JP2016210978A - ポリアリーレンスルフィドおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱時のポリマーの熱変性よる着色を防止でき、狭い分子量分布、高分子量、高純度且つ色調に優れた工業的に有用なポリアリーレンスルフィドとその製造方法の提供。
【解決手段】重量平均分子量が10000以上であり、重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が2.5以下であり、加熱した際の重量減少がΔWr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%)(ΔWrは重量減少率(%)、W1は100℃到達時の試料重量、W2は330℃到達時の試料重量)で、リン原子がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.01〜20モル%となる範囲で、遷移金属の含有量がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.001モル%以下であり、環式ポリアリーレンスルフィドを亜リン酸金属塩及び/又は次亜リン酸金属塩存在下に300℃を超える温度で加熱することで得られるポリアリーレンスルフィド。
【選択図】なし
【解決手段】重量平均分子量が10000以上であり、重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が2.5以下であり、加熱した際の重量減少がΔWr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%)(ΔWrは重量減少率(%)、W1は100℃到達時の試料重量、W2は330℃到達時の試料重量)で、リン原子がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.01〜20モル%となる範囲で、遷移金属の含有量がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.001モル%以下であり、環式ポリアリーレンスルフィドを亜リン酸金属塩及び/又は次亜リン酸金属塩存在下に300℃を超える温度で加熱することで得られるポリアリーレンスルフィド。
【選択図】なし
Description
狭い分子量分布を有し、高分子量、高純度且つ色調に優れるものであって工業的に有用なポリアリーレンスルフィド、およびこのような利点を有するポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィドに代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略する場合もある)は優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性、難燃性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有する樹脂である。また、射出成形、押出成形により各種成形部品、フィルム、シート、繊維等に成形可能であり、各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品など耐熱性、耐薬品性の要求される分野に幅広く用いられている。
このPASの具体的な製造方法として、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機アミド溶媒中で硫化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物とp−ジクロロベンゼンなどのポリハロ芳香族化合物とを反応させる方法が提案されており、この方法はPASの工業的製造方法として幅広く利用されている。しかしながら、この製造方法は高温、高圧かつ強アルカリ条件化で反応を行うことが必要であり、さらに、N−メチル−2−ピロリドンのような高価な高沸点極性溶媒を必要とし、溶媒回収に多大なコストがかかるエネルギー多消費型で、多大なプロセスコストを必要とするといった課題を有している。
一方、PASの別の製造方法として環式PASを加熱することによるPASの製造方法が開示されている(特許文献1および非特許文献1)。
ここで、環式PASのPASへの転化に際し、転化を促進する各種触媒成分(ラジカル発生能を有する化合物やイオン性化合物、遷移金属)を使用する方法が知られている。特許文献2および非特許文献2には、ラジカル発生能を有する化合物として、例えば加熱により硫黄ラジカルを発生する化合物、具体的にはジスルフィド結合を含有する化合物を用いる方法が開示されている。特許文献3から5には、アニオン重合において開環重合触媒になり得るイオン性化合物として、例えばチオフェノールのナトリウム塩などの硫黄のアルカリ金属塩、ルイス酸として、例えば塩化銅(II)などの金属ハロゲン化物を触媒として用いる方法が開示されている。また、特許文献6には、0価遷移金属化合物として、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどを用いる方法が開示されている。
Polymer,vol.37,no.14,1996年(第3111〜3116頁)
Macromolecules,30,1997年(第4502〜4503頁)
環式PASを加熱することによりPASを製造する方法では、高分子量で、狭い分子量分布を有し、加熱した際の重量減少が小さいPASを得ることが期待できる。しかし、特許文献1および非特許文献1では、その製造における加熱によって着色する場合があった。特許文献2から6および非特許文献2では、加熱条件の緩和による着色抑制が期待されるが、添加剤の熱分解や添加剤そのものにより着色するという課題があった。以上より、高分子量で、狭い分子量分布を有し、加熱した際の重量減少が小さく良色調のPASおよびその製造方法が望まれていた。
本発明では狭い分子量分布を有し、高分子量、高純度且つ色調に優れるものであって工業的に有用なポリアリーレンスルフィド、およびこのような利点を有するポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。
本発明では狭い分子量分布を有し、高分子量、高純度且つ色調に優れるものであって工業的に有用なポリアリーレンスルフィド、およびこのような利点を有するポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供する。
上記課題に関し、本発明は以下のとおりである。
[1]環式ポリアリーレンスルフィドを、亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩存在下に300℃を超える温度で加熱するポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[2]環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し、0.01〜20モル%の亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩の存在下に加熱する前記[1]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[3]環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し、0.001モル%以下の遷移金属存在下で加熱する前記[1]または[2]に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[4]加熱を320℃以上で行う前記[1]から[3]のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[5]環式ポリアリーレンスルフィドが下記一般式で示される環式化合物を50重量%以上含み、かつ式中の繰り返し単位数mが4〜50であることを特徴とする前記[1]から[4]のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[1]環式ポリアリーレンスルフィドを、亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩存在下に300℃を超える温度で加熱するポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[2]環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し、0.01〜20モル%の亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩の存在下に加熱する前記[1]に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[3]環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し、0.001モル%以下の遷移金属存在下で加熱する前記[1]または[2]に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[4]加熱を320℃以上で行う前記[1]から[3]のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[5]環式ポリアリーレンスルフィドが下記一般式で示される環式化合物を50重量%以上含み、かつ式中の繰り返し単位数mが4〜50であることを特徴とする前記[1]から[4]のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(Arはアリーレン基を表す。)
[6]環式ポリフェニレンスルフィドの重量平均分子量が10000未満である前記[1]から[5]のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[7]下記(1)から(5)を満たすポリアリーレンスルフィド。
(1)重量平均分子量が10000以上である。
(2)重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が2.5以下である。
(3)加熱した際の重量減少が下記式を満たす。
[6]環式ポリフェニレンスルフィドの重量平均分子量が10000未満である前記[1]から[5]のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
[7]下記(1)から(5)を満たすポリアリーレンスルフィド。
(1)重量平均分子量が10000以上である。
(2)重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が2.5以下である。
(3)加熱した際の重量減少が下記式を満たす。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%)
(ここでΔWrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である)
(4)リン原子の含有量がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.01〜20モル%となる範囲である。
