JP2016222809A - セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】薄膜でありながら、硬度が高く、ブリードアウトが抑制され、偏光板保護フィルムとして用いた際に高温高湿環境下での偏光子耐久性が良好であり、紫外線に対する偏光子・液晶の保護機能に優れるセルロースアシレートフィルム、このセルロースアシレートフィルムを有する偏光板、及び液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】セルロースアシレートと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、エステルオリゴマーとを含有するセルロースアシレートフィルムであって、上記セルロースアシレートフィルムの膜厚が10μm以上40μm以下であり、上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、上記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上20質量部以下含有し、上記エステルオリゴマーが、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含み、末端が脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止され、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下である、セルロースアシレートフィルム、このセルロースアシレートフィルムを有する偏光板、及び液晶表示装置。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置に関する。
セルロースアセテートフィルムに代表されるセルロースアシレートフィルムは透明性が高く、従来、光学フィルムとして種々の用途で利用されている。例えば、偏光子に使用されるポリビニルアルコールとの密着性を容易に確保できることから液晶表示装置における偏光板保護フィルムとして使用されている。
近年、液晶表示装置、特に中小型用途の液晶表示装置は薄型化が急激に進んでおり、使用される部材の薄膜化、特に偏光板保護フィルムなどの薄膜化が求められている。また、中小型の液晶表示装置は、デジタルサイネージとしての使用や、その他屋外使用により過酷な環境変化に晒されることも多く、高温高湿環境下での耐久性も重要な性能である。偏光板保護フィルムが薄膜化すると、厚み当たりに要求される偏光子保護機能は増加することとなり、これまで以上に優れた紫外線吸収能や高温高湿環境下での偏光子耐久性を保証出来る薄膜の光学フィルムが必要である。
特許文献1には、主鎖骨格にシクロヘキサン環を有し、シクロヘキサン環の1位および2位で、エステル結合でポリマー化しているポリエステル樹脂を含むセルロースエステルフィルムが記載されている。
特許文献2には、両末端にベンゼンカルボン酸またはフェノール残基を有し、脂肪族環状グリコールおよび脂肪族環状二塩基酸を有するエステル系可塑剤を含有するセルロースエステルフィルムが記載されている。
国際公開第2014/027594号 特開2007−84692号公報
しかしながら、従来のセルロースアシレートフィルムは、薄膜化し、更に紫外線に対する偏光子・液晶の保護機能を高める目的で高濃度の紫外線吸収剤を添加すると、ブリードアウト(製膜後に紫外線吸収剤の析出)が起きてしまうという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、薄膜でありながら、硬度が高く、ブリードアウトが抑制され、偏光板保護フィルムとして用いた際に高温高湿環境下での偏光子耐久性が良好であり、紫外線に対する偏光子・液晶の保護機能に優れるセルロースアシレートフィルム、このセルロースアシレートフィルムを有する偏光板、及び液晶表示装置を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキシルジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキシルジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含むオリゴマーにおいて、脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で末端を封止したところ、このオリゴマーを含むセルロースアシレートフィルムは、高濃度の紫外線吸収剤を添加した場合においてもブリードアウトを起こさないことがわかった。
すなわち下記手段により上記課題は解決できる。
<1>
セルロースアシレートと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、エステルオリゴマーとを含有するセルロースアシレートフィルムであって、
上記セルロースアシレートフィルムの膜厚が10μm以上40μm以下であり、
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、上記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上20質量部以下含有し、
上記エステルオリゴマーが、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含み、末端が脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止され、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下である、
セルロースアシレートフィルム。
<2>
上記脂環構造を有するモノカルボン酸が、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸である<1>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<3>
上記脂環構造を有するモノカルボン酸がシクロヘキサンカルボン酸である<2>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<4>
上記エステルオリゴマーの数平均分子量が、500〜3000である<1>〜<3>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<5>
上記エステルオリゴマーの数平均分子量が、750〜1500である<4>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<6>
上記ジオールが、エチレングリコール、プロパンジオール、又はブタンジオールである<1>〜<5>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<7>
上記ジオールが、プロパンジオール又はブタンジオールである<6>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<8>
上記ジオールが分岐構造を有する<7>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<9>
上記エステルオリゴマーの含有量が、上記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上30質量部以下である<1>〜<8>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<10>
上記エステルオリゴマーの含有量が、上記セルロースアシレート100質量部に対して、10質量部以上13質量部以下である<9>に記載のセルロースアシレートフィルム。
<11>
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が、上記セルロースアシレート100質量部に対して、5質量部以上10質量部以下である<1>〜<10>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
<12>
偏光子と、少なくとも1枚の<1>〜<11>のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムとを有する偏光板。
<13>
液晶セルと、少なくとも1枚の<12>に記載の偏光板とを有する液晶表示装置。
本発明によれば、薄膜でありながら、硬度が高く、ブリードアウトが抑制され、偏光板保護フィルムとして用いた際に高温高湿環境下での偏光子耐久性が良好であり、紫外線に対する偏光子・液晶の保護機能に優れるセルロースアシレートフィルム、このセルロースアシレートフィルムを有する偏光板、及び液晶表示装置を提供することができる。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
[セルロースアシレートフィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、エステルオリゴマーとを含有し、
上記セルロースアシレートフィルムの膜厚が10μm以上40μm以下であり、
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、上記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上20質量部以下含有し、
上記エステルオリゴマーが、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含み、末端が脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止され、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下である、
