以下に、本発明の実施の形態に係る歯車装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る歯車装置を搭載した鉄道車両用駆動装置の構成図である。鉄道車両用駆動装置100は、台車枠101に設置された主電動機102と、両端に車輪107が嵌め込まれ台車枠101に回転可能に設置された回転軸である車軸106と、主電動機102の回転数を減じて主電動機102で発生した駆動力を車輪107に伝達する歯車装置105と、車軸106と平行に配置され歯車装置105に貫通する回転軸である小歯車軸104と、主電動機102の回転軸と小歯車軸104とを可撓的に連結するたわみ軸継手103とを有する。図示例の台車枠101には、主電動機102、車軸106、歯車装置105、小歯車軸104、およびたわみ軸継手103の組みが2組設置されている。
図2は図1に示す矢印Aの方向から見た歯車装置の側面図、図3は図2に示すI−I線矢視断面図である。図2および図3に示す歯車装置105は、小歯車軸104に設けられる歯車である小歯車7と、車軸106に設けられると共に小歯車7と噛み合う歯車である大歯車4と、小歯車7の軸方向の両側に配置された2つの小歯車側軸受13と、小歯車7および大歯車4を収める歯車箱1と、大歯車4の軸方向の両側に配置された2つの大歯車側軸受5と、円環状を成し、小歯車軸104に嵌め込まれて小歯車側軸受13の軸方向外側に配置され、径方向外側に環状の複数のリップ10aを有する小歯車側油切り部材10と、円環状を成し、車軸106に嵌め込まれて大歯車側軸受5の軸方向外側に配置され、径方向外側に環状の複数のリップ6aを有する大歯車側油切り部材6と、歯車箱1に装着され、小歯車側油切り部材10の外周部を取り囲む環状の複数のリップ11aを有すると共に、小歯車側軸受13の外輪13aを保持する小歯車側軸受蓋11と、大歯車側油切り部材6の外周部を取り囲む環状の複数のリップ3aを有すると共に、大歯車側軸受5の外輪5aを保持する大歯車側軸受蓋3とを有して構成されている。図2に示すように歯車箱1内には潤滑油8が貯溜されている。潤滑油面2の高さは、大歯車4の一部が潤滑油8に浸漬するように油面計15によって管理されている。
大歯車側油切り部材6および小歯車側油切り部材10は弾性変形するバネ鋼で形成されている。小歯車側油切り部材10に形成された複数のリップ10aと、小歯車側軸受蓋11に形成された複数のリップ11aとの間の隙間により非接触型のラビリンス構造が形成され、また大歯車側油切り部材6に形成された複数のリップ6aと、大歯車側軸受蓋3に形成された複数のリップ3aとの間の隙間により非接触型のラビリンス構造が形成される。
小歯車側軸受13は外輪13aと内輪13cと円すい状の複数のコロ13bとで構成され、大歯車側軸受5は外輪5aと内輪5cと複数のコロ5bとで構成されている。複数のコロ5bの各々は内輪5cと外輪5aとの間に配置されており、さらに図示しない保持器によって転動自在に保持されている。複数のコロ13bの各々は内輪13cと外輪13aとの間に離間して配置されており、さらに図示しない保持器によって転動自在に保持されている。複数のコロ5bおよびコロ13bの形状は図示例に限定されるものでは無く、例えば円柱状でもよい。また円すい状のコロ5bおよびコロ13bの代わりに玉状の転動体を用いてもよい。
小歯車側軸受蓋11は、歯車箱1の外側から歯車箱1に向けてねじ込まれる締結部材12により歯車箱1に固定されており、小歯車側軸受13を保守する場合、締結部材12を取り外すことで歯車箱1から取り外される。このとき小歯車側軸受13の外輪13aは小歯車側軸受蓋11と共に取り外され、歯車箱1には小歯車側軸受13を構成する内輪13cとコロ13bが残る形となる。大歯車側軸受蓋3は、歯車箱1の外側から歯車箱1に向けてねじ込まれる締結部材9により歯車箱1に固定されており、大歯車側軸受5を保守する場合、締結部材9を取り外すことで歯車箱1から取り外される。このとき大歯車側軸受5の外輪5aは大歯車側軸受蓋3と共に取り外され、歯車箱1には大歯車側軸受5を構成する内輪5cおよびコロ5bが残る形となる。これにより小歯車側軸受13と大歯車側軸受5の保守が可能となる。
