のα-カルボキシル基が、隣接するアミノ酸の主鎖(α-またはβ-)アミノ基によって結合したアミドによって結合されるアミノ酸残基4〜16個の配列が含まれる。本明細書において記載され、請求される方法において用いるために提供されるペプチドは、環状である。本明細書において特に引用したペプチド配列は、左側にアミノ末端および右側にカルボキシ末端として記載される。しかし、ペプチドを環状型で示す場合、配列における第一のアミノ酸が任意に選択される。その上、配列が2本の線に伸びる場合の環状ペプチドの式の場合、第二の線の配列は、右側のN-末端側から左側のC-末端に伸長する。
【0055】
本発明に従って、「超分子構造」は、環状ペプチドの「非共有結合」による構築によって形成されると考えられる多サブユニット構造、例えば筒状およびカーペット状のナノチューブである。超分子構造は、反応物質または単量体のあいだに共有結合が形成される分子またはポリマーシステムとは対比をなすかも知れない。提案されるペプチド超分子構造は、可逆的な構造の構築および解離を受けることができる熱動力学的に制御された構築体である。そのような構築-解離は、例えば環境、サブユニット構造、側鎖の選択、側鎖の相互作用、ならびにシステムに作用する非共有結合力の特性および組み合わせに依存すると考えられる。対照的に、共有結合ポリマー構造は、環境に反応して構築および解離する構造よりむしろ力学的に安定な構造をデザインするために用いられている。したがって、超分子構造を形成することができるペプチドを含む本発明の組成物の一つの魅力的な特徴は、様々な細胞膜タイプにおけるその選択能である。そのような選択は、細胞膜環境と比較した環状ペプチドの組成ならびに細胞膜の分子および/または超分子成分によって決定される都合のよい熱力学的な力によって促進される。
【0056】
自己構築、溶血、毒性、または細胞溶解等を参照する場合に「実質的にない」という用語は、自己構築、溶血、毒性、細胞溶解等が試験または所望のペプチド用量または濃度でほとんどまたは全く存在しないことを意味する。例として、溶血が「実質的にない」とは、試験または所望のペプチド用量または濃度で検出可能な溶血が約20%未満、または15%未満もしくは10%未満である、または検出できないことを意味しうる。同様に、毒性または溶解が「実質的にない」とは、試験または所望のペプチド用量または濃度で検出可能な毒性または溶解が20%未満、または15%未満もしくは10%未満である、または検出できないことを意味しうる。他の態様において、溶血、毒性、または溶解が「実質的にない」とは、試験または所望のペプチド用量または濃度で、溶血、毒性、または溶解が約5%未満、または検出できないことを意味する。
【0057】
「治療的有効量」という用語は、微生物感染症を制御するために十分な量である。治療的に有効な量は、一般的に感染した哺乳類における微生物の量および/または微生物の存在を特徴とする疾患状態を、無処置被験者と比較して少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、または少なくとも約80%制御する。いくつかの態様において、治療的有効量は、感染哺乳類における微生物の量および/または微生物の存在を特徴とする疾患状態を、少なくとも約90%またはそれ以上制御する。これらの割合は、無処置被験者と比較して、感染哺乳類に認められる微生物の量の減少、および/または感染哺乳類における微生物の存在を特徴とする疾患状態に関連した症状の減少を意味する。他の態様において、「治療的有効量」は、感染を引き起こす標的微生物の細胞膜を透過性化、脱分極、または脱安定化するために必要な環状ペプチドの量である。「治療的有効量」という用語はまた、感染症を引き起こす標的微生物を殺すために必要な量となりうる。微生物を制御するために必要な治療物質の有効量は、微生物のタイプ、動物に既に存在する微生物の量、哺乳類の年齢、性別、健康状態、および体重、ならびに本発明の環状ペプチドの哺乳類における微生物感染症の制御能のような要因に従って変化しうる。
【0058】
ペプチドおよびペプチド組成物の治療的有効量はまた、微生物感染症の再発の予防を含む、微生物感染症を予防するために用いることができる。
【0059】
ペプチド、ペプチド変種、およびその誘導体
本発明は、長さがアミノ酸4〜約16個、または約6〜16個である交互のD-およびL-アミノ酸のアミノ酸配列を有する環状ペプチドを含む環状ペプチドおよび組成物を提供する。または、本発明の環状ペプチドは、βアミノ酸3〜約10個を有しうる。一般的に、環状のD,L-αペプチドは、アミノ酸プロリンおよびグリシンを含まない。本発明に従って、β-アミノ酸が、α-もしくはβ-炭素またはその双方で置換することができる。環状βペプチドがホモキラルである限り、SまたはRキラリティの一置換β-アミノ酸を、環状β-ペプチドの構築のために用いることができる。本発明において用いられる二置換β-アミノ酸が、環状ペプチド構造におけるβ-アミノ酸残基がホモキラルである限り、相対的なR,RまたはS,Sジアステレオマー立体構造を有しなければならない。β-アミノ酸を有する環状ペプチドは一般的に、少なくとも一つの極性側鎖を有する少なくとも一つのβ-アミノ酸を有する。
【0060】
本発明の環状ペプチドは、微生物膜の中で、またはその上で構築されると、微生物膜の脱分極および/または透過性化および/または脱安定化を引き起こすことができる超分子構造を形成するように自己構築すると考えられる。いくつかの場合において、環状ペプチドは微生物、例えば細菌の溶解を引き起こす。超分子構造への自己構築は、隣接する環状ペプチド間のβ-シート水素結合の形成と逆平行または平行に環状ペプチドを積み重ねることによって起こると考えられている。しかし、好ましい環状ペプチドは、例えば、哺乳類細胞における毒性に関するアッセイ法または哺乳類赤血球の溶血に関して試験または治療的有効量で測定した場合に、哺乳類の細胞膜では超分子構造へと容易に自己構築されないと考えられる。
【0061】
本発明の環状ペプチドは、α-アミノ酸またはβ-アミノ酸から構成することができる。本発明の環状ペプチドのアミノ酸配列には、D,L-αアミノ酸環状ペプチドの場合には極性アミノ酸少なくとも1個、環状β-ペプチドの場合には極性側鎖少なくとも1個が含まれる。極性アミノ酸の割合は、例えば、約25%または33%〜約65%または88%の範囲となりうる。しかし、いくつかの態様において、大多数のアミノ酸が極性である。例えば、極性アミノ酸の割合は、アミノ酸総数の約50%〜約88%となりうる。極性および非極性アミノ酸の正確な数は、所定の環状ペプチドについて求められる大きさおよび特性に依存する。いくつかの態様において、本発明の環状ペプチドの大きさは、D,L-αアミノ酸約6〜約10個、またはβ-アミノ酸3〜約10個である。他の態様において、本発明の環状ペプチドの大きさは、D,L-αアミノ酸約6〜約8個、またはβ-アミノ酸4〜約6個である。このように、例えば、本発明の8残基環状ペプチドは、極性のD-および/またはL-α-アミノ酸を少なくとも1個、または2〜7個有しうる。他の8残基環状ペプチドは、例えば、極性のD-および/またはL-α-アミノ酸を3〜5個有すると考えられる。好ましい8残基環状ペプチドは、極性アミノ酸3個、4個、または5個を有する。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状ペプチドは、極性のD-および/またはL-α-アミノ酸を2〜5個有しうる。他の6残基環状ペプチドは、極性のD-および/またはL-α-アミノ酸を3〜4個有してもよい。これらの極性のD-またはL-α-アミノ酸の少なくとも一つは、少なくとも一つの他の極性のD-またはL-α-アミノ酸に隣接してもよい。または、少なくとも一つの極性のD-またはL-α-アミノ酸が、非極性のD-またはL-α-アミノ酸に限って隣接してもよい。β-アミノ酸約4〜約8個を有するβペプチドは、例えば、αおよびβ骨格置換レベルに応じて、極性側鎖約2〜12個を有してもよい。
【0062】
本発明の環状D,L-αペプチドは一般的に、イオン化可能なアミノ酸残基約25%〜約88%を有する。いくつかの態様において、イオン化可能なアミノ酸の割合は、D-および/またはL-アミノ酸の総数の約33%または50%〜約65%または88%となりうる。このように、例えば、6または8残基環状ペプチドは、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸を少なくとも1個、または2個もしくは3個もしくはそれ以上有しうる。他の態様において、本発明の環状ペプチドは、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸4〜6個を有しうる。そのようなイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、他の極性またはイオン化可能なD-またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接しうる。または、本発明の環状ペプチドは、非極性のD-またはL-アミノ酸に限って隣接するイオン化可能なD-またはL-アミノ酸を少なくとも一つ有しうる。本発明の環状β-ペプチドは、一般的にイオン化可能なアミノ酸側鎖を約25%〜約88%有する。いくつかの態様において、イオン化可能なアミノ酸側鎖の割合は、アミノ酸側鎖の総数の約33%または50%〜約65%または88%となりうる。このように、例えば、4〜6残基環状β-ペプチドは、イオン化可能なアミノ酸側鎖を少なくとも1個、または2個もしくは3個もしくはそれ以上を有しうる。他の態様において、本発明の環状β-ペプチドは、イオン化可能なアミノ酸側鎖4〜6個を有しうる。
【0063】
本発明の環状ペプチドは、非極性のD-および/またはL-アミノ酸を有しうる。選択される非極性アミノ酸の数は、ペプチドの大きさが変化するにつれて、そして選択された微生物膜の環境が変化するにつれて変化しうる。本発明の環状ペプチドは一般的に、D-およびL-非極性アミノ酸約12%〜約75%を有する。いくつかの態様において、非極性アミノ酸の割合は、D-およびL-アミノ酸の総数の約50%〜約67%または75%となりうる。このように、例えば、本発明の8残基環状ペプチドは非極性D-および/またはL-アミノ酸少なくとも1個、または2〜7個を有しうる。他の8残基環状ペプチドは非極性D-および/またはL-アミノ酸3〜5個を有しうる。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸2〜5個を有する。他の6残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸3〜4個を有してもよい。これらの非極性D-および/またはL-アミノ酸の少なくとも一つは、他の非極性D-またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接してもよい。または、少なくとも一つの非極性D-またはL-アミノ酸が、極性D-および/またはL-アミノ酸に限って隣接してもよい。一般的に、環状ペプチドには、アミノ酸プロリンまたはグリシンが含まれないが、特定の環状ペプチドは、プロリンまたはグリシンが含まれても良好な活性を有する可能性がある。
【0064】
本発明に従って、β-アミノ酸が、α-またはβ-炭素またはその双方で非極性側鎖を有しうる。選択した非極性のアミノ酸側鎖の数は、ペプチドの大きさが変化するにつれて、そして選択された微生物膜の環境が変化するにつれて変化しうる。本発明の環状β-ペプチドは、一般的に非極性アミノ酸側鎖約12%〜約75%を有する。いくつかの態様において、非極性アミノ酸側鎖の割合は、アミノ酸側鎖の総数の約50%〜約67%または75%となりうる。このように、例えば、本発明の8残基環状β-ペプチドは、非極性アミノ酸側鎖少なくとも1個、または2〜7個を有しうる。他の8残基環状β-ペプチドは、非極性アミノ酸側鎖3〜5個を有してもよい。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状β-ペプチドは、非極性アミノ酸側鎖2〜5個を有する。他の6残基環状β-ペプチドは、非極性アミノ酸側鎖3〜4個を有してもよい。
【0065】
環状ペプチドにおいて用いられるアミノ酸が、遺伝子コードされるアミノ酸、天然に存在する非遺伝子コードアミノ酸、または合成アミノ酸となりうる。上記の如何なるもののL-およびD-エナンチオマーもいずれも環状ペプチドにおいて用いられる。遺伝子コードL-アミノ酸20個および非コードアミノ酸のいくつかの例に関して本明細書において用いられるアミノ酸表記法を表1に示す。
【0066】
(表1)
【0067】
遺伝子コードされていない、そして本発明の環状ペプチドに存在しうる特定の一般的に認められるアミノ酸には、β-アラニン(β-Ala)および3-アミノプロピオン酸(Dap)、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4-アミノ酪酸等のような他のωアミノ酸;α-アミノイソ酪酸(Aib);ε-アミノヘキサン酸(Aha);δ-アミノ吉草酸(Ava);メチルグリシン(MeGly);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t-ブチルアラニン(t-BuA);t-ブチルグリシン(t-BuG);N-メチルイソロイシン(MeIle);フェニルグリシン(Phg);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle);2-ナフチルアラニン(2-Nal);4-クロロフェニルアラニン(Phe(4-Cl));2-フルオロフェニルアラニン(Phe(2-F));3-フルオロフェニルアラニン(Phe(3-F));4-フルオロフェニルアラニン(Phe(4-F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic);β-2-チエニルアラニン(Thi);メチオニンスルホキシド(MSO);ホモアルギニン(hArg);N-アセチルリジン(AcLys);2,3-ジアミノ酪酸(Dab);2,3-ジアミノ酪酸(Dbu);p-アミノフェニルアラニン(Phe(pNH2));N-メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys)およびホモセリン(hSer)が含まれるがこれらに限定されない。企図されるさらなるアミノ酸類似体には、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、馬尿酸、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸、スタチン、α-メチルアラニン、パラ-ベンゾイル-フェニルアラニン、プロパルギルグリシン、およびサルコシンが含まれる。本発明の範囲に含まれるペプチドは、L-またはD-立体配座の上述のアミノ酸の如何なるもの、または当業者に既知の他の如何なるアミノ酸も有しうる。
【0068】
互いに置換可能なアミノ酸が一般的に、類似のクラスまたはサブクラス内に存在する。当業者に既知であるように、アミノ酸が、主にアミノ酸側鎖の化学および物理特性に応じて異なるクラスに入りうる。例えば、いくつかのアミノ酸が一般的に、親水性または極性アミノ酸と見なされ、他のアミノ酸が、疎水性または非極性アミノ酸であると見なされる。極性アミノ酸には、酸性、塩基性、または親水性側鎖を有するアミノ酸が含まれ、非極性アミノ酸には、芳香族または疎水性側鎖を有するアミノ酸が含まれる。非極性アミノ酸がさらに、特に脂肪族アミノ酸を含むようにさらに分割してもよい。本明細書において用いられるアミノ酸のクラスの定義は以下の通りである:
【0069】
「非極性アミノ酸」は、極性ではなく、一般的に水溶液に対して撥水性であって生理的pHで非荷電である側鎖を有するアミノ酸を意味する。遺伝子コードされる疎水性アミノ酸の例には、Ala、Ile、Leu、Met、Trp、Tyr、およびValが含まれる。遺伝子コードされない非極性アミノ酸の例には、t-BuA、ChaおよびNleが含まれる。
【0070】
「芳香族アミノ酸」は、共役π電子系(芳香族基)を有する少なくとも一つの環を含む側鎖を有する非極性アミノ酸を意味する。この芳香族基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、スルホニル、ニトロ、およびアミノ基のような置換基と共に他の基によってさらに置換してもよい。遺伝子コードされた芳香族アミノ酸の例には、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンが含まれる。一般的に認められる非遺伝子コード芳香族アミノ酸には、フェニルグリシン、2-ナフチルアラニン、β-2-チエニルアラニン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、および4-フルオロフェニルアラニンが含まれる。
【0071】
「脂肪族アミノ酸」は、飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖、または環状炭化水素側鎖を有する非極性のアミノ酸を意味する。遺伝子コードされる脂肪族アミノ酸の例には、Ala、Leu、ValおよびIleが含まれる。非コード脂肪族アミノ酸の例にはNleが含まれる。
【0072】
「極性アミノ酸」は、生理的pHで荷電または非荷電であって、二つの原子によって共有される電子対が原子の一つによってより近くに維持される結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸を意味する。極性アミノ酸が一般的に親水性であり、それらが水溶液によって引きつけられる側鎖を有するアミノ酸を有することを意味する。遺伝子コードされる極性アミノ酸の例には、アスパラギン、システイン、グルタミン、リジン、およびセリンが含まれる。非遺伝子コード極性アミノ酸の例には、シトルリン、ホモシステイン、N-アセチルリジン、およびメチオニンスルホキシドが含まれる。
【0073】
「酸性アミノ酸」は、側鎖のpK値が7未満である親水性アミノ酸を意味する。酸性アミノ酸が、典型的に水素イオンの喪失により生理的pHで陰性荷電側鎖を有する。遺伝子コードされる酸性アミノ酸の例には、アスパラギン酸(アスパルテート)およびグルタミン酸(グルタメート)が含まれる。
【0074】
「塩基性アミノ酸」は、側鎖のpKが7より大きい親水性アミノ酸を意味する。塩基性アミノ酸が、典型的にヒドロニウムイオンとの会合により生理的pHで陽性荷電側鎖を有する。遺伝子コードされる塩基性アミノ酸の例には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる。遺伝子コードされない塩基性アミノ酸の例には、非環状アミノ酸であるオルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、およびホモアルギニンが含まれる。
【0075】
「イオン化可能なアミノ酸」は、生理的pHで荷電しうるアミノ酸を意味する。そのようなイオン化可能なアミノ酸には、酸性および塩基性アミノ酸、例えば、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸、D-ヒスチジン、D-アルギニン、D-リジン、D-ヒドロキシリジン、D-オルニチン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リジン、L-ヒドロキシリジン、またはL-オルニチンが含まれる。
【0076】
当業者に認識されるように、上記の分類は絶対的ではない。いくつかのアミノ酸が二つ以上の特徴的な特性を示し、したがって、二つ以上の分類に含めることができる。例えば、チロシンは、非極性芳香環と極性ヒドロキシル基の双方を有する。このように、チロシンは、非極性、芳香性、および極性として記述されうるいくつかの特徴を有する。しかし、非極性環は優勢で、そのようにチロシンは一般的に非極性であると考えられている。同様に、ジスルフィド結合を形成することができる他に、システインも同様に非極性特徴を有する。このように、疎水性または非極性アミノ酸として厳密に分類されないが、多くの場合において、システインは、ペプチドに疎水性または非極性を付与するために用いることができる。
【0077】
上記の遺伝子コードされる、および非コードアミノ酸の分類を下記の表2に要約する。表2は、説明目的に限られ、本明細書に記載のペプチドおよびペプチド類似体を含んでもよいアミノ酸残基の網羅的なリストであると意図されない。本明細書に記載のペプチドを作製するために有用な他のアミノ酸残基は、例えば、Fasman、1989、CRC Practical Handobook of Biochemistry and Molecular Biology、CRCプレスインク、およびそこに引用されている参照文献に見ることができる。アミノ酸残基のもう一つの起源は、RSPアミノ酸類似体インク(RSP Amino Acids Analogues, Inc)のウェブサイト(www.amino-acids.com)によって提供される。本明細書において特に言及していないアミノ酸も、特異的に同定されたアミノ酸と比較して、既知の挙動および/またはその特徴的な化学および/または物理特性に基づいて、上記の分類に都合よく分類することができる。
【0078】
(表2)
【0079】
いくつかの態様において、本発明によって企図される極性アミノ酸には、例えばアルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモシステイン、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、セリン、トレオニン、対応するβ-アミノ酸、および構造的に関連するアミノ酸が含まれる。一つの態様において、極性アミノ酸が、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、リジン、またはオルニチンのようなイオン化可能なアミノ酸である。
【0080】
利用することができる非極性または非極性アミノ酸残基の例には、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン等が含まれる。
【0081】
さらに、ペプチドのアミノ酸配列は、L型よりむしろD型を利用する置換を含む、ペプチドにおける少なくとも一つのアミノ酸残基をもう一つのアミノ酸残基に置換することを含む、ペプチド変種が起こるように改変することができる。
【0082】
ペプチドの残基の一つまたはそれ以上は、ペプチドの生物活性を変化、増強、または保存するためにもう一つの残基に交換することができる。そのような変種は、例えば、対応する非変種ペプチドの生物活性の少なくとも約10%を有しうる。保存的アミノ酸置換、すなわち上記のように類似の化学および物理的特性を有するアミノ酸の置換がしばしば用いられる。
【0083】
したがって、例えば、保存的アミノ酸置換は、アスパラギン酸をグルタミン酸に交換し;リジンをアルギニンまたはヒスチジンと交換し;一つの非極性アミノ酸(アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン)を別のアミノ酸に交換し;および一つの極性アミノ酸(アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン等)をもう一つのアミノ酸に交換することを含む。置換を導入した後、変種を生物活性に関してスクリーニングする。
【0084】
一つの態様において、本発明の環状ペプチドは以下の式Iを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中、
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0085】
もう一つの態様において、本発明の環状ペプチドは、式IIを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中:
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0086】
さらにもう一つの態様において、本発明の環状ペプチドは、式IIIを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中:
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0087】
さらにもう一つの態様において、環状ペプチドは式IVaまたはIVbのアミノ酸配列を有する:
式中:
nが0〜4までの整数であり;
mが1〜7までの整数であり;
X1、X2、およびX3が、それぞれ個々に極性アミノ酸であり;
Y1、Y2、およびY3が、それぞれ個々に非極性アミノ酸であり;ならびに
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0088】
もう一つの態様において、環状ペプチドは、式VaまたはVbのアミノ酸配列を有する:
式中:
qが、2〜7までの整数であり;
X1およびX2が、個々に極性アミノ酸であり;ならびに
Y1およびY2が、個々に非極性アミノ酸である。
【0089】
しかし、上記の式の請求の環状ペプチドは、完全に非極性アミノ酸のみからなるペプチドを除外する。その上、以下の配列の如何なる一つを有するペプチドも上記の式の一つまたはそれ以上から除外してもよい:
【0090】
さらに、以下の配列は、上記の式および関連組成物から除外してもしなくてもよい:
しかし、除外された配列の如何なるものも含む上記の配列の如何なるものも有する環状ペプチドは、本発明の薬学的組成物およびペプチド内に含まれてもよくまたは除外してもよい。
【0091】
例えば、上記の式におけるXアミノ酸が、α-環状ペプチドが交互のD-およびL-αアミノ酸の配列を有する限り、D-セリン、D-トレオニン、D-アスパラギン、D-グルタミン、D-アスパラギン酸、D-システイン、D-グルタミン酸、D-ヒスチジン、D-ホモシステイン、D-アルギニン、D-リジン、D-ヒドロキシリジン、D-オルニチン、L-セリン、L-トレオニン、L-アスパラギン、L-グルタミン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L-ヒスチジン、L-ホモシステイン、L-アルギニン、L-リジン、L-ヒドロキシリジン、またはL-オルニチンとなりうる。
【0092】
いくつかの態様において、一つまたはそれ以上のXアミノ酸がイオン化可能なアミノ酸である。そのようなイオン化可能なアミノ酸には、例えば、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸、D-ヒスチジン、D-アルギニン、D-リジン、D-ヒドロキシリジン、D-オルニチン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リジン、L-ヒドロキシリジン、またはL-オルニチンが含まれる。
【0093】
上記の式におけるYアミノ酸が、例えば、α環状ペプチドが交互のD-およびL-αアミノ酸の配列を有する限り、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-メチオニン、L-イソロイシン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-チロシン、D-アラニン、D-バリン、D-ロイシン、D-メチオニン、D-イソロイシン、D-フェニルアラニン、D-チロシン、またはD-トリプトファンとなりうる。他の態様において、Yアミノ酸が、環状ペプチドが交互のD-およびL-αアミノ酸の配列を有する限り、L-トリプトファン、D-トリプトファン、L-ロイシン、またはD-ロイシンであってもよい。
【0094】
本発明の環状ペプチドには、例えば、配列番号:5、7〜22、26〜29、40、41、43〜55、57、58、61〜67、72〜77、79〜89、91〜93、97〜102、107、109〜112、114〜117、119〜122、125、126、128、129、133、139、140、または141の如何なるものも含まれる。いくつかの態様において、用いられる環状ペプチドは、配列番号:8、9、12、17、18、26、29、47〜52、61、63、67、68、72〜77、84、85、87〜89、91〜93、100、102、107、111、112、119、125、および139を有するペプチドである。本発明の環状ペプチドを含む製剤または組成物は、二つまたはそれ以上の環状ペプチドの混合物を含みうる。
【0095】
本発明の単離精製されたペプチドまたはその変種は、例えば固相ペプチド合成法もしくは酵素触媒ペプチド合成によって、または組換えDNA技術の助けを借りて、インビトロで合成することができる。固相ペプチド合成法は確立されて広く用いられている方法であり、以下のような参考文献に記述されている:Stewartら、「Solid Phase Peptide Synthesis」、W.H.フリーマン社、サンフランシスコ(1969);Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85:2149(1963);Meienhofer、「Hormonal Proteins and Peptides」、C.H. Li編、第2巻(アカデミック出版、1973)、48〜267頁;およびBavaayとMerrifield、「The Peptides」、E. GrossとF. Meienhofer編、第2巻(アカデミック出版、1980)、3〜285頁。これらのペプチドは、免疫アフィニティまたはイオン交換カラムでの画分;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEのような他の陰イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばSephadex G-75を用いたゲル濾過;リガンドアフィニティクロマトグラフィー;または非極性溶媒もしくは非極性/極性溶媒混合物からの結晶化もしくは沈殿によってさらに精製することができる。結晶化または沈殿による精製が好ましい。
【0096】
哺乳類細胞に対して望ましくない毒性をほとんどまたは全く示さない非常に活性な環状ペプチドを同定するために、個々の環状ペプチド、または環状ペプチドのライブラリを作製して、個々の環状ペプチドまたはそれらのライブラリからの環状ペプチドを抗菌活性および毒性に関してスクリーニングすることができる。例えば、ペプチドのライブラリは、Lamら(97 Chem. Rev. 411〜448(1997))によって提供された1ビーズ-1化合物戦略を用いて作製する、またはFurkaら(37 Int. Pept. Prot. Res. 487〜493(1991))のスプリット・プール法によってマクロビーズ上で合成することができる。質量分析配列分析技術は、所定のライブラリ内のあらゆるペプチドの迅速な同定を可能にする。Biemann, K.193 Methods Enzymol. 455(1990)を参照のこと。一般的に、ペプチドの環状化を含む合成操作は、面倒で困難な固相操作の自動化を行わなくてすむように固相支持体上で行われる。その上、合成レジメの最終産物は一般的に、面倒な精製技法を行わなくても生物アッセイ法にとって十分に純粋である。それぞれの合成からのペプチド収量はアッセイ法を50〜100回行うには十分となりうる。迅速な自動化可能な質量分析に基づくペプチド配列分析は、高い活性を有するペプチド配列を同定して、活性の低いペプチド配列を廃棄するために行うことができる。
【0097】
用いられる合成アプローチは、組み合わせライブラリ混合物と面倒なデコンボリューション技術とを用いなくてすむように、個々に分離可能で同定可能なペプチド配列を提供することができる。しかし、純粋でないペプチド混合物のライブラリも同様に試験のために作製することができる。純粋でないペプチド調製物は、配列の組み合わせの迅速なスクリーニングのために用いることができる。ペプチドの混合物が活性を示す場合、混合物中のペプチドは個々に単離して試験するか、または、純粋でない混合物に存在することが知られている配列を有する純粋なペプチドを個々に調製して試験することができる。
【0098】
本発明のペプチドまたはペプチド変種のカルボキシ基の塩は、例えば、金属水酸化物塩基、例えば水酸化ナトリウム;例えば炭酸ナトリウムもしくは重炭酸ナトリウムのような金属炭酸塩もしくは重炭酸塩;または例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のようなアミン塩基の1等量またはそれ以上にペプチドを接触させることによって、通常のように調製してもよい。
【0099】
ペプチドまたはペプチド変種のアミノ基のN-アシル誘導体は、最終濃縮のためにN-アシル保護アミノ酸を利用することによって、または保護もしくは非保護ペプチドをアシル化することによって調製してもよい。O-アシル誘導体は、例えば遊離のヒドロキシペプチドまたはペプチド樹脂のアシル化によって調製してもよい。いずれのアシル化も、アシルハロゲン化物、無水物、アシルイミダゾール等のような標準的なアシル化試薬を用いて行ってもよい。望ましければ、N-アシル化とO-アシル化の双方を同時に行ってもよい。
【0100】
ペプチドもしくはペプチド変種の酸付加塩、またはペプチドもしくはペプチド変種のアミノ酸残基の酸付加塩は、ペプチドまたはアミンを望ましい無機または有機酸、例えば塩酸の1等量またはそれ以上に接触させることによって調製してもよい。ペプチドのカルボキシル基のエステルもまた、当技術分野で既知の通常の如何なる方法によっても調製してもよい。
【0101】
本発明はまた、一つまたはそれ以上のβアミノ酸からなる環状ペプチドを企図する。そのようなβアミノ酸が、一つまたは二つの置換によってそのペプチド骨格に沿って置換することができる。そのような置換には、シクロアルキル、シクロアルケニル、ならびにβ-ペプチド骨格のαおよびβ炭素を含む複素環が含まれうる。これらの環は、例えば、唯一のヘテロ原子として一つまたはそれ以上の窒素原子を有するC3-C8シクロアルキル、シクロアルケニル、または複素環となりうる、そして置換または非置換となりうる。β-ペプチドの環またはαおよびβ炭素上の置換基は、例えば、ヒドロキシ、直鎖または分岐鎖C1-C6アルキル、アルケニル、アルキニル;ヒドロキシ-C1-C6-アルキル;アミノ-C1-C6-アルキル;C1-C6-アルキルオキシ、C1-C6-アルコキシ-アルキル;C1-C6-アミノ;モノまたはジ-C1-C6-アルキルアミノ;カルボキサミド;カルボキサミド-C1-C6-アルキル;スルホンアミド;スルホンアミド-C1-C6-アルキル、ウレア、シアノ、フルオロ、チオ;C1-C6-アルキルチオ;単環式または二環式アリール;N、O、およびSから選択されるヘテロ原子5個までを有する単環式または二環式ヘテロアリール;単環式または二環式アリール-C1-C6およびヘテロアリール-C1-C6-アルキル等となりうる。
【0102】
一つの態様において、本発明の環状β-ペプチドは、以下の式VIのアミノ酸配列を有しうる:
式中:
各pが個々に0〜7までの整数であり;
各Z1、Z3、Z5、Z7、Z9、Z11、Z13、Z15、Z17、およびZ19が、個々に一置換βアミノ酸であり;
各Z2、Z4、Z6、Z8、Z10、Z12、Z14、Z16、Z18、およびZ20が、個々に二置換βアミノ酸であり;ならびに
式中、環状βペプチドが、ホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有する。
【0103】
超分子構造
本発明に従って、本明細書に提供する環状ペプチドは、超分子構造へと自己構築すると考えられている。自己構築は、細胞膜の成分以外の如何なるものの補助も受けずに、環状ペプチドのコレクションが細胞膜上または細胞膜内で会合して超分子構造を形成することができることを意味する。一般的に、細胞膜の物理化学特性は、環状ペプチドの自己構築を促進する。微生物の細胞膜の成分と環状ペプチドとの相互作用は、環状ペプチドがそれらの細胞膜に関して選択的であるか否かを左右する。
【0104】
本発明のペプチドによる超分子構造の形成は、凍結電子顕微鏡、電子回折、フーリエ変換赤外線分光法、および分子モデリングを用いる高解像度造影によって支持される。超分子構造は、IR分光法、低線量電子顕微鏡、および電子回折パターン分析によってさらに特徴が調べられている。
【0105】
本発明に従って、交互のD-およびL-アミノ酸残基の同数で構成される環状ペプチド構造は、全ての骨格アミド官能基が環構造の平面に対してほぼ垂直に存在する平坦な環状立体構造をとる、または示すと考えられている。同様に、β-アミノ酸で構成される環状ペプチドもまた、平坦な環構造をとることができる。この平坦な環状立体構造において、ペプチドサブユニットは、都合のよい条件で、積み重なって、本明細書においてナノチューブと呼ばれる連続した水素結合した中空の管状構造を生じると考えられている(図1および7を参照のこと)。
【0106】
例えば、ペプチド配列番号:1(シクロ-[(Gln-D-Ala-Glu-D-Ala)3-])のアルカリ溶液を制御しながら酸性化すると、棹状の結晶材料を生じ、これは透過型電子顕微鏡において緻密に充填された管状構造の構築された束として見える。M. Adrianら(308 Nature 32〜36(1984))の方法およびR.A. Milliganら(13 Ultramicroscopy 1〜10(1984))の方法に従って低線量低温顕微鏡試験を行ったところ、緻密に充填された管状構造の中心から中心までの空間に関して予想されるように約25Åの空間を有する縦方向の条線が判明した。電子回折パターンは、軸方向の空間4.80Åを示し、これはペプチドの積み重ねおよび水素結合したb-シート型構造の緻密なネットワークの形成と一致する。電子回折パターンにおける経線方向の空間は、ナノチューブの六角体中心充填の特徴である12.67±0.06Åおよび21.94±0.05Åの空間を示す。半径rの円柱の緻密な充填に起因する六角格子は、ここに認められたもののような(r=12.67Åおよびr=21.94Å)半径rとrの特徴的な二つの主な格子平面を示す。この充填における周期性は、1/r、2/r等、および1/r、2/r等で回折スポットを生じる。経線方向の軸において認められた電子回折パターンは、三次反射(4.1Å)に伸長し、ナノチューブ構造の秩序だった結晶状態を示している。回折パターンも同様に、角度99゜の単位セルを示し、フリーデルの法則に従って対称中心以外に対称を示さなかった。
【0107】
三次元超分子構造モデルは、電子回折パターンから得られたパラメータ、すなわちa=9.6Å(逆平行二量体に関して2×4.80Å)、b=c=25.66Å(2×12.67÷Cos9)、α=120°、およびβ=γ=99°の単位セルを用いて構築した。モデルは、電子回折において認められたパターンと類似の構造因子を示し、このように、提唱された三次元モデルを支持する。管様構築体における分子間水素結合網目構造も同様に、S. Krimmら(Advances in Protein Chemistry;Anfinsen, C.B.、Edsall, J.T.;Richards, F.M.編、アカデミック出版、オルランド、1986、181〜364)の方法に従うFT-IR分光分析によって支持される。ナノチューブは、1626 cm-1および1674 cm-1でのアミドIのバンドならびに1526 cm-1でのアミドIIのバンドのみならず、3291 cm-1で認められたNH伸縮振動数によっても示されるβ-シート構造に関する特徴的なIR特徴を示し、水素結合の緻密な網目構造が形成されていることを支持する。
【0108】
IRスペクトルは、天然において発見されている管状構造と類似している。例えば、本発明のペプチドのいくつかのナノチューブ構造は、二量体β-ヘリックス構造を形成することが知られている結晶の直鎖グラミシジンAの構造に概念的に関連させることができる。グラミシジンAは、1630 cm-1、1685 cm-1でアミドIバンド、1539 cm-1でアミドIIのバンド、および3285 cm-1でNH伸縮振動数を有する(V.M. Naikら、Biophys.J.(1986)、第49巻、1147〜1154頁)。NH伸縮様式について認められた振動数は、平均サブユニット間距離4.76Åに相関し、これは電子回折パターンから独立して得られた4.80Åという値と密接に一致する。
【0109】
自己構築されたナノチューブの孔の大きさ、または内部直径は、用いたペプチドサブユニットの管の大きさによって調節することができる。12残基環状ペプチド構造、例えば、シクロ[-(Gln-D-Ala-Glu-D-Ala)3-](配列番号:1)は、直径約13Åを有する。8残基環状ペプチドシクロ[-(Trp-D-Leu)3-Gln-D-Leu-](配列番号:2)は、直径約7.5Åを有する。合成ホスファチジルコリンリポソーム中で配列番号:2を有する環状ペプチドは、1624cm-1でFTIRアミドIバンドおよび3272cm-1で認められたN-H伸縮振動数を示し、これは、平均サブユニット間距離4.7Å〜4.8Åのβ-シート様水素結合の緻密な網目構造が形成されていることを支持する。
【0110】
本発明の平坦な環状の環状ペプチドは、分子間相互作用に対する構造的素因があるのみならず、選択された微生物細胞膜上で自己構築して、孔の形成または他の膜脱安定化構造によって細胞を透過性にするためにエネルギー的に都合がよい。
【0111】
膜を透過性にすることができる超分子構造の形成も同様に、プロトン輸送活性から推論した。バルク溶液内部でpH 6.5および外部でpH 5.5を有する小胞を調製した。推定の膜貫通チャンネル構造の形成によって、これらの小胞において付与されたpH勾配の崩壊を、捕獲されたpH感受性色素の蛍光強度をモニターすることによって調べた(V.E. Carmichaelら、J. Am. Chem. Soc.(1989)、第111巻、767〜769頁)。ペプチドシクロ[-(Trp-D-Leu)3-Gln-D-Leu](配列番号:2)をそのような小胞浮遊液に加えると、pH勾配の迅速な崩壊を引き起こす。
【0112】
F. Szokaら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1978)、第75巻、4194〜4198頁)の方法に従って、5(6)-カルボキシフルオレセイン(20 mM燐酸/生理食塩液緩衝液;137 mM NaCl、2.6 mM KCl、6.4 mM Na2PO4、1.4 mM KH2PO4、pH 6.5)を含む溶液において、DPPC、OPPC、コレステロールを1:1:2の比で用いて逆相蒸発によって単ラメラ小胞を調製した。次に、Nucleopore(登録商標)ポリカーボネートメンブレンの中を多数回押し出すことによってリポソームの大きさを一定の大きさにして(10回、50 psi、0.8および2×0.4μmのフィルターの積み重ねを用いる)、捕獲された5(6)-カルボキシフルオレセインを、F. Olsenら(Biochim. Biophys. Acta(1979)、第557巻、9〜23頁)の方法に従って、同じ燐酸/生理食塩液緩衝液を用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephadex G-25カラム、1×30 cm)によって除去した。このようにして形成された小胞は、電子顕微鏡によって決定すると直径が約150ナノメートルである(R.R.C.New編、「Liposomes」、オックスフォード大学出版、1990)。それぞれの実験において、小胞の保存溶液(ホスホリピッド中に3.5×10-3 M)70 mlをpH 5.5の緩衝液(1.3 ml、137 mM NaCl、2.6 mM KCl、6.4 Na2PO4、1.4 KH2PO4)に加えて、攪拌する蛍光装置の保温試料ホルダー内部の1 cm水晶キュベットに入れて、軽く攪拌しながら25℃で15分間平衡にした。キュベットに、注入口を通してDMSOに溶解したペプチド25 mlを520 nm(励起470 nm)で蛍光を絶えずモニターしながら加えた。次に、認められたデータを、比較のために蛍光の画分変化に標準化した((I0−It)/(I0−I∽))(V.E. Carmichaelら、J. Am. Chem. Soc. (1989)、第111巻、767〜769頁)。
【0113】
リポソームに捕獲されたカルボキシフルオレセイン色素の放出をモニターする対照試験から、pH勾配の崩壊が、リポソームの破壊によるためでも、これらの試験において用いた少量の有機溶媒(<2%DMSO)によるためでもないことが示された。さらに、リポソームを仕切るための適当な表面特徴を欠損する対照ペプチドシクロ[-(Gln-D-Leu)4]は、類似の条件で如何なるイオン輸送活性も示さない。所望の疎水性表面特徴を有するが広汎な水素結合網目構造に関与する傾向がない第二の対照ペプチド、シクロ[-(MeN-D-Ala-Phe)4-]も同様にデザインして、イオン輸送活性に関して調べた。このペプチドの環構造は、一つの表面がN-メチル化されている。そのようなN-メチル化は、ペプチドのリポソーム膜との相互作用能に有害な影響を及ぼさず、N-メチル化によってペプチドは、正常なリポソーム膜の端から端まで届くことができない二量体の円柱構造を形成しやすくなる。このように、ペプチドは、リポソームに有効に仕切ることが示されているが、上記の小胞実験においてプロトン輸送活性を促進しない。併せて、これらの実験は、環状ペプチド上に示された側鎖が膜相互作用にとって重要であるのみならず、ペプチド骨格は、例えば膜の透過性を促進するために広汎な分子間水素結合に関与することができなければならないという考え方を支持する。
【0114】
使用方法
本発明は、哺乳類のみならず、農場飼育動物および鳥類のような他の動物において微生物感染症を治療または予防する方法に向けられる。これらの方法には、本発明の環状ペプチドの治療的有効量を動物に投与することが含まれる。微生物感染症の治療または治療は、感染症に典型的に関連した症状の少なくとも一つの緩和または消失が含まれると解釈される。治療にはまた、二つ以上の症状の緩和または消失が含まれる。理想的には、治療は、微生物を治癒、例えば実質的に殺すおよび/または感染症に関連した症状を消失させる。
【0115】
本発明の環状ペプチドによって治療することができる微生物感染症には、哺乳類または他の動物に感染することができる如何なる標的微生物による感染症も含まれる。そのような標的微生物には、細胞膜を有し、哺乳類を含む動物に感染することができる本質的に如何なる単細胞生物または寄生虫も含まれる。例えば、標的微生物には、細菌、真菌、酵母株、および他の単細胞生物が含まれる。環状ペプチドは、グラム陰性およびグラム陽性菌の双方に対して活性である。
【0116】
したがって、例えば、以下の標的微生物の感染症を、本発明の環状ペプチドによって治療することができる:アエロモナス(Aeromonas)属、バシラス(Bacillus)属、バクテロイデス(Bacteroides)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、クロストリジウム(Clostridium)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、大腸菌(Escherichia)属、ガストロスピリルム(Gastrospirillum)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、サルモネラ(Salmonella)属、赤痢菌(Shigella)属、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ビブリオ(Vibrio)属、エルシニア(Yersinia)属等。本発明のペプチドによって治療することができる感染症には、ブドウ球菌感染症(黄色ブドウ球菌)、チフス(チフス菌(Salmonella typhi))、食中毒(O157:H7のような大腸菌)、細菌性の下痢(志賀赤痢菌(Shigella dysenteria))、肺炎(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および/またはシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia))、コレラ(ビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae))、潰瘍(ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、および他の細菌に関連した感染症が含まれる。大腸菌血清型O157:H7は、下痢、出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群(HUS)、および血小板減少性血栓性紫斑病(TTP)の発病に関係している。本発明のペプチドはまた、細菌の薬剤耐性株または多剤耐性株、例えば、黄色ブドウ球菌の多剤耐性株およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)のバンコマイシン耐性株に対して活性である。
【0117】
抗菌活性は、当技術分野で利用可能な方法を用いてこれらの多様な微生物に対して評価することができる。抗菌活性は、例えば、特定の微生物種の増殖を阻害する本発明の環状ペプチドの最小発育阻止濃度(MIC)を同定することによって決定される。一つの態様において、抗菌活性は、標準的な用量または用量反応法を用いて測定した場合に、微生物の50%を殺すペプチドの量である。
【0118】
本発明はまた、インビトロで微生物が実質的に増殖しない環状ペプチドの最小発育阻止濃度を決定することを含む、記述のそして本明細書において請求される環状ペプチドによって微生物感染症を治療するための治療的有効量を評価する方法を提供する。そのような方法によって、微生物の増殖を阻害するため、または微生物の50%を殺すために容積あたりに必要な環状ペプチドのおおよその量を計算することができる。そのような量は、例えば、標準的なミクロ希釈法によって決定することができる。例えば、同じ培地容積と実質的に同じ量の微生物とを含む一連の微生物培養試験管を調製して、環状ペプチドの少量を加える。少量は、同じ容積の溶液中に異なる量の環状ペプチドを含む。微生物を1〜10世代に対応する期間培養して、培養培地中の微生物の数を決定する。培養培地の吸光度を用いて、微生物の増殖が起こったか否かを推定することができる−吸光度の有意な増加が起こらなければ、微生物の有意な増殖が起こらなかった。しかし、吸光度が増加すれば、微生物の増殖が起こった。微生物細胞が環状ペプチドに対する曝露後も生存して残っている数を調べるために、環状ペプチドを加えた時点(ゼロ時間)およびその後定期的に少量の培養培地を採取した。少量の培養培地を微生物培養プレート上に広げて、微生物の増殖を行う条件でプレートをインキュベートして、コロニーが出現すると、それらのコロニー数を計数する。
【0119】