セルロースアシレートフィルムである。
<セルロースアシレート>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートを含む。本発明のセルロースアシレートフィルムは、一種又は二種以上のセルロースアシレートを主成分として含むことが好ましい。ここで、「主成分」とは、原料として単一のポリマーを含む場合には、そのポリマーのことを意味し、原料として二種以上のポリマーを含む場合には、最も質量分率の高いポリマーのことを意味する。
上記セルロースアシレートの原料セルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
本発明に用いられるセルロースアシレートはセルロースの水酸基の水素原子が、アシル基によって置換されたものである。アシル基の炭素原子数は、2〜22であるのが好ましい。アシル基は、脂肪族アシル基であっても芳香族アシル基であってもよく、単一でも2種類以上のアシル基によって置換されていてもよい。具体的には、上記セルロースアシレートの例には、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、芳香族カルボニルエステル、及び芳香族アルキルカルボニルエステルが含まれる。アルキル部位、アルケニル部位、芳香族部位、及び芳香族アルキル部位のそれぞれは、さらに置換基を有していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、i−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、及びシンナモイル基などが含まれる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、及びシンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、及びブタノイルがより好ましく、アセチルが最も好ましい。
使用するセルロースアシレートのアシル置換度については特に限定されないが、アシル置換度が2.00〜2.95のセルロースアシレートを使用すると、製膜性、及び製造されるフィルムの種々の特性の観点で好ましい。なお、アシル置換度は、酢酸等の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTM
D−817−91に準じて実施することができる。
アセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類のアシル基を有するセルロースアシレートの態様では、その全置換度が2.50〜2.95であることが好ましく、より好ましいアシル置換度は2.60〜2.95であり、さらに好ましくは2.65〜2.95である。
アセチル基のみを有するセルロールアシレート、即ちセルロースアセテートの態様では、その全置換度が2.00〜2.95であることが好ましい。さらには置換度が2.40〜2.95であることがより好ましく、2.85〜2.95であることが更に好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度がこの上限値以下であれば、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなりすぎることがなく流延によるフィルム作製が容易にできるので好ましい。重合度がこの下限値以上であれば、作製したフィルムの強度が低下するなどの不都合が生じないので好ましい。粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法{宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、第18巻第1号、105〜120頁(1962年)}により測定できる。この方法は特開平9−95538号公報にも詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜4.0であることがさらに好ましく、2.3〜3.4であることがよりさらに好ましい。
<エステルオリゴマー>
本発明で用いられるエステルオリゴマーについて説明する。
本発明で用いられるエステルオリゴマーは、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含み、末端が脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止され、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下を満たすオリゴマーである。
ここで、本発明で使用されるエステルオリゴマーは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とジオールとの合成により得られるエステルオリゴマーであることが好ましい。
以下、本発明におけるエステルオリゴマーの合成に好ましく用いることができるジカルボン酸及びジオールについて説明する。
本発明で使用されるエステルオリゴマーは、炭素数2〜10の脂肪族ジオールと、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方から合成することが好ましく、炭素数2〜10の非環状の脂肪族ジオールと、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方から合成することがより好ましい。
(ジカルボン酸)
ジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方を少なくとも用いることが好ましく、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位を少なくとも用いることがより好ましい。
ここで、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、構造中のシクロヘキサン環が有する水素原子が、置換基(R)によって置換されていてもよい。
Rは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基または炭素数6のアリール基を表し、環構造を形成していてもよく、置換基を有していてもよく、Rが表す基の炭素数の定義にはRが表す基がさらに有していてもよい置換基の炭素数は含まれない。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
炭素数2〜8のアルケニル基としては、エテニル基、1−メチルエテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−メチレンブチル基等が挙げられる。炭素数2〜8のアルキニル基としては、エチニル基、1−メチルエチニル基、1−プロピン基、2−プロピン基、2−メチル−1−プロピン基、2−メチル−2−プロピン基、2−メチレンブチン基等が挙げられる。
炭素数6のアリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基などが挙げられる。 Rは環構造を形成していてもよく、環構造として例えば、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ボロニル基、イソボロニル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
Rは置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルコキシ置換アルキル基、カルボキシル基などが挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。ただし、Rが表す基の炭素数の定義にはRが表す基がさらに有していてもよい置換基の炭素数は含まれず、例えばメチル基で置換されたフェニル基は、置換基としてメチル基を有する炭素数6のアリール基であるため、Rに含まれる(すなわち、メチル基で置換されたフェニル基は、炭素数7のアリール基ではない)。
Rによって置換されていてもよいジカルボン酸構造中のシクロヘキサン環が有する水素原子数は、0〜8個が好ましく、より好ましくは6〜8個であり、更に好ましくは8個、すなわち無置換であることが硬度の観点から好ましい。
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸がRによって置換されている場合、反応性、原料調達の観点から1,2−シクロヘキサンジカルボン酸におけるシクロヘキサン環の4位にRが置換されていることが好ましい。
Rによって置換されたジカルボン酸としては、具体的には、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−エチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4,5−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−イソボロニル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−フェニル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ノルボルネンジカルボン酸, デカヒドロ-1,4-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロ-1,2-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。なかでも、入手しやすさの観点から、4−メチル−1,2−シクロヘキシルジカルボン酸が好ましい。
本発明で使用されるエステルオリゴマーはジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の単位をエステルオリゴマー構成単位として併用してもよい。その場合は、その他の単位は、炭素数2〜10の非環状の脂肪族ジオールと1,2−シクロヘキシルジカルボン酸及び1,4−シクロヘキシルジカルボン酸以外のジカルボン酸から合成することが好ましい。1,2−シクロヘキシルジカルボン酸及び1,4−シクロヘキシルジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸などが挙げられる。
ただし、本発明で使用されるエステルオリゴマー中、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方の合計のモル比率は80%以上が好ましく、90%以上であることがより好ましい。
(ジオール)
ジオールとしては、炭素数2〜10の脂肪族ジオールが好ましい。
脂環構造を含む脂肪族ジオールとしては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
非環状の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールを挙げることができ、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。
ジオールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、又はブタンジオールであることが硬度の観点から好ましく、エチレングリコールであることが硬度の観点からより好ましい。また、ジオール中の炭素数増加に起因するセルロースアシレートフィルム疎水化により、本発明のフィルムを偏光板に用いた際の偏光子耐久性が向上するため、偏光子耐久性の観点からはプロパンジオール又はブタンジオールであることがより好ましい。さらに、ジオールが分岐構造を有するもの(たとえばプロピレングリコールなど)であることがエステルオリゴマーの粘度低下(ハンドリング適性確保)の観点から特に好ましい。
ジオールの炭素数は、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。2種以上のジオールを用いる場合には、2種以上の平均炭素数が上記範囲となることが好ましい。ジオールの炭素数が上記範囲であれば、セルロースアシレート及び紫外線吸収剤との相溶性に優れ、フィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
(末端構造)
本発明に用いられるエステルオリゴマーの末端は、脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止されたものである。すなわち、エステルオリゴマーは、末端の水酸基と脂環構造を有するモノカルボン酸を反応させて得られる末端構造(脂環構造を有するモノカルボン酸残基)を有する。
詳細な作用機構は不明であるが、このように脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止することによって得られるエステルオリゴマーは、セルロースアシレートやベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(「UV吸収剤」ともいう)との相溶性に優れるため、UV吸収剤を高濃度添加した際もブリードアウトの起こらないセルロースアシレートフィルムを提供することができるものと推察される。
また、末端を疎水性官能基で保護することは、偏光板の高温高湿環境下での偏光子耐久性の改善とフィルム表面性の改善に有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
ここで、残基とは、上記エステルオリゴマーの部分構造で、上記エステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。モノカルボン酸R’−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR’−CO−である。
脂環構造を有するモノカルボン酸としては、炭素数4〜12の脂環構造を有するモノカルボン酸であることが好ましく、炭素数4〜12のシクロアルカンモノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸であることが特に好ましい。脂環構造を有するモノカルボン酸としては、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸であり、かつ、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸が少なくとも1つのシクロヘキサン環を含むことが最も好ましい。
具体的にはシクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−エチルシクロヘキサンカルボン酸、4−プロピルシクロヘキサンカルボン酸、4−tert−ブチルシクロヘキサンカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、シクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸がより好ましく、シクロヘキサンカルボン酸であることが最も好ましい。なお、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸であり、かつ、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸が少なくとも1つのシクロヘキサン環を含む化合物には、シクロヘキサン環の置換基どうしが連結した縮合環を含む、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸なども含まれる。
封止に用いる脂環構造を有するモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。このとき、上記エステルオリゴマーの両末端は脂環構造を有するモノカルボン酸残基となっていることが好ましい。末端を疎水性かつ、嵩高い脂環構造を有する官能基で保護することにより、セルロースアシレートやUV吸収剤との相溶性を高めるとともに、偏光板の高温高湿環境下での偏光子耐久性の改善に有効であり、また、フィルムの剛性を改良することができる。
上記エステルオリゴマーの酸価は10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、1mgKOH/g以下であることが特に好ましい。上記エステルオリゴマーの水酸基価は30mgKOH/g以下であることが紫外線吸収剤のブリードアウト抑制する観点から必要であり、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、1mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
エステルオリゴマーの水酸基価は以下のようにして測定できる。
フィルムをメタノールに浸漬させて、エステルオリゴマーを抽出する。抽出液をNMR(Nuclear Magnetic Resonance、核磁気共鳴),HPLC(High performance liquid chromatography、高速液体クロマトグラフィー)等により解析し、エステルオリゴマーの分子構造と添加量を決定する。抽出液を蒸発させて、添加量成分1gを回収し、JIS K0700に記載の方法にて水酸基価を測定する。抽出物の水酸基価から、決定したエステルオリゴマーの添加量と水酸基の有無を考慮して、エステルオリゴマーの水酸基価を決定する。
(合成方法)
本発明で使用されるエステルオリゴマーの合成方法としては、ジカルボン酸とジオールの脱水縮合反応、又は、ジオールへの無水ジカルボン酸の付加および脱水縮合反応などの公知の方法を利用することができる。
さらに、上記エステルオリゴマーの合成は、常法により上記ジカルボン酸と、上記ジオールと、末端封止用の脂環構造を有するモノカルボン酸とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとジオール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。
本発明で使用されるエステルオリゴマーの数平均分子量(Mn)は、500〜3000であることが好ましく、600〜1500がより好ましく、750〜1500がさらに好ましい。エステルオリゴマーの数平均分子量は500以上であれば揮発性が低くなり、光学フィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染を生じにくくなる。また、エステルオリゴマーの数平均分子量は3000以下であればセルロースアシレート及びUV吸収剤との相溶性が高くなり、製膜時及び加熱延伸時のブリードアウトが生じにくくなる。
本発明で使用されるエステルオリゴマーの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定、評価することができる。具体的には、以下の方法で測定した値を採用する。上記エステルオリゴマーをTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させ、東ソー株式会社製高速GPCを用いて行った。数平均分子量Mnはポリスチレン換算で計算した。より詳細な条件を以下に示す。
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM−H、HZ4000, HZ2000(東ソー株式会社製)を使用する;
