JP2016215708A - 車両の上部車体構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】センタピラー1と、このセンタピラー1の上端部に連なり前後に延びる閉断面C2を構成するルーフサイドレール2と、センタピラー1の上端部近傍位置におけるルーフサイドレール2内に配設された合成樹脂製の補強部材3とを備え、ルーフサイドレール2が、膨出部22aを有するルーフレールインナ22と、ルーフレールインナ22と協働して閉断面C2を構成するルーフレールレイン23とによって形成され、補強部材3は、ルーフレールレイン23との間に隙間を有すると共に表面粗さが粗くされたルーフレールインナ22の車幅方向外側面にアンカ効果によって一体接合されている。
【選択図】 図2
Description
車両には衝突安全性や操縦安定性、静粛性が求められているため、車両用フレームの閉断面内に車体剛性を向上するための補強部材を設けた構造が知られている。
しかし、熱量不足による発泡不良の場合や熱量過多により発泡性樹脂が脆化した場合には、補強部材が所定位置に精度良く固定されないため、期待されている断面崩れ抑制機能を確保することができず、走行時における異音の発生原因にもなる。
また、発泡性樹脂を用いることなく、補強部材を単体で結合部に空隙が生じないように形成することは、現状の製造公差の観点から現実的ではない。
補強部材をインナ部材及び/又はアウタ部材に接着材を用いて接着した場合、補強部材とインナ部材及び/又はアウタ部材との間には接着材層が形成されている。
即ち、接着材は物性として粘弾性特性を有していることから、補強部材に対してインナ部材及び/又はアウタ部材による相対的な滑りを許容し、インナ部材及び/又はアウタ部材が補強部材から独立して変形することが原因である。
この構成によれば、側突時、アウタ部材に作用した衝撃エネルギーを直接的に補強部材に伝達させないため、補強部材の剛性をインナ部材の座屈発生防止に重点的に寄与させることができる。
この構成によれば、簡単な構成で補強部材とインナ部材とのアンカ効果を高くすることができる。
この構成によれば、簡単な構成で補強部材とインナ部材とを一体接合することができる。
以下の説明は、本発明を車両Vに適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
尚、図において、矢印F方向を前方とし、矢印L方向を左方とし、矢印U方向を上方として説明する。
図1〜図3に示すように、車両Vは、上下方向に延びる左右1対のセンタピラー1(ピラー部材)と、これら1対のセンタピラー1の上端部に夫々連なり前後方向に延びる左右1対のルーフサイドレール2と、これら1対のルーフサイドレール2内に夫々配設された左右1対の合成樹脂製補強部材3等を備えている。
尚、車両Vは、左右対称の構造であるため、以下、左側部分の構造について主に説明する。
図1〜図3に示すように、センタピラー1は、前部ドア開口4と後部ドア開口5との間を前後に仕切ると共に前後方向に延びる閉断面状のサイドシル6の中間部分からルーフサイドレール2の中間部分に亙って上方程右側(車室側)へ移行するように形成されている。
このセンタピラー1は、ピラーアウタパネル11と、ピラーインナパネル12と、ピラーレインフォースメント13等を備えている。
ピラーレインフォースメント13は、閉断面C1を左右に仕切るように配設されている。
このピラーレインフォースメント13は、下方に延長され、サイドシルアウタパネル6aの下端部とサイドシルインナパネル6bの下端部とに挟着されている。
図1〜図3に示すように、ルーフサイドレール2は、前部ドア開口4の前端部分上端から後部ドア開口5の前端部分上端に亙って略直線状に形成されている。
このルーフサイドレール2は、ルーフサイドレールアウタパネル21と、ルーフサイドレールインナパネル22(インナ部材)と、ルーフサイドレールレインフォースメント23(アウタ部材)等を備えている。
以下の説明にあたり、ルーフサイドレールアウタパネル21をルーフレールアウタ21、ルーフサイドレールインナパネル22をルーフレールインナ22、ルーフサイドレールレインフォースメント23をルーフレールレイン23と省略する。
ルーフレールアウタ21は、正面視にて左側上方に向けて断面略扇形状に突出するように形成されている。ルーフレールアウタ21の上側端部分には前後に延びるフランジ部が形成され、このフランジ部の上面にルーフパネル7の左端部分が接合されている。