歯車装置105の動作を説明する。図3に示す小歯車軸104の一端には、図1に示すたわみ軸継手103を介して主電動機102の駆動軸が連結される。小歯車7は主電動機102の駆動により小歯車軸104と一体で回転し、小歯車7と噛み合うことにより大歯車4が回転し、大歯車4の回転に伴って車軸106が回転する。歯車箱1内に貯溜されている潤滑油8は、回転する大歯車4によりかき上げられて大歯車4および小歯車7の噛み合い部14に供給されると共に、小歯車側軸受13および大歯車側軸受5に供給される。小歯車側軸受13に供給された潤滑油8は小歯車側軸受13と小歯車7との対向部、外輪13aと内輪13cとの間、小歯車側軸受蓋11と小歯車側油切り部材10との対向部の順で流れる。また大歯車側軸受5に供給された潤滑油8は大歯車側軸受5と大歯車4との対向部、外輪5aと内輪5cとの間、大歯車側軸受蓋3と大歯車側油切り部材6との対向部の順で流れる。このような経路で流れる潤滑油8は前述したラビリンス構造により機外への漏洩が抑制される。またラビリンス構造により機外の塵埃が機内に浸入することが抑制される。以下、本発明の特徴部分である大歯車側油切り部材6に形成された複数のリップ6aに関して具体的に説明する。
図4は車軸の回転により作用する遠心力が生じる前の実施の形態1に係る大歯車側油切り部材の状態を示す図、図5は車軸の回転により作用する遠心力が生じた後の実施の形態1に係る大歯車側油切り部材の状態を示す図である。図4および図5では図3のB部に示される歯車箱1、大歯車側軸受蓋3、大歯車側軸受5、大歯車側油切り部材6、締結部材9、および車軸106が拡大視されている。大歯車側油切り部材6に形成された複数のリップ6aは、大歯車側軸受5を構成する内輪5c側に配置される第1のリップ6a1と、第1のリップ6a1以外の複数の第2のリップ6a2とで構成されている。複数の第2のリップ6a2は第1のリップ6a1よりも軸方向外側に配置されている。複数の第2のリップ6a2の内、第1のリップ6a1に隣接するリップは、第1のリップ6a1と離間して配置される。複数の第2のリップ6a2の各々の外周端は、複数のリップ3aの各々の内周端と非接触かつ相対して配置される。従って複数の第2のリップ6a2と複数のリップ3aとの間には隙間が形成され、大歯車側油切り部材6と大歯車側軸受蓋3との間には非接触型のラビリンス構造が形成される。D1は複数の第2のリップ6a2の外径を表し、図示例では、複数の第2のリップ6a2の内、第1のリップ6a1に隣接する第2のリップ6a2の外径としている。D2は第1のリップ6a1の外径を表し、D3は大歯車側軸受5を構成する外輪5aの内周面5a1の中で直径が最も狭い部分の内径を表す。図示例では外輪5aの軸方向外側の端面5a2に形成された内周部5a21の内径をD3としている。
第1のリップ6a1は、大歯車側油切り部材6の軸方向外側から大歯車側軸受5に向かうにつれて直径が拡大する擂り鉢状に形成されている。また第1のリップ6a1は、車軸106の回転により作用する遠心力が生じる前の外径D2が外輪5aの内径D3よりも小さく、かつ、車軸106の回転により作用する遠心力が生じた後の外径D2が外輪5aの内径D3よりも大きくなるように変形する。D1,D2,D3の関係性は、図4ではD3>D2>D1であり、図5ではD2>D3>D1である。具体的に説明すると、遠心力が生じる前の第1のリップ6a1の外径D2は図4のように外輪5aの内径D3よりも小さい。ところが第1のリップ6a1の外周部に作用する遠心力は車軸106の回転速度が高まるに従って大きくなり、第1のリップ6a1の外周部は、図5に示す矢印方向に変形して、車軸106の長手方向と直交しかつ第1のリップ6a1の基部を通る線分40に近づく。その結果、第1のリップ6a1の外径D2は外輪5aの内径D3よりも大きくなる。なお第1のリップ6a1は、大歯車側軸受蓋3との干渉を防ぐため、遠心力が生じて外径D2が外輪5aの内径D3よりも大きくなったときに大歯車側軸受蓋3の軸受側面3a1と接触しない位置に配置されている。第1のリップ6a1の外径D2と第2のリップ6a2の外径D1との関係性は、D2>D1でもよいしD1>D2でもよいが、D2>D1とした場合、相互に対向する第2のリップ6a2とリップ3aとの間における大歯車側軸受5から見た隙間が第1のリップ6a1で塞がれる形となるため、D1>D2とした場合に比べて油密性を高めることができる。
遠心力が生じる前の第1のリップ6a1の外径D2が外輪5aの内径D3よりも小さい理由を以下に説明する。図6は実施の形態1に係る大歯車側油切り部材および大歯車側軸受蓋を歯車箱に組み付ける手順を説明するための図である。大歯車側油切り部材6および大歯車側軸受蓋3を歯車箱1に組み付ける手順としては、第一工程として図6(a)に示すように内輪5cとコロ5bを車軸106に挿入し、第二工程として図6(b)に示すように大歯車側油切り部材6を車軸106に挿入し、第三工程として図6(c)に示すように外輪5aを取り付けた大歯車側軸受蓋3を歯車箱1に嵌め込む。このとき第1のリップ6a1の外径が外輪5aの内径よりも大きい場合、第1のリップ6a1の外周部6a11が外輪5aの内周部5a21に干渉し、大歯車側軸受蓋3を歯車箱1に組み付けることが困難となる。