JP2016202709A - 医療機器材料の製造方法及び医療機器材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】正方晶ジルコニアの優れた機械的特性を保ったまま、生体親和性の高いリン酸カルシウム膜を、高い密着力で意図した特定部位に作製してなる医療機器材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に凹凸を形成する第一工程と、特定部位に、凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子を蒸着または析出させる第二工程とを含む。さらに、第二工程後に、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料を、リン酸カルシウム過飽和溶液に接触させる第三工程を含んでも良い。
【選択図】図6

Description

本発明は、人体の組織や臓器において高度に機能が障害された部位の機能を補うために、生体組織や体液に直接接触して使用される正方晶ジルコニア含有医療機器材料及びその製造方法に関する。
近年、正方晶ジルコニアを含有する材料は、無毒性であり優れた機械的特性を有することから、医療機器材料として使用が拡大しており、既に、人工関節、歯冠等の歯科修復物、人工歯根に臨床応用されている。しかし、正方晶ジルコニアは、埋入部位の本来の正常組織を材料表面に伝導する組織伝導性がリン酸カルシウムに比較して乏しいことから、骨に埋入する場合も軟組織に埋入する場合も、正方晶ジルコニア表面に薄い(厚さ1−10μm)線維性結合組織が生じて骨や軟組織と直接は結合しない。また、正方晶ジルコニアについては、リン酸カルシウムのような血液適合性が報告されていない。
医療機器材料を代表して人工関節でまず説明する。また、関節には、膝関節、股関節、肩関節、肘関節等様々な関節があるが説明をわかりやすくするため膝関節の場合に関して記述する。
人工膝関節の場合、大腿骨コンポーネント、脛骨サーフェイス、膝蓋骨コンポーネントから構成される。脛骨サーフェイスは関節の駆動部であり超高分子ポリエチレン、大腿骨コンポーネントおよび膝蓋骨コンポーネントはチタン合金などの金属材料、またはセラミックス等の材質をもって構成される。しかし金属材料は長期間生体内で使用すると、金属イオンが溶出し、生体組織を害する恐れがあるほか、膝関節機能に重要な周囲筋肉組織の回復を術後にMRI観察する際の妨げになるという問題があった。
一方、日常生活において関節は非常に多くの回数屈伸を毎日繰り返すことから耐摩耗性に優れた材質が必須である。膝関節、股関節などの場合、体重の多くの割合を支えるため、強度的にも大きな靱性が必要になる。交換には外科手術を伴うため耐用年数が30年以上と言う非常に長期間が要求される。これらの理由から人工関節に用いる材料の機械的信頼性は非常に大きな問題であり、耐摩耗性の観点では金属材料よりセラミックス材料が優れていることは知られている。
近年、セラミックス技術が向上し、中でも正方晶ジルコニアを含有する材料に関しては、強度的にも十分に高い靱性、及び良好な耐摩耗性が達成できることから、歯科修復物、人工歯根、人工関節としての需要が高まりつつあり、実現のものとなってきている。
正方晶ジルコニアは、靱性、耐摩耗性等の機械的な性質の観点からも、他のセラミックスに比べ優れた性質を持つ。正方晶のジルコニア単結晶は、ダイヤモンド、サファイア等に次ぐ硬度を持ち、摩耗させること自体が困難な材料である。また、正方晶のジルコニア単結晶は、生体内に挿入した場合でも、非常に安全性の高い性質から、母材としての性質は最適な材料であった。
この人工関節に置換を行う場合、膝関節に繋がる大腿骨及び脛骨に大きな凹みを設け、コンポーネントの凸部分を挿入し固定を行う。この際に固定材としてアクリル系の樹脂であるPMMAで作製される骨セメントを用いて固定する方法が主流であった。しかし、骨セメントを用いて固定する方法では、外科手術中及び術後、アレルギー反応が生じショック症状から死亡に至る場合が発生し、使用に際しては大きな問題がある。そのため、金属材料やジルコニア等のセラミックス材料の表面に組織伝導性のある材料をコーティングすることにより、手術後体内で生体骨と直接結合させる方法が、提案されている。その最適材料として、水酸アパタイト(ヒトの骨の成分)などのリン酸カルシウムを金属材料やジルコニア等のセラミックス材料の表面にコーティングすることにより骨と結合させる試みがなされてきた(非特許文献1参照)。
先行文献調査をしたところ、人工材料の表面に周期構造の凹凸を超短パルスレーザーで作製し水酸アパタイトを蒸着することにより、母材上に骨結合性の高い水酸アパタイト膜を作製する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、パルスレーザーデポジッションによる水酸アパタイトの成膜方法が提案されている(特許文献2参照)。他のコーティング手段としては液滴を噴霧して粒子を堆積させる方法が報告されている(特許文献3参照)。また、ジルコニア表面へのプラズマ溶射による水酸アパタイトコーティングが報告されている(非特許文献2参照)。
化学的なリン酸カルシウムコーティング法としては、コーティング液としてリン酸カルシウム過飽和溶液を用いる手法(過飽和溶液浸漬法)が報告されている。例えば、ジルコニア含有の医療機器材料を予め、水酸化ナトリウム水溶液又はリン酸水溶液に80℃で4日間浸漬した後、リン酸カルシウム過飽和溶液中に7〜14日間浸漬することにより、ジルコニア含有の医療機器材料表面にリン酸カルシウムが析出することが、報告されている(非特許文献3参照)。
近年、過飽和溶液浸漬法に液中パルスレーザー照射プロセスを組み合わせた過飽和液中レーザープロセスによって、人工材料の特定部位のみにリン酸カルシウムをコーティングする技術が開発された(特許文献4、5、非特許文献4参照)。
別の化学的なリン酸カルシウムコーティング法としては、カルシウムイオンを含む溶液とリン酸イオンを含む溶液に基材を交互に浸漬する工程を繰り返すことにより、基材の表面や内部にリン酸カルシウムを析出させる手法が報告されている(交互浸漬法)(非特許文献5参照)。また、基材に親水化処理(粗面化処理を含む)を施した後に交互浸漬法を実施し、さらに過飽和溶液に浸漬することにより、種々の基材の表面に密着性の高いリン酸カルシウム膜をコーティングする方法が報告されている(特許文献6参照)。また、リン酸カルシウム過飽和溶液中に線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)を添加することにより、FGF−2を担持したリン酸カルシウム膜をコーティングする手法が報告されている(非特許文献7参照)。
特許第4440270号公報 特開2003−253424号公報 特許第4377507号公報 特開2009−57234号公報 特開2012−30993号公報 特許第4484631号公報
青木秀希他、「驚異の生体物質アパタイトと表面技術」表面技術、58(12)、744、(2007) 桑嶋孝幸他、「溶射粒子モニタリング装置によるセラミックス溶射粒子の測定」岩手県工業技術センター研究報告、第13号、(2006) 中西健文、人工関節摺動部セラミック材料の現状、セラミックス、46、282−286(2011) 大矢根綾子他、日本セラミックス協会 2013年年会、講演予稿集3D18) Taguchi T et al.Chem.Lett.27,711−712(1998). D.B.Geohegan,Appl.Phys.Lett.60,2732(1992). Ito et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.、432、182、2013
従来の技術では、リン酸カルシウムのコーティング工程で、正方晶ジルコニアが熱等の影響で相転移を起こすと、正方晶ジルコニアの優れた機械的特性が損なわれてしまうという問題がある。ジルコニアの化学物性において結晶状態は、温度上昇につれて相転移する。この際に生じる体積変化から相転移した部分は温度変化毎に収縮、膨張を繰り返し、亀裂、破断などが表面及び内部に生じる。ジルコニア粉末の開発に伴い粒径が微細化した正方晶ジルコニアの焼結体の大部分は常温で正方晶で構成されるようになったものの、レーザー照射、アニーリング等の正方晶ジルコニアへの加熱を伴う加工において単斜晶や立方晶への相転移を防ぐ必要がある。
また、特許文献1に示された方法では、固体表面の凹凸の構造は作製できる可能性はある。しかし、母材がセラミックス、中でもジルコニアの場合、加熱により相転移を生じ体積変化を生じることが知られている。この体積変化のため亀裂、破断などの微細から甚大な損傷を生じる。したがって、周期構造形成と同時に相転移を生じさせないレーザーの照射条件が必須である。また、周期構造の凹凸は短パルスレーザーの波長以下で形成されるため、レーザー波長にも依存するが、多くはサブμmのスケールとなる。このため、これの周期と同等かこれ以上の微粒子が飛来し付着した場合、凹凸に関係なく接触面積は平坦面より小さく密着性が高い構造とはなりえないという問題がある。
また、特許文献2の方法では、付着した水酸アパタイトの再結晶化が450℃の酸素―水蒸気混合ガス中での10時間のアニーリングで可能なことが報告されている。この方法は水酸アパタイト単独膜の作製方法であり、人工関節として用いる場合には母材との密着性に問題があった。
