JP2016221141A - ガイドワイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】例えば、カテーテル治療に用いられるカテーテルを血管内部の所望の患部へと導くための医療用のガイドワイヤであって、構成が簡単であり、製造効率のよいガイドワイヤを提供する。
【解決手段】線状に延びる母材11Bと、前記母材11Bが処理液に浸漬されることで前記母材11Bの外周面に形成される酸化被膜層11Cと、前記酸化被膜層11Cの外周面に隣接して形成される親水性被膜層11Aと、を有する積層構造を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、ガイドワイヤの技術に関し、より詳しくは、カテーテルを血管内の所定の箇所に導入する際に用いられる医療用のガイドワイヤの技術に関する。
カテーテル治療においては、血管内に医療用のガイドワイヤを挿入し、当該ガイドワイヤの外周面に沿って摺動させることにより、カテーテルを所望の箇所に導く方法が用いられている。このようなガイドワイヤの一例としては、カテーテルとの摺動性を向上させるために、ガイドワイヤの外周面に親水性ポリマーによるコーティング(被覆)がされたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された技術によれば、X線造影剤を含む高分子材料層(第1被覆層)により被覆された芯線が、顔料を含むポリウレタン樹脂層(第2被覆層)に被覆され、そのポリウレタン樹脂層の表面を親水性コート層で被覆することにより、最外層に設けられた親水性コート層が固体として剥がれ難いガイドワイヤが得られたとされている。
特開2003−250905号公報
しかし、特許文献1において実際に開示された技術内容としては、特許文献1の段落番号0030等に開示されているように、ポリウレタン樹脂層(第2被覆層)上にポリエチレンオキサイドとジイソシアネートとを塩基触媒下で反応させて、ポリエチレンオキサイドの末端の水酸基とイソシアネート基との反応により得た親水性のウレタン樹脂を形成したに過ぎず、特許文献1に開示のガイドワイヤについては、着色成分を含むウレタン樹脂層表面に、親水性ウレタン樹脂を形成して得たガイドワイヤに過ぎないと言わざるを得ない。つまり、特許文献1の技術については、最外層の親水性コート層が剥がれ難いガイドワイヤを得る方法として、特定の種類の樹脂層表面に、当然に付着性が良好となる同種類の親水性コート層を形成することとのみが開示されており、同種の樹脂の親水性コートを得る必要があるため、構成成分が複雑となり、製造に際しての効率も悪い。
本発明の目的は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、構成が簡単であり、製造が容易な医療用のガイドワイヤを提供することにある。
本発明の一態様に係るガイドワイヤは、線状に延びる母材と、前記母材が処理液に浸漬されることで前記母材の外周面に形成される酸化被膜層と、前記酸化被膜層の外周面上に、前記酸化被膜層の外周面に隣接して形成される親水性被膜層と、を有する積層構造を備える。
本発明におけるガイドワイヤは、構成が簡単であり、製造効率がよい。
本発明の一実施形態に係るガイドワイヤの全体的な構成を示した一部断面側面図。 ガイドワイヤ内の母材の積層構造を示した図であって、図1中の矢印Aの方向から見た断面側面図。
以下、本発明を具現化する実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明に関しては便宜上、血管内にガイドワイヤ1を挿入する際の方向を基準にして各方向を規定する。即ち、図1においては、チップ15が配置される側を前側として、ガイドワイヤ1の前後方向を規定する。
[ガイドワイヤ1の構成]
本実施形態におけるガイドワイヤ1は、例えばカテーテル治療に用いられるカテーテルを血管内部の所望の箇所へと導くための医療用のガイドワイヤであって、図1に示すように、主にコアワイヤ10、非造影コイル20、および造影コイル30などにより構成される。
線状に延びる母材としてのコアワイヤ10は、ガイドワイヤ1の本体となる部材である。コアワイヤ10は、操作部11、第一テーパ部12、鍔部13、第二テーパ部14、およびチップ15などにより構成される。
操作部11は、断面形状を略変化させることなく、ガイドワイヤ1の軸心Gと同軸上に前後方向に延出するようにして形成された部位である。操作部11の一端部(例えば、本実施形態においては前端部)には、第一テーパ部12が連設される。
