JP2016223234A - 地表面冷却構造 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、特にスポーツ施設やレジャー施設などでは、競技選手が手を直接地表面に触れたり、子供がへたり込んだりするなど、肌が地表面に直接触れる機会は少なくない。
また、日向部分と、日陰部分とでは、地表面の温度に大きな差が生じることもあるが、競技者における競技環境の公平・平等という観点からは、このような違いをできるだけ縮小することが望ましい。
このような理由から、地表面を冷却することが求められる。
地表面に散水することも上記検討の一つであるが、散水作業には労力を要するし、散水した水が蒸発してしまうとその効果は失われてしまう。また、散水した水で滑って転倒したり、衣服を濡らしてしまったりという不都合を生じてしまうおそれがある。
また、地表面下から地表面に随時給水して地表面を保水することも種々提案されているが(例えば、特許文献1〜5参照)、水の蒸発を利用した冷却効果には限界があるし、大気湿度に影響を受ける可能性もある。
例えば、植栽地に熱媒体管を埋設し、該熱媒体管内に熱媒体を循環させる地温制御システムに関して、地中管配列方法に検討を加えた技術が提案されている(特許文献6参照)。この技術によれば、広い面積の植栽地に対しても、各部ほぼ均等に加温または冷却できて地中温度の均一化を図ることができ、圧力損失も小さくできて運転効率を向上でき、また、熱媒体管の信頼性の向上を図ることができ、1本の熱媒体管に漏れなどの故障が生じて当該管の運転が停止しても植物への影響を少なくできる、とされる。
そのため、地表面下にパイプを敷設してパイプ内に水を循環させるものとして従来適用されてきた技術を、エラストマーのような熱伝導率の悪い素材で表層が構成されたスポーツ施設やレジャー施設などに単に転用するだけでは、到底、所期した効果は得られないと考えられるため、従来、その検討すらされていなかった。
さらに、地表面冷却構造によって地表面に不具合をできるだけ生じさせないということも課題として念頭に置いた。
具体的には、まず、冷却効果を確実にする為には、できるだけ冷却管を表層に近づけることが有利であると考えたが、表層が上記の如きエラストマーである場合、冷却管を表層内に設置したのでは地表面の感触に影響を与える問題点が生じるし、表層への衝撃が冷却管に負荷を与え、特に損傷に至ってしまうとなれば、表層そのものを全て取り替える必要を迫られることになってしまう。
そこで、表層直下に冷却層を設置することが最も有効であると判断するに至った。
即ち、表層と冷却層との間に空隙が生じると、そこに空気や水分が入り込み、その部分が盛り上がって「ウキ」となる不具合が生じることが懸念されるため、表層と冷却層との接着性、密着性にも注意を払う必要があるところ、一般に用いられる冷却管(例えばポリエチレン管)は他の材料との接着性が一般に芳しく無いため、冷却管の間隔を小さくすると、冷却管が冷却層より一部でも露出する構成をとる場合、表層とそれに接する冷却管との間での剥離リスクを高めることになるのである。
確かに、冷却管が冷却層から露出して表層と接しないように、充填材で冷却管を冷却層内に埋め込めば、上記の意味での剥離リスクは抑制できるが、冷却管の間隔を小さくするほど、冷却層における冷却管の占める割合が増すので、冷却管と充填材との剥離リスクが生じる。
すなわち、本発明の地表面冷却構造は、地表面となる表層と、前記表層の直下に配置された冷却層とを備える地表面冷却構造であって、前記表層の熱伝導率が0.05〜0.5W/m・Kであり、前記冷却層は、複数の冷却管が一定の間隔で配設され、前記冷却管内に冷媒液を流すことによって表層を冷却する作用を有するものであり、前記表層の厚みをt[mm]とし、前記冷却層において隣り合う冷却管の間隔をd[mm]とするとき、
d≦−4t+205 (1)
d≦5.9t+15.5 (2)
の関係をともに満たすものである。
表層1は、熱伝導率が0.05〜0.5W/m・Kである。スポーツ施設やレジャー施設などに適用される表層の材料は、通常、熱伝導率が低く、例えば、陸上競技場のトラックで良く利用されるポリウレタン系樹脂の場合、0.3W/m・K程度である。その他の例も挙げれば、テニスコートのハードコートに用いられるアクリル樹脂も0.17〜0.25W/m・K程度である。本発明は、表層がこのように熱伝導率の低いものであっても、効率よくムラのない冷却効果を発揮する点で、従来にない優位性を備えている。
