JP2016210848A - 超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた引張弾性率を有する超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムおよびその製造方法の提供。【解決手段】超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、超高分子量ポリエチレン粒子を同時に焼結および圧縮して得られ、23℃で170MPa以上の引張弾性率を有し、さらに、23℃で10.0MPa以上の引張強度を有し、5〜40%の空孔率を有し、厚み20μmに換算した場合における0.5N以上の突刺強度を有する多孔質フィルム。超高分子量ポリエチレン粒子を分散媒に分散させた分散液を基材に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥して、超高分子量ポリエチレン層を形成する第1工程と、前記超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮する第2工程と、を備える超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムおよびその製造方法、詳しくは、微細な空孔を多数有する超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムおよびその製造方法に関する。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、微細な空孔を多数有する多孔質フィルムであって、超純水の製造、薬液の精製、水処理、集塵フィルターなどに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルムや、二次電池などに使用する電池用セパレータ、さらには、シート状の部品を輸送する際の吸着固定シートなど各種の分野で利用されている。
そのような超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法として、例えば、超高分子量ポリエチレン粒子を溶媒に分散させた分散液を作製する工程と、分散液をフィルム上に塗布して塗布層を形成する工程と、塗布層を焼成する工程と、塗布層に含まれる溶媒を除去する工程とを有する多孔質シートの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、(I)超高分子量ポリエチレン粒子、水、界面活性剤および増粘剤を混合して、超高分子量ポリエチレン粒子を水に分散させた分散液を準備する工程と、(II)分散液をフィルム上に塗布して、分散液の塗布層を形成する工程と、(III)塗布層を焼成する工程と、(IV)フィルムを剥離する工程と、を含む、多孔質シートの製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、超高分子量ポリエチレン粉体と分散剤と界面活性剤とを混合した分散液をキャリアシート上に塗布して塗膜を形成する塗工工程と、塗膜を加熱することにより超高分子量ポリエチレン粉体を焼結させてシート状多孔質体を得る焼結工程と、シート状多孔質体からキャリアシートを剥がす剥離工程と、シート状多孔質体に残存した分散剤および界面活性剤を除去する除去工程と、シート状多孔質体を厚み方向に圧縮して、超高分子量ポリエチレン多孔質シートを得る第2工程と、を含む超高分子量ポリエチレン多孔質シートの製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
特開2007−229943号公報 特開2010−247446号公報 特開2009−149730号公報
しかし、特許文献1および2に記載の製造方法により得られる多孔質シートは、焼成によって得られるので、引張弾性率が不十分であるという不具合がある。
また、特許文献2および3に記載の製造方法により得られる多孔質シートでは、界面活性剤を除去する除去工程を実施するので、製造コストが増大するという不具合がある。一方、例えば、除去工程を実施しないことも試案されるが、その場合には、残存する界面活性剤に起因して特許文献3における第2工程(圧縮工程)を確実に実施することができないという不具合がある。
さらに、特許文献3に記載の製造方法では、焼結工程の後に、第2工程を実施するので、引張弾性率が不十分であるという不具合がある。
本発明の目的は、優れた引張弾性率を有する超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、
[1]
超高分子量ポリエチレン粒子を同時に焼結および圧縮して得られ、23℃で170MPa以上の引張弾性率を有することを特徴とする、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム、
[2]
23℃で10.0MPa以上の引張強度を有することを特徴とする、上記した(1)に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム、
[3]
5%以上40%以下の空孔率を有することを特徴とする、上記した(1)または(2)に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム、
[4]
厚み20μmに換算した場合における0.5N以上の突刺強度を有することを特徴する、上記した(1)〜(3)のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム、
[5]
上記した(1)〜(4)のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを製造する方法であり、超高分子量ポリエチレン粒子を分散媒に分散させた分散液を基材に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥して、超高分子量ポリエチレン層を形成する第1工程と、前記超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮する第2工程とを備えることを特徴とする、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法、
[6]
前記分散液は、界面活性剤を含有せず、前記超高分子量ポリエチレン粒子および前記分散媒を含有することを特徴とする、上記した(5)に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法、
[7]
前記分散媒が、沸点が100℃未満である低沸点分散媒であることを特徴とする、上記した(5)または(6)に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法、
[8]
前記第2工程では、前記超高分子量ポリエチレン層を、カレンダー装置または加熱プレス装置により圧縮することを特徴とする、上記した(5)〜(7)のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法。
[9]
