JP2023033789A - 蛇行制御方法及び蛇行制御装置 - Google Patents

蛇行制御方法及び蛇行制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】連続圧延において、被圧延材の尾端部における厚み不良を低減させるとともに、被圧延材の蛇行量を低減させ、絞りの発生を抑制することを可能にする。【解決手段】N個(Nは自然数)の圧延スタンドによる被圧延材の圧延において、第Mスタンド(1≦M≦N)における被圧延材の蛇行を制御する、被圧延材の蛇行制御方法であって、被圧延材の尾端部が第Mスタンドを通過する際に、被圧延材の蛇行の度合いを示す指標である第1種平行剛性がより小さくなるように、第Mスタンドのロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかを、被圧延材の通板中に随時制御する、被圧延材の蛇行制御方法を提供する。【選択図】図18

Description

本発明は、被圧延材の蛇行を制御する蛇行制御方法及び蛇行制御装置に関する。
例えば、複数の圧延スタンドを連続的に被圧延材(例えば鉄鋼)が通過する連続圧延においては、被圧延材の幅方向の中心が、ミルセンター(圧延スタンドの幅方向の中心位置、すなわち、ワークロールの回転軸方向の中心位置)からずれてしまい、被圧延材がワークロールの端部の方向に移動してしまう、いわゆる蛇行と呼ばれる現象が生じることがある。蛇行が生じると、被圧延材の平坦度が低下し、製品品質の低下につながる可能性がある。また、蛇行量が大きい場合には、被圧延材の尾端部が、サイドガイドに接触して屈曲してしまい、被圧延材が2重に折れ込まれた状態で後段の圧延スタンドに咬み込まれる、絞りと呼ばれる不良が生じ得る。絞りが生じると、屈曲した圧延材によってワークロールの表面が傷付けられてしまうため、生産ラインを停止して、ワークロールの点検、手入れまたは交換等の保守作業を行う必要があり、生産ラインの稼働率を低下させてしまう恐れがある。
ここで、連続圧延においては、被圧延材が、前段及び後段の双方の圧延スタンドのワークロールに咬み込まれている場合には、被圧延材に長手方向に張力が作用し、被圧延材が拘束されているため、大きな蛇行は生じ難い。絞りを発生させるような大きな蛇行は、被圧延材の尾端が前段の圧延スタンドを抜けた際に生じやすい。また、従来、圧延スタンドでの圧下率が大きいほど、蛇行が発生しやすいことが知られている。
そこで、例えば、下記特許文献1には、前段(N-1段目)の圧延スタンドにおける圧延材の尾端の通過(尻抜け)を検出し、当該尻抜けを検出したタイミングで、次段(N段目)の圧延スタンドのワークロールの圧下位置(すなわち、上下のワークロール間のロールギャップ)を開放する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、圧延材の尾端を含む所定の長さの領域(以下、尾端部とも呼称する。)がN段目の圧延スタンドを通過する際に、当該N段目の圧延スタンドにおける圧下率が小さくなるため、圧延材の蛇行量を小さくすることができる。
また、特許文献2には、圧延材後端部の通過時に、ロールベンディング装置によりワークロールの胴長方向端部を狭めて、圧延材の板端方向移動を抑制することで、サイドガイドとの干渉による圧延材の絞り込みを防止する手法が開示されている。
特開昭55-161505号公報 特開昭58-145303号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術のように、被圧延材の尾端部が圧延スタンドを通過する際にロールギャップを開放もしくはベンディング力を負荷することにより蛇行を制御する方法では、操作量が過小で絞りに至る場合や、操作量が過大で被圧延材の尾端部が所望の板厚もしくは形状に圧延されず、生産歩留を低下させてしまう場合がある。
また、本発明者らによる検討の結果、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウン等の他の圧延条件によっては、圧下率を小さくした場合、すなわち、ロールギャップを大きくした場合であっても、必ずしも蛇行量が低減するとは限らないという結果が得られた。このように、ロールギャップを調整することにより、被圧延材の蛇行を制御しようとすると、圧延条件によっては、かえって蛇行量を大きくしてしまうことがある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、被圧延材の尾端部における厚み不良を低減させるとともに、被圧延材の蛇行量を低減させ、絞りの発生を抑制することが可能な、蛇行制御方法及び蛇行制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、N個(Nは自然数)の圧延スタンドによる被圧延材の圧延において、第Mスタンド(1≦M≦N)における被圧延材の蛇行を制御する、被圧延材の蛇行制御方法であって、被圧延材の尾端部が第Mスタンドを通過する際に、被圧延材の蛇行の度合いを示す指標である第1種平行剛性がより小さくなるように、第Mスタンドのロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかを、被圧延材の通板中に随時制御する、被圧延材の蛇行制御方法が提供される。
また、当該蛇行制御方法においては、第1種平行剛性は、ワークロールから被圧延材に加えられる線荷重が被圧延材の板幅方向において一定である状態で、被圧延材の板幅方向の中心がミルセンターから単位量ずれた場合におけるウェッジ量を表す定数であり、少なくとも線荷重、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンに依存してもよい。
また、当該蛇行制御方法においては、第Mスタンドにおける圧延条件は随時変化しており、圧延条件変更前の第1種平行剛性の現在値と、圧延条件変更後の第1種平行剛性の予測値と、を算出し、ロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかを、第1種平行剛性の現在値と予測値とのうち、値が小さい方に対応する圧延条件に含まれる、ロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかになるように制御してもよい。
また、当該蛇行制御方法においては、設備上の制約条件及び被圧延材の形状制御に係る制約条件の少なくともいずれかを含む制約条件に基づいて、ロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかの変更可能範囲を算出し、変更可能範囲の中で第1種平行剛性が最小になるように、ロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかを制御してもよい。
また、当該蛇行制御方法においては、尾端部は、被圧延材の尾端から第Mスタンドに咬み込まれている部位までの領域であってもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、N個(Nは自然数)の圧延スタンドによる被圧延材の圧延において、第Mスタンド(1≦M≦N)における被圧延材の蛇行を制御する蛇行制御装置であって、被圧延材の尾端部が第Mスタンドを通過する際に、被圧延材の蛇行の度合いを示す指標である第1種平行剛性がより小さくなるように、第Mスタンドのロールギャップを調整する圧下装置、第Mスタンドのロール速度を調整するミルモータ、第Mスタンドの潤滑剤供給量を調整する潤滑剤供給装置、ベンディング力を調整するベンディング装置、第Mスタンドのロールクロス角を調整するロールチョック駆動装置、第Mスタンドのロールシフト量を調整するロールシフト装置、及び、第Mスタンドのロールクラウンを調整するロールクラウン変更装置の少なくともいずれかの駆動を、被圧延材の通板中に随時制御する、駆動制御部、を備える、蛇行制御装置が提供される。
また、当該蛇行制御装置においては、第1種平行剛性は、ワークロールから被圧延材に加えられる線荷重が被圧延材の板幅方向において一定である状態で、被圧延材の板幅方向の中心がミルセンターから単位量ずれた場合におけるウェッジ量を表す定数であり、少なくとも線荷重、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンに依存してもよい。
また、当該蛇行制御装置においては、圧延条件変更前の第1種平行剛性の現在値と、圧延条件変更後の第1種平行剛性の予測値と、を算出する第1種平行剛性算出部をさらに備え、第Mスタンドにおける圧延条件が随時変化する状況において、駆動制御部は、ロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかが、第1種平行剛性の現在値と予測値とのうち値が小さい方に対応する圧延条件に含まれる、ロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかになるように、圧下装置、ミルモータ、潤滑剤供給装置、ベンディング装置、ロールチョック駆動装置、ロールシフト装置、及び、ロールクラウン変更装置の少なくともいずれかの駆動を制御してもよい。
また、当該蛇行制御装置は、設備上の制約条件及び被圧延材の形状制御に係る制約条件の少なくともいずれかを含む制約条件に基づいて、ロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかの変更可能範囲を算出する変更可能範囲算出部をさらに備え、駆動制御部は、変更可能範囲の中で第1種平行剛性が最小になるように、圧下装置、ミルモータ、潤滑剤供給装置、ベンディング装置、ロールチョック駆動装置、ロールシフト装置、及び、ロールクラウン変更装置の少なくともいずれかの駆動を制御してもよい。
また、当該蛇行制御装置においては、尾端部は、被圧延材の尾端から第Mスタンドに咬み込まれている部位までの領域であってもよい。
以上説明したように本発明によれば、被圧延材の尾端部における厚み不良を低減させるとともに、被圧延材の蛇行量を低減させ、絞りの発生を抑制することが可能になる。
蛇行及びキャンバーが生じている被圧延材における、変形域の様子を概略的に示す図である。 被圧延材の蛇行時における圧延スタンドの変形の様子を示す図である。 線荷重の分布を示す図である。 線荷重と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。 線荷重と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。 ある圧延条件における、線荷重と第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 図6とは異なる他の圧延条件における、線荷重と第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 ある圧延条件における、ベンディング力と第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 図8とは異なる他の圧延条件における、ベンディング力と第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 ある圧延条件における、ロールクロス角と第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 図10とは異なる他の圧延条件における、ロールクロス角と第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 ある圧延条件における、ロールシフト量と第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 図12とは異なる他の圧延条件における、ロールシフト量と第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 ある圧延条件における、ロールクラウンと第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 図14とは異なる他の圧延条件における、ロールクラウンと第1種平行剛性との関係を示すグラフ図である。 第1の実施形態に係る圧延スタンドの一構成例を示す図である。 第1の実施形態に係る圧延スタンドの動作を制御する制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。 第1の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートであって、ロールギャップを制御パラメータとする場合を示す。 制御データの測定タイミングを説明する模式図である。 第1の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートであって、ロール速度を制御パラメータとする場合を示す。 第1の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートであって、潤滑剤供給量を制御パラメータとする場合を示す。 第2の実施形態に係る圧延スタンドの動作を制御する制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。 第2の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
