JP2016225039A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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典利 古田
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淳子 天野
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Abstract

【課題】電極端部におけるLi析出を抑制する。【解決手段】リチウムイオン二次電池は、正極合材層12と、正極合材層12に対向する負極合材層22とを備える。正極合材層12は、平坦部12aと、平坦部12aに連なる傾斜端部12bとを含む。傾斜端部12bにおける正極容量密度は、平坦部12aにおける正極容量密度より低い。【選択図】図5

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
特開2009−283270号公報(特許文献1)には、正極集電箔において、正極合材塗料が塗布されるべき領域の縁に、撥水性物質を施す技術が開示されている。
特開2009−283270号公報
液状の正極合材塗料を正極集電箔上に塗布すると、塗膜の縁に液垂れが生じる。その結果、乾燥後の塗膜(正極合材層)では、端部が傾斜することになる。特許文献1では、撥水性物質によって液垂れの抑制を試みている。しかしながら、塗料のような流動体を用いる限り、液垂れを無くすことは困難である。
正極合材層の端部が傾斜していると、充電時、電極端部においてリチウムイオン(Li+)の流束集中が起こり、局所的に負極側の受け入れ可能容量を超える可能性がある。負極側の受け入れ可能容量を超えたLi+は、負極の表面に析出することになる。従来こうした懸念から、リチウムイオン二次電池の充電電流は、低く制限されている。
以上を踏まえ、本発明では、電極端部におけるLi析出を抑制することを目的とする。
リチウムイオン二次電池は、正極合材層と、該正極合材層に対向する負極合材層とを備える。正極合材層は、平坦部と、該平坦部に連なる傾斜端部とを含む。傾斜端部における正極容量密度は、平坦部における正極容量密度より低い。
上記のリチウムイオン二次電池において、正極合材層は、平坦部と、液垂れに由来する傾斜端部とを含む。充電時、正極合材層から放出されたリチウムイオン(Li+)は、該正極合材層に対向する負極合材層へ移動する。このとき平坦部に含まれていたLi+は、該平坦部に対向する位置へ移動する。しかし本発明者の検討によると、傾斜端部に含まれていたLi+の一部は、該傾斜端部に対向する位置へ移動せず、平坦部と傾斜端部との境界に対向する位置へ移動している。これがLi+の流束集中の原因と考えられる。
そこで上記のリチウムイオン二次電池では、傾斜端部の正極容量密度を、平坦部の正極容量密度よりも低く調整している。これにより傾斜端部からのLi+の供給量が低減され、Li+の流束集中が抑制される。
上記によれば、電極端部におけるLi析出を抑制することができる。
本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す概略断面図である。 電極体の構成の一例を示す概略図である。 図2のIII−III線に沿う概略断面図である。 参考形態に係る電極端部の構成および充電挙動を図解する概略図である。 本発明の実施形態の要部を図解する概略図である。 失活処理の方法を図解する第1概略図である。 失活処理の方法を図解する第2概略図である。 失活処理の方法を図解する第3概略図である。 Li析出耐性の評価結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」と記す。)の一例を説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではない。以下の説明では、リチウムイオン二次電池を単に「電池」と記すことがある。
〔リチウムイオン二次電池〕
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す概略断面図である。電池100は、電池ケース50を備える。電池ケース50には、正極端子70および負極端子72が設けられている。電池ケース50の内部には、電極体80および電解液81が配置されている。正極端子70および負極端子72と、電極体80とは電気的に接続されている。
〔電解液〕
電解液81は、電池ケース50の底部に貯留されている。電解液は、電極体80の内部にも浸透している。電解液は、非プロトン性溶媒にLi塩を溶解させた液体電解質である。非プロトン性溶媒は、たとえばエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を混合した混合溶媒でもよい。混合溶媒の組成は、たとえば体積比で、EC:DMC:EMC=3:4:3でもよい。Li塩は、たとえばLiPF6、Li[(FSO22N]等でもよい。Li塩の濃度は、たとえば0.5〜2.0mоl/L程度でもよい。
〔電極体〕
図2は、電極体の構成の一例を示す概略図である。電極体80は扁平状の外形を呈する。電極体80は巻回式の電極集合体である。すなわち電極体80は、セパレータ40を挟んで、正極10と負極20とを積層し、さらに巻回してなる電極集合体である。扁平状の外形は、たとえばプレス加工によって成形される。