本発明に従って、本明細書に提供した環状ペプチドは、哺乳類細胞または治療すべき他の動物の細胞に対して実質的または望ましくない毒性を引き起こさない。哺乳類または鳥類の赤血球溶血は、環状ペプチドが哺乳類細胞または治療すべき他の動物の細胞に対して望ましくない毒性を引き起こしうるか否かを測定する一つの方法である。環状ペプチドが哺乳類または動物細胞膜との会合によって自己構築することができれば、膜は破壊される可能性がある。赤血球は、溶血して、これを細胞からのヘモグロビンの放出として検出することができることから、膜の破壊に関して試験するために簡便に用いられる。溶血アッセイ法は当業者に利用可能な方法によって行うことができる。例えば、試験化合物に曝露後、ヘモグロビンの放出は、ヘモグロビンに特徴的な波長、例えば543 nmでの光の吸収を観察することによって分光光度法によって観察することができる。対照試料を用いることができ、例えば細胞を試験または維持する培地をゼロブランクとすることができる。第二の対照を用いて、試験哺乳類細胞試料と同一である試料となりうるが、細胞を完全に破壊するために超音波処理されている100%溶解または溶血の場合の吸光度を決定することができる。さらに、メリチンまたは多様な洗浄剤のような溶血剤も同様に用いて試験赤血球の100%溶血を確立することができる。
【0120】
スクリーニングアッセイ法
スクリーニングまたは他のアッセイ法を用いて、関係する微生物または他の細胞タイプと選択的に相互作用する、破壊する、または殺すことができる環状ペプチドを同定、確認、または評価してもよい。この目的のために多様なアッセイ法を用いてもよい。一般的に、そのようなアッセイ法は、関係する微生物または他の細胞タイプを、少なくとも一つの環状ペプチドに接触させて、環状ペプチドが、関係する微生物または他の細胞タイプと相互作用するか否か、および/または微生物または他の細胞タイプに対して有害な影響を及ぼすか否かを観察することを含みうる。
【0121】
当技術分野で利用可能な方法は、本発明の環状ペプチドが、例えば関係する細胞タイプの膜と相互作用するか否かを決定するために用いることができる。例えば、環状ペプチドは、ペプチドの検出を可能にするレポーター分子によって標識することができる。標識後、環状ペプチドを、細胞膜に対するペプチドの結合または会合を可能にする時間および条件で、関係する細胞タイプに接触させることができる。細胞は、非結合または非会合環状ペプチドを除去するために生理溶液によって洗浄することができ、レポーター分子が微生物、細胞、または細胞膜に結合するまたは会合するか否かを確認するために、微生物または細胞を観察することができる。もう一つの態様において、当業者は、(複数の)環状ペプチドが、特定の微生物または他の選択された細胞タイプの膜を選択的に貫通することができるか否かを調べることができる。これは、例えばレポーター分子が、関係する微生物もしくは細胞タイプの細胞膜に会合したままであるか否か、またはレポーター分子が、関係する微生物または細胞タイプの内部に会合するようになるか否かを調べることによって行ってもよい。
【0122】
用いることができるレポーター分子は、本発明の環状ペプチドに直接または間接的に結合する当業者に利用可能な如何なる検出可能な化合物または分子も含まれる。標識はそれ自身検出可能であってもよく(例えば、放射性同位元素標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物もしくは組成物、または蛋白質/抗体捕獲および検出のための分子エピトープの化学修飾を触媒してもよい。
【0123】
関係する微生物または細胞タイプに対する有害な作用はまた、本発明の環状ペプチドと関係する微生物または細胞タイプのあいだの相互作用の指標として検出することができる。そのような有害な作用は、環状ペプチドが、関係する微生物または細胞タイプに有害なまたは細胞障害作用を有する如何なる証拠によって確認してもよい。例えば、当業者は、(複数の)環状ペプチドが細胞タイプを殺すか否か、または関係する微生物または細胞タイプの膜の脱分極または透過性化を引き起こすか否かを調べることができる。
【0124】
特に興味深いのは、正常なヒトまたは他の動物細胞に対して低い毒性を有するが良好な抗菌特性(微生物の細胞膜を脱分極または透過性にする、溶解する、またはそうでなければ微生物を殺す)を有する環状ペプチドのスクリーニングアッセイ法である。そのような環状ペプチドは、それらがそのような正常なヒトまたは他の動物細胞に対する毒性が低い限り、正常なヒトまたは他の動物細胞と相互作用してもしなくてもよい。
【0125】
一般的に、多数のペプチドを調べる場合、異なる環状ペプチドによって同時に複数のアッセイ法を行い、これは様々な濃度に対して異なる反応を得るために異なる濃度で導入してもよい。典型的に少なくとも一つの対照アッセイ法を試験に含める。そのような対照は、環状ペプチドを含まない生理溶液に、関係する微生物または細胞を曝露することを含む陰性対照となりうる。もう一つの対照は、関係する微生物もしくは細胞、または関係する微生物もしくは細胞タイプに関連する第二の細胞タイプ、に有害な影響を及ぼすことが既に認められている環状ペプチドに、関係する微生物または細胞を曝露することを含みうる。もう一つの対照は、、関係する微生物または細胞タイプに対して望ましい影響を有する既知の治療物質、例えば特定の濃度または用量で既知の有効性を有する抗菌剤または細胞障害剤に、関係する微生物または細胞タイプを曝露することを含みうる。当業者は、そのような評価を促進する対照化合物および条件を容易に選択することができる。
【0126】
候補となる環状ペプチドは、本明細書に記載のように作製した環状ペプチドのライブラリを含む多様な起源から得られる。環状ペプチドはまた、当業者によって選択される特異的構造特徴を有するように個々にまたは合理的にデザインおよび合成することができる。
【0127】
当業者に利用可能な如何なる細胞タイプもこれらの方法によってスクリーニングすることができる。例えば、如何なる微生物または哺乳類または動物細胞タイプも、本発明の環状ペプチドがそれと選択的または非選択的に相互作用することができるか否かを評価するためにスクリーニングすることができる。そのような微生物細胞タイプには、自律複製することができる如何なる単細胞生物も含まれる。例には、如何なる細菌、真菌、および酵母細胞タイプも含まれる。哺乳類または他の動物細胞タイプも同様に、本発明のペプチドがそれらと相互作用するか否かを確認するために、および/または本発明のペプチドが、関係する哺乳類または他の動物細胞タイプと相互作用、結合、溶解、殺す、またはその生存率に有害な影響を及ぼさないか否かを決定もしくは確認するためにスクリーニングすることができる。
【0128】
一つの態様において、環状ペプチドが赤血球に対して有害な作用を有するか否かを確認するために、哺乳類の赤血球を環状ペプチドに関してスクリーニングする。赤血球の膜は、他の多くの哺乳類細胞タイプより溶解に対して感受性が高い傾向がある。したがって、赤血球は環状ペプチドが、これらまたは他の細胞タイプに対して如何なる有害な作用も有すると予想されるか否かを迅速にスクリーニングするために有用な細胞タイプである。哺乳類の細胞溶解をスクリーニングする方法は当技術分野で利用可能である。例えば、本発明に記載の技法を用いて、本発明の少なくとも一つの環状ペプチドに曝露した場合に溶血が起こるか否かを確認するために赤血球を試験することができる。環状ペプチドが赤血球の望ましくない溶血をほとんどまたは全く引き起こさないことが確立されれば、これを他の哺乳類細胞タイプに対して調べてもよく、または標準的な動物モデルにおけるインビボ試験のために用いてもよい。
【0129】
環状ペプチドをスクリーニングする条件には、関係する細胞タイプを増殖、維持、またはそうでなければ培養するために当業者によって用いられる条件が含まれる。関係細胞タイプは、(複数の)環状ペプチドが存在することを除き細胞が健康と思われる条件でアッセイすべきである。培養条件が細胞の生存率に影響を及ぼすか否かを評価するために、細胞タイプが選択された培養条件で維持され、環状ペプチドに曝露されない対照を行うことができる。当業者はまた、環状ペプチドまたは細胞と培養培地中の成分との如何なる相互作用も消失するために、緩衝生理食塩液のような単純な生理溶液において洗浄されている細胞についてアッセイ法を行うことができる。しかし、アッセイ法のための培養条件は、一般的に細胞に、選択されたタイプの細胞を培養または維持するために典型的に用いられる適当な濃度の栄養、生理的塩類、緩衝液および他の成分を提供することが含まれる。他の多様な試薬をスクリーニングアッセイ法に含めてもよい。これらには、関係する細胞タイプの生理状態を模倣するために用いられる塩、中性蛋白質、アルブミン、血清(例えば、仔ウシ胎児血清)のような試薬が含まれる。哺乳類細胞および細菌または他の微生物細胞を培養、増殖、および維持するための条件および培地は当業者に利用可能である。
【0130】
選択された試薬および成分は、当業者によって選択される順序でアッセイ法に加える。一般的に、環状ペプチドは、アッセイ法を開始する最後に加える。アッセイ法は如何なる適した温度、典型的に4℃〜40℃で行われる。温度は一般的に、ほぼ室温(約20℃)〜約37℃の範囲である。インキュベーション期間は、最適な範囲の活性を確認するため、または環状ペプチドが望ましくない細胞タイプに有害な影響を確実に及ぼさないように選択される。しかし、インキュベーション時間は、迅速な高処理能スクリーニングを促進するために最適にすることができる。典型的に、インキュベーション時間は、約1分〜約24時間であり、他の時間は約5分〜約8時間である。
【0131】
インビトロスクリーニングまたは評価の際に所望の選択性および活性を有する環状ペプチドを、適当な動物モデルにおいてインビボでの活性および/または毒性の欠如に関して試験してもよい。そのような動物モデルには、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウシ、またはウマが含まれる。例えば、マウスおよびラットは本発明の環状ペプチドが毒性作用を有するか否かを調べるために、および/または環状ペプチドが微生物感染症に対抗することができるか否かを決定するために都合のよい動物モデルである。
【0132】
当業者は、本発明の環状ペプチドのインビボスクリーニングを容易に行うことができる。毒性を試験するために、異なる試験用量での一連の環状ペプチドを異なる動物に個々に投与することができる。1回用量または一連の用量を動物に投与することができる。動物に及ぼす(複数の)ペプチドの影響を評価することができる試験期間を選択する。そのような試験期間は、約1日〜約数週間または数ヶ月のあいだであってもよい。
【0133】
動物に対する(複数の)環状ペプチドの影響は、ペプチドが試験期間において、動物の挙動(例えば、嗜眠、過敏症)および生理状態に有害な影響を及ぼすか否かを観察することによって決定することができる。動物の生理状態は、標準的な技法によって評価することができる。例えば、試験期間において、当業者は、例えば様々な酵素、蛋白質、代謝物等を試験するために、採血を行って、他の体液を採取することができる。当業者はまた、動物が鼓腸、食欲喪失、下痢、嘔吐、血尿、意識喪失、および他の多様な生理的問題を有するか否かを観察することができる。試験期間後、動物を屠殺して、動物の組織または臓器について、解剖学的、病理学的、組織学的および他の研究を行うことができる。
【0134】
一般的に、本発明の一つまたはそれ以上の環状ペプチドが微生物感染症に対抗できるか否かを決定するために、マウスまたは他の試験動物を、選択した微生物に感染させて、その後一つまたはそれ以上の環状ペプチドの選択された試験用量を、規定の経過時間または間隔で投与する。環状ペプチドが動物を微生物感染症から保護するか否かを確認するために、試験動物を数日から数週間のあいだ観察する。試験期間の終了時、試験動物を屠殺して、環状ペプチドが試験動物を感染から最適に保護するか否かを確認するために、および/または如何なる有害な副作用も起こったか否かを決定するために調べることができる。
【0135】
投与前、微生物を単純な生理溶液において洗浄して、毒素またはマウスに有害な影響を及ぼす可能性がある他の成分を除去する。例えば、微生物細胞を37℃で攪拌しながら静止期まで12時間増殖させることができる。微生物細胞を遠心によって回収して、生理食塩液または燐酸緩衝生理食塩液(PBS)によって2回洗浄し、都合のよい細胞密度、例えば、約3〜5×107 cfu/mlの細胞密度に再浮遊または希釈する。各ペプチド5個の多様な量によって試験すべき動物数匹に少量の微生物(例えば、約0.1〜約1 ml)を感染させる。感染は、経口、腹腔内、静脈内、または当業者によって選択される他のいくつかの経路によって行うことができる。感染後、動物を短期間休息させてから、各動物を異なる用量のペプチドによって処置する。動物を数日から数週間モニターする。
【0136】
環状ペプチドを投与しない場合の微生物の影響を確立するために対照を用いる。他の対照も行うことができ、例えば本発明の環状ペプチドの安全性および有効性を、既知の抗菌剤(例えば、ペニシリン、カナマイシン、バンコマイシン、エリスロマイシン等)と比較することができる。
【0137】
本発明はさらに、標的生体分子と選択的に会合することができるD-、L-α-環状ペプチドまたはβ-ペプチドを同定または評価する方法を提供する。そのような標的生体分子には、例えば、細胞内、細胞外、または膜会合蛋白質、酵素、核酸、受容体、オルガネラ等が含まれうる。この方法は、環状ペプチドの溶液を水素結合促進条件で標的生体分子に接触させること、そしてペプチドが、所望の生体分子と選択的に会合して関係する生物活性を有するか否かを決定することを含みうる。
【0138】
標的生体分子は、例えば生きている細胞の表面上、遺伝子操作された細胞の表面上、またはリポソームの表面上で示されうる。または、ペプチドを、当業者に利用可能な他の所望のアッセイ条件で標的生体分子に接触させることができる。
【0139】
望ましくない細胞タイプに対して実質的に望ましくない毒性を示さない、インビトロおよび/またはインビボで良好な抗菌特性を有する環状ペプチドは、下記により詳細に記述するように、適当な投与剤形を調製するための特に良好な候補物質である。
【0140】
ペプチドの用量、製剤、および投与経路
その塩を含む本発明のペプチドは、感染症、適応、もしくは疾患に関連した少なくとも一つの症状の減少が得られるように、または適応もしくは疾患に関連した抗体量の減少が得られるように投与される。
【0141】
所望の(複数の)作用を得るために、ペプチド、その変種、またはその組み合わせを、例えば少なくとも約0.01 mg/kg〜約500〜750 mg/kg、少なくとも約0.01 mg/kg〜約300〜500 mg/kg、少なくとも約0.1 mg/kg〜約100〜300 mg/kg、または少なくとも約1 mg/kg〜約50〜100 mg/kg体重の1回用量、または分割用量として投与してもよいが、他の用量も有用な結果を提供する可能性がある。投与量は、選択した環状ペプチド、疾患、体重、身体状態、健康、哺乳類の年齢、予防または治療が得られるか否か、そしてペプチドが化学修飾されているか否か、を含むがこれらに限定されない様々な要因に応じて変化すると考えられる。そのような要因は、当技術分野で利用可能な動物モデルまたは他の試験系を用いて臨床医によって容易に決定することができる。
【0142】
本発明に従う治療物質の投与は、例えば、レシピエントの生理状態、投与目的が治療的または予防的であるか否か、および当業者に既知の他の要因に応じて、1回投与、多数回投与、連続または間欠的投与であってもよい。本発明のペプチドの投与は、予め選択された期間について本質的に連続的であってもよく、または一定期間をあけた一連の投与であってもよい。局所および全身投与の双方が企図される。
【0143】
組成物を調製するために、ペプチドを合成する、またはそうでなければ、得る、必要に応じてまたは望ましければ精製して、凍結乾燥および安定化させる。次に、ペプチドを適当な濃度に調節して、選択的に他の物質と混合する。単位用量に含まれる所定のペプチドの絶対重量は、広く異なりうる。例えば、本発明の少なくとも一つのペプチドまたは特定の細胞タイプに対して特異的な複数のペプチドの約0.01〜約2 g、または約0.1〜約500 mgを投与することができる。または、単位用量は、約0.01 g〜約50 g、約0.01 g〜約35 g、約0.1 g〜約25 g、約0.5 g〜約12 g、約0.5 g〜約8 g、約0.5 g〜約4 g、または約0.5 g〜約2 gまで異なりうる。
【0144】
本発明の環状ペプチドの1日量も同様に変化しうる。そのような1日量は、例えば、約0.1 g/日〜約50 g/日、約0.1 g/日〜約25 g/日、約0.1 g/日〜約12 g/日、約0.5 g/日〜約8 g/日、約0.5 g/日〜約4 g/日、および約0.5 g/日〜約2 g/日の範囲となりうる。
【0145】
このように、本発明の治療ペプチドを含む一つまたはそれ以上の適した単位投与剤形は、経口、非経口(皮下、静脈内、筋肉内、および腹腔内を含む)、直腸内、皮下、経皮、胸腔内、肺内、および鼻腔内(呼吸器)経路を含む多様な経路によって投与することができる。治療ペプチドは同様に、徐々に放出するために調製してもよい(例えば、微量封入を用いて、国際公開公報第94/07529号、および米国特許第4,962,091号を参照のこと)。製剤は、適当であれば、簡便に個別の単位投与剤形としてもよく、薬学の技術分野に周知の如何なる方法によって調製してもよい。そのような方法には、治療物質を液体担体、固体マトリクス、半固体担体、細粉化した固体担体またはその組み合わせと混合する段階、そして必要であれば、製品を所望の輸送系に導入または成型する段階が含まれてもよい。
【0146】
本発明の治療ペプチドを経口投与のために調製する場合、それらは一般的に薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて、薬学的製剤または単位投与剤形を形成する。経口投与の場合、ペプチドは粉末、顆粒製剤、溶液、懸濁液、乳液、またはチューインガムの活性成分を摂取するための天然もしくは合成ポリマーもしくは樹脂の形であってもよい。活性ペプチドはまた、ボーラス、舐剤、またはパスタの形であってもよい。経口投与される本発明の治療ペプチドは、持続的に放出するために製剤化することができ、例えばペプチドをコーティング、微小封入する、またはそうでなければ徐放装置に入れることができる。そのような製剤中の全体的な活性成分は、製剤重量の0.1〜99.9%を含む。
【0147】
「薬学的に許容される」とは、製剤の他の成分と適合性であって、そのレシピエントに対して有害でない担体、希釈剤、賦形剤、および/または塩を意味する。
【0148】
本発明の治療ペプチドを含む薬学的製剤は、周知で容易に入手できる成分を用いて、当技術分野で既知の技法によって調製することができる。例えば、ペプチドは、一般的な賦形剤、希釈剤、または担体と共に製剤化して、錠剤、カプセル剤、溶液、懸濁液、粉末、エアロゾル等に形成することができる。そのような製剤にとって適した賦形剤、希釈剤、および担体の例には、緩衝液と共に充填剤、ならびにデンプン、セルロース、糖、マンニトール、およびケイ酸誘導体のような増量剤が含まれる。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他のセルロース誘導体、アルジネート、ゼラチン、およびポリビニルピロリドンのような結合剤も同様に含めることができる。グリセロールのような湿潤剤、炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウムのような崩壊剤も含めることができる。パラフィンのような溶解を遅らせる物質も同様に含めることができる。四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤も同様に含めることができる。セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような界面活性剤を含めることができる。カオリンおよびベントナイトのような吸着担体も加えることができる。タルク、ステアリン酸カルシウムおよびマグネシウム、ならびに固体ポリエチルグリコールのような潤滑剤も同様に含めることができる。保存剤を加えてもよい。本発明の組成物はまた、セルロースおよび/またはセルロース誘導体のような濃化剤を含みうる。それらはまた、キサンタン、グアーゴムもしくはカルボゴム、もしくはアラビアゴムのようなゴム、またはポリエチレングリコール、ベントン、およびモンモリロナイト等を含んでもよい。
【0149】
例えば、本発明の環状ペプチドを含む錠剤またはカプレットは、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、および炭酸マグネシウムのような緩衝剤を含みうる。カプレットおよび錠剤はまた、セルロース、予めゼラチン化したデンプン、二酸化珪素、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、デンプン、タルク、二酸化チタン、安息香酸、クエン酸、コーンスターチ、鉱油、ポリプロピレングリコール、燐酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛等のような不活性成分が含まれうる。本発明の少なくとも一つの環状ペプチドを含む硬または軟ゼラチンカプセルは、ゼラチン、微結晶セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、タルク、および二酸化チタン等のような不活性成分を含みうると共に、ポリエチレングリコール(PEGs)および植物油のような液体媒体を含みうる。その上、本発明の一つまたはそれ以上のペプチドを含む腸溶コーティングカプレットまたは錠剤は、胃での崩壊に耐えて、十二指腸のより中性からアルカリ性環境において溶解するようにデザインされる。
【0150】
本発明の治療ペプチドはまた、簡便な経口投与のためのエリキシル剤もしくは溶液として、または非経口投与、例えば、筋肉内、皮下、腹腔内、もしくは静脈内経路による投与にとって適当な溶液として調製することができる。本発明の治療ペプチドの薬学的組成物はまた、水溶液もしくは無水の溶液もしくは分散液の形となりうる、または乳液、懸濁液もしくは軟膏の形となりうる。
【0151】
このように、治療ペプチドは、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または持続的注入)のために調製してもよく、アンプル、充填済みシリンジ、少量の注入容器または多数回投与容器での単位投与剤形の形であってもよい。先に記述したように、投与剤形の半減期を維持するために役立つように保存剤を加えることができる。活性ペプチドおよび他の成分は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性媒体中での乳液を形成してもよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような製剤物質を含んでもよい。または、活性ペプチドおよび他の成分は、適した溶媒、例えば滅菌の発熱物質不含水によって使用前に溶解するための、無菌的な固体の無菌的単離または溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末の形であってもよい。
【0152】
これらの製剤は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体、媒体、および補助剤を含みうる。例えば、生理的な見地から許容可能であって、水以外に、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、「ダウアノール(Dowanol)」の商品名で販売されている製品のようなグリコールエーテル、ポリグリコール、およびポリエチレングリコール、短鎖酸のC1〜C4アルキルエステル、乳酸エチルまたはイソプロピル、「ミグリオール(Miglyol)」の商品名で販売されている製品のような脂肪酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、動物、無機質、および植物油ならびにポリシロキサンのような溶媒から選択される一つまたはそれ以上の有機溶媒を用いて溶液を調製することが可能である。
【0153】
必要であれば、抗酸化剤、界面活性剤、他の保存剤、被膜形成剤、角質溶解剤またはニキビ溶解剤、香料、着香料および着色剤から選択される補助剤を加えることが可能である。t-ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ならびにα-トコフェロールおよびその誘導体のような抗酸化剤を加えることができる。
【0154】
本発明の一つまたはそれ以上の環状ペプチドと一つまたはそれ以上の他の抗菌剤とを含む複合産物も同様に企図される。例えば、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、トブラマイシン、およびアミカシン)、アンサマイシン(例えば、リファマイシン)、抗真菌剤(例えば、ポリエンおよびベンゾフラン誘導体)、β-ラクタム(例えば、ペニシリンおよびセファロスポリン)、クロラムフェニコール(チアムフェノールおよびアジダムフェニコールを含む)、リノサミド(リンコマイシン、クリンダマイシン)、マクロライド(エリスロマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン)、ポリミキシン、バシトラシン、チロトリシン、カプレオマイシン、バンコマイシン、テトラサイクリン(オキシテトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンを含む)、ホスホマイシンおよびフシジン酸のような多様な抗生物質を本発明の薬学的組成物に加えることができる。
【0155】
さらに、ペプチドは、徐放剤形等としての製剤に十分に適している。製剤は、活性ペプチドを、例えば腸または呼吸器の特定の部分で、おそらく一定期間放出するように構築することができる。コーティング、外皮、および保護マトリクスを、例えばポリラクチド-グリコリド、リポソーム、微小乳剤、微小粒子、ナノ粒子、またはロウのようなポリマー物質から構成してもよい。これらのコーティング、外皮、および保護マトリクスは、留置装置、例えば、ステント、カテーテル、腹腔内透析チューブ、排液装置等をコーティングするために有用である。
【0156】
局所投与に関して、治療物質は、標的領域に直接適用するために当技術分野で既知であるように調製してもよい。局所適用のために主に条件付けされた剤形は、例えばクリーム、乳液、ゲル、含浸パッド、軟膏、またはスティック、エアロゾル製剤(例えば、スプレーまたはフォーム)、石けん、洗浄剤、ローション、または石けん塊の形となる。この目的のために他の都合のよい剤形には、包帯、コーティングした絆創膏、または他のポリマー被覆、軟膏、クリーム、ローション、パスタ、ゼリー、スプレー、およびエアロゾルが含まれる。このように、本発明の治療ペプチドは、皮膚投与のための小片または包帯を通して輸送することができる。または、ペプチドは、ポリアクリレートまたはアクリレート/酢酸ビニルコポリマーのような接着ポリマーの一部として調製することができる。長期適用のために、微孔性および/または呼吸可能な裏装ラミネートを用いることが望ましいかも知れず、それによって皮膚の水和または軟化は最小限となりうる。裏装は、所望の保護および支持機能を提供する如何なる適当な厚さとなりうる。適した厚さは一般的に約10〜約200μmである。
【0157】
軟膏およびクリームは、例えば適した濃化剤および/またはゲル化剤を加えることによって水性基剤または油性基剤によって調製してもよい。ローションは、水性または油性基剤によって調製してもよく、一般的に同様に、一つまたはそれ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、濃化剤、または着色剤を含む。活性ペプチドもまた、米国特許第4,140,122号;第4,383,529号、または第4,051,842号に開示されるように、イオントフォレーシスによって輸送することができる。局所製剤中に存在する本発明の治療物質の重量%は、様々な要因に依存するが、一般的に製剤の総重量の0.01%〜95%であり、典型的に重量の0.1〜85%である。
【0158】
点眼液または点鼻液のような滴剤は、一つまたはそれ以上の分散剤、溶解剤、または懸濁剤を含む水性基剤または非水性基剤において一つまたはそれ以上の治療ペプチドによって調製してもよい。液体スプレーは、加圧パックから都合よく輸送される。滴剤は、単純な点眼用のキャップのついた瓶によって、または液体内容物を一滴ずつ輸送するために適合されたプラスチック瓶によって、または特に形成された閉鎖部によって輸送することができる。
【0159】
治療ペプチドはさらに、口または喉において局所投与するために処方してもよい。例えば、活性成分は、香料基剤、通常蔗糖およびアカシアまたはトラガカントをさらに含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたは蔗糖およびアカシアのような不活性基剤中に組成物を含む香錠;ならびに本発明の組成物を適した液体担体において含むマウスウォッシュとして調製してもよい。
【0160】
本発明の薬学的製剤は、選択的成分として、薬学的に許容される担体、希釈剤、可溶化剤または乳化剤、および当技術分野で利用可能なタイプの塩を含んでもよい。そのような物質の例には、生理緩衝生理食塩液および水のような通常の生理食塩液溶液が含まれる。本発明の薬学的製剤において有用な担体および/または希釈剤の特異的な非制限的な例には、水、および燐酸緩衝生理食塩液溶液pH 7.0〜8.0のような生理的に許容される緩衝生理食塩液が含まれる。
【0161】
本発明のペプチドはまた、呼吸器管に投与することができる。このように、本発明は、本発明の方法において用いるためのエアロゾル薬学的製剤および投与剤形を提供する。一般的に、そのような投与剤形は、特異的感染症、適応、または疾患の臨床症状を治療または予防するために有効な本発明の物質少なくとも一つの量を含む。本発明の方法に従って治療される感染症、適応、または疾患の一つまたはそれ以上の症状の如何なる統計学的に有意な減弱も、本発明の範囲内であるそのような感染症、適応、または疾患の治療であると見なされる。
【0162】
または、吸入もしくは通気による投与に関して、組成物は、乾燥粉末、例えば治療物質と、乳糖またはデンプンのような適した粉末基剤との粉末混合物の形であってもよい。粉末組成物は、例えば、カプセルまたはカートリッジにおいて単位投与剤形の形で示されてもよく、またはそこから粉末が吸入装置(inhalotor)、吸入器(insufflator)、または定用量吸入器(inhaler)(例えば、Newinan, S.P.、「Aerosols and the Lung」、Clarke, S.W.およびDavia, D.編、197〜224頁、バターワース、ロンドン、イギリス、1984に開示される加圧式定用量吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器を参照されたい)の助けを借りて投与してもよいゼラチンまたはブリスターパックの形であってもよい。
【0163】
本発明の治療ペプチドはまた、エアロゾルまたは吸入剤形で投与する場合には水溶液で投与することができる。このように、他のエアロゾル薬学的製剤は、例えば、治療すべき適応または疾患に対して特異的な本発明のペプチドの一つまたはそれ以上の約0.1 mg/ml〜約100 mg/mlを含む生理的に許容される緩衝生理食塩液を含んでもよい。液体に溶解または懸濁されない細粉固体ペプチドまたは核酸粒子の形での乾燥エアロゾルもまた、本発明の実践において有用である。本発明のペプチドは、粉状の粉末として調製してもよく、平均粒子径が約1〜5 μm、または2〜3 μmである細粉粒子を含む。細粉化粒子は、当技術分野で周知の技術を用いて細粉化およびスクリーン濾過によって調製してもよい。粒子は、細粉化材料の規定の量を吸入することによって投与してもよく、これは粉末の形となりうる。それぞれの投与剤形の個々のエアロゾル用量に含まれる活性成分または成分の単位含有量は、用量単位の複数の投与によって必要な有効量を得ることができるため、それ自身、特定の感染症、適応、または疾患を治療するための有効量となる必要はない。その上、有効量は、個々に、または一連の投与において投与剤形における用量未満を用いて得てもよい。
【0164】
上部(鼻腔)または下部呼吸器への吸入による投与に関して、本発明の治療ペプチドは、ネブライザーまたは加圧パックもしくは他の簡便なエアロゾルスプレー輸送手段によって簡便に輸送される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適したガスのような適した噴射剤を含んでもよい。加圧式エアロゾルの場合、投与単位は、一定量を輸送するための弁を提供することによって決定してもよい。ネブライザーには、米国特許第4,624,251号、第3,703,173号、第3,561,444号、および第4,653,627号に記載されるものが含まれるがこれらに限定されない。本明細書に記載のタイプのエアロゾル輸送システムは、ファイソンズ社(ベッドフォード、マサチューセッツ州)、シェリング社(ケニルワース、ニュージャージー州)、およびアメリカンファーモシール社(バレンシア、カリフォルニア州)を含む多数の販売元から入手できる。鼻腔内投与に関して、治療物質は、点眼液、プラスチックボトルのアトマイザーまたは定用量吸入器のような液体スプレーによって投与してもよい。典型的なアトマイザーは、ミストメーター(ウィントロップ社)およびメディヘラー(リカー社)である。
【0165】
さらに、活性成分はまた、記述の疾患または他の病態のためであるか否かによらず、他の治療物質、例えば他の疼痛軽減剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤等と組み合わせて用いてもよい。
【0166】
本発明はさらに、キットまたは他の容器のような微生物感染症を制御するための包装された薬学的組成物に関する。キットまたは容器は、微生物感染症を制御するための薬学的組成物の治療的有効量と、微生物感染症を制御するための薬学的組成物の使用説明書とを含む。薬学的組成物は、本発明の少なくとも一つの環状ペプチドを、微生物感染症が制御される治療的有効量で含む。
【0167】
本発明を、以下の非制限的な実施例によってさらに説明する。
【0168】
実施例 1 .材料および方法
固相ペプチド合成
溶媒および試薬:
アセトニトリル(ACN、最適な等級)、ジクロロメタン(DCM、ACS等級)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、シークエンシング等級)、ジエチルエーテル(Et2O、ACS等級)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、ペプチド合成等級)は、フィッシャー社から購入してさらに精製せずに使用した。トリフルオロ酢酸(TFA、ニュージャージーハロカーボン)、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU、リチェリュー・バイオテクノロジーズ)、ベンゾトリアゾル-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP、ノババイオケム社)は、購入した状態で使用した。市販のアミノ酸および樹脂は、バケム社、ノババイオケム社またはアドバンスドケムテック社から購入した状態で使用した。側鎖の保護は以下の通りであった。Fmoc合成に関してArg(Pbf)、His(Boc)、Lys(Boc)、Ser(t-Bu)、およびThr(t-Bu)。他の化学物質は全て、アルドリッチ社、アクロス社、シグマ社、またはフルカ社から購入した状態で使用した。
【0169】
ペプチド合成および環状化:
直線の保護されたペプチドを、トリチル官能基樹脂を用いてポリスチレン固相支持体上で合成して、溶液相で環状化した。第一のFmoc保護アミノ酸を、標準的な技法に従ってそのα-カルボキシレート基によって塩素-トリチル樹脂にローディングした。簡単に説明すると、乾燥Fmoc-アミノ酸(樹脂のローディングに関して1.2等量)をDCM(NaHCO3で乾燥、20 ml/g樹脂)およびDIEA(4等量)に溶解した。この混合物を新鮮な市販の塩化-トリチル樹脂(0.6〜1.2 mmol/g)に加えて、2時間絶えず攪拌した後、DCM(3×20 ml)、MeOH/DIEA/DCM(1:2:17、3×15 ml)およびDCM(3×20 ml)によって連続的に洗浄した。第一のアミノ酸のローディングは、一定量の樹脂から塩基を有するFmoc基を除去した後、既知の試料容積における産物のUV吸収および濃度を測定することによって推定した。アミノ酸の残りは、標準的なFmocプロトコールに従って連続的に導入した。J.M. a.Y. Stewart, J.D.、「Solid Phase Peptide Synthesis」、1984。最後のカップリングの後、20%ピペリジン/DMFによる処置によってN-末端のFmoc基を除去した。樹脂を含むペプチドをDMF(3×20 ml)によって洗浄した後、DCM(3×20 ml)によって洗浄した。側鎖が保護された直線状ペプチドは、何回か(10〜20)に分けたTFA/DCM混合物(1/99)と共に連続的に振とうすることによって樹脂から切断して、ピリジン(2 ml)およびMeOH(5 ml)を含むフラスコに溶液を回収した。切断の終了は、樹脂の色が暗赤色に変化した場合に得られる。次に、樹脂をDCM(2×10 ml)およびMeOH(2×10 ml)によって洗浄した。これらの洗浄液を、回収したTFA切断溶液と合わせた。溶媒を真空(1 mm Hg)で蒸発させ、直線状ペプチドの純度をMALDI-MSおよびHPLCによって評価した。ほとんどの場合、粗直線状ペプチドの純度がよいために、予め精製することなくに環状化を行うことが可能であった。そうでなければ、直線状ペプチドは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC/C4、またはC18、0.1%TFAのACN/H2O溶液)によって精製した。
【0170】
環状化は、PyBOP(粗ペプチドに関して5等量)およびDIEA(40等量)の混合物を用いて1〜5 mMのペプチド濃度でDMF中で行った。見かけのpH 9〜10が得られるようにDIEAの量を調節して、これを湿ったpH紙に反応混合物1滴を落とすことによって評価した。反応を、MALDI-MSおよびHPLCによって追跡して、ほとんどの場合これは2時間未満で完了した。次に、DMFを、温度30℃未満で真空下(1 mmHg)で蒸発によって除去して、残渣を真空下(0.1 mm Hg)で一晩乾燥させた。
【0171】
環状ペプチド側鎖を脱保護するために、乾燥した粗ペプチドを、TFA/PhOH/H2O/チオアニソール/EDT/TIS(81.5:5:5:2.5:1)の混合物(ペプチド〜100 mL/g)において室温で1〜3時間溶解した。反応の終了は、HPLCおよびMALDI-MSによって追跡した。TFA溶液を真空下(1 mmHg)で蒸発させることによって5倍濃縮して、氷冷Et2Oにそれを加えることによってそこからペプチドを沈殿させた。乾燥した粗ペプチドの純度はHPLCおよびMALDI-MSによって評価した。粗ペプチドは沸騰ACN/水/HCl混合物(30/70/0.1)中で溶解して、混濁した溶液を冷蔵庫において冷却することによって部分的に精製することができる。この混合物中のペプチドの溶解度が高い場合、アセトン(3容量等量)を上記の溶液に加えることによって、沈殿物を得ることができる。さらなる精製は、調整的逆相HPLC(C4、放射状圧縮カラム、ウォータース)によって、例えば溶出液A(0.1%HClの99%H2O/1%ACN(v/v)溶液)および溶出液B(0.07%HClの90%ACN/10%H2O(v/v))の勾配を用いて、流速24 ml/分によって行った。
【0172】
組み合わせペプチド合成:混合物ライブラリ
Boc化学によるペプチド合成のための材料は、多様な販売元から購入した。第一世代のペプチドライブラリを合成するために、N-Boc-αFmocグルタミン酸をその側鎖のカルボキシレートによってメチル-ベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂にローディングした後、それぞれ残りの合成のために、樹脂を各0.25 mmolの等モル画分4個に分割した。それぞれの画分に、(O-(7-アザベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3-3-)テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、4等量)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAT、4等量)、およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA、6等量)のDMF溶液を用いて、四つのN-Boc-保護D-アミノ酸、リジン、アルギニン、グルタミン酸、またはセリン(4等量)の一つをカップリングさせた。カップリング効率の差を補正するために、3〜7位に、N-Boc-保護アラニン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、およびトリプトファンのモル比1.35:1.97:4.47:1:1混合物(10等量対樹脂ローディング)をカップリングさせた(Pinilla, C.;Appel, J.R.;Brondelle, S.E.;Dooley, C.T.;Eichler, J.;Ostresh, J.M.;Houghten, R.A.、「Versatility of positional scanning synthetic combinatorial libaries for the identification of individual compounds.」、Drug Dev. Res. 1994、33:133〜145)。
【0173】
ペプチド合成に関しては、奇数の位置がL-キラリティのアミノ酸を含み、偶数の位置がD-キラリティのアミノ酸を含むことを除き、標準的な技法を利用した。8位において、N-Boc-保護D-アミノ酸、リジン、アルギニン、グルタミン酸、およびセリンのモル比2.24:2.34:1.31:1混合物をカップリングさせた(10等量対樹脂ローディング)。無希釈のTFAによってペプチド鎖からN-末端Bocを除去した後、グルタミン酸のカルボキシ末端上のα-Fmocを30%ピペリジンのDMF溶液によって除去して、HATU(2等量)、HOAT(2等量)、およびDIEA(4等量)のDMF/DMSO溶液および/またはベンゾトリアゾル-1-イル-オキシ-トリクス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP、1等量)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT、1等量)、およびDIEA(2等量)の無水2 M LiBr/テトラヒドロフラン溶液を用いて、樹脂上でペプチドを24〜48時間環状化させた、ペプチドを標準的な高いHF切断技法によって切断した後、エーテルによって洗浄して10%酢酸によって抽出した後、DMFによって抽出した。抽出物をプールして凍結乾燥した。
【0174】
最大の生物活性(最低のMIC値)を示すペプチドライブラリ配列の特定のアミノ酸を、次の組のライブラリを作製するために残した。次の世代のペプチドライブラリを同様にして合成し、先の世代から決定した特定のアミノ酸をカップリングした後に樹脂を分割した。組み合わせライブラリのペプチドは、エレクトロスプレー-質量分析(ES-MS)またはMALDI-TOF質量分析によって同定した。
【0175】
ペプチドライブラリ、ペプチドプール、またはペプチドの粗抽出物が活性を示せば、個々のペプチドを再合成して、HPLC精製して活性に関して再度試験した。例えば、低い最小発育阻止濃度の値を有するペプチドの粗調製物、シクロ[D-Arg-L-Gln-D-Arg-L-Trp-D-Trp-L-Leu-Trp-L-Trp](配列番号:10)を再合成して、HPLC精製し、抗菌活性に関して試験したところ、粗抽出物と類似の生物活性を有することが判明した。
【0176】
ビーズ組み合わせ環状ペプチドライブラリあたりの1化合物
スプリット・プール法によってマクロビーズ上で1ビーズ-1化合物戦略を用いて、環状D,L-α-ペプチド組み合わせライブラリを調製した。K.S. Lam、M. Lebl、V. Krchnak、「The 'one-bead-one-compound' combinational library method」、Chem. Rev. 1997、97:411〜448を参照されたい。各ビーズは、単一の配列を含み、ウェルあたり1ビーズの密度を用いてマイクロタイタープレートに分散させた。ビーズ1個からのペプチドの切断によって、1ウェルあたりペプチド約70〜80 μgが得られた。この量のペプチドは、インビトロ抗菌アッセイ法約100回分として用いることができると考えられる。所定のライブラリ内で選択されたペプチド種を迅速に同定するために、質量分析ペプチドシークエンシング戦略を用いた。
【0177】
固相ペプチド合成は、TFA-不安定トリチルリンカーによって官能基化したポリスチレンマクロビーズ上で行ったが、これによって、合成、取り扱い、固相環状化、および最終側鎖脱保護およびペプチド単離はかなり促進された。伸長するペプチド鎖を第一のアミノ酸鎖(例えば、リジンまたはヒスチジン)を通してトリチル部分に結合して、固相支持体上で完全なペプチド配列の選択的な「頭部-尾部」環状化を可能にした。第一のN-α-Fmocアミノ酸のα-カルボキシ基は、アルルエステルとして保護した。樹脂のローディングおよびペプチド鎖の伸長は、固相支持体としてクロロトリチルポリスチレンマクロビーズ樹脂(500〜560 μm、ペプチドインターナショナル社)、カップリング試薬としてHBTU、およびFmoc脱保護のために20%ピペリジンのDMF溶液を用いて、標準的なFmoc固相ペプチド合成条件下で行った。最終のアミノ酸カップリングの終了後、樹脂をパラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)およびN-メチルモルフォリンに曝露して、C-末端アルキル保護基を除去した。次にN-末端Fmoc脱保護の直後にPyBop(登録商標)による環状化を行うと、所望の環状ペプチドが一般的に高い収率で得られた。マクロビーズ1個を、マイクロタイタープレートの個々のウェルに手動でまたはビーズディスペンサーによって入れた。保護された環状ペプチドを固相支持体から外して、95%TFA(5%陽イオンスキャベンジャー)溶液を用いて一段階で脱保護した。切断後、溶媒を真空で除去すると、環状ペプチドが高い収率で得られた。切断条件および作業技法を一般的に最適化すると、最終ペプチドから、非揮発性のスキャベンジャーおよび可能性がある有害な副産物が除去された。上記の技法によって得られたペプチドライブラリは、抗菌選択アッセイ法において用いるために十分に純粋であった。
【0178】
材料:
アセトニトリル(HPLC等級)、ジクロロメタン(最適等級)、ジクロロヘキシルアミン(DCHA)、ジエチルエーテル(無水)、ジメチルホルムアミド(シークエンシング等級)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、ペプチド合成等級)、およびピペリジン(無水)は、フィッシャー社から購入してさらに精製せずに使用した。トリフルオロ酢酸(TFA、ニュージャージーハロカーボン)、2-(1-H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU、ノババイオケム社)、ベンゾトリアゾル-1-イル-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP、ノババイオケム社)は、さらに精製せずに使用した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)はストレムケミカルズ社から購入した。固相ペプチド合成のための市販のN-Fmocアミノ酸および塩化トリチルPS(1%DVB、置換0.5〜1.05 mmol/g)樹脂は、ノババイオケム社またはバケム社から購入した状態で用いた。塩化トリチルマクロビーズ樹脂は、ペプチドインターナショナル社から得た。
【0179】
Fmoc-リジン(Boc)-Oアリルの調製
Fmoc-リジン(Boc)-Oアリルは、Kates, S.A.;Sole, N.A.;Johnson, C.R.;Hudson, D.;Barany, G.;Albericio, F.、Tetrahedron Lett. 1993、34:1549〜1552のプロトコールに従って作製した。Fmoc-リジン(Boc)-OH(5 g、10.6 mmol)を臭化アリル(25 ml、0.29 mol)に加えた後DIPEA(3.73 ml)に加えた。この混合物を90℃で1時間加熱した。反応物を冷却して、ロータリーエバポレーションによって濃縮し、酢酸エチルによって希釈した後、2×0.1 N HCl、pH<9.5の2×飽和重炭酸ナトリウムの後、塩水によって洗浄した。有機相をシリカゲルパッドを通して濾過して、濃縮すると固体が得られた。この固体をエーテルによって洗浄すると白色粉末が得られ、これを次の段階に直接使用した。
【0180】
側鎖Boc保護基の脱保護
樹脂に0.5 mmol/gをローディングするために適当量のFmoc-Lys(Boc)-Oアリルを丸底フラスコに入れる。固体が溶解するために十分なジクロロメタンを加えた後等量のTFAを加えた。1時間攪拌した後、溶液を蒸発させて、Fmoc-Lys-Oアリルの残渣を真空で乾燥させた。
【0181】
樹脂のローディング
塩化トリチル樹脂を無水脱酸(Na2CO3)ジクロロメタン中で20分間膨張させた。Fmoc-Lys-Oアリルのジクロロメタン溶液を樹脂に加えた直後にDIPEA4等量を加えた。2時間攪拌した後、樹脂をジクロロメタンによって洗浄して、10%MeOH:10%DIPEA:80%ジクロロメタンと共に10分間振とうした。ジクロロメタンによって洗浄して真空で乾燥させた後、290 nmでのUV吸収によってモニターした放出Fmocに基づいて、樹脂のローディングを評価した。
【0182】
ペプチド合成
