以下、本発明の一実施形態を図1〜図53に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせて多色のカラー画像を形成するタンデム方式のカラープリンタであり、4つの感光体ドラム(K1、C1、M1、Y1)、4つのドラム帯電装置(K2、C2、M2、Y2)、4つの現像装置(K4、C4、M4、Y4)、4つのドラムクリーニング装置(K5、C5、M5、Y5)、4つの転写装置(K6、C6、M6、Y6)、光走査装置2010、ベルト帯電装置2030、ベルト分離装置2031、ベルト除電装置2032、搬送ベルト2040、ベルトクリーニング装置2042、定着装置2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、通信制御装置2080を介して受信した上位装置からの多色の画像情報を光走査装置2010に通知する。
感光体ドラムK1、ドラム帯電装置K2、現像装置K4、ドラムクリーニング装置K5、及び転写装置K6は、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーションを構成する。
感光体ドラムC1、ドラム帯電装置C2、現像装置C4、ドラムクリーニング装置C5、及び転写装置C6は、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーションを構成する。
感光体ドラムM1、ドラム帯電装置M2、現像装置M4、ドラムクリーニング装置M5、及び転写装置M6は、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーションを構成する。
感光体ドラムY1、ドラム帯電装置Y2、現像装置Y4、ドラムクリーニング装置Y5、及び転写装置Y6は、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーションを構成する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。各感光体ドラムは、図1における面内で矢印方向に回転する。
各ドラム帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報(ブラック画像情報、マゼンタ画像情報、シアン画像情報、イエロー画像情報)に基づいて、色毎に変調された光を、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。また、各感光体ドラムがそれぞれ像担持体である。そこで、以下では、各感光体ドラムの表面を被走査面あるいは像面ともいう。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、この光走査装置2010の構成については後述する。
ところで、各感光体ドラムにおいて、光によって走査される領域は「走査領域」と呼ばれ、該走査領域のなかで画像情報が書き込まれる領域は、「有効走査領域」、「画像形成領域」、「有効画像領域」などと呼ばれている。また、各感光体ドラムにおける回転軸に平行な方向は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラムの回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。
現像装置K4は、感光体ドラムK1の表面に形成された潜像にブラックのトナーを付着させて顕像化させる。
現像装置C4は、感光体ドラムC1の表面に形成された潜像にシアンのトナーを付着させて顕像化させる。
現像装置M4は、感光体ドラムM1の表面に形成された潜像にマゼンタのトナーを付着させて顕像化させる。
現像装置Y4は、感光体ドラムY1の表面に形成された潜像にイエローのトナーを付着させて顕像化させる。
各現像装置によってトナーが付着した像(以下では、便宜上「トナー画像」ともいう)は、感光体ドラムの回転に伴って対応する転写装置の方向に移動する。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を搬送ベルト2040に向けて送り出す。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで、対応する転写装置によって搬送ベルト2040上の記録紙に順次転写され、重ね合わされてカラー画像となる。そして、この記録紙は、定着装置2050に送られる。
定着装置2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙に定着される。この記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイに送られ、排紙トレイ上に順次積み重ねられる。
各ドラムクリーニング装置は、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
ベルト帯電装置2030は、搬送ベルト2040の表面を帯電させる。これにより、記録紙が搬送ベルト2040の表面に静電吸着される。
ベルト分離装置2031は、搬送ベルト2040上に静電吸着されている記録紙の吸着を解除する。
ベルト除電装置2032は、搬送ベルト2040の表面を除電する。
ベルトクリーニング装置2042は、搬送ベルト2040の表面に付着している異物を除去する。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの第1走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、8枚の折り返しミラー(2106a、2106b、2106c、2106d、2107a、2107b、2107c、2107d)、4つの第2走査レンズ(2108a、2108b、2108c、2108d)、4枚の防塵ガラス(2109a、2109b、2109c、2109d)、光制限部材2114、同期検知センサ2115、防音ガラス2120、及び不図示の走査制御装置などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング2300の所定位置に組み付けられている。
なお、本明細書では、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向(回転軸方向)に沿った方向をY軸方向、光偏向器2104における回転多面鏡の回転軸に沿った方向をZ軸方向として説明する。また、以下では、便宜上、各光学部材において、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)は、4つの感光体ドラム(K1、C1、M1、Y1)に個別に対応している。ここでは、光源2200aは感光体ドラムK1に対応し、光源2200bは感光体ドラムC1に対応し、光源2200cは感光体ドラムM1に対応し、光源2200dは感光体ドラムY1に対応している。
そして、光源2200aから射出される光を「光La」ともいい、光源2200bから射出される光を「光Lb」ともいう。また、光源2200cから射出される光を「光Lc」ともいい、光源2200dから射出される光を「光Ld」ともいう。各光源からは、発散性の光が射出される。
光源と光偏向器2104との間に配置されている光学系は「偏向器前光学系」と呼ばれている。
カップリングレンズ2201a、開口板2202a、及びシリンドリカルレンズ2204aは、光Laに対する偏向器前光学系である。
カップリングレンズ2201b、開口板2202b、及びシリンドリカルレンズ2204bは、光Lbに対する偏向器前光学系である。
カップリングレンズ2201c、開口板2202c、及びシリンドリカルレンズ2204cは、光Lcに対する偏向器前光学系である。
カップリングレンズ2201d、開口板2202d、及びシリンドリカルレンズ2204dは、光Ldに対する偏向器前光学系である。
各カップリングレンズは、対応する光源から射出された光を以後の光学系に適した形態に変換する。カップリングレンズにより変換された形態は、平行光であったり、弱い発散性あるいは弱い集束性の光であったりする。
各開口板は、開口部を有し、対応するカップリングレンズを介した光を整形する。各シリンドリカルレンズは、対応する開口板の開口部を通過した光をZ軸方向に関して集光する。各シリンドリカルレンズを介した光は、光偏向器2104に向かう。
光偏向器2104は、2段構造の回転多面鏡を有している。各回転多面鏡には7面の鏡面がそれぞれ形成されており、以下では、各鏡面を「偏向反射面」ともいう。そして、1段目(下段)の回転多面鏡では、シリンドリカルレンズ2204aを介した光La及びシリンドリカルレンズ2204cを介した光Lcがそれぞれ偏向され、2段目(上段)の回転多面鏡では、シリンドリカルレンズ2204bを介した光Lb及びシリンドリカルレンズ2204dを介した光Ldがそれぞれ偏向されるように配置されている。
ここでは、光La及び光Lbは光偏向器2104の−X側に偏向され、光Lc及び光Ldは光偏向器2104の+X側に偏向される。また、各回転多面鏡は、図2における面内で矢印方向に回転する。
