JP2016196746A - 免震構造 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、免震装置として一般に使用されている積層ゴムは、積層ゴムに作用するせん断力に比例して、変形量が増大する弾性変形特性を有している。このため、大地震時には、上部構造物と下部構造物の相対変位量が大きくなる。都市部等では、隣接する構造物との間隔の確保に限界があり、上部構造物と下部構造物との相対変位量を小さくする構成が求められている。
また、積層ゴムと並列にストッパーを設け、相対変位量が設定値を超えたとき、ストッパーで強制的に、それ以上の相対変位を制限する方法もある。しかし、ストッパーで強制的に相対変位を制限すると、上部構造物の応答加速度が大きくなってしまう。
免震装置の変形を弾性的に拘束する免震構造には、例えば特許文献1がある。
これにより、上部構造物と下部構造物との相対変位量が小さい中小地震時は、第1積層ゴムのみが弾性変形し、上部構造物へ伝達される地震時の衝撃や振動を低減させる。
一方、大地震時には、第1積層ゴムが、所定の間隔を超えて変形し、第2積層ゴムと当接して第2積層ゴムを押圧する。これにより、第1積層ゴムと第2積層ゴムが同時に弾性変形して、免震装置のばね定数を増加させ、上部構造物と下部構造物との相対変位量を小さくする。
即ち、積層ゴムと当接せずに、中小地震から大地震まで、連続して弾性変形できる免震構造を提供することができる。
この結果、下部構造物と上部構造物との相対変位量が、設定値(弾性部材と剛性部材との間に予め設けられた間隔)以下の範囲では、弾性変形手段同士は当接せず、積層ゴムのみが弾性変形して、上部構造物へ伝達される、地震時や強風時等の衝撃や振動を低減させる。
一方、下部構造物と上部構造物との相対変位量が、設定値以上になると、弾性変形手段の弾性部材と剛性部材が当接して弾性変形する。これにより、弾性変形手段と積層ゴムの両者が弾性変形して上部構造物に剛性を付与し、上部構造物と下部構造物との相対変位が抑制される。
本発明の第1実施形態に係る免震構造について、図1〜図6(D)を用いて説明する。
ここで、図1は、免震構造の正面図を示し、図2(A)は、免震構造の部分拡大図を示し、(B)は、相対変位を受けて変形した状態を示す正面図である。図3は、図1のZ1−Z1線断面図を示し、図4は、免震構造が相対変位を受けて変形した状態を示し、図5の(A)〜(D)は、免震構造のせん断力−変形量性を示している。また、図6は、弾性変形手段の変形例を示している。
積層ゴム10は、下フランジ10Lが下部構造物12の上面12Fに固定され、上フランジ10Uが上部構造物14の下面14Fに固定され、上部構造物14を支持している。
ゴム部10Gは、下部構造物12と上部構造物14が、水平方向に相対変位したとき(例えばX軸方向の相対変位量がDXのとき)、下フランジ10Lと上フランジ10Uの間がDXだけ変形する(図2(B)参照)。
なお、積層ゴム10は、例えば、国土交通省免震材料認定番号:MVBR−0295(N3.G3.G5)(株式会社ブリヂストン、NRB天然ゴム系積層ゴムシリーズ)等を使用することができる。これらは、市場に広く流通している商品であり詳細な説明は省略する。
弾性変形装置16、17は、互いに、設置方向を90度、異ならせている。
弾性変形装置16、17は、2個で一セットとして設置され、機能する。弾性変形装置16、17は、免震層42に、必要に応じて複数個(セット)が設置される。
弾性変形装置16、17は、積層ゴム10とは別個に、独立して、積層ゴム10と並列に配置されている。
中間部材22は、剛性部材で直方体形状に形成され、長手方向の長さがL1とされている。中間部材22は、長手方向をY軸方向に配置し、X軸と交差(直交)する側面22R、22Lを有している。
対向部材24R、24Lは、長手方向をY軸方向に配置し、側面を中間部材22と対向させている。対向部材24R、24Lは、高さH3に形成され、高さH3は免震層42の高さH1より小さく、下部構造物12の上面12Fとの間には、隙間が形成され、免震層42における、下部構造物12と上部構造物14との相対変位を妨げることはない。