カラム温度:40℃;
試料濃度:0.1質量%;
検出器:EcoSEC HLC−8320GPC(東ソー株式会社製);
流量 :0.01mL/min
校正曲線:標準ポリスチレン(TSK standard ポリスチレン、東ソー株式会社製、Mw=7000000〜1000)の6サンプルによる校正曲線を使用する。
(添加量(含有量))
本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記エステルオリゴマーの含有量が、上記セルロースアシレート100質量部に対して4〜30質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましく、10〜13質量部であることが特に好ましい。上記範囲とすることで、フィルムの硬度が特に良好となる。エステルオリゴマーは、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(「UV吸収剤」とも言う)を含有する。UV吸収剤は、液晶ディスプレイの液晶等が紫外線により劣化することを防止し、高温高湿環境下での偏光子耐久性の改善に寄与する。特に、本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板の偏光子を保護する偏光板保護フィルムや、液晶表示装置の表面保護フィルムとして利用する態様において、UV吸収剤の添加は有効である。
本発明に用いることができるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に特に制限はないが、下記に構造を示す化合物や、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、又はペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられ、使用するオリゴマーとの相溶性, ハロゲンフリーの観点から、下記に構造を示す化合物を用いることが好ましい。
Figure 2016222809
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用量は、上記セルロースアシレート100質量部に対して4〜20質量部であり、4〜15質量部であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。4質量部以上とすることで厚さ25μm以上で十分な紫外線保護機能が得られ、20質量部以下とすることでブリードアウトを抑制できる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を2種以上併用する場合においては、使用合計量が上記範囲となっていることが好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤以外に、本発明に使用可能なUV吸収剤については特に制限はない。従来セルロースアシレートフィルムに使用されているUV吸収剤はいずれも用いることができる。上記紫外線吸収剤としては、特開2006−184874号公報に記載の化合物を挙げることができる。高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることが出来、特に特開平6−148430号公報に記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
<偏光子耐久性改良剤>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、高温高湿環境下での偏光子耐久性を改良するため、添加剤として偏光子耐久性改良剤を含んでいてもよい。
偏光子耐久性改良剤としては、公知の有機酸などを用いることができ、例えば、多価カルボン酸のモノグリセリドなどの有機酸モノグリセリド、特開2012−72348号公報に記載の化合物、バルビツール酸誘導体などを挙げることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムに含まれる偏光子耐久性改良剤の含有量としては、セルロースアシレートに対して、6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。
<他の添加剤>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤の少なくとも1種をさらに含有していてもよい。他の添加剤の例には、上記エステルオリゴマー以外の他の高分子系可塑剤(例えば、リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、重縮合オリゴマー系可塑剤等)、酸化防止剤および後述のマット剤等が含まれる。
本発明のセルロースアシレートフィルムに含まれる上記他の添加剤の含有量としては、セルロースアシレート100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、実質的に含まないことがさらに好ましい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムに含まれるレターデーション発現剤(レターデーション低減剤も含む)の含有量としては、セルロースアシレート100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、実質的に含まないことがさらに好ましい。
(他の高分子系可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、上記エステルオリゴマー以外に他の高分子系可塑剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。他の高分子系可塑剤としては、ポリエステルポリウレタン系可塑剤、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル系ポリマー(エステル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、tert−ノニル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基、オレイル基、ベンジル基、フェニル基など)、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、酢酸ビニル、等が挙げられる。
これらの中でも、特にアクリル系ポリマーを併用することも好ましい。本発明においては、アクリル系ポリマーはアクリル酸又はメタクリル酸アルキルエステル等のモノマーから合成されるホモポリマー又はコポリマーが好ましい。
芳香環を持たないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。また、芳香族環を有するアクリル系ポリマーに用いるアクリルモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレンなどを挙げることが出来る。
また、上記アクリル系ポリマーがコポリマーの場合は、X’(親水基を有するモノマー成分)及びY’(親水基を持たないモノマー成分)からなり、X’:Y’(モル比)が1:1〜1:99が好ましい。アクリル系ポリマーの含有量は、セルロースアシレートに対して1〜20質量%であることが好ましい。これらのアクリルポリマーは、特開2003−12859号公報に記載されている方法を参考にして合成することができる。
(酸化防止剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、公知の酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を含めることができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を含めることが好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムの酸化防止剤の含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05〜5.0質量部であることが好ましい。
<セルロースアシレートフィルムの製造方法>
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いて製膜することができる。例えば、溶液流延製膜法及び溶融製膜法のいずれを利用して製膜してもよい。フィルムの面状を改善する観点から、本発明のセルロースアシレートフィルムは、溶液流延製膜法を利用して製造するのが好ましい。以下、溶液流延製膜法を用いる場合を例に説明するが、本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法は溶液流延製膜法に限定されるものではない。なお、溶融製膜法を用いる場合については、公知の方法を用いることができる。
−溶液−
溶液流延製膜方法では、セルロースアシレート、UV吸収剤、エステルオリゴマー、及び必要に応じて各種添加剤を含有する溶液を用いてウェブを形成する。以下において、溶液流延製膜方法に用いることができる溶液(以下、「セルロースアシレート溶液」、「ドープ」と称する場合もある)について説明する。
−溶媒−
本発明で用いられるセルロースアシレートは溶媒に溶解させてドープを形成し、これを基材(たとえば金属支持体)上に流延しフィルムを形成させる。この際に押し出しあるいは流延後に溶媒を蒸発させる必要性があるため、揮発性の溶媒を用いることが好ましい。
更に、反応性金属化合物や触媒等と反応せず、かつ流延用基材を溶解しないものである。又、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