光偏向器2104は、防音のために密閉容器内に収容されている。この密閉容器は、各シリンドリカルレンズからの光、及び光偏向器2104で偏向された光が通過する窓を有し、該窓は防音ガラス2120で覆われている。
光偏向器2104と感光体ドラムとの間に配置されている光学系は「走査光学系」と呼ばれている。
第1走査レンズ2105a、折り返しミラー2106a、折り返しミラー2107a、及び第2走査レンズ2108aは、光Laに対する走査光学系である。
第1走査レンズ2105b、折り返しミラー2106b、折り返しミラー2107b、及び第2走査レンズ2108bは、光Lbに対する走査光学系である。
第1走査レンズ2105c、折り返しミラー2106c、折り返しミラー2107c、及び第2走査レンズ2108cは、光Lcに対する走査光学系である。
第1走査レンズ2105d、折り返しミラー2106d、折り返しミラー2107d、及び第2走査レンズ2108dは、光Ldに対する走査光学系である。
各第1走査レンズはfθレンズであり、各第2走査レンズは長尺トロイダルレンズである。各走査光学系における第1走査レンズと第2走査レンズとから構成される光学系は「走査結像光学系」とも呼ばれている。なお、走査結像光学系は、1つのレンズで構成することもできる。
本実施形態では、光源からの光をシリンドリカルレンズにより副走査対応方向のみ集光した状態、すなわち主走査対応方向に長い線像の状態で、光偏向器2104に入射させている。これは、偏向反射面の面倒れを走査結像光学系により補正できるようにするためである。
光偏向器2104で偏向された光Laは、第1走査レンズ2105a、折り返しミラー2106a、折り返しミラー2107a、第2走査レンズ2108a、及び防塵ガラス2109aを介して、感光体ドラムK1に照射され、光スポットが形成される。
光偏向器2104で偏向された光Lbは、第1走査レンズ2105b、折り返しミラー2106b、折り返しミラー2107b、第2走査レンズ2108b、及び防塵ガラス2109bを介して、感光体ドラムC1に照射され、光スポットが形成される。
光偏向器2104で偏向された光Lcは、第1走査レンズ2105c、折り返しミラー2106c、折り返しミラー2107c、第2走査レンズ2108c、及び防塵ガラス2109cを介して、感光体ドラムM1に照射され、光スポットが形成される。
光偏向器2104で偏向された光Ldは、第1走査レンズ2105d、折り返しミラー2106d、折り返しミラー2107d、第2走査レンズ2108d、及び防塵ガラス2109dを介して、感光体ドラムY1に照射され、光スポットが形成される。
各感光体ドラム上の光スポットは、回転多面鏡の回転に伴って該感光体ドラムの長手方向(主走査方向)に移動する。感光体ドラム2030a及び感光体ドラム2030bでは、−Y方向に光走査が行われ、感光体ドラム2030c及び感光体ドラム2030dでは、+Y方向に光走査が行われる(図6参照)。ここでは、主走査方向に関する走査領域の大きさは327mmである。すなわち、該走査領域の像高は、−163.5mm〜+163.5mmである。
感光体ドラムの走査領域における走査開始位置は、主走査方向に関する該走査領域の一側端部であり、感光体ドラムの走査領域における走査終了位置は、主走査方向に関する該走査領域の他側端部である。以下では、主走査方向に関して、走査領域の中央部を「中央像高」ともいい、走査領域の両端部を「周辺像高」ともいう。
ここで、図7に示されるように、回転多面鏡の回転軸に直交する面(ここでは、XY面)において、回転多面鏡の回転中心を通り、X軸に平行な軸を「基準軸」とする。また、XY面において、各偏光器前光学系の光軸と上記基準軸とのなす角をθinと表記する。さらに、図8及び図9に示されるように、XY面に正射影したときの、光偏向器2104に入射する光の幅をdinと表記する。ここでは、din=3.5mmである。
そして、回転多面鏡に内接する円(図10参照)の直径をDとする。ここでは、D=13mmである。そこで、XY面に正射影すると、光偏向器2104に入射する光の幅dinは、偏向反射面の長さdr(図10参照)より小さい。また、7つの偏向反射面を区別する必要があるときは、反時計まわりに面1、面2、面3、面4、面5、面6、面7とする。さらに、回転多面鏡における回転中心から偏向反射面までの距離であるD/2を「A寸」ともいう。
同期検知センサ2115は、光偏向器2104で偏向された光Ldであって、走査開始前の光の光路上に配置されている。ここでは、光偏向器2104から同期検知センサ2115に向かう方向をx軸方向とし、該x軸方向及びZ軸方向のいずれにも直交する方向をy軸方向とする。該y軸方向は、同期検知センサ2115における主走査対応方向である。
光制限部材2114は、光偏向器2104と同期検知センサ2115との間に配置され、同期検知センサ2115に向かう光の一部を制限する。この光制限部材2114の詳細については後述する。なお、以下では、便宜上、x軸方向に関する光制限部材2114の配置位置を「同期光制限位置」ともいう。
同期検知センサ2115は、受光光量に応じた信号を走査制御装置に出力する。以下では、同期検知センサ2115から出力される信号を「同期検知信号」ともいう。また、光偏向器2104で偏向され、同期検知センサ2115に向かう光を「同期光」ともいう。
走査制御装置は、同期検知センサ2115からの同期検知信号に基づいて、4つの感光体ドラムでの書き込み開始タイミングを決定する。
図11には、光源が1つの発光部からなるシングルLD(Laser Diode)を有する場合の、同期検知信号と光源駆動信号のタイミングチャートが示されている。回転多面鏡は等角速度で回転しているため、同期検知信号は一定時間ごとにローレベルからハイレベルに変化する。走査制御装置は、同期検知信号の立ち上がりタイミングから一定時間t1の経過後に、書き込み情報に応じた光源駆動信号を出力する。
そこで、各走査ラインでは、一例として図12に示されるように、主走査対応方向に関して常に同じ位置から書き込みが開始されることになる。
ここでは、走査制御装置は、一例として図13に示されるように、同期検知信号の信号レベルがある一定の閾値v0以上のときに同期光を受光しているとみなす。そこで、走査制御装置は、同期検知信号の信号レベルが閾値v0になるタイミングを、同期検知信号の立ち上がりタイミングと判断する。なお、以下では、走査制御装置が同期検知信号の立ち上がりを検知することを「同期検知」ともいう。
ところで、同期検知センサ2115が同期光を受光したときの出力波形が異なると、一例として図14に示されるように、同期検知信号の立ち上がりタイミングが異なることになる。そこで、例えば、走査ライン毎に同期検知信号の立ち上がりタイミングが異なると、走査ライン毎に同期検知のタイミングが異なり、一例として図15に示されるように、走査ライン毎に書き込みが開始される主走査対応方向に関する位置が異なることとなる。すなわち、主走査対応方向に関して印字位置のずれが生じる。このような走査線の書き出し位置のずれは「縦線揺らぎ」とも呼ばれ、出力画像の劣化を招くおそれがある。
次に、光源2200dから射出され、光偏向器2104に入射する光と、光偏向器2104で偏向された光について図16〜図20を用いて説明する。ここでは、回転多面鏡の面1で反射された光が、同期検知センサ2115及び対応する感光体ドラムの走査領域に向かうものとする。
図16には、光偏向器2104で偏向された光が、同期検知センサ2115に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光(同期光)とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるのではなく、光偏向器2104に入射する光は面1及び面2で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、同期検知センサ2115に向かう光(同期光)の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、din=3.5mmであり、dout=2.64mmである。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光の進行方向と基準軸とのなす角をψ0とする。このψ0は、「同期角度」とも呼ばれている。なお、この明細書では、同期検知センサが+Y側に配置されている場合(反射光(同期光)の進行方向が+Y側の場合)を「ψ0」と表記し、同期検知センサが−Y側に配置されている場合(反射光(同期光)の進行方向が−Y側の場合)を「−ψ0」と表記している。