一方、第1のリップ6a1の外径が外輪5aの内径よりも小さい場合には、第1のリップ6a1の外周部6a11が外輪5aの内周部5a21に干渉することがなく大歯車側軸受蓋3を歯車箱1に組み付けることが可能である。ところが鉄道車両の運行に伴い車軸106が回転した際に大歯車側軸受5から軸方向外側に流れてきた潤滑油8は、第1のリップ6a1の外径が小さくなるほど複数の第2のリップ6a2と複数のリップ3aとの間の隙間から機外側に漏れ出やすくなる。このように鉄道車両の保守時における大歯車側軸受蓋3の組み付け易さと、鉄道車両の運行時における油密性を確保することとはトレードオフの関係にある。実施の形態1に係る歯車装置105では、鉄道車両の保守時において遠心力が生じる前の外径D2が外輪5aの内径D3よりも小さく、鉄道車両の運行時において遠心力が生じた後の外径D2が外輪5aの内径D3よりも大きくなるように変形する第1のリップ6a1が大歯車側油切り部材6に形成されている。そのため大歯車側軸受蓋3の組み付け易さを損なうことなく油密性を確保するができる。また従来技術に比べて実施の形態1に係る歯車装置105ではラビリンス構造を構成する部材が少なくて済むため油密性を確保しながらコストの低減を図ることが可能である。
なお実施の形態1では大歯車側油切り部材6に4つの第2のリップ6a2が設けられているが第2のリップ6a2の数は4つに限定されるものではなく1つ以上であればよい。第2のリップ6a2の数を増やすほど油密性を高めることができるが大歯車側油切り部材6の加工コストも増加するため、第2のリップ6a2の数は油密性と加工コストとのバランスを勘案して設定するものとする。また複数の第2のリップ6a2と複数のリップ3aの形状は図示例に限定されるものではなく、複数の第2のリップ6a2は、各々の端部から車軸106までの距離が同一の長さとなる形状とし、複数のリップ3aは、各々の端部から車軸106までの距離が同一の長さとなる形状としてもよい。また実施の形態1では、大歯車側油切り部材6の材質、すなわち第1のリップ6a1の材質が弾性変形するバネ鋼である例を説明したが、第1のリップ6a1の材質は弾性変形する金属であればバネ鋼以外の金属、例えばステンレス鋼、銅、およびアルミニウムといった金属を用いてもよい。これらの金属の弾性復元力はバネ鋼の弾性復元力に比べて小さいが、弾性復元力を有する金属であれば油密性を確保しながらコストの低減を図るという効果を得ることが可能である。また第1のリップ6a1の材質は、弾性変形する樹脂、または弾性変形するゴムでもよい。樹脂またはゴムはバネ鋼、ステンレス鋼、または銅といった金属に比べて比重が低いため、これらの材質を用いることにより、油密性を確保しながらコストの低減を図るという効果に加えて歯車装置105の軽量化を図ることができる。また実施の形態1に係る複数の第2のリップ6a2は、第1のリップ6a1と同様に遠心力が生じる前の外径が外輪5aの内径よりも小さく、遠心力が生じた後の外径が外輪5aの内径よりも大きくなるように変形するように構成してもよい。このように構成することで、大歯車側軸受蓋3を歯車箱1に組み付ける際、複数の第2のリップ6a2の各々の外周部が外輪5aの内周部5a21に干渉することがなく、大歯車側軸受蓋3の組み付けが容易化される。
実施の形態2.
図7は本発明の実施の形態2に係る歯車装置に設けられる小歯車側油切り部材の構成図、図8は小歯車軸の回転により作用する遠心力が生じる前の実施の形態2に係る小歯車側油切り部材の状態を示す図、図9は小歯車軸の回転により作用する遠心力が生じた後の実施の形態2に係る小歯車側油切り部材の状態を示す図である。図8および図9では図7のC部に示される歯車箱1、小歯車側軸受蓋11A、小歯車側軸受13、小歯車側油切り部材10A、締結部材12、および小歯車軸104が拡大視されている。実施の形態2の歯車装置105Aでは実施の形態1の小歯車側油切り部材10と小歯車側軸受蓋11との代わりに、小歯車側油切り部材10Aとバネ鋼で形成された小歯車側軸受蓋11Aとが用いられている。小歯車側軸受蓋11Aは、小歯車側油切り部材10Aの外周部に形成された環状の複数のリップ11aを有すると共に、小歯車側軸受13の外輪13aを保持する。小歯車側油切り部材10Aは、円環状を成し、小歯車軸104に嵌め込まれて小歯車側軸受13の軸方向外側に配置され、小歯車側油切り部材10Aの径方向外側には環状の複数のリップ10aが形成されている。複数のリップ10aは、小歯車側軸受13側に配置される第1のリップ10a1と、第1のリップ10a1よりも軸方向外側に配置される複数の第2のリップ10a2とで構成されている。複数の第2のリップ10a2の内、第1のリップ10a1に隣接するリップは、第1のリップ10a1と離間して配置されている。D1は複数の第2のリップ10a2の外径を表し、図示例では、複数の第2のリップ10a2の内、第1のリップ10a1に隣接する第2のリップ10a2の外径としている。D2は第1のリップ10a1の外径を表し、D3は小歯車側軸受13を構成する外輪13aの内周面13a1の中で直径が最も狭い部分の内径を表す。図示例では外輪13aの軸方向外側の端面13a2に形成された内周部13a21の内径をD3としている。