前記第2工程における圧縮率が、5%以上50%以下であることを特徴とする、上記した(5)〜(8)のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法、
[10]
前記第1工程の後であって、前記第2工程の前に、前記超高分子量ポリエチレン層を保護フィルムで保護することにより、前記基材と、前記超高分子量ポリエチレン層と、前記保護フィルムとを順に備える積層フィルムを作製する工程をさらに備え、前記第2工程では、前記積層フィルムを同時に焼成および圧縮することを特徴とする、上記した(5)〜(9)のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法
である。
本発明の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法により得られる超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、優れた引張弾性率を有する。
図1は、焼結および圧縮の前の積層フィルムの斜視図を示す。
1. 超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムおよびその製造方法
本発明の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、超高分子量ポリエチレン粒子を同時に焼結および圧縮して得られる。
具体的には、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、超高分子量ポリエチレン粒子を分散媒に分散させた分散液を基材に塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥して、超高分子量ポリエチレン層を形成する第1工程と、超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮する第2工程とを備える製造方法によって、得られる。
なお、本発明において「粒子」は1つの粒子に限定されることなく、複数の粒子が集合しているもの、例えば「粉末」や「粉体」と言われる態様を含むものとする。
2. 第1工程
第1工程では、まず、超高分子量ポリエチレン粒子を分散媒に分散させて、分散液を調製する。
超高分子量ポリエチレン粒子は、超高分子量ポリエチレンの粒子からなる。
超高分子量ポリエチレンは、エチレンのホモポリマーである。超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量は、例えば、50万以上、また、例えば、300万以下である。また、超高分子量ポリエチレンの融点は、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、140℃以下である。
超高分子量ポリエチレン粒子の平均粒子径は、例えば、10μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、30μm以下、より好ましくは、27.5μm以下である。超高分子量ポリエチレン粒子の平均粒子径が上記した上限以下であれば、個々の超高分子量ポリエチレン粒子同士の接触面積が増大し、そのため、優れた引張弾性率を有する超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得ることができる。一方、超高分子量ポリエチレン粒子の平均粒子径が上記した下限以上であれば、分散液調製時のハンドリング性に優れる。
分散媒としては、特に限定されず、例えば、超高分子量ポリエチレン粒子を膨潤させず、かつ、超高分子量ポリエチレン粒子が溶解しない分散媒が挙げられる。具体的には、分散媒としては、例えば、水、例えば、100℃未満の沸点を有する低沸点分散媒、例えば、100℃超過の沸点を有する高沸点分散媒が挙げられる。好ましくは、水、低沸点分散媒、より好ましくは、乾燥を短時間に実施する観点から、低沸点分散媒が挙げられる。
低沸点分散媒は、好ましくは、90℃以下、より好ましくは、80℃以下、また、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上の沸点を有する。低沸点分散媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどの、炭素数1以上、3以下の1価アルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどの、炭素数3以上、4以下のケトン、例えば、酢酸エチルなどのエステルなどが挙げられる。好ましくは、1価アルコールが挙げられる。
分散液を調製するには、超高分子量ポリエチレン粒子と分散媒とを配合して、それらを混合する。具体的には、超高分子量ポリエチレン粒子を、分散液(超高分子量ポリエチレン粒子と分散媒との総和)に対する配合割合が、例えば、10質量%以上、好ましくは、40質量%以上、また、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下となるように、分散媒に配合する。
これにより、特許文献2および3に記載されるような界面活性剤を含有せず、超高分子量ポリエチレン粒子および分散媒を含有する分散液を調製する。具体的には、超高分子量ポリエチレン粒子と、分散媒とのみからなる分散液を調製する。このような分散液を調製すれば、界面活性剤に起因する個々の超高分子量ポリエチレン粒子同士の焼結および圧縮における滑りを防止することができる。
第1工程では、次いで、分散液を基材の表面に塗布する。
基材は、平坦な表面および平坦な裏面を有する基材フィルムであって、例えば、耐熱性に優れる耐熱性基材フィルムが挙げられる。基材フィルムとしては、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、例えば、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。好ましくは、ポリエステルフィルムが挙げられる。また、基材の表面には、分散液との親和性を高めるために、親水化処理を施してもよい。親水化処理の方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、親水性モノマーによるグラフト処理などが挙げられる。
分散液を基材に塗布する方法は、必要とする厚みや必要とする塗布面積を確保できる方法であれば特に限定されない。具体的には、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などが挙げられる。
上記した方法によって、分散液を基材に塗布して、塗膜を形成する。
塗膜の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、80μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、400μm以下である。塗膜の厚みが上記した下限以上であれば、均一な厚みを有する塗膜を得ることができ、そのため、均一な厚みを有する超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得ることできる。一方、塗膜の厚みが上記した下限以上であれば、後で詳述する第2工程において、塗膜の厚み方向中心部分まで温度が十分に伝達され、超高分子量ポリエチレン粒子の均一な融着を達成でき、所望の厚みおよび優れた引張弾性率を有する超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得ることができる。