ここで、以下の説明では、本発明の好適な一実施形態として、熱間圧延における仕上タンデム圧延機での蛇行が制御される場合について説明する。後述する本発明の第1及び第2の実施形態では、蛇行を制御するために、当該仕上タンデム圧延機を構成する圧延スタンドのうちの少なくともいずれかの圧延スタンドを被圧延材の尾端部が通過する際に、当該圧延スタンドのロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかの制御パラメータが制御される。仕上タンデム圧延機は、例えば7基の圧延スタンドから構成されるが、制御対象である圧延スタンドは、最も前段に設置される圧延スタンド以外の任意の圧延スタンドであってよい。また、制御対象である圧延スタンドは、1基であってもよいし、複数であってもよい。第1及び第2の実施形態では、例えば、制御対象である圧延スタンドよりも前段に設置される圧延スタンドを被圧延材の尾端が通過したことが検出されたタイミングで、当該制御対象である圧延スタンドにおいて、制御パラメータの制御が開始される。
(1.第1種平行剛性)
後述する本発明の第1及び第2の実施形態では、第1種平行剛性と呼ばれる物理量を制御目標として圧延を行う。第1種平行剛性は、被圧延材の蛇行の度合いを示す指標となる物理量であり、第1種平行剛性の値が小さいほど、圧延時における被圧延材の蛇行が抑制されることが知られている。また、第1種平行剛性は、圧延スタンドにおいてワークロールから被圧延材に加えられる線荷重、ワークロールのベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンに依存する物理量である。
そこで、第1及び第2の実施形態では、圧延時に、第1種平行剛性の値がより小さくなるように、第1種平行剛性に影響を与える制御パラメータを制御する。制御パラメータとしては、ロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンがある。
ロールギャップ、ロール速度及び潤滑剤供給量は、線荷重を制御するための制御パラメータである。ロールギャップは、ワークロールの圧下位置を変更することにより制御可能である。ロール速度は、圧延スタンド間における被圧延材の張力を変更する制御端であり、制御対象の圧延スタンド、または、その前後の圧延スタンドのロール速度を調整するミルモータによって制御可能である。潤滑剤供給量は、ワークロールと被圧延材との摩擦係数を変更する制御端であり、制御対象の圧延スタンドに設けられた潤滑剤供給装置によって潤滑剤供給量を調整することにより制御可能である。
ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンは、メカニカル板クラウンを変更するための制御パラメータである。ここでメカニカル板クラウンとは、被圧延材とワークロールとの間の幅方向荷重分布が一様である場合に実現される、板クラウン定義点位置での板クラウンと定義される。ベンディング力は、制御対象の圧延スタンドに設けられているベンディング装置により制御可能である。ロールクロス角は、圧延スタンドが例えばペアクロス圧延機である場合に制御可能であり、ロールチョックを移動させて変更することができる。ロールシフト量は、圧延スタンドが例えばCVC(continuous variable crown)圧延機、6段圧延機のように、ワークロールもしくは中間ロールを軸方向にシフト可能である場合に制御可能である。ロールクラウンは、圧延スタンドが例えばVC(variable crown)圧延機のように、ワークロールのロールクラウンを変更可能である場合に制御可能である。ロールクラウンは、例えばロールの胴長中央の内部に膨張用の油圧室を有する可変クラウンロールをワークロールとして用いることにより、変更することができる。
このような第1種平行剛性に影響を与える制御パラメータを制御することにより、被圧延材の蛇行量をより低減させることが可能になる。
ここでは、本実施形態に係る蛇行制御方法及び蛇行制御装置の構成について詳細に説明するに先立ち、第1種平行剛性、及び第1種平行剛性と被圧延材の蛇行量との関係について説明する。また、第1種平行剛性の、上記制御パラメータへの依存性について、本発明者らが検討した結果についても併せて説明する。
ここで、第1種平行剛性は、ワークロールから被圧延材に加えられる線荷重が左右方向(被圧延材の板幅方向)において一定である状態で、被圧延材の板幅方向の中心がミルセンター(圧延スタンドの幅方向の中心(ワークロールの回転軸方向の中心))から単位量ずれた場合における幅方向の板厚差(ウェッジ量)を表す定数である。そこで、以下では、まず、蛇行量とウェッジ量との関係式を導出し、次いで、第1種平行剛性とウェッジ量との関係式を導出する。そして、最後に、これらの関係式を組み合わせることにより、蛇行量と第1種平行剛性との関係式を導出する。
(1-1.蛇行量とウェッジ量との関係式の導出)
まず、蛇行量とウェッジ量との関係式を導出する。図1に示すように、ワークロールの直下を含む所定の領域において、被圧延材に蛇行及びキャンバーが生じているモデルを考える。図1は、蛇行及びキャンバーが生じている被圧延材における、変形域の様子を概略的に示す図である。図1では、水平面内(被圧延材の板面と平行な面内)にx-y座標を取り、その原点Oをワークロールの胴部の中央としている。また、ワークロールの回転軸方向と平行な方向(左右方向)をy軸方向としている。
被圧延材の運動は、水平面内の剛体運動と考えられるため、被圧延材内の特定の点の時刻tにおける位置をx、yとすると、当該点のx、y方向の速度v、uは、下記式(1)、(2)で表される。
Figure 2023033789000002
Figure 2023033789000003
ここで、ワークロール直下では、被圧延材の送り方向は、ワークロールの周方向に一致するとした。また、ω(t)及びV(t)は、それぞれ、被圧延材の水平面内における回転の角速度及び原点における速度である。ω(t)及びV(t)は、時刻のみの関数であるが、被圧延材がx=0で変形するため、一般に入側と出側とで異なる関数となり得る。したがって、以下では、ω(t)及びV(t)を、入側と出側とで特に区別する場合には、これらを異なる記号で表すこととする。すなわち、入側における被圧延材の回転の角速度及び速度をそれぞれω(t)及びv(t)とし、出側における被圧延材の回転の角速度及び速度をそれぞれω(t)及びv(t)とする。
今、ある時刻(例えば圧延スタンドが被圧延材の先端を咬み込んだ時刻等)を基準(t=0)とし、t=0における入側の被圧延材の幅方向の中心線形状を、中心線上の点の座標(x、y)を用いて、y=f(x)(x≦0)と表すこととする。中心線上の点(x、y)の、時刻tにおける位置は、上記式(1)、(2)を積分することにより、下記式(3)、(4)で与えられる。
Figure 2023033789000004
Figure 2023033789000005
ここで、蛇行及びキャンバー等の左右の非対称が、一次の微少量であると仮定すると、上記式(4)中のxとしては、上記式(3)を第0近似した値を用いれば十分である。したがって、上記式(4)中のxを、x(t)=x+vtとみなすこととする。当該x(t)=x+vtを、上記式(4)に代入することにより、下記式(5)を得る。
Figure 2023033789000006
さらに、上記式(5)から、x、yを消去して整理すると、時刻tにおける入側の中心線形状を表す下記式(6)を得ることができる。
Figure 2023033789000007
上記式(6)において、右辺第1項は、被圧延材のx方向への平行移動の影響を表す項であり、第2項は、被圧延材の水平面内における回転の影響を表す項であり、第3項は、被圧延材のy方向への平行移動の影響を表す項である。
被圧延材の蛇行量yは、ワークロール直下(x=0)における板中心線のy座標で定義されるため、上記式(6)においてx=0を代入することにより、下記式(7)を得る。下記式(7)は、蛇行量と入側の回転速度との関係を表す式である。
Figure 2023033789000008
上記式(7)は、初期条件を除けば、下記式(8)で表される微分方程式と等価である。
Figure 2023033789000009
ここで、被圧延材の伸びλは、λ=v/vと表現できる。ワークサイドにおける伸びλとドライブサイドにおける伸びλとの差(伸びλの左右差)をλdf、左右の板厚差と板厚の比(ウェッジ率)の入側から出側への変化量(ウェッジ率変化)をΔΨ、板幅をbとすると、被圧延材における体積の保存則から、下記式(9)が得られる。
Figure 2023033789000010
さらに、被圧延材の先進率と後進率とがほぼ比例することから、下記式(10)で表される関係が成り立つと仮定する。
Figure 2023033789000011
上記式(9)、(10)から、下記式(11)で表される関係が得られる。
Figure 2023033789000012
上記式(8)、(11)を組み合わせることにより、蛇行量yとウェッジ率変化ΔΨとの関係式を得ることができる。
(1-2.第1種平行剛性とウェッジ量との関係式の導出)
次に、第1種平行剛性とウェッジ量との関係式を導出する。図2に示すように、被圧延材が蛇行することにより、圧延スタンドが変形しているモデルを考える。図2は、被圧延材の蛇行時における圧延スタンドの変形の様子を示す図である。図2に示すモデルは、圧延スタンドの平行剛性モデルとして知られているものである。
図2に示すように、被圧延材が蛇行すると、圧延スタンドは左右非対称に変形し、被圧延材にウェッジが生じる。ここで、図2に示す点A、A’は圧下位置の設定点を、点B、B’はバックアップロールの軸心の圧下点における位置を、Σは圧下点における上下のバックアップロールの軸心間の距離(BB’)を、aは左右の圧下点間距離を、bは板幅を、yは蛇行量を、Pは各サイドの荷重を、KはAB間のバネ剛性を表している。
図2に示すモデルにおける圧延スタンドの特性を簡単に表すために、圧延スタンドのワークロールに負荷される線荷重が、図3に示すように直線的な分布を有していると仮定する。図3は、線荷重の分布を示す図である。
図3に示すように、板幅中心は、原点から蛇行量yだけずれた場所に位置する。線荷重が直線分布であると仮定することにより、板幅中心における線荷重をp、板幅方向の両端における線荷重の差をpdfとすると、板幅方向の一方の端(例えばワークサイド側の端)であるy=y+b/2における線荷重は、p=p+(1/2)×pdfと表現することができる。また、板幅方向の他方の端(例えばドライブサイド側の端)であるy=y-b/2における線荷重は、p=p-(1/2)×pdfと表現することができる。
図3に示すような線荷重が与えられた際に生じる左右の板厚差(すなわちウェッジ量)hdfは、例えば板クラウンを計算する際に用いられるロール変形計算等の公知の計算方法によって表現することができる。例えば、一般的に、ウェッジ量hdfは、下記式(12)で表現できる。
Figure 2023033789000013
ここで、図2に示すように、aは左右の圧下点間距離、すなわち、ワークロールの支点間の距離であり、bは板厚である。また、Sdfは、ワークロールの左右の開度差(レべリング値)である。また、gdf(y,pdf)は、蛇行量y及び線荷重の左右差pdfに依存する項であり、上述したようにロール変形計算等の公知の計算方法によって導出される項であるが、説明が煩雑になることを避けるために、その詳細な説明は省略する。
上記式(12)の第1近似を取ることにより、下記式(13)を得る。
Figure 2023033789000014
ここで、E及びDは、蛇行現象に関する圧延スタンドの基本定数であって、それぞれ、第1種平行剛性及び第2種平行剛性と呼ばれる定数である。第1種平行剛性及び第2種平行剛性は、以下のような物理的な意味合いを有する。
すなわち、第1種平行剛性Eは、ワークロールから被圧延材に加えられる線荷重が被圧延材の板幅方向において一定である状態(すなわち線荷重に左右差がない状態)で、被圧延材の板幅方向の中心がミルセンターから単位量ずれた場合におけるウェッジ量を表す。また、第2種平行剛性Dは、被圧延材の板幅方向の中心がミルセンターに位置している状態で、ワークロールから被圧延材に加えられる線荷重に被圧延材の板幅方向において差が生じた場合(すなわち線荷重に左右差が生じた場合)におけるウェッジ量を表す。第1種平行剛性E及び第2種平行剛性Dは、ともに、被圧延材の板幅、線荷重、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウン等に依存する定数である。
ここで、入側及び出側ともに拘束のない状態における無張力時の圧延荷重式を、入側板厚H、出側板厚hで微分することにより、下記式(14)を得ることができる。
Figure 2023033789000015
ここで、mは単位幅当たりの塑性係数であり、p0dfは左右の硬度差等による外乱項である。また、Hdfは入側におけるウェッジ量であり、hdfは出側におけるウェッジ量である。
上記式(13)、(14)から、pdfを消去することにより、第1種平行剛性とウェッジ量との関係を表す下記式(15)を得ることができる。
Figure 2023033789000016
(1-3.蛇行量と第1種平行剛性との関係式の導出)
最後に、蛇行量と第1種平行剛性との関係式を導出する。上記式(8)、(11)、(15)から、hdfを消去することにより、蛇行量と第1種平行剛性との関係を表す下記式(16)を得ることができる。ただし、外乱項は1つの項にまとめている。
Figure 2023033789000017
