JP2016203190A - 鋼板の蛇行制御方法、鋼板の蛇行制御装置、及び鋼板の製造方法 - Google Patents

鋼板の蛇行制御方法、鋼板の蛇行制御装置、及び鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】労力を要することなくオンラインで鋼板の蛇行量を最適に制御すること。【解決手段】鋼板の搬送方向に配置された複数の圧延スタンドを備える連続式圧延機のレベリング量を操作することによって鋼板の蛇行量を制御する鋼板の蛇行制御方法であって、圧延ロールの作業側の圧延荷重と駆動側の圧延荷重との差を圧延差荷重として検出する圧延差荷重検出ステップと、圧延スタンド間のルーパーに作用する荷重分布を検出する荷重分布検出ステップと、圧延差荷重検出ステップ及び荷重分布検出ステップにおいて検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布を用いて、鋼板の蛇行量及び圧延ロールへの鋼板の進入角度である入側角度を推定する推定ステップと、推定ステップにおいて推定された鋼板の蛇行量及び入側角度と蛇行量の積分値とに基づいてレベリング量を操作する蛇行制御ステップと、を含むことを特徴とする。【選択図】図16

Description

本発明は、鋼板の搬送方向に配置された複数の圧延スタンドを備える連続式圧延機のレベリング量を操作することによって鋼板の蛇行量を制御する鋼板の蛇行制御方法、鋼板の蛇行制御装置、及び鋼板の製造方法に関する。
連続式圧延機を利用して鋼板を圧延している際、鋼板の幅方向中心位置が圧延ロールの圧延中心位置(ミル中心位置)からずれ、鋼板が圧延ロールの幅方向端部方向へ移動する鋼板の蛇行現象が発生することがある。このような蛇行現象が発生した場合、鋼板が移動した側の連続式圧延機のハウジングに掛かる荷重が他方側のハウジングに掛かる荷重よりも大きくなるために、鋼板が移動した側のミル伸びが他方側におけるミル伸びよりも大きくなり、結果として蛇行現象がさらに助長される。
鋼板の蛇行現象が発生した場合、鋼板の幅方向に板厚差が生じ、鋼板の品質が劣化する。また、鋼板の蛇行量が大きくなった場合には、鋼板がサイドガイドに接触することによって鋼板が屈曲した状態で圧延される絞り込みが発生し、圧延ロールに疵がつき、鋼板の生産性が低下することがある。なお、蛇行現象は、特に鋼板の尾端部が圧延ロールを通過する際、換言すれば、圧延ロールの入側における鋼板の張力が存在しない時に発生しやすい。
このため、連続式圧延機を利用して鋼板を圧延する際には、圧延ロールの作業側の圧延荷重と駆動側の圧延荷重との差を測定し、測定された圧延差荷重から作業側のミル伸びと駆動側のミル伸びとの差を推定し、推定されたミル伸び差に基づいて作業側のロール開度と駆動側のロール開度との差、すなわちレベリング量を操作することにより、鋼板の蛇行量を抑制する蛇行制御方法が適用されている。この蛇行制御方法は、平行剛性制御方式とも呼ばれ、最も一般的な制御手法である。なお、本明細書中において、圧延ロールの駆動側とは、圧延ロールにおける駆動モータが取り付けられている側のことを意味し、圧延ロールの作業側とは、圧延ロールにおける駆動側とは反対側のことを意味する。
また、上述の平行剛性制御方式の蛇行制御方法のほかにも、圧延ロールの入側又は出側における鋼板の蛇行量とその1階微分値とを測定し、測定された値に基づいて鋼板の蛇行量が所定時間内に許容範囲内に収まるようにレベリング量を調整する方法も提案されている(特許文献1参照)。また、圧延理論に基づいて圧延ロールの幅方向端部間の鋼板の先進係数及び後進係数の差の理論値を算出し、算出結果に基づいて先進係数及び後進係数の差が零になるようにレベリング量を調整する方法も提案されている(特許文献2参照)。
また、蛇行運動モデルに基づいて測定された鋼板の蛇行量及びレベリング量を変数とした評価関数の値が最小になるようにレベリング量を修正する最適レギュレータによる手法や、圧延ロールの圧延差荷重から鋼板の蛇行量を推定し、推定された蛇行量及びレベリング量を変数とした評価関数の値が最小になるようにレベリング量を修正する最適レギュレータを用いた手法も提案されている(特許文献3参照)。