また、セルロースアシレートと加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を各々別の溶媒に溶解し後に混合してもよい。
ここで、上記セルロースアシレートに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
上記良溶媒の例としてはアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン、アセト酢酸メチルなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチルおよび塩化メチレンが好ましい。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。
これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることでウェブ(支持体上にセルロースアシレートのドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースアシレートの溶解を促進したりする役割もあり、反応性金属化合物のゲル化、析出、粘度上昇を抑える役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。
これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からメタノール、エタノールが好ましい。エタノールがもっとも好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロースエステルに対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
本発明においてセルロースアシレートは、水酸基やエステル、ケトン等の水素結合性の官能基を含むため、全溶媒中に5〜30質量%、より好ましくは7〜25質量%、さらに好ましくは10〜20質量%のアルコールを含有することが流延支持体からの剥離荷重低減の観点から好ましい。
また、本発明においては、水を少量含有させることも溶液粘度や乾燥時のウェットフィルム状態の膜強度を高めたり、ドラム法流延時のドープ強度を高めたりするのに有効であり、例えば溶液全体に対して0.1〜5質量%含有させてもよく、より好ましくは0.1〜3質量%含有させてもよく、特には0.2〜2質量%含有させてもよい。
本発明におけるセルロースアシレート溶液の溶媒として好ましく用いられる有機溶媒の組み合せの例については、特開2009−262551号公報に挙げられている。
また、必要に応じて、非ハロゲン系有機溶媒を主溶媒とすることもでき、詳細な記載は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)に記載がある。
本発明におけるセルロースアシレート溶液中のセルロースアシレート濃度は、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましく、15〜30質量%が最も好ましい。
上記セルロースアシレート濃度は、セルロースアシレートを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整することができる。また予め低濃度(例えば4〜14質量%)の溶液を調製した後に、溶媒を蒸発させる等によって濃縮してもよい。さらに、予め高濃度の溶液を調製後に、希釈してもよい。また、添加剤を添加することで、セルロースアシレートの濃度を低下させることもできる。
添加剤を添加する時期は、添加剤の種類に応じて適宜決定することができる。たとえば、エステルオリゴマーやUV吸収剤は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
このような条件を満たし好ましい高分子化合物であるセルロースアシレートを高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤は塩化メチレン:エチルアルコールの比が95:5〜80:20の混合溶剤である。あるいは、酢酸メチル:エチルアルコール60:40〜95:5の混合溶媒も好ましく用いられる。
(1)溶解工程
セルロースアシレートに対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中でこのセルロースアシレート、添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいはセルロースアシレート溶液に添加剤溶液を混合してドープを形成する工程である。
セルロースアシレートの溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のセルロースアシレートの濃度は10〜35質量%が好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送ることが好ましい。
(2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
(3)溶媒蒸発工程
ウェブ(セルロースアシレートフィルムの完成品となる前の状態であって、まだ溶媒を多く含むものをこう呼ぶ)を金属支持体上で加熱し、金属支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または金属支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が、乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。
(4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
ここで、製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離することで製膜速度を上げることができる)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。例えば、ドープ中にセルロースアシレートに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることができる。
金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。本発明においては、この金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
また、この剥離位置におけるウェブの残留溶媒量を10〜150質量%とすることが好ましく、更に10〜120質量%とすることが好ましい。
残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(質量%)=[(M−N)/N]×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
(5)乾燥または熱処理工程、延伸工程
上記剥離工程後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置、および/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いて、ウェブを乾燥することが好ましい。
本発明において熱処理をする場合、この熱処理温度はTg(ガラス転移温度)−5℃未満であり、Tg−20℃以上Tg−5℃未満であることが好ましく、Tg−15℃以上Tg−5℃未満であることがより好ましい。
また、熱処理温度は、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましく、10分程度であることが特に好ましい。
乾燥および熱処理の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。使用する溶媒によって、温度、風量及び時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて条件を適宜選べばよい。
延伸処理は、MD(搬送方向)及びTD(搬送方向に直交する方向)のいずれか一方向に行ってもよいし、双方の方向に2軸延伸してもよい。2軸延伸が好ましい。延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。また、引張り弾性率は、使用するセルロースアシレートの種類やアシル置換度を調整したり、添加剤の種類を選択することで、又はその割合を調整したりすることで、上記範囲に調整することができる。
フィルム搬送方向MDへの延伸における延伸倍率は、0〜20%であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましく、0〜10%であることが特に好ましい。上記延伸の際のウェブの延伸倍率(伸び)は、金属支持体速度と剥ぎ取り速度(剥ぎ取りロールドロー)との周速差により達成することができる。例えば、2つのニップロールを有する装置を用いた場合、入口側のニップロールの回転速度よりも、出口側のニップロールの回転速度を速くすることにより、搬送方向(縦方向)にフィルムを好ましく延伸することができる。このような延伸が施されることによって、MDの引張り弾性率を調整できる。
なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
フィルム搬送方向に直交する方向TDへの延伸における延伸倍率は、0〜30%であることが好ましく、1〜20%であることがより好ましく、5〜15%であることが特に好ましい。
なお、本発明においては、フィルム搬送方向に直交する方向TDに延伸する方法として、テンター装置を用いて延伸することが好ましい。