上記式(16)に示す微分方程式は、蛇行量yを制御するための制御系を表すものであると言える。上記式(16)から、わずかな外乱に対して系が安定である(すなわち、蛇行量yが有限の範囲にとどまる)か、あるいは、系が不安定である(すなわち、蛇行量yが発散する)かは、第1種平行剛性Eの値によって決まることが分かる。すなわち、第1種平行剛性Eの値が十分小さい場合(負の値を含む)には、系は安定であり、第1種平行剛性Eの値が大きい場合には系は発散することが分かる。
したがって、後述する本発明の第1及び第2の実施形態では、圧延中に、第1種平行剛性Eの値がより小さくなるように、圧延条件を随時制御する。例えば、第1種平行剛性Eは、上記式(13)においてワークロールの左右の開度差Sdf=0、線荷重の左右差pdf=0とすることによって求まる下記式(17)を用いて算出することができる。
Figure 2023033789000018
ここで、左右の板厚差hdfは、例えば、「社団法人 日本鉄鋼協会 生産技術部門 圧延理論部会編集,「板圧延の理論と実際(改訂版)」,2010年9月30日,社団法人 日本鉄鋼協会発行」の第94ページから記載されているような、ロールバレルを胴長方向に分割してロール変形を計算する方法(分割モデル)において、ワークロールの左右の開度差Sdf=0、線荷重の左右差pdf=0、蛇行量yを入力することにより求めることができる。その場合、上記式(17)における蛇行量yとしては、分割モデルの入力値として用いた蛇行量yと同じ値を用いればよい。
一例として、図4及び図5に、分割モデルを用いて第1種平行剛性Eを算出した結果を示す。図4及び図5は、分割モデルを用いて計算した、線荷重と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図4及び図5では、それぞれ板幅1600(mm)及び800(mm)の場合において、線荷重の第1種平行剛性Eに及ぼす影響を、ロールベンディング力をパラメータとして計算した結果を示している。
図4及び図5に示すように、分割モデルを用いた計算を行うことにより、第1種平行剛性Eの線荷重依存性及びベンディング力依存性を求めることが可能である。なお、分割モデルでの計算時間が長くなる場合には、オフラインで分割モデルの計算を実施して、その結果を回帰式で近似してもよい。
ここで、連続圧延においては、被圧延材が、前段及び後段の双方の圧延スタンドのワークロールに咬み込まれている場合には、被圧延材が拘束されているため、大きな蛇行は生じ難い。したがって、第1及び第2の実施形態では、被圧延材の尾端部が制御対象である圧延スタンドを通過する際に、第1種平行剛性Eの値がより小さくなるように、当該圧延スタンドの圧延条件が制御される。これにより、蛇行量を低減させ、絞りの発生を抑制することが可能となる。
(1-4.第1種平行剛性の制御パラメータへの依存性)
上述したように、第1種平行剛性Eは、被圧延材の板幅、線荷重、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウン等に依存する定数である。このうち、被圧延材の板幅は、製品板厚に応じて予め設定される値である。したがって、第1及び第2の実施形態では、線荷重、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうち少なくともいずれかを制御することにより、第1種平行剛性Eの値を調整する。なお、線荷重の制御は、具体的には、ワークロールのロールギャップを制御したり、ワークロールのロール速度制御によって圧延スタンド間における被圧延材の張力を制御したり、潤滑剤供給量の制御によってワークロールと被圧延材との摩擦係数を制御したりすることにより実現される。
本発明者らは、第1種平行剛性Eの値を調整するために、制御パラメータであるロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンをどのように制御すべきか検討するために、様々な圧延条件における、第1種平行剛性Eの制御パラメータへの依存性について調査した。計算には、上述した分割モデルを用いた。その結果、圧延条件によって、第1種平行剛性Eの制御パラメータへの依存性の傾向が異なることが分かった。
図6~図15に、本発明者らが行った調査結果を示す。図6は、ある圧延条件における、線荷重と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。また、図7は、図6とは異なる他の圧延条件における、線荷重と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図6及び図7では、横軸にワークロールから被圧延材に加えられる線荷重を取り、縦軸に第1種平行剛性Eを取り、両者の関係性をプロットしている。ロールギャップが大きくなるほど、圧延スタンド間における被圧延材の張力が高くなるほど、または、摩擦係数が小さくなるほど(すなわち潤滑剤供給量が多くなるほど)、線荷重は小さくなる。このため、図6及び図7に示すグラフの横軸は、ロールギャップ、圧延スタンド間における被圧延材の張力、または、潤滑剤供給量の大きさを示していると言える。
図6を参照すると、線荷重が小さくなるにつれて、すなわちロールギャップが大きくなる、圧延スタンド間における被圧延材の張力が高くなる、または、潤滑剤供給量が多くなるにつれて、第1種平行剛性Eは単調減少している。線荷重と第1種平行剛性Eとの間に図6に示すような傾向がある圧延条件の場合には、ロールギャップを大きくするようにワークロールの圧下位置を制御したり、圧延スタンド間における被圧延材の張力を高くするようにワークロールのロール速度を制御したり、または、潤滑剤供給量を多くするように潤滑剤供給装置を制御したりすることにより、第1種平行剛性Eを低下させることができ、蛇行量を低減させることができると考えられる。
一方、図7を参照すると、第1種平行剛性Eに極小値が存在している。線荷重と第1種平行剛性Eとの間に図7に示すような傾向がある圧延条件の場合には、単純にロールギャップを大きくしたり、圧延スタンド間における被圧延材の張力を高くしたり、または、潤滑剤供給量を多くしたりするだけでは、第1種平行剛性Eを小さくすることができない。したがって、第1種平行剛性Eが極小値を有することを考慮して、第1種平行剛性Eができるだけ小さくなるようなロールギャップ、圧延スタンド間における被圧延材の張力、または、潤滑剤供給量の制御目標値を設定する必要がある。図7に示すような傾向は、例えば、ロール開度を小さくする方向のベンディング力をワークロールチョックに与えるような圧延条件や、ロールクラウンが凹型となるような圧延条件で圧延を行った場合に生じ得る。
また、図8は、ある圧延条件における、ベンディング力と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図9は、図8とは異なる他の圧延条件における、ベンディング力と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図8及び図9では、横軸に圧延スタンドにおけるワークロールのベンディング力を取り、縦軸に第1種平行剛性Eを取り、両者の関係性をプロットしている。
図8を参照すると、ベンディング力が小さくなるにつれて、第1種平行剛性Eは単調減少している。ベンディング力と第1種平行剛性Eとの間に図8に示すような傾向がある圧延条件の場合には、ベンディング力を小さくするようにベンディング装置を制御することにより、第1種平行剛性Eを低下させることができ、蛇行量を低減させることができると考えられる。
一方、図9を参照すると、第1種平行剛性Eに極小値が存在している。ベンディング力と第1種平行剛性Eとの間に図9に示すような傾向がある圧延条件の場合には、単純にベンディング力を小さくするだけでは、第1種平行剛性Eを小さくすることができない。したがって、第1種平行剛性Eが極小値を有することを考慮して、第1種平行剛性Eができるだけ小さくなるようなベンディング力の制御目標値を設定する必要がある。例えば、板幅が比較的小さい被圧延材においては、ベンディング力がゼロ近傍で第1種平行剛性が極小値を取り、当該極小値を取る点から、インクリース側及びディクリーズ側のどちらにベンディング力を変更しても、第1種平行剛性が増加する、図9に示すような傾向が生じ得る。
図10は、ある圧延条件における、ロールクロス角と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図11は、図10とは異なる他の圧延条件における、ロールクロス角と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図10及び図11では、横軸に圧延スタンドのロールクロス角を取り、縦軸に第1種平行剛性Eを取り、両者の関係性をプロットしている。
図10を参照すると、ロールクロス角が小さくなるにつれて、第1種平行剛性Eは単調減少している。ロールクロス角と第1種平行剛性Eとの間に図10に示すような傾向がある圧延条件の場合には、ロールクロス角を小さくするようにロールチョックを制御することにより、第1種平行剛性Eを低下させることができ、蛇行量を低減させることができると考えられる。
一方、図11を参照すると、第1種平行剛性Eに極小値が存在している。ロールクロス角と第1種平行剛性Eとの間に図11に示すような傾向がある圧延条件の場合には、単純にロールクロス角を小さくするだけでは、第1種平行剛性Eを小さくすることができない。したがって、第1種平行剛性Eが極小値を有することを考慮して、第1種平行剛性Eができるだけ小さくなるようなロールクロス角の制御目標値を設定する必要がある。例えば、板幅が比較的小さい被圧延材においては、ロールクロス角が所定の角度で第1種平行剛性が極小値を取り、当該極小値での所定の角度から正の角度を有するようにロールクロス角を設定しても負の角度を有するようにロールクロス角を設定しても、第1種平行剛性が増加する、図11に示すような傾向が生じ得る。
図12は、ある圧延条件における、ロールシフト量と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図13は、図12とは異なる他の圧延条件における、ロールシフト量と第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図12及び図13では、横軸に圧延スタンドのロールシフト量を取り、縦軸に第1種平行剛性Eを取り、両者の関係性をプロットしている。
図12を参照すると、ロールシフト量が小さくなるにつれて、第1種平行剛性Eは単調減少している。ロールシフト量と第1種平行剛性Eとの間に図12に示すような傾向がある圧延条件の場合には、ロールシフト量を小さくするようにロールを軸方向にシフトすることにより、第1種平行剛性Eを低下させることができ、蛇行量を低減させることができると考えられる。
一方、図13を参照すると、第1種平行剛性Eに極小値が存在している。ロールシフト量と第1種平行剛性Eとの間に図13に示すような傾向がある圧延条件の場合には、単純にロールシフト量を小さくするだけでは、第1種平行剛性Eを小さくすることができない。したがって、第1種平行剛性Eが極小値を有することを考慮して、第1種平行剛性Eができるだけ小さくなるようなロールシフト量の制御目標値を設定する必要がある。例えば、板幅が比較的小さい被圧延材においては、ロールシフト量が所定の量で第1種平行剛性が極小値を取り、当該極小値での所定の量からロールシフト量をワークサイド及びドライブサイドのどちらに変更しても、第1種平行剛性が増加する、図13に示すような傾向が生じ得る。
また、図14は、ある圧延条件における、ロールクラウンと第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図15は、図14とは異なる他の圧延条件における、ロールクラウンと第1種平行剛性Eとの関係を示すグラフ図である。図14及び図15では、横軸に圧延スタンドにおけるワークロールのロールクラウンを取り、縦軸に第1種平行剛性Eを取り、両者の関係性をプロットしている。
図14を参照すると、ロールクラウンが小さくなるにつれて、第1種平行剛性Eは単調減少している。ロールクラウンと第1種平行剛性Eとの間に図14に示すような傾向がある圧延条件の場合には、ロールクラウンを小さくするように制御することにより、第1種平行剛性Eを低下させることができ、蛇行量を低減させることができると考えられる。
一方、図15を参照すると、第1種平行剛性Eに極小値が存在している。ロールクラウンと第1種平行剛性Eとの間に図15に示すような傾向がある圧延条件の場合には、単純にロールクラウンを小さくするだけでは、第1種平行剛性Eを小さくすることができない。したがって、第1種平行剛性Eが極小値を有することを考慮して、第1種平行剛性Eができるだけ小さくなるようなロールクラウンの制御目標値を設定する必要がある。例えば、板幅が比較的小さい被圧延材においては、ロールクラウンが所定のロールクラウン量で第1種平行剛性が極小値を取り、当該極小値での所定のロールクラウン量からロールクラウンを大きくしても小さくしても、第1種平行剛性が増加する、図15に示すような傾向が生じ得る。
以上、図6~図15を参照して、第1種平行剛性の制御パラメータへの依存性について説明した。以上説明したように、第1種平行剛性Eの制御パラメータへの依存性は、圧延条件に応じてその傾向が多様に変化することが分かった。後述する第1及び第2の実施形態では、このような、圧延条件に応じた第1種平行剛性Eの制御パラメータへの依存性の傾向の違いまで考慮して、第1種平行剛性Eの値がより小さくなるように、制御パラメータの制御が行われる。
(2.従来の蛇行制御方法についての検討)
ここで、本発明者らが従来の蛇行制御方法について行った検討結果について説明する。