〔正極〕
正極10は、正極集電箔11と、正極集電箔11上に形成された正極合材層12とを含む。正極合材層12は、正極合材塗料を正極集電箔11上に塗着してなる。正極合材層12は、平坦部12aと、傾斜端部12bとを含む。傾斜端部12bは、正極合材塗料を塗布した際に、液垂れによって生じた部分である。
図3は、図2中のIII−III線に沿う概略断面図である。正極合材層12は、正極集電箔11上に形成されている。正極集電箔は、たとえばアルミニウム(Al)箔等でもよい。正極集電箔の厚さは、たとえば5〜20μm程度でもよい。正極合材層の厚さは、たとえば20〜100μm程度でもよい。正極合材層は、正極活物質、導電材および結着材等を含む。正極活物質は、たとえばLiCoO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/32等のLi含有金属酸化物でもよい。導電材は、たとえばアセチレンブラック等でもよい。結着材は、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等でもよい。正極合材層における各成分の配合は、たとえば質量比で、正極活物質:導電材:結着材=90:8:2程度でもよい。
〔負極〕
負極20は、負極集電箔21と、負極集電箔21上に形成された負極合材層22とを含む。負極集電箔は、たとえば銅(Cu)箔等でもよい。負極集電箔の厚さは、たとえば5〜20μm程度でもよい。負極合材層の厚さは、たとえば20〜100μm程度でもよい。負極合材層は、負極活物質、増粘材および結着材等を含む。負極活物質は、たとえば黒鉛等でもよい。増粘材は、たとえばカルボキシメチルセルロース(CMC)等でもよい。結着材は、たとえばスチレンブタジエンゴム(SBR)等でもよい。負極合材層における各成分の配合は、たとえば質量比で、負極活物質:増粘材:結着材=98:1:1程度でもよい。
〔セパレータ〕
セパレータ40は、正極合材層12と負極合材層22との間に介在している。セパレータの厚さは、たとえば5〜40μm程度でもよい。セパレータは、たとえばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の微多孔膜でもよい。セパレータは、単層構造でもよいし、複層構造でもよい。セパレータは、たとえばPEの微多孔膜からなる単層構造でもよいし、あるいはPP/PE/PPの順で、PEの微多孔膜とPPの微多孔膜とが積層された3層構造でもよい。
〔充電挙動のシミュレーション〕
ここで、従来技術の構成および充電挙動を説明する。図4は、参考形態に係る電極端部の構成および充電挙動を図解する概略図である。図4に示す領域は、図3の領域Eに相当する。
図4に示すように、正極合材層112は、平坦部112aと、平坦部112aに連なる傾斜端部112bとを含む。平坦部112aは、略平坦な表面を有する。傾斜端部112bでは、正極合材層112の表面が正極集電箔11に向かって傾斜している。傾斜端部112bの表面は、湾曲していることもある。平坦部112aおよび傾斜端部112bは、それぞれ正極活物質2aを含有する。平坦部112aにおける正極容量密度と、傾斜端部112bにおける正極容量密度とは等しくなっている。ここで容量密度とは、所定の充電条件において充電可能な容量を、対象となる部分の体積で除した値[単位:mAh/cm3]を示している。
負極合材層22は、正極合材層112に対向している。幅方向Dにおいて、負極合材層22における負極容量密度は一定と考えてよい。図4中のグラフは、この構成における充電反応のシミュレーション結果を示している。グラフ中の横軸は、幅方向Dの各位置に対応している。グラフ中の縦軸は、正極合材層から負極合材層の各位置に移動してくるLi+の量を示している。Li+の量は、負極合材層の各位置におけるLi+の受け入れ可能容量(設計値)を100%として、それに対する比率で表している。
図4中のグラフより、負極合材層22において、平坦部112aと傾斜端部112bとの境界に対向する位置では、局所的にLi+の量が多くなっていることが分かる。このようにLi+が集中することにより、Li+の量が100%を超えた位置では、負極合材層の表面にLiが析出する可能性がある。
図4には、Li+の移動経路を一点鎖線によって、模式的に示している。図4に示すように、傾斜端部112bに含まれていたLi+の一部は、正極合材層112中を移動し、平坦部112aと傾斜端部112bとの境界付近から負極合材層に向かって放出される。これにより、平坦部112aと傾斜端部112bとの境界に対向する位置に、Li+の流束が集中すると考えられる。
〔本実施形態の要部〕
上記のシミュレーション結果を踏まえ、本実施形態では以下の構成を採用する。図5は、本実施形態の要部を図解する概略図である。図5に示す領域は、図3中の領域Eに相当する。図5に示すように、正極合材層12は、平坦部12aと、平坦部12aに連なる傾斜端部12bとを含む。傾斜端部12bにおける正極容量密度は、平坦部12aにおける正極容量密度より低い。たとえば傾斜端部12bに、失活させた正極活物質2bを含有させることにより、傾斜端部12bにおける正極容量密度を低減できる。この構成によれば、充電時、傾斜端部12bからのLi+の供給量を低減できる。