(5)遷移金属の含有量がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.001モル%以下である。
[8]L*値が50以上の[7]に記載のポリアリーレンスルフィド。
[9]L*値が55以上の[7]に記載のポリアリーレンスルフィド。
(ここでΔWrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である)
(4)リン原子の含有量がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.01〜20モル%となる範囲である。
(5)遷移金属の含有量がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.001モル%以下である。
[8]L*値が50以上の[7]に記載のポリアリーレンスルフィド。
[9]L*値が55以上の[7]に記載のポリアリーレンスルフィド。
本発明によれば、狭い分子量分布を有し、高分子量、高純度かつ良色調であって工業的に有用なポリアリーレンスルフィドを提供、また、このような利点を有するポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供できる。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
(1)ポリアリーレンスルフィド
本発明におけるポリアリーレンスルフィドとは、アリーレン基(以下Arと略する場合がある)とスルフィドから成る式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
本発明におけるポリアリーレンスルフィドとは、アリーレン基(以下Arと略する場合がある)とスルフィドから成る式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
(R1、R2は水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜26のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なってもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
また、本発明におけるPASは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、PAS、ポリアリーレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体、及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−アリーレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するPASが挙げられる。
本発明のPASの分子量は、重量平均分子量で10000以上であり、好ましくは15000以上、より好ましくは18000以上である。重量平均分子量が10000未満では、加工時の成形性が低く、また成形品の機械強度や耐薬品性等の特性が低くなる。重量平均分子量の上限に特に制限はないが、1000000未満を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500000未満、更に好ましくは200000未満であり、この範囲内では高い成形加工性を得ることができる。
本発明におけるPASの分子量の広がり、即ち重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)で表される分散度は2.5以下であり、2.3以下がより好ましく、2.1以下が更に好ましく、2.0以下がよりいっそう好ましい。ここで、分散度の好ましい下限値は1.0であり、このときはPASが単一の分子量を有することを意味する。よって理論上の下限は1.0であるが、本発明のPASにおいて通常は1.5以上である。分散度が2.5を超える場合はPASに含まれる低分子量成分が多くなる傾向が強く、このことはPASを成形加工用途に用いた場合の機械特性低下、加熱した際のガス発生量の増大及び溶剤と接した際の溶出成分量の増大等の要因になる傾向にある。なお、前記重量平均分子量及び数平均分子量は例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィ−)を使用して求めることができる。
本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィドはリン原子を含有するが、従来法と異なりN−メチルピロリドンのような溶媒を必要としないこと、また、公知のラジカル発生能を有する化合物やイオン性化合物などの触媒を使用しないことから、加熱加工時のガス発生量が少ない特徴を有する。
このガス発生量は、一般的な熱重量分析によって求められる、下記式で表される、加熱した際の重量減少率ΔWrから評価できる。
△Wr=(W1−W2)/W1×100 ・・・(I)
△Wr=(W1−W2)/W1×100 ・・・(I)
ここで△Wrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時点の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である。
この分析における雰囲気は常圧の非酸化性雰囲気を用いる。非酸化性雰囲気とは試料が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が特に好ましい。また、常圧とは大気の標準状態近傍における圧力のことであり、約25℃近傍の温度、絶対圧で101.3kPa近傍の大気圧条件のことである。測定の雰囲気が前記以外では、測定中にPASの酸化等が起こったり、実際にPASの成形加工で用いられる雰囲気と大きく異なるなど、PASの実使用に即した測定になり得ない可能性が生じる。
また、△Wrの測定においては50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。好ましくは50℃で1分間ホールドした後に昇温速度20℃/分で昇温して熱重量分析を行う。この温度範囲はポリフェニレンスルフィドに代表されるPASを実使用する際に頻用される温度領域であり、また、固体状態のPASを溶融させ、その後任意の形状に成形する際に頻用される温度領域でもある。このような実使用温度領域における重量減少率は、実使用時のPASからのガス発生量や成形加工の際の口金や金型などへの付着成分量などに関連する。従って、このような温度範囲における重量減少率が少ないPASの方が品質の高い優れたPASであるといえる。△Wrの測定は約10mg程度の試料量で行うことが望ましく、またサンプルの形状は約2mm以下の細粒状であることが望ましい。
本発明のPASは△Wrが0.18%以下であり、0.12%以下であることが好ましく、0.10%以下であることが更に好ましく、0.085%以下であることがよりいっそう好ましい。ここで、ΔWrに下限はなく、ΔWrは少ないほど好ましいが、具体的な数値を例示するならば、このΔWrの下限値は0.001%である。△Wrが前記範囲を超える場合は、たとえばPASを成形加工する際に発生ガス量が多いといった問題が発生しやすくなる傾向があり好ましくなく、また、押出成形時の口金やダイス、また射出成型時の金型への付着物が多くなり生産性が悪化する傾向もあるため好ましくない。本発明者らの知る限りでは上記の有機溶媒中で反応させて得られる公知のPASの△Wrは0.18%を越えるが、本発明の好ましい製造法によって得られるPASは分子量分布や不純物含有量が該公知のPASと異なりきわめて高純度であるがために△Wrの値が著しく低下するものと推測している。
本発明では、環式PASを加熱する際に亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩由来のリン原子が含まれていれば良い。本発明における好ましい含有量は、環式ポリアリーレンスルフィドの組成やリン化合物の種類により異なるが、通常、PAS中の硫黄原子に対して下限は、リン原子基準で0.001モル%以上、好ましくは0.005モル%以上、より好ましくは0.01モル%以上、更に好ましくは0.1モル%以上、最も好ましくは1.0モル%以上である。リン原子の含有量が0.001モル%以上のPASは色調に優れている。一方好ましい上限は、PAS中の硫黄原子に対しリン原子基準で20モル%以下、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。20モル%以下とすることで加熱した際の重量減少が少なく前述した特性を有するPASを得ることができる。
本PAS中の遷移金属含有量は、PAS中の硫黄原子に対して0.001モル%以下であることが好ましい。PASは遷移金属化合物そのものにより着色する傾向にあり、良色調のPASを得るためには、環式PAS中の遷移金属化合物の含有量は0.001モル%以下が好ましい。さらに、0.001モル%未満であることが好ましく、0.0007モル%以下であることがより好ましい。遷移金属含有量の下限は少ないほど好ましく、遷移金属を含まないことが最も好ましい。
なお、リン化合物および遷移金属化合物の定性および定量方法としては、例えば高周波誘導結合プラズマ発生分光分析法(ICP発行分光分析法)、ICP質量分析法、X線吸収微細構造(XAFS)解析、蛍光X線分析、多核NMR(核磁気共鳴分光法)、紫外・可視・近赤外・赤外分光法、イオンクロマトグラフィー分析などが挙げられる。
この様な特徴を有するPASは、後述するように環式PASを加熱して高重合度体に転化させることによって製造することが好ましい。高重合度体への転化に関しては後で詳述するが、環式PASを高重合度体へ転化せしめる操作に処した後に得られるPASに含有される環式PASの重量分率が40%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下であるPASは前述の△Wrの値が特に小さくなるため好ましい。この値が前記範囲を超える場合には△Wrの値が大きくなる傾向にあり、この原因は現時点定かではないがPASの含有する環式PASが加熱時に一部揮散するためと推察している。
上述の様に本発明のPASは昇温した際の加熱減量△Wrが少ないという優れた特徴を有するが、任意のある一定温度でPASを保持した際の加熱減量も少ないという優れた特徴を有する傾向がある。
また、本発明のPASは従来の環式PASを加熱して得られるPASに比べ良色調であることが特徴であり、L*値で50以上を満たすものが好ましい。
ここでいうL*値は、PASの粉粒物を用いJIS Z8722(2000)に準じて、色調測定を行った数値を使用する。L*値が50よりも低い場合は、明度が低く良外観のPASを得ることができない。
また、本発明に記載の測定条件でL*値が50以上を満たすPASは明度が高く調色が容易となるため好ましい。