また、1つの圧延スタンド直下の蛇行運動モデルとその上流側の鋼板の運動とを連成させた蛇行運動モデルを用いて、オブザーバ理論により圧延差荷重から圧延スタンド直下の鋼板の蛇行量及び入側角度を推定し、それらの推定値に最適レギュレータ理論に基づいた最適なゲインを作用させることでレベリング量を算出する手法も提案されている(特許文献4参照)。
特開平3−90207号公報 特開平10−5840号公報 特開2004−74207号公報 特開2014−117743号公報
しかしながら、平行剛性制御方式の蛇行制御方法では、制御ゲインを大きくしすぎると蛇行量がより大きくなってしまうために、制御ゲインを小さく設定する必要があり、十分な蛇行抑制能力を発揮できない。また、特許文献1記載の蛇行制御方法では、蛇行量を所定範囲内に抑えるためのレベリング量の算出処理が非常に複雑であるために、オンラインでの蛇行制御に適用することができない。
なお、このような問題を解決するために、予めオフラインで計算された幾つかのレベリング量の解が記載されたテーブルを用いてオンラインで蛇行制御を行う方法も考えられる。しかしながら、この方法を用いる場合には、種々の圧延条件に対して適切なレベリング量を出力するために非常に大きなテーブルを用意しなければならなくなり、現実的ではない。
一方、特許文献2記載の蛇行制御方法は、鋼板の先進係数及び後進係数に基づいてレベリング量を調整するものであるので、鋼板の蛇行量を推定することができない。また、特許文献2記載の蛇行制御方法では、連続式圧延機内における鋼板の蛇行量を表すモデルが静力学的(定常的)なモデルであるために、最適レギュレータ、状態フィードバックやオブザーバ等の現代制御理論の制御手法を用いることができず、制御の最適化が困難である。さらに、特許文献2記載の蛇行制御手法では、圧延スタンド間における鋼板のキャンバーや剛性を考慮していないために計算の信頼性が低くなる懸念がある。
また、特許文献3記載の蛇行制御方法では、連続式圧延機内における鋼板の蛇行量を表すモデルが運動学に基づくモデルであるために、圧延差荷重等の力学的な情報を用いることができず、鋼板の蛇行量を測定するための蛇行計を設置する必要がある。また、特許文献3記載の蛇行制御方法では、連続式圧延機の鋼板の回転速度を表す数式が単純化されているために、新たな圧延条件では鋼板の回転速度を表す数式のパラメータを圧延条件に合わせて調整する必要があり、多くの労力を要する。
また、特許文献4記載の蛇行制御方法では、鋼板が圧延スタンドを抜ける直前の状態を対象としているために、オブザーバによるモデル修正時間が短く、計算の信頼性が低くなる懸念がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、オンラインで鋼板の蛇行量を最適に制御可能な鋼板の蛇行制御方法及び鋼板の蛇行制御装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、オンラインで鋼板の蛇行量を最適に制御して鋼板を製造可能な鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明に係る鋼板の蛇行制御方法は、鋼板の搬送方向に配置された複数の圧延スタンドを備える連続式圧延機のレベリング量を操作することによって鋼板の蛇行量を制御する鋼板の蛇行制御方法であって、圧延ロールの作業側の圧延荷重と駆動側の圧延荷重との差を圧延差荷重として検出する圧延差荷重検出ステップと、圧延スタンド間のルーパーに作用する荷重分布を検出する荷重分布検出ステップと、前記圧延差荷重検出ステップ及び前記荷重分布検出ステップにおいて検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布を用いて、前記鋼板の蛇行量及び前記圧延ロールへの鋼板の進入角度である入側角度を推定する推定ステップと、前記推定ステップにおいて推定された鋼板の蛇行量及び入側角度と該蛇行量の積分値とに基づいて前記レベリング量を操作する蛇行制御ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明に係る鋼板の蛇行制御方法は、上記発明において、圧延スタンド間の蛇行量を検出する蛇行量検出ステップを含み、前記推定ステップは、前記圧延差荷重検出ステップ及び前記荷重分布検出ステップにおいて検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布と、前記蛇行量検出ステップにおいて検出された圧延スタンド間の蛇行量とを用いて、前記鋼板の蛇行量及び前記入側角度を推定することを特徴とする。