従来、圧延スタンドにおける圧下率が大きいほど、蛇行が発生しやすいことが知られていた。また、絞りを発生させるような大きな蛇行は、被圧延材の尾端が前段の圧延スタンドを抜けた際に生じやすい。したがって、上記特許文献1、2に記載の技術では、被圧延材の尾端部が制御対象である圧延スタンドを通過する際に、ロールギャップを開放もしくはベンディング力を負荷し、圧下率を小さくすることにより、被圧延材の蛇行量を低減させていた。以下、蛇行量低減のために、被圧延材の尾端部においてロールギャップを開放することを、ボトムギャップアップとも呼称する。
ここで、第1種平行剛性の制御パラメータへの依存性について上述したように、本発明者らは、第1種平行剛性Eの線荷重依存性について調査した(図6及び図7)。第1種平行剛性Eは、蛇行の度合いを示す指標となる物理量であり、上記式(16)に示すように、第1種平行剛性Eが大きいほど、蛇行量は発散する傾向があるため、図6及び図7に示すグラフ図は、ロールギャップ、ロール速度または潤滑材供給量を変化させた際の、被圧延材の蛇行量の度合いを表しているとも言える。
例えば、上述した図6に示すグラフは、ロールギャップを大きくするほど、圧延スタンド間における被圧延材の張力が高くなるほど、または、摩擦係数が小さくなるほど(すなわち潤滑剤供給量が多くなるほど)、蛇行量が低減する状態を表していると言える。一方、上述した図7に示すグラフは、ロールギャップを大きくしたり、圧延スタンド間における被圧延材の張力が高くしたり、または、潤滑剤供給量を多くした場合であっても、必ずしも蛇行量が低減しない状態を表していると言える。
例えば、線荷重と第1種平行剛性との間に図6に示すような傾向がある圧延条件の場合には、上記特許文献1、2に記載の技術は、蛇行量を低減するために有効であると考えられる。一方、図7に示すように、第1種平行剛性に極小値が存在するような圧延条件の場合には、上記特許文献1、2に記載の技術では、線荷重を小さくした場合に、すなわちロールギャップを大きくしたり、圧延スタンド間における被圧延材の張力が高くしたり、または、潤滑剤供給量を多くした場合に、かえって蛇行量を大きくしてしまう可能性がある。
このように、例えば上記特許文献1、2に記載されているような従来の蛇行制御方法では、圧延条件によっては、かえって蛇行量を増大させてしまい、絞りの発生を抑制できないことがある。
本発明は、従来技術に対する上記の検討結果に基づいて想到されたものである。上述したように、本発明の第1及び第2の実施形態では、単純にロールギャップを開放もしくはベンディング力を負荷するのではなく、被圧延材の尾端部が通過する際に、第1種平行剛性Eがより小さくなるように、制御パラメータであるロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうち少なくともいずれかが制御される。したがって、例えば図7、図9、図11、図13及び図15に示すように、第1種平行剛性Eが極小値を有する場合であっても、蛇行量を低減し得る、より適切な制御目標値で制御パラメータを制御することができる。
ここで、一般的に、仕上タンデム圧延機のように複数の圧延スタンドに被圧延材が連続的に通板される連続圧延においては、圧延中において、外乱等に対応して、所望の板厚が得られるように、所定の間隔で随時圧延条件を調整する板厚制御が行われている。しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、被圧延材の尾端部が通過する際に、蛇行制御を行うために当該板厚制御を停止して、板厚のことを何ら考慮せずにロールギャップを開放もしくはベンディング力を負荷してしまう。したがって、被圧延材の尾端部に対しては圧延が行われず、当該尾端部は不良品となってしまい、歩留まりが低下するという問題がある。
一方、本発明の第1及び第2の実施形態においても、被圧延材の尾端部が通過する際に、それまで行っていた板厚制御が停止され、蛇行制御が開始される。しかしながら、第1及び第2の実施形態では、無条件にロールギャップを開放もしくはベンディング力を負荷するのではなく、上述したように、第1種平行剛性Eをより小さくするように、制御パラメータであるロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうち少なくともいずれかが制御される。さらに、後述するように、第2の実施形態では、被圧延材の形状制御の観点から要請される制約条件にしたがって、例えば板厚が規格から外れないように制御パラメータであるロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうち少なくともいずれかが制御される。このように、第1及び第2の実施形態では、特許文献1、2に記載の技術とは異なり、被圧延材の尾端部を無条件には開放しない。したがって、被圧延材の尾端部における厚み不良は必ずしも発生せず、歩留まりの低下を抑制することが可能である。
以下、本発明の第1及び第2の実施形態について詳細に説明する。なお、第1及び第2の実施形態は、第1種平行剛性Eをより小さくするように制御パラメータであるロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうち少なくともいずれかが制御される点は同一であるが、その制御方法の詳細が互いに異なるものに対応する。
(3.第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、圧延中において圧延条件が変更になる直前に、圧延条件変更前の第1種平行剛性Eの現在値と、圧延条件変更後の第1種平行剛性Eの予測値と、を算出し、現在値と予測値とのうち、より値が小さい方に対応する圧延条件に含まれる制御パラメータとなるように、制御パラメータが制御される。これにより、第1の実施形態では、圧延条件の変更範囲内で、第1種平行剛性Eがより小さくなるように、制御パラメータが制御されることとなる。
ここで、図6~図15に示すように、第1種平行剛性Eは、線荷重、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンに依存する。したがって、第1種平行剛性Eの値を調整するためには、ロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうちの少なくともいずれかを制御パラメータとして制御すればよい。そこで、以下の第1の実施形態についての説明では、制御パラメータとして、ロールギャップ、ロール速度及び潤滑材供給量をそれぞれ制御し、第1種平行剛性Eの値を調整する場合について説明する。
具体的には、以下の第1の実施形態についての説明では、特許文献1、2に記載の技術と同様に、制御対象である圧延スタンドを被圧延材の尾端部が通過する際に、それまで行われていた板厚制御が停止され、制御パラメータの制御が開始される場合について説明する。
例えばロールギャップを制御パラメータとした場合に実施されるボトムギャップアップでは、所定の圧下位置の変更レートにしたがってロールギャップが開放される。以下に説明する例では、当該ボトムギャップアップにおけるロールギャップの変更直前に、当該ロールギャップの変更前(すなわち圧延条件の変更前)の第1種平行剛性Eの現在値と、当該ロールギャップの変更後(すなわち圧延条件の変更後)の第1種平行剛性Eの予測値と、が算出され、現在値と予測値とが比較され、第1種平行剛性Eがより小さくなるように、ボトムギャップアップを継続するようにロールギャップを制御するか、またはボトムギャップアップを停止するようにロールギャップを制御するかが選択される。第1の実施形態では、ボトムギャップアップが実行され、所定の圧下位置の変更レートにしたがってロールギャップが変化しようとしている際に、所定の間隔で、随時、上記の一連の処理が実行される。
ただし、第1の実施形態はかかる例に限定されず、ボトムギャップアップ以外の制御が行われることによって圧延条件が変更されてもよい。例えば、当該圧延条件の変更前後において、ロールギャップに代えて、または、ロールギャップとともに、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうち少なくともいずれかが制御されてもよい。例えば、ベンディング力の制御が行われる場合には、ボトムギャップアップ以外の、ベンディング力が変更され得る他の任意の制御が、被圧延材の尾端部において実行されることとなる。
(3-1.圧延スタンドの構成)
図16を参照して、第1の実施形態に係る圧延スタンドの構成について説明する。図16は、第1の実施形態に係る圧延スタンドの一構成例を示す図である。図16では、第1の実施形態に係る圧延スタンドを、左右方向(ワークロールの回転軸方向)から見た様子を図示している。ただし、ハウジングの中の構成や、被圧延材の通板位置(パスライン)を示すために、一部の部材は透過させて図示している。また、図16では、第1の実施形態に係る圧延スタンドの駆動を制御する制御装置を併せて図示している。
なお、図16では、1基の圧延スタンド1のみを図示しているが、圧延スタンド1は、熱間圧延における仕上タンデム圧延機を構成する一圧延機であり得る。仕上タンデム圧延機は、複数の圧延スタンド1を一方向に配列して構成されている。被圧延材10は、複数の圧延スタンド1を連続的に通過しながら段階的に薄く延ばされることにより、最終的に所望の板厚になるように加工される。なお、本技術は、1基の圧延スタンド1を備える単スタンドの圧延機にも適用可能である。
本実施形態に係る圧延スタンド1は、図16に示すように、ハウジング9の中に、上下一対のワークロール1-1、1-2と、ワークロール1-1、1-2の上下にそれぞれ設置されワークロール1-1、1-2を支持するバックアップロール2-1、2-2とを備える。図16に示す圧延スタンド1は、4本のロールを備える、いわゆる4段圧延機である。
ワークロール1-1、1-2は、所定のロール回転速度で回転するとともに上下から所定の圧力で被圧延材10を圧下することにより、被圧延材10を一方向に通板しながら所定の板厚に形成する。ワークロール1-1、1-2の圧下位置(ロールギャップ)は、圧延後の被圧延材10の板厚の目標値や圧下率等の圧延条件に応じて、後述する圧下装置11によって適宜調整される。
上下一対のワークロール1-1、1-2は、それぞれ、ワークロールチョック3-1、3-2によって回動可能に軸支される。また、バックアップロール2-1、2-2は、それぞれ、バックアップロールチョック4-1、4-2によって回動可能に軸支される。
ハウジング9には、当該ハウジング9の内側に突出した入側プロジェクトブロック5-1及び出側プロジェクトブロック5-2が設けられる。入側プロジェクトブロック5-1及び出側プロジェクトブロック5-2は、インクリースベンディング装置6-1~6-4を介して、ワークロールチョック3-1、3-2を支持している。また、ワークロールチョック3-1、3-2とバックアップロールチョック4-1、4-2との間には、ディクリースベンディング装置7-1~7-4が設けられる。
インクリースベンディング装置6-1~6-4は、ロール開度を大きくする方向の力をワークロールチョック3-1、3-2に与える装置である。インクリースベンディング装置6-1~6-4は、例えば油圧シリンダー等の駆動装置によって構成される。
ディクリースベンディング装置7-1~7-4は、ロール開度を小さくする方向の力をワークロールチョック3-1、3-2に与える装置である。ディクリースベンディング装置7-1~7-4は、例えば油圧シリンダー等の駆動装置によって構成される。
第1の実施形態では、第1種平行剛性Eをより小さくするように、インクリースベンディング装置6-1~6-4及びディクリースベンディング装置7-1~7-4の少なくともいずれかが駆動され、ワークロール1-1、1-2のベンディング力が制御され得る。以下の説明では、インクリースベンディング装置6-1~6-4及びディクリースベンディング装置7-1~7-4の少なくともいずれかのことを指して、単にベンディング装置とも呼称する。
上側のバックアップロールチョック4-1には、バックアップロールチョック4-1の上下方向の位置を調整する圧下装置11が備えられる。圧下装置11は、例えば油圧シリンダー等の駆動装置によって構成される。圧下装置11によって、上側のバックアップロールチョック4-1及び上側のワークロールチョック3-1の上下方向の位置が調整されることにより、ワークロール1-1の圧下位置、すなわちロールギャップが制御される。また、バックアップロールチョック4-1には、圧下装置11とともに、ロードセル12が設けられる。ロードセル12によって圧延荷重が測定される。第1の実施形態では、第1種平行剛性Eをより小さくするように、圧下装置11が駆動され、ワークロール1-1、1-2のロールギャップが制御されることとなる。
なお、図16に示す例では、上側のバックアップロールチョック4-1に圧下装置11が設けられる装置構成について図示しているが、圧下装置11は、上側のバックアップロールチョック4-1に設けられる代わりに、下側のバックアップロールチョック4-2に設けられてもよい。上側のバックアップロールチョック4-1及び下側のバックアップロールチョック4-2のいずれか一方に設けられる圧下装置11が駆動されることにより、上下のワークロール1-1、1-2のうちのいずれか一方の上下方向の位置が調整され、ロールギャップが制御されることとなる。
図16に示す圧延スタンド1は、ワークロール1-1、1-2のロール速度を制御するためのミルモータ等の駆動装置(図示せず。)を備えている。また、圧延スタンド1の入側には、圧延時に被圧延材Sに対して潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置(図示せず。)が設置されていてもよい。
