JP2016201388A - 透明導電膜を有する薄膜太陽電池 - Google Patents

透明導電膜を有する薄膜太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】発電層表面に微細なボイドを高密度に有しかつその上に透明導電層を有するような太陽電池において、ボイドに起因する透明導電層の不均一性・不連続性を最小限にし、効率よく光生成電流を収集させ、光電変換効率を最大限に高めた太陽電池を提供できるようにすることである。
【解決手段】本発明に係る太陽電池には、発電層3に開口角度120度以下の逆さにした円錐あるいは角錐に準ずるボイド2が0.01個/mm2(1×1010個/m2)以上の密度で存在し、その上に形成された透明導電層1はボイド2を充填し、かつこの透明導電層1が発電層3の表面にて連続な構造を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、電極として透明導電膜を有する薄膜太陽電池用に関するものである。
太陽電池は、化石燃料を使用せずに電力を得ることができる再生可能エネルギー源として注目され、普及が進められている。
特に薄膜シリコン太陽電池は、厚さ0.2〜5μm程度のシリコン薄膜を光吸収層として用いており、他の太陽電池と較べて資源的制約が少ないため、大規模普及に適した太陽電池として期待が寄せられている。
ところで、太陽電池の課題の一つとして光電変換効率の向上が挙げられる。光変換効率を向上させる手段として、下部電極に反射機能を持たせると共に凹凸構造(以下、テクスチャ構造と称す)を作り込んで、光閉じ込め効果を利用することが広く採用されている(例えば特許文献1参照)。
薄膜太陽電池の発電層にテクスチャ構造を導入する際には、その製膜基板に予め凹凸を設けておくことが一般的である。
実際に、薄膜シリコン太陽電池においては、テクスチャ構造を有する基板を用いることにより光吸収が改善され、市販太陽電池でも応用されている。
このようなテクスチャ構造の形状については、その底部に一定の平坦性あるいは湾曲を持たせることにより、発電層内での欠陥形成を抑制できることが知られている(非特許文献1)。
最近では、平坦な底部を持ち、その直径が1〜5mm、その深さが直径の1/4程度となる凹型構造を規則配列させた基板を用い、かつまた発電層の厚さを凹型構造の直径と同程度に調整することによって、薄膜微結晶シリコン太陽電池の光吸収特性及び光電発電効率を大幅に改善できることが報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。
この太陽電池では、光学干渉による反射防止効果を考慮し、膜厚60〜80nm程度の錫添加酸化インジウム(ITO)薄膜を物理蒸着法の一つであるスパッタリング法にて製膜し、透明導電層を形成している(非特許文献2、非特許文献3)。
特開2001−15780号公報 特開2002−198549号公報 特開2003−101052号公報
Journal of Non-Crystalline Solids, Vol.354, pp. 2258-2262 (2008). Applied Physics Letters, Vol.102, pp. 053509-1-053509-4 (2013) IEEE Journal of Photovoltaics, Vol.4, No.6, pp. 1349-1353 (2014)
しかしながら、凹型構造の底部に平坦性あるいは湾曲を持たせることで発電層内部の欠陥形成を抑制したとしても、凹型構造がその直径に対して比較的大きな深さを有する場合には、発電層の膜厚を増すにつれて発電層表面の凹型構造の直径が縮小していき、最終的には多数の微小なボイド(開口)が形成され得る(非特許文献2)。
そのようなボイドを有する表面に対して、さらに上述したような60〜80nm程度の透明導電層を物理蒸着法で製膜した場合、ボイド周辺とくにその底部においては膜の均一性や連続性が失われ、それによって発生した光生成電流の収集効率の低下を招き、結果的に太陽電池の発電特性を損ねる。
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、発電層表面に微細なボイドを高密度に有しかつその上に透明導電層を必要とする太陽電池において、ボイドに起因する透明導電層の不均一性・不連続性を最小限にし、効率よく光生成電流を収集させ、光電変換効率を最大限に高めた太陽電池を提供できるようにすることである。
上記の目的を達成するため、本発明によれば、発電層表面に存在する高密度なボイド構造が透明導電層で充填され、かつこの透明導電層が発電層表面にて連続な構造を持つことを特徴とする次の太陽電池、が提供される。