本発明に係る鋼板の蛇行制御方法は、上記発明において、最上流の圧延スタンドの入側における鋼板のキャンバー量を検出するキャンバー量検出ステップを含み、前記推定ステップは、前記圧延差荷重検出ステップ及び前記荷重分布検出ステップにおいて検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布と、前記蛇行量検出ステップにおいて検出された圧延スタンド間の蛇行量と、前記キャンバー量検出ステップにおいて検出された鋼板のキャンバー量とを用いて、前記鋼板の蛇行量及び前記入側角度を推定することを特徴とする。
本発明に係る鋼板の蛇行制御方法は、上記発明において、最上流の圧延スタンドの入側における鋼板のウェッジ量を検出するウェッジ量検出ステップを備え、前記推定ステップは、前記圧延差荷重検出ステップ及び前記荷重分布検出ステップにおいて検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布と、前記蛇行量検出ステップにおいて検出された圧延スタンド間の蛇行量と、前記キャンバー量検出ステップにおいて検出された鋼板のキャンバー量と、前記ウェッジ量検出ステップにおいて検出された鋼板のウェッジ量と、を用いて前記鋼板の蛇行量及び前記入側角度を推定することを特徴とする。
本発明に係る鋼板の蛇行制御装置は、鋼板の搬送方向に配置された複数の圧延スタンドを備える連続式圧延機のレベリング量を操作することによって鋼板の蛇行量を制御する鋼板の蛇行制御装置であって、圧延ロールの作業側の圧延荷重と駆動側の圧延荷重との差を圧延差荷重として検出する圧延差荷重検出手段と、圧延スタンド間のルーパーに作用する荷重分布を検出する荷重分布検出手段と、前記圧延差荷重検出手段及び前記荷重分布検出手段によって検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布を用いて、前記鋼板の蛇行量及び前記圧延ロールへの鋼板の進入角度である入側角度を推定する推定手段と、前記推定手段によって推定された鋼板の蛇行量及び入側角度と該蛇行量の積分値とに基づいて前記レベリング量を操作する蛇行制御手段と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る鋼板の製造方法は、本発明に係る鋼板の蛇行制御方法を利用して連続式圧延機を制御しながら鋼板を製造するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る鋼板の蛇行制御方法及び鋼板の蛇行制御装置によれば、労力を要することなくオンラインで鋼板の蛇行量を最適に制御することができる。また、本発明の鋼板の製造方法によれば、労力を要することなくオンラインで鋼板の蛇行量を最適に制御して鋼板を製造することができる。
図1は、圧延機蛇行モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図2は、圧延機剛性モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図3は、圧延機蛇行モデルと圧延機剛性モデルの連成モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図4は、圧延スタンドモデルの入出力ブロック図である。 図5は、圧延スタンド間の鋼板を示す模式図である。 