なお、塗膜は、界面活性剤を含有せず、超高分子量ポリエチレン粒子と、分散媒とを含有している。好ましくは、塗膜は、超高分子量ポリエチレン粒子と、分散媒とのみからなる。
その後、第1工程では、塗膜を乾燥させる。つまり、塗膜に含有される分散媒を除去する。
乾燥条件は、分散媒の種類によって適宜選択され、例えば、第2工程の焼結および圧縮における温度より低い温度に調整される。具体的には、乾燥温度は、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上であり、また、例えば、200℃以下、好ましくは、160℃以下、より好ましくは、140℃未満、さらに好ましくは、130℃以下である。
これによって、層状をなす超高分子量ポリエチレン層を、基材の表面に形成する。超高分子量ポリエチレン層は、超高分子量ポリエチレン粒子からなり、より具体的には、超高分子量ポリエチレン粒子の凝集体からなる。
超高分子量ポリエチレン層は、例えば、分散媒および界面活性剤を実質的に含有せず、つまり、超高分子量ポリエチレン層は、本発明の効果を損なわない範囲の程度の分散媒および界面活性剤の含有を許容する。具体的には、超高分子量ポリエチレン層における分散液の含有割合は、例えば、0.1質量%以下、好ましくは、0.01質量%以下である。超高分子量ポリエチレン層における界面活性剤の含有割合は、例えば、0.01質量%以下、好ましくは、0.001質量%以下である。
好ましくは、超高分子量ポリエチレン層は、分散媒および界面活性剤を含有せず、超高分子量ポリエチレン粒子のみからなる。つまり、超高分子量ポリエチレン層における分散媒および界面活性剤の含有割合は、ともに、0質量%である。
超高分子量ポリエチレン層の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、400μm以下、好ましくは、300μm以下である。
これによって、第1工程を実施する。
3. 第2工程
この方法では、第1工程の後に、第2工程を実施する。
第2工程では、超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮する。超高分子量ポリエチレン層に対して焼結および圧縮を同時に実施するには、超高分子量ポリエチレン層に対する焼結と圧縮とが、同時に実施されている時間が確保されれば、焼結および圧縮の開始タイミングおよび終了タイミングが同時である必要はない。
具体的には、焼結時間が、圧縮時間を包含してもよく、つまり、超高分子量ポリエチレン層を焼結している間(すなわち、焼結の開始と終了との間)に、超高分子量ポリエチレン層に対する圧縮を開始および終了させてもよい。
あるいは、圧縮時間が、焼結時間を包含してもよく、つまり、超高分子量ポリエチレン層を圧縮している間に、超高分子量ポリエチレン層に対する焼結を開始および終了させてもよい。
さらには、焼結時間と圧縮時間とが互いに部分的に重複してもよく、つまり、例えば、まず、焼結を開始し、次いで、圧縮を開始、次いで、焼結を終了させ、その後、圧縮を終了させてもよい。または、まず、圧縮を開始し、次いで、焼結を開始、次いで、圧縮を終了させ、その後、焼結を終了させてもよい。
さらに、焼結時間と圧縮時間とが互いに完全重複してもよく、焼結および圧縮を同時に開始し、その後、焼結および圧縮を同時に終了させてもよい。
好ましくは、焼結時間と圧縮時間とを互いに完全重複させる。
また、焼結および圧縮の温度は、例えば、同一であって、具体的には、例えば、140℃以上、好ましくは、150℃以上であり、また、例えば、180℃以下、好ましくは、160℃である。
超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮するには、例えば、カレンダー装置、加熱プレス装置などの加熱圧縮装置が用いられる。
カレンダー装置は、所定の間隙Tgapを隔てて対向配置され、加熱可能な2つのロールを備えている。
また、2つのロールのそれぞれは、所望の温度に予め加熱されている。
なお、カレンダー装置は、2つのロールを備えるラミネータ(ラミネート装置)を含んでいる。
加熱プレス装置は、圧縮可能および加熱可能に構成され、金属などからなる2つの平板を備えている。加熱プレス装置は、圧縮時に、所定の間隙Tgapを確保するための、圧縮機構を備えている。
好ましくは、カレンダー装置が用いられる。つまり、カレンダー装置によって、超高分子量ポリエチレン層を焼結および圧縮(具体的には、圧延)する。
第2工程において、上記した加熱圧縮装置で、超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮するには、まず、基材の表面に形成された超高分子量ポリエチレン層の上に、保護フィルムを積層する。
保護フィルムとしては、基材で例示した基材フィルムが用いられる。
これによって、基材と、超高分子量ポリエチレン層と、保護フィルムとを順に備える積層フィルムを作製する。積層フィルムは、好ましくは、基材と、その上に配置される超高分子量ポリエチレン層と、その上に配置される保護フィルムとのみからなる。保護フィルムを超高分子量ポリエチレン層の上に配置することにより、焼結および圧縮時に超高分子量ポリエチレン層を保護することができる。
なお、積層フィルムには、基材と保護フィルムとを固定するための感圧接着テープを備えることもできる。図1に示すように、例えば、積層フィルム1が(長尺の)矩形状である場合には、感圧接着テープ5を、基材2および保護フィルム4の端部6(長尺方向一端部)に貼り付け、これによって、基材2および保護フィルム4を固定する。感圧接着テープ5は、例えば、アクリル系やウレタン系の接着剤などからなる感圧接着層(図示せず)と、これを支持し、ポリイミドなどからなる支持層(図示せず)とを備える。
そして、積層フィルムを、上記した圧縮機を用いて、同時に焼結および圧縮する。
カレンダー装置によって積層フィルムを同時に焼結および圧縮する場合には、長尺状の積層フィルムを用いることができる。つまり、図1に示すように、長尺状の基材2と、長尺状の超高分子量ポリエチレン層3と、長尺状の保護フィルム4とを順に備える積層フィルム1を、カレンダー装置7によって、連続して、焼結および圧縮を同時に実施する。また、長尺状の積層フィルム1を、その先端部6(感圧接着テープ5が固定された端部)から、2つのロール8間に通過させる。
カレンダー装置によって積層フィルムを同時に焼結および圧縮する場合には、カレンダー装置におけるロールの表面温度を、例えば、140℃以上、好ましくは、150℃以上、また、例えば、180℃以下、好ましくは、160℃に設定する。
また、ロール回転速度を、例えば、0.1m/分以上、好ましくは、0.2m/分以上、また、例えば、0.5m/分以下、好ましくは、0.4m/分以下に設定する。
また、ロール間の線圧を、例えば、10N/mm以上、好ましくは、20N/mm以上、また、例えば、100N/mm以下、好ましくは、70N/mm以下に設定する。