なお、圧延スタンド1は、例えばペアクロス圧延機のように、ロールチョック駆動装置によってワークロールチョック3-1、3-2及びバックアップロールチョック4-1、4-2を移動させてロールクロス角を変更可能であってもよい。または、圧延スタンド1は、例えばCVC(continuous variable crown)圧延機であってもよく、ロールシフト装置によってワークロール1-1、1-2を軸方向にシフト可能に構成されていてもよい。このとき圧延スタンド1が6段圧延機の場合には、中間ロールを軸方向にシフト可能に構成されていてもよい。さらに、圧延スタンド1は、例えばVC(variable crown)圧延機のように、ロールクラウン変更装置によってワークロール1-1、1-2のロールクラウンを変更可能に構成されていてもよい。ロールクラウンは、例えばロールの胴長中央の内部に膨張用の油圧室を有する可変クラウンロールをワークロール1-1、1-2として用いることにより、変更可能である。
制御装置20(本発明の蛇行制御装置に対応する。)は、圧延スタンド1の動作を統合的に制御する。制御装置20は、所望の圧延条件で圧延が行われるように、圧延スタンド1の各部材の駆動を制御する。第1の実施形態では、当該制御装置によって、第1種平行剛性Eをより小さくするように、ベンディング装置、ミルモータ、潤滑材供給装置、圧下装置、ロールチョック駆動装置、ロールシフト装置、及び、ロールクラウン変更装置のうち少なくともいずれかの駆動が制御される。当該制御装置20の機能構成については、下記(3-2.制御装置の機能構成)で詳しく説明する。
制御装置20は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の各種のプロセッサによって構成され、制御装置20の機能は、当該プロセッサが所定のプログラムにしたがって動作されることにより実現され得る。なお、制御装置20は、圧延スタンド1の動作を制御する機能を有すればよく、その具体的な構成は限定されない。例えば、制御装置20は、上述したような各種のプロセッサであってもよいし、プロセッサとメモリ等の記憶装置とが一体的に構成されたいわゆるマイコンであってもよい。あるいは、制御装置20は、PC(Personal Computer)やサーバ等の各種の情報処理装置であってもよい。
以上、図16を参照して、第1の実施形態に係る圧延スタンド1の構成について説明した。ただし、第1の実施形態に係る圧延スタンド1の具体的な装置構成はかかる例に限定されない。第1の実施形態は、圧延スタンド1の制御方法にその主な特徴を有するものであり、圧延スタンド1の装置構成自体は、一般的な圧延スタンドと同様の装置構成であってよい。図16では、一例として、一般的に熱間圧延の仕上圧延に用いられる仕上タンデム圧延機を構成する圧延スタンドの一構成例を図示している。
(3-2.制御装置の機能構成)
図17を参照して、圧延スタンド1の動作を制御する制御装置20の機能構成について説明する。図17は、第1の実施形態に係る圧延スタンド1の動作を制御する制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図17を参照すると、第1の実施形態に係る制御装置20は、その機能として、変更量算出部21と、第1種平行剛性算出部22と、制御目標値決定部23と、駆動制御部24と、を有する。なお、図17では、制御装置20が有する機能のうち、第1の実施形態に係る蛇行制御に関する機能のみを図示している。制御装置20は、図示した機能以外にも、例えば圧延条件に応じて圧延スタンド1の各種の設定を変更する等の、一般的な圧延スタンドの制御装置が有する各種の機能を有し得る。例えば、制御装置20は、被圧延材の板厚を所望の値に制御する板厚制御を行う機能を有してもよい。図示しない機能については、一般的な圧延スタンドの制御装置に搭載され得る公知な機能と同様であってよいため、ここではその詳細な説明は省略する。
ここで、上述したように、第1の実施形態では、制御対象である圧延スタンド1に被圧延材の尾端部が到達したタイミングで、それまで行っていた板厚制御が停止され、第1の実施形態に係る蛇行制御が開始される。具体的には、圧延スタンド1では、圧延スタンド1に被圧延材の尾端部が到達したタイミングで、ボトムギャップアップが開始される制御が行われるとともに、第1種平行剛性Eを算出する処理が行われる。
ここで、本明細書では、被圧延材において「尾端部」が指し示す領域は、一意に限定されない。例えば、N個(Nは自然数)の圧延スタンドのうちのM段目(1≦M≦N)の圧延スタンドである第Mスタンドを圧延対象としたとき、第Mスタンドにおいて第1の実施形態に係る蛇行制御が行われる場合であれば、尾端部は、制御対象である第Mスタンドの1つ前段に設置された第M-1スタンドを被圧延材の尾端が抜けたタイミングでの、尾端から第Mスタンドに咬み込んでいる部位までの領域を意味してもよい。または、第1スタンドを被圧延材の尾端が抜けたタイミングでの、尾端から第Mスタンドに咬み込んでいる部位までの領域を意味してもよい。
前者の場合には、第M-1スタンドにおける被圧延材の尾端の通過(抜け)が検出されたタイミングで、第Mスタンドにおいて、第1の実施形態に係る蛇行制御が開始される。一方、後者の場合であれば、第1スタンドにおける被圧延材の尾端の抜けが検出されたタイミングで、第Mスタンドにおいて、第1の実施形態に係る蛇行制御が開始される。第1の実施形態では、被圧延材の少なくとも尾端を含む所定の長さの領域(すなわち尾端部)が制御対象である第Mスタンドを通過している間、第Mスタンドにおいて第1種平行剛性Eをより小さくするような蛇行制御が行われていればよく、当該蛇行制御が実行される「尾端部」をどのように設定するか、すなわち、当該蛇行制御を開始するタイミングは、適宜設定可能であってよい。
図17に示す制御装置20の各機能は、例えば第M-1スタンドを被圧延材の尾端が抜けたタイミング等、予め設定された、蛇行制御を開始するタイミングで、以下に説明する各処理の実行を開始する。なお、圧延スタンドにおける被圧延材の尾端の抜けの検出には、一般的な、圧延スタンドへの被圧延材の咬み込みを検出する咬み込み検出装置を用いることができる。当該検出装置は、例えば、圧延荷重、トルク、圧延方向力和等の測定値の変化に基づいて、被圧延材の咬み込み及び抜けを検出することができる。
第1の実施形態では、制御装置20は、制御対象である圧延スタンド1よりも前段の、蛇行制御を開始する基準となる圧延スタンドとして予め設定されている圧延スタンドにおける被圧延材の尾端の抜けを検出した旨の情報を、当該基準となる圧延スタンドに設けられている咬み込み検出装置から取得する。そして、制御装置20は、当該情報の取得を制御開始のタイミングとして、制御パラメータの制御を開始する。
例えば、ロールギャップを制御パラメータとした場合に実施されるボトムギャップアップでは、制御装置20は、ボトムギャップアップを実行するために必要な各種の情報(以下、ボトムギャップアップ制御データとも呼称する。)に基づき、ボトムギャップアップを開始することができる。ボトムギャップアップ制御データは、例えば、ロールギャップの制御目標値についての情報や、圧下位置を現在の値から当該制御目標値まで変更するまでの圧下位置の変更レートについての情報等を含む。ボトムギャップアップ制御データは、予めユーザによって設定されていてよく、例えば制御装置20と通信可能に接続される記憶装置(図示せず。)に格納されていてよい。制御装置20は、当該記憶装置を参照することで、ボトムギャップアップ制御データを取得することができる。
変更量算出部21は、蛇行制御が開始されたタイミングで、制御パラメータの現在のステップでの制御データから、次のステップにおける制御データの変更量を算出する。例えば、ロールギャップを制御パラメータとした場合に実施されるボトムギャップアップでは、変更量算出部21は、ボトムギャップアップに基づくロールギャップの制御が開始されると同時に、ボトムギャップアップ制御データに基づいて、現在のステップから次のステップに移行する際の圧下位置変更量ΔSを算出する。現在のステップは、ボトムギャップアップが開始される直前のステップであり、次のステップは、所定の時間(例えば第1の実施形態に係る蛇行制御が繰り返し実行される所定の間隔に対応する時間)経過後のステップである。上述したように、ボトムギャップアップ制御データには、例えば圧下位置の変更レートについての情報が含まれており、変更量算出部21は、当該圧下位置の変更レートに基づいて、圧下位置変更量ΔSを算出することができる。なお、変更量算出部21は、圧下位置の変更レートについての情報を、上述した記憶装置を参照することにより、当該記憶装置に格納されているボトムギャップアップ制御データから取得することができる。
変更量算出部21は、圧下位置変更量ΔS等の、算出した制御データの変更量についての情報を、第1種平行剛性算出部22に提供する。
第1種平行剛性算出部22は、圧延実績データに基づいて、現在のステップにおける第1種平行剛性E(すなわち、圧延条件変更前の第1種平行剛性E)を算出する。ここで、圧延実績データは、例えば板厚、圧延荷重(線荷重)、ベンディング力、圧延速度等の、圧延中に取得される各種の圧延条件の実績値(測定値)である。圧延実績データは、例えば板厚計や速度計等の測定装置によって、所定の間隔で随時取得され、例えば上述した記憶装置に蓄積されている。第1種平行剛性算出部22は、例えば最も直近のタイミングで取得された現在のステップでの圧延条件が反映された圧延実績データの中から、線荷重、ベンディング力等の、第1種平行剛性を算出するために必要な情報を適宜用いることにより、現在のステップにおける第1種平行剛性Eを算出することができる。
また、第1種平行剛性算出部22は、圧延実績データ及び変更量算出部21によって算出された制御データの変更量に基づいて、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値E(すなわち、圧延条件変更後の第1種平行剛性の予測値E)を算出する。具体的には、第1種平行剛性算出部22は、例えば、圧下位置がΔSだけ変化した際の圧延荷重予測値Pを算出し、当該圧延荷重予測値Pの値を実績値の代わりに用いて、第1種平行剛性Eを算出した際と同様の計算を行うことにより、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eを算出することができる。
なお、第1種平行剛性の計算には、例えば、圧延スタンド1のハウジング9の変形に係る定数等、圧延スタンド1に固有の物理量が必要となる。これらの圧延スタンド1に固有の物理量についての情報は、例えば上述した記憶装置に予め格納されており、第1種平行剛性算出部22は、当該記憶装置を参照することにより、第1種平行剛性の計算に必要な各種の情報を取得することができる。
第1種平行剛性算出部22は、算出した、現在のステップにおける第1種平行剛性(すなわち、第1種平行剛性の現在値)Eについての情報及び次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eについての情報を、制御目標値決定部23に提供する。
制御目標値決定部23は、現在のステップにおける第1種平行剛性(すなわち、第1種平行剛性の現在値)Eと、圧延条件変更後の次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eと、を比較し、第1種平行剛性Eがより小さくなるような制御パラメータの制御目標値を決定する。
具体的には、制御目標値決定部23は、第1種平行剛性の現在値Eが、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値E以下である場合には、次のステップの第1種平行剛性Eが、より小さい値である第1種平行剛性の現在値Eになるように、現在の制御パラメータの制御状態を保持するように制御パラメータの制御目標値を決定する。例えば、ボトムギャップアップに係るロールギャップの変更前の制御目標値を、次のステップの圧下位置の制御目標値として決定する。この場合、ボトムギャップアップは実行されないこととなる。
一方、第1種平行剛性の現在値Eが、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eよりも大きい場合には、制御目標値決定部23は、次のステップの第1種平行剛性Eが、より小さい値である第1種平行剛性の予測値Eになるように、制御パラメータの制御目標値を決定する。例えば、ボトムギャップアップの圧下位置変更レートに基づく次のステップでの圧下位置を実現するように変更された圧下位置の制御目標値を、次のステップの圧下位置の制御目標値として決定する。この場合、ボトムギャップアップが継続された場合と同様のロールギャップの制御が実行されることとなる。
制御目標値決定部23は、決定した制御パラメータの制御目標値についての情報を、駆動制御部24に提供する。
駆動制御部24は、制御目標値決定部23によって決定された制御パラメータの制御目標値にしたがって、制御パラメータを制御する各種装置を制御する。例えば、制御パラメータがロールギャップであるときには、駆動制御部24は圧下装置11の駆動を制御し、圧延スタンド1におけるロールギャップを変更する。また、例えば、制御パラメータがロール速度であるときには、駆動制御部24は制御対象の圧延スタンドまたはその前後の圧延スタンドのミルモータ13のうちいずれかを制御し、ロール速度を変更する。さらに、例えば、制御パラメータが潤滑剤供給量であるときには、駆動制御部24は制御対象の圧延スタンドの潤滑剤供給装置15を制御し、潤滑剤供給量を変更する。これにより、第1種平行剛性が、第1種平行剛性の現在値Eまたは第1種平行剛性の予測値Eのうち、より小さい値となるように、圧延スタンド1の制御パラメータが制御されることとなる。