そして、操作部11の他端部(後端部)には、半球状に形成される基部11aが設けられており、この基部11aを指先で手元操作することで、複雑に分岐する血管内においてガイドワイヤ1(特にはガイドワイヤ1の先端)を所望の箇所に誘導するための細かい作業を行う構成となっている。
第一テーパ部12は、操作部11の前端部において、軸心Gと同軸上に前後方向に延出しつつ、前方に向かって徐々に断面形状を縮径させるテーパ状に形成された部位である。第一テーパ部12の一端部(例えば、本実施形態においては前端部)には、鍔部13が連設される。
鍔部13は、第一テーパ部12の前端部において、軸心Gと同軸上に配置されるとともに、前方に向かって徐々に断面形状を拡径させるテーパ状に形成された部位である。鍔部13の一端部(例えば、本実施形態においては前端部)には、第二テーパ部14が連設される。
第二テーパ部14は、鍔部13の前端部において、軸心Gと同軸上に前後方向に延出しつつ、前方に向かって徐々に断面形状を縮径させるテーパ状に形成された部位である。第二テーパ部14の一端部(例えば、本実施形態においては前端部)には、チップ15が接合される。
なお、第二テーパ部14の拡径側の端部(即ち、後端部)の外径は、後述する非造影コイル20の内径より若干小さくなるように設定されている。
また、第二テーパ部14の形状については、本実施形態のような、連続的に断面形状を縮径させるテーパ状の形状に限定されるものではなく、例えば、延出方向の中途部において複数のテーパ部を各々設け、段階的に断面形状を縮径させる形状としてもよい。
チップ15は、第二テーパ部14の前端部において、軸心Gと同軸上に配置されるとともに、前方に膨出するように形成された部位である。このような膨出する形状としては、例えば半球状または球状が挙げられる。
なお、チップ15の外径は、操作部11の外径に対して、好ましくは0.5倍以上2倍以下程度となるように設定されている。
以上のように、コアワイヤ10は、一体的に形成された操作部11、第一テーパ部12、鍔部13、および第二テーパ部14や、第二テーパ部14の先端部において溶接または半田付け等によって接合されたチップ15などにより構成される。なお、ここでは、鍔部13が操作部11などと一体的に形成されているが、チップ15と同様、半田付等により第1テーパ部12の先端(前端部)に接合されてもよい。
このように、コアワイヤ10においては、操作部11の一端部(前端部)から先端(前端)に向かうにつれて、外径が小さくなるように(即ち、細くなるように)設定されており、先端側になるほど柔軟性が増すように設定されている。また、鍔部13およびチップ15の間において、第二テーパ部14の外周部には、後述する非造影コイル20および造影コイル30が、前方に向かって順に挿設されており、第二テーパ部14における軸心G方向の剛性を持たせつつ、半径方向の柔軟性に対してさらに弾性を持たせるようになっている。従って、ガイドワイヤ1は、体内での操作が容易であり、操作途中に先端が曲がった場合でも、弾性力によって座屈することなく元の形状に戻ることができる。
チップ15を除くコアワイヤ10の材質としては、弾力性のあるステンレススチール(SUS)、ニッケル−チタン(Ni−Ti)合金、ニッケル合金、またはコバルト合金などを挙げることができる。一方、チップ15の材質としては、特に限定されず、第二テーパ部14の前端部と溶接または半田付け等によって接合可能なものであれば、何れのものであってもよい。この点は、第一テーパ部12の先端に鍔部13を接合する場合も同様である。
コアワイヤ10の全長は、0.6[m]以上3.0[m]以下に設定されることが挙げられ、1.5[m]以上2.0[m]以下に設定されることが挙げられる。また、コアワイヤ10の外径は、操作部11において0.1[mm]以上2.0[mm]以下に設定されることが挙げられ、0.2[mm]以上0.5[mm]以下に設定されることが挙げられる。
図2に示すように、ガイドワイヤ1(コアワイヤ10)は、線状に延びる母材11Bの外周面に酸化被膜層11Cが形成され、酸化被膜層11Cの外周面に隣接して親水性被膜層11Aが形成された積層構造を備える。この際、酸化被膜層11Cは、酸化剤を含有する処理液に母材1Bを浸漬して公知の化学表面処理(所謂、不動態化処理)を施すことにより形成される。親水性被膜層11A(図2を参照)がコーティングされており、血管またはカテーテル等との摩擦を小さくする処理が施されている。これにより、ガイドワイヤ1を摺動させる際、血管を傷つけたりすることを防止したり、ガイドワイヤ1の操作性を向上させたりすることができる。母材11Bの材質によっては、酸化被膜層を形成する際に不可避的に不動体被膜が表面に形成されているものもあるが、酸化被膜層11Cとはその厚みが大きく異なり、酸化被膜層11Cと比較して薄く、発色や親水性被膜層との付着性に寄与することも難しい。