図6は、鋼板変形モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図7は、鋼板変形モデル、ウェッジ移流モデル、キャンバー移流モデル、及び張力制御モデルの連成モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図8は、鋼板モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図9は、連続式圧延機における鋼板の蛇行モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図10は、蛇行制御器を追加した連続式圧延機における鋼板の蛇行モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図11は、オブザーバを追加した連続式圧延機における鋼板の蛇行モデルと圧延機剛性モデルの連成モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図12は、オブザーバを追加した圧延スタンドモデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図13は、連続式圧延機における鋼板の蛇行モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図14は、ルーパーに作用する荷重を説明するための模式図である。 図15は、連続式圧延機における鋼板の蛇行モデルの構成を示す入出力ブロック図である。 図16は、連続式圧延機の全圧延スタンドの蛇行制御器の構成を示す入出力ブロック図である。 図17は、6つの圧延スタンドを有する連続式圧延機の構成を示す模式図である。
以下、本発明に係る鋼板の蛇行制御方法の概念について説明する。
まず、鋼板の搬送方向に配置された複数の圧延スタンドからなる連続式圧延機における鋼板の蛇行運動の動力学的モデルについて説明する。
いま各圧延スタンドにおいて、圧延ロール直下にある鋼板は幅方向には滑らない(幅方向への移動速度がゼロ)とすると、鋼板の幅方向中央部の蛇行量wnは以下に示す数式(1)のように表される。ここで、数式(1)中、vc0は圧延スタンド出側における鋼板の幅方向中央部の速度(出側板速)、θは圧延スタンド入側における圧延ロールの幅方向中心線に対する鋼板の幅方向中心線の角度(入側角度)、λは圧延スタンド出側における鋼板の幅方向中央部の板厚(出側板厚)に対する圧延スタンド入側における鋼板の幅方向中央部の板厚(入側板厚)の比を示している。
Figure 2016203190
出側板厚に対する入側板厚の比λは、出側板厚をhc0、入側板厚をhc1とすると、以下に示す数式(2)のように表される。
Figure 2016203190
入側角度θは、以下に示す数式(3)のように表される。ここで、数式(3)中、Ψは圧延スタンド入側における鋼板の回転角速度(入側角速度)、ρc1は圧延スタンド入側における鋼板の曲率(入側キャンバー)を示している。
Figure 2016203190
圧延スタンド出側における圧延ロールの幅方向中心線に対する鋼板の幅方向中心線の角度(出側角度)θ0は、入側角度θを用いて以下に示す数式(4)のように表される(「板圧延の理論と実際」第241頁、“中心線勾配の接続条件”参照)。
Figure 2016203190
圧延スタンド出側における鋼板の曲率(出側キャンバー)ρc0については、運動学的に以下に示す数式(5)が成り立つ(「板圧延の理論と実際」第241頁、“キャンバー曲線の接続条件”参照)。ここで、数式(5)中、Ψは圧延スタンド出側における鋼板の回転角速度(出側角速度)を示している。
Figure 2016203190
そこで、上記の数式を用いて鋼板の蛇行運動の運動学的な状態空間モデルを構築する。詳しくは、数式(1)に示すスラスト方向の拘束式、数式(3)に示す入側角速度Ψと入側キャンバーρc1の関係式、数式(4)に示す出側角度θ0と入側角度θの関係式、及び数式(5)に示す出側キャンバーρc0の式から、鋼板の蛇行運動の運動学的な状態空間モデルは以下に示す数式(6),(7)のように表される。
Figure 2016203190
Figure 2016203190
次に、以下に示す数式(8)を用いて、初等圧延理論から出側角速度Ψを算出する。ここで、数式(8)中、vx0は圧延スタンド出側における鋼板の速度、fsは先進率、vRは圧延スタンドの圧延ロールの周速度、yは鋼板の幅方向位置を示している。
Figure 2016203190
先進率fsについては、以下に示す数式(9)が成立する。ここで、数式(9)中、h0は圧延スタンド出側における鋼板の板厚、h1は圧延スタンド入側における鋼板の板厚、σ0は圧延スタンド出側における張力(出側張力)、σ1は圧延スタンド入側における入側張力を示している。
