JP2016202676A - 起立補助椅子 - Google Patents

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Abstract

【課題】テーブルとセットで使用される起立補助椅子を、起立動と着座動とがスムースに行える構造にて提供する。【解決手段】椅子は、脚部4と座5と上部装置8とを備えている。上部装置8は肘掛け6と背もたれ7とを含んでいる。座5と上部装置8とは旋回枠10に取り付けられており、旋回枠10は、脚部4に水平旋回自在に取り付けられている。座5は、ガススプリングにより、上昇及び前傾方向に付勢されている。ガススプリングによる座5に対する付勢力が、座5及び上部装置8が基準姿勢から離着席姿勢に旋回するのに連れて増大していく。これにより、人は、身体を旋回させながら立ち上がる動作を採ることができる。【選択図】図1

Description

本願発明は、足腰が弱い人の使用に供される起立補助椅子に関するものである。
自立して歩行することは可能であるが自力で椅子に座り降りするのが困難又は負担に感じる人のために、起立補助椅子が提案されている。この起立補助椅子は、起立時には座が上昇しつつ前傾し、腰掛け時には座は下降しつつ戻り回動するようになっており、座を動かす手段としては、モータやガススプリングなどが使用されている。
その例として特許文献1には、モータで座を動かすタイプにおいて、座を脚部に水平旋回自在に取り付けることが開示されている。起立補助椅子は肘掛けを備えており、肘掛けに、モータのスイッチを設けている。座の付勢手段としてガススプリングを使用している場合も、ガススプリングのバルブを操作するためのレバー類を肘掛けの近くに設けていることが多い。
特開2007−29284号公報
さて、起立補助椅子は様々な場面で使用されるが、例えば、お年寄り用の施設の食堂に設置して、ダイニングテーブルとセットで食事用に使用されることがある。この場合、歩行自体は自力で行えるので、人はテーブルの傍まで歩いていってから、起立補助椅子に腰掛けて食事を摂り、食事を終えると席を立ち、歩いて自室等に戻ることになる。
通常の人がテーブルで食事する場合は、椅子をテーブルから離して腰掛け、次いで、腰を少し浮かせた状態で椅子をテーブルの方に引き寄せることにより、身体をテーブルに寄せ、そして、食事を終えたら逆の動作で離席することが殆どであるが、足腰が弱い人は中腰で椅子を前後移動させるのが難しく、しかも、起立補助椅子は座を動かすためその機構部材が設けられていて、通常の椅子に比べると非常に重いため、起立補助椅子を前後に移動させるのは、通常の人であっても困難である。
この点、特許文献1のように座が水平旋回式であると、着座・離席が容易である。しかし、一々スイッチ操作をせねばならないため、煩わしいという問題がある。また、例えば食事中に誤ってスイッチを押すと、座が上昇及び前傾してしまい、着座者を危険に晒すおそれもある。
本願発明はこのような現状を改善すべくなされたものであり、使用者の離着席を的確にサポートできると共に軽量化等も容易に実現可能な起立補助椅子を提供することを課題とするものである。
本願発明は多くの構成を含んでおり、典型的な構成を請求項1〜6で特定している。このうち請求項1の発明は上位概念を成すものであり、起立補助椅子は、基準姿勢の片方又は両方に向けて適宜角度だけ水平旋回自在な座と、
着座状態からの起立動及び立った状態からの着座動をサポートするように前記座を動かすアシスト装置と、
前記座の水平旋回に連動して前記起立アシスト装置を制御するトリガー手段とを備えている。
請求項1は多彩な構成を含んでいる。まず、起立アシスト装置は、モータのような動力的なものと、ガススプリングやばねのような非動力的な付勢手段とを含んでいる。モータのような動力式アクチェータを使用する場合はスイッチが必要であるが、この場合は、座の水平旋回によって、リミットスイッチや非接触式スイッチ(例えば光電スイッチ)をON・OFFしたらよい。
