以下で、本発明の実施形態および変形例について、より詳細に説明する。
本発明の第1の態様は、(a)第1の表面および対向する第2の表面を有する第1の層と、(b)第1の直径を有し、第1の層の第1の表面に配置された第1の糸セクションと、(c)第2の直径を有し、第1の層の第1の表面に配置された第2の糸セクションとを含み、(d)第1の糸セクションと第2の糸セクションとが、第1の糸セクションが第2の糸セクションに実質的に平行である少なくとも1つの平行部を含み、(e)第1の糸セクションと第2の糸セクションとの間の距離が、第1の直径および第2の直径の大きい方よりも小さい、スポーツシューズ用シューアッパーに関する。
本発明のシューアッパーを、一般に、刺繍機で製造することができる。刺繍機により、刺繍機の針が貫通できる織布、横編地、縦編地、または他のキャリア層への糸の機械縫込みまたは縫付けが可能になる。
図1は、シューアッパー3の製造に使用することができ、本発明および後述する変形例の文脈で一般に使用することができる多ヘッド工業用刺繍機1を例として示す。場合により、本発明に必須のすべての特徴が図1に見られなくても、そのようなシューアッパー3が本発明のシューアッパーであってよい。1つのシューアッパー3の製造に各々関与する刺繍ヘッド2a、2b、2cのそれぞれが図1に見られる。刺繍機は、一般に、所望の数の刺繍ヘッドを備えることができる。刺繍ヘッド2a、2b、2cは、少なくとも水平面で、例えば電気機械的に、または空気圧によって可動であり、刺繍ヘッド2a、2b、2cにより、針および糸の所望の位置決めが可能になる。
第1のステップでは、略透明で、図1の実施形態において参照符号4を付したキャリア層が設けられる。これは、箔、織布、布地、革、合成皮革、またはプラスチックであってよい。一般に、刺繍中に針が貫通できる、任意のタイプの広範囲にわたる構造を使用することができる。
キャリア層4が、ある条件下で、例えば水に接触したときに、少なくとも部分的に溶解する箔であることも考えられる。そして、製造方法の成果が、もはやキャリア層4をまったく含まない、または少なくとももはや完全には含まないシューアッパー3となる。その場合、シューアッパー3は、実質的に糸5または複数本の糸5から形成される。例えば、糸5は、シューアッパーの第1の層を形成することができる。それに加えて、または代替として、糸5は、第1の糸セクションおよび/または第2の糸セクションを形成することもできる。
実質的に、図1の例示的な実施形態では、本発明のシューアッパーを製造するために、以下で説明するように、最初に刺繍機1を用いて第1の層を糸からキャリア層4上に製造することができる。続いて、刺繍機1を用いて、第1の糸セクションおよび第2の糸セクションをこの第1の層の上に配置することができる。
例えば、キャリア層4をロールに巻き付けることができ、キャリア層4を少なくとも部分的に巻き出して、製造方法を実施するために、1つまたは複数の刺繍ヘッド2a、2b、2cの下に位置決めする。
例示的な製造方法は、糸5または複数本の糸5をキャリア層4上に配置するステップをさらに含む。本発明によれば、1本の糸5または複数本の糸5を使用することができる。複数本の糸5を使用するときに、これらの糸5は、材料特性、直径、色などに関して異なっていてよい。糸5を、それぞれの給糸ロール6a、6b、6cを介して刺繍ヘッド2a、2b、2cに供給することができる。
糸5をキャリア層4上に配置するときに、糸5がキャリア層4に接触することができる。しかしながら、一般に、糸5を配置するステップでは、糸5が必ずしもキャリア層4に接触しなければならないわけではない。例えば、図3に関してさらに後述するように、例えば第1の層を形成可能な第1の糸5aを、最初にキャリア層4上に配置してもよい。前記糸5aはキャリア層4に接触する。その後、例えば第1の糸セクションおよび/または第2の糸セクションを形成可能な第2の糸5bを、第1の糸5aの上に配置する。前記第2の糸5bはキャリア層4に直接接触しないが、キャリア層4上に配置される。
図1の実施形態に見られるように、3つの刺繍ヘッド2a、2b、2cの各々が、1つのシューアッパー3について1本または複数本の糸5をそれぞれ配置する。これに関し、図1の例示的な実施形態では、それぞれのシューアッパー3の形状は、糸5または複数本の糸5により規定される。しかしながら、これは本発明の文脈で強制されない。したがって、図1の例示的な実施形態の場合、糸5は、シューアッパー3の形状を特定し、実質的に、すなわち避けられない製造公差を除いて、その形状を満たす。実質的に、すなわち避けられない製造公差を除いて、シューアッパー3の外側には糸5がない。
図2は、前述した方法により製造されるシューアッパー3の例示的な上面図である。場合により、本発明に必須のすべての特徴が図2に見られなくても、そのようなシューアッパー3が本発明のシューアッパーであってよい。シューアッパー3の形状は、糸5により規定される。給糸機により避けられない残留撚糸(そのうちの3本に、例として参照符号7を付す)を、例えば切り離すことによって除去することができる。例えば、切離しを高周波交流またはレーザにより行うことができる。
糸5は、綿などの天然繊維、またはナイロン、ポリエステルなどの合成繊維、天然繊維および合成繊維の混合物、ポリエステルおよびナイロンの混合物などをベースにすることができる。さらに、糸5は溶融糸であってよい。シューアッパー3の少なくとも一部を加温することにより、溶融糸を少なくとも部分的に溶融してもよい。それに続く冷却中に、溶融糸が硬化して、シューアッパー3に安定性を与える。
図2の実施形態では、糸5はさらに2つの層に配置される。これに関し、第1の下層がシューアッパーの形状を満たし、これを規定する。シューアッパーの踵領域およびつま先領域の第2の層が、前記第1の層の上に配置され、第1の層を前記領域で補強する。一般に、第2の層を、シューアッパーの他の領域、例えば外側および/または内側に配置してもよい。第1の糸セクションおよび/または第2の糸セクションを第2の層に配置してもよい。
糸5がフィラメント糸であることも考えられる。例えば、そのような糸は炭素繊維を含むことができる。フィラメント糸を、樹脂、例えばエポキシベースの樹脂、UV接着剤、または溶融糸の使用によるその後の処理よって剛化することができる。本発明の文脈で使用可能な繊維、糸、および撚糸のさらなる例については、「繊維」ならびに「糸および撚糸」の欄でさらに説明する。
例示的な製造方法は、糸5または複数の糸5のうちの少なくとも1本をキャリア層4に縫い付けるステップをさらに含む。この目的で、撚糸(図には見られない)は、刺繍ヘッド2a、2bまたは2cの針を用いて、キャリア層4を通って糸5の周りに案内され、糸5がキャリア層4に固定されるようにする。これに関し、わずか数ミリメートルから数センチメートルの距離をおいて、ステッチを配置することができる。
撚糸は、一般に糸5より細くてよい。撚糸が、糸5と同じかまたはより大きい直径を有することも考えられる。縫糸を撚糸として使用してもよい。これは、綿などの天然繊維、またはナイロン、ポリエステルなどの合成繊維、天然繊維および合成繊維の混合物、ポリエステルおよびナイロンの混合物などをベースにすることができる。使用する繊維、糸、および撚糸の例については、「繊維」ならびに「糸および撚糸」の欄でさらに説明する。
実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留供給糸を除いて、糸5を全長に沿ってキャリア層4に縫い合わせることができる。
前述したように、製造方法を実施するときに複数本の糸5を使用することができる。図3の実施形態では、第1の糸5aおよび第2の糸5bが使用される。第1の糸5aおよび第2の糸5bはキャリア層4上に配置される。前述したように、第2の糸5bはキャリア層4に直接接触しないが、キャリア層4上に配置される。
複数本の糸5を使用するときに、これらを互いに縫い合わせることができる。例えば、図3の実施形態では、第1の糸5aを第2の糸5bに縫い合わせる。複数本の糸5を互いに縫い合わせることに関して、キャリア層4に縫い合わせることに関する記述が同様に当てはまる。例えば、図3の実施形態では、実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留供給糸を除いて、糸5aを全長に沿って糸5bに縫い合わせることができる。場合により、本発明に必須のすべての特徴が図3に見られなくても、そのようなシューアッパー3が本発明のシューアッパーであってよい。
糸5を互いに縫い合わせるために、同じ撚糸を、糸5とキャリア層との縫い合わせに関して使用してもよい。図3の実施形態に関し、例えば、糸5aおよび糸5bをキャリア層4に縫い合わせることができ、糸5aを糸5bに同時に単一の撚糸ステッチで縫い合わせることができる。しかしながら、糸5aのみをキャリア層4に縫い合わせること、および糸5bを糸5aに縫い合わせるがキャリア層4に縫い合わせないことも可能である。糸5を互いに縫い合わせるために、糸5をキャリア層4に縫い合わせるための撚糸とは別の撚糸を使用してもよい。
糸5をそれ自体に縫い合わせてもよい。例えば図3に提示するように、糸5をキャリア層4上にループまたは周方向に配置する場合には、糸5の隣接する位置を互いに縫い合わせることができる。これは、実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留糸を除いて、糸5の全長に沿って、あるいは、シューアッパー3の予め指定した領域のみで行うことができる。
図3の実施形態に関して示したように、複数本の糸5を使用する場合、これらを層に配置してもよい。図3の実施形態では、第1の糸5aが第1の層8aを形成し、これは、実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留糸を除いて、シューアッパー3の形状に対応し、第2の糸5bは、第1の層8aの上に配置される第2の層8bを形成する。したがって、第1の層8aは、実質的にシューアッパー3全体に配置されるが、第2の層8bはシューアッパー3の部分的な領域に配置される。
図3の実施形態では、第2の層8bは、実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留糸を除いて、完全に第1の層8aの上に配置される。しかしながら、例えば、第2の層8bを第1の層8aの上に部分的に配置し、別の領域でキャリア層4に直接接触することも考えられる。
第2の層8bを、シューアッパー3の選択された位置に配置してもよい。例えば、さらにより詳細に説明する図4aの実施形態では、第2の層8bを、踵領域9および中足領域10のみで第1の層8aの上に配置する。足首(図示せず)を越えて延びる、本発明のシューアッパーでは、第2の層が脛の領域に配置されることも考えられる。実質的に、第1の糸セクションおよび/または第2の糸セクションを第2の層に配置することができる。
少なくとも1つの補強要素を、第1の層8aと第2の層8bとの間に配置してもよい。例えば図5の実施形態の概略図において、踵領域9、紐アイレットの領域11、およびつま先領域12のそれぞれにおいて第1の層の上に補強材が配置され、その後、第2の層がその上に配置された。補強要素は、シューアッパーが足首(図示せず)を越えて延びる場合に脛ガードとなることもできる。場合により、本発明に必須のすべての特徴が図5に見られなくても、そのようなシューアッパー3が本発明のシューアッパーであってよい。例えば、第1の糸セクションおよび/または第2の糸セクションを第2の層に配置することができる。
それに加えて、または代替として、アイレット、装飾要素、装飾ストライプ、摩耗保護要素、リブ要素、剛化要素、支持要素、緩衝要素、および繊維要素などの他のシューズ部品を、一般に、第1の層8aと第2の層8bとの間に配置することもできる。例えば、紐を通す紐アイレットを、第1の層8aと第2の層8bとの間に配置することができる。溶融糸またはポリマーコーティングを用いて、アイレットを第1の層8aおよび第2の層8bの糸にしっかりと連結することができる。あるいは、UV接着剤(または他の接着剤)を用いてアイレットを固定することができる。
別の例は、シューアッパーの踵領域で第1の層8aと第2の層8bとの間に踵カウンタを配置することである。シューアッパーの踵領域は、足のローリングオフ運動によって特に高い機械応力を受けるため、シューズは踵領域で踵カウンタにより補強されることが多い。本発明によれば、踵カウンタを2つの層の間に配置することにより、踵カウンタをシューアッパーに組み込むことができる。それに加えて、または代替として、つま先カウンタを2つの層の間に配置することもできる。一般に、シューアッパーを追加の補強要素により任意の位置で補強することができる。
さらなる例は、第1の層8aと第2の層8bとの間に中足領域の支持を配置することである。人の足の中足領域は、中足の下降を避けるようにフットウェアによる支持を必要とする。対応する支持要素を2つの層の間に配置して、例えば溶融糸または接着剤(例えばUV接着剤)により固定することができる。支持要素を第1の層8aおよび/または第2の層8bに溶着する、および/または縫い合わせることも考えられる。
一般に、追加の部品を、2つの層の間に手動、半自動、または全自動で(例えばロボットアームを用いて)配置することができる。例えば、第1の層8aおよび第2の層8bは、追加の部品を押し込むトンネルまたはポケットを形成することができる。追加の部品を、第1の層8aおよび/または第2の層8bに手動または自動で縫い合わせる、接着する(例えばUV接着剤を用いて)、または溶着することも可能である。あるいは、溶融糸を固定のために使用してもよい。
例えば、本出願人のドイツ特許出願である出願番号102013221018および102013221020に記載されたように、機械により、および処理ステーションにより主に全自動で、補強要素および他のシューズ部品をシューアッパー3上に配置してもよい。
少なくとも1つの補強要素を、プラスチック、布地、革、合成皮革、または金属から製造することができる。補強要素をこれらの材料から切り抜くことができ、または、例えばプラスチックの場合に成形もしくは射出成形することができる。例えば炭素繊維、ガラス繊維などをベースにした複合材料、または対応する不織布材料を使用することも可能である。
「ポリマーコーティング」の欄で説明するように、的を絞ったシューアッパー3の剛化を、樹脂またはポリマーを適用することにより実現してもよい。あるいは、前述したように、UV接着剤または溶融糸を剛化のために使用してもよい。
図6は、前述した方法により得られるシューアッパー3のさらなる実施形態を示す。場合により、本発明に必須のすべての特徴が図6に見られなくても、そのようなシューアッパー3が本発明のシューアッパーであってよい。本実施形態では、シューアッパー3は紐アイレットを含み、そのうちの3つに、例として参照符号16を付す。1つまたはいくつかの紐を紐アイレット16に引き通して、図4aに例として示すように、完成したスポーツシューズを紐で結ぶことができるようにする。
図6の実施形態では、糸5が配置されるときに紐アイレット16が直接形成される、すなわち糸5がそれぞれの紐アイレット16の位置に配置されないため、紐アイレット16を形成する対応する開口部が残る。開口部が縁部で糸5によりさらに補強されて、ほつれを防止することが考えられる。代替として、またはそれに加えて、糸5を縫い合わせるため、または複数本の糸5を縫い合わせるために使用する糸に、開口部の縁部を縫い合わせてもよい。
代替実施形態では、続いて、例えば打抜きにより、紐アイレットがシューアッパー3に形成される。加えて、紐アイレットを、金属またはプラスチックから作られたアイレットで補強して、ほつれを防止することができる。前記追加のアイレットをシューアッパー3に押し込んでもよい。
紐アイレット16とは別に、シューアッパー3の他の開口部、例えば通気開口部を形成することも考えられる。糸5を配置するとき、あるいはそれに続いて、これらの開口部を、例えば打抜きにより直接形成してもよい。
一般に、本明細書に記載の本発明のシューアッパー3の製造方法は、糸5をそれ相応に配置することにより、シューアッパー3の形状を完成したスポーツシューズの着用者の足に合わせて調節することによって、簡単かつ費用効果の高い個人化を可能にする。例えば、シューアッパーの幅を足の形状に合わせて調節することができる。この目的で、着用者の足を、例えば3Dスキャナを用いて測定してもよい。あるいは、巻尺を使用して、足を手で測定してもよい。その後、決定された測定値を、対応するソフトウェアにより刺繍機用のプログラムに変換することができる。これを刺繍機で、または別のコンピュータで行うことができる。その後、プログラムを刺繍機に読み込み、刺繍機は、予め決定された足の測定値に従ってシューアッパー3を製造する。