Figure 2016203190
上記数式(9)を上記数式(8)へ代入すると、以下に示す数式(10)が得られる。
Figure 2016203190
圧延スタンドの出側及び入側における鋼板の板厚h0,h1と圧延スタンドの出側及び入側における張力(出側張力,入側張力)σ0,σ1が鋼板の幅方向に対して直線的に変化すると仮定すると、以下に示す数式(11),(12)が成立する。ここで、数式(11),(12)中、bは鋼板の板幅、h0dfは圧延スタンド出側における鋼板のウェッジ量(出側ウェッジ)、h1dfは圧延スタンド入側における鋼板のウェッジ量(入側ウェッジ)、M0は圧延スタンド出側における鋼板のモーメント量(出側モーメント)、M1は圧延スタンド入側における鋼板のモーメント量(入側モーメント)を示している。
Figure 2016203190
これにより、上記数式(11),(12)を上記数式(10)に代入することにより、以下の数式(13)に示すように出側角速度Ψを求めることができる。ここで、数式(13)中、kは鋼板の変形抵抗、βh0df(=-(hc0/(1+fs))(δfs/δh0))は出側ウェッジh0dfに対する影響係数、βh1df(=-(hc0/(1+fs))(δfs/δh1))は入側ウェッジh1dfに対する影響係数、βM0(=-(k/(1+fs))(δfs/δσ0))は出側モーメントM0に対する影響係数、βM1(=-(k/(1+fs))(δfs/δσ1))は入側モーメントM1に対する影響係数を示している。
Figure 2016203190
次に、入側角速度Ψを算出する。出側ウェッジh0dfと入側ウェッジh1dfとの間には以下の数式(14)に示す関係が成立する(「板圧延の理論と実際」第241頁、“体積不変の原理”参照)。
Figure 2016203190
これにより、上記数式(13)を上記数式(14)へ代入すると、入側角速度Ψは以下に示す数式(15)のように求めることができる。
Figure 2016203190
従って、上記数式(6),(7)に上記数式(13),(15)を代入することにより、以下に示す数式(16),(17)が得られる。
Figure 2016203190
上記数式(16),(17)は、鋼板の蛇行運動の動力学的な状態空間モデルであり、これにより、圧延スタンドにおける鋼板の蛇行モデル(圧延機蛇行モデル)は図1に示すように表される。
一方、圧延スタンドの平行剛性モデル(圧延機剛性モデル)は、以下に示す数式(18),(19)及び図2のように表される。ここで、数式(18),(19)中、Pは圧延スタンドの圧延荷重、Pdfは圧延スタンドの圧延差荷重、Klはミル平行剛性、Mlは圧延スタンド出側における鋼板の平行塑性定数(出側鋼板平行塑性定数)、Ml は圧延スタンド入側における鋼板の平行塑性定数(入側鋼板平行塑性定数)、blは圧延スタンドのスクリュー間隔、Sdfは圧延スタンドのスクリュー位置での圧延ロール開度差(レベリング量,レベリング差)、κrはワークロールの最大撓み曲率を示している。
Figure 2016203190
図3に圧延機蛇行モデルと圧延機剛性モデルの連成モデルの構成を示す。図3に示す連成モデルをまとめると、図4に示す圧延スタンドモデルとなる。ここで、本発明では、図5に示す圧延スタンドST1と圧延スタンドST2との間の鋼板Sの変形モデルとして、平板モデルでは計算量が多くなるので、大変位帯板モデル(参考文献(青江ら、連続帯板通板問題のための大変形帯板モデル、日本機械学会論文集(A編)、vol.77, No.779(2011), pp.1102-1111)参照)を用いる。なお、図5中、符号Rは圧延スタンドST1と圧延スタンドST2との間に設けられたルーパーを示している。