本発明においても、遮熱塗膜や反射塗膜が表層1の表面温度を直接下げるということは期待し難いものの、日射による熱を地表面冷却構造の内部まで侵入させないことにより冷却層2による表層1下面からの冷却効果を促進するという本発明特有の作用が奏せられる。
そして、表層1の厚みをt[mm]とし、冷却層2において隣り合う冷却管10,10の間隔をd[mm]とするとき、
d≦−4t+205 (1)
d≦5.9t+15.5 (2)
の関係をともに満たす。
上記両関係をともに満たす場合に、表層1の熱伝導率が悪いにもかかわらず、表層1が冷却層2により十分にかつムラなく冷却されるという本発明の効果が発揮される。
この剥離リスクを抑制する観点から、冷却管10,10の間隔dが0を超えていること、従って、充填材30が冷却層2内を貫通していることが好ましい。
特に、冷却管10,10の間隔dが、冷却管10の外径と同程度以上であること、及び/又は、12.5mm以上であることがより好ましい。
このように、冷却管10,10の間隔dが広くなっても、上記の(1)及び(2)に示す関係を満たす限りにおいて、十分かつムラのない冷却効果は発揮される。
冷却管10の管径としては、特に限定するわけではないが、外径が7〜22mmであることが好ましく、10〜17mmであることがより好ましい。これは、冷却管10の冷却効果を高めるため、必要な流量を確保し、圧力損失を最小化するには、外径が大きい方が有利であり、また、競技者の走行による衝撃や、砲丸の落下による衝撃などで扁平する恐れを回避する意味では、外径はより小さい方が有利であるからである。
充填材30としては、特に限定するわけではなく、熱伝導性、コスト、強度なども考慮して適宜決定すればよいが、例えば、ゴムチップ、樹脂モルタル、樹脂、アスファルト、コンクリートなどが挙げられる。
前記樹脂モルタルとしては、表層1に過度な衝撃が加えられない場合の用途や、ボールに高いバウンドが求められる場合の用途などにおいて好適に用いられる。
前記樹脂としては、主に表層1と同種の材料(例えば、ポリウレタン系樹脂)を用いることができ、表層1と異なる材質を使用する場合に比べて1回の塗布で冷却層2と表層1を形成できるので、工期短縮が求められる場合に好適に使用される。
前記アスファルトやコンクリートは、材料としてのコストが重視される場合などに好適に用いることができる。
ここで、冷却管10頂部と表層1下面との接近は、表層1と冷却層2との剥離を防止する観点を重視するならば、冷却管10の頂部が、充填材30により被覆されて冷却層2から露出しない限度であることが望ましい。冷却管10の頂部が、充填材30により被覆されずに冷却層2から露出している状態では、上述のように、一般に表層1と冷却管10との接着性は高くないので、剥離のリスクが生じる一方で、冷却管10の頂部が表層1下面から離れすぎると、冷却効果が低下するおそれがあるからである。
もっとも、冷却層2の施工において、冷却層2を冷却管10の外径とほぼ同等の厚みとする場合、例えば、充填材30を充填した後、表面を平滑にするためにこて等を用いて行うが、冷却管10の頂部を、厚みを均質化するガイドとして用いることがある。この場合、こてで冷却管10の頂部がなぞられるため、冷却管10の一部が図らずも露出することも有り得る。このような場合においても、当該露出部分が冷却管10の外周の概ね3分の1未満に留まっていれば、表層1と冷却層2との密着性は相当程度確保できる。
冷却層2には、一定の間隔で複数の冷却管10が配設される。
冷却管10は、供給側ヘッダー管40の分岐口に一端が接続され、冷却層2の反対側でU字状に湾曲して折り返し、供給側ヘッダー管40の下を通って、他端において排出側ヘッダー管50に接続される。供給側ヘッダー管40に供給された冷媒液が分岐して冷却管10に供給され、U字状に沿って流れた後、排出側ヘッダー管50で再び合流し、排出される。
供給側ヘッダー管40から冷却層2の反対側でU字状に湾曲するまでの冷却管行き部10Aと、冷却層2の反対側でU字状に湾曲して排出側ヘッダー管50に戻るまでの冷却管戻り部10Bとが交互となるように配列されている。また、冷却管行き部10Aと冷却管戻り部10Bとは同一平面上に配置されている。