ペプチドは、Fmoc-Lys-Oアリルローディングトリチル樹脂に関する標準的な固相Fmocプロトコールを用いて合成した(Wellings, D.A.、Atherton, E.、Methods Enzymol. 1997、289、44〜67)。直線状ペプチドを合成した後、樹脂を無水ジクロロメタンにおいて20分間膨張させた。樹脂にPd(PPh3)4 0.5等量の90%CHCl3:10%4-メチルモルフォリンの脱気溶液を加えた。アルゴン下で5時間振とうさせた後、樹脂を1%ジメチルチオカルバミン酸ナトリウムのDMF溶液(3×2分)、1%DIPEA(3×2分)のDMF溶液によって洗浄した。最終的なFmoc脱保護の後(25%ピペリジンのDMF溶液、2×10分)、樹脂をDMF(3×3分)、10%DIPEA/DMF(3×3分)、0.8 M LiCl/DMF(3×3分)によって十分に洗浄した。樹脂を、0.8 M LiCl/DMFにおいてPyBOP5等量、HOAr5等量、DIPEA20等量によって少なくとも12時間処理した。DMF(3×3分)、DCM(2×3分)の後にMeOHによって洗浄した後、ペプチドを樹脂から切断して、2.5%TIS:2.5%H2O:95%TFAによって脱保護した。ペプチドをエーテルによる沈殿によって、または切断混合物の蒸発によって回収した。
【0183】
抗菌アッセイ法
ペプチドの抗菌アッセイ法は、国立実験基準制御委員会(National Committee for the Control of Laboratory Standards(NCCLS))[National Committee for Clinical Laboratory Standards、Methods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically.、第4版、承認済み標準(1997)、文書番号M7-A4(NCCLS、ビラノバ、ペンシルバニア州、1997)]のガイドラインに本質的に記載されるブロス希釈アッセイ法を用いて決定した。ペプチドの2倍連続希釈液を含む試験管(マクロ希釈法)またはマイクロタイタープレート(ミクロ希釈法)に様々な細菌培養物を接種した。対照には、非接種培地(滅菌)、溶媒対照、および試験微生物に対する最小発育阻止濃度が既知である様々な市販の抗生物質が含まれた。双方の方法を用いたインビトロ結果は、再現可能であり、全ての場合について、マクロ希釈アッセイ法からのMICは、ミクロ希釈試験によって決定した阻害濃度に等しい、または1希釈低かった(V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991を参照されたい)。ミクロ希釈法は、それぞれのアッセイ法に必要なペプチド量がより少なく、しかも多数を同時に接種できるという長所を有し、ほとんどの試験において用いられた。調べた細菌株のいくつかを表3にさらに記述する。
【0184】
(表3)
【0185】
MIC測定:ブロス希釈法
ペプチド溶液の調製
保存ペプチド溶液を5%DMSOの蔗糖水溶液において調製した。ペプチド濃度の決定は、既知濃度の内部標準物質を用いる定量的HPLC分析によっておよび/またはトリプトファン含有ペプチド溶液のH2O中でのUV吸収(λ=280εTrp:5690)を測定することによって行った。上記のDMSO/蔗糖水溶液(9%)混合液において約400〜2 μg/mlの範囲の濃度で連続二倍希釈を行い、マクロ希釈法に関しては試験管(100 μl)に、またはミクロ希釈法に関してはマイクロタイタープレート(20 μl)に採った。
【0186】
接種調製物
適した培地において増殖させた異なる微生物の一晩培養物を、適当な接種数2.5×105 cfu/mlとなるように4000倍希釈した。
【0187】
マクロ希釈法
マクロ希釈法は、国立臨床臨床実験基準制御委員会(National Committee for the Clinical of Laboratory Standards)のMethods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically.、第4版、承認済み標準(1997)、文書番号M7-A4(NCCLS、ビラノバ、ペンシルバニア州、1997)]に記載されるものと類似の技法を用いて行った。上記の接種物2 mlを、異なるペプチド溶液を含む試験管に入れた。37℃で振とうしながら18時間インキュベートした後、細菌の増殖を認めない最低濃度をMICとして記録した。
【0188】
ミクロ希釈法
ミクロ希釈法は、国立実験基準制御委員会(National Committee for the Control of Laboratory Standards)のMethods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically.、第4版、承認済み標準(1997)、文書番号M7-A4(NCCLS、ビラノバ、ペンシルバニア州、1997)]に記載される技法と類似の技法を用いて行った。上記の接種物80μlを異なるペプチド溶液を含む96ウェルマイクロタイタープレートに入れて、37℃で振とうしながら18時間インキュベートして(プレートは、培養培地が過剰に蒸発するのを防止するためにパラフィルムで密封した)、MICを記録した。各アッセイ法は少なくとも2回行って、誤差は典型的に±1希釈であった。
【0189】
MBC決定
最低殺細菌濃度(MBC)は、国立実験基準制御委員会(NCCLS)のガイドラインに従って決定した。Methods for Determining Batericidal activity of Antimicrobial Agents.承認済み標準(1999)、文書番号M26-A(NCCLS、ビラノバ、ペンシルバニア州、1999)]のMIC、2×MIC、および4×MICアッセイウェルから50μlを採取して、ローニング(lawning)技術を用いて抗生物質不含寒天プレートに播種した。増殖および滅菌対照は、同じように採取した。播種したプレートを24〜48時間インキュベートして、99.9%殺細胞が得られる最低濃度としてMBCを決定した。
【0190】
膜脱分極試験
膜の脱分極は、シアニン膜電位感受性色素3,3'-ジプロピルチアジカルボシアニドヨウ化物(diSC3)の蛍光放出強度の変化によってモニターした。無傷の黄色ブドウ球菌を攪拌しながら37℃で対数中期まで増殖させた(O.D.600=0.5)。細胞を遠心して、緩衝液(20 mMグルコース、5 mM HEPES、pH 7.3)によって1回洗浄し、0.1 M KClを含む類似の緩衝液においてO.D.600が0.05となるように再浮遊させた。色素が細菌膜に取り込まれたことを示す蛍光の安定な減少が得られるまで(約15分)細胞を1μM diSC3と共にインキュベートした。ペプチドを保存液(1 mg/ml)から加えて、5%DMSOの蔗糖水溶液(9%)に溶解して、望ましい0.1〜10×MIC濃度を得た。
【0191】
溶血感受性
哺乳類細胞に対する細菌に関する環状ペプチドの選択性を、Tosteson, M.T.、Holmes S.J.、Razin, M.およびTosteson, D.C.、「Mellittin Lysis of Red Cells」、J. Membrane Biol. 87:35〜44(1985)に記述される赤血球溶血活性を測定することによって評価した。マウスヘパリン加血を1000×gで10分間遠心した。上清およびバフィーコートを除去した。赤血球を0.9%生理食塩液によって3回洗浄してから、10%FBS(v/v)を含む生理食塩液に5%の濃度で再浮遊させた。赤血球を96ウェルプレートにおいて試験ペプチドの連続希釈液によって37℃で30分間処置した。対照試料には、0%および100%溶血としてそれぞれ、生理食塩液および1%トライトンX-100が含まれた。場合によっては、メリチンをさらなる対照として用いた。メリチンは、インビトロで約10 μg/mlの濃度で哺乳類赤血球に対して溶血作用を示す直鎖状ペプチドである。プレートを1000gで10分間遠心した。少量の上清を生理食塩液によって2倍希釈して、560 nmでの吸光度を測定した。
【0192】
インビボ実験のためのペプチド溶液の調製
保存ペプチド溶液は蔗糖水溶液(9%)において調製した。ペプチドの溶解を促進するために、最初の浮遊液を15〜20分間超音波処理した。滅菌0.45 μmフィルター(COSTER、μスター、コーニングインク)を通過させることによって得られた溶液を滅菌した。ペプチド濃度の決定は、異なるアリコットのH2O中でのUV吸収(トリプトファン含有ペプチドに関してλ=280 εTrp、5690 cm-1M-1)によって行い、w/vに対応する濃度の60〜70%であることが判明した。または、様々なペプチド保存溶液の濃度は、既知濃度の内部標準を用いて定量的HPLC分析によって決定した。さらに、ペプチド溶液は滅菌蔗糖水溶液(9%)によって適当に希釈した。
【0193】
インビボ保護試験のための細菌調製物
細菌は、既に記述されている技法と類似の技法を用いてインビボのために調製した。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991を参照のこと。黄色ブドウ球菌MRSA菌(ATCC 33591)を抗生物質培地-3(AM-3、ディフコラボラトリーズ社)5 ml中で37℃で攪拌しながら静止相まで12時間増殖させた。細胞を遠心によって回収して、生理食塩液によって2回洗浄し、生理食塩液約10 mlにO.D.650が約1.2となるように再浮遊させた。この浮遊液を、滅菌5%ムチン(ディフコ社)の生理食塩液溶液において濃度2〜4×107 cfu/ml(実際の接種サイズは、寒天プレート上でのコロニー計数によって確認した)となるように10回希釈した。
【0194】
バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(VREF)細菌(ATCC 51575)を脳心臓浸出培地(BHI、ディフコラボラトリーズ社)60 mlにおいて攪拌しながら37℃で静止相まで16時間増殖させた。細胞を遠心によって回収し、生理食塩液によって2回洗浄し、理論的O.D.650が9〜10となるように(10〜20倍希釈試料のO.D.650を得て、これを当初の濃度に相関させることによって決定)生理食塩液6 mlに再浮遊した。この浮遊液を滅菌した5%ムチン(ディフコ社)の生理食塩液溶液によって、濃度が5〜7×108 cfu/mlとなるように15倍希釈した(実際の接種量は寒天プレート上でのコロニー計数によって確認した)。
【0195】
インビボ動物試験
本発明のペプチドは、N. Frimodt-M Ilerら、「The Mouse Peritonitis/Sepstis Model」、Zakら編、「HANDBOOK OF ANIMAL MODELS OF INFECTION」、127〜37頁(アカデミック出版、1999)に記載される技法と類似の技法を用いて、それらが細菌感染症に対してマウスを保護するか否かを確認するために、マウスにおいて試験した。
【0196】
雄性Balb-cマウス(6週齢、約20 g)を試験に用いた。黄色ブドウ球菌MRSA株(ATCC 33591)を攪拌しながら37℃で静止期まで12時間増殖させた。細胞を遠心によって回収して、生理食塩液によって2回洗浄し、O.D.650が1.4となるように再浮遊させた。この浮遊液を生理食塩液によって10倍に希釈して濃度3〜5×107 cfu/mlとなるように再浮遊させた。それぞれのペプチドに関して、1群あたりマウス8匹の5群に上記の黄色ブドウ球菌MRSA調製物0.5 ml(致死量)を腹腔内に感染させた。感染後45分〜1時間後、各群を異なる用量のペプチドによって処理して、対照群には溶媒のみを投与した。マウスを14日間モニターした。死亡をエンドポイントとして定義した。Reed・Muench法に従って保護用量の中央値(PD50)を計算した。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991を参照されたい。IVおよびSQモデルに関しては、ペプチドをIP感染の直後に投与した。
【0197】
毒性試験
ペプチドを、既に記述された技法と類似の技法を用いてインビボで毒性に関して調べた。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991を参照されたい。1群4〜8匹のマウス(雄性Balb-c)にペプチドのIV、IP、またはSQ一回ボーラス投与を行い、14日間モニターした。致死下用量の毒性は、溶媒のみを投与した対照マウスと比較して、ペプチド投与後のマウスの挙動および外観に基づいて評価した。急性毒性の兆候には、活性の欠如、赤色の脚および尾、速い呼吸が含まれた。死亡は、ペプチドの致死量に関するエンドポイントとして定義した。
【0198】
病理学試験
ペプチド塩酸シクロ[RRKWLWLW]および塩酸シクロ[KQRWLWLW]の病理作用をBalb-c(雄性20〜25 g)について評価した。ペプチドを75 mg/kgの9%蔗糖溶液という致死量でIP投与し、対照マウスには溶媒のみを投与した。50〜60分後(塩酸シクロ[KQRWLWLW]の場合)および翌日(塩酸シクロ[RRKWLWLW]の場合)に、マウスを屠殺して分析した(Dr. Osborn、Vet. Pathologist、Department of Animal Resources、TSRI)。病理学試験には、血球数の計数、ならびに異なる組織および臓器の組織学検査が含まれた。
【0199】
複数回投与の毒性はまた、ペプチド塩酸シクロ[KSKWLWLW]についても試験した。マウス(雄性CD-1、チャールス・リバー研究所、20〜25 g)をこの試験のために用いた。ペプチドの9%蔗糖溶液200 mg/kg/日の10日間連続投与を、マウス3匹にIP注射して、対照マウス2匹には溶媒のみを投与した。11日目に、マウスを屠殺して分析した(Dr. Osborn、Vet. Pathologist、Department of Animal Resources、TSRI)。病理学試験には、血球数の計数、および異なる組織および臓器の組織学検査が含まれた。
【0200】
薬物動態
薬物動態は、既に記述された技法と類似の方法を用いて行った。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991;W.A. Ritschel, G.L., Kearns、「Handbook of Basic Pharmacokinetics」、American Pharmaceutical Assoc. 第5版、ワシントンDC、1999を参照されたい。
【0201】
塩酸c[RRKWLWLW]を用いた薬物動態試験
IV注射:
ペプチドの9%蔗糖溶液(1 mg/ml)を用量3.6 mg/kgでBalb/cマウスの尾静脈にIV注射した。次に、個々のマウスについて個別に尾から出血させることによって、1群のマウス(各群3匹)から直ちに血液を採取した(50〜100 μl/マウス)。注射後20分、40分、70分、90分、120分、180分、および260分に、他の群のマウスからさらに採血を行った。各血液試料からの血漿を、赤血球を4000回転/分で5分間遠心沈降させることによって回収直後に分離した。血漿を等量の生理食塩液によって希釈して、分析するまで冷蔵保存した。これらの条件で1ヶ月間試料を保存しても、ペプチドの濃度は変化しなかった。
【0202】
IP注射:
ペプチドの9%蔗糖溶液(8.1 mg/mL)をBalb/cマウスに100 mg/kgの用量でIP注射した。次に、個々のマウスについて個別に尾から出血させることによって、1群のマウス(各群3匹)から直ちに血液を採取した(50〜100 μl/マウス)。他の群のマウスから注射後0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、10時間後、15時間後に採血を行った。各血液試料からの血漿は、赤血球を4000回転/分で5分間遠心沈降させることによって、回収直後に分離した。血漿を等量の生理食塩液によって希釈して、分析するまで冷蔵保存した。これらの条件で1ヶ月間試料を保存しても、ペプチドの濃度は変化しなかった。
【0203】
HPLCによる血漿中の塩酸シクロ[RRKWLWLW]の検出:
生理食塩液によって希釈した血漿(50〜100 μl)に溶出液A(0.1%HClの99%H2O/1%ACN(v/v)溶液)(150〜300 μl)を加えて、攪拌して、遠心によって部分的沈殿物を除去した。透明な溶液をHPLCに注入して、ペプチドを、溶出液A(0.1%HClの99%H2O/1%ACN(v/v)溶液)および溶出液B(0.07%HClの10%H2O/90%ACN(v/v)溶液)の勾配を用いて、流速1.5 ml/分で280 nmにおいて8〜10分の間隔で検出した。以下の勾配を用いた:30〜30%B(5分)の後に、30〜37%B(5分)の後に、37〜40%B(12.5分)。
【0204】
塩酸c[KSKWLWLW]を用いた薬物動態試験
IV注射:
ペプチドの9%蔗糖溶液(2 mg/ml)を用量5 mg/kgでBalb/cマウスの尾静脈にIV注射した。次に、個々のマウスについて個別に尾から出血させることによって、1群のマウス(各群3匹)から直ちに血液を採取した(50〜100 μl/マウス)。注射後30分、60分、120分、230分、および300分に他の群のマウスからさらに採血を行った。各血液試料からの血漿は、赤血球を4000回転/分で5分間遠心沈降させることによって回収直後に分離した。血漿を等量の生理食塩液によって希釈して、分析するまで冷蔵保存した。これらの条件で1ヶ月間試料を保存しても、ペプチドの濃度は変化しなかった。
【0205】
IP注射:
ペプチドの9%蔗糖溶液(9.8 mg/mL)をBalb/cマウスに100 mg/kgの用量でIP注射した。次に、個々のマウスについて個別に尾から出血させることによって、1群のマウス(各群3匹)から直ちに血液を採取した(50〜100 μl/マウス)。他の群のマウスから注射後0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、10時間後にさらに採血を行った。各血液試料からの血漿は、赤血球を4000回転/分で5分間遠心沈降させることによって回収直後に分離した。血漿を等量の生理食塩液によって希釈して、分析するまで冷蔵保存した。これらの条件で1ヶ月間試料を保存しても、ペプチドの濃度は変化しなかった。
【0206】
HPLCによる血漿中の塩酸シクロ[KSKWLWLW]の検出:
生理食塩液によって希釈した血漿(50〜100 μl)に溶出液A(0.1%TFAの96.5%H2O/0.9%ACN/2.4%MeOH(v/v)溶液)を加えて、攪拌して、遠心によって部分的沈殿物を除去した。透明な溶液をHPLCに注入して、ペプチドを、溶出液A(0.1%TFAの96.5%H2O/0.9%ACN/2.4%MeOH(v/v)溶液)および溶出液B(0.05%TFAの8%H2O/72%ACN/20%MeOH(v/v)溶液)の勾配を用いて、流速1.5 ml/分で280 nmにおいて18〜20分の間隔で検出した。以下の勾配を用いた:0〜0%B(5分)の後に、0〜100%B(25分)。
【0207】
薬物動態パラメータの計算:
分析的血漿のHPLC試験を行った場合のペプチドに対応するHPLCピーク面積を、既知量のペプチドの較正量の面積と相関させて、決定した濃度を採血時間に対してプロットした。第一の近似において、IV注射によって得られた曲線は、一次動態式(1)に適合し、単コンパートメントモデルであることを示している。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991;W.A. Ritschel, G.L., Kearns、「Handbook of Basic Pharmacokinetics」、American Pharmaceutical Assoc. 第5版、ワシントンDC、1999を参照されたい。
Ct=Co*e-Kel*t (1)
【0208】
等式(1)の実験点に対する最善の適合をシグマプロットを用いて計算した。以下のパラメータをIV注射曲線の最善の適合から計算した:
AUCIV(μg*h/ml)−IV注射に関する曲線下面積
C0(μg/ml)−ゼロ時間での血液中のペプチド濃度
Kel(l/分)−消失速度定数
T1/2(分)−半減期(C=C0/2):T1/2=(ln2)/Kel
V(L/kg)−分布容積、V=D/C0、Dはmg/kgで表した注射ペプチド量である
CL(ml/分)−ペプチドの総クリアランスを二つの方法で計算して平均した
CL=用量/AUCIV、用量は、マウスに投与したペプチドの総用量をμgで表している
CL=Kel*V*m、mはgで表したマウスの体重である。
等式(2)は、IP経路によって注射したペプチドの生物学的利用率(F)を決定するために用いた:
F=100%*(AUCIP*DIV)/(AUCIV*DIP) (2)
式中、AUCIPは、IP注射による濃度対時間曲線下面積である。DIVおよびDIPはそれぞれ、mg/kgで表した、IVおよびIP経路によって投与したペプチドの用量である。
【0209】
実施例 2 .環状ペプチドのインビトロ抗菌活性
本実施例の第一の実験において用いられる8残基環状ペプチドは、連続した極性残基3個とL-トリプトファンおよびD-ロイシンリピートを有し、これらは疎水性表面を形成して細胞膜への有効な分配を促進する。さらに、ペプチドは最もしばしば、細菌膜に対する特異性を増強するために少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基を含むようにデザインされた。
【0210】
これらのデザイン特徴の有用性は、配列Lys-D-Gln-Arg-D-Trp-Leu-D-Trp-Leu-D-Trp(配列番号:9)の配列を有する代表的な環状ペプチドを用いるインビトロ抗菌アッセイ法によって証明された。環状ペプチド配列番号:9は、グラム陽性菌である枯草菌(Bacillus subtilis)および黄色ブドウ球菌、ならびにグラム陰性菌である肺炎球菌およびバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカーリスに対して強力な活性を示した(表4)。
【0211】
(表4)Lys-D-Gln-Arg-D-Trp-Leu-D-Trp-Leu-D-Trp(配列番号:9)のインビトロ活性
a 最小発育阻止濃度;
b MDS Panlabs薬理学サービスからのデータ;
c ATCC 43223; d ATCC 11778;
e ATCC 25923; f ATCC 19115;
g バンコマイシン耐性臨床単離菌;
h エリスロマイシンおよびアンピシリン耐性臨床単離菌;
i ATCC 14028;
j 赤血球の50%が溶血される溶血量(HD50)(μg/ml);
k LD50(μg/ml)
【0212】
抗菌剤としてこれらのペプチドの抗菌活性をさらに調べるため、および表面特性、抗菌活性、および膜選択性のあいだの関係を調べるために、一連の6残基および8残基両親媒性環状ペプチドを作製した。ペプチドを標準的な固相BOCまたはFMOC合成プロトコールによって合成して、溶液または固相支持体上で環状化して、RP-HPLCによって精製して、MALDI-TOFまたはESI-質量分析によって特徴を調べた。これらのペプチドの配列を表5に示す。一文字コードを用いる環状ペプチド配列の簡略表示を用いると、容易な配列比較を行うことができた。下線は、アミノ酸がD-アミノ酸残基であることを示している。
【0213】
(表5)ペプチド配列
【0214】
抗菌活性は、大腸菌および、現在米国において年間およそ200万人の院内感染の主要成分である、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して試験した(バンコマイシンに対する感受性が低下した新たな黄色ブドウ球菌株の背景および歴史、ウェブサイト、narsaweb.narsa.net)。抗菌アッセイ法は、標準的なミクロ希釈法を用いて上記の通りに行った。結果を表6、7、8および9に示す。
【0215】
(表6)D-、L-α-アミノ酸を含むペプチドの抗菌活性
a ATC33591。b JM109(DE3)。c Uは、アラニン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、およびトリプトファンからなる群より選択される疎水性アミノ酸である。d 約1.7〜2.5 μg/mlでの古草菌に対する活性。ペプチド混合物配列番号:30〜37は、複雑なペプチド混合物であり。抗菌活性のためのその濃度を特に決定することができなかった。これらの配列のMIC値は、5倍まで異なる可能性がある。
【0216】
生物活性および膜選択性における極性側鎖の役割は、表6に記載する抗菌活性の説明に基づいて評価してもよい。
【0217】
配列番号:5および6における環状ペプチドはそれぞれ、セリン残基2個のあいだに、またはセリンとトレオニン残基のあいだに塩基性残基1個を有する。ペプチド配列番号:5[シクロ-(D-Ser-Lys-D-Ser-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、黄色ブドウ球菌MRSAに対して良好な活性を示し、リジンのヒスチジン置換体であるペプチド配列番号:6[シクロ-(D-Thr-His-D-Ser-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]では、その活性が有意に低下する。
【0218】
配列番号:8〜15の環状ペプチドはそれぞれ、塩基性アミノ酸2個および中性の極性アミノ酸1個を有する。これらの環状ペプチドは、抗菌活性および赤血球の溶血が異なる。グルタミン酸の1置換体は、ペプチド配列番号:14[シクロ-(D-Ser-Lys-D-His-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]と配列番号:16[シクロ-(D-Glu-Lys-D-His-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]の黄色ブドウ球菌MRSAに対する大きい活性の差によって示されるように、抗菌活性に対して有害な作用を有する。グルタミン酸含有ペプチドの活性が低下することは、カルボキシレート側鎖の細菌膜成分との不都合な静電気的相互作用による可能性がある。
【0219】
ペプチド配列番号:17〜22において塩基性残基の数を2〜3個増加させると、黄色ブドウ球菌MRSAに対して高い活性を示した。配列番号:18[シクロ-(D-Arg-Arg-D-Lys-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]および配列番号:21[シクロ-(D-His-Lys-D-His-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp]も同様に、大腸菌に対して中等度の活性を示した。配列番号:26〜29を有する6量対ペプチドのインビトロ抗菌活性も同様に、環状ペプチドにおいて塩基性アミノ酸を用いると抗菌活性を増加して、細菌膜に対する選択性が改善することを示している。連続するリジン残基2個を有するペプチド配列番号:26[シクロ-(D-Lys-Lys-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、広いスペクトルの活性を示し、溶血特性は低い。一方、ペプチド配列番号:26においてリジンの代わりにヒスチジンを有するペプチド配列番号:27[シクロ-(D-Lys-His-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、黄色ブドウ球菌MRSAに対して高い活性を有するが、大腸菌に対しては不活性である。ペプチド配列番号:26においてリジンをセリンに置換すると、より活性の弱いペプチド配列番号:28[シクロ-(D-Lys-Ser-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]が得られる。しかし、ペプチド配列番号:29[シクロ-(D-Arg-Arg-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、アルギニン残基2個を有し、大腸菌に対して強力かつ選択的な活性を示し、溶血レベルは低い。
【0220】
上記のペプチドについて認められた活性および膜の選択性のスペクトルは、単一のアミノ酸置換でさえも、哺乳類細胞に対する抗菌活性および選択性に影響を及ぼしうることを示している。
【0221】
インビトロで環状ペプチドの利用率および安定性に対する血漿蛋白質の影響も同様に調べた。抗菌活性は、培養培地に大量の(50%v/vまで)ウシ胎児血清(FBS)が存在しても不変であった。しかし、調べたほとんどのペプチドは、FBSの非存在下における類似のアッセイ法と比較すると、アッセイ混合物中に5〜10%FBSが存在すれば溶血活性レベルが減少した。例えば、10%FBSの存在下で、ペプチド配列番号:8[シクロ-(D-Lys-Gln-D-Arg-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、溶血活性の5倍減少を示す(HD50=10〜50 μg/ml)。
【0222】
配列番号:13、18、26、および29を有する環状ペプチドを、蛋白質溶解に対する感受性に関してアッセイした。ペプチドは非生物構造および立体構造の選択性を示し、トリプシン、α-キモトリプシン、サブチリシン、および血漿の存在下で安定であった。RP-HPLCから得られたクロマトグラムでは24時間にわたって有意なペプチドの分解を認めなかったが、対照の直線状L-α-アミノ酸ペプチドは、類似の反応条件で10分未満に分解して、マウス血漿中に入れると4時間以内に分解した。
【0223】
グラム陰性およびグラム陽性菌のさらなる試験の結果を、FDA承認抗生物質を用いた対照アッセイ法と共にそれぞれ、表7および8に示す。配列比較を容易にするために一文字アミノ酸コードを用いる環状ペプチド配列の簡略表示を用いた。下線は、アミノ酸がD-アミノ酸残基であることを示し、かぎ括弧はペプチドが環状であることを示す。
【0224】
(表7)グラム陰性菌
【0225】
(表8)グラム陽性菌
【0226】
本発明の環状ペプチドの異なるタイプの抗菌特性を表9にさらに示す。それぞれの環状ペプチドは、アミノ酸がD-キラリティを有することを示す場合には下線を用いた簡略表示で示し、環状ペプチドを特定する場合には、カギ括弧を用いて、そして配列番号を示す場合には括弧内の数字で記述する。これらのペプチドを、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33591)およびバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカーリス(VRE)(ATCC 51575)に対して、哺乳類の赤血球に対する溶血活性に関して調べた。
【0227】
(表9)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカーリス(VRE)に対するインビトロ活性
調べたペプチドは全て、特に明記している場合を除きTFA塩である。培地「a」は抗菌培地-3(AM-3)であった。培地「b」は陽イオン補正ミューラーヒントンブロス(MHBII)であった。培地「c」は脳心臓浸出物(BHI)であった。
【0228】
別の一連の実験において(表10)、本発明の環状ペプチドの活性を多様な細菌種に対して試験した。調べた細菌種は以下の通りであった:バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカーリス(VRE、ATCC 51575);メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(ATCC 33591、MRSA);大腸菌JM109(DE3);セレウス菌(ATCC 11778);および肺炎球菌(ATCC 6301)。マウス赤血球を、実施例1に記載したように溶血アッセイ法のために用いた。
【0229】
(表10)最小発育阻止濃度(MIC)(mg/ml)
【0230】
本発明の環状ペプチドのいくつかが大腸菌JM109(DE3)、エンテロコッカス・フェシウムSP180、および黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33591および33592)を殺す速度を、室温および/または37℃でさらに調べた。温度がより低ければ、細菌が急速に増殖しないため、細菌培養物を成熟細菌に関して濃縮する傾向がある。したがって、室温では、培養物はより成熟した細菌を有すると考えられる。培養物における未成熟細菌の有無は、未成熟細菌が多くの型の抗生物質に対してよい感受性が高い傾向があることから、細菌が殺される速度に影響を及ぼす可能性がある。
【0231】
以下の配列を有する環状ペプチドを試験に用いた:
様々なタイプの細菌を殺す時間曲線を図8〜20に示す。
【0232】
図8aに示すデータを作製するために、培養物1 mlあたりのコロニー形成単位(cfu)の数の対数を、MIC濃度のシクロ[KHLWLW](黒丸)、シクロ[KRKWLWLW](黒三角)、およびシクロ[KQRWLWLW](白四角)による黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33591)の処置後の時間の関数として決定した。図8aに示すように、環状ペプチドシクロ[KRKWLWLW]およびシクロ[KQRWLWLW]は、黄色ブドウ球菌(MRSA)の実質的に全てまたはほとんどを約5分以内に有効に殺した。cfu数の減少は、3対数単位より大きかった。環状ペプチドシクロ[KHLWLW]は全ての黄色ブドウ球菌(MRSA)を約60分以内に有効に殺した。
【0233】
図8bにおいて、培養物1 mlあたりの大腸菌コロニー形成単位(cfu)の数の対数を、MIC濃度でのシクロ[KRKWLWLW](黒三角)、シクロ[KQRWLWLW](黒丸)、シクロ[KHLWLW](黒四角)、およびシクロ[KKLWLW](白四角)による処置時間に対してプロットした。示されるように、シクロ[KQRWLWLW]は全ての大腸菌を約30分以内に有効に殺す。環状ペプチドシクロ[KHLWLW]は、全ての大腸菌を約90分以内に有効に殺す。環状ペプチドシクロ[KRKWLWLW]およびシクロ[KKLWLW]は、全ての大腸菌を約130分以内に有効に殺す。図8と9とを比較すると、これらの環状ペプチドが、大腸菌のようなグラム陰性菌より幾分速く黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33592)のようなグラム陽性菌を殺すことを示している。とはいえ、これらの環状ペプチドは双方のタイプの菌を非常に迅速に殺す。
【0234】
図9および10は、室温および37℃でのシクロ[KSKWLWLW]環状ペプチド(配列番号:12)の様々な濃度で黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33592)を殺すための時間経過を示す。例えば、37℃では、約4 μg/mlのKSKWLWLW環状ペプチドは、全ての細菌を約1時間以内に有効に殺すように思われる。しかし、細菌集団は、約6時間までにリバウンドする。これは、そのアッセイ法において用いたペプチドの量がMIC値未満であったことから、培養物内に残っている環状ペプチドが消耗した後に少数の生存菌が増殖したことによる可能性がある。室温では、約4 μg/mlは全ての黄色ブドウ球菌(MRSA)を約2時間まで殺すように思われ、リバウンドを認めない。KSKWLWLW環状ペプチドは、室温および37℃で細菌に対して非常に有効である。
【0235】
図11および12は、室温および37℃で様々な濃度のKSKWLWLW(配列番号:12)によってE.フェシウムSP180を殺す時間経過を示す。アッセイ法は、脳心臓浸出ブロス中で行った。示したように、室温と比較して37℃では、この環状ペプチドがE. ファシウムSO180を殺すために必要な時間は幾分短く、および/または濃度は幾分低い。E.ファシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、およびいくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。例えば、37℃で約2 μg/mlのKSKWLWLWは、生存しているcfuの数を評価するために試験培養物から少量を除去する間もなく速く全ての細菌を有効に殺すことができる。しかし、室温では、約2 μg/mlのKSKWLWLWを加えた直後にかなりの数の生存細菌を検出することができる。その上、1 μg/mlのKSKWLWLWを用いる場合、37℃では2時間後に有効にcfuを検出できないが、室温では、全体的な時間経過を通して生存細菌を検出することができる。1 μg/mlのKSKWLWLWを37℃で用いると、細菌の生存率のリバウンドを認める。これは、そのアッセイ法において用いられたペプチドの量がMIC値以下であったことから、培養物内の残留環状ペプチドが消耗した後に少数の生存菌が増殖したことによる可能性がある。KSKWLWLW環状ペプチドは、室温および37℃の双方でE. ファシウムSP180細菌に対して非常に有効である。
【0236】
図13および14は、室温および37℃でRRKWLWLW(配列番号:18)の様々な濃度によって黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33592)を殺す時間経過を示す。例えば、37℃では、約4 μg/mlのRRKWLWLW(配列番号:18)環状ペプチドは、1時間以内に全ての細菌を有効に殺すように思われる。しかし、細菌集団は、約8時間までにリバウンドする。これは、そのアッセイ法において用いられたペプチドの量がMIC値以下であったことから、培養物内の残留環状ペプチドが消耗した後に少数の生存菌が増殖したことによる可能性がある。室温では、約4 μg/mlは、環状ペプチドに曝露後約1時間までに全ての黄色ブドウ球菌(MRSA)を殺すように思われ、リバウンドを認めない。RRKWLWLW(配列番号:18)環状ペプチドは、室温および37℃で細菌に対して非常に有効である。
【0237】
図15および16は、室温および37℃で様々な濃度のRRKWLWLW(配列番号:18)によってE. ファシウムSP180を殺す時間経過を示す。E. ファシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)およびいくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。アッセイ法は脳心臓浸出ブロスにおいて行った。説明したように、この環状ペプチドがE. ファシウムSP180を37℃で殺すために必要な時間は幾分短く、および/または濃度は幾分低い。例えば、室温および37℃の双方において、約2 μg/mlのRRKWLWLW(配列番号:18)は、全ての細菌を1時間以内に有効に殺すことができる。したがって、RRKWLWLW(配列番号:18)環状ペプチドは、室温および37℃の双方でE. ファシウムSP180菌に対して非常に有効である。
【0238】
多くの通常の抗生物質は単に静菌的であり、それらは細菌の増殖を停止させるのであって、細菌を迅速に殺す訳ではないことを意味している。これを図17および18に説明し、ここでは様々な濃度のペニシリンGによって黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33592)を殺すための時間経過を提供する。示したように、室温では、512 μg/mlまでアッセイしたいずれのペニシリンGの濃度も、試験の時間経過全体において(0〜8時間)黄色ブドウ球菌(MRSA)の全集団を殺すまたは減少させるために有効ではなかった。しかし、用いた最高濃度(512 μg/ml)では、ペニシリンGは、37℃で4時間以内にcfuの数を減少させるために有効であった。対照的に、図8〜16に示すように、本発明の環状ペプチドは、多様な成熟および非成熟細菌をかなり低い濃度で迅速に殺す。
【0239】
実施例 3 .膜の脱分極活性
如何なる作用機序にも拘束されることを意図しないが、本発明の環状ペプチドが微生物を殺すために作用する一つのメカニズムは膜の脱分極であると考えられる。環状ペプチドが微生物を殺すもう一つのメカニズムは、環状ペプチドをリガンドとして認識する受容体を通してである。Friederichら、Antimicrob. Agents Chemother. 44:2086〜2092(2000);Amsterdam, D.「Antibiotics in Laboratory Medicine」、第3版、(Lorian, V.編)、53〜105頁(ボルチモア、メリーランド州、アメリカ、1991)を参照されたい。細菌の膜における環状ペプチドの受容体/リガンド媒介作用機序は、いくつかの理由で可能性が低い。第一に、多様な構造を有する環状ペプチドは、微生物に対して活性であるが、ほとんどの受容体は構造に基づいて可能性があるリガンドを区別し、規定の構造特徴を有するリガンドのみを認識すると考えられる。第二に、本発明のペプチドは、細菌を非常に迅速に殺すが、受容体/リガンド媒介結合/阻害メカニズムは、典型的に、完全な殺細菌または静菌活性を得るために数時間を要すると予想される。本実施例は、膜の脱分極作用機序を支持する生物物理学的データを提供する。
【0240】
活性を有する環状ペプチドの構造的多様性は、配列番号:8(シクロ-[D-Lys-Gln-D-Arg-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp])および配列番号:9(シクロ-[Lys-D-Gln-Arg-D-Trp-Leu-D-Trp-Leu-D-Trp])を有するエナンチオマーペプチドによって説明される。これらの二つの環状ペプチドは、それぞれの位置でのこれらのペプチドのキラリティの差にもかかわらず、類似のインビトロ活性を有する。その上、先の実施例に記載した時間-殺菌試験によって示されるように、殺菌速度は、受容体/リガンド媒介作用様式とは一致しない。そのような受容体-リガンドメカニズムは、細菌を殺すためにおそらく実施例8〜16に示す短い時間より長い時間を要すると考えられる。例えば、配列番号:8および配列番号:19を有する8量体ペプチドならびに配列番号:26および27を有する6量体ペプチドは、MICに等しい濃度またはMICより高い濃度でそれぞれ、5分および60分で、黄色ブドウ球菌MRSAに対して完全な殺菌活性を有する。時間-殺菌試験のさらなる例は、先の実施例に示す。
【0241】
本実施例において、環状ペプチドが、細胞の脱分極活性を示すか否かを決定するために試験した。シアニン膜色素3,3'-ジプロピルチアジカルボシアニドの蛍光は、細菌膜電位の変化に対して感受性があり、生きている黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の膜脱分極に対するペプチド配列番号:8、18、および26の影響を追跡するために本実施例において用いた。Simら、Biochemistry 13:3315〜3330(1974);Waggoner、Annu. Rev. Biophys. Bioeng. 8:847〜868(1979);Loew、Adv. Chem. Ser. 235(Biomembrane Electrochemistry)、151〜173(1994)を参照されたい。
【0242】
それぞれの場合において、色素飽和した生存黄色ブドウ球菌を様々な濃度(0.1〜1×MIC、最小発育阻止濃度)の環状ペプチドに曝露すると、迅速かつ完全な膜の脱分極が起こった(図3)。これらの実験の経過において採取した培養試料では、膜の脱分極と細胞死とが相関する。ペプチドのMIC濃度に5分間曝露後では実質的に生存細菌を検出できなかったが、0.1×MIC濃度では、生存細菌の有意な集団がなおも存在した。
【0243】
合成膜における生物物理試験
合成脂質膜において実施した生物物理分析も同様に、膜透過性作用機序を支持する。試験は、8残基環状D,L-α-ペプチドがアミノ酸組成および環状ペプチドの配列に応じて、異なるタイプの超分子構造をおそらく形成しうるという考え方を支持する。例えば、ペプチド配列番号:2(シクロ[Gln-D-Leu-(Trp-D-Leu)3])は、リポソーム膜の内径より小さい分析体の輸送のみを促進して、DMPC多二重層におけるATR-FTIR分析によれば、膜平面に対して垂直方向である管状構造を構築する。したがって、1個のナノチューブ通過孔メカニズムが、このペプチドに関するおそらく作用機序である(図2aを参照されたい)。
【0244】
一方、極性の荷電側鎖を有する相同なペプチド配列番号:3(シクロ[Lys-D-Leu-(Trp-D-Leu)3])は、それが分子量約10,000までのより大きい分子の膜を通過しての輸送を促進することから、チューブの内径より大きい開口部を有する異なる超分子構造を形成する可能性がある。さらに、配列番号:3(シクロ[Lys-D-Leu-(Trp-D-Leu)3])を有するペプチドから形成された超分子構造は、ATR-FTIR分析によれば合成膜において膜平面に対して垂直な方向を維持する。これらのデータは、ペプチドがおそらく、筒状の樽型超分子構造を形成して、その中で多数の直立したナノチューブの束がより大きい孔開口部を形成することを支持している(図2b)。
【0245】
比較すると、連続した3個の残基の親水性表面を有する
のようなペプチドは、ペプチドの内径より大きい分子の輸送を媒介するのみならず(図4)、膜構造の平面に対してほぼ平行な方向を有する。環状ペプチド配列番号:8、17、および18のATR FT-IR分光法は、堅固に水素結合したβ-シート様の構造の特徴であるアミドIおよびアミドIIのバンドを明らかにした(表11)。認められたアミド-A(NH伸縮)振動数は、サブユニット間骨格水素結合の堅固な網目構造を支持している。定方向のDMPC脂質多重二重層における定量的測定から、自己構築ペプチドナノチューブが通常の膜から70±5°傾いた角度を向いていることが示されている。これらの知見は、カーペット様式の膜の透過性を示唆している(図2)。環状ペプチドの親水性の増加は、このように「孔形成」方向より「表面指向」方向を好むように思われる。
【0246】
(表11)定向性のDMPC脂質多重二重層における抗菌環状ペプチドナノチューブのATR-FTIRデータおよび方向
a 平行な入射偏光を有するアミド-I強度と垂直な偏光を有するバンド強度との二色比。
b DMPC脂質の非対照CH2鎖の二色比。
c 傾斜角は正常表面に関する分子軸の角度を指す。
d ペプチドチューブの軸の角度と脂質炭化水素鎖との差。脂質およびペプチドナノチューブの傾斜角は、H.-S. Kimら、120 J. Am. Chem. Soc. 4417〜24(1998)に詳述される方法に従って計算する。DMPC:ジミリストイルホスファチジルコリン。データは試料2個の平均値であり、誤差は<±2°である。
【0247】
細菌の細胞膜活性に関するさらなる証拠は、本発明の環状ペプチドによって処理した細菌の電子顕微鏡写真によって提供される。細菌(黄色ブドウ球菌、ATCC 25923)を環状ペプチドシクロ[KSKWLWLW]によって室温で120分間処置した後、標準的な技法によって薄切片電子顕微鏡のために調製した。
【0248】
図21〜23は、電子顕微鏡を用いて認められた本発明の環状ペプチドによって引き起こされた膜の作用を示す。図21は、正常な無傷の膜を示す無処置の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を示す。図22および23は、2×MIC濃度のシクロ[KSKWLWLW]に曝露後の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を示す。これらの写真は、膜の作用様式を直接可視化している。矢印は、ペプチドの作用によって引き起こされた異常な膜構造を示す。
【0249】
証拠はこのように、少なくとも部分的に膜の透過性、脱分極、および/または溶解に基づく抗菌活性を示している。そのような証拠には、環状ペプチドが非常に速やかに作用して細菌を殺すこと、本明細書に記載した多様な環状ペプチド構造が抗菌活性を示すこと、環状ペプチドが細菌の膜を脱分極できること、全反射(ATR)FT-IR分光試験が、受容体/リガンド媒介結合/阻害メカニズムよりむしろ膜透過性作用機序と一致すること、そして電子顕微鏡によって膜構造に及ぼす本発明の環状ペプチドの作用が明らかになることが含まれる。
【0250】
実施例 4 .インビトロ抗菌活性
毒性試験:
様々な投与経路、最大認容量、ならびに血液および組織毒性を評価するために、マウスにおける初期毒性試験を行った。各用量試験においてマウス2匹に、ペプチド配列番号:8、18、および26のボーラス静脈内(IV)、腹腔内(IP)、または皮下(SQ)注射を行った。それぞれの試験に関して対照動物2匹にペプチドを含まない溶媒のみを投与した。ペプチド配列番号:8による試験は、12 mg/kgのボーラス静脈内注射が一時的な不快感(持続<10分)の兆候を引き起こすことを示している。対照的に、IP投与経路では調べた最高用量(12 mg/kg)でも毒性の兆候を認めなかった。ペプチド配列番号:26は、調べたIP最高用量(50 mg/kg)まで認容され、最高用量は急性毒性の兆候を引き起こしたが、これは1時間後に認められなくなった。急性毒性の兆候には、以下の如何なる一つも含まれた:活動性の欠如、赤い脚および尾、または速い呼吸。ペプチド配列番号:18はIPおよびSQ共に17.5 mg/kgまで試験したが、明らかな毒性の兆候を認めなかった。ペプチド配列番号:18の17.5 mg/日を3日間連続して、マウス2匹にIPおよびマウス2匹にSQ投与した。4日間、これらのマウスでは、ペプチドを含まない溶媒を注射した対照マウスと比較して身体、社会、および摂食活動に明らかな変化を認めなかった。その上、初回注射の4日目に行った様々な組織および臓器試料の血液学、剖検、および詳細な顕微鏡試験を行ったところ、IPおよびSQ注射部位を除き正常な血液および形態学的プロフィールが示された(K.G. Osborn、DVM、Ph.D.、スクリプスリサーチインスチチュート)。これらの部位は、IPおよびSQ薬物投与に典型的な中等度の亜急性炎症を示した。
【0251】
インビボ抗菌作用:
ペプチド配列番号:18を、このペプチドが細菌感染からマウスを保護できるか否かを観察することによってインビボで殺菌活性に関して調べた。マウス2群(各群1用量あたりマウス4匹)に致死量のMRSA(ATCC 33591)(2〜5×107 cfu/マウス)を腹腔内投与(左側)によって感染させた。マウスの最初の群に、ペプチドのボーラス用量0(溶媒のみ)、10 mg/kg、20 mg/kg、および40 mg/kgをMRSA注射後まもなく上頚部に皮下(SQ)投与した。第二の群のマウスに、ボーラスペプチド用量0(溶媒のみ)、2.5 mg/kg、および5 mg/kgをMRSA注射直後を1回目として10時間の間隔をあけて5回静脈内(IV)投与した。ペプチドを含まない溶媒のみ(0 mg/kg用量)を投与した対照群のマウスは、48時間以内に死亡した。しかし、40 mg/kgボーラスSQ用量および2.5×5 mg/kg IV投与レジメではそれぞれ、14日間の試験期間においてマウスの75%および50%が生存した(図28)。
【0252】