例えば、座が基準姿勢から離着席姿勢(例えば60度程度旋回した姿勢)まで水平旋回したら、第1スイッチ手段のONにより、座を上昇動及び前傾動させるようにアクチェータが動くように設定しておくと共に、座が離着席姿勢から基準姿勢に向けて僅かに水平旋回したら、第2スイッチ手段により、座が下降動及び後傾動するようにアクチェータを動かしたらよい。
座が基準姿勢から離着席姿勢に向けて旋回する状態で、旋回開始と共に座が起立サポート方向に動き始めるように設定することも可能である。或いは、離着席姿勢から基準姿勢への旋回に際しても、旋回開始と共に座が着座サポート方向に動き始めるように設定することも可能である。
起立アシスト装置がプッシュバルブを有するガスシリンダである場合は、プッシュバルブが座の水平旋回によって自動的に操作されるように設定しておいて、座が基準姿勢から離着席姿勢まで水平旋回したら、ガスシリンダのロックが解除されて座が起立サポート方向に動いて、座が離着席姿勢から基準姿勢に向けて旋回を開始すると共に座が下降動し切ったら、ガスシリンダが縮んだ状態にロックされるように設定したらよい。
本願発明の好適な構成として、起立アシスト装置の駆動源としてガスシリンダやばねのような非動力式の付勢手段(ばね手段)を使用した場合、座に対する付勢力を、座が基準姿勢にあるときに最も弱くて、座が離着席姿勢にあるときに最も強くなるように、座の水平旋回角度に基づいて徐々に変化するように設定することが挙げられる。サポート力の制御として、このような構成を指している。
請求項2の発明は、請求項1において、前記トリガー手段は、前記座に作用する起立アシスト装置のサポート力を座の旋回量に応じて変化させる働きと、前記座が基準姿勢から所定の旋回状態になると起立アシスト装置のサポート力を座に作用させる働きとのうち少なくとも一方を備えている。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記起立アシスト装置は、前記起立アシスト装置は、前記座を上昇及び前傾方向に付勢するばね手段を備えており、前記トリガー手段により、前記座に対するばね手段の付勢力が、前記基準姿勢から離着席姿勢に向けて水平旋回するのに連れて徐々に増大するようになっており、かつ、ばね手段の付勢力が、前記座が基準姿勢のときには着座者の体圧によって座が下降した状態に保持される強さに設定されている。
請求項4の発明は請求項3の具体例であり、まず、脚部に旋回自在に取り付けた旋回ベースに、前記座を昇降及び傾動させるメインリンク機構と、前記ばね手段の一端とが取り付けられており、前記ばね手段の他端は、前記座と旋回ベースとに直接又は間接的に連結された駆動リンクの上下中途部に連結されており、前記駆動リンクの下端は旋回ベースに前後スライド自在に保持されている。
更に、請求項4では、請求項3において、前記旋回ベースの下方に固定ベースが配置されており、前記固定ベースに、前記旋回ベースが基準姿勢から水平旋回すると前記駆動リンクの下端が旋回中心の側に近づくようにガイドするガイド長穴が形成されている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれかにおいて、脚部に設けた固定ベースに旋回ベースが水平旋回自在に支持されており、前記旋回ベースに、肘掛け及び背もたれが取り付く旋回枠を固定していると共に、前記座を昇降及び傾動させるためのメインリンク機構が連結されている。
請求項6の発明では、請求項1〜5のうちのいずれかにおいて、前記座は、基準姿勢の両側にそれぞれ60度程度の範囲で水平旋回自在になっている。
本願発明では、起立アシスト装置は、座の旋回動に基づいて、自動的に作動したりサポート力が変化したりするように制御できるため、起立補助椅子の使用者は操作の煩わしさから解放される。従って、ユーザーフレンドリーである。特に、ダイニングテーブルで食事したり、テーブルで作業したりくつろいだりする場合のように、起立補助椅子をテーブルとセットで使用する場合、身体の姿勢を変えることで起立動がサポートされたり着座動がサポートされたりするため、離席や着座を一連の動作でスムースに行うことが可能になる。