また、一般的に行われているプラズマ溶射によるコーティングの場合、ジルコニア表面へのプラズマ溶射による水酸アパタイトコーティングの微粒子の測定においては、2000℃以上の温度、160m/s以上の速度が報告されている(非特許文献2参照)。このように、正方晶ジルコニア基材へ与える損傷は、他の方法と比較しても極めて大きいものと予想される。また、プラズマ溶射の電極材料であるタングステン等の金属が蒸着物質のコンタミとして水酸アパタイト内に混入するという問題がある。
また、過飽和溶液浸漬法、電気泳動法、塗布熱分解法やゾルゲル法によるリン酸カルシウムコーティング法では、リン酸カルシウム膜の生成を促すためや、膜と基材との密着力を高めるために、熱過程や表面研磨などを伴う表面処理が必要で、この際の温度上昇や物理刺激により、正方晶ジルコニア表面から内部へのマイクロクラックや破断などの損傷(劣化)が生じるという問題があった。また、例えば、膝関節のように裏表がある医療機器のような場合、一方の面では骨結合のためのリン酸カルシウムコーティングが必要であるが、反対側の摺動面ではリン酸カルシウムがコーティングされると不都合が生じるため、特定部位のみにリン酸カルシウムをコーティングする必要がある。しかし、一般的な過飽和溶液浸漬法、電気泳動法などの従来法では、特定部位のみにリン酸カルシウムをコーティングすることが困難であるという問題がある。
特許文献4や5に記載された過飽和液中レーザープロセスによるリン酸カルシウムコーティング法では、ある種の有機高分子や金属材料に対しては、特定部位へのリン酸カルシウムコーティングに成功している。しかし、この手法をジルコニア基材に適用しても、ジルコニア上にはリン酸カルシウム膜が形成しなかった(非特許文献4参照)。
非特許文献3で報告されている過飽和溶液浸漬法は、膝関節部材のように表面と裏面の区別があって、特定表面、特定部位に限定して確実にリン酸カルシウムコーティングする方法ではない。
また、スパッタリング法は、電子ビームやイオンビームを扱える高真空容器中で行なわなければならないため、人工関節の入る大型装置を特別に準備する必要がある上、過飽和溶液浸漬法のように大面積に厚くコーティングすることが困難であるという問題がある。
また、非特許文献5のような交互浸漬法のみで、正方晶ジルコニア基材の表面に密着性の高いリン酸カルシウム膜をコーティングすることは困難であった。また、特許文献6では、正方晶ジルコニアを劣化させずに表面を親水化し、密着性に優れたリン酸カルシウムを形成させるための具体的な方法については明らかでない。また、特許文献3のように、液滴を噴霧して粒子を堆積させる方法では、堆積後に1000度以上の焼成過程が必要であり、正方晶ジルコニアを劣化させずにコーティングすることはできなかった。
本発明は、これらの問題を解決しようとするものである。本発明は、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料表面に水酸アパタイトなどのリン酸カルシウムをコーティングして、医療機器材料を製造する方法において、(1)温度上昇等による正方晶ジルコニアの相転移や損傷を抑制し、(2)材料基材とリン酸カルシウム膜との十分な結合強度を達成して、(3)特定部位のみにリン酸カルシウム膜を形成することができないという点を解決し、正方晶ジルコニアの優れた機械的特性を保ったまま、生体親和性の高いリン酸カルシウム膜を高い密着力で、意図した特定部位に作製する、医療機器材料の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、正方晶ジルコニアの優れた機械的特性を保ったまま、生体親和性の高いリン酸カルシウム膜を高い密着力で特定部位に成膜した医療機器材料を提供することを目的とする。
既に、本発明者らは、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法に関して、前記特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に形成された凹凸の周期より小さいリン酸カルシウム微粒子を蒸着または析出させる技術を出願(特願2014−223132号)で提案している。また、本発明者らは、ジルコニア系セラミックスの表面構造形成方法に関して、レーザー光照射により凹凸の周期構造を形成する技術を出願(特願2014−185472号)で提案している。
本発明は、凹凸が周期構造をとる場合のみでなく、凹凸が周期性を有しない場合にもリン酸カルシウムがセラミックス表面の凹凸に強固に付着する場合があるという知見を得て、凹凸の周期性を必要としない医療機器材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有する。
本発明の方法は、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に凹凸を形成する第一工程と、前記特定部位に前記凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子を蒸着または析出させる第二工程とを含むことを特徴とする。前記凹凸は周期性を示さない領域を有する。本発明では、リン酸カルシウム微粒子の付着領域には、周期性を示さない領域及び周期を示す領域の両方を含む場合、周期性を示さない領域のみを含む場合、の両方の場合がある。本発明では、凹凸は結晶粒の大きさからレーザー波長近傍までのサイズの凹凸であることが好ましい。本発明では、前記第一工程および前記第二工程に加えて、前記特定部位に前記リン酸カルシウム微粒子が付着した、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料を、リン酸カルシウム過飽和溶液に接触させる第三工程を、設けてもよい。例えば、前記第一工程の超短パルスレーザーは、10ps以下のパルス幅をもつ超短パルスレーザーである。例えば、前記第二工程における蒸着は、パルスレーザーを用いたレーザーアブレーションによりリン酸カルシウム微粒子を蒸着させることによる。例えば、前記第二工程でさらに雰囲気ガスを使用して正方晶ジルコニアの相転移を抑制することができる。例えば、前記第二工程における析出は、前記特定部位をカルシウムイオンを含有する液とリン酸イオンを含有する液に、洗浄と乾燥工程をはさんで交互に複数回接触させて、リン酸カルシウムを析出させることによる(交互浸漬法)。例えば、前記リン酸カルシウムが組織伝導性リン酸カルシウムである。
本発明の方法は、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に凹凸を形成する第一工程と、前記特定部位をリン酸カルシウム過飽和溶液に接触させて前記凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子を析出させる工程とを含むことを特徴とする。
本発明の方法は、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に凹凸を形成する第一工程と、前記特定部位をリン酸カルシウム過飽和溶液に接触させた状態で、前記特定部位にパルスレーザー光を照射して(過飽和液中レーザープロセス)前記凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子を析出させる工程とを含むことを特徴とする。
本発明の方法は、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に周期性を示さない凹凸を形成する工程を備えることを特徴とする。
本発明の方法は、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に紫外レーザーを照射して表面に周期性を示さない凹凸を形成する工程を備えることを特徴とする。前記凹凸は結晶粒の大きさからレーザー波長近傍までのサイズの凹凸であることが好ましい。紫外レーザーを照射して凹凸を形成する方法においても、超短パルスレーザーを用いる方法と同様の、第二工程、第三工程、その他の工程を設けることができる。
本発明は、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングしてなる医療機器材料であって、前記特定部位の表面に形成された凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子の付着層を備えることを特徴とする。また、前記リン酸カルシウム微粒子の付着層の上に、リン酸カルシウムの過飽和液相により形成されたリン酸カルシウム層を備えてもよい。また、前記リン酸カルシウムが、線維芽細胞増殖因子−2を担持していてもよい。
本発明の典型的な対象は、人工関節、人工歯根であるが、本発明は、リン酸カルシウムの優れた組織適合性が必要とされる、正方晶ジルコニアを含有する人工歯根、歯科修復物、股関節、肩関節、肘関節、血液接触部材等、様々な医療機器材料に適用可能なものである。
本発明の方法により製造された正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料は、微細な凹凸によりリン酸カルシウムコーティングの密着性を高めるとともに、リン酸カルシウムがコーティングされた特定部位に、リン酸カルシウム特有の組織伝導性、抗血栓性、生体親和性などを付与できる。例えば、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料が人工膝関節の摺動部であれば、摺動部の裏側の骨接合部分のみが骨と接合し最終的に人工膝関節と骨は一体化する。
