JP2016199919A - コンクリート養生装置 - Google Patents
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そのため、例えば、トンネル工事では、脱型後の覆工コンクリートの表面の湿潤状態を保持することを目的として、覆工コンクリートの表面にミスト(水蒸気)を噴霧する散水養生や、覆工コンクリートの表面に沿って水の層を形成する(水を供給する)湛水養生等を採用する場合がある。
また、特許文献2には、一面側に多数の凸部を有した養生シートを覆工コンクリートの表面に添着させるとともに、覆工コンクリートの頂部において養生シートと覆工コンクリートとの間に散水手段を配設し、この散水手段から散水することで養生シートと覆工コンクリートとの隙間に水を流す養生方法が開示されている。なお、養生シートは、吸引手段によって、凸部の周囲を負圧にすることでコンクリートに密着されている。
また、特許文献4には、脱型後の覆工コンクリート面に沿ってアーチ状のバルーンを密着させるとともに、当該覆工コンクリート面に水を供給する方法が開示されている。
また、特許文献2の養生方法は、養生シートと覆工コンクリートとの隙間を流れる水が一定の水みちを流れることで、覆工コンクリートの表面の全体にわたって均一に湿潤させることができないおそれがあった。コンクリート表面を均一に養生できないと、出来形にムラが生じるおそれがある。
特許文献4に記載の養生方法は、コンクリート表面に直接養生水を流すため、コンクリート表面が溶脱するおそれがある。
また、特別な設備等を要しないため、設備費や維持管理等にコストがかかることもない。
また、不織布または織布からなる給水層を介してコンクリート表面に水分を供給するため、水の流れによってコンクリート表面の成分が溶脱することはない。すなわち、水分は不織布または織布の繊維同士の隙間を浸透することでコンクリートの表面に供給されるため、コンクリート表面における水の流速が小さく、コンクリート表面が浸食され難い。
また、下端部において前記流水層を断面U字状に折り曲げて通水路を形成すれば、養生シート下端部からの養生水の流出を防止し、ひいては、コンクリート構造物の周囲の地盤部分において、養生水の浸み込みによる泥ねい化や水たまりによる汚れを防止することができる。
さらに、コンクリートと給水層(不織布または織布)との間に網体(フラットヤーン)が介設されていれば、コンクリートと給水層とが付着することを防止できる。そのため、コンクリート養生装置の転用回数を増やすことが可能となる。
前記給水層は、熱融着で前記流水層に固定されているのが望ましい。
また、第三の発明に係るコンクリート養生装置は、コンクリートの表面に沿って形成された流水層を備えており、前記流水層は、表面に複数の凸部を有した樹脂製のシート材からなり、下端部が断面U字状に折り曲げられていることにより、端部に通水路が形成されていることを特徴としている。
前記シート材の曲げ剛性が5N/巾25mm以上、好ましくは5〜20N/巾25mmの範囲内であれば皺になりにくく、かつ、圧縮性に優れている。そのため、シート材に皺が形成されることによって養生水の流路が閉塞されることがなく、養生水をコンクリート全体に供給することができる。また、シート材は、圧縮性に優れ潰れにくいため、シート材が潰れることで養生水の流路が閉塞されることがない。
コンクリート養生装置1は、脱型後の覆工コンクリートCTの表面に当接させる。
コンクリート養生装置1は、その内面に配設された抑え部材2により、覆工コンクリートCTの内面に押し当てられている。
なお、抑え部材2の構成は限定されるものではなく、例えば、鋼材等を組み合わせることにより形成された仮設支持部材等であってもよい。
給水層3は、覆工コンクリートCTに当接していて、覆工コンクリートCTの表面に水分(養生水W)を供給する。
すなわち、トンネル下部の給水層3では、図2(a)に示すように、覆工コンクリートCTの内面(表面)を覆う不織布(第一不織布31)のみで形成されている。一方、トンネル上部の給水層3では、覆工コンクリートCTの表面を覆う第一不織布31と、第一不織布31の内面(裏面)を覆う第二不織布32と、第一不織布31と第二不織布32との間に配管された給水管33とにより形成されている。
第一不織布31は、覆工コンクリートCTの周長(トンネル周方向の長さ)よりも大きい長さを有していて、両端部(下端部)を折り曲げた状態で配設されている(図3参照)。なお、第一不織布31の長さは限定されるものではなく、例えば、覆工コンクリートCTの周長(トンネル周長)と同じ長さであってもよい。
第一不織布31のトンネル軸方向の長さは、覆工コンクリートCTの打設スパン長と同等の長さ(本実施形態では10.5乃至12.0m)を有している。
本実施形態では、第二不織布32として、第一不織布31と同様の物性を有したものを使用するが、第一不織布31と第二不織布32は、異なる物性を有していてもよい。