図17には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が−163.5mmの位置(すなわち、対応する感光体ドラムの走査領域における走査開始位置)に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるのではなく、光偏向器2104に入射する光は面1及び面2で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査開始位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、din=3.5mmであり、dout=3.17mmである。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光の進行方向と基準軸とのなす角をθsとする。
図18には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が−150mmの位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムにおける像高が−150mmの位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の「けられ」はない。
図19には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が0mmの位置(すなわち、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置)に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査領域の中央位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の「けられ」はない。
図20には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が+150mmの位置に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムにおける像高が+150mmの位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinと同じである。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の「けられ」はない。
図21には、光偏向器2104で偏向された光が、対応する感光体ドラムにおける像高が+163.5mmの位置(すなわち、対応する感光体ドラムの走査領域における走査終了位置)に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるのではなく、光偏向器2104に入射する光は面1及び面7で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、対応する感光体ドラムの走査終了位置に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、din=3.5mmであり、dout=3.13mmである。
このとき、回転多面鏡の面1で反射された光の進行方向と基準軸とのなす角をθeとする。「θs+θe」は、いわゆる走査画角に対応する角度である。また、θs及びθeは、「走査半画角」とも呼ばれている。
このように、本実施形態では、光偏向器2104で偏向された光が、同期検知センサ2115に向かうタイミング、対応する感光体ドラムにおける像高が−163.5mmの位置から−150mm未満の位置の範囲に向かうタイミング、及び対応する感光体ドラムにおける像高が+150mmを超える位置から+163.5mmの位置の範囲に向かうタイミングでは、入射光の一部が光偏向器2104で「けられ」、対応する感光体ドラムにおける像高が−150mmの位置から+150mmの位置の範囲に向かうタイミングでは、入射光は光偏向器2104で「けられ」ないように設定されている。
ところで、回転多面鏡に光を入射させる方式として、アンダーフィルドタイプとオーバーフィルドタイプとがある。以下では、便宜上、アンダーフィルドタイプを「UFタイプ」、オーバーフィルドタイプを「OFタイプ」ともいう。
UFタイプでは、主走査対応方向に関して、偏向反射面の長さよりも入射光の幅が小さい(例えば、特開2005−92129号公報参照)。この場合、入射光のすべてが感光体ドラムに導光される。
OFタイプでは、主走査対応方向に関して、偏向反射面の長さよりも入射光の幅が大きい(例えば、特開平10−206778号公報、特開2003−279877号公報参照)。この場合、入射光における周辺の光は感光体ドラムに導光されない。
従来のUFタイプの光走査装置では、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応するには、主走査対応方向に関して、偏向反射面の長さを大きくする必要があるため、回転多面鏡における面数を少なくするか、回転多面鏡における内接円を大きくする必要があった。
しかしながら、上記面数を少なくすると、回転多面鏡の回転数を大きくしなければならないという不都合があった。一方、上記内接円を大きくすると、回転多面鏡の風損が増加し、消費電力が増加するという不都合があった。
また、従来のOFタイプの光走査装置では、画像形成の高速化や画素密度の高密度化に対応するには、10面以上の回転多面鏡を用いる必要があるため、走査画角が小さくなり、光走査装置の大型化を招くという不都合があった。また、光の周辺部が使用されないため、光利用効率が低いという不都合もあった。
本実施形態における光走査装置2010では、従来のUFタイプの光走査装置よりも、回転多面鏡を小型化することができるとともに、従来のOFタイプの光走査装置よりも、走査画角を大きくすることができる。
以下では、本実施形態における光走査装置2010のように、回転多面鏡で反射された光が走査領域の中央部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光の全てを一の偏向反射面で反射させ、回転多面鏡で反射された光が走査領域の両端部のうちの少なくとも一方の端部に向かうタイミングでは、回転多面鏡に入射する光を複数の偏向反射面で反射させるようなタイプを、「走査端OFタイプ」ともいう。
なお、光源2200d以外の光源から射出され対応する走査領域に向かう光についても、上記光源2200dから射出された光と同様に「走査端OFタイプ」となるように設定されている。
図22には、偏向反射面に対しS偏光のみの光を光偏向器に入射させた場合、及び、偏向反射面に対しS偏光成分よりP偏光成分が強い光を光偏向器に入射させた場合の各々について、光偏向器での「けられ」がないときに、走査光学系を介して被走査面に照射された光の中央像高に対する各像高での光量比の例が示されている。偏向反射面に対しS偏光のみの光を光偏向器に入射させた場合は、中央像高で光量が最も高く、周辺像高で光量が最も低くなる。一方、偏向反射面に対しS偏光成分よりP偏光成分が強い光を光偏向器に入射させた場合は、周辺像高で光量が最も高く、中央像高で光量が最も低くなる。
図23には、偏向反射面に対しS偏光のみの光を光偏向器に入射させた場合であって、走査端OFタイプに応じた光偏向器での「けられ」があるとき、走査光学系を介して被走査面に照射された光の光量分布が模式図的に示されている。
図24には、偏向反射面に対しS偏光成分よりP偏光成分が強い光を光偏向器に入射させた場合であって、走査端OFタイプに応じた光偏向器での「けられ」があるとき、走査光学系を介して被走査面に照射された光の光量分布が模式図的に示されている。
図23では、光偏向器での「けられ」により、被走査面上での光量の像高間偏差が大きくなっている。一方、図24では、光偏向器での「けられ」により、被走査面上での光量の像高間偏差が小さくなっている。すなわち、偏向反射面に対しS偏光成分よりP偏光成分が強い光を光偏向器に入射させた場合の方が、被走査面上での光量の像高間偏差が小さい。なお、いずれの光についても、走査端OFタイプに応じた光偏向器での「けられ」による周辺像高での光量低下は同じである。
そこで、本実施形態では、光源が1つの発光部からなるシングルLD(Laser Diode)を有する場合は、光偏向器2104に入射する光が、偏向反射面に対しS偏光成分よりもP偏光成分のほうが強い光となるように、光源における光の射出方向に平行な軸を回転軸とし、該回転軸まわりに光源を回転させている。
なお、従来の光走査装置では、シングルLDを有する光源は、射出される光が偏向反射面に対しS偏光になるように配置されていた。このとき、光源から射出される光の発散角は、主走査対応方向に関して大きく、副走査対応方向に関して小さい。
このように、光源がシングルLDを有する場合、光の射出方向に平行な軸を回転軸として光源を回転させて、偏向反射面に対しS偏光成分よりもP偏光成分を強くし、走査光学系を介することにより生じる主走査対応方向に関する光量むらを、中央よりも周辺部で光量が高くなるように設定すると、走査端OFタイプに応じた光偏向器での「けられ」により、被走査面上での光量の像高間偏差を小さくすることができる。