本発明のように正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位のみリン酸カルシウムコーティングができることにより、非コーティング部位はコーティング部位とは別の機能を保持できる。例えば、人工膝関節の骨と接合する部分のみ選択的にリン酸カルシウムをコーティングすることにより、骨と人工膝関節を体内で手術後一体化させつつ、コーティング部位とは反対側表面の摺動部位は、非コーティングで低摩擦である鏡面加工された正方晶ジルコニア表面を維持できる。体液もリン酸カルシウム過飽和溶液であるが、体液からリン酸カルシウムが析出するとしてもリン酸カルシウムコーティング面上であって、摺動側の表面に膜ができることはなく、高い耐摩耗性を保つことが出来る。
また、本発明の方法によれば、リン酸カルシウムの成膜に対して、第二工程以降でパルスレーザーデポジッション法を用いる場合も、液相中で成膜する場合も、正方晶ジルコニアの相転移(劣化)を生じるような加熱・研磨などの物理刺激を伴わないため、高い機械的性質を保つことができる。
また、本発明の医療機器材料のような構造により、部分的に必要な範囲のみ正方晶ジルコニアを含有する基材とリン酸カルシウムの2種類のセラミックスを固着させ、異なる二つの機能、例えば高い機械的性質と生体親和性、耐摩耗性と骨伝導性、高い機械的性質と抗血栓性を兼ね備えた医療機器材料を作製することができる。
また、上述の特願2014−223132号、特願2014−185472号に示される周期構造を形成するには、照射フルエンス、照射回数、照射位置の重なりの条件が限定的であるため、大面積にわたる周期構造形成を行う際に、加工時間が長くなるなどの問題があった。本発明の非周期構造を利用する場合には、非周期構造形成のためのレーザー照射条件は、周期構造形成の条件に比べてより広い照射条件で実現できることから、制御の簡素化、加工の高速化が実現する。
レーザー光照射の空間分布(上段)とレーザー光によりアブレーションされたスポット跡の表面の構造分布(中段)と穴の深さの分布(下段)の関係を説明する模式図である。 本願発明の製造方法の概略を説明する図である。 本願発明の製造方法の概略を説明する図である。 本願発明の製造方法の概略を説明する図である。 実施形態1乃至3における第一工程を説明する模式図である。 実施形態1乃至3における第二工程を説明する模式図である。 実施形態1、2における第三工程を説明する模式図である。
本発明の実施の形態について以下説明する。
本発明の実施形態において、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料とは、正方晶ジルコニアを含有し、生体内に直接埋植、若しくは非埋植でも生体組織や体液に直接接触して使用する医療機器材料であれば特に制限はなく、正方晶ジルコニアの含有率が100%である正方晶ジルコニア多結晶体(TZP)、正方晶ジルコニアと単斜晶ジルコニアから成る部分安定化ジルコニア(PSZ)、正方晶ジルコニアを含む非安定化ジルコニアで母材セラミック(Al23、SiC等)を高靱性化したジルコニア高靱性化セラミックス(ZTC)、及び正方晶ジルコニアの表面被覆や分散による金属ジルコニウムやその他金属との複合体であるか否かは問わない。また、正方晶の安定化に使用される安定化剤(CaO、MgO、Y23、CeO2等)とその含有量については、正方晶が安定化できれば特に制限はないが、Y23やCeO2を含有する正方晶ジルコニアはインプラント材料として実績があり、好適に用いられる。
本発明の実施の形態において、医療機器材料とは、人工関節、人工歯根、人工骨等のように埋植されて組織や体液と直接接触する医療機器の材料、歯科修復物のように非埋植であるが組織や体液と直接接触して使用される医療機器の材料、体外血液循環ポンプのように非埋植で体液にのみ直接接触して使用される医療機器の材料など、埋植型か非埋植型かを問わず、生体組織若しくは体液に直接接触する医療機器の材料である。また、医療機器の例としてはこれらを例示することができるが、これらに限るものでもない。
本発明の実施の形態において、リン酸カルシウムとは、溶液から合成できるリン酸カルシウムを主成分とする塩である。主成分のリン酸カルシウムとしては、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸水素カルシウム無水物、リン酸八カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、カルシウム欠損アパタイト、水酸アパタイト、炭酸含有アパタイトであり、これらにNa、Sr、Mg、Zn、CO3、SO4、Si、B、Fなどの不純物が含まれていてもよい。リン酸三カルシウムや非晶質リン酸カルシウムをコーティングする場合は、6配位イオン半径がCaより小さいMg等の陽イオン、若しくは炭酸基や硫酸基を不純物として含有させると、リン酸三カルシウムや非晶質リン酸カルシウムが安定化する。Sr、Zn、Si、Fは接触する組織の再生を促進する目的で含有させることができる。リン酸カルシウムが主成分であるかどうかは、X線粉末回折法や化学分析で調べることができる。
本発明の実施の形態において、組織伝導性リン酸カルシウムとは、軟組織や骨組織が線維性結合組織の介在なしに接触することができるリン酸カルシウムであり、リン酸八カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、カルシウム欠損アパタイト、水酸アパタイト、炭酸含有アパタイト、及びこれらに不純物元素を含有させたリン酸カルシウムを例示することができる。なお、組織伝導性を示す不純物元素とその含有率の例としては、種々の文献からCO3:12重量%以下、Zn:0.3重量%以下、Mg:6重量%以下、Si:0.8重量%以下などを例示することができる。
本発明の実施の形態は、医療機器材料の製造方法において、少なくとも第一工程及び第二工程を備える。第一工程と第二工程の概略について述べる。
[第一工程]
第一工程は、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位に、超短パルスレーザーを照射して表面に数十nmから数百nm程度の凸凹形状を形成する工程である。第一工程では、超短パルスレーザーの照射によって、表面に結晶粒の大きさからレーザー波長近傍までのサイズの凹凸が形成される。第一工程においては、正方晶ジルコニア含有の医療機器材料の表面にリン酸カルシウムを高強度で密着させるために、正方晶ジルコニア含有の医療機器材料の表面に凹凸を、温度上昇を伴わないレーザー加工で設ける。超短パルスレーザーに換えて後述する紫外レーザーを用いることもできる。
第一工程では、例えば、ジルコニア表面の凹凸加工に際しては熱的な影響を与えにくい超短パルスレーザーを用いる。超短パルスレーザーにより照射された部分は形状変化を生じるが、ピークパワーが高いためパルス全体としてのエネルギーは極めて抑えられ、パルスが短いため、吸収した熱が照射表面から内部や表面周囲に拡散することなく照射された部分のみアブレーションで吹き飛ぶ。
まず、本発明の実施の形態の理解を深めるために、図1を参照して、レーザー光照射による基材の表面形状の凹凸について説明する。図1は、レーザー光照射の空間分布(上段)と、レーザー光によりアブレーションされたスポット跡の表面の構造分布(中段)と、穴の深さの分布(下段)の関係を説明する模式図である。上段の縦軸は、フルエンス(Fluence)である。
フルエンスは、ある場所に照射されたレーザー光の一パルスあたりの単位面積当たりのエネルギーであり、均一なビームの場合にはレーザー光の1パルス当たりの出力エネルギーを照射断面積で割って求めたエネルギー(J/cm2)で与えられる。空間的にガウシアンビームの場合にはパルスエネルギーがE、1/e2強度でのビーム半径をrとすると、ビーム中央での最大値であるピークフルエンスFpeakは次式で与えられる。
peak =2・E/(πr2
図1の下段の下向き縦軸は、穴の深さの分布(Depth)を示す。あるショット数だけレーザーパルスを照射した後の形状を示している。横軸は、スポットの半径方向の距離を示す。(a)(b)図の、中段の表面の構造分布において、縦縞模様は、凹凸の周期構造が形成されている領域を示し、その外側の点状環状部は、アブレーション跡はあるが周期構造が形成されていない非周期構造領域を示す。(b)図の中段の表面の構造分布において、円中央部分のまだら模様は、周期構造が崩れている非周期構造領域を示す。
図中、FLLは、周期構造が形成されるフルエンスの有効範囲の下限値を示す。Fthは、アブレーション跡が形成されるフルエンスのアブレーション閾値を示す。FULは、周期構造が形成されるフルエンスの上限値、DLLは、周期構造が形成される穴の深さの有効範囲の下限値を示す。DULは、周期構造が形成される穴の深さの有効範囲の上限値を示す。
(a)図は、FpeakがFULより小の場合を示す。穴の深さは、Dbottom(穴の底面の深さ)<DULの場合である。(a)図では、穴の深さDが、0<D<DLLの領域は、周期構造が不明瞭な非周期構造であり、DLL<D<Dbottomの領域(図の縦縞の部分)には周期構造が形成されていることを、模式的に表している。