このとき、鋼板の変形モデルの汎関数は以下に示す数式(20)のように表される。ここで、数式(20)中、hは鋼板の板厚、bは鋼板の幅、Lは圧延スタンド間の距離(図5参照)、yは鋼板の横方向変位、zは鋼板の鉛直方向変位、ωは鋼板の捩れ角、κは鋼板の曲率(キャンバー)、sは鋼板のライン方向位置、Eは縦弾性係数、νはポアソン比、Dは鋼板の曲げ剛性を示している。なお、鋼板の曲げ剛性Dは以下に示す数式(21)のように表される。また、yUU,uU,Fy U,Mz U,Fxは圧延スタンドの上流側での鋼板の横方向変位、面内角度、軸方向変位、横方向作用力、面内モーメント、及び張力を示している。また、yDD,uD,Fy D,Mz Dは圧延スタンドの下流側での鋼板の横方向変位、面内角度、軸方向変位、横方向作用力、及び面内モーメントを示している。また、ωL,zL,Mx L,Fz Lは、ルーパーRでの鋼板の捩れ角、鉛直方向変位、捩りモーメント、及び鉛直方向作用力を示している。また、yLP,Fy LPは圧延スタンド間のある位置sLPにおける鋼板の横方向変位及び横方向作用力を示している。
Figure 2016203190
Figure 2016203190
ここで、上記数式(20)において、ライン方向位置sの関数である変数y,z,ωを要素分割で近似し、汎関数に有限要素法(FEM)を適用する。そして、FEMを適用した汎関数に変分演算を行い、変分原理を適用すると非線形代数方程式が得られ、非線形代数方程式を時間で微分することで、形式的には以下の数式(22),(23)に示す微分方程式が得られる。
Figure 2016203190
この時、{xStrip}を状態変数、{uStrip}を入力、{yStrip}を出力と考えると、鋼板の変形モデルは図6のように表される。この時、鋼板は移動しているので、キャンバー及びウェッジが移流する。そこで、鋼板内のキャンバー及びウェッジを求めるために、移流方程式を解く。また、鋼板の張力はルーパーRにより制御されているとすると、鋼板に張力を付与するための運動則は以下に示す数式(24)、(25)のように表される。ここで、数式(24),(25)中、du0/dtは圧延スタンド出側における鋼板の軸方向速度、zref Lは目標ルーパー高さ、Fz_ref Lは目標張力を付与するための目標接触力を示している。鋼板の変形、キャンバー及びウェッジの移流、及びルーパーの張力制御の連成モデルを図7に示す。そして、図7に示す連成モデルをまとめると図8に示す鋼板モデルとなる。
Figure 2016203190
図4に示す圧延スタンドモデルと図8に示す鋼板モデルとを連成させると、連続式圧延機における鋼板の蛇行モデルは図9に示すようになる。図9に示す蛇行モデルは、1つの圧延スタンドとその上下流側の鋼板モデルとによって構成されているが、この蛇行モデルを数珠繋ぎ状にすることで、複数の圧延スタンドにおける鋼板の蛇行モデル(シミュレーター)を構築できる。また、図9に示す蛇行モデルに蛇行制御器を追加すると図10に示すようになる。図10に示す蛇行制御器は以下に示す数式(26)のように表される。ここで、数式(26)中、K1,K2,K3はゲイン、sはラプラス変数である。なお、図10に示す蛇行モデルは、実際の情報が用いられていないので、単なるシミュレーターである。
Figure 2016203190
次に、オブザーバ理論を用いて実機観測データを取り込むことを考える。圧延スタンドの圧延差荷重の情報は実機から得られるので、式(16)にオブザーバ項を追加すると、以下に示す数式(27)が得られる。ここで、数式(27)中、G,Gはオブザーバゲイン、P(-)df(-)はPの上付きのバーを示す)は圧延差荷重の実測値を示す。
Figure 2016203190
オブザーバを追加した圧延機蛇行モデルと圧延機剛性モデルの連成モデルは図11に示すようになり、圧延スタンドモデルは図12に示すようになり、さらに図10に示す蛇行モデルは図13に示すようになる。ここで、ルーパーRに作用する荷重分布の情報は実機から得られるとする。すなわち、図14で示すようにルーパーRの軸受に設置されたロードセルから荷重F(-)z DR、F(-)z OP(-)はFの上付きのバーを示す)を計測する。また、ルーパーRでの捩りモーメントの推定値M(-)x L(-)はMの上付きのバーを示す)は以下に示す数式(28)のように表される。ここで、数式(28)中、bLはルーパーRの軸受間距離を示す。そして、ルーパーでの捩り角速度dωL/dtを以下に示す数式(29)のように表すことにより、ルーパーでの荷重分布情報を取り込むことができる。
Figure 2016203190
Figure 2016203190