2つのロール間の間隙Tgapは、積層フィルムの厚みTallより小さくなるように、設定されており、好ましくは、下記式で定義される圧縮率Cが、5%以上50%以下となるように、設定される。
圧縮率C[%]=(1−Tgap/Tall)×100
なお、圧縮率Cの数値が高いということは、圧縮の程度が高いこと(つまり、超高分子量ポリエチレン層を十分に圧縮したこと)を意味する。一方、圧縮率Cの数値が低いということは、圧縮の程度が低いこと(つまり、超高分子量ポリエチレン層を十分に圧縮していないこと)を意味する。
また、圧縮率Cは、好ましくは超高分子量ポリエチレン粒子の平均粒子径に対応して調整される。具体的には、超高分子量ポリエチレン粒子の平均粒子径が、好ましくは、30μm未満、より好ましくは、25μm以下、また、例えば、10μm以上であれば、圧縮率Cを、好ましくは、30%以上、より好ましくは、40%以上、また、好ましくは、50%以下、より好ましくは、45%以下に設定する。
また、超高分子量ポリエチレン粒子の平均粒子径が、好ましくは、30μm以上、また、好ましくは、50μm以下、より好ましくは、40μm以下であれば、圧縮率Cを、好ましくは、10%以上、より好ましくは、15%以上、また、好ましくは、40%未満、より好ましくは、30%以下、さらに好ましくは、20%以下に設定する。
圧縮率Cが上記した下限以上であれば、優れた引張弾性率の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得ることができる。一方、圧縮率Cが上記した上限以下であれば、ともに、良好な透気度および多孔質性を超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムに付与することができる。
積層フィルムを上記した加熱圧縮装置により同時に焼結および圧縮すること(好ましくは、カレンダー装置における2本のロールの間隙Tgapに通過させること)により、積層フィルムにおける超高分子量ポリエチレン層が焼結しながら、圧縮される。そうすると、超高分子量ポリエチレン粒子同士は、複数の空孔を形成しながら、互いに融着する。
これによって、超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮し、そして、超高分子量ポリエチレン層が超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムとなる。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、超高分子量ポリエチレンからなる融着相と、融着相中に均一に分散する空孔(気泡)とを含有している。
第2工程では、次いで、保護フィルムおよび基材を超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムから剥離する。
これによって、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムが得られる。
4. 超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの物性
(1) 引張弾性率
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、23℃で170MPa以上の引張弾性率を有する。また、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、カレンダー装置によって得られた場合には、23℃で170MPa以上の、カレンダー装置の少なくとも搬送方向(MD、積層フィルムの長尺方向)における引張弾性率を有する。好ましくは、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、カレンダー装置によって得られた場合には、23℃で170MPa以上のMDにおける引張弾性率、および、23℃で170MPa以上のカレンダー装置の幅方向(積層フィルムの厚み方向およびMDに対して直交する方向、TD)における引張弾性率を有する。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの引張弾性率が170MPa未満であれば、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの機械強度が不十分である。
具体的には、23℃のMDにおける引張弾性率は、好ましくは、200MPa以上、より好ましくは、250MPa以上、さらに好ましくは、280MPa以上であり、また、例えば、500MPa以下である。また、23℃のTDにおける引張弾性率は、好ましくは、100MPa以上、より好ましくは、200MPa以上、さらに好ましくは、225MPa以上であり、また、例えば、400MPa以下である。
MDおよび/またはTDにおける引張弾性率が上記した下限以上であれば、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムが優れた機械強度を有することができる。一方、MDおよび/またはTDにおける引張弾性率が上記した上限以下であれば、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムが良好な多孔質性、ひいては、良好な透気性を確保することができる。
また、MDにおける引張弾性率の、TDにおける引張弾性率に対する比(つまり、MDにおける引張弾性率/TDにおける引張弾性率)は、例えば、1.0以上、好ましくは、1.0超過、より好ましくは、1.25以上であり、また、例えば、2.0以下、好ましくは、1.5以下である。
MDおよびTDの両方向における引張弾性率は、後の実施例において詳述される。
(2) 引張強度
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、例えば、23℃で10.0MPa以上の引張強度を有する。また、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、カレンダー装置によって得られた場合には、23℃で10.0MPa以上の、カレンダー装置の少なくともMDにおける引張強度を有する。好ましくは、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、カレンダー装置によって得られた場合には、23℃で10.0MPa以上のMDにおける引張強度、および、23℃で10.0MPa以上のカレンダー装置のTDにおける引張強度を有する。
具体的には、23℃のMDおよびTDにおける引張強度は、好ましくは、11.0MPa以上、より好ましくは、12.0MPa以上、さらに好ましくは、13.0MPa以上、とりわけ好ましくは、14.0MPa以上であり、また、例えば、30.0MPa以下である。
引張強度(MDおよび/またはTDにおける引張強度を含む)が上記した下限以上であれば、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムが優れた機械強度を有することができる。一方、MDおよび/またはTDにおける引張強度が上記した上限以下であれば、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムが良好な多孔質性、ひいては、良好な透気性を確保することができる。