一般的に、SQおよびIV処置のデータに何らかの変動を認めた。そのような変動はSQ投与されたペプチドの吸収が低いことに起因する、および/またはマウスのような実験用小動物に薬物をIV投与する場合に予想される実験誤差の範囲による可能性がある。したがって、われわれは、腹腔内(IP)経路による治療の有効性を調べた。マウス6匹に致死量のMRSA(2〜5×107 cfu/マウス)を腹腔内に感染させた。ペプチドの13 mg/kgボーラスをMRSA感染の45分から1時間後にIP(右側)投与した。ペプチドを含まない溶媒を投与した対照群のマウスは全て48時間以内に死亡した。しかし、ペプチドを投与したマウスの67%が7日間の試験期間のあいだ生存した。
【0253】
インビボ抗菌有効性がこのように最初に証明された後、配列番号:8、12、17、18、および26を有するペプチドについてより大規模の試験を行った。マウスの群に致死量のMRSA(ATCC 33591)を感染させた(IP、左側)。各群のマウスに、ペプチド配列番号:8、12、17、18、または26のボーラスIP(右側)用量を初回感染の45〜60分後に処置した。マウスを14日間観察した。ペプチドを含まない溶媒を投与した対照群のマウスは全て48時間以内に死亡した。それぞれの場合において、ペプチドの適当量の1回投与は、MRSA感染からマウスの様々な群を完全に保護するために十分であった(図6、24、25、および26;表12)。
【0254】
マウスの群に致死量のVREF(ATCC 51575)(IP、左側)を感染させた。各群のマウスに、初回感染の45〜60分後にペプチド配列番号:12、17、または18のボーラスIP(右側)用量を処置した。マウスを14日間観察した。ペプチドを含まない溶媒を投与した対照群のマウスは全て48時間以内に死亡した。それぞれの場合において、ペプチドの適当量の1回投与は、VREF感染からマウスの様々な群を完全に保護するために十分であった(図27、表12)。
【0255】
(表12)環状ペプチドのインビボ保護用量(PD50)および致死量(LD50)
a 下線の文字はD-残基を表す。b MRSA(ATCC 33591)。c VREF(ATCC 51575)
雄性Balb-cマウスを1群8匹(MRSAに関して)および4匹(VREFおよび致死量に関して)用いた。
【0256】
注目すべきことに、有効量は、インビトロで細菌を殺すために必要な用量と平行であった。特に、動物の50%が黄色ブドウ球菌MRSA感染症から保護される配列番号:18、8、12、17、および26を有するペプチドの用量(PD50)はそれぞれ、8 mg/kg、7 mg/kg、20 mg/kg、7 mg/kg、および15 mg/kgであった。同様に、動物の50%がE. ファシウムVREF感染(PD50)から保護される配列番号:18、12および17を有するペプチドの用量はそれぞれ、7 mg/kg、5 mg/kg、および13 mg/kgであった。これらの値の傾向は、下記の表13に示すようにインビトロ抗菌試験について認められたMIC値の傾向と類似である。
【0257】
(表13)インビトロおよびインビボでの有効量の比較
【0258】
これらのインビボ試験は、本発明の環状ペプチドを、多剤耐性黄色ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェシウム、および他の細菌感染症の治療における物質としての利用を含む、抗菌物質として用いることを支持している。
【0259】
薬物動態試験:
マウスにおけるペプチドシクロ[RRKWLWLW]およびシクロ[KSKWLWLW]の薬物動態パラメータおよびヒトにおける市販の抗生物質の薬物動態パラメータを表14に示す。
【0260】
(表14)薬物動態の比較
Kel−消失速度定数、VD−分布容積、T1/2−半減期、CL−総クレアランス、FIP−IP経路による生物学的利用率。a)David Bourne, Ph.D.、www.boomer.org/c/pl/。
【0261】
実施例 5 .環状β-ペプチドは自己構築して膜貫通イオンチャンネルを形成する
確立されたプロトコールによって合成したテトラペプチドシクロ[(β-Trp)4]およびシクロ[(β-Trp-β-Leu)2]のイオン輸送特性を、リポソームに基づくアッセイ法において、および平面脂質膜における単チャンネル伝導度測定によって調べた。サブフェーズにおいて約30 mMのペプチド濃度によって500 mM KCl中で認められた伝導度は、56 pSであり、双方のテトラペプチドに関してチャンネル媒介K+輸送速度1.9×107 イオン/sに対応する。そのような輸送速度は、類似の条件でグラミシジンAの速度の2倍以上である。
【0262】
脂質膜におけるFT-IR試験も同様に行って、これらのペプチドによって形成された膜貫通チャンネルの証拠を提供した。ペプチド調製物は、アミドI、アミドIIおよびN-H結合を含む予想される全てのペプチドIRシグナルを示した。3289 cm-1および3297 cm-1において認められたアミドN-H伸縮バンドは、平均サブユニット間距離が4.8Åである堅固な骨格水素結合網目構造の存在を示し、これは環状D,L-αペプチドに関する固相IRデータと一致する。したがって、環状β-ペプチドも同様に、膜貫通イオンチャンネルを形成することができる。
【0263】
全ての出版物および特許は、個々に参照として組み入れられているが、参照として本明細書に組み入れられる。本発明は、示したそして記述した正確な詳細に限定されず、多くの変更および改変を行ってもよく、それらも声明によって規定される本発明の精神および範囲に含まれると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】本発明の環状ペプチドのナノチューブへの自己構築の略図を示す。D-およびL-アミノ酸が交互する8残基環状D、L-α-ペプチドを、その平坦な環状構造を強調して左に示す。側鎖(R)は、環状ペプチドの外表面に示す。自己構築すると、一連の環状ペプチドが整列して、分子間水素結合を受けて、本明細書においてナノチューブ(中央)と呼ばれる管状構造を形成すると考えられる。自己構築は、サブユニット間の骨格-骨格水素結合によって指示され、その結果β-シート様の末端が開口した中空の管状超分子構造が得られると考えられる。このβ-シート様水素結合パターンを右に示す。わかりやすくするために、ほとんどの側鎖を省略する。
【図2】ペプチド超分子構造に近づくことができる膜透過様式を説明する。環状ペプチドにおいて用いられるアミノ酸の組成および配列に応じて、形成される可能性がある超分子構造は、例えば、(a)孔、(b)筒状の棒構造、または(c)カーペット様の作用様式の超分子構築体を通して、細胞の膜と相互作用することができる。環状ペプチドを環状構造として示す。
【図3】環状ペプチド配列番号:8(白丸)、環状ペプチド配列番号:18(白三角)、および環状ペプチド配列番号:26(白四角)に曝露後の無傷の黄色ブドウ球菌(S. aureus)(ATCC 25923)の膜の脱分極速度をグラフで示す。膜の脱分極は、膜電位感受性色素diSC3の蛍光放出強度の変化によってモニターした。励起波長(λex)は622 nmであり、放出波長(λem)は670 nmであった。ペプチドを、t=1分で加え、生存細菌数を得るためにt=4分で少量を採取した。全ての場合について、ペプチドを添加すると、生存率の少なくとも1000倍減少を認めた。
【図4】画分の蛍光の変化を時間の関数として表した、ペプチド配列番号:11(シクロ[Gln-D-Lys-(Trp-D-Leu)2-Trp-D-Lys])によって媒介される見かけのプロトン輸送(図4a)およびカルボキシフルオレセイン放出(図4b)のプロットを提供する。図4bに関して、ペプチドを約100秒で加え、洗浄剤であるトライトンX-100を約200秒で加えた。
【図5】DMPC多二重層においてペプチド配列番号:11(シクロ-[Gln-D-Lys-(Trp-D-Leu)2-Trp-D-Lys])の方向を分析するための全反射(ATR)赤外線(IR)スペクトルを提供する。実線は、平行な偏光の吸光度を示し;破線は、垂直な偏光の吸光度を提供する。
【図6】抗菌化合物としての三つの環状ペプチドのインビボ有効性を説明する用量反応曲線を提供する。示すように、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の致死量をチャレンジしたマウスの生存率は、環状ペプチドの用量が増加すると劇的に改善される。三つの環状ペプチドを試験した:(a)ペプチド配列番号:18(PD50=5±2 mg/kg)、(b)ペプチド配列番号:17(PD50=6±2 mg/kg)、および(c)ペプチド配列番号:26(PD50=10±2 mg/kg)。PD50は、動物の50%が生存する保護用量である。
【図7】以下からなる超分子構造の構造比較を示す:(a)環状β-テトラペプチド;および(b)環状D,L-α-オクタペプチド。この図は、極性骨格のアミド基の方向が一定しない配置のために、環状β-テトラペプチドの超分子構造は、αヘリックスのマクロ双極子モーメント記憶を有する可能性があるが、環状のD,L-αオクタペプチド超分子構造は、ほとんどの状況において、そのような真の双極モーメントを有しないことを示している。わかりやすくするために、図7aおよび7bに示したナノチューブ構造からほとんどの側鎖を省略する。
【図8】図8aは、MIC濃度の以下のペプチドの一つに曝露後に生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33591)の数を時間の関数として対数cfu/mlで示す「時間殺細胞曲線」を提供する:シクロ[KHLWLW](白丸)、シクロ[KRKWLWLW](黒三角)またはシクロ[KQRWLWLW](白四角)、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。図8bは、MIC濃度の以下のペプチドの一つに曝露後に生存している大腸菌JM109(DE3)の数を時間の関数として対数cfu/mlで示す「時間殺細胞曲線」を提供する:シクロ[KRKWLWLW](黒三角)、シクロ[KQRWLWLW](黒丸)、シクロ[KHLWLW](黒四角)、またはシクロ[KKLWLW](白四角)、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。
【図9】37℃でシクロ[KSKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。個々の培養物に及ぼすシクロ[KSKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図10】室温でシクロ[KSKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。個々の培養物に及ぼすシクロ[KSKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図11】37℃でシクロ[KSKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存しているエンテロコッカス・フェシウム(Enterococus faecium)SP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。個々の培養物に及ぼすシクロ[KSKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図12】室温でシクロ[KSKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。個々の培養物に及ぼすシクロ[KSKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図13】37℃でシクロ[RRKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。個々の培養物に及ぼすシクロ[RRKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図14】室温でシクロ[RRKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。個々の培養物に及ぼすシクロ[RRKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図15】37℃でシクロ[RRKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。個々の培養物に及ぼすシクロ[RRKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図16】室温でシクロ[RRKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。個々の培養物に及ぼすシクロ[RRKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図17】37℃でペニシリンGに細胞を曝露後に生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供する。異なる培養物に対するいくつかの濃度のペニシリンGの影響を示す。
【図18】室温でペニシリンGに細胞を曝露後に生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供する。異なる培養物に対するいくつかの濃度のペニシリンGの影響を示す。
【図19】37℃でペニシリンGに曝露後に生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供する。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。異なる培養物に及ぼすいくつかの濃度のペニシリンGの影響を示す。
【図20】室温でペニシリンに曝露後に生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供する。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。異なる培養物に及ぼすいくつかの濃度のペニシリンの影響を示す。
【図21】正常な無傷の膜を示す無処置の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を提供する。
【図22】シクロ[KSKWLWLW]の2倍MIC濃度に2時間曝露後の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を提供する。写真は、膜の作用様式を直接可視化する。矢印は、ペプチドの作用によって引き起こされた異常な膜の構造を示す。
【図23】シクロ[KSKWLWLW]の2倍MIC濃度に2時間曝露後の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を提供する。写真は、膜の作用様式を直接可視化する。矢印は、ペプチドの作用によって引き起こされた異常な膜の構造を示す。
【図24】黄色ブドウ球菌MRSA(ATCC 33591)に致死的に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。細菌の5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス8匹を試験した。図24aにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[RRKWLWLW]を注射した。図24bでは、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KQRWLWLW]を注射した。
【図25】黄色ブドウ球菌(ATCC 33591)に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。細菌の5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス8匹を試験した。図25aにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KSKWLWLW]を注射した。図25bでは、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KKKWLWLW]を注射した。
【図26】黄色ブドウ球菌(ATCC 33591)に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。細菌の5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス8匹を試験した。マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KKLWLW]を注射した。
【図27】バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(VREF)(ATCC 51575)に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス8匹を試験した。図27aにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[RRKWLWLW]を注射した。図27bでは、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KSKWLWLW]を注射した。
【図28】黄色ブドウ球菌(ATCC 33591)に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。細菌の5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス4匹を試験した。図28aにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[RRKWLWLW]を皮下注射(上頚部)した。図28bにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[RRKWLWLW]を静脈内注射した。表記のペプチドの用量は各注射に関してである。表記のmg/kg量の5用量を8〜12時間離して静脈内投与した。
【図29】腹腔内経路によって投与したペプチドの毒性を示す。図29aにおいて、マウスに塩酸シクロ[RRKWLWLW]の多様な濃度を注射した。図29bでは、マウスに塩酸シクロ[KQRWLWLW]の多様な濃度を注射した。マウスを活動および死亡率に関して14日間モニターした。各実験において1用量あたりマウス4匹を用いた。
【図30】腹腔内経路によって投与したペプチドの毒性を示す。図30aにおいて、マウスに塩酸シクロ[KSKWLWLW]の多様な濃度を注射した。図30bでは、マウスに塩酸シクロ[KKLWLW]の多様な濃度を注射した。マウスを活動および死亡率に関して14日間モニターした。各実験において1用量あたりマウス4匹を用いた。
【0001】
本出願は、2001年5月4日に提出された米国特許出願第60/288,990号からの優先権を主張する。本出願に関連する研究は、米国国立衛生研究所の助成金(GM第52190号)による支援を受けた。政府は本発明に対して一定の権利を保有する可能性がある。
【0002】
発明の分野
本発明は、環状ペプチド抗菌物質を提供する。本発明の抗菌ペプチドおよび組成物は、哺乳類細胞に対して実質的または望ましくない害を引き起こすことなく、感染症を引き起こす微生物を速やかに殺すことができる。本発明の環状ペプチドは、反復するD、L-骨格キラリティを有するαアミノ酸、またはホモキラルβアミノ酸の配列で構成されてもよい。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
抗生物質耐性は、より多くの微生物が多数の抗生物質に対して耐性となりつつあることから、医学問題として重要となりつつある。「Antibiotic Resistance, A Growing Threat」、ウェブサイトfda.gov/oc/opacom/hottopics/anti_resist.html;P.J. Koplanら、「Preventing emerging infections diseases. A Strategy for the 21st Century」、米国保健社会福祉省、疾病管理予防センター、アトランティック、ジョージア州(1998)を参照されたい。例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のいくつかの種は、異なる多くの抗生物質に対する耐性を示し、現在では「多剤耐性」表現型を有すると記述される。残念なことに、抗生物質の広汎な使用のために、微生物のそのような多剤耐性株は、現在では、一般集団および病院内においても認められる。院内感染による細菌感染症は、入院患者の5%に起こっている(米国において年間で患者約200万人)。そのような感染症は、毎年推定で20,000人の死亡原因となり、さらに毎年60,000人の病院内での死亡に関与している。そのような感染症によって、入院日数は約750万日増加し、医療費は年間さらに10億ドルかさむと推定される。
【0004】
「新規」抗生物質はしばしば、前世代の抗生物質に構造的に関連する、または構造的に由来する。例えば、セファロスポリンは、ペニシリンに構造的に関連している。既知の抗生物質のこれらの構造類似体は、しばらくのあいだ成功しうるが、新規」抗生物質が広く用いられるようになるにつれて、耐性に関する報告がしばしば増加する。β-ラクタム系の抗生物質の経過はこの問題を説明する。1940年代にペニシリンが導入されて以来、微生物は、典型的に、多くの細菌種において認められる酵素β-ラクタマーゼを通してこれらの薬物の異化を獲得または増強することによって、β-ラクタム系抗生物質に対する耐性を発達させた。研究者らは、β-ラクタマーゼによる分解に対してより抵抗性である新規抗生物質を作製するために、基本的なβラクタム系抗生物質の構造に一連の変更を加えたが、微生物は、異なるタイプのまたはより大量のβラクタマーゼを産生することによってこれに対応した。
【0005】
院内感染による細菌感染症の約70%が、最も一般的に処方される抗生物質の少なくとも一つに対して耐性である。そのような耐性がしばしば出現する理由は、一般的に用いられる抗生物質が、細菌の代謝または細胞構造に対して比較的遅く作用するためである。例えば、β-ラクタム系の抗生物質耐性が発生する一般的なメカニズムは、β-ラクタム系抗生物質を切断することができるコード蛋白質のプラスミド増幅によってである。病院においてしばしば起こっているように、β-ラクタム系抗生物質を日常的に処方すると、そのような抗生物質に対して耐性である細菌集団の小さい一部は増殖することができ、耐性機能をコードするプラスミドが増幅することができ、そして非常に耐性が強い細菌株が院内全体に広がりうる。
【0006】
この問題は、新しい世代の抗生物質を作製することによって対処されている。例えば、バリノマイシンは、環状構造内にエステル結合を用いる交互のD-D-L-L-キラルモチーフを有する環状デプシペプチドである。しかし、バリノマイシンおよび他のそのようなペプチドの活性、選択性、インビボ安定性、毒性、および生物学的利用率は最適ではない。したがって、微生物感染症、特に容易かつ安価に製造される現在販売されている抗生物質に対して耐性である感染症と闘うために、速効型で非毒性の抗菌物質が必要である。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、微生物感染症を治療および/または予防するための新規速効型抗菌環状ペプチドおよび組成物を提供する。本発明の抗菌物質は、多剤耐性細菌のみならず致死性のメチシリン耐性およびバンコマイシン耐性菌を含む多数の微生物種に対して非常に有効である。環状ペプチドは速効性で、蛋白質分解に対して安定で合成が容易である。多くの態様において、本発明の環状ペプチドに曝露すると、わずか数時間以内に実質的に全く微生物を検出することができない。なお他のペプチドも、例えば、赤血球の溶血によって測定した哺乳類細胞の望ましくない実質的な溶解を引き起こさない。
【0008】
本発明は、環状ペプチドが、D-およびL-αアミノ酸4〜約16個が交互する配列を含み、環状ペプチドが、標的微生物に対して選択的な細胞障害活性を有し、そして哺乳類細胞に対して実質的な望ましくない活性を示さない、ヒトおよび獣医学での応用のための抗菌環状ペプチドおよびその薬学的組成物を提供する。哺乳類細胞に対する活性は、例えば、ペプチドが哺乳類の赤血球の溶血を引き起こすことができるか否かによって測定することができる。そのような環状ペプチドおよび薬学的組成物は、哺乳類における微生物感染症を治療または予防するために用いることができる。多くの抗菌剤とは異なり、本発明の好ましい環状ペプチドは、最小発育阻止濃度で単に静菌作用を有するのではなく殺細菌作用があることが示されている。
【0009】
本発明の環状ペプチドは一般的に、哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の半分未満である、少なくとも一つの標的微生物の如何なる細胞もインビトロで増殖しない最小発育阻止濃度を有する。他の態様において、最小発育阻止濃度は、哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の4分の1未満〜5分の1未満となりうる。他の態様において、最小発育阻止濃度は、哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の少なくとも10分の1未満〜少なくとも20分の1未満である。
【0010】
非常に多様な微生物感染症を本発明の環状ペプチドによって治療することができる。例えば、標的微生物は、細菌株、酵母株、真菌株、単細胞生物、単細胞寄生虫、または関連生物となりうる。一つの態様において、標的微生物はグラム陽性菌またはグラム陰性菌である。
【0011】
本発明の環状ペプチドは、微生物の膜内で、または膜に結合することによって超分子構造に自己構築すると考えられている。そのような超分子構造は、例えば、ナノチューブ、会合して軸に対して平行なナノチューブの筒または集団、会合したナノチューブのカーペット、またはその混合物となりうる。これらのタイプの超分子構造は、哺乳類細胞膜の透過性化、脱分極または破壊と比較して、選択的に微生物細胞膜の透過性化、脱分極または破壊(例えば、溶解)を誘導することができる。
【0012】
本発明の環状ペプチドは、微生物の細胞膜に対して絶対必要な生体分子に対して親和性を有する側鎖を有する複数のアミノ酸を有してもよい。そのような生体分子は、微生物の膜上または膜内で、環状ペプチドの超分子構造への選択的な構築を促進することができる。ほとんどの哺乳類細胞膜は一般的に、ほとんどの微生物の膜と同じ生体分子構造を有しない。本発明の環状ペプチドは好ましくは、所望の抗菌濃度で、微生物の細胞膜と比較して哺乳類の細胞膜と会合しないと考えられる。
【0013】
環状ペプチドは、微生物感染症に対して有効な量で、哺乳類の血流において約6時間またはそれ未満の半減期を有しうる。
【0014】
そのような有効量は、哺乳類細胞の死または溶解の望ましくない量を誘導することなく1回量または分割用量で微生物細胞の死または溶解を引き起こすために十分である環状ペプチドの量である。本発明の好ましい環状ペプチドは、抗菌有効量で赤血球の溶血を実質的に誘導しない。
【0015】
いくつかの態様において、本発明の環状ペプチドは、1回量を投与することができ、それでもなお微生物感染症を治療するために有効である。または、本発明の環状ペプチドは、1〜10日間にわたって連続的に、または多数回投与することができる。本発明の環状ペプチドの有効量には、約0.1 mg/kg〜約100 mg/kg体重、または約0.5 mg/kg〜約50 mg/kg体重、約1.0 mg/kg〜約30 mg/kg体重、および本明細書に記載する他の量が含まれる。
【0016】
本発明の環状ペプチドは一般的に、約25%〜約88%のD-および/またはL-アミノ酸を有する。いくつかの態様において、極性アミノ酸の割合は、D-およびL-アミノ酸の総数の約33%または50%〜約65%または88%となりうる。このように、例えば、本発明の8残基環状ペプチドは、極性のD-およびL-アミノ酸少なくとも1個、または2〜7個を有しうる。他の8残基環状ペプチドは、例えば、極性D-およびL-アミノ酸を3〜5個有すると考えられる。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状ペプチドは、極性D-およびL-アミノ酸を2〜5個有しうる。他の6残基環状ペプチドは、極性D-およびL-アミノ酸を3〜4個有してもよい。これらの極性のD-またはL-アミノ酸の少なくとも一つは、他の極性D-またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接してもよい。または、少なくとも一つの極性D-またはL-アミノ酸が、非極性D-またはL-アミノ酸のみに隣接してもよい。
【0017】
多様な極性アミノ酸が当業者に利用可能である。本発明のペプチドにおいて用いることができる極性のD-およびL-αアミノ酸の例には、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、システイン、ホモシステイン、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンのD-またはL-エナンチオマーが含まれる。
【0018】
本発明の環状ペプチドは一般的に、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸を約25%〜約88%有する。いくつかの態様において、イオン化可能なアミノ酸の割合は、D-およびL-アミノ酸の総数の約33%または50%〜約65%または88%となりうる。このように、例えば、6残基または8残基環状ペプチドは、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸少なくとも1個、または2個もしくは3個もしくはそれ以上を有しうる。他の態様において、本発明の環状ペプチドは、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸を4〜6個有しうる。そのようなイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、他の極性またはイオン化可能なD-またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接しうる。または、本発明の環状ペプチドは、非極性D-またはL-アミノ酸のみに隣接するイオン化可能なD-またはL-アミノ酸少なくとも一つを有しうる。
【0019】
多くのタイプのイオン化可能なアミノ酸が当業者に利用可能であり、本発明は、そのような全てのイオン化可能アミノ酸を企図する。イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸の例には、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンのD-またはL-エナンチオマーが含まれる。
【0020】
本発明の環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸残基を有しうる。本発明の環状ペプチドは一般的に、D-および/またはL-非極性アミノ酸約12%〜約75%を有する。いくつかの態様において、非極性アミノ酸の割合は、D-および/またはL-アミノ酸の総数の約50%〜約67%または75%となりうる。このように、例えば、本発明の8残基環状ペプチドは、非極性のD-および/またはL-アミノ酸少なくとも1個、または2〜7個を有しうる。他の8残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸3〜5個を有してもよい。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸2〜5個を有する。他の6残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸3〜4個を有してもよい。これらの非極性D-および/またはL-アミノ酸の少なくとも一つは、他の非極性D-および/またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接してもよい。または少なくとも一つの非極性D-またはL-アミノ酸が、極性D-またはL-アミノ酸のみに隣接してもよい。
【0021】
多くのタイプの非極性アミノ酸が当業者に利用可能であり、本発明はそのような全ての非極性アミノ酸を企図する。非極性アミノ酸の例には、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ノルロイシン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンのD-およびL-エナンチオマーが含まれる。
【0022】
蛋白質において天然に認められるアミノ酸の他に、他の天然に存在するアミノ酸も、天然に存在しない合成アミノ酸と同様に用いてもよい。
【0023】
一つの態様において、本発明の環状ペプチドは式Iのアミノ酸配列を有しうる:
式中、
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個までの同数を有する。
【0024】
もう一つの態様において、本発明の環状ペプチドは、式IIを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中:
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0025】
さらにもう一つの態様において、本発明の環状ペプチドは、式IIIを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中:
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0026】
さらにもう一つの態様において、環状ペプチドは式IVaまたはIVbのアミノ酸配列を有する:
式中:
nが0〜4までの整数であり;
mが1〜7までの整数であり;
X1、X2、およびX3が、それぞれ個々に極性アミノ酸であり;
Y1、Y2、およびY3が、それぞれ個々に非極性アミノ酸であり;ならびに
環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0027】
もう一つの態様において、環状ペプチドは、式VaまたはVbのアミノ酸配列を有する:
式中:
qが、2〜7までの整数であり;
X1およびX2が、個々に極性アミノ酸であり;ならびに
Y1およびY2が、個々に非極性アミノ酸である。
【0028】
しかし、上記の式の請求の環状ペプチドは、完全に非極性アミノ酸のみからなるペプチドを除外する。その上、以下の配列の如何なる一つも有するペプチドも上記の式の一つまたはそれ以上から除外してもよい:
【0029】
さらに、以下の配列は、上記の式および関連組成物から除外してもしなくてもよい:
しかし、除外された配列の如何なるものも含む、上記の配列の如何なるものも有する環状ペプチドは、本発明の薬学的組成物およびペプチド内に含まれてもよくまたは除外してもよい。
【0030】
環状ペプチドはしばしば、例えば、D-およびL-αアミノ酸約4個〜約16個を有する。他の態様において、環状ペプチドは、D-およびL-αアミノ酸約6個〜約10個または12個を有する。なおさらに他の態様において、D-およびL-αアミノ酸約6個または約8個を有する環状ペプチドを用いる。
【0031】
本発明の薬学的組成物は、本発明の少なくとも一つの環状ペプチド、または本発明の二つまたはそれ以上の異なる環状ペプチドをの有効量を含みうる。これらの組成物には同様に、薬学的に有効な担体が含まれる。
【0032】
本発明に従って、環状ペプチドは、D-またはL-αアミノ酸で構成される必要はなく、またはホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有しうる。そのようなβ-アミノ酸が、当業者に利用可能である。βアミノ酸が、置換基1、2個によってαまたはβ炭素で置換することができる。環状β-ペプチドがホモキラルである限り、SまたはRキラリティのいずれかの一置換βアミノ酸を、環状βペプチドの構築に用いることができる。本発明のホモキラルβペプチドにおいて用いられる二置換βアミノ酸が、環状βペプチドがホモキラルである限り、相対的R,RまたはS,Sジアステレオマー立体配置を有する。言い換えれば、本発明の環状β-ペプチドのβ-アミノ酸が、ホモキラルでなければならない、すなわちαおよび/またはβ骨格炭素での置換基は、全てSおよび/またはS,Sまたは全てRおよび/またはR,Rでなければならない。β-アミノ酸を有する環状ペプチドは、一般的に少なくとも一つの極性側鎖を有する少なくとも一つのβ-アミノ酸を有する。好ましいβ-ペプチドは、哺乳類細胞の望ましくない溶解を実質的に引き起こさない。
【0033】
一つの態様において、本発明の環状β-ペプチドは、式VIのアミノ酸配列を有しうる:
式中:
各pが個々に0〜7までの整数であり;
各Z1、Z3、Z5、Z7、Z9、Z11、Z13、Z15、Z17、およびZ19が、個々に一置換β-アミノ酸であり;
各Z2、Z4、Z6、Z8、Z10、Z12、Z14、Z16、Z18、およびZ20が、個々に二置換β-アミノ酸であり;ならびに
式中、環状β-ペプチドは、ホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有する。したがって、本発明は、これらの(複数の)環状ペプチドが、例えば式VIに提供されるように、ホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有する、少なくとも一つの環状ペプチド、または二つもしくはそれ以上の異なる環状ペプチドの有効量を含む薬学的組成物を企図する。
【0034】
本発明はまた、配列が交互のD-およびL-αアミノ酸を有するアミノ酸4個〜約16個の配列を含む環状ペプチドの、哺乳類または動物細胞の死の望ましくない量を誘導することなく微生物細胞の死を誘導するために十分な量を微生物細胞に接触させる段階を含む、ヒトおよび他の動物における微生物感染症を治療する方法を提供する。そのような環状ペプチドは、またはホモキラルβアミノ酸3個〜約10個の配列を有しうる。
【0035】
本発明はさらに、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく、標的細胞において細胞死を誘導するために一つまたはそれ以上の環状ペプチドをスクリーニングすることを含む、標的細胞タイプに対して選択的に細胞障害性である環状ペプチドを同定する方法を提供する。そのような環状ペプチドは、例えばアミノ酸4〜約16個の交互のD-およびL-αアミノ酸配列を含んでもよい。または、そのような環状ペプチドは、ホモキラルβ-アミノ酸3〜約10個の配列を有してもよい。
【0036】
本発明はまた、以下を含む、標的細胞タイプに対して選択的に細胞障害性である環状ペプチドを同定する方法を提供する:(a)組み合わせライブラリにおける各環状ペプチドがアミノ酸4個〜約16個の交互のD-およびL-αアミノ酸配列を含む、環状ペプチドの組み合わせライブラリを作製する段階;および(b)第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく標的細胞において細胞死を誘導することに関して組み合わせライブラリから環状ペプチドをスクリーニングする段階。または、そのような環状ペプチドは、ホモキラルβ-アミノ酸3〜約10個の配列を有してもよい。ライブラリは、単一の環状ペプチド、または環状ペプチドの混合物を作製するために用いることができる。次に、抗菌活性を示す環状ペプチドの混合物を、一つまたはそれ以上の混合物において一つまたはそれ以上の抗菌活性のある環状ペプチドを同定するためにさらにスクリーニングすることができ、次にこれを単離または合成して、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく、標的細胞において細胞死を誘導するか否かに関して再試験する。
【0037】
本発明はさらに、標的細胞タイプに対して選択的に細胞障害性である環状ペプチドを同定する方法を提供する。本発明の方法は、アミノ酸4個〜16個の交互のD-およびL-αアミノ酸配列を含む少なくとも一つの環状ペプチドを合理的にデザインする段階を含む。またはそのような環状ペプチドはホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有してもよい。方法はさらに、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく、標的細胞における細胞死の誘導に関してそのような合理的にデザインされた環状ペプチドをスクリーニングすることを含む。
【0038】
環状ペプチドの合理的デザインは、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく、標的細胞において細胞死を誘導することができる少なくとも一つの有効な環状ペプチドを組み合わせライブラリから同定する段階、および合理的にデザインされた環状ペプチドを作製するために、有効な環状ペプチドの交互のD-およびL-αアミノ酸配列において少なくとも一つのアミノ酸を異なるアミノ酸に交換する段階を含みうる。次に、合理的にデザインされた環状ペプチドを、第二の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導することなく標的細胞において細胞死を誘導するか否かに関してスクリーニングすることができる。または、そのような環状ペプチドは、ホモキラルβアミノ酸3個〜約10個の配列を有してもよい。
【0039】
これらのタイプのスクリーニング法において、標的細胞タイプは微生物となりえて、第二の細胞タイプは哺乳類細胞、例えば哺乳類の赤血球となりうる。第二の細胞タイプの細胞死は、赤血球の溶血を検出することによって検出することができる。
【0040】
上記の方法は、第三の細胞タイプをスクリーニングすることをさらに含みうる。そのようなスクリーニングは、ペプチドが第三の細胞タイプにおいて実質的または望ましくない細胞死を誘導するか否かを決定することを含みうる。方法はまた、ペプチドが実質的に全ての標的細胞を殺す、または標的細胞の増殖を阻害することができる最小阻害用量を決定することを含みうる。
【0041】
スクリーニングは、ペプチドを標的細胞タイプおよび他の細胞タイプ(例えば、第二、第三、または他の細胞タイプ)に個々に接触させることによってインビトロで行うことができる。または、スクリーニングは、標的細胞タイプともう一つの細胞タイプまたは複数のタイプを含む試験動物に少なくとも一つのペプチドを投与すること、およびペプチドが標的細胞タイプに対して毒性であるが、もう一つの細胞タイプまたは複数のタイプに対して実質的または望ましくない毒性を示さないか否かを決定することによって、インビボで行うことができる。そのような方法は、ペプチドが動物の健康に有害な影響を及ぼすか否かを決定することも含みうる。ペプチドが動物の健康に有害な影響を及ぼすか否かを決定することは、病理的または組織学的方法によって動物の体液または解剖学的構造を調べることを含みうる。
【0042】
本発明はさらに、各ペプチドが交互のD-およびL-αアミノ酸配列においてアミノ酸4個〜約16個を含む、またはペプチドがβ-アミノ酸3個〜約10個を含む、環状ペプチドの溶液を、(複数の)標的生体分子と接触させること、および例えば、ペプチドが、生体分子と選択的に会合する超分子構造へと自然に構築されるか否かを決定することを含む、選択された細胞表面において一つまたはそれ以上の標的生体分子と選択的に会合することができる環状ペプチドを同定する方法を提供する。標的生体分子は、例えば、生きている細胞の表面上で、またはリポソームの表面上で示されうる。または、ペプチドは(複数の)標的生体分子に接触させることができる。方法はさらに、(複数の)生体分子と選択的に会合する超分子構造へと自然に構築されるペプチドの構造を決定することを含みうる。
【0043】
本発明はまた、実質的に細菌がインビトロで増殖しない環状ペプチドの最小発育阻止濃度を決定することを含む、交互のD-およびL-αアミノ酸のアミノ酸配列を有する環状ペプチド、またはβ-アミノ酸3個〜約10個を含む環状ペプチドによって微生物感染症を治療するために治療的に有効な用量を評価または確認する方法を提供する。
【0044】
本発明はまた、一つまたはそれ以上の他の抗菌剤と共に本発明の一つまたはそれ以上の環状ペプチドを含む組成物も提供する。そのような物質には、ペニシリン、バンコマイシン、エリスロマイシン、および他の治療物質が含まれる。
【0045】
哺乳類および鳥類は、本明細書に記載され、請求される方法および組成物によって治療してもよい。そのような哺乳類および鳥類には、ヒト、イヌ、ネコ、および家畜、例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、七面鳥等が含まれる。
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、哺乳類細胞に対して実質的または望ましくない毒性を示すことなく微生物を迅速かつ選択的に殺す低分子環状ペプチドおよび組成物を提供する。本発明には、平坦な環状立体構造の見本となりうる交互のD-およびL-αアミノ酸の配列、またはβ-アミノ酸の配列のいずれかを有する環状ペプチド、および環状ペプチドを含む薬学的組成物が含まれる。そのような環状の立体構造は、環状ペプチドのアミノ酸側鎖を環の中心から突出させ、アミド骨格を環構造の平面に対してほぼ垂直な方向にする。細胞膜構成成分との相互作用による側鎖の電荷中和および/または細胞膜の誘電率の低い環境との接触のような水素結合にとって好ましい条件では、環状ペプチドは、分子間水素結合を通して自己構築して、超分子構造を形成することができると考えられている。単に一つまたはそれ以上のD-アミノ酸を含む環状ペプチドは、平坦な環状の立体構造をとらず、環状ペプチドの超分子構造への自己構築にとって必要な骨格立体構造を有しない。本発明の環状ペプチドが有効である標的微生物には、細胞膜を有し、哺乳類に感染することができる如何なる単細胞生物または寄生虫も含む微生物が含まれる。例えば、標的微生物には、細菌、真菌、蠕虫、原虫、酵母株および他の単細胞生物が含まれる。本発明の環状ペプチドは、グラム陰性およびグラム陽性菌の双方に対して活性であることが判明している。
【0047】
環境の小さい差、例えば異なる細胞膜の組成の差は、提唱される構築プロセスの過程および本質に影響を及ぼしうる。この特徴は、治療的有効な用量および投与レジメで哺乳類細胞において実質的に毒性を示さない、または望ましくない毒性を示さずに、特定の微生物種に対して選択された環状ペプチドの抗微生物活性を標的にして最適にするために本発明において用いられる。超分子構造は、動的な自己構築/解離プロセスを通してその隣接環境に反応して、最も熱動力学的に都合のよい構築体を発見すると考えられている。構築のあいだ、ペプチドの超分子構造は、様々な地形的に関連した構築体を試すことによって細胞膜の環境を知覚して反応すると考えられている。治療的に望ましい濃度で非標的哺乳類の膜において、本発明の好ましい環状ペプチドは、熱動力学的に都合のよい超分子構造を採用しない、または採用することができないと考えられている。このように、哺乳類の膜は、そのような環状ペプチドの存在によって実質的なまたは望ましくない影響を受けない。しかし、選択された微生物膜では、本発明の環状ペプチドは、微生物の膜を脱安定化(例えば、溶解)、透過性化、および/または脱分極させて、それによって微生物の膜貫通イオンおよび電気的勾配ならびに他の必須の機能を破壊して、速やかに微生物の細胞死に至る、独自のエネルギー的に都合のよい超分子構造を形成すると考えられている。
【0048】
環状ペプチドのアミノ酸配列における小さい変化は、超分子レベルでの大きい差に増幅することができる。このように、環状ペプチドの構造の変化は、ペプチド相互作用を拘束する可能性があり、超分子構造の形成を、特定の膜の構成成分、膜分配特性、取り込み特性等を有する特定の細胞膜に制限する可能性がある。
【0049】
本発明の自己構築ペプチド超分子構造のもう一つの特徴は、所定の環状ペプチドが多数のジアステレオマーナノチューブ構築体を形成できることであると考えられている。この特性は、骨格-骨格水素結合がナノチューブ構造の自己構築を主に指示すると考えられるという事実に由来する。異なるように積み重ねられたサブユニットは、同じまたはほぼ同じ管状β-シート様の水素結合した骨格構造を共有するトポイソメリック超分子構造を生じることができる。単一の環状ペプチドから構築された多様な超分子構造は、微生物がこれらの抗生物質に対して耐性を発達させうる可能性を最小限にする。
【0050】
環状D-およびL-αペプチド骨格、または環状β-ペプチド骨格を保持しながらペプチド配列を変化させることによって、多様な環状ペプチドが微生物膜において選択的にターゲティングおよび構築できるか否かを迅速にスクリーニングまたは評価することができる。それらはまた、膜透過性、脱分極、または脱安定化の増加に関して調べることによって、抗菌活性に関してスクリーニングおよび評価することができる。
【0051】
「アミノ酸」という用語には、DまたはL型の天然のαアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)と共にβ-アミノ酸、合成および非天然アミノ酸が含まれる。多くのタイプのアミノ酸残基が環状ペプチドにおいて有用であり、本発明は天然の遺伝子コードされたアミノ酸に限定されない。本明細書に記述の環状ペプチドにおいて利用することができるアミノ酸の例は、例えば、Fasman、1989、CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、CRC出版、およびその中で引用されている参考文献に認められうる。多様なアミノ酸残基のもう一つの起源は、RSPアミノ酸類似体インク(RSP Amino Acids Analogues, Inc)のウェブサイト(www.amino-acids.com)によって提供される。
【0052】
本明細書において用いられるように「哺乳類」という用語は、動物、一般的に微生物の感染を受けやすいまたは微生物感染を有する温血動物を意味する。哺乳類には、ウシ、バッファロー、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ラット、ウサギ、マウス、およびヒトが含まれる。同様に、他の家畜、飼育動物、および捕獲動物が含まれる。「農場飼育動物」という用語には、ニワトリ、七面鳥、魚、および他の家畜が含まれる。
【0053】