なお、本発明におけるPASの粉粒物とは、粒径が2.00〜1.70mmのものを指す。粒径が2.00〜1.70mmの粉粒物を得る方法は特に制限はないが、例えば、目開き4.75mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.18mm(いずれも75mm径円筒型)のふるい及びふるい振とう機(アズワン製、商品名ミニふるい振とう機MVS−1)を用いて、乾式の機械ふるい分け法にてふるい分けを実施して得られる。具体的には、目開きの大きいふるいが上段になるようにふるいを重ね、最上段のふるいに測定粒子を20g入れ、ふるい振とう機で10分間振とうさせる方法が例示できる。
(2)環式ポリアリーレンスルフィド
本発明のPASの製造方法における環式PASとは式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とし、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(O)のごとき環式化合物を、少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むものが好ましい。Arとしては前記式(A)〜式(K)などで表される単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
本発明のPASの製造方法における環式PASとは式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とし、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(O)のごとき環式化合物を、少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むものが好ましい。Arとしては前記式(A)〜式(K)などで表される単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
なお、環式PAS中の前記(O)式の環式化合物においては前記式(A)〜式(K)などの繰り返し単位をランダムに含んでもよいし、ブロックで含んでもよく、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい前記(O)式の環式化合物としては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式化合物が挙げられる。
前記(O)式で表される環式化合物の繰り返し数mに特に制限は無いが、4〜50が好ましく、4〜25がより好ましく、4〜15がさらに好ましい範囲として例示できる。環式PASは、異なるmの値を有する環式化合物の混合物であることが好ましい。後述するように環式PASの加熱によるPASへの転化は環式PASが溶融解する温度以上で行うことが好ましい。また、環式PASに含まれる前記(O)式の環式化合物は、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物のいずれでもよいが、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物の使用は後述の環式PASを溶融させ亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を均一に分散させる前処理の温度をより低くできるため好ましい。また、PASへの転化の温度をより低くできる傾向にあり好ましい。
環式PASにおける前記(O)式の環式化合物以外の成分はPASオリゴマーであることが特に好ましい。ここでPASオリゴマーとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては前記した式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。PASオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、前記した式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。また、PASオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいPASオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。
PASオリゴマーの分子量としては、PASよりも低分子量のものが例示でき、具体的には重量平均分子量で10,000未満であることが好ましい。
環式PASが含有するPASオリゴマー量は、環式PASが含有する前記(O)式の環式化合物よりも少ないことが特に好ましい。即ち環式PAS中の前記(O)式環式化合物とPASオリゴマーの重量比(前記(O)式の環式化合物/PASオリゴマー)は1を超えることが好ましく、2.3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、9以上がよりいっそう好ましく、このような環式PASを用いることで重量平均分子量が10,000以上のPASを容易に得ることが可能である。従って、環式PAS中の前記(O)式の環式化合物とPASオリゴマーの重量比の値が大きいほど、本発明のPAS製造方法により得られるPASの重量平均分子量は大きくなる傾向にあり、よってこの重量比に特に上限は無いが、該重量比が100を超える環式PASを得るためには、環式PAS中のPASオリゴマー含有量を著しく低減する必要があり、これには多大の労力を要する。本発明のPAS製造方法によれば該重量比が100以下の環式PASを用いても重量平均分子量が10,000以上のPASを容易に得ることが可能である。
本発明のPASの製造に用いる環式PASの分子量の上限値は、重量平均分子量で10,000未満が好ましく、5,000以下が好ましく、3,000以下がさらに好ましく、一方、下限値は重量平均分子量で300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上がさらに好ましい。重量平均分子量が大きくなると環式PASの溶融解温度が高くなる傾向にあるため、後述の環式PASを溶融させ亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を均一に分散させる前処理の温度をより低くできるできるという観点で上記重量平均分子量の範囲にすることは有利である。また、PASへの転化を行う際により短時間で融解し、反応工程を短時間化できる傾向にあるという観点でも上記重量平均分子量の範囲にすることは有利である。環式PASの反応をより低温で行うことができるという観点で上記重量平均分子量の範囲にすることは有利である。
(3)亜リン酸金属塩および次亜リン酸金属塩
環式PAS加熱時の熱変性を抑制し、良色調のPASを得るために、本発明では、環式PASを亜リン酸金属塩類および/または次亜リン酸金属塩類の存在下で加熱する。
環式PAS加熱時の熱変性を抑制し、良色調のPASを得るために、本発明では、環式PASを亜リン酸金属塩類および/または次亜リン酸金属塩類の存在下で加熱する。
亜リン酸金属塩類および/または次亜リン酸金属塩類の金属塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩などがあげられ、具体的には例えば、亜リン酸カリウム、亜リン酸水素2ナトリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マンガン、次亜リン酸鉄、次亜リン酸ニッケル、次亜リン酸亜鉛、次亜リン酸アルミニウムなどが例示できる。なお、ここで用いる亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩は、無水塩であっても含水塩であってもかまわないし、互変異性体のホスホン酸金属塩や亜ホスホン酸金属塩であってもかまわない。また、これらの亜リン酸金属塩類および/または次亜リン酸金属塩類は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合あるいは組み合わせて用いてもよい。亜リン酸金属塩類および/または次亜リン酸金属塩類を2種以上混合あるいは組み合わせて用いる場合には、亜リン酸金属塩と次亜リン酸金属塩のいずれかあるいは両方が互変異性体のホスホン酸金属塩やホスフィン金属塩であってもよい。
また、経済性、入手のし易さおよび高い着色抑制効果を有する面から、これら亜リン酸金属塩類、次亜リン酸金属塩類の中でも、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることがより好ましい。
さらに、次亜リン酸金属塩類が、高い着色抑制効果を有し、本発明における好ましいものには、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウムなどが例示できる。
金属塩として遷移金属塩を用いることも可能であるが、遷移金属化合物は、そのものあるいは加熱時の熱変性を促進して、着色を促進する傾向にあるため、良色調のPASを得るためには、環式PAS中の硫黄原子に対し、遷移金属化合物が0.001モル%以下で存在する状態で加熱を行うのが好ましい。さらに、0.001モル%未満が好ましく0.0007モル%以下であることがより好ましい。遷移金属の存在量の下限は、少ないほど好ましく、遷移金属を含まないことが最も好ましい。
亜リン酸金属塩および次亜リン酸金属塩以外の無機リン系化合物は、併用することも可能だが、不存在であることが好ましい。無機リン系化合物の量が増えると加熱した際の重量減少が大きくなる傾向にある。
無機リン系化合物としては、ホスフィン(PH3)、ホスフィンオキシド(H3P=O)、亜ホスフィン酸(H2POH)、ホスフィン酸(次亜リン酸)(H2P(=O)OH)[あるいは互変異性体の亜ホスホン酸(HP(OH)2)]、亜リン酸(ホスファイト)(P(OH)3)[あるいは互変異性体のホスホン酸(ホスホネート)(HP(=O)(OH)2)]、リン酸(ホスフェート)(P=O(OH)3)などが挙げられるが、金属塩ではない無機リン系化合物は加熱時の揮散が生じやすいため、着色を抑制する十分な効果を奏しない。
金属塩の無機リン系化合物には、亜リン酸塩(あるいは互変異性体のホスホン酸金属塩)、次亜リン酸塩(あるいは互変異性体の亜ホスホン酸金属塩)、リン酸塩などが挙げられるが、リン酸(ホスフェート)塩は、リン原子が立体的に4つの酸素原子に囲まれているため、あるいはリン原子が非共有電子対を有さないため、環式PASとの相互作用が低くなることに由来すると推測しているが、着色を抑制する効果を奏しない。
(4)リン化合物の添加
本発明では、環式PASを加熱する際に亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩由来のリン原子が含まれていれば良い。本発明における好ましい含有量は、環式ポリアリーレンスルフィドの組成やリン化合物の種類により異なるが、通常、環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対して下限は、リン原子基準で0.001モル%、好ましくは0.005モル%、より好ましくは0.01モル%、更に好ましくは0.1モル%以上、最も好ましくは1.0モル%以上が例示できる。0.001モル%以上では着色抑制効果が十分に発現する。一方、好ましい上限はリン原子基準で20モル%以下、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下が例示できる。20モル%以下では加熱した際の重量減少が少なく前述した特性を有するPASを得ることができる。