親水性被膜層11Aは、生体安全性の高い親水性樹脂を用いて形成さることによって、体内に挿入したときに、身体への影響を小さくすることができる。ここで、親水性被膜層は、生体内で吸水または加水分解によって可溶な樹脂を所定の厚さの層として形成することで、一回の施術では層が完全に溶解することがなく、血液等の水分によって少なくとも表層が湿潤して潤滑性を発揮することが可能な樹脂層として形成することができる。親水性被膜層11Aとしては、親水性樹脂として、例えば、親水性ポリマーとして公知のものを適用でき、水分により可溶である高分子が好ましく、その一例としては、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロース、n−ビニルラクタムアクリルメタクリレートなどを挙げることができる。
酸化被膜層11Cは、母材11Bが処理液に浸漬されることで母材11Bの外周面に形成される。ここでは特に、処理液に浸漬されることによって形成される。母材11Bの外周面に酸化被膜11Cを形成する他の方法として、例えば、母材となる金属線材を熱処理することが知られている。しかし、熱処理の温度は一般的に200[℃]以上の高温であるため、着色されたガイドワイヤにおいては、加熱による組織変形が生じたり、または熱応力によるストレス(歪み)が残留したりして、ガイドワイヤ全体としての剛性が低下する恐れがあった。一方、本実施形態のように、酸化剤による処理であれば、酸化被膜層11Cを形成する際の熱履歴が生じないため、剛性の低下を抑制することができる。
このようにして形成される酸化被膜層11Cの厚みは、0.003[μm]超0.3[μm]以下であることが好ましい。これは、酸化被膜層11Cが親水性被膜層11Aとコアワイヤ10との付着性を確保し、且つ、ガイドワイヤ1が湾曲した場合であっても、酸化被膜層11Cがコアワイヤ10から離脱し難くするためであり、また、親水性被膜層11Aが酸化被膜層11Cから剥離することを抑制しやすいからである。ここで、酸化被膜層11Cが所定の厚さの範囲にあるときには、酸化被膜層11Cが有色となり、その色は酸化被膜層11Cの厚みに応じて異なる。酸化被膜層11Cが有色となる場合、親水性被膜層11Aを酸化被膜層11Cの色を視認可能に形成することができる。すなわち、ガイドワイヤについては、治療の目的や治療に用いられるカテーテルの種類に応じて、種々の外径や長さ、性能などを有するものが用意され、治療の現場において、施術を行う医師の判断により適宜選択されて用いられることが知られている。このような医療用のガイドワイヤは、一般的に細径(約1[mm]以下)であるため、治療の現場において、外径が僅かに異なる複数のガイドワイヤ群の中から、適当なガイドワイヤを外観のみによって識別することは困難である。なお、酸化被膜層11Cは、フッ素系樹脂に着色顔料を混合して形成した樹脂組成物を着色顔料粒子よりも厚い膜厚とした着色層に比べて非常に薄くなる。そのためガイドワイヤ1は、着色層である酸化被膜層11Cが非常に薄いために物性に対する寄与が低い。そのため、ガイドワイヤ1の物性を母材11Bによって発揮することができるので、着色層として着色顔料を有する樹脂を用いた場合に比べて、ガイドワイヤの体内に導入される部位の径を細くすることができる。
また、本発明のガイドワイヤは、処理液に母材を浸漬されることで母材の外周面に所望の色彩の酸化被膜層を形成することができるので、熱処理によって加熱による組織変形が生じたり、または熱応力によるストレス(歪み)が残留したりして、ガイドワイヤ全体としての剛性が低下する恐れがないため、所望の物性を有する母材を用意して所望の色彩の酸化被膜層を形成すれば、酸化被膜層形成後に母材が所望の物性を有するかどうかの検査をすることなく、所望の色彩を呈するガイドワイヤを容易に得ることができる。なお、酸化被膜層11Cが有色となる場合の厚みとしては、0.08[μm]以上0.25[μm]以下であることが挙げられる。そして、このような厚みの範囲内において、不動態化処理による酸化発色として酸化被膜層11Cに現出する色の種類は、酸化被膜層11Cの厚みに基づき様々に変化する。