さて、テーブルに向かった姿勢からの起立動及びその逆の着座動は、座の水平旋回と昇降動との2つの動きに分解できるが、三角形の長辺の長さが他の2辺の長さの和よりも小さい原理と同じで、本願発明では、座の水平旋回と昇降動とを別々に行うのに比べて、使用者の動く距離が短くなるため、速やかに起立したり着座したりしたいという使用者の要望に的確に応えることができる。従って、使用者の動きの無駄もなくすことができるし、起立動に際して、水平旋回し切って停止したときに衝撃が身体にかかるといった不具合もない。
また、起立補助椅子をテーブルとセットで使用している場合、テーブルに向かった姿勢で座が起立サポート動することはないため、テーブルで食事や作業を行う場合に、安全性を向上できる。従って、本願発明の起立補助椅子は、テーブルとセットで使用する場合に真価が強く発揮されると云える。
起立アシスト装置のサポート力の制御は様々に考えられるが、請求項2のように制御すると、離席・着席の基本動作に対応しているため、特に好適である。
モータのような動力式のアクチェータは重くてコストが嵩むという問題であるが、請求項3のように、起立アシスト装置の動力源としてばね手段(ガスシリンダも含んでいる)を採用すると、起立アシスト装置を軽量化できる利点がある。また、電源は不要であるため設置場所は自由であり、しかも、充電の手間も生じない。
更に、ばね手段による座の付勢力が座の旋回角度に応じて変化していくため、座が基準姿勢から離着席姿勢に至ると人の起立動が完了して、座が離着席姿勢から基準姿勢に至ると人の着座が完了するというように、人の起立や着座の動きをスムースに行える点においても優れている。
請求項4の構成を採用すると、固定ベース体にガイド長穴を設けるという簡単な構成により、ばね手段の付勢力を変化させることができる。従って、起立アシスト装置を軽量化及びコストダウンしつつ、起立動や着座動をスムースにサポートすることができる。起立補助椅子を軽量化できることは、介護者にとっても朗報である。
請求項5のように起立補助椅子に肘当てを設けていると、起立や着座に際して身体を支えることができるため、好ましい。また、足腰が弱い人は姿勢の保持機能も弱いのが普通であるため、請求項5のように背もたれを設けることで、着座状態での安定性を確保できる。
座があまり大きい角度で旋回すると、使用者が旋回の弾みで振り落とされるような現象が発生するおそれがあり、危険である。また、テーブルとセットで使用する場合、椅子をテーブルに適度に近づけたとき、旋回時に背もたれがテーブルの前端に当たってしまうおそれもある。さりとて、例えば20〜30度といった狭い角度しか旋回しないと、テーブルとセットで使用している場合に、身体が椅子とテーブルとの間に挟まれた状態になって、起立・着座は困難になる。
この点、請求項6のように、60程度の範囲(例えば50〜70度)での旋回角度に設定すると、旋回してから停止したときに弾みがつくようなことはないため安全であり、また、使用者が食事や作業を容易に行える程度に椅子をテーブルに近づけつつ、旋回させても背もたれをテーブルに当てることなく、離着席姿勢において、座の前方に起立・着座を容易に行える空間を空けることができる。従って、テーブルとセットで使用する場合、請求項6の構成は特に好適であると云える。
実施形態の起立補助椅子の使用状態を示す斜視図で、(A)は座を基準姿勢にした状態の図、(B)は座を離着席姿勢にした状態の図である。 (A)は上から見た一部分離斜視図、(B)は下方から見た斜視図である(固定ベースや旋回枠は省略している。)。 (A)は座を離席姿勢にした状態の一部分離斜視図、(B)は座を離席姿勢にした状態での下方からの斜視図、(C)は座を離席姿勢にした状態での側面図である(固定ベースや旋回枠は省略している。)。 機構部の分離斜視図である。 基準姿勢かつ着座状態での機構部の斜視図で、(A)は組み付けた状態の斜視図、(B)は分離斜視図である。 基準姿勢かつ着座状態での要部の縦断側面図である。 座及び背もたれの支持構造を示す分離側断面図である。 (A)(B)とも、旋回ベースと固定ベースとの分離斜視図である。 (A)(B)とも、離着席姿勢で着座した状態での機構部の斜視図である。 離席した状態での機構部の斜視図である。 座に対する付勢力の変化を説明するための図である。 座の付勢原理を示す図で、(A)は基準姿勢での図、(B)は離席姿勢でかつ人が離れた状態の図である。