本発明では、環式PASを加熱する際に亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩由来のリン原子が含まれていれば良い。本発明における好ましい含有量は、環式ポリアリーレンスルフィドの組成やリン化合物の種類により異なるが、通常、環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対して下限は、リン原子基準で0.001モル%、好ましくは0.005モル%、より好ましくは0.01モル%、更に好ましくは0.1モル%以上、最も好ましくは1.0モル%以上が例示できる。0.001モル%以上では着色抑制効果が十分に発現する。一方、好ましい上限はリン原子基準で20モル%以下、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下が例示できる。20モル%以下では加熱した際の重量減少が少なく前述した特性を有するPASを得ることができる。
前記亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩の存在下で環式PASを加熱することで、PASを得ることができる。前記亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩存在下で加熱するには、環式PASにこれらの塩をそのまま添加して加熱すればよいが、環式ポリアリーレンスルフィドに亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を添加した後、均一に分散させて加熱することが好ましい。均一に分散させる方法として、例えば機械的に分散させる方法、溶媒を用いて分散させる方法、環式ポリアリーレンスルフィドを溶融し分散させる方法などが挙げられる。
機械的に分散させる方法として、具体的には粉砕機、撹拌機、混合機、振とう機、乳鉢を用いる方法などが例示できる。亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を固体で添加して分散させる場合、より均一な分散が可能となるためリン系化合物の平均粒径は1mm以下であることが好ましい。
溶媒を用いて分散させる方法として、具体的には環式PASを適宜な溶媒に溶解または分散し、これに亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を固体あるいは溶液の状態で所定量加えた後、溶媒を除去する方法などが例示できる。環式ポリアリーレンスルフィドを溶解あるいは分散させる溶媒については、環式ポリアリーレンスルフィドを変性する作用を有しないものであれば特に制限はないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒や水などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を溶解あるいは分散させる溶媒については、特に制限はなく、前述の環式ポリアリーレンスルフィドを溶解あるいは分散させる溶媒として例示した溶媒を用いることが例示できる。なお、亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を溶解させる場合には、例えば水、メタノール、エタノールおよびこれらの混合物が特に有用な溶媒として挙げられる。
亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩の溶液を添加する方法は特に制限はないが、例えば、環式ポリアリーレンスルフィドの分散液や溶媒を含む環式ポリアリーレンスルフィドあるいは環式ポリアリーレンスルフィド溶液に滴下や噴霧等する方法が挙げられる。溶媒を用いて添加した場合には、回転式あるいは撹拌翼付きの乾燥機で混合しながら溶媒を除去する方法や、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダーなどの通常の混合機を用いて、常温または加温下で混合し、その後溶媒を蒸発等により除去する方法が挙げられる。また、後述のポリアリーレンスルフィドの製造工程では溶媒を含有した環式PASを用いてもよく、製造時の昇温工程で溶媒を除去する方法もとり得る。
環式ポリアリーレンスルフィドを溶融し分散させる方法として、固体状態の環式PASに亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を固体あるいは溶液の状態で所定量加えた後、加熱により環式PASを溶融させる方法、あらかじめ環式PASを溶融した後に亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を固体あるいは溶液の状態で所定量加える方法が例示できる。
また、2種以上の化合物を添加する場合には添加する化合物の安定性や反応性にもよるが、一度に添加しても良いし別々に添加した後に、重合反応装置、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などの装置内外で混合してもよい。
前記、環式ポリアリーレンスルフィドを溶融し分散させる際の温度は、環式PASがPASに転化しにくい温度領域であることが好ましく、例えば300℃以下が例示できる。300℃以下では環式PASが転化しにくい傾向にあり、これは、亜リン酸金属塩および次亜リン酸金属塩が環式PASを安定化させるためと推定している。
なお上述の機械的に分散させる方法、溶媒を用いて分散させる方法、環式ポリアリーレンスルフィドを溶融し分散させる方法を用いて、予め環式ポリアリーレンスルフィドに亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩を均一に分散させたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物(1)を得て、これを環式PASに加える製造方法もとり得る。
(5)ポリアリーレンスルフィドの製造条件
本発明における環式PASを亜リン酸金属塩類および/または次亜リン酸金属塩類存在下に加熱する際の加熱温度は、300℃を超える温度であり、320℃以上で行うことがより好ましい。この温度範囲では、環式PASが溶融解し、亜リン酸金属塩および次亜リン酸金属塩が環式PASの反応を阻害することなく、短時間でPASを得ることができる。300℃以下では亜リン酸金属塩および次亜リン酸金属塩が環式PASの転化を阻害するため、PASの製造に長時間を要する。一方、温度が高すぎると架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、着色が進行する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。加熱温度の上限としては、400℃以下が例示でき、好ましくは360℃以下である。また、この温度以下では、好ましくない副反応による得られるPASの特性への悪影響を抑制できる傾向にあり、前述した特性を有するPASを得ることができる。
本発明における環式PASを亜リン酸金属塩類および/または次亜リン酸金属塩類存在下に加熱する際の加熱温度は、300℃を超える温度であり、320℃以上で行うことがより好ましい。この温度範囲では、環式PASが溶融解し、亜リン酸金属塩および次亜リン酸金属塩が環式PASの反応を阻害することなく、短時間でPASを得ることができる。300℃以下では亜リン酸金属塩および次亜リン酸金属塩が環式PASの転化を阻害するため、PASの製造に長時間を要する。一方、温度が高すぎると架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、着色が進行する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。加熱温度の上限としては、400℃以下が例示でき、好ましくは360℃以下である。また、この温度以下では、好ましくない副反応による得られるPASの特性への悪影響を抑制できる傾向にあり、前述した特性を有するPASを得ることができる。
反応時間は、使用する環式PASにおける前記(O)式の環式化合物の含有率や繰り返し数(m)、及び分子量などの各種特性、また、加熱の温度などの条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間としては下限が0.01時間以上、好ましくは0.05時間以上が例示できる。0.01時間以上では環式PASはPASへ十分に転化する。一方、上限は100時間以下、好ましくは20時間、更に好ましくは10時間が例示できる。100時間以下では好ましくない副反応による得られるPASの特性への悪影響を抑制できる傾向にある。
環式PASの加熱は、実質的に溶媒を含まない条件下で行うことも可能である。このような条件下で行う場合、短時間での昇温が可能であり、反応速度が高く、短時間でPASを得やすくなる傾向がある。ここで実質的に溶媒を含まない条件とは、環式PAS中の溶媒が10重量%以下であることを指し、3重量%以下がより好ましい。
前記加熱は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよいし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限なく行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。
環式PASの加熱は、減圧条件、脱揮条件、大気圧条件、加圧条件のいずれの条件下でも行うことができる。この際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気とは環式PASが接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。なお、いずれの圧力条件下でも、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから所定の条件で加熱を行うことが好ましい。これにより環式PAS間、加熱により生成したPAS間、及びPASと環式PAS間などで架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応と着色の発生を抑制できる傾向にある。
減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下がさらに好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい下限以上では、環式PASに含まれる分子量の低い前記(O)式の環式化合物が揮散しにくく、一方好ましい上限以下では、架橋反応など好ましくない副反応が起こりにくい傾向にあり、前述した特性を有するPASを得ることができる。