図25及び図26には、光源2200dがシングルLDを有する場合に、該光源から射出され、光制限部材2114に入射する光の様子が示されている。図27及び図28には、光源2200dが2つの発光部からなる2ch−LDアレイを有する場合に、該光源から射出され、光制限部材2114に入射する光の様子が示されている。ここでは、光源2200dから射出された光は、カップリングレンズ2201dによって平行光に変換されるものとする。以後、特に断りがなければ、同期検知センサ2115に向かう光は、平行光として扱う。
光源2200dから射出された光は、焦点距離に近い位置に配置されたカップリングレンズ2201dによって平行光に変換される。カップリングレンズ2201dの焦点距離は、シングルLDを有する場合の方が2ch−LDアレイを有する場合よりも短い。本実施形態では、一例として、光源2200dがシングルLDを有する場合のカップリングレンズ2201dの焦点距離fsを17.5mm、光源2200dが2ch−LDアレイを有する場合のカップリングレンズ2201dの焦点距離fmを27mmとした。
カップリングレンズ2201dから射出された光は、開口板2202dによって光の一部が遮光された後にシリンドリカルレンズ2204dに入射し、シリンドリカルレンズ2204dにより副走査対応方向にのみ集光した状態、すなわち主走査対応方向に長い線像の状態で、防音ガラス2120を通過して、光偏向器2104に入射する。シリンドリカルレンズは主走査対応方向に関してレンズのパワーがなく、副走査対応方向の焦点距離は一例として47.4mmとした。なお、シリンドリカルレンズは、シングルLDと2ch−LDAとで共通とした。
各開口板の開口部は、一例として図29に示されるように、主走査対応方向に関する長さがb、副走査対応方向に関する長さがaである矩形形状の開口部である。なお、開口部の長さa、長さb、及び形状は、対応する感光体ドラム表面におけるビームスポット径が狙いの値となるように設定される。
偏向反射面で反射されて同期検知センサ2115に向かう光は、XY面に正射影したとき、光偏向器2104での「けられ」によって、その幅が入射光に対して狭くなった状態で、第1走査レンズ2105dの主走査対応方向の端部近傍を通過し、光制限部材2114で一部が遮光されて、同期検知センサ2115に到達する。なお、以下では、上記第1走査レンズ2105dの主走査対応方向の端部近傍を「第1走査レンズ2105d同期部」ともいう。
ここで、光源2200dから同期検知センサ2115に向かう光の光路上の種々の位置における光の断面強度分布について説明する。なお、光源がシングルLDを有する場合を例にする。
また、シリンドリカルレンズ2204から共役点までの距離をLとしたときに、共役点から光の進行方向にLだけ離れた位置に設けられ、光軸に対して垂直な仮想面を「仮想面1」とする。さらに、光軸に対して垂直であり、共役点から光の進行方向に仮想面1よりも離れた位置に設けられた仮想面を「仮想面2」とする。
幾何光学的な観点から、各位置を通過する光が無数の光線の集まりと考えると、開口板2202dの開口部を通過してシリンドリカルレンズ2204dに向かう光線のうち、主走査対応方向に関して最も外側を通過する光線の開口板2202d上の通過位置は、光軸を原点とすると±b/2となる。同様に、開口板2202dの開口部を通過してシリンドリカルレンズ2204dに向かう光線のうち、副走査対応方向に関して最も外側を通過する光線の開口板2202d上の通過位置は光軸を原点とすると±a/2となる。
同様に、仮想面1(図30及び図31参照)を通って第1走査レンズ2105d同期部に向かう光線のうち、主走査対応方向に関して最も外側を進行する光線の仮想面1上での位置は、光軸を原点とすると−b/2、及び(b’−b/2)となる(図30参照)。また、仮想面1を通って第1走査レンズ2105d同期部に向かう光線のうち、副走査対応方向に関して最も外側を通過する光線の仮想面1上での位置は光軸を原点とすると±a/2となる(図31参照)。
次に、仮想面2(図30及び図31参照)を通って第1走査レンズ2105d同期部に向かう光線のうち、主走査対応方向に関して最も外側を進行する光線の仮想面2上での位置は、光軸を原点とすると−b/2、及び(b’−b/2)となる(図30参照)。また、仮想面2を通って第1走査レンズ2105d同期部に向かう光線のうち、副走査対応方向に関して最も外側を進行する光線の仮想面2上での位置は光軸を原点とすると±a’/2となる(図31参照)。
ここで、仮想面2上において、主走査対応方向に関して最も外側を通過する光線の主走査対応方向に関する位置は、第1走査レンズ2105d同期部に収差がない場合、光制限部材2114上において、主走査対応方向に関して最も外側を通過する光線の主走査対応方向に関する位置と略同じになる。同様に、仮想面2上において、副走査対応方向に関して最も外側を通過する光線の副走査対応方向に関する位置は、第1走査レンズ2105d同期部に収差がないとした場合、光制限部材2114上において、副走査対応方向に関して最も外側を通過する光線の副走査対応方向に関する位置と略同じになる。
図32には、光源がシングルLDを有し、該光源から射出される光が偏向反射面に対しS偏光になるように光源が配置されている場合の、開口板2202dに入射する光の断面強度分布が示されている。この場合、光源における光の発散角は、主走査対応方向に関して最も大きく、副走査対応方向に関して最も小さくなる。なお、このときの主走査対応方向に関する発散角を「θ⊥」と表記し、副走査対応方向に関する発散角を「θ//」と表記する。なお、発散角は通常は半値全角で表される。
図33には、光源がシングルLDを有し、該光源から射出される光が偏向反射面に対しS偏光になるように光源が配置されている場合の、開口板2202dの開口部を通過する光(実線で囲まれている部分)の光強度分布が示されている。
シングルLDの発散角は主走査対応方向に関して大きく、開口板2202dの開口部の大きさも主走査対応方向に関して大きいため、開口板2202dの開口部を通過する光は、主走査対応方向における広い発光強度分布のうち、長さbで規定される光強度の高い領域の一部が切り出されたものとなる。
図34には、シングルLDを有する光源を、光の射出方向を回転軸として角度γだけ回転させた場合の、開口板2202dに入射する光の断面強度分布、及び開口板2202dの開口部を通過する光(実線で囲まれている部分)の光強度分布が示されている。ここでは、角度γは、一例として−55°である。
シングルLDを有する光源は、該光源を角度γだけ回転させたことで、主走査対応方向に関する発散角は上記θ⊥よりも小さくなり、副走査対応方向に関する発散角は上記θ//よりも大きくなる。このときの、主走査対応方向及び副走査対応方向に関する発散角は、θ//、θ⊥、角度γの3つで規定される。仮に角度γが90°である場合、主走査対応方向に関する発散角はθ//、副走査対応方向に関する発散角はθ⊥となる。
このように、シングルLDの発散角は光源の回転によって主走査対応方向に関して小さくなるが、開口板2202dの開口部の主走査対応方向に関する大きさbは変化しないため、開口板2202dの開口部を通過する光は、主走査対応方向における狭い発光強度分布のうち開口板2202dの開口部の主走査対応方向に関する大きさbで規定される領域が切り出されたものとなる。この場合は、光源を回転させない場合に比べて、光強度の弱い領域も開口板2202dの開口部を通過する。
このとき、光制限部材2114の近傍を通過する光に主走査対応方向の位置ずれが発生すると、光制限部材2114によって遮光される範囲は変わらないが、光制限部材2114を通過した後の光強度は、光源を回転配置させない場合に比べて大きく変化する。そして、同期検知センサ2115の出力変化も大きくなり、縦線揺らぎに起因する画像劣化が懸念される。
図35には、シングルLDを有する光源を、光の射出方向を回転軸として角度γだけ回転させた場合の、仮想面1上における光の断面強度分布、光偏向器2104で「けられ」る領域、及び光偏向器2104から同期検知センサ2115に向かう光(実線で囲まれている部分)の光強度分布が示されている。ここでは、角度γは、一例として−55°である。なお、開口板2202dの開口部を通過した光の主走査対応方向の幅はb、副走査対応方向の幅はaであったが、光偏向器2104での「けられ」のため、主走査対応方向の幅はb’に変化する。そこで、光偏向器2104での「けられ」がない場合に比べて、光偏向器2104から同期検知センサ2115に向かう光の光量は低下する。
図36は、図35の一部を拡大した図である。開口板2202dによって、主走査対応方向にb、副走査対応方向にaの長さを有する矩形形状で切り出された光は、光偏向器2104で一部が「けられ」て、主走査対応方向の幅がbからb’に変化することで、主走査対応方向に関して光軸(原点)に対して非対称な断面強度分布になる。