(1).起立補助椅子の概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1〜3に基づいて概要を説明する。本実施形態の起立補助椅子(板、単に「椅子」と略す)は、座を動かす駆動源として非動力式のガススプリングを使用した例であり、図1のとおり、ダイニングテーブル等のテーブル1とセットで使用することができる。
以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、これは、椅子に普通に腰掛けた人の向きを基準にしている。正面視は、着座者と対向した方向から見た状態である。
図1のとおり、椅子は、4本の棒足2で4本の水平枠3を支持した平面視略四角形の脚部4と、昇降しつつ前後傾動する座5と、肘掛け6及び背もたれ7が一体化された上部装置8とを有しており、左右の肘掛け6には、下向きに延びる前後2本の支柱が設けられている。実施形態では座5は木製品を採用しているが、樹脂板にクッションを張ったタイプなど、各種のものを採用できる。
図1において、椅子とテーブル1とは、人がテーブル1で食事や作業を普通に行えるような位置関係になっている。このうち(A)では、椅子の使用者(図示せず)はテーブル1を向いて腰掛けている。この状態では、座5は基準姿勢にあって、全く上昇していない基準高さに維持されている。
図2,3に大まかに示すように、上部装置8の下端(支柱9の下端)には金属板製等の旋回枠10が固定されており、旋回枠10は、脚部4の上部に固定した金属板製の下支持枠11で水平旋回自在に支持されており、かつ、座5は、機構部12により、上昇及び前後傾動し得るように支持されている。
座5及び上部装置8は、図1(A)の状態を基準姿勢として、左右いずれの方向にも約60度程度の角度だけで水平旋回することができる。実施形態では、座5及び上部装置8を左側にいっぱいに水平旋回させた離着席姿勢を示しており、この程度まで座5と上部装置8とを旋回させることにより、人は、椅子を動かすことなく、椅子から離席したり椅子に腰掛けたりすることを容易に行える。
詳細は後述するが、座5は、ばね手段により、上昇しつつ前傾する方向に付勢されており、その付勢力は、基準姿勢では、着座者の下向き体圧よりも弱くて、人を持ち上げるように作用することはない強さであるが、基準姿勢から離着席姿勢に向けて水平旋回するのに連れて付勢力は徐々に増大し、離着席姿勢に至ると、人が両手を肘掛け6に当てて起立しようとすると、これをサポートして立ち上がりを容易に行える強さになる。
従って、人は、座5から立つ動作を、座5の水平旋回に関連させてスムースに行える。すなわち、使用者は、座5を水平旋回させながら徐々に身体を伸ばしていって、座5を水平旋回させ切るのとほぼ同時に自力で立った状態に移行できるのである。このため、椅子からの離席動(起立動)を、ごくスムースに行うことができる。
人が座5から離れると、座5は上昇及び前傾し切った状態になっており、この状態で人が座に腰掛けようとする場合、人は両手を肘掛け6に当てて腰掛けるが、付勢力が大きいため、肘掛け6に対する支持力が弱くても座5がストンと下降するようなことはなくて、使用者が不安を感じることはない。
人が座5に身体をあずけてから、基準姿勢に向けて座5及び上部装置8を水平旋回させると、座5に対する付勢力は回転に連れて徐々に低下していく。このため、人は、座5及び上部装置8の水平旋回に伴って、中腰状態から着座姿勢にスムースに移行する。従って、着席(着座)の動作をごくスムースに行うことができる。
(2).機構部の詳細
次に、図4以下の図面も参照して、機構部12の詳細を説明する。図4,5に全体を示しているが、機構部12は、座5の下面に固定された上ガイドフレーム15と、例えば下支持枠11の上面にビス等で固定した楕円形の固定ベース16と、固定ベース16の上面に水平旋回自在に装着した旋回ベース17と、上ガイドフレーム15と旋回ベース17とを連結するため側面視X字形にクロス配置された第1及び第2のメインリンク杆18,19と、座5の上昇動及び前傾動を付勢する駆動源としてのガススプリング20と、ガススプリング20の付勢力を座5の動きに変換させるための駆動リンク21とを備えている。