以上、図17を参照して、第1の実施形態に係る圧延スタンド1の制御装置20の機能構成について説明した。以上説明したように、第1の実施形態によれば、被圧延材の尾端部において、圧延条件変更前の第1種平行剛性の現在値Eと、圧延条件変更後の第1種平行剛性の予測値Eと、が比較され、より第1種平行剛性Eの値が小さい方に対応する圧延条件に含まれる制御パラメータになるように、圧延スタンド1の制御パラメータが制御される。したがって、例えば上述した図7に示すように第1種平行剛性Eが線荷重に対して極小値を有する場合であっても、第1種平行剛性がより小さくなるように、圧延スタンド1の制御パラメータが制御されることとなり、被圧延材の蛇行量をより低減することができる。
第1の実施形態では、以上説明した制御装置20における一連の処理が、被圧延材の尾端部が圧延スタンド1を通過している間、所定の間隔で随時実行される。したがって、被圧延材の尾端部において、常に第1種平行剛性Eがより小さくなるように制御パラメータが制御されることとなり、被圧延材における蛇行量を、尾端部の長手方向の全域に渡って低減することができる。
また、第1の実施形態によれば、特許文献1、2に記載の技術とは異なり、尾端部において無条件にロールギャップを開放もしくはベンディング力を負荷するような制御は行われない。圧延条件の変更範囲内において、第1種平行剛性Eがより小さくなるように圧延スタンド1の制御パラメータが制御されるため、第1種平行剛性Eの現在値及び予測値の大小関係によっては、制御パラメータの制御は必要以上に行われない。すなわち、板厚制御が有効に機能したままロールギャップが開放されない場合もあり得る。この場合、尾端部においても板厚制御が有効に機能し得るため、尾端部まで所望の板厚に制御することができる可能性があり、尾端部における厚み不良を低減させ、製品の歩留まりを向上させることができる。
なお、図17には、第1の実施形態の一例として、制御装置20により制御する、第1種平行剛性Eの値を調整するために制御パラメータを制御する装置として、ロールギャップを調整する圧下装置11、ロール速度を変更するミルモータ13、潤滑剤供給量を制御する潤滑剤供給装置15を示したが、本発明は係る例に限定されない。制御装置20は、他の制御パラメータを制御する装置、例えば、ベンディング力を調整するベンディング装置、ロールクロス角を調整するロールチョック駆動装置、ロールシフト量を調整するロールシフト装置、及び、ロールクラウンを調整するロールクラウン変更装置を制御することも可能である。制御装置20は、ロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうちの少なくともいずれかを制御パラメータとして、制御パラメータを制御するための装置を制御し得る。
なお、第1の実施形態において、ロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうちどの制御パラメータを制御するかは、圧延スタンド1において行われている制御の内容(例えば上述したボトムギャップアップの制御)や、設備上の制約条件、被圧延材の形状制御に係る制約条件等を考慮して、適宜決定されてよい。例えば、ロールギャップ及びベンディング力の双方を制御可能な場合であって、ロールギャップを変更することにより、被圧延材の板厚が規格から外れるほど大きく変化してしまう場合であれば、制御装置20は、好適に、第1種平行剛性がより小さくなるようにベンディング力のみを制御してもよい。
(3-3.蛇行制御方法)
図18~図21を参照して、第1の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順について説明する。
(a.制御パラメータがロールギャップである場合)
まず、図18及び図19に基づいて、制御パラメータがロールギャップであるときの蛇行制御方法について説明する。図18は、第1の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートであって、ロールギャップを制御パラメータとする場合を示す。図19は、制御データの測定タイミングを説明する模式図である。なお、図18に示す各処理は、上述した図17に示す制御装置20の各機能によって実行され得る。
第1の実施形態に係る蛇行制御方法は、制御対象である圧延スタンド1よりも前段の、蛇行制御を開始する基準となる圧延スタンド(第Mスタンド)における被圧延材の尾端の抜けが検出されたタイミングで開始される。第1の実施形態に係る蛇行制御方法では、まず、ボトムギャップアップが開始されるとともに、現在のステップにおける第1種平行剛性(第1種平行剛性の現在値)Eが算出される(ステップS101)。ステップS101における第1種平行剛性の現在値Eの算出処理は、例えば、図17に示す第1種平行剛性算出部22によって実行される処理に対応している。
次に、ボトムギャップアップの圧下位置変更レートに基づいて、次のステップにおける圧下位置変更量ΔSが算出される(ステップS103)。ステップS103に示す処理は、例えば、図17に示す変更量算出部21によって実行される処理に対応している。圧下位置変更レートは、例えば上述したボトムギャップアップ制御データに含まれており、変更量算出部21は、当該ボトムギャップアップ制御データを用いることにより、圧下位置変更量ΔSを算出することができる。
ここで、ステップS103におけるボトムギャップアップ制御データ等の各制御パラメータの制御データの取得は、被圧延材の先端が制御対象とする第Mスタンドに噛み込んでから被圧延材の尾端部が第Mスタンドで圧延される前までの間において取得される。具体的には、制御データの測定タイミングは、図19に示すようになる。
まず、N個(N≧2)の圧延スタンドを備えるタンデム圧延機であるとき、第Mスタンドが第2スタンド~第Nスタンドのいずれかである場合には、図19上部に示すように、制御データは、被圧延材10の先端Tが第Mスタンド(#M)に噛み込んだタイミング(測定タイミング1)から、被圧延材10の尾端部10が第Mスタンド(#M)で圧延される前まで(測定タイミング2)の間に測定される。尾端部10は、上述したように、尾端Tから所定の長さまでの範囲である。また、タンデム圧延機の第1スタンド(#1)が制御対象である場合には、図19中央に示すように、制御データは、被圧延材10の先端Tが第1スタンド(#1)に噛み込んだタイミング(測定タイミング1)から、被圧延材10の尾端部10が第1スタンド(#1)で圧延される前まで(測定タイミング2)の間に測定される。
また、単スタンドの圧延機の場合には、図19下部に示すように、制御データは、被圧延材10の先端Tが第1スタンド(#1)に噛み込んだタイミング(測定タイミング1)から、被圧延材10の尾端部10が第1スタンド(#1)で圧延される前まで(測定タイミング2)の間に測定される。
なお、制御データは、計算時間に余裕があればなるべく尾端部10に近い部分が制御対象である第Mスタンドによって圧延されるときに測定することが好ましい。
図18の説明に戻り、次に、圧下位置がΔSだけ変化した際の圧延荷重予測値Pが算出される(ステップS105)。そして、算出された圧延荷重予測値Pに基づいて、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eが算出される(ステップS107)。ステップS105及びステップS107に示す処理は、例えば、図17に示す第1種平行剛性算出部22によって実行される処理に対応している。
次に、現在のステップにおける第1種平行剛性の現在値Eと、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eと、が比較される(ステップS109)。
ステップS109において、第1種平行剛性の現在値Eが予測値E以下であると判断された場合には、次のステップの第1種平行剛性Eがより小さい値である第1種平行剛性の現在値Eになるように、当該第1種平行剛性の現在値Eに対応する圧下位置、すなわち、圧延条件変更前(ボトムギャップアップに係るロールギャップの変更前)の現在の圧下位置を保持するような圧下位置が、圧下位置の制御目標値として決定される(ステップS111)。そして、現在の圧下位置を保持するような圧下位置の制御目標値に基づいて、すなわち、ボトムギャップアップを停止するように、圧延スタンド1のロールギャップが制御される(ステップS113)。
一方、ステップS109において、第1種平行剛性の現在値Eが第1種平行剛性の予測値Eよりも大きいと判断された場合には、次のステップの第1種平行剛性Eがより小さい値である第1種平行剛性の予測値Eになるように、当該第1種平行剛性の予測値Eに対応する圧下位置、すなわち、圧延条件変更後(ボトムギャップアップに係るロールギャップの変更後)の次のステップの圧下位置を実現するような圧下位置が、圧下位置の制御目標値として決定される(ステップS115)。そして、次のステップの圧下位置を実現するような圧下位置の制御目標値に基づいて、すなわち、圧下位置変更レートにしたがったボトムギャップアップを続行するように、圧延スタンド1のロールギャップが制御される(ステップS117)。
なお、ステップS109、ステップS111及びステップS115に示す処理は、例えば、図17に示す制御目標値決定部23によって実行される処理に対応している。また、ステップS113及びステップS117に示す処理は、例えば、図17に示す駆動制御部24によって実行される処理に対応している。
(b.制御パラメータがロール速度である場合)
次に、図20に基づいて、制御パラメータがロール速度であるときの蛇行制御方法について説明する。図20は、第1の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートであって、ロール速度を制御パラメータとする場合を示す。図20に示す各処理は、上述した図17に示す制御装置20の各機能によって実行され得る。なお、図20の説明において、図18と同様の処理については詳細な説明を省略する。
蛇行制御が開始されると、まず、現在のステップにおける第1種平行剛性(第1種平行剛性の現在値)Eが算出される(ステップS121)。ステップS121の処理は、図18のステップS101と同様に行えばよい。
次に、次のステップにおけるロール速度変更量ΔVが算出される(ステップS123)。ステップS123に示す処理は、例えば、図17に示す変更量算出部21によって実行される処理に対応している。変更量算出部21は、現在のロール速度Vの制御データを用いることにより、ロール速度変更量ΔVを算出することができる。現在のロール速度Vの制御データの測定タイミングは、図19に示したように設定すればよい。
さらに、ロール速度がΔVだけ変化した際の圧延荷重予測値Pが算出される(ステップS125)。そして、算出された圧延荷重予測値Pに基づいて、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eが算出される(ステップS127)。ステップS125及びステップS127に示す処理は、図18のステップS105及びS107と同様に行えばよい
次に、現在のステップにおける第1種平行剛性の現在値Eと、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eと、が比較される(ステップS129)。
ステップS129において、第1種平行剛性の現在値Eが予測値E以下であると判断された場合には、次のステップの第1種平行剛性Eがより小さい値である第1種平行剛性の現在値Eになるように、当該第1種平行剛性の現在値Eに対応するロール速度を保持するように制御目標値が決定される(ステップS131)。そして、現在のロール速度を保持する制御目標値に基づいて、ミルモータが制御され、ロール速度制御が実施される(ステップS135)。
一方、ステップS129において、第1種平行剛性の現在値Eが第1種平行剛性の予測値Eよりも大きいと判断された場合には、次のステップの第1種平行剛性Eがより小さい値である第1種平行剛性の予測値Eになるように、当該第1種平行剛性の予測値Eに対応するロール速度を実現するように制御目標値が決定される(ステップS133)。そして、次のステップのロール速度を実現する制御目標値に基づいて、ミルモータが制御され、ロール速度制御が実施される(ステップS135)。
なお、ステップS129、ステップS131及びステップS133に示す処理は、例えば、図17に示す制御目標値決定部23によって実行される処理に対応している。また、ステップS135に示す処理は、例えば、図17に示す駆動制御部24によって実行される処理に対応している。
(c.制御パラメータが潤滑剤供給量である場合)
次に、図21に基づいて、制御パラメータが潤滑剤供給量であるときの蛇行制御方法について説明する。図21は、第1の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートであって、潤滑剤供給量を制御パラメータとする場合を示す。図21に示す各処理は、上述した図17に示す制御装置20の各機能によって実行され得る。なお、図21の説明において、図18と同様の処理については詳細な説明を省略する。