しかしながら、刺繍について、糸の色または装飾の対応する選択により視覚的に個人化することも考えられる。このために異なる色の糸を使用してもよい。シューアッパーのある領域に反射糸を使用して、その領域で光ることによって暗闇において視覚的効果を得ることも考えられる。さらに、蛍光糸または燐光糸を使用してもよい。蛍光糸は、ディスコで頻繁に使用されるように、例えばIV光の照射時に発光する。燐光糸は、光が照射された後に発光を続けるため、「蓄光(charged)」することができる。したがって、燐光糸を含むシューズは、暗闇において自発的に発光することができる。
一般に、視覚的特性を有する糸を、シューアッパーのある領域のみ、またはシューアッパー全体において使用することができる。
前述したシューアッパー3を含むスポーツシューズ13の例示的な実施形態が、図4aに示される。場合により、本発明に必須のすべての特徴が図4aに見られなくても、そのようなシューアッパー3が本発明のシューアッパーであってよい。スポーツシューズ13は、シューアッパー3と、ソール構造14とを含む。シューアッパー3およびその製造に関し、この説明における記述が当てはまる。
ソール構造14はアウトソールを含む。一部の実施形態では、ソール構造14は、該当する場合、ミッドソールおよびインソールをさらに含む。インソールは、取外し可能であっても、シューズに堅く連結されていてもよい。図4aの実施形態で、ソール構造14はスタッドを含み、そのうちの3つに、例として参照符号15を付す。ソール構造14を、縫付け、接着、溶着(特に超音波溶着)、または同様の連結技法により、シューアッパー3に連結することができる。
図4bは、スポーツシューズ13のさらなる実施形態を示す。これはサッカーシューズである。したがって、シューズ13はスタッドを含み、そのうちの3つに、例として参照符号15を付す。スタッド15は、かなり堅いソールプレート14に取り付けられる。図4bの実施形態では、スタッドがソールプレート14に堅く連結される。しかしながら、スタッドが、ソールプレート14にねじ込まれるねじ込みスタッドであることも考えられる。図4bの実施形態では、スタッドが透明な端部を含み、そのうちの3つに、例として参照符号41を付す。端部41は、スタッド15のベースに射出成形される。しかしながら、端部を接着または溶着することも考えられる。
前述したように製造されたシューアッパー3が、ソールプレート14に取り付けられる。場合により、本発明に必須のすべての特徴が図4bに見られなくても、そのようなシューアッパー3が本発明のシューアッパーであってよい。シューアッパー3はソールプレート14に接着される。しかしながら、シューアッパー3をソールプレート14に溶着する、または縫い付けることも考えられる。図4bの実施形態では、図4cの詳細図に見られるように、シューアッパーが3層の糸を含む。第1の層は糸42により形成される。この層は最外層である。その下にある層は、糸43により形成される。これは中間層である。最下層は糸44により形成される。糸42、43、44は撚糸45によってまとめられる。
図4bに示すように、3層がシューアッパー3全体に沿って重なる。しかしながら、シューアッパー3の部分的な領域、例えばフットボールとの接触が通常生じる領域、すなわち、例えばつま先の上および甲の領域のみで3層が重なることも考えられる。このようにして、シューアッパー3を、これらの領域における3層構成によって、より堅く厚くすることができる。
シューアッパー3の3層構成は、シューアッパー3の必要な安定性および剛性をさらにもたらす。さらに、溶融糸、ポリマーコーティング、UV接着剤、または樹脂を用いて、シューアッパー3を剛化および補強することができる。前述したように、補強要素を、糸42、43、44により形成された層の間に配置することも考えられる。
糸42、43、44が特性に関して異なっていてもよい。例えば、糸43は溶融糸であってよく、熱を加えると液化し、その後冷却すると、糸42、44により形成された層を互いに連結する。最外層の糸42は、ボールとの摩擦を高めて良好なボールの制御を可能にするゴム引糸またはゴム糸であってよい。最内層の糸44は、水分を足から離れるように輸送する吸湿糸であってよい。
3層の代わりに、より少ない層の糸またはより多い層の糸を使用してもよい。
他の実施形態に関してなされた記述は、一般に、図4bの実施形態のシューアッパー3に関して同様に当てはまる。
繊維
本発明の文脈で使用される糸5または撚糸は、通常、繊維を含む。長さに対してかなり細い可撓性構造を繊維と呼ぶ。使用に関して事実上制限のない長さの非常に長い繊維を、フィラメントと呼ぶ。繊維を紡いで、または撚り合わせて撚糸または糸5にする。しかしながら、繊維が長く、これをねじって糸5にする場合もある。繊維を天然材料または合成材料から構成することができる。天然繊維は、堆肥化できるため環境に優しい。天然繊維としては、例えば、綿、ウール、アルパカ、麻、ココナッツ繊維、または絹が挙げられる。合成繊維としては、代表的な繊維または高性能繊維または工業用繊維として生産可能な、ナイロン(商標)、ポリエステル、エラステインもしくはスパンデックス、ケブラー(商標)、またはポリエーテルスルホンなどのポリマーベースの繊維が挙げられる。
本発明のシューアッパーを、天然繊維から作られた天然糸5を含む本発明のシューアッパーと、例えばプラスチックを含む取外し可能な部分、例えばインソールとを含む様々な部分から組み立てることが考えられる。このようにして、両方の部分を別個に廃棄することができる。この例では、例えば、シューアッパーを堆肥化できる廃棄物に向けることができ、インソールを再利用可能な材料のリサイクルに向けることができる。
図7に示すように、繊維および繊維から製造された糸5dの機械的特性および物理的特性はまた、繊維の横断面によって決まる。これらの異なる横断面、それらの特性、およびそのような横断面を有する材料の例について、以下で説明する。
円形横断面710を有する繊維は、中実であっても中空であってもよい。中実繊維は最も頻繁に見られるタイプで、容易に曲げることができ、手触りが柔らかい。中実繊維と同じ重量/長さ比を有する中空円としての繊維は、より大きい横断面を有し、曲げに対する抵抗性が高い。円形横断面を有する繊維の例は、ナイロン(商標)、ポリエステル、リヨセルである。
骨状横断面730を有する繊維は、水分を吸い取る特性を有する。そのような繊維の材料の例は、アクリルおよびスパンデックスである。繊維の中央の凹状領域は、毛管作用により水分が長手方向に通過するのを補助し、水分はある位置から迅速に吸い取られて分散される。
以下のさらなる横断面が図7に示される。
フラワを有する多角形横断面711、例:亜麻、
重なりセクションを有する長円形〜丸形横断面712、例:ウール、
拡張および巻込み(convolution)を有する平坦な長円形横断面713、例:綿、
部分溝を有する鋸刃状の円形横断面714、例:レーヨン、
ライ豆形横断面720、平滑表面、
鋸刃状のライ豆形横断面721、例:アブリル(商標)レーヨン、
丸みを帯びた縁部を有する三角形横断面722、例:絹、
3葉星形横断面723、より光沢のある外観を有する三角形繊維、
部分溝を有する棍棒状横断面724、輝きのある外観、例:アセテート、
平坦な幅広の横断面731、例:別設計のアセテート、
星形または蛇腹型(concertina)横断面732、
中空中心を有するつぶれたチューブ形状の横断面733、および
空隙を有する正方形横断面734、例:AnsoIV(商標)ナイロン。
本発明に関連する特性を有する個々の繊維について、以下で説明する。
アラミド繊維:摩耗および有機溶剤に対する良好な耐性;非導電性;最大500℃の耐熱温度;低い可燃性。
パラアラミド繊維:ケブラー(商標)、Techova(商標)、およびトワロン(商標)という商標名で知られている;優れた強度−重量特性;高いヤング率および高い引張強度(メタアラミドよりも高い);低い伸縮性、低い破断時の伸び率(約3.5%)。
メタアラミド:Numex(商標)、Teijinconex(商標)、New Star(商標)、X−Fiper(商標)という商標名で知られている。
ダイニーマ繊維:あらゆる公知の熱可塑性物質のうちで衝撃強度が最も高い;腐食性化学物質(酸化性酸を除く)に対する高い耐性;極めて低い吸湿性;ナイロン(商標)およびアセテートの摩擦係数よりも大幅に低く、テフロンと同等の非常に低い摩擦係数;自己潤滑性;摩耗に対する高い耐性(鋼の15倍の高さの耐摩耗性);テフロンより優れた耐摩耗性;無毒性。
炭素繊維:実質的に炭素原子から構成された、直径約0.005〜0.010mmの極細繊維;サイズに関する高い安定性;1本の糸が数千本の炭素繊維から形成される;高い引張強度;軽量;低い熱膨張率;伝熱性および導電性。
ガラス繊維:高い表面積/重量比;空気を内部に閉じ込めることによって、ガラス繊維のブロックが良好な断熱性を提供;0.05W/(m×K)の伝熱率;繊維が細いほど延性が高くなるため、最細繊維が最も安定している;ガラスがアモルファス構造を有するため、ガラス繊維の特性は繊維に沿っておよびその横断面にわたって同一である;繊維の曲げ直径と繊維の直径との相関性;断熱性、電気絶縁性、および防音性;炭素繊維よりも高い破断前の伸縮性。
本発明の文脈では、玄武岩繊維を使用してもよい。
糸および撚糸
本発明の文脈では、複数の異なる糸または撚糸を使用することができる。既に定義したように、直径に対して長い1本または何本かの繊維の構造を糸と呼ぶ。
機能性糸は、水分を輸送すること、したがって汗および水分を吸収することができる。機能性糸は、導電性、自浄性、温度調節性および断熱性、難燃性、ならびにUV吸収性を有することができ、赤外線放射の反射を可能にすることができる。機能性糸は、センサとしての使用に適している場合がある。例えば、銀糸などの抗菌性糸は、臭気形成を防止する。
金属糸および撚糸を本発明およびその変形例の文脈で使用して、例えばセンサから信号を輸送するために導電性を考慮してもよい。
ステンレス鋼糸は、ナイロンまたはポリエステルと鋼との混合物から作られた繊維を含む。ステンレス鋼糸の特性としては、高い耐摩耗性、高い耐切断性、高い耐熱摩耗性、高い伝熱性および導電性、高い引張強度、ならびに高重量が含まれる。本発明の文脈では、金糸または青銅糸を使用してもよい。
本発明によるシューアッパーでは、電子デバイスの組込みのために導電糸5を使用することができる。これらの糸は、例えば、センサから電気インパルス処理を行うデバイスへインパルスを転送してもよく、または糸はセンサ自体として機能し、例えば、皮膚または生理学的磁場における電流を測定することができる。布地ベース電極の使用例が、欧州特許出願EP1916323に見られる。
溶融糸は、熱可塑性糸と非熱可塑性糸との混合物であってよい。実質的に3つのタイプの溶融糸、すなわち、非熱可塑性糸により囲まれた熱可塑性糸、熱可塑性糸により囲まれた非熱可塑性糸、および熱可塑性材料の純溶融糸がある。熱可塑性糸は、溶融温度まで加熱されると、シューアッパーの非熱可塑性糸(例えば、ポリエステルもしくはナイロン(商標))および/または他の非熱可塑性糸と融合して、ある領域でシューアッパーを剛化する。熱可塑性糸の溶融温度はそれ相応に決定され、通常、混合糸の場合の非熱可塑性糸の温度よりも低い。熱可塑性糸と非熱可塑性糸との結合を向上させるために、非熱可塑性糸の表面を特殊加工してもよい。
溶融糸の溶融は、通常、好ましくは110℃〜150℃、特に好ましくは130℃の温度で圧力を受けて生じる。熱可塑性糸は、プロセスにおいて少なくとも部分的に溶融し、通常、非熱可塑性糸と融合する。プレス後、シューアッパーを冷却して、結合が硬化し固定されるようにする。これにより、シューアッパーは所定の3次元形状に固定される。溶融糸を、シューアッパー全体または選択領域のみに配置することができる。
一実施形態では、本発明によるシューアッパー3の非熱可塑性糸の2つの層の間に、溶融糸を配置してもよい。そのようにすることで、溶融糸を簡単に層の間に配置することができる。層の間に配置することは、溶融糸と金型とが直接接触しないため、プレスおよび成形中に金型が汚れないという利点を有する。
収縮性糸は、2成分糸である。外側成分は、収縮性材料であり、所定の温度を超えると収縮する。内側成分は、ポリエステルまたはナイロンなどの非収縮性糸である。収縮によって布地材料の剛性が高まる。
本発明で使用するさらなる糸は、発光糸または反射糸であり、いわゆる「インテリジェント」糸である。インテリジェント糸の例は、水分、熱、または冷温に対して反応し、それに応じて特性を変化させる糸であり、例えば収縮するか、または体積を変えて、空気透過性を高める。圧電繊維から作られた糸または圧電性物質でコーティングされた糸は、運動エネルギーまたは圧力変化を電気に変換することが可能であり、例えばセンサ、トランスミッタ、またはアキュムレータなどにエネルギーを供給することができる。
一般に、糸にさらに仕上げを施す、例えばコーティングして、伸縮性、耐水性/防水性、色、または耐湿性などのある特性を維持することができる。
本発明およびその変形例の文脈では、フィラメントから作られた糸を使用してもよい。これらのフィラメントをねじることができ、またはフィラメント束の形でねじらずに使用することができる。フィラメントを非常にわずかに、例えば1インチ当たり約1〜3のねじりでねじってもよい。本発明およびその変形例を、そのようなフィラメントの束に有利に適用することができる。例えば、2〜2900本のフィラメント、特にまたはより詳細には200〜960本のフィラメント、特に48〜384本のフィラメントを含む、フィラメントの束を使用することができる。そのようなフィラメントの束は、190デニール〜9800デニール、またはより詳細には280デニール〜6500デニール、特に420デニール〜3360デニールの総線形質量密度を有することができる。各フィラメントは、3デニール〜25デニール、特に6〜15デニール、例えば10.4デニールの総線形質量密度を有することができる。
本発明およびその変形例の文脈で使用されるフィラメントの束の平均直径は、0.3mm〜2mm、特に0.8mm〜1.3mm、特に約1mm、例えば0.9mmまたは1.1mmであってよい。
また、マルチフィラメント、モノフィラメント、および単一フィラメントを、縫糸などの糸または撚糸として使用することができる。
ポリマーコーティング
例えば本発明のシューアッパーのある領域におけるある適用および要件のために、シューアッパーの可撓性および伸縮性を低下させて、十分な安定性を実現することが必要である。
その目的で、ポリマー層を、本発明のシューアッパーの一側または両側に適用することができるが、一般に、他の布地材料に適用してもよい。そのようなポリマー層により、補強および/または剛化が行われる。本発明のシューアッパーでは、例えば、ポリマー層は、つま先領域12における、踵領域9における、紐アイレット16に沿った、外側表面上および/または内側表面上における、あるいは他の領域における、支持および/または剛化および/または弾性の低下という目的を果たすことができる。さらに、弾性および特に伸縮性が低下する。さらに、ポリマー層は、シューアッパー3を摩耗から保護する。さらに、圧縮成形によるポリマーコーティングによって、シューアッパー3に3次元形状を与えることができる。ポリマーコーティングは、例えば熱可塑性ウレタン(TPU)であってよい。
ポリマーコーティングの第1のステップで、ポリマー材料がシューアッパー3の一側に適用される。しかしながら、ポリマー材料を両側に適用してもよい。材料を、噴霧、ドクターナイフによるコーティング、塗付け、印刷、焼結、アイロンがけ、または散布によって適用することができる。ポリマー材料がフィルムの形である場合には、このフィルムは、例えば、シューアッパー3上に配置され、熱および圧力によりシューアッパー3に連結される。最も重要な適用方法は、噴霧である。これを、スプレーガンと同様の工具によって行うことができる。噴霧により、ポリマー材料を薄層で均一に適用することが可能となる。さらに、噴霧は、迅速な方法である。例えば着色顔料などのエフェクト顔料を、ポリマーコーティング中に混合することが可能である。
ポリマーは、好ましくは0.2〜1mmの厚さを有する少なくとも1つの層で適用される。1つまたはいくつかの層を適用することができ、これらの層は異なる厚さおよび/または色からなることが可能である。例えば、シューアッパーは、0.01〜5mmの厚さを有するポリマーコーティングを含んでよい。さらに、一部のシューアッパー3では、ポリマーコーティングの厚さが0.05〜2mmであってよい。様々な厚さのポリマーコーティングを有するシューアッパー3の隣接する領域間には、薄いポリマーコーティングを有する領域から厚いポリマーコーティングを有する領域にかけて連続的な移行部が存在し得る。同様の方法で、以下で説明するように、異なるポリマー材料を異なる領域において使用することができる。