第1のリップ10a1は、小歯車側油切り部材10Aの軸方向外側から小歯車側軸受13に向かうにつれて直径が拡大する擂り鉢状に形成されている。また第1のリップ10a1は、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じる前の外径D2が外輪13aの内径D3よりも小さく、かつ、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じた後の外径D2が外輪13aの内径D3よりも大きくなるように変形する。D1,D2,D3の関係性は、図8ではD3>D2>D1であり、図9ではD2>D3>D1である。具体的に説明すると、遠心力が生じる前の第1のリップ10a1の外径D2は図8のように外輪13aの内径D3よりも小さい。ところが第1のリップ10a1の外周部に作用する遠心力は小歯車軸104の回転速度が高まるに従って大きくなり、第1のリップ10a1の外周部は、図9に示す矢印方向に変形して、小歯車軸104の長手方向と直交しかつ第1のリップ10a1の基部を通る線分41に近づく。その結果、第1のリップ10a1の外径D2は外輪13aの内径D3よりも大きくなる。なお第1のリップ10a1は、小歯車側軸受蓋11Aとの干渉を防ぐため、遠心力が生じて外径D2が外輪13aの内径D3よりも大きくなったときに小歯車側軸受蓋11Aの軸受側面11a1と接触しない位置に配置されている。第1のリップ10a1の外径D2と第2のリップ10a2の外径D1との関係性は、D2>D1でもよいしD1>D2でもよいが、D2>D1とした場合、相互に対向する第2のリップ10a2とリップ11aとの間における小歯車側軸受13から見た隙間が第1のリップ10a1で塞がれる形となるため、D1>D2とした場合に比べて油密性を高めることができる。
図10は実施の形態2に係る小歯車側油切り部材および小歯車側軸受蓋を歯車箱に組み付ける手順を説明するための図である。小歯車側油切り部材10Aおよび小歯車側軸受蓋11Aを歯車箱1に組み付ける手順としては、第一工程として図10(a)に示すように内輪13cとコロ13bを小歯車軸104に挿入し、第二工程として図10(b)に示すように小歯車側油切り部材10Aを小歯車軸104に挿入し、第三工程として図10(c)に示すように外輪13aを取り付けた小歯車側軸受蓋11Aを歯車箱1に嵌め込む。このとき第1のリップ10a1の外径が外輪13aの内径よりも大きい場合、第1のリップ10a1の外周部10a11が外輪13aの内周部13a21に干渉し、小歯車側軸受蓋11Aを歯車箱1に組み付けることが困難となる。一方、第1のリップ10a1の外径が外輪13aの内径よりも小さい場合には、第1のリップ10a1の外周部10a11が外輪13aの内周部13a21に干渉することがなく小歯車側軸受蓋11Aを歯車箱1に組み付けることが可能である。ところが鉄道車両の運行に伴い小歯車軸104が回転した際に小歯車側軸受13から軸方向外側に流れてきた潤滑油8は、第1のリップ10a1の外径が小さくなるほど複数の第2のリップ10a2と複数のリップ11aとの間の隙間から機外側に漏れ出やすくなる。このように鉄道車両の保守時における小歯車側軸受蓋11Aの組み付け易さと、鉄道車両の運行時における油密性を確保することとはトレードオフの関係にある。実施の形態2に係る歯車装置105Aでは、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じる前の外径が外輪13aの内径よりも小さく、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じた後の外径が外輪13aの内径よりも大きくなるように変形する第1のリップ10a1が小歯車側油切り部材10Aに形成されている。そのため鉄道車両の保守時における小歯車側軸受蓋11Aの組み付け易さを損なうことなく運行時における油密性を確保するができる。また従来技術に比べて実施の形態2に係る歯車装置105Aではラビリンス構造を構成する部材が少なくて済むため油密性を確保しながらコストの低減を図ることが可能である。