本実施形態では、第1及び第2のメインリンク杆18,19でメインリンク機構が構成されている。なお、固定ベース17と下支持枠11とを一体化することも可能であるが、寸法精度を確保する点からは、両者を別部材にするのが好ましい。
上ガイドフレーム15は前後長手で下向き開口コ字形に形成されている一方、旋回ベース17は前後長手で上向き開口コ字形に形成されており、両者の側板に、第1及び第2のメインリンク杆18,19が連結されている。両メインリンク杆18,19は細い板状の形態であり、第1メインリンク杆18の前端は、上ガイドフレーム15の側板の前端部に第1軸22を介して回動自在に連結されて、第1メインリンク杆18の後端は、旋回ベース17における側板のやや後ろより部位に第2軸23によって連結されている。第2軸23が嵌まっている穴24は、前後方向に少し長い長穴になっている。
第2メインリンク杆19の前端は、旋回ベース17における側板の前端寄り部位に第3軸25によって連結されており、第2メインリンク杆19の後端は、上ガイドフレーム15の側板に第4軸26によって連結されている。第4軸26は、上ガイドフレーム15の側板に形成した前後長手の第1長穴27に前後スライド自在に嵌まっており、かつ、両メインリンク杆18,19は第5軸28によって相対回動可能に連結されている。
第5軸28は、第1メインリンク杆18のやや中間部に位置し、第2メインリンク杆19のうちの前端寄り部位に位置している。両メインリンク杆18,19が連結されつつ、第4軸26が第1長穴27に嵌まっていることにより、座5は、メインリンク杆18,19の回動に連動して昇降するが、第1メインリンク杆18の長さを第2メインリンク杆19の長さよりも少し短くしているため、座5は(上ガイドフレーム15)は、上昇しつつ、後端が前端に対して高くなるように傾動していく。すなわち、座5は、上昇しつつ前傾動する。下降時には、元の水平姿勢に戻り回動していく(図12も参照)。
この場合、第2軸23が嵌まっている穴24は単なる丸穴でもよいが、この穴24を実施形態のように前後長手の長穴に形成すると、上昇動に連れて第1メインリンク杆18が前進するため、座5の前端の位置を揃えることができる。すなわち、座5は、その前端の位置は殆ど変わることなく昇降動及び傾動する。
ガススプリング20の後端(一端)は、後部ブラケット35a及び第6軸29によって旋回ベース17の左右側板に連結されている。この場合、第6軸29が嵌まる穴は、前後長手の第2長穴30になっている。従って、ガススプリング20は前後動可能である。また、第6軸29は、旋回ベース17の内部に配置した前後長手の連動リンク36の後端部に連結されている。連動リンク36は上向き開口コ字形に形成されており、連動リンク36の前端と左右の駆動リンク21とが第7軸31で連結されており、第7軸31は、旋回ベース17の左右側板に形成した第3長穴33にスライド自在に嵌まっている。
左右の駆動リンク21は側面視上向き凸の略三角形の形状であり、その後端(他端)は、第8軸32によって上ガイドフレーム15の側板に連結されている。第8軸32は第1長穴27に嵌まっているが、第1長穴27とは別の長穴に形成することも可能である。いずれにしても、駆動リンク21は、全体的に前後動しつつ側面視で傾動し得る。
左右の駆動リンク21、前寄りに位置した上向き凸の部位において第9軸34で連結されており、第9軸34とガススプリング20の前端(他端)とが、軸受けブラケット35を介して相対動可能に連結されている。従って、ガススプリング20の付勢力は駆動リンク21を起こすように作用しており、これにより、上ガイドフレーム15(及び座5)が上昇し勝手に付勢されている。
例えば図8,9から容易に理解できるように、旋回ベース17は、固定ベース11に対して、センター軸38によって水平旋回に連結されている。かつ、固定ベース11には、旋回ベース17の水平旋回のガイドするための円弧穴39が、センター軸38の軸心回りに延びるように形成されており、旋回ベース17には、円弧穴39にスライド自在に嵌まるガイド軸40が固定又は連結されている。