適用中に、ポリマー材料は、一方においては糸5の接触点または交差点のそれぞれに対して、および他方においては糸5の間の間隙に対して取り付けられ、以下で説明する処理ステップ後にシューアッパー3に閉鎖ポリマー表面を形成する。しかしながら、布地構造により大きな凹部がある場合には、この閉鎖ポリマー表面は、例えば換気を可能にするように断続的であってもよい。また、これは、適用される材料の厚さにより左右され、適用されるポリマー材料が薄いほど、閉鎖ポリマー表面の断続化が容易になる。さらに、ポリマー材料は、糸5に浸透して染み込むことも可能であり、これにより糸の剛化に寄与する。
ポリマー材料の適用後、シューアッパー3は、プレス機で熱および圧力下において少なくとも部分的にプレスされる。ポリマー材料は、このステップで液化し、シューアッパー3の糸5と融合する。
さらなるオプションのステップにおいて、シューアッパー3を、圧縮成形機において3次元形状にプレスすることが可能である。例えば、シューアッパー3の踵領域9およびつま先領域12を、靴屋の靴型で3次元に形作ることができる。あるいは、シューアッパー3を、直接足に合致させてもよい。
プレスおよび成形後の完全な剛化までの反応時間は、使用されるポリマー材料に応じて1日または2日となり得る。
以下のポリマー材料、すなわち、ポリエステル、ポリエステル−ウレタンプレポリマー、アクリレート、アセテート、反応性ポリオレフィン、コポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、反応系(主にH2OまたはO2と反応するポリウレタン系)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン、ポリマー分散剤を使用することができる。
記載したポリマーコーティングは、支持機能、剛化、高い耐摩耗性、伸縮性の解消、快適性の向上、摩擦の向上、および/または所定の3次元幾何形状への合致がどこで求められる場合でも、実用的な使用が可能である。また、例えば、ポリマー材料をシューアッパー3に適用し、次いで熱により足の形状に適合させることで、着用者の足の個々の形状に対して本発明のシューアッパー3を合致させることも考えられる。
補強ポリマーコーティングに加えて、または補強ポリマーコーティングの代わりに、本発明のシューアッパー3は防水コーティングを備えて、水分の侵入を防止または少なくとも低減させることもできる。これに関し、防水コーティングをシューアッパー3全体またはその一部、例えばつま先領域12のみに適用してもよい。防水コーティングは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ワックス、またはパラフィンなどの疎水性材料をベースにすることができる。市販のコーティングは、3MによるScotchgard(商標)である。
さらにそれに加えて、または代替として、シューアッパー3はUV接着剤を備えてもよい。UV接着剤は、UV光を照射することによって活性化し、接着剤を適用した位置に糸を接着する。このようにして、シューアッパーのある領域を、その後に剛化し、補強し、または防水性を高めることができる。さらに、溶融糸を使用しなくてもよい。UV接着剤を、噴霧、ドクターナイフによるコーティング、塗付け、印刷、焼結、アイロンがけ、または散布によってシューアッパーに適用することができる。
熱可塑性布地
本発明の文脈でシューアッパー3を補強するさらなる可能性は、熱可塑性布地を使用することである。これは、熱可塑性織布、熱可塑性編地、または熱可塑性不織布材料である。熱可塑性布地は、熱により少なくとも部分的に溶融し、冷却すると剛化する。熱可塑性布地を、例えば、圧力および熱を加えることにより、本発明のシューアッパー3の表面に適用することができる。熱可塑性布地は、冷却すると剛化し、例えば熱可塑性布地が配置された領域でシューアッパー3を特に補強する。
熱可塑性布地を、その形状、厚さ、および構造における補強のために特に製造することができる。さらに、熱可塑性布地の特性を、ある領域において変更することができる。ステッチ構造、編みステッチ、および/または使用される糸を、異なる特性が異なる領域において実現されるように変更することができる。
熱可塑性布地の一実施形態は、熱可塑性糸から作られた横編地または縦編地である。さらに、熱可塑性布地は、非熱可塑性糸を含んでもよい。熱可塑性布地を、例えば圧力または熱より、本発明のシューアッパー3に適用することができる。
横糸および/または縦糸が熱可塑性である織布が、熱可塑性布地の別の実施形態である。異なる糸を、熱可塑性織布の横糸方向および縦糸方向に使用することにより、横糸方向および縦糸方向において伸縮性などの異なる特性を実現することができる。
熱可塑性材料から作られたスペーサ横編地またはスペーサ縦編地が、熱可塑性布地の別の実施形態である。これに関し、例えば本発明のシューアッパー3に取り付けるように、例えば1つの層のみが熱可塑性であってもよい。あるいは、例えばソール14をシューアッパー3に連結するために、両方の層が熱可塑性であってもよい。
熱可塑性布地は、圧力および熱により部分的に、すなわちある領域のみで補強される表面と連結されることにより、熱可塑性布地のある領域のみを表面に連結することができる。他の領域は連結しないため、例えばそこで空気および/または水分の透過性が維持される。本発明のシューアッパーの機能および/または設計を、これによって修正することができる。
シューアッパー
図8は、本発明のシューアッパー3の例示的な実施形態の詳細図である。シューアッパー3は、第1の表面および対向する第2の表面を有する第1の層81を含む。図8の例示的な実施形態では、第1の層81がメッシュである。一般に、横編地、縦編地、織布、布地、革、合成皮革、または同様のものを使用することができる。図8の例示的な実施形態では、第1の層の第1の表面が、見る人の側を向いている。したがって、見る人から離れた側を向く第1の層81の表面が、第2の表面である。
本発明によれば、シューアッパー3は、第1の直径を有し、第1の層の第1の表面に配置された第1の糸セクションを含む。図8において、例示的な第1の糸セクションが取り囲まれ、参照符号82で示される。第1の糸セクション82は、第1の糸セクション82の糸によって決まる第1の直径を有する。
さらに、シューアッパー3は、第2の直径を有し、第1の層の第1の側に配置された第2の糸セクションを含む。図8において、例示的な第2の糸セクションが取り囲まれ、参照符号83で示される。第2の糸セクション83は、第2の糸セクション83の糸によって決まる第2の直径を有する。
第1の糸セクション82と第2の糸セクション83とは、第1の糸セクションが第2の糸セクションに実質的に平行である少なくとも1つの平行部を含む。図8の例示的な実施形態では、第1の糸セクション82と第2の糸セクション83とが実質的に全長にわたって平行である。したがって、平行部は、実質的に両糸セクションと同じ長さである。しかしながら、一般に、平行部は両糸セクションより短くてもよい。さらに、両糸セクションが、糸セクションが互いに平行であるいくつかの平行部を含むことが可能である。
第1の糸セクション82と第2の糸セクション83との間の距離は、第1の直径および第2の直径の大きい方より小さい。図8の例示的な実施形態では、第1の糸セクション82と第2の糸セクション83とが互いに接触する。したがって、両糸セクション間の距離は0mmである。
図8の例示的な実施形態では、第1の糸セクションと第2の糸セクションとが、同じ糸84のセクションである。したがって、糸84は第1の糸セクション82と第2の糸セクション83との間で180°の角度で折り曲げられる。しかしながら、本発明の文脈では、第1の糸セクション82を第1の糸に配置し、第2の糸セクション83を第2の糸に配置すること、または単糸の場合の角度が180°より小さいまたは大きいことも可能である。
前述したように、刺繍機を用いて糸84を第1の層81に配置してもよい。図8において、糸層82、83を固定する撚糸が見え、参照符号85で示される。撚糸85は、糸84よりも小さい直径を有する縫糸である。
図8の例示的な実施形態では、第1の糸セクション82および第2の糸セクション83が例として選択されている。実際に、図8において、平行部を有する複数本の糸セクションが見え、これらは1列に配置され、平行糸セクションを有するパッチの形の領域を形成する。この領域を、例えば踵領域またはつま先領域に補強として配置することができる。
図9a、図9b、図9cは、本発明のシューアッパー3のさらなる例示的な実施形態の詳細図である。図9aにおいて、平行糸セクションを有する第1の領域が取り囲まれ、参照符号91で示され、第2のそのような領域も取り囲まれ、参照符号92で示される。図9bは、領域91の詳細図である。図示された定規により、1センチメートル当たり約10本の糸密度が得られる。
図9bでは、糸の間の距離が糸の直径よりも大きい、実質的に低い糸密度を有する領域93も示される。
図9cは、領域92の詳細図である。図示された定規により、1センチメートル当たり約10本の糸密度が得られる。
前述したように、刺繍機1を用いて、糸セクションの糸を第1の層に配置することができる。糸セクションを固定する撚糸は、糸セクションの糸より小さい直径を有する縫糸である。
図10は、粉末部を有する少なくとも第1の糸セクションと少なくとも第2の糸セクションとを含む本発明のシューアッパーの領域を製造する間の刺繍ヘッド101を示す。刺繍ヘッド101は、図1に示す刺繍ヘッド2a、2b、2cと同様の刺繍ヘッドである。
刺繍ヘッド101は、撚糸を用いて、連続糸を第1の層81に固定する。少なくとも1つの第1の糸セクションおよび少なくとも1つの第2の糸セクションが、連続糸に配置される。第1の層81も、詳細に前述した糸から作られる。
図11aおよび図11bは、本発明のシューアッパー3を含む本発明のスポーツシューズ13を示す。さらに、スポーツシューズ13はソール構造14を含む。ソール構造14に関して、およびシューアッパー3をソール構造14に連結することに関して、図4aおよび図4bについて説明した内容が同様に有効である。
特に図11に見られるように、シューアッパー3は、少なくとも第1の糸セクション82と少なくとも第2の糸セクション83とを含む。第1の糸セクション82および第2の糸セクション83は、第1の糸セクションが第2の糸セクションに実質的に平行である少なくとも1つの平行部を含む。第1の糸セクション82と第2の糸セクション83との間の距離は、第1の直径および第2の直径の大きい方より小さい。図11aおよび図11bの例示的な実施形態では、第1の糸セクション82と第2の糸セクション83とが互いに接触する。したがって、両糸セクション間の距離は0mmである。
図11aおよび図11bの例示的な実施形態では、第1の糸セクション82および第2の糸セクション83が例として示される。実際に、図11aおよび図11bにおいて、平行部を有する複数本の糸セクションが見え、これらは1列に配置され、平行糸セクションを有するパッチの形の領域を形成する。この領域は、補強のためにシューアッパー3の踵セクションに配置されて、踵カウンタの機能を果たし、すなわち、この領域で、実質的に平行な糸セクションは、シューアッパー3の伸縮性を低下させ、安定性を高める。
前述したように、刺繍機1により糸セクションの糸を第1の層に配置することができる。糸セクションを固定する撚糸は、糸セクションの糸より小さい直径を有する縫糸である。
図12は、本発明のシューアッパー3およびそれに取り付けられたソール構造14を有するシューズ13のさらなる例示的な実施形態を示す。ソール構造14に関して、およびシューアッパー3をソール構造14に連結することに関して、図4aおよび図4bについて説明した内容が同様に有効である。
図11aおよび図11bの例示的な実施形態のシューアッパー3と同様に、図12の例示的な実施形態のシューアッパー3は、複数の実質的に平行な糸セクションを有する領域121を含む。この領域も、補強のためにシューアッパー3の踵セクションに配置されて、踵カウンタの機能を果たし、すなわち、この領域で、実質的に平行な糸セクションは、シューアッパー3の伸縮性を低下させ、安定性を高める。
前述したように、刺繍機1を用いて糸セクションの糸を第1の層に配置することができる。糸セクションを固定する撚糸は、糸セクションの糸より小さい直径を有する縫糸であってよい。
本発明の思想の変形例
以下で、本発明の発明的思想の変形例について説明する。一般に、本発明のそれらの変形例を互いに、および本発明と組み合わせることができ、すなわち、本発明の変形例の特徴は、これらの特徴の組合せが本明細書に明記されることなく、本発明のさらなる実施形態および/または例示的な実施形態および/または変形例を、本発明の別の変形例の特徴および/または本発明と共に提供することができる。
第1の変形例は、キャリア層を設けるステップと、糸または複数本の糸をキャリア層上に配置して、糸または複数本の糸がシューアッパーの形状を実質的に規定するようにするステップと、糸または複数の糸のうちの少なくとも1本をキャリア層に縫い付けるステップとを含む、スポーツシューズ用シューアッパーの製造方法に関する。
1つまたはいくつかの材料シートの代わりにキャリア層を設けることにより、まず第1に、スポーツシューズ用シューアッパーの製造に通常必要とされるかなりの量の材料の節約になる。キャリア層は、方法を実施する間に、糸または複数本の糸を所望の形状に配置して、それらの糸を固定するという目的を果たす。しかしながら、シューアッパーは、実質的に糸または複数本の糸により形成される。
さらに、材料のかなりの節約は、糸または複数本の糸をキャリア層上に配置して、糸または複数本の糸がシューアッパーの形状を実質的に規定するようにすることから得られる。したがって、糸は、シューアッパーの形状を特定し、実質的に、すなわち避けられない製造公差を除いて、この形状を満たす。実質的に、すなわち避けられない製造公差を除いて、シューアッパーの外側に糸がない。したがって、キャリア層の一部が、せいぜい廃棄物として蓄積する。製造および製造公差により生じる残留糸を除いて、糸または複数本の糸は、シューアッパーに略完全に組み込まれ、廃棄物として蓄積しない。
糸または複数本の糸をキャリア層上に配置することは、一側でキャリア層の上または下に糸を配置することを含み、一実施形態では、両側でキャリア層の上または下に糸を配置することを含む。
さらに、糸または複数本の糸をシューアッパーの形状内で略自由に方向付けることができるため、シューアッパーの伸縮性を略所望の方向に規定することができる。例えば、糸または複数本の糸が垂直に延びることによって、踵の領域の伸縮性を最小にして、足の押離しの動きの間に踵を支持することができる。つま先関節の領域では、糸または複数本の糸の対応する経路が、シューアッパーのある伸縮性によりローリングオフの動きを支持することができる。
糸または複数本の糸を、少なくとも2つの層に配置することができる。この対策により、シューアッパーの剛性を向上させることができる。
少なくとも2つの層の各々が異なる糸を含むことができる。例えば、第1の層は比較的非弾性の糸を含んで、シューアッパーの剛性をさらに向上させることができる。第2の層は、例えばスポーツボールに対する摩擦を高めて、より良好なボール制御を可能にするゴム引糸を含んでよい。
シューアッパーの所望の形状に対応する糸または複数本の糸の配置により、シューアッパーの形状をかなり容易に個人化することができる。例えば、糸配置をそれ相応に選択することにより、シューアッパーの幅を簡単に調節することができる。異なる色の糸を使用し、的を絞って糸または複数本の糸を配置することにより、シューアッパーを視覚的に容易に個人化することもできる。例えば、糸をそれ相応に配置することにより、シューアッパーにパターンを形成することができる。
本発明のこの変形例の一実施形態では、方法が、キャリア層を溶解させて、シューアッパーが実質的に糸または複数本の糸により形成されるようにするステップを含む。これにより、空気と水分との交換があまり損なわれないため、シューアッパーの通気性が向上する。加えて、キャリア層の重量が除去されるため、シューズがより軽量になる。
本発明のこの変形例の一実施形態では、キャリア層が布地、革、または合成皮革である。これらの材料は、伸縮性、安定性、または通気性/透水性などのシューアッパーのある特性を既に大まかに特定する。シューアッパーの形状は、糸または複数本の糸の配置により規定される。糸または複数本の糸の配置のみが、完成したスポーツシューズの所望の特性をシューアッパーに与えて、例えばその形状、伸縮性、および通気性を規定する。また、本実施形態では、生産廃棄物が、生産のために必要なキャリア層の廃棄物まで低減する。
本発明のこの変形例の一実施形態では、糸または複数本の糸を、縫糸を用いて縫い合わせる。したがって、シューアッパーの所望の特性が、糸または複数本の糸により規定され、縫糸が糸または複数本の糸をできるだけ良好に固定し、処理が容易であるように、縫糸を選択することが可能である。