なお実施の形態2では小歯車側油切り部材10Aに3つの第2のリップ10a2が設けられているが第2のリップ10a2の数は3つに限定されるものではなく1つ以上であればよい。第2のリップ10a2の数を増やすほど油密性を高めることができるが小歯車側油切り部材10Aの加工コストも増加するため、第2のリップ10a2の数は油密性と加工コストとのバランスを勘案して設定するものとする。また複数の第2のリップ10a2と複数のリップ11aの形状は図示例に限定されるものではなく、複数の第2のリップ10a2は、各々の端部から小歯車軸104までの距離が同一の長さとなる形状とし、複数のリップ11aは、各々の端部から小歯車軸104までの距離が同一の長さとなる形状としてもよい。また実施の形態2では、小歯車側油切り部材10Aの材質、すなわち第1のリップ10a1の材質が弾性変形するバネ鋼である例を説明したが、第1のリップ10a1の材質は弾性変形する金属であればバネ鋼以外の金属、例えばステンレス鋼、銅、およびアルミニウムといった金属を用いてもよい。これらの金属の弾性復元力はバネ鋼の弾性復元力に比べて小さいが、弾性復元力を有する金属であれば油密性を確保しながらコストの低減を図るという効果を得ることが可能である。また第1のリップ10a1の材質は、弾性変形する樹脂、または弾性変形するゴムでもよい。樹脂またはゴムはバネ鋼、ステンレス鋼、または銅といった金属に比べて比重が低いため、これらの材質を用いることにより、軸受蓋の組み付け易さを損なうことなく油密性を確保しながらコストの低減を図るという効果に加えて、歯車装置105Aの軽量化を図ることができる。また実施の形態2に係る複数の第2のリップ10a2は、第1のリップ10a1と同様に、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じる前の外径が外輪13aの内径よりも小さく、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じた後の外径が外輪13aの内径よりも大きくなるように変形するように構成してもよい。このように構成することで、小歯車側軸受蓋11Aを歯車箱1に組み付ける際、複数の第2のリップ10a2の各々の外周部が外輪13aの内周部13a21に干渉することがなく、小歯車側軸受蓋11Aの組み付けが容易化される。
実施の形態3.
図11は本発明の実施の形態3に係る歯車装置に設けられる大歯車側油切り部材の構成図である。実施の形態3の歯車装置105Bでは実施の形態1の大歯車側軸受蓋3と大歯車側油切り部材6との代わりに、大歯車側軸受蓋3Aとバネ鋼で形成された大歯車側油切り部材6Aとが用いられている。
大歯車側軸受蓋3Aは、大歯車側油切り部材6Aの外周部を取り囲む環状の複数のリップ3aを有すると共に、大歯車側軸受5の外輪5aを保持する。複数のリップ3aは互いに軸方向に離間して配置されている。図示例では隣接するリップ3aの離間幅は等しい。
大歯車側油切り部材6Aは、円環状を成し、車軸106に嵌め込まれて大歯車側軸受5の軸方向外側に配置され、大歯車側油切り部材6Aの径方向外側には、環状の複数のリップ6aが形成されている。複数のリップ6aは、内輪5c側に配置される第1のリップ6a1と、第1のリップ6a1よりも軸方向外側に配置される複数の第2のリップ6a21とで構成されている。複数の第2のリップ6a21の内、第1のリップ6a1に隣接するリップは、第1のリップ6a1と離間して配置される。隣接する第2のリップ6a21は互いに軸方向に離間して配置されている。
複数のリップ3aの内、大歯車側軸受5と隣接するリップ3aは、第1のリップ6a1と第2のリップ6a21との間の溝部6a3と相対する位置に配置されている。また複数のリップ3aの内、大歯車側軸受5と隣接するリップ以外のリップは、隣接する第2のリップ6a21の間の溝部6a3と相対する位置に配置されている。
第1のリップ6a1と第2のリップ6a21の各々は、大歯車側油切り部材6Aの軸方向外側から大歯車側軸受5に向かうにつれて直径が拡大する擂り鉢状に形成されている。また第1のリップ6a1と第2のリップ6a21の各々は、車軸106の回転により作用する遠心力が生じる前の外径が外輪5aの内径よりも小さく、かつ、遠心力が生じた後の外径が外輪5aの内径よりも大きくなるように変形する。さらに第2のリップ6a21の各々は、遠心力が生じた後の外径がリップ3aの内径よりも大きく、かつ、隣接するリップ3aの間の溝部3a2の内径よりも小さくなるように変形する。隣接するリップ3aの間の溝部3a2の内径よりも小さくなるように第2のリップ6a21が変形することで、第2のリップ6a21が大歯車側軸受蓋3Aに接触することがなく、第2のリップ6a21の摩耗が抑制される。