コイルばね20は、伸縮方向をX軸方向に向けて、中間部材22と対向部材24R、24Lの間に取付けられている。コイルばね20は、中間部材22側の端部が開放端とされ、中間部材22の側面22R、22Lと、それぞれ所定の間隔D1をあけて対向配置されている。
対向部材24R、24Lと中間部材22は、それぞれの開放端側が、X軸方向へ高さH4で重なっており、コイルばね20の他端は、対向部材24R、24Lの、この重なり部分に取付けられている。
これにより、X軸方向、及びY軸方向の振動等に対応するのみでなく、斜め方向の振動にも対応することができる。
このように、下部構造物12と上部構造物14が、矢印YRで示される斜め方向に相対変位しても、コイルばね20と中間部材22が当接され、弾性変形機能が維持される。
オイルダンパー18は、例えば、ロッド29側の端部に設けられた固定部材19Rが、下部構造物12に接合され、シリンダー28側の端部に設けられた固定部材19Lが、上部構造物14に接合されている。
なお、図示は省略するが、オイルダンパー18は、複数個が配置され、一部のオイルダンパー18は、伸縮方向をY軸方向へ向けて配置されている。
これにより、水平2方向の振動エネルギーを吸収することができる。
この結果、下部構造物12と上部構造物14との相対変位が抑制される。
図5(A)〜(D)において、いずれも、横軸は免震構造の変形量(免震層42の相対変位量)であり、縦軸は、免震構造に作用するせん断力である。
このため、本免震構造では、大地震時に、上部構造物と下部構造物の相対変位量が過大となるのを防止するため、別途対策が必要となる。
このため、鉛プラグ入り積層ゴムを、中間免震構造の建物に採用した場合には、免震層を貫通するエレベータシャフトの復旧に手間を要する。
本免震構造では、上部構造物の変位は抑制され、地震終了後には、残留変形は残らない。しかし、ストッパーが作用する変形量Cの時点において、上部構造物の応答加速度が大きくなる。
せん断力−変形量特性QDは、変形量Dの地点で折れ曲がった直線となっている。即ち、下部構造物と上部構造物との相対変位が少ない中小地震では、積層ゴムのみにより、上部構造物へ伝達される地震時の衝撃や振動が低減される(矢印JG1、JB1)。
一方、大地震時には、下部構造物と上部構造物との相対変位量が変形量D以上になり、積層ゴムと弾性変形手段が共に弾性変形する(矢印JG1、JG2、JB1、JB2)。
これにより、上部構造物と下部構造物の相対変形量が抑制され、地震終了後に残留変形は残らない。また、上部構造物の応答加速度が大きくなることもない。
この結果、弾性変形装置16、17と積層ゴム10の両者が弾性変形し、上部構造物14に剛性を付与し、上部構造物14と下部構造物12との相対変位量を小さくする。
即ち、上部構造物14を支持する積層ゴム10と当接せずに、中小地震から大地震まで、連続して弾性変形できる免震構造を提供することができる。
このとき、中間部材62は、必要に応じて中央部に開口部74を設けてもよい。
本発明の第2実施形態に係る免震構造について、図7(A)、(B)を用いて説明する。第2実施形態に係る免震構造は、弾性変形装置30の弾性部材32を、鉛直方向(Z軸方向)へ配置した点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
ここで、図7(A)は、免震構造の正面図を示し、(B)は、その変形例の断面図を示している。
筒体34は、鉄筋コンクリート等の剛性部材で形成され、弾性部材32の外周部と所定の間隔D2をあけて、弾性部材32を囲んでいる。即ち、弾性部材32と筒体34が、間隔をあけて対向配置されている。筒体34の上端部は、上部構造物14の下面と接合され、下端部は開放端とされ、下部構造物12との間に所定の隙間が設けられている。
一方、下部構造物12と上部構造物14との相対変位量が間隔D2以上の場合には、弾性部材32と筒体34が当接する。これにより、弾性部材32が筒体34に押圧されてX軸方向へ弾性変形し、上部構造物14に剛性を付与する。この結果、上部構造物14と下部構造物12との相対変位量を小さくすることができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
変形例の弾性変形装置46は、弾性部材40を、芯材38と、芯材38を包むゴム部材39で構成した点において、弾性変形装置30と相違する。