本発明のこの変形例の一実施形態では、縫糸が糸または複数本の糸よりも細い。これにより、縫糸を対応する機械によって良好に処理することができ、糸または複数本の糸によって、シューアッパーの必要な外形厚さを確保する。
本発明のこの変形例の一実施形態では、糸または複数本の糸を、糸または複数本の糸の全長に実質的に沿ってキャリア層に縫い合わせる。これに関し、「実質的に」とは、製造公差および場合により避けられない残留供給糸を除くことを意味する。これにより、糸または複数本の糸をキャリア層上で互いに対して固定し、シューアッパーに所望の形状を与える。
本発明のこの変形例の一実施形態では、配置するステップが、第1の糸と第2の糸とを配置するステップを含む。シューアッパーのある領域に、安定性または防水性などのある機能をもたらすように、ある特性を有する糸を選択することができる。例えば、熱を加えると溶融し、冷却すると剛化する溶融糸を使用することができる。このようにして、シューアッパーの剛性を向上させることができる。別の選択肢は、入射光を反射する反射糸を使用することである。このようにして、シューズは、暗闇においてさらによく目立つようになり、着用者の安全性を向上させることができる。さらに、反射糸は、シューズの視覚的外観を向上させるさらなる可能性をもたらす。
本発明のこの変形例の一実施形態では、方法は、第1の糸を第2の糸に縫い合わせるステップをさらに含む。このようにして、2本の糸が互いにしっかりと固定され、シューアッパーは安定性を備える。
第1の糸を第1の層に配置することができ、第2の糸を第2の層に配置することができる。第1の層と第2の層とは少なくとも部分的に重なってもよい。2つの層を使用することにより、シューズはある特性を適切に備えることができる。例えば、第1の層は、シューアッパーの剛性をさらに向上させるように、比較的非弾性の糸を含んでよい。第2の層は、例えばスポーツボールに対する摩擦を高めて、より良好なボールの制御を可能にするゴム引糸を含んでよい。
本発明のこの変形例の一実施形態では、第1の糸が、第1の糸の全長に実質的に沿って第2の糸に縫い付けられる。これに関し、「実質的に」とは、製造公差および場合により避けられない残留供給糸を除くことを意味する。このようにして、第1の糸と第2の糸を互いに対して固定して、シューアッパーに所望の形状を与える。
本発明のこの変形例の一実施形態では、方法は、第1の糸をそれ自体に縫い合わせるステップをさらに含む。本発明の一実施形態では、第1の糸を、その全長に実質的に沿ってそれ自体に縫い合わせる。これに関し、「実質的に」とは、製造公差および場合により避けられない残留供給糸を除くことを意味する。これらのステップにより、シューアッパーの安定性および剛性が高まる。
本発明のこの変形例の一実施形態では、第1の糸が第1の層に配置され、第2の糸が、少なくとも部分的に互いに重なり合って第2の層に配置される。層における配置により、シューアッパーは、ある位置に適切に機能性を備えることができる。例えば、つま先領域、踵領域、外側もしくは内側、またはシューアッパーの任意の所望の領域において、溶融糸を第2の層で使用し、これらの領域に適切に安定性をもたらすことができる。別の例では、特に耐摩耗糸を第2の層で使用して、シューアッパーの弾性を高める。
本発明のこの変形例の一実施形態では、第1の層が、実質的にシューアッパー全体に配置される。本発明のさらなる実施形態では、第2の層が、シューアッパーの選択された位置に配置される。本発明のさらなる実施形態では、第2の層が、踵領域、つま先領域、または脛の領域、外側もしくは内側に配置される。一般に、第2の層を、シューアッパーの特定の領域に配置することができる。これにより、第1の層は、シューアッパーの形状を規定し、第2の層は、例えば選択された位置に強化をもたらすことができる。
本発明のこの変形例の一実施形態では、方法は、第1の層と第2の層との間に少なくとも1つの補強要素を配置するステップをさらに含む。本発明のさらなる実施形態では、補強要素が、踵カウンタ、つま先カウンタ、脛ガード、外側補強要素または内側補強要素であってよい。一般に、補強要素をシューアッパーの任意の所望の領域に配置することができる。本発明のさらなる実施形態では、補強要素は、プラスチック、布地、革、または合成皮革から作られる。このようにして、視覚的外観を損なうことなく、シューアッパーを補強することができる。補強材を、製造プロセス中に完成した第1の層上に簡単に配置することができ、その後、第2の層をその上に配置することができる。
本発明のこの変形例の一実施形態では、第1の糸および第2の糸を、少なくとも1つのトンネルまたはポケットを作製するように配置する。例えば、補強要素をトンネルまたはポケットに押し込むことができる。
本発明のこの変形例の一実施形態では、第1の糸は溶融糸である。それに加えて、または代替として、第2の糸は溶融糸である。本発明のさらなる実施形態では、方法は、シューアッパーの少なくとも一部を加温して、溶融糸が少なくとも部分的に溶融するようにするステップをさらに含む。したがって、熱を加えることにより溶融糸を溶融し、その後冷却すると剛化することにより、シューアッパーを容易に補強することができる。このため、例えば接着される部分による、その後の補強は必要ない。それにもかかわらず、その後に部分、例えば踵カウンタまたはつま先カウンタをシューアッパー上に接着、縫付け、または溶着することを排除しない。
本発明のこの変形例の一実施形態では、第1の糸がフィラメント糸である。フィラメント糸は、シューアッパーの適切な補強、またはシューアッパーの伸縮性の低下に特に適している。フィラメント糸が糸の配置中に組み込まれるため、補強または伸縮性低下の追加のステップを省くことができる。
本発明のこの変形例の一実施形態では、フィラメント糸が炭素繊維を含む。炭素繊維により、シューアッパーの特に強力な耐久性のある補強が可能になる。
本発明のこの変形例の一実施形態では、糸または複数本の糸が反射糸である。反射糸により、暗闇においてシューアッパーの視認性を向上させて、着用者の安全に寄与する。反射糸を、シューアッパーの非常に特定の領域に配置してもよい。例えば、反射糸をシューアッパーの外側および/または内側に配置して、接近する車のヘッドライトが反射することにより、道路を横断するときに安全性を向上させることができる。一般に、反射糸をシューアッパー全体に配置することができる。シューアッパーが略反射糸のみを含むことが考えられる。シューアッパーのある領域を、反射糸により視覚的に目立たせることも可能である。例えば、追加の補強材を含む領域を、反射糸により視覚的に目立たせてもよい。
本発明のこの変形例の一実施形態では、糸または複数本の糸は、Kevlar(登録商標)をベースにする。Kevlar(登録商標)は、芳香族ポリアミド(アラミドとも呼ばれる)をベースにし、通常、繊維の形で使用される。繊維は、非常に高い剛性、高い耐衝撃性、高い破壊歪み、良好な振動の減少、ならびに耐酸性および耐アルカリ溶液性を含むという特質を有する。
本発明のこの変形例の一実施形態では、方法は、樹脂を適用して糸を剛化するステップをさらに含む。炭素などのフィラメント糸と特に組み合わせた樹脂により、シューアッパーを極度に弾性にしてもよい。
本発明のこの変形例のさらなる実施形態では、方法は、UV接着剤をシューアッパーに適用するステップを含む。UV接着剤は、UV光を照射することによって活性化し、接着剤が適用された位置に糸を接着する。このようにして、シューアッパーのある領域を、その後に剛化し、補強し、または防水性を高めることができる。さらに、溶融糸を使用しなくてもよい。UV接着剤を、噴霧、ドクターナイフによるコーティング、塗付け、印刷、焼結、アイロンがけ、または散布によってシューアッパーに適用することができる。
本発明のこの変形例のさらなる態様は、前述した本発明のこの変形例による方法に従って製造された、スポーツシューズ用シューアッパーに関する。
本発明のこの変形例のさらなる態様は、シューアッパーと、シューアッパーに連結されたソール構造とを含み、シューアッパーが、前述した本発明の変形例による方法に従って製造されるスポーツシューズに関する。
以下で、本発明のこの第1の変形例の実施形態についてより詳細に説明する。図1〜図6を参照しながら、これらの実施形態について説明する。
前述したように、本発明のこの第1の変形例は、キャリア層を設けるステップと、糸または複数本の糸をキャリア層上に配置して、糸または複数本の糸がシューアッパーの形状を実質的に規定するようにするステップと、糸または複数本の糸のうちの少なくとも1本をキャリア層に縫い付けるステップとを含む、スポーツシューズ用シューアッパーの製造方法に関する。
本発明による方法を、一般に、刺繍機で実施することができる。刺繍機により、刺繍機の針が貫通できる織布または他のキャリア層への糸の機械縫込みまたは縫付けが可能になる。
図1は、本発明のこの第1の変形例による方法を実施する多ヘッド工業用刺繍機1を例として示す。本発明のこの変形例による1つのシューアッパー3の製造に各々関与する刺繍ヘッド2a、2b、2cのそれぞれが図1に見られる。刺繍機は、一般に、所望の数の刺繍ヘッドを備えることができる。刺繍ヘッド2a、2b、2cは、少なくとも水平面で、例えば電気機械的に、または空気圧によって可動であり、刺繍ヘッド2a、2b、2cにより、針および糸の所望の位置決めが可能になる。
本発明のこの変形例による方法の第1のステップでは、略透明で、図1の実施形態において参照符号4を付したキャリア層が設けられる。これは、箔、織布、布地、革、合成皮革、またはプラスチックであってよい。一般に、刺繍中に針が貫通できる、任意のタイプの広範囲にわたる構造を使用することができる。
キャリア層4が、ある条件下で、例えば水に接触したときに、少なくとも部分的に溶解する箔であることも考えられる。そして、本発明のこの変形例による方法の成果が、もはやキャリア層4をまったく含まない、または少なくとももはや完全には含まないシューアッパー3となる。その場合、シューアッパー3は、実質的に糸5または複数本の糸5から形成される。
例えば、キャリア層4をロールに巻き付けることができ、キャリア層4を少なくとも部分的に巻き出して、本発明のこの変形例による方法を実施するために、1つまたは複数の刺繍ヘッド2a、2b、2cの下に位置決めする。
本発明のこの変形例による方法は、糸5または複数本の糸5をキャリア層4上に配置して、糸5または複数本の糸5がシューアッパー3の形状を実質的に規定するようにするステップをさらに含む。本発明のこの変形例によれば、1本の糸5または複数本の糸5を使用することができる。複数本の糸5を使用するときに、これらの糸5は、材料特性、直径、色などに関して異なっていてよい。糸5を、それぞれの給糸ロール6a、6b、6cを介して刺繍ヘッド2a、2b、2cに供給することができる。
糸5をキャリア層4上に配置するときに、糸5がキャリア層4に接触することができる。しかしながら、一般に、糸5を配置するステップでは、糸5が必ずしも、キャリア層4に接触しなければならないわけではない。例えば、図3に関してさらに後述するように、第1の糸5aを最初にキャリア層4上に配置してもよい。前記糸5aはキャリア層4に接触する。その後、第2の糸5bを第1の糸5aの上に配置する。前記第2の糸5bはキャリア層4に直接接触しないが、キャリア層4上に配置される。
図1の実施形態に見られるように、3つの刺繍ヘッド2a、2b、2cの各々が、1つのシューアッパー3について1本または複数本の糸5をそれぞれ配置する。これに関し、それぞれのシューアッパー3の形状は、糸5または複数の糸5により規定される。したがって、糸5は、シューアッパー3の形状を特定し、実質的に、すなわち避けられない製造公差を除いて、その形状を満たす。実質的に、すなわち避けられない製造公差を除いて、シューアッパー3の外側には糸5がない。
図2は、本発明のこの変形例による方法によって製造されるシューアッパー3の例示的な上面図である。シューアッパー3の形状は、糸5により規定される。給糸機により避けられない残留撚糸(そのうちの3本に、例として参照符号7を付す)を、例えば切り離すことによって除去することができる。例えば、切離しを高周波交流またはレーザにより行うことができる。
糸5は、綿などの天然繊維、またはナイロン、ポリエステルなどの合成繊維、天然繊維および合成繊維の混合物、ポリエステルおよびナイロンの混合物などをベースにすることができる。さらに、糸5は溶融糸であってよい。シューアッパー3の少なくとも一部を加温することにより、溶融糸を少なくとも部分的に溶融してもよい。それに続く冷却中に、溶融糸が硬化して、シューアッパー3に安定性を与える。
図2の実施形態では、糸5はさらに2つの層に配置される。これに関し、第1の下層がシューアッパーの形状を満たし、これを規定する。シューアッパーの踵領域およびつま先領域の第2の層が、前記第1の層の上に配置され、第1の層を前記領域で補強する。一般に、第2の層を、シューアッパーの他の領域、例えば外側および/または内側に配置してもよい。
糸5がフィラメント糸であることも考えられる。例えば、そのような糸は炭素繊維を含むことができる。フィラメント糸を、樹脂、例えばエポキシベースの樹脂、UV接着剤、または溶融糸の使用によるその後の処理によって剛化することができる。本発明のこの変形例の範囲で使用可能な繊維、糸、および撚糸のさらなる例については、「繊維」ならびに「糸および撚糸」の欄で前述した。しかしながら、一般に、任意のタイプの糸または撚糸を、本発明のこの変形例の文脈で使用してもよい。
本発明のこの変形例による方法は、糸5または複数本の糸5のうちの少なくとも1本をキャリア層4に縫い付けるステップをさらに含む。この目的で、撚糸(図には見られない)は、刺繍ヘッド2a、2bまたは2cの針を用いて、キャリア層4を通って糸5の周りに案内されて、糸5がキャリア層4に固定されるようにする。これに関し、わずか数ミリメートルから数センチメートルの距離をおいて、ステッチを配置することができる。
撚糸は、一般に糸5より細くてよい。撚糸が、糸5と同じかまたはより大きい直径を有することも考えられる。縫糸を撚糸として使用してもよい。これは、綿などの天然繊維、またはナイロン、ポリエステルなどの合成繊維、天然繊維および合成繊維の混合物、ポリエステルおよびナイロンの混合物などをベースにすることができる。使用する繊維、糸、および撚糸の例については、「繊維」ならびに「糸および撚糸」の欄で前述した。
実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留供給糸を除いて、糸5を全長に沿ってキャリア層4に縫い合わせることができる。
前述したように、本発明のこの変形例による方法を実施するときに複数本の糸5を使用することができる。図3の実施形態では、第1の糸5aおよび第2の糸5bが使用される。第1の糸5aおよび第2の糸5bはキャリア層4上に配置される。前述したように、第2の糸5bはキャリア層4に直接接触しないが、キャリア層4上に配置される。
複数本の糸5を使用するときに、これらを互いに縫い合わせることができる。例えば、図3の実施形態では、第1の糸5aを第2の糸5bに縫い合わせる。複数本の糸5を互いに縫い合わせることに関して、キャリア層4と縫い合わせることに関する記述が同様に当てはまる。例えば、図3の実施形態では、実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留供給糸を除いて、糸5aを全長に沿って糸5bに縫い合わせることができる。
糸5を互いに縫い合わせるために、同じ撚糸を、糸5とキャリア層との縫い合わせに関して使用してもよい。図3の実施形態に関し、例えば、糸5aおよび糸5bをキャリア層4に縫い合わせることができ、糸5aを糸5bに同時に単一の撚糸ステッチで縫い合わせることができる。しかしながら、糸5aのみをキャリア層4に縫い合わせること、および糸5bを糸5aに縫い合わせるがキャリア層4に縫い合わせないことも可能である。糸5を互いに縫い合わせるために、糸5をキャリア層4に縫い合わせるための撚糸とは別の撚糸を使用してもよい。
糸5をそれ自体に縫い合わせてもよい。例えば図3に提示するように、糸5をキャリア層4上にループまたは周方向に配置する場合には、糸5の隣接する位置を互いに縫い合わせることができる。これは、実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留糸を除いて、糸5の全長に沿って、あるいは、シューアッパー3の予め指定した領域のみで行うことができる。
図3の実施形態に関して示したように、複数本の糸5を使用する場合、これらを層に配置してもよい。図3の実施形態では、第1の糸5aが第1の層8aを形成し、これは、実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留糸を除いて、シューアッパー3の形状に対応し、第2の糸5bは、第1の層8aの上に配置された第2の層8bを形成する。したがって、第1の層8aは、実質的にシューアッパー3全体に配置されるが、第2の層8bはシューアッパー3の部分的な領域に配置される。