(a)図よりフルエンスが上がると、(b)図のようになる。(b)図は、Fpeak(フルエンスのピーク強度)がFULより大の場合を示す。穴の深さは、穴の底面の深さDbottom>DULである。(b)図のように、フルエンスが上がると、レーザースポットによる穴の中央部分は周期構造が崩れて非周期構造となり、周期構造が形成される領域はドーナッツ状(環状)になる。穴の深さDが、0<D<DLLの領域は周期構造が不明瞭で、DLL<D<DULの領域(図中、縦縞の部分)は周期構造が形成されている領域であり、DUL<D<Dbottomの領域は、フルエンスが高すぎて周期構造が崩れた非周期構造領域である。
図1に表示した2つの場合の他の、フルエンスピーク強度が、Fth<Fpeak<FLLの場合、Fpeak<FLLの場合は、周期構造形成領域がない非周期構造の凹凸領域となる。なお、図では、レーザー光照射跡スポットを円で図示したが、空間強度分布成形光学素子や空間制限マスクにより適宜形状を設定できるので円形に限らない。
具体的に、本発明者らは、実験により、チタンサファイアフェムト秒レーザー(中心波長800nm、パルス幅80fs、繰り返し550Hz/秒)を、焦点距離100mmから焦点距離300mmのレンズで正方晶ジルコニアを含むセラミック表面に集光して、凹凸形状を調べた。セラミック表面でのビームの強度分布は、ガウシアン分布であり、ピークのフルエンスが、1.5J/cm2よりも大きな場合に、照射場所で材料表面のアブレーションが観察された。
チタンサファイアレーザー光をフルエンス2.5〜8J/cm2で同じ場所に複数回(5回以上数百回以下程度)照射した場合には、直線偏光方向に平行な縞模様が形成され、その周期は用いた波長800nm程度であった。レーザースポット内の平行な縞模様の周辺には周期性を有しない凹凸形状が観察された。
上述のチタンサファイアレーザー光を照射して形成した凹凸形状が周期性を有しない場合は、次のような場合であった。照射位置を相対的に移動させないで複数回照射する場合を(A)、照射位置を相対的に移動させて複数回照射する場合を(B)とする。
(A)レーザー光照射は、アブレーション閾値以上で、かつ周期構造が形成されるフルエンスの下限よりも小さなフルエンスで、行う。例えば、チタンサファイアレーザー光を正方晶ジルコニアを含むセラミック表面に照射する場合は、アブレーション閾値が1.5J/cm2で、周期構造が形成されるフルエンスの下限が2.5J/cm2であることから、1.5J/cm2以上で2.5J/cm2未満のフルエンスで、複数回(5回以上数百回以下程度、例えば40回)照射したとき、表面には数十nmから数百nm程度の凸凹形状の非周期構造が形成された。
(B)レーザー光照射は、周期構造が形成されるフルエンスの下限以上のピークフルエンスを有する光照射を行う。例えば、チタンサファイアレーザー光を正方晶ジルコニアを含むセラミック表面に照射する場合は、照射ビームの中央部分のピークフルエンスが2.5J/cm2以上で、照射位置をショット毎に相対的にずらしながら照射したとき、照射後の表面には周期的構造が観測されず細かな非周期的な凹凸が形成された。該凹凸は、凹凸の高い所と隣り合う低い所の高さの差、および隣り合う高い所と高い所の距離が、100nm位であった。ビームの直径Dに対して一ショットあたりの移動量Xで割った値N(N=D/X)を実効的照射回数とすると、ピークフルエンス約4J/cm2において実効的照射回数N=2以上40以下の場合に実験を行ったところ、Nがいずれの場合でも数十nmから数百nm程度の凸凹形状の非周期構造が形成された。凹凸の形成は、ビームをずらして照射することにより、ビームの空間的に外側のフルエンスが2.5J/cm2よりも小さい照射により、引き起こされたものである。
よって、セラミック表面に対してビームを相対的に移動しながら照射する場合(場合(B))に望ましい条件は、チタンサファイアレーザーの場合、ビームの中央部分では2.5J/cm2を超えるフルエンスを持ち、移動した照射時にアブレーションの閾値から2.5J/cm2のフルエンス範囲での照射が2回以上あればよい。
数十nmから数百nmという凹凸の大きさを決める物理的な要因として、多結晶の結晶粒の大きさがあげられる。イットリア部分安定化ジルコニア基材の場合には、多結晶の結晶粒が平均粒径200nmであり、基材材料中には数十nmから数百nmの結晶粒が存在していることから、この結晶粒のサイズが、レーザー照射により形成される凹凸形状の大きさに関係している、と考えられる。
また、後述するように、第二工程で形成される膜の厚さが約一ミクロンよりも小さいこと、第三工程で形成される膜の厚さが一ミクロンから数十ミクロンであることから、凹凸の上限は、数百nm程度が好ましい。第二工程で形成される膜がジルコニア基材に均一に付着するには基材の凹凸は膜厚よりも小さいか同程度であることが望ましい。
本発明の実施の形態において、表面の凹凸にはこの数十nmから数百nmの凹凸形状を用いることができる。
正方晶ジルコニアに熱的な影響による結晶相の変化を与えずに表面に凹凸を形成するレーザーとして、10ps以下のパルス幅のレーザーが好ましく、チタンサファイアレーザーやイッテルビウム(Yb)系のレーザーを使うことができる。
Yb系レーザー(波長1030nm、パルス幅200fs)でも、同様の実験を行った。セラミック表面に対してビームを移動しないで複数回(5回以上数百回以下程度、例えば40回)のパルスを照射する場合(場合(A))に、数十nmから数百nm程度の凸凹形状を形成するために望ましいYb系レーザー(波長1030nm、パルス幅200fs)の条件は、周期構造が形成される照射フルエンスの下限が1.5J/cm2であり、Yb系のレーザーのアブレーション閾値が約1J/cm2であることから、1J/cm2以上1.5J/cm2未満の範囲が望ましい。
また、周期構造と非周期構造とは、例えば次のようにレーザー照射条件を制御することにより、所望の構造を作り分けることができる。波長810nm(チタンサファイアレーザー)、パルス幅80fsの場合、エッチレート(単位ショット当たりのエッチング深さ)が132−280(nm/shot)の範囲であるときに、縞状の周期構造が確実に形成された。一方、波長1030nm(Yb系のレーザー)、パルス幅200fsの場合、エッチレートが約158−355(nm/shot)の範囲であるときに、縞状の周期構造が確実に形成された。このことから、[エッチレート/波長]は、波長810nmでは、132−280(nm/shot)/810nmが、0.16−0.34となり、波長1030nmでは、158−355(nm/shot)/1030nmが、0.15−0.34となる。このことから、超短パルスレーザーの波長が異なっていても、[エッチレート/波長]が、およそ0.16−0.34の範囲である場合に、縞状の周期構造が確実に形成できる、といえる。よって、フェムト秒レーザー光の波長が異なっていても、表面に数十nmから数百nm程度の凸凹形状の非周期構造が確実に形成できる条件として、[エッチレート/波長]が0.15未満であることが望ましい。
また、セラミック表面に対してビームを相対的に移動しながら照射する場合(場合(B))に望ましい条件は、Yb系レーザーの場合、ビームの中央部分では1.5J/cm2を超えるフルエンスを持ち、移動した照射時にアブレーションの閾値1J/cm2から1.5J/cm2のフルエンス範囲での照射が2回以上あればよい。
本実施の形態では、セラミック表面に対してレーザービームを移動しない場合又は移動する場合のいずれにおいても、レーザー照射により基材表面に形成される凹凸形状が部分的に非周期性構造である領域を有していれば足り、基材表面に周期性構造の領域が存在していてもよい。図1に示されるようなレーザー光スポットを、複数個スタンプすることによって周期構造及び非周期構造を部分的に備える基材表面の場合であってもよく、本願の実施の形態では、周期性を持たない非周期構造領域の凹凸形状内にリン酸カルシウム微粒子が蒸着や析出する。
また、点状、線状に集光された超短パルスレーザーを照射することでアブレーションを行い凹凸の非周期構造を積極的に作り出しても構わない。この場合も、熱的な影響の出ない範囲のパルス幅のレーザーを用いる。後述する実施形態ではパルス幅を10ps以下とするが、熱的な影響はパルスエネルギーや繰り返し周波数などの条件により変化するものであり、熱的な影響がでないことが確認できるのであれば、10psよりも長い場合もありうる。この時用いられる加工用レーザーは回折限界のビーム品質を持ちF1の集光光学系を仮定すると、集光幅は約1.2λとなる。なお、λはレーザーの波長を表す。そのため、点状、線状集光で数十nmから数百nmのサイズの凹凸を形成する場合は、波長1ミクロンよりも波長が短いレーザーを用いる方が望ましい。
ジルコニアの吸収が大きい波長450nm以下の短波長レーザーを用いる場合には、物質中への侵入長が短く、高い光子エネルギーによる低温アブレーションが可能なため、10ps以下の超短パルスに限定されずに熱的な影響のない表面のアブレーション加工ができる。アブレーション閾値以上のフルエンスで表面に照射することにより、数十nmから数百nmの凹凸を持つ表面を加工できる。波長450nm以下の短波長レーザーとして、真空紫外レーザーを含む紫外レーザーが挙げられる。短波長レーザーは、直接レーザー光を発生するものの他、可視や赤外波長のレーザー光を高調波変換したものであってもよい。