また、MDにおける引張強度の、TDにおける引張強度に対する比(つまり、MDにおける引張強度/TDにおける引張強度)は、例えば、0.8以上、好ましくは、0.9以上であり、また、例えば、1.5以下、好ましくは、1.0以下、より好ましくは、1.0未満、さらに好ましくは、0.95以下である。
MDおよびTDの両方向における引張強度は、後の実施例において詳述される。
(3) 厚みT1
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの厚みT1は、例えば、50μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、100μm未満である。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの厚みT1が上記した下限以上であれば、高強度、肉厚型、クッション性が求められる分野で超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを好適に用いることができる。一方、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの厚みT1が上記した上限以下であれば、薄型化が要求される分野で超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを好適に用いることができる。
(4) 突刺強度
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、例えば、厚み20μmに換算した場合における0.5N以上の突刺強度を有する。また、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの、厚み20μmに換算した場合における突刺強度は、好ましくは、0.6N以上、より好ましくは、0.7N以上、さらに好ましくは、0.8N以上であり、また、例えば、1.5N以下である。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの突刺強度が上記した下限以上であれば、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムが優れた機械強度を有することができる。一方、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの突刺強度が上記した上限以下であれば、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムが良好な多孔質性、ひいては、良好な透気性を確保することができる。
なお、突刺強度L1は、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの厚みT1に比例して変動するので、厚み20μmの超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの突刺強度L2を算出して、これを評価する。具体的には、後述する測定により得られた突刺強度L1に、厚みの比率(=20/T1)を乗じた値を、厚み20μmの超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムとしたときの値L2として算出する。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの、厚み20μmに換算した場合における突刺強度L2は、後の実施例において詳述される。
(5) 空孔率
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、例えば、5%以上40%以下の空孔率を有する。また、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの空孔率は、好ましくは、10%以上、好ましくは、15%以上、より好ましくは、20%以上であり、また、好ましくは、40%以下、より好ましくは、30%以下、さらに好ましくは、25%以下である。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの空孔率が上記した範囲であれば、優れた機械強度を確保しながら、良好な多孔質性、ひいては、良好な透気性を確保することができる。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの空孔率は、後の実施例において詳述される。
なお、空孔率が0%であれば、超高分子量ポリエチレンフィルムが無孔質であることを意味し、つまり、本発明の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムではない。
(6) 透気度
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの透気度は、例えば、60,000秒/100mL以下、好ましくは、10,000秒/100mL以下、より好ましくは、1,000秒/100mL以下、さらに好ましくは、さらには、30秒/100mL以下、さらには、20秒/100mL以下、さらには、10秒/100mL以下であり、また、1秒/100mL以上である。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの透気度が上記した上限以下であれば、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、良好な透気性を確保することができる。一方、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの透気度が上記した下限以上であれば、良好な機械特性を維持することができる。
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの透気度は、後の実施例において詳述される。
5. 用途
このようにして得られた超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、例えば、超純水の製造、薬液の精製、水処理、集塵フィルターなどに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルムや、二次電池などに使用する電池用セパレータ、さらには、シート状の部品を輸送する際の吸着固定シートなどに用いられる。
6. 効果
上記した超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法により得られる超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、優れた引張弾性率を有する。
詳しくは、第2工程において、超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮するので、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、優れた引張弾性率を有する。