図3の実施形態では、第2の層8bは、実質的に、すなわち製造公差および場合により避けられない残留糸を除いて、完全に第1の層8aの上に配置される。しかしながら、例えば、第2の層8bを第1の層8aの上に部分的に配置し、別の領域でキャリア層4に直接接触することも考えられる。
第2の層8bを、シューアッパー3の選択された位置に配置してもよい。例えば、さらにより詳細に説明する図4aの実施形態では、第2の層8bを、踵領域9および中足領域10のみで第1の層8aの上に配置する。足首(図示せず)を越えて延びる、本発明のこの変形例によるシューアッパーでは、第2の層が脛の領域に配置されることも考えられる。
少なくとも1つの補強要素を、第1の層8aと第2の層8bとの間に配置してもよい。例えば図5の実施形態の概略図において、踵領域9、紐アイレットの領域11、およびつま先領域12のそれぞれにおいて第1の層の上に補強材が配置され、その後、第2の層がその上に配置された。補強要素は、シューアッパーが足首を越えて延びる(図示せず)場合に脛ガードとなることもできる。
それに加えて、または代替として、アイレット、装飾要素、装飾ストライプ、摩耗保護要素、リブ要素、剛化要素、支持要素、緩衝要素、および繊維要素などの他のシューズ部品を、一般に、第1の層8aと第2の層8bとの間に配置することもできる。例えば、紐を通す紐アイレットを、第1の層8aと第2の層8bとの間に配置することができる。溶融糸またはポリマーコーティングを用いて、アイレットを第1の層8aおよび第2の層8bの糸にしっかりと連結することができる。あるいは、UV接着剤(または他の接着剤)を用いてアイレットを固定することができる。
別の例は、シューアッパーの踵領域で第1の層8aと第2の層8bとの間に踵カウンタを配置することである。シューアッパーの踵領域は、足のローリングオフ運動によって特に高い機械応力を受けるため、シューズは踵領域で踵カウンタにより補強されることが多い。本発明のこの変形例によれば、踵カウンタを2つの層の間に配置することにより、踵カウンタをシューアッパーに組み込むことができる。それに加えて、または代替として、つま先カウンタを2つの層の間に配置することもできる。一般に、シューアッパーを追加の補強要素により任意の位置で補強することができる。
さらなる例は、第1の層8aと第2の層8bとの間に中足領域の支持を配置することである。人の足の中足領域は、中足の下降を避けるように、フットウェアによる支持を必要とする。対応する支持要素を2つの層の間に配置して、例えば溶融糸または接着剤(例えばUV接着剤)により固定することができる。支持要素を第1の層8aおよび/または第2の層8bに溶着する、および/または縫い合わせることも考えられる。
一般に、追加の部品を、2つの層の間に手動、半自動、または全自動で(例えばロボットアームを用いて)配置することができる。例えば、第1の層8aおよび第2の層8bは、追加の部品を押し込むトンネルまたはポケットを形成することができる。追加の部品を、第1の層8aおよび/または第2の層8bに手動または自動で縫い合わせる、接着する(例えばUV接着剤を用いて)、または溶着することも可能である。あるいは、溶融糸を固定のために使用してもよい。
例えば、本出願人のドイツ特許出願である出願番号102013221018および102013221020に記載されたように、機械により、および処理ステーションにより主に全自動で、補強要素および他のシューズ部品をシューアッパー3上に配置してもよい。
少なくとも1つの補強要素を、プラスチック、布地、革、合成皮革、または金属から製造することができる。補強要素をこれらの材料から切り抜くことができ、または、例えばプラスチックの場合に成形もしくは射出成形することができる。例えば炭素繊維、ガラス繊維などをベースにした複合材料、または対応する不織布材料を使用することも可能である。
「ポリマーコーティング」の欄で前述したように、的を絞ったシューアッパー3の剛化を、樹脂またはポリマーを適用することにより実現してもよい。あるいは、前述したように、UV接着剤または溶融糸を剛化のために使用してもよい。
図6は、本発明のこの変形例による、シューアッパー3のさらなる実施形態を示す。本実施形態では、シューアッパー3は紐アイレットを含み、そのうちの3つに、例として参照符号16を付す。1つまたはいくつかの紐を紐アイレット16に引き通して、図4aに例として示すように、完成したスポーツシューズを紐で結ぶことができるようにする。
図6の実施形態では、糸5が配置されるときに紐アイレット16が直接形成される、すなわち糸5がそれぞれの紐アイレット16の位置に配置されないため、紐アイレット16を形成する対応する開口部が残る。開口部が縁部で糸5によりさらに補強されて、ほつれを防止することが考えられる。代替として、またはそれに加えて、糸5を縫い合わせるため、または複数本の糸5を縫い合わせるために使用する糸に、開口部の縁部を縫い合わせてもよい。
代替実施形態では、続いて、例えば打抜きにより、紐アイレットがシューアッパー3に形成される。加えて、紐アイレットを、金属またはプラスチックから作られたアイレットで補強して、ほつれを防止することができる。前記追加のアイレットをシューアッパー3に押し込んでもよい。
紐アイレット16とは別に、シューアッパー3の他の開口部、例えば通気開口部を形成することも考えられる。これらの開口部を、糸5を配置するとき、あるいはそれに続いて、例えば打抜きにより直接形成してもよい。
一般に、本発明のこの変形例によるシューアッパー3の製造方法は、糸5をそれ相応に配置することにより、シューアッパー3の形状を完成したスポーツシューズの着用者の足に合わせて調節することによって、簡単かつ費用効果の高い個人化を可能にする。例えば、シューアッパーの幅を足の形状に合わせて調節することができる。この目的で、着用者の足を、例えば3Dスキャナを用いて測定してもよい。あるいは、巻尺を使用して、足を手で測定してもよい。その後、決定された測定値を、対応するソフトウェアにより刺繍機用のプログラムに変換することができる。これを刺繍機で、または別のコンピュータで行うことができる。その後、プログラムを刺繍機に読み込み、刺繍機は、予め決定された足の測定値に従ってシューアッパー3を製造する。
しかしながら、刺繍について、糸の色または装飾の対応する選択により視覚的に個人化することも考えられる。このために異なる色の糸を使用してもよい。シューアッパーのある領域に反射糸を使用して、その領域で光るときに暗闇において視覚的効果を得ることも考えられる。さらに、蛍光糸または燐光糸を使用してもよい。蛍光糸は、ディスコで頻繁に使用されるように、例えば、IV光の照射時に発光する。燐光糸は、光が照射された後に発光を続けるため、「蓄光」することができる。したがって、燐光糸を含むシューズは、暗闇において自発的に発光することができる。
一般に、視覚的特性を有する糸を、シューアッパーのある領域のみ、またはシューアッパー全体において使用することができる。
本発明のこの第1の変形例はまた、本発明のこの変形例による方法に従って製造されたシューアッパー3を含むスポーツシューズ13に関する。そのようなスポーツシューズ13の実施形態が図4aに示される。スポーツシューズ13は、本発明のこの変形例によるシューアッパー3と、ソール構造14とを含む。シューアッパー3およびその製造に関し、この説明における記述が当てはまる。
ソール構造14はアウトソールを含む。一部の実施形態では、ソール構造14は、該当する場合、ミッドソールおよびインソールをさらに含む。インソールは、取外し可能であっても、シューズに堅く連結されていてもよい。図4aの実施形態で、ソール構造14はスタッドを含み、そのうちの3つに、例として参照符号15を付す。ソール構造14を、縫付け、接着、溶着(特に超音波溶着)、または同様の連結技法により、シューアッパー3に連結することができる。
図4bは、本発明のこの変形例によるスポーツシューズ13のさらなる実施形態を示す。これはサッカーシューズである。したがって、シューズ13はスタッドを含み、そのうちの3つに、例として参照符号15を付す。スタッド15は、かなり堅いソールプレート14に取り付けられる。図4bの実施形態では、スタッドがソールプレート14に堅く連結される。しかしながら、スタッドが、ソールプレート14にねじ込まれるねじ込みスタッドであることも考えられる。図4bの実施形態では、スタッドが透明な端部を含み、そのうちの3つに、例として参照符号41を付す。端部41は、スタッド15のベースに射出成形される。しかしながら、端部を接着または溶着することも考えられる。
本発明のこの変形例により製造されたシューアッパー3が、ソールプレート14に取り付けられる。シューアッパー3はソールプレート14に接着される。しかしながら、シューアッパー3をソールプレート14に溶着する、または縫い付けることも考えられる。図4bの実施形態では、図4cの詳細図に見られるように、シューアッパーが3層の糸を含む。第1の層は糸42により形成される。この層は最外層である。その下にある層は、糸43により形成される。これは中間層である。最下層は糸44により形成される。糸42、43、44は撚糸45によってまとめられる。
図4bに示すように、3層がシューアッパー3全体に沿って重なる。しかしながら、シューアッパー3の部分的な領域、例えばフットボールとの接触が通常生じる領域、すなわち、例えばつま先の上および甲の領域のみで3層が重なることも考えられる。このようにして、シューアッパー3を、これらの領域における3層構成によって、より堅く厚くすることができる。
シューアッパー3の3層構成は、シューアッパー3の必要な安定性および剛性をさらにもたらす。さらに、溶融糸、ポリマーコーティング、UV接着剤、または樹脂を用いて、シューアッパー3を剛化および補強することができる。前述したように、補強要素を、糸42、43、44により形成された層の間に配置することも考えられる。
糸42、43、44が特性に関して異なっていてもよい。例えば、糸43は溶融糸であってよく、熱を加えると液化し、その後冷却すると、糸42、44により形成された層を互いに連結する。最外層の糸42は、ボールとの摩擦を高めて良好なボールの制御を可能にするゴム引糸またはゴム糸であってよい。最内層の糸44は、水分を足から離れるように輸送する吸湿糸であってよい。
3層の代わりに、より少ない層の糸またはより多い層の糸を使用してもよい。
他の実施形態に関してなされた記述は、一般に、図4bの実施形態のシューアッパー3に関して同様に当てはまる。
本発明の思想のさらなる変形例は、キャリア層を設けるステップと、糸または複数本の糸をキャリア層上に配置して、糸または複数本の糸がシューアッパーの少なくとも部分的な領域を規定するようにするステップと、糸または複数の糸のうちの少なくとも1本をキャリア層に縫い付けるステップとを含む、スポーツシューズ用シューアッパーの製造方法に関する。
図13は、本発明の思想の変形例の実施形態を示す。図13では、糸131がキャリア層132上に配置される。これに関し、キャリア層132は、ソールの形状を規定する。キャリア層132は、例えば、革または布地であってよい。糸は、シューアッパーの特定の位置、すなわち、つま先領域および踵領域に配置される。一般に、所望の機能に応じて、糸131をシューアッパーの任意の位置に配置することができる。図13の実施形態では、糸131がつま先領域および踵領域を補強する。しかしながら、糸が、例えば外側領域または内側領域などの他の領域を補強することも考えられる。
糸131が他の機能をもたらすことも可能である。例えば、糸131は、ボールとの摩擦を高めて、より良好なボールの制御を可能にするゴム引糸またはゴム糸であってよい。
糸131は、装飾機能を果たすこともできる。糸131は、例えば、反射糸、燐光糸、または蛍光糸であってよい。
本発明の本思想のさらなる変形例は、(a)キャリア層を設けるステップと、(b)糸または複数本の糸をキャリア層上に配置して、糸または複数本の糸がスポーツシューズのソールの形状を実質的に規定するようにするステップと、(c)糸または複数本の糸のうちの少なくとも1本をキャリア層に縫い付けるステップとを含む、スポーツシューズ用ソールの製造方法に関する。したがって、糸は、ソールの形状を特定し、実質的に、すなわち避けられない製造公差を除いて、この形状を満たす。しかしながら、ソールのある領域、例えば踵領域またはつま先領域のみに、糸を配置することも考えられる。ソールのある領域に糸がないままにして、開口部を作製することも可能である。
キャリア層がソール内に残ることができても、あるいは、例えば水に溶解可能であってもよい。
糸が、ソールの部分的な領域、例えば踵領域またはつま先領域のみを規定することが考えられる。したがって、方法は、ソール部の製造に適している。
本発明の本思想のこの変形例に従って得られたソールまたはソール部を、溶融糸でさらに補強してもよい。この目的で、糸は、加熱され、その後冷却すると剛化する溶融糸であってよい。このようにして得られたソールに、例えば接着により、少なくとも部分的にゴムを適用してもよい。溶融糸によりソールの剛性を高めて、例えばサッカーシューズ用ソールプレートが得られるようにしてもよい。
この態様の対応する実施形態が図14に示される。これは、サッカーシューズ用ソールプレート141である。ソールプレート141は、糸をキャリア層142に刺繍することによりキャリア層142上に配置された糸を含む。ソールプレート141はスタッドを含み、そのうちの3つに、例として参照符号143を付す。スタッド143は、ソールプレート141の一体部分であり、糸により形成される。
ソールプレートは、同じく糸により形成された一体の補強要素144を中足領域にさらに含む。補強要素144は、3つのリブを含み、前足領域をソールプレート141の踵領域に連結する。補強要素の他の配置および設計が考えられる。ソールプレート141は、そのような補強要素を含まなくてもよい。
キャリア層142は、水に溶解して、ソールプレート141が残るようにする水溶性の箔であってよい。あるいは、キャリア層142の突出部を切り離しても、ソールプレート141を打ち抜いてもよい。
補強のために、ソールプレート141をポリマー浴またはエポキシ樹脂浴に浸すことができる。糸のうちの少なくとも1本が、例えば炭素繊維ベースであってよい。エポキシ樹脂に浸すことにより、特に堅く安定したソールプレートが作製される。
あるいは、ソールプレート141は、熱を加えると溶融し、その後冷却すると剛化する溶融糸を含むことができる。溶融糸を用いてソールプレート141がシューアッパーに連結されることも考えられる。この目的で、ソールプレートは、例えば、縁部領域に、または一様に溶融糸を含むことができる。
本発明の本思想のこの変形例では、このようにして製造されたソールがシューズ内に配置されるインソールであることも考えられる。ソールまたはソール部を、金型内に配置し、圧縮成形によりプラスチック(例えばEVA、TPU、eTPU)に埋め込むことも考えられる。このようにして得られたソール結合は、極めて堅い。ソール部の使用時に、このようにして得られたソール結合を、的を絞って、例えば歩行または走行中に特に緊張する位置において補強および剛化することができる。
金型を使用する代わりに、本発明の本思想の変形例に従って得られたソールまたはソール部に、プラスチックを射出成形してもよい。例えば、スタッドまたは補強領域を、ソールまたはソール部に射出成形してもよい。
本発明の本思想のこの変形例のさらなる態様は、上の段落に示した方法により製造されたスポーツシューズ用ソールと、そのようなソールおよびシューアッパーを含むスポーツシューズとに関する。以下の記述は、方法、得られたソール、およびスポーツシューズに等しく当てはまる。
ソールは、シュトローベルソール、アウトソール、またはミドルソールであってよい。好ましくはTPUまたはゴムから製造されるアウトソールを、ソールに取り付けることができる。スポーツシューズは、ソールに連結されたシューアッパーをさらに含むことができる。ソールは、糸または複数本の糸のうちの少なくとも1本のセクションを含む少なくとも1つのストライプをさらに含むことができる。ストライプは、シューアッパーの領域内に延びて、シューアッパーに連結されてよい。
スポーツシューズは、ソールとシューアッパーとの間に少なくとも部分的に配置された、溶融可能な材料の層をさらに含むことができる。溶融可能な材料を熱により溶融して、ソールをシューアッパーに連結することができる。それに加えて、または代替として、溶融可能な材料の使用により、および熱を加えることにより、ソールをその形状で固定することができる。