蛇行制御が開始されると、まず、現在のステップにおける第1種平行剛性(第1種平行剛性の現在値)Eが算出される(ステップS141)。ステップS141の処理は、図18のステップS101と同様に行えばよい。
次に、次のステップにおける潤滑剤供給量変更量ΔQが算出される(ステップS143)。ステップS143に示す処理は、例えば、図17に示す変更量算出部21によって実行される処理に対応している。変更量算出部21は、現在の潤滑剤供給量Qの制御データを用いることにより、潤滑剤供給量変更量ΔQを算出することができる。現在の潤滑剤供給量Qの制御データの測定タイミングは、図19に示したように設定すればよい。
さらに、潤滑剤供給量がΔQだけ変化した際の圧延荷重予測値Pが算出される(ステップS145)。そして、算出された圧延荷重予測値Pに基づいて、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eが算出される(ステップS147)。ステップS145及びステップS147に示す処理は、図18のステップS105及びS107と同様に行えばよい
次に、現在のステップにおける第1種平行剛性の現在値Eと、次のステップにおける第1種平行剛性の予測値Eと、が比較される(ステップS149)。
ステップS149において、第1種平行剛性の現在値Eが予測値E以下であると判断された場合には、次のステップの第1種平行剛性Eがより小さい値である第1種平行剛性の現在値Eになるように、当該第1種平行剛性の現在値Eに対応する潤滑剤供給量を保持するように制御目標値が決定される(ステップS151)。そして、現在の潤滑剤供給量を保持する制御目標値に基づいて、潤滑剤供給装置が制御され、潤滑剤供給量制御が実施される(ステップS155)。
一方、ステップS149において、第1種平行剛性の現在値Eが第1種平行剛性の予測値Eよりも大きいと判断された場合には、次のステップの第1種平行剛性Eがより小さい値である第1種平行剛性の予測値Eになるように、当該第1種平行剛性の予測値Eに対応する潤滑剤供給量を実現するように制御目標値が決定される(ステップS153)。そして、次のステップの潤滑剤供給量を実現する制御目標値に基づいて、潤滑剤供給装置が制御され、潤滑剤供給量制御が実施される(ステップS155)。
なお、ステップS129、ステップS131及びステップS133に示す処理は、例えば、図17に示す制御目標値決定部23によって実行される処理に対応している。また、ステップS135に示す処理は、例えば、図17に示す駆動制御部24によって実行される処理に対応している。
以上、図18~図21を参照して、第1の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順について説明した。第1の実施形態では、図18、図20または図21に示す一連の処理が、被圧延材の尾端部において、所定の間隔で随時実行される。したがって、被圧延材の尾端部に対して、常に第1種平行剛性Eがより小さくなるようにロールギャップが制御されることとなり、被圧延材における蛇行量を、尾端部の長手方向全域に渡って低減することができる。
なお、第1の実施形態の一例として、第1種平行剛性Eの値を調整するために、図18ではロールギャップを制御し、図20ではロール速度を制御し、図21では潤滑剤供給量を制御する場合における蛇行制御方法の処理手順を図示した。しかし、本発明は係る例に限定されず、他の制御パラメータを制御して、第1種平行剛性Eの値を調整してもよい。制御装置20は、ロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうちの少なくともいずれかを制御パラメータとして、制御パラメータを制御するための装置を制御し、第1種平行剛性Eの値を調整し得る。
なお、図18、図20及び図21に示す例では、ステップS109、S129及びS149に示す処理において、第1種平行剛性の現在値Eが予測値E以下である場合、または、第1種平行剛性の現在値Eが予測値Eよりも大きい場合、で場合分けをしているが、第1の実施形態はかかる例に限定されない。上記の「以下」や「よりも大きい」等の表現は、あくまで例示であって、第1種平行剛性の現在値E及び予測値Eの大小関係を表す際の境界条件を限定するものではない。第1の実施形態では、第1種平行剛性の現在値E及び予測値Eが等しい場合に、その大小関係をどのように判断するかは任意に設定可能であってよい。例えば、図18、図20及び図21に示す例とは異なり、第1種平行剛性の現在値E及び予測値Eが等しい場合に、ステップS115、S133及びS153に進むようにしてもよい。
(4.第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、設備上の制約条件及び被圧延材の形状制御に係る制約条件の少なくともいずれかを含む制約条件に基づいて、ロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうちの少なくともいずれかの変更可能範囲が算出され、当該変更可能範囲の中で第1種平行剛性が最小になるように、ロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうちの少なくともいずれかが制御される。
なお、第2の実施形態は、第1の実施形態に対して、蛇行制御方法の詳細が変更されたものであり、第2の実施形態に係る蛇行制御方法が適用される圧延スタンドの装置構成は、図16を参照して説明した第1の実施形態に係る圧延スタンド1と同様であってよい。したがって、以下の第2の実施形態についての説明では、圧延スタンドの装置構成についての説明は省略し、当該圧延スタンドの動作を制御する制御装置の機能構成、及び蛇行制御方法の処理手順について主に説明する。
また、以下の第2の実施形態についての説明では、一例として、第1種平行剛性Eの値を調整するために、ベンディング力が制御される場合について説明する。ただし、第2の実施形態はかかる例に限定されず、ベンディング力に代えて、またはベンディング力とともにワークロールのロールギャップが制御されてもよい。
(4-1.制御装置の機能構成)
図22を参照して、第2の実施形態に係る圧延スタンドの動作を制御する制御装置の機能構成について説明する。図22は、第2の実施形態に係る圧延スタンドの動作を制御する制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。第2の実施形態では、図22に示す制御装置が、図16に示す制御装置20に代わって、圧延スタンド1の動作を制御する。
図22を参照すると、第2の実施形態に係る制御装置30(本発明の蛇行制御装置に対応する。)は、その機能として、変更可能範囲算出部31と、制御目標値決定部32と、駆動制御部33と、を有する。なお、図22では、制御装置30が有する機能のうち、第2の実施形態に係る蛇行制御に関する機能のみを図示している。制御装置30は、図示した機能以外にも、例えば圧延条件に応じて圧延スタンド1の各種の設定を変更する等の、一般的な圧延スタンドの制御装置が有する各種の機能を有し得る。例えば、制御装置30は、被圧延材の板厚を所望の値に制御する板厚制御を行う機能を有してもよい。図示しない機能については、一般的な圧延スタンドの制御装置に搭載され得る公知な機能と同様であってよいため、ここではその詳細な説明は省略する。
なお、制御装置30のハードウェア構成は、第1の実施形態に係る制御装置20と同様であってよい。すなわち、制御装置30は、例えばCPUやDSP等の各種のプロセッサであってもよいし、マイコンであってもよい。あるいは、制御装置30は、PCやサーバ等の各種の情報処理装置であってもよい。制御装置30の機能は、制御装置30に搭載されるプロセッサが、所定のプログラムにしたがって動作されることにより実現され得る。
ここで、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、被圧延材の尾端部において、それまで行っていた板厚制御が停止され、第2の実施形態に係る蛇行制御が開始される。制御開始のタイミングは、例えば、制御対象である圧延スタンドよりも前段のいずれかの圧延スタンドにおいて被圧延材の尾端の抜けが検出されたタイミングであってよい。図22に示す制御装置30の各機能は、予め設定された、蛇行制御を開始するタイミングで、以下に説明する各処理の実行を開始する。
変更可能範囲算出部31は、制約条件に基づいて、ロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうちの少なくともいずれかの変更可能範囲を算出する。ここで、制約条件は、例えば、設備上の制約条件や、形状制御に係る制約条件を含む。例えば、ベンディング力を制御パラメータとする場合、設備上の制約条件とは、圧延スタンド1の装置構成上、負荷可能なベンディング力の範囲等についての条件である。また、形状制御に係る制約条件とは、被圧延材の形状制御の観点から要請される制約条件であり、例えば、ベンディング力を制御パラメータとする場合、圧延後の板厚が規格から外れないように圧延を行うための、ベンディング力の許容範囲等についての条件である。形状制御に係る制約条件は、例えば、板厚制御が行われている最中に、当該板厚制御における各種の制御対象(例えば、ロール速度、レベリング量、圧下位置(ロールギャップ)、ベンディング力等)の制御目標値として取得され得る。
例えば、設備上の制約条件についての情報及び形状制御に係る制約条件についての情報のうち少なくともいずれかの情報は、制御装置30と通信可能に接続される記憶装置(図示せず。)に予め格納されている。変更可能範囲算出部31は、当該記憶装置を参照することにより、制御パラメータの変更可能範囲の計算に必要な、設備上の制約条件についての情報及び形状制御に係る制約条件についての情報のうち少なくともいずれかの情報を取得することができる。
変更可能範囲算出部31は、算出した制御パラメータの変更可能範囲についての情報を、制御目標値決定部32に提供する。
制御目標値決定部32は、算出された変更可能範囲の中で、第1種平行剛性が最も小さくなる制御パラメータの値を算出し、当該制御パラメータの値を、制御パラメータの制御目標値として決定する。例えば、制御目標値決定部32は、ベンディング力を制御パラメータとする場合、第1種平行剛性を算出するための数式に対して、ベンディング力を未知数とし、変更可能範囲を境界条件とする最小値問題を解くことにより、第1種平行剛性が最も小さくなるベンディング力を算出することができる。
なお、第1種平行剛性が最も小さくなる制御パラメータの値を算出するためには、第1種平行剛性を算出するための各種の情報(例えば、圧延荷重(線荷重)についての情報や、圧延スタンド1に固有の物理量についての情報等)が必要となる。例えば、制御目標値決定部32は、圧延荷重についての情報を、圧延実績データに基づいて取得することができる。また、圧延スタンド1に固有の物理量についての情報は、上述した記憶装置に予め格納されていてよく、制御目標値決定部32は、当該記憶装置を参照することにより、第1種平行剛性が最も小さくなる制御パラメータの値を算出するために必要な各種の情報を取得することができる。
制御目標値決定部32は、決定した制御パラメータの制御目標値についての情報を、駆動制御部33に提供する。
駆動制御部33は、制御パラメータの制御目標値に基づき制御パラメータを制御するための装置を制御して、制御パラメータを変更する。例えば、ベンディング力を制御パラメータとする場合、駆動制御部33は、ベンディング装置35(図16に示すインクリースベンディング装置6-1~6-4、ディクリースベンディング装置7-1~7-4)の駆動を制御し、圧延スタンド1におけるベンディング力を変更する。駆動制御部33は、制御目標値決定部32によって決定されたベンディング力の制御目標値に基づいて、ベンディング装置35を駆動させる。これにより、制約条件から定まる変更可能範囲において第1種平行剛性が最小になるように、圧延スタンド1のベンディング力が制御されることとなる。
また、例えば、ロールクロス角を制御パラメータとする場合には、駆動制御部33は、ロールチョック駆動装置36によりロールチョックを駆動させ、ロールクロス角を制御する。さらに、例えば、ロールシフト量を制御パラメータとする場合には、駆動制御部33は、ロールシフト装置37によりワークロール(6段圧延機の場合には中間ロールであってもよい。)を軸方向に移動させ、ロールシフト量を制御する。また、例えば、ロールクラウンを制御パラメータとする場合には、駆動制御部33は、ロールクラウン変更装置38によりワークロールのロールクラウンを変化させ、ロールクラウンを制御する。なお、図22には記載していないが、駆動制御部33は、図17に示した、圧下装置11やミルモータ13、潤滑剤供給装置15等の、その他の制御パラメータを制御する装置を制御することも可能である。
以上、図22を参照して、第2の実施形態に係る圧延スタンド1の制御装置30の機能構成について説明した。以上説明したように、第2の実施形態によれば、被圧延材の尾端部において、制約条件を考慮して制御パラメータの変更可能範囲が算出される。そして、当該変更可能範囲において、第1種平行剛性が最小になるように、圧延スタンド1の制御パラメータが制御される。したがって、例えば上述した図9に示すように第1種平行剛性Eがベンディング力に対して極小値を有する場合であっても、第1種平行剛性がより小さくなるように、圧延スタンド1のベンディング力が制御されることとなり、被圧延材の蛇行量をより低減することができる。