図37には、シングルLDを有する光源を、光の射出方向を回転軸として角度γだけ回転させた場合の、仮想面2上における光の断面強度分布、及び光偏向器2104で「けられ」る領域が示されている。ここでは、角度γは、一例として−55°である。開口板2202dの開口部を通過した光の主走査対応方向の幅はb、副走査対応方向の幅はaであったが、光偏向器2104で一部が「けられ」て、主走査対応方向の幅はb’に変化する。また、シリンドリカルレンズ2204dによって副走査対応方向の幅はa’に変化する。仮想面2上における光の光量は、副走査対応方向の幅は異なるが、仮想面1上における光の光量と等しい。
図38には、従来の光制限部材の一例が示されている。幾何光学的な観点から、各位置を通過する光が無数の光線の集まりと考えると、仮想面2を通って第1走査レンズ2105d同期部に向かう光線のうち、主走査対応方向に関して最も外側を進行する光線の光制限部材上での位置は、光軸を原点とすると−b/2、及び(b’−b/2)となる。また、副走査対応方向に関して最も外側を通過する光線の光制限部材上での位置は光軸を原点とすると±a’/2となる。
従来の光制限部材は、副走査対応方向に十分長い矩形形状を有している。該光制限部材の縁のうちの1つ(ここでは、−y側の縁)は、光軸に対して+y側にX1だけ離れた位置にある。X1は、主走査対応方向に関して最も外側を進行する光線の光制限部材上の通過位置の1つである(b’−b/2)より大きい値をとる。
X1は、例えば、光制限部材を通過する光線のうち、主走査対応方向に関して最も外側を通り、かつ、光偏向器2104にて「けられ」が発生している側の光線に着目し、同期光制限位置での、該光線の主走査対応方向における光線の位置ずれの公差積み上げ計算結果や、主走査対応方向における光の幅の公差積み上げ計算結果を基にして決定される。
図39には、本実施形態における光制限部材2114の一例が示されている。なお、この光制限部材2114の効果についての詳細は後述する。
次に、同期光制限位置での、光の位置ずれと幅の変化について説明する。図40(A)〜図40(C)におけるマージナル光線は、主走査対応方向に関して最も外側を進行する光線のことである。そして、マージナル(+)は、光偏向器2104にて「けられ」が生じている側の光線であり、マージナル(−)は、光偏向器2104にて「けられ」が生じていない側の光線である。なお、図40(B)及び図40(C)における黒丸は、設計中央値におけるマージナル光線の通過位置を示している。
ここでは、開口板2202dの開口部の主走査対応方向の大きさbは、一例として3.50mm、副走査対応方向の大きさaは、一例として1.60mmとした。また、光偏向器2104による設計中央値での「けられ」により、光偏向器2104で反射された光(同期光)における主走査対応方向の幅は3.50mmから2.64mmに変化するとした。
さらに、光源がシングルLDを有し、該光源から射出される光が光偏向器2104の偏向反射面に対しS偏光になるように配置されたとき、主走査対応方向(水平方向)の発散角θ⊥は、一例として半値全角で21°とし、副走査対応方向(垂直方向)の発散角θ//は、一例として半値全角で7°とした。
また、光源の角度γは、一例として−55.0°とした。さらに、同期光制限位置に入射する光の主走査対応方向における位置ずれ量の最大値(最大ずれ量)を、一例として0.54mmとした。該最大ずれ量は、開口板2202dの開口部の中心を通る主光線に着目し、同期光制限位置での主光線の主走査対応方向における光線の位置ずれの公差積み上げ計算結果を基にして決定した。
また、幾何光学的な観点から、各位置を通過する光が無数の光線の集まりと考えると、仮想面2を通って第1走査レンズ2105d同期部に向かう光線において、副走査対応方向に関して最も外側を進行する光線の光制限部材2114の通過位置は、光軸を原点とすると±1.36mmとなり、幅で2.72mmとなる。
本実施形態の光走査装置2010では、カップリングレンズを主走査対応方向に移動させて感光体ドラム上でのピントずれを補正することを想定している。同期光制限位置での光の主走査対応方向における最大ずれ量を、カップリングレンズの調整を加味して、例えば計算シミュレーションから見積もると、光源と光偏向器2104との間の光路上の各光学素子の組付誤差や形状誤差に起因する位置ずれ量が著しく小さくなることがわかった。従って、同期光制限位置での光の主走査対応方向における最大ずれ量は、光偏向器2104と同期検知センサ2115との間の光路上における各光学素子の組付誤差や形状誤差が支配的である。
光偏向器2104と同期検知センサ2115との間の光路上における各光学素子の組付誤差や形状誤差が生じた状態で、光偏向器2104の各偏向反射面で反射した光を同期検知センサ2115に到達させるためには、入射光に対する偏向反射面の傾き角度を変化させなければならず、そのためには光偏向器2104を設計中央値の状態から回転させなければならない。光偏向器2104が回転すると、光偏向器2104による光の「けられ」量も変化する。
ここで、同期光制限位置での光の主走査対応方向における位置ずれが、全て光偏向器2104と同期検知センサ2115との間の光路上における各光学素子の組付誤差や形状誤差によって引き起こされるとする。この場合、図41(A)〜図41(C)に示されるように、同期光制限位置での光の位置ずれ量が、+y方向における最大ずれ量のときは、光の幅が2.64mmから2.77mmに変化して光量は増加し、同期光制限位置での光の位置ずれ量が、−y方向における最大ずれ量のときは、光の幅が2.64mmから2.51mmに変化して光量は低下することが、計算シミュレーションからわかっている。
このように公差変動が生じると、同期検知センサ2115に向かう光は、同期光制限位置において、該光の位置は主走査対応方向に関して最大で±0.54mmずれ、かつ、該光の幅は主走査対応方向に関して最大で±0.13mm変化する。
図42には、同期光制限位置において、光に主走査対応方向の位置ずれが発生しない場合の、該光の断面強度分布が示されている。この場合、光偏向器2104の偏向反射面で反射されて同期検知センサ2115に向かう光(同期光)の主走査対応方向における幅は、光偏向器2104での「けられ」によって、開口板2202dの開口部の主走査対応方向の幅(=3.50mm)よりも小さい状態(=2.64mm)で同期光制限位置に入射する。
同期光制限位置に光制限部材2114が配置されていると、光制限部材2114の縁と光の主光線との相対位置関係によっては、主走査対応方向における光の幅が更に狭まって、同期検知センサ2115に向かう。
光制限部材2114によって光をどの程度遮光するかは、例えば、開口板2202dの開口部の中心を通る主光線に着目し、同期光制限位置における主光線の主走査対応方向における位置ずれの公差積み上げ計算結果と、同期光制限位置における主走査対応方向に関して最も外側を通過する光線の1つであるマージナル(+)の設計中央値における光線位置に基づいて決定する。
次に、同期光制限位置で、光に主走査対応方向の位置ずれが発生する場合の光の断面強度分布を説明する。該位置ずれが発生すると、同期光制限位置での光の主走査対応方向における幅は変化する(図41(A)〜図41(C)参照)。
例えば、公差積み上げ計算で想定し得る最大の位置ずれ(=0.54mm)が−y方向に発生した場合、図41(B)に示されるように光の幅は0.13mmだけ狭まる。そのため、図43に示されるように、設計中央値に対する主光線の位置ずれ量は−0.54mmであるのに対し、設計中央値に対するマージナル(+)の位置ずれ量は−0.54mmと光の幅の減少分である0.13mmの合計である−0.67mmとなる。なお、設計中央値に対するマージナル(−)の位置ずれ量は主光線と同じ−0.54mmである。
同様に、公差積み上げ計算で想定し得る最大の位置ずれ(=0.54mm)が+y方向に発生した場合、図41(C)に示されるように光の幅は0.13mmだけ広がる。そのため、図44に示されるように、設計中央値に対する主光線の位置ずれ量は+0.54mmであるのに対し、設計中央値に対するマージナル(+)の位置ずれ量は+0.54mmと光の幅の増加分である0.13mmの合計である+0.67mmとなる。なお、設計中央値に対するマージナル(−)の位置ずれ量は主光線と同じ+0.54mmである。
このように、光制限部材2114が適切な位置に配置されていないと、公差変動によって同期検知センサ2115に向かう光の幅が変化するため、同期検知センサ2115で受光される光の光量が変動する。そこで、従来は、光偏向器2104での「けられ」が生じている側、言い換えればマージナル(+)の側のみ光の一部を遮光するように矩形の遮光板を光制限部材として用いていた(図38参照)。このような矩形の遮光板を光制限部材として用いる場合、例えば、設計中央値における主光線と遮光板の縁との相対位置関係が重要となる。
ここで、設計中央値における主光線と遮光板の−y側の縁との距離をX1とする(図38参照)。公差積み上げ計算によって算出された想定し得る主走査対応方向の最大位置ずれ量が、先述したように±0.54mmとすると、計算シミュレーション結果から、X1は1.32mmの場合が好適であることがわかっている。
同期光制限位置での光の断面強度分布と、該光と従来の光制限部材の相対位置関係を説明する。ここでは、X1は1.32mmとした。