本明細書において用いられるように、「ナノチューブ」または「ナノチューブル」とは、本発明の環状ペプチドから自然に形成される可能性がある小さい管である。本発明の環状ペプチドは、積み重なってナノチューブで構成される超分子構造を形成すると考えられる。環状ペプチド間の水素結合は、環状ペプチドからの超分子構造の自己構築を促進するために役立つと考えられている。それぞれのナノチューブは、管の中心に孔を有し、この周囲はナノチューブを形成する積み重ねられた環状ペプチドの一連のペプチド骨格によって取り囲まれる。孔の大きさは、ナノチューブを形成するアミノ酸の数に依存する。一般的に、用いる環状ペプチドの環の大きさに応じて、イオン、糖、および他の低分子が、ナノチューブの孔の中を移動することができる。より大きい分子はまた、より大きい環状ペプチドから形成された孔の中、およびナノチューブの構築体によって形成された超分子構造の中を通過することができる。例えば、いくつかの態様において、超分子構造は、ナノチューブの集団で構成される筒状構造であると考えられる。他の態様において、超分子構造は、ナノチューブの「カーペット」または「カーペット様」配置であると考えられている。
【0054】
本明細書において用いられるように、「ペプチド」という用語は、一つのアミノ酸のα-カルボキシル基が、隣接するアミノ酸の主鎖(α-またはβ-)アミノ基によって結合したアミドによって結合されるアミノ酸残基4〜16個の配列が含まれる。本明細書において記載され、請求される方法において用いるために提供されるペプチドは、環状である。本明細書において特に引用したペプチド配列は、左側にアミノ末端および右側にカルボキシ末端として記載される。しかし、ペプチドを環状型で示す場合、配列における第一のアミノ酸が任意に選択される。その上、配列が2本の線に伸びる場合の環状ペプチドの式の場合、第二の線の配列は、右側のN-末端側から左側のC-末端に伸長する。
【0055】
本発明に従って、「超分子構造」は、環状ペプチドの「非共有結合」による構築によって形成されると考えられる多サブユニット構造、例えば筒状およびカーペット状のナノチューブである。超分子構造は、反応物質または単量体のあいだに共有結合が形成される分子またはポリマーシステムとは対比をなすかも知れない。提案されるペプチド超分子構造は、可逆的な構造の構築および解離を受けることができる熱動力学的に制御された構築体である。そのような構築-解離は、例えば環境、サブユニット構造、側鎖の選択、側鎖の相互作用、ならびにシステムに作用する非共有結合力の特性および組み合わせに依存すると考えられる。対照的に、共有結合ポリマー構造は、環境に反応して構築および解離する構造よりむしろ力学的に安定な構造をデザインするために用いられている。したがって、超分子構造を形成することができるペプチドを含む本発明の組成物の一つの魅力的な特徴は、様々な細胞膜タイプにおけるその選択能である。そのような選択は、細胞膜環境と比較した環状ペプチドの組成ならびに細胞膜の分子および/または超分子成分によって決定される都合のよい熱力学的な力によって促進される。
【0056】
自己構築、溶血、毒性、または細胞溶解等を参照する場合に「実質的にない」という用語は、自己構築、溶血、毒性、細胞溶解等が試験または所望のペプチド用量または濃度でほとんどまたは全く存在しないことを意味する。例として、溶血が「実質的にない」とは、試験または所望のペプチド用量または濃度で検出可能な溶血が約20%未満、または15%未満もしくは10%未満である、または検出できないことを意味しうる。同様に、毒性または溶解が「実質的にない」とは、試験または所望のペプチド用量または濃度で検出可能な毒性または溶解が20%未満、または15%未満もしくは10%未満である、または検出できないことを意味しうる。他の態様において、溶血、毒性、または溶解が「実質的にない」とは、試験または所望のペプチド用量または濃度で、溶血、毒性、または溶解が約5%未満、または検出できないことを意味する。
【0057】
「治療的有効量」という用語は、微生物感染症を制御するために十分な量である。治療的に有効な量は、一般的に感染した哺乳類における微生物の量および/または微生物の存在を特徴とする疾患状態を、無処置被験者と比較して少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、または少なくとも約80%制御する。いくつかの態様において、治療的有効量は、感染哺乳類における微生物の量および/または微生物の存在を特徴とする疾患状態を、少なくとも約90%またはそれ以上制御する。これらの割合は、無処置被験者と比較して、感染哺乳類に認められる微生物の量の減少、および/または感染哺乳類における微生物の存在を特徴とする疾患状態に関連した症状の減少を意味する。他の態様において、「治療的有効量」は、感染を引き起こす標的微生物の細胞膜を透過性化、脱分極、または脱安定化するために必要な環状ペプチドの量である。「治療的有効量」という用語はまた、感染症を引き起こす標的微生物を殺すために必要な量となりうる。微生物を制御するために必要な治療物質の有効量は、微生物のタイプ、動物に既に存在する微生物の量、哺乳類の年齢、性別、健康状態、および体重、ならびに本発明の環状ペプチドの哺乳類における微生物感染症の制御能のような要因に従って変化しうる。
【0058】
ペプチドおよびペプチド組成物の治療的有効量はまた、微生物感染症の再発の予防を含む、微生物感染症を予防するために用いることができる。
【0059】
ペプチド、ペプチド変種、およびその誘導体
本発明は、長さがアミノ酸4〜約16個、または約6〜16個である交互のD-およびL-アミノ酸のアミノ酸配列を有する環状ペプチドを含む環状ペプチドおよび組成物を提供する。または、本発明の環状ペプチドは、βアミノ酸3〜約10個を有しうる。一般的に、環状のD,L-αペプチドは、アミノ酸プロリンおよびグリシンを含まない。本発明に従って、β-アミノ酸が、α-もしくはβ-炭素またはその双方で置換することができる。環状βペプチドがホモキラルである限り、SまたはRキラリティの一置換β-アミノ酸を、環状β-ペプチドの構築のために用いることができる。本発明において用いられる二置換β-アミノ酸が、環状ペプチド構造におけるβ-アミノ酸残基がホモキラルである限り、相対的なR,RまたはS,Sジアステレオマー立体構造を有しなければならない。β-アミノ酸を有する環状ペプチドは一般的に、少なくとも一つの極性側鎖を有する少なくとも一つのβ-アミノ酸を有する。
【0060】
本発明の環状ペプチドは、微生物膜の中で、またはその上で構築されると、微生物膜の脱分極および/または透過性化および/または脱安定化を引き起こすことができる超分子構造を形成するように自己構築すると考えられる。いくつかの場合において、環状ペプチドは微生物、例えば細菌の溶解を引き起こす。超分子構造への自己構築は、隣接する環状ペプチド間のβ-シート水素結合の形成と逆平行または平行に環状ペプチドを積み重ねることによって起こると考えられている。しかし、好ましい環状ペプチドは、例えば、哺乳類細胞における毒性に関するアッセイ法または哺乳類赤血球の溶血に関して試験または治療的有効量で測定した場合に、哺乳類の細胞膜では超分子構造へと容易に自己構築されないと考えられる。
【0061】
本発明の環状ペプチドは、α-アミノ酸またはβ-アミノ酸から構成することができる。本発明の環状ペプチドのアミノ酸配列には、D,L-αアミノ酸環状ペプチドの場合には極性アミノ酸少なくとも1個、環状β-ペプチドの場合には極性側鎖少なくとも1個が含まれる。極性アミノ酸の割合は、例えば、約25%または33%〜約65%または88%の範囲となりうる。しかし、いくつかの態様において、大多数のアミノ酸が極性である。例えば、極性アミノ酸の割合は、アミノ酸総数の約50%〜約88%となりうる。極性および非極性アミノ酸の正確な数は、所定の環状ペプチドについて求められる大きさおよび特性に依存する。いくつかの態様において、本発明の環状ペプチドの大きさは、D,L-αアミノ酸約6〜約10個、またはβ-アミノ酸3〜約10個である。他の態様において、本発明の環状ペプチドの大きさは、D,L-αアミノ酸約6〜約8個、またはβ-アミノ酸4〜約6個である。このように、例えば、本発明の8残基環状ペプチドは、極性のD-および/またはL-α-アミノ酸を少なくとも1個、または2〜7個有しうる。他の8残基環状ペプチドは、例えば、極性のD-および/またはL-α-アミノ酸を3〜5個有すると考えられる。好ましい8残基環状ペプチドは、極性アミノ酸3個、4個、または5個を有する。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状ペプチドは、極性のD-および/またはL-α-アミノ酸を2〜5個有しうる。他の6残基環状ペプチドは、極性のD-および/またはL-α-アミノ酸を3〜4個有してもよい。これらの極性のD-またはL-α-アミノ酸の少なくとも一つは、少なくとも一つの他の極性のD-またはL-α-アミノ酸に隣接してもよい。または、少なくとも一つの極性のD-またはL-α-アミノ酸が、非極性のD-またはL-α-アミノ酸に限って隣接してもよい。β-アミノ酸約4〜約8個を有するβペプチドは、例えば、αおよびβ骨格置換レベルに応じて、極性側鎖約2〜12個を有してもよい。
【0062】
本発明の環状D,L-αペプチドは一般的に、イオン化可能なアミノ酸残基約25%〜約88%を有する。いくつかの態様において、イオン化可能なアミノ酸の割合は、D-および/またはL-アミノ酸の総数の約33%または50%〜約65%または88%となりうる。このように、例えば、6または8残基環状ペプチドは、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸を少なくとも1個、または2個もしくは3個もしくはそれ以上有しうる。他の態様において、本発明の環状ペプチドは、イオン化可能なD-および/またはL-アミノ酸4〜6個を有しうる。そのようなイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、他の極性またはイオン化可能なD-またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接しうる。または、本発明の環状ペプチドは、非極性のD-またはL-アミノ酸に限って隣接するイオン化可能なD-またはL-アミノ酸を少なくとも一つ有しうる。本発明の環状β-ペプチドは、一般的にイオン化可能なアミノ酸側鎖を約25%〜約88%有する。いくつかの態様において、イオン化可能なアミノ酸側鎖の割合は、アミノ酸側鎖の総数の約33%または50%〜約65%または88%となりうる。このように、例えば、4〜6残基環状β-ペプチドは、イオン化可能なアミノ酸側鎖を少なくとも1個、または2個もしくは3個もしくはそれ以上を有しうる。他の態様において、本発明の環状β-ペプチドは、イオン化可能なアミノ酸側鎖4〜6個を有しうる。
【0063】
本発明の環状ペプチドは、非極性のD-および/またはL-アミノ酸を有しうる。選択される非極性アミノ酸の数は、ペプチドの大きさが変化するにつれて、そして選択された微生物膜の環境が変化するにつれて変化しうる。本発明の環状ペプチドは一般的に、D-およびL-非極性アミノ酸約12%〜約75%を有する。いくつかの態様において、非極性アミノ酸の割合は、D-およびL-アミノ酸の総数の約50%〜約67%または75%となりうる。このように、例えば、本発明の8残基環状ペプチドは非極性D-および/またはL-アミノ酸少なくとも1個、または2〜7個を有しうる。他の8残基環状ペプチドは非極性D-および/またはL-アミノ酸3〜5個を有しうる。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸2〜5個を有する。他の6残基環状ペプチドは、非極性D-および/またはL-アミノ酸3〜4個を有してもよい。これらの非極性D-および/またはL-アミノ酸の少なくとも一つは、他の非極性D-またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接してもよい。または、少なくとも一つの非極性D-またはL-アミノ酸が、極性D-および/またはL-アミノ酸に限って隣接してもよい。一般的に、環状ペプチドには、アミノ酸プロリンまたはグリシンが含まれないが、特定の環状ペプチドは、プロリンまたはグリシンが含まれても良好な活性を有する可能性がある。
【0064】
本発明に従って、β-アミノ酸が、α-またはβ-炭素またはその双方で非極性側鎖を有しうる。選択した非極性のアミノ酸側鎖の数は、ペプチドの大きさが変化するにつれて、そして選択された微生物膜の環境が変化するにつれて変化しうる。本発明の環状β-ペプチドは、一般的に非極性アミノ酸側鎖約12%〜約75%を有する。いくつかの態様において、非極性アミノ酸側鎖の割合は、アミノ酸側鎖の総数の約50%〜約67%または75%となりうる。このように、例えば、本発明の8残基環状β-ペプチドは、非極性アミノ酸側鎖少なくとも1個、または2〜7個を有しうる。他の8残基環状β-ペプチドは、非極性アミノ酸側鎖3〜5個を有してもよい。いくつかの態様において、例えば、本発明の6残基環状β-ペプチドは、非極性アミノ酸側鎖2〜5個を有する。他の6残基環状β-ペプチドは、非極性アミノ酸側鎖3〜4個を有してもよい。
【0065】
環状ペプチドにおいて用いられるアミノ酸が、遺伝子コードされるアミノ酸、天然に存在する非遺伝子コードアミノ酸、または合成アミノ酸となりうる。上記の如何なるもののL-およびD-エナンチオマーもいずれも環状ペプチドにおいて用いられる。遺伝子コードL-アミノ酸20個および非コードアミノ酸のいくつかの例に関して本明細書において用いられるアミノ酸表記法を表1に示す。
【0066】
(表1)
【0067】
遺伝子コードされていない、そして本発明の環状ペプチドに存在しうる特定の一般的に認められるアミノ酸には、β-アラニン(β-Ala)および3-アミノプロピオン酸(Dap)、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4-アミノ酪酸等のような他のωアミノ酸;α-アミノイソ酪酸(Aib);ε-アミノヘキサン酸(Aha);δ-アミノ吉草酸(Ava);メチルグリシン(MeGly);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t-ブチルアラニン(t-BuA);t-ブチルグリシン(t-BuG);N-メチルイソロイシン(MeIle);フェニルグリシン(Phg);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle);2-ナフチルアラニン(2-Nal);4-クロロフェニルアラニン(Phe(4-Cl));2-フルオロフェニルアラニン(Phe(2-F));3-フルオロフェニルアラニン(Phe(3-F));4-フルオロフェニルアラニン(Phe(4-F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic);β-2-チエニルアラニン(Thi);メチオニンスルホキシド(MSO);ホモアルギニン(hArg);N-アセチルリジン(AcLys);2,3-ジアミノ酪酸(Dab);2,3-ジアミノ酪酸(Dbu);p-アミノフェニルアラニン(Phe(pNH2));N-メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys)およびホモセリン(hSer)が含まれるがこれらに限定されない。企図されるさらなるアミノ酸類似体には、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、馬尿酸、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸、スタチン、α-メチルアラニン、パラ-ベンゾイル-フェニルアラニン、プロパルギルグリシン、およびサルコシンが含まれる。本発明の範囲に含まれるペプチドは、L-またはD-立体配座の上述のアミノ酸の如何なるもの、または当業者に既知の他の如何なるアミノ酸も有しうる。
【0068】
互いに置換可能なアミノ酸が一般的に、類似のクラスまたはサブクラス内に存在する。当業者に既知であるように、アミノ酸が、主にアミノ酸側鎖の化学および物理特性に応じて異なるクラスに入りうる。例えば、いくつかのアミノ酸が一般的に、親水性または極性アミノ酸と見なされ、他のアミノ酸が、疎水性または非極性アミノ酸であると見なされる。極性アミノ酸には、酸性、塩基性、または親水性側鎖を有するアミノ酸が含まれ、非極性アミノ酸には、芳香族または疎水性側鎖を有するアミノ酸が含まれる。非極性アミノ酸がさらに、特に脂肪族アミノ酸を含むようにさらに分割してもよい。本明細書において用いられるアミノ酸のクラスの定義は以下の通りである:
【0069】
「非極性アミノ酸」は、極性ではなく、一般的に水溶液に対して撥水性であって生理的pHで非荷電である側鎖を有するアミノ酸を意味する。遺伝子コードされる疎水性アミノ酸の例には、Ala、Ile、Leu、Met、Trp、Tyr、およびValが含まれる。遺伝子コードされない非極性アミノ酸の例には、t-BuA、ChaおよびNleが含まれる。
【0070】
「芳香族アミノ酸」は、共役π電子系(芳香族基)を有する少なくとも一つの環を含む側鎖を有する非極性アミノ酸を意味する。この芳香族基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、スルホニル、ニトロ、およびアミノ基のような置換基と共に他の基によってさらに置換してもよい。遺伝子コードされた芳香族アミノ酸の例には、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンが含まれる。一般的に認められる非遺伝子コード芳香族アミノ酸には、フェニルグリシン、2-ナフチルアラニン、β-2-チエニルアラニン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、および4-フルオロフェニルアラニンが含まれる。
【0071】
「脂肪族アミノ酸」は、飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖、または環状炭化水素側鎖を有する非極性のアミノ酸を意味する。遺伝子コードされる脂肪族アミノ酸の例には、Ala、Leu、ValおよびIleが含まれる。非コード脂肪族アミノ酸の例にはNleが含まれる。
【0072】
「極性アミノ酸」は、生理的pHで荷電または非荷電であって、二つの原子によって共有される電子対が原子の一つによってより近くに維持される結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸を意味する。極性アミノ酸が一般的に親水性であり、それらが水溶液によって引きつけられる側鎖を有するアミノ酸を有することを意味する。遺伝子コードされる極性アミノ酸の例には、アスパラギン、システイン、グルタミン、リジン、およびセリンが含まれる。非遺伝子コード極性アミノ酸の例には、シトルリン、ホモシステイン、N-アセチルリジン、およびメチオニンスルホキシドが含まれる。
【0073】
「酸性アミノ酸」は、側鎖のpK値が7未満である親水性アミノ酸を意味する。酸性アミノ酸が、典型的に水素イオンの喪失により生理的pHで陰性荷電側鎖を有する。遺伝子コードされる酸性アミノ酸の例には、アスパラギン酸(アスパルテート)およびグルタミン酸(グルタメート)が含まれる。
【0074】
「塩基性アミノ酸」は、側鎖のpKが7より大きい親水性アミノ酸を意味する。塩基性アミノ酸が、典型的にヒドロニウムイオンとの会合により生理的pHで陽性荷電側鎖を有する。遺伝子コードされる塩基性アミノ酸の例には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる。遺伝子コードされない塩基性アミノ酸の例には、非環状アミノ酸であるオルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、およびホモアルギニンが含まれる。
【0075】
「イオン化可能なアミノ酸」は、生理的pHで荷電しうるアミノ酸を意味する。そのようなイオン化可能なアミノ酸には、酸性および塩基性アミノ酸、例えば、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸、D-ヒスチジン、D-アルギニン、D-リジン、D-ヒドロキシリジン、D-オルニチン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リジン、L-ヒドロキシリジン、またはL-オルニチンが含まれる。
【0076】
当業者に認識されるように、上記の分類は絶対的ではない。いくつかのアミノ酸が二つ以上の特徴的な特性を示し、したがって、二つ以上の分類に含めることができる。例えば、チロシンは、非極性芳香環と極性ヒドロキシル基の双方を有する。このように、チロシンは、非極性、芳香性、および極性として記述されうるいくつかの特徴を有する。しかし、非極性環は優勢で、そのようにチロシンは一般的に非極性であると考えられている。同様に、ジスルフィド結合を形成することができる他に、システインも同様に非極性特徴を有する。このように、疎水性または非極性アミノ酸として厳密に分類されないが、多くの場合において、システインは、ペプチドに疎水性または非極性を付与するために用いることができる。
【0077】
上記の遺伝子コードされる、および非コードアミノ酸の分類を下記の表2に要約する。表2は、説明目的に限られ、本明細書に記載のペプチドおよびペプチド類似体を含んでもよいアミノ酸残基の網羅的なリストであると意図されない。本明細書に記載のペプチドを作製するために有用な他のアミノ酸残基は、例えば、Fasman、1989、CRC Practical Handobook of Biochemistry and Molecular Biology、CRCプレスインク、およびそこに引用されている参照文献に見ることができる。アミノ酸残基のもう一つの起源は、RSPアミノ酸類似体インク(RSP Amino Acids Analogues, Inc)のウェブサイト(www.amino-acids.com)によって提供される。本明細書において特に言及していないアミノ酸も、特異的に同定されたアミノ酸と比較して、既知の挙動および/またはその特徴的な化学および/または物理特性に基づいて、上記の分類に都合よく分類することができる。
【0078】
(表2)
【0079】
いくつかの態様において、本発明によって企図される極性アミノ酸には、例えばアルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモシステイン、リジン、ヒドロキシリジン、オルニチン、セリン、トレオニン、対応するβ-アミノ酸、および構造的に関連するアミノ酸が含まれる。一つの態様において、極性アミノ酸が、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、リジン、またはオルニチンのようなイオン化可能なアミノ酸である。
【0080】
利用することができる非極性または非極性アミノ酸残基の例には、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン等が含まれる。
【0081】
さらに、ペプチドのアミノ酸配列は、L型よりむしろD型を利用する置換を含む、ペプチドにおける少なくとも一つのアミノ酸残基をもう一つのアミノ酸残基に置換することを含む、ペプチド変種が起こるように改変することができる。
【0082】
ペプチドの残基の一つまたはそれ以上は、ペプチドの生物活性を変化、増強、または保存するためにもう一つの残基に交換することができる。そのような変種は、例えば、対応する非変種ペプチドの生物活性の少なくとも約10%を有しうる。保存的アミノ酸置換、すなわち上記のように類似の化学および物理的特性を有するアミノ酸の置換がしばしば用いられる。
【0083】
したがって、例えば、保存的アミノ酸置換は、アスパラギン酸をグルタミン酸に交換し;リジンをアルギニンまたはヒスチジンと交換し;一つの非極性アミノ酸(アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン)を別のアミノ酸に交換し;および一つの極性アミノ酸(アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン等)をもう一つのアミノ酸に交換することを含む。置換を導入した後、変種を生物活性に関してスクリーニングする。
【0084】
一つの態様において、本発明の環状ペプチドは以下の式Iを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中、
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0085】
もう一つの態様において、本発明の環状ペプチドは、式IIを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中:
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0086】
さらにもう一つの態様において、本発明の環状ペプチドは、式IIIを有するアミノ酸配列を有しうる:
式中:
mが、1〜7までの整数であり;
各pが、個々に0〜7までの整数であり;
各X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X9、およびX10が、個々に極性D-またはL-αアミノ酸であり;ならびに
各Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、およびY10が、個々に非極性D-またはL-αアミノ酸であり;
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0087】
さらにもう一つの態様において、環状ペプチドは式IVaまたはIVbのアミノ酸配列を有する:
式中:
nが0〜4までの整数であり;
mが1〜7までの整数であり;
X1、X2、およびX3が、それぞれ個々に極性アミノ酸であり;
Y1、Y2、およびY3が、それぞれ個々に非極性アミノ酸であり;ならびに
式中、環状ペプチドが、交互のD-およびL-αアミノ酸の4個〜約16個の同数を有する。
【0088】
もう一つの態様において、環状ペプチドは、式VaまたはVbのアミノ酸配列を有する:
式中:
qが、2〜7までの整数であり;
X1およびX2が、個々に極性アミノ酸であり;ならびに
Y1およびY2が、個々に非極性アミノ酸である。
【0089】
しかし、上記の式の請求の環状ペプチドは、完全に非極性アミノ酸のみからなるペプチドを除外する。その上、以下の配列の如何なる一つを有するペプチドも上記の式の一つまたはそれ以上から除外してもよい:
【0090】
さらに、以下の配列は、上記の式および関連組成物から除外してもしなくてもよい:
しかし、除外された配列の如何なるものも含む上記の配列の如何なるものも有する環状ペプチドは、本発明の薬学的組成物およびペプチド内に含まれてもよくまたは除外してもよい。
【0091】
例えば、上記の式におけるXアミノ酸が、α-環状ペプチドが交互のD-およびL-αアミノ酸の配列を有する限り、D-セリン、D-トレオニン、D-アスパラギン、D-グルタミン、D-アスパラギン酸、D-システイン、D-グルタミン酸、D-ヒスチジン、D-ホモシステイン、D-アルギニン、D-リジン、D-ヒドロキシリジン、D-オルニチン、L-セリン、L-トレオニン、L-アスパラギン、L-グルタミン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L-ヒスチジン、L-ホモシステイン、L-アルギニン、L-リジン、L-ヒドロキシリジン、またはL-オルニチンとなりうる。
【0092】
いくつかの態様において、一つまたはそれ以上のXアミノ酸がイオン化可能なアミノ酸である。そのようなイオン化可能なアミノ酸には、例えば、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸、D-ヒスチジン、D-アルギニン、D-リジン、D-ヒドロキシリジン、D-オルニチン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-リジン、L-ヒドロキシリジン、またはL-オルニチンが含まれる。
【0093】
上記の式におけるYアミノ酸が、例えば、α環状ペプチドが交互のD-およびL-αアミノ酸の配列を有する限り、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-メチオニン、L-イソロイシン、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-チロシン、D-アラニン、D-バリン、D-ロイシン、D-メチオニン、D-イソロイシン、D-フェニルアラニン、D-チロシン、またはD-トリプトファンとなりうる。他の態様において、Yアミノ酸が、環状ペプチドが交互のD-およびL-αアミノ酸の配列を有する限り、L-トリプトファン、D-トリプトファン、L-ロイシン、またはD-ロイシンであってもよい。
【0094】
本発明の環状ペプチドには、例えば、配列番号:5、7〜22、26〜29、40、41、43〜55、57、58、61〜67、72〜77、79〜89、91〜93、97〜102、107、109〜112、114〜117、119〜122、125、126、128、129、133、139、140、または141の如何なるものも含まれる。いくつかの態様において、用いられる環状ペプチドは、配列番号:8、9、12、17、18、26、29、47〜52、61、63、67、68、72〜77、84、85、87〜89、91〜93、100、102、107、111、112、119、125、および139を有するペプチドである。本発明の環状ペプチドを含む製剤または組成物は、二つまたはそれ以上の環状ペプチドの混合物を含みうる。
【0095】
本発明の単離精製されたペプチドまたはその変種は、例えば固相ペプチド合成法もしくは酵素触媒ペプチド合成によって、または組換えDNA技術の助けを借りて、インビトロで合成することができる。固相ペプチド合成法は確立されて広く用いられている方法であり、以下のような参考文献に記述されている:Stewartら、「Solid Phase Peptide Synthesis」、W.H.フリーマン社、サンフランシスコ(1969);Merrifield、J. Am. Chem. Soc. 85:2149(1963);Meienhofer、「Hormonal Proteins and Peptides」、C.H. Li編、第2巻(アカデミック出版、1973)、48〜267頁;およびBavaayとMerrifield、「The Peptides」、E. GrossとF. Meienhofer編、第2巻(アカデミック出版、1980)、3〜285頁。これらのペプチドは、免疫アフィニティまたはイオン交換カラムでの画分;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEのような他の陰イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばSephadex G-75を用いたゲル濾過;リガンドアフィニティクロマトグラフィー;または非極性溶媒もしくは非極性/極性溶媒混合物からの結晶化もしくは沈殿によってさらに精製することができる。結晶化または沈殿による精製が好ましい。
【0096】
哺乳類細胞に対して望ましくない毒性をほとんどまたは全く示さない非常に活性な環状ペプチドを同定するために、個々の環状ペプチド、または環状ペプチドのライブラリを作製して、個々の環状ペプチドまたはそれらのライブラリからの環状ペプチドを抗菌活性および毒性に関してスクリーニングすることができる。例えば、ペプチドのライブラリは、Lamら(97 Chem. Rev. 411〜448(1997))によって提供された1ビーズ-1化合物戦略を用いて作製する、またはFurkaら(37 Int. Pept. Prot. Res. 487〜493(1991))のスプリット・プール法によってマクロビーズ上で合成することができる。質量分析配列分析技術は、所定のライブラリ内のあらゆるペプチドの迅速な同定を可能にする。Biemann, K.193 Methods Enzymol. 455(1990)を参照のこと。一般的に、ペプチドの環状化を含む合成操作は、面倒で困難な固相操作の自動化を行わなくてすむように固相支持体上で行われる。その上、合成レジメの最終産物は一般的に、面倒な精製技法を行わなくても生物アッセイ法にとって十分に純粋である。それぞれの合成からのペプチド収量はアッセイ法を50〜100回行うには十分となりうる。迅速な自動化可能な質量分析に基づくペプチド配列分析は、高い活性を有するペプチド配列を同定して、活性の低いペプチド配列を廃棄するために行うことができる。
【0097】
用いられる合成アプローチは、組み合わせライブラリ混合物と面倒なデコンボリューション技術とを用いなくてすむように、個々に分離可能で同定可能なペプチド配列を提供することができる。しかし、純粋でないペプチド混合物のライブラリも同様に試験のために作製することができる。純粋でないペプチド調製物は、配列の組み合わせの迅速なスクリーニングのために用いることができる。ペプチドの混合物が活性を示す場合、混合物中のペプチドは個々に単離して試験するか、または、純粋でない混合物に存在することが知られている配列を有する純粋なペプチドを個々に調製して試験することができる。
【0098】
本発明のペプチドまたはペプチド変種のカルボキシ基の塩は、例えば、金属水酸化物塩基、例えば水酸化ナトリウム;例えば炭酸ナトリウムもしくは重炭酸ナトリウムのような金属炭酸塩もしくは重炭酸塩;または例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のようなアミン塩基の1等量またはそれ以上にペプチドを接触させることによって、通常のように調製してもよい。
【0099】
ペプチドまたはペプチド変種のアミノ基のN-アシル誘導体は、最終濃縮のためにN-アシル保護アミノ酸を利用することによって、または保護もしくは非保護ペプチドをアシル化することによって調製してもよい。O-アシル誘導体は、例えば遊離のヒドロキシペプチドまたはペプチド樹脂のアシル化によって調製してもよい。いずれのアシル化も、アシルハロゲン化物、無水物、アシルイミダゾール等のような標準的なアシル化試薬を用いて行ってもよい。望ましければ、N-アシル化とO-アシル化の双方を同時に行ってもよい。
【0100】
ペプチドもしくはペプチド変種の酸付加塩、またはペプチドもしくはペプチド変種のアミノ酸残基の酸付加塩は、ペプチドまたはアミンを望ましい無機または有機酸、例えば塩酸の1等量またはそれ以上に接触させることによって調製してもよい。ペプチドのカルボキシル基のエステルもまた、当技術分野で既知の通常の如何なる方法によっても調製してもよい。
【0101】
本発明はまた、一つまたはそれ以上のβアミノ酸からなる環状ペプチドを企図する。そのようなβアミノ酸が、一つまたは二つの置換によってそのペプチド骨格に沿って置換することができる。そのような置換には、シクロアルキル、シクロアルケニル、ならびにβ-ペプチド骨格のαおよびβ炭素を含む複素環が含まれうる。これらの環は、例えば、唯一のヘテロ原子として一つまたはそれ以上の窒素原子を有するC3-C8シクロアルキル、シクロアルケニル、または複素環となりうる、そして置換または非置換となりうる。β-ペプチドの環またはαおよびβ炭素上の置換基は、例えば、ヒドロキシ、直鎖または分岐鎖C1-C6アルキル、アルケニル、アルキニル;ヒドロキシ-C1-C6-アルキル;アミノ-C1-C6-アルキル;C1-C6-アルキルオキシ、C1-C6-アルコキシ-アルキル;C1-C6-アミノ;モノまたはジ-C1-C6-アルキルアミノ;カルボキサミド;カルボキサミド-C1-C6-アルキル;スルホンアミド;スルホンアミド-C1-C6-アルキル、ウレア、シアノ、フルオロ、チオ;C1-C6-アルキルチオ;単環式または二環式アリール;N、O、およびSから選択されるヘテロ原子5個までを有する単環式または二環式ヘテロアリール;単環式または二環式アリール-C1-C6およびヘテロアリール-C1-C6-アルキル等となりうる。
【0102】
一つの態様において、本発明の環状β-ペプチドは、以下の式VIのアミノ酸配列を有しうる:
式中:
各pが個々に0〜7までの整数であり;
各Z1、Z3、Z5、Z7、Z9、Z11、Z13、Z15、Z17、およびZ19が、個々に一置換βアミノ酸であり;
各Z2、Z4、Z6、Z8、Z10、Z12、Z14、Z16、Z18、およびZ20が、個々に二置換βアミノ酸であり;ならびに
式中、環状βペプチドが、ホモキラルβ-アミノ酸3個〜約10個の配列を有する。
【0103】
超分子構造
本発明に従って、本明細書に提供する環状ペプチドは、超分子構造へと自己構築すると考えられている。自己構築は、細胞膜の成分以外の如何なるものの補助も受けずに、環状ペプチドのコレクションが細胞膜上または細胞膜内で会合して超分子構造を形成することができることを意味する。一般的に、細胞膜の物理化学特性は、環状ペプチドの自己構築を促進する。微生物の細胞膜の成分と環状ペプチドとの相互作用は、環状ペプチドがそれらの細胞膜に関して選択的であるか否かを左右する。
【0104】
本発明のペプチドによる超分子構造の形成は、凍結電子顕微鏡、電子回折、フーリエ変換赤外線分光法、および分子モデリングを用いる高解像度造影によって支持される。超分子構造は、IR分光法、低線量電子顕微鏡、および電子回折パターン分析によってさらに特徴が調べられている。
【0105】
本発明に従って、交互のD-およびL-アミノ酸残基の同数で構成される環状ペプチド構造は、全ての骨格アミド官能基が環構造の平面に対してほぼ垂直に存在する平坦な環状立体構造をとる、または示すと考えられている。同様に、β-アミノ酸で構成される環状ペプチドもまた、平坦な環構造をとることができる。この平坦な環状立体構造において、ペプチドサブユニットは、都合のよい条件で、積み重なって、本明細書においてナノチューブと呼ばれる連続した水素結合した中空の管状構造を生じると考えられている(図1および7を参照のこと)。
【0106】
例えば、ペプチド配列番号:1(シクロ-[(Gln-D-Ala-Glu-D-Ala)3-])のアルカリ溶液を制御しながら酸性化すると、棹状の結晶材料を生じ、これは透過型電子顕微鏡において緻密に充填された管状構造の構築された束として見える。M. Adrianら(308 Nature 32〜36(1984))の方法およびR.A. Milliganら(13 Ultramicroscopy 1〜10(1984))の方法に従って低線量低温顕微鏡試験を行ったところ、緻密に充填された管状構造の中心から中心までの空間に関して予想されるように約25Åの空間を有する縦方向の条線が判明した。電子回折パターンは、軸方向の空間4.80Åを示し、これはペプチドの積み重ねおよび水素結合したb-シート型構造の緻密なネットワークの形成と一致する。電子回折パターンにおける経線方向の空間は、ナノチューブの六角体中心充填の特徴である12.67±0.06Åおよび21.94±0.05Åの空間を示す。半径rの円柱の緻密な充填に起因する六角格子は、ここに認められたもののような(r=12.67Åおよびr=21.94Å)半径rとrの特徴的な二つの主な格子平面を示す。この充填における周期性は、1/r、2/r等、および1/r、2/r等で回折スポットを生じる。経線方向の軸において認められた電子回折パターンは、三次反射(4.1Å)に伸長し、ナノチューブ構造の秩序だった結晶状態を示している。回折パターンも同様に、角度99゜の単位セルを示し、フリーデルの法則に従って対称中心以外に対称を示さなかった。
【0107】
三次元超分子構造モデルは、電子回折パターンから得られたパラメータ、すなわちa=9.6Å(逆平行二量体に関して2×4.80Å)、b=c=25.66Å(2×12.67÷Cos9)、α=120°、およびβ=γ=99°の単位セルを用いて構築した。モデルは、電子回折において認められたパターンと類似の構造因子を示し、このように、提唱された三次元モデルを支持する。管様構築体における分子間水素結合網目構造も同様に、S. Krimmら(Advances in Protein Chemistry;Anfinsen, C.B.、Edsall, J.T.;Richards, F.M.編、アカデミック出版、オルランド、1986、181〜364)の方法に従うFT-IR分光分析によって支持される。ナノチューブは、1626 cm-1および1674 cm-1でのアミドIのバンドならびに1526 cm-1でのアミドIIのバンドのみならず、3291 cm-1で認められたNH伸縮振動数によっても示されるβ-シート構造に関する特徴的なIR特徴を示し、水素結合の緻密な網目構造が形成されていることを支持する。
【0108】
IRスペクトルは、天然において発見されている管状構造と類似している。例えば、本発明のペプチドのいくつかのナノチューブ構造は、二量体β-ヘリックス構造を形成することが知られている結晶の直鎖グラミシジンAの構造に概念的に関連させることができる。グラミシジンAは、1630 cm-1、1685 cm-1でアミドIバンド、1539 cm-1でアミドIIのバンド、および3285 cm-1でNH伸縮振動数を有する(V.M. Naikら、Biophys.J.(1986)、第49巻、1147〜1154頁)。NH伸縮様式について認められた振動数は、平均サブユニット間距離4.76Åに相関し、これは電子回折パターンから独立して得られた4.80Åという値と密接に一致する。
【0109】
自己構築されたナノチューブの孔の大きさ、または内部直径は、用いたペプチドサブユニットの管の大きさによって調節することができる。12残基環状ペプチド構造、例えば、シクロ[-(Gln-D-Ala-Glu-D-Ala)3-](配列番号:1)は、直径約13Åを有する。8残基環状ペプチドシクロ[-(Trp-D-Leu)3-Gln-D-Leu-](配列番号:2)は、直径約7.5Åを有する。合成ホスファチジルコリンリポソーム中で配列番号:2を有する環状ペプチドは、1624cm-1でFTIRアミドIバンドおよび3272cm-1で認められたN-H伸縮振動数を示し、これは、平均サブユニット間距離4.7Å〜4.8Åのβ-シート様水素結合の緻密な網目構造が形成されていることを支持する。
【0110】
本発明の平坦な環状の環状ペプチドは、分子間相互作用に対する構造的素因があるのみならず、選択された微生物細胞膜上で自己構築して、孔の形成または他の膜脱安定化構造によって細胞を透過性にするためにエネルギー的に都合がよい。
【0111】
膜を透過性にすることができる超分子構造の形成も同様に、プロトン輸送活性から推論した。バルク溶液内部でpH 6.5および外部でpH 5.5を有する小胞を調製した。推定の膜貫通チャンネル構造の形成によって、これらの小胞において付与されたpH勾配の崩壊を、捕獲されたpH感受性色素の蛍光強度をモニターすることによって調べた(V.E. Carmichaelら、J. Am. Chem. Soc.(1989)、第111巻、767〜769頁)。ペプチドシクロ[-(Trp-D-Leu)3-Gln-D-Leu](配列番号:2)をそのような小胞浮遊液に加えると、pH勾配の迅速な崩壊を引き起こす。
【0112】
F. Szokaら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1978)、第75巻、4194〜4198頁)の方法に従って、5(6)-カルボキシフルオレセイン(20 mM燐酸/生理食塩液緩衝液;137 mM NaCl、2.6 mM KCl、6.4 mM Na2PO4、1.4 mM KH2PO4、pH 6.5)を含む溶液において、DPPC、OPPC、コレステロールを1:1:2の比で用いて逆相蒸発によって単ラメラ小胞を調製した。次に、Nucleopore(登録商標)ポリカーボネートメンブレンの中を多数回押し出すことによってリポソームの大きさを一定の大きさにして(10回、50 psi、0.8および2×0.4μmのフィルターの積み重ねを用いる)、捕獲された5(6)-カルボキシフルオレセインを、F. Olsenら(Biochim. Biophys. Acta(1979)、第557巻、9〜23頁)の方法に従って、同じ燐酸/生理食塩液緩衝液を用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephadex G-25カラム、1×30 cm)によって除去した。このようにして形成された小胞は、電子顕微鏡によって決定すると直径が約150ナノメートルである(R.R.C.New編、「Liposomes」、オックスフォード大学出版、1990)。それぞれの実験において、小胞の保存溶液(ホスホリピッド中に3.5×10-3 M)70 mlをpH 5.5の緩衝液(1.3 ml、137 mM NaCl、2.6 mM KCl、6.4 Na2PO4、1.4 KH2PO4)に加えて、攪拌する蛍光装置の保温試料ホルダー内部の1 cm水晶キュベットに入れて、軽く攪拌しながら25℃で15分間平衡にした。キュベットに、注入口を通してDMSOに溶解したペプチド25 mlを520 nm(励起470 nm)で蛍光を絶えずモニターしながら加えた。次に、認められたデータを、比較のために蛍光の画分変化に標準化した((I0−It)/(I0−I∽))(V.E. Carmichaelら、J. Am. Chem. Soc. (1989)、第111巻、767〜769頁)。
【0113】
リポソームに捕獲されたカルボキシフルオレセイン色素の放出をモニターする対照試験から、pH勾配の崩壊が、リポソームの破壊によるためでも、これらの試験において用いた少量の有機溶媒(<2%DMSO)によるためでもないことが示された。さらに、リポソームを仕切るための適当な表面特徴を欠損する対照ペプチドシクロ[-(Gln-D-Leu)4]は、類似の条件で如何なるイオン輸送活性も示さない。所望の疎水性表面特徴を有するが広汎な水素結合網目構造に関与する傾向がない第二の対照ペプチド、シクロ[-(MeN-D-Ala-Phe)4-]も同様にデザインして、イオン輸送活性に関して調べた。このペプチドの環構造は、一つの表面がN-メチル化されている。そのようなN-メチル化は、ペプチドのリポソーム膜との相互作用能に有害な影響を及ぼさず、N-メチル化によってペプチドは、正常なリポソーム膜の端から端まで届くことができない二量体の円柱構造を形成しやすくなる。このように、ペプチドは、リポソームに有効に仕切ることが示されているが、上記の小胞実験においてプロトン輸送活性を促進しない。併せて、これらの実験は、環状ペプチド上に示された側鎖が膜相互作用にとって重要であるのみならず、ペプチド骨格は、例えば膜の透過性を促進するために広汎な分子間水素結合に関与することができなければならないという考え方を支持する。
【0114】
使用方法
本発明は、哺乳類のみならず、農場飼育動物および鳥類のような他の動物において微生物感染症を治療または予防する方法に向けられる。これらの方法には、本発明の環状ペプチドの治療的有効量を動物に投与することが含まれる。微生物感染症の治療または治療は、感染症に典型的に関連した症状の少なくとも一つの緩和または消失が含まれると解釈される。治療にはまた、二つ以上の症状の緩和または消失が含まれる。理想的には、治療は、微生物を治癒、例えば実質的に殺すおよび/または感染症に関連した症状を消失させる。
【0115】
本発明の環状ペプチドによって治療することができる微生物感染症には、哺乳類または他の動物に感染することができる如何なる標的微生物による感染症も含まれる。そのような標的微生物には、細胞膜を有し、哺乳類を含む動物に感染することができる本質的に如何なる単細胞生物または寄生虫も含まれる。例えば、標的微生物には、細菌、真菌、酵母株、および他の単細胞生物が含まれる。環状ペプチドは、グラム陰性およびグラム陽性菌の双方に対して活性である。
【0116】
したがって、例えば、以下の標的微生物の感染症を、本発明の環状ペプチドによって治療することができる:アエロモナス(Aeromonas)属、バシラス(Bacillus)属、バクテロイデス(Bacteroides)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、クロストリジウム(Clostridium)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、大腸菌(Escherichia)属、ガストロスピリルム(Gastrospirillum)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、サルモネラ(Salmonella)属、赤痢菌(Shigella)属、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ビブリオ(Vibrio)属、エルシニア(Yersinia)属等。本発明のペプチドによって治療することができる感染症には、ブドウ球菌感染症(黄色ブドウ球菌)、チフス(チフス菌(Salmonella typhi))、食中毒(O157:H7のような大腸菌)、細菌性の下痢(志賀赤痢菌(Shigella dysenteria))、肺炎(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および/またはシュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia))、コレラ(ビブリオコレラ菌(Vibrio cholerae))、潰瘍(ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、および他の細菌に関連した感染症が含まれる。大腸菌血清型O157:H7は、下痢、出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群(HUS)、および血小板減少性血栓性紫斑病(TTP)の発病に関係している。本発明のペプチドはまた、細菌の薬剤耐性株または多剤耐性株、例えば、黄色ブドウ球菌の多剤耐性株およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)のバンコマイシン耐性株に対して活性である。
【0117】
抗菌活性は、当技術分野で利用可能な方法を用いてこれらの多様な微生物に対して評価することができる。抗菌活性は、例えば、特定の微生物種の増殖を阻害する本発明の環状ペプチドの最小発育阻止濃度(MIC)を同定することによって決定される。一つの態様において、抗菌活性は、標準的な用量または用量反応法を用いて測定した場合に、微生物の50%を殺すペプチドの量である。
【0118】