ルーフレールアウタ21は、ルーフレールインナ22と協働して前後方向に延びると共に閉断面C1に連なる閉断面を構成している。
図2,図3に示すように、ルーフレールインナ22の上端側部分には前後に延びるフランジ部が形成され、このフランジ部がルーフレールレイン23の上端側フランジ部を介してルーフレールアウタ21のフランジ部の下面に接合されている。ルーフレールインナ22の右側(車幅方向外側)面には、ルーフクロスメンバ8の左端側部分が接合されている。
ルーフレールインナ22の中段部には、前後方向に延びた稜線Rが設けられると共に右方へ膨らんだ膨出部22aが形成されている。この膨出部22aは、正面視にてルーフレールインナ22の上半部の略鉛直状に延びる延長線に対してルーフレールインナ22の下半部を稜線Rを中心として時計回りに屈曲するように形成されている。
ルーフレールインナ22の下端側部分にはフランジ部が形成され、このフランジ部がピラーインナパネル12の上端側部分に形成された前後に延びるフランジ部に接合されている。
ルーフレールレイン23の上端側部分には前後に延びるフランジ部が形成され、このフランジ部がルーフレールアウタ21及びルーフレールインナ22のフランジ部の間に挟着されている。
ルーフレールレイン23の下端側部分には前後に延びるフランジ部が形成され、このフランジ部はピラーインナパネル12のフランジ部を介してルーフレールインナ22の下端側フランジ部に接合されている。これにより、ルーフレールレイン23は、ルーフレールインナ22と協働して前後に延びる断面略台形状の閉断面C2を構成している。
ルーフレールレイン23の左端側壁部には、ピラーレインフォースメント13の上端側部分が接合されている。
補強部材3は、閉断面C2内において、前後方向中間領域に固着されている。
図3〜図5に示すように、補強部材3は、上壁部31と、下壁部32と、前壁部33と、後壁部34と、中段部において上壁部31に対して略平行に延びる横壁部35と、前壁部33と後壁部34との間を複数に仕切る複数の縦壁部36と、各々の壁部31〜36の右端部に連結された底壁部37とによって構成され、左方が開放された有底ハニカム形状に形成されている。
底壁部37は、中段部に稜線Rに対応して前後方向に延びる屈曲部37aが形成されている。この底壁部37は、ルーフレールインナ22の左側面に面当接し、この左側面に対してアンカ(投錨)効果によって接合されている。この底壁部37は、稜線Rを挟んでルーフレールインナ22の上半部及び下半部に夫々接合されている。
各々の壁部31〜36の左端部は、ルーフレールレイン23から所定距離離隔するように夫々形成されている。
図6(a)に示すように、外形形状や稜線R等がプレス加工されたルーフレールインナ22は、左側面が表面になるように治具台にセットされ、後工程において底壁部37が接合される接合領域に所定の表面処理、例えばエッチング処理が施される。
図6(b)に示すように、ルーフレールインナ22の接合領域表面には、微細な凹部Pが形成される。
補強部材3とルーフレールインナ22を一体形成した後、ルーフレールインナ22、ルーフレールレイン23、ルーフレールアウタ21等の各部材の組立工程を行う。
尚、補強部材3の材料は、ガラス繊維含有合成樹脂(GRP:Glass-reinforced plastics)、例えばガラス繊維が複合化されたポリアミド(ナイロン)樹脂等である。
まず、補強部材3とルーフレールインナ22を個別に製作した後、補強部材3とルーフレールインナ22を汎用接着材を用いて接合した部材Aと、補強部材3とルーフレールインナ22をアンカ効果によって一体接合した部材Bとを夫々準備し、これら部材A,Bにおける補強部材3とルーフレールインナ22との接合力を評価する検証実験を行った。
図7に示すように、部材Aの接合力は4MP、部材Bの接合力は24MPであった。
これにより、アンカ効果による一体接合は、応力集中を回避しながら接合面積を確保することに加え、接着材による接合に比べて接合力を飛躍的に増加できることが判明した。
補強部材3をルーフレールインナ22に一体接合させたモデルM1(図8参照)と、補強部材3をルーフレールレイン23に一体接合させたモデルM2(図9参照)とを準備し、CAE(Computer Aided Engineering)によって各々のモデルM1,M2の変形挙動を解析した。変形挙動解析に当り、モデルM1,M2のセンタピラー1に車室方向へ作用する同じ荷重を夫々付与すると共に、各々のルーフサイドレール2に作用する曲げモーメント(kNm)を比較した。