本実施形態では、図3に示すように、3本の給水管33を等間隔で配管している。中央の給水管33はトンネル天端付近、左右の給水管33,33は左右のアーチ肩部付近に配管されている。なお、給水管33の本数は限定されるものではない。
送水管34は、ポンプPを介して圧送された養生水Wを給水管33に送水する。給水管33に送水された養生水Wは、給水管33から排出されて、第一不織31および第二不織布32に浸透し、覆工コンクリートCTの表面に供給される。
また、第二不織布32に浸透した養生水Wのうちの余剰水は、流水層4へ流出する。
流水層4は、表面に複数の凸部42,42,…を有した熱可塑性樹脂のシート材41からなる。凸部42の先端は、給水層3(不織布31,32)に熱溶着されている。なお、シート材41の固定方法は限定されない。
なお、凸部42の形状は限定されるものではなく、例えば、円柱状であってもよいし角錐台状であってもよい。また、本実施形態のシート材41の凸部42は中空であるが、凸部42は必ずしも中空である必要はない。また、シート材41は、水が浸透しない材質(例えば樹脂等)であれば限定されるものではなく、必ずしも熱可塑性樹脂である必要はないが、本実施形態では、ポリプロピレンポリマー(PP)により形成されている。また、本実施形態では、シート材41として、曲げ剛性が5N/巾25mm以上、好ましくは5〜20N/巾25mmの範囲内の物を使用する。表2にシート材の原料物性を示す。
シート材41のトンネル軸方向の長さは、覆工コンクリートCTの打設スパン長と同等の長さ(本実施形態では10.5乃至12.0m)を有している。
流水層4に浸透した養生水Wは、凸部42の周囲の空間(シート材41と給水層3との隙間)を流下する。このとき、複数の凸部42,42,…が千鳥状に配置されているため、養生水Wの流下方向は分散するようになる。
流下層4を流下する養生水Wの一部は再び給水層3(第一不織布31または第二不織布32に浸透し、残りの養生水W(余剰水)は覆工コンクリートCTの脚部の通水路6へ流下する。
通水路6は、給水層3および流水層4から流下した余剰水をトンネル軸方向に沿って流す水路として機能する。
また、通水路6はシート材のみで形成されていてもよい。
本実施形態では、網体51として、フラットヤーン(扁平な糸)を採用している。フラットヤーンに使用する材料は限定されるものではないが、本実施形態では、ポリエチレンからなるダイヤテックス株式会社製のフラットヤーンクロスを採用する。表3にフラットヤーンの物性を示す。
なお、表層5は、必要に応じて形成すればよい。また、表層5を形成する網体51は、フラットヤーンに限定されるものではなく、例えば、樹脂製の網体であってもよい。また、網体51の網目の大きさは適宜設定すればよく、例えば、縦×横を3.0×3.0mm〜7.0×7.0mmの範囲内とすればよい。本実施形態では、網体51を予め第一不織布31の表面に固定しておく。なお、網体51の固定方法は限定されるものではなく、例えば熱融着や接着剤等により固定すればよい。
妻部止水材7を構成する材料は限定さえるものではないが、例えば、スポンジ状の樹脂製部材を使用すればよい。
妻部止水材7は、コンクリート養生装置1の妻部から養生水Wが流出することを防止する。
トンネルTの上部(アーチ肩部よりも上部分)では、給水管33から供給された養生水Wが、直接第一不織布31および第二不織布32に浸透することで、重力とは逆方向に対しても効率的に覆工コンクリートCTの表面に供給される。
第一不織布31に浸透した養生水Wのうちの一部は、第一不織布31内を流下することでトンネルTの側壁部分(アーチ肩部よりも下部分)へと供給され、残りは第二不織布32に浸透する。
流水層4に流出した水分は、凸部42によって分散されるとともに、トンネルの下部へ流下し、一部は再び給水層3に浸透し、残りは通水路6に流下する。
そして、通水路6に流下した水分は、トンネル軸方向に沿って流下する。
例えば、養生水Wを2分間給水した後、5分間給水を停止することにより、給水を断続的に行ってもよい。
また、給水を断続的に行う際に、0.1Mpaで1〜3回給水した後、0.2Mpaで4回給水する等、吸水圧力を変化させてもよい。
さらに、時間当たりの養生水Wの給水量は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
また、水分は、不織布(第一不織布31)を介してコンクリートの表面に供給されるため、コンクリートの表面を多量の水が流下することはなく、したがって、水の流れによってコンクリート表面の成分が溶脱することはない。すなわち、水分は不織布の繊維同士の隙間を浸透することでコンクリートの表面に供給されるため、コンクリート表面における水の流速が小さく、コンクリート表面が浸食され難い。
毛細管現象を利用して不織布に水を浸透させることで、重力に逆らって、上向きに水分を供給することができる。
トンネルTの上部(アーチ肩部よりも上部分)では、網体51(表層5)が介設されているため、第一不織布31が覆工コンクリートに付着することが防止されている。そのため、覆工コンクリートCTの表面の美観性が維持される。