特に、酸化被膜層11Cの厚みを、0.1[μm]以上0.25[μm]以下とすることが好ましく0.12[μm]以上0.22[μm]未満とすることがより好ましい。酸化被膜層11Cの色の選択の幅が広く、かつ、親水性被膜層の剥離を抑制することができると期待されるからである。また、酸化被膜層11Cの厚みと色との関係の一例を挙げると、0.08[μm]以上0.12[μm]未満程度の厚みの場合に青色、0.12[μm]程度の厚みの場合に金色または黄色、0.18[μm]程度の厚みの場合に紅紫色、0.22[μm]程度の厚みの場合に緑色として視認されうる。
なお、酸化被膜層11Cおよび親水性被膜層11Aは、化学結合によって互いに堅固に結合されており、これは、水素結合、共有結合、またはイオン結合の何れかによるものであると考えられている。化学結合により酸化被膜層11Cと親水性被膜層11Aとが強固に結合することで、親水性被膜層11Aが酸化被膜層11Cから固体として剥がれ難くなると考えられる。
親水性被膜層11Aの組成は、上述したように特に限定されず、その形成方法も特に限定されないが、例えば、親水性基を含む親水性ポリマーと、有機溶媒とを含有する処理液によって処理されて形成されることが好ましい。親水性被膜層11Aと酸化被膜層11Cとの化学結合をより強固なものにできる期待されるからである。また、この処理液には、イソシアネート基を有する化合物が含まれてもよい。イソシアネート基を有する化合物は特に限定されるものではないが、一例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDMI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などが挙げられる。有機溶媒は特に限定されるものではないが、アセトンやメチルエチルケトン(MEK)、エタノールなどが挙げられる。具体的な処理方法としては、親水性ポリマーと、必要に応じてイソシアネート基を有する化合物を有機溶媒に懸濁して処理液とし、この処理液に酸化被膜層11Cが形成されたガイドワイヤ10をディッピングした後に熱処理する方法が挙げられる。なお、上記処理液においては、有機溶媒に代えて水を溶媒としてもよい。
このように、本実施形態におけるガイドワイヤ1(より具体的には、コアワイヤ10)においては、親水性被膜層11Aと酸化被膜層11Cとの簡易な構成であるので、効率よく製造することができる。また、前記酸化被膜層11Cを有色に形成し、親水性被膜層11Aを酸化被膜層11Cの色を視認可能に形成することで、顔料の剥離や残留等の恐れを心配することもなく、視認性、識別性を確保することができる。さらに、酸化被膜層11Cの外周面に直接、親水性被膜層11Aを設けることができるため、樹脂被膜層の分だけ母材11Bを太くすることができ、母材11Bの剛性の向上を図ることができる。または、樹脂被膜層の分だけ、ガイドワイヤ1全体として細径化を図ることができる。
なお、本実施形態においては、一直線上に形成されるコアワイヤ10をもって、不動態化処理を施す母材11Bを構成することとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、ガイドワイヤ1の軸心Gに沿って延出する螺旋状のワイヤコイルをもって、母材11Bを構成することとしてもよい。
次に、非造影コイル20について説明する。非造影コイル20は、X線を透過させる部材である。非造影コイル20は、図1に示すように、コアワイヤ10における第二テーパ部14の鍔部13側(後端側)に挿着される。なお、ガイドワイヤ1は、必ずしも非造影コイル20を備える必要はなく、第二テーパ部14には、造影コイル30のみが挿着されてもよい。
非造影コイル20は、放射線に造影されない金属線と、その金属線をコーティングしている合成樹脂層とからなり、柔軟性や弾性を備えたコイルにより構成される。
ここで、非造影コイル20の金属線の材質としては、前述したコアワイヤ10の材質と同じく、SUS、Ni−Ti合金、ニッケル合金、またはコバルト合金などを挙げることができる。
また、非造影コイル20の合成樹脂層の材料としては、親水性高分子が好ましく、このような親水性高分子としては、上述した親水性被膜層11Aと同様のものを用いることができる。
非造影コイル20の内径は、第二テーパ部14の後端部の外径に対して若干大きくなるように設定されている。これにより、非造影コイル20は、第二テーパ部14の後端部にて嵌合されることとなる。