尚、モデルM1,M2について、実施例1と同様の部材については同じ符号を付与している。
図10に示すように、モデルM1は、ルーフレールインナ22に座屈を発生させることなくセンタピラー1がルーフサイドレール2を中心として反時計回りに回動し、この回動に伴って補強部材3とルーフレールレイン23との離隔距離が拡大している。また、稜線Rを含む膨出部22aには変形が殆ど現れないのに対し、膨出部22aよりも下側部分には大きな変形が発生している。
図11に示すように、モデルM2は、ルーフレールインナ22に座屈を発生させながらセンタピラー1がルーフサイドレール2を中心として反時計回りに回動し、この回動に伴って補強部材3とルーフレールインナ22との離隔距離が拡大している。また、膨出部22aよりも下側部分には殆ど変形が発生していない。
図12に示すように、座屈が発生しないモデルM1の曲げモーメント(実線)は、曲げ角の増加に比例して増加するものの、座屈が発生したモデルM2の曲げモーメント(破線)は、座屈発生時、曲げモーメントの急激な落ち込みが生じている。
また、ルーフレールインナ22に座屈が発生しないため、膨出部22aに集中されない応力が分散し、膨出部22aよりも下側部分に集中したものと考えられる。
モデルM2では、補強部材3が膨出部22a(稜線R)を起点としたルーフレールインナ22の座屈防止に寄与していないため、膨出部22aに応力が集中した結果、ルーフレールインナ22に座屈が発生したものと推測される。
しかも、補強部材3に対するルーフレールインナ22の相対的な滑りを制限するため、ルーフレールインナ22の膨出部22aを起点とした座屈の発生を抑制することができる。
これにより、側突時、ルーフレールレイン23に作用した衝撃エネルギーを直接的に補強部材3に伝達させないため、補強部材3の剛性をルーフレールインナ22の座屈発生防止に重点的に寄与させることができる。
補強部材3は、ルーフレールインナ22を組込んだ射出成形によって一体成形されたため、簡単な構成で補強部材3とルーフレールインナ22とを一体接合することができる。
1〕前記実施形態においては、ピラー部材としてセンタピラーの例を説明したが、少なくともルーフサイドレールに連なるピラー部材であれば良く、フロントピラーやリヤピラーであっても良い。また、鋼板製ピラー部材の例を説明したが、少なくとも合成樹脂とアンカ効果による一体接合が可能な金属材料であれば良く、アルミ合金材料等通常車体構造に用いられる材料を含み任意に採用することができる。
具体的には、正面視にてルーフレールインナの上端側部分と下端側部分とを結んだ線よりも車室方向へ張り出した部分が膨出部に相当し、この張り出した部分が湾曲状或いは屈曲状の何れの形状であっても良い。
また、微細孔を有する電気皮膜をルーフレールインナの接合領域表面に形成しても良い。
前記実施形態においては、ガラス繊維が複合化された合成樹脂の例を説明したが、強化材として炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維等任意に選択可能である。
2 ルーフサイドレール
3 補強部材
22 ルーフレールインナ
22a 膨出部
23 ルーフレールレイン
V 車両
Claims (4)
- 上下方向に延びるピラー部材と、このピラー部材の上端部に連なり車体前後方向に延びる閉断面を構成するルーフサイドレールと、前記ピラー部材の上端部近傍位置における前記ルーフサイドレール内に配設された合成樹脂製の補強部材とを備えた車両の上部車体構造において、
前記ルーフサイドレールが、車室側へ膨らんだ部分を有する金属製インナ部材と、前記インナ部材と協働して前記閉断面を構成する金属製アウタ部材とによって形成され、
前記補強部材が前記インナ部材の車幅方向外側面にアンカ効果によって一体接合されたことを特徴とする車両の上部車体構造。 - 前記補強部材と前記アウタ部材との間に隙間が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の上部車体構造。
- 前記インナ部材の車幅方向外側面の表面粗さを粗くすることにより前記アンカ効果を得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の上部車体構造。
- 前記補強部材は、前記インナ部材を組込んだ射出成形によって一体成形されたことを特徴とする請求項3に記載の車両の上部車体構造。
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