また、圧延スタンド間のある位置sLPでの横方向変位y(-) LP(-)はYの上付きのバーを示す)に関する情報が得られるのであれば、横方向変位速度dyLP/dtを以下に示す数式(30)のように表すことで、横方向変位y(-) LPに関する情報を取り込む。情報を多く取り込むことができれば、状態変数の推定精度は向上する。図15に鋼板モデルにオブザーバを追加した連続式圧延機における鋼板の蛇行モデルを示す。図15に示す蛇行モデルにおいて、オブザーバを備える鋼板モデルに入力されるスタンド間蛇行量、ルーパー接触力、及び圧延差荷重と蛇行制御器から出力されるレベリング差は実際の連続式圧延機から得られる変数であり、これ以外の変数はシステム内の変数(状態変数)である。
Figure 2016203190
これにより、最上流側の圧延スタンドにおけるウェッジ、入側キャンバー、各ルーパーの接触力、圧延スタンド間蛇行量、及び圧延差荷重に関する情報を入力とし、各圧延スタンドのレベリング量を出力とした7段連続式圧延機の制御モデルは図16に示すように表される。図16に示す制御モデルは、7つの圧延スタンドF1〜F7全てで情報が得られた場合のものであるが、必ずしも全ての圧延スタンドで情報が得られなくてもよい。このような制御モデルを用いることによって、労力を要することなくオンラインで鋼板の蛇行量を最適に制御することができる。
なお、蛇行制御モデルを設計するためには、影響係数βh0dfh1dfM0M1を求めておく必要がある。影響係数βh0dfh1dfM0M1は先進率fsから求めることができる。具体的には、本発明では、先進率モデルとして以下の数式(31)に示すSimsの近似理論を用いる。ここで、σ0=-Q0/hc0b-12M0y/hc0b3、σ1=-Q1/λhc0b-12M1y/λhc0b3、Q0は出側圧縮力、Q1は入側圧縮力を示している。
Figure 2016203190
上記数式(31)を用いることにより影響係数βh0dfh1dfM0M1は以下に示す数式(32)〜(35)のように表される。ここで、ξはhc0/R、Rはワークロール半径を示している。
Figure 2016203190
本実施例では、図17に示す6つの圧延スタンドST1〜ST6から連続式熱間仕上圧延機における鋼板の蛇行制御に本発明を適用した。図17において、符号1a〜1fは各圧延スタンドにおける圧延差荷重を計測する圧延荷重計、符号2a〜2eは各圧延スタンド間における鋼板Sの蛇行量を計測する蛇行計、符号3a〜3fは各圧延スタンドの圧下シリンダ、符号4a〜4eはルーパーR1〜R5に作用する荷重分布(接触力)を計測する荷重計を示している。
本実施例では、図17に示す蛇行制御器10は、連続式熱間仕上圧延機から圧延差荷重、ルーパー差荷重、及びスタンド間蛇行量に関する情報を取得した。また、蛇行制御器10は、上位のプロセスコンピュータから位置(圧延長)、材料特性(板厚、板幅、変形抵抗、温度等)、圧延条件(圧下率、スタンド間張力、出側速度等)、及び最上流の圧延スタンドの入側における鋼板の情報(キャンバー、ウェッジ等)を取得した。
蛇行制御器10は、取得した情報から圧下シリンダ3a〜3fのレベリング量を算出し、そのレベリング量に従って圧下シリンダ3a〜3fを駆動する。ここで、鋼板の圧延長を測定しているので、鋼板の尾端部が連続式熱間仕上圧延機から抜けるタイミングを算出できる。蛇行制御器10のオブザーバは、算出されたタイミングに基づいて連続式熱間仕上圧延機の圧延スタンド数を変えた蛇行運動モデルを計算する。
従来、薄物(1.8mm以下材)での絞り発生率(ワークロール交換要)は1%程度であったが、ルーパーの荷重分布の情報を活用することにより絞り発生率は0.8%、さらにルーパー間の蛇行量の情報を活用することで絞り発生率は0.5%、さらに最上流の圧延スタンドでの入側材のキャンバー情報を活用することで絞り発生率は0.2%、さらに最上流の圧延スタンドでの入側材のウェッジ情報を活用することで絞り発生率をほぼ0.1%程度まで下げることに成功した。本システムでは、複数のセンサーを用いているが、一部のセンサーが破損したとしても、情報が少なくなる分、オブザーバの推定能力が低下するものの運用可能である。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