2軸延伸の際に縦方向に、例えば0.8〜1.0倍に緩和させて所望のレターデーション値を得ることもできる。延伸倍率は様々な目的に応じて設定される。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する場合、長尺方向に一軸延伸することもできる。
延伸の際の温度が、Tg以下であると、延伸方向の引張り弾性率が上昇するので好ましい。延伸温度は、Tg−50℃〜Tgであることが好ましく、Tg−30℃〜Tg−5℃であることがより好ましい。一方、上記温度条件で延伸すると、延伸方向の引張り弾性率が上昇する一方で、それに直交する方向の引張り弾性率は低下する傾向がある。従って、延伸によりMD及びTDの双方の方向の引張り弾性率を上昇するためには、上記温度範囲で、双方の方向に延伸処理する、即ち2軸延伸処理するのが好ましい。
なお、延伸工程後に乾燥してもよい。延伸工程後に乾燥する場合、使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。本発明では、延伸工程後の乾燥温度は、延伸工程の延伸温度よりも低い方が、フィルムを液晶表示装置に組み込んだときの正面コントラストを上昇させる観点から好ましい。
(6)巻き取り
以上のようにして得られた、フィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。フィルムの幅は、0.5〜5.0mが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0mであり、さらに好ましくは1.0〜2.5mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
このようにして得られたウェブを巻き取り、セルロースアシレートフィルムを得ることができる。
<層構成>
セルロースアシレートフィルムは単層フィルムであっても、2層以上の積層構造を有していてもよい。例えば、コア層と外層(表層、スキン層と呼ばれることもある)の2層からなる積層構造であることや、外層、コア層、外層の3層からなる積層構造であることも好ましく、これらの積層構造を共流延によって製膜された態様であることも好ましい。
本発明で使用するセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層構造を有している場合、外層には、さらにマット剤を添加することが好ましい。マット剤としては、例えば特開2011−127045号公報に記載のものなどを用いることができ、例えば平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子などを用いることができる。
<セルロースアシレートフィルムの特性>
(セルロースアシレートフィルムの厚み)
本発明のセルロースアシレートフィルムの厚みは、10〜40μmであり、15〜35μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましく、30μm未満であることがより薄膜化の観点から特に好ましい。上記範囲において、エステルオリゴマー添加によるブリードアウト抑制効果が高く得られる。
本発明で使用するセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層構造を有している場合は、外層の1層あたりの厚みはそれぞれ1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましく、1〜3μmであることが特に好ましい。
<セルロースアシレートフィルムの用途>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板保護フィルム、画像表示面に配置される表面保護フィルム、等種々の用途に有用である。各用途に適する機能を示すために、本発明のセルロースアシレートフィルムは、例えば、ハードコート層、防眩層、クリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層等を有していてもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光子との貼合性が良好であり、偏光板を必須の部材とする液晶表示装置に利用するのに適する。
液晶表示装置などの表示装置の表面側に用いられる偏光板保護フィルムには防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層を有することが好ましい。
また、偏光板の作製時には、本発明のセルロースアシレートフィルムが面内遅相軸を有する場合は、この面内遅相軸と偏光子との透過軸が平行もしくは直交するように貼合することが好ましい。
[ハードコート層]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、厚みが0.1〜6μm(好ましくは3〜6μm)のハードコート層を有することが好ましい態様の一つである。上記範囲の薄いハードコート層を有することで、脆性やカール抑制などの物性改善、軽量化および製造コスト低減がなされたハードコート層を含む光学フィルムになる。
また、ハードコート層の硬化性組成物を本発明のセルロースアシレートフィルム(基材)上で硬化させることにより、ハードコート層と基材フィルムとの密着性にも優れた光学フィルムとなる。
他の機能を付加することを目的として、ハードコート層上に、他の機能層を積層してもよい。具体的には反射防止層や防汚層である。
また、ハードコート層にフィラーや添加剤を加えることで、機械的、電気的、光学的な物理的な性能や撥水・撥油性などの化学的な性能をハードコート層自体に付与することもできる。
ハードコート層は、硬化性組成物を硬化することで形成するのが好ましい。硬化性組成物は、液状の塗布組成物として調製されるのが好ましい。塗布組成物の一例は、マトリックス形成バインダー用モノマー又はオリゴマー、ポリマー類及び有機溶媒を含有する。この塗布組成物を塗布後に硬化することでハードコート層を形成することができる。硬化には、架橋反応、又は重合反応を利用することができる。
(マトリックス形成バインダー用モノマー又はオリゴマー)
利用可能なマトリックス形成バインダー用モノマー又はオリゴマーの例には、電離放射線硬化性の多官能モノマー及び多官能オリゴマーが含まれる。多官能モノマーや多官能オリゴマーは架橋反応、又は、重合反応可能なモノマーであるのが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等や、エポキシ系化合物等の開環重合型の重合性官能基が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等が挙げられる。
更には、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類、イソシアヌル酸アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
上記の中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーがより好ましい。
具体的には、(ジ)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、等が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリル酸又はメタクリル酸」、「アクリロイル又はメタクリロイル」を表す。
さらに、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等も挙げられる。
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、特開2007−256844号公報の[0096]等を参考にすることができる。
ウレタンアクリレート類としては、例えば、アルコール、ポリオール、および/またはヒドロキシル基含有アクリレート等のヒドロキシル基含有化合物類とイソシアネート類を反応させ、または必要によって、これらの反応によって得られたポリウレタン化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化して得られるウレタンアクリレート系化合物を挙げることができる。
具体的な化合物の具体例としては特開2007−256844号公報の[0017]等の記載を参考にすることができる。
イソシアヌル酸アクリレート類を利用すると、カールをより低減できるので好ましい。これには、イソシアヌル酸ジアクリレート類、イソシアヌル酸トリアクリレート類が挙げられ、具体的な化合物の事例としては特開2007−256844の[0018]〜[0021]等を参考にすることができる。
ハードコート層には、さらに硬化による収縮低減のために、エポキシ系化合物を用いることができる。これを構成するためのエポキシ基を有するモノマー類としては、1分子中にエポキシ基を2基以上有するモノマーが用いられ、これらの例としては特開2004−264563号、同2004−264564号、同2005−37737号、同2005−37738号、同2005−140862号、同2005−140862号、同2005−140863号、同2002−322430号等に記載されているエポキシ系モノマー類が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ系とアクリル系の両官能基を持つ化合物を用いることも好ましい。
(硬化性組成物)