図45には、同期光制限位置において主走査対応方向の位置ずれが発生しない場合の、光の断面強度分布と、該光と従来の光制限部材の相対位置関係とが示されている。X1を1.32mmとすると、設計中央値では従来の光制限部材によって光は遮光されない。
図46には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して公差積み上げ計算によって算出された想定し得る−y方向の最大位置ずれ量である−0.54mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と従来の光制限部材の相対位置関係が示されている。X1=1.32mmとすると、−y方向の最大位置ずれ量である−0.54mmずれて光が同期光制限位置に入射しても、従来の光制限部材によっては遮光されない。但し、設計中央値に対して主走査対応方向の光の幅は、2.64mmから2.51mmに変化している。
図47には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して公差積み上げ計算によって算出された想定し得る+y方向の最大位置ずれ量である+0.54mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と従来の光制限部材の相対位置関係とが示されている。X1=1.32mmとすると、+y方向の最大位置ずれ量である+0.54mmずれて光が同期光制限位置に入射すると、従来の光制限部材によって光の一部が遮光され、光の幅が2.77mmから2.51mmに変化する。該光の幅は、図46に示される場合と同じである。
図48には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、+y方向に0.30mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と従来の光制限部材の相対位置関係とが示されている。X1=1.32mmとすると、+y方向に0.30mmずれて光が同期光制限位置に入射しても、従来の光制限部材によって光は遮光されない。また、光の幅は、2.64mmから2.71mmに変化する。なお、光の幅2.71mmは、同期光制限位置に入射する光が、設計中央値に対して公差積み上げ計算によって算出された想定し得る最大位置ずれ量である±0.54mmの範囲内でずれると想定した場合、最も光の幅が広くなっている状態である。つまり、光量が最大となるため、同期検知センサ2115が受光する光量も最大となる。
図49には、図45〜図48の各場合における同期検知センサ2115の受光量が示されている。図49における受光量は、設計中央値での同期検知センサ2115の受光量を1に規格化した相対値である。
同期光制限位置に入射する光に主走査対応方向の位置ずれが発生すると、同期検知センサ2115の受光量(相対光量)は、0.955〜1.026の間で変動する。ここで、1.026と0.955の差分をとると0.071となり、これが同期検知センサ2115の受光量の変動幅(相対値)に相当する。この変動幅が小さければ、光の主走査対応方向の位置ずれによる同期検知センサ2115の受光量変動を抑制し、縦線揺らぎに起因する画像劣化を低減させることができる。
そこで、本実施形態では、光制限部材2114の形状に着目した。そして、光制限部材2114の形状として、光偏向器2104から同期検知センサ2115に向かう方向(x軸方向)に直交する面内において、主走査対応方向に関して、「けられ」が生じている側(+y側)に向かって、副走査対応方向の遮光範囲が大きくなる部分を有する形状とした。
光制限部材2114がこのような形状を有することで、同期検知センサ2115の受光量の変動幅を従来よりも小さくすることができる。すなわち、同期光制限位置に入射する光の主走査対応方向の位置ずれによる同期検知センサ2115の受光量変動を抑制し、縦線揺らぎに起因する画像劣化を低減させることができる。
ここで、光制限部材2114について具体的に説明する。ここでは、設計中央値における主光線と光制限部材2114の−y側の縁との距離X1を、一例として1.71mmとしている(図50参照)。
図50には、同期光制限位置において主走査対応方向の位置ずれが発生しない場合の、光の断面強度分布と、該光束と光制限部材2114の相対位置関係とが示されている。
図51には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して公差積み上げ計算によって算出された想定し得る−y方向の最大位置ずれ量である−0.54mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114の相対位置関係とが示されている。
図52には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して公差積み上げ計算によって算出された想定し得る+y方向の最大位置ずれ量である+0.54mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114の相対位置関係とが示されている。
光制限部材2114の特徴は、光の幅が狭まる−y方向のずれ時は遮光する範囲を狭くし、光の幅が広がる+y方向のずれ時は逆に遮光する範囲を広くしたことである。光制限部材2114では、直線Aよりも+Z側に入射する光線が遮光される。一例として、直線Aの傾きである係数Aは0.176(=1/tan(80°))、切片である係数Bは1.17である。また、直線aはy軸に平行な直線であり、Z=2.17である。
図53には、図50〜図52の各場合における同期検知センサ2115の受光量が、従来の光制限部材を用いた場合と比較して示されている。図53における受光量は、設計中央値での同期検知センサ2115の受光量を1に規格化した相対値である。
同期光制限位置において、光に主走査対応方向の位置ずれが発生すると、従来の光制限部材を用いた場合では、同期検知センサ2115の受光量の変動幅は0.071であったが、光制限部材2114を用いた場合では、同期検知センサ2115の受光量の変動幅は0.004に小さくなった。
このように、本実施形態における光制限部材2114は、同期検知センサ2115の受光量変動を抑制することができるため、同期検知センサ2115の出力変動を低減でき、また同期検知センサ2115の受光量が設計中央値に近づくので、複数の光走査装置間においても、同期検知センサの受光光量差が小さくなり同期検知センサ2115の出力変動が低減するので、縦線揺らぎに起因する画像劣化を低減させることができる。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置では、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、該4つの光源に個別に対応した4つの偏向器前光学系、光偏向器2104、4つの光源に個別に対応した4つの走査光学系、光制限部材2114、同期光を受光する同期検知センサ2115などを備えている。
各光源は、少なくとも1つの発光部を有し、光偏向器2104の偏向反射面に対しS偏光成分よりもP偏光成分が強い光を射出する。そして、光源2200dから射出され、光偏向器2104で偏向された同期光は、光制限部材2114で一部が遮光され、同期検知センサ2115で受光される。この同期光は、光偏向器2104で偏向される際に一部が「けられ」るように設定されている。
また、光制限部材2114は、光偏向器2104から同期検知センサ2115に向かう方向(x軸方向)に直交する面内において、主走査対応方向に関して、「けられ」が生じている側(+y側)に向かって、副走査対応方向の遮光範囲が大きくなる部分を有している。
この場合は、同期光に主走査対応方向に関する位置ずれがあっても、同期検知精度を維持することができる。
そして、回転多面鏡の回転軸に直交する面(ここでは、XY面)に正射影すると、光偏向器2104に入射する光の幅は、偏向反射面の主走査対応方向に関する長さよりも小さい。また、光偏向器2104で反射された光が走査領域の中央部に向かうタイミングでは、光偏向器2104に入射する光の全てが一の偏向反射面で反射され、光偏向器2104で反射された光が走査領域の端部に向かうタイミングでは、光偏向器2104に入射する光が前記一の偏向反射面を含む複数の偏向反射面で反射される。
この場合は、大型化や高コスト化を招くことなく、被走査面を高速で、精度良く光走査することができる。
そして、カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、結果として、大型化や高コスト化を招くことなく、高品質の画像を高速で形成することができる
ところで、同期光制限位置に入射する光は、主走査対応方向だけではなく、副走査対応方向に関しても位置ずれを生じる場合がある。但し、副走査対応方向の位置ずれは、主走査対応方向の位置ずれとは異なり、光偏向器2104による「けられ」に伴う光の幅の変化は生じない。同期光制限位置に入射する光の副走査対応方向における最大ずれ量を、主走査対応方向の場合と同様に公差積み上げ計算によって算出すると、一例として0.46mmとなった。