1a〜1f 圧延荷重計
2a〜2e 蛇行計
3a〜3f 圧下シリンダ
4a〜4e 荷重計
10 蛇行制御器
R,R1〜R5 ルーパー
S 鋼板
ST1〜ST6 圧延スタンド

Claims (6)

  1. 鋼板の搬送方向に配置された複数の圧延スタンドを備える連続式圧延機のレベリング量を操作することによって鋼板の蛇行量を制御する鋼板の蛇行制御方法であって、
    圧延ロールの作業側の圧延荷重と駆動側の圧延荷重との差を圧延差荷重として検出する圧延差荷重検出ステップと、
    圧延スタンド間のルーパーに作用する荷重分布を検出する荷重分布検出ステップと、
    前記圧延差荷重検出ステップ及び前記荷重分布検出ステップにおいて検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布を用いて、前記鋼板の蛇行量及び前記圧延ロールへの鋼板の進入角度である入側角度を推定する推定ステップと、
    前記推定ステップにおいて推定された鋼板の蛇行量及び入側角度と該蛇行量の積分値とに基づいて前記レベリング量を操作する蛇行制御ステップと、
    を含むことを特徴とする鋼板の蛇行制御方法。
  2. 圧延スタンド間の蛇行量を検出する蛇行量検出ステップを含み、
    前記推定ステップは、前記圧延差荷重検出ステップ及び前記荷重分布検出ステップにおいて検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布と、前記蛇行量検出ステップにおいて検出された圧延スタンド間の蛇行量とを用いて、前記鋼板の蛇行量及び前記入側角度を推定することを特徴とする請求項1に記載の鋼板の蛇行制御方法。
  3. 最上流の圧延スタンドの入側における鋼板のキャンバー量を検出するキャンバー量検出ステップを含み、
    前記推定ステップは、前記圧延差荷重検出ステップ及び前記荷重分布検出ステップにおいて検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布と、前記蛇行量検出ステップにおいて検出された圧延スタンド間の蛇行量と、前記キャンバー量検出ステップにおいて検出された鋼板のキャンバー量とを用いて、前記鋼板の蛇行量及び前記入側角度を推定することを特徴とする請求項2に記載の鋼板の蛇行制御方法。
  4. 最上流の圧延スタンドの入側における鋼板のウェッジ量を検出するウェッジ量検出ステップを備え、
    前記推定ステップは、前記圧延差荷重検出ステップ及び前記荷重分布検出ステップにおいて検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布と、前記蛇行量検出ステップにおいて検出された圧延スタンド間の蛇行量と、前記キャンバー量検出ステップにおいて検出された鋼板のキャンバー量と、前記ウェッジ量検出ステップにおいて検出された鋼板のウェッジ量と、を用いて前記鋼板の蛇行量及び前記入側角度を推定することを特徴とする請求項3に記載の鋼板の蛇行制御方法。
  5. 鋼板の搬送方向に配置された複数の圧延スタンドを備える連続式圧延機のレベリング量を操作することによって鋼板の蛇行量を制御する鋼板の蛇行制御装置であって、
    圧延ロールの作業側の圧延荷重と駆動側の圧延荷重との差を圧延差荷重として検出する圧延差荷重検出手段と、
    圧延スタンド間のルーパーに作用する荷重分布を検出する荷重分布検出手段と、
    前記圧延差荷重検出手段及び前記荷重分布検出手段によって検出された圧延差荷重及びルーパーに作用する荷重分布を用いて、前記鋼板の蛇行量及び前記圧延ロールへの鋼板の進入角度である入側角度を推定する推定手段と、
    前記推定手段によって推定された鋼板の蛇行量及び入側角度と該蛇行量の積分値とに基づいて前記レベリング量を操作する蛇行制御手段と、
    を備えることを特徴とする鋼板の蛇行制御装置。
  6. 請求項1〜4のうち、いずれか1項に記載の鋼板の蛇行制御方法を利用して連続式圧延機を制御しながら鋼板を製造するステップを含むことを特徴とする鋼板の製造方法。
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