D1は遠心力が生じる前の複数のリップ6aの各々の外径を表す。D2は、外輪5aの軸方向外側の端面5a2に形成された内周部5a21の内径を表す。D3は、遠心力が生じた後の複数のリップ6aの各々の外径を表す。なお図11では複数のリップ3aの各々の内径をD2と等しい長さとしている。
具体的に説明すると、車軸106の回転により作用する遠心力が生じる前の複数のリップ6aの各々の外径は外輪5aの内径よりも小さい。ところが複数のリップ6aの各々の外周部に作用する遠心力は車軸106の回転速度が高まるに従って大きくなり、複数のリップ6aの各々の外周部は、矢印方向に変形して、車軸106の長手方向と直交しかつ複数のリップ6aの各々の外径の基部を通る線分42に近づく。その結果、複数のリップ6aの各々の外径は外輪5aの内径よりも大きくなる。
図12は実施の形態3に係る大歯車側油切り部材および大歯車側軸受蓋を歯車箱に組み付ける手順を説明するための図である。大歯車側油切り部材6Aおよび大歯車側軸受蓋3Aを歯車箱1に組み付ける手順としては、第一工程として図12(a)に示すように内輪5cとコロ5bを車軸106に挿入し、第二工程として図12(b)に示すように大歯車側油切り部材6Aを車軸106に挿入し、第三工程として図12(c)に示すように外輪5aを取り付けた大歯車側軸受蓋3Aを歯車箱1に嵌め込む。このとき複数のリップ6aの各々の外径が外輪5aの内径よりも大きい場合、複数のリップ6aの各々の外周部が外輪5aの内周部5a21に干渉し、大歯車側軸受蓋3Aを歯車箱1に組み付けることが困難となる。一方、複数のリップ6aの各々の外径が外輪5aの内径よりも小さい場合には、複数のリップ6aの各々の外周部が外輪5aの内周部5a21に干渉することがなく大歯車側軸受蓋3Aを歯車箱1に組み付けることが可能である。ところが鉄道車両の運行に伴い車軸106が回転した際に大歯車側軸受5から軸方向外側に流れてきた潤滑油8は、複数のリップ6aの各々の外径が小さくなるほど複数のリップ6aと複数のリップ3aとの間の隙間から機外側に漏れ出やすくなる。このように鉄道車両の保守時における大歯車側軸受蓋3Aの組み付け易さと、鉄道車両の運行時における油密性を確保することとはトレードオフの関係にある。実施の形態3に係る歯車装置105Bでは、車軸106の回転により作用する遠心力が生じる前の外径D2が外輪5aの内径D3よりも小さく、車軸106の回転により作用する遠心力が生じた後の外径D2が外輪5aの内径D3よりも大きくなるように変形する複数のリップ6aが大歯車側油切り部材6Aに形成されている。そのため大歯車側軸受蓋3Aの組み付け易さを損なうことなく運行時における油密性を確保するができる。また従来技術に比べて実施の形態3に係る歯車装置105Bではラビリンス構造を構成する部材が少なくて済むため油密性を確保しながらコストの低減を図ることが可能である。
また実施の形態3に係る歯車装置105Bによれば、車軸106の回転により作用する遠心力が生じた後の外径がリップ3aの内径よりも大きく、かつ、隣接するリップ3aの間の溝部3a2の内径よりも小さくなるように変形する第2のリップ6a21が大歯車側油切り部材6Aに形成されている。そのため、車軸106が回転した際に複数のリップ3aと第2のリップ6a21との間に形成されるラビリンス構造は実施の形態1よりも複雑になり、大歯車側軸受5から軸方向外側に流れてきた潤滑油8が機外側に漏れ難くなり、より一層油密性を高めることが可能である。
なお実施の形態3では大歯車側油切り部材6Aに2つの第2のリップ6a21が設けられているが第2のリップ6a21の数は2つに限定されるものではなく1つ以上であればよい。第2のリップ6a21の数を増やすほど油密性を高めることができるが大歯車側油切り部材6Aの加工コストも増加するため、第2のリップ6a21の数は油密性と加工コストとのバランスを勘案して設定するものとする。また実施の形態3では、大歯車側油切り部材6Aの材質、すなわち複数のリップ6aの材質が弾性変形するバネ鋼である例を説明したが、複数のリップ6aの材質は弾性変形する金属であればバネ鋼以外の金属、例えばステンレス鋼、銅、およびアルミニウムといった金属を用いてもよい。これらの金属の弾性復元力はバネ鋼の弾性復元力に比べて小さいが、弾性復元力を有する金属であれば油密性を確保しながらコストの低減を図るという効果を得ることが可能である。また複数のリップ6aの材質は、弾性変形する樹脂、または弾性変形するゴムでもよい。樹脂またはゴムはバネ鋼、ステンレス鋼、または銅といった金属に比べて比重が低いため、これらの材質を用いることにより、軸受蓋の組み付け易さを損なうことなく油密性を確保しながらコストの低減を図るという効果に加えて、歯車装置105Bの軽量化を図ることができる。
実施の形態4.