芯材38は剛性部材で形成され、下端部が下部構造物12に接合され、上端部が開放端とされている。芯材38の上端部は開放端とされ、上部構造物14と所定の隙間を開けて設置されている。芯材38の外周面には、ゴム部材39が、厚さTで全周囲を囲む構成で接合されている。
筒体34は、ゴム部材39の外周面を、所定の間隔D2をあけて囲んでいる。
一方、下部構造物12と上部構造物14との相対変位量が、間隔D2以上になると、弾性部材40と筒体34が当接する。これにより、弾性部材40のゴム部材39が筒体34に押圧されて弾性変形し、上部構造物14に剛性を付与する。この結果、上部構造物14と下部構造物12との相対変位量を小さくすることができる。
他の構成は、第2実施形態と同じであり説明は省略する。
本発明の第3実施形態に係る免震構造について、図8(A)〜(C)を用いて説明する。第3実施形態に係る免震構造は、弾性変形装置50の弾性部材54の一部に、積層ゴム48を採用した点において、第2実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
ここで、図8(A)は、弾性変形装置50の正面図を示し、(B)は、そのZ1−Z1線断面図を示し、(C)は、変形例を示す正面図である。
当接部材52は剛性部材で形成され、下端部は積層ゴム48の上フランジ48Fに接合されている。また、当接部材52の上端部は開放端とされ、上部構造物14の下面と所定の隙間をあけている。また、上部構造物14に取付けられた筒体34は、当接部材52と間隔D3をあけて当接部材52を囲んでいる。即ち、当接部材52と筒体34が、間隔をあけて対向配置されている。
一方、下部構造物12と上部構造物14との相対変位量が間隔D3以上になると、弾性部材54と筒体34が当接する。これにより、筒体34に押圧されて、弾性部材54の積層ゴム48が弾性変形し、上部構造物14に剛性を付与する。この結果、上部構造物14と、下部構造物12との相対変位量を小さくすることができる。
他の構成は、第2実施形態と同じであり説明は省略する。
変形例の弾性変形装置58は、弾性部材が積層ゴム56だけである点において、本実施形態と相違する。
これにより、下部構造物12と上部構造物14との相対変位量が、間隔D4以下の範囲では、積層ゴム56と筒体34は当接せず、図示しない積層ゴム10のみが弾性変形して、上部構造物14へ伝達される地震時の衝撃や振動を低減させる。
これにより、上部構造物14と下部構造物12との相対変位量を小さくすることができる。
他の構成は、第3実施形態と同じであり説明は省略する。
12 下部構造物
14 上部構造物
16、17、30、46、50、58、66、68、70、72 弾性変形装置(弾性変形手段)
18 オイルダンパー(粘性ダンパー)
20 コイルばね(弾性部材、弾性変形装置、弾性変形手段)
22、62、64 中間部材(剛性部材、弾性変形装置、弾性変形手段)
24 対向部材(弾性部材、弾性変形装置、弾性変形手段)
26R、26L、32、40、54、56 弾性部材(弾性変形装置、弾性変形手段)
34 筒体(剛性部材、弾性変形装置、弾性変形手段)
38 芯材(弾性部材、弾性変形装置、弾性変形手段)
39 ゴム部材(弾性部材、弾性変形装置、弾性変形手段)
48、56 積層ゴム(弾性部材、弾性変形装置、弾性変形手段)
D1、D2、D3、D4 所定の間隔(設定値)
Claims (2)
- 下部構造物と上部構造物との間に設けられ、前記上部構造物を支持する積層ゴムと、
前記積層ゴムとは別個に、前記積層ゴムと並列に、前記下部構造物と前記上部構造物との間に配置され、前記下部構造物と前記上部構造物との相対変位量が、設定値に達するまでは互いに当接せず、設定値以上になると互いに当接して、前記上部構造物に剛性を付与する弾性変形手段と、
前記下部構造物と前記上部構造物との間に、前記積層ゴム及び前記弾性変形手段と並列に設けられ、振動エネルギーを吸収する粘性ダンパーと、
を有する免震構造。 - 前記弾性変形手段は、
前記下部構造物又は前記上部構造物の一方に取付けられた弾性部材と、
前記下部構造物又は前記上部構造物の他方に設けられ、前記弾性部材と間隔をあけて設置された剛性部材と、
を有する請求項1に記載の免震構造。
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