第2の実施形態では、以上説明した制御装置30における一連の処理が、被圧延材の尾端部が圧延スタンド1を通過している間、所定の間隔で随時実行される。したがって、被圧延材の尾端部において、常に第1種平行剛性Eがより小さくなるように制御パラメータが制御されることとなり、被圧延材における蛇行量を、尾端部の長手方向の全域に渡って低減することができる。
また、第2の実施形態によれば、被圧延材の形状制御に係る制約条件を考慮して、制御パラメータの制御目標値が決定される。したがって、被圧延材の尾端部においても、その板厚を規格から大きく外れることなく制御することができ、部端部における厚み不良を低減させ、製品の歩留まりを向上させることができる。
なお、第2の実施形態において、ロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうちどの制御パラメータを制御するかは、設備上の制約条件や、被圧延材の形状制御に係る制約条件等を考慮して、適宜決定され得る。例えば、ロールギャップを変更することにより、被圧延材の板厚が規格から外れるほど大きく変化してしまう場合であれば、制御装置30は、好適に、第1種平行剛性がより小さくなるように、ベンディング力のみを制御することができる。
(4-2.蛇行制御方法)
図23を参照して、第2の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順について説明する。図23は、第2の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図23に示す各処理は、上述した図22に示す制御装置30の各機能によって実行され得る。
第2の実施形態に係る蛇行制御方法は、制御対象である圧延スタンド(第Mスタンド)1よりも前段の、蛇行制御を開始する基準となる圧延スタンドにおける被圧延材の尾端の抜けが検出されたタイミングで開始される。第2の実施形態に係る蛇行制御方法では、まず、制約条件に基づいて、制御パラメータの変更可能範囲が算出される(ステップS201)。当該制約条件は、例えば、設備上の制約条件や、被圧延材の形状制御に係る制約条件を含む。ステップS201に示す処理は、例えば、図22に示す変更可能範囲算出部31によって実行される処理に対応している。
次に、算出された変更可能範囲の中で、第1種平行剛性を最小にする制御パラメータの値が算出される(ステップS203)。そして、算出された第1種平行剛性を最小にする制御パラメータの値が、制御パラメータの制御目標値として決定される(ステップS205)。ステップS203及びステップS205に示す処理は、例えば、図22に示す制御目標値決定部32によって実行される処理に対応している。
次に、決定された制御目標値に基づいて、圧延スタンド1の制御パラメータが制御される(ステップS207)。ステップS207に示す処理は、例えば、図22に示す駆動制御部33によって実行される処理に対応している。
以上、図23を参照して、第2の実施形態に係る蛇行制御方法の処理手順について説明した。図23の処理は、ロールギャップ、ロール速度、潤滑材供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうち選択された1または複数の制御パラメータについて、それぞれ実施される。第2の実施形態では、図23に示す一連の処理が、被圧延材の尾端部に対して、所定の間隔で随時実行される。したがって、被圧延材の尾端部において、常に第1種平行剛性Eがより小さくなるように制御パラメータが制御されることとなり、被圧延材における蛇行量を、尾端部の長手方向全域に渡って低減することができる。
本発明による被圧延材における蛇行量の低減効果について確認するために、以上説明した第1の実施形態及び第2の実施形態を、鉄鋼プラントにおける熱間圧延の仕上タンデム圧延機に適用した実施例について説明する。
実施例1、3、4、8として、図18に示す第1の実施形態に係る蛇行制御方法を、熱間圧延の仕上タンデム圧延機に適用した。同様に、実施例2、5~7、9として、図23に示す第2の実施形態に係る蛇行制御方法を、熱間圧延の仕上タンデム圧延機に適用した。比較例1は、鋼板の尾端部について蛇行制御を行わなかった場合であり、比較例2は、特許文献1に記載されているような、被圧延材の尾端部において、第1種平行剛性を考慮せずに単純にボトムギャップアップを行う蛇行制御方法を、熱間圧延の仕上タンデム圧延機に適用した場合である。
実施例1~9及び比較例1、2の全てにおいて、全7基の圧延スタンドから構成される仕上タンデム圧延機における第6スタンドを制御対象の圧延スタンドとし、1つ前段の圧延スタンド(第5スタンド)を被圧延材の尾端が抜けたタイミングで、各蛇行制御方法を開始した。第6スタンドにおける圧延条件は、出側板厚は2~3mm、圧下率は15~25%、圧延速度は400~700mpm、鋼板温度は約1000℃、ベンディング力は-60(ton/chock)とした。下記表1に、検証結果を示す。
Figure 2023033789000019
上記表1より、比較例1では、鋼板の尾端部の蛇行制御を行わなかったため、蛇行が発生し、絞り込みが0.100%発生した。比較例2では、鋼板の尾端部の蛇行制御が実施された結果、比較例1と比較して蛇行の発生割合が減少し、その結果、絞り込み発生率が低下した。しかし、尾端部の板厚精度は比較例1と比較して悪化した。
一方、本発明の第1または第2の実施形態に係る蛇行制御方法に基づき鋼板の尾端部の蛇行制御を行った実施例1~9では、比較例1と比較して蛇行の発生割合が減少し、その結果、絞り込み発生率が低下した。また、尾端部の板厚精度も向上し、尾端部の歩留落ち率も低下した。実施例1、3、4は、制御パラメータとして、圧下位置、ロール速度、潤滑剤供給量を用いたことから、尾端部の板厚不良が低減し、尾端部の歩留落ち率が低下したと考えられる。実施例2、5~7は、制御パラメータとして、ベンディング力、ロールシフト量、ロールクロス角、ロールクラウンを用いたことから、絞り発生が低下したと考えられる。実施例8、9では、板厚不良の低減効果の高い制御パラメータと、絞り発生防止効果の高い制御パラメータとを組み合わせて使用したことから、他の実施例に比べて、絞り込み発生率及び尾端部の歩留落ち率をともに低下させることができた。
当該結果は、第1種平行剛性Eがより小さくなるようにロールギャップ及びベンディング力がそれぞれ制御されることにより、例えば図7、図9、図11、図13、図15に示すような、第1種平行剛性Eが極小値を有する場合であっても、蛇行がより抑制されることを示している。以上の結果から、本発明による被圧延材における蛇行量の低減効果を確認することができた。
(5.補足)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 圧延スタンド
1-1、1-2 ワークロール
2-1、2-2 バックアップロール
3-1、3-2 ワークロールチョック
4-1、4-2 バックアップロールチョック
5-1 入側プロジェクトブロック
5-2 出側プロジェクトブロック
6-1~6-4 ワークロールインクリースベンディング装置
7-1~7-4 ディクリースベンディング装置
9 ハウジング
10 被圧延材
10 尾端部
11 圧下装置
12 ロードセル
13 ミルモータ
15 潤滑剤供給装置
20、30 制御装置
21 変更量算出部
22 第1種平行剛性算出部
23、32 制御目標値決定部
24、33 駆動制御部
31 変更可能範囲算出部
35 ベンディング装置
36 ロールチョック駆動装置
37 ロールシフト装置
38 ロールクラウン変更装置

Claims (10)

  1. N個(Nは自然数)の圧延スタンドによる被圧延材の圧延において、第Mスタンド(1≦M≦N)における前記被圧延材の蛇行を制御する、被圧延材の蛇行制御方法であって、
    前記被圧延材の尾端部が前記第Mスタンドを通過する際に、前記被圧延材の蛇行の度合いを示す指標である第1種平行剛性がより小さくなるように、前記第Mスタンドのロールギャップ、ロール速度、潤滑剤供給量、ベンディング力、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンの少なくともいずれかを、前記被圧延材の通板中に随時制御する、被圧延材の蛇行制御方法。
  2. 前記第1種平行剛性は、
    ワークロールから前記被圧延材に加えられる線荷重が前記被圧延材の板幅方向において一定である状態で、前記被圧延材の板幅方向の中心がミルセンターから単位量ずれた場合におけるウェッジ量を表す変数であり、
    少なくとも前記線荷重、前記ベンディング力、前記ロールクロス角、前記ロールシフト量、及び、前記ロールクラウンに依存する、請求項1に記載の蛇行制御方法。
  3. 前記第Mスタンドにおける圧延条件は随時変化しており、
    圧延条件変更前の前記第1種平行剛性の現在値と、圧延条件変更後の前記第1種平行剛性の予測値と、を算出し、
    前記ロールギャップ、前記ロール速度、前記潤滑剤供給量、前記ベンディング力、前記ロールクロス角、前記ロールシフト量、及び、前記ロールクラウンの少なくともいずれかを、前記第1種平行剛性の現在値と予測値とのうち、値が小さい方に対応する圧延条件に含まれる、前記ロールギャップ、前記ロール速度、前記潤滑剤供給量、前記ベンディング力、前記ロールクロス角、前記ロールシフト量、及び、前記ロールクラウンの少なくともいずれかになるように制御する、請求項1または2に記載の蛇行制御方法。
  4. 設備上の制約条件及び前記被圧延材の形状制御に係る制約条件の少なくともいずれかを含む制約条件に基づいて、前記ロールギャップ、前記ロール速度、前記潤滑剤供給量、前記ベンディング力、前記ロールクロス角、前記ロールシフト量、及び、前記ロールクラウンの少なくともいずれかの変更可能範囲を算出し、
    前記変更可能範囲の中で前記第1種平行剛性が最小になるように、前記ロールギャップ、前記ロール速度、前記潤滑剤供給量、前記ベンディング力、前記ロールクロス角、前記ロールシフト量、及び、前記ロールクラウンの少なくともいずれかを制御する、請求項1または2に記載の蛇行制御方法。
  5. 前記尾端部は、前記被圧延材の尾端から前記第Mスタンドに咬み込まれている部位までの領域である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蛇行制御方法。
  6. N個(Nは自然数)の圧延スタンドによる被圧延材の圧延において、第Mスタンド(1≦M≦N)における前記被圧延材の蛇行を制御する蛇行制御装置であって、
    前記被圧延材の尾端部が前記第Mスタンドを通過する際に、前記被圧延材の蛇行の度合いを示す指標である第1種平行剛性がより小さくなるように、前記第Mスタンドのロールギャップを調整する圧下装置、前記第Mスタンドのロール速度を調整するミルモータ、前記第Mスタンドの潤滑剤供給量を調整する潤滑剤供給装置、ベンディング力を調整するベンディング装置、前記第Mスタンドのロールクロス角を調整するロールチョック駆動装置、前記第Mスタンドのロールシフト量を調整するロールシフト装置、及び、前記第Mスタンドのロールクラウンを調整するロールクラウン変更装置の少なくともいずれかの駆動を、前記被圧延材の通板中に随時制御する、駆動制御部、を備える、蛇行制御装置。
  7. 前記第1種平行剛性は、
    ワークロールから前記被圧延材に加えられる線荷重が前記被圧延材の板幅方向において一定である状態で、前記被圧延材の板幅方向の中心がミルセンターから単位量ずれた場合におけるウェッジ量を表す定数であり、
    少なくとも前記線荷重、前記ベンディング力、前記ロールクロス角、前記ロールシフト量、及び、前記ロールクラウンに依存する、請求項6に記載の蛇行制御装置。
  8. 圧延条件変更前の前記第1種平行剛性の現在値と、圧延条件変更後の前記第1種平行剛性の予測値と、を算出する第1種平行剛性算出部をさらに備え、
    前記第Mスタンドにおける圧延条件が随時変化する状況において、
    前記駆動制御部は、前記ロールギャップ、前記ロール速度、前記潤滑剤供給量、前記ベンディング力、前記ロールクロス角、前記ロールシフト量、及び、前記ロールクラウンの少なくともいずれかが、前記第1種平行剛性の現在値と予測値とのうち値が小さい方に対応する圧延条件に含まれる、前記ロールギャップ、前記ロール速度、前記潤滑剤供給量、前記ベンディング力、前記ロールクロス角、前記ロールシフト量、及び、前記ロールクラウンの少なくともいずれかになるように、前記圧下装置、前記ミルモータ、前記潤滑剤供給装置、前記ベンディング装置、前記ロールチョック駆動装置、前記ロールシフト装置、及び、前記ロールクラウン変更装置の少なくともいずれかの駆動を制御する、請求項6または7に記載の蛇行制御装置。
  9. 設備上の制約条件及び前記被圧延材の形状制御に係る制約条件の少なくともいずれかを含む制約条件に基づいて、前記ロールギャップ、前記ロール速度、前記潤滑剤供給量、前記ベンディング力、前記ロールクロス角、前記ロールシフト量、及び、前記ロールクラウンの少なくともいずれかの変更可能範囲を算出する変更可能範囲算出部をさらに備え、
    前記駆動制御部は、前記変更可能範囲の中で前記第1種平行剛性が最小になるように、前記圧下装置、前記ミルモータ、前記潤滑剤供給装置、前記ベンディング装置、前記ロールチョック駆動装置、前記ロールシフト装置、及び、前記ロールクラウン変更装置の少なくともいずれかの駆動を制御する、請求項6または7に記載の蛇行制御装置。
  10. 前記尾端部は、前記被圧延材の尾端から前記第Mスタンドに咬み込まれている部位までの領域である、請求項6~9のいずれか1項に記載の蛇行制御装置。
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