[第二工程]
第二工程は、第一工程で形成された凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子を、特定部位に、蒸着または析出させる工程である。凹凸内に微粒子全体が存在可能な直径以下の水酸アパタイト等のリン酸カルシウム微粒子を付着させることが密着性を高める必須の条件となる。これは、凹凸の深さもしくは凹凸の面方向の距離の1/2の短い方のサイズより、微粒子直径が小さいことで、達成可能である。微粒子が球形のときは微粒子直径が「微粒子の大きさ」であり、形状を特に限定しない場合には、一番長い部分の大きさを、「微粒子の大きさ」と呼ぶ。凹凸の深さとは、隣り合う凹凸の高さの差(peak to valley、PV値)のことである。凹凸の深さは、違う位置での凹凸では違う値を持っているが、その深さの分布の統計的な平均値を、代表的な値として、使用に適するリン酸カルシウム微粒子のサイズを調整するとよい。凹凸の面方向の距離とは、凹凸が一つのペアとすると、凹凸凹の凹−凹間の距離、あるいは凸凹凸の凸−凸間の距離のことをいう。凹凸の面方向の距離は、着目する場所により異なる値を持ち、ある分布を形成する。その面方向の距離の統計的な平均値を、代表的な値として、使用に適するリン酸カルシウム微粒子のサイズを調整するとよい。
第二工程では、凹凸のレーザー表面加工された正方晶ジルコニア含有の医療機器材料表面に、リン酸カルシウム塊へのパルスレーザー照射によるアブレーションによるパルスレーザーデポジッション若しくは交互浸漬法を用いて、リン酸カルシウム微粒子を蒸着または析出させる。
また、第二工程において、過飽和液中レーザープロセスを用いて、リン酸カルシウム微粒子を析出させることもできる。
凹凸表面に蒸着または析出させるリン酸カルシウム微粒子の大きさの上限については先に記載の通りであるが、下限については特に限定されない。サブナノサイズのリン酸カルシウムクラスターから、ナノサイズやミクロンサイズまでの大きさの非晶質および結晶質のリン酸カルシウム粒子も、微粒子に含まれる。また、微粒子の形状は特に限定されない。球状であっても良いし、板状や針状、柱状、不定形状など、いずれの形状であっても良い。これらの一次微粒子が表面に密に存在すれば、互いに連結して層状の膜を形成し、凹凸表面を被覆する場合もある。
パルスレーザーデポジッション法を用いる場合は、凹凸のレーザー表面加工された場所のみに付着するように設定されたマスクを用いて、凹凸よりも十分に小さい粒径を持つリン酸カルシウムの微粒子をレーザーアブレーションにより蒸着させる。このため、凹凸内部のジルコニア表面層を覆うようにリン酸カルシウム微粒子が付着する。
第二工程ではレーザー加工されたジルコニア表面の凹凸よりも十分に小さい粒径を持つリン酸カルシウムの微粒子をパルスレーザーデポジッションで蒸着することにより、ジルコニア表面層にリン酸カルシウム微粒子を強固に蒸着する。また、関節内部の駆動面には、摩擦抵抗を減らす意味でも表面の凹凸加工はせず鏡面に研磨されたジルコニア表面としリン酸カルシウムの蒸着は行わない。このため、レーザーアブレーションにより高立体角に放出されるリン酸カルシウム微粒子をマスク等により空間的に限定して蒸着させる。
第二工程において、ジルコニア表面にリン酸カルシウム微粒子が強固に密着するためには、表面加工した凹凸に対して十分小さいリン酸カルシウム微粒子を表面に付着させる必要がある。そのためリン酸カルシウムの粒子発生にはアブレーション用レーザーとして短パルスレーザーを用いる。アブレーションレーザーのパルス幅がns以上である場合、アブレーションにより発生する粒子は熱的に深くまで伝わり放出される粒子は、原子分子状の気体から数10μmの大きな粒子まで発生する。微細構造の内部より十分小さい粒子を蒸着させるためアブレーション用レーザーのバルス幅はサブns(1ns未満)のパルス幅、好ましくは100ps以下のパルス幅を持つレーザーが望ましい。また、リン酸カルシウムの吸収が強くなる400nm以下の発振波長、好ましくは250nm以下の発振波長を持つレーザー光が望ましい。また、レーザー照射を行うリン酸カルシウム表面の法線を中心にアブレーションプルームは放出するが、中心部では比較的大きな微粒子が放出され、浅い角度ほど小さい微粒子が放出されることが知られている。この様に付着させる微粒子の大きさを制御できる場合の構造においてはアブレーションのパルス幅は限定しない。
前記アブレーションにより発生する粒子は、固体や液体であり、液滴状のものも含まれる。
付着させるアブレーション物質は高速で放出され、初速は105cm/sのオーダーに達する。典型的なリン酸カルシウムである水酸アパタイトの比熱は、0.18−0.28cal/gKなので、初速度が1×105cm/sで衝突時に初速度を維持し運動エネルギーがすべて熱エネルギーに変換すると仮定すると、付着した微粒子は500℃に上昇することになる。2×105cm/sの場合、2000℃に相当し付着された正方晶ジルコニアの表面は相転移を生じる温度に十分達する。そのため、リン酸カルシウム微粒子を付着させる場合、低圧力下でレーザー照射を行うことで、アブレーション微粒子は速度を制動されジルコニア上に緩やかな速度で付着する。微粒子の制動に用いる気体は、化学的変化を伴わなく再結晶化が促進される気体であればよく、水蒸気、アルゴン、ヘリウム、窒素などが用いられる。
低圧力中の微粒子を含むアブレーションプルームの挙動である放出面からのプルーム先端の飛行距離と時間は抗力モデルとして説明することが出来る(非特許文献6参照))。時刻tでの速度V(t)は初速V0、減速定数βから
V(t)=V0exp(−βt)
先端の位置R(t)は
R(t)=(V0/β)(1−exp(−βt))
最終的な到達距離はR(∞)=V0/βで表せられる。
付着させる正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料は、R(∞)からわずかに短い距離に設定するかもしくは圧力を設定することで、速度による影響なく付着させることが出来る。
第二工程のパルスレーザーデポジッションでは、微粒子の粒径は、アブレーションを行うレーザーパルス幅及び単位面積当たりの照射強度により制御でき、飛行速度は、レーザーの照射条件と雰囲気ガスの圧力と微粒子の飛行距離により制御でき、これらの制御によって、熱的な影響により正方晶ジルコニア表面の機械的強度劣化が起こらない状態での蒸着が可能である。
第二工程として交互浸漬法を用いてリン酸カルシウムを析出させる場合は、凹凸のレーザー表面加工された場所を、カルシウムイオンを含有する溶液とリン酸イオンを含有する溶液に、洗浄と乾燥工程を挟んで、交互に数回接触させて、リン酸カルシウムを析出させる。
交互浸漬法を用いてリン酸カルシウムを選択的にジルコニア基材に析出させる場合、第一工程において、酸素雰囲気もしくは水蒸気雰囲気中での超短パルスレーザーによる微細凹凸構造作成を行うことにより、レーザー照射範囲のみ選択的にリン酸カルシウムの微粒子膜を構成することが可能である。これは、酸素雰囲気もしくは水蒸気雰囲気中での超短パルスレーザー照射により、ジルコニア表面が荒れて親水化し、水濡れ性が向上するためと考えられる。
第二工程の交互浸漬法で使用するカルシウムイオンを含有する液は、CaCl2水溶液などのカルシウムイオンを含む溶液であり、カルシウムイオンの濃度は特に制約されないが、通常1〜1000mM、好ましくは100〜500mM、さらに好ましくは200〜250mMである。カルシウムイオンを含有する液の例としては、医療用カルシウム輸液剤、塩化カルシウム溶液、乳酸カルシウム溶液、酢酸カルシウム溶液、グルコン酸カルシウム溶液、クエン酸カルシウム溶液などが挙げられる。溶液の温度及びpHは限定されないが、好ましくは温度10〜50℃、pH6〜13、特に好ましくは温度20〜40℃、pH7〜10である。溶媒は限定されないが、カルシウム成分の溶解度の点から、水溶媒の使用が好ましい。正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料を、カルシウムイオンを含有する液に通常1秒〜100分好ましくは10〜60秒浸漬させ、その後、通常1〜100cm/分、好ましくは15〜60cm/分の引き上げ速度で、液から取り出す。
第二工程の交互浸漬法で使用するリン酸イオンを含有する液は、リン酸イオンの濃度は特に制約されないが、通常1〜1000mM、好ましくは100〜500mM、さらに好ましくは200〜250mMのリン酸イオン含有液である。リン酸イオンを含有する液の例としては、医療用リン酸輸液剤、酸緩衝生理的食塩水、リン酸溶液、リン酸水素二カリウム溶液、リン酸二水素カリウム溶液、リン酸水素二ナトリウム溶液、リン酸二水素ナトリウム溶液、リン酸二水素ナトリウムアンモニウム溶液などが挙げられる。溶液の温度及びpHは限定されないが、好ましくは温度10〜50℃、pH6〜13、特に好ましくは温度20〜40℃、pH7〜10である。溶媒は、限定されないが、リン成分の溶解度の点から水溶媒の使用が好ましい。正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料は、リン酸を含有する液に通常1〜60秒、好ましくは1〜5秒浸漬される。また正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料は、通常1〜100cm/分、好ましくは15〜60cm/分の引き上げ速度で液から取り出す。