円弧穴39は、旋回ベース17の水平旋回角度を規制する役割も果たしており、旋回ベース17は、基準姿勢を境にして左右両側に約60度程度まで水平旋回し得る。円弧穴39は旋回ガイド手段の一例であるが、旋回ガイド手段としては、他の構造(例えばガイドレールとスライダーとの組み合わせ)も採用できる。実施形態のように、一対の円弧穴39を対称に配置すると、センター軸38を必ずしも必要はない。センター軸38を設けて、1つの円弧穴39のみを設けることも可能である。旋回角度規制手段としては、ストッパー同士の当たりを採用することも可能である。
図6,7に示すように、旋回ベース17の前部と後部との上面に、旋回枠10がビス止めや溶接等によって固定されている。従って、上部装置8と座5とは一緒に水平旋回する。敢えて述べるまでもないが、旋回枠10及び旋回ベース17は、脚部4に当たることなく水平旋回するように設定されている。本実施形態は、発明を原理的に示すため脚部は四角形になっているが、脚部4の上端部と旋回枠10とをほぼ同じ外径の円形に形成すると、上部装置8の旋回に際して人が身体や衣服を挟むことがなくて好適である。なお、図4,6,7を除いた図面では、旋回ベース17の前端は少し詰めた状態に表示しており、実際の先端は一点鎖線で示している。
固定ベース11のうち略前半部には、センター軸38に対して非同心円のガイド穴41を形成している。すなわち、図11に明示するように、ガイド穴41は、センター軸38の軸心を通る前後長手中心線42の箇所がセンター軸38から(旋回ベース17の旋回中心から)最も遠くて、前後長手中心線42から周方向に離れるに従ってセンター軸38との距離が小さくなるように、センター軸38からの間隔寸法Lが相違している。すなわち、ガイド穴41は一種のカム構造になっている。
そして、ガイド穴41に抜け不能かつスライド自在に装着したガイド軸43を、旋回ベース17の前寄り部位に形成した前後長手の第4長穴44に下方から嵌め入れて、ガイド軸43を連動リンク36の底板に下方から挿入している。例えば図4に示すように、連動リンク36の底板の先端には、ガイド軸43が嵌まる係合穴43を空けている。なお、ガイド軸43を駆動リンク21に固定して、ガイド軸43を、第4長穴44からガイド穴41に挿入してもよい。
機構部12は、座5の上昇動及び前傾動を行う起立アシスト装置と、座5(及び上部装置8)の水平旋回に伴って座5に対する付勢力を変化させるトリガー装置(トリガー手段)とから成っているが、本実施形態では、上ガイドフレーム15、メインリンク杆18、ガススプリング20、駆動リンク21、旋回ベース17は起立アシスト装置を構成し、固定ベース11のガイド穴41とガイド軸43、連動リンク36、及び、旋回ベース17の第4長穴44はトリガー装置を構成している。
センター軸38とガイド軸43を除いた各軸は、基準姿勢において左右横長の姿勢になっている。また、ガススプリング20は、付勢力が常に解放された状態になっている。固定ベース11は平面視楕円形である必要はないのであり、矩形や円形であってもよい。
(3).まとめ
椅子の機能は既に説明したとおりであるが、図11,12に基づいて、より正確に説明する(図11では、図1(B)と反対方向に座が向く状態を示している。)。座5の昇降及び傾動の原理は既述のとおりであり、メインリンク杆18,19の長さの違いに起因して、座5は上昇しつつ前傾する。また、上ガイドフレーム15(座5)には、ガススプリング20の付勢力が作用している。
そして、旋回ベース17が前後方向に向いて基準姿勢では、図12(A)のとおり、 駆動リンク21の前部下端に挿通した第7軸31が第3長穴33の前端部に位置すると共に、ガススプリング20の後端(第6軸29)は、第2長穴30の前端に位置している。この状態でガススプリング20は、その前端が少し上に位置するように傾斜しているものの水平に近い姿勢であり、しかも、第6軸29は後退可能であるため、駆動リンク21に対する付勢力は弱くなっている。
このため、座5は、使用者の体圧により、下降し切った状態に維持されている。すなわち、僅かながら上向きの付勢力は作用しているが、座が持ち上げられたり、使用者が座5による突き上げ感を受けるようなことはない。