本発明はまた、インビトロで微生物が実質的に増殖しない環状ペプチドの最小発育阻止濃度を決定することを含む、記述のそして本明細書において請求される環状ペプチドによって微生物感染症を治療するための治療的有効量を評価する方法を提供する。そのような方法によって、微生物の増殖を阻害するため、または微生物の50%を殺すために容積あたりに必要な環状ペプチドのおおよその量を計算することができる。そのような量は、例えば、標準的なミクロ希釈法によって決定することができる。例えば、同じ培地容積と実質的に同じ量の微生物とを含む一連の微生物培養試験管を調製して、環状ペプチドの少量を加える。少量は、同じ容積の溶液中に異なる量の環状ペプチドを含む。微生物を1〜10世代に対応する期間培養して、培養培地中の微生物の数を決定する。培養培地の吸光度を用いて、微生物の増殖が起こったか否かを推定することができる−吸光度の有意な増加が起こらなければ、微生物の有意な増殖が起こらなかった。しかし、吸光度が増加すれば、微生物の増殖が起こった。微生物細胞が環状ペプチドに対する曝露後も生存して残っている数を調べるために、環状ペプチドを加えた時点(ゼロ時間)およびその後定期的に少量の培養培地を採取した。少量の培養培地を微生物培養プレート上に広げて、微生物の増殖を行う条件でプレートをインキュベートして、コロニーが出現すると、それらのコロニー数を計数する。
【0119】
本発明に従って、本明細書に提供した環状ペプチドは、哺乳類細胞または治療すべき他の動物の細胞に対して実質的または望ましくない毒性を引き起こさない。哺乳類または鳥類の赤血球溶血は、環状ペプチドが哺乳類細胞または治療すべき他の動物の細胞に対して望ましくない毒性を引き起こしうるか否かを測定する一つの方法である。環状ペプチドが哺乳類または動物細胞膜との会合によって自己構築することができれば、膜は破壊される可能性がある。赤血球は、溶血して、これを細胞からのヘモグロビンの放出として検出することができることから、膜の破壊に関して試験するために簡便に用いられる。溶血アッセイ法は当業者に利用可能な方法によって行うことができる。例えば、試験化合物に曝露後、ヘモグロビンの放出は、ヘモグロビンに特徴的な波長、例えば543 nmでの光の吸収を観察することによって分光光度法によって観察することができる。対照試料を用いることができ、例えば細胞を試験または維持する培地をゼロブランクとすることができる。第二の対照を用いて、試験哺乳類細胞試料と同一である試料となりうるが、細胞を完全に破壊するために超音波処理されている100%溶解または溶血の場合の吸光度を決定することができる。さらに、メリチンまたは多様な洗浄剤のような溶血剤も同様に用いて試験赤血球の100%溶血を確立することができる。
【0120】
スクリーニングアッセイ法
スクリーニングまたは他のアッセイ法を用いて、関係する微生物または他の細胞タイプと選択的に相互作用する、破壊する、または殺すことができる環状ペプチドを同定、確認、または評価してもよい。この目的のために多様なアッセイ法を用いてもよい。一般的に、そのようなアッセイ法は、関係する微生物または他の細胞タイプを、少なくとも一つの環状ペプチドに接触させて、環状ペプチドが、関係する微生物または他の細胞タイプと相互作用するか否か、および/または微生物または他の細胞タイプに対して有害な影響を及ぼすか否かを観察することを含みうる。
【0121】
当技術分野で利用可能な方法は、本発明の環状ペプチドが、例えば関係する細胞タイプの膜と相互作用するか否かを決定するために用いることができる。例えば、環状ペプチドは、ペプチドの検出を可能にするレポーター分子によって標識することができる。標識後、環状ペプチドを、細胞膜に対するペプチドの結合または会合を可能にする時間および条件で、関係する細胞タイプに接触させることができる。細胞は、非結合または非会合環状ペプチドを除去するために生理溶液によって洗浄することができ、レポーター分子が微生物、細胞、または細胞膜に結合するまたは会合するか否かを確認するために、微生物または細胞を観察することができる。もう一つの態様において、当業者は、(複数の)環状ペプチドが、特定の微生物または他の選択された細胞タイプの膜を選択的に貫通することができるか否かを調べることができる。これは、例えばレポーター分子が、関係する微生物もしくは細胞タイプの細胞膜に会合したままであるか否か、またはレポーター分子が、関係する微生物または細胞タイプの内部に会合するようになるか否かを調べることによって行ってもよい。
【0122】
用いることができるレポーター分子は、本発明の環状ペプチドに直接または間接的に結合する当業者に利用可能な如何なる検出可能な化合物または分子も含まれる。標識はそれ自身検出可能であってもよく(例えば、放射性同位元素標識もしくは蛍光標識)、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物もしくは組成物、または蛋白質/抗体捕獲および検出のための分子エピトープの化学修飾を触媒してもよい。
【0123】
関係する微生物または細胞タイプに対する有害な作用はまた、本発明の環状ペプチドと関係する微生物または細胞タイプのあいだの相互作用の指標として検出することができる。そのような有害な作用は、環状ペプチドが、関係する微生物または細胞タイプに有害なまたは細胞障害作用を有する如何なる証拠によって確認してもよい。例えば、当業者は、(複数の)環状ペプチドが細胞タイプを殺すか否か、または関係する微生物または細胞タイプの膜の脱分極または透過性化を引き起こすか否かを調べることができる。
【0124】
特に興味深いのは、正常なヒトまたは他の動物細胞に対して低い毒性を有するが良好な抗菌特性(微生物の細胞膜を脱分極または透過性にする、溶解する、またはそうでなければ微生物を殺す)を有する環状ペプチドのスクリーニングアッセイ法である。そのような環状ペプチドは、それらがそのような正常なヒトまたは他の動物細胞に対する毒性が低い限り、正常なヒトまたは他の動物細胞と相互作用してもしなくてもよい。
【0125】
一般的に、多数のペプチドを調べる場合、異なる環状ペプチドによって同時に複数のアッセイ法を行い、これは様々な濃度に対して異なる反応を得るために異なる濃度で導入してもよい。典型的に少なくとも一つの対照アッセイ法を試験に含める。そのような対照は、環状ペプチドを含まない生理溶液に、関係する微生物または細胞を曝露することを含む陰性対照となりうる。もう一つの対照は、関係する微生物もしくは細胞、または関係する微生物もしくは細胞タイプに関連する第二の細胞タイプ、に有害な影響を及ぼすことが既に認められている環状ペプチドに、関係する微生物または細胞を曝露することを含みうる。もう一つの対照は、、関係する微生物または細胞タイプに対して望ましい影響を有する既知の治療物質、例えば特定の濃度または用量で既知の有効性を有する抗菌剤または細胞障害剤に、関係する微生物または細胞タイプを曝露することを含みうる。当業者は、そのような評価を促進する対照化合物および条件を容易に選択することができる。
【0126】
候補となる環状ペプチドは、本明細書に記載のように作製した環状ペプチドのライブラリを含む多様な起源から得られる。環状ペプチドはまた、当業者によって選択される特異的構造特徴を有するように個々にまたは合理的にデザインおよび合成することができる。
【0127】
当業者に利用可能な如何なる細胞タイプもこれらの方法によってスクリーニングすることができる。例えば、如何なる微生物または哺乳類または動物細胞タイプも、本発明の環状ペプチドがそれと選択的または非選択的に相互作用することができるか否かを評価するためにスクリーニングすることができる。そのような微生物細胞タイプには、自律複製することができる如何なる単細胞生物も含まれる。例には、如何なる細菌、真菌、および酵母細胞タイプも含まれる。哺乳類または他の動物細胞タイプも同様に、本発明のペプチドがそれらと相互作用するか否かを確認するために、および/または本発明のペプチドが、関係する哺乳類または他の動物細胞タイプと相互作用、結合、溶解、殺す、またはその生存率に有害な影響を及ぼさないか否かを決定もしくは確認するためにスクリーニングすることができる。
【0128】
一つの態様において、環状ペプチドが赤血球に対して有害な作用を有するか否かを確認するために、哺乳類の赤血球を環状ペプチドに関してスクリーニングする。赤血球の膜は、他の多くの哺乳類細胞タイプより溶解に対して感受性が高い傾向がある。したがって、赤血球は環状ペプチドが、これらまたは他の細胞タイプに対して如何なる有害な作用も有すると予想されるか否かを迅速にスクリーニングするために有用な細胞タイプである。哺乳類の細胞溶解をスクリーニングする方法は当技術分野で利用可能である。例えば、本発明に記載の技法を用いて、本発明の少なくとも一つの環状ペプチドに曝露した場合に溶血が起こるか否かを確認するために赤血球を試験することができる。環状ペプチドが赤血球の望ましくない溶血をほとんどまたは全く引き起こさないことが確立されれば、これを他の哺乳類細胞タイプに対して調べてもよく、または標準的な動物モデルにおけるインビボ試験のために用いてもよい。
【0129】
環状ペプチドをスクリーニングする条件には、関係する細胞タイプを増殖、維持、またはそうでなければ培養するために当業者によって用いられる条件が含まれる。関係細胞タイプは、(複数の)環状ペプチドが存在することを除き細胞が健康と思われる条件でアッセイすべきである。培養条件が細胞の生存率に影響を及ぼすか否かを評価するために、細胞タイプが選択された培養条件で維持され、環状ペプチドに曝露されない対照を行うことができる。当業者はまた、環状ペプチドまたは細胞と培養培地中の成分との如何なる相互作用も消失するために、緩衝生理食塩液のような単純な生理溶液において洗浄されている細胞についてアッセイ法を行うことができる。しかし、アッセイ法のための培養条件は、一般的に細胞に、選択されたタイプの細胞を培養または維持するために典型的に用いられる適当な濃度の栄養、生理的塩類、緩衝液および他の成分を提供することが含まれる。他の多様な試薬をスクリーニングアッセイ法に含めてもよい。これらには、関係する細胞タイプの生理状態を模倣するために用いられる塩、中性蛋白質、アルブミン、血清(例えば、仔ウシ胎児血清)のような試薬が含まれる。哺乳類細胞および細菌または他の微生物細胞を培養、増殖、および維持するための条件および培地は当業者に利用可能である。
【0130】
選択された試薬および成分は、当業者によって選択される順序でアッセイ法に加える。一般的に、環状ペプチドは、アッセイ法を開始する最後に加える。アッセイ法は如何なる適した温度、典型的に4℃〜40℃で行われる。温度は一般的に、ほぼ室温(約20℃)〜約37℃の範囲である。インキュベーション期間は、最適な範囲の活性を確認するため、または環状ペプチドが望ましくない細胞タイプに有害な影響を確実に及ぼさないように選択される。しかし、インキュベーション時間は、迅速な高処理能スクリーニングを促進するために最適にすることができる。典型的に、インキュベーション時間は、約1分〜約24時間であり、他の時間は約5分〜約8時間である。
【0131】
インビトロスクリーニングまたは評価の際に所望の選択性および活性を有する環状ペプチドを、適当な動物モデルにおいてインビボでの活性および/または毒性の欠如に関して試験してもよい。そのような動物モデルには、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウシ、またはウマが含まれる。例えば、マウスおよびラットは本発明の環状ペプチドが毒性作用を有するか否かを調べるために、および/または環状ペプチドが微生物感染症に対抗することができるか否かを決定するために都合のよい動物モデルである。
【0132】
当業者は、本発明の環状ペプチドのインビボスクリーニングを容易に行うことができる。毒性を試験するために、異なる試験用量での一連の環状ペプチドを異なる動物に個々に投与することができる。1回用量または一連の用量を動物に投与することができる。動物に及ぼす(複数の)ペプチドの影響を評価することができる試験期間を選択する。そのような試験期間は、約1日〜約数週間または数ヶ月のあいだであってもよい。
【0133】
動物に対する(複数の)環状ペプチドの影響は、ペプチドが試験期間において、動物の挙動(例えば、嗜眠、過敏症)および生理状態に有害な影響を及ぼすか否かを観察することによって決定することができる。動物の生理状態は、標準的な技法によって評価することができる。例えば、試験期間において、当業者は、例えば様々な酵素、蛋白質、代謝物等を試験するために、採血を行って、他の体液を採取することができる。当業者はまた、動物が鼓腸、食欲喪失、下痢、嘔吐、血尿、意識喪失、および他の多様な生理的問題を有するか否かを観察することができる。試験期間後、動物を屠殺して、動物の組織または臓器について、解剖学的、病理学的、組織学的および他の研究を行うことができる。
【0134】
一般的に、本発明の一つまたはそれ以上の環状ペプチドが微生物感染症に対抗できるか否かを決定するために、マウスまたは他の試験動物を、選択した微生物に感染させて、その後一つまたはそれ以上の環状ペプチドの選択された試験用量を、規定の経過時間または間隔で投与する。環状ペプチドが動物を微生物感染症から保護するか否かを確認するために、試験動物を数日から数週間のあいだ観察する。試験期間の終了時、試験動物を屠殺して、環状ペプチドが試験動物を感染から最適に保護するか否かを確認するために、および/または如何なる有害な副作用も起こったか否かを決定するために調べることができる。
【0135】
投与前、微生物を単純な生理溶液において洗浄して、毒素またはマウスに有害な影響を及ぼす可能性がある他の成分を除去する。例えば、微生物細胞を37℃で攪拌しながら静止期まで12時間増殖させることができる。微生物細胞を遠心によって回収して、生理食塩液または燐酸緩衝生理食塩液(PBS)によって2回洗浄し、都合のよい細胞密度、例えば、約3〜5×107 cfu/mlの細胞密度に再浮遊または希釈する。各ペプチド5個の多様な量によって試験すべき動物数匹に少量の微生物(例えば、約0.1〜約1 ml)を感染させる。感染は、経口、腹腔内、静脈内、または当業者によって選択される他のいくつかの経路によって行うことができる。感染後、動物を短期間休息させてから、各動物を異なる用量のペプチドによって処置する。動物を数日から数週間モニターする。
【0136】
環状ペプチドを投与しない場合の微生物の影響を確立するために対照を用いる。他の対照も行うことができ、例えば本発明の環状ペプチドの安全性および有効性を、既知の抗菌剤(例えば、ペニシリン、カナマイシン、バンコマイシン、エリスロマイシン等)と比較することができる。
【0137】
本発明はさらに、標的生体分子と選択的に会合することができるD-、L-α-環状ペプチドまたはβ-ペプチドを同定または評価する方法を提供する。そのような標的生体分子には、例えば、細胞内、細胞外、または膜会合蛋白質、酵素、核酸、受容体、オルガネラ等が含まれうる。この方法は、環状ペプチドの溶液を水素結合促進条件で標的生体分子に接触させること、そしてペプチドが、所望の生体分子と選択的に会合して関係する生物活性を有するか否かを決定することを含みうる。
【0138】
標的生体分子は、例えば生きている細胞の表面上、遺伝子操作された細胞の表面上、またはリポソームの表面上で示されうる。または、ペプチドを、当業者に利用可能な他の所望のアッセイ条件で標的生体分子に接触させることができる。
【0139】
望ましくない細胞タイプに対して実質的に望ましくない毒性を示さない、インビトロおよび/またはインビボで良好な抗菌特性を有する環状ペプチドは、下記により詳細に記述するように、適当な投与剤形を調製するための特に良好な候補物質である。
【0140】
ペプチドの用量、製剤、および投与経路
その塩を含む本発明のペプチドは、感染症、適応、もしくは疾患に関連した少なくとも一つの症状の減少が得られるように、または適応もしくは疾患に関連した抗体量の減少が得られるように投与される。
【0141】
所望の(複数の)作用を得るために、ペプチド、その変種、またはその組み合わせを、例えば少なくとも約0.01 mg/kg〜約500〜750 mg/kg、少なくとも約0.01 mg/kg〜約300〜500 mg/kg、少なくとも約0.1 mg/kg〜約100〜300 mg/kg、または少なくとも約1 mg/kg〜約50〜100 mg/kg体重の1回用量、または分割用量として投与してもよいが、他の用量も有用な結果を提供する可能性がある。投与量は、選択した環状ペプチド、疾患、体重、身体状態、健康、哺乳類の年齢、予防または治療が得られるか否か、そしてペプチドが化学修飾されているか否か、を含むがこれらに限定されない様々な要因に応じて変化すると考えられる。そのような要因は、当技術分野で利用可能な動物モデルまたは他の試験系を用いて臨床医によって容易に決定することができる。
【0142】
本発明に従う治療物質の投与は、例えば、レシピエントの生理状態、投与目的が治療的または予防的であるか否か、および当業者に既知の他の要因に応じて、1回投与、多数回投与、連続または間欠的投与であってもよい。本発明のペプチドの投与は、予め選択された期間について本質的に連続的であってもよく、または一定期間をあけた一連の投与であってもよい。局所および全身投与の双方が企図される。
【0143】
組成物を調製するために、ペプチドを合成する、またはそうでなければ、得る、必要に応じてまたは望ましければ精製して、凍結乾燥および安定化させる。次に、ペプチドを適当な濃度に調節して、選択的に他の物質と混合する。単位用量に含まれる所定のペプチドの絶対重量は、広く異なりうる。例えば、本発明の少なくとも一つのペプチドまたは特定の細胞タイプに対して特異的な複数のペプチドの約0.01〜約2 g、または約0.1〜約500 mgを投与することができる。または、単位用量は、約0.01 g〜約50 g、約0.01 g〜約35 g、約0.1 g〜約25 g、約0.5 g〜約12 g、約0.5 g〜約8 g、約0.5 g〜約4 g、または約0.5 g〜約2 gまで異なりうる。
【0144】
本発明の環状ペプチドの1日量も同様に変化しうる。そのような1日量は、例えば、約0.1 g/日〜約50 g/日、約0.1 g/日〜約25 g/日、約0.1 g/日〜約12 g/日、約0.5 g/日〜約8 g/日、約0.5 g/日〜約4 g/日、および約0.5 g/日〜約2 g/日の範囲となりうる。
【0145】
このように、本発明の治療ペプチドを含む一つまたはそれ以上の適した単位投与剤形は、経口、非経口(皮下、静脈内、筋肉内、および腹腔内を含む)、直腸内、皮下、経皮、胸腔内、肺内、および鼻腔内(呼吸器)経路を含む多様な経路によって投与することができる。治療ペプチドは同様に、徐々に放出するために調製してもよい(例えば、微量封入を用いて、国際公開公報第94/07529号、および米国特許第4,962,091号を参照のこと)。製剤は、適当であれば、簡便に個別の単位投与剤形としてもよく、薬学の技術分野に周知の如何なる方法によって調製してもよい。そのような方法には、治療物質を液体担体、固体マトリクス、半固体担体、細粉化した固体担体またはその組み合わせと混合する段階、そして必要であれば、製品を所望の輸送系に導入または成型する段階が含まれてもよい。
【0146】
本発明の治療ペプチドを経口投与のために調製する場合、それらは一般的に薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて、薬学的製剤または単位投与剤形を形成する。経口投与の場合、ペプチドは粉末、顆粒製剤、溶液、懸濁液、乳液、またはチューインガムの活性成分を摂取するための天然もしくは合成ポリマーもしくは樹脂の形であってもよい。活性ペプチドはまた、ボーラス、舐剤、またはパスタの形であってもよい。経口投与される本発明の治療ペプチドは、持続的に放出するために製剤化することができ、例えばペプチドをコーティング、微小封入する、またはそうでなければ徐放装置に入れることができる。そのような製剤中の全体的な活性成分は、製剤重量の0.1〜99.9%を含む。
【0147】
「薬学的に許容される」とは、製剤の他の成分と適合性であって、そのレシピエントに対して有害でない担体、希釈剤、賦形剤、および/または塩を意味する。
【0148】
本発明の治療ペプチドを含む薬学的製剤は、周知で容易に入手できる成分を用いて、当技術分野で既知の技法によって調製することができる。例えば、ペプチドは、一般的な賦形剤、希釈剤、または担体と共に製剤化して、錠剤、カプセル剤、溶液、懸濁液、粉末、エアロゾル等に形成することができる。そのような製剤にとって適した賦形剤、希釈剤、および担体の例には、緩衝液と共に充填剤、ならびにデンプン、セルロース、糖、マンニトール、およびケイ酸誘導体のような増量剤が含まれる。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他のセルロース誘導体、アルジネート、ゼラチン、およびポリビニルピロリドンのような結合剤も同様に含めることができる。グリセロールのような湿潤剤、炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウムのような崩壊剤も含めることができる。パラフィンのような溶解を遅らせる物質も同様に含めることができる。四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤も同様に含めることができる。セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような界面活性剤を含めることができる。カオリンおよびベントナイトのような吸着担体も加えることができる。タルク、ステアリン酸カルシウムおよびマグネシウム、ならびに固体ポリエチルグリコールのような潤滑剤も同様に含めることができる。保存剤を加えてもよい。本発明の組成物はまた、セルロースおよび/またはセルロース誘導体のような濃化剤を含みうる。それらはまた、キサンタン、グアーゴムもしくはカルボゴム、もしくはアラビアゴムのようなゴム、またはポリエチレングリコール、ベントン、およびモンモリロナイト等を含んでもよい。
【0149】
例えば、本発明の環状ペプチドを含む錠剤またはカプレットは、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、および炭酸マグネシウムのような緩衝剤を含みうる。カプレットおよび錠剤はまた、セルロース、予めゼラチン化したデンプン、二酸化珪素、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、デンプン、タルク、二酸化チタン、安息香酸、クエン酸、コーンスターチ、鉱油、ポリプロピレングリコール、燐酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛等のような不活性成分が含まれうる。本発明の少なくとも一つの環状ペプチドを含む硬または軟ゼラチンカプセルは、ゼラチン、微結晶セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、タルク、および二酸化チタン等のような不活性成分を含みうると共に、ポリエチレングリコール(PEGs)および植物油のような液体媒体を含みうる。その上、本発明の一つまたはそれ以上のペプチドを含む腸溶コーティングカプレットまたは錠剤は、胃での崩壊に耐えて、十二指腸のより中性からアルカリ性環境において溶解するようにデザインされる。
【0150】
本発明の治療ペプチドはまた、簡便な経口投与のためのエリキシル剤もしくは溶液として、または非経口投与、例えば、筋肉内、皮下、腹腔内、もしくは静脈内経路による投与にとって適当な溶液として調製することができる。本発明の治療ペプチドの薬学的組成物はまた、水溶液もしくは無水の溶液もしくは分散液の形となりうる、または乳液、懸濁液もしくは軟膏の形となりうる。
【0151】
このように、治療ペプチドは、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または持続的注入)のために調製してもよく、アンプル、充填済みシリンジ、少量の注入容器または多数回投与容器での単位投与剤形の形であってもよい。先に記述したように、投与剤形の半減期を維持するために役立つように保存剤を加えることができる。活性ペプチドおよび他の成分は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性媒体中での乳液を形成してもよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような製剤物質を含んでもよい。または、活性ペプチドおよび他の成分は、適した溶媒、例えば滅菌の発熱物質不含水によって使用前に溶解するための、無菌的な固体の無菌的単離または溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末の形であってもよい。
【0152】
これらの製剤は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体、媒体、および補助剤を含みうる。例えば、生理的な見地から許容可能であって、水以外に、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、「ダウアノール(Dowanol)」の商品名で販売されている製品のようなグリコールエーテル、ポリグリコール、およびポリエチレングリコール、短鎖酸のC1〜C4アルキルエステル、乳酸エチルまたはイソプロピル、「ミグリオール(Miglyol)」の商品名で販売されている製品のような脂肪酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、動物、無機質、および植物油ならびにポリシロキサンのような溶媒から選択される一つまたはそれ以上の有機溶媒を用いて溶液を調製することが可能である。
【0153】
必要であれば、抗酸化剤、界面活性剤、他の保存剤、被膜形成剤、角質溶解剤またはニキビ溶解剤、香料、着香料および着色剤から選択される補助剤を加えることが可能である。t-ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ならびにα-トコフェロールおよびその誘導体のような抗酸化剤を加えることができる。
【0154】
本発明の一つまたはそれ以上の環状ペプチドと一つまたはそれ以上の他の抗菌剤とを含む複合産物も同様に企図される。例えば、アミノグリコシド(例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、トブラマイシン、およびアミカシン)、アンサマイシン(例えば、リファマイシン)、抗真菌剤(例えば、ポリエンおよびベンゾフラン誘導体)、β-ラクタム(例えば、ペニシリンおよびセファロスポリン)、クロラムフェニコール(チアムフェノールおよびアジダムフェニコールを含む)、リノサミド(リンコマイシン、クリンダマイシン)、マクロライド(エリスロマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン)、ポリミキシン、バシトラシン、チロトリシン、カプレオマイシン、バンコマイシン、テトラサイクリン(オキシテトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンを含む)、ホスホマイシンおよびフシジン酸のような多様な抗生物質を本発明の薬学的組成物に加えることができる。
【0155】
さらに、ペプチドは、徐放剤形等としての製剤に十分に適している。製剤は、活性ペプチドを、例えば腸または呼吸器の特定の部分で、おそらく一定期間放出するように構築することができる。コーティング、外皮、および保護マトリクスを、例えばポリラクチド-グリコリド、リポソーム、微小乳剤、微小粒子、ナノ粒子、またはロウのようなポリマー物質から構成してもよい。これらのコーティング、外皮、および保護マトリクスは、留置装置、例えば、ステント、カテーテル、腹腔内透析チューブ、排液装置等をコーティングするために有用である。
【0156】
局所投与に関して、治療物質は、標的領域に直接適用するために当技術分野で既知であるように調製してもよい。局所適用のために主に条件付けされた剤形は、例えばクリーム、乳液、ゲル、含浸パッド、軟膏、またはスティック、エアロゾル製剤(例えば、スプレーまたはフォーム)、石けん、洗浄剤、ローション、または石けん塊の形となる。この目的のために他の都合のよい剤形には、包帯、コーティングした絆創膏、または他のポリマー被覆、軟膏、クリーム、ローション、パスタ、ゼリー、スプレー、およびエアロゾルが含まれる。このように、本発明の治療ペプチドは、皮膚投与のための小片または包帯を通して輸送することができる。または、ペプチドは、ポリアクリレートまたはアクリレート/酢酸ビニルコポリマーのような接着ポリマーの一部として調製することができる。長期適用のために、微孔性および/または呼吸可能な裏装ラミネートを用いることが望ましいかも知れず、それによって皮膚の水和または軟化は最小限となりうる。裏装は、所望の保護および支持機能を提供する如何なる適当な厚さとなりうる。適した厚さは一般的に約10〜約200μmである。
【0157】
軟膏およびクリームは、例えば適した濃化剤および/またはゲル化剤を加えることによって水性基剤または油性基剤によって調製してもよい。ローションは、水性または油性基剤によって調製してもよく、一般的に同様に、一つまたはそれ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、濃化剤、または着色剤を含む。活性ペプチドもまた、米国特許第4,140,122号;第4,383,529号、または第4,051,842号に開示されるように、イオントフォレーシスによって輸送することができる。局所製剤中に存在する本発明の治療物質の重量%は、様々な要因に依存するが、一般的に製剤の総重量の0.01%〜95%であり、典型的に重量の0.1〜85%である。
【0158】
点眼液または点鼻液のような滴剤は、一つまたはそれ以上の分散剤、溶解剤、または懸濁剤を含む水性基剤または非水性基剤において一つまたはそれ以上の治療ペプチドによって調製してもよい。液体スプレーは、加圧パックから都合よく輸送される。滴剤は、単純な点眼用のキャップのついた瓶によって、または液体内容物を一滴ずつ輸送するために適合されたプラスチック瓶によって、または特に形成された閉鎖部によって輸送することができる。
【0159】
治療ペプチドはさらに、口または喉において局所投与するために処方してもよい。例えば、活性成分は、香料基剤、通常蔗糖およびアカシアまたはトラガカントをさらに含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたは蔗糖およびアカシアのような不活性基剤中に組成物を含む香錠;ならびに本発明の組成物を適した液体担体において含むマウスウォッシュとして調製してもよい。
【0160】
本発明の薬学的製剤は、選択的成分として、薬学的に許容される担体、希釈剤、可溶化剤または乳化剤、および当技術分野で利用可能なタイプの塩を含んでもよい。そのような物質の例には、生理緩衝生理食塩液および水のような通常の生理食塩液溶液が含まれる。本発明の薬学的製剤において有用な担体および/または希釈剤の特異的な非制限的な例には、水、および燐酸緩衝生理食塩液溶液pH 7.0〜8.0のような生理的に許容される緩衝生理食塩液が含まれる。
【0161】
本発明のペプチドはまた、呼吸器管に投与することができる。このように、本発明は、本発明の方法において用いるためのエアロゾル薬学的製剤および投与剤形を提供する。一般的に、そのような投与剤形は、特異的感染症、適応、または疾患の臨床症状を治療または予防するために有効な本発明の物質少なくとも一つの量を含む。本発明の方法に従って治療される感染症、適応、または疾患の一つまたはそれ以上の症状の如何なる統計学的に有意な減弱も、本発明の範囲内であるそのような感染症、適応、または疾患の治療であると見なされる。
【0162】
または、吸入もしくは通気による投与に関して、組成物は、乾燥粉末、例えば治療物質と、乳糖またはデンプンのような適した粉末基剤との粉末混合物の形であってもよい。粉末組成物は、例えば、カプセルまたはカートリッジにおいて単位投与剤形の形で示されてもよく、またはそこから粉末が吸入装置(inhalotor)、吸入器(insufflator)、または定用量吸入器(inhaler)(例えば、Newinan, S.P.、「Aerosols and the Lung」、Clarke, S.W.およびDavia, D.編、197〜224頁、バターワース、ロンドン、イギリス、1984に開示される加圧式定用量吸入器(MDI)および乾燥粉末吸入器を参照されたい)の助けを借りて投与してもよいゼラチンまたはブリスターパックの形であってもよい。
【0163】
本発明の治療ペプチドはまた、エアロゾルまたは吸入剤形で投与する場合には水溶液で投与することができる。このように、他のエアロゾル薬学的製剤は、例えば、治療すべき適応または疾患に対して特異的な本発明のペプチドの一つまたはそれ以上の約0.1 mg/ml〜約100 mg/mlを含む生理的に許容される緩衝生理食塩液を含んでもよい。液体に溶解または懸濁されない細粉固体ペプチドまたは核酸粒子の形での乾燥エアロゾルもまた、本発明の実践において有用である。本発明のペプチドは、粉状の粉末として調製してもよく、平均粒子径が約1〜5 μm、または2〜3 μmである細粉粒子を含む。細粉化粒子は、当技術分野で周知の技術を用いて細粉化およびスクリーン濾過によって調製してもよい。粒子は、細粉化材料の規定の量を吸入することによって投与してもよく、これは粉末の形となりうる。それぞれの投与剤形の個々のエアロゾル用量に含まれる活性成分または成分の単位含有量は、用量単位の複数の投与によって必要な有効量を得ることができるため、それ自身、特定の感染症、適応、または疾患を治療するための有効量となる必要はない。その上、有効量は、個々に、または一連の投与において投与剤形における用量未満を用いて得てもよい。
【0164】
上部(鼻腔)または下部呼吸器への吸入による投与に関して、本発明の治療ペプチドは、ネブライザーまたは加圧パックもしくは他の簡便なエアロゾルスプレー輸送手段によって簡便に輸送される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適したガスのような適した噴射剤を含んでもよい。加圧式エアロゾルの場合、投与単位は、一定量を輸送するための弁を提供することによって決定してもよい。ネブライザーには、米国特許第4,624,251号、第3,703,173号、第3,561,444号、および第4,653,627号に記載されるものが含まれるがこれらに限定されない。本明細書に記載のタイプのエアロゾル輸送システムは、ファイソンズ社(ベッドフォード、マサチューセッツ州)、シェリング社(ケニルワース、ニュージャージー州)、およびアメリカンファーモシール社(バレンシア、カリフォルニア州)を含む多数の販売元から入手できる。鼻腔内投与に関して、治療物質は、点眼液、プラスチックボトルのアトマイザーまたは定用量吸入器のような液体スプレーによって投与してもよい。典型的なアトマイザーは、ミストメーター(ウィントロップ社)およびメディヘラー(リカー社)である。
【0165】
さらに、活性成分はまた、記述の疾患または他の病態のためであるか否かによらず、他の治療物質、例えば他の疼痛軽減剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤等と組み合わせて用いてもよい。
【0166】
本発明はさらに、キットまたは他の容器のような微生物感染症を制御するための包装された薬学的組成物に関する。キットまたは容器は、微生物感染症を制御するための薬学的組成物の治療的有効量と、微生物感染症を制御するための薬学的組成物の使用説明書とを含む。薬学的組成物は、本発明の少なくとも一つの環状ペプチドを、微生物感染症が制御される治療的有効量で含む。
【0167】
本発明を、以下の非制限的な実施例によってさらに説明する。
【0168】
実施例 1 .材料および方法
固相ペプチド合成
溶媒および試薬:
アセトニトリル(ACN、最適な等級)、ジクロロメタン(DCM、ACS等級)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、シークエンシング等級)、ジエチルエーテル(Et2O、ACS等級)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、ペプチド合成等級)は、フィッシャー社から購入してさらに精製せずに使用した。トリフルオロ酢酸(TFA、ニュージャージーハロカーボン)、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU、リチェリュー・バイオテクノロジーズ)、ベンゾトリアゾル-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP、ノババイオケム社)は、購入した状態で使用した。市販のアミノ酸および樹脂は、バケム社、ノババイオケム社またはアドバンスドケムテック社から購入した状態で使用した。側鎖の保護は以下の通りであった。Fmoc合成に関してArg(Pbf)、His(Boc)、Lys(Boc)、Ser(t-Bu)、およびThr(t-Bu)。他の化学物質は全て、アルドリッチ社、アクロス社、シグマ社、またはフルカ社から購入した状態で使用した。
【0169】
ペプチド合成および環状化:
直線の保護されたペプチドを、トリチル官能基樹脂を用いてポリスチレン固相支持体上で合成して、溶液相で環状化した。第一のFmoc保護アミノ酸を、標準的な技法に従ってそのα-カルボキシレート基によって塩素-トリチル樹脂にローディングした。簡単に説明すると、乾燥Fmoc-アミノ酸(樹脂のローディングに関して1.2等量)をDCM(NaHCO3で乾燥、20 ml/g樹脂)およびDIEA(4等量)に溶解した。この混合物を新鮮な市販の塩化-トリチル樹脂(0.6〜1.2 mmol/g)に加えて、2時間絶えず攪拌した後、DCM(3×20 ml)、MeOH/DIEA/DCM(1:2:17、3×15 ml)およびDCM(3×20 ml)によって連続的に洗浄した。第一のアミノ酸のローディングは、一定量の樹脂から塩基を有するFmoc基を除去した後、既知の試料容積における産物のUV吸収および濃度を測定することによって推定した。アミノ酸の残りは、標準的なFmocプロトコールに従って連続的に導入した。J.M. a.Y. Stewart, J.D.、「Solid Phase Peptide Synthesis」、1984。最後のカップリングの後、20%ピペリジン/DMFによる処置によってN-末端のFmoc基を除去した。樹脂を含むペプチドをDMF(3×20 ml)によって洗浄した後、DCM(3×20 ml)によって洗浄した。側鎖が保護された直線状ペプチドは、何回か(10〜20)に分けたTFA/DCM混合物(1/99)と共に連続的に振とうすることによって樹脂から切断して、ピリジン(2 ml)およびMeOH(5 ml)を含むフラスコに溶液を回収した。切断の終了は、樹脂の色が暗赤色に変化した場合に得られる。次に、樹脂をDCM(2×10 ml)およびMeOH(2×10 ml)によって洗浄した。これらの洗浄液を、回収したTFA切断溶液と合わせた。溶媒を真空(1 mm Hg)で蒸発させ、直線状ペプチドの純度をMALDI-MSおよびHPLCによって評価した。ほとんどの場合、粗直線状ペプチドの純度がよいために、予め精製することなくに環状化を行うことが可能であった。そうでなければ、直線状ペプチドは、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC/C4、またはC18、0.1%TFAのACN/H2O溶液)によって精製した。
【0170】
環状化は、PyBOP(粗ペプチドに関して5等量)およびDIEA(40等量)の混合物を用いて1〜5 mMのペプチド濃度でDMF中で行った。見かけのpH 9〜10が得られるようにDIEAの量を調節して、これを湿ったpH紙に反応混合物1滴を落とすことによって評価した。反応を、MALDI-MSおよびHPLCによって追跡して、ほとんどの場合これは2時間未満で完了した。次に、DMFを、温度30℃未満で真空下(1 mmHg)で蒸発によって除去して、残渣を真空下(0.1 mm Hg)で一晩乾燥させた。
【0171】
環状ペプチド側鎖を脱保護するために、乾燥した粗ペプチドを、TFA/PhOH/H2O/チオアニソール/EDT/TIS(81.5:5:5:2.5:1)の混合物(ペプチド〜100 mL/g)において室温で1〜3時間溶解した。反応の終了は、HPLCおよびMALDI-MSによって追跡した。TFA溶液を真空下(1 mmHg)で蒸発させることによって5倍濃縮して、氷冷Et2Oにそれを加えることによってそこからペプチドを沈殿させた。乾燥した粗ペプチドの純度はHPLCおよびMALDI-MSによって評価した。粗ペプチドは沸騰ACN/水/HCl混合物(30/70/0.1)中で溶解して、混濁した溶液を冷蔵庫において冷却することによって部分的に精製することができる。この混合物中のペプチドの溶解度が高い場合、アセトン(3容量等量)を上記の溶液に加えることによって、沈殿物を得ることができる。さらなる精製は、調整的逆相HPLC(C4、放射状圧縮カラム、ウォータース)によって、例えば溶出液A(0.1%HClの99%H2O/1%ACN(v/v)溶液)および溶出液B(0.07%HClの90%ACN/10%H2O(v/v))の勾配を用いて、流速24 ml/分によって行った。
【0172】
組み合わせペプチド合成:混合物ライブラリ
Boc化学によるペプチド合成のための材料は、多様な販売元から購入した。第一世代のペプチドライブラリを合成するために、N-Boc-αFmocグルタミン酸をその側鎖のカルボキシレートによってメチル-ベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂にローディングした後、それぞれ残りの合成のために、樹脂を各0.25 mmolの等モル画分4個に分割した。それぞれの画分に、(O-(7-アザベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3-3-)テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、4等量)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAT、4等量)、およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA、6等量)のDMF溶液を用いて、四つのN-Boc-保護D-アミノ酸、リジン、アルギニン、グルタミン酸、またはセリン(4等量)の一つをカップリングさせた。カップリング効率の差を補正するために、3〜7位に、N-Boc-保護アラニン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、およびトリプトファンのモル比1.35:1.97:4.47:1:1混合物(10等量対樹脂ローディング)をカップリングさせた(Pinilla, C.;Appel, J.R.;Brondelle, S.E.;Dooley, C.T.;Eichler, J.;Ostresh, J.M.;Houghten, R.A.、「Versatility of positional scanning synthetic combinatorial libaries for the identification of individual compounds.」、Drug Dev. Res. 1994、33:133〜145)。
【0173】
ペプチド合成に関しては、奇数の位置がL-キラリティのアミノ酸を含み、偶数の位置がD-キラリティのアミノ酸を含むことを除き、標準的な技法を利用した。8位において、N-Boc-保護D-アミノ酸、リジン、アルギニン、グルタミン酸、およびセリンのモル比2.24:2.34:1.31:1混合物をカップリングさせた(10等量対樹脂ローディング)。無希釈のTFAによってペプチド鎖からN-末端Bocを除去した後、グルタミン酸のカルボキシ末端上のα-Fmocを30%ピペリジンのDMF溶液によって除去して、HATU(2等量)、HOAT(2等量)、およびDIEA(4等量)のDMF/DMSO溶液および/またはベンゾトリアゾル-1-イル-オキシ-トリクス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP、1等量)、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT、1等量)、およびDIEA(2等量)の無水2 M LiBr/テトラヒドロフラン溶液を用いて、樹脂上でペプチドを24〜48時間環状化させた、ペプチドを標準的な高いHF切断技法によって切断した後、エーテルによって洗浄して10%酢酸によって抽出した後、DMFによって抽出した。抽出物をプールして凍結乾燥した。
【0174】
最大の生物活性(最低のMIC値)を示すペプチドライブラリ配列の特定のアミノ酸を、次の組のライブラリを作製するために残した。次の世代のペプチドライブラリを同様にして合成し、先の世代から決定した特定のアミノ酸をカップリングした後に樹脂を分割した。組み合わせライブラリのペプチドは、エレクトロスプレー-質量分析(ES-MS)またはMALDI-TOF質量分析によって同定した。
【0175】
ペプチドライブラリ、ペプチドプール、またはペプチドの粗抽出物が活性を示せば、個々のペプチドを再合成して、HPLC精製して活性に関して再度試験した。例えば、低い最小発育阻止濃度の値を有するペプチドの粗調製物、シクロ[D-Arg-L-Gln-D-Arg-L-Trp-D-Trp-L-Leu-Trp-L-Trp](配列番号:10)を再合成して、HPLC精製し、抗菌活性に関して試験したところ、粗抽出物と類似の生物活性を有することが判明した。
【0176】
ビーズ組み合わせ環状ペプチドライブラリあたりの1化合物
スプリット・プール法によってマクロビーズ上で1ビーズ-1化合物戦略を用いて、環状D,L-α-ペプチド組み合わせライブラリを調製した。K.S. Lam、M. Lebl、V. Krchnak、「The 'one-bead-one-compound' combinational library method」、Chem. Rev. 1997、97:411〜448を参照されたい。各ビーズは、単一の配列を含み、ウェルあたり1ビーズの密度を用いてマイクロタイタープレートに分散させた。ビーズ1個からのペプチドの切断によって、1ウェルあたりペプチド約70〜80 μgが得られた。この量のペプチドは、インビトロ抗菌アッセイ法約100回分として用いることができると考えられる。所定のライブラリ内で選択されたペプチド種を迅速に同定するために、質量分析ペプチドシークエンシング戦略を用いた。
【0177】
固相ペプチド合成は、TFA-不安定トリチルリンカーによって官能基化したポリスチレンマクロビーズ上で行ったが、これによって、合成、取り扱い、固相環状化、および最終側鎖脱保護およびペプチド単離はかなり促進された。伸長するペプチド鎖を第一のアミノ酸鎖(例えば、リジンまたはヒスチジン)を通してトリチル部分に結合して、固相支持体上で完全なペプチド配列の選択的な「頭部-尾部」環状化を可能にした。第一のN-α-Fmocアミノ酸のα-カルボキシ基は、アルルエステルとして保護した。樹脂のローディングおよびペプチド鎖の伸長は、固相支持体としてクロロトリチルポリスチレンマクロビーズ樹脂(500〜560 μm、ペプチドインターナショナル社)、カップリング試薬としてHBTU、およびFmoc脱保護のために20%ピペリジンのDMF溶液を用いて、標準的なFmoc固相ペプチド合成条件下で行った。最終のアミノ酸カップリングの終了後、樹脂をパラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)およびN-メチルモルフォリンに曝露して、C-末端アルキル保護基を除去した。次にN-末端Fmoc脱保護の直後にPyBop(登録商標)による環状化を行うと、所望の環状ペプチドが一般的に高い収率で得られた。マクロビーズ1個を、マイクロタイタープレートの個々のウェルに手動でまたはビーズディスペンサーによって入れた。保護された環状ペプチドを固相支持体から外して、95%TFA(5%陽イオンスキャベンジャー)溶液を用いて一段階で脱保護した。切断後、溶媒を真空で除去すると、環状ペプチドが高い収率で得られた。切断条件および作業技法を一般的に最適化すると、最終ペプチドから、非揮発性のスキャベンジャーおよび可能性がある有害な副産物が除去された。上記の技法によって得られたペプチドライブラリは、抗菌選択アッセイ法において用いるために十分に純粋であった。
【0178】
材料:
アセトニトリル(HPLC等級)、ジクロロメタン(最適等級)、ジクロロヘキシルアミン(DCHA)、ジエチルエーテル(無水)、ジメチルホルムアミド(シークエンシング等級)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、ペプチド合成等級)、およびピペリジン(無水)は、フィッシャー社から購入してさらに精製せずに使用した。トリフルオロ酢酸(TFA、ニュージャージーハロカーボン)、2-(1-H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU、ノババイオケム社)、ベンゾトリアゾル-1-イル-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP、ノババイオケム社)は、さらに精製せずに使用した。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)はストレムケミカルズ社から購入した。固相ペプチド合成のための市販のN-Fmocアミノ酸および塩化トリチルPS(1%DVB、置換0.5〜1.05 mmol/g)樹脂は、ノババイオケム社またはバケム社から購入した状態で用いた。塩化トリチルマクロビーズ樹脂は、ペプチドインターナショナル社から得た。
【0179】
Fmoc-リジン(Boc)-Oアリルの調製
Fmoc-リジン(Boc)-Oアリルは、Kates, S.A.;Sole, N.A.;Johnson, C.R.;Hudson, D.;Barany, G.;Albericio, F.、Tetrahedron Lett. 1993、34:1549〜1552のプロトコールに従って作製した。Fmoc-リジン(Boc)-OH(5 g、10.6 mmol)を臭化アリル(25 ml、0.29 mol)に加えた後DIPEA(3.73 ml)に加えた。この混合物を90℃で1時間加熱した。反応物を冷却して、ロータリーエバポレーションによって濃縮し、酢酸エチルによって希釈した後、2×0.1 N HCl、pH<9.5の2×飽和重炭酸ナトリウムの後、塩水によって洗浄した。有機相をシリカゲルパッドを通して濾過して、濃縮すると固体が得られた。この固体をエーテルによって洗浄すると白色粉末が得られ、これを次の段階に直接使用した。
【0180】
側鎖Boc保護基の脱保護
樹脂に0.5 mmol/gをローディングするために適当量のFmoc-Lys(Boc)-Oアリルを丸底フラスコに入れる。固体が溶解するために十分なジクロロメタンを加えた後等量のTFAを加えた。1時間攪拌した後、溶液を蒸発させて、Fmoc-Lys-Oアリルの残渣を真空で乾燥させた。
【0181】
樹脂のローディング