糸または糸のうちの少なくとも1本は、2成分糸であってよい。第1の成分は、熱を加えることにより溶融可能であってよく、第2の成分は溶融不可能である。あるいは、第2の成分も溶融可能であるが、第1の部品よりも高い融点を有する。第1の成分を、糸において第2の成分の周りに配置することができる。そして、第2の成分が、糸の芯を形成し、第1の成分が芯を囲む。方法は、スポーツシューズを少なくとも部分的に加熱して、糸の第1の成分を溶融するステップを含むことができる。
ソールの一側に、層を少なくとも部分的に配置することができる。層はエラストランであってよい。しかしながら、一般に、水溶性材料を含む任意の材料を使用することが考えられる。層をソールとシューアッパーとの間に配置することができる。
図15は、本発明の本思想の変形例による方法によって得られた、スポーツシューズ用ソール1500の実施形態を示す。ソール1500はキャリア層1501を含み、糸がキャリア層1501上に配置されて、糸がスポーツシューズのソール1500の形状を実質的に規定するようにする。しかしながら、糸が、ソールの部分的な領域のみを規定することも考えられる。糸は、例えば、ねじれ要素または中足支持を規定することができる。
糸はキャリア層1501に縫い付けられる。図1〜図7に関してなされた記述が、キャリア層1501および糸について当てはまる。キャリア層1501は、特に、キャリア層4と同様のキャリア層であってよい。
図15の実施形態では、ソールは、糸のセクションを含むいくつかのストライプ1502を含む。したがって、糸は、ソール1500の形状を規定するだけでなく、ストライプ1502の形状も規定する。図16に示すように、ストライプ1502は、シューアッパーの領域内に延び、シューアッパーに連結されてよい。ストライプの代わりに、例えば丸形領域などの所望の他の形状が考えられる。
図16は、本発明の本思想の変形例によるスポーツシューズ1600の実施形態を示す。スポーツシューズ1600は、例えば図15のソール1500であり得るソール1500を含む。ソール1500はキャリア層(図16に示さない)を含み、糸(図16に示さない)がキャリア層上に配置されて、糸がスポーツシューズ1600のソール1500の形状を実質的に規定するようにする。糸はキャリア層に縫い付けられる。図15に関してなされた記述が、キャリア層および糸について当てはまる。
図16の実施形態では、ソール1500は、糸のセクションを含むいくつかのストライプ1502を含む。ストライプ1502は、シューアッパー1601の領域内に延び、シューアッパーに連結される。
アッパー1601は、ソックス状の布地であってよい。勿論、他の形状が一般に考えられる。シューアッパー1601が締め紐または面ファスナを含むことも考えられる。シューアッパー1601は、一般に、図16に示すシューアッパーに限定されない。ソール1500に関しても同じことが当てはまる。布地は、伸縮性のある織布、縦編地、横編地などであってよい。図16の実施形態では、アッパー1601に、参照符号1602を付した領域で熱可塑性ポリウレタン(TPUI)が印刷される。アッパー1601は、熱を加えることにより溶融する熱可塑性材料から作られた中間層(図16には示さない)によって、ソール1500に連結される。しかしながら、一般に、溶着、接着剤を用いた接着、縫付けなどの他の取付けの選択肢も考えられる。
アウトソール1603がソール1500に取り付けられる。アウトソール1603は、図16の実施形態でTPUから製造される。一般に、ゴム、TPU、発泡TPUまたはこれらの組合せなどの他の材料を、アウトソール1603のために使用することもできる。
図16に示すシューズ1600は、さらに、ミッドソール(図16には示さない)を含んでもよい。ミッドソールを、EVA、TPU、発泡TPU、またはこれらの組合せから製造することができる。
図16に示すシューズ1600は、スタッドを有するソールプレートを含むサッカーシューズ、ラグビーシューズ、またはフットボールシューズであってもよい。
本発明の本思想のさらなる変形例は、(a)完成したスポーツシューズのソール領域に配置されるシューアッパーの縁部に実質的に沿って、ストランドをレイアウトするステップと、(b)刺繍機を用いて、ストランドをシューアッパーに、複数の位置で一方向に固定するステップと、(c)シューアッパーを靴屋の靴型に配置するステップと、(d)ストランドを引いて、シューアッパーを靴屋の靴型の形状に合わせて調節するステップとを含む、スポーツシューズ用シューアッパーを靴屋の靴型で形作る方法に関する。
ステップdで、ストランドを、一端部で、両端部で、または2つの端部間の任意の位置で引くことができる。
本発明の本思想のこのさらなる変形例のさらなる態様は、上の段落に示した方法により製造されたスポーツシューズ用シューアッパーと、そのようなシューアッパーおよびソール構造を含むスポーツシューズとに関する。以下の記述は、方法、得られたシューアッパー、およびスポーツシューズに等しく当てはまる。
ストランドを縫い合わせる位置の間の距離を、シューアッパーの縁部に沿って変化させることができる。例えば、シューアッパーの側部領域よりも踵領域およびつま先領域で、距離を小さくすることができる。方向は、実質的に、すなわち製造公差を除いて、シューアッパーの縁部に対して直角の方向であってよい。ステップaおよびbでは、シューアッパーをキャリア層上に配置することができる。キャリア層は、例えば複数のシューアッパーが配置されるリールであってよい。場合により、ステップbとステップcとの間で、シューアッパーをキャリア層から切り取ってもよい。さらに場合により、シューアッパーの連結線をステップbとステップcとの間で閉じて、2次元シューアッパーから3次元プリフォームを得ることができる。ステップdの後、ストランドをシューアッパーに対して動くことができないように固定して、シューアッパーが靴屋の靴型の形状を維持するようにする。
図10a〜図17dを用いて、本発明の本思想のさらなる変形例による方法の実施形態について以下で説明する。図17aに示すように、シューアッパー1701はキャリア層4上に配置される。例えば、前述したように、すなわち、キャリア層4を設け、糸5または複数本の糸5をキャリア層4上に配置して、糸5または複数本の糸5がシューアッパー1701の形状を実質的に規定するようにし、糸5または複数本の糸5のうちの少なくとも1本をキャリア層4に縫い付けることにより、シューアッパー1701をキャリア層4上に配置することができる。シューアッパー1701を、織布、横編地、縦編地などの布地から切り抜くこともできる。キャリア層は、人工糸または天然糸、合成皮革または天然皮革、不織布材料などから作られた布地であってよい。キャリア層は、例えば、複数のシューアッパーが配置されるリールであってよい。
図17aにさらに示すように、ストランド1702をシューアッパー1701の縁部1703に実質的に沿ってレイアウトする。縁部1703は、完成したスポーツシューズのソール領域に配置される。刺繍機を用いて、ストランド1702は、シューアッパー1701に複数の位置で一方向に固定され、その位置のうちの3つに、例として参照符号1704を付す。あるいは、ストランド1702は、接着、縫付け、または溶着により固定される。図17aに示すように、撚糸は縁部1703に対して略直角である方向に固定される。ストランド1702は、シューアッパー1701に対して別の方向に、すなわち縁部1703に略平行な方向に可動である。
ストランド1702は、ポリマー、収縮性フィラメント、溶融糸、天然繊維から作られた糸、金属ベースの糸、形態変化糸から作られたモノフィラメントであってよい。形態変化糸は、例えば熱を加えると、その長さが変化する。一般に、「ストランド」という用語は、長さのある可撓性構造、例えば紐、バンド、ストリング、ストラップなどの総称と理解されたい。
オプションの方法ステップ、すなわちシューアッパー1701の連結線1705を閉じて、2次元シューアッパー1701から3次元プリフォームを得るステップが図17bに示される。図示した実施形態では、この連結線1705がシューアッパー1701の踵に配置される。例えば、図18に示すようなシューアッパーの側部領域における、連結線1705の他の配置が考えられる。フックまたはアイレットなどを用いて、連結線1705を縫付け、溶着、接着により閉じることができる。連結線1705を手動または自動で閉じることができる。
図17cに示すように、シューアッパーが靴屋の靴型1706に配置される。前のステップでシューアッパー1701に3次元プリフォームが与えられた場合、シューアッパーはこのプリフォームで靴屋の靴型1706に配置される。前のステップでシューアッパー1701に所与の3次元プリフォームが与えられなかった場合、シューアッパー1701を靴屋の靴型に配置する間に、場合によって存在する連結線1705を閉じてもよい。フックまたはアイレットなどを用いて、連結線1705を縫付け、溶着、接着により閉じることができる。
図17dに示すように、ストランド1702の両端部1707を引いて、シューアッパー1701を靴屋の靴型1706の形状に合わせて調節する。あるいは、ストランド1702の一端部のみを引き、他端部をシューアッパーに固定する。さらにあるいは、両端部を固定し、2つの端部間の任意の位置を引くことにより、ループが形成される。このようにして、一端部または両端部を引くことにより、シューアッパー1701の材料を集め、靴屋の靴型の形状に合わせて調節する。一端部または両端部を手で引いても、半自動で、すなわち手持ち式デバイスが端部を引いても、全自動で引いてもよい。
ストランド1702の端部または任意の位置が引かれた後、ストランド1702をシューアッパー1701に対して動くことができないように固定できるため、シューアッパー1701が靴屋の靴型の形状を維持する。この固定は、例えば、ストランド1702の両端部またはストランドから引いて形成されたループを結び付けることによって行われる。あるいは、2つの端部または引き出されたループを溶融するか、または共に接着してもよく、クランプを備えてもよい。
図19a〜図19cは、ストランド1702をシューアッパー1701に固定する様々な代替選択肢を示す。図19aは、撚糸1901の細長いジグザグの経路を示し、撚糸1901は、ストランド1702と撚糸1901とが交差する位置でストランド1702を固定する。図19bでは、撚糸1901が、距離を置いたブロックでシューアッパー1701に縫い付けられる。図19cでは、撚糸1901が、シューアッパー1701の縁部1703のホイップステッチとして具体化される。
図20では、シューアッパー1701の縁部1706の代替形状が示され、ここでは、縁部1706が個々の切欠き2001を含む。図20の実施形態では、切欠き2001が三角形で実現されるが、これらは、一般に任意の形状であってよい。縁部1706の切欠きは、堅いまたは厚いシューアッパーの場合に、靴屋の靴型1706で縁部1706を集めるのを容易にするのに有利である。
本発明の本思想のさらなる変形例は、(a)撚糸を用いて、締め紐の領域の複数の位置でシューアッパー上に紐を固定して、紐が対応する位置で実質的に長手方向のみに可動であるようにするステップを含む、紐をスポーツシューズ用シューアッパーに自動で取り付ける方法に関する。
このステップの前に、場合により、紐の第1の自由端をシューアッパーに固定してもよい。さらに、場合により、このステップの後に、紐の第2の自由端をシューアッパーに固定してもよい。したがって、本発明の本思想のこの変形例によれば、紐は一般に、締め紐の領域の少なくとも複数の位置でシューアッパー上に固定される。紐の端部をさらに固定することもできる。これは、複数の位置への固定前または後に行うことができる。
本発明の本思想のさらなる変形例のさらなる態様は、上の段落に示した方法により製造されたスポーツシューズ用シューアッパー、ならびにそのようなシューアッパーおよびソール構造を含むスポーツシューズに関する。以下の記述は、方法、得られたシューアッパー、およびスポーツシューズに等しく当てはまる。
紐の第1の自由端および/または紐の第2の自由端の固定を、縫付けまたは接着により行うことができる。第1の端部を、完成したシューズでは見えないシューアッパーの領域に固定することができる。同様に、第2の端部を、完成したシューズでは見えないシューアッパーの領域に固定することができる。紐を固定するシューアッパー上の位置は、シューアッパーが通常紐アイレットを含む位置であってよい。糸を用いて紐をこれらの位置に固定することができる。紐は、シューアッパーの舌領域にわたってジグザグ状に延びることができる。
図21a〜図21cを用いて、本発明の本思想のさらなる変形例による方法の実施形態について以下で説明する。図21aに示すように、シューアッパー2101が設けられる。これは、本記述で説明したシューアッパーであってよい。例えば、前述したように、すなわち、キャリア層4を設け、糸5または複数本の糸5をキャリア層4上に配置して、糸5または複数本の糸5がシューアッパー2101の形状を実質的に規定するようにし、糸5または複数本の糸5のうちの少なくとも1本をキャリア層4に縫い付けることにより、シューアッパー2101をキャリア層4上に配置することができる。シューアッパー2101を、織布、横編地、縦編地などの布地から切り抜くこともできる。切抜きを、紐の固定前またはその後に行うことができる。本発明の本思想の変形例によれば、複数のシューアッパーを、例えば布地リール上で形成してもよい。その後、少なくとも1本の紐を、本発明による前記シューアッパーの各々に固定する。続いて、シューアッパーを布地リールから切り抜くか、または打ち抜く。切抜きを、例えば高周波交流またはレーザによって行うことができる。
図21aにさらに示すように、紐2102が第1の自由端でシューアッパー2101に固定される。図21aの実施形態では、紐2102の第1の端部2103aを撚糸2104aで固定する。しかしながら、紐2102の第1の端部2103をシューアッパー2101に接着することも考えられる。
一般に、紐2102の第1の端部2103とシューアッパー2101との連結は、例えば撚糸2104aを切り離すことにより、後で容易に解放できるようにすべきである。したがって、紐2102の第1の端部2103の固定は仮固定であり、シューアッパー2101のさらなる、特に自動処理ステップ中、例えばシューアッパーをリールから切り抜くかまたは打ち抜く間に、端部2103のぶら下がりを防止するようになっている。さらに、端部2103を固定することにより、自由長さ、すなわち結び付ける紐2102のセクションを規定することができる。一般に、紐2102の第1の自由端2103の固定はオプションのステップである。
図21aにさらに示すように、紐2102は、撚糸2104bにより、シューアッパー上の1つの位置にさらなる経路で固定される。この位置で、最上の紐開口部は、通常、シューアッパーに位置する。紐2102は、この位置において、紐2102がそこで実質的に長手方向のみに可動であるように固定される。したがって、紐アイレットと同様の方法で、撚糸2104bにより形成された固定を通して、紐を後で引き通すことができる。
図21bに示すように、紐をシューアッパー2101の紐領域のさらなる位置に固定して、紐2102がそこで実質的に長手方向のみに可動であるようにする。さらなる撚糸2104c、2104d、2104eをこのために使用するが、これらは単一撚糸のセクションであってもよい。これに関し、紐は、シューアッパー2101に、矢印により提示される方向にジグザグパターンで配置され固定される。一般に、ジグザグ以外の締め紐パターン、例えば紐2102の平行または斜めの案内も使用可能である。
図21cに示すように、紐2102がシューアッパー2101に固定されることにより、紐2102は最終的に、紐の場合に従来行われる交差配置に従う。しかしながら、一般に、紐2102の異なる配置も考えられる。さらに図21cに示すように、紐2102の第2の自由端2103bもシューアッパー2101に固定される。第1の自由端2103aに関してなされた記述が、この固定について当てはまる。撚糸2104fを固定のために使用し、これは、位置2104a〜2104eで使用される撚糸のさらなるセクションであってよい。一般に、紐2102の第2の自由端2103aの固定は、オプションのステップである。
図22は、シューアッパー2101への紐2102の固定を詳細に示す。図22に示すように、撚糸2104は、紐2102を固定する複数のループを形成することができる。あるいは、撚糸2104が相応に裂け難い場合には、単一のループのみを形成してもよい。
図23は、記載した方法に使用可能な刺繍機のヘッド2300の概略図である。紐2102は無端状で刺繍機に供給され、または、例えば、必要な場合に、ヘッド2300近くに位置する編み機によって製造され、刺繍機のヘッド2300により、自動で正しい長さに切断され、すなわち切り離される。切離しを図23に示すようなナイフ2301で行うことができるが、熱、例えば熱風により、レーザまたは高周波交流などにより行うこともできる。ナイフは回転ナイフであってよい。