旋回ベース17が固定ベース11の前後長手中心線42に沿った姿勢から左右いずれかの方向の水平旋回すると、連動リンク36及び駆動リンク21は、固定ベース11のガイド穴44のガイド作用によって強制的に後退させられ、駆動リンク21の水平姿勢に対する起き角度が大きくなろうとする。これにより、上ガイドフレーム15(及び座5)が上向き動の作用を受けると共に、ガススプリング20は伸長しつつ後退する。このため、座5に対する付勢力は増大していく。
すなわち、駆動リンク21の起き角度が大きくなるとガススプリング20の起き角度も大きくなって、駆動リンク21に対するガススプリング20の付勢力のベクトルが増大するため、上ガイドフレーム15に対する付勢力はますます増大していく。また、連動リンク36及び駆動リンク21(並びにガススプリング20)が後退することにより、第8軸32は第1長穴27上を後方にスライドし、これに伴って、第8軸32の位置(力点)が変わることにより、上ガイドフレーム15を起き上がらせようとする回転モーメントが増加する。
その結果、座5に対する付勢力は座5及び上部装置8の旋回角度に応じて増大していき、旋回し切った離着席姿勢でピークになる。このため、人は、両手を肘掛け6に突っ張らせることで、容易に起立(自立)することができる。また、身体を水平旋回させる動作に関連して、旋回させ切った時点で起立する状態になるため、起立動をスムースに行えるのである。
人が椅子に腰掛けるのは逆の動作になるが、離着席姿勢ではガススプリング20の付勢力が座5に強く作用しているため、肘掛け6に対する突っ張り力が弱くても、身体は座5でしっかりと支持されていて、座5がストンと下降動することはない。従って、腰掛けの動作を安全に行える。そして、離着席姿勢から基準姿勢に旋回させると、座5に対するガススプリング20の付勢力が徐々に弱くなるため、身体を旋回させ切ると座5が下降し切る状態になって、適切な着座状態を実現できる。
上記の実施形態では、座5はその前端の位置を殆ど変えることなく昇降しているが、若干後退しつつ上昇するように設定したり、逆に、手前に移動しつつ上昇するように設定することも可能である。第2軸23が嵌まっている穴24を円形穴に形成すると、座5は少し後退しながら前傾する。第3軸25が嵌まっている穴を前後長手の長穴に形成すると、座5を前進させつつ上昇させることができる。
実施形態のように、駆動リンク21の上端(第8軸32)も前後動する構成を採用すると、駆動リンク21に過大な負担がかかることを防止できる利点がある。また、実施形態では、ガススプリング20は、上ガイドフレーム15と旋回ベース17との間の空間に配置されているため、全体としてコンパクト化できる利点がある。実施形態では、駆動リンク21の上端を上ガイドフレーム15に連結しているが、駆動リンク21でメインリンク杆18,19を付勢したり、駆動リンク21で座5の下面を直接押したりすることも可能である。
起立アシスト装置の駆動源としては、圧縮コイルばねや引っ張りばねのようなばね体を使用することも可能である。ガススプリング20等のばね手段を、複数個併設してもよい。また、実施形態のガイド穴44は一種の周面カムであるが、トリガー手段としては、他の周面カムや端面カム構造など、種々の構造を採用できる。
なお、実施形態では座2の昇降・傾動手段としてリンク機構を使用したが、例えば、傾斜したカム面を有するカムとこのカム面に対して相対動する当接子(スライダー又はコロ)とからなるカム機構を採用して、カムと当接子のうち一方を座に設けて他方を脚部に設け、座の旋回によってカムと当接子との相対動を利用して座を昇降及び傾動させることも可能である。更に、座の回転及び昇降手段として、ねじ機構とカム機構又はリンク機構とを併用し、座の旋回と昇降とはねじ機構で行って、座の傾動はカム機構又はリンク機構で行うといったことも可能である。
座5及び上部装置8が、基準姿勢から左右いずれかの方向のみに水平旋回する構成を採用することも可能であるが、実施形態のように左右両側に旋回する構成を採用すると、左右いずれからの離着席できるため、使い勝手がよい。固定式の椅子の場合は、一方方向のみに旋回するように設定しておくと、隣り合った人が同時に立ったり腰掛けたりする場合に、衝突しない利点がある。