塩化トリチル樹脂を無水脱酸(Na2CO3)ジクロロメタン中で20分間膨張させた。Fmoc-Lys-Oアリルのジクロロメタン溶液を樹脂に加えた直後にDIPEA4等量を加えた。2時間攪拌した後、樹脂をジクロロメタンによって洗浄して、10%MeOH:10%DIPEA:80%ジクロロメタンと共に10分間振とうした。ジクロロメタンによって洗浄して真空で乾燥させた後、290 nmでのUV吸収によってモニターした放出Fmocに基づいて、樹脂のローディングを評価した。
【0182】
ペプチド合成
ペプチドは、Fmoc-Lys-Oアリルローディングトリチル樹脂に関する標準的な固相Fmocプロトコールを用いて合成した(Wellings, D.A.、Atherton, E.、Methods Enzymol. 1997、289、44〜67)。直線状ペプチドを合成した後、樹脂を無水ジクロロメタンにおいて20分間膨張させた。樹脂にPd(PPh3)4 0.5等量の90%CHCl3:10%4-メチルモルフォリンの脱気溶液を加えた。アルゴン下で5時間振とうさせた後、樹脂を1%ジメチルチオカルバミン酸ナトリウムのDMF溶液(3×2分)、1%DIPEA(3×2分)のDMF溶液によって洗浄した。最終的なFmoc脱保護の後(25%ピペリジンのDMF溶液、2×10分)、樹脂をDMF(3×3分)、10%DIPEA/DMF(3×3分)、0.8 M LiCl/DMF(3×3分)によって十分に洗浄した。樹脂を、0.8 M LiCl/DMFにおいてPyBOP5等量、HOAr5等量、DIPEA20等量によって少なくとも12時間処理した。DMF(3×3分)、DCM(2×3分)の後にMeOHによって洗浄した後、ペプチドを樹脂から切断して、2.5%TIS:2.5%H2O:95%TFAによって脱保護した。ペプチドをエーテルによる沈殿によって、または切断混合物の蒸発によって回収した。
【0183】
抗菌アッセイ法
ペプチドの抗菌アッセイ法は、国立実験基準制御委員会(National Committee for the Control of Laboratory Standards(NCCLS))[National Committee for Clinical Laboratory Standards、Methods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically.、第4版、承認済み標準(1997)、文書番号M7-A4(NCCLS、ビラノバ、ペンシルバニア州、1997)]のガイドラインに本質的に記載されるブロス希釈アッセイ法を用いて決定した。ペプチドの2倍連続希釈液を含む試験管(マクロ希釈法)またはマイクロタイタープレート(ミクロ希釈法)に様々な細菌培養物を接種した。対照には、非接種培地(滅菌)、溶媒対照、および試験微生物に対する最小発育阻止濃度が既知である様々な市販の抗生物質が含まれた。双方の方法を用いたインビトロ結果は、再現可能であり、全ての場合について、マクロ希釈アッセイ法からのMICは、ミクロ希釈試験によって決定した阻害濃度に等しい、または1希釈低かった(V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991を参照されたい)。ミクロ希釈法は、それぞれのアッセイ法に必要なペプチド量がより少なく、しかも多数を同時に接種できるという長所を有し、ほとんどの試験において用いられた。調べた細菌株のいくつかを表3にさらに記述する。
【0184】
(表3)
【0185】
MIC測定:ブロス希釈法
ペプチド溶液の調製
保存ペプチド溶液を5%DMSOの蔗糖水溶液において調製した。ペプチド濃度の決定は、既知濃度の内部標準物質を用いる定量的HPLC分析によっておよび/またはトリプトファン含有ペプチド溶液のH2O中でのUV吸収(λ=280εTrp:5690)を測定することによって行った。上記のDMSO/蔗糖水溶液(9%)混合液において約400〜2 μg/mlの範囲の濃度で連続二倍希釈を行い、マクロ希釈法に関しては試験管(100 μl)に、またはミクロ希釈法に関してはマイクロタイタープレート(20 μl)に採った。
【0186】
接種調製物
適した培地において増殖させた異なる微生物の一晩培養物を、適当な接種数2.5×105 cfu/mlとなるように4000倍希釈した。
【0187】
マクロ希釈法
マクロ希釈法は、国立臨床臨床実験基準制御委員会(National Committee for the Clinical of Laboratory Standards)のMethods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically.、第4版、承認済み標準(1997)、文書番号M7-A4(NCCLS、ビラノバ、ペンシルバニア州、1997)]に記載されるものと類似の技法を用いて行った。上記の接種物2 mlを、異なるペプチド溶液を含む試験管に入れた。37℃で振とうしながら18時間インキュベートした後、細菌の増殖を認めない最低濃度をMICとして記録した。
【0188】
ミクロ希釈法
ミクロ希釈法は、国立実験基準制御委員会(National Committee for the Control of Laboratory Standards)のMethods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically.、第4版、承認済み標準(1997)、文書番号M7-A4(NCCLS、ビラノバ、ペンシルバニア州、1997)]に記載される技法と類似の技法を用いて行った。上記の接種物80μlを異なるペプチド溶液を含む96ウェルマイクロタイタープレートに入れて、37℃で振とうしながら18時間インキュベートして(プレートは、培養培地が過剰に蒸発するのを防止するためにパラフィルムで密封した)、MICを記録した。各アッセイ法は少なくとも2回行って、誤差は典型的に±1希釈であった。
【0189】
MBC決定
最低殺細菌濃度(MBC)は、国立実験基準制御委員会(NCCLS)のガイドラインに従って決定した。Methods for Determining Batericidal activity of Antimicrobial Agents.承認済み標準(1999)、文書番号M26-A(NCCLS、ビラノバ、ペンシルバニア州、1999)]のMIC、2×MIC、および4×MICアッセイウェルから50μlを採取して、ローニング(lawning)技術を用いて抗生物質不含寒天プレートに播種した。増殖および滅菌対照は、同じように採取した。播種したプレートを24〜48時間インキュベートして、99.9%殺細胞が得られる最低濃度としてMBCを決定した。
【0190】
膜脱分極試験
膜の脱分極は、シアニン膜電位感受性色素3,3'-ジプロピルチアジカルボシアニドヨウ化物(diSC3)の蛍光放出強度の変化によってモニターした。無傷の黄色ブドウ球菌を攪拌しながら37℃で対数中期まで増殖させた(O.D.600=0.5)。細胞を遠心して、緩衝液(20 mMグルコース、5 mM HEPES、pH 7.3)によって1回洗浄し、0.1 M KClを含む類似の緩衝液においてO.D.600が0.05となるように再浮遊させた。色素が細菌膜に取り込まれたことを示す蛍光の安定な減少が得られるまで(約15分)細胞を1μM diSC3と共にインキュベートした。ペプチドを保存液(1 mg/ml)から加えて、5%DMSOの蔗糖水溶液(9%)に溶解して、望ましい0.1〜10×MIC濃度を得た。
【0191】
溶血感受性
哺乳類細胞に対する細菌に関する環状ペプチドの選択性を、Tosteson, M.T.、Holmes S.J.、Razin, M.およびTosteson, D.C.、「Mellittin Lysis of Red Cells」、J. Membrane Biol. 87:35〜44(1985)に記述される赤血球溶血活性を測定することによって評価した。マウスヘパリン加血を1000×gで10分間遠心した。上清およびバフィーコートを除去した。赤血球を0.9%生理食塩液によって3回洗浄してから、10%FBS(v/v)を含む生理食塩液に5%の濃度で再浮遊させた。赤血球を96ウェルプレートにおいて試験ペプチドの連続希釈液によって37℃で30分間処置した。対照試料には、0%および100%溶血としてそれぞれ、生理食塩液および1%トライトンX-100が含まれた。場合によっては、メリチンをさらなる対照として用いた。メリチンは、インビトロで約10 μg/mlの濃度で哺乳類赤血球に対して溶血作用を示す直鎖状ペプチドである。プレートを1000gで10分間遠心した。少量の上清を生理食塩液によって2倍希釈して、560 nmでの吸光度を測定した。
【0192】
インビボ実験のためのペプチド溶液の調製
保存ペプチド溶液は蔗糖水溶液(9%)において調製した。ペプチドの溶解を促進するために、最初の浮遊液を15〜20分間超音波処理した。滅菌0.45 μmフィルター(COSTER、μスター、コーニングインク)を通過させることによって得られた溶液を滅菌した。ペプチド濃度の決定は、異なるアリコットのH2O中でのUV吸収(トリプトファン含有ペプチドに関してλ=280 εTrp、5690 cm-1M-1)によって行い、w/vに対応する濃度の60〜70%であることが判明した。または、様々なペプチド保存溶液の濃度は、既知濃度の内部標準を用いて定量的HPLC分析によって決定した。さらに、ペプチド溶液は滅菌蔗糖水溶液(9%)によって適当に希釈した。
【0193】
インビボ保護試験のための細菌調製物
細菌は、既に記述されている技法と類似の技法を用いてインビボのために調製した。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991を参照のこと。黄色ブドウ球菌MRSA菌(ATCC 33591)を抗生物質培地-3(AM-3、ディフコラボラトリーズ社)5 ml中で37℃で攪拌しながら静止相まで12時間増殖させた。細胞を遠心によって回収して、生理食塩液によって2回洗浄し、生理食塩液約10 mlにO.D.650が約1.2となるように再浮遊させた。この浮遊液を、滅菌5%ムチン(ディフコ社)の生理食塩液溶液において濃度2〜4×107 cfu/ml(実際の接種サイズは、寒天プレート上でのコロニー計数によって確認した)となるように10回希釈した。
【0194】
バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(VREF)細菌(ATCC 51575)を脳心臓浸出培地(BHI、ディフコラボラトリーズ社)60 mlにおいて攪拌しながら37℃で静止相まで16時間増殖させた。細胞を遠心によって回収し、生理食塩液によって2回洗浄し、理論的O.D.650が9〜10となるように(10〜20倍希釈試料のO.D.650を得て、これを当初の濃度に相関させることによって決定)生理食塩液6 mlに再浮遊した。この浮遊液を滅菌した5%ムチン(ディフコ社)の生理食塩液溶液によって、濃度が5〜7×108 cfu/mlとなるように15倍希釈した(実際の接種量は寒天プレート上でのコロニー計数によって確認した)。
【0195】
インビボ動物試験
本発明のペプチドは、N. Frimodt-M Ilerら、「The Mouse Peritonitis/Sepstis Model」、Zakら編、「HANDBOOK OF ANIMAL MODELS OF INFECTION」、127〜37頁(アカデミック出版、1999)に記載される技法と類似の技法を用いて、それらが細菌感染症に対してマウスを保護するか否かを確認するために、マウスにおいて試験した。
【0196】
雄性Balb-cマウス(6週齢、約20 g)を試験に用いた。黄色ブドウ球菌MRSA株(ATCC 33591)を攪拌しながら37℃で静止期まで12時間増殖させた。細胞を遠心によって回収して、生理食塩液によって2回洗浄し、O.D.650が1.4となるように再浮遊させた。この浮遊液を生理食塩液によって10倍に希釈して濃度3〜5×107 cfu/mlとなるように再浮遊させた。それぞれのペプチドに関して、1群あたりマウス8匹の5群に上記の黄色ブドウ球菌MRSA調製物0.5 ml(致死量)を腹腔内に感染させた。感染後45分〜1時間後、各群を異なる用量のペプチドによって処理して、対照群には溶媒のみを投与した。マウスを14日間モニターした。死亡をエンドポイントとして定義した。Reed・Muench法に従って保護用量の中央値(PD50)を計算した。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991を参照されたい。IVおよびSQモデルに関しては、ペプチドをIP感染の直後に投与した。
【0197】
毒性試験
ペプチドを、既に記述された技法と類似の技法を用いてインビボで毒性に関して調べた。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991を参照されたい。1群4〜8匹のマウス(雄性Balb-c)にペプチドのIV、IP、またはSQ一回ボーラス投与を行い、14日間モニターした。致死下用量の毒性は、溶媒のみを投与した対照マウスと比較して、ペプチド投与後のマウスの挙動および外観に基づいて評価した。急性毒性の兆候には、活性の欠如、赤色の脚および尾、速い呼吸が含まれた。死亡は、ペプチドの致死量に関するエンドポイントとして定義した。
【0198】
病理学試験
ペプチド塩酸シクロ[RRKWLWLW]および塩酸シクロ[KQRWLWLW]の病理作用をBalb-c(雄性20〜25 g)について評価した。ペプチドを75 mg/kgの9%蔗糖溶液という致死量でIP投与し、対照マウスには溶媒のみを投与した。50〜60分後(塩酸シクロ[KQRWLWLW]の場合)および翌日(塩酸シクロ[RRKWLWLW]の場合)に、マウスを屠殺して分析した(Dr. Osborn、Vet. Pathologist、Department of Animal Resources、TSRI)。病理学試験には、血球数の計数、ならびに異なる組織および臓器の組織学検査が含まれた。
【0199】
複数回投与の毒性はまた、ペプチド塩酸シクロ[KSKWLWLW]についても試験した。マウス(雄性CD-1、チャールス・リバー研究所、20〜25 g)をこの試験のために用いた。ペプチドの9%蔗糖溶液200 mg/kg/日の10日間連続投与を、マウス3匹にIP注射して、対照マウス2匹には溶媒のみを投与した。11日目に、マウスを屠殺して分析した(Dr. Osborn、Vet. Pathologist、Department of Animal Resources、TSRI)。病理学試験には、血球数の計数、および異なる組織および臓器の組織学検査が含まれた。
【0200】
薬物動態
薬物動態は、既に記述された技法と類似の方法を用いて行った。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991;W.A. Ritschel, G.L., Kearns、「Handbook of Basic Pharmacokinetics」、American Pharmaceutical Assoc. 第5版、ワシントンDC、1999を参照されたい。
【0201】
塩酸c[RRKWLWLW]を用いた薬物動態試験
IV注射:
ペプチドの9%蔗糖溶液(1 mg/ml)を用量3.6 mg/kgでBalb/cマウスの尾静脈にIV注射した。次に、個々のマウスについて個別に尾から出血させることによって、1群のマウス(各群3匹)から直ちに血液を採取した(50〜100 μl/マウス)。注射後20分、40分、70分、90分、120分、180分、および260分に、他の群のマウスからさらに採血を行った。各血液試料からの血漿を、赤血球を4000回転/分で5分間遠心沈降させることによって回収直後に分離した。血漿を等量の生理食塩液によって希釈して、分析するまで冷蔵保存した。これらの条件で1ヶ月間試料を保存しても、ペプチドの濃度は変化しなかった。
【0202】
IP注射:
ペプチドの9%蔗糖溶液(8.1 mg/mL)をBalb/cマウスに100 mg/kgの用量でIP注射した。次に、個々のマウスについて個別に尾から出血させることによって、1群のマウス(各群3匹)から直ちに血液を採取した(50〜100 μl/マウス)。他の群のマウスから注射後0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、10時間後、15時間後に採血を行った。各血液試料からの血漿は、赤血球を4000回転/分で5分間遠心沈降させることによって、回収直後に分離した。血漿を等量の生理食塩液によって希釈して、分析するまで冷蔵保存した。これらの条件で1ヶ月間試料を保存しても、ペプチドの濃度は変化しなかった。
【0203】
HPLCによる血漿中の塩酸シクロ[RRKWLWLW]の検出:
生理食塩液によって希釈した血漿(50〜100 μl)に溶出液A(0.1%HClの99%H2O/1%ACN(v/v)溶液)(150〜300 μl)を加えて、攪拌して、遠心によって部分的沈殿物を除去した。透明な溶液をHPLCに注入して、ペプチドを、溶出液A(0.1%HClの99%H2O/1%ACN(v/v)溶液)および溶出液B(0.07%HClの10%H2O/90%ACN(v/v)溶液)の勾配を用いて、流速1.5 ml/分で280 nmにおいて8〜10分の間隔で検出した。以下の勾配を用いた:30〜30%B(5分)の後に、30〜37%B(5分)の後に、37〜40%B(12.5分)。
【0204】
塩酸c[KSKWLWLW]を用いた薬物動態試験
IV注射:
ペプチドの9%蔗糖溶液(2 mg/ml)を用量5 mg/kgでBalb/cマウスの尾静脈にIV注射した。次に、個々のマウスについて個別に尾から出血させることによって、1群のマウス(各群3匹)から直ちに血液を採取した(50〜100 μl/マウス)。注射後30分、60分、120分、230分、および300分に他の群のマウスからさらに採血を行った。各血液試料からの血漿は、赤血球を4000回転/分で5分間遠心沈降させることによって回収直後に分離した。血漿を等量の生理食塩液によって希釈して、分析するまで冷蔵保存した。これらの条件で1ヶ月間試料を保存しても、ペプチドの濃度は変化しなかった。
【0205】
IP注射:
ペプチドの9%蔗糖溶液(9.8 mg/mL)をBalb/cマウスに100 mg/kgの用量でIP注射した。次に、個々のマウスについて個別に尾から出血させることによって、1群のマウス(各群3匹)から直ちに血液を採取した(50〜100 μl/マウス)。他の群のマウスから注射後0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、10時間後にさらに採血を行った。各血液試料からの血漿は、赤血球を4000回転/分で5分間遠心沈降させることによって回収直後に分離した。血漿を等量の生理食塩液によって希釈して、分析するまで冷蔵保存した。これらの条件で1ヶ月間試料を保存しても、ペプチドの濃度は変化しなかった。
【0206】
HPLCによる血漿中の塩酸シクロ[KSKWLWLW]の検出:
生理食塩液によって希釈した血漿(50〜100 μl)に溶出液A(0.1%TFAの96.5%H2O/0.9%ACN/2.4%MeOH(v/v)溶液)を加えて、攪拌して、遠心によって部分的沈殿物を除去した。透明な溶液をHPLCに注入して、ペプチドを、溶出液A(0.1%TFAの96.5%H2O/0.9%ACN/2.4%MeOH(v/v)溶液)および溶出液B(0.05%TFAの8%H2O/72%ACN/20%MeOH(v/v)溶液)の勾配を用いて、流速1.5 ml/分で280 nmにおいて18〜20分の間隔で検出した。以下の勾配を用いた:0〜0%B(5分)の後に、0〜100%B(25分)。
【0207】
薬物動態パラメータの計算:
分析的血漿のHPLC試験を行った場合のペプチドに対応するHPLCピーク面積を、既知量のペプチドの較正量の面積と相関させて、決定した濃度を採血時間に対してプロットした。第一の近似において、IV注射によって得られた曲線は、一次動態式(1)に適合し、単コンパートメントモデルであることを示している。V. Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、ウィリアムスアンドウィルキンス、ボルチモア、1991;W.A. Ritschel, G.L., Kearns、「Handbook of Basic Pharmacokinetics」、American Pharmaceutical Assoc. 第5版、ワシントンDC、1999を参照されたい。
Ct=Co*e-Kel*t (1)
【0208】
等式(1)の実験点に対する最善の適合をシグマプロットを用いて計算した。以下のパラメータをIV注射曲線の最善の適合から計算した:
AUCIV(μg*h/ml)−IV注射に関する曲線下面積
C0(μg/ml)−ゼロ時間での血液中のペプチド濃度
Kel(l/分)−消失速度定数
T1/2(分)−半減期(C=C0/2):T1/2=(ln2)/Kel
V(L/kg)−分布容積、V=D/C0、Dはmg/kgで表した注射ペプチド量である
CL(ml/分)−ペプチドの総クリアランスを二つの方法で計算して平均した
CL=用量/AUCIV、用量は、マウスに投与したペプチドの総用量をμgで表している
CL=Kel*V*m、mはgで表したマウスの体重である。
等式(2)は、IP経路によって注射したペプチドの生物学的利用率(F)を決定するために用いた:
F=100%*(AUCIP*DIV)/(AUCIV*DIP) (2)
式中、AUCIPは、IP注射による濃度対時間曲線下面積である。DIVおよびDIPはそれぞれ、mg/kgで表した、IVおよびIP経路によって投与したペプチドの用量である。
【0209】
実施例 2 .環状ペプチドのインビトロ抗菌活性
本実施例の第一の実験において用いられる8残基環状ペプチドは、連続した極性残基3個とL-トリプトファンおよびD-ロイシンリピートを有し、これらは疎水性表面を形成して細胞膜への有効な分配を促進する。さらに、ペプチドは最もしばしば、細菌膜に対する特異性を増強するために少なくとも一つの塩基性アミノ酸残基を含むようにデザインされた。
【0210】
これらのデザイン特徴の有用性は、配列Lys-D-Gln-Arg-D-Trp-Leu-D-Trp-Leu-D-Trp(配列番号:9)の配列を有する代表的な環状ペプチドを用いるインビトロ抗菌アッセイ法によって証明された。環状ペプチド配列番号:9は、グラム陽性菌である枯草菌(Bacillus subtilis)および黄色ブドウ球菌、ならびにグラム陰性菌である肺炎球菌およびバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカーリスに対して強力な活性を示した(表4)。
【0211】
(表4)Lys-D-Gln-Arg-D-Trp-Leu-D-Trp-Leu-D-Trp(配列番号:9)のインビトロ活性
a 最小発育阻止濃度;
b MDS Panlabs薬理学サービスからのデータ;
c ATCC 43223; d ATCC 11778;
e ATCC 25923; f ATCC 19115;
g バンコマイシン耐性臨床単離菌;
h エリスロマイシンおよびアンピシリン耐性臨床単離菌;
i ATCC 14028;
j 赤血球の50%が溶血される溶血量(HD50)(μg/ml);
k LD50(μg/ml)
【0212】
抗菌剤としてこれらのペプチドの抗菌活性をさらに調べるため、および表面特性、抗菌活性、および膜選択性のあいだの関係を調べるために、一連の6残基および8残基両親媒性環状ペプチドを作製した。ペプチドを標準的な固相BOCまたはFMOC合成プロトコールによって合成して、溶液または固相支持体上で環状化して、RP-HPLCによって精製して、MALDI-TOFまたはESI-質量分析によって特徴を調べた。これらのペプチドの配列を表5に示す。一文字コードを用いる環状ペプチド配列の簡略表示を用いると、容易な配列比較を行うことができた。下線は、アミノ酸がD-アミノ酸残基であることを示している。
【0213】
(表5)ペプチド配列
【0214】
抗菌活性は、大腸菌および、現在米国において年間およそ200万人の院内感染の主要成分である、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して試験した(バンコマイシンに対する感受性が低下した新たな黄色ブドウ球菌株の背景および歴史、ウェブサイト、narsaweb.narsa.net)。抗菌アッセイ法は、標準的なミクロ希釈法を用いて上記の通りに行った。結果を表6、7、8および9に示す。
【0215】
(表6)D-、L-α-アミノ酸を含むペプチドの抗菌活性
a ATC33591。b JM109(DE3)。c Uは、アラニン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン、およびトリプトファンからなる群より選択される疎水性アミノ酸である。d 約1.7〜2.5 μg/mlでの古草菌に対する活性。ペプチド混合物配列番号:30〜37は、複雑なペプチド混合物であり。抗菌活性のためのその濃度を特に決定することができなかった。これらの配列のMIC値は、5倍まで異なる可能性がある。
【0216】
生物活性および膜選択性における極性側鎖の役割は、表6に記載する抗菌活性の説明に基づいて評価してもよい。
【0217】
配列番号:5および6における環状ペプチドはそれぞれ、セリン残基2個のあいだに、またはセリンとトレオニン残基のあいだに塩基性残基1個を有する。ペプチド配列番号:5[シクロ-(D-Ser-Lys-D-Ser-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、黄色ブドウ球菌MRSAに対して良好な活性を示し、リジンのヒスチジン置換体であるペプチド配列番号:6[シクロ-(D-Thr-His-D-Ser-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]では、その活性が有意に低下する。
【0218】
配列番号:8〜15の環状ペプチドはそれぞれ、塩基性アミノ酸2個および中性の極性アミノ酸1個を有する。これらの環状ペプチドは、抗菌活性および赤血球の溶血が異なる。グルタミン酸の1置換体は、ペプチド配列番号:14[シクロ-(D-Ser-Lys-D-His-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]と配列番号:16[シクロ-(D-Glu-Lys-D-His-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]の黄色ブドウ球菌MRSAに対する大きい活性の差によって示されるように、抗菌活性に対して有害な作用を有する。グルタミン酸含有ペプチドの活性が低下することは、カルボキシレート側鎖の細菌膜成分との不都合な静電気的相互作用による可能性がある。
【0219】
ペプチド配列番号:17〜22において塩基性残基の数を2〜3個増加させると、黄色ブドウ球菌MRSAに対して高い活性を示した。配列番号:18[シクロ-(D-Arg-Arg-D-Lys-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]および配列番号:21[シクロ-(D-His-Lys-D-His-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp]も同様に、大腸菌に対して中等度の活性を示した。配列番号:26〜29を有する6量対ペプチドのインビトロ抗菌活性も同様に、環状ペプチドにおいて塩基性アミノ酸を用いると抗菌活性を増加して、細菌膜に対する選択性が改善することを示している。連続するリジン残基2個を有するペプチド配列番号:26[シクロ-(D-Lys-Lys-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、広いスペクトルの活性を示し、溶血特性は低い。一方、ペプチド配列番号:26においてリジンの代わりにヒスチジンを有するペプチド配列番号:27[シクロ-(D-Lys-His-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、黄色ブドウ球菌MRSAに対して高い活性を有するが、大腸菌に対しては不活性である。ペプチド配列番号:26においてリジンをセリンに置換すると、より活性の弱いペプチド配列番号:28[シクロ-(D-Lys-Ser-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]が得られる。しかし、ペプチド配列番号:29[シクロ-(D-Arg-Arg-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、アルギニン残基2個を有し、大腸菌に対して強力かつ選択的な活性を示し、溶血レベルは低い。
【0220】
上記のペプチドについて認められた活性および膜の選択性のスペクトルは、単一のアミノ酸置換でさえも、哺乳類細胞に対する抗菌活性および選択性に影響を及ぼしうることを示している。
【0221】
インビトロで環状ペプチドの利用率および安定性に対する血漿蛋白質の影響も同様に調べた。抗菌活性は、培養培地に大量の(50%v/vまで)ウシ胎児血清(FBS)が存在しても不変であった。しかし、調べたほとんどのペプチドは、FBSの非存在下における類似のアッセイ法と比較すると、アッセイ混合物中に5〜10%FBSが存在すれば溶血活性レベルが減少した。例えば、10%FBSの存在下で、ペプチド配列番号:8[シクロ-(D-Lys-Gln-D-Arg-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp)]は、溶血活性の5倍減少を示す(HD50=10〜50 μg/ml)。
【0222】
配列番号:13、18、26、および29を有する環状ペプチドを、蛋白質溶解に対する感受性に関してアッセイした。ペプチドは非生物構造および立体構造の選択性を示し、トリプシン、α-キモトリプシン、サブチリシン、および血漿の存在下で安定であった。RP-HPLCから得られたクロマトグラムでは24時間にわたって有意なペプチドの分解を認めなかったが、対照の直線状L-α-アミノ酸ペプチドは、類似の反応条件で10分未満に分解して、マウス血漿中に入れると4時間以内に分解した。
【0223】
グラム陰性およびグラム陽性菌のさらなる試験の結果を、FDA承認抗生物質を用いた対照アッセイ法と共にそれぞれ、表7および8に示す。配列比較を容易にするために一文字アミノ酸コードを用いる環状ペプチド配列の簡略表示を用いた。下線は、アミノ酸がD-アミノ酸残基であることを示し、かぎ括弧はペプチドが環状であることを示す。
【0224】
(表7)グラム陰性菌
【0225】
(表8)グラム陽性菌
【0226】
本発明の環状ペプチドの異なるタイプの抗菌特性を表9にさらに示す。それぞれの環状ペプチドは、アミノ酸がD-キラリティを有することを示す場合には下線を用いた簡略表示で示し、環状ペプチドを特定する場合には、カギ括弧を用いて、そして配列番号を示す場合には括弧内の数字で記述する。これらのペプチドを、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33591)およびバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカーリス(VRE)(ATCC 51575)に対して、哺乳類の赤血球に対する溶血活性に関して調べた。
【0227】
(表9)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカーリス(VRE)に対するインビトロ活性
調べたペプチドは全て、特に明記している場合を除きTFA塩である。培地「a」は抗菌培地-3(AM-3)であった。培地「b」は陽イオン補正ミューラーヒントンブロス(MHBII)であった。培地「c」は脳心臓浸出物(BHI)であった。
【0228】
別の一連の実験において(表10)、本発明の環状ペプチドの活性を多様な細菌種に対して試験した。調べた細菌種は以下の通りであった:バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェカーリス(VRE、ATCC 51575);メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(ATCC 33591、MRSA);大腸菌JM109(DE3);セレウス菌(ATCC 11778);および肺炎球菌(ATCC 6301)。マウス赤血球を、実施例1に記載したように溶血アッセイ法のために用いた。
【0229】
(表10)最小発育阻止濃度(MIC)(mg/ml)
【0230】
本発明の環状ペプチドのいくつかが大腸菌JM109(DE3)、エンテロコッカス・フェシウムSP180、および黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33591および33592)を殺す速度を、室温および/または37℃でさらに調べた。温度がより低ければ、細菌が急速に増殖しないため、細菌培養物を成熟細菌に関して濃縮する傾向がある。したがって、室温では、培養物はより成熟した細菌を有すると考えられる。培養物における未成熟細菌の有無は、未成熟細菌が多くの型の抗生物質に対してよい感受性が高い傾向があることから、細菌が殺される速度に影響を及ぼす可能性がある。
【0231】
以下の配列を有する環状ペプチドを試験に用いた:
様々なタイプの細菌を殺す時間曲線を図8〜20に示す。
【0232】
図8aに示すデータを作製するために、培養物1 mlあたりのコロニー形成単位(cfu)の数の対数を、MIC濃度のシクロ[KHLWLW](黒丸)、シクロ[KRKWLWLW](黒三角)、およびシクロ[KQRWLWLW](白四角)による黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33591)の処置後の時間の関数として決定した。図8aに示すように、環状ペプチドシクロ[KRKWLWLW]およびシクロ[KQRWLWLW]は、黄色ブドウ球菌(MRSA)の実質的に全てまたはほとんどを約5分以内に有効に殺した。cfu数の減少は、3対数単位より大きかった。環状ペプチドシクロ[KHLWLW]は全ての黄色ブドウ球菌(MRSA)を約60分以内に有効に殺した。
【0233】
図8bにおいて、培養物1 mlあたりの大腸菌コロニー形成単位(cfu)の数の対数を、MIC濃度でのシクロ[KRKWLWLW](黒三角)、シクロ[KQRWLWLW](黒丸)、シクロ[KHLWLW](黒四角)、およびシクロ[KKLWLW](白四角)による処置時間に対してプロットした。示されるように、シクロ[KQRWLWLW]は全ての大腸菌を約30分以内に有効に殺す。環状ペプチドシクロ[KHLWLW]は、全ての大腸菌を約90分以内に有効に殺す。環状ペプチドシクロ[KRKWLWLW]およびシクロ[KKLWLW]は、全ての大腸菌を約130分以内に有効に殺す。図8と9とを比較すると、これらの環状ペプチドが、大腸菌のようなグラム陰性菌より幾分速く黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33592)のようなグラム陽性菌を殺すことを示している。とはいえ、これらの環状ペプチドは双方のタイプの菌を非常に迅速に殺す。
【0234】
図9および10は、室温および37℃でのシクロ[KSKWLWLW]環状ペプチド(配列番号:12)の様々な濃度で黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33592)を殺すための時間経過を示す。例えば、37℃では、約4 μg/mlのKSKWLWLW環状ペプチドは、全ての細菌を約1時間以内に有効に殺すように思われる。しかし、細菌集団は、約6時間までにリバウンドする。これは、そのアッセイ法において用いたペプチドの量がMIC値未満であったことから、培養物内に残っている環状ペプチドが消耗した後に少数の生存菌が増殖したことによる可能性がある。室温では、約4 μg/mlは全ての黄色ブドウ球菌(MRSA)を約2時間まで殺すように思われ、リバウンドを認めない。KSKWLWLW環状ペプチドは、室温および37℃で細菌に対して非常に有効である。
【0235】
図11および12は、室温および37℃で様々な濃度のKSKWLWLW(配列番号:12)によってE.フェシウムSP180を殺す時間経過を示す。アッセイ法は、脳心臓浸出ブロス中で行った。示したように、室温と比較して37℃では、この環状ペプチドがE. ファシウムSO180を殺すために必要な時間は幾分短く、および/または濃度は幾分低い。E.ファシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、およびいくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。例えば、37℃で約2 μg/mlのKSKWLWLWは、生存しているcfuの数を評価するために試験培養物から少量を除去する間もなく速く全ての細菌を有効に殺すことができる。しかし、室温では、約2 μg/mlのKSKWLWLWを加えた直後にかなりの数の生存細菌を検出することができる。その上、1 μg/mlのKSKWLWLWを用いる場合、37℃では2時間後に有効にcfuを検出できないが、室温では、全体的な時間経過を通して生存細菌を検出することができる。1 μg/mlのKSKWLWLWを37℃で用いると、細菌の生存率のリバウンドを認める。これは、そのアッセイ法において用いられたペプチドの量がMIC値以下であったことから、培養物内の残留環状ペプチドが消耗した後に少数の生存菌が増殖したことによる可能性がある。KSKWLWLW環状ペプチドは、室温および37℃の双方でE. ファシウムSP180細菌に対して非常に有効である。
【0236】
図13および14は、室温および37℃でRRKWLWLW(配列番号:18)の様々な濃度によって黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33592)を殺す時間経過を示す。例えば、37℃では、約4 μg/mlのRRKWLWLW(配列番号:18)環状ペプチドは、1時間以内に全ての細菌を有効に殺すように思われる。しかし、細菌集団は、約8時間までにリバウンドする。これは、そのアッセイ法において用いられたペプチドの量がMIC値以下であったことから、培養物内の残留環状ペプチドが消耗した後に少数の生存菌が増殖したことによる可能性がある。室温では、約4 μg/mlは、環状ペプチドに曝露後約1時間までに全ての黄色ブドウ球菌(MRSA)を殺すように思われ、リバウンドを認めない。RRKWLWLW(配列番号:18)環状ペプチドは、室温および37℃で細菌に対して非常に有効である。
【0237】
図15および16は、室温および37℃で様々な濃度のRRKWLWLW(配列番号:18)によってE. ファシウムSP180を殺す時間経過を示す。E. ファシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)およびいくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。アッセイ法は脳心臓浸出ブロスにおいて行った。説明したように、この環状ペプチドがE. ファシウムSP180を37℃で殺すために必要な時間は幾分短く、および/または濃度は幾分低い。例えば、室温および37℃の双方において、約2 μg/mlのRRKWLWLW(配列番号:18)は、全ての細菌を1時間以内に有効に殺すことができる。したがって、RRKWLWLW(配列番号:18)環状ペプチドは、室温および37℃の双方でE. ファシウムSP180菌に対して非常に有効である。
【0238】
多くの通常の抗生物質は単に静菌的であり、それらは細菌の増殖を停止させるのであって、細菌を迅速に殺す訳ではないことを意味している。これを図17および18に説明し、ここでは様々な濃度のペニシリンGによって黄色ブドウ球菌(MRSA)(ATCC 33592)を殺すための時間経過を提供する。示したように、室温では、512 μg/mlまでアッセイしたいずれのペニシリンGの濃度も、試験の時間経過全体において(0〜8時間)黄色ブドウ球菌(MRSA)の全集団を殺すまたは減少させるために有効ではなかった。しかし、用いた最高濃度(512 μg/ml)では、ペニシリンGは、37℃で4時間以内にcfuの数を減少させるために有効であった。対照的に、図8〜16に示すように、本発明の環状ペプチドは、多様な成熟および非成熟細菌をかなり低い濃度で迅速に殺す。
【0239】
実施例 3 .膜の脱分極活性
如何なる作用機序にも拘束されることを意図しないが、本発明の環状ペプチドが微生物を殺すために作用する一つのメカニズムは膜の脱分極であると考えられる。環状ペプチドが微生物を殺すもう一つのメカニズムは、環状ペプチドをリガンドとして認識する受容体を通してである。Friederichら、Antimicrob. Agents Chemother. 44:2086〜2092(2000);Amsterdam, D.「Antibiotics in Laboratory Medicine」、第3版、(Lorian, V.編)、53〜105頁(ボルチモア、メリーランド州、アメリカ、1991)を参照されたい。細菌の膜における環状ペプチドの受容体/リガンド媒介作用機序は、いくつかの理由で可能性が低い。第一に、多様な構造を有する環状ペプチドは、微生物に対して活性であるが、ほとんどの受容体は構造に基づいて可能性があるリガンドを区別し、規定の構造特徴を有するリガンドのみを認識すると考えられる。第二に、本発明のペプチドは、細菌を非常に迅速に殺すが、受容体/リガンド媒介結合/阻害メカニズムは、典型的に、完全な殺細菌または静菌活性を得るために数時間を要すると予想される。本実施例は、膜の脱分極作用機序を支持する生物物理学的データを提供する。
【0240】
活性を有する環状ペプチドの構造的多様性は、配列番号:8(シクロ-[D-Lys-Gln-D-Arg-Trp-D-Leu-Trp-D-Leu-Trp])および配列番号:9(シクロ-[Lys-D-Gln-Arg-D-Trp-Leu-D-Trp-Leu-D-Trp])を有するエナンチオマーペプチドによって説明される。これらの二つの環状ペプチドは、それぞれの位置でのこれらのペプチドのキラリティの差にもかかわらず、類似のインビトロ活性を有する。その上、先の実施例に記載した時間-殺菌試験によって示されるように、殺菌速度は、受容体/リガンド媒介作用様式とは一致しない。そのような受容体-リガンドメカニズムは、細菌を殺すためにおそらく実施例8〜16に示す短い時間より長い時間を要すると考えられる。例えば、配列番号:8および配列番号:19を有する8量体ペプチドならびに配列番号:26および27を有する6量体ペプチドは、MICに等しい濃度またはMICより高い濃度でそれぞれ、5分および60分で、黄色ブドウ球菌MRSAに対して完全な殺菌活性を有する。時間-殺菌試験のさらなる例は、先の実施例に示す。
【0241】
本実施例において、環状ペプチドが、細胞の脱分極活性を示すか否かを決定するために試験した。シアニン膜色素3,3'-ジプロピルチアジカルボシアニドの蛍光は、細菌膜電位の変化に対して感受性があり、生きている黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の膜脱分極に対するペプチド配列番号:8、18、および26の影響を追跡するために本実施例において用いた。Simら、Biochemistry 13:3315〜3330(1974);Waggoner、Annu. Rev. Biophys. Bioeng. 8:847〜868(1979);Loew、Adv. Chem. Ser. 235(Biomembrane Electrochemistry)、151〜173(1994)を参照されたい。
【0242】
それぞれの場合において、色素飽和した生存黄色ブドウ球菌を様々な濃度(0.1〜1×MIC、最小発育阻止濃度)の環状ペプチドに曝露すると、迅速かつ完全な膜の脱分極が起こった(図3)。これらの実験の経過において採取した培養試料では、膜の脱分極と細胞死とが相関する。ペプチドのMIC濃度に5分間曝露後では実質的に生存細菌を検出できなかったが、0.1×MIC濃度では、生存細菌の有意な集団がなおも存在した。
【0243】
合成膜における生物物理試験
合成脂質膜において実施した生物物理分析も同様に、膜透過性作用機序を支持する。試験は、8残基環状D,L-α-ペプチドがアミノ酸組成および環状ペプチドの配列に応じて、異なるタイプの超分子構造をおそらく形成しうるという考え方を支持する。例えば、ペプチド配列番号:2(シクロ[Gln-D-Leu-(Trp-D-Leu)3])は、リポソーム膜の内径より小さい分析体の輸送のみを促進して、DMPC多二重層におけるATR-FTIR分析によれば、膜平面に対して垂直方向である管状構造を構築する。したがって、1個のナノチューブ通過孔メカニズムが、このペプチドに関するおそらく作用機序である(図2aを参照されたい)。
【0244】
一方、極性の荷電側鎖を有する相同なペプチド配列番号:3(シクロ[Lys-D-Leu-(Trp-D-Leu)3])は、それが分子量約10,000までのより大きい分子の膜を通過しての輸送を促進することから、チューブの内径より大きい開口部を有する異なる超分子構造を形成する可能性がある。さらに、配列番号:3(シクロ[Lys-D-Leu-(Trp-D-Leu)3])を有するペプチドから形成された超分子構造は、ATR-FTIR分析によれば合成膜において膜平面に対して垂直な方向を維持する。これらのデータは、ペプチドがおそらく、筒状の樽型超分子構造を形成して、その中で多数の直立したナノチューブの束がより大きい孔開口部を形成することを支持している(図2b)。
【0245】
比較すると、連続した3個の残基の親水性表面を有する
のようなペプチドは、ペプチドの内径より大きい分子の輸送を媒介するのみならず(図4)、膜構造の平面に対してほぼ平行な方向を有する。環状ペプチド配列番号:8、17、および18のATR FT-IR分光法は、堅固に水素結合したβ-シート様の構造の特徴であるアミドIおよびアミドIIのバンドを明らかにした(表11)。認められたアミド-A(NH伸縮)振動数は、サブユニット間骨格水素結合の堅固な網目構造を支持している。定方向のDMPC脂質多重二重層における定量的測定から、自己構築ペプチドナノチューブが通常の膜から70±5°傾いた角度を向いていることが示されている。これらの知見は、カーペット様式の膜の透過性を示唆している(図2)。環状ペプチドの親水性の増加は、このように「孔形成」方向より「表面指向」方向を好むように思われる。
【0246】
(表11)定向性のDMPC脂質多重二重層における抗菌環状ペプチドナノチューブのATR-FTIRデータおよび方向
a 平行な入射偏光を有するアミド-I強度と垂直な偏光を有するバンド強度との二色比。
b DMPC脂質の非対照CH2鎖の二色比。
c 傾斜角は正常表面に関する分子軸の角度を指す。
d ペプチドチューブの軸の角度と脂質炭化水素鎖との差。脂質およびペプチドナノチューブの傾斜角は、H.-S. Kimら、120 J. Am. Chem. Soc. 4417〜24(1998)に詳述される方法に従って計算する。DMPC:ジミリストイルホスファチジルコリン。データは試料2個の平均値であり、誤差は<±2°である。
【0247】
細菌の細胞膜活性に関するさらなる証拠は、本発明の環状ペプチドによって処理した細菌の電子顕微鏡写真によって提供される。細菌(黄色ブドウ球菌、ATCC 25923)を環状ペプチドシクロ[KSKWLWLW]によって室温で120分間処置した後、標準的な技法によって薄切片電子顕微鏡のために調製した。
【0248】
図21〜23は、電子顕微鏡を用いて認められた本発明の環状ペプチドによって引き起こされた膜の作用を示す。図21は、正常な無傷の膜を示す無処置の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を示す。図22および23は、2×MIC濃度のシクロ[KSKWLWLW]に曝露後の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を示す。これらの写真は、膜の作用様式を直接可視化している。矢印は、ペプチドの作用によって引き起こされた異常な膜構造を示す。
【0249】
証拠はこのように、少なくとも部分的に膜の透過性、脱分極、および/または溶解に基づく抗菌活性を示している。そのような証拠には、環状ペプチドが非常に速やかに作用して細菌を殺すこと、本明細書に記載した多様な環状ペプチド構造が抗菌活性を示すこと、環状ペプチドが細菌の膜を脱分極できること、全反射(ATR)FT-IR分光試験が、受容体/リガンド媒介結合/阻害メカニズムよりむしろ膜透過性作用機序と一致すること、そして電子顕微鏡によって膜構造に及ぼす本発明の環状ペプチドの作用が明らかになることが含まれる。
【0250】
実施例 4 .インビトロ抗菌活性
毒性試験:
様々な投与経路、最大認容量、ならびに血液および組織毒性を評価するために、マウスにおける初期毒性試験を行った。各用量試験においてマウス2匹に、ペプチド配列番号:8、18、および26のボーラス静脈内(IV)、腹腔内(IP)、または皮下(SQ)注射を行った。それぞれの試験に関して対照動物2匹にペプチドを含まない溶媒のみを投与した。ペプチド配列番号:8による試験は、12 mg/kgのボーラス静脈内注射が一時的な不快感(持続<10分)の兆候を引き起こすことを示している。対照的に、IP投与経路では調べた最高用量(12 mg/kg)でも毒性の兆候を認めなかった。ペプチド配列番号:26は、調べたIP最高用量(50 mg/kg)まで認容され、最高用量は急性毒性の兆候を引き起こしたが、これは1時間後に認められなくなった。急性毒性の兆候には、以下の如何なる一つも含まれた:活動性の欠如、赤い脚および尾、または速い呼吸。ペプチド配列番号:18はIPおよびSQ共に17.5 mg/kgまで試験したが、明らかな毒性の兆候を認めなかった。ペプチド配列番号:18の17.5 mg/日を3日間連続して、マウス2匹にIPおよびマウス2匹にSQ投与した。4日間、これらのマウスでは、ペプチドを含まない溶媒を注射した対照マウスと比較して身体、社会、および摂食活動に明らかな変化を認めなかった。その上、初回注射の4日目に行った様々な組織および臓器試料の血液学、剖検、および詳細な顕微鏡試験を行ったところ、IPおよびSQ注射部位を除き正常な血液および形態学的プロフィールが示された(K.G. Osborn、DVM、Ph.D.、スクリプスリサーチインスチチュート)。これらの部位は、IPおよびSQ薬物投与に典型的な中等度の亜急性炎症を示した。
【0251】
インビボ抗菌作用:
ペプチド配列番号:18を、このペプチドが細菌感染からマウスを保護できるか否かを観察することによってインビボで殺菌活性に関して調べた。マウス2群(各群1用量あたりマウス4匹)に致死量のMRSA(ATCC 33591)(2〜5×107 cfu/マウス)を腹腔内投与(左側)によって感染させた。マウスの最初の群に、ペプチドのボーラス用量0(溶媒のみ)、10 mg/kg、20 mg/kg、および40 mg/kgをMRSA注射後まもなく上頚部に皮下(SQ)投与した。第二の群のマウスに、ボーラスペプチド用量0(溶媒のみ)、2.5 mg/kg、および5 mg/kgをMRSA注射直後を1回目として10時間の間隔をあけて5回静脈内(IV)投与した。ペプチドを含まない溶媒のみ(0 mg/kg用量)を投与した対照群のマウスは、48時間以内に死亡した。しかし、40 mg/kgボーラスSQ用量および2.5×5 mg/kg IV投与レジメではそれぞれ、14日間の試験期間においてマウスの75%および50%が生存した(図28)。
【0252】
一般的に、SQおよびIV処置のデータに何らかの変動を認めた。そのような変動はSQ投与されたペプチドの吸収が低いことに起因する、および/またはマウスのような実験用小動物に薬物をIV投与する場合に予想される実験誤差の範囲による可能性がある。したがって、われわれは、腹腔内(IP)経路による治療の有効性を調べた。マウス6匹に致死量のMRSA(2〜5×107 cfu/マウス)を腹腔内に感染させた。ペプチドの13 mg/kgボーラスをMRSA感染の45分から1時間後にIP(右側)投与した。ペプチドを含まない溶媒を投与した対照群のマウスは全て48時間以内に死亡した。しかし、ペプチドを投与したマウスの67%が7日間の試験期間のあいだ生存した。
【0253】
インビボ抗菌有効性がこのように最初に証明された後、配列番号:8、12、17、18、および26を有するペプチドについてより大規模の試験を行った。マウスの群に致死量のMRSA(ATCC 33591)を感染させた(IP、左側)。各群のマウスに、ペプチド配列番号:8、12、17、18、または26のボーラスIP(右側)用量を初回感染の45〜60分後に処置した。マウスを14日間観察した。ペプチドを含まない溶媒を投与した対照群のマウスは全て48時間以内に死亡した。それぞれの場合において、ペプチドの適当量の1回投与は、MRSA感染からマウスの様々な群を完全に保護するために十分であった(図6、24、25、および26;表12)。
【0254】
マウスの群に致死量のVREF(ATCC 51575)(IP、左側)を感染させた。各群のマウスに、初回感染の45〜60分後にペプチド配列番号:12、17、または18のボーラスIP(右側)用量を処置した。マウスを14日間観察した。ペプチドを含まない溶媒を投与した対照群のマウスは全て48時間以内に死亡した。それぞれの場合において、ペプチドの適当量の1回投与は、VREF感染からマウスの様々な群を完全に保護するために十分であった(図27、表12)。
【0255】
(表12)環状ペプチドのインビボ保護用量(PD50)および致死量(LD50)
a 下線の文字はD-残基を表す。b MRSA(ATCC 33591)。c VREF(ATCC 51575)
雄性Balb-cマウスを1群8匹(MRSAに関して)および4匹(VREFおよび致死量に関して)用いた。
【0256】
注目すべきことに、有効量は、インビトロで細菌を殺すために必要な用量と平行であった。特に、動物の50%が黄色ブドウ球菌MRSA感染症から保護される配列番号:18、8、12、17、および26を有するペプチドの用量(PD50)はそれぞれ、8 mg/kg、7 mg/kg、20 mg/kg、7 mg/kg、および15 mg/kgであった。同様に、動物の50%がE. ファシウムVREF感染(PD50)から保護される配列番号:18、12および17を有するペプチドの用量はそれぞれ、7 mg/kg、5 mg/kg、および13 mg/kgであった。これらの値の傾向は、下記の表13に示すようにインビトロ抗菌試験について認められたMIC値の傾向と類似である。
【0257】
(表13)インビトロおよびインビボでの有効量の比較
【0258】
これらのインビボ試験は、本発明の環状ペプチドを、多剤耐性黄色ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェシウム、および他の細菌感染症の治療における物質としての利用を含む、抗菌物質として用いることを支持している。
【0259】
薬物動態試験:
マウスにおけるペプチドシクロ[RRKWLWLW]およびシクロ[KSKWLWLW]の薬物動態パラメータおよびヒトにおける市販の抗生物質の薬物動態パラメータを表14に示す。
【0260】
(表14)薬物動態の比較
Kel−消失速度定数、VD−分布容積、T1/2−半減期、CL−総クレアランス、FIP−IP経路による生物学的利用率。a)David Bourne, Ph.D.、www.boomer.org/c/pl/。
【0261】
実施例 5 .環状β-ペプチドは自己構築して膜貫通イオンチャンネルを形成する
確立されたプロトコールによって合成したテトラペプチドシクロ[(β-Trp)4]およびシクロ[(β-Trp-β-Leu)2]のイオン輸送特性を、リポソームに基づくアッセイ法において、および平面脂質膜における単チャンネル伝導度測定によって調べた。サブフェーズにおいて約30 mMのペプチド濃度によって500 mM KCl中で認められた伝導度は、56 pSであり、双方のテトラペプチドに関してチャンネル媒介K+輸送速度1.9×107 イオン/sに対応する。そのような輸送速度は、類似の条件でグラミシジンAの速度の2倍以上である。
【0262】
脂質膜におけるFT-IR試験も同様に行って、これらのペプチドによって形成された膜貫通チャンネルの証拠を提供した。ペプチド調製物は、アミドI、アミドIIおよびN-H結合を含む予想される全てのペプチドIRシグナルを示した。3289 cm-1および3297 cm-1において認められたアミドN-H伸縮バンドは、平均サブユニット間距離が4.8Åである堅固な骨格水素結合網目構造の存在を示し、これは環状D,L-αペプチドに関する固相IRデータと一致する。したがって、環状β-ペプチドも同様に、膜貫通イオンチャンネルを形成することができる。
【0263】
全ての出版物および特許は、個々に参照として組み入れられているが、参照として本明細書に組み入れられる。本発明は、示したそして記述した正確な詳細に限定されず、多くの変更および改変を行ってもよく、それらも声明によって規定される本発明の精神および範囲に含まれると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】本発明の環状ペプチドのナノチューブへの自己構築の略図を示す。D-およびL-アミノ酸が交互する8残基環状D、L-α-ペプチドを、その平坦な環状構造を強調して左に示す。側鎖(R)は、環状ペプチドの外表面に示す。自己構築すると、一連の環状ペプチドが整列して、分子間水素結合を受けて、本明細書においてナノチューブ(中央)と呼ばれる管状構造を形成すると考えられる。自己構築は、サブユニット間の骨格-骨格水素結合によって指示され、その結果β-シート様の末端が開口した中空の管状超分子構造が得られると考えられる。このβ-シート様水素結合パターンを右に示す。わかりやすくするために、ほとんどの側鎖を省略する。
【図2】ペプチド超分子構造に近づくことができる膜透過様式を説明する。環状ペプチドにおいて用いられるアミノ酸の組成および配列に応じて、形成される可能性がある超分子構造は、例えば、(a)孔、(b)筒状の棒構造、または(c)カーペット様の作用様式の超分子構築体を通して、細胞の膜と相互作用することができる。環状ペプチドを環状構造として示す。
【図3】環状ペプチド配列番号:8(白丸)、環状ペプチド配列番号:18(白三角)、および環状ペプチド配列番号:26(白四角)に曝露後の無傷の黄色ブドウ球菌(S. aureus)(ATCC 25923)の膜の脱分極速度をグラフで示す。膜の脱分極は、膜電位感受性色素diSC3の蛍光放出強度の変化によってモニターした。励起波長(λex)は622 nmであり、放出波長(λem)は670 nmであった。ペプチドを、t=1分で加え、生存細菌数を得るためにt=4分で少量を採取した。全ての場合について、ペプチドを添加すると、生存率の少なくとも1000倍減少を認めた。
【図4】画分の蛍光の変化を時間の関数として表した、ペプチド配列番号:11(シクロ[Gln-D-Lys-(Trp-D-Leu)2-Trp-D-Lys])によって媒介される見かけのプロトン輸送(図4a)およびカルボキシフルオレセイン放出(図4b)のプロットを提供する。図4bに関して、ペプチドを約100秒で加え、洗浄剤であるトライトンX-100を約200秒で加えた。
【図5】DMPC多二重層においてペプチド配列番号:11(シクロ-[Gln-D-Lys-(Trp-D-Leu)2-Trp-D-Lys])の方向を分析するための全反射(ATR)赤外線(IR)スペクトルを提供する。実線は、平行な偏光の吸光度を示し;破線は、垂直な偏光の吸光度を提供する。
【図6】抗菌化合物としての三つの環状ペプチドのインビボ有効性を説明する用量反応曲線を提供する。示すように、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の致死量をチャレンジしたマウスの生存率は、環状ペプチドの用量が増加すると劇的に改善される。三つの環状ペプチドを試験した:(a)ペプチド配列番号:18(PD50=5±2 mg/kg)、(b)ペプチド配列番号:17(PD50=6±2 mg/kg)、および(c)ペプチド配列番号:26(PD50=10±2 mg/kg)。PD50は、動物の50%が生存する保護用量である。
【図7】以下からなる超分子構造の構造比較を示す:(a)環状β-テトラペプチド;および(b)環状D,L-α-オクタペプチド。この図は、極性骨格のアミド基の方向が一定しない配置のために、環状β-テトラペプチドの超分子構造は、αヘリックスのマクロ双極子モーメント記憶を有する可能性があるが、環状のD,L-αオクタペプチド超分子構造は、ほとんどの状況において、そのような真の双極モーメントを有しないことを示している。わかりやすくするために、図7aおよび7bに示したナノチューブ構造からほとんどの側鎖を省略する。
【図8】図8aは、MIC濃度の以下のペプチドの一つに曝露後に生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33591)の数を時間の関数として対数cfu/mlで示す「時間殺細胞曲線」を提供する:シクロ[KHLWLW](白丸)、シクロ[KRKWLWLW](黒三角)またはシクロ[KQRWLWLW](白四角)、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。図8bは、MIC濃度の以下のペプチドの一つに曝露後に生存している大腸菌JM109(DE3)の数を時間の関数として対数cfu/mlで示す「時間殺細胞曲線」を提供する:シクロ[KRKWLWLW](黒三角)、シクロ[KQRWLWLW](黒丸)、シクロ[KHLWLW](黒四角)、またはシクロ[KKLWLW](白四角)、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。
【図9】37℃でシクロ[KSKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。個々の培養物に及ぼすシクロ[KSKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図10】室温でシクロ[KSKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。個々の培養物に及ぼすシクロ[KSKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図11】37℃でシクロ[KSKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存しているエンテロコッカス・フェシウム(Enterococus faecium)SP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。個々の培養物に及ぼすシクロ[KSKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図12】室温でシクロ[KSKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。個々の培養物に及ぼすシクロ[KSKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図13】37℃でシクロ[RRKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。個々の培養物に及ぼすシクロ[RRKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図14】室温でシクロ[RRKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。個々の培養物に及ぼすシクロ[RRKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図15】37℃でシクロ[RRKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。個々の培養物に及ぼすシクロ[RRKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図16】室温でシクロ[RRKWLWLW]ペプチドに曝露後の生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供し、下線はアミノ酸がD-アミノ酸であることを示す。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。個々の培養物に及ぼすシクロ[RRKWLWLW]ペプチドのいくつかの濃度の影響を示す。
【図17】37℃でペニシリンGに細胞を曝露後に生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供する。異なる培養物に対するいくつかの濃度のペニシリンGの影響を示す。
【図18】室温でペニシリンGに細胞を曝露後に生存している黄色ブドウ球菌(MRSA、ATCC 33592)(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供する。異なる培養物に対するいくつかの濃度のペニシリンGの影響を示す。
【図19】37℃でペニシリンGに曝露後に生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供する。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。異なる培養物に及ぼすいくつかの濃度のペニシリンGの影響を示す。
【図20】室温でペニシリンに曝露後に生存しているエンテロコッカス・フェシウムSP180(対数cfu/ml)の数を時間の関数として示す「時間殺細胞曲線」を提供する。エンテロコッカス・フェシウムSP180は、バンコマイシン耐性(vanA)であり、いくつかのFDA承認抗生物質に対して多剤耐性である。異なる培養物に及ぼすいくつかの濃度のペニシリンの影響を示す。
【図21】正常な無傷の膜を示す無処置の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を提供する。
【図22】シクロ[KSKWLWLW]の2倍MIC濃度に2時間曝露後の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を提供する。写真は、膜の作用様式を直接可視化する。矢印は、ペプチドの作用によって引き起こされた異常な膜の構造を示す。
【図23】シクロ[KSKWLWLW]の2倍MIC濃度に2時間曝露後の黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)の薄切片電子顕微鏡写真を提供する。写真は、膜の作用様式を直接可視化する。矢印は、ペプチドの作用によって引き起こされた異常な膜の構造を示す。
【図24】黄色ブドウ球菌MRSA(ATCC 33591)に致死的に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。細菌の5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス8匹を試験した。図24aにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[RRKWLWLW]を注射した。図24bでは、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KQRWLWLW]を注射した。
【図25】黄色ブドウ球菌(ATCC 33591)に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。細菌の5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス8匹を試験した。図25aにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KSKWLWLW]を注射した。図25bでは、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KKKWLWLW]を注射した。
【図26】黄色ブドウ球菌(ATCC 33591)に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。細菌の5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス8匹を試験した。マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KKLWLW]を注射した。
【図27】バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(VREF)(ATCC 51575)に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス8匹を試験した。図27aにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[RRKWLWLW]を注射した。図27bでは、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[KSKWLWLW]を注射した。
【図28】黄色ブドウ球菌(ATCC 33591)に感染させたマウスの生存に及ぼす本発明の環状ペプチドの保護作用を示す。細菌の5%ムチン浮遊液の腹腔内注射(右側)を行って、感染後45〜60分にペプチドを注射(左側に腹腔内注射)するマウス腹腔炎モデルを用いた。生存を14日間(エンドポイントでの死亡)モニターした;1用量あたりマウス4匹を試験した。図28aにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[RRKWLWLW]を皮下注射(上頚部)した。図28bにおいて、マウスに多様な濃度の塩酸シクロ[RRKWLWLW]を静脈内注射した。表記のペプチドの用量は各注射に関してである。表記のmg/kg量の5用量を8〜12時間離して静脈内投与した。
【図29】腹腔内経路によって投与したペプチドの毒性を示す。図29aにおいて、マウスに塩酸シクロ[RRKWLWLW]の多様な濃度を注射した。図29bでは、マウスに塩酸シクロ[KQRWLWLW]の多様な濃度を注射した。マウスを活動および死亡率に関して14日間モニターした。各実験において1用量あたりマウス4匹を用いた。
【図30】腹腔内経路によって投与したペプチドの毒性を示す。図30aにおいて、マウスに塩酸シクロ[KSKWLWLW]の多様な濃度を注射した。図30bでは、マウスに塩酸シクロ[KKLWLW]の多様な濃度を注射した。マウスを活動および死亡率に関して14日間モニターした。各実験において1用量あたりマウス4匹を用いた。
Claims (180)
- 薬学的に許容される担体と、動物における標的微生物によって引き起こされる感染症を治療または予防するために有効な量の交互のD-およびL-α-アミノ酸4〜約16個の配列を有する環状ペプチドとを含む、動物における微生物感染症を治療または予防するための薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、哺乳類の赤血球をインビトロで50%溶解するために必要なペプチド濃度の約2分の1未満である、インビトロで標的微生物が実質的に増殖しない最小発育阻止濃度を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、インビトロで哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の5分の1未満である、インビトロで標的微生物が実質的に増殖しない最小発育阻止濃度を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、インビトロで哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の10分の1未満である、インビトロで標的微生物が実質的に増殖しない最小発育阻止濃度を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、インビトロで哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の20分の1未満である、インビトロで標的微生物が実質的に増殖しない最小発育阻止濃度を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、インビトロで哺乳類赤血球の溶血を実質的に引き起こさない、請求項1記載の薬学的組成物。
- 標的微生物がグラム陽性菌またはグラム陰性菌である、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、動物細胞膜と比較して標的微生物の細胞膜をより破壊する超分子構造へと自己構築する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 超分子構造が、ナノチューブ、会合した軸方向に平行な筒状のナノチューブ、会合したナノチューブのカーペット、またはその混合物を含む、請求項8記載の薬学的組成物。
- 超分子構造が、動物細胞膜の脱分極と比較して選択的に標的微生物の脱分極を誘導する、請求項8記載の薬学的組成物。
- 超分子構造が、動物細胞の溶解と比較して選択的に標的微生物の溶解を誘導する、請求項8記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、標的微生物の膜に対して絶対必要な生体分子に対する親和性を有する側鎖を有する多数のアミノ酸を含む、請求項1記載の薬学的組成物。
- 有効量が、動物細胞に対して望ましくない毒性を示すことなく、標的微生物の溶解を誘導するために十分な環状ペプチドの量である、請求項1記載の薬学的組成物。
- 有効量が、インビトロで哺乳類の赤血球の溶血を実質的に誘導しない、請求項1記載の薬学的組成物。
- 有効量が1回投与量である、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが極性のD-またはL-アミノ酸少なくとも1個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが極性のD-またはL-アミノ酸少なくとも2個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが極性のD-またはL-アミノ酸少なくとも3個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが極性のD-またはL-アミノ酸4〜6個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- それぞれの極性D-またはL-アミノ酸が、他の極性D-またはL-アミノ酸の少なくとも一つに隣接する、請求項17、18、および19のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
- 少なくとも一つの極性D-および/またはL-アミノ酸が非極性D-またはL-アミノ酸に限って隣接する、請求項16、17、18、および19のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
- それぞれの極性D-またはL-アミノ酸が、システイン、ホモシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンのD-またはL-エナンチオマーである、請求項16、17、18、および19のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸少なくとも1個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸少なくとも2個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸少なくとも3個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸4〜6個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- それぞれのイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が他の極性D-またはL-アミノ酸少なくとも一つに隣接する、請求項24、25、または26のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
- 少なくとも一つのイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、非極性D-またはL-アミノ酸に限って隣接する、請求項23、24、25、または26のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
- それぞれのイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンである、請求項23、24、25、または26のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、非極性のD-またはL-アミノ酸残基少なくとも1個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、非極性のD-またはL-アミノ酸残基2〜15個を有する、請求項1記載の薬学的組成物。
- それぞれの非極性D-またはL-アミノ酸残基がアラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ノルロイシン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンである、請求項30または31に記載の薬学的組成物。
- 薬学的に許容される担体と、動物において標的微生物によって引き起こされた感染症を治療または予防するために有効な量の交互のD-およびL-α-アミノ酸約6個の配列を有する環状ペプチドとを含む、動物における微生物感染症を治療または予防するための薬学的組成物。
- 薬学的に許容される担体と、動物において標的微生物によって引き起こされた感染症を治療または予防するために有効な量の交互のD-およびL-α-アミノ酸約8個の配列を有する環状ペプチドとを含む、動物における微生物感染症を治療または予防するための薬学的組成物。
- 組成物が異なる環状ペプチド2個またはそれ以上の混合物を含む、請求項1記載の組成物。
- アミノ酸配列が、配列番号:8、9、12、17、18、26、29、47〜52、61、63、67、68、72〜77、84、85、87〜89、91〜93、100、102、107、111、112、119、125、または139のいずれか一つを含む、請求項1記載の薬学的組成物。
- 薬学的に許容される担体と、少なくとも一つのβ-アミノ酸が極性側鎖少なくとも1個を有する、動物における標的微生物感染症によって引き起こされた感染症を治療または予防するために有効な量のβ-アミノ酸3〜約10個のホモキラル配列を有する環状ペプチドとを含む、動物における微生物感染症を治療または予防するための薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、インビトロで哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の約20分の1未満〜2分の1未満である、インビトロで標的微生物が実質的に増殖しない最小発育阻止濃度を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、インビトロで哺乳類の赤血球の溶血を実質的に引き起こさない、請求項42記載の薬学的組成物。
- 標的微生物が、グラム陽性菌またはグラム陰性菌である、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、動物細胞膜と比較して標的微生物の膜をより破壊する超分子構造へと自己構築する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 超分子構造が、ナノチューブ、会合した軸方向に平行な筒状のナノチューブ、会合したナノチューブのカーペット、またはその混合物を含む、請求項46記載の薬学的組成物。
- 超分子構造が、動物細胞膜の脱分極と比較して選択的に標的微生物の膜の脱分極を誘導する、請求項46記載の薬学的組成物。
- 超分子構造が、動物の細胞溶解と比較して選択的に標的微生物の溶解を誘導する、請求項46記載の薬学的組成物。
- 有効量が、動物細胞の望ましくない量の溶解を誘導することなく、標的微生物の溶解を誘導するために十分な環状ペプチドの量である、請求項42記載の薬学的組成物。
- 有効量が、インビトロで赤血球の溶血を実質的に誘導しない、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、隣接するβアミノ酸上に極性側鎖少なくとも1個、および非極性側鎖少なくとも1個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが極性側鎖少なくとも2個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが極性側鎖少なくとも3個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが極性側鎖4〜5個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドがイオン化可能な側鎖少なくとも1個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドがイオン化可能な側鎖少なくとも2個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドがイオン化可能な側鎖少なくとも3個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドがイオン化可能な側鎖4〜5個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、非極性側鎖少なくとも1個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 環状ペプチドが、非極性側鎖2〜9個を有する、請求項42記載の薬学的組成物。
- 配列が交互のD-およびL-α-アミノ酸を有する、アミノ酸4〜約16個の配列を含む環状ペプチドの、動物細胞死の望ましくない量を誘導することなく、標的微生物細胞死を誘導するために十分な量を動物に投与することを含む、動物における微生物感染症を治療する方法。
- 環状ペプチドが、インビトロで哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の20分の1未満〜2分の1未満である、インビトロで標的微生物が実質的に増殖しない最小発育阻止濃度を有する、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、インビトロで哺乳類の赤血球の溶血を実質的に引き起こさない、請求項63記載の方法。
- 標的微生物がグラム陽性菌またはグラム陰性菌である、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、動物細胞膜と比較して標的微生物の細胞膜をより破壊する超分子構造へと自己構築する、請求項63記載の方法。
- 超分子構造が、ナノチューブ、会合した軸方向に平行な筒状のナノチューブ、会合したナノチューブのカーペット、またはその混合物を含む、請求項67記載の方法。
- 超分子構造が、動物細胞膜の脱分極と比較して選択的に標的微生物の膜の脱分極を誘導する、請求項67記載の方法。
- 超分子構造が、動物の細胞溶解と比較して選択的に標的微生物の溶解を誘導する、請求項63記載の方法。
- 標的微生物の細胞死を誘導するために十分な量が、動物細胞の溶解の望ましくない量を誘導することなく微生物細胞の溶解を誘導するために十分な環状ペプチドの量である、請求項63記載の方法。
- 標的微生物の細胞死を誘導するために十分な量が、インビトロで哺乳類の赤血球の溶血を実質的に誘導しない、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、極性D-またはL-アミノ酸少なくとも1個を有する、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、極性D-またはL-アミノ酸少なくとも2個を有する、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、極性D-またはL-アミノ酸少なくとも3個を有する、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、極性D-またはL-アミノ酸4〜6個を有する、請求項63記載の方法。
- それぞれの極性D-またはL-アミノ酸が、他の極性D-、またはL-アミノ酸少なくとも1個に隣接している、請求項74、75、および76のいずれか一項に記載の方法。
- 少なくとも一つの極性D-またはL-アミノ酸が非極性D-またはL-アミノ酸に限って隣接する、請求項74、75、および76のいずれか一項に記載の方法。
- それぞれの極性D-またはL-アミノ酸が、個々にシステイン、ホモシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンのD-またはL-エナンチオマーである、請求項73、74、75、および76のいずれか一項に記載の方法。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸を少なくとも1個有する、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸を少なくとも2個有する、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸を少なくとも3個有する、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸を4〜6個有する、請求項63記載の方法。
- それぞれのイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が他の極性D-またはL-アミノ酸少なくとも1個に隣接する、請求項81、82、または83のいずれか一項に記載の方法。
- 少なくとも一つのイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、非極性D-またはL-アミノ酸に限って隣接する、請求項81、82、または83のいずれか一項に記載の方法。
- それぞれのイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、個々にアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンのD-またはL-エナンチオマーである、請求項80、81、82、または83のいずれか一項に記載の方法。
- 環状ペプチドが、非極性のD-またはL-アミノ酸残基少なくとも1個を有する、請求項63記載の方法。
- 環状ペプチドが、非極性のD-またはL-アミノ酸残基2〜15個を有する、請求項63記載の方法。
- それぞれの非極性D-またはL-アミノ酸残基が、D-またはL-アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ノルロイシン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンである、請求項87または88に記載の方法。
- 配列が交互のD-およびL-α-アミノ酸を有する、アミノ酸約6個の配列を含む環状ペプチドの、動物細胞死の望ましくない量を誘導することなく標的微生物の細胞死を誘導するために十分な量を動物に投与することを含む、動物における標的微生物によって引き起こされた感染症を治療するための方法。
- 配列が交互のD-およびL-α-アミノ酸を有する、アミノ酸約8個の配列を含む環状ペプチドの、動物細胞死の望ましくない量を誘導することなく標的微生物の細胞死を誘導するために十分な量を動物に投与することを含む、動物における標的微生物によって引き起こされた感染症を治療するための方法。
- 組成物が二つまたはそれ以上の異なる環状ペプチドの混合物を含む、請求項63記載の方法。
- アミノ酸配列が、配列番号:8、9、12、17、18、26、29、47〜52、61、63、67、68、72〜77、84、85、87〜89、91〜93、100、102、107、111、112、119、125、または139のいずれか一つを含む、請求項63記載の方法。
- β-アミノ酸3〜約10個の配列を含む環状ペプチドの、動物の細胞死の望ましくない量を誘導することなく標的微生物の死を誘導するために十分な量を、哺乳類に投与することを含む、動物において標的微生物によって引き起こされた感染症を治療または予防する方法。
- 環状ペプチドが、インビトロで哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の20分の1未満〜2分の1未満である、インビトロで標的微生物が実質的に増殖しない最小発育阻止濃度を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドがインビトロで哺乳類の赤血球の溶血を実質的に引き起こさない、請求項99記載の方法。
- 標的微生物が、グラム陽性菌またはグラム陰性菌である、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドが、動物細胞膜と比較して標的微生物の細胞膜をより破壊する超分子構造へと自己構築する、請求項99記載の方法。
- 超分子構造が、ナノチューブ、会合した軸方向に平行な筒状ナノチューブ、会合したナノチューブのカーペット、またはその混合物を含む、請求項103記載の方法。
- 超分子構造が、動物細胞膜の脱分極と比較して選択的に標的微生物の膜の脱分極を誘導する、請求項103記載の方法。
- 超分子構造が、動物の細胞溶解と比較して選択的に標的微生物の溶解を誘導する、請求項103記載の方法。
- 標的微生物の死を誘導するために十分な量が、動物細胞の溶解の望ましくない量を誘導することなく、微生物細胞の溶解を誘導するために十分な環状ペプチドの量である、請求項99記載の方法。
- 標的微生物の死を誘導するために十分な量が、インビトロで赤血球の溶血を実質的に誘導しない、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドが極性側鎖少なくとも1個を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドが極性側鎖少なくとも2個を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドが極性側鎖少なくとも3個を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドが極性側鎖4〜5個を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドがイオン化可能な側鎖少なくとも1個を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドがイオン化可能な側鎖少なくとも2個を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドがイオン化可能な側鎖少なくとも3個を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドがイオン化可能な側鎖4〜5個を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドが非極性側鎖少なくとも1個を有する、請求項99記載の方法。
- 環状ペプチドが非極性側鎖2〜9個を有する、請求項99記載の方法。
- 試験環状ペプチドが、(i)交互のD-およびL-α-アミノ酸4〜約16個の配列、または(ii)β-アミノ酸3〜約10個の配列を含む、以下を含む抗菌活性を有する環状ペプチドを同定または評価する方法:
(a)標的微生物に試験環状ペプチドを接触させる段階;および
(b)試験環状ペプチドが抗菌活性を有するか否かを決定する段階。 - 以下を含む、標的微生物に対して選択的に細胞障害性である環状ペプチドを同定または評価する方法:
(a)組み合わせライブラリにおけるそれぞれの試験環状ペプチドが、(i)交互のD-およびL-α-アミノ酸4〜約16個の配列、または(ii)β-アミノ酸3〜約10個の配列を含む、試験環状ペプチドの組み合わせライブラリを得る段階;
(b)標的微生物細胞に、試験環状ペプチドの一つまたはそれ以上を接触させる段階;および
(c)一つまたはそれ以上の試験環状ペプチドが抗菌活性を有するか否かを決定する段階。 - 以下を含む、標的微生物に対して選択的に細胞障害性である環状ペプチドを同定する方法:
(a)標的微生物の細胞死を誘導することができる請求項121記載の組み合わせライブラリから第一の環状ペプチドを同定する段階;
(b)第一の環状ペプチドの配列における少なくとも一つのアミノ酸を異なるアミノ酸に交換して、第二の環状ペプチドを作製する段階;
(c)標的微生物細胞を第二の環状ペプチドに接触させる段階;および
(d)第二の環状ペプチドが抗菌活性を有するか否かを決定する段階。 - 環状ペプチドが動物細胞タイプの望ましくない量の溶解を誘導するか否かを決定する段階をさらに含む、請求項120、121、または122のいずれか一項に記載の方法。
- 動物細胞タイプが哺乳類の赤血球である、請求項123のいずれか一項に記載の方法。
- 微生物が、細菌、酵母株、真菌、または単細胞寄生虫である、請求項120、121、または122のいずれか一項に記載の方法。
- 環状ペプチドがもう一つの動物細胞タイプにおいて実質的な細胞死を誘導するか否かを決定する段階をさらに含む、請求項123のいずれか一項に記載の方法。
- 接触させる段階がインビトロで行われる、請求項120、121、または122のいずれか一項に記載の方法。
- 接触させる段階がインビボで行われる、請求項120、121、または122のいずれか一項に記載の方法。
- 環状ペプチドが、アミノ酸4〜約16個の交互のD-およびL-α-アミノ酸配列を含む、環状ペプチドの溶液を標的生体分子に接触させる段階、および生体分子と選択的に会合する超分子構造へとペプチドが構築されるか否かを決定する段階を含む、標的生体分子と選択的に会合することができる環状ペプチドを同定する方法。
- 標的生体分子が、生きている細胞の表面に提示される、請求項129記載の方法。
- 標的生体分子がリポソームの表面に提示される、請求項129記載の方法。
- 二つ以上のペプチドを標的生体分子に接触させる、請求項129記載の方法。
- 超分子構造が、ナノチューブ、会合した軸方向に平行な筒状ナノチューブ、会合したナノチューブのカーペット、またはその混合物を含む、請求項129記載の方法。
- ペプチドが、抗菌活性を有するが、望ましくない抗動物細胞活性を実質的に示さない、交互のD-およびL-α-アミノ酸4〜約16個の環状アミノ酸配列を含むペプチド。
- ペプチドが、哺乳類赤血球の50%溶血を引き起こすために必要なペプチド濃度の約20分の1未満〜約2分の1未満である、インビトロで標的微生物細胞が実質的に増殖しない最小発育阻止濃度を有する、請求項134記載のペプチド。
- ペプチドが、インビトロで哺乳類の赤血球細胞の溶血を実質的に引き起こさない、請求項134記載のペプチド。
- 抗菌活性が、グラム陽性菌またはグラム陰性菌に対してである、請求項134記載のペプチド。
- 環状ペプチドが、動物細胞膜と比較して標的微生物の膜をより破壊する超分子構造へと自己構築する、請求項134記載のペプチド。
- 超分子構造が、ナノチューブ、会合した軸方向に平行な筒状ナノチューブ、会合したナノチューブのカーペット、またはその混合物を含む、請求項134記載のペプチド。
- 超分子構造が、動物細胞膜の脱分極と比較して選択的に標的微生物の膜の脱分極を誘導する、請求項134記載のペプチド。
- 超分子構造が、動物の細胞溶解と比較して選択的に標的微生物の溶解を誘導する、請求項134記載のペプチド。
- ペプチドが動物細胞の溶解の望ましくない量を誘導することなく、微生物細胞の溶解を誘導する、請求項134記載のペプチド。
- ペプチドが、インビトロで哺乳類の赤血球の溶血を実質的に誘導しない、請求項134記載のペプチド。
- ペプチドが、極性D-またはL-アミノ酸少なくとも1個を有する、請求項134記載のペプチド。
- ペプチドが、極性D-またはL-アミノ酸少なくとも2個を有する、請求項134記載のペプチド。
- ペプチドが、極性D-またはL-アミノ酸少なくとも3個を有する、請求項134記載のペプチド。
- ペプチドが、極性D-またはL-アミノ酸4〜6個を有する、請求項134記載のペプチド。
- それぞれの極性D-またはL-アミノ酸が、他の極性D-またはL-アミノ酸少なくとも1個に隣接する、請求項145、146、または147のいずれか一項に記載のペプチド。
- 少なくとも一つの極性D-またはL-アミノ酸が非極性D-またはL-アミノ酸に限って隣接する、請求項145、146、または147のいずれか一項に記載のペプチド。
- それぞれの極性D-またはL-アミノ酸が、個々にシステイン、ホモシステイン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンのD-またはL-エナンチオマーである、請求項144、145、146、または147のいずれか一項に記載のペプチド。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸を少なくとも1個有する、請求項134記載のペプチド。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸を少なくとも2個有する、請求項134記載のペプチド。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸を少なくとも3個有する、請求項134記載のペプチド。
- 環状ペプチドが、イオン化可能なD-またはL-アミノ酸を4〜6個有する、請求項134記載のペプチド。
- それぞれのイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が他の極性D-またはL-アミノ酸少なくとも1個に隣接する、請求項152、153、または154のいずれか一項に記載のペプチド。
- 少なくとも一つのイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、非極性D-またはL-アミノ酸に限って隣接する、請求項152、153、または154のいずれか一項に記載のペプチド。
- それぞれのイオン化可能なD-またはL-アミノ酸が、個々にアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、ヒドロキシリジン、またはオルニチンである、請求項151、152、153、または154のいずれか一項に記載のペプチド。
- 環状ペプチドが、非極性のD-またはL-アミノ酸残基少なくとも1個を有する、請求項134記載のペプチド。
- 環状ペプチドが、非極性のD-またはL-アミノ酸残基2〜15個を有する、請求項134記載のペプチド。
- それぞれの非極性D-またはL-アミノ酸残基がアラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ノルロイシン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンである、請求項158または159に記載のペプチド。
- ペプチドが抗菌活性を有するが、抗動物細胞活性を実質的に有しない、交互のD-およびL-α-アミノ酸約6個の環状アミノ酸配列を含むペプチド。
- ペプチドが抗菌活性を有するが、抗動物細胞活性を実質的に有しない、交互のD-およびL-α-アミノ酸約8個の環状アミノ酸配列を含むペプチド。
- アミノ酸配列が、配列番号:8、9、12、17、18、26、29、47〜52、61、63、67、68、72〜77、84、85、87〜89、91〜93、100、102、107、111、112、119、125、または139のいずれか一つを含む、請求項134記載のペプチド。
- 動物がヒトである、請求項1、33、または34のいずれかに記載の薬学的組成物。
- 動物が農場で飼育する動物である、請求項1、33、または34のいずれかに記載の薬学的組成物。
- 動物が家畜である、請求項1、33、または34のいずれかに記載の薬学的組成物。
- 動物がヒトである、請求項42記載の薬学的組成物。
- 動物が農場飼育動物である、請求項42記載の薬学的組成物。
- 動物が家畜である、請求項42記載の薬学的組成物。
- 動物がヒトである、請求項63記載の方法。
- 動物が農場飼育動物である、請求項63記載の方法。
- 動物が家畜である、請求項63記載の方法。
- 哺乳類において実質的に非毒性である、請求項134、161、または162のいずれかに記載のペプチド。
- ヒトにおいて実質的に非毒性である、請求項134、161、または162のいずれかに記載のペプチド。
- 微生物感染症を治療または予防するためにペプチドを用いることが意図される標的動物において実質的に非毒性である、請求項134、161、または162のいずれかに記載のペプチド。
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