第二工程の交互浸漬法で、「洗浄と乾燥をはさむ」とは、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料を、カルシウムイオンを含有する液やリン酸イオンを含有する液から取り出すごとに、水を含む媒体中に、通常1〜60秒、好ましくは1〜5秒浸漬し、その後、通常1〜100cm/分、好ましくは15〜60cm/分の速度で引き上げ、その後、通常10秒〜60分、好ましくは1〜10分乾燥させることである。このようにして、カルシウムイオンを含有する液への浸漬、洗浄と乾燥、リン酸イオンを含有する液への浸漬、洗浄と乾燥の4操作を1〜10回、好ましくは1〜3回繰り返すことで、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料に対して交互浸漬法を実施する。
第二工程として過飽和液中レーザープロセスを用いてリン酸カルシウムを析出させる場合は、第一工程により表面凹凸を作製した正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料用基材をリン酸カルシウム過飽和溶液中に設置し、該基材表面に低エネルギーのパルスレーザー光を照射する。従来、特許文献5に記載の過飽和液中レーザー照射プロセスのみでは、レーザー光吸収性に乏しい正方晶ジルコニア表面にリン酸カルシウムを形成させることはできなかった(非特許文献4)。しかし、第一工程の超短パルスレーザー処理により、正方晶ジルコニアを含有する基材の表面に凹凸を形成させると、表面が親水化し、水濡れ性が向上するだけでなく、紫外〜可視光領域における光吸収性が付与される。これは、上記処理によってジルコニア表面に酸素空孔が生成することに起因すると考えられる。このような超短パルスレーザー処理によるジルコニアの表面親水化と光吸収性の増強効果により、過飽和液中レーザー照射プロセスによって、ジルコニア基材の凹凸上にリン酸カルシウムを形成できるようになる。
過飽和液中レーザープロセスで用いるレーザー光は、局所加熱効果によるリン酸カルシウムの析出を誘起できるフルエンスであれば良く、ジルコニア基材のアブレーションを目的とした第一工程のレーザー光フルエンスよりも低エネルギーで良い。例えば、周波数30Hz、波長355nmのNd:YAGレーザーであれば、200mJ/pulse/cm程度のレーザー光を1〜30分照射すれば、リン酸カルシウム膜を形成できる。この際、非集光のレーザー光を照射することで、集光レーザー照射に比べて大きな面積を処理することができる。
第一工程の超短パルスレーザー処理によって表面凹凸を作製した正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料を、そのままリン酸カルシウム過飽和溶液中に浸漬し、リン酸カルシウムを成膜することもできる。超短パルスレーザー処理を施すことによってジルコニア表面は親水化して水濡れ性が向上し、リン酸カルシウムの析出に有利な表面環境を与える。リン酸カルシウムの成長単元はサブナノサイズのリン酸カルシウムクラスターであり、表面凹凸の全表面に過飽和溶液が接触するため、過飽和溶液の過飽和度を調節することによって、表面凹凸の凹部に凹凸のサイズに比べて小さいナノサイズのリン酸カルシウム微粒子が析出する。過飽和溶液の過飽和度や溶液の接触時間を調節することで、多量のリン酸カルシウム微粒子を析出させたり、析出した微粒子をさらに成長させることで、凹部内面を含めた表面をリン酸カルシウムの膜で覆うことができる。
図2は、本願発明の製造方法の概略を説明する図であり、レーザー照射により基材表面に凹凸を形成する第一工程と、凹凸にリン酸カルシウム微粒子を蒸着又は析出させる第二工程を示す。
図3は、本願発明の製造方法の概略を説明する図であり、レーザー照射により基材表面に凹凸を形成する第一工程と、基材をリン酸カルシウム過飽和溶液に接触させリン酸カルシウムを析出させる第二工程を示す。
[第三工程]
第二工程で正方晶ジルコニア含有の医療機器材料表面に導入されるリン酸カルシウムは、厚さ1μm以下の超薄膜である場合があるが、これをさらに成長させて1μm以上の膜厚とするためには、次のような第三工程を追加すればよい。
第三工程として、表面にリン酸カルシウムを蒸着または析出させた正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料をリン酸カルシウム過飽和溶液中に浸漬する。過飽和溶液中に浸漬することで、表面にリン酸カルシウムが蒸着または析出した部分に限定して、さらにリン酸カルシウム膜が成長していく。室温から体温程度の温度で、数時間〜数日間過飽和溶液中に浸漬することにより、厚さ1μm以上の十分な膜厚を持つリン酸カルシウム膜を形成させることができる。
図4は、本願発明の製造方法の概略を説明する図であり、レーザー照射により基材表面に凹凸を形成する第一工程と、凹凸にリン酸カルシウム微粒子を蒸着又は析出させる第二工程と、基材をリン酸カルシウム過飽和溶液に接触させリン酸カルシウム膜を成膜する第三工程を示す。
凹凸のレーザー表面加工後にリン酸カルシウムを付着または析出させた正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料を、リン酸カルシウム過飽和溶液に浸漬等で接触させると、材料表面のリン酸カルシウムを足場にして、過飽和溶液からリン酸カルシウムがさらに析出・結晶成長し、1〜数十μmの膜厚の、主として水酸アパタイト結晶からなるリン酸カルシウム膜が形成される。第三工程には、第二工程で形成されたリン酸カルシウムに含まれる、生体内環境下で準安定なリン酸カルシウム相(非晶質または低結晶性のリン酸カルシウム、リン酸八カルシウムなど)の水酸アパタイト結晶への変化や結晶性の向上を促すことで、リン酸カルシウム膜の生体内安定性を向上させる効果もある。
第三工程で使用するリン酸カルシウム過飽和溶液とは、リン酸カルシウムの溶解度以上にカルシウムとリンが溶け込んでいる溶液のことを意味し、種々の組成の溶液が知られている。リン酸カルシウム過飽和溶液は、安定リン酸カルシウム過飽和溶液と、不安定リン酸カルシウム過飽和溶液に大別することができる。本発明における安定リン酸カルシウム過飽和溶液とは、溶液調製完了後から少なくとも8日間は、リン酸カルシウムを析出しない溶液のことである。このような安定リン酸カルシウム過飽和溶液には、ハンクス溶液やヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度及びpHを有する水溶液(擬似体液)などがある。また、本発明における不安定リン酸カルシウム過飽和溶液とは、溶液調製後7日以内に、自発的核形成によってリン酸カルシウムを析出する溶液のことである。リン酸カルシウム過飽和溶液は、種々の公知の方法で調製することができる。リン酸カルシウム過飽和溶液としては、例えば、前記のハンクス溶液、擬似体液、擬似体液と同等の塩化ナトリウム濃度、及び、擬似体液の1.5倍のリン酸及びカルシウムイオン濃度を有する水溶液、擬似体液の5倍のイオン濃度を含む水溶液、医療用輸液の混合液等を挙げることができる。これらの溶液の具体的な例として、Ca成分1.2〜2.75mM、リン酸成分0.6〜5.0mM、K成分0〜20mM、Na成分100〜150mM、Mg成分0.1〜1mM、Cl成分70〜150mM、HCO3成分0〜60mMを含みpHが5.0〜9.0の水溶液、あるいはCa成分0〜1.2mM、リン酸成分2.5〜6mM、K成分0〜40mM、Na成分60〜90mM、Cl成分60〜90mMを含みpHが5.0〜9.0の水溶液などを挙げることができる。
なお、後述するように、リン酸カルシウム過飽和溶液が不安定過飽和溶液の場合は、表面にリン酸カルシウムが蒸着または析出した部分に限定されることなく、リン酸カルシウム膜が成長する。
リン酸カルシウム過飽和溶液中には、さらに、リン酸カルシウム膜中に担持・複合化する目的で、細胞や組織に作用する成分を添加しても良い。そのような成分としては、生体微量元素、タンパク質、抗体、遺伝子、補酵素、薬剤などが挙げられる。なお、これらの成分を添加したリン酸カルシウム過飽和溶液中で、同成分がリン酸カルシウム中に担持されることは、既に報告されている。
リン酸カルシウム過飽和溶液中に線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)を添加することによって、FGF−2を担持したリン酸カルシウム膜を形成することができる。例えば、第一工程で凹凸形成処理後、第二工程でリン酸カルシウム微粒子を付着させたジルコニア基材を、FGF−2を添加したリン酸カルシウム過飽和溶液に浸漬することで、低結晶性アパタイトとFGF−2の複合体をジルコニア表面に強固に結合させることができる。このようにして、FGF−2とアパタイトを表面に複合化したジルコニア基材は、生体内環境下において、活性を保ったFGF−2を長期間に渡って徐放し、周囲の骨組織再生や血管新生を促進すると考えられる(非特許文献7参照)。FGF−2の効果によって、ジルコニア製大腿骨コンポーネントと周囲の骨組織との結合を一層促進することができる。