(1)
少なくとも透明導電層1、発電層3、太陽電池基板(製膜基板)5から構成される太陽電池であって、
発電層3の表面に最小開口角度120度以下の逆さにした角錐あるいは円錐に準ずる開口が0.01個/mm2(1×1010個/m2)以上の密度で存在し、
この開口が透明導電層1で充填され、かつ、この透明導電層1が発電層3表面にて連続な構造を持つことを特徴とする太陽電池。
(2)
発電層3の製膜基板5が、一辺の長さあるいは直径が0.2〜10mmの四角形または円形を開口部とする逆さにした錘台形状の凹型構造を敷き詰めた構造を有し、さらにその凹型構造がその一辺の長さあるいは直径の半分以下の深さと1/5〜1/2倍の大きさの略平坦底部を有することを特徴とする(1)に記載の太陽電池。
(3)
発電層3の製膜基板5が、一辺の長さあるいは直径が0.2〜10mmの四角形または円形を開口部とする逆さにした錘台形状の凹型構造の規則的な配列を有し、さらにその凹型構造がその一辺の長さあるいは直径の半分以下の深さと1/5〜1/2倍の大きさの略平坦底部を有することを特徴とする(1)に記載の太陽電池。
(4)
発電層3に単層または多層の薄膜シリコン層あるいはその合金層を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の太陽電池。
(5)
発電層3に微結晶シリコン層または微結晶シリコンゲルマニウム合金層を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の太陽電池。
(6)
発電層3の厚さが0.2〜10mmの範囲にあることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の太陽電池。
(7)
透明導電層1が光入射側に配置されることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の太陽電池。
(8)
透明導電層1が化学堆積法あるいは溶液堆積法で製膜されたことを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の太陽電池。
(9)
透明導電膜1が酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化錫(SnO2)あるいはその合金から成ることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の太陽電池。
本発明による太陽電池によれば、発電層表面に高密度に存在する微細なボイド付近であっても透明導電層の良好な被覆性が確保され、かつ透明導電層が発電層表面で連続な構造を持つため、光生成電流を効果的に収集することができ、高い光電変換効率を有する太陽電池が実現できる。
本発明に係る薄膜太陽電池を示す図。 本発明に係る薄膜太陽電池を示す断面図。 本発明を適用しない薄膜太陽電池を示す断面図。 本発明を適用した薄膜微結晶シリコン太陽電池(左)および本発明を適用していない薄膜微結晶シリコン太陽電池(右)の断面電子顕微鏡像を示す図。 本発明に係る薄膜太陽電池により発電特性が向上する実験結果を示す図。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る薄膜シリコン太陽電池を示す図である。
また図2は、図1のA−A’−A”を含む面にて切断した、本発明に係る薄膜シリコン太陽電池を示す断面図である。以下では、主として図2を参照しながら説明する。
本発明に係る薄膜シリコン太陽電池は、透明導電層1、発電層3、反射層4、太陽電池基板5から構成される。太陽電池基板5自身が高い反射率と導電性を兼ね備える場合には、反射層4は無くてもよい。
太陽電池基板5は、発電層3の光吸収を促進するためのテクスチャ構造を有することが望ましい。
テクスチャ構造が図2にあるような凹型構造を為す場合、非特許文献2に記載の通り、凹型構造の一辺の長さ(円形の凹型構造であればその直径)を発電層3の膜厚とほぼ同程度に調整することにより、光吸収を促進できることが知られている。
発電層3の膜厚として0.2〜10mmを想定すると、凹部構造の一辺の長さあるいはその直径もそれに応じて0.2〜10mm程度に調整されることが望ましい。
また非特許文献2に記載の通り、欠陥の少ない発電層3を成長させるために、凹部構造の深さはその一辺の長さあるいはその直径の半分以下であることが望ましい。
太陽電池基板5は、発電層成長初期における欠陥形成を抑制できるように、テクスチャ構造の底にあたる部分に平坦底部6を設けている。
平坦底部のないV字型の凹型構造上に発電層3を成長させると、非特許文献1に記載されているように、V字形状の底から欠陥が発生しやすく、結果として太陽電池の特性を低下させる。