一方、第2工程において、焼結後に圧縮すると、機械強度が不足するという不具合がある。他方、第2工程において、圧縮後に焼結すると、個々の超高分子量ポリエチレン粒子同士の融着面積が小さくなり、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの機械強度が不足するという不具合がある。
また、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、上記した引張強度および/または突刺強度を有する。そのため、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、優れた機械強度を有しながら、良好な多孔質性、ひいては、良好な透気性を確保することができる。
第1工程における分散液が、超高分子量ポリエチレン粒子と、分散媒とからなれば、得られる超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムが、界面活性剤などの他の成分を含有しないので、それらを第2工程の後に除去(抽出など)する必要がないため、製造コストの増大を抑制することができる。
また、他の成分を除去しない場合には、超高分子量ポリエチレン層に残存する界面活性剤によって、第2工程における焼結および圧縮(より具体的には、カレンダー装置による圧縮)を確実に実施することができない場合がある。具体的には、超高分子量ポリエチレン粒子同士の密着性を確保できず、基材フィルムと保護フィルムとの間で超高分子量ポリエチレン粒子がスリップしてずれる現象や、基材フィルムと保護フィルムとの間からはみ出す現象を生じる。
しかし、分散液が、界面活性剤を含有せず、超高分子量ポリエチレン粒子および界面活性剤を含有すれば、上記した不具合を解消することができる。
また、分散媒が、沸点が100℃未満である低沸点分散媒であれば、乾燥を短時間に実施することができる。
さらに、第2工程では、超高分子量ポリエチレン層を、カレンダー装置により圧縮すれば、長尺の超高分子量ポリエチレン層を用いることができ、長尺の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを効率よく製造することができる。
また、第2工程における圧縮率Cが5%以上50%以下であれば、優れた引張弾性率の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得ることができるとともに、良好な透気度および多孔質性を超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムに付与することができる。
さらに、この方法は、第1工程の後であって、第2工程の前に、超高分子量ポリエチレン層を保護フィルムで保護することにより、基材と、超高分子量ポリエチレン層と、保護フィルムとを順に備える積層フィルムを作製する工程をさらに備え、また、第2工程では、積層フィルムを圧縮するので、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを保護しながら製造することができる。
7. 変形例
上記した方法では、超高分子量ポリエチレン層を保護フィルムにより保護して、積層フィルムを同時に焼結および圧縮したが、これに限定されず、超高分子量ポリエチレン層を保護フィルムで保護せずに、露出させた状態で、これを同時に焼結および圧縮することもできる。
さらに、上記した方法では、超高分子量ポリエチレン層から保護フィルムおよび基材の両方を剥離している。しかし、これに限定されず、それら両方を剥離せず、表面および裏面の両面がそれぞれ保護フィルムおよび基材によって保護された超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムとして製造することもできる。そのような超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、保護フィルムおよび基材とともに流通し、産業上利用可能なデバイスである。保護フィルムおよび基材は、その使用時に、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムから剥離すればよい。
また、保護フィルムおよび基材のうち、いずれか一方のみを剥離し、他方を存置させることもできる。そのような超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、保護フィルムおよび基材のうち他方とともに流通し、産業上利用可能なデバイスである。保護フィルムおよび基材のうち他方は、その使用時に、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムから剥離すればよい。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
まず、各実施例および各比較例で用いた超高分子量ポリエチレン粒子を以下に記載する。
<超高分子量ポリエチレン粒子>
A:商品名:ミペロンXM−220、重量平均分子量200万、融点136℃、平均粒子径30μm、三井化学社製
B:商品名:ミペロンXM−221U、重量平均分子量200万、融点136℃、平均粒子径25μm、三井化学社製
次に、各実施例および各比較例における第2工程の条件および超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの評価方法を記載する。なお、上記した第2工程の条件および評価結果を表1に記載する。
<圧縮率C>
圧縮率Cは、積層フィルムの厚み(基材フィルムと、超高分子量ポリエチレン層と、保護層との厚みの和、つまり、全層厚み)Tallと、2つのロール間の間隙Tgapとを用いて、下記式により求めた。
圧縮率C[%]=(1−Tgap/Tall)×100
但し、後述する比較例5については、圧縮前の積層フィルムの厚みをTallとし、圧縮時の金属板間の間隙をTgapとして、上記式に当てはめて圧縮率Cを求めた。
<厚み>
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出した。
<透気度(ガーレ値)>
超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの透気度は、王研式透気度計を用いてJIS P8117(2009年)に準拠して測定した。なお、透気度が99,999秒/100mL(後述する表1の比較例3参照)であるという結果は、王研式透気度計の測定上限に達していることを示す。
<空孔率>
まず、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを100mm×100mmのサイズに切断してサンプルを作製し、質量と厚みとを測定して、そのサンプルの見掛け密度を算出した。
別途、超高分子量ポリエチレンの真比重は、製造元発行のカタログに記載された値である940kg/mを採用した。
そして、得られた見掛け密度と真比重とを下記式に当てはめて、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの空孔率を算出した。
空孔率(%)=(1−サンプルの見掛け密度/超高分子量ポリエチレンの真比重)×100
<突刺強度>