自由端2103a、2103bは、自由端2103a、2103bがばらばらにほぐれるのを防ぐ仕上げをヘッド2300内において自動で受ける。この目的で、例えば自由端2103a、2103bを加熱して、紐2102の繊維が熱可塑性繊維であるか、熱可塑性繊維と熱硬化性繊維または天然繊維との組合せである場合に、この繊維を溶融する。あるいは、自由端2103a、2103bは、例えばクリンプ加工により、キャップを備えてもよい。さらに代替として、硬化するポリマースプレーを使用してもよい。さらなる代替形態は収縮性ホースの使用であり、この収縮性ホースは、端部2103a、2103b上に被せられ、熱を加えることにより収縮して端部2103a、2103bの周りにぴったりと巻き付く。さらなる代替形態は、浸した後に硬化する液体ポリマーに、端部2103a、2103bを浸すことである。
図23にさらに示すように、刺繍機のヘッド2300は針2302を有し、この針2302により、撚糸2104を案内して、紐2102をシューアッパー2101に固定する。
本発明の本思想の提示された変形例に関し、この記載におけるすべての説明が同様に当てはまる。技術的観点から有用となる程度まで、すべての好ましい実施形態および実施形態の特徴を、特に本発明の変形例に移すことができ、逆も同様である。技術的観点から有用となる程度まで、すべての好ましい実施形態および実施形態の結果として得られるすべでの技術的効果および利点を、本発明の思想の変形例に移すことができ、逆も同様である。
図24は、本明細書に記載の変形例にも適用可能な本発明の実施形態を示す。図24は、本発明により製造されたシューアッパーのセクション2401を示す。フォーム材料部分2402がシューアッパーの踵領域に配置され、糸2403を用いてシューアッパーに固定される。糸2403は、シューアッパーのセクション2401を形成する糸と同じ糸であってよい。あるいは、糸2403は別の糸である。例えば刺繍機でシューアッパーを製造する間に、フォーム材料部分2402をシューアッパーに固定することができる。例えば、フォーム材料部分2402をシューアッパーに刺繍してもよい。
フォーム材料部分2402は、踵に詰め物をする目的を果たす。フォーム材料は、発泡ポリエチレンまたはポリプロピレンであってよい。一般に、フォーム材料部分2402を、シューアッパーの任意の他の位置、例えば踵領域に配置することができる。フォーム材料部分の代わりに、例えば、シューアッパーの一側または甲セクションに配置される補強要素を使用してもよい。そのような補強要素は、糸2403の孔を含んで、シューアッパーへの固定を可能にすることができる。
一般に、図24の実施形態に類似して、所望の要素をシューアッパーの所望の位置に固定して、例えば、詰め物、補強、剛化、安定性、支持などの機能を与えることができる。
特に、緩衝フォームの代わりに、または緩衝フォームと組み合わせて、チューブ状の糸を使用することができる。チューブは圧縮性で、有利には、弾性材料(例えばゴム)から作られる。本明細書で説明したように、チューブを刺繍ヘッド1により供給し、縫糸を用いてキャリア層に取り付けることができる。より高い緩衝性が求められる場合、いくつかの層のチューブを設けることができる。緩衝性があまり求められない場合には、単層のチューブを設けることができる。このようにして、その縁部で多層のチューブから単層のチューブへ移行しながら、緩衝性のレベルを特定の必要に適応させることができ、詰め物をシューズまたは衣料に、より良好に組み込むことができる。
チューブを、例えば、シューアッパーの踵領域またはつま先領域に設けることができる。一般に、チューブを、緩衝性が必要なシューアッパーまたは衣料の任意の位置に設けることができる。
本発明のさらなる変形例による方法は、(a)糸をキャリア層上に配置するステップと、(b)縫糸を用いて糸をキャリア層に糸の第1の部分で縫い付けるステップと、(c)縫糸を用いて糸をキャリア層に糸の第2の部分で縫い付けるステップとを含み、第1の部分と第2の部分の部分とが離間する。特に、第1の部分と第2の部分とは少なくとも5mm、特に少なくとも1cm離間してよい。
キャリア層、糸、および撚糸に関して前述した内容が、本発明の思想のこの変形例に同様に有効である。したがって、本発明およびその変形例に関して本明細書で説明した特徴の各々を、本発明のこの変形例に当てはめることができる。
糸はフィラメントの束であってよい。糸は弾性糸であってよい。糸は第1の部分と第2の部分との間にたるみを有してよい。
図25a、図25bに関して、この変形例の実施形態について説明する。図25aは、キャリア層2501、糸2502、および縫糸2503を示す概略図である。縫糸2503は糸2502をキャリア層2501に、糸2502の第1の部分2504および糸2502の第2の部分2505で固定する。第1の部分2504と第2の部分2505とは、ある距離をおいて離間することにより、たるみ部を形成する。図25aに反して、たるみ部で、縫糸2503と糸2502とがキャリア層2501の両面に配置されて、糸2502のみがキャリア層2501の一面に見えるようにしてもよい。
第1の部分2504および第2の部分2505を、人の関節の領域に配置することができる。例えば、第1の部分2504および第2の部分2505を、人の肘の領域に配置することができる。したがって、第1の部分2504と第2の部分2505との間の間隙により、糸2502のいくらかのたるみが可能になる。糸2502は、例えば、弾性糸であってよく、関節(例えば肘)が第1の位置にある(例えば曲がっている)ときに、エネルギーを糸2502に蓄えることができるようにする。その後、蓄えられたエネルギーを解放して、第2の位置へ向かう動きを支持することかできる。また、弾性糸によりもたらされる抵抗が、筋肉のトレーニング効果をもたらすことができる。
シューアッパーまたは衣料の部片のたるみ部は、カバー層を含むことができ、このカバー層は、(外層またはライナとして)糸のたるみ部上に配置されて、そのようなたるみ部の糸を保護する。
本発明のこの変形例の文脈では、バンドが糸として同様に理解される。例えば、バンドは弾性TPUバンドであってよい。
本発明的思想のさらなる変形例によれば、シューアッパーの製造方法が、(a)糸をキャリア層上に配置するステップと、(b)縫糸を用いて糸をキャリア層に縫い付けて、紐を通すことのできる少なくとも1つのループを糸が形成するようにするステップとを含む。
キャリア層、糸、および撚糸に関して前述した内容が、本発明的思想のこの変形例に同様に有効である。したがって、本発明およびその変形例に関して本明細書で説明した特徴の各々を、本発明のこの変形例に当てはめることができる。
糸を、シューアッパーの足開口部の縁部に配置することができる。紐はキャリア層の撚糸であってよい。紐は糸の一部であってよい。糸はフィラメントの束であってよい。
図26a、図26b、および図27に関して、この変形例の実施形態について説明する。図26aは、シューアッパーの開口部2601の概略図である。糸がシューアッパーのキャリア層2602に縫い綴じられる。第1の糸2604は、シューアッパーの足開口部2601の周りに配置され、第2の糸2605は、シューアッパーの足開口部の周りに配置されて、紐(紐は図示せず)を受けるためのループを形成する。これらのループのうちの2つが、参照符号2603により例示的に示される。有利には、キャリア層2602と足開口部を単に取り囲む糸2604との間に糸形成ループ2603が配置されて、足開口部の周りの糸2604がキャリア層2602へのループ2603の取付けを補強するようになっている。
紐はループ2603に通される。したがって、紐を引くと、足開口部2601の両側におけるシューアッパーの外側および内側のそれぞれを共に結び付けて、シューズを着用者の足に堅く固定することができる。本明細書で説明したように、縫糸を用いて糸をキャリア層に縫い付ける。そのような構成が、図31aおよび図31bの異なる実施形態にも見られる。
図26bは、本発明のこの変形例によるシューアッパーの例示的な実施形態を示す。特に、紐(図26bには示さない)を通すことのできるループ2603が図26bに見られる。
図27は、本発明のこの変形例のさらなる実施形態を示す。図27によれば、例えば縫糸で縫い綴じることによって、糸がシューアッパー2602に、その長さの一部で取り付けられ、端部で自由になって紐2606を形成する。図27に示す実施形態では、シューアッパーの足開口部2601の周りで縫い綴じることによって糸2604が取り付けられ、その端部は、足開口部2601の前縁部から自由になっている。
紐を形成する糸2606は、ループ2603を形成するものと同じ糸2605であっても、異なる糸であってもよい。したがって、図27の左側に示す第1のステップで、紐が糸2606により形成される。その後、第2のステップで、ループ2603が第2の糸2605により形成される。さらなるステップ(図27には示さない)で、紐2606がループ2603に通される。
本発明の思想のさらなる変形例によれば、シューアッパーまたは衣料の製造方法は、(a)溶融糸を第1の層に配置するステップと、(b)縫糸により溶融糸を第1の層に縫い付けるステップと、(c)溶融糸に熱を加えて溶融糸が溶融するようにするステップとを含む。
第1の層、糸、および撚糸に関して前述した内容が、本発明的思想のこの変形例に同様に有効である。したがって、本発明およびその変形例に関して本明細書で説明した特徴の各々を、本発明のこの変形例に当てはめることができる。特に、本明細書で説明したように、第1の層はキャリア層であってよい。
第1の層は溶解可能であってよい。第1の層は布地層であってよい。第1の層を、基板上に配置された第2の糸により形成することができる。基板は溶解可能であってよい。
溶融糸を、TPUなどの熱可塑性物質から作ることができる。溶融糸は、熱可塑性物質から作られたコーティングと、熱可塑性物質であっても熱可塑性物質でなくてもよい異なる芯とを含むことができる。例えば、糸は、50デニール〜300デニール、例えば約125デニールの芯と、70〜1200デニール、例えば約750デニールの総線形質量密度とを有することができる。コーティングは、約350マイクロメートルの厚さを有することができる。糸の芯は、強力ポリエステルであってよく、コーティングはTPUであってよい。
溶融糸を、キャリア層上に配置して、溶融ゾーンを形成してもよい。
方法は、UV光または赤外光により溶融糸を溶融するステップをさらに含む。
代替として、または組み合わせて、方法は、第2の層を第1の層の上に配置して、溶融糸が第1の層と第2の層との間に配置されるようにするステップをさらに含むことができる。したがって、溶融糸は両方の層を共に結合することができる。例えば、図31cに示すように、本発明によれば、第1の層はアッパー(例えば布地または編地)のベース層(またはキャリア層)3102であってよく、第2の層は刺繍糸3103の層であってよい。少なくとも1本の溶融糸3105を第2の層と第1の層との間に配置することができ、縫糸3106により第1の層に固定することができる。これにより、溶融糸は溶融されて、例えば、第2の層の縫糸が溶解する前に第2の層を第1の層に取り付ける。
方法は、シューアッパーまたは衣料の部片の第1の取付領域に溶融糸を配置するステップと、シューアッパーまたは衣料の第2の取付領域を折り曲げて、第2の領域が第1の領域に少なくとも部分的に重なるようにするステップとをさらに含むことができる。このようにして、溶融糸を用いて、第1の層(第1の取付領域を担持する)を第2の層(第2の取付領域を担持する)に結合することができる。溶融糸を第1の層および第2の層に配置することができる。
図28は、本発明のこの変形例の例示的な実施形態の概略図であり、シューアッパー2801の一部、すなわちその踵領域を示す。通常、アッパーは2次元材料から作られて、3次元形状に形成される。このプロセス中に、シューアッパーの縁部を接合して、完成した3次元形状を形成しなければならない。通常、この接合部は、シューアッパーの踵領域に位置するが、発明的思想のこの変形例によれば、シューアッパーまたは衣料の任意の他の位置に位置してもよい。
図28に示すように、溶融糸2803は2次元アッパーの踵縁部の両側に配置される。溶融糸は、例えば布地層、編地層、メッシュなどであり得る第1の層2802に配置される。本明細書で詳細に説明したように、溶融糸2803は縫糸(図28には示さない)により第1の層2802に縫い付けられて、取付領域を形成する。踵縁部を接触させ、熱を溶融糸に加えて溶融糸が溶解するようにする。あるいは、熱を最初に溶融糸に加えた後に、縁部を合わせる。冷却すると、溶融糸は剛化して、2つの踵縁部を共に堅く結合し、シューアッパーが3次元形状で維持されるようにする。
一般に、本発明のこの変形例の文脈では、衣料またはシューアッパーの任意の領域をそのような溶融糸により結合することができる。
本発明のさらなる変形例によれば、シューアッパーまたは衣料の製造方法は、(a)第1の糸をキャリア層上に配置するステップと、(b)第2の糸をキャリア層上に配置して、少なくとも第1の点および第2の点で第1の糸が第2の糸に交差するようにするステップであって、第1の点で、第1の糸が第2の糸とキャリア層との間を通り、第2の点で、第2の糸が第1の糸とキャリア層との間を通るステップと、(c)縫糸により第1の糸および第2の糸をキャリア層に縫い付けるステップとを含む。
糸、縫糸、およびキャリア層に関して前述した内容が、本発明のこの変形例に同様に適用可能である。したがって、本発明およびその変形例に関して本明細書で説明した特徴の各々を、本発明のこの変形例に当てはめることができる。
本発明のこの変形例によれば、第1の糸および第2の糸が、安定性をシューアッパーまたは衣料に与えるある種の編み配置でキャリア層に固定される。
方法は、キャリア層を溶解するステップをさらに含むことができる。したがって、2本の糸の編み構造は安定したままとなる。方法は、縫糸を溶解するステップをさらに含むことができる。したがって、第1の糸と第2の糸とを編み配置により共に保持することができる。
方法は、刺繍機の別個のヘッドにより、第1の糸および第2の糸を供給するステップをさらに含むことができる。
本発明のこの変形例を、キャリア層に編み状に配置される2本の糸に関して説明する。しかしながら、一般に、方法を3本以上の糸、例えば3本の糸を用いて実施することができる。一般に、任意の公知の編みパターンで、糸をキャリア層上に配置することができる。
本発明のこの変形例により、シューアッパーまたは衣料の異なる部分に厚さの異なるフィラメントを有する糸を使用することができる。したがって、より厚いフィラメントを、例えば、シューアッパーの踵部などの機械応力の高い領域で使用することができる。
衣料またはシューアッパーを少なくとも2つの部分から作ることができ、各部分は、前述したように編み配置の糸を含む。
一般に、本発明のこの変形例により、衣料またはシューアッパーの伸縮性を、糸の対応する配置により制御することができる。例えば、第1の点と第2の点との間により多くのたるみを有して、糸を配置することができる。これによって、より高い伸縮性が可能になる。逆に、2本の糸が第1の点と第2の点との間で互いに接近している場合、伸縮性(または弾性)が限られる。
第1の糸および第2の糸は、衣料またはシューアッパーの選択された位置のみに存在してもよい。したがって、衣料またはシューアッパーは、糸のない位置に、より高い伸縮性を有することができ、他の位置(糸を含む)は限られた伸縮性を有することができる。
図29は、本発明のこの変形例の概略図である。図29は、キャリア層(図29には明確に示さない)に配置された第1の糸2901および第2の糸2902を示す。第1の糸2901および第2の糸2902は、縫糸(図29には示さない)によりキャリア層に固定される。縫糸の使用については、本明細書で詳細に説明した。例えば、前述したように、刺繍機を使用して、第1の糸2901および第2の糸2902を固定することができる。第1の糸と第2の糸とは互いに点2903a、2903b、2903cで交差する。
点2903aで、第1の糸2901は第2の糸2902とキャリア層との間を通り、すなわち第2の糸2902は第1の糸2901の上にある。点2903bで、状況は逆になり、すなわち第2の糸2902が第1の糸2901とキャリア層との間を通り、すなわち第1の糸2901が第2の糸2902の上にある。最後に、点2903cでは、状況は点2903aと同様であり、すなわち第1の糸2901が第2の糸2902とキャリア層との間を通り、すなわち第2の糸2902が第1の糸2901の上にある。複数のステッチヘッドを含む機械を用いてそのような配置を得ることができ、各ステッチヘッドは糸をキャリア層に縫い綴じ、ヘッドは、別のヘッドにより先に縫い綴じられた綴糸上に、糸を交互に順々に縫い綴じる。図29の例では、糸セクションAが最初に置かれて、第1のステッチヘッドによりキャリア層に縫い綴じられ、次に糸セクションB、Cが置かれて、第2のステッチヘッドにより縫い綴じられ、次に糸セクションD、Eが置かれて、第1のステッチヘッドにより縫い綴じられ、次に糸セクションFが置かれて、第2のステッチヘッドにより縫い綴じられる。これは、ステッチヘッドの速度を交互に変化させることによって得られる。このようにして、第1の糸2901と第2の糸2902との編み配置が得られる。