脱揮条件下とは環式PASを加熱する際に発生する気体状態の成分を、加熱系内から除去する条件のことである。前記気体状態の成分としては、溶媒の種類や含有量、環式PASの組成および分子量、脱揮成分の詳細などにより発生の有無やその程度は異なるが、環式PASに含まれる溶媒や環式PASに含まれるPASオリゴマーなどが例示できる。前記条件としては、発生した気体状態の成分を加熱系内から除去可能であれば特に制限されないが、例えば連続的な減圧条件下での脱揮や、連続的にガスを系内へ流入し、流入したガスとともに、発生した気体状態の成分を加熱系外に流出させる条件、発生した気体状態の成分を冷却し系外に捕集する条件などが挙げられる。脱揮条件下で加熱することにより、環式PAS中の溶媒とPASオリゴマーが加熱系内に残存しにくく、加熱系内における環式PASの重量比が大きくなる傾向にあるため、本発明のPASの製造方法により得られるPASの重量平均分子量が大きくなる傾向にあり、好ましい。
連続的な減圧条件下での脱揮における、連続的な減圧条件としては、発生した気体状態の成分を加熱系内から除去可能であればよく、例えば重合反応を行う系内全体が連続的に減圧されていてもよいし、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などを用いて加熱する場合には、常圧あるいは加圧条件下にある型内、押出機内、溶融混練機内などから一部が減圧装置に連結され連続的に減圧されていてもよい。連続的に減圧し脱揮を行うことで、環式PASに含まれる溶媒およびPASオリゴマーを、より効率よく加熱系内から除去可能になることにより、より高重合度のPASを得られる傾向にある。
系内へ流入するガスの温度は、流入するガスの流量、系内の加熱温度、反応系の構造にもよるが、系内の加熱温度を安定に制御できる範囲であれば特に制限はない。ただし、安定なガス温度制御の面から0℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、安定な系内の加熱温度制御の面からはさらに、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましく、系内の加熱温度と同温度であることがよりいっそう好ましい範囲として例示できる。
また、系内へ流入するガスの流量は、流入するガスの温度、系内の加熱温度、反応系に構造にもよるが、環式PASを加熱する際に発生する気体状態の成分を加熱系内から除去可能であり、系内の加熱温度を安定に制御できる範囲であれば特に制限はない。発生する気体状態の成分を、加熱系内から除去する効果の面からは、1分間に系内へ流入するガスの流量は、系内の容積の1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることがよりいっそう好ましい範囲として例示できる。
加圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも高いことを指し、上限としては特に制限はないが、反応装置の取り扱いの容易さの面からは0.2MPa以下が好ましい。このような条件下で行う場合、高い色調良化の効果が得られる傾向にあり、これは加熱時に亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩が揮散しにくいためと推定している。
また、前記した環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化は充填剤の存在下で行うことも可能である。充填剤としては、例えば繊維状あるいは非繊維状ガラス、繊維状あるいは非繊維状炭素や、無機充填剤、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナなどを例示できる。
(6)本発明のPASの特性
本発明のPASは、耐熱性、耐酸化性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、特に従来のPASと比べて分子量分布が狭く、加熱時のガス量が少なく、耐酸化性および色調に優れるため、成形加工性や機械特性及び電気的特性が極めて優れており、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形,使用することができる。
本発明のPASは、耐熱性、耐酸化性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、特に従来のPASと比べて分子量分布が狭く、加熱時のガス量が少なく、耐酸化性および色調に優れるため、成形加工性や機械特性及び電気的特性が極めて優れており、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形,使用することができる。
本発明のPASを用いたPASフィルムの製造方法としては、公知の溶融製膜方法を採用することができ、例えば、単軸または2軸の押出機中でPASを溶融後、フィルムダイより押出し、冷却ドラム上で冷却してフィルムを作成する方法、あるいは、このようにして作成したフィルムをローラー式の縦延伸装置とテンターと呼ばれる横延伸装置にて縦横に延伸する二軸延伸法などが例示できるが、特にこれに限定されるものではない。
本発明のPASを用いたPAS繊維の製造方法としては、公知の溶融紡糸方法を適用することができ、例えば、原料であるPASチップを単軸または2軸の押出機に供給しながら混練し、ついで押出機の先端部に設置したポリマー流線入替器、濾過層などを経て紡糸口金より押出し、冷却、延伸、熱セットを行う方法などを採用することができるが、特にこれに限定されるものではない。
また、本発明のPASは、単独で用いてもよいし、所望に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤などを添加することもでき、ポリアミド、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、酸無水物基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミドなどの樹脂を配合することもできる。
(7)本発明のPASの用途
本発明のPASは特性として成形加工性や機械特性及び電気的特性に優れるため、その用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、燃料タンク、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー等の自動車・車両関連部品、その他各種用途が例示できる。
本発明のPASは特性として成形加工性や機械特性及び電気的特性に優れるため、その用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、燃料タンク、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー等の自動車・車両関連部品、その他各種用途が例示できる。
PASフィルムの場合、優れた機械特性、電気特性、耐熱性を有しており、フィルムコンデンサーやチップコンデンサーの誘電体フィルム用途、回路基板、絶縁基板用途、モーター絶縁フィルム用途、トランス絶縁フィルム用途、離型用フィルム用途など各種用途に好適に使用することができる。
PASのモノフィランメントあるいは短繊維の場合、抄紙ドライヤーキャンバス、ネットコンベヤー、バグフィルター、絶縁ペーパーなどの各種用途に好適に使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
<分子量測定>
PAS及び環式PASの分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:センシュー科学 Shodex UT 806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
PAS及び環式PASの分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:センシュー科学 Shodex UT 806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
<転化率の測定>
環式PASのPASへの転化率の算出は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記方法で行った。
環式PASのPASへの転化率の算出は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記方法で行った。
環式PASの加熱により得られた生成物約10mgを250℃で1−クロロナフタレン約5gに溶解させた。室温に冷却すると沈殿が生成した。孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いて1−クロロナフタレン不溶成分を濾過し、1−クロロナフタレン可溶成分を得た。得られた可溶成分のHPLC測定により、未反応の環式PAS量を定量し、環式PASのPASへの転化率を算出した。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
<PASの加熱時重量減少率の測定>
PASの加熱時重量減少率は熱重量分析機を用いて下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
(a)プログラム温度50℃で1分保持
(b)プログラム温度50℃から400℃まで昇温。この際の昇温速度20℃/分
PASの加熱時重量減少率は熱重量分析機を用いて下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件:
(a)プログラム温度50℃で1分保持
(b)プログラム温度50℃から400℃まで昇温。この際の昇温速度20℃/分
重量減少率△Wrは(b)の昇温において、100℃時の試料重量を基準として、330℃到達時の試料重量から下記式を用いて算出した。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%)
(ここでΔWrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である)。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%)
(ここでΔWrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である)。
<PASの色調測定>
粒径が2.00〜1.70mmのPASの粉粒物を用い、カラーメーター測定を行った。なお、ここで用いる粒径が2.00〜1.70mmの粉粒物は目開き4.75mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.18mm(いずれも75mm径円筒型)のふるい及びふるい振とう機(アズワン製、商品名ミニふるい振とう機MVS−1)を用いて、乾式の機械ふるい分け法にてふるい分けを実施して得た。具体的には、目開きの大きいふるいが上段になるようにふるいを重ね、最上段のふるいに測定粒子を20g入れ、ふるい振とう機で10分間振とうさせた。
装置:日本電色工業(株) SE−2000(分光式色彩計:JIS Z−8722、ASTM E 308、ASTM E 313、ASTM D 1925に準拠)
試料重量:7g。