冷却管行き部10Aと冷却管戻り部10Bでは、表層1との熱交換により、冷媒液の温度に差があることが予測されるが、上記のように、冷却管行き部10Aと冷却管戻り部10Bとが同一平面上に交互に配置されていることで、冷却管行き部10Aと冷却管戻り部10B内の冷媒液の温度差は全体として平準化される。
冷媒液としては、コスト面などを考慮すると、水が好ましく使用できる。
熱源としては、特に限定されず、図示しないが、例えば、チラー、地中熱、井戸水などを挙げることができる。これらを適宜組み合わせても良い。
図3や図4に示す例では、図2に示す例とは異なり、U字状に折り返さずに直線状の冷却管10が用いられている。その他は、概ね図2と共通するので、重複する説明は割愛する。
図3と図4の違いは、図3では、冷媒液が図の下側から上側へと一方向に供給されているのに対し、図4では、図の下側から上側へと供給されるものと、図の上側から下側に供給されるものとが交互に配列された状態となっている点にある。
冷媒液は、その供給側から排出側に行くほど表層1との熱交換により温度が上昇する可能性があるので、図4に示す実施形態の方が、冷媒液の温度差が全体として平準化されることが期待される。
上述の通り、冷却管10は固定治具20により固定されている。
固定治具20は、冷却管10を保持して固定する保持部21を備えている。冷却管10の管軸方向の複数個所で冷却管10を保持できるように、複数(図5の例では各冷却管10に対し3箇所ずつ)設けられている。
さらに、固定治具20に冷却管10を嵌め込むという簡易な作業で冷却管10を適切な位置に並べることができるので、作業性が良い。
また、固定治具20は、連結部22により連結可能にユニット化されているが、このようにユニット化することで、全ての施工を現場で行うのではなく、事前に冷却管10の配設等を完了しておき、残りの作業を現場で行うことも可能であり、作業の高効率化が実現できる。
まず、保持部21に冷却管10が嵌め込まれた固定治具20を、基盤3の上に敷設する。
この作業は、全てを現場で行うこととしても良い。すなわち、現場で、基盤3の上に、各ユニットを連結部22で連結するようにして固定治具20を敷設したのち、保持部21に冷却管10を嵌め込むこととしても良い。
あるいはまた、予め保持部21に冷却管10が嵌め込んでおいた固定治具20の各ユニットを現場に持っていって、現場では、冷却管10が嵌め込まれた各ユニットの連結22での連結及び基盤3への敷設のみを行うこととしてもよい。
なお、固定治具20は、その貫通孔23を通して基盤3に釘を打ち込むなどすることにより、基盤3に固定される。
充填材30の充填量が多すぎると、表層1と冷却管10の頂部との間に充填材30が多く介在することとなって、冷却管10による表層1の冷却効果が低下するおそれがある。他方、充填材30の充填量が少なすぎると、冷却管10の頂部が露出した状態となって、上述のとおり、冷却層2と表層1の密着性が低下して剥離などの問題を生じるおそれがあるので、このような観点からは、冷却管10の頂部を露出させないか、又は、露出しても当該露出部分が冷却管10の外周の概ね3分の1未満となるように調整することが好ましい。
さらに、表層1の上面に遮熱塗料や反射塗料を塗工、硬化させることにより、上述した遮熱塗膜や反射塗膜を形成してもよい。
トラックの全面にわたって本発明の地表面冷却構造を適用することは、施工時、稼動時のコスト、管理・維持のコストなどが高くなってしまうが、必要な箇所のみに適用すれば、これらのコストを低減することができる。例えば、トラックのうち、クラウチングスタートにおけるスタートラインでは、競技者が地表面に手をつけることになり、冷却の必要が大きいので、クラウチングスタートにおけるスタートラインを含む所定範囲に適用するようにしてもよい。
また、トラックと冷却管10との位置関係としては、トラックのコースに沿う方向に対し概ねこれと交差する方向として冷却管10が配設されているものであってもよいし、トラックのコースに沿う方向を管軸方向として冷却管10が配設されているものであってもよい。
上記いずれの位置関係とするかは、例えば、施工のしやすさや競技者間に競技条件の不平等・不公平を生じさせないかといった観点などを考慮して決定すればよい。
例えば、冷却管が、トラックのコースに沿う方向を管軸方向として配設されている場合には、各コースの競技者にとって、地表面下における冷却管の配設状態が共通のものとなり、競技者間の平等・公平が厳密に保たれると考えられる。