図13は本発明の実施の形態4に係る歯車装置に設けられる小歯車側油切り部材の構成図である。実施の形態4の歯車装置105Cでは実施の形態2の小歯車側油切り部材10Aと小歯車側軸受蓋11Aとの代わりに、バネ鋼で形成された小歯車側油切り部材10Bと小歯車側軸受蓋11Bとが用いられている。
小歯車側軸受蓋11Bは、小歯車側油切り部材10Bの外周部を取り囲む環状の複数のリップ11aを有すると共に、小歯車側軸受13の外輪13aを保持する。複数のリップ11aは互いに軸方向に離間して配置されている。図示例では隣接するリップ11aの離間幅は等しい。
小歯車側油切り部材10Bは、円環状を成し、小歯車軸104に嵌め込まれて小歯車側軸受13の軸方向外側に配置され、小歯車側油切り部材10Bの径方向外側には、環状の複数のリップ10aが形成されている。複数のリップ10aは、小歯車側軸受13側に配置される第1のリップ10a1と、第1のリップ10a1よりも軸方向外側に配置される複数の第2のリップ10a21とで構成されている。複数の第2のリップ10a21の内、第1のリップ10a1に隣接するリップは、第1のリップ10a1と離間して配置されている。隣接する第2のリップ10a21は互いに軸方向に離間して配置されている。
複数のリップ11aの内、小歯車側軸受13と隣接するリップ11aは、第1のリップ10a1と第2のリップ10a21との間の溝部10a3と相対する位置に配置されている。また複数のリップ11aの内、小歯車側軸受13と隣接するリップ以外のリップは、隣接する第2のリップ10a21の間の溝部10a3と相対する位置に配置されている。
第1のリップ10a1と第2のリップ10a21の各々は、小歯車側油切り部材10Bの軸方向外側から小歯車側軸受13に向かうにつれて直径が拡大する擂り鉢状に形成されている。また第1のリップ10a1と第2のリップ10a21の各々は、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じる前の外径が外輪13aの内径よりも小さく、かつ、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じた後の外径が外輪13aの内径よりも大きくなるように変形する。さらに第2のリップ10a21の各々は、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じた後の外径がリップ11aの内径よりも大きく、かつ、隣接するリップ11aの間の溝部11a2の内径よりも小さくなるように変形する。隣接するリップ11aの間の溝部11a2の内径よりも小さくなるように第2のリップ10a21が変形することで、第2のリップ10a21が小歯車側軸受蓋11Bに接触することがなく、第2のリップ10a21の摩耗が抑制される。
D1は、遠心力が生じる前の複数のリップ10aの各々の外径を表す。D2は、外輪13aの軸方向外側の端面13a2に形成された内周部13a21の内径を表す。D3は、遠心力が生じた後の複数のリップ10aの各々の外径を表す。なお図13では複数のリップ11aの各々の内径をD2と等しい長さとしている。
具体的に説明すると、遠心力が生じる前の複数のリップ10aの各々の外径は外輪13aの内径よりも小さい。ところが複数のリップ10aの各々の外周部に作用する遠心力は小歯車軸104の回転速度が高まるに従って大きくなり、複数のリップ10aの各々の外周部は、矢印方向に変形して、小歯車軸104の長手方向と直交しかつ複数のリップ10aの各々の外径の基部を通る線分43に近づく。その結果、複数のリップ10aの各々の外径は外輪13aの内径よりも大きくなる。
図14は実施の形態4に係る小歯車側油切り部材および小歯車側軸受蓋を歯車箱に組み付ける手順を説明するための図である。小歯車側油切り部材10Bおよび小歯車側軸受蓋11Bを歯車箱1に組み付ける手順としては、第一工程として図14(a)に示すように内輪13cとコロ13bを小歯車軸104に挿入し、第二工程として図14(b)に示すように小歯車側油切り部材10Bを小歯車軸104に挿入し、第三工程として図14(c)に示すように外輪13aを取り付けた小歯車側軸受蓋11Bを歯車箱1に嵌め込む。このとき複数のリップ10aの各々の外径が外輪13aの内径よりも大きい場合、複数のリップ10aの各々の外周部が外輪13aの内周部13a21に干渉し、小歯車側軸受蓋11Bを歯車箱1に組み付けることが困難となる。一方、複数のリップ10aの各々の外径が外輪13aの内径よりも小さい場合には、複数のリップ10aの各々の外周部が外輪13aの内周部13a21に干渉することがなく小歯車側軸受蓋11Bを歯車箱1に組み付けることが可能である。ところが鉄道車両の運行に伴い小歯車軸104が回転した際に小歯車側軸受13から軸方向外側に流れてきた潤滑油8は、複数のリップ10aの各々の外径が小さくなるほど複数のリップ11aと複数のリップ10aとの間の隙間から機外側に漏れ出やすくなる。このように鉄道車両の保守時における小歯車側軸受蓋11Bの組み付け易さと、鉄道車両の運行時における油密性を確保することとはトレードオフの関係にある。実施の形態4に係る歯車装置105Cでは、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じる前の外径が外輪13aの内径よりも小さく、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じた後の外径が外輪13aの内径よりも大きくなるように変形する複数のリップ10aが小歯車側油切り部材10Bに形成されている。そのため保守時における小歯車側軸受蓋11Bの組み付け易さを損なうことなく運行時における油密性を確保するができる。また従来技術に比べて実施の形態4に係る歯車装置105Cではラビリンス構造を構成する部材が少なくて済むため油密性を確保しながらコストの低減を図ることが可能である。