まず、直径1mmの針(先端の曲率半径R:0.5mm)を用いて、厚みT1を有する超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを200mm/分の速度で突き刺したときの最大荷重L1を測定した。次いで、最大荷重L1を、下記式に基づいて、厚み20μmに換算した場合における最大荷重L2を得た。
L2=L1×(20/T1)
なお、突刺試験は3回実施し、各回のL1から得られたL2の平均値を突刺強度として算出した。
<引張強度および引張弾性率>
積層フィルムが2つのロールを通過した方向をMDとし、積層フィルムの厚み方向およびMDに対して直交する幅方向をTDとする。
そして、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムのMDに沿う短冊状(長さ100mm、幅(TD長さ)15mm)に切り出してサンプルを作製した。
その後、引張試験機を用いて、チャック間40mm、引張速度200mm/分にてMDにおける引張試験を実施し、サンプルのMDにおける引張強度および引張弾性率をJIS K7161−1(2014年)およびJIS K7127(1999年)に準拠して測定した。但し、後述する比較例4および5については2つのロールを通過させていないことから、任意に測定方向を定めてサンプルを作製し測定した。MDにおける引張試験は3回実施し、3回の平均値を引張強度および引張弾性率としてそれぞれ得た。
別途、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムのTDに沿う短冊状(長さ100mm、幅(MD長さ)15mm)に切り出してサンプルを作製した。
その後、引張試験機を用いて、チャック間40mm、引張速度200mm/分にてTDにおける引張試験を実施し、サンプルのTDにおける引張強度および引張弾性率をJIS K7161−1(2014年)およびJIS K7127(1999年)に準拠して測定した。TDにおける引張試験は3回実施し、3回の平均値を引張強度および引張弾性率としてそれぞれ得た。
[実施例1]
(分散液:界面活性剤なし、第2工程:同時に焼結および圧縮)
超高分子量ポリエチレン粒子Aを、超高分子量ポリエチレン粒子A/エタノール=40質量%/60質量%となるように、エタノールに混合し、それらを分散させて分散液を調製した。
次いで、厚み100μmのPETフィルムを基材フィルムとし、その基材フィルムの表面に分散液を塗布して、厚み400μm程度の塗膜を形成した。その後、基材フィルムおよび塗膜を、120℃に設定した乾燥機内に5分間静置して、塗膜を乾燥した。すなわち、エタノールを塗膜から除去した。これによって、超高分子量ポリエチレン粒子から超高分子量ポリエチレン層を形成した(第1工程)。
その後、図1が参照されるように、超高分子量ポリエチレン層(3)の表面(基材フィルム(2)の表面と逆側にある面、以下同様。)に、厚み100μmのPETフィルムを保護フィルム(4)として配置した。その後、支持層がポリイミドからなる感圧接着テープ(5)で、基材フィルムおよび保護フィルムの先端部(6)(MD下流側端部)同士を感圧接着して固定した。これによって、基材フィルム(2)、超高分子量ポリエチレン層(3)および保護フィルム(4)を順に備え、先端部(6)に感圧接着テープ(5)が感圧接着された積層フィルム(1)を作製した。積層フィルム(5)における超高分子量ポリエチレン層(3)の厚み(先端部(6)以外の厚み)は、約230μmであった。
次いで、所定の間隙Tgapを隔てて並列配置される2本の金属製のロールを備えるカレンダー装置を用意し、ロール表面温度を158℃、ロール回転速度を0.3m/分、ロール間の線圧を44N/mmに設定するとともに、圧縮率Cが19%となるように、2つのロール間の間隙Tgapを調整した。そして、積層フィルムを、ロール間に通過させることにより、超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮した(第2工程)。具体的には、積層フィルムを、その先端部6から、2つのロール間の間隙に通過させた。これにより、超高分子量ポリエチレン層が超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムとなった。
その後、保護フィルムおよび基材フィルムのそれぞれを超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムから剥離して、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得た。
[実施例2]、[比較例1]〜[比較例3]
(分散液:界面活性剤なし、第2工程:同時に焼結および圧縮)
超高分子量ポリエチレン粒子の種類および/または第2工程における圧縮率Cを、表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に処理して、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得た。
[比較例4]
(分散液:界面活性剤あり、界面活性剤除去工程:あり、第2工程:焼結のみ(圧縮なし)
超高分子量ポリエチレン粒子A、水および界面活性剤(理研ビタミン株式会社製のソルビタン脂肪酸エステル、商品名:ポエムC−250)を、超高分子量ポリエチレン粒子A/水/界面活性剤=35質量%/60質量%/5質量%となるように、混合し、それらを分散させて分散液を調製した。
次いで、厚み100μmのPETフィルムを基材フィルムとし、その基材フィルムの表面に分散液を塗布して、厚み500μm程度の塗膜を形成した。
その後、基材および塗膜を、158℃に設定した乾燥機内に30分間静置して、塗膜を乾燥して(すなわち、水を除去して)、超高分子量ポリエチレン粒子および界面活性剤から超高分子量ポリエチレン層を形成するするとともに、超高分子量ポリエチレン層を焼結させた。これにより、超高分子量ポリエチレン層が超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムとなった。
その後、基材フィルムを超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムから剥離した。
その後、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを水によって洗浄することにより、界面活性剤を抽出した(界面活性剤除去工程)。
[比較例5]
(分散液:界面活性剤あり、界面活性剤除去工程:あり、第2工程:焼結後に圧縮)
比較例4で得られた超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム(圧縮せずに作製した超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム)を加熱プレス装置に備えられる2つの平板の間に挟み、2つの平板により、高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを、圧縮率が17%となるように温度158℃で1分間圧縮した。