この平坦底部6は完全に平坦である必要は無く、緩やかに湾曲していてもよい。
またこの平坦底部6は、凹型構造に比して小さすぎれば欠陥抑制効果が小さくなり、また大きすぎれば光散乱効果が失われるため、平坦底部6の一辺の長さあるいはその直径は凹型構造のそれの1/5〜1/2倍程度に調整することが望ましい。
このような中空の四角錘台や円錐台等の錘台を逆さにして敷き詰めた格子模様をした、あるいは規則的な配列をした太陽電池基板上に薄膜シリコン層を形成すると、製膜に応じて凹部が縮小していき、発電層の最終的な表面には逆さにした角錐あるいは円錐に準ずるような形状を持つボイド2が生じ得る。
ボイド2の開口角度は必ずしも一定とは限らず、底部から頂部に向かって変化し得るものである。そこで、ボイド形状を特徴づける指標として、ボイドの中央を通る断面をみたときに向かい合う2辺の為す角が最小となる角度、すなわち最小開口角度を用いる。
特に、光散乱効果を高めるように凹部の高低差の大きいテクスチャ構造を持つ基板を利用すると、ボイド2の最小開口角度7が小さくなる傾向がある。
ボイド2の最小開口角度7が120度を下回ると、その上へ成長される透明導電層の膜質および膜厚の均一性の確保が難しくなってくる。
基板のテクスチャ構造が周期性を持つ場合には、当然ながらボイド2は発電層表面に周期的に形成される。
ボイド2は、太陽電池基板5の凹型構造を反映して形成されるものであるため、その密度は凹型構造の密度とおよそ一致する。よってボイド2は、凹部構造の一辺の長さあるいはその直径を0.2〜10mmとした場合、発電層3の表面上において10mm×10mmにつき1個以上、すなわち0.01個/mm2以上の密度で存在する。しかしながら製膜手法によっては、ボイド2の位置が太陽電池基板5の凹型構造と必ずしも一対一に対応しない場合も有り得る。
図2に示す実施の形態では、半導体層として結晶質薄膜シリコン層を用いているが、太陽電池特性が得られるものであれば他の半導体層でも構わない。
つまり、非晶質半導体でもよく、また材料として化合物半導体や有機材料であってもよく、さらには複数の接合が積層されたいわゆるタンデム構造をなすものであってもよい。
また、バンドギャップが不連続となるヘテロ接合を含んでいてもよい。
透明導電層1は、上述のボイド2の底部まで到達しボイド全体を充填する形で製膜され、さらに発電層3の表面にて連続性を有する。
これにより、発電層表面に対して透明導電層が良好な被覆性を持って形成されることになり、光生成電流が効率的に収集できる。
特にボイドの最小開口角度が120度を下回ると、物理蒸着法ではボイド2の底部周辺への均一な製膜が困難となる。
そのため、上述のような構造を持つ透明導電層1を得るために、被覆性の高い表面反応を利用した化学堆積法や原子層堆積法、液相を利用した塗布法などを用いることが好ましい。
また、図2においては透明導電層1の材料として酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズあるいはその合金のような高透明性かつ高導電性を有する無機材料を想定しているが、透明性・導電性を有していれば有機材料であってもよい。
図3は、本発明と比較するための、本発明を適用しない薄膜太陽電池を示す断面図である。
図2の断面図との相違点は透明導電層1の形態である。図3では、透明導電層1が反射防止膜を兼ねて膜厚が100nm以下の薄膜で形成された場合を想定している。
このような薄膜の透明導電層1は物理蒸着法で製膜されることが一般的であるが、開口角の小さいボイド2がある場合、シャドウ効果によってボイド底部において膜厚の低下あるいは膜の不連続が生じる。
このような不均一性・不連続性があると、ボイド近傍における光生成電流の収集が不十分となる上に、電極としての電気抵抗が増加し、光電変換効率の低下を招く。
図4は、本発明の効果を比較するために実験的に作製した薄膜微結晶シリコン太陽電池の断面電子顕微鏡像を示す図である。
図4の左側は本発明に係る微結晶シリコン太陽電池、右側は本発明を適用しなかった微結晶シリコン太陽電池である
この2つの太陽電池は、平坦底部6を持つ凹型構造を三角格子状換言すればハチの巣模様に周期的に配列したテクスチャ構造からなる同一形状の太陽電池基板5に対し、銀および酸化亜鉛の積層構造からなる裏面電極兼反射層を形成し、その上部にプラズマ支援化学気相化学堆積法にて発電層3に相当する微結晶シリコン層を形成し、さらに透明導電層1を形成することで作製される。太陽電池基板5は、中空の円錐台を逆さにした凹型構造を有し、円錐台の開口部直径は2.5mm、平坦底部6の直径はその1/3程度である。また発電層3の膜厚は2mm程度であり、発電層表面のボイド2の最小開口角度は55度程度、その表面密度は0.3個/mm2程度である。
図4の左図では、透明導電層1は化学気相堆積法で形成された膜厚2mm程度のホウ素添加酸化亜鉛層からなり、発電層3の表面に形成されたボイド2を完全に充填しつつ、かつ発電層の頂部を結ぶ線9を超えて製膜され、面内方向の連続性も確保されている。
一方図4の右図では、透明導電層1は物理蒸着法の一つであるスパッタリング法で形成されたITO層からなり、その膜厚は反射防止効果を期待して70nm程度としている。
この場合、発電層3の表面に形成されたボイド2の底部にて、透明導電層1の膜厚が不均一となり、一部では膜の欠損が認められる。
このような構造では、発電層3で発生した光生成電流の収集が不十分となり、かつまた透明導電層1全体としての電気抵抗が増加するために、発電特性が低下する。
図5は、図4に示した本発明の効果を比較するために実験的に作製した薄膜微結晶シリコン太陽電池の発電特性を比較した例である。
ここでは、図4に示した各微結晶シリコン太陽電池に対し、エアマス1.5における太陽光を模擬した光を入射して電流−電圧特性および電力−電圧特性を取得し比較している。
電流−電圧特性から明らかなように、厚膜の透明導電層を化学気相堆積法で作製した本発明に係る薄膜微結晶シリコン太陽電池では、最大電力密度を与える点において曲線因子が向上し、結果として光電変換効率が向上することが理解される。
以上説明したように、本発明に係る薄膜太陽電池は、その発電層の表面に開口角度の小さいボイドを高密度に有していても、それらを透明導電層で充填させかつ透明導電層の連続性を確保することで光生成電流を効率よく収集でき、ひいては高い光電変換効率が期待できる。
1 透明導電層
2 ボイド
3 発電層
4 反射層
5 太陽電池基板
6 平坦底部
7 最小開口角度(θ)
8 太陽光
9 発電層の頂点を結んだ線(面)


Claims (9)

  1. 少なくとも透明導電層(1)、発電層(3)、太陽電池基板(製膜基板)(5)から構成される太陽電池であって、
    発電層(3)の表面に最小開口角度120度以下の逆さにした角錐あるいは円錐に準ずる開口が0.01個/mm2(1×1010個/m2)以上の密度で存在し、
    この開口が透明導電層(1)で充填され、かつ、この透明導電層(1)が発電層(3)表面にて連続な構造を持つことを特徴とする太陽電池。
  2. 発電層(3)の製膜基板(5)が、一辺の長さあるいは直径が0.2〜10mmの四角形または円形を開口部とする逆さにした錘台形状の凹型構造を敷き詰めた構造を有し、さらにその凹型構造がその一辺の長さあるいは直径の半分以下の深さと1/5〜1/2倍の大きさの略平坦底部を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
  3. 発電層(3)の製膜基板(5)が、一辺の長さあるいは直径が0.2〜10mmの四角形または円形を開口部とする逆さにした錘台形状の凹型構造の規則的な配列を有し、さらにその凹型構造がその一辺の長さあるいは直径の半分以下の深さと1/5〜1/2倍の大きさの略平坦底部を有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
  4. 発電層(3)に単層または多層の薄膜シリコン層あるいはその合金層を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池。
  5. 発電層(3)に微結晶シリコン層または微結晶シリコンゲルマニウム合金層を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池。
  6. 発電層(3)の厚さが0.2〜10mmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池。
  7. 透明導電層(1)が光入射側に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池。
  8. 透明導電層(1)が化学堆積法あるいは溶液堆積法で製膜されたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の太陽電池。
  9. 透明導電膜(1)が酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化錫(SnO2)あるいはその合金から成ることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の太陽電池。

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