粒径が2.00〜1.70mmのPASの粉粒物を用い、カラーメーター測定を行った。なお、ここで用いる粒径が2.00〜1.70mmの粉粒物は目開き4.75mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.18mm(いずれも75mm径円筒型)のふるい及びふるい振とう機(アズワン製、商品名ミニふるい振とう機MVS−1)を用いて、乾式の機械ふるい分け法にてふるい分けを実施して得た。具体的には、目開きの大きいふるいが上段になるようにふるいを重ね、最上段のふるいに測定粒子を20g入れ、ふるい振とう機で10分間振とうさせた。
装置:日本電色工業(株) SE−2000(分光式色彩計:JIS Z−8722、ASTM E 308、ASTM E 313、ASTM D 1925に準拠)
試料重量:7g。
<リン含量および遷移金属含量の測定方法>
PASを電気炉で加熱して得られた灰化物を用い、ICP質量分析法およびICP発光分光分析法で遷移金属の含有量を求めた。
PASを電気炉で加熱して得られた灰化物を用い、ICP質量分析法およびICP発光分光分析法で遷移金属の含有量を求めた。
参考例1 環式ポリフェニレンスルフィドの調製
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を14.03g(0.120モル)、96%水酸化ナトリウムを用いて調製した48重量%水溶液12.50g(0.144モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)615.0g(6.20モル)、及びp−ジクロロベンゼン(p−DCB)18.08g(0.123モル)を仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素ガス下に密封した。
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を14.03g(0.120モル)、96%水酸化ナトリウムを用いて調製した48重量%水溶液12.50g(0.144モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)615.0g(6.20モル)、及びp−ジクロロベンゼン(p−DCB)18.08g(0.123モル)を仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素ガス下に密封した。
400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約1時間かけて昇温した。この段階で、反応容器内の圧力はゲージ圧で0.35MPaであった。次いで200℃から270℃まで約30分かけて昇温した。この段階の反応容器内の圧力はゲージ圧で1.05MPaであった。270℃で1時間保持した後、室温近傍まで急冷してから内容物を回収した。
得られた内容物をガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、モノマーのp−DCBの消費率は93%、反応混合物中のイオウ成分がすべて環式PPSに転化すると仮定した場合の環式PPS生成率は18.5%であることがわかった。
得られた内容物500gを約1500gのイオン交換水で希釈したのちに平均目開き10〜16μmのガラスフィルターで濾過した。フィルターオン成分を約300gのイオン交換水に分散させ、70℃で30分攪拌し、再度前記同様の濾過を行う操作を計3回行い、白色固体を得た。これを80℃で一晩真空乾燥し、乾燥固体を得た。
得られた固形物を円筒濾紙に仕込み、溶剤としてクロロホルムを用いて約5時間ソックスレー抽出を行うことで固形分に含まれる低分子量成分を分離した。
抽出操作後に円筒濾紙内に残留した固形成分を70℃で一晩減圧乾燥しオフホワイト色の固体を約6.98g得た。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルよりこれはフェニレンスルフィド構造からなる化合物であり、また、重量平均分子量は6,300であった。
クロロホルム抽出操作にて得られた抽出液から溶媒を除去した後、約5gのクロロホルムを加えてスラリーを調製し、これを約300gのメタノールに攪拌しながら滴下した。これにより得られた沈殿物を濾過回収し、70℃で5時間真空乾燥を行い、1.19gの白色粉末を得た。この白色粉末は赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーにより成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、さらにMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末はp−フェニレンスルフィド単位を主要構成単位とし繰り返し単位数4〜13の環式化合物を約89重量%含み、本発明のポリアリーレンスルフィドの製造に好適に用いられる環式ポリフェニレンスルフィドであることが判明した。なお、GPC測定を行った結果、環式ポリフェニレンスルフィドは室温で1−クロロナフタレンに全溶であり、重量平均分子量は900であった。
参考例2 ポリフェニレンスルフィド樹脂の合成
オートクレーブに、47%水硫化ナトリウム118g(1モル)、96%水酸化ナトリウム42.9g(1.03モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)162g(1.64モル)、酢酸ナトリウム28.8g(0.35モル)、及びイオン交換水150gを仕込み、常圧で窒素を通じながら235℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水213g及びNMP4.0g(40.4ミリモル)を留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。硫化水素の飛散量は25ミリモルであった。
オートクレーブに、47%水硫化ナトリウム118g(1モル)、96%水酸化ナトリウム42.9g(1.03モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)162g(1.64モル)、酢酸ナトリウム28.8g(0.35モル)、及びイオン交換水150gを仕込み、常圧で窒素を通じながら235℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水213g及びNMP4.0g(40.4ミリモル)を留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。硫化水素の飛散量は25ミリモルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)148g(1.01モル)、NMP131g(1.33モル)を追添加し、反応容器を窒素ガス下に密封した。400rpmで撹拌しながら、200℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温して、270℃で反応を140分間継続した。その後、240℃まで20分かけて冷却しながら、水33.3g(1.85モル)を系内に注入し、次いで240℃から210℃まで 0.4℃/分の速度で冷却した。その後室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、400ミリリットルのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別した。得られた粒子を再度NMP480ミリリットルで85℃で洗浄した。その後840ミリリットルの温水で5回洗浄、濾別し、PPSポリマー粒子を得た。これを、窒素気流下150℃で5時間加熱後、150℃で一晩減圧乾燥した。
得られたPPSの重量平均分子量は55000、分散度は3.80であることがわかった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.25%であった。
参考例3 環式ポリフェニレンスルフィドの調製
攪拌機を具備した70Lのステンレス製オートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を8.17kg(70.0モル)、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液6.13kg(73.6モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.44kg(116モル)、及びp−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.29kg(70.0モル)を仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素ガス下に密封した。
攪拌機を具備した70Lのステンレス製オートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を8.17kg(70.0モル)、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液6.13kg(73.6モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.44kg(116モル)、及びp−ジクロロベンゼン(p−DCB)10.29kg(70.0モル)を仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素ガス下に密封した。
400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約1時間かけて昇温した。この段階で、反応容器内の圧力はゲージ圧で0.36MPaであった。次いで200℃から270℃まで約30分かけて昇温した。この段階の反応容器内の圧力はゲージ圧で1.10MPaであった。270℃で1時間保持した後、室温近傍まで急冷してから内容物を回収した。
得られた内容物をガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、モノマーのp−DCBの消費率は92%、反応混合物中のイオウ成分がすべて環式PPSに転化すると仮定した場合の環式PPS生成率は18.2%であることがわかった。
得られた内容物50kgを約150kgのイオン交換水で希釈したのちに平均目開き10〜16μmのガラスフィルターで濾過した。フィルターオン成分を約30kgのイオン交換水に分散させ、70℃で30分攪拌し、再度前記同様の濾過を行う操作を計3回行い、白色固体を得た。これを80℃で一晩真空乾燥し、乾燥固体を得た。
得られた固形物を円筒濾紙に仕込み、溶剤としてクロロホルムを用いて約5時間ソックスレー抽出を行うことで固形分に含まれる低分子量成分を分離した。
抽出操作後に円筒濾紙内に残留した固形成分を70℃で一晩減圧乾燥しオフホワイト色の固体を得た。分析の結果、赤外分光分析における吸収スペクトルよりこれはフェニレンスルフィド構造からなる化合物であり、また、重量平均分子量は6,000であった。