平坦部における正極容量密度を100%としたとき、傾斜端部における正極容量密度は77%程度とするとよい。これにより前述のシミュレーションにおいて、Li+の量が100%を超えていた部分を実質的に無くすことができる。傾斜端部における23%の容量損失は、正極合材層全体の容量に対して、高々0.1%程度である。
〔正極容量密度を低減する方法〕
傾斜端部の正極容量密度を低減する方法は、特に限定されない。たとえば、正極合材層の端部となるべき領域に、充放電反応に関与しない粒子を含む、塗料を塗布することが考えられる。そうした粒子としては、たとえばアルミナ等の無機フィラー、PE粒子等の樹脂粒子等が挙げられる。あるいは、平坦部を構成する正極活物質よりも容量密度が低い、正極活物質を使用してもよい。
傾斜端部にX線を照射することにより、傾斜端部の正極容量密度を低下させてもよい。X線は、正極合材層の側面から照射してもよいし、正極合材層の表面から照射してもよい。図6は、失活処理の方法を図解する第1概略図である。図6に示すように、幅方向Dに沿って、傾斜端部12bにX線を照射してもよい。X線の照射を受けた領域では、正極活物質表面における不活性膜の形成、あるいは導電経路の破壊等が起こり、反応性が低下する。こうして正極活物質が失活し、当該領域の正極容量密度が低下すると考えられる。正極容量密度の低下量は、たとえばX線の強度、照射時間等により調整できる。
電解液に濡れた状態の正極合材層に対して、X線を照射することにより、前述の不活性膜の形成等が促進されることもあり得る。したがって、電解液に濡れた正極合材層に対して、X線を照射することが望ましい。またこの方法によれば、電解液の有無によって、失活させる範囲の調整が可能である。
図7は、失活処理の方法を図解する第2概略図である。この例では、正極合材層に電解液を含浸させた後、正極合材層の表面側から、電解液を部分的に蒸発させる。この状態で傾斜端部にX線を照射することにより、電解液が残存する領域において、選択的に正極活物質を失活させることができる。たとえば、正極合材層を厚さ方向に2等分して、正極合材層の表面を含む上層と、正極集電箔との界面を含む下層とに分けるとき、上層の電解液を蒸発させ、下層に電解液を残存させる等の態様が考えられる。
幅方向Dにおいて、段階的に正極活物質を失活させてもよい。図8は、失活処理の方法を図解する第3概略図である。この例では、幅方向Dにおいて、傾斜端部12bを、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3からなる3つの領域に区分する。傾斜端部12bの全幅を100%とし、傾斜端部12bの端を0%の位置、傾斜端部12bと平坦部12aとの境界を100%の位置とする。このとき第1領域R1は0〜40%の範囲に亘る領域であり、第2領域R2は40〜70%の範囲に亘る領域であり、第3領域R3は70〜100%の範囲に亘る領域である。ここでは領域毎にX線の照射時間を変更し、領域毎に正極容量密度を変更する。平坦部12aの正極容量密度を100%とするとき、第1領域R1の正極容量密度は45%程度、第2領域R2の正極容量密度は70%程度、第3領域の正極容量密度は80%程度とするとよい。このように段階的に正極容量密度を変えることにより、Li+の集中を緩和する効果が期待できる。
〔Li析出耐性の評価〕
本実施形態に従う電池Aと、上記の参考形態に従う電池Bとをそれぞれ作製し、Li析出耐性を評価した。評価用電池の定格容量は3.5Ahとした。具体的には、これらの評価用電池において、充電電流を徐々に上昇させながら、電極端部にLiが析出する充電電流を調査した。充電は、−10℃の低温環境で行った。この調査において、Liが析出した充電電流を充電限界電流と称することにする。充電限界電流が大きいほど、Li析出耐性が良好といえる。図9は、Li析出耐性の評価結果を示すグラフである。図9より、本実施形態に従う電池Aでは、電池Bに比し、約10%充電限界電流を改善できることが分かる。
以上に説明した本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、たとえば、ハイブリッド自動車、電気自動車用の電源、あるいは工場、家庭用の蓄電システム等に用いられる大型電池に好適である。
上記のとおり本実施形態によれば、充電限界電流の改善が期待できる。これにより、たとえばハイブリッド自動車等では、燃費の向上が期待できる。たとえば、図9に示す約10%の充電限界電流の改善は、燃費にして約0.8%の改善に相当する。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2a,2b 正極活物質、10 正極、11 正極集電箔、12,112 正極合材層、12a,112a 平坦部、12b,112b 傾斜端部、20 負極、21 負極集電箔、22 負極合材層、40 セパレータ、50 電池ケース、70 正極端子、72 負極端子、80 電極体、81 電解液、100 電池、D 幅方向、E 領域、R1 第1領域、R2 第2領域、R3 第3領域。

Claims (1)

  1. 正極合材層と、前記正極合材層に対向する負極合材層と、を備え、
    前記正極合材層は、平坦部と、前記平坦部に連なる傾斜端部とを含み、
    前記傾斜端部における正極容量密度は、前記平坦部における正極容量密度より低い、リチウムイオン二次電池。
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