もっとも、図2や図4に示すように、冷媒液の温度差が全体として平準化されるように冷却管10が配設されたものであれば、トラックのコースに沿う方向に対し概ねこれと交差する方向として冷却管10が配設されているものであっても、競技者間の平等・公平はほとんど問題とならないと考えられる。
なお、図面との対応関係を明示するため、下記実施例における各構成要素について、対応する符号を併記する。
以下のようにして、図1に示す地表面冷却構造を備え、固定治具が図5に示すものである実施例1にかかるサンプルを作製した。なお、冷却管の配設状態については、図3に示すとおりとした。
具体的には、基盤3としてのアスファルト(縦300mm×横300mm×厚み70mm)の上に、固定治具20を各ユニットの各連結部22で連結して敷設し、貫通孔23を通して釘を打ち込んで固定治具20を基盤3に固定した。固定治具20としては、ポリプロピレン製のものを用いた。
冷却管10として、外径10mmの架橋ポリエチレン管「エスロペックス(登録商標、以下同様)」(積水化学工業社製)を用いて、固定治具20の保持部21に、冷却管10を嵌め込むようにして、冷却管10を配設した。隣り合う冷却管10,10の間隔dは20mmであった。固定治具20としては、冷却管10の配設状態に合わせて保持部21の位置等を設計したものを用いた。
次に、充填材30として、ゴムチップを充填し、硬化させた。ゴムチップとしては、粒径1.0〜3.0mmのリサイクルゴム粉砕品と、固着材「MS−185S」(美津濃社製)との混合物を用いた。配合割合は、重量比で、リサイクルゴム粉砕品:固着材=1.0:0.225とした。
充填材30の充填量は、冷却管10の頂部が丁度充填材30で被覆されて見えない状態となるようにした。
最後に、ポリウレタン系樹脂「グラントラック(登録商標)」(美津濃社製)に良熱伝導材料(酸化マグネシウム)を添加したものを塗工し、硬化させて、表層1を形成した。表層1の厚みは、15mmであった。
酸化マグネシウムの添加量は、ポリウレタン系樹脂100重量部に対して酸化マグネシウム50重量部となる割合とした。
充填材30を樹脂モルタルに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2にかかるサンプルを作製した。
樹脂モルタルとしては、樹脂「ウルトラゾールCMX−43」(耐油モルタル混和用アクリルエマルジョン。ガンツ化成社製)、砂(5号珪砂)、セメント(普通ポルトランドセメント)及び水の混合物を用いた。これらの配合割合としては、重量比で、樹脂:砂:セメント:水=1.0:3.9:5.6:1.0とした。
冷却管10を外径17mmの架橋ポリエチレン管「エスロペックス」(積水化学工業社製)に変更し、充填材30をアスファルト「開粒度アスファルト舗装13トップ」に変更し、表層1には酸化マグネシウムを添加しないこととし、隣り合う冷却管10,10の間隔dを104mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3にかかるサンプルを作製した。
冷却管10を外径17mmの架橋ポリエチレン管「エスロペックス」(積水化学工業社製)に変更し、充填材30をアスファルト「開粒度アスファルト舗装13トップ」に変更し、隣り合う冷却管10,10の間隔dを104mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4にかかるサンプルを作製した。
充填材30を樹脂モルタルに変更し、隣り合う冷却管10,10の間隔dを44mmに変更し、隣り合う冷却管10,10の間に冷却管10と平行に補強材60としてフライアッシュ「アシェラウッド(登録商標)」(積水化学工業社製)を並べてから充填材30を充填するようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5にかかるサンプルを作製した。
樹脂モルタルとしては、樹脂「ウルトラゾールCMX−43」(耐油モルタル混和用アクリルエマルジョン。ガンツ化成社製)、砂(5号珪砂)、セメント(普通ポルトランドセメント)及び水の混合物を用いた。これらの配合割合としては、重量比で、樹脂:砂:セメント:水=1.0:3.9:5.6:1.0とした。
なお、固定治具20としては、図6に示すように、隣り合う冷却管10,10の間に補強材60(フライアッシュ)を配置できるように設計したものを用いた。