その後、保護フィルムおよび基材フィルムのそれぞれを超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムから剥離して、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得た。
[比較例6]
(分散液:界面活性剤あり、界面活性剤除去工程:なし、第2工程:同時に焼結および圧縮)
超高分子量ポリエチレン粒子A、水および界面活性剤(理研ビタミン株式会社製のソルビタン脂肪酸エステル、商品名:ポエムC−250)を、超高分子量ポリエチレン粒子A/水/界面活性剤=35質量%/60質量%/5質量%となるように、混合し、それらを分散させて分散液を調製した。
次いで、厚み100μmのPETフィルムを基材フィルムとし、その基材フィルムの表面に分散液を塗布して、厚み500μm程度の塗膜を形成した。
続いて、基材フィルムの表面および塗膜を、120℃に設定した乾燥機内に5分間静置して、塗膜を乾燥した。すなわち、水のみを塗膜から除去した。これによって、超高分子量ポリエチレン粒子および界面活性剤から超高分子量ポリエチレン層を形成した。
その後、超高分子量ポリエチレン層の表面に、厚み100μmのPETフィルムを保護フィルムとして配置した。その後、図1が参照されるように、超高分子量ポリエチレン層(3)の表面に、厚み100μmのPETフィルムを保護フィルム(4)として配置した。その後、ポリイミドからなる感圧接着テープ(5)で、基材フィルムおよび保護フィルムの先端部(MD下流側端部)同士を感圧接着して固定した。これによって、基材フィルム(2)、超高分子量ポリエチレン層(3)および保護フィルム(4)を順に備え、先端部に感圧接着テープ(5)が感圧接着された積層フィルム(1)を作製した。積層フィルム(5)における超高分子量ポリエチレン層(3)の厚みは、約340μmであった。
次いで、カレンダー装置により、実施例1と同様の条件で、積層フィルムを、ロール間に通過させた。
しかしながら、超高分子量ポリエチレン層を構成する超高分子量ポリエチレン粒子Aが互いに融着せず、そのため、超高分子量ポリエチレン粒子A同士が「滑り」を生じ、その結果、超高分子量ポリエチレン層を焼結および圧縮することができなかった。具体的には、超高分子量ポリエチレン粒子A同士の密着性がなく、基材フィルムと保護フィルムとの間で超高分子量ポリエチレン粒子Aがスリップしてずれる現象や、基材フィルムと保護フィルムとの間からはみ出す現象が確認された。そのため、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得ることができなかった。
Figure 2016210848
(結果および考察)
実施例1および2の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、良好な多孔質性を有しつつ、優れた引張弾性率を有していた。
対して、比較例1、2、4および5の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、引張弾性率が不十分であった。
また、比較例3の「超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム」は、実質的に無孔質であった。つまり、実際には、超高分子量ポリエチレン無孔質フィルムであった。
さらに、比較例6は、界面活性剤に起因する超高分子量ポリエチレン粒子同士の滑りのため、超高分子量ポリエチレン層を焼結および圧縮することができず、その結果、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを得ることができなかった。
本発明の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムは、例えば、超純水の製造、薬液の精製、水処理、集塵フィルターなどに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルムや、二次電池などに使用する電池用セパレータ、さらには、シート状の部品を輸送する際の吸着固定シートなどに用いられる。
1 積層フィルム
2 基材
3 超高分子量ポリエチレン層
4 保護フィルム

Claims (10)

  1. 超高分子量ポリエチレン粒子を同時に焼結および圧縮して得られ、23℃で170MPa以上の引張弾性率を有することを特徴とする、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム。
  2. 23℃で10.0MPa以上の引張強度を有することを特徴とする、請求項1に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム。
  3. 5%以上40%以下の空孔率を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム。
  4. 厚み20μmに換算した場合における0.5N以上の突刺強度を有することを特徴する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムを製造する方法であり、
    超高分子量ポリエチレン粒子を分散媒に分散させた分散液を基材に塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥して、超高分子量ポリエチレン層を形成する第1工程と、
    前記超高分子量ポリエチレン層を同時に焼結および圧縮する第2工程と
    を備えることを特徴とする、超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法。
  6. 前記分散液は、界面活性剤を含有せず、前記超高分子量ポリエチレン粒子および前記分散媒を含有することを特徴とする、請求項5に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法。
  7. 前記分散媒が、沸点が100℃未満である低沸点分散媒であることを特徴とする、請求項5または6に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法。
  8. 前記第2工程では、前記超高分子量ポリエチレン層を、カレンダー装置または加熱プレス装置により圧縮することを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法。
  9. 前記第2工程における圧縮率が、5%以上50%以下であることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法。
  10. 前記第1工程の後であって、前記第2工程の前に、前記超高分子量ポリエチレン層を保護フィルムで保護することにより、前記基材と、前記超高分子量ポリエチレン層と、前記保護フィルムとを順に備える積層フィルムを作製する工程をさらに備え、
    前記第2工程では、前記積層フィルムを同時に焼成および圧縮することを特徴とする、請求項5〜9のいずれか一項に記載の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムの製造方法。
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