一方、非造影コイル20の外径は、コアワイヤ10における操作部11の外径と同程度に設定されている。これにより、ガイドワイヤ1の操作中において、非造影コイル20が血管等に引っかかったりする恐れを低減することができる。
そして、非造影コイル20は、第二テーパ部14の後端部と、前記後端部より前方に向かって離間するとともにその離間距離が非造影コイル20の自然長に比べて僅かに長い第二テーパ部14の中途部と、において両端部を固定される。
次に、造影コイル30について説明する。造影コイル30は、X線を透過させない部材である。造影コイル30は、コアワイヤ10における第二テーパ部14において、非造影コイル20の前側に隣接して挿着される。
造影コイル30は、放射線に造影される金属線と、その金属線をコーティングしている合成樹脂層とからなる非密着コイル(隣接する巻線同士が密着せずに離間しているコイル)により構成されている。このような造影コイル30をコアワイヤ10(より具体的には、第二テーパ部14)の先端側(前端側)に設けることで、第二テーパ部14の先端を放射線で探知することができるようになり、体内にある第二テーパ部14の先端を目的部位にまで容易に誘導することができる。なお、合成樹脂層は、必ずしもコーティングされる必要はない。
ここで、造影コイル30の金属線の材質としては、金、白金、銀、ビスマス、タングステン、ニッケル、タンタル、イリジウム、チタン、ロジウム、コバルト、またはこれらの合金等が挙げられる。
また、造影コイル30の合成樹脂層の材料としては、前述した非造影コイル20と同じく親水性高分子が好ましく、上述した親水性被膜層11Aと同様のものを用いることができる。
造影コイル30の外径は、前述した非造影コイル20と同様に、コアワイヤ10における操作部11の外径と同程度に設定されている。これにより、ガイドワイヤ1の操作中において、造影コイル30が血管等に引っかかったりする恐れを低減することができる。
そして、造影コイル30は、非造影コイル20の前端部と、チップ15との間において、自然長の状態によって両端部を固定される。このように、本実施形態のガイドワイヤ1では、造影コイル30の前端部には、半球状のチップ15が配設されるため、血管を傷つけることなく、ガイドワイヤ1の誘導をより容易にすることができる。
なお、本実施形態において、造影コイル30の後端部は、第二テーパ部14上の中途部(非造影コイル20の前端部が位置する箇所)に固定されているが、これに限定されることはなく、例えば、非造影コイル20の前端部に絡めた状態によって、造影コイル30の後端部を固定することとしてもよい。このように、これらの造影コイル30および非造影コイル20を部分的に絡めることにより、当該部分の剛性が向上し、ガイドワイヤ1の操作性を向上させることができる。
ここで、造影コイル30において、互いに隣接する巻き線間の間隔は、前述した非造影コイル20に比べて大きくなるように設定されている。このように、造影コイル30と非造影コイル20との巻き方に変化を与えることで、コアワイヤ10の第二テーパ部14に段階的な弾力性をもたせることができる。そのため、第二テーパ部14の先端側では他方向にその先端を容易に向けられるように柔軟性を与えることができ、また第二テーパ部14全体としては程よい剛性を与えることができ、ガイドワイヤ1全体としてより繊細な動きが可能になる。
また、通常においては、第二テーパ部14の先端を、指などで曲げて「L」字型または「J」字型などに変形させる形付けを行うが、形付けも先端がより柔軟であるため容易であり、より複雑な形付けが可能になる。つまり、結果として、ガイドワイヤ1全体として、より操作性を著しく向上させることができる。
[検証実験]
次に、本発明を具現化するガイドワイヤについて、母材および親水性被膜層間の結合に関する耐久性を判断するために、本発明者が行った検証実験について説明する。
先ず始めに、本発明者は、検証実験用のサンプルとして、複数の試験体を用意した。
試験体1は、SUS製の芯線に酸化剤を含有する処理液を用いた不動態化処理を施すことで、当該芯線の外周面に酸化性被膜層を形成し、形成された酸化性被膜層の表面において、親水性ポリマーを含有する親水性被膜層をコーティングすることにより製作されたものである。なお、この際の酸化性被膜層は、主に黄色の色彩が発色する厚みに設定されている。親水性被膜層は、有機溶媒にメチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体(親水性ポリマー)と、MDIとを懸濁した処理液を用いてコーティングした。