この場合は、上記光制限部材2114に代えて、一例として図54に示されるように、光偏向器2104から同期検知センサ2115に向かう方向(x軸方向)に直交する面内において、主走査対応方向に関して、「けられ」が生じている側(+y側)に向かって、副走査対応方向の遮光範囲が大きくなる部分において、該部分を規定する縁のうち少なくとも2つは、主走査対応方向に平行な軸に関して互いに線対称となる形状の光制限部材2114Aを用いる。これにより、主走査対応方向の位置ずれに加え、副走査対応方向の位置ずれに対する同期検知センサ2115の受光量変化を抑制し、縦線揺らぎに起因する画像劣化を低減させることができる。
図55には、同期光制限位置において主走査対応方向の位置ずれが発生しない場合の、光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係が示されている。ここでは、前記距離X1を、一例として1.71mmとした。
光制限部材2114Aは、主走査対応方向に関して、「けられ」が生じている側に向かって、副走査対応方向における遮光範囲が大きくなる部分を有し、該「部分」を規定する直線Aと直線Bの組は切片Bに関して互いに線対称となっており、直線Cと直線Dの組は切片B’に関して互いに線対称となっている。このような形状とすることで、同期光制限位置において、光に副走査対応方向の位置ずれが生じても、光制限部材2114Aによって光を遮光する範囲がずれ量によって大きく変化しないようにしている。
光制限部材2114Aでは、直線Aで規定されるZ座標よりも小さく、かつ、直線Bで規定されるZ座標よりも大きいZ座標に入射する光線が遮光され、また、直線Cで規定されるZ座標よりも小さく、かつ、直線Dで規定されるZ座標よりも大きいZ座標に入射する光線が遮光される。一例として、直線の傾きに相当する係数Aは0.176(=1/tan(80°))、切片である係数Bは1.17、係数B’は−1.37である。
図56には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して公差積み上げ計算によって算出された想定し得る−y方向の最大位置ずれ量である−0.54mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図57には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して公差積み上げ計算によって算出された想定し得る+y方向の最大位置ずれ量である+0.54mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図58には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、−y方向に0.06mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。この場合、主走査対応方向の位置ずれに伴う光の幅の減少はなく、設計中央値に対して光制限部材2114Aによって遮光される範囲は小さい。
同期光制限位置における主走査対応方向の光の位置ずれ量は、公差積み上げ計算によって算出された想定し得る主走査対応方向の最大位置ずれ量である±0.54mmの範囲内であればどんな値も取れるが、光の位置ずれが主走査対応方向にのみ生じるとした場合に最も同期検知センサ2115の受光量が高くなる条件は、図58に示される条件となる。
図59には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して公差積み上げ計算によって算出された想定し得る−Z方向の最大位置ずれ量である−0.46mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図60には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して公差積み上げ計算によって算出された想定し得る+Z方向の最大位置ずれ量である+0.46mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図61には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、副走査対応方向に−0.04mmずれている場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。同期光制限位置における副走査対応方向の光の位置ずれ量は、公差積み上げ計算によって算出された想定し得る副走査対応方向の最大位置ずれ量である±0.46mmの範囲内であればどんな値も取れるが、光の位置ずれが副走査対応方向にのみ生じるとした場合に、図61に示される条件が、光制限部材2114Aによって遮光される範囲が最も広くなるため、同期検知センサ2115の受光量も最低値となる。
図62には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、−y方向の最大位置ずれ量である−0.54mmずれ、かつ、+Z方向の最大位置ずれ量である+0.46mmずれて入射した場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図63には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、−y方向の最大位置ずれ量である−0.54mmずれ、かつ、−Z方向の最大位置ずれ量である−0.46mmずれて入射した場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図64には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、−y方向の最大位置ずれ量である−0.54mmずれ、かつ、副走査対応方向に−0.04mmずれて入射した場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図65には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、+y方向の最大位置ずれ量である+0.54mmずれ、かつ、+Z方向の最大位置ずれ量である+0.46mmずれて入射した場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図66には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、+y方向の最大位置ずれ量である+0.54mmずれ、かつ、−Z方向の最大位置ずれ量である−0.46mmずれて入射した場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図67には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、+y方向の最大位置ずれ量である+0.54mmずれ、かつ、副走査対応方向に−0.04mmずれて入射した場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図68には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、主走査対応方向に−0.06mmずれ、かつ、+Z方向の最大位置ずれ量である+0.46mmずれて入射した場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図69には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、主走査対応方向に−0.06mmずれ、かつ、−Z方向の最大位置ずれ量である−0.46mmずれて入射した場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図70には、同期光制限位置において、光の位置が、設計中央値に対して、主走査対応方向に−0.06mmずれ、かつ、副走査対応方向に−0.04mmずれて入射した場合の、該光の断面強度分布と、該光と光制限部材2114Aの相対位置関係とが示されている。
図71には、図55〜図70の各場合における同期検知センサ2115の受光量が、従来の光制限部材を用いた場合と比較して示されている。図71における受光量は、設計中央値での同期検知センサ2115の受光量を1に規格化した相対値である。
同期光制限位置に入射する光に主走査対応方向及び副走査対応方向の位置ずれが発生すると、従来の光制限部材を用いた場合では、同期検知センサ2115の受光量の変動幅は0.071であったが、光制限部材2114Aを用いた場合では、同期検知センサ2115の受光量の変動幅は0.042に小さくなった。