ハードコート層の形成に利用可能な硬化性組成物の一例は、アクリレート系化合物を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は、アクリレート系化合物とともに、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤を含有するのが好ましく、所望により、さらにフィラー、塗布助剤、その他の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物の硬化は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により重合反応を進行させることで実行できる。電離放射線硬化と熱硬化の双方を実行することもできる。光及び熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することができ、それらは、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のカタログに記載されている。
硬化性組成物は、塗布液として調製されるのが好ましい。塗布液は、上記成分を有機溶媒に溶解及び/又は分散することで、調製することができる。
(ハードコート層の性質)
ハードコート層は、耐擦傷性に優れるのが好ましい。具体的には、耐擦傷性の指標となる鉛筆硬度試験を実施した場合に、MD及びTDのいずれの方向においても、3H以上を達成するのが好ましく、4H以上を達成するのがより好ましい。
また、従来知られている方法を用いてハードコート層の表面に凹凸を形成し、防眩機能を有しても良い。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板保護フィルム、画像表示面に配置される表面保護フィルム、等種々の用途に有用である。各用途に適する機能を示すために、セルロースアシレートフィルムは、前述のハードコート層とともに、他の層を有していてもよい。例えば、反射防止層、帯電防止層、防汚層等を有していてもよい。
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子と、少なくとも1枚の本発明のセルロースアシレートフィルムとを含む。
本発明の偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明のセルロースアシレートフィルムの一方の面と、偏光子とを貼り合わせることで作製することができる。本発明のセルロースアシレートフィルムの貼合面は、アルカリ鹸化処理を行うことが好ましい。また、貼合には、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いることができる。
上記偏光子としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールあるいはエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%であるエチレン変性ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを、ヨウ素の如き二色性染料で処理して延伸したものや、塩化ビニルの如きプラスチックフィルムを処理して配向させたものを用いる。
偏光子の膜厚としては、5〜30μmのものが好ましく用いられる。こうして得られた偏光子を、本発明のセルロースアシレートフィルムと貼合する。偏光子の膜厚が薄くなると、偏光子の耐久性が悪化しやすくなるが、本発明のセルロースアシレートフィルムは高温高湿環境下での偏光子耐久性を改良することが出来るので、偏光子の膜厚が薄い場合にも好適に用いられる。特に5〜20μmの偏光子と貼合することが好ましく、5〜15μmの偏光子と貼合することがより好ましい。
偏光子に本発明のセルロースアシレートフィルムが貼合された面の反対面には、さらに本発明のセルロースアシレートフィルムを貼合してもよいし、従来知られている光学フィルムを貼合してもよい。
上記した従来知られている光学フィルムについては、光学特性及び材料のいずれについても特に制限はないが、セルロースアシレート樹脂、アクリル樹脂、および/または環状オレフィン樹脂を含む(あるいは主成分とする)光学フィルムを好ましく用いることができ、光学的に等方性のフィルムを用いても、光学的に異方性の位相差フィルムを用いてもよい。
上記の従来知られている光学フィルムについて、セルロースアシレート樹脂を含むものとしては、例えばZRF25(富士フイルム(株)製)などを利用することができる。
上記の従来知られている光学フィルムについて、アクリル樹脂を含むものとしては、特許第4570042号公報に記載のスチレン系樹脂を含有する(メタ)アクリル樹脂を含む光学フィルム、特許第5041532号公報に記載のグルタルイミド環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル樹脂を含む光学フィルム、特開2009−122664号公報に記載のラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む光学フィルム、特開2009−139754号公報に記載のグルタル酸無水物単位を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む光学フィルムを利用することができる。
また、上記の従来知られている光学フィルムについて、環状オレフィン樹脂を含むものとしては、特開2009−237376号公報の段落[0029]以降に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム、特許第4881827号公報、特開2008−063536号公報に記載のRthを低減する添加剤を含有する環状オレフィン樹脂フィルムを利用することができる。
本発明の偏光板を液晶表示装置に利用する態様では、本発明のセルロースアシレートフィルムが液晶セルに近い側の偏光板保護フィルムとなるように配置することもできるし、液晶セルから遠い側の偏光板保護フィルムとなるように配置することもできるが、液晶セルから遠い側の偏光板保護フィルムとなるように配置することが好ましい。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、この液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板(視認側偏光板、及びバックライト側偏光板)とを有する液晶表示装置であって、上記偏光板のうち少なくとも1枚が、本発明の偏光板である。
本発明のセルロースアシレートフィルムの液晶表示装置における機能については特に制限はない。
本発明のセルロースアシレートフィルムの配置方法の好ましい一例としては、ハードコート層を有する状態で視認側偏光板中、視認側(すなわち液晶セルから遠い側)に配置される態様である。
本発明のセルロースアシレートフィルムの配置方法の他の一例は、ハードコート層を有さない状態でバックライト側偏光板中、バックライト側(すなわち液晶セルから遠い側)に配置される態様である。
このように、本発明の液晶表示装置は、本発明のセルロースアシレートフィルムが、偏光板において液晶セルから遠い側に配置されることが好ましい。
その他の構成については、公知の液晶表示装置のいずれの構成も採用することができる。液晶セルのモードについても特に制限はなく、TN(Twisted Nematic)モード型の液晶セル、横電界スイッチングIPS(In−Plane Switching)モード型の液晶セル、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード型の液晶セル、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)モード型の液晶セル、OCB(Optically Compensatory Bend)モード型の液晶セル、STN(Supper Twisted Nematic)モード型の液晶セル、VA(Vertically Aligned)モード型の液晶セルおよびHAN(Hybrid Aligned Nematic)モード型の液晶セル等の様々な表示モードの液晶表示装置として構成することができる。その中でも、本発明の液晶表示装置は、液晶セルが、横電界スイッチングIPSモード型の液晶セルである液晶表示装置であることが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
エステルオリゴマー(下記表1に記載) 13質量部
下記UV吸収剤B 5質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
メタノール(第2溶剤) 64質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1で用いたエステルオリゴマーの構造を、後述の各実施例および比較例で用いるエステルオリゴマーの構造とあわせて下記表1〜2に記載した。
実施例1で用いたUV吸収剤の構造を、後述の各実施例および比較例で用いるUV吸収剤の構造とあわせて下記に示す。
Figure 2016222809
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液
――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶剤) 11質量部
コア層セルロースアシレートドープ 1質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
(セルロースアシレートフィルムの作製)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のバンド上に流延した(バンド流延機)。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み40μmのセルロースアシレートフィルムを作製し、これを実施例1のセルロースアシレートフィルムとした。実施例1のセルロースアシレートフィルムのコア層は厚み36μm、コア層の両側に配置された外層はそれぞれ厚み2μmであった。