また実施の形態4に係る歯車装置105Cによれば、小歯車軸104の回転により作用する遠心力が生じた後の外径がリップ11aの内径よりも大きく、かつ、隣接するリップ11aの間の溝部11a2の内径よりも小さくなるように変形する第2のリップ10a21が小歯車側油切り部材10Bに形成されている。そのため、小歯車軸104が回転した際に複数のリップ11aと第2のリップ10a21との間に形成されるラビリンス構造は実施の形態2よりも複雑になり、小歯車側軸受13から軸方向外側に流れてきた潤滑油8が機外側に漏れ難くなり、より一層油密性を高めることが可能である。
なお実施の形態4では小歯車側油切り部材10Bに2つの第2のリップ10a21が設けられているが第2のリップ10a21の数は2つに限定されるものではなく1つ以上であればよい。第2のリップ10a21の数を増やすほど油密性を高めることができるが小歯車側油切り部材10Bの加工コストも増加するため、第2のリップ10a21の数は油密性と加工コストとのバランスを勘案して設定するものとする。また実施の形態4では、小歯車側油切り部材10Bの材質、すなわち複数のリップ10aの材質が弾性変形するバネ鋼である例を説明したが、複数のリップ10aの材質は弾性変形する金属であればバネ鋼以外の金属、例えばステンレス鋼、銅、およびアルミニウムといった金属を用いてもよい。これらの金属の弾性復元力はバネ鋼の弾性復元力に比べて小さいが、弾性復元力を有する金属であれば油密性を確保しながらコストの低減を図るという効果を得ることが可能である。また複数のリップ10aの材質は、弾性変形する樹脂、または弾性変形するゴムでもよい。樹脂またはゴムはバネ鋼、ステンレス鋼、または銅といった金属に比べて比重が低いため、これらの材質を用いることにより、軸受蓋の組み付け易さを損なうことなく油密性を確保しながらコストの低減を図るという効果に加えて、歯車装置105Cの軽量化を図ることができる。
また実施の形態1から4では鉄道車両用駆動装置に利用される歯車箱の例を説明したが、実施の形態1から4に係る歯車装置は鉄道車両以外の駆動装置にも適用可能である。具体的には、回転軸に設けられる歯車と、回転軸に嵌め合わされる軸受と、歯車と軸受とを収める歯車箱と、回転軸に嵌め込まれて軸受の軸方向外側に配置される油切り部材と、歯車箱に装着され油切り部材の外周面を取り囲む軸受蓋とを有する歯車装置であれば、自動車および航空機といった乗り物に内蔵される歯車機構、または産業用重機に内蔵される歯車機構にも適用可能である。
以上に説明したように実施の形態1から4に係る歯車装置は、歯車と軸受とを収める歯車箱と、回転軸に嵌め込まれて軸受の軸方向外側に配置され、径方向外側に環状の複数のリップを有する油切り部材と、歯車箱に装着され、油切り部材の外周面に形成される環状の複数のリップを有すると共に、軸受の外輪を保持する軸受蓋と、を備え、油切り部材に形成された複数のリップの内、軸受側に配置される第1のリップは、回転軸の回転により作用する遠心力が生じる前の外径が外輪の内径よりも小さく、回転軸の回転により作用する遠心力が生じた後の外径が外輪の内径よりも大きくなるように変形する。この構成によりラビリンス構造を構成する部材が少なくて済むため、軸受蓋の組み付け易さを損なうことなく油密性を確保しながらコストの低減を図ることが可能である。
また実施の形態1から4に係る第1のリップまたは第2のリップは、弾性変形する材質で形成されている。例えば第1のリップまたは第2のリップが塑性変形する材質で形成されている場合、このように形成された第1のリップまたは第2のリップでは、回転軸の回転速度の変化が繰り返えされると、回転軸の回転により作用する遠心力が生じる前の外径と回転軸の回転により作用する遠心力が生じた後の外径との差が、弾性変形する材質で形成されているリップに比べて小さくなる傾向があるため、軸受蓋の組み付け易さを損なうことなく油密性を確保することが難しくなる。実施の形態1から4に係る第1のリップまたは第2のリップによれば、回転軸の回転速度の変化が繰り返えされた場合でも、回転軸の回転により作用する遠心力が生じる前の外径と回転軸の回転により作用する遠心力が生じた後の外径との差を大きくすることができるため、軸受蓋の組み付け易さを損なうことなく油密性を確保することが可能である。
また実施の形態1から4に係る第1のリップまたは第2のリップは、油切り部材の軸方向外側から軸受に向かうにつれて直径が拡大する擂り鉢状に形成されている。例えば第1のリップまたは第2のリップが平板円環状に形成されている場合、このように形成された第1のリップまたは第2のリップでは、回転軸の回転により作用する遠心力が生じる前の外径と回転軸の回転により作用する遠心力が生じた後の外径との差が、擂り鉢状に形成されているリップに比べて小さいため、軸受蓋の組み付け易さを損なうことなく油密性を確保することが難しくなる。実施の形態1から4に係る第1のリップまたは第2のリップによれば、回転軸の回転により作用する遠心力が生じる前の外径と回転軸の回転により作用する遠心力が生じた後の外径との差を大きくすることができるため、軸受蓋の組み付け易さを損なうことなく油密性を確保することが可能である。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。