試験体2は、SUS製の芯線に対して、不動態化処理を施すことなく当該芯線の外周面において直接的に、親水性ポリマーを含有する親水性被膜層をコーティングすることにより製作されたものである。親水性被膜層のコーティングについては、上記の試験体1と同様である。
試験体3は、SUS製の芯線に対して、不動態化処理や親水性被膜層のコーティングを施すことなく、素材そのものとして用意されたものである。
次に、水の入った水槽と、互いに積層される一対のゴム板とを用意し、前述した試験体1から3を、試験体ごとに前記ゴム板によって挟持しつつ、前記水槽内に各々順に沈水させた。
そして、水槽内において、各試験体を、一対のゴム板によって挟持された状態のままで、長手方向に沿って200[回]振動させ、初回時(1回時)、100回時、200回時における「押出し時」および「引込時」の摺動抵抗値を各々測定し、これらの摺動抵抗値の総和を、算出することとした。
試験体1の、各回における摺動抵抗値および摺動抵抗値の総和を[表1]に示す。
Figure 2016221141
「表1」に示すように、試験体1においては、初回時(1回時)、100回時、200回時の各回数において、摺動抵抗値の総和が、0.09[N]以下と、かなり低い値が示されている。このような結果から、SUS製の芯材にコーティングされた親水性被膜層は、複数回の振動を通じて、略剥離することなく維持されることがわかる。従って、芯材からなる母材と親水性被膜層との間に酸化性被膜層を介在させることにより、母材から親水性被膜層が剥離することを抑制できることが明確となった。
次に、試験体2の、各回における摺動抵抗値および摺動抵抗値の総和を[表2]に示す。
Figure 2016221141
「表2」に示すように、試験体2においては、初回時(1回時)、100回時、200回時の各回数において、摺動抵抗値の総和が、0.65[N]以下と低いものの、前述した実験例1の結果と比べてかなり大きな値が示されている。このような結果から、SUS製の芯材にコーティングされた親水性被膜層は、複数回の振動を通じて徐々に剥離し、摺動抵抗値が増加していくことがわかる。
次に、試験体3の、各回における摺動抵抗値および摺動抵抗値の総和を[表3]に示す。なお、本件において、摺動回数200[回]時の摺動抵抗については、摺動抵抗値が大きくなりすぎて測定不能であった。
Figure 2016221141
「表3」に示すように、試験体3においては、初回時(1回時)、100回時時の各回数において、摺動抵抗値の総和が、1.10[N]以上とかなり大きな値が示されている。このような結果から、SUS製の芯材に親水性被膜層をコーティングしない場合は、かなり大きな摺動抵抗が発生することがわかる。
1 ガイドワイヤ
11B 母材
11C 酸化被膜層
11A 親水性被膜層

Claims (5)

  1. 線状に延びる母材と、
    前記母材が処理液に浸漬されることで前記母材の外周面に形成される酸化被膜層と、
    前記酸化被膜層の外周面に隣接して形成される親水性被膜層と、
    を有する積層構造を備えるガイドワイヤ。
  2. 前記母材がステンレススチール製の芯線である、
    請求項1に記載のガイドワイヤ。
  3. 前記酸化被膜層は有色であるとともに、
    前記親水性被膜層は前記酸化被膜層の色を視認可能に形成される、
    請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤ。
  4. 前記酸化被膜層および前記親水性被膜層は化学結合によって互いに結合されている、
    請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のガイドワイヤ。
  5. 前記処理液は酸化剤を含有するとともに、
    前記親水性被膜層はカルボニル基を含む親水性ポリマー、または、ポリビニルピロリドンを含有する処理液によって処理される、
    請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のガイドワイヤ。
JP2015113046A 2015-06-03 2015-06-03 ガイドワイヤ Active JP6807635B2 (ja)

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