[実施例2〜17、比較例1〜6]
実施例1のセルロースアシレートフィルムの作製において、セルロースアシレートフィルムに用いるエステルオリゴマーの種類及び添加量、UV吸収剤の種類及び添加量、フィルム膜厚を下記表1〜2に記載したとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜17、比較例1〜6のセルロースアシレートフィルムを作製した。
[評価]
<セルロースアシレートフィルムの評価>
得られた各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムを用いて、以下の評価を行った。
(ブリードアウト評価)
作成したセルロースアシレートフィルムを観察し、白く見える部分があるかを目視にて評価した。白く見える部分がある場合には、布でふき取り、布にUV吸収剤が付着するかを確認し、析出の有無を評価した。具体的には拭き取った布を溶剤(メタノール、メチレンクロライド等)で抽出した後、得られた抽出液をKBr粉末に添加し、乾燥させることで抽出物とKBrの混合物を得る。得られた混合物を乳鉢ですりつぶし、圧縮機で薄いペレット状にし、赤外分光法により解析し、UV吸収剤起因のシグナルが検出されるかどうかで確認した。
A:白化している箇所が全く見えない
B:白化している箇所はあるが、UV吸収剤の析出は確認されない。
C:白化している箇所があり、UV吸収剤の析出が確認される。
(鉛筆硬度評価)
JIS K 5600−5−4(1999)に記載の鉛筆硬度評価を行った。作成したセルロースアシレートフィルムを温度25℃、相対湿度60%で2時間調湿した後、JIS S 6006(2007)に規定するHの試験用鉛筆を用いて、4.9Nの荷重にて10回ひっかき試験を行った。
5:傷のついた回数0から1回
4:傷のついた回数2から3回
3:傷のついた回数4から5回
2:傷のついた回数6から7回
1:傷のついた回数8回以上
<偏光板の評価>
(偏光板の作製)
1)フィルムの鹸化
作成したセスロースアシレートフィルム、及びZRF25(富士フイルム(株)製)を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
2)偏光子の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み12μmの偏光子を調製した。
3)貼り合わせ
このようにして得た偏光子と、上記鹸化処理したフィルムのうちから2枚選び、これらで上記偏光子を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3質量%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせて偏光板を作製した。ここで、偏光子の一方の面側のフィルムは、下記表1〜2に記載の各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム群から選択される1枚を鹸化したフィルムとし、他方の面側のフィルムはZRF25(富士フイルム(株)製)を鹸化したフィルムとした。
(高温高湿環境下での偏光子耐久性)
上記で作製した偏光板について、ZRF25(富士フイルム(株)製)の片方の面を粘着剤でガラス板に貼り合わせたサンプル(約5cm×5cm)を2組作製した。これをクロスニコル配置して、日本分光(株)製自動偏光フィルム測定装置VAP−7070を用いて直交透過率(湿熱経時前の直交透過率)を410nmで測定した。その後、60℃、相対湿度90%の高温高湿環境下で500時間保存した後の直交透過率(湿熱経時後の直交透過率)を上記方法で測定した。
偏光板の偏光子耐久性の評価値を以下のように定義する。
偏光板の偏光子耐久性の評価値=[湿熱経時後の直交透過率(%)−湿熱経時前の直交透過率(%)]/湿熱経時前の直交透過率(%)
5:7未満
4:7より大きく8未満
3:8より大きく9未満
2:9より大きく10未満
1:10以上
<液晶表示装置の評価>
(Xe照射後の表示性能(紫外線に対する偏光子・液晶の保護機能))
市販の液晶テレビ(IPSモードのスリム型42型液晶テレビ)から、液晶セルを挟んでいる偏光板のうち、視認側偏光板を剥がし取り、上記方法で作製した実施例及び比較例及の偏光板を、下記表1〜2に記載の実施例及び比較例のセルロースアシレートフィルムが液晶セルから遠い側(視認側)に配置されるように、ZRF25面側に粘着剤を介して液晶セルに貼合した。組みなおした液晶テレビに対し表示性能(正面及び斜めからの輝度、色味)を確認後、キセノンランプ(スガ試験機株式会社製)を64日間照射し、再び表示性能を確認し、以下の基準で評価した。
A:劣化が全く確認されなかった。
B:斜めからのみ輝度、色味に劣化が確認された。
C:正面及び斜めからの輝度、色味に劣化が確認された。
Figure 2016222809
Figure 2016222809
上記表1〜2中、EGはエチレングリコール、PGはプロピレングリコール、1,3−BGは1,3−ブタンジオールに由来する単位をそれぞれ示す。
Mnは数平均分子量を表す。
なお、エステルオリゴマーの末端構造については、すべての末端が表1〜2に記載した構造である。
実施例のセルロースアシレートフィルムは、薄膜でありながら、ブリードアウトを起こさずに、高濃度のUV吸収剤を添加できるため紫外線に対する偏光子・液晶の保護機能に優れ、且つ高温高湿環境下での偏光子耐久性、硬度に優れることがわかった。
一方、末端構造が水酸基であるエステルオリゴマーを用いた比較例1、シクロヘキサン環を有していないジカルボン酸を用い、末端が酢酸由来の基にて封止されたエステルオリゴマーを用いた比較例3のセルロースアシレートフィルムにおいては、ブリードアウトが顕著に現れた。また、UV吸収剤量が少ない比較例2のセルロースアシレートフィルムおいては、ブリードアウトは起こさないものの、液晶表示装置に実装した場合の表示性能に劣った。
なお、比較例4に示すように、本発明のセルロースアシレートフィルム以外のフィルムであっても、膜厚が厚い場合においては、ブリードアウトを起こさずに良好な液晶表示性能を示す場合もあるが、薄膜化した場合には、これらの性能は保てなかった(比較例5参照)。

Claims (13)

  1. セルロースアシレートと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、エステルオリゴマーとを含有するセルロースアシレートフィルムであって、
    前記セルロースアシレートフィルムの膜厚が10μm以上40μm以下であり、
    前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、前記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上20質量部以下含有し、
    前記エステルオリゴマーが、ジオールに由来する単位と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する単位の少なくとも一方とを含み、末端が脂環構造を有するモノカルボン酸に由来する基で封止され、かつ水酸基価が30mgKOH/g以下である、
    セルロースアシレートフィルム。
  2. 前記脂環構造を有するモノカルボン酸が、炭素数6〜12のシクロアルカンモノカルボン酸である請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
  3. 前記脂環構造を有するモノカルボン酸がシクロヘキサンカルボン酸である請求項2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  4. 前記エステルオリゴマーの数平均分子量が、500〜3000である請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  5. 前記エステルオリゴマーの数平均分子量が、750〜1500である請求項4に記載のセルロースアシレートフィルム。
  6. 前記ジオールが、エチレングリコール、プロパンジオール、又はブタンジオールである請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  7. 前記ジオールが、プロパンジオール又はブタンジオールである請求項6に記載のセルロースアシレートフィルム。
  8. 前記ジオールが分岐構造を有する請求項7に記載のセルロースアシレートフィルム。
  9. 前記エステルオリゴマーの含有量が、前記セルロースアシレート100質量部に対して、4質量部以上30質量部以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  10. 前記エステルオリゴマーの含有量が、前記セルロースアシレート100質量部に対して、10質量部以上13質量部以下である請求項9に記載のセルロースアシレートフィルム。
  11. 前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が、前記セルロースアシレート100質量部に対して、5質量部以上10質量部以下である請求項1〜10のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  12. 偏光子と、少なくとも1枚の請求項1〜11のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムとを有する偏光板。
  13. 液晶セルと、少なくとも1枚の請求項12に記載の偏光板とを有する液晶表示装置。
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