また、リン酸カルシウム過飽和溶液中に有機高分子基材を浸漬し、同基材表面にパルスレーザー光を照射すると(過飽和液中レーザープロセス)、基材表面のレーザー照射面で、リン酸カルシウム膜が高速で成長することが確認されている(特許文献5参照)。このことから、第三工程において、リン酸カルシウムの膜成長を加速したり、リン酸カルシウムの結晶化を促進する目的で、この過飽和液中レーザープロセスを併用しても良い。過飽和液中レーザープロセスは、第三工程の過飽和溶液への浸漬の初期段階のみに併用しても良いし、全行程に渡って併用しても良い。
[その他の工程]
第二工程によって凹凸表面にのみリン酸カルシウムが付着したジルコニアを、必要に応じて、500℃程度の正方晶ジルコニアに損傷が発生しない温度でアニーリングすることにより、表層のリン酸カルシウムの再結晶化を行いさらに付着を進めることができる。
詳しく述べると、第二工程のパルスレーザーデポジッションや交互浸漬法で基材表面に導入したリン酸カルシウムの大部分は、結晶としての構造を有していない。結晶構造が必要な場合には、500℃程度でアニーリングすることで結晶化させる。第二工程の後、第三工程の前にアニーリングを行っても構わないし、第二工程のパルスレーザーデポジッション時に正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料を加熱(350℃以上600℃以下程度の温度で)することによりリン酸カルシウムを結晶化しても構わない。第二工程後のアニーリングなしで、第三工程の過飽和溶液への浸漬によって、リン酸カルシウムの結晶化と膜厚の増加を行ってもよい。
[実施形態1]
本実施形態を図5乃至7を参照して以下説明する。図5は、本実施形態の第一工程を説明する模式図である。図5は、医療機器材料の例である大腿骨コンポーネント1に超短パルスレーザー2を照射する様子を示している。第一工程として、10ps以下のパルス幅を持つ超短パルスレーザー2を、ジルコニアで作成した大腿骨コンポーネント1に、図5のように照射する。この条件を満たすパルス幅のレーザーとして、チタンサファイアレーザー、Yb:YAGレーザーがあげられるが、他のレーザーであってもかまわない。3の位置はレーザー光が照射された位置(超短パルス照射跡)であり、大腿骨コンポーネント1を移動もしくはレーザー光の照射方向を変え、大腿骨と接触する面全てに数十nmから数百nm程度の凹凸形状を作製する。前記凹凸形状は非周期構造である。なお、前記凹凸形状としては、周期構造領域と非周期構造領域が混在しているものでもよい。
図6は、本実施形態の第二工程を説明する模式図である。第二工程として、大腿骨コンポーネント1に、パルスレーザーデポジッションにより、リン酸カルシウム微粒子を蒸着させる。第一工程において超短パルスレーザーで表面の凹凸を作製した大腿骨コンポーネントは、図6で示すように、付着させる原料の水酸アパタイト塊4に短パルスレーザー6を照射し、水酸アパタイト微粒子群5を放出させる。放出した水酸アパタイト微粒子群5の速度は大腿骨コンポーネント1を劣化させないように制御する。その制御の手段として、低圧力の雰囲気ガスを用いることができる。雰囲気ガスは水酸アパタイトの再結晶化を促進させるための水蒸気ガス及び不活性ガスが対象となる。大腿骨コンポーネント1の関節駆動部の骨と接合しない面は遮蔽マスク7で付着することを防ぐ。大腿骨コンポーネント1は、均一に微粒子が付着するように立体を構成する様々な軸で移動及び回転をさせる。
図7は、本実施形態の第三工程を説明する模式図である。第三工程として、前記第二工程で選択的に骨との結合部に水酸アパタイトを蒸着したジルコニア製大腿骨コンポーネント1を、図7に示すようにリン酸カルシウム過飽和溶液8中に浸漬する。過飽和溶液として、ヒトの体液の1.5倍のカルシウムおよびリン酸イオン濃度を含む中性生理食塩水(pH=7.40、温度25℃)を用いる。過飽和溶液中で蒸着アパタイトは膜厚が増加して厚さ数ミクロンの水酸アパタイト膜が形成される。一方、水酸アパタイト微粒子が付着していない部分にはアパタイト膜が形成しない。この様にして、水酸アパタイト微粒子が付着した部分のみ選択的に十分な膜厚のアパタイト膜が形成される。
なお、第三工程において、さらに、アニーリング用レーザー9をアニーリング位置10に配置されているジルコニア製大腿骨コンポーネント1に照射して、結晶化を進めてもよい。
[実施形態2]
本実施形態を図5乃至7を参照して以下説明する。図5、6、7は、それぞれ本実施形態の第一工程、第二工程、第三工程を説明する模式図である。図5における超短パルスレーザー2を超短パルス照射跡3において点状もしくは線状に集光し移動させることで、数十nmから数百nm程度の凹凸構造を形成する。本実施形態では、超短パルスレーザーとして、紫外の波長のものを用いることができる。その後の工程に関しては実施形態1と同様である。
[実施形態3]
本実施形態を図5乃至7を参照して以下説明する。本実施形態では、実施形態1または実施形態2の第二工程において、水酸アパタイトの微粒子を蒸着した大腿骨コンポーネント1を500℃に加熱することにより蒸着した水酸アパタイトの再結晶化を行う。
[実施形態4]
本実施形態では、実施形態1の第二工程として、パルスレーザーデポジッションに替えて交互浸漬法を実施する。第一工程により超短パルスレーザーで表面の凹凸を作製した大腿骨コンポーネントを、200mM CaCl2水溶液に10秒間、超純水に1秒浸漬した後、数分間静置して乾燥させる。次に、200mM K2HPO4・3H2O水溶液に10秒間、超純水に1秒浸漬した後、数分間静置して乾燥させる。以上の、洗浄・乾燥工程をはさんだカルシウムおよびリン酸イオン溶液への浸漬工程を3回繰り返す。その後の第三工程に関しては実施形態1と同様である。
第三工程の過飽和溶液として擬似体液を用いて、交互浸漬法で凹凸表面に析出させたリン酸カルシウムの成長と結晶化を進め、アパタイト膜を形成させる(36.5℃で24時間浸漬)。ジルコニア基材に対する膜の密着性をテープ引き剥がし試験により評価すると、アパタイト膜は剥離せず、基材上に残存したアパタイトが観察される。
本実施形態の交互浸漬法においては、第一工程の超短パルスレーザー処理で作製された凹凸面へのカルシウムイオンおよびリン酸イオンの交互吸着・結合反応が進行し、凹凸部の全表面に渡って、リン酸カルシウム微粒子(非晶質のナノ〜サブミクロン粒子)が析出する。ここでは、超短パルスレーザー処理でジルコニア表面が親水化し(水に対する静的接触角が約85°から30°以下に減少)、水濡れ性が向上することで、凹部の内面深部にまで交互浸漬処理液が侵入・接触し、同部位へのカルシウム・リン酸イオンの吸着・結合を促す。第一工程を施していない未処理のジルコニア基材(超短パルスレーザーで表面凹凸を作製していない鏡面研磨基材)に対しては、たとえ第二工程の交互浸漬法を施しても、リン酸カルシウムは析出しない。これは、未処理基材表面の水濡れ性が不十分であるため、カルシウムイオンおよびリン酸イオンの表面吸着・結合反応が進行しないためである。
比較例について説明する。上記背景技術に記載の通り、基材表面を酸素ガスプラズマ処理などで親水化してから交互浸漬法を実施し、過飽和溶液中に浸漬することで、アパタイト膜を形成させる手法は既に報告されている(特許文献6参照)。この先行技術に倣って、ジルコニア基材に同様の酸素ガスプラズマ処理を施すと、基材表面は親水化する(水に対する静的接触角が約85°から5°以下に減少)。続いて、交互浸漬法を実施し、過飽和溶液への浸漬を施すと、ジルコニア表面にアパタイト層を形成させることができる。しかし、こうして形成されたアパタイト層はテープ引き剥がし試験により完全に基材から剥離してしまう。すなわち、単に基材表面を親水化するだけでは密着性に優れたアパタイト膜を形成させることはできず、第一工程における凹凸形成が、アパタイト膜の密着性向上に重要である。
本実施形態の変形例及び作用効果の検証として次の実験を行った。第一工程の超短パルスレーザー処理で作製された基材を長期間空気中で保管すると、水に対する静的接触角が徐々に上昇していき、数ヵ月後には、未処理のジルコニア基材と同等の高い静的接触角を示すようになる。この保存後の基材に対して、交互浸漬法を実施し、過飽和溶液への浸漬を施しても、アパタイト膜が形成される。超短パルスレーザー処理で形成された凹凸表面は、未処理面(鏡面)に比べて、静的接触角が同程度に高くても、高い水濡れ性を示すため、交互浸漬法において、凹部の内面深部にまで交互浸漬処理液が侵入・接触し、同部位へのカルシウム・リン酸イオンの吸着・結合を促すと考えられる。すなわち、従来報告されていた、静的接触角の減少で説明される表面親水化よりも、第一工程における凹凸形成による水濡れ性の向上が、本実施形態におけるアパタイト膜の形成には重要なファクターであると考えられる。
[実施形態5]
実施形態1では、第三工程における過飽和溶液として、ヒトの体液の1.5倍のカルシウムおよびリン酸イオン濃度を含む中性生理食塩水(pH=7.40、温度25℃)を用い、実施形態4では擬似体液を用いていた。これらの溶液は安定な過飽和溶液であり、溶液調製完了後から少なくとも8日間は、リン酸カルシウムを溶液中で自発析出しない。これらの過飽和溶液中で、リン酸カルシウム微粒子を蒸着または析出させた部分では膜厚が増加して厚さ数ミクロンの水酸アパタイト膜が形成される。一方、リン酸カルシウム微粒子が付着していない部分にはアパタイト膜が形成しない。この様にして、安定リン酸カルシウム過飽和溶液を用いた場合には、リン酸カルシウム微粒子が付着した部分のみ選択的に十分な膜厚のアパタイト膜が形成される。