座5及び上部装置8が軽快に旋回し過ぎると、人の姿勢の安定性が損なわれるおそれがあるので、基準姿勢と離着席姿勢とにばね手段で姿勢保持するストッパー機能を持たせることも可能である。また、旋回角度と座の付勢力との関係は種々設定できるが、食事や作業に際して座5を少し旋回させることもあるので、基準姿勢からある程度の角度だけ旋回しないと身体の持ち上げ機能が発揮されないように設定しておくのが好ましい。
肘掛け、背もたれ、脚部はデザイン等の要請に基づいて自在に設計変更することができる。例えば事務用回転椅子のように、脚部を、脚支柱の下端から複数本の枝足が放射状に延びている構成にすることも可能である。また、座及び上部装置を高さ調節可能に構成することも可能である。座の付勢手段としてばね手段を使用する場合、初期テンションを調節することにより、使用者の体格に適合したサポート力を付与することも可能である。
本願発明は、実際に起立補助椅子に適用できる。従って、産業上利用できる。
1 テーブル
4 脚部
5 座
6 上部装置を構成する肘掛け
7 上部装置を構成する背もたれ
8 上部装置
10 旋回枠
11 下支持枠
12 起立アシスト装置及びトリガー手段を含む機構部
15 上ガイドフレーム
16 固定ベース
17 旋回ベース
18,19 メインリンク機構を構成するメインリンク杆
20 ばね手段(駆動源)の一例としてのガススプリング
21 駆動リンク
36 連動リンク
38 センター軸
39 旋回ガイド手段としての円弧穴
41 ガイド長穴
43 ガイド軸(スライダー)

Claims (6)

  1. 基準姿勢の片方又は両方に向けて適宜角度だけ水平旋回自在な座と、
    着座状態からの起立動及び立った状態からの着座動をサポートするように前記座を動かすアシスト装置と、
    前記座の水平旋回に連動して前記起立アシスト装置を制御するトリガー手段とを備えている、
    起立補助椅子。
  2. 前記トリガー手段は、前記座に作用する起立アシスト装置のサポート力を座の旋回量に応じて変化させる働きと、前記座が基準姿勢から所定の旋回状態になると起立アシスト装置のサポート力を座に作用させる働きとのうち少なくとも一方を備えている、
    請求項1に記載した起立補助椅子。
  3. 前記起立アシスト装置は、前記座を上昇及び前傾方向に付勢するばね手段を備えており、前記トリガー手段により、前記座に対するばね手段の付勢力が、前記基準姿勢から離着席姿勢に向けて水平旋回するのに連れて徐々に増大するようになっており、かつ、ばね手段の付勢力が、前記座が基準姿勢のときには着座者の体圧によって座が下降した状態に保持される強さに設定されている、
    請求項1又は2に記載した起立補助椅子。
  4. 脚部に旋回自在に取り付けた旋回ベースに、前記座を昇降及び傾動させるメインリンク機構と、前記ばね手段の一端とが取り付けられており、前記ばね手段の他端は、前記座と前記旋回ベースとに直接又は間接的に連結された駆動リンクの上下中途部に連結されており、前記駆動リンクの下端は前記旋回ベースに前後スライド自在に保持されている一方、
    前記旋回ベースの下方に固定ベースが配置されており、前記固定ベースに、前記旋回ベースが基準姿勢から水平旋回すると前記駆動リンクの下端が旋回中心の側に近づくようにガイドするガイド長穴が形成されている、
    請求項3に記載した起立補助椅子。
  5. 脚部に設けた固定ベースに旋回ベースが水平旋回自在に支持されており、前記旋回ベースに、肘掛け及び背もたれが取り付く旋回枠を固定していると共に、前記座を昇降及び傾動させるためのメインリンク機構が連結されている、
    請求項1〜4のうちのいずれかに記載した起立補助椅子。
  6. 前記座は、基準姿勢を挟んだ両側にそれぞれ60度程度の範囲で水平旋回自在である、
    請求項1〜5のうちのいずれかに記載した起立補助椅子。
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