冷却管10を外径17mmの架橋ポリエチレン管「エスロペックス」(積水化学工業社製)に変更し、充填材30をアスファルト「開粒度アスファルト舗装13トップ」に変更し、表層1には酸化マグネシウムを添加しないこととし、隣り合う冷却管10,10の間隔dを134mmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1にかかるサンプルを作製した。
上記各実施例及び比較例にかかるサンプルについて、以下のようにして性能評価試験を行った。
屋外試験では、サンプルを太陽光に曝し、所定位置における表面温度の経時的変化を計測した。
屋内試験では、気温35℃、湿度50%に設定した恒温恒湿内にサンプルを置き、太陽光模擬ランプを照射し、所定位置における表面温度の経時的変化を計測した。
各実施例及び比較例にかかるサンプルについて、冷却層による冷却効果及びムラを評価するため、冷却水を供給したものと供給しないものを用意し、これらを同一条件で同時に試験した。
冷却水は、チラーにより冷却したもので、平均14.3(±0.5)℃の冷却水が供給されるようにチラーを設定した。
温度計測は、冷却水の供給側と排出側の中央となる位置で、冷却管直上及び冷却管間における表層の表面温度について行い、その測定は、T型ケーブルタイプの熱電対を用いて、データロガーにより記録した。
いずれの実施例においても、優れた冷却効果が得られ、かつ、ムラが生じていないことが分かる。
また、実施例2及び実施例5については、屋内試験、屋外試験双方での試験を実施し、屋内試験での結果が、屋外即ち実際使用される環境での結果と一致するかを検証したが、その結果、殆ど同等と判断できる結果を得ることができ、屋内試験が十分に実際使用される環境を再現しているといえることが判明した。
測定方法:ASTM E 1530−4
測定機器:アルバック理工(株)製 定常法熱伝導率測定装置 GH−1
試験片形状:25mm×25mm、厚さ7mm
圧力:0.1MPa
熱板温度差:20℃
測定温度:60℃
この結果を踏まえ、実施例3と実施例4とを比較すると、冷却管10直上の冷却効果が約2℃向上し冷却効率が増していることが効果として判明した。
一定条件下において、冷却管10,10の間隔d、表層1の厚みt、表層1の熱伝導率の各条件のみを変更した場合に、冷却管10直上及び冷却管10,10間の表面温度がどのように変化するかを、汎用有限要素法解析ソフトウェア「ABAQUS6.14(アバカス)」(ダッソーシステム社製)を用いてシミュレーションした。
シミュレーションは、材料として比較的熱伝導率の悪いスポーツ施設やレジャー施設に用いられる代表的な表層材料をカバーできる範囲となるように、表層の熱伝導率を設定した。
念のため、上記各実施例及び比較例の実測値に対応するシミュレーション結果を上述の表1の下部に併記している。さらに、実測値とシミュレーション結果との関係をグラフ化したものを図7及び8に示す。
表1、図7及び図8から、冷却効果及びムラのいずれについても、実際に、実測値とシミュレーション結果とが信頼できる程度に一致していることが分かる。すなわち、シミュレーション値は実測値と同等に扱って差し支えないものである。
また、上述の実測値とシミュレーション結果のデータを用いて、表層1の厚みtと冷却管10,10の間隔dとの関係をグラフ化したものを図9に示す。
なお、表2において、基準表面温度は、冷却層による冷却効果がない場合の温度を指す。
また、表2においては、冷却効果の基準を基準表面温度に対して冷却管間の温度が7℃以上下回っていることとし、ムラの基準をムラが5℃以下であることとし、基準を満たす場合に「○」の評価としている。表2の効果判定における「総合」の項目における○の評価、及び図9における「有効」とは、前記の基準を両方とも満たしているものを指す。
表2及び図9に示す結果から、
d≦−4t+205 (1)
d≦5.9t+15.5 (2)
の関係をともに満たす場合に、十分かつムラのない冷却効果が発揮されることが分かった。
特に、表層1の厚みtの値が小さい場合には、ムラの問題が起こりやすくなり、冷却管10,10の間隔dの値を正しく設定することが重要であることが示唆されている。
このように、本発明の効果を得る上では、表層1の厚みtと冷却管10,10の間隔dとをそれぞれ独立に検討するのではなく、両者と効果との関係について厳密に検討する必要があり、本発明はその必要性に初めて気づき、前記関係を上記数式として確立した点に高い産業的価値がある。