第三工程で用いるリン酸カルシウム過飽和溶液として、安定過飽和溶液に替えて、溶液調製後7日以内に自発的核形成によってリン酸カルシウムを析出する不安定過飽和溶液を用いることもできる。
本実施形態では、不安定過飽和溶液を用いる場合について説明する。この過飽和溶液は、カルシウムイオン、リン酸イオン、炭酸イオンをそれぞれ含む医療用輸液を適当な容量比で混合することで調製される。不安定リン酸カルシウム過飽和溶液に浸漬した場合には、第一工程を施していない未処理表面(超短パルスレーザーで凹凸を作製していない鏡面研磨表面)や、第一工程で表面凹凸は作製されているものの次の第二工程を施していない(リン酸カルシウム微粒子が付着していない)表面にも、過飽和溶液中における均一核生成により生じたリン酸カルシウムの球状粒子が沈殿・堆積していく。ただし、凹凸構造を有さない未処理のジルコニアの表面は疎水的であって、リン酸カルシウム沈殿粒子との結合力は弱い。未処理のジルコニアの表面へのリン酸カルシウム形成を防ぐ場合は、未処理面へのマスキングなどによって、未処理面と不安定過飽和溶液との接触を制限すれば良い。一方、第一工程の超短パルスレーザーによる凹凸作製によって、ジルコニア表面は親水化し(水に対する静的接触角が約85°から30°以下に減少)、水濡れ性が向上する。同表面には、次項で説明する通り、不安定過飽和溶液中で多数のリン酸カルシウム微粒子が析出し、薄膜として凹凸表面を覆う。また、第一工程の後、第二工程のリン酸カルシウム微粒子の蒸着・析出処理をさらに施すことによって、表面の凹凸構造を介して基材と強固に密着したリン酸カルシウムの超薄膜を予め形成させることもできる。これらの表面処理(親水化・粗面化、リン酸カルシウム超薄膜形成)によって、不安定リン酸カルシウム過飽和溶液系における沈殿粒子と基材との結合力を向上できる。
次に、不安定過飽和溶液への浸漬によって、第一工程においてレーザー加工された直後の凹凸表面に微粒子が析出する場合の反応について説明する。リン酸カルシウム過飽和溶液中にはもともと、サブナノサイズのリン酸カルシウムクラスターが存在する。不安定過飽和溶液中においては、溶液調製後7日以内に、溶液中の至るところで、これらのクラスターが自発的に集合して非晶質状態のリン酸カルシウム微粒子を核として形成する(均一核形成)。核形成したリン酸カルシウム微粒子は、溶液中のリン酸カルシウムクラスターやクラスター集合体、イオンを取り込みながら成長していき、サブミクロンサイズにまで成長すると、やがて下方に堆積していく。ここで、この不安定過飽和溶液中に、親水性の高い凹凸表面が存在すると、上記の均一核形成が液中で生じるだけでなく、凹凸表面でもリン酸カルシウムが形成される。具体的には、凹面の内部を含む全凹凸表面にリン酸カルシウムクラスターやその集合体が付着・結合する。こうして凹凸表面に析出した多数のリン酸カルシウム微粒子は、溶液中のリン酸カルシウムクラスターやイオンを取り込みながら成長し、周囲の粒子と互いに連結していくことで、層状の膜を形成し、凹凸表面全体を被覆する。このようにして形成された膜は、凹凸構造を介して基材と強固に密着する。また、上方から堆積してきた粒子とも化学的に結合していく。
第一工程においてレーザー加工された直後の凹凸表面にリン酸カルシウム微粒子が析出する場合において、不安定過飽和溶液に替えて安定過飽和溶液を用いると、溶液中での均一核形成を抑制しつつ、凹凸表面でのリン酸カルシウム形成のみを誘起することができる。そのためには、安定過飽和溶液の過飽和度を、溶液中での均一核形成を誘起しない範囲内で、凹凸表面でのリン酸カルシウム形成を誘起するまで高めればよい。そのような過飽和度の調節は、溶液のカルシウムイオン、リン酸イオンなどの濃度、pH、および温度を調整することで可能である。
[実施形態6]
本実施形態では、実施形態1の第二工程として、パルスレーザーデポジッションに替えて過飽和液中レーザープロセスを実施する。第一の工程により超短パルスレーザーで表面の凹凸を作製した大腿骨コンポーネントを、ヒトの体液の1.5倍のカルシウムおよびリン酸イオン濃度を含む中性生理食塩水(pH=7.40、温度25℃)中に設置し、周波数30Hz、波長355nm、200mJ/pulse/cm2のNd:YAGパルスレーザー光を30分照射する。こうして、表面凹凸を作製した大腿骨コンポーネント上にリン酸カルシウムを析出させる。その後、さらに第三工程を追加する際の形態は、実施形態1と同様である。
本実施形態の過飽和液中レーザープロセスにおいては、第一工程の超短パルスレーザー処理で作製された凹凸面によるレーザー光吸収によって、周囲が局所的に加温され、リン酸カルシウムの過飽和度の増大と物質移動速度の増加をもたらす。また、超短パルスレーザー処理でジルコニア表面が親水化され、水濡れ性が向上することで、リン酸カルシウム形成に有利な表面環境が形成されるだけでなく、凹部の内面深部にまで過飽和溶液が侵入・接触できるようになる。これらの効果によって、凹凸部の全表面に渡って、リン酸カルシウムが析出する。なお、第一工程を施していない未処理のジルコニア基材(超短パルスレーザーで凹凸表面を作製していない鏡面研磨基材)に対しては、たとえ第二工程の過飽和液中レーザープロセスを施しても、リン酸カルシウムは析出しない。これは、未処理基材のレーザー光吸収性が不十分であって局所加温効果が得られないことと、基材の表面親水性・水濡れ性が不十分であってリン酸カルシウムの形成に不向きであることに起因する。なお、微粒子が凹部に析出して、凹部内面を含む凹凸表面にリン酸カルシウムが形成される過程は、実施形態5で説明した過程と同様である。
上記実施形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
本発明は、例えば膝関節等の人工関節に最適なジルコニア主材料とし、かつジルコニア表面の骨との接合部分に限定して生体親和性のある水酸アパタイトを密着させ強固に人工関節と骨とを結合させる構造の人工関節の製造方法を実現するものであり、人工関節以外にも生体親和性を持って骨と結合させる必要がある人工骨やインプラント等にも適用が可能であるので、産業上有用である。
1 大腿骨コンポーネント
2 超短パルスレーザー
3 超短パルス照射跡
4 固体水酸アパタイト
5 アブレーション水酸アパタイト微粒子群
6 アブレーション用レーザー
7 微粒子遮蔽用マスク
8 リン酸カルシウム過飽和溶液
9 アニーリング用レーザー
10 アニーリング位置

Claims (9)

  1. 正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に凹凸を形成する第一工程と、前記特定部位に前記凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子を蒸着または析出させる第二工程とを含むことを特徴とする医療機器材料の製造方法。
  2. 前記凹凸は周期性を示さない領域を有することを特徴とする請求項1記載の医療機器材料の製造方法。
  3. 請求項1記載の前記第一工程および前記第二工程に加えて、前記特定部位に前記リン酸カルシウム微粒子が付着した、正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料を、リン酸カルシウム過飽和溶液に接触させる第三工程を、含むことを特徴とする医療機器材料の製造方法。
  4. 正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に凹凸を形成する第一工程と、前記特定部位をリン酸カルシウム過飽和溶液に接触させて前記凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子を析出させる工程とを含むことを特徴とする医療機器材料の製造方法。
  5. 正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に凹凸を形成する第一工程と、前記特定部位をリン酸カルシウム過飽和溶液に接触させた状態で、前記特定部位にパルスレーザー光を照射して、前記凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子を析出させる工程とを含むことを特徴とする医療機器材料の製造方法。
  6. 正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に超短パルスレーザーを照射して表面に周期性を示さない凹凸を形成する工程を備えることを特徴とする医療機器材料の製造方法。
  7. 正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングする、医療機器材料の製造方法であって、前記特定部位に紫外レーザーを照射して表面に周期性を示さない凹凸を形成する工程を備えることを特徴とする医療機器材料の製造方法。
  8. 正方晶ジルコニアを含有する医療機器材料の特定部位にリン酸カルシウムでコーティングしてなる医療機器材料であって、前記特定部位の表面に形成された凹凸のサイズに比べて小さいリン酸カルシウム微粒子の付着層を備えることを特徴とする医療機器材料。
  9. 前記リン酸カルシウム微粒子の付着層の上に、リン酸カルシウムの過飽和液相により形成されたリン酸カルシウム層を備えることを特徴とする請求項8記載の医療機器材料。
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