図29の文脈では、本明細書で説明したように、キャリア層が溶解可能な層であってよい。あるいは、キャリア層が、例えば布地、編地、織布、不織布などの溶解不可能な層であってよい。
図30a、図30b、図30cは、本明細書で示した本発明によるシューズ3001の実施形態およびその変形例を示す。シューズ3001は、アッパー3002およびソール構造3003を含む。シューズ3001は、図30bに最もよく見られる取外し可能なソックス3004も含む。ソックスは布地材料から作られる。しかしながら、任意の適切な材料を使用してもよい。アッパー3002は、ソックス3004の周りにケージ状構造を形成し、これは、ソックス3004を除去した図30cに最もよく見られる。キャリア層が溶解して、ソックス3004を取り外したときにシューアッパー3002の内部が見えるようになっている。十分に堅い糸を選択することにより、安定性をシューアッパーに与えて、足が十分に支持されるようにする。
縫糸を用いて少なくとも1本の糸をキャリア層に縫い綴じる(または縫い付ける)ことにより、および続いてキャリア層を溶解することにより、アッパー3002のケージ状構造が得られて、糸により形成されたケージ状構造が図30aおよび図30bに示すように残るようにする。したがって、糸、縫糸、およびキャリア層に関して前述した内容が、本発明のこの変形例に同様に適用可能である。したがって、本発明およびその変形例に関して本明細書で説明した特徴の各々を、本発明のこの変形例に当てはめることができる。
一般に、本発明およびその変形例によれば、縫糸を用いて糸をキャリア層に縫い綴じることにより部品を作ることができる。本明細書で説明したように、キャリアは溶解可能であっても溶解不可能であってもよい。特に縫綴じまたは縫付けによって、部品をアッパーまたは衣料(例えばソックス)のベース層に取り付けることができる。特に、構造は、アッパーまたは衣料の一部または全部を囲んで、支持をもたらすことができる。部品は、アッパーの内部ソックスの周りの構造を形成することができる。
図31aおよび図31bは、本発明の例示的な実施形態およびその変形例を示す。この実施形態は、布地キャリア層3102を有するシューアッパー3101を示す。しかしながら、任意のタイプのキャリア層を同様に使用してもよい。本実施形態では、縫糸(図31aおよび図31bには見えない)を用いて糸3103をキャリア層3102に縫い付ける。糸3103をシューアッパー3101の縁部でキャリア層3102に縫い付けて、足開口部を形成する。したがって、糸3103は、キャリア層3102から切り抜かれる足開口部を囲む。このようにして、キャリア層3102の布地材料がほどけないようにし、完成したアッパーの縁部を摩耗および機械応力に対して補強する。図31aおよび図31bに示すように、糸3103は、2回以上、例えば2回または3回、足開口部の周りに延びることができる。
単糸3103の代わりに、少なくとも2本の異なる糸を使用して、アッパーの縁部を仕上げてもよい。第1の材料および/または厚さの第1の糸を最初に縁部に置くことができ、その後、異なる材料および/または厚さの第2の糸を前記縁部に置くことができる。また、多くの異なる糸を共に置いてもよい(同じステッチ糸を用いて)。これらの糸は、異なる材料および/または異なる厚さであってよい。
図31aの実施形態は、異なる密度の糸をアッパー上に有することにより、異なる剛性をシューズの異なる領域に与えるという利点も示す。これにより、この例では、前外側が、前内側と異なる糸密度を有する。
図31cは、図31aおよび図31bの実施形態の変形例を示す。この実施形態では、本発明によれば、ベース層(またはキャリア層)3102が編地であり、溶融糸3105の第1の層が、縫糸3106を用いてキャリア層3102に縫い綴じられる。溶融糸3105を、TPUなどの熱可塑性物質から作ることができる。溶融糸は、熱可塑性物質から作られたコーティングと、熱可塑性物質であっても熱可塑性物質でなくてもよい異なる芯とを含むことができる。例えば、糸は、50デニール〜300デニール、例えば約125デニールの芯と、70〜1200デニール、例えば約750デニールの総線形質量密度とを有することができる。コーティングは、約350マイクロメートルの厚さを有することができる。糸の芯は、強力ポリエステルであってよく、コーティングはTPUであってよい。
さらに、図31cに示すように、第2の層を形成する第2の糸3103が、さらなる縫糸を用いて第1の層の上に配置される。溶融糸3105を溶融することにより、第2の糸3103はキャリア層3102に堅く結合される。
本発明の変形例の1つによる、領域における糸の密度、および/または領域における糸の向き、および/または各領域の大きさを、ユーザに関するデータに応じてカスタマイズすることができる。ユーザに関するデータは、特に、ユーザの選択、および/またはユーザの身体の静的または動的測定により得られたデータを含むことができる。
代替として、または組み合わせて、本発明は、単一の連続糸を使用して、図31a、図31b、図31cの例示的な実施形態にあるような異なる補強領域を形成する製造方法の実施形態も想定する。その後、次の製造ステップ中に、図31bの糸セクション3104a、3104bに関して、そのような連続糸を外側から切り取る、または隠すことができる。他の特定の実施形態では、連続糸が、シューアッパーまたは衣料の部片の上に一体のままであってもよい。シューアッパーの一部の実施形態では、糸が、踵から内側へ、前側(つま先領域または甲)へ、外側へ、および踵に戻って、シューアッパーの周り全体に連続して延びることができる。これによって、シューアッパーにおいて、より高い強度を得ることができ、これは特に、例えばバスケットボールなどの一部のスポーツで有利である。
一般に、本発明およびその変形例によれば、外部支持部品を、本明細書に記載の本発明および/またはその変形例の1つの製造方法によって製造することができ、その後、これを衣料またはシューズ、特にシューアッパーに、例えば縫綴じ、溶融糸、接着などにより取り付けることができる。
また、本発明およびその変形例を使用して、数字および文字の形の糸を配置して、衣料またはシューズにラベリングすることができる。
一般に、本発明による衣料またはシューアッパーは、海から回収した材料(特に糸および撚糸)、特に海から回収したプラスチックを含むことができる。そのような材料が、リサイクルされない材料と同じ特徴を有していない場合、本発明およびその変形例は、使用される糸が製造中および使用中に求められることが少ないため有利である。これは、例えば織布または編地と比べて、糸が屈曲、ねじれ、引張りなどを受けることが少ないため、特に製造に当てはまる。
また、本発明およびその変形例で使用される縫糸が溶解可能であってよいことが、リサイクルに関する利点をもたらす。ベース層またはキャリア層、および溶解可能な糸を用いて縫い綴じられ、もしくは縫い付けられた1本または複数本の糸などの追加の構造から作られたアッパーによって、場合により異なる材料から各々作られた異なる部分を非常に容易に分離することが可能になる。
本発明のさらなる変形例によれば、第1の糸セクションおよび第2の糸セクションが、2本の別個の糸のセクションであってよい。これらの糸は、例えば、直径、水分輸送、断熱、引張強度などの異なる特徴を含むことができる。このようにして、いくつかの機能をシューアッパーの位置に設けることができる。例えば、第1の糸セクションが上に配置される第1の糸は、非常に耐摩耗性が高くてよく、第2の糸セクションが上に配置される第2の糸は、シューズの内側から外側へ水分を輸送する良好な水分輸送特性を有することができる。さらなる例では、シューアッパーの剛性をさらに向上させるために、第2の糸が比較的非弾性の糸であってよい。第2の糸は、例えばスポーツボールとの摩擦を高めて、より良好なボール制御を可能にするゴム引糸であってよい。
本発明の変形例によれば、長さ単位当たりのステッチの数は、糸のセクションの長さに沿って変化してもよい。特に、長さ単位当たりのステッチの数は、置かれた糸がカーブを形成する部分、特に90度以上のカーブ、例えばUターン(約180度)を形成する部分でより多くてよい。
この特徴により、カーブを形成する実用的な領域で、糸をより良好に固定することが可能になる。これにより、製品の寿命が長くなる。この特徴により、シューアッパーまたは衣料の機械的挙動における局所的な差も可能になり得る。実際に、ステッチの異なる密度は、結果として得られる製品の耐摩耗性、グリップ、弾性などを変化させることができる。また、例えば1色の糸と別の色の縫糸とを用いることにより、異なる美的効果を得ることができる。
ステッチ間の距離は、10分の1ミリメートル〜数センチメートルまで変化することができる。ステッチ間の距離は、縫糸が糸を局所的に覆うように、略縫糸の直径であってよい。
また、ステッチ構造、編みステッチおよび/または使用される糸を同じ糸および/または糸セクションで変化させて、糸および/またはシューズもしくは衣料の異なる領域で異なる特性を実現するようにする。
以下で、本発明の理解を容易にするために、さらなる実施形態について説明する。
1.a.第1の表面および対向する第2の表面を有する第1の層と、
b.第1の直径を有し、第1の層の第1の表面に配置された第1の糸セクションと、
c.第2の直径を有し、第1の層の第1の表面に配置された第2の糸セクションとを含み、
d.第1の糸セクションと第2の糸セクションとが少なくとも1つの平行部を含み、前記平行部において第1の糸セクションが第2の糸セクションに実質的に平行であり、
e.第1の糸セクションと第2の糸セクションとの間の距離が、第1の直径および第2の直径の大きい方よりも小さい、スポーツシューズ用シューアッパー。
2.第1の糸セクションと第2の糸セクションとの間の距離が、第1の直径および第2の直径の大きい方の半分より小さい、実施形態1に記載のシューアッパー。
3.第1の糸セクションと第2の糸セクションとの間の距離が、第1の直径および第2の直径の大きい方の3分の1より小さい、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
4.第1の糸セクションと第2の糸セクションとが互いに接触する、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
5.第1の糸セクションと第2の糸セクションとが、平行部の全長にわたって互いに接触する、前記実施形態に記載のシューアッパー。
6.平行部の長さが少なくとも1cmである、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
7.第1の糸セクションおよび第2の糸セクションが、単一の連続糸のセクションである、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
8.第1の糸セクションと第2の糸セクションとが、2本の別個の糸のセクションである、実施形態1〜6の1つに記載のシューアッパー。
9.対応する平行部を有する複数の第1の糸セクションおよび第2の糸セクションを含む、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
10.平行部が1列に配置され、それぞれの第1の糸セクションとそれぞれの第2の糸セクションとの間の距離が、列に沿って減少する、実施形態9に記載のシューアッパー。
11.第1の糸セクションおよび第2の糸セクションが配置され、1センチメートル当たり5〜20本の糸密度を有する第1の領域をさらに含む、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
12.異なる糸密度を有する複数の領域をさらに含む、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
13.領域の糸密度が、シューアッパーの表面に沿ってある方向に増加する、実施形態11に記載のシューアッパー。
14.第1の直径および第2の直径が0.3mm〜2mmである、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
15.第1の糸セクションおよび第2の糸セクションが、シューアッパーの踵領域、足開口部の領域、締め紐領域、またはつま先領域に配置される、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
16.第1の糸セクションおよび第2の糸セクションが配置される単数又は複数の糸のそれぞれが、第1の層に縫い付けられる、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
17.第1の糸セクションと第2の糸セクションとが互いに縫い付けられる、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
18.縫糸が縫付けのために使用される、実施形態16または17に記載のシューアッパー。
19.縫糸が糸のそれぞれより細い、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
20.第1の層が糸を含む、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
21.第1の層が第1の糸を含み、第1の糸セクションおよび第2の糸セクションが第2の層に配置された第2の糸に形成され、第1の層と第2の層とが部分的に互いに重ねて配置される、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
22.第2の層が、踵領域、つま先領域、または脛の領域に配置される、実施形態21に記載のシューアッパー。
23.少なくとも1つの補強要素が、第1の層と第2の層との間に配置される、実施形態21または22に記載のシューアッパー。
24.補強要素が踵カウンタ、つま先カウンタ、または脛ガードである、実施形態23に記載のシューアッパー。
25.補強要素がプラスチック、布地、革、または合成皮革から作られる、実施形態24に記載のシューアッパー。
26.第1の糸および/または第2の糸が溶融糸である、実施形態21〜25の1つに記載のシューアッパー。
27.第1の糸および/または第2の糸がフィラメント糸である、実施形態21〜25の1つに記載のシューアッパー。
28.フィラメント糸が炭素繊維を含む、実施形態27に記載のシューアッパー。
29.第1の層が実質的にシューアッパー全体に配置される、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
30.第1の層が、実質的にシューアッパーの形状を規定する、前記実施形態の1つに記載のシューアッパー。
31.前記実施形態の1つに記載のシューアッパーを含むシューズ。
32.a.第1の表面及び対向する第2の表面とを有する第1の層を設けるステップと、
b.第1の直径を有する第1の糸セクションを、第1の層の第1の表面に設けるステップと、
c.第2の直径を有する第2の糸セクションを、第1の層の第1の表面に設けるステップとを含み、
d.第1の糸セクションと第2の糸セクションとが、第1の糸セクションが第2の糸セクションに実質的に平行である少なくとも1つの平行部を含むようにし、
e.第1の糸セクションと第2の糸セクションとの間の距離が、第1の直径および第2の直径の大きい方よりも小さくなるようにする、実施形態1〜30の1つに記載のシューアッパーの製造方法。
一般に、この説明で示した本発明のすべての実施形態、例示的な実施形態、および変形例を互いに組み合わせることができ、すなわち、本発明の1つの実施形態および/または例示的な実施形態および/または変形例の特徴は、本発明のさらなる実施形態および/または例示的な実施形態および/または変形例を、本発明の別の実施形態および/または例示的な実施形態および/または変形例と共に、これらの特徴の組合せを本明細書に明記することなく提供することができる。
図示し前述した構成要素の異なる配置が可能であると共に、図示または記載しない構成要素およびステップが可能である。同様に、一部の特徴およびサブコンビネーションが有用であり、これらを他の特徴およびサブコンビネーションと関係なく使用してもよい。本発明の実施形態は、限定のためではなく例示のために記載されたものであり、代替実施形態が本特許の読者に明らかになろう。したがって、本発明は、前述し図示した実施形態に限定されず、後述する特許請求の範囲から逸脱することなく様々な実施形態および修正が可能である。