上記において、冷却効果の基準をピーク温度に対して7℃以上とし、ムラの基準を5℃以下としているが、これらの基準が合理的な基準であることを以下に付記する。
<冷却効果>
陸上競技経験の被験者10名に協力してもらい、ピーク温度62℃に対して、冷却効果の異なる種々の表層面について、手を当ててもらい、以下の判定基準で判定してもらった。
なお、以下の判定は、一定の時間間隔をあけて行ってもらうようにしたので、被験者における感覚の麻痺の影響はない。
0・・・熱い、長時間触っていられない
1・・・熱さを感じるものの、長時間触れていられる
2・・・熱さを感じない
3・・・冷たい
結果を下表3及び図10に示す。
なお、上記結果は、ピーク温度62℃に対する温度差においての結果であるが、本発明を実際に実施する際においては、ピーク温度が62℃を超える場合も想定されない訳ではない。しかし、ピーク温度が62℃を超えるのは例外的な場合と考えて差し支えなく、仮にピーク温度が62℃を超える状況で本発明を実施する場合であっても、冷媒液の温度を下げるなどの対応も可能である。従って、上記のように、ピーク温度62℃に対する温度差において7℃以上の温度差をもって冷却効果ありと基準設定することの合理性が失われるものではない。
陸上競技経験の被験者10名に協力してもらい、ピーク温度62℃に対して、ムラの異なる種々の表層面について、手を当ててもらい、以下の判定基準で判定してもらった。
なお、以下の判定の際には、冷却管10に沿うように、指先から手のひらで接するように触れてもらい、また、指先のみでもその領域に触れてもらい、これらを総合的な判断により、冷却管10直上、冷却管10,10間の比較をしてもらった。また、一定の時間間隔をあけて判定を行ってもらうようにしたので、被験者における感覚の麻痺の影響はない。
0・・・差を感じる
1・・・殆ど感じない/気にならない
2・・・差を感じない
結果を下表4及び図11に示す。
2 冷却層
10 冷却管
20 固定治具
21 保持部
22 連結部
23 貫通孔
30 充填材
40 供給側ヘッダー管
50 排出側ヘッダー管
60 補強材
3 基盤
Claims (12)
- 地表面となる表層と、前記表層の直下に配置された冷却層とを備える地表面冷却構造であって、
前記表層の熱伝導率が0.05〜0.5W/m・Kであり、
前記冷却層は、複数の冷却管が一定の間隔で配設され、前記冷却管内に冷媒液を流すことによって表層を冷却する作用を有するものであり、
前記表層の厚みをt[mm]とし、前記冷却層において隣り合う冷却管の間隔をd[mm]とするとき、
d≦−4t+205 (1)
d≦5.9t+15.5 (2)
の関係をともに満たす、
地表面冷却構造。 - 前記冷却層は、前記冷却管が配置されている箇所以外に充填材が充填されており、前記冷却管の頂部が前記表層下面に近接している、請求項1に記載の地表面冷却構造。
- 前記表層の材料として良熱伝導材料が添加されている、請求項1又は2に記載の地表面冷却構造。
- 前記良熱伝導材料が酸化マグネシウムである、請求項3に記載の地表面冷却構造。
- 前記表層の厚みtが40mm以下である、請求項1から4までのいずれかに記載の地表面冷却構造。
- 前記冷却管がポリエチレン管又はポリブテン管である、請求項1から5までのいずれかに記載の地表面冷却構造。
- 前記表層がポリウレタン系樹脂層である、請求項1から6までのいずれかに記載の地表面冷却構造。
- 前記冷却層は、前記複数の冷却管を固定する固定治具をも備え、
前記固定治具は、前記複数の冷却管のそれぞれについて、当該各冷却管の管軸方向の複数個所で冷却管を保持して固定する保持部を有する、
請求項1から7までのいずれかに記載の地表面冷却構造。 - 陸上競技場のトラックに適用されている、請求項1から8までのいずれかに記載の地表面冷却構造。
- 前記冷却管が、前記トラックのコースに沿う方向に対し概ねこれと交差する方向として配設されている、請求項9に記載の地表面冷却構造。
- 前記冷却管が、前記トラックのコースに沿う方向を管軸方向として配設されている、請求項9に記載の地表面冷却構造。
- 前記トラックのうち、クラウチングスタートにおけるスタートラインを含む所定範囲に適用されている、請求項9から11までのいずれかに記載の地表面冷却構造。
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