クロロホルム抽出操作にて得られた抽出液から溶媒を除去した後、クロロホルムを加えてスラリーを調製し、これをメタノールに攪拌しながら滴下した。これにより得られた沈殿物を濾過回収し、70℃で5時間真空乾燥を行い、白色粉末を得た。この白色粉末は赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーにより成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、さらにMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末はp−フェニレンスルフィド単位を主要構成単位とし繰り返し単位数4〜13の環式化合物を約87重量%含み、本発明のポリアリーレンスルフィドの製造に好適に用いられる環式ポリフェニレンスルフィドであることが判明した。なお、GPC測定を行った結果、環式ポリフェニレンスルフィドは室温で1−クロロナフタレンに全溶であり、重量平均分子量は900であった。
[実施例1]
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して次亜リン酸ナトリウムをリン原子基準で1モル%配合した粉末30gを、ガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。340℃に調温した電気炉内にアンプルを静置し3時間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は55であることが分かった。
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して次亜リン酸ナトリウムをリン原子基準で1モル%配合した粉末30gを、ガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。340℃に調温した電気炉内にアンプルを静置し3時間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は55であることが分かった。
生成物に濃度が0.2wt%になるよう1−クロロナフタレンを加え、250℃にて1分間の予備加熱後4分間撹拌したところ、一部不溶であったが赤外分光分析より不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくリン化合物であることがわかり、生成したポリフェニレンスルフィド成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は84%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は50000、分散度は2.2であることが分かった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.08%であった。
[実施例2]
実施例1で次亜リン酸ナトリウムを次亜リン酸カルシウム(リン原子基準で1モル%配合)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は55であることが分かった。
実施例1で次亜リン酸ナトリウムを次亜リン酸カルシウム(リン原子基準で1モル%配合)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は55であることが分かった。
生成物に濃度が0.2wt%になるよう1−クロロナフタレンを加え、250℃にて1分間の予備加熱後4分間撹拌したところ、一部不溶であったが赤外分光分析より不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくリン化合物であることがわかり、生成したポリフェニレンスルフィド成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は86%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は51000、分散度は2.1であることが分かった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.09%であった。
[実施例3]
参考例3で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して次亜リン酸カルシウムをリン原子基準で1モル%配合した粉末30gを、ガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。340℃に調温した電気炉内にアンプルを静置し3時間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は57であることが分かった。
参考例3で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して次亜リン酸カルシウムをリン原子基準で1モル%配合した粉末30gを、ガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。340℃に調温した電気炉内にアンプルを静置し3時間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は57であることが分かった。
生成物に濃度が0.2wt%になるよう1−クロロナフタレンを加え、250℃にて1分間の予備加熱後4分間撹拌したところ、一部不溶であったが赤外分光分析より不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくリン化合物であることがわかり、生成したポリフェニレンスルフィド成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は91%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は52800、分散度は2.3であることが分かった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.05%であった。
[実施例4]
実施例3で次亜リン酸カルシウムの量をリン原子基準で5モル%にした以外は実施例3と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は73であることが分かった。
実施例3で次亜リン酸カルシウムの量をリン原子基準で5モル%にした以外は実施例3と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は73であることが分かった。
生成物に濃度が0.2wt%になるよう1−クロロナフタレンを加え、250℃にて1分間の予備加熱後4分間撹拌したところ、一部不溶であったが赤外分光分析より不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくリン化合物であることがわかり、生成したポリフェニレンスルフィド成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は85%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は52500、分散度は2.3であることが分かった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.10%であった。
[実施例5]
実施例3で次亜リン酸カルシウムの量をリン原子基準で0.1モル%にした以外は実施例3と同様の操作を行い、茶色みのある象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は52であることが分かった。
実施例3で次亜リン酸カルシウムの量をリン原子基準で0.1モル%にした以外は実施例3と同様の操作を行い、茶色みのある象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は52であることが分かった。
生成物に濃度が0.2wt%になるよう1−クロロナフタレンを加え、250℃にて1分間の予備加熱後4分間撹拌したところ、一部不溶であったが赤外分光分析より不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくリン化合物であることがわかり、生成したポリフェニレンスルフィド成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は89%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は46800、分散度は2.2であることが分かった。
[実施例6]
実施例3で次亜リン酸カルシウムの量をリン原子基準で0.01モル%にした以外は実施例3と同様の操作を行い、茶色みのある象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は51であることが分かった。
実施例3で次亜リン酸カルシウムの量をリン原子基準で0.01モル%にした以外は実施例3と同様の操作を行い、茶色みのある象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は51であることが分かった。
[実施例7]
実施例3で次亜リン酸カルシウムを亜リン酸カルシウム(リン原子基準で1モル%配合)とした以外は実施例3と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は55であることが分かった。
実施例3で次亜リン酸カルシウムを亜リン酸カルシウム(リン原子基準で1モル%配合)とした以外は実施例3と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は55であることが分かった。
生成物に濃度が0.2wt%になるよう1−クロロナフタレンを加え、250℃にて1分間の予備加熱後4分間撹拌したところ、一部不溶であったが赤外分光分析より不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくリン化合物であることがわかり、生成したポリフェニレンスルフィド成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は89%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は45300、分散度は2.1であることが分かった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.05%であった。
[実施例8]
実施例7で亜リン酸カルシウムの量をリン原子基準で5モル%とした以外は実施例7と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は63であることが分かった。
実施例7で亜リン酸カルシウムの量をリン原子基準で5モル%とした以外は実施例7と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は63であることが分かった。