ここで、0.042を0.071で割ると、0.592となる。つまり、光制限部材2114Aを用いると、同期光制限位置において、光に主走査対応方向及び副走査対応方向の位置ずれが発生することによる同期検知センサ2115の受光量変動は、40.8%改善されることになる。そして、光の主走査対応方向及び副走査対応方向の位置ずれによる同期検知センサ2115の受光量変動を、同一の光走査装置内と異なる光走査装置間について更に抑制することができるため、同期検知センサ2115の出力変動を低減し、縦線揺らぎに起因する画像劣化を低減させることができる。
なお、光制限部材2114Aでは、「主走査対応方向に関して「けられ」が生じている側に向かって、副走査対応方向における遮光範囲が大きくなる部分」が、直線のみで形成されているが、直線ではなく例えば二次曲線等の曲線であっても良い。
また、光制限部材2114Aでは、直線A、直線B、直線C、直線Dの傾きの絶対値は全て等しいとしたが、直線Aと直線Bが主走査対応方向に平行な軸に関して互いに線対称になっている場合は、直線Cと直線Dについて主走査対応方向に平行な軸に関して互いに線対称になっている必要はない。同様に、直線Cと直線Dが主走査対応方向に平行な軸に関して互いに線対称になっている場合は、直線Aと直線Bについて主走査対応方向に平行な軸に関して互いに線対称になっている必要はない。
また、直線Aと直線Dが主走査対応方向に平行な軸に関して互いに線対称であって良いし、直線Bと直線Cが主走査対応方向に平行な軸に関して互いに線対称であっても良い。加えて、直線Aと直線Bの切片は等しい必要はなく、同様に、直線Cと直線Dの切片についても等しい必要はない。
ところで、光制限部材2114Aを光学ハウジング2300内に配置する際、同期光の進行方向(x軸方向)、光制限部材2114Aにおける主走査対応方向(y軸方向)、光制限部材2114Aにおける副走査対応方向(Z方向)、Z軸に平行な軸周りの光源2200dの回転方向(α方向)、y軸方向に平行な軸周りの回転方向(β方向)、x軸方向に平行な軸周りの回転方向(γ方向)の中で、γ方向の位置ずれが同期検知センサ2115の受光量変動に最も大きな影響を及ぼす。
図72(A)には、光制限部材2114Aを理想的な状態で配置した場合の、同期光制限位置における光の断面強度分布と光制限部材2114Aの相対位置関係が示されている。
図72(B)には、光制限部材2114Aを理想的な状態からx軸に平行な軸周りに5°回転して配置した場合の、同期光制限位置における光の断面強度分布と光制限部材2114Aの相対位置関係が示されている。このとき、回転中心は光の主光線に近い位置にある。
図72(C)には、光制限部材2114Aを理想的な状態からx軸に平行な軸周りに5°回転して配置した場合の、同期光制限位置における光の断面強度分布と光制限部材2114Aの相対位置関係が示されている。このとき、回転中心は光の主光線から離れた位置にある。
図72(B)と図72(C)を比較すると、回転中心が光の主光線から離れるにつれて、光制限部材2114で遮光する範囲のずれ量が大きくなるため、同期検知センサ2115の受光量変動が大きくなることが懸念される。
仮に、光制限部材2114Aを取り付ける際に2つのネジを用いる場合、2つのネジの中心が回転中心となるため、副走査対応方向と主走査対応方向のそれぞれについて、該回転中心が光束の主光線に近くなることが望ましい。同様に、3つ以上のネジを用いる場合、各ネジを結ぶことで得られる図形の重心が回転中心となるため、副走査対応方向と主走査対応方向のそれぞれについて、該回転中心が光の主光線に近くなることが望ましい。
一例として、回転中心の座標が(y,Z)=(20,0)となるように、光制限部材2114Aが配置されているとした場合、光制限部材2114Aの回転が±5°の範囲で規制されていれば、同期検知センサ2115の受光量の変動は、理想的な状態で光制限部材2114Aが配置されている場合に比べて大きく変化しない。
また、上記実施形態において、一例として図73に示されるように、第1走査レンズ2105dと同期検知センサ2115との間に、光(同期光)を主走査対応方向に関して収束させる機能を有する同期光学系2116を配置しても良い。この場合、主走査対応方向に関して光が同期検知センサ2115からはみ出すことを抑制することができる。そこで、同期検知センサ2115の出力が増大し、SN比の低下に起因する同期検知精度の低下を抑制することができる。また、同期検知センサ2115の主走査対応方向に関する大きさを小さくすることが可能となり、同期検知センサ2115の応答性を向上させることができる。
このとき、同期光学系2116に面倒れ補正機能を持たせると、一例として図74に示されるように、光偏向器2104の偏向反射面にある程度の面倒れがあっても、同期検知センサ2115に光を導くことが可能となり、面倒れによる同期検知センサ2115の出力低下を抑制することができる。そこで、SN比の低下に起因する同期検知精度の低下を更に抑制することができる。
同期光学系2116は、一例として図75(A)に示されるように、光制限部材2114と同期検知センサ2115との間の光路上に配置されても良いし、一例として図75(B)に示されるように、第1走査レンズ2105dと光制限部材2114との間の光路上に配置されても良い。
特に、光制限部材2114と同期検知センサ2115との間の光路上に同期光学系2116を配置すると、光制限部材2114が同期光学系2116と光偏向器2104との間に配置されることとなり、光を所望の量だけ確実に遮光することができる。この場合、不必要に光を遮ることによる同期検知センサ2115の出力低下を抑制することができる。また、光制限部材2114の取り付け誤差や形状誤差に起因する同期検知センサ2115の出力ばらつきを小さくすることができる。
また、同期光学系2116の焦点距離を、第1走査レンズ2105dの焦点距離よりも短くすると、同期検知センサ2115の受光面上での光の走査速度(移動速度)が遅くなるため、同期検知センサ2115の受光光量を大きくすることが可能となる。そのため、同期検知センサ2115の出力が増大してSN比が向上し、同期検知精度を向上させることができる。
また、光制限部材2114を光学ハウジングと一体に形成しても良い。この場合は、光制限部材2114の組付精度が向上するため、光制限部材2114における組付誤差(ばらつき)の見積もり量を小さくすることができる。そして、光制限部材2114で光を遮光する範囲を狭くすることができるため、同期検知センサ2115の出力低下を抑制することができ、SN比の低下に起因する同期信号の検出精度の低下を抑制することができる。
なお、上記実施形態において、一例として図76に示されるように、同期検知センサ2115が、走査領域に対して光源側に配置されていても良い。
図77には、この場合に、光偏向器2104で偏向された光が、同期検知センサ2115に向かうタイミングでの、回転多面鏡に対する入射光と反射光とが示されている。このとき、光偏向器2104に入射する光の全てが回転多面鏡の面1で反射されるのではなく、光偏向器2104に入射する光は面1及び面7で反射されるように設定されている。そこで、回転多面鏡の面1で反射されて、同期検知センサ2115に向かう光の幅doutは、光偏向器2104に入射する光の幅dinよりも小さくなる。すなわち、このとき、光偏向器2104では、入射光の一部が「けられ」ることとなる。ここでは、dout=2.64mmである。
この場合、偏向反射面に対して、光が鋭角に入射するため、光走査装置を構成する任意の一の光学素子に組付誤差や形状誤差があっても、主走査対応方向に関する光の位置ずれ量を低減することができ、光制限部材2114の開口部を拡大することが可能となる。そこで、同期検知センサ2115の出力が増大してSN比が向上し、同期検知精度を向上させることができる。
また、上記実施形態では、光偏向器2104で偏向されて走査領域の両端部に向かう光が光偏向器2104で「けられ」る場合について説明したが、これに限定されるものではなく、光偏向器2104で偏向されて走査領域のいずれかの端部に向かう光が光偏向器2104で「けられ」ても良い。この場合であっても、従来のアンダーフィルドタイプの光走査装置よりも、回転多面鏡を小型化することができる。
また、上記実施形態では、回転多面鏡に7面の鏡面が形成されている場合について説明したがこれに限定されるものではない。
また、上記実施形態における具体例の各種数値は一例であり、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態において、光源にモノリシックな端面発光レーザアレイや面発光レーザアレイを用いても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてタンデム方式のカラープリンタの場合について説明したが、これに限定されるものではない。画像形成装置がモノクロのプリンタであっても良い。また、画像形成装置が複写機及びファクシミリ装置であっても良い。
また、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。