トンネルTの脚部に流下した水分は、通水路6に流下するため、トンネルTの路面(底面)に養生水Wが流れ出すことを防止することができ、ひいては、路盤の強度が低下することや路盤が汚れること等を防止することができる。
不織布31,32からなる給水層3を介して養生水Wを供給するため、必要最小限水量でコンクリートの全面に養生水Wを供給することが可能となる。したがって、使用養生水Wの量が比較的少なくてすみ、経済的である。
また、養生水Wの供給を断続的に行うことで、養生水Wの供給量を制御することができる。
前記実施形態では、覆工コンクリートCT側から、第一不織布、第二不織布の順に積層する場合について説明したが、覆工コンクリートCT側から第二不織布、第一不織布の順で積層されていてもよい。また、給水層3は、必ずしも不織布が二重に積層されている必要はなく、1層の不織布のみで形成されていてもよいし、3層以上の不織布により形成されていてもよい。
前記実施形態では、トンネル上部の覆工コンクリートCTと給水層3との間に網体51を介設する場合について説明したが、網体51の設置個所は限定されるものではなく、例えば、トンネル側壁部分の覆工コンクリートと給水層3との間に介設してもよい。また、天井版の養生に本発明のコンクリート養生装置1を使用する場合には、コンクリート部材の下面と給水層3との間に網体51を介設するのが望ましい。
また、凸部42が千鳥状に配設されたシート材を採用することで、養生水の流下方向を分散させて、コンクリート全体に養生水を行きわたるようにすれば、給水層3を省略することも可能である。
前記実施形態では、給水層3(第一不織布31)および流水層4(シート材41)の下端部を断面U字状に折り曲げることにより通水路6を形成したが、給水層3を省略した場合等には、シート材41のみで通水路6を形成してもよい。
2 抑え部材
3 給水層
31 第一不織布
32 第二不織布
33 給水管
4 流水層
41 シート材
42 凸部
5 表層(網体)
51 網体
6 通水路
7 妻部止水材
CT 覆工コンクリート
T トンネル
Claims (11)
- コンクリートの表面に水分を供給する給水層と、
前記給水層の裏面に沿って形成された流水層と、を備えるコンクリート養生装置であって、
前記給水層は、不織布または織布からなり、
前記流水層は、表面に複数の凸部を有した樹脂製のシート材からなり、前記凸部の先端が、前記給水層の裏面に当接されていることを特徴とする、コンクリート養生装置。 - 前記凸部が千鳥状に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート養生装置。
- 前記流水層の下端部が断面U字状に折り曲げられていることにより、端部に通水路が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のコンクリート養生装置。
- 前記コンクリートが、トンネルの覆工コンクリートであって、
前記給水層は、前記覆工コンクリートの全周を覆う第一不織布と、前記覆工コンクリートの肩部よりも上部分を覆う第二不織布と、前記第一不織布と前記第二不織布との間に配管された給水管と、を有していることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のコンクリート養生装置。 - 前記コンクリートと前記給水層との間に網体が介設されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のコンクリート養生装置。
- 前記給水層は、熱融着で前記流水層に固定されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のコンクリート養生装置。
- コンクリートの表面に沿って形成された流水層を備えるコンクリート養生装置であって、
前記流水層は、表面に複数の凸部を有した樹脂製のシート材からなり、
前記凸部が千鳥状に配置されていることを特徴とする、コンクリート養生装置。 - コンクリートの表面に沿って形成された流水層を備えるコンクリート養生装置であって、
前記流水層は、表面に複数の凸部を有した樹脂製のシート材からなり、下端部が断面U字状に折り曲げられていることにより、端部に通水路が形成されていることを特徴とする、コンクリート養生装置。 - 前記凸部が、円錐台状であることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のコンクリート養生装置。
- 前記凸部の先端と、前記給水層との接触面積が、前記給水層全体の面積の10%未満であることを特徴とする、請求項9に記載のコンクリート養生装置。
- 前記シート材の曲げ剛性が5N/巾25mm以上であることを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のコンクリート養生装置。
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