生成物に濃度が0.2wt%になるよう1−クロロナフタレンを加え、250℃にて1分間の予備加熱後4分間撹拌したところ、一部不溶であったが赤外分光分析より不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくリン化合物であることがわかり、生成したポリフェニレンスルフィド成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は78%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は40000、分散度は2.0であることが分かった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.06%であった。
[実施例9]
実施例8で亜リン酸カルシウムを亜リン酸水素2ナトリウム・5水和物(リン原子基準で5モル%)とした以外は実施例8と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は57であることが分かった。
実施例8で亜リン酸カルシウムを亜リン酸水素2ナトリウム・5水和物(リン原子基準で5モル%)とした以外は実施例8と同様の操作を行い、象牙色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は57であることが分かった。
生成物に濃度が0.2wt%になるよう1−クロロナフタレンを加え、250℃にて1分間の予備加熱後4分間撹拌したところ、一部不溶であったが赤外分光分析より不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくリン化合物であることがわかり、生成したポリフェニレンスルフィド成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は71%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は41000、分散度は2.0であることが分かった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.12%であった。
[比較例1]
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィド30gを、ガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。340℃に調温した電気炉内にアンプルを静置し180分加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、薄茶色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は43であることが分かった。
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィド30gを、ガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。340℃に調温した電気炉内にアンプルを静置し180分加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、薄茶色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は43であることが分かった。
生成物は1−クロロナフタレンに全溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は91%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は49000、分散度は2.0であることが分かった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.04%であった。
[比較例2]
参考例3で得られた環式ポリフェニレンスルフィド30gを、ガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。340℃に調温した電気炉内にアンプルを静置し180分加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、薄茶色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は40であることが分かった。
参考例3で得られた環式ポリフェニレンスルフィド30gを、ガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。340℃に調温した電気炉内にアンプルを静置し180分加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、薄茶色の固体を得た。カラーメーター測定の結果、L*値は40であることが分かった。
生成物は1−クロロナフタレンに全溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は91%であり、GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)に由来するピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は47900、分散度は2.2であることが分かった。得られた生成物の加熱時重量減少率の測定を行った結果、ΔWrは0.05%であった。
なお、実施例1から9および比較例1および2で得られたPASを電気炉で加熱し得られた灰化物を用い、ICP質量分析法およびICP発光分光分析法で遷移金属含量を求めたところ、PASに含まれる遷移金属は鉄2ppm、ニッケル0.9ppm、クロム0.1ppmであった。すなわち、遷移金属含量はPAS中の硫黄原子に対し0.0006モル%であった。同様にしてリン含量を求めたところ、実施例1から3と7はPAS中の硫黄原子に対し約1モル%、実施例4、8と9では約5モル%、実施例5では約0.1モル%、実施例6では約0.01モル%、比較例1および比較例2では検出されなかった。
実施例1から9に例示したL*値と比較例1から2に示したL*値の比較から、本発明では亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩存在下で加熱することで良色調のPPSを得られることが分かった。
実施例6と比較例2のL*値の比較から、次亜リン酸金属塩の次亜リン酸カルシウムは0.01モル%の存在量でも色調良化の効果が認められた。なお実施例3から5を比較すると、実施例4において最も高いL*値が見られた。環式PASに添加した次亜リン酸カルシウムの量が多いほど、色調良化の効果が強く発現した結果と推察される。実施例7から8を比較すると、実施例8において高いL*値が見られた。環式PASに添加した亜リン酸カルシウムの量が多いほど、色調良化の効果が強く発現した結果と推察される。
実施例3と実施例7および実施例4と実施例8においてL*値を比較すると、実施例3および実施例4において高いL*値が見られた。次亜リン酸金属塩の次亜リン酸カルシウムの方が亜リン酸金属塩の亜リン酸カルシウムよりも高い色調良化の効果を有しているためと推察される。
実施例3と実施例7および実施例4と実施例8においてL*値を比較すると、実施例3および実施例4において高いL*値が見られた。次亜リン酸金属塩の次亜リン酸カルシウムの方が亜リン酸金属塩の亜リン酸カルシウムよりも高い色調良化の効果を有しているためと推察される。
また実施例1から8に例示した加熱時重量減少率と参考例2に示した加熱時重量減少率の比較から、本発明では従来法で得られるPPSよりも加熱時重量減少率が少ないPPSを得られることがわかった。
実施例1から9の転化率の値より、亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩の存在下でも転化反応を阻害しないことが分かった。
本発明のPASは、耐熱性、耐酸化性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、特に従来のPASと比べて分子量分布が狭く、加熱時のガス量が少なく、耐酸化性および色調に優れるため、成形加工性や機械特性及び電気的特性が極めて優れており、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形用途のみならず、押出成形により、シート、フィルム、繊維及びパイプなどの押出成形品に成形,使用することができる。
Claims (9)
- 環式ポリアリーレンスルフィドを、亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩存在下に300℃を超える温度で加熱するポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し、0.01〜20モル%の亜リン酸金属塩および/または次亜リン酸金属塩の存在下に加熱する請求項1に記載の環式ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し、0.001モル%以下の遷移金属存在下で加熱する請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 加熱を320℃以上で行う請求項1から3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 環式ポリフェニレンスルフィドの重量平均分子量が10000未満である請求項1から5のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
- 下記(1)から(5)を満たすポリアリーレンスルフィド。
(1)重量平均分子量が10000以上である。
(2)重量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が2.5以下である。
(3)加熱した際の重量減少が下記式を満たす。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100≦0.18(%)
(ここでΔWrは重量減少率(%)であり、常圧の非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際に、100℃到達時の試料重量(W1)を基準とした330℃到達時の試料重量(W2)から求められる値である)
(4)リン原子の含有量がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.01〜20モル%となる範囲である。
(5)遷移金属の含有量がポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対し0.001モル%以下である。 - L*値が50以上の請求項7に記載のポリアリーレンスルフィド。
- L*値が55以上の請求項7に記載のポリアリーレンスルフィド。
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- 2016-04-25 JP JP2016086933A